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  • 特開-気密検査装置、および気密検査方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022096924
(43)【公開日】2022-06-30
(54)【発明の名称】気密検査装置、および気密検査方法
(51)【国際特許分類】
   G01M 3/20 20060101AFI20220623BHJP
   G01M 3/32 20060101ALI20220623BHJP
【FI】
G01M3/20 J
G01M3/32 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020210191
(22)【出願日】2020-12-18
(71)【出願人】
【識別番号】503063168
【氏名又は名称】東京ガスエンジニアリングソリューションズ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000220262
【氏名又は名称】東京瓦斯株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000129231
【氏名又は名称】株式会社ガスター
(71)【出願人】
【識別番号】000175766
【氏名又は名称】三恵技研工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】505186614
【氏名又は名称】株式会社エイムテック
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安部 健
(72)【発明者】
【氏名】原 毅
(72)【発明者】
【氏名】横田 鉄也
(72)【発明者】
【氏名】南 辰志
(72)【発明者】
【氏名】清水 翔一
(72)【発明者】
【氏名】小泉 進
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 正己
(72)【発明者】
【氏名】有馬 慎一郎
(72)【発明者】
【氏名】右田 雅彦
【テーマコード(参考)】
2G067
【Fターム(参考)】
2G067AA45
2G067BB03
2G067BB25
2G067BB40
2G067CC18
2G067DD17
(57)【要約】
【課題】装置の簡素化やコスト低減を図る。
【解決手段】検査対象の気密性を検査する気密検査装置は、メタンを含む都市ガスを爆発下限界未満の濃度に希釈して検知ガスを生成する脱硫希釈部240と、検知ガスが充填された検査対象(魔法瓶100)を収容するチャンバ310と、チャンバ内のメタンを検知する検知部320と、検査対象に充填された検知ガス、および/またはチャンバ内の雰囲気に含まれるメタンを吸着、または燃焼させて放散させる放散処理部とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象の気密性を検査する気密検査装置であって、
メタンを爆発下限界未満の濃度に希釈して検知ガスを生成する希釈部と、
上記検知ガスが充填された上記検査対象を収容するチャンバと、
上記チャンバ内のメタンを検知する検知部と、
上記検査対象に充填された検知ガス、および/または上記チャンバ内の雰囲気に含まれるメタンを吸着、または燃焼させて放散させる放散処理部と、
を備えたことを特徴とする気密検査装置。
【請求項2】
請求項1の気密検査装置であって、
上記希釈部は、メタンを含む都市ガスを爆発下限界未満の濃度に希釈して生成することを特徴とする気密検査装置。
【請求項3】
請求項1から請求項2のうち何れか1項の気密検査装置であって、
上記検知ガス、および/または上記チャンバからの排気を脱硫する脱硫部を備えたことを特徴とする気密検査装置。
【請求項4】
請求項1から請求項2のうち何れか1項の気密検査装置であって、
上記検知部は、上記チャンバ内の雰囲気を吸引してメタンを検知した後、上記チャンバ内に戻すように構成されていることを特徴とする気密検査装置。
【請求項5】
請求項1から請求項3のうち何れか1項の気密検査装置であって、
上記検査対象に充填された検知ガス、および/または上記チャンバ内の雰囲気を上記希釈部に供給し得るように構成されていることを特徴とする気密検査装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のうち何れか1項の気密検査装置であって、
上記チャンバ内の雰囲気が圧縮されて上記検知部に供給されるように構成されていることを特徴とする気密検査装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のうち何れか1項の気密検査装置であって、
上記チャンバの内壁と検査対象との間の隙間に、充填材が設けられるように構成されていることを特徴とする気密検査装置。
【請求項8】
検査対象の気密性を検査する気密検査方法であって、
メタンを爆発下限界未満の濃度に希釈して検知ガスを生成し、
上記検知ガスを検査対象に充填し、
上記検査対象が収容されたチャンバ内のメタンを検知するとともに、
