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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022097014
(43)【公開日】2022-06-30
(54)【発明の名称】着脱装置
(51)【国際特許分類】
   F16C 33/78 20060101AFI20220623BHJP
   F16C 19/38 20060101ALI20220623BHJP
   B25B 27/06 20060101ALI20220623BHJP
   F16J 15/3204 20160101ALN20220623BHJP
【FI】
F16C33/78 C
F16C19/38
B25B27/06 A
F16J15/3204 201
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020210355
(22)【出願日】2020-12-18
(71)【出願人】
【識別番号】000102692
【氏名又は名称】NTN株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(72)【発明者】
【氏名】▲はま▼田 慎平
【テーマコード(参考)】
3C031
3J006
3J216
3J701
【Fターム(参考)】
3C031DD08
3J006AE12
3J006AE14
3J006AE30
3J006AE34
3J006AE42
3J006AF01
3J006CA01
3J216AA03
3J216AA14
3J216AB12
3J216BA23
3J216BA24
3J216CA01
3J216CB02
3J216CB04
3J216CB18
3J216CC03
3J216CC09
3J216CC14
3J216CC33
3J216DA01
3J216FA09
3J701AA16
3J701AA32
3J701AA43
3J701AA54
3J701AA62
3J701BA73
3J701BA80
3J701DA20
3J701EA49
3J701FA44
3J701FA46
3J701GA02
(57)【要約】
【課題】作業性の向上を図ることができ、しかも、オイルシールの取付けと取外しを兼用できる着脱装置を提供する。
【解決手段】一方のオイルシールを軸方向外方から受け体にて受けた状態で他方のオイルシールを軸方向外方から押圧部材を介して一方のオイルシール側へ押圧力を付与することによって、軸受本体の両軸方向端部へのオイルシールの取付を可能とする。他方のオイルシールの軸方向外方から押圧部材を介して一方のオイルシール側へ押圧力を付与することによって、一方のオイルシールに軸受本体から外れる軸方向外方への外力を作用させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸受本体とこの軸受本体の軸心方向開口部を密封するオイルシールとからなる軸受装置において、軸受本体にオイルシールを着脱するための着脱装置であって、
軸受本体の両軸方向端部側にオイルシールを配置して、その軸心が水平状とされた軸受装置に対して、一方のオイルシールを軸方向外方から受け体にて受けた状態で他方のオイルシールを軸方向外方から押圧部材を介して一方のオイルシール側へ押圧力を付与することによって、軸受本体の両軸方向端部へのオイルシールの取付を可能とし、軸受本体の両軸方向端部にオイルシールが取り付けられた状態であって、その軸心が水平状とされた軸受装置に対して、他方のオイルシールの軸方向外方から押圧部材を介して一方のオイルシール側へ押圧力を付与することによって、一方のオイルシールに軸受本体から外れる軸方向外方への外力を作用させることを特徴とする着脱装置。
【請求項2】
相対面するように所定間隔で平行に配設された一対の側壁フレームを備え、一方の側壁フレームが一方のオイルシールを軸方向外方から受ける受け体を構成し、前記押圧部材は、他方の側壁フレームの一方の側壁フレーム側に配設されて、他方の側壁フレームに付設される往復動機構にて、一方の側壁フレームに対して接近・離間が可能とされていることを特徴とする請求項1に記載の着脱装置。
【請求項3】
ベース台と、このベース台の両側面側から立設される一対の前記側壁フレームと、ベース台の上面に設けられた凹窪部に前後方向にスライドおよび軸心回りの回転が可能とされて嵌合するテーブルと、このテーブル上に配設されて軸受装置を受ける受け部材とを備え、テーブルの前方への引き出し状態で、側壁フレームよりも前方位置の前記受け部材の配置が可能であり、テーブルの後方への押し込み状態で、前記受け部材の一対の側壁フレーム間への配置が可能であり、かつ、テーブルの回動にて、テーブルが引き出された状態での軸受装置の軸心方向を前後方向とするとともに、テーブルが押し込まれた状態での軸受装置の軸心方向を前後方向と直交する方向とすることを特徴とする請求項2に記載の着脱装置。
