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特開2022-97032コンクリート構造体用型枠およびコンクリート構造体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022097032
(43)【公開日】2022-06-30
(54)【発明の名称】コンクリート構造体用型枠およびコンクリート構造体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   E04B 5/38 20060101AFI20220623BHJP
   E04G 21/02 20060101ALI20220623BHJP
【FI】
E04B5/38 A
E04G21/02
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020210380
(22)【出願日】2020-12-18
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-08-18
(71)【出願人】
【識別番号】594088444
【氏名又は名称】早川 義行
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】早川 義行
【テーマコード(参考)】
2E172
【Fターム(参考)】
2E172AA05
2E172DA05
2E172DB07
(57)【要約】
【課題】従来の一般的な方法と比べて施工日数を短縮できるとともに、十分な強度を有するコンクリート構造体を形成することが可能なコンクリート構造体用型枠およびコンクリート構造体の製造方法を提供する。
【解決手段】コンクリート構造体用型枠3Aは、コンクリート製の本体部を備える。本体部は、第1面3Aaと、当該第1面3Aaと反対側に位置する第2面とを含む。第1面3Aaには、複数の溝4が形成されている。このようなコンクリート構造体用型枠3Aを用いれば、上述のようにコンクリート構造体用型枠3Aとコンクリート材料とが一体化したコンクリート構造体を得ることができる。このため、従来のようにコンクリート構造体を構成するコンクリート材料が固化した後、型枠を除去する工程を実施する必要が無い。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート製の本体部を備え、
前記本体部は、第1面と、前記第1面と反対側に位置する第2面とを含み、
前記第1面には、複数の溝が形成されている、コンクリート構造体用型枠。
【請求項2】
前記第1面上に塗布された水性接着剤層を備える、請求項1に記載のコンクリート構造体用型枠。
【請求項3】
前記本体部の引張強度は、1500N/mm以上である、請求項1または2に記載のコンクリート構造体用型枠。
【請求項4】
前記本体部を構成する前記コンクリートの内部には、補強部材が分散配置されている、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のコンクリート構造体用型枠。
【請求項5】
請求項1に記載のコンクリート構造体用型枠を支柱上に設置することで、コンクリート構造体の外形を規定する枠部を形成する工程と、
前記枠部の内部にコンクリート材料を供給する工程と、
前記コンクリート材料を固化させる工程と、
前記支柱を除去する工程とを備え、
前記枠部を形成する工程では、前記コンクリート構造体用型枠の前記第1面が前記枠部の内側に面しており、
前記固化させる工程においては、前記コンクリート構造体用型枠と前記コンクリート材料とが一体化された前記コンクリート構造体が形成される、コンクリート構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コンクリート構造体用型枠およびコンクリート構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート建築物の2階床スラブなど、コンクリート構造体の一例であるコンクリートスラブの従来の製造方法は以下の通りである。まず、たとえば合板で構成された型枠を所定高さに水平に敷き並べる。さらに、型枠の下面は、パイプなどからなる支保工により支持される。型枠の上に耐力上必要な量の鉄筋を配筋する。型枠上にコンクリートを打設した後、必要な養生期間経過後に支保工および型枠を解体する。上述した従来の一般的なコンクリートスラブの製造方法では、コンクリートの養生や型枠などの解体のため、施工日数が多く必要であった。