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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022096869
(43)【公開日】2022-06-30
(54)【発明の名称】計測装置
(51)【国際特許分類】
   G01K 1/08 20210101AFI20220623BHJP
   G01K 7/02 20210101ALI20220623BHJP
   G01H 17/00 20060101ALI20220623BHJP
   G01M 99/00 20110101ALI20220623BHJP
【FI】
G01K1/08 C
G01K7/02 C
G01H17/00 Z
G01M99/00 Z
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020210105
(22)【出願日】2020-12-18
(71)【出願人】
【識別番号】000137889
【氏名又は名称】株式会社ミヤワキ
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100176304
【弁理士】
【氏名又は名称】福成 勉
(72)【発明者】
【氏名】吉川 成雄
【テーマコード(参考)】
2F056
2G024
2G064
【Fターム(参考)】
2F056KC03
2F056KC06
2F056KC11
2F056KC12
2G024AD01
2G024CA13
2G024FA04
2G024FA06
2G024FA11
2G064AA11
2G064AB01
2G064AB02
2G064BA02
2G064BD02
2G064CC41
2G064DD02
(57)【要約】
【課題】計測を行わない場合にプローブを保護するためのキャップを計測装置本体に装着可能であるとともに、製造コストの上昇を抑制することができる計測装置を提供する。
【解決手段】計測装置は、計測装置本体とキャップ20とを備える。計測装置本体は、筐体部と、筐体部から突出形成されたプローブ12とを有する。プローブ12は、振動プローブの探触筒122により外周面が構成されている。探触筒122の根元部分は、大径に形成されている。探触筒122の根元部分には、逆L字状の溝122eが形成されている。キャップ20の周壁内側には、径方向内向きに突出形成された凸部20bが設けられている。プローブ12にキャップ20を装着する場合には、溝122eに凸部20bが案内され、溝122eの端部で凸部20bが係合される。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
箱状の筐体部と、当該筐体部の一端面から突出形成され、先端が計測対象物に押し当てられることにより当該計測対象物の状態を検出するプローブとを有する計測装置本体と、
前記プローブに装着可能であって、前記プローブの先端を保護するキャップと、
を備え、
前記キャップは、前記プローブに対して係合可能な係合部を有し、
前記プローブは、前記筐体部の一端面から前記先端に向けて延びる金属筒を有するとともに、前記金属筒に一体形成され、前記キャップにおける前記係合部と係合される被係合部を有する、
計測装置。
【請求項2】
請求項1に記載の計測装置において、
前記キャップは、長手方向の一端側に開口を有する有底筒状の部材であって、周壁内側における前記開口の近傍に径方向内向きに突出形成された凸部を前記係合部として有し、
前記プローブは、前記金属筒を当該金属筒の筒軸に対して直交する方向から正面視する場合に、L字状または逆L字状に形成され、前記凸部を案内し、且つ、前記凸部と係合する溝を前記被係合部として有する、
計測装置。
【請求項3】
請求項1に記載の計測装置において、
前記キャップは、長手方向の一端側に開口を有する有底筒状の部材であって、周壁内側における前記開口の近傍に形成された雌ネジを前記係合部として有し、
前記プローブは、前記金属筒の外周面に形成され、前記雌ネジと螺合するように形成された雄ネジを前記被係合部として有する、
計測装置。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載の計測装置において、
前記キャップの長手方向における前記開口とは反対側の底壁は、前記プローブに対して当該キャップを装着した際に、前記プローブの先端に対して間隔を空けた状態で配される、
