(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022097069
(43)【公開日】2022-06-30
(54)【発明の名称】ジャンパ線用クランプ
(51)【国際特許分類】
H02G 7/05 20060101AFI20220623BHJP
H01R 11/15 20060101ALI20220623BHJP
【FI】
H02G7/05 060
H01R11/15
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020210441
(22)【出願日】2020-12-18
(71)【出願人】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】難波 侑矢
(72)【発明者】
【氏名】小清水 秀則
【テーマコード(参考)】
5G367
【Fターム(参考)】
5G367EC03
5G367EF01
(57)【要約】
【課題】ジャンパ線を架空送配電線に容易にクランプするジャンパ線用クランプを提供する。
【解決手段】クランプ10は、第1導電部材1、第2導電部材2、及び六角ボルト3を備えている。第1導電部材1は、開閉自在な第1把持部材11を有する。第1導電部材1は、ジャンパ線Wjを外周方向から導入できる。第2導電部材2は、開閉自在な第2把持部材12を有する。第2導電部材2は、電線Wを外周方向から導入できる。六角ボルト3は、ジャンパ線Wjと電線Wがそれらの電線が延びる方向が所定角度で交差できるように、間隔を設けて、第1導電部材1と第2導電部材2を固定できる。クランプ10は、開放したジャンパ線Wjの端末を電線Wに容易にクランプでき、ジャンパ線Wjの端末と電線Wを安全に接続できる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジャンパ線と架空送配電線がそれらの電線が延びる方向が所定角度で交差可能なジャンパ線用クランプであって、
ジャンパ線を外周方向から導入可能に、開閉自在な第1把持部材を有する第1導電部材と、
架空送配電線を外周方向から導入可能に、開閉自在な第2把持部材を有する第2導電部材と、
ジャンパ線と架空送配電線がそれらの電線が延びる方向が所定角度で交差可能に、間隔を設けて、前記第1導電部材と前記第2導電部材を固定する締結部材と、を備えている、ジャンパ線用クランプ。
【請求項2】
前記第1導電部材は、その上面から穿設し、ジャンパ線を外周方向から導入可能な第1受入溝を有し、
前記第2導電部材は、その上面から穿設し、架空送配電線を外周方向から導入可能な第2受入溝を有し、
前記第1把持部材は、その内壁から穿設し、ジャンパ線を外周方向から導入可能な第3受入溝を有し、
前記第2把持部材は、その内壁から穿設し、架空送配電線を外周方向から導入可能な第4受入溝を有している、請求項1記載のジャンパ線用クランプ。
【請求項3】
前記第1導電部材は、
ジャンパ線が延びる方向と略平行に配置し、前記第1導電部材と回転自在に連結した第1回転軸と、
前記第1回転軸の外周方向に突出し、先端部側にナット部材を締結することで、前記第1把持部材を前記第1導電部材に固定できる一つ以上の第1雄ねじ部材と、を更に備え、
前記第2導電部材は、
架空送配電線が延びる方向と略平行に配置し、前記第2導電部材と回転自在に連結した第2回転軸と、
前記第2回転軸の外周方向に突出し、先端部側にナット部材を締結することで、前記第2把持部材を前記第2導電部材に固定できる一つ以上の第2雄ねじ部材と、を更に備えている、請求項1又は2記載のジャンパ線用クランプ。
【請求項4】
前記締結部材を内部に挿通でき、前記第1導電部材と前記第2導電部材との対向間隔を規定する円筒部材を更に備えている、請求項1から3のいずれかに記載のジャンパ線用クランプ。
【請求項5】
前記第1導電部材及び前記第2導電部材は、円板状に形成した第1菊座部をそれらの側面に有し、
前記円筒部材は、円板状に形成した第2菊座部を両端部に有し、
前記第1菊座部は、略円形の第1菊座面の中心から放射状に延びると共に、この第1菊座面から隆起した複数の第1突条を有し、
前記第2菊座部は、略円形の第2菊座面の中心から放射状に延びると共に、この第2菊座面から隆起した複数の第2突条を有し、
