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  • 特開-蓄熱装置及び熱交換方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022096988
(43)【公開日】2022-06-30
(54)【発明の名称】蓄熱装置及び熱交換方法
(51)【国際特許分類】
   F28D 20/00 20060101AFI20220623BHJP
   F28D 20/02 20060101ALI20220623BHJP
   F28F 9/22 20060101ALI20220623BHJP
【FI】
F28D20/00 A
F28D20/02 D
F28F9/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020210312
(22)【出願日】2020-12-18
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成27年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「未利用熱エネルギーの革新的活用技術研究開発」に係る委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニックホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107641
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 耕一
(74)【代理人】
【識別番号】100163463
【弁理士】
【氏名又は名称】西尾 光彦
(72)【発明者】
【氏名】竹口 伸介
【テーマコード(参考)】
3L065
【Fターム(参考)】
3L065DA17
(57)【要約】
【課題】蓄冷材の単位体積当たりの蓄熱量を高める観点から有利な蓄熱装置を提供する。
【解決手段】本開示の蓄熱装置1aは、複数の蓄冷ユニット10と、蓄熱槽30とを備える。蓄冷ユニット10は、複数の板状容器14を含む。板状容器14には、液体と固体との間で相変化して冷熱を蓄えて放出する蓄冷材が収容されている。複数の板状容器14は、蓄冷ユニット10において配列されている。蓄熱槽30には、複数の蓄冷ユニット10が熱媒液2に浸漬した状態で熱媒液2が貯留されている。複数の蓄冷ユニット10は、冷熱を蓄えるとき及び冷熱を放出するときの熱媒液2の流れ方向において隣り合う第一蓄冷ユニット10a及び第二蓄冷ユニット10bを含む。第二蓄冷ユニット10bにおける複数の板状容器14の配列方向D3は、第一蓄冷ユニット10aにおける複数の板状容器14の配列方向D2と交差している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体と固体との間で相変化して冷熱を蓄えて放出する蓄冷材が収容された複数の板状容器を含む複数の蓄冷ユニットと、
前記複数の前記蓄冷ユニットが熱媒液に浸漬した状態で前記熱媒液を貯留する蓄熱槽と、を備え、
前記複数の前記板状容器は、前記複数の前記蓄冷ユニットのそれぞれにおいて配列されており、
前記複数の前記蓄冷ユニットは、前記冷熱を蓄えるとき及び前記冷熱を放出するときの前記熱媒液の流れ方向において隣り合う第一蓄冷ユニット及び第二蓄冷ユニットを含み、
前記第二蓄冷ユニットにおける前記複数の前記板状容器の配列方向は、前記第一蓄冷ユニットにおける前記複数の前記板状容器の配列方向と交差している、
蓄熱装置。
【請求項2】
前記第二蓄冷ユニットにおける前記複数の前記板状容器の配列方向は、前記第一蓄冷ユニットにおける前記複数の前記板状容器の配列方向と直交している、請求項1に記載の蓄熱装置。
【請求項3】
前記板状容器は、平板状である、請求項1又は2に記載の蓄熱装置。
【請求項4】
前記冷熱を蓄えるとき及び前記冷熱を放出するときに前記熱媒液の前記流れ方向に前記熱媒液が流れる流路を形成する仕切りを備え、
前記複数の蓄冷ユニットは、前記流路に配置されている、