計測装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4の何れかに記載の計測装置において、
前記金属筒は、長手方向において、前記先端の側に比べて前記筐体部の前記一端面に近い根元側の方が大径に形成されており、
前記被係合部は、前記大径部の外周面に形成されている、
計測装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5の何れかに記載の計測装置において、
前記プローブは、前記計測対象物の振動の強度を検出するための振動プローブと、前記計測対象物の表面温度を検出するための温度プローブと、を有し、
前記振動プローブは、前記振動の入力を受ける探触筒を前記金属筒として有するとともに、前記探触筒に接続され、前記探触筒の前記先端から入力される振動の強度に応じた信号を出力する振動センサを有し、
前記温度プローブは、先端の温度検出部が前記探触筒の筒開口に露出した状態で、前記探触筒の筒内側に配置されている、
計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、計測装置に関し、特に、高温となる計測対象物の表面を計測対象とする計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
蒸気が流通する配管設備から復水(ドレン)のみを排出する用途に用いられるスチームトラップが知られている。また、当該スチームトラップの振動および表面温度を計測し、それらの相互関係から蒸気漏れの有無を診断することが行われている。このような蒸気漏れの有無を診断するために計測装置が用いられる(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
従来技術に係る計測装置について、図6を用いて説明する。
【0004】
図6に示すように、計測装置9は、筐体部911とプローブ912とを備える計測装置本体910を備える。プローブ912は、筐体部911の上面911aから上方に向けて突出するように設けられている。プローブ912は、金属材料からなる筒体の内側に、計測対象物であるスチームトラップの振動を検出するための振動プローブと、スチームトラップの表面温度を検出するための温度プローブとが内装されている。
【0005】
ここで、計測装置9は、計測を行わない場合にプローブ912を保護するためのキャップ920を備える。キャップ920は、樹脂材料などから形成され、有底円筒形状を有する部材である。キャップ920をプローブ912に装着しようとする場合には、キャップ920を開口920aからプローブ912に装着し、プローブ912の周囲を囲むように設けられたキャップ取付部913に填める。これにより、キャップ920における開口920aの近傍部分とキャップ取付部913とが係合し、作業者が引き抜かない限り、プローブ912にはキャップ920が装着された状態が維持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2018-84419号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来技術に係る計測装置では、キャップ920を装着するためのキャップ取付部913を形成するのに製造コストの上昇を招いてしまうという問題がある。具体的に、スチームトラップ等の計測対象物の表面温度は200℃~500℃の高温になる。計測装置9を用いて振動および表面温度を検出しようとする場合には、プローブ912の先端を計測対象物の表面に押し当てる。このため、計測対象物の熱がプローブ912を通りキャップ取付部913にも伝達される。よって、従来技術に係る計測装置9では、高い耐熱温度を有する樹脂材料を用いてキャップ取付部913を構成することが必要であった。
【0008】
また、従来技術に係る計測装置9では、キャップ取付部913も筐体部911も樹脂材料を用いて形成されているが、上記のようにキャップ取付部913には高い耐熱性が必要であるため、キャップ取付部913を筐体部911とは別部材で形成することも必要となる。
【0009】
以上のように、従来技術に係る計測装置9では、キャップ920を装着するためのキャップ取付部913を高い耐熱温度を有する材料を用いて形成し、且つ、筐体部911とは別部材として形成していたので、製造コストの上昇を招くという問題がある。
