(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022097003
(43)【公開日】2022-06-30
(54)【発明の名称】メタン製造装置
(51)【国際特許分類】
C07C 1/12 20060101AFI20220623BHJP
C07C 9/04 20060101ALI20220623BHJP
B01J 23/46 20060101ALI20220623BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20220623BHJP
【FI】
C07C1/12
C07C9/04
B01J23/46 301Z
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020210339
(22)【出願日】2020-12-18
(71)【出願人】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】100160691
【弁理士】
【氏名又は名称】田邊 淳也
(74)【代理人】
【識別番号】100157277
【弁理士】
【氏名又は名称】板倉 幸恵
(74)【代理人】
【識別番号】100182718
【弁理士】
【氏名又は名称】木崎 誠司
(72)【発明者】
【氏名】佐山 勝悟
(72)【発明者】
【氏名】山本 征治
(72)【発明者】
【氏名】神谷 隆太
(72)【発明者】
【氏名】永田 哲治
(72)【発明者】
【氏名】堀部 伸光
(72)【発明者】
【氏名】山本 佳道
【テーマコード(参考)】
4G169
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4G169BC70
4G169CB02
4G169CB62
4G169DA05
4H006AA04
4H006AB84
4H006AC11
4H006BA23
4H006BC18
4H006BC31
4H006BD81
4H006BD84
4H006BE20
4H006BE41
4H039CA11
4H039CA99
4H039CB20
4H039CD40
(57)【要約】
【課題】反応器内のガス比を安定させて、生成されるメタンの品質を確保する。
【解決手段】メタン製造装置は、メタンを製造する第1メタン化反応器と、第1メタン化反応器に供給される混合ガスにおける水素に対する二酸化炭素の比であるガス比を取得するガス比取得部と、第1メタン化反応器に供給される混合ガスの流量を調整する流量調整部と、第1メタン化反応器から排出された排出ガスが供給され、メタンを製造する第2メタン化反応器と、排出ガスが通る流路の途中に配置されたタンクと、第2メタン化反応器へと調整ガスを供給する下流側ガス供給部と、制御部と、を備え、制御部は、ガス比取得部により取得されたガス比と、排出ガスの輸送遅れの時間と、計測遅れの時間とを用いて、下流側ガス供給部から第2メタン化反応器へと供給される調整ガスの流量を決定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタン製造装置であって、
二酸化炭素と水素との混合ガスからメタンを製造する第1メタン化反応器と、
前記第1メタン化反応器に供給される前記混合ガスのガス比であって、水素に対する二酸化炭素の比であるガス比を取得するガス比取得部と、
前記第1メタン化反応器に供給される前記混合ガスの流量を調整する流量調整部と、
前記第1メタン化反応器から排出された排出ガスが供給され、前記排出ガスからメタンを製造する第2メタン化反応器と、
前記排出ガスが通る流路の途中に配置されたタンクと、
前記第2メタン化反応器へと二酸化炭素または水素を供給する下流側ガス供給部と、
前記第2メタン化反応器に供給される二酸化炭素または水素の流量を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記ガス比取得部により取得されたガス比と、前記タンクにより発生する前記排出ガスの輸送遅れの時間と、前記ガス比取得部がガス比を取得した時点からガス比が同定されるまでに発生する計測遅れの時間とを用いて、前記下流側ガス供給部から前記第2メタン化反応器へと供給される二酸化炭素または水素の流量である下流側流量を決定する、メタン製造装置。
【請求項2】
請求項1に記載のメタン製造装置であって、
前記制御部は、
前記輸送遅れの時間から前記計測遅れの時間を差し引いた差分時間と、現在から前記差分時間だけ前の時刻において前記ガス比取得部により取得されたガス比と、を用いて、前記下流側流量を決定する、メタン製造装置。
【請求項3】
請求項1に記載のメタン製造装置であって、さらに、
前記第1メタン化反応器へと二酸化炭素または水素を供給する上流側ガス供給部を備え、
前記制御部は、前記ガス比取得部により取得されたガス比を用いて、前記上流側ガス供給部から前記第1メタン化反応器へと供給される二酸化炭素または水素の流量である上流側流量を決定する、メタン製造装置。
【請求項4】
請求項3に記載のメタン製造装置であって、
前記制御部は、
前記輸送遅れの時間から前記計測遅れの時間を差し引いた差分時間と、現在から前記差分時間だけ前の時刻において前記ガス比取得部により取得されたガス比と、前記上流側流量とを用いて、前記下流側流量を決定する、メタン製造装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載のメタン製造装置であって、さらに、