そこで、特開2011-69151号公報(特許文献1)には、型枠と打設されたコンクリートとが一体化したものをコンクリートスラブとすることで、型枠の解体を不要として施工日数を短縮することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-69151号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のように型枠と打設されたコンクリートとからコンクリート構造体を構成する場合、当該コンクリート構造体が十分な強度(引張強度)を備えるためには、型枠とコンクリートとの接合部における接合強度を十分に高くする必要がある。しかし、上記特開2011-69151号公報においては、型枠とコンクリートとの接合強度を向上させることについて何ら言及していない。
【0005】
本開示は、上記の課題を鑑み成されたものである。本開示の目的は、従来の一般的な方法と比べて施工日数を短縮できるとともに、十分な強度を有するコンクリート構造体を形成することが可能なコンクリート構造体用型枠およびコンクリート構造体の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に従ったコンクリート構造体用型枠は、コンクリート製の本体部を備える。本体部は、第1面と、当該第1面と反対側に位置する第2面とを含む。第1面には、複数の溝が形成されている。
【0007】
本開示に係るコンクリート構造体の製造方法は、枠部を形成する工程と、コンクリート材料を供給する工程と、固化させる工程と、除去する工程とを備える。枠部を形成する工程では、上記コンクリート構造体用型枠を支柱上に設置することで、コンクリート構造体の外形を規定する枠部を形成する。コンクリート材料を供給する工程では、枠部の内部にコンクリート材料を供給する。固化させる工程では、コンクリート材料を固化させる。除去する工程では、支柱を除去する。枠部を形成する工程では、コンクリート構造体用型枠の第1面が枠部の内側に面している。固化させる工程においては、コンクリート構造体用型枠とコンクリート材料とが一体化されたコンクリート構造体が形成される。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、従来の一般的な方法と比べて施工日数を短縮できるとともに、十分な強度を有するコンクリート構造体が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施の形態に係る建築物の模式図である。
図2図1中の点線で囲まれた領域IIの拡大断面模式図である。
図3】型枠の第1面の拡大断面模式図である。
図4】型枠の第1面の態様を示す拡大平面模式図である。
図5】本実施の形態のコンクリート構造体の製造方法の第1工程を示す概略図である。
図6】本実施の形態のコンクリート構造体の製造方法の第2工程を示す概略図である。
図7】本実施の形態のコンクリート構造体の製造方法の第3工程を示す概略図である。
図8】本実施の形態に係るコンクリート構造体の効果を説明するための模式図である。
図9】本実施の形態に係るコンクリート構造体の効果を説明するための模式図である。
図10】本実施の形態に係るコンクリート構造体の効果を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本実施の形態について、図に基づいて説明する。なお、同一の構成には同一の参照番号を付し、その説明は繰り返さない。
【0011】
<建築物およびコンクリート構造体の構成>
図1は、本実施の形態に係る建築物の模式図である。図2は、図1中の点線で囲まれた領域IIの拡大断面模式図である。
【0012】
図1に示すように、本実施の形態の建築物は、壁部2とコンクリート構造体3の一例であるスラブとを備える。壁部2は、地面などの地盤面(図示せず)の上に複数設けられる。当該壁部2を繋ぐようにコンクリート構造体3が設けられている。スラブとしてのコンクリート構造体3は当該建築物の水平構造体であって、各階の床部分を支持するものである。壁部2は地盤面にほぼ垂直な方向に延びている。スラブであるコンクリート構造体3は地盤面にほぼ平行に、すなわちほぼ水平方向に延びるように形成されている。
【0013】
図2に示すように、コンクリート構造体3は、コンクリート構造体用型枠3A(以下、型枠3Aとも呼ぶ)と、コンクリート材料3Bとが一体化された構成を有している。コンクリート構造体用型枠3Aは、たとえば矩形の平面形状を有する薄板状の部材である。コンクリート構造体用型枠3Aの具体的な構成は後述する。図2におけるコンクリート構造体用型枠3Aの最上面である第1面3Aaに接触するように、コンクリート材料3Bが配置されている。図2におけるコンクリート材料3Bは固化されている。