【0010】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであって、計測を行わない場合にプローブを保護するためのキャップを計測装置本体に装着可能であるとともに、製造コストの上昇を抑制することができる計測装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様に係る計測装置は、計測装置本体とキャップとを備える。前記計測装置本体は、箱状の筐体部と、当該筐体部の一端面から突出形成され、先端が計測対象物に押し当てられることにより当該計測対象物の状態を検出するプローブとを有する。前記キャップは、前記プローブに装着可能であって、前記プローブの先端を保護する部材である。
【0012】
本態様に係る計測装置において、前記キャップは、前記プローブに対して係合可能な係合部を有する。また、本態様に係る計測装置において、前記プローブは、前記筐体部の一端面から前記先端に向けて延びる金属筒を有するとともに、前記金属筒に一体形成され、前記キャップにおける前記係合部と係合される被係合部を有する。
【0013】
上記態様に係る計測装置では、プローブが有する金属筒に被係合部が一体形成されている。そして、被係合部は、キャップの係合部と係合される部分である。即ち、上記態様に係る計測装置では、金属筒の一部として(金属材料により)被係合部を設けることで、金属筒に計測対象物からの熱が伝達されても当該被係合部が損傷や変形することがない。また、上記従来技術のように、キャップが装着される部材として高い耐熱性を有する樹脂部材を備える必要がなく、部品コストを抑えることができる。
【0014】
さらに、上記態様に係る計測装置では、被係合部を金属筒と一体形成しているので、部品点数の増加を抑えることができ、これによっても製造コストの上昇を抑えることができる。
【0015】
上記態様に係る計測装置において、前記キャップは、長手方向の一端側に開口を有する有底筒状の部材であって、周壁内側における前記開口の近傍に径方向内向きに突出形成された凸部を前記係合部として有していてもよい。また、上記態様に係る計測装置において、前記プローブは、前記金属筒を当該金属筒の筒軸に対して直交する方向から正面視する場合に、L字状または逆L字状に形成され、前記凸部を案内し、且つ、前記凸部と係合する溝を前記被係合部として有していてもよい。
【0016】
上記態様に係る計測装置では、キャップにおける開口の近傍に設けた凸部と、金属筒に設けたL字状または逆L字状の溝との係合により、キャップをプローブに装着可能としている。このため、作業者がプローブに対してキャップの着脱を行う場合に、計測装置本体に対してキャップを金属筒の筒軸周りに1回転以上させなくてもよい。よって、上記態様に係る計測装置では、煩雑な操作をしなくても簡単にキャップの着脱が可能である。
【0017】
上記態様に係る計測装置において、前記キャップは、長手方向の一端側に開口を有する有底筒状の部材であって、周壁内側における前記開口の近傍に形成された雌ネジを前記係合部として有していてもよい。また、上記態様に係る計測装置において、前記プローブは、前記金属筒の外周面に形成され、前記雌ネジと螺合するように形成された雄ネジを前記被係合部として有していてもよい。
【0018】
上記態様に係る計測装置では、キャップの周壁内側に設けた雌ネジと、金属筒の外周面に設けた雄ネジとの螺合により、キャップをプローブに装着可能としている。このため、上記態様に係る計測装置では、ネジ同士の螺合により確実にプローブにキャップを装着することができる。また、プローブにキャップが装着されている状態においては、作業者が意識的にネジ同士を緩める操作を行わないと、プローブからキャップが外れてしまうということが生じ難い。
【0019】
上記態様に係る計測装置において、前記キャップの長手方向における前記開口とは反対側の底壁は、前記プローブに対して当該キャップを装着した際に、前記プローブの先端に対して間隔を空けた状態で配されていてもよい。
【0020】
上記態様に係る計測装置では、プローブにキャップを装着した状態で、プローブの先端とキャップの底壁とが間隔を空けた状態となるように構成されている。よって、上記態様に係る計測装置では、プローブにキャップを装着した状態で、当該キャップの先端等を他の機器や配管などに接触してしまったような場合においても、プローブの先端がダメージを受けるのを抑制することができる。
【0021】
上記態様に係る計測装置において、前記金属筒は、長手方向において、前記先端の側に比べて前記筐体部の前記一端面に近い根元側の方が大径に形成されていてもよい。また、上記態様に係る計測装置において、前記被係合部は、前記大径部の外周面に形成されていてもよい。