前記第1メタン化反応器に供給される前記混合ガスの流量が減少するにつれて、前記タンク内がガスを収容可能な容積を小さくするタンク容積調整部を備える、メタン製造装置。
【請求項6】
請求項5に記載のメタン製造装置であって、
前記タンク容積調整部は、前記タンク内の水の量を変化させることにより、前記タンク内がガスを収容可能な容積を変化させる、メタン製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メタン製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工場などから排出される混合ガスに含まれる二酸化炭素(CO2)からメタンを製造するメタン製造装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載されたメタン製造装置では、工場から排出された混合ガス中のCO2を吸着材により吸着させ、CO2を吸着した吸着材に対して、パージガスとしての水素(H2)を噴射することにより、混合ガスに含まれるCO2を分離している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
工場などから排出される混合ガスには、CO2に加えてH2も含まれる場合がある。また、工場から排出される混合ガス中のCO2に対するH2のガス比は、時間と共に変動する場合がある。ここで、メタン製造装置の生成ガス組成はCO2に対するH2のガス比の影響を強く受ける。例えば、ガス比が4.0、かつ、CO2転化率が99パーセント(%)の場合に、生成ガス中のメタン濃度は95%になる。一方で、ガス比が4.1、かつ、CO2転化率が99%の場合に、生成ガス中のメタン濃度は87%まで低下する。そのため、メタン化製造装置により生成されるメタンの品質を保障するには、メタン製造装置に供給される混合ガス中のガス比を安定化させることが好ましい。それに対し、特許文献1に記載されたメタン製造装置では、工場等から供給される混合ガス中のガス比が変動することについて考慮されていない。
【0005】
本発明は、上述した課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、H2とCO2のガス比が不安定な混合ガスが反応器へと供給されている場合であっても、反応器内のガス比を安定させて、生成されるメタンの品質を確保することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現できる。
【0007】
(1)本発明の一形態によれば、メタン製造装置が提供される。このメタン製造装置は、二酸化炭素と水素との混合ガスからメタンを製造する第1メタン化反応器と、前記第1メタン化反応器に供給される前記混合ガスのガス比であって、水素に対する二酸化炭素の比であるガス比を取得するガス比取得部と、前記第1メタン化反応器に供給される前記混合ガスの流量を調整する流量調整部と、前記第1メタン化反応器から排出された排出ガスが供給され、前記排出ガスからメタンを製造する第2メタン化反応器と、前記排出ガスが通る流路の途中に配置されたタンクと、前記第2メタン化反応器へと二酸化炭素または水素を供給する下流側ガス供給部と、前記第2メタン化反応器に供給される二酸化炭素または水素の流量を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記ガス比取得部により取得されたガス比と、前記タンクにより発生する前記排出ガスの輸送遅れの時間と、前記ガス比取得部がガス比を取得した時点からガス比が同定されるまでに発生する計測遅れの時間とを用いて、前記下流側ガス供給部から前記第2メタン化反応器へと供給される二酸化炭素または水素の流量である下流側流量を決定する。
【0008】
この構成によれば、ガス比取得部が混合ガスのガス比を検出してから取得するまでに要する計測遅れ時間と、混合ガスのガス比が検出されてから当該混合ガスが排出ガスとして第2メタン化反応器へと流入するまでに要する輸送遅れ時間とが考慮されて、第2メタン化反応器へと供給されるCO2またはH2の流量が決定されている。このように、遅れ時間が考慮されることにより、第2メタン化反応器へと供給される排出ガスの実際のガス比により近いガス比が制御部により算出される。これにより、計測遅れ時間は、ガス輸送遅れ時間により相殺される。この結果、これらの遅れ時間が考慮されていない場合と比較して、第2メタン化反応器内のガス比は、目標であるガス比により近く、メタン製造装置の生成ガス中のメタン濃度が向上する。すなわち、本構成のメタン製造装置によれば、メタン製造装置に対してガス比が不安定な混合ガスが供給されている場合でも、第2メタン化反応器内のガス比を安定させて、生成されるメタンの品質を確保できる。また、タンクの容量は、ガス比取得部がガス比を検出してから取得するまでの時間分だけ第2メタン化反応器への排出ガスの流入を送らせる容量で済む。そのため、タンクの大きさは、第2メタン化反応器へと供給される排出ガスのガス比の変動を緩和させればよく、サージタンクのような大容量の大きさは不要である。これにより、本構成のメタン製造装置によれば、第1メタン化反応器と第2メタン化反応器との間に配置されたサージタンクにより排出ガスのガス比の変動を緩和しているメタン製造装置と比較して、生成されるメタンの品質を確保した上で、メタン製造装置の小型化を実現できる。