前記第1突条と前記第2突条が回転方向に噛み合うことで、前記第1導電部材と前記第2導電部材の交差角度を固定できる、請求項4記載のジャンパ線用クランプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジャンパ線用クランプに関する。特に、鉄塔アームなどを跨いだ状態で配置したジャンパ線をその中央部で開放した場合に、開放したジャンパ線の端末を鉄塔に架設した架空送配電線にクランプするジャンパ線用クランプの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
架空送配電線に事故が発生した場合には、特定の鉄塔アームを跨いだ状態で配置したジャンパ線をその中央部で一時的に開放している。そして、ジャンパ線を開放した区間以外で架空送配電線を早急に事故から復帰させている。又、鉄塔の建替工事又は架空送配電線の張替工事を実施するに当たっては、これらの工事期間に限定して、ジャンパ線を開放し、区間停電している。
【0003】
従来は、架空送配電線の事故又は一時的な送電系統の開放対応として、ジャンパ線が連結又は切り離しできない構造の場合には、ジャンパ線を鉄塔上で切断している。そして、PG(Parallel Grooved)クランプを用いて、開放したジャンパ線の端末を架空送配電線に保持している。又は、バインド線を用いて、開放したジャンパ線の端末を架空送配電線に保持している。
【0004】
PGクランプは、一方の電線と他方の電線を略平行に保持できる。このようなPGクランプに類似したものとして、口径の異なる分岐線が架空送配電線に対して直交するように接続できる電線接続用T形クランプが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図6は、ジャンパ線の一例による配置を示す正面図である。
図6を参照すると、鉄塔Tは、地上に立設している。鉄塔Tは、略水平方向にアームAを突出している。架空送配電線(以下、電線という)Wは、碍子連Gを介して、アームAに架設されている。ジャンパ線Wjは、鉄塔TのアームAを跨いだ状態で配置されている。
【0007】
図6を参照すると、引留クランプCは、電線Wを引き留めると共に、碍子連Gに連結している。引留クランプCから延出した電線Wは、ジャンパ線Wjを開放時には、図示しないPGクランプを用いて、ジャンパ線Wjと機械的及び電気的に接続している。
【0008】
図6を参照すると、碍子連Gは、その両端部に一対のアークホーンH・Hを配置している。アークホーンHは、落雷などによるフラッシュオーバーを一対のアークホーンH・Hの間に起させて、碍子連Gがアーク熱によって破壊することを抑制している。
【0009】
図6を参照して、鉄塔Tの建替工事又は電線Wの張替工事を実施するに当たっては、ジャンパ線Wjの中央部を切断することで、ジャンパ線Wjを開放している。
【0010】
次に、ジャンパ線の開放工事の一例を説明する。
図7は、ジャンパ線の一例による配置を示す正面図であり、
図7(A)は、ジャンパ線の中央部を切断する前の状態図、
図7(B)は、ジャンパ線の中央部を切断した状態図である。
図8は、ジャンパ線の一例による配置を示す正面図であり、切断したジャンパ線を折り返してジャンパ線の端末を架空送配電線に保持した状態図である。
【0011】
図7(A)を参照して、ジャンパ線Wjの中央部を切断する前は、一組のロープR・Rを用いて、ジャンパ線Wjを吊り下げておく。ロープRの上端部は、碍子連Gの端部に係留している。ロープRの下端部は、ジャンパ線Wjに係留している。
【0012】
図7(A)に示した状態から、ジャンパ線Wjの中央部を切断すると、ジャンパ線Wjは、鉛直方向に垂れ下がることなく、
図7(B)に示すように、ロープRで保持されている。次に、開放したジャンパ線Wjの端末を電線Wに保持した後に、ロープRを撤去する。
【0013】
図8を参照すると、切断したジャンパ線Wjを電線W側に折り返し、バインド線Bを用いて、ジャンパ線Wjの端末を電線Wと略平行に保持している。又、図示しないPGクランプを用いて、ジャンパ線Wjの端末を電線Wと略平行に保持することもある。
【0014】
図8を参照して、ジャンパ線のクランプ工事では、バインド線B又はPGクランプを用いて、ジャンパ線Wjの端末を電線Wと略平行に保持しようとするが、ジャンパ線Wjは、剛性が強いので、人力でジャンパ線Wjの端末を電線Wと略平行に保持することが容易でないという問題がある。又、ジャンパ線Wjの端末を電線Wと略平行に保持しようとすることで、ジャンパ線Wjの跳ね返りで作業員に接触する心配がある。