請求項1から3のいずれか1項に記載の蓄熱装置。
【請求項5】
液体と固体との間で相変化して冷熱を蓄えて放出する蓄冷材が収容された複数の板状容器を含む複数の蓄冷ユニットを熱媒液に浸漬させることと、
前記複数の前記蓄冷ユニットのそれぞれにおいて配列された前記複数の前記板状容器の周囲を通過する前記熱媒液の流れを生じさせることによって、前記熱媒液の流れ方向において隣り合うとともに前記複数の前記蓄冷ユニットに含まれる第一蓄冷ユニット及び第二蓄冷ユニットを通過する前記熱媒液の流れを生じさせることと、を含み、
前記第二蓄冷ユニットにおける前記複数の前記板状容器の配列方向は、前記第一蓄冷ユニットにおける前記複数の前記板状容器の配列方向と交差している、
熱交換方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、蓄熱装置及び熱交換方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、潜熱蓄熱材が用いられた潜熱蓄熱システムが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、蓄熱槽と、冷凍機等の熱源装置と、負荷装置とを備えた潜熱蓄熱システムが記載されている。蓄熱槽の内部には、潜熱蓄熱材が収容された多数の蓄熱容器が水等の熱媒液に浸漬した状態で配置されている。蓄熱運転では、蓄熱槽と熱源装置との間で熱媒液が循環し、熱源装置で発生した冷熱が蓄熱槽に蓄えられる。放熱運転では、蓄熱槽と負荷装置との間で熱媒液が循環し、蓄熱槽に蓄えられた冷熱が負荷装置で消費される。潜熱蓄熱材が収容された蓄熱容器の設置により、潜熱蓄熱が可能になり蓄熱槽全体の蓄熱能力が増大する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-36996号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、蓄冷材の単位体積当たりの蓄熱量を高める観点から有利な蓄熱装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示における蓄熱装置は、
液体と固体との間で相変化して冷熱を蓄えて放出する蓄冷材が収容された複数の板状容器を含む複数の蓄冷ユニットと、
前記複数の前記蓄冷ユニットが熱媒液に浸漬した状態で前記熱媒液を貯留する蓄熱槽と、を備え、
前記複数の前記板状容器は、前記複数の前記蓄冷ユニットのそれぞれにおいて配列されており、
前記複数の前記蓄冷ユニットは、前記冷熱を蓄えるとき及び前記冷熱を放出するときの前記熱媒液の流れ方向において隣り合う第一蓄冷ユニット及び第二蓄冷ユニットを含み、
前記第二蓄冷ユニットにおける前記複数の前記板状容器の配列方向は、前記第一蓄冷ユニットにおける前記複数の前記板状容器の配列方向と交差している。
【発明の効果】
【0007】
本開示の蓄熱装置では、蓄冷材に冷熱を蓄えるとき及び冷熱を放出するときの熱媒液の流れ方向において隣り合う第一蓄冷ユニット及び第二蓄冷ユニットを熱媒液が通過する。このため、上流側の蓄冷ユニットにおける熱媒液の流量分布が不均一であっても、下流側の蓄冷ユニットを熱媒液が流れることにより熱媒液が再分配され、熱媒液の流量分布が均一化される。これにより、複数の蓄冷ユニットにおいて熱媒液の流量分布が均一になりやすく、蓄冷材の単位体積当たりの蓄熱量が高くなりやすい。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態1における蓄熱装置の構成図
図2A図1に示す蓄熱装置における蓄冷ユニットの内部構造を示す斜視図
図2B図1に示す蓄熱装置における容器を示す斜視図
図3図1に示す蓄熱装置にける架台を示す斜視図
図4図1に示す蓄熱装置における領域Aの状態を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0009】
(本開示の基礎となった知見)