【請求項4】
テーブルの前方への引き出し状態で、受け部材の軸心方向がテーブルの前後移動方向となった状態をロックするロック機構を備えたことを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の着脱装置。
【請求項5】
軸受本体の両軸方向端部へのオイルシールの取付の際に、オイルシールが治具にて保持され、押圧部材からの押圧力および側壁フレームからの反力をこの治具を介して受けることを特徴とする請求項2から請求項4のいずれか1項に記載の着脱装置。
【請求項6】
オイルシールの軸受本体からの取り外しの際に、一方の側壁フレーム側において軸受本体の外輪の一方の側壁フレーム側への移動を規制する規制治具と、押圧部材の押圧力を直接的にオイルシールに伝達する外し用治具とを備えたことを特徴とする請求項2~請求項5のいずれか1項に記載の着脱装置。
【請求項7】
軸受本体は、外輪と、内輪と、外輪と内輪との間に介在される転動体と、転動体を円周方向所定間隔に保持する保持器とを有し、外輪の開口部がオイルシールにて密封されることを特徴とする請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の着脱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着脱装置に関し、特に鉄道車両などの車軸を支持する軸受装置に設けられるオイルシールを取り付けたり取り外したりする際に使用する着脱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両用車軸軸受(軸受装置)には図9に示すものがある。この軸受装置は、外輪1と、一対の内輪2,2と、複列をなす転動体としての円すいころ3と、各列の円すいころ3を円周方向で所定の間隔に保持する保持器4、4と、外輪1の両端(軸方向両端)に取り付けられる密封装置としてのオイルシール5,5等から構成される。
【0003】
オイルシール5は、金属製のシールケース6とこのシールケース6に付設されるゴム等弾性材からなるリップ部材(シール部材)7とを備えたものである。このため、鉄道車両用車軸軸受のオイルシールは、軸受の定期メンテナンス時に古くなって劣化等しているオイルシールを取り外して新しいオイルシールに取り換える必要があった。
【0004】
オイルシールを取付けるための装置としても、オイルシールの外輪に対する位置決めを容易とするため、プレス装置を床面に対して縦向きに配設して、このプレス装置の押圧力を付与することによって取付けるのが一般的である。
【0005】
また、オイルシールの取り外しは、オイルシールのセッティング(位置合わせ等)が不要であるので、プレス装置を床面に対して縦向きにする必要がないが、作業スペースを節約するためにオイルシールの取り付けに使用した装置を兼用することが多い。
【0006】
また、オイルシールを外すための装置及び方法として、特許文献1に記載されたものがある。この取り外し装置(取外し治具)では、軸受の外輪端部に装着されたオイルシールの取り外しに際しては、支持リングによって軸受が縦向きに支持される状態において、軸受の上側から内輪内に係合爪を挿入し、その係合爪を内輪の端面とシール本体の対向部間に形成された環状空間と対向位置まで挿入した後、径方向外方に移動させて外周部を環状空間内に挿入する。
【0007】
上記のような係合爪の挿入作業を繰り返し行って少なくとも2枚の係合爪のそれぞれを環状空間内に挿入し、それぞれの係合爪が軸受の軸心を中心とする円周上にほぼ等間隔に配置されるよう位置を調整した後、係合爪の対向する円弧状の内周面間に保持リングを差し込んで係合爪の内方向への移動を阻止し、係合爪をセット状態に保持する。
【0008】
保持リングによる係合爪の保持後、その係合爪の内周部上側面および保持リングの上側端面上にプレスプレートを載置し、そのプレスプレートの中心部上に押し棒の下端面が支持されるよう押し棒をセットし、その押し棒にプレス圧を負荷してプレスプレートを押し下げる。その押し下げによってオイルシールのシール本体に下向きの荷重が負荷されることになるため、オイルシールが押し出されることになり、オイルシールを簡単に取り外すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2014-178007号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