【0022】
上記態様に係る計測装置では、金属筒が根元側の部分に大径部を有し、被係合部が当該大径部に形成されている。このような金属筒に対してキャップを装着した場合には、キャップの係合部と金属筒の被係合部とは互いに当接した状態となるが、金属筒における他の部分(小径部)に対してはキャップの周壁内面が間隔を空けた状態となる。よって、プローブの先端を計測対象物の表面に押し当てて計測した直後にキャップを装着しても、金属筒の熱によってキャップが変形等のダメージを受け難い。
【0023】
また、上記態様に係る計測装置では、金属筒の上記小径部とキャップの周壁内面とが間隔を空けた状態となるので、プローブにキャップを装着した状態でキャップが他の機器や配管に接触したような場合にも、プローブの先端および金属筒の先端近傍にダメージを受け難い。
【0024】
上記態様に係る計測装置において、前記プローブは、前記計測対象物の振動の強度を検出するための振動プローブと、前記計測対象物の表面温度を検出するための温度プローブと、を有していてもよい。また、上記態様に係る計測装置において、前記振動プローブは、前記振動の入力を受ける探触筒を前記金属筒として有するとともに、前記探触筒に接続され、前記探触筒の前記先端から入力される振動の強度に応じた信号を出力する振動センサを有していてもよい。さらに、上記態様に係る計測装置において、前記温度プローブは、先端の温度検出部が前記探触筒の筒開口に露出した状態で、前記探触筒の筒内側に配置されていてもよい。
【0025】
上記態様に係る計測装置では、振動プローブの探触筒(上記金属筒)の筒内側に温度プローブが配置されている。このため、上記態様に係る計測装置では、振動プローブにおける探触筒の先端を計測対象物の表面に押し当てることにより、計測対象物の振動の強度が検出できるとともに、温度プローブにより計測対象物の表面温度も検出することができる。
【0026】
また、上記態様に係る計測装置では、振動プローブの探触筒の筒内側に温度プローブが配置されているので、計測対象物の略同一箇所で振動と温度とを検出することができる。
【発明の効果】
【0027】
上記の各態様に係る計測装置は、計測を行わない場合にプローブを保護するためのキャップを計測装置本体に装着可能であるとともに、製造コストの上昇を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の実施形態に係る計測装置の構成を示す正面図である。
図2図1のII-II線断面を示す断面図である。
図3】プローブにおける探触筒の構造を示す斜視図である。
図4】キャップの構造を示す図であって、(a)は斜視図、(b)は正面図、(c)は(b)のA-A線断面を示す断面図である。
図5】(a)は変形例に係るプローブ32の探触筒を示す正面図であり、(b)はキャップの一部構成を示す断面図である。
図6】従来技術に係る計測装置の一部構成を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下では、本発明の実施形態について、図面を参酌しながら説明する。なお、以下で説明の形態は、本発明の一例であって、本発明は、その本質的な構成を除き何ら以下の形態に限定を受けるものではない。
【0030】
1.計測装置1の構成
計測装置1の構成について、図1を用いて説明する。
【0031】
図1に示すように、本実施形態に係る計測装置1は、計測装置本体10と、キャップ20と、を備える。なお、本実施形態に係る計測装置1は、蒸気や復水(ドレン)が流れるスチームトラップや配管等の計測対象物の状態を検出し、その結果を診断装置(図示を省略。)に無線送信するものである。そして、計測装置1は、計測対象物であるスチームトラップ等の振動の強度および表面温度を計測する。
【0032】
計測装置本体10は、筐体部11と、プローブ12と、を有する。筐体部11は、計測時に作業者が把持する部位であって、扁平直方体形状を有する。筐体部11は、例えば、耐熱性樹脂等から形成されている。
【0033】
プローブ12は、筐体部11の上面(一端面)11aから突出形成されている。プローブ12の詳細な構造については、後述する。
【0034】
筐体部11の前面(図1の手前側の面)には、表示部13と各種スイッチ14,16,17が設けられている。表示部13は、例えば、液晶ディスプレイパネル(LCDパネル)で構成されており、計測結果(振動の強度、表面温度)や、当該計測結果に基づく診断装置の診断結果などの各種情報が表示される。