【0014】
<コンクリート構造体用型枠の構成>
図3は、コンクリート構造体用型枠3Aにおける第1面3Aaの拡大断面模式図である。図4は、型枠3Aの第1面3Aaの態様を示す拡大平面模式図である。
【0015】
本開示に従ったコンクリート構造体用型枠3Aは、コンクリート製の本体部を備える。本体部は、第1面3Aaと、当該第1面3Aaと反対側に位置する第2面3Ab(図2参照)とを含む。第1面3Aaには、図4および図5に示すように複数の溝4が形成されている。溝4は任意の方法で形成することができるが、たとえばダイヤモンド砥粒による研磨により複数の溝4を形成してもよい。
【0016】
溝4が形成された第1面3Aa上には水性接着剤層5が塗布されている。水性接着剤層5を構成する接着剤としては、コンクリートに対して接着力を発揮する人にの接着剤を用いることができる。たとえば、水性接着剤層5の材料としてアルカリ同化型の接着材を用いることができる。
【0017】
上記コンクリート構造体用型枠3Aにおいて、本体部の引張強度は、1500N/mm以上であってもよい。このような引張強度を得るため、コンクリート構造体用型枠3Aは、たとえば一般公知であるコンクリートと、補強部材とを含む。補強部材としては、たとえばガラス繊維または炭素繊維などの繊維状部材を用いることができる。このような補強部材は、コンクリートの内部に分散配置されていてもよい。補強部材として、鉄筋または金属製ワイヤなどを用いてもよい。鉄筋または金属製ワイヤは、第1面3Aaに沿って延びるように配置されていてもよい。鉄筋または金属製ワイヤは互いに平行に並ぶように配置されていてもよい。あるいは、複数の鉄筋または金属製ワイヤが互いに交差する方向に延びる要に配置されていてもよい。
【0018】
<コンクリート構造体の製造方法>
図5図6および図7は、本実施の形態のコンクリート構造体の製造方法の第1工程、第2工程および第3工程を示す概略図である。図5から図7を用いて本実施の形態のコンクリート構造体の製造方法を説明する。
【0019】
本実施の形態に係るコンクリート構造体の製造方法では、図5に示すように、枠部を形成する工程(S10)を実施する。この工程(S10)では、コンクリート構造体の外形を規定する枠部を形成する。具体的には、すでに形成されている壁部2の上部に、上記コンクリート構造体用型枠3Aを配置する。コンクリート構造体用型枠3Aの第1面3Aaは枠部の内側に面している。コンクリート構造体用型枠3Aは、支保工などの支柱20上に設置される。支柱20は、複数の壁部2の間に配置され、コンクリート構造体用型枠3Aを下面から支持する。また、壁部2の上部における外周を囲むように、枠部材21が配置される。枠部材21とコンクリート構造体用型枠3Aと壁部2の頂面とから枠部が形成される。その後、コンクリート構造体用型枠3A上に、形成されるコンクリート構造体の内部に配置される鉄筋などを設置してもよい。
【0020】
次に、図6に示すように、コンクリート材料を供給する工程(S20)を実施する。この工程(S20)では、枠部の内部に流動性を有するコンクリート材料3Bを供給する。
【0021】
次に、固化させる工程(S30)を実施する。この工程(S30)では、コンクリート材料3Bを固化させる。このとき、コンクリート構造体用型枠3Aの第1面3Aaには複数の溝4が形成されているので、コンクリート構造体用型枠3Aの第1面3Aaとコンクリート材料3Bとの接合界面における接合面積を増大させることができる。この結果、コンクリート構造体用型枠3Aとコンクリート材料3Bとの接合強度を向上させることができる。上記接合界面には水性接着剤層5が配置されている場合、当該水性接着剤層5によりコンクリート構造体用型枠3Aとコンクリート材料3Bとの接合強度をさらに向上させることができる。このようにして、コンクリート構造体用型枠3Aとコンクリート材料3Bとが一体化されたコンクリート構造体3であるスラブが形成される。
【0022】
次に、除去する工程(S40)を実施する。この工程(S40)では、支柱20および枠部材21を除去する。このようにして、図1に示した建築物のコンクリート構造体3を得ることができる。
【0023】