このため、オイルシールの着脱のために、軸受装置をその軸心方向を鉛直方向として、取付装置や取外装置にセットするのが一般的である。しかしながら、軸受装置が重量物(例えば、20kg以上)であった場合、作業毎に、その重量物を装置にセットする工程を必要とし、作業性に劣ることになっていた。
【0011】
なお、オイルシールの取外しにおいては、必ずしも、プレス装置を縦向きとする必要がないので、プレス装置を横向きとして、重量物の持ち上げ工程を無くすことも考えられる。この場合、取外装置として、オイルシールの外輪に対する位置決めを行わないので、取付装置と別の装置を必要とする。
【0012】
取外装置と取付装置とが別装置であれば、取外装置でオイルシールを取り外し、その後、オイルシールを取り外した軸受装置に対して新しいオイルシールを取り付けるには、オイルシールを取り外した軸受装置を取付装置にセットする必要がある。このため、生産性に劣り、しかも、工場内に2機の装置を設置する設置スペースと作業者の作業スペースを必要としていた。
【0013】
そこで、本発明は斯かる実情に鑑み、作業性の向上を図ることができ、しかも、オイルシールの取付けと取外しを兼用できる着脱装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の着脱装置は、軸受本体とこの軸受本体の軸心方向開口部を密封するオイルシールとからなる軸受装置において、軸受本体にオイルシールを着脱するための着脱装置であって、軸受本体の両軸方向端部側にオイルシールを配置して、その軸心が水平状とされた軸受装置に対して、一方のオイルシールを軸方向外方から受け体にて受けた状態で他方のオイルシールを軸方向外方から押圧部材にて一方のオイルシール側へ押圧力を付与することによって、軸受本体の両軸方向端部へのオイルシールの取付を可能とし、軸受本体の両軸方向端部にオイルシールが取り付けられた状態であって、その軸心が水平状とされた軸受装置に対して、他方のオイルシールの軸方向外方から押圧部材を介して一方のオイルシール側へ押圧力を付与することによって、一方のオイルシールに軸受本体から外れる軸方向外方への外力を作用させるものである。
【0015】
本発明の着脱装置によれば、一方のオイルシールを軸方向外方から受け体にて受けた状態で他方のオイルシールを軸方向外方から押圧部材を介して一方のオイルシール側へ押圧力を付与することによって、軸受本体の軸方向端部にオイルシールを取付でき、また、他方のオイルシールの軸方向外方から押圧部材を介して一方のオイルシール側へ押圧力を付与することによって、一方のオイルシールに軸受本体から外れる軸方向外方への外力を作用させる、つまり、オイルシールを取り外せるものである
【0016】
このため、1種類の装置で、オイルシールの取外しと取付けを行うことができる。しかも、取外す場合であっても、取付る場合であっても軸受装置を横向き(軸心方向が水平方向となる状態)で装置にセットできる。
【0017】
相対面するように所定間隔で平行に配設された一対の側壁フレームを備え、一方の側壁フレームが一方のオイルシールを軸方向外方から受ける受け体を構成して、前記押圧部材は、他方の側壁フレームの一方の側壁フレーム側に配設されて、他方の側壁フレームに付設される往復動機構にて、一方の側壁フレームに対して接近・離間が可能とされているのが好ましい。
【0018】
このように構成することによって、押圧部材に安定して一方のオイルシール側への圧力を付与することができ、取付工程及び取外し工程を安定したものとできる。
【0019】
ベース台と、このベース台の両側面側から立設される一対の前記側壁フレームと、ベース台の上面に設けられた凹窪部に前後方向スライドおよび軸心回りの回転が可能とされて嵌合するテーブルと、このテーブル上に配設されて軸受装置を受ける受け部材とを備え、テーブルの前方への引き出し状態で、側壁フレームよりも前方位置の前記受け部材の配置が可能であり、テーブルの後方への押し込み状態で、前記受け部材の一対の側壁フレーム間への配置が可能であり、かつ、テーブルの回動にて、テーブルが引き出された状態での軸受装置の軸心方向を前後方向とするとともに、テーブルが押し込まれた状態での軸受装置の軸心方向を前後方向と直交する方向とするものが好ましい。
【0020】
このように、構成することによって、テーブルを前方へ引き出した状態で、側壁フレームよりも前方位置に受け部材の配置状態とすることができ、この状態では、受け部材への軸受装置のセットが容易となる。また、テーブルの押し込み状態では、受け部材にて受けられている軸受装置を一対の側壁フレーム間に介在させることができ、しかも、軸受装置の軸心方向を前後方向と直交する方向とすることによって、押圧部材により押圧力を安定してオイルシールに付与でき、オイルシールの取付作業および取り外し作業が容易となる。
【0021】
