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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022097018
(43)【公開日】2022-06-30
(54)【発明の名称】発汗量測定装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/00 20060101AFI20220623BHJP
【FI】
A61B5/00 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020210361
(22)【出願日】2020-12-18
(71)【出願人】
【識別番号】000003001
【氏名又は名称】帝人株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 修二郎
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 晴彦
【テーマコード(参考)】
4C117
【Fターム(参考)】
4C117XA01
4C117XB01
4C117XC11
4C117XE06
4C117XE20
(57)【要約】
【課題】本開示は、長時間の発汗量の測定を可能としつつ、快適な着用感をもたらす、発汗量測定装置を提供する。
【解決手段】本開示の発汗量測定装置は、布帛を備えており、かつ前記布帛は、一対の導電性布帛部分、及び一対の前記導電性布帛部分の間に配置されている絶縁性布帛部分を有する、発汗量測定装置である。本開示の発汗量測定装置は、一対の前記導電性布帛部分の間の静電容量及び/又は電気抵抗値に応じたパラメータの変化によって、発汗量を測定してもよい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
布帛を備えており、かつ前記布帛は、一対の導電性布帛部分、及び一対の前記導電性布帛部分の間に配置されている絶縁性布帛部分を有する、発汗量測定装置。
【請求項2】
一対の前記導電性布帛部分の間の静電容量及び/又は電気抵抗値に応じたパラメータの変化によって、発汗量を測定する、請求項1に記載の発汗量測定装置。
【請求項3】
前記布帛に導電性の繊維が織編され、かつ/又は前記布帛の表面が導電性材料によって被覆されており、それによって前記導電性布帛部分が導電性にされている、請求項1又は2に記載の発汗量測定装置。
【請求項4】
一対の前記導電性布帛部分は、それぞれ長さが100.0mm以下であり、幅が10.0mm以下であり、かつ互いに平行に配置されており、互いの最短距離が10.0mm以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載の発汗量測定装置。
【請求項5】
一対の前記導電性布帛部分の表面は、少なくとも部分的に樹脂被膜によって被覆されている、請求項1~4のいずれか一項に記載の発汗量測定装置。
【請求項6】
前記樹脂被膜は、熱可塑性樹脂被膜である、請求項5に記載の発汗量測定装置。
【請求項7】
衣服と一体となっている、請求項1~6のいずれか一項に記載の発汗量測定装置。
【請求項8】
衣服に取り付可能に構成されており、かつ前記衣服に取り付けた状態で発汗量の測定を行う、請求項1~6のいずれか一項に記載の発汗量測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、発汗量測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
人や動物等の生体の発汗量を測定するための、発汗量測定装置が知られている。
【0003】
従来の発汗量測定装置としては、例えば引用文献1に開示されるような、内部に温湿度センサが封入されたカプセルタイプの発汗量測定装置が知られている。
【0004】
また、例えば引用文献2及び3に開示されるような、パッチタイプの発汗量測定装置が知られている。これらの文献に開示されるパッチタイプの発汗量測定装置は、1対の電極体間に吸水層を設け、電極体間の電気抵抗値を計測することにより、発汗量を測定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-88368号公報
【特許文献2】特開2016-15996号公報
【特許文献3】特開2017-23408号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1が開示するようなカプセルタイプの発汗量測定装置は、ポンプを使って揮発した汗を発汗部から湿度センサ部まで搬送し、湿度変化により発汗量を計測する構成を要する。したがって、装置全体として大掛かりなものとなりがちである。そのため、特許文献1が開示するようなカプセルタイプの発汗量測定装置は、人や動物等の生体の運動時における発汗量の測定には不便であった。