このとき、コンクリート構造体用型枠3Aはコンクリート構造体3の一部となっているため、従来の型枠のようにコンクリート構造体から除去する必要が無い。そのため、建築物の施工日数を従来より短縮できる。また、上述のようにコンクリート構造体用型枠3Aの第1面3Aaには複数の溝4が形成されているため、コンクリート構造体用型枠3Aとコンクリート材料3Bとの接合界面における面積は、当該溝4が形成されていない場合より増大している。そのため、コンクリート構造体用型枠3Aとコンクリート材料3Bとの接合強度を早期に向上させることができ、除去する工程(S40)の実施タイミングを早めることができる。さらに、コンクリート構造体用型枠3Aが補強部材を含んでいる場合、形成されるコンクリート構造体3の引張強度をコンクリート構造体用型枠3Aによって負担することができるので、この点からも支柱20の除去タイミングを従来の型枠を用いる場合より早めることができる。
【0024】
また、上述した工程の後、コンクリート構造体3の外周に上層階のための壁部2を従来周知の方法で形成する。さらに、上述したコンクリート構造体3の製造方法を実施する。このように壁部2およびコンクリート構造体3の製造方法を繰り返すことで、図1に示した建築物を得ることができる。
【0025】
<作用効果>
本実施の形態に従ったコンクリート構造体用型枠3Aは、コンクリート製の本体部を備える。本体部は、第1面3Aaと、当該第1面3Aaと反対側に位置する第2面3Abとを含む。第1面3Aaには、複数の溝4が形成されている。
【0026】
このようなコンクリート構造体用型枠3Aを用いれば、上述のようにコンクリート構造体用型枠3Aとコンクリート材料3Bとが一体化したコンクリート構造体3を得ることができる。このため、従来のようにコンクリート構造体を構成するコンクリート材料が固化した後、型枠を除去する工程を実施する必要が無い。このため、コンクリート構造体の施工期間を短縮できる。
【0027】
さらに、コンクリート構造体用型枠3Aの第1面3Aaには複数の溝4が形成されているため、コンクリート構造体用型枠3Aの第1面3Aaとコンクリート材料3Bとの接合界面における接合面積を増大させることができる。この結果、コンクリート構造体用型枠3Aとコンクリート材料3Bとの接合強度を向上させることができる。
【0028】
上記コンクリート構造体用型枠は、第1面上に塗布された水性接着剤層5を備えていてもよい。この場合、コンクリート構造体用型枠3Aとコンクリート材料3Bとの接合強度をさらに向上させることができる。
【0029】
上記コンクリート構造体用型枠において、本体部の引張強度は、1500N/mm以上であってもよい。当該引張強度は、2000N/mm以上であってもよく、2500N/mm以上であってもよい。当該引張強度は、3400N/mm以下であってもよい。本体部の引張強度は、通常のコンクリートの圧縮強度の10倍以上20倍以下としてもよい。
【0030】
この場合、コンクリート構造体用型枠3A上に配置されたコンクリート材料3Bが配置されコンクリート構造体3が形成される際、当該コンクリート構造体3における引張強度をコンクリート構造体用型枠3Aによって早期に得ることができる。
【0031】
上記コンクリート構造体用型枠3Aにおいて、本体部を構成するコンクリートの内部には、補強部材が分散配置されていてもよい。補強部材としては、たとえば繊維状部材を用いてもよい。繊維状部材としては、たとえばガラス繊維または炭素繊維を用いてもよい。
【0032】
この場合、コンクリート構造体用型枠3Aの引張強度を容易に向上させることができる。
【0033】
なお、コンクリート構造体用型枠3Aの厚さはたとえば15mm以下とすることができる。また、コンクリート構造体用型枠3Aは、上述のようにスラブとしてのコンクリート構造体3の一部を構成するように用いてもよいが、地面に対して垂直方向に延びる壁部2の一部を構成する材料として用いてもよい。
【0034】
本実施の形態に係るコンクリート構造体3の製造方法は、枠部を形成する工程(S10)と、コンクリート材料3Bを供給する工程(S20)と、固化させる工程(S30)と、除去する工程(S40)とを備える。枠部を形成する工程(S10)では、上記コンクリート構造体用型枠3Aを支柱20上に設置することで、コンクリート構造体3の外形を規定する枠部を形成する。コンクリート材料3Bを供給する工程(S20)では、枠部の内部にコンクリート材料3Bを供給する。固化させる工程(S30)では、コンクリート材料3Bを固化させる。除去する工程(S40)では、支柱20を除去する。枠部を形成する工程(S10)では、コンクリート構造体用型枠3Aの第1面3Aaが枠部の内側に面している。固化させる工程(S30)においては、コンクリート構造体用型枠3Aとコンクリート材料3Bとが一体化されたコンクリート構造体3が形成される。
【0035】