テーブルの前方への引き出し状態で、受け部材の軸心方向がテーブルの前後移動方向となった状態をロックするロック機構を備えたものが好ましい。このようにロック機構を備えたものでは、受け部材の前後方向の移動及び回転が規制され、軸受装置を受け部材にセットする際の作業がより安定する。
【0022】
軸受本体の両軸方向端部へのオイルシールの取付の際に、オイルシールが治具にて保持され、押圧部材からの押圧力および側壁フレームからの反力をこの治具を介して受けるものが好ましい。このような治具を用いることによって、押圧時のオイルシールの変形や損傷を有効に防止できる。
【0023】
オイルシールの軸受本体からの取り外しの際に、一方の側壁フレーム側において軸受本体の外輪の一方の側壁フレーム側への移動を規制する規制治具と、押圧部材の押圧力を直接的にオイルシールに伝達する外し用治具とを備えたものが好ましい。
【0024】
このように、規制治具と外し用治具とを備えることによって、押圧部材に軸受装置を押圧した際には、外輪の一方の側壁フレーム側への移動が規制され、一方の側壁フレームのオイルシールには、一方の側壁フレームへ移動する方向の力がかかることになる。このため、このオイルシールを確実に取り外すことができる。
【0025】
軸受本体は、外輪と、内輪と、外輪と内輪との間に介在される転動体と、転動体を円周方向所定間隔に保持する保持器とを有し、外輪の開口部がオイルシールにて密封されるものである。
【発明の効果】
【0026】
1種類の装置で、オイルシールの取外しと取付けを行うことができる。このため、古いものや損傷等したオイルシールを新しいオイルシールに交換する作業を迅速に行え、生産性に優れる。また、取外し用の装置と取付用の装置の2種類の装置を必要とせず、コスト低減を図ることができるとともに、1種類の装置で済むので、小スペース化を達成できる。しかも、取外す場合であっても、取付る場合であっても軸受装置を横向き(軸心方向が水平方向となる状態)で装置にセットでき、そのセット作業が安定して作業能率の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の着脱装置の斜視図である。
図2】本発明の着脱装置の受け部材およびテーブルを省略した状態の分解斜視図である。
図3】本発明の着脱装置の受け部材およびテーブルの斜視図である。
図4】オイルシールの取付工程におけるセット状態を示す斜視図である。
図5】鉄道車両用軸受の断面図である。
図6】オイルシールの要部拡大断面図である。
図7】オイルシールの取付け工程を示す断面図である。
図8】オイルシールの取外し工程の断面図である。
図9】一般的な鉄道車両用軸受の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下本発明の実施の形態を図1図8に基づいて説明する。図1は、本発明に係る着脱装置を示し、この装置は、軸受装置10(例えば、鉄道車両車軸用軸受に用いるもの)におけるオイルシール12,12を取付けたり、取り外したりするものである。軸受装置10は、図5に示すように、軸受本体(軸受)11と、この軸受本体11の軸方向端部に装着されるオイルシール12等で構成される。
【0029】
軸受本体(軸受)11は、図示省略の車軸に装着されるものであって、外輪21と、一対の内輪22、22と、複数の転動体23を主要な構成要素としている。外輪21は内周に二列の軌道21a、21aを形成した複列外輪である。各内輪22,22は外周に軌道22a、22aが形成してある。外輪21の軌道21aと内輪22の軌道22aとの間に二列の転動体23(本実施形態では円すいころ)を転動自在に介在させている。また、一対の内輪22間には、内輪間座25が介在されている。なお、各列の円すいころ23は保持器24によって円周方向に所定の間隔に保持される。
【0030】
オイルシール12は、図6に示すように、金属製のシールケース13と、このシールケース13に付設されるゴム等の弾性材からなるシール部材14と、シール部材14に装着されているバネ部材15等で構成されている。この場合、シールケース13は、円筒形状のケース本体13aと、この本体13aの軸受側に径方向外方に延びるリング部13bと、このリング部13bの外径端から軸受側に延びる短円筒状の外輪嵌入部13cと、本体13aの反軸受側に径方向内方に延びるリング部13dとからなる。また、リング部13dとの内径端は、軸受側に折り曲げられた折り曲げ部13d1が形成され、この折り曲げ部13d1にシール部材14が装着(付設)されている。ところで、シール部材14は、シールリップ14aとダストリップ14bとを有し、バネ部材15で内径方向へ付勢されている。
【0031】
外輪21の内径面の軸方向外端部に周方向凹溝部16が形成され、この周方向凹溝部16にシールケース13の外輪嵌入部13cが嵌入(嵌合)することによって、オイルシールが外輪21に装着される(取付られる)。