上記検査対象に充填された検知ガス、および/または上記チャンバ内の雰囲気に含まれるメタンを吸着、または燃焼させて放散させることを特徴とする気密検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器の気密性などを検査する気密検査装置、および気密検査方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
魔法瓶などの真空容器等、気密性を必要とする製品においては、ピンホールなどによって気密性が損なわれていないかの検査が行われる。具体的には、例えば、容器にヘリウムガス等の検査用ガスを満たして、リークの有無を検出する検査が行われる。また、検査用ガスの保管・取り扱いを容易にするために、常温で液体の有機化合物を加熱して気化させて用いる技術が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭62-56831号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のように常温で液体の有機化合物を加熱して気化させるためには、装置に気化器を設けるためにコストの増大や複雑化を招く上、使用時に加熱するためのコストがかかることになる。
【0005】
本発明は、上記の点に鑑みて、装置の簡素化やコスト低減を図ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明は、
検査対象の気密性を検査する気密検査装置であって、
メタンを爆発下限界未満の濃度に希釈して検知ガスを生成する希釈部と、
上記検知ガスが充填された上記検査対象を収容するチャンバと、
上記チャンバ内のメタンを検知する検知部と、
上記検査対象に充填された検知ガス、および/または上記チャンバ内の雰囲気に含まれるメタンを吸着、または燃焼させて放散させる放散処理部と、
を備えたことを特徴とする。
【0007】
これにより、メタンが希釈された検知ガスが生成されるので、検知ガスの供給を容易にしたり、検査コストの低減を図ったりすることができるとともに、放散処理が行われることによって、メタンが環境に与える影響を防ぐことができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、装置の簡素化やコスト低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】気密検査装置の概略構成を示す模式図である。
図2】検査結果の例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態として、真空室を有する魔法瓶を検査する気密検査装置の例を図面に基づいて詳細に説明する。
【0011】
(検査対象、および気密検査装置の概略構成)
検査対象の魔法瓶100は、図1に示すように真空室100aを有している。上記真空室100aは、開口部100bを介して脱気された後、開口部100bが封止されることによって真空状態に保たれるようになっている。真空室100aの気密性は、上記開口部100bに検知ガス供給ヘッド210が接続されて、検知ガス供給管220、およびバルブ230を介して、脱硫希釈部240から検知ガスが充填されて行われる。上記脱硫希釈部240は、メタンを含む都市ガスが、脱硫され、爆発下限界(約5%)未満のメタン濃度に希釈された検知ガスを生成するようになっている。上記脱硫は必須ではないが、これが行われることにより、都市ガスに含まれる付臭成分等が検査対象に与える影響を低減または回避することができる。また、検査後の排気等による異臭を防ぐこともできる。なお、排気による異臭を防ぐためには、後述する放散処理部330等によって脱硫や付臭成分の分解などがされるようにしてもよい。
【0012】
上記検知ガス供給管220には、また、バルブ250を介して真空ポンプ260が接続され、検知ガスの充填に先立って真空室100a内が脱気されるようになっている。検知ガス供給管220には、さらに、必須ではないが、圧力計270が接続されている。
【0013】
上記魔法瓶100が収容されるチャンバ310には、検知部320が接続され、チャンバ310内の雰囲気が吸引されてメタンの検知が行われた後、再度チャンバ310内に戻されるようになっている。上記検知部320としては、具体的には、例えば新コスモス電機株式会社製可燃性ガス探知器XP-702III等の半導体検知器や、株式会社ガスター製レーザーメタンmini(「レーザーメタン」は登録商標)等のレーザ式検知器などが用いられる。なお、検知部320は、上記のようにチャンバ310の外部に設けられるのに限らず、チャンバ310内に設けられてもよい。また、レーザーメタンminiのようにレーザ光を外部に出射し、入射する光によってメタンを検出する装置が用いられる場合には、検知部320をチャンバ310の外部に設け、チャンバ310の少なくとも一部に形成された透明な部分を介してチャンバ310の内部を通過する光により検知されるようにしてもよい。 チャンバ310には、また、内部の雰囲気に含まれるメタンを活性炭などの吸着剤に吸着させたり、燃焼させたりした後に大気中に放散させる放散処理部330が接続されている。
【0014】
(検査例)
上記のような気密検査装置による検査の例を説明する。
【0015】