このようにすれば、コンクリート構造体3の構成部材としてコンクリート構造体用型枠3Aを利用するため、従来のように型枠を除去する必要が無い。さらに、コンクリート構造体用型枠3Aとコンクリート材料3Bとの接合強度が向上するため、コンクリート構造体用型枠3Aの引張強度を利用してコンクリート構造体3を早期に支持することができる。この結果、支柱20を除去する工程(S40)の実施タイミングを従来より早めることができる。
【0036】
上述した本実施の形態に係るコンクリート構造体用型枠3Aの効果をより詳しく説明する。図8図9および図10は、本実施の形態に係るコンクリート構造体の効果を説明するための模式図である。図8および図9は本実施の形態に係るコンクリート構造体の参考例を示し、図10は本実施の形態に係るコンクリート構造体を示している。
【0037】
まず、従来の製造方法により得られたコンクリート構造体3においては、図8に示すように内部に配置された鉄筋3Cが引張力を負担する。そして、コンクリート材料3Bと鉄筋3Cとの接合強度が十分であれば、図8に示す矢印30で示す方向の応力が加えられた場合でも、コンクリート構造体3は十分な引張強度を有し、特に問題は発生しない。しかし、このようにコンクリート材料3Bと鉄筋3Cとの接合強度を十分に高めるためには相当の時間が必要である。そのため、図6に示したようにコンクリート材料3Bを打設した後、相当期間支柱20により支持した状態を維持する必要がある。
【0038】
一方、支柱20を除去する工程(S40)を実施するタイミングが早すぎると、鉄筋3Cとコンクリート材料3Bとの接合強度が不十分となる。このとき、図9の矢印30に示す方向の応力が加えられた場合に、矢印32に示す引張力によってコンクリート構造体3の下面に亀裂31が発生し、最悪コンクリート構造体3が破壊される恐れがある。
【0039】
上記のような従来の方法に対し、本実施の形態に係るコンクリート構造体用型枠3Aを用いたコンクリート構造体3の製造方法では、図10に示すようにコンクリート構造体用型枠3Aとコンクリート材料3Bとが一体化することでコンクリート構造体3が構成されている。そのため、型枠を除去する必要が無い。さらに、コンクリート構造体用型枠3Aとコンクリート材料3Bとが早期に一体化することから、矢印32に示すコンクリート材料3Bにかかる引張力を、コンクリート構造体用型枠3Aによって負担することができる。つまり、コンクリート材料3Bと鉄筋3Cとの接合強度に頼らず、コンクリート構造体用型枠3Aを利用してコンクリート構造体3の引張強度を施工の早い段階から高めることができる。このため、除去する工程(S40)を実施するタイミングを従来より早めることができる。
【0040】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の基本的な範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0041】
2 壁部、3 コンクリート構造体、3A コンクリート構造体用型枠、3Aa 第1面、3Ab 第2面、3B コンクリート材料、3C 鉄筋、4 溝、5 水性接着剤層、20 支柱、21 枠部材、30,32 矢印、31 亀裂。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【手続補正書】
【提出日】2021-05-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート製の本体部を備え、
前記本体部は、第1面と、前記第1面と反対側に位置する第2面とを含み、
前記第1面には、複数の研磨溝が形成され、さらに、
前記第1面上に塗布された水性接着剤層を備える、コンクリート構造体用型枠。
【請求項2】
前記本体部の引張強度は、1500N/mm以上である、請求項1に記載のコンクリート構造体用型枠。
【請求項3】
前記本体部を構成する前記コンクリートの内部には、補強部材が分散配置されている、請求項1または請求項に記載のコンクリート構造体用型枠。
【請求項4】
前記補強部材は、繊維状部材である、請求項3に記載のコンクリート構造体用型枠。
【請求項5】
請求項1に記載のコンクリート構造体用型枠を支柱上に設置することで、コンクリート構造体の外形を規定する枠部を形成する工程と、
前記枠部の内部にコンクリート材料を供給する工程と、
前記コンクリート材料を固化させる工程と、
前記支柱を除去する工程とを備え、
前記枠部を形成する工程では、前記コンクリート構造体用型枠の前記第1面が前記枠部の内側に面しており、
前記固化させる工程においては、前記コンクリート構造体用型枠と前記コンクリート材料とが一体化された前記コンクリート構造体が形成される、コンクリート構造体の製造方法。