【0032】
本着脱装置は、図1に示すように、上面30aに凹窪部31が設けられたベース台30と、このベース台30の側面から立設される一対の側壁フレーム32、32と、ベース台30の凹窪部31に前後方向移動可能でかつその軸心回りに回転(回動)する円板形状のテーブル33と、このテーブル33の上面33aに載置される受け部材34とを備える。
【0033】
ベース台30は、矩形平板体からなり、この上面30aに一方の側壁フレーム32A側に開口した凹窪部31が設けられている。このため、この凹窪部31は、図2に示すように、平面視において、矩形状の本体部31aと、半長円形状の副部31bとからなる。
【0034】
一方の側壁フレーム32Aは、平板板形状の基部35と、この基部35から立設されるフレーム本体36とからなる。フレーム本体36は、先端コーナ部に三角形状の切り欠き部36aが形成された平板体からなり、基部35の奥側(後半半分)に立設されている。また、フレーム本体36の内面上端部には、切り欠き部36bが形成されている。そして、基部35が、ベース台30の一方の側面に、ボルト部材からなる固着具37にて固定される。この側壁フレーム32Aがベース台30に取付られた状態では、フレーム本体36が立設されていない前半分部位の基部35の上面とベース台30の上面30aとが一致している。
【0035】
また、他方の側壁フレーム32Bは、一方の側壁フレーム32Aと同様、先端コーナ部に三角形状の切り欠き部32Baが形成された薄い肉の平板体からなる。この場合も、側壁フレーム32Bは、ベース台30の他方の側面に、ボルト部材からなる固着具37にて固定される。
【0036】
そして、両側壁フレーム32A,32Bの後端上方コーナ部間に支柱38が介在され、ボルト部材からなる固着具37が各側壁フレーム32A,32Bの外方から螺着される。このため、支柱38にて、各側壁フレーム32A,32Bが相対面して平行状態を維持できるように、ベース台30に固定できる。なお、一方の側壁フレーム32Aの内面前端部に、テーブル33をベース台30の凹窪部31に嵌合させるためガイド用切り欠き39が鉛直方向(上下方向)に沿って設けられている。
【0037】
ところで、他方の側壁フレーム32Bの一方の側壁フレーム32A側に、側壁フレーム32Aに相対面するように円盤形状の押圧部材40が付設されている。この場合、押圧部材40は、往復動機構41を介して側壁フレーム32B側に配置される。往復動機構41として、この実施形態では、シリンダ機構42を用いている。シリンダ機構42は、シリンダ本体42aと、このシリンダ本体42aから突出するピストンロッド42bからなり、シリンダ本体42aが、他方の側壁フレーム32Bの貫通孔43に嵌入・嵌合され、ピストンロッド42bの先端部が、押圧部材40の中心部に設けられた嵌合凹部40aに嵌入・嵌合されている。このため、シリンダ機構42のピストンロッド42bの伸縮によって、押圧部材40が一方の側壁フレーム32Aに対して、接近・離間する。
【0038】
テーブル33は、図3に示すように、円盤体からなり、その下面に4個のキャスタ44が付設されている。このため、テーブル33は、ベース台30の凹窪部31に嵌合した状態では、前後方向(凹窪部31の長手方向)の移動及びその軸心回りの回転(回動)が可能となっている。また、テーブル33は、ベース台30の凹窪部31に嵌合した状態では、その上面33aが、ベース台30の上面30aと同一高さとなっている。なお、キャスタ44は、ボールキャスタが好ましいが、これに限るものではなく、テーブル33が前後方向に移動及びその軸心回りに回転できればよい。また、キャスタ44の数としても任意であり、テーブル33を水平に維持できてテーブル33が前後方向に移動及びその軸心回りに回転できればよい。
【0039】
また、テーブル33の上面33aの外周縁部には、相対抗するように180°反対位置にキー溝45,45が設けられ、ベース台30の上面30aにキー溝46が設けられている。すなわち、テーブル33が図4に示すように、前方へ引き出された状態で、テーブル33の一のキー溝45とベース台30のキー溝46とを対応させ、これらにキー47を嵌合させることによって、テーブル33の移動及び回転を規制することができる。すなわち、キー溝45、46とキー47によって、テーブル33をロックするロック機構50を構成している。
【0040】
受け部材34は、半円筒面凹形状の内面51aを有する上方開口状の嵌合凹部51が形成されたブロック体からなり、下面34bがテーブル33の上面33aに載置される。この場合、受け部材34とテーブル33とは凹凸嵌合構造54によって、一体に、前後方向の移動及び回転が可能となっている。凹凸嵌合構造54は、この場合、テーブル33の上面33aの中央部に設けられた矩形乃至正方形状の貫孔(凹部)52と、受け部材34の下面34bの中央部に断面矩形乃至正方形状の突起(凸部)53(図7及び図8参照)とで構成している。すなわち、受け部材34の突起53がテーブル33の貫孔52に嵌合されることによって、受け部材34は、テーブル33上に保持される。