本発明者らが本開示を想到するに至った当時、特許文献1に記載の通り、潜熱蓄熱材が収容された多数の蓄熱容器が熱媒液に浸漬した状態で蓄熱槽の内部に配置され、潜熱蓄熱が可能な技術があった。これにより、例えば、既存の水蓄熱槽の蓄熱量を増加させる潜熱蓄熱システムを提供できる。
【0010】
しかしながら、特許文献1に記載の潜熱蓄熱システムでは、多数の蓄熱容器が予め収容されたカゴ状の収容容器を架台の多孔状の上面部に積層状態で載置することによって、蓄熱容器が蓄熱槽に設置されている。各収容容器において蓄熱容器は同じように配列されていると理解される。この場合、例えば、上流側に配置された収容容器に流量分布が不均一な状態で熱媒液が供給されると、流量分布が不均一な状態のまま下流側の収容容器まで複数の収容容器を熱媒液が通過する。このため、流量が少ない部分では、潜熱蓄熱材の融解及び凝固が不十分になり、潜熱蓄熱材の単位体積当たりの蓄熱量を高めにくいという課題があった。本発明者は、このような課題を発見し、その課題を解決するために、本開示の主題を構成するに至った。
【0011】
そこで、本開示は、蓄冷材の単位体積当たりの蓄熱量を高める観点から有利な蓄熱装置を提供する。
【0012】
以下、図面を参照しながら実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細な説明、または、実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が必要以上に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。なお、添付図面及び以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるのであって、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図していない。
【0013】
(実施の形態1)
以下、図1図2A図2B図3、及び図4を用いて、実施の形態1を説明する。
【0014】
[1-1.構成]
図1に示す通り、蓄熱装置1aは、複数の蓄冷ユニット10と、蓄熱槽30とを備えている。図2Aに示す通り、各蓄冷ユニット10は、複数の板状容器14を含む。各板状容器14には、液体と固体との間で相変化して冷熱を蓄えて放出する蓄冷材が収容されている。複数の板状容器14は、各蓄冷ユニット10において配列されている。蓄熱槽30には、複数の蓄冷ユニット10が熱媒液2に浸漬した状態で熱媒液2が貯留されている。
【0015】
板状容器14に収容された蓄冷材は、液体と固体との間で相変化して冷熱を蓄えて放出する限り、特定の蓄冷材に限定されない。蓄冷材は、例えば、クラスレートハイドレートである。蓄冷材の融点は特定の温度に限定されない。蓄冷材の融点は、例えば、熱媒液2の融点より高く、かつ、蓄冷材の放冷における冷却対象の温度より低い。蓄冷材の融点は、例えば、7℃である。
【0016】
熱媒液2は、特定の液体に限定されない。熱媒液2は、例えば水である。
【0017】
板状容器14の材料は、特定の材料に限定されない。板状容器14は、例えば、ポリエ
チレン及びポリプロピレン等の樹脂製の容器である。図2Bに示す通り、板状容器14は、例えば、平板状である。
【0018】
図1に示す通り、蓄熱装置1aは、例えば、架台50を備えている。図3に示す通り、架台50は、例えば天板52及び脚54を備えている。架台50は、蓄熱槽30の底に配置されており、架台50の天板52の下方にスペース42が形成されている。複数の蓄冷ユニット10は、架台50の天板52の上に配置されている。架台50の天板52には、スペース42に流入した熱媒液2を蓄冷ユニット10に導く開口が形成されている。天板52は、多数の貫通孔を有する板であってもよい。複数の蓄冷ユニット10において、熱媒液2の流れ方向D1は同じである。
【0019】
図1に示す通り、蓄熱装置1aは、例えば、仕切り40を備えている。仕切り40は、流路45を形成する。流路45において、板状容器14に収容された蓄冷材に冷熱を蓄えるとき及び蓄冷材から冷熱を放出するときに熱媒液2の流れ方向に熱媒液2が一方通行で流れる。複数の蓄冷ユニット10は、流路45に配置されている。