【0009】
(2)上記形態のメタン製造装置において、前記制御部は、前記輸送遅れの時間から前記計測遅れの時間を差し引いた差分時間と、現在から前記差分時間だけ前の時刻において前記ガス比取得部により取得されたガス比と、を用いて、前記下流側流量を決定してもよい。
この構成によれば、制御部は、第2メタン化反応器へと供給される排出ガスの実際のガス比により近いガス比に基づいて、第2メタン化反応器へと供給するCO2またはH2の流量を決定できる。これにより、本構成のメタン製造装置が生成するガス中のメタン濃度がより向上する。
【0010】
(3)上記形態のメタン製造装置において、さらに、前記第1メタン化反応器へと二酸化炭素または水素を供給する上流側ガス供給部を備え、前記制御部は、前記ガス比取得部により取得されたガス比を用いて、前記上流側ガス供給部から前記第1メタン化反応器へと供給される二酸化炭素または水素の流量である上流側流量を決定してもよい。
【0011】
(4)上記形態のメタン製造装置において、前記制御部は、前記輸送遅れの時間から前記計測遅れの時間を差し引いた差分時間と、現在から前記差分時間だけ前の時刻において前記ガス比取得部により取得されたガス比と、前記上流側流量とを用いて、前記下流側流量を決定してもよい。
この構成によれば、第1メタン化反応器と第2メタン化反応器との両方に流量が制御されたCO2またはH2が供給される。そのため、本構成のメタン製造装置では、第1メタン化反応器には計測遅れ時間を考慮していない大まかな流量のCO2またはH2が供給され、第2メタン化反応器には計測遅れ時間等を考慮して細かく調整された流量のCO2またはH2が供給される。この結果、第2メタン化反応器内のガス比をより目標のガス比に近づけることができる。これにより、本構成のメタン製造装置が生成するガス中のメタン濃度がより向上する。
【0012】
(5)上記形態のメタン製造装置において、さらに、前記第1メタン化反応器に供給される前記混合ガスの流量が減少するにつれて、前記タンク内がガスを収容可能な容積を小さくするタンク容積調整部を備えていてもよい。
第1メタン化反応器に供給される混合ガスの流量が最大のときに合わせてタンクの全容量が設定された場合に、混合ガスの流量が少ない場合の輸送遅れ時間は、混合ガスの流量が最大の場合の時間よりも長くなり、制御の正確性が低下する。タンク容積調整部はこの混合ガスの流量が少ない場合の輸送遅れ時間の長期化を防ぐことができる。
【0013】
(6)上記形態のメタン製造装置において、前記タンク容積調整部は、前記タンク内の水の量を変化させることにより、前記タンク内がガスを収容可能な容積を変化させてもよい。
この構成のタンクでは、水を利用して容易にタンク内の容積を変更できる。
【0014】
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能であり、例えば、ガス供給装置、メタン製造装置、メタン製造システム、水素または二酸化炭素の流量制御装置、ガス供給方法、メタン製造方法、ガス供給装置およびメタン製造装置の制御方法、これら装置や方法を実行するためのコンピュータプログラム、このコンピュータプログラムを配布するためのサーバ装置、コンピュータプログラムを記憶した一時的でない記憶媒体等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態としてのメタン製造装置および混合ガス供給部のブロック図である。
【
図2】第2反応器へとH
2が供給されるまでのフローチャートである。
【
図3】比較例のメタン製造装置および混合ガス供給部のブロック図である。
【
図4】第1実施形態のメタン製造装置と比較例のメタン製造装置とについての効果の説明図である。
【
図5】第1実施形態のメタン製造装置と比較例のメタン製造装置とについての効果の説明図である。
【
図6】第1実施形態のメタン製造装置と比較例のメタン製造装置とについての効果の説明図である。
【
図7】第2実施形態のメタン製造装置および混合ガス供給部のブロック図である。
【
図8】第1反応器へと供給されるH
2の流量の説明図である。
【
図9】第2実施形態における流量のH
2が供給されるまでのフローチャートである。
【
図10】変形例における遅れ生成タンクの説明図である。
【
図11】変形例における遅れ生成タンクの説明図である。
【
図12】変形例における第2反応器へと供給されるH
2の流量について説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<第1実施形態>
図1は、本発明の一実施形態としてのメタン製造装置100および混合ガス供給部50のブロック図である。メタン製造装置100は、混合ガス供給部50から供給される混合ガス中の二酸化炭素(CO
2)と水素(H
2)とにメタン化反応を生じさせることにより、生成ガスとしてのメタン(CH
4)を製造する。混合ガス供給部50は工場などであり、供給される混合ガスは、工場などの燃焼ガスである。本実施形態では、混合ガス中に含まれるCO
2およびH
2の量は、時間と共に変動する。すなわち、混合ガス中のCO
2の量に対するH
2の量であるガス比ξ