【0041】
この場合、凹凸嵌合構造54はすきま嵌めで、凹部52と凸部53とを嵌合させている。このため、受け部材34がテーブル33から滑り落ちることがなく、しかも、テーブル33から外せるようになっている。すなわち、受け部材34の交換が容易である。また、この受け部材34は嵌合凹部51に軸受11を嵌合させることになるので、軸受型番ごとのものを製造しておけば、オイルシール12、12を取付たり、取り外したりする際に、対応する受け部材34に容易に交換することができる、なお、凹凸嵌合構造54として、テーブル33の上面33aに突起53を設け、受け部材34の下面34bに凹部52を設けたものであってもよい。
【0042】
ところで、受け部材34の一対の上辺34aの中央部には、突出片部55,55が設けられている。このため、受け部材34をテーブル33に載置固定する際には、この突出片部55とテーブル33のキー溝45とが対応するようにする。
【0043】
このように、ベース台30と、側壁フレーム32A,32Bとは、ボルト部材の螺合にて連結され、テーブル33はベース台30の凹窪部31に載置し、受け部材34はテーブル33に載置するものでよいので、この装置として組立及び分離を簡単に行える。
【0044】
オイルシール12,12を取り付けたり、取り外したりする場合、軸受11の内径部には、図5に示すような軸受支持用治具60が嵌入されている。この軸受支持用治具60は、円筒形状の胴部61とこの胴部61をその軸方向中央部で支持する支持板部62とを有する本体60aと、この本体60aに取付られる副体60bとからなる。副体60bは、短円筒部63と短円筒部63の一方の端部から径方向に突出する鍔部64とからなる。また、本体60aの胴部61の他方(反副体側)には、径方向に突出する鍔部65が設けられている。
【0045】
この場合、一対の内輪22、22と内輪間座25とで構成される軸孔に、本体60aの胴部61を、その鍔部65を他方の内輪22の外端面の内径側に当接した状態となるように嵌入し、副体60bの短円筒部63を、鍔部64が一方の内輪の22の外端面の内径側に当接した状態となるように本体60aの胴部61の反鍔部端部の切り欠き部61aに嵌入する。これによって、図5に示すように、軸受支持用治具60が軸受11に装着されることになる。また、軸受支持用治具60の支持板部62には、軸心孔62aが設けられている。なお、本体60aと副体60bの固定方法は、ナット方式や止め輪方式など一時的に本体60aと副体60bを固定できればよい。
【0046】
次に、上述のように構成された着脱装置で、軸受本体(軸受)11の軸方向両端にオイルシール12,12を取り付ける工程を説明する。この場合、軸受支持用治具60が装着された状態の軸受11(オイルシール12,12が取付けられていない状態)を、本着脱装置にセットする。
【0047】
すなわち、受け部材34が載置・固定された状態のテーブル33を前方へ引き出し、図4に示すように、ロック機構50にてロック状態とする。すなわち、キー溝45、46にキー47を嵌合させる。この状態では、受け部材34は嵌合凹部51の軸方向は前後方向を向き、この凹部51に嵌合された軸受本体(軸受)11はその軸心方向が前後方向を向く。
【0048】
また、各オイルシール12は、図7に示すように、治具70(70A),70(70B)に保持される。ここで、治具70,70は、それぞれ、短円筒体からなり、オイルシール12のシールケース13のケース本体13aにd-D<Lとするすきま嵌めで外嵌されるため、オイルシール12が自重で鉛直方向にズレた場合でもオイルシール12のビードが外輪開口部を乗り上げるのでオイルシール12を装着することができる。ここでdは治具70(70A,70B)の内径寸法、Dはオイルシールケース13の治具70との嵌合部の外径寸法、L(図6参照)はオイルシールケース13の端部に設けられたビードBの高さ寸法である。この場合、治具70,70の内端面は、図5の仮想線で示すように、シールケース13のリング部13bに外方から当接する状態となっている。なお、各治具70,70には、図4に示すように、その外周面から外径方向に突出する取手72,72が設けられている。治具70,70を受け部材34にセットした際には、取手72,72が受け部材34の上辺34a,34a(図3参照)に載置されることになる。このため、取手72,72は、治具70,70の取り扱いを容易とするためと、倒れ防止のために設けられている。
【0049】