【0035】
各種スイッチ14,16,17は、筐体部11の前面における表示部13よりも下側に設けられている。具体的に、スイッチ14は、計測装置本体10の電源をON/OFFするための電源スイッチであり、スイッチ16は、各種コマンドを選択・実行するためのコマンドスイッチであり、スイッチ17は、データ表示などの送り/戻しを行うためのスクロールスイッチである。
【0036】
なお、電源スイッチ14の近傍には、計測装置本体10の電源がONの状態であるかOFFの状態であるかを表示するための電源インジケータ15が設けられている。
【0037】
筐体部11の内部には、コントローラ18が備えられている。コントローラ18は、MPU/CPU、ASIC、ROM,RAM等を含むマイクロプロセッサと、メモリとを有して構成されている。コントローラ18は、メモリに予め格納されたファームウェア等を実行することにより、プローブ12で検出された振動の強度および表面温度の各情報を演算処理する。演算処理された信号は、診断装置に送信される。また、コントローラ18は、診断装置からの診断結果を受信するとともに、当該診断結果を表示部13に表示させる機能も有する。
【0038】
キャップ20は、プローブ12よりも一回りサイズが大きく設定された有底筒状の部材であって、開口20aを有する。キャップ20は、樹脂材料(例えば、PPS樹脂(ポリフェニレンサルファイド樹脂))を用いて形成されている。
【0039】
2.プローブ12の構成
計測装置本体10におけるプローブ12の構成について、図2を用いて説明する。
【0040】
図2に示すように、本実施形態に係る計測装置本体10のプローブ12は、計測対象物であるスチームトラップの振動の強度を検出するための振動プローブ121と、スチームトラップの表面温度を検出するための温度プローブ127とを有する。振動プローブ121は、スチームトラップからの振動の入力を受ける探触筒122と、探触筒122に入力された振動の強度に応じて信号を出力する振動センサ(例えば、圧電型加速度センサ)124とを有する。
【0041】
探触筒122は、筒軸にそって延びる断面円環状の金属製パイプ(金属筒)であって、例えば、ステンレス鋼からなるパイプで構成されている。探触筒122の開口側の筒端面122bがスチームトラップの表面に押し当てられる。
【0042】
探触筒122と振動センサ124とは、間に台座部123を介挿した状態で接続されている。台座部123は、振動センサ124が接続された側から順に、大径部123a、中径部123b、小径部123cを有する。台座部123は、例えば、ステンレス鋼から形成されており、大径部123a、中径部123b、および小径部123cが一体に形成されている。
【0043】
探触筒122は、長手方向(筒軸に沿った方向)において、外径がD2で長さ寸法がL2の小径部122cと、外径がD2よりも大きいD1で長さ寸法がL3の大径部122dとが一体に形成されている。小径部122cは、大径部122dよりも筒端面122bに近い領域、大径部122dは、小径部122cよりも振動センサ124に近い領域に配されている。そして、探触筒122の内径は、小径部122cおよび大径部122dの両部分でD3である。そして、小径部122cにおける肉厚はt1であり、大径部122dにおける肉厚はt1よりも厚いt2である。
【0044】
台座部123の中径部123bの外径は、探触筒122の内径D3と略同等、または内径D3よりも若干大きく設定されている。探触筒122は、台座部123の中径部123bに外嵌され、当該探触筒122の大径部122dの筒端が台座部123の大径部123aの上面に突き当てられた状態で、外側からビス125により固定されている。なお、台座部123の大径部123aおよび中径部123bは、筐体部11における上面11aよりも筐体部11の内方に収容された状態となっている。
【0045】
振動センサ124は、圧電素子として圧電型セラミックスが使用された圧電型加速度センサにより構成されている。振動センサ124は、台座部123の大径部123aの側の端面にビス126により固定されている。これにより、筒端面122bから入力されたスチームトラップの振動は、探触筒122および台座部123を介して振動センサ124に入力される。そして、振動センサ124は、入力された振動の強度に応じた信号を生成し、コントローラ18に出力する。
【0046】