M(H
2/CO
2比)が不安定である。
【0017】
図1に示されるように、第1実施形態のメタン製造装置100は、CO
2とH
2とを含む混合ガスからメタンを製造する上流側の第1反応器(第1メタン化反応器)4および下流側の第2反応器(第2メタン化反応器)7と、第1反応器4に供給される混合ガスの流量を調整するマスフローコントローラ(流量調整部)MFC0と、マスフローコントローラMFC0の上流側で第1反応器4に供給される混合ガスのガス比ξ
Mを取得するガス分析計(ガス比取得部)3と、混合ガス供給部50とマスフローコントローラMFC0との間に配置されたサージタンク10と、第1反応器4から排出される排出ガス(以降、単に「排ガス」ともいう)中の水蒸気を凝縮する第1凝縮器5と、第2反応器7へと供給される排ガスが通る流路の途中に配置された遅れ生成タンク(タンク)6と、第2反応器7から排出される排ガス中の水蒸気を凝縮する第2凝縮器8と、第2反応器7へとH
2を追加的に供給する下流側ガス供給部2と、下流側ガス供給部2から第2反応器7へと供給されるH
2の流量を調整するマスフローコントローラMFC2と、ガス分析計3が取得したガス比ξ
Mを用いて2つのマスフローコントローラを制御する制御部1と、を備えている。なお、本実施形態では、混合ガス供給部50は、上流側に配置された吸着器(不図示)を介した混合ガスをメタン製造装置100へと供給するため、混合ガスには、CO
2とH
2とのみが含まれている。また、混合ガス供給部50からメタン製造装置へと供給される混合ガスのガス比は、4.0よりも小さい範囲で変動する。
【0018】
第1反応器4内および第2反応器7内には、メタン化反応を生じさせるメタン化触媒が収容されている。メタン化触媒は、第1反応器4内および第2反応器7内のCO2およびH2に対して、下記式(1)で示されるメタン化反応を生じさせることにより、メタンを生成する。メタン化触媒としては、ルテニウムを含む複合体などが挙げられる。なお、他の実施形態では、ルテニウム以外の周知のメタン化触媒が用いられてもよい。
【0019】
【数1】
上記式(1)から、生成ガス中のメタン濃度を向上させるためには、混合ガスのガス比ξ
Mが4.0に近いほど好ましいことがわかる。
【0020】
第1反応器4内のメタン化反応により生成されたメタンと、未反応のCO2およびH2とを含む排ガスは、第1反応器4から排出されると、第1凝縮器5により常温(摂氏25度(℃))程度まで冷却される。排ガスが冷却されることにより、第1凝縮器5により水蒸気から凝縮された水が、排ガスから分離される。水蒸気が分離されたメタンを含む排ガスは、遅れ生成タンク6を経由して第2反応器7へと供給される。第2反応器7内のメタン化反応により生成されたメタンを含むガスは、第1凝縮器5と同じ構成を有する第2凝縮器8により水蒸気が分離される。水蒸気が分離されたメタンを含むガスは、生成ガスとして図示されない他の装置または貯蔵タンクへと供給される。
【0021】
遅れ生成タンク6は、流路よりも大きな容積を有するタンクである。遅れ生成タンク6があることにより、ない場合と比較して、第1反応器4から排出された排ガスが第2反応器7に流入するまでの時間が長くなる。第1反応器4の上流側に配置されたサージタンク10は、混合ガス供給部50から供給された混合ガスを一時的に貯留するタンクである。
【0022】
ガス分析計3は、混合ガス中のCO2濃度を検出し、検出したCO2濃度を用いてガス比ξMを同定する。ガス分析計3は、下記式(2)に検出したCO2濃度を代入することにより、ガス比ξMを算出する。
【0023】
【数2】
X
CO2(t):混合ガス中のCO
2濃度
ガス分析計3は、混合ガス中のCO
2濃度を検出した時点からガス比ξ
Mを同定するまでに、計測遅れ時間τ
delay_M(例えば10秒)を要する。一方で、遅れ生成タンク6があるため、ガス分析計3によりガス比ξ
Mが検出された混合ガスが第2反応器7へと供給されるまでのガス輸送遅れ時間τ
delay_Tが発生する。
【0024】
本実施形態の制御部1は、ガス分析計3により同定されたガス比ξMと、計測遅れ時間τdelay_Mと、ガス輸送遅れ時間τdelay_Tとを用いて、下流側ガス供給部2から第2反応器7へと供給されるH2の流量(下流側流量)Q2を制御する。具体的には、制御部1は、下記式(3)を用いてH2の流量Q2を決定する。
【0025】
【数3】
A:制御定数
上記式(3)における制御定数Aは、制御部1がマスフローコントローラMFC0を制御することにより、第1反応器4へと供給される混合ガスの流量Q0に応じて決まる定数である。上記式(3)に示されるように、制御部1は、ガス輸送遅れ時間τ
delay_Tから計測遅れ時間τ
delay_Mを差し引いた差分時間を用いて、H
2の流量Q2を算出している。制御部1は、マスフローコントローラMFC2を制御することにより、流量Q2のH
2を第2反応器7へと供給する。
【0026】
図2は、第2反応器7へとH
2が供給されるまでのフローチャートである。
図2に示されるフローでは、初めに、ガス分析計3が混合ガス中のCO
2濃度を検出する(ステップS1)。ガス分析計3は、検出したCO2濃度を上記式(2)に代入することにより、ガス比ξ
Mを同定する(ステップS2)。制御部1は、同定されたガス比ξ
Mを用いて、第2反応器7へと供給するH