【0007】
また、特許文献2及び3が開示するようなパッチタイプの発汗量測定装置は、吸水層の吸水率が飽和した段階で電気抵抗値が変化しなくなるため、長時間の測定には十分に対応していなかった。また、これらの文献が開示する発汗量測定装置は、通気性を考慮しておらず、長時間使用した場合には着用者にべたつき等の不快な着用感を与えていた。
【0008】
本開示は、長時間の発汗量の測定を可能としつつ、快適な着用感をもたらす、発汗量測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示者は、以下の手段により上記課題を達成することができることを見出した:
《態様1》
布帛を備えており、かつ前記布帛は、一対の導電性布帛部分、及び一対の前記導電性布帛部分の間に配置されている絶縁性布帛部分を有する、発汗量測定装置。
《態様2》
一対の前記導電性布帛部分の間の静電容量及び/又は電気抵抗値に応じたパラメータの変化によって、発汗量を測定する、態様1に記載の発汗量測定装置。
《態様3》
前記布帛に導電性の繊維が織編され、かつ/又は前記布帛の表面が導電性材料によって被覆されており、それによって前記導電性布帛部分が導電性にされている、態様1又は2に記載の発汗量測定装置。
《態様4》
一対の前記導電性布帛部分は、それぞれ長さが100.0mm以下であり、幅が10.0mm以下であり、かつ互いに平行に配置されており、互いの最短距離が10.0mm以下である、態様1~3のいずれか一つに記載の発汗量測定装置。
《態様5》
一対の前記導電性布帛部分の表面は、少なくとも部分的に樹脂被膜によって被覆されている、態様1~4のいずれか一つに記載の発汗量測定装置。
《態様6》
前記樹脂被膜は、熱可塑性樹脂被膜である、態様5に記載の発汗量測定装置。
《態様7》
衣服と一体となっている、態様1~6のいずれか一つに記載の発汗量測定装置。
《態様8》
衣服に取り付可能に構成されており、かつ前記衣服に取り付けた状態で発汗量の測定を行う、態様1~6のいずれか一つに記載の発汗量測定装置。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、長時間の発汗量の測定を可能としつつ、快適な着用感をもたらす、発汗量測定装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本開示の第1の実施形態に従う発汗量測定装置1の模式図である。
図2図2は、本開示の第2の実施形態に従う発汗量測定装置2の模式図である。
図3図3は、実施例1の発汗量測定装置3の模式図である。
図4図4は、実施例2の発汗量測定装置4を製造する方法を示す模式図である。
図5図5は、実施例1の発汗量測定装置3が有する一対の導電性布帛部分21、22間のインピーダンスと塩水の滴下量との関係を示すグラフである。
図6図6は、測定周波数50kHzにおける実施例1及び実施例2の発汗量測定装置3、4が有する一対の導電性布帛部分21、22間のインピーダンスそれぞれと、塩水の滴下量との関係を示すグラフである。
図7図7は、測定周波数1MHzにおける実施例1及び実施例2の発汗量測定装置3、4が有する一対の導電性布帛部分21、22間のインピーダンスそれぞれと、塩水の滴下量との関係を示すグラフである。
図8図8は、実施例2の発汗量測定装置4及び参考例1の発汗量測定装置をそれぞれ装着して運動した際の、運動時間とインピーダンス及び発汗量(sweat rate)との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の実施の形態について詳述する。なお、本開示は、以下の実施の形態に限定されるのではなく、開示の本旨の範囲内で種々変形して実施できる。
【0013】
本開示の発汗量測定装置は、布帛を備えており、かつ布帛は、一対の導電性布帛部分、及び一対の導電性布帛部分の間に配置されている絶縁性布帛部分を有する、発汗量測定装置である。
【0014】
本開示の発汗量測定装置は、人や動物等の生体の発汗量を測定する際に、生体から発せられた汗が、一対の導電性布帛部分の間に配置されている絶縁性布帛部分に接触し、好ましくは浸み込むことができるように配置されて使用される。
【0015】
絶縁性布帛部分に接触し、好ましくは浸み込んだ汗は、一対の導電性布帛部分の間の電気的な性質、例えば静電容量、インピーダンス、又は電気抵抗値等を変化させる。したがって、これら又はこれらに基づいたパラメータを観測することで、測定対象の発汗量を測定することができる。
【0016】
また、本開示の発汗量測定装置は、布帛上に一対の導電性布帛部分及び絶縁性布帛部分が配置された構成を有しているため、発汗量測定装置として機能しつつ、高い通気性をもたらすことができる。高い通気性は、布帛内に保持される汗を比較的に短時間で蒸発させ、又は布帛内から排出させる。したがって、本開示の発汗量測定装置は、絶縁性布帛部分の吸水率が飽和しにくく、長時間での発汗量の測定を可能とし得る。