温度プローブ127は、振動プローブ121における探触筒122の筒内空間122aに配置されている。具体的に、温度プローブ127は、探触筒122の筒内空間122aの径方向の略中心部に、探触筒122の内周面に対して非接触の状態で配置されている。温度プローブ127は、ハウジング128と、熱電対素線129,130と、を有する。ハウジング128は、円筒形状を有し、筒軸が探触筒122と同軸となるように配されている。
【0047】
熱電対素線129,130は、ハウジング128の筒内空間に収容されている。接触板133は、図示を省略する弾性部材により、ハウジング128の筒内空間側からハウジング128の外側に向けて付勢されている。接触板133は、外部から力が付加されていない自然状態において、ハウジング128および探触筒122の開口から外方に突出している。ハウジング128の内径は、台座部123の小径部123cの外径と略同等、またはそれよりも若干大きく設定されている。ハウジング128は、台座部123の小径部123cに外嵌され、中径部123bの上面に突き当てられた状態で、外側からビス131により固定されている。これにより、温度プローブ127は、探触筒122の径方向中心部に、当該探触筒122の内周面との間に一定の間隔を空けた状態で(探触筒122と非接触の状態で)、台座部123を介して探触筒122と一体に組付けられている。
【0048】
なお、図2に示すように、本実施形態に係る計測装置1では、探触筒122の筒端面122bに対してハウジング128の開口側の端面が略面一の状態で配されている。
【0049】
熱電対素線129,130は、例えば、一方がクロメル線であり、他方がアルメル線で構成されている。熱電対素線129,130は、それぞれがガラス繊維やフッ素樹脂等の被覆材によって被覆されている。
【0050】
熱電対素線129と熱電対素線130とは、各一端同士が接触板133の同じ位置で接合されている(接合部132)。これにより、接触板133によって熱電対素線129,130を含む熱電対の測温接点が構成されている。そして、接触板133の外側の主面が、スチームトラップの表面に当接する接触面133aということになる。
【0051】
3.探触筒122のD1,D2,D3,L1,L2,L3の規定方法
図2に示したように、本実施形態に係る振動プローブ121の探触筒122は、小径部122cの外径がD2、大径部122dの外径がD3である。そして、探触筒122の長さ寸法がL1、小径部122cの長さ寸法がL2、大径部122dの長さ寸法がL3である。これらの各寸法D1,D2,D3,L1,L2,L3の規定方法について説明する。なお、図2に示すように、L1=L2+L3の関係にある。
【0052】
蒸気および復水(ドレン)の何れか一方が流れるスチームトラップ等の計測対象物においてその振動を測定した場合、計測対象物内を流れる流体が蒸気であるか否かによって、特定の周波数成分の振動強度が大きく異なり、特に、10kHz付近の振動強度を計測することで、計測対象物内を流れる流体が蒸気であるか否かを比較的高い精度で判別できることが知られている(特開2014-133948号公報)。
【0053】
そのため、スチームトラップ等の蒸気漏れの診断を行う場合に使用する計測装置1の振動プローブ121については、共振周波数が10kHz付近となるように設計することが重要となる。このような知見に基づき、本実施形態に係る振動プローブ121の探触筒122は、次の関係を満たすように各寸法が規定される。
f=C1/L1×V1+C2/L4×V2 ・・(式1)
なお、上記の関係式において、“f”は共振周波数(10kHz付近の周波数)である。また、“C1”は探触筒122を構成する材料(ステンレス鋼)に依存する加速度特性係数、“C2”は台座部123を構成する材料(ステンレス鋼)に依存する加速度特性係数である。本実施形態では、探触筒122も台座部123もステンレス鋼から構成されているため、C1=C2となる。
【0054】
また、上記の関係式において、“V1”は探触筒122の体積であり、“V2”は台座部123の体積である。さらに、“L4”は台座部123の長さ寸法である。
【0055】
4.プローブ12に対するキャップ20の着脱
プローブ12における探触筒122およびキャップ20の各構造と、プローブ12に対するキャップ20の着脱とについて、図3および図4を用いて説明する。
【0056】