2の流量Q2を算出する(ステップS3)。制御部1は、上記式(3)に、同定されたガス比ξ
Mと、ガス輸送遅れ時間
delay_Tと、計測遅れ時間τ
delay_Mとを代入することにより、流量Q2を算出する。制御部1は、マスフローコントローラMFC2を制御することにより、算出した流量Q2のH
2を第2反応器7へと供給する(ステップS4)。その後、制御部1は、終了操作を受け付けるなどの処理終了を判定する(ステップS5)。制御部1は、終了操作を受け付けていない場合には(ステップS5:NO)、ステップS1以降の処理を繰り返す。制御部1は、終了操作等を受け付けた場合には(ステップS5:YES)、各種制御処理を終了する。
【0027】
<比較例>
図3は、比較例のメタン製造装置100xおよび混合ガス供給部50のブロック図である。比較例のメタン製造装置100xでは、第1実施形態のメタン製造装置100と比較して、遅れ生成タンク6を備えていない点と、制御部1xがガス輸送遅れ時間τ
delay_T等とは無関係に第2反応器7へと供給するH
2の流量Q2xを算出している点とが異なる。そのため、比較例では、第1実施形態と異なる点について説明し、第1実施形態と同じ構成および制御についての説明を省略する。
【0028】
比較例の制御部1xは、下記式(4)にガス分析計3により同定されたガス比ξMを代入することにより、H2の流量Q2xを決定する。
【0029】
【数4】
Ax:制御定数
制御定数Axは、第1実施形態の制御定数Aと同様に、第1反応器4へと供給される混合ガスの流量Q0に応じて決まる定数である。上記式(4)に示されるように、比較例の制御部1xは、第1実施形態におけるガス輸送遅れ時間τ
delay_Tおよび計測遅れ時間τ
delay_Mを用いずに、ガス比ξ
Mを用いて流量Q2xを算出している。なお、比較例のメタン製造装置100xでは、遅れ生成タンク6がないため、第1反応器4からの排ガスが第2反応器7へと流入するまでの時間が第1実施形態よりも短い。
【0030】
図4ないし
図6は、第1実施形態のメタン製造装置100と比較例のメタン製造装置100xとについての効果の説明図である。
図4には、横軸に時間(min)を取った場合において、混合ガス供給部50から供給される混合ガスのガス比ξ
Mの時間推移を表す曲線Cξ
Mが示されている。
【0031】
図5には、横軸に
図4と同じスケールの時間(min)を取った場合において、第2反応器7へと供給される排ガスのガス比の時間推移を表す曲線Cξ
_100,Cξ
_100xが示されている。実線で示された曲線Cξ
_100は、第1実施形態のメタン製造装置100における排ガスのガス比の時間推移を表している。破線で示された曲線Cξ
_100xは、比較例のメタン製造装置100xにおける排ガスのガス比の時間推移を表している。
【0032】
図6には、横軸に
図4と同じスケールの時間(min)を取った場合において、メタン製造装置100,100xから生成される生成ガス中のメタン濃度(%)の時間推移を表す曲線C
CH4_100,C
CH4_100xが示されている。実線で示された曲線C
CH4_100は、第1実施形態のメタン製造装置100のメタン濃度の時間推移を表している。破線で示された曲線C
CH4_100xは、比較例のメタン製造装置100xのメタン濃度の時間推移を表している。
【0033】
図5に示されるように、第1実施形態の曲線Cξ
_100の方が、比較例の曲線Cξ
_100xよりも、メタン化反応の目標となるガス比4.0に近い値で推移している。その結果、
図6に示されるように、生成ガス中のメタン濃度は、第1実施形態の曲線C
CH4_100の方が、比較例の曲線C
CH4_100xよりも100%に近くなる。
【0034】
以上説明したように、第1実施形態のメタン製造装置100は、CO
2とH
2とを含む混合ガスからメタンを製造する第1反応器4および第2反応器7と、第1反応器4に供給される混合ガスのガス比ξ
Mを検出するガス分析計3と、第2反応器7へと供給される排ガスが通る流路の途中に配置された遅れ生成タンク6と、第2反応器7へとH
2を供給する下流側ガス供給部2と、ガス分析計3が検出したガス比ξ
Mを用いて第2反応器7へと供給するH
2の流量Q2を制御する制御部1と、を備えている。制御部1は、ガス分析計3により同定されたガス比ξ
Mと、計測遅れ時間τ
delay_Mと、ガス輸送遅れ時間τ
delay_Tとを用いて、第2反応器7へと供給されるH2の流量Q2を決定する。すなわち、本実施形態のメタン製造装置100では、ガス分析計3が混合ガスのガス比ξ
Mを検出してから同定するまでに要する計測遅れ時間τ
delay_Mと、混合ガスのガス比ξ
Mが検出されてから当該混合ガスが第2反応器7へと流入するまでに要するガス輸送遅れ時間τ
delay_Tとが考慮されて、第2反応器7へと供給されるH
2の流量Q2が決定されている。このように、遅れ時間が考慮されることにより、第2反応器7へと供給される排ガスの実際のガス比により近いガス比が制御部1により算出される。これにより、計測遅れ時間τ
delay_Mは、ガス輸送遅れ時間τ
delay_Tにより相殺される。この結果、これらの遅れ時間が考慮されていない比較例と比較して、
図5に示されるように、本実施形態の第2反応器7内のガス比は、比較例よりも目標である4.0により近く、