この図例では、先ず軸受11の他方の軸受端部(オイルシール12Bが取り付けられる側)が前方を向く状態(ロック機構50よるロック状態とする)として、この他方の軸受端部側に、治具70B付のオイルシール12Bを配置する。その後は、ロック機構50のロック状態を解除して、テーブル33を180°回転させる。この状態では、軸受11の一方の軸受端部(オイルシール12Aが取り付けられる側)が前方を向く状態となり、この状態で、ロック機構50によるロック状態とする。そして、図4に示すように、軸受11の一方の軸受端部側に治具70A付のオイルシール12Aを配置する。なお、逆に、オイルシール12A側を配置した後、オイルシール12B側を配置するようにしてもよい。
【0050】
その後は、ロック状態を解除して、テーブル33を後方へ押し込んで、図7に示すように、軸受11を一対の側壁フレーム32,32間に介在する状態とする。この場合、テーブル33を、180°回転させることによって、軸受11をその軸心が前後方向と直交する方向を向けることになる。すなわち、治具70(70A)が一方の側壁フレーム32Aの内面に相対面し、治具70(70B)が他方の側壁フレーム32B側に押圧部材40の無の内面に相対面した状態となる。
【0051】
そして、この図7の状態で、押圧部材40を往復動機構41にて一方の側壁フレーム32A側へ押し出す。すなわち、シリンダ機構42のピストンロッド42bを伸ばしていく。これによって、押圧部材40が治具70Bの外端面を押圧することができる。この際、治具70Aは,オイルシール12Aのリング部13bと、側壁フレーム32Aとの間に介在された状態となっている。また、オイルシール12Bのリング部13bと、押圧部材40の間に介在された状態となっている。
【0052】
このため、押圧部材40が治具70Bの外端面を押圧することによって、各オイルシール12は軸方向内方へ押圧されることになる。これによって、各オイルシール12の外輪嵌入部13cが、図5に示すように、軸受11の外輪21の周方向凹溝部16に圧入され、両オイルシール12,12を取り付けることができる。
【0053】
次に、この装置にてオイルシール12、12の取り外し方法を説明する。この場合は、図8に示すように、一方の側壁フレーム32A側において軸受本体11の外輪21の一方の側壁フレーム32A側への移動を規制する規制治具75と、押圧部材40の押圧力を直接的にオイルシール12Aに伝達する外し用治具76とを用いる。
【0054】
規制治具75は、受け部材34の嵌合凹部51の内面51aの周方向に沿って配設される円弧状板状体で構成され、軸受11の外輪21と、一方の側壁フレーム32Aとの間に介在される。また、外し用治具76は、軸受支持用治具60の軸心孔62aに嵌入される軸部材76aと、この軸部材76aの一端側に径方向に延びる押圧部76bとからなる。この押圧部76bには、オイルシールのシール部材14と、内輪22との間に介在される爪部78が設けられている。この場合、外し用治具76の軸部材76aは、その反押圧部側に端部が、押圧部材40側に突出する。
【0055】
この場合も、軸受11に軸受支持用治具60を取付けた状態として、前方へ引き出された状態(ロック機構50にてロックされた状態とする)の受け部材34の嵌合凹部51に、軸受11を配設する。この状態では、規制治具75も受け部材34の嵌合凹部51に配置するとともに、外し用治具76も、治具60を軸心孔62aに通通してセットしておく。
【0056】
その後は、ロック機構50によるロック状態を解除して、テーブル33を後方へ押し込んで、テーブル33を反転させ、図8に示す状態とする。すなわち、オイルシール付きの軸受11を、一対の側壁フレーム32,32の間に介在させ、かつ、その軸心が前後方向を直交する方向とする。この際、規制治具75は、軸受11の外輪と、一方の側壁フレーム32Aとの間に介在され,オイルシール12のシール部材14と、内輪22との間に介在される爪部78が介在される状態となっている。
【0057】
この図8に示す状態から、押圧部材40を往復動機構41によって、側壁フレーム32A側へ移動させていけば、外し用治具76の軸受のオイルシール12から突出した軸部材76aの端部の端面を一方の側壁フレーム32A側へ押圧することになる。このように、押圧部材40にて外し用治具76の軸部材76aが押圧されることによって、オイルシール12Aは、側壁フレーム32A側へ押圧され、この際、軸受11の外輪21と側壁フレーム32Aとの間に規制治具75が介在されているので、軸受11は側壁フレーム32Aへの移動が規制される。このため、このオイルシール12Aには、軸受軸方向外方への押圧力が作用して、このオイルシール12Aを軸受11から取り外すことができる。
【0058】