【0017】
更に、布帛の柔軟性は、発汗量測定装置を衣服等に取り付けて使用する場合や、測定対象に直接接触させて使用する際等に、衣服や測定対象の身体の形状及び動きに合わせて変形することができる。布帛のこのような柔軟性は、上記の通気性と併せて、測定対象に快適な着用感をもたらすことができる。
【0018】
本開示の発汗量測定装置は、一対の導電性布帛部分の間の静電容量及び/又は電気抵抗値に応じたパラメータの変化によって、発汗量を測定してよい。これらのパラメータは、例えば一対の導電性布帛部分それぞれを、例えば導線を介して測定機器と接続して測定してよい。
【0019】
本開示の発汗量測定装置は、衣服と一体となっていることができる。衣服としては、人用及びペット用等を挙げることができるが、これらに限定されない。人用の衣服としては、普段着、作業着、スポーツウェア、又は患者衣等であってよいが、これらに限定されない。本開示の発汗量測定装置は、衣服のうち、測定対象の身体のうち発汗量を測定する箇所に直接的に又は布帛等、汗を通すことができる素材を介して間接的に接する位置に配置してよい。
【0020】
本開示の発汗量測定装置が衣服と一体となっている場合、例えば、発汗量測定装置は、衣服に直接形成され、又は接着剤・ホットメルト材等によって直接的に若しくは間接的に衣服に接着されていることができる。接着剤・ホットメルト材等によって発汗量測定装置が間接的に衣服に接着されている例として、発汗量測定装置が通気性を有する接着芯地を介して衣服に接着されている態様を挙げることができる。通気性を有する接着芯地としては、特に通気性の高い不織布、織物、編物に適当な間隔で接着材・ホットメルト材等が印刷等の手法により配置されているものを挙げることができる。この場合において、発汗量測定装置と接着芯地とは、アイロン、プレス機、ロールプレス機などを使って加熱、圧着されていることが好ましい。接着芯地等は、発汗量測定装置のうち導電性布帛部分が形成されている面とは反対側の面に接着さることが好ましい。接着芯地にドット状に形成された接着剤・ホットメルトは加熱、圧着後に布帛の通気性を確保するために隣接ドットが接触しないことが好ましい。
【0021】
また、本開示の発汗量測定装置は、衣服と一体となっていなくてもよく、例えば、衣服に取り付可能に構成されており、かつ衣服に取り付けた状態で発汗量の測定を行うように構成されていてもよい。本開示の発汗量測定装置を衣服に取り付け可能とする具体的な例としては、本開示の発汗量測定装置を備えた織編物又は不織布を、服飾分野における通常の手段、又はその他の物理的・化学的な手段により衣服に取り付けることが挙げられる。
【0022】
更に、本開示の発汗量測定装置は、衣服と一体又は衣服に取り付け可能に構成されていなくてもよく、例えば測定対象の身体に巻き付けて固定するバンド、より具体的には、ヘッドバンド、チェストバンド、アームバンド、レッグバンド、又はリストバンド等として構成されていてもよい。また、本開示の発汗量測定装置は、粘着材等によって測定対象の身体に直接貼り付ける構成であってもよい。
【0023】
図1は、本開示の第1の実施形態に従う発汗量測定装置1の模式図である。
【0024】
図1に示すように、本開示の第1の実施形態に従う発汗量測定装置1は、布帛10を備えており、かつ布帛10は、一対の導電性布帛部分21、22、及び一対の導電性布帛部分21、22の間に配置されている絶縁性布帛部分30を有する。
【0025】
本開示の第1の実施形態に従う発汗量測定装置1の絶縁性布帛部分30に汗が接触し、好ましくは浸み込むと、一対の導電性布帛部分21、22の間の電気的な性質、例えば静電容量、インピーダンス、又は電気抵抗値等が変化するため、これら又はこれらに基づいたパラメータを測定することで、測定対象の発汗量を測定することができる。より具体的には、例えばインピーダンスに基づいて測定対象の発汗量を測定する場合には、インピーダンスの変位量と水分・塩分の検量線を予め作成しておき、発汗量測定装置1によって測定されるインピーダンスから、水分量、塩分量を算出してよい。
【0026】
《布帛》
布帛は、一対の導電性布帛部分、及び一対の導電性布帛部分の間に配置されている絶縁性布帛部分を有する。布帛は、絶縁性の繊維によって形成された布帛に、導電性布帛部分が形成されていることができる。
【0027】
絶縁性の繊維としては、例えばナイロン、ポリエステル、ポリエチレン、ポリスチレン、及びポリエチレンテレフタレート等の樹脂繊維等を挙げることができる。
【0028】
〈導電性布帛部分〉
導電性布帛部分は、導電性を有する。導電性布帛部分は、布帛のうち、導電性の繊維が織編され、かつ/又は布帛の表面が導電性材料によって被覆されており、それによって導電性布帛部分が導電性にされている部分であってよい。