図6に示されるように、生成ガス中のメタン濃度が向上する。すなわち、本実施形態のメタン製造装置100によれば、メタン製造装置100に対してガス比ξ
Mが不安定な混合ガスが供給されている場合でも、第2反応器7内のガス比を安定させて、生成されるメタンの品質を確保できる。また、遅れ生成タンク6の容量は、ガス分析計3がガス比ξ
Mを検出してから同定するまでの時間分だけ第2反応器7への混合ガスの流入を送らせる容量で済む。そのため、遅れ生成タンク6の大きさは、第2反応器7へと供給される排ガスのガス比の変動を緩和させればよく、サージタンクのような大容量の大きさは不要である。これにより、本実施形態のメタン製造装置100によれば、第1反応器4と第2反応器7との間に配置されたサージタンクにより混合ガスのガス比の変動を緩和しているメタン製造装置と比較して、生成されるメタンの品質を確保した上で、メタン製造装置100の小型化を実現できる。
【0035】
また、本実施形態の制御部1は、上記式(3)に示されるように、ガス輸送遅れ時間τdelay_Tから計測遅れ時間τdelay_Mを差し引いた差分時間を用いて、H2の流量Q2を算出している。そのため、制御部1は、第2反応器7へと供給される排ガスの実際のガス比により近いガス比に基づいて、第2反応器7へと供給するH2の流量Q2を決定できる。これにより、メタン製造装置100からの生成ガス中のメタン濃度をより向上させることができる。
【0036】
<第2実施形態>
図7は、第2実施形態のメタン製造装置100aおよび混合ガス供給部50のブロック図である。第2実施形態のメタン製造装置100aでは、第1実施形態のメタン製造装置100と比較して、上流側ガス供給部11およびマスフローコントローラMFC1を備える点と、制御部1aがマスフローコントローラMFC0,MFC2に加えてマスフローコントローラMFC1を制御する点とが異なる。そのため、第2実施形態では、第1実施形態と異なる点について説明し、第1実施形態と同じ構成および制御についての説明を省略する。
【0037】
図7に示されるように、第2実施形態のメタン製造装置100aは、第1反応器4へとH
2を追加的に供給する上流側ガス供給部11と、上流側ガス供給部11から第1反応器4へと供給されるH
2の流量を調整するマスフローコントローラMFC1とを備えている。第2実施形態の制御部1aは、ガス分析計3により取得されたガス比ξ
Mを用いて、上流側ガス供給部11から第1反応器4へと供給されるH
2の流量(上流側流量)Q1を制御する。
【0038】
図8は、第1反応器4へと供給されるH
2の流量Q1の説明図である。
図8に示されるテーブルのように、第2実施形態の制御部1aは、ガス分析計3により取得されたガス比ξ
Mに応じて、第1反応器4へと供給するH
2の流量Q1が予め決められている。なお、
図8のテーブルは、メタン製造装置100aに対しての実験により予め作成されたテーブルである。なお、他の実施形態では、H
2の流量Q1は、例えば上記式(3)のような式を用いて決定されてもよいし、その他の周知の算出方法等によって決定されてもよい。
【0039】
第2実施形態の制御部1aは、決定したH2の流量Q1と、ガス輸送遅れ時間τdelay_Tから計測遅れ時間τdelay_Mを差し引いた差分時間と、ガス分析計3により取得されたガス比ξMとを用いて、第2反応器7へと供給するH2の流量(下流側流量)Q2aを決定する。具体的には、制御部1aは、下記式(5)に各数値を代入することにより、H2の流量Q2aを算出する。
【0040】
【数5】
Aa,B:制御定数
制御定数Aa,Bは、第1反応器4へと供給される混合ガスの流量Q0に応じて決まる定数である。
【0041】
第2実施形態では、ガス輸送遅れ時間τdelay_Tとして、下記式(6)の算出値を用いる。
【0042】
【数6】
V
delay:遅れ生成タンクの容積(L)
p:遅れ生成タンクの運転圧力(atm)
C
1:第1反応器の代表CO
2転化率
ξ
rep:混合ガスの代表ガス比
第1反応器4の代表CO
2転化率C
1および混合ガスの代表ガス比ξ
repは、予め設定される定数である。第2実施形態では、代表ガス比ξ
repとして、混合ガス供給部50から供給される混合ガスの所定時間内におけるガス比ξ
Mの平均値を用いている。代表CO
2転化率C
1は、代表ガス比ξ
repの混合ガスが第1反応器4へと供給された場合に、第1反応器4内において混合ガス中のCO
2がメタンへと転換される割合である。代表CO
2転化率C
1および代表ガス比ξ
repは、経験的に前もって定められる値であり、他の実施形態では異なる方法によって定められてもよい。
【0043】
図9は、第2実施形態における流量Q2のH
2が供給されるまでのフローチャートである。
図9に示されるフローでは、ガス分析計3は、混合ガス中のCO
2濃度を検出し(ステップS11)、ガス比ξ
Mを同定する(ステップS12)。制御部1aは、同定されたガス比ξ
Mを
図8のテーブルに照合することにより、第1反応器4へと供給するH
2の流量Q1を決定する(ステップS13)。制御部1aは、決定した流量Q1と、同定されたガス比ξ
Mと、ガス輸送遅れ時間
delay_Tと、計測遅れ時間τ
delay_Mとを上記式(5)に代入することにより、第2反応器7へと供給するH
2の流量Q2aを算出する(ステップS14)。制御部1aは、算出した流量Q2aのH