図3に示すように、探触筒122における大径部122dは、小径部122cよりも外径が大きく形成され、筐体部11側に配されている。探触筒122の大径部122dには、図3のように当該大径部122dを正面視した場合に、逆L字状の溝122eが設けられている。図3の拡大部分に示すように、溝122eは、探触筒122の長手方向(筒軸に沿った方向)に延びる長手方向溝部122gと、長手方向溝部122gに連続するとともに、探触筒122の周方向に延びる周方向溝部122hとから構成されている。
【0057】
ここで、図3では、1つの溝122eだけを図示しているが、大径部122dの周方向の反対側部分にも、同様の溝122eが形成されている。
【0058】
なお、本実施形態では、一例として溝122eが略L字状としたが、L字状の溝とすることもできる。
【0059】
次に、図4(c)に示すように、キャップ20は、周壁20cと天井壁20dとが一体形成されてなる有底筒形状を有する。そして、図4(a)~(c)に示すように、キャップ20の周壁20cにおける開口20aの近傍には、2つの凸部20bが形成されている。各凸部20bは、キャップ20の径方向内側に向けて突設されており、幅寸法および突出寸法は、探触筒122に形成された各溝122eに填まり込むことができる寸法に設定されている。
【0060】
図3に戻って、プローブ12の探触筒122にキャップ20を装着しようとする場合には、溝122eの口部122fに対してキャップ20の凸部20bの位置を合わせて、キャップ20を筐体部11側(下側)に向けてスライドさせる。このとき、凸部20bは、長手方向溝部122g内を案内される。
【0061】
次に、凸部20bが長手方向溝部122gと周方向溝部122hとの接続部分まで到達したら、キャップ20を周方向に回転させる。このとき、凸部20bは、周方向溝部122h内を案内される。
【0062】
以上のようにして、プローブ12の探触筒122に対してキャップ20が装着される。なお、プローブ12の探触筒122からキャップ20を取り外す場合には、上記と逆の操作を行えばよい。
【0063】
5.効果
本実施形態に係る計測装置1では、プローブ12の探触筒122における大径部122dに溝122eが形成されている。そして、溝122eは、キャップ20の凸部20bを案内するとともに、溝122eの端で凸部20bが係合する。溝122eは、探触筒122に設けられているものであり、探触筒122は金属材料で形成されているので、スチームトラップからの熱が伝達されても溝122eが損傷や変形することがない。また、上記従来技術のように、キャップ20が装着される部材として高い耐熱性を有する樹脂部材を備える必要がなく、部品コストを抑えることができる。
【0064】
さらに、溝122eは探触筒122の一部をして形成されているので、部品点数の増加を抑えることができ、これよりも製造コストの上昇を抑えることができる。
【0065】
また、プローブ12に対するキャップ20の着脱は、凸部20bを溝122eに沿ってスライドさせるだけなので、プローブ12の探触筒122に対してキャップ20を筒軸周りに1回転以上させなくてもよく、煩雑な操作を必要としない。
【0066】
また、上記では詳細な説明を省略したが、プローブ12にキャップ20を装着した状態で、プローブ12の先端(温度プローブ127の接触板133)とキャップ20の天井壁20dの内面とが間隔を空けた状態となるように構成されている。よって、プローブ12にキャップ20を装着した状態で、当該キャップ20の先端等を他の機器や配管などに接触してしまったような場合においても、プローブ12の先端がダメージを受けるのを抑制することができる。
【0067】
また、計測装置1では、探触筒122の大径部122dの周面に溝122eが形成されている。このような探触筒122に対してキャップ20を装着した場合には、探触筒122の大径部122dではキャップ20の周壁20cの内面と当接した状態となるが、探触筒122の小径部122cではキャップ20の周壁20c内面が非接触の状態となる。よって、プローブ12の先端をスチームトラップの表面に押し当てて計測した直後にキャップ20を装着しても、高温状態の探触筒122によってキャップ20が変形等のダメージを受け難い。
【0068】
また、計測装置1では、探触筒122の小径部122cとキャップ20の周壁20c内面とは非接触の状態となるので、プローブ12にキャップ20を装着した状態でキャップ20が他の機器や配管に接触したような場合にも、プローブ12の先端および探触筒122の先端(筒端面122b)近傍にダメージを受け難い。
【0069】