【0020】
仕切り40は、例えば、第一仕切り40a及び第二仕切り40bを備えている。流路45は、例えば、水平面に垂直な方向に延びている。第一仕切り40aの上端は、例えば、蓄熱槽30における熱媒液2の液面よりも高い。これにより、熱媒液2が蓄冷ユニット10を通過せずに短絡して流れることが防止される。第一仕切り40aの下端は、架台50の天板52に接している。第一仕切り40aの下端は、架台50の天板52に接触していてもよい。第二仕切り40bの下端は、例えば、蓄熱槽30の底面に接触している。第二仕切り40bの下端は、蓄熱槽30の底面に接合されていてもよい。第二仕切り40bの下端部は、例えばスペース42に接しており、水平方向への熱媒液2の流れを塞き止める。このため、スペース42に流入した熱媒液2の全量が複数の蓄冷ユニット10に向かって流れる。
【0021】
図2Aに示す通り、各蓄冷ユニット10は、例えば、収容箱12、入口側蓋16a、及び出口側蓋16bを備えている。収容箱12の中に、複数の板状容器14が配列されている。複数の板状容器14は、所定の間隔で配列されており、板状容器14同士の間に熱媒液2を通過させるための間隙が形成されている。これにより、蓄冷ユニット10において熱媒液2が板状容器14の周囲を流れて、熱媒液2と板状容器14との間で熱交換がなされうる。複数の板状容器14は、例えば、互いに平行に配置されている。入口側蓋16a及び出口側蓋16bのそれぞれは、熱媒液2が通過可能な開口を有する。入口側蓋16aは、収容箱12の一端で複数の板状容器14を覆う。出口側蓋16bは、収容箱12の他端で複数の板状容器14を覆う。収容箱12は、第一仕切り40a及び第二仕切り40bの少なくとも一部を構成していてもよい。
【0022】
図4は、図1の領域Aの状態を示す斜視図である。図4において、説明の便宜のために、収容箱12、入口側蓋16a、及び出口側蓋16bを省略して図示している。図4に示す通り、複数の蓄冷ユニット10は、第一蓄冷ユニット10a及び第二蓄冷ユニット10bを含む。第一蓄冷ユニット10a及び第二蓄冷ユニット10bは、板状容器14に収容された蓄冷材を用いて冷熱を蓄えるとき及び冷熱を放出するときの熱媒液2の流れ方向D1において隣り合っている。第二蓄冷ユニット10bは、例えば、第一蓄冷ユニット10aに対して、熱媒液2の流れの下流に配置されている。第二蓄冷ユニット10bにおける複数の板状容器14の配列方向D3は、第一蓄冷ユニット10aにおける複数の板状容器14の配列方向D2と交差している。
【0023】
図4において、X軸、Y軸、及びZ軸は互いに直交しており、ZX平面が水平である。第二蓄冷ユニット10bにおける複数の板状容器14の配列方向D3は、第一蓄冷ユニッ
ト10aにおける複数の板状容器14の配列方向D2と直交している。
【0024】
第二蓄冷ユニット10bにおける複数の板状容器14の個数は、例えば、第一蓄冷ユニット10aにおける複数の板状容器14の個数と同じである。この場合、第二蓄冷ユニット10bと第一蓄冷ユニット10aとの製造工程を共通化しやすい。第二蓄冷ユニット10bにおける複数の板状容器14の個数は、第一蓄冷ユニット10aにおける複数の板状容器14の個数と異なっていてもよい。
【0025】
複数の蓄冷ユニット10は、例えば、板状容器14に収容された蓄冷材を用いて冷熱を蓄えるとき及び冷熱を放出するときの熱媒液2の流れ方向D1において配列されている。この場合、複数の蓄冷ユニット10の配列方向において隣り合っている一対の蓄冷ユニット10において、複数の板状容器14の配列方向が互いに交差している。例えば、その一対の蓄冷ユニット10において複数の板状容器14の配列方向が互いに直交している。例えば、熱媒液2の流れ方向D1に配列された複数の蓄冷ユニット10の全てがこのような関係が満たす。熱媒液2の流れ方向D1に配列された複数の蓄冷ユニット10の一部がこのような関係を満たしてもよい。
【0026】