2を第2反応器7へと供給する(ステップS15)。その後、ステップS16の処理終了の判定が行われる。
【0044】
以上説明したように、第2実施形態のメタン製造装置100aは、第1反応器4へとH2を供給する上流側ガス供給部11を備えている。制御部1aは、ガス分析計3により取得されたガス比ξMを用いて、上流側ガス供給部11から第1反応器4へと供給されるH2の流量Q1を制御する。すなわち、第2実施形態では、第1反応器4と第2反応器7との両方に流量Q1,Q2aが制御されたH2が供給される。そのため、第2実施形態のメタン製造装置100aでは、第1反応器4には計測遅れ時間τdelay_Mを考慮していない大まかな流量Q1のH2が供給され、第2反応器7には計測遅れ時間τdelay_M等を考慮して細かく調整された流量Q2aのH2が供給される。この結果、第2反応器7内のガス比をより目標のガス比に近づけることができる。これにより、メタン製造装置100aの生成ガス中のメタン濃度をより向上させることができる。
【0045】
また、第2実施形態の制御部1aは、上記式(5)に示されるように、ガス輸送遅れ時間τdelay_Tから計測遅れ時間τdelay_Mを差し引いた差分時間と、第1反応器4へと供給されたH2の流量Q1とを用いて、第2反応器7へと供給するH2の流量Q2aを決定している。そのため、制御部1aは、第2反応器7へと供給される排ガスの実際のガス比により近いガス比に基づいて、第2反応器7へと供給するH2の流量Q2aを決定できる。これにより、第2実施形態のメタン製造装置100aからの生成ガス中のメタン濃度をより向上させることができる。
【0046】
<上記実施形態の変形例>
本発明は上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0047】
[変形例1]
上記第1実施形態および第2実施形態のメタン製造装置100,100aは、本発明の一実施形態としての一例であり、メタン製造装置100が備える構成および実行する制御等については、種々変形可能である。例えば、メタン製造装置100は、2つの凝縮器5,8およびサージタンク10を備えていなくてもよく、第1凝縮器5がメタン製造装置100とは異なる別のシステムに備えられていてもよい。マスフローコントローラMFC0,MFC1,MFC2は、流量調整装置としての一例であり、流量調整可能な周知の装置を適用できる。上流側ガス供給部11および下流側ガス供給部2としては、H2を貯留している水素タンク等を適用でき、上流側ガス供給部11と下流側ガス供給部2とが1つの水素タンクで構成されていてもよい。制御部1,1aは、1つの制御部であったが、複数の制御部に分割されて、各種機能が分割されていてもよいし、複数の制御部のそれぞれが各部を制御してもよい。メタン製造装置100は、3つ以上のメタン化反応器を備えていてもよい。
【0048】
また、調整ガス供給部として、H2を供給する上流側ガス供給部11および下流側ガス供給部2の代わりに、CO2を供給する上流側ガス供給部および下流側ガス供給部が備えられていてもよい。上記第1実施形態および第2実施形態では、混合ガス供給部50から供給される混合ガスのガス比ξMが4.0よりも小さい前提であったが、ガス比ξMが4.0以上の場合には、上流側ガス供給部および下流側ガス供給部は、CO2を供給する方が好ましい。
【0049】
ガス分析計3は、混合ガス中のCO2の濃度を検出し、混合ガスのガス比ξMを同定したが、その他の検出器が用いられてもよい。例えば、ガス分析計3の代わりに、混合ガス中のH2の濃度を測定する装置によりガス比ξMが同定されてもよいし、CO2とH2とのいずれの濃度も検出されてガス比ξMが同定されてもよい。混合ガス供給部50は、吸着器を備えておらず、CO2およびH2以外のガスを含んでいる混合ガスをメタン製造装置100に供給してもよい。この場合に、ガス分析計は、混合ガス中におけるH2に対するCO2のガス比ξMを取得できる機能を有していればよい。
【0050】
[変形例2]
図10は、変形例における遅れ生成タンク6bの説明図である。
図10には、変形例の遅れ生成タンク6bの概略断面図が示されている。変形例の遅れ生成タンク6は、第1反応器4からの排ガスが通過する第1凝縮器5と一体になったタンクである。変形例の遅れ生成タンク6bでは、凝縮された水が生成水としてタンク内に溜まり、生成水が増加するに従いタンク内がガスを収容可能な有効容積V
delayが減少する。
図10に示されるように、変形例の遅れ生成タンク6bは、生成水の液面高さを検出するレベルセンサSNを備えている。そのため、この変形例の遅れ生成タンク6bの有効容積V
delayは、
図10に示されるように、下記式(7)により表される。
【0051】
【数7】
V
tank:遅れ生成タンク内の全容積
V
w:遅れ生成タンク内の水量
この変形例では、より正確な遅れ生成タンク6b内の有効容積V
delayが算出されるため、ガス輸送遅れ時間τ
delay_Tがより正確に算出され、第2反応器7内のガス比がさらに安定して、メタン製造装置により生成されるメタンの品質が向上する。
【0052】
[変形例3]
図11は、変形例における遅れ生成タンク6cの説明図である。
図11に示されるように、この変形例の遅れ生成タンク6cは、
図10に示された遅れ生成タンク6bに対して、タンク内の水の給水および排水の機構を備えたタンクである。