他方のオイルシール12Bを取り外す場合、この他方のオイルシール12Bを一方の側壁フレーム32Aに相対面する状態として、各治具60、75,76を図8に示すようにセットする。この状態とすることによって、押圧部材40を往復動機構41によって、側壁フレーム32A側へ移動させていけば、このオイルシール12Bには、軸受軸方向外方への押圧力が作用して、このオイルシール12Bを軸受11から取り外すことができる。
【0059】
この着脱装置によれば、一方のオイルシール12,12を軸方向外方から受け体としての一方の側壁フレーム32Aにて受けた状態で他方のオイルシール12Bを軸方向外方から押圧部材40にて一方のオイルシール12A側へ押圧力を付与することによって、軸受本体11の両軸方向端部にオイルシール12,12を取付でき、また、他方のオイルシール12Bの軸方向外方から押圧部材40にて一方のオイルシール12A側へ押圧力を付与することによって、一方のオイルシール12Aに軸受本体11から外れる軸方向外方への外力を作用させる、つまり、オイルシール12を取り外せるものである。
【0060】
このため、1種類の装置で、オイルシール12,12の取外しと取付けを行うことができる。しかも、古いものや損傷等したオイルシール12を新しいオイルシール12に交換する作業を迅速に行え、生産性に優れる。また、取外し用の装置と取付用の装置の2種類の装置を必要とせず、コスト低減を図ることができるとともに、1種類の装置で済むので、小スペース化を達成できる。しかも、取外す場合であっても、取付る場合であっても軸受装置を横向き(軸心方向が水平方向となる状態)で装置にセットでき、そのセット作業が安定して作業能率の向上を図ることができる。
【0061】
押圧部材40は、他方の側壁フレーム32Bの一方の側壁フレーム32A側に配設されて、他方の側壁フレーム32Bに付設される往復動機構41にて、一方の側壁フレーム32Aに対して接近・離間を可能とすることによって、押圧部材40に安定して一方のオイルシール32A側へ押圧力を付与することができ、取付工程及び取外し工程を安定したものとできる。
【0062】
また、実施形態では、テーブル33の前方への引き出し状態で、側壁フレーム32,32よりも前方位置に受け部材34の配置状態とすることができ、この状態では、受け部材34への軸受装置のセットが容易となる。また、テーブ33ルの押し込み状態では、受け部材34にて受けられている軸受装置を一対の側壁フレーム32,32間に介在させることができ、しかも、軸受装置の軸心方向を前後方向と直交する方向とすることによって、押圧部材により押圧力を安定してオイルシール12,12に付与でき、オイルシール12,12の取付作業および取り外し作業のセット作業が容易となる。
【0063】
ロック機構50を備えたものでは、受け部材34の前後方向の移動及び回転が規制され、軸受装置を受け部材34にセットする際の作業がより安定する。
【0064】
実施形態のように、軸受本体11の両軸方向端部へのオイルシール12,12の取付の際に、オイルシール12,12が治具70,70にて保持され、押圧部材40からの押圧力および側壁フレーム32からの反力をこの治具を介して受けるものが好ましい。このような治具70を用いることによって、押圧時のオイルシール12の変形や損傷を有効に防止できる。
【0065】
実施形態のように、規制治具75と外し用治具76とを備えることによって、押圧部材40に軸受装置を押圧した際には、外輪21が一方の側壁フレーム32A側への移動が規制され、一方の側壁フレーム32Aのオイルシール12Aには、一方の側壁フレーム32Aへ移動する方向の力がかかることになる。このため、このオイルシールを確実に取り外すことができる。
【0066】
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明は前記実施形態に限定されることなく種々の変形が可能であって、往復動機構41として、実施形態では、油圧シリンダ機構を用いたが、これに限るものではなく、エアシリンダ機構、ボールねじ機構、リニアガイド機構等の公知・公用の往復動機構を用いることができる。また、軸受装置として、実施形態では、転動体として円すいころを用いたものを示したが、転動体として、円筒ころやボールを用いたものであってもよい。オイルシール12としては、図例のものに限るものではなく、他の種々の構成のものであってもよい。
【符号の説明】
【0067】
10 軸受装置
11 軸受本体(軸受)
12、12A、12B オイルシール
21 外輪
22 内輪
23 転動体
24 保持器
30 ベース台
30a 上面
31 凹窪部
32、32A,32B 側壁フレーム
33 テーブル
33a 上面
34 受け部材
40 押圧部材
41 往復動機構
50 ロック機構
70 治具
75 規制治具
76 外し用治具
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9