図1に示す通り、蓄熱装置1aは、例えば、冷却装置60と、ポンプ61と、第一取込口66と、第一吐出口67とをさらに備えている。冷却装置60は、入口62及び出口63を有する。入口62は、配管によって第一取込口66につながっている。また、出口63は、配管によって第一吐出口67につながっている。第一取込口66は、蓄熱槽30の内部において、蓄熱槽30に貯留された熱媒液2の液面よりも低い位置にある。第一吐出口67は、蓄熱槽30の内部において、蓄熱槽30に貯留された熱媒液2の液面よりも低い位置にある。ポンプ61の作動により、蓄熱槽30に貯留された熱媒液2は、第一取込口66から取り込まれ、入口62を通過して冷却装置60に導かれる。その後、熱媒液2は冷却装置60の出口63を通過して第一吐出口67から吐出され、蓄熱槽30に戻される。
【0027】
図1に示す通り、蓄熱装置1aは、例えば、冷却対象70と、ポンプ71と、第二取込口76と、第二吐出口77とをさらに備えている。第二取込口76及び第二吐出口77は、例えば、蓄熱槽30の内部において、蓄熱槽30に貯留された熱媒液2の液面よりも低い位置にある。第二取込口76は、例えば、第二吐出口77よりも低い位置にある。ポンプ71の作動により、蓄熱槽30に貯留された熱媒液2は、第二取込口76から取り込まれ、冷却対象70を通過して第二吐出口77から吐出され、蓄熱槽30に戻される。
【0028】
[1-2.動作]
以上のように構成された蓄熱装置1aについて、その動作の一例を以下説明する。最初に、蓄熱槽30に冷熱を蓄える蓄冷運転と、冷却対象70の冷却運転とを同時に行うときの蓄熱装置1aの動作を説明する。
【0029】
ポンプ61の作動により、蓄熱槽30に貯留された熱媒液2が、第一取込口66から取り込まれ、冷却装置60を通過する。これにより、冷却装置60において、熱媒液2は、その融点より高く、かつ、板状容器14に収容された蓄冷材の融点未満の温度に冷却される。その後、熱媒液2は、第一吐出口67から吐出され蓄熱槽30に戻される。蓄熱槽30に戻された熱媒液2は、架台50の天板52の下方に形成されたスペース42に流入する。その後、熱媒液2は、流路45における複数の蓄冷ユニット10へ向かって流れ、蓄冷ユニット10の入口側蓋16aの開口を通過する。次に、熱媒液2は、収容箱12の内部の複数の板状容器14の周囲を流れ、出口側蓋16aの開口を通過して蓄冷ユニット10から流出し、その蓄冷ユニット10に隣り合った下流の蓄冷ユニット10に導かれる。このように、流路45において、熱媒液2は蓄冷ユニット10への出入りを繰り返す。例
えば、熱媒液は、第一蓄冷ユニット10a及び第二蓄冷ユニット10bをこの順番で通過する。配列方向D3が配列方向D2と交差しているので、第一蓄冷ユニット10aを通過した熱媒液2の流れは、第二蓄冷ユニット10bにおいて再分配される。これにより、複数の蓄冷ユニット10において熱媒液2の流量分布が均一になりやすい。
【0030】
蓄冷ユニット10において熱媒液2が複数の板状容器14の周囲を流れることにより、熱媒液2と板状容器14との間で熱交換が行われる。その結果、流路45における熱媒液2の流れの上流側の蓄冷ユニット10から順番に、板状容器14の内部の蓄冷材の温度がその融点未満の温度に下がり、蓄冷材が液体から固体へ相変化する。これにより、蓄熱槽30において、潜熱として冷熱が蓄えられる。
【0031】
上記の通り、第一仕切り40aの上端は、熱媒液2の液面より高く、第二仕切り40bの下端は、蓄熱槽30の底面に接触している。このため、第一吐出口67から吐出され蓄熱槽30に戻された熱媒液2が蓄冷ユニット10を通過せずに短絡して流れることが防止される。蓄冷ユニット10から流出して流路45を通過した熱媒液2は、その後、流路45における熱媒液2の流れの下流側に形成された蓄熱槽30の内部の別の場所に送られる。
【0032】
一方、ポンプ71の作動により、蓄熱槽30に貯留された熱媒液2は、第二取込口76から取り込まれて冷却対象70に供給され、冷却対象70を冷却する。冷却対象70の目標温度は、特定の値に限定されない。冷却対象70の目標温度は、例えば、特定の物品の製造プロセスで調整が求められる温度である。冷却対象70の目標温度は、例えば、12℃である。冷却対象70の冷却により熱媒液2の温度が上昇する。冷却対象70を通過して温度が上昇した熱媒液2は、第二吐出口77から吐出され、蓄熱槽30の内部に戻される。