【0029】
導電性の繊維は、例えば鉄、銅、アルミニウム、ステンレス鋼、金、及び銀、並びにこれらの金属の合金若しくは化合物等からなる導電性の金属糸、又は導電性の炭素繊維等を挙げることができる。
【0030】
布帛の表面が導電性材料によって被覆された構成としては、例えば布帛の表面が電気メッキされた金属コート層を挙げることができる。金属メッキとしては、例えば鉄、銅、アルミニウム、ステンレス鋼、金、及び銀、若しくはこれらの組み合わせのメッキ等を挙げることができる。
【0031】
一対の導電性布帛部分の大きさ及び形状は、測定対象の発汗量を測定することができる限り限定されない。具体的には、一対の導電性布帛部分は、それぞれ長さが100.0mm以下であり、幅が10.0mm以下であり、かつ互いに平行に配置されており、互いの最短距離が10.0mm以下であることができる。
【0032】
一対の導電性布帛部分のそれぞれの長さは、100.0mm以下、90.0mm以下、80.0mm以下、70.0mm以下、60.0mm以下、又は50.0mm以下であってよく、1.0mm以上、10.0mm以上、20.0mm以上、30.0mm以上、又は40.0mm以上であってよい。
【0033】
一対の導電性布帛部分のそれぞれの幅は、10.0mm以下、9.0mm以下、8.0mm以下、7.0mm以下、6.0mm以下、又は5.0mm以下であってよく、0.1mm以上、0.5mm以上、1.0mm以上、2.0mm以上、3.0mm以上、又は4.0mm以上であってよい。
【0034】
一対の導電性布帛部分同士の最短距離は、10.0mm以下、9.0mm以下、8.0mm以下、7.0mm以下、6.0mm以下、又は5.0mm以下であってよく、0.1mm以上、0.5mm以上、1.0mm以上、2.0mm以上、3.0mm以上、又は4.0mm以上であってよい。
【0035】
〈絶縁性布帛部分〉
絶縁性布帛部分は、布帛のうち、一対の導電性布帛部分の間に配置されている部分である。
【0036】
〈樹脂被膜〉
一対の導電性布帛部分の表面は、少なくとも部分的に樹脂被膜によって被覆されているのが好ましい。樹脂被膜は、布帛の表面全体を被覆していてよい。また、樹脂被膜は、布帛のうち一対の導電性布帛部分を含んだ一部分のみを被覆していてよい。樹脂被膜は、非導電性部分を被覆していなくてもよい。
【0037】
本開示の発汗量測定装置において、布帛のうち導電性布帛部分に汗が接触すると、導電性布帛部分の金属が汗等によって腐食・劣化等し得る。導電性布帛部分の金属の腐食・劣化等は、長期間の使用により、導電性部分の電気伝導性を低下させる虞がある。
【0038】
この点に関して、一対の導電性布帛部分の表面が樹脂被膜によって被覆されている場合、導電性布帛部分の金属に汗が接しにくい。これにより、汗等による導電性布帛部分の金属の腐食・劣化が抑制される。
【0039】
樹脂被膜は、例えば熱可塑性樹脂被膜又はエラストマー被膜、より具体的には、熱可塑性エラストマー被膜であってよい。樹脂被膜がエラストマー被膜である場合、本開示の導電性織編物を伸縮変形させたときに樹脂被膜が布帛の伸縮変形に合わせて伸縮することができるため、樹脂被膜の伸縮変形に対する耐久性を向上させることができる。
【0040】
また本開示においては、樹脂被膜を形成した後であっても、布帛の通気性を著しく低下することを避けるように被膜形成することもできる。
【0041】
樹脂被膜は、例えば樹脂被膜を構成する樹脂のエマルションを、導電性部分に適用することによって形成することができる。ここで、樹脂のエマルションとしては、例えばシリコーンエマルションを挙げることができるが、これに限定されない。また、樹脂被膜の形成には、スチレンブタジエンラテックス又はアクリルエマルション等を用いてもよい。
【0042】
図2は、本開示の第2の実施形態に従う発汗量測定装置2の模式図である。
【0043】
図2において、本開示の第2の実施形態に従う発汗量測定装置2は、一対の導電性布帛部分の中央部分を含めてその表面の一部分が樹脂被膜40によって被覆されていることを除いて、図1と同様である。本開示の第2の実施形態に従う発汗量測定装置2は、図2のような構成を有することによって、導電性布帛部分が腐食・劣化しにくくなっている。
【実施例0044】
《実施例1》
2層式ポリエステル編物(帝人フロンティア社製 FG1857-J-1、095A)11の片側に、導電性布帛部分として、直接1対の長さ50mm、幅4mm、電極間距離4mmの金属電極23、24を互いに平行となるように形成し、形成した金属電極23、24に異方性導電性フィルムを介して金属箔を貼合し、同金属箔上にハンダを使って金属配線を接続して、実施例1の発汗量測定装置としての導電性布帛を作製した。より具体的には、図3に示すパターンになるようにして、実施例1の発汗量測定装置3を形成した。