【0015】
開放したジャンパ線の端末を架空送配電線と略平行に保持することなく、開放したジャンパ線の端末を架空送配電線に容易にクランプするジャンパ線用クランプが求められている。そして、以上のことが本発明の課題といってよい。
【0016】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、開放したジャンパ線の端末を架空送配電線と略平行に保持することなく、開放したジャンパ線の端末を架空送配電線に容易にクランプするジャンパ線用クランプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者らは、ジャンパ線を外周方向から導入可能に、開閉自在な第1把持部材を有する第1導電部材と、架空送配電線を外周方向から導入可能に、開閉自在な第2把持部材を有する第2導電部材でジャンパ線用クランプを構成し、ジャンパ線と架空送配電線がそれらの電線が延びる方向が所定角度で交差するように、間隔を設けて、第1導電部材と第2導電部材を締結部材で固定することで、ジャンパ線を架空送配電線に容易にクランプできると考え、これに基づいて、以下のような新たなジャンパ線用クランプを発明するに至った。
【0018】
(1)本発明によるジャンパ線用クランプは、ジャンパ線と架空送配電線がそれらの電線が延びる方向が所定角度で交差可能なジャンパ線用クランプであって、ジャンパ線を外周方向から導入可能に、開閉自在な第1把持部材を有する第1導電部材と、架空送配電線を外周方向から導入可能に、開閉自在な第2把持部材を有する第2導電部材と、ジャンパ線と架空送配電線がそれらの電線が延びる方向が所定角度で交差可能に、間隔を設けて、前記第1導電部材と前記第2導電部材を固定する締結部材と、を備えている。
【0019】
(2)前記第1導電部材は、その上面から穿設し、ジャンパ線を外周方向から導入可能な第1受入溝を有し、前記第2導電部材は、その上面から穿設し、架空送配電線を外周方向から導入可能な第2受入溝を有し、前記第1把持部材は、その内壁から穿設し、ジャンパ線を外周方向から導入可能な第3受入溝を有し、前記第2把持部材は、その内壁から穿設し、架空送配電線を外周方向から導入可能な第4受入溝を有していることが好ましい。
【0020】
(3)前記第1導電部材は、ジャンパ線が延びる方向と略平行に配置し、前記第1導電部材と回転自在に連結した第1回転軸と、前記第1回転軸の外周方向に突出し、先端部側にナット部材を締結することで、前記第1把持部材を前記第1導電部材に固定できる一つ以上の第1雄ねじ部材と、を更に備え、前記第2導電部材は、架空送配電線が延びる方向と略平行に配置し、前記第2導電部材と回転自在に連結した第2回転軸と、前記第2回転軸の外周方向に突出し、先端部側にナット部材を締結することで、前記第2把持部材を前記第2導電部材に固定できる一つ以上の第2雄ねじ部材と、を更に備えていることが好ましい。
【0021】
(4)前記締結部材を内部に挿通でき、前記第1導電部材と前記第2導電部材との対向間隔を規定する円筒部材を更に備えていることが好ましい。
【0022】
(5)前記第1導電部材及び前記第2導電部材は、円板状に形成した第1菊座部をそれらの側面に有し、前記円筒部材は、円板状に形成した第2菊座部を両端部に有し、前記第1菊座部は、略円形の第1菊座面の中心から放射状に延びると共に、この第1菊座面から隆起した複数の第1突条を有し、前記第2菊座部は、略円形の第2菊座面の中心から放射状に延びると共に、この第2菊座面から隆起した複数の第2突条を有し、前記第1突条と前記第2突条が回転方向に噛み合うことで、前記第1導電部材と前記第2導電部材の交差角度を固定できることが好ましい。
【発明の効果】
【0023】
本発明によるジャンパ線用クランプは、開放したジャンパ線を架空送配電線側に折り返し、ジャンパ線の端末を架空送配電線にクランプするのに好適であり、ジャンパ線と架空送配電線を任意の交差角度で固定できるので、開放したジャンパ線の端末を架空送配電線に容易にクランプでき、ジャンパ線の端末と架空送配電線を安全に接続できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の一実施形態によるジャンパ線用クランプの構成を示す斜視図である。
【
図2】前記実施形態によるジャンパ線用クランプの構成を示す斜視分解組立図である。
【
図3】前記実施形態によるジャンパ線用クランプの構成を示す図であり、