【0033】
蓄冷ユニット10を通過して蓄冷に用いられた後の熱媒液2と、冷却対象70を冷却して温度が上昇した熱媒液2とが蓄熱槽30の内部で混合される。これにより、冷却装置60に送られる熱媒液2の温度は、蓄冷ユニット10を通過して蓄冷に用いられた後の熱媒液2の温度よりも高くなる。また、冷却対象70に送られる熱媒液2の温度は、冷却対象70を冷却して温度が上昇した熱媒液2の温度よりも低くなる。このため、混合された熱媒液2の密度は、第二吐出口77から吐出された直後の熱媒液2の密度よりも大きくなり、蓄熱槽30の内部を下降する。その後、下降した熱媒液2は、第二吐出口77より低い位置にある第二取込口76から吸い込まれ、冷却対象70に送られる。
【0034】
次に、蓄熱槽30に蓄えられた冷熱を放出する放冷運転と、冷却対象70の冷却運転とを同時に行うときの蓄熱装置1aの動作を説明する。
【0035】
ポンプ61の作動により、蓄熱槽30に貯留された熱媒液2が、第一取込口66から取り込まれ、冷却装置60を通過する。これにより、冷却装置60において、熱媒液2は、板状容器14に収容された蓄冷材の融点以上の温度に調整される。その後、熱媒液2は、第一吐出口67から吐出され蓄熱槽30に戻される。なお、第一吐出口67から吐出される熱媒液2の温度が板状容器14に収容された蓄冷材の融点以上の温度に調整できるのであれば、冷却装置60は停止していてもよい。蓄熱槽30に戻された熱媒液2は、架台50の天板52の下方に形成されたスペース42に流入し、複数の蓄冷ユニット10において収容箱12の内部の複数の板状容器14の周囲を流れる。これにより、熱媒液2と板状容器14との間で熱交換が行われる。その結果、流路45における熱媒液2の流れの上流側の蓄冷ユニット10から順番に、板状容器14の内部の蓄冷材の温度がその融点以上の温度に上がり、蓄冷材が固体から液体へ相変化する。これにより、蓄熱槽30において、潜熱として蓄えられた冷熱が放出される。蓄冷ユニット10から流出して流路45を通過
した熱媒液2は、その後、流路45における熱媒液2の流れの下流側に形成された蓄熱槽30の内部の別の場所に送られる。
【0036】
一方、ポンプ71の作動により、蓄熱槽30に貯留された熱媒液2は、第二取込口76から取り込まれて冷却対象70に供給され、冷却対象70を冷却する。冷却対象70の冷却により温度が上昇した熱媒液2は、第二吐出口77から蓄熱槽30の内部に戻される。蓄冷ユニット10を通過して放冷に用いられた後の熱媒液2と、冷却対象70を冷却して温度が上昇した熱媒液2とが蓄熱槽30の内部で混合される。これにより、冷却装置60に送られる熱媒液2の温度は、蓄冷ユニット10を通過して蓄冷に用いられた後の熱媒液2の温度よりも高くなる。また、冷却対象70に送られる熱媒液2の温度は、冷却対象70を冷却して温度が上昇した熱媒液2の温度よりも低くなる。このため、混合された熱媒液2の密度は、第二吐出口77から吐出された直後の熱媒液2の密度よりも大きくなり、蓄熱槽30の内部を下降する。その後、下降した熱媒液2は、第二吐出口77より低い位置にある第二取込口76から吸い込まれ、冷却対象70に送られる。
【0037】
[1-3.効果等]
以上のように、本実施の形態において、蓄熱装置1aは、複数の蓄冷ユニット10と、蓄熱槽30とを備えている。蓄冷ユニット10は、複数の板状容器14を含む。板状容器14には、液体と固体との間で相変化して冷熱を蓄えて放出する蓄冷材が収容されている。複数の板状容器14は、蓄冷ユニット10において配列されている。蓄熱槽30には、複数の蓄冷ユニット10が熱媒液2に浸漬した状態で熱媒液2が貯留されている。複数の蓄冷ユニット10は、冷熱を蓄えるとき及び冷熱を放出するときの熱媒液2の流れ方向において隣り合う第一蓄冷ユニット10a及び第二蓄冷ユニット10bを含む。第二蓄冷ユニット10bにおける複数の板状容器14の配列方向D3は、第一蓄冷ユニット10aにおける複数の板状容器14の配列方向D2と交差している。
【0038】