例えば水没試験ではリークを確認できない程度の気密性欠陥を有する魔法瓶100をチャンバ310内に収容し、真空室100a内に、例えば、脱硫希釈部240によって生成された、メタン3%、エタン0.2%/窒素の検知ガスを30kPaGで充填し、検知部320として高感度分析計を用いて、チャンバ310内の雰囲気を循環させながらメタンの検知を行う。図2は、その際にチャンバ310内のメタン濃度における、時間が0の時点を基準とした上昇幅の時間変化を2回計測して求めた例を実線で示す。なお破線については後述の(変形例)にて説明する。この例では、少なくとも、0.5分程度経過した時点でチャンバ310内の濃度が有意に上昇していた。一方、図示していないが、リークのないダミーの検査対象の場合には、チャンバ310内の濃度の上昇は確認できなかった。このことから、0.5分程度経過した時点でも、有意に魔法瓶100からのリークを確認することができた。また、30分程度経過した後には、チャンバ310内のメタン濃度上昇幅は0.6ppm以上となり、別途、検知部320として半導体検知器を用いた場合でも検知反応が確認された。
【0016】
上記のような検知が行われた後、魔法瓶100内の検知ガスは、例えば真空ポンプ260により吸引され、脱硫希釈部240を介するなどして、後の検査に利用される。なお、吸引された検知ガスは、そのまま放出されてもよく、その場合でも、検知ガス自体は爆発下限界未満のメタン濃度に希釈されているので、爆発の危険性は容易に回避できる。ただし、通常は、以下で説明するように放散処理部330によって処理されるようにすることが好ましい。
【0017】
また、チャンバ310内の雰囲気には、メタンが含まれている可能性があるが、魔法瓶100の真空室100aに充填される検知ガス自体が爆発下限界未満のメタン濃度に希釈されているので、やはり、そのまま放出されても爆発の危険性は容易に回避できる。しかし、メタンガスによる温室効果を考慮すると、放散処理部330によってメタンを吸着剤に吸着させたり、燃焼させたりした後に大気中に放散させることが好ましい。
【0018】
また、検査が終了してチャンバ310内の雰囲気を排出する際に、排出された雰囲気も、脱硫希釈部240に供給して循環させるようにしてもよい。これによって、よりメタンの投入量や排出量を削減することができる。
【0019】
上記のように、都市ガスを用いるなどして、メタンが希釈された検知ガスが生成されるので、検知ガスの供給を容易にしたり、検査コストの低減を図ったりすることができる。また、メタンの検知によってリーク検査が行えるので、検知部を構成することが容易にできる。しかも、上記のような放散処理が行われることによって、メタンが環境に与える影響を防ぐことも容易にできる。
【0020】
(変形例)
なお、上記のようにチャンバ310内の雰囲気を循環させることによって検知感度を高くすることが容易にできるが、検知部320によってチャンバ310内から吸引された雰囲気がメタンの検知後に放散処理部330等を介して大気中に排気される場合でも、図2に破線で示すように時間の経過とともに所定の時間上昇する傾向は認められる。それゆえ、十分な検知感度を有する検知部320が用いられる場合や、検査時間が許容される場合などには、必ずしも上記のような循環をさせなくてもよい。
【0021】
また、例えば、チャンバ310内の雰囲気が圧縮されて検知部320に供給されるなどしてもよい。具体的には、例えば検知部320の上流側に圧縮機を設け、下流側に絞りを設けるなどしてもよい。これによって、実質的に検知ガスの濃度を高くして検知感度を高めることが容易にできる。
【0022】
また、上記のような圧縮に代え、または圧縮とともに、チャンバ310の内壁と魔法瓶100との間の隙間に、充填材を設けてチャンバ310内の空間容積を小さく抑えることにより、検知ガスの濃度を高くし得るようにしてもよい。具体的には、例えば、図1に併せて示すように、粒状体410などを隙間に充填したり、チャンバ310および魔法瓶100の形状に応じた型材420を配置したりしてもよい。上記型材420としては、魔法瓶の形状に対応して固定的な形状に形成されたものを用いてもよいし、被覆されたクッション材などを単一で、または複数組み合わせて用いたり、空気で膨らませる膨張体などを用いたりしてもよい。また、これらの型材420は、魔法瓶100に接触する部分に凹凸を設けるなどして、魔法瓶100のピンホールなどが塞がれるのを防止するようにしてもよい。ただし、これらの充填材は、メタンを吸収したり放出したりして検知性能を妨げないものであることが好ましい。
【0023】
また、脱硫希釈部240による希釈程度、すなわちメタン濃度の設定は、漏洩の程度等に応じて可変にしてもよい。これによって検知感度を制御することなどができる。
【0024】
また、脱硫希釈部240によって希釈された検査ガスや、チャンバ310内の雰囲気、放散処理部330からの排気中のメタン濃度が所定以上になったことを感知して、警報を発したり都市ガスの供給を遮断したりするなどの安全装置を設けたりしてもよい。
【0025】
また、検知ガスを魔法瓶100内に充填するのに限らず、チャンバ310内に充満させて、魔法瓶100内のメタン濃度を検出するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0026】
100 魔法瓶
100a 真空室
100b 開口部
210 検知ガス供給ヘッド
220 検知ガス供給管
230 バルブ
240 脱硫希釈部
250 バルブ
260 真空ポンプ
270 圧力計
310 チャンバ
320 検知部
330 放散処理部
図1
図2