【0053】
遅れ生成タンク6cは、生成水が溜まる凝縮器一体型タンク66と、凝縮器一体型タンク66へと給水および排水を行う水を貯蔵している水タンク63と、凝縮器一体型タンク66から水タンク63へと排水を行うためのポンプ(タンク容積調整部)62と、凝縮器一体型タンク66から水タンク63への方向のみの水の流入を許可する逆止弁61と、水タンク63から凝縮器一体型タンク66へと給水を行うためのポンプ(タンク容積調整部)65と、水タンク63から凝縮器一体型タンク66への方向のみの水の流入を許可する逆止弁64と、を備えている。この変形例では、図示されていない制御部が、第1反応器4へと供給される混合ガスの流量Q0に応じて、ポンプ62,65を制御する。これにより、ポンプ62,65は、凝縮器一体型タンク66内の水の量を変化させることにより、タンク内の有効容積Vdelayを変化させる。この変形例では、ポンプ62,65は、第1反応器4に供給される混合ガスの流量Q0が減少するにつれて、タンク内の有効容積Vdelayを小さくする。
【0054】
この変形例のポンプ62,65は、混合ガス供給部50から第1反応器4へと供給される混合ガスの流量Q0が減少するにつれて、タンク内の有効容積Vdelayを小さくする。この変形例によれば、マスフローコントローラMFC0の流量Q0が最大の時(全負荷時)と流量Q0が小さい時(低負荷時)とのガス輸送遅れ時間τdelayを揃えることができる。これにより低負荷時においてもメタン製造装置の生成ガス中のメタン濃度を向上させることができる。
【0055】
また、この変形例の遅れ生成タンク6cでは、ポンプ62,65が凝縮器一体型タンク66内の水の量を変化させることにより、凝縮器一体型タンク66内の有効容積Vdelayを変化させている。そのため、この変形例の遅れ生成タンク6cでは、水を利用して容易に有効容積Vdelayの容積が変更される。
【0056】
この変形例の遅れ生成タンク6cでは、水以外の液体を用いて有効容積Vdelayの容積が変更されてもよい。また、液体を用いず、かつ、凝縮器一体型ではなく、タンク底面が側面に対して上下移動することにより、有効容積Vdelayの容積が変更されてもよい。
【0057】
[変形例4]
図12は、変形例における第2反応器7へと供給されるH
2の流量Q2dについて説明図である。この変形例では、H
2の流量Q2dが、第1実施形態と第2実施形態とのいずれとも異なる方法で決定される。具体的には、H
2の流量Q2dは、下記式(8)と式(9)とを用いて
図12に示されるマップに応じて決定される。
【0058】
【数8】
【数9】
図12では、ハッチングの濃さにより流量Q2dの大小が示されており、ハッチングが濃いほど流量Q2dが多い。なお、
図12における実線は、流量Q2dが同じである等高線である。
図12に示されるように、上記式(8),(9)の算出値X,Yが小さいほど、流量Q2dが大きくなる。
【0059】
上記第1実施形態および第2実施形態では、第2反応器7へと供給されるH2の流量Q2,Q2aの算出方法として上記式(3),(5)を挙げたが、これらの算出方法は一例であり、ガス比ξ
Mと、計測遅れ時間τ
delay_Mと、ガス輸送遅れ時間τ
delay_T都を用いた範囲で、周知の算出方法および
図12のマップを用いた方法等の決定方法を適用可能である。同じように、上記第2実施形態の式(6)で示されたガス輸送遅れ時間τ
delay_Tについても、他の方法により求められてもよい。
【0060】
以上、実施形態、変形例に基づき本態様について説明してきたが、上記した態様の実施の形態は、本態様の理解を容易にするためのものであり、本態様を限定するものではない。本態様は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本態様にはその等価物が含まれる。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することができる。
【符号の説明】
【0061】
1,1a,1x…制御部
2…下流側ガス供給部
3…ガス分析計(ガス比取得部)
4…第1反応器(第1メタン化反応器)
5…第1凝縮器
6,6b,6c…遅れ生成タンク(タンク)
7…第2反応器(第2メタン化反応器)
8…第2凝縮器
10…サージタンク
11…上流側ガス供給部
50…混合ガス供給部
61,64…逆止弁
62,65…ポンプ(タンク容積調整部)
63…水タンク
66…凝縮器一体型タンク
100,100a,100x…メタン製造装置
A,Aa,Ax,B…制御定数
C1…第1反応器の代表CO2転化率
ξrep…混合ガスの代表ガス比
ξM…混合ガスのガス比
CξM…混合ガスのガス比の時間推移
CCH4_100,CCH4_100x…メタン濃度の時間推移
Cξ_100,Cξ_100x…排ガスのガス比の時間推移
MFC0…マスフローコントローラ(流量調整部)
MFC1,MFC2…マスフローコントローラ
Q0…混合ガスの流量
Q1…第1反応器へと供給されるH2の流量
Q2,Q2a,Q2d,Q2x…第2反応器へと供給されるH2の流量
SN…レベルセンサ
Vdelay…遅れ生成タンクの有効容積
Vtank…遅れ生成タンク内の全容積
Vw…遅れ生成タンク内の水量
XCO2…混合ガス中のCO2濃度
τdelay_M…計測遅れ時間
τdelay_T…ガス輸送遅れ時間(輸送遅れ時間)