これにより、上流側の蓄冷ユニット10における熱媒液2の流量分布が不均一であっても、下流側の蓄冷ユニット10を熱媒液2が流れることにより熱媒液2が再分配され、熱媒液2の流量分布が均一化される。これにより、複数の蓄冷ユニット10において熱媒液2の流量分布が均一になりやすく、板状容器14に収容された蓄冷材が十分に融解でき、又は、凝固できる。その結果、蓄冷材の単位体積当たりの蓄熱量が高くなりやすい。
【0039】
本実施の形態のように、蓄熱装置1aにおいて、第二蓄冷ユニット10bにおける複数の板状容器14の配列方向D3は、第一蓄冷ユニット10aにおける複数の板状容器14の配列方向と直交していてもよい。これにより、熱媒液2が所望の状態で再分配され、複数の蓄冷ユニット10において熱媒液2の流量分布がより確実に均一になりやすい。
【0040】
本実施の形態のように、蓄熱装置1aにおいて、板状容器14は、平板状であってもよい。これにより、熱媒液2が所望の状態で再分配される。加えて、熱媒液2の流れの動圧が保たれやすい。このため、複数の蓄冷ユニット10において熱媒液2の流量分布がより確実に均一になりやすい。
【0041】
本実施の形態のように、蓄熱装置1aは、冷熱を蓄えるとき及び冷熱を放出するときに熱媒液2の流れ方向に熱媒液2が流れる流路45を形成する仕切りを備えていてもよい。複数の蓄冷ユニット10は、流路45に配置されていてもよい。これにより、流路45を流れる熱媒液2の流れにおいて、熱媒液2の流量分布が均一になりやすく、より確実に、板状容器14に収容された蓄冷材が十分に融解でき、又は、凝固できる。
【0042】
本実施の形態によれば、以下(I)及び(II)の工程及び、(III)の事項を含む熱交
換方法を提供できる。
(I)液体と固体との間で相変化して冷熱を蓄えて放出する蓄冷材が収容された複数の板状容器14を含む複数の蓄冷ユニット10を熱媒液2に浸漬させる。
(II)複数の蓄冷ユニット10のそれぞれにおいて配列された複数の板状容器14の周囲を通過する熱媒液2の流れを生じさせる。これにより、熱媒液2の流れ方向において隣り合うとともに複数の蓄冷ユニット10に含まれる第一蓄冷ユニット10a及び第二蓄冷ユニット10bを通過する熱媒液の流れを生じさせる。
(III)第二蓄冷ユニット10bにおける複数の板状容器14の配列方向D3は、第一蓄
冷ユニット10aにおける複数の板状容器14の配列方向D2と交差している。
【0043】
(他の実施の形態)
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、実施の形態1を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用できる。また、上記実施の形態1で説明した各構成要素を組み合わせて、新たな実施の形態とすることも可能である。そこで、以下、他の実施の形態を例示する。
【0044】
実施の形態1では、第二蓄冷ユニット10bにおける複数の板状容器14の配列方向D3が第一蓄冷ユニット10aにおける複数の板状容器14の配列方向D2に交差している例を説明した。複数の蓄冷ユニット10は、このような関係を有する第一蓄冷ユニット10a及び第二蓄冷ユニット10bを含んでいればよい。例えば、複数の蓄冷ユニット10は、熱媒液2の流れ方向において第一蓄冷ユニット10a及び第二蓄冷ユニット10bを含む3つ以上の蓄冷ユニット10を含んでいてもよい。加えて、3つ以上の蓄冷ユニットにおいて、隣り合った一対の蓄冷ユニットの全てにおける複数の板状容器14の配列方向が互いに交差していてもよい。一方、3つ以上の蓄冷ユニット10のうち、第一蓄冷ユニット10a及び第二蓄冷ユニット10b以外の蓄冷ユニット10における複数の板状容器14の配列方向は、その蓄冷ユニット10に隣り合った蓄冷ユニット10における複数の板状容器14の配列方向と交差していなくてもよい。
【0045】