以上のように、上記の各態様に係る計測装置は、計測を行わない場合にプローブを保護するためのキャップを計測装置本体に装着可能であるとともに、製造コストの上昇を抑制することができる。
【0070】
[変形例]
変形例に係る計測装置について、図5を用いて説明する。なお、本変形例に係る計測装置は、プローブ32とキャップ40との係合のための構造が上記実施形態とは異なり、他の構造は上記実施形態と同一である。
【0071】
図5(a)に示すように、プローブ32における探触筒322も、筐体部側の根元部分が、筒端面側の部分(小径部322c)よりも大径に形成されている(大径部322d)。そして、本変形例では、大径部322dの外周面に雄ネジ322eが設けられている。なお、雄ネジ322eの谷径は、小径部322cの外径と略同等、またはそれよりも大きく設定されている。
【0072】
図5(b)に示すように、キャップ40の周壁40cにおける開口40aの近傍には、雌ネジ40bが形成されている。雌ネジ40bは、探触筒322の大径部322dに設けられた雄ネジ322eと螺合可能となるように設けられている。
【0073】
本変形例に係る計測装置では、探触筒322の大径部322dに設けられた雄ネジ322eに対して、キャップ40の雌ネジ40bを螺合させることで、プローブ32へキャップ40を装着することができる。逆に、プローブ32からキャップ40を取り外す場合には、雄ネジ322eと雌ネジ40bとの螺合を解除すればよい。
【0074】
本変形例は、プローブ32とキャップ40との係合構造が上記実施形態とは異なるが、上記同様の効果を得ることができる。
【0075】
また、本変形例では、探触筒322の雄ネジ322eとキャップ40の雌ネジ40bとの螺合により、キャップ40をプローブ32に装着可能としており、作業者が意識的にネジ同士を緩める操作を行わないと、プローブ32からキャップ40が外れてしまうということが生じ難い。
【0076】
[その他の変形例]
上記実施形態では、探触筒122の溝122eを、長手方向溝部122gが長手方向に同一の溝幅を有することとしたが、本発明は、口部122fに近い側に行くほど溝幅が広くなる溝を採用することもできる。このような構成とすれば、キャップの装着時に凸部を溝に填め込みやすくなる。
【0077】
また、上記実施形態および上記変形例では、キャップを単一の材料から形成してもよいし、複数の材料を用いて構成してもよい。例えば、天井壁および当該天井壁の近傍の周壁を、他の部分よりも柔軟性の高い材料で形成しておけば、誤ってキャップの先端を配管などに接触させてしまった場合にも衝撃を吸収することができ、プローブやコントローラへのダメージを抑えることができる。なお、このようにキャップを複数の材料で構成する場合には、例えば2色成型で形成することが可能である。
【0078】
上記実施形態および上記変形例では、探触筒122の根元部分に被係合部を形成することとしたが、本発明では、探触筒の長手方向の中間部分に被係合部を設けることも可能である。
【0079】
上記実施形態および上記変形例では、熱電対129,130を有する温度プローブ127を備えることとしたが、本発明は、熱電対に代えて、サーミスタ等の他の温度計測用のデバイスを温度プローブに採用することも可能である。
【0080】
上記実施形態および上記変形例では、探触筒122,322および台座部123をステンレス鋼を用いて形成することとしたが、本発明は、ステンレス鋼以外の金属材料や、セラミックス材料、さらには樹脂材料などを用いて探触筒などを形成することも可能である。
【0081】
上記実施形態および上記変形例では、振動プローブ121と温度プローブ127とを併せ持つ形態を一例としたが、本発明は、振動プローブあるいは温度プローブを単体として備える形態を採用することも可能である。
【0082】
上記実施形態および上記変形例では、スチームトラップを計測対象物の一例としたが、本発明は、スチームトラップ以外の配管等を計測対象物とすることも可能である。
【符号の説明】
【0083】
1 計測装置
10 計測装置本体
12,32 プローブ
20,40 キャップ
20a,40a 開口
20b 凸部(係合部)
40b 雌ネジ(係合部)
121 振動プローブ
122,322 探触筒(金属筒)
122d,322d 大径部
122e 溝(被係合部)
122g 長手方向溝部
122h 周方向溝部
127 温度プローブ
322e 雄ネジ(被係合部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6