【0045】
《実施例2》
実施例1の発汗量測定装置3と同様にして形成した導電性布帛に対して、金属配線の接続前に、図4に示すようにして、2層式ポリエステル編物11上にマスキング50した状態で、2層式ポリエステル編物11を120℃に設定されたホットプレートに設置した後、熱可塑性シリコーンエマルション液(信越シリコーン社製 POLON MF-33)を約5ml噴霧し、その後120℃オーブンで30分間乾燥させ、金属電極23、24及び金属電極23、24周辺部へ熱可塑性シリコーンエマルション膜を形成した。それ以外は実施例1と同様にして、実施例2の発汗量測定装置4を形成した。
【0046】
《参考例1》
参考例1として、換気カプセル型発汗計(SKINOS SMN-100)を用いた。
【0047】
《インピーダンスの測定》
実施例1の発汗量測定装置3について、金属電極23、24の間に、塩分濃度が0.25wt%の塩水を0μL(滴下しなかった場合)、1μL、10μL、15μL、16μL、25μL、及び100μL滴下したものについて、それぞれ滴下後の電極間のインピーダンスについて測定周波数を変更して計測した。
【0048】
計測結果を、図5に示す。図5は、実施例1の発汗量測定装置3が有する一対の導電性布帛部分21、22間のインピーダンスと塩水の滴下量との関係を示すグラフである。
【0049】
図5に示すように、塩水を滴下していない状態から、塩水の滴下量が増加するにしたがって、インピーダンスが低下した。
【0050】
この結果は、実施例1の発汗量測定装置3は、0.25wt%塩水の滴下量をμLのオーダーで検出できることを示している。
【0051】
次いで、実施例1及び2の発汗量測定装置3、4それぞれについて、塩水濃度0.25wt%の塩水滴下量を変更して電極間インピーダンス計測を行い、熱可塑性樹脂被膜の有無による電極間インピーダンスの影響を確認した。
【0052】
計測結果を、図6及び7に示す。図6は、測定周波数50kHzにおける実施例1及び実施例2の発汗量測定装置3、4が有する一対の導電性布帛部分21、22間のインピーダンスそれぞれと、塩水の滴下量との関係を示すグラフである。図7は、測定周波数1MHzにおける実施例1及び実施例2の発汗量測定装置3、4が有する一対の導電性布帛部分21、22間のインピーダンスそれぞれと、塩水の滴下量との関係を示すグラフである。
【0053】
図6及び図7を比較すると、実施例1の発汗量測定装置3の方が、実施例2の発汗量測定装置4よりも塩水の滴下によるインピーダンスの減少は大きかった。しかしながら、実施例1及び実施例2の発汗量測定装置3、4共に、塩水の滴下量に応じてインピーダンスの増減が確認された。
【0054】
次いで、実施例2の発汗量測定装置4及び参考例1の発汗量測定装置それぞれについて、被験者の手の甲に装着し、発汗量計測を実施した。
【0055】
被験者に対して全体で3分間の計測を行い、このうち90秒間は安静状態、90秒間はフィットネスバイク(ALINCO 6010R)によるサイクリングを行いながら計測を行った。なお、布帛電極のインピーダンスはインピーダンスアナライザ(HIOKI IM3570)を用いて測定した。
【0056】
測定結果を図8に示す。図8において、実施例2に関するグラフは、被験者に実施例2の発汗量測定装置4を装着させて安静時から運動時に連続的に移行したとき(運動前後)の運動時間(横軸)とインピーダンス(左側縦軸)との関係を示している。また、図8において、参考例1に関するグラフは、被験者に参考例1の発汗量測定装置を装着させて安静時から運動時に連続的に移行したとき(運動前後)の運動時間(横軸)と発汗量(Sweat Rate:右側縦軸)との関係を示している。
【0057】
図8に示すように、発汗のない安静時には、実施例2の発汗量測定装置4によって計測されたインピーダンス、参考例1の発汗量測定装置によって計測された発汗量は共にほぼ一定であった。これに対して、発汗の多い運動時には、実施例2の発汗量測定装置4によって計測されたインピーダンスは、運動開始後から徐々にインピーダンスが減少する変化が見られた。参考例1の発汗量測定装置によって計測された発汗量(Sweat Rate)は運動開始後から徐々に増加する変化が見られた。
【0058】
図8から、実施例2の発汗量測定装置4は、参考例1の発汗量測定装置と同様に、被験者の安静時及び運動時における発汗量を計測することができるといえる。
【符号の説明】
【0059】
1、2、3、及び4 発汗量測定装置
10 布帛
11 2層式ポリエステル編物
21及び22 導電性布帛部分
23及び24 金属電極
30 絶縁性布帛部分
40 樹脂被膜
50 マスキング
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8