実施の形態1では、第二蓄冷ユニット10bにおける複数の板状容器14の配列方向D3は、第一蓄冷ユニット10aにおける複数の板状容器14の配列方向D2と直交している例を説明した。第二蓄冷ユニット10bにおける複数の板状容器14の配列方向D3は、第一蓄冷ユニット10aにおける複数の板状容器14の配列方向D2と交差していればよい。したがって、第二蓄冷ユニット10bにおける複数の板状容器14の配列方向D3が第一蓄冷ユニット10aにおける複数の板状容器14の配列方向D2と直交している態様に限定されない。例えば、第二蓄冷ユニット10bにおける複数の板状容器14の配列方向D3は、第一蓄冷ユニット10aにおける複数の板状容器14の配列方向D2と45°以上の鋭角をなすように交差していてもよい。ただし、第二蓄冷ユニット10bにおける複数の板状容器14の配列方向D3が第一蓄冷ユニット10aにおける複数の板状容器14の配列方向D2と直交していると、熱媒液2が所望の状態で再分配されやすい。
【0046】
実施の形態1では、板状容器14が平板状である例を説明した。板状容器14は、板状であればよい。したがって、板状容器14の形状は平板状に限定されない。例えば、板状容器14の形状は、波板状等の非平坦面を有する板状であってもよい。この場合、板状容器14の表面積が大きくなりやすく、熱媒液2と板状容器14との間の熱交換が促進されやすい。ただし、板状容器14が平板状であると、熱媒液2が所望の状態で再分配されやすい。加えて、熱媒液2の流れの動圧が保たれやすい。
【0047】
実施の形態1では、熱媒液2の一例として水を説明した。熱媒液2は、利用温度帯において流動できるものであればよい。したがって、熱媒液2は、水に限定されない。ただし、熱媒液2として水を用いれば、熱媒液2を安価で大量に入手できるという利点がある。
【0048】
また、実施の形態1では、一例として、複数の蓄冷ユニット10が架台50の上に積層された構成を説明した。蓄冷ユニット10は、複数の板状容器14を収容できるものであればよい。したがって、複数の蓄冷ユニット10が架台50の上に積層された構成に限定されない。ただし、複数の蓄冷ユニット10が架台50の上に積層された構成を用いれば、複数の蓄冷ユニット10を個別に蓄熱槽30の内部に搬入でき、蓄冷ユニット10の取扱いが容易になるという利点がある。
【0049】
また、実施の形態1では、流路45の一例として、第一仕切り40aと第二仕切り40bとが組み合わせられた構成を説明した。流路45は、複数の蓄冷ユニット10を通過せずに熱媒液2が短絡して流れることを防止できるものであればよい。したがって、流路45は、第一仕切り40aと第二仕切り40bとが組み合わせられた構成に限定されない。ただし、第一仕切り40aと第二仕切り40bとが組み合わせられた構成によって流路45が形成されていれば、これらの仕切り用いて、蓄冷ユニット10を通過せずに熱媒液2が短絡して流れることを防止できるという利点がある。
【0050】
また、実施の形態1では、板状容器14に収容された蓄冷材の一例としてクラスレートハイドレートを説明した。板状容器14に収容された蓄冷材は、所定の温度で、液体から固体へ相変化することにより蓄冷し、かつ、固体から液体へ相変化することにより放冷するものであればよい。したがって、蓄冷材は、クラスレートハイドレートに限定されない。ただし、蓄冷材としてクラスレートハイドレートを用いれば、ゲスト物質の選択により、利用温度帯に近い温度で、液体から固体へ相変化することにより蓄冷し、かつ、固体から液体へ相変化することにより放冷できるという利点がある。
【0051】
なお、上述の実施の形態は、本開示における技術を例示するためのものであるから、特許請求の範囲またはその均等の範囲において種々の変更、置き換え、付加、省略などを行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本開示は、冷熱利用の時間帯をシフトするため、蓄冷材を収容した蓄冷ユニットが熱媒液に浸漬された蓄熱槽を備え、空調又は製造プロセスの冷却に利用する熱媒液を供給する蓄熱装置等に適用可能である。
【符号の説明】
【0053】
1a 蓄熱装置
2 熱媒液
10 蓄冷ユニット
10a 第一蓄冷ユニット
10b 第二蓄冷ユニット
14 板状容器
30 蓄熱槽
40 仕切り
45 流路
図1
図2A
図2B
図3
図4