図3(A)は、ジャンパ線用クランプの平面図、
図3(B)は、ジャンパ線用クランプの正面図である。
【
図4】前記実施形態によるジャンパ線用クランプの構成を示す右側面図であり、
図4(A)は、第1導電部材と第2導電部材を略平行に配置した状態図、
図4(B)は、第1導電部材と第2導電部材を任意の交差角度で配置した状態図である。
【
図5】前記実施形態によるジャンパ線用クランプを用いたジャンパ線の一例による配置を示す正面図である。
【
図6】ジャンパ線の一例による配置を示す正面図である。
【
図7】ジャンパ線の一例による配置を示す正面図であり、
図7(A)は、ジャンパ線の中央部を切断する前の状態図、
図7(B)は、ジャンパ線の中央部を切断した状態図である。
【
図8】ジャンパ線の一例による配置を示す正面図であり、切断したジャンパ線を折り返してジャンパ線の端末を架空送配電線に保持した状態図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態を説明する。
【0026】
[ジャンパ線用クランプの構成]
最初に、本発明の一実施形態によるジャンパ線用クランプの構成を説明する。なお、従来技術で付した符号と同じ符号を付した構成品は、それらの作用を同じにするので以下説明を省略することがある。
【0027】
(全体構成)
図1から
図4を参照すると、本発明の一実施形態によるジャンパ線用クランプ(以下、クランプと略称する)10は、ジャンパ線Wjと電線Wがそれらの電線が延びる方向が所定角度で交差できる。クランプ10は、直方体状の第1導電部材1、直方体状の第2導電部材2、及び、締結部材となる六角ボルト3を備えている。
【0028】
図1から
図4を参照すると、第1導電部材1は、開閉自在な板状の第1把持部材11を有している。第1導電部材1は、ジャンパ線Wjを外周方向から導入できる。同様に、第2導電部材2は、開閉自在な板状の第2把持部材12を有している。第2導電部材2は、電線Wを外周方向から導入できる。なお、第1導電部材1と第2導電部材2、及び、第1把持部材11と第2把持部材12は、同じものであるが説明の便宜上、符号を変えて区別した。
【0029】
図1から
図4を参照すると、六角ボルト3は、ジャンパ線Wjと電線Wがそれらの電線が延びる方向が所定角度で交差できるように、間隔を設けて、第1導電部材1と第2導電部材2を固定できる。
【0030】
図1から
図4を参照すると、第1導電部材1と第2導電部材2、及び、第1把持部材11と第2把持部材12は、同じものであるので、必要に応じて、第1導電部材1及び第1把持部材11を代表して、クランプ10の構成を説明する。
【0031】
(第1及び第2導電部材の構成)
次に、第1及び第2導電部材1・2の構成を説明する。
図1から
図4を参照すると、第1導電部材1は、第1把持部材11を上面の一方の端部にヒンジ1hで連結している。第2導電部材2は、第2把持部材12を上面の一方の端部にヒンジ2hで連結している。クランプ10は、ヒンジ1hとヒンジ2hが対向した状態で配置することが好ましい。
【0032】
図2又は
図3(B)を参照すると、第1導電部材1は、その上面から穿設し、ジャンパ線Wjを外周方向から導入可能な第1受入溝1dを有している。第2導電部材2は、その上面から穿設し、電線Wを外周方向から導入可能な第2受入溝2dを有している。
【0033】
図2又は
図3(B)を参照すると、第1導電部材1は、後述する第1雄ねじ部材41を導入できる一組の切り欠き溝1s・1sを切り欠いている。第2導電部材2は、後述する第2雄ねじ部材42を導入できる一組の切り欠き溝2s・2sを切り欠いている。
【0034】
図2又は
図3(B)を参照すると、第1導電部材1は、後述する第1回転軸4aを挿入できる第1挿入穴411を開口している。第1挿入穴411は、第1導電部材1の正面から後面に向けて貫通している。第2導電部材2は、後述する第2回転軸4bを挿入できる第2挿入穴421を開口している。第2挿入穴421は、第2導電部材2の正面から後面に向けて貫通している。
【0035】
図2を参照すると、第1導電部材1は、六角ボルト3を挿入できる穴111を一方の側面から他方の側面に向けて開口している。第2導電部材2は、六角ボルト3を挿入できる穴111を他方の側面から一方の側面に向けて開口している。
【0036】
(第1及び第2把持部材の構成)
次に、第1及び第2把持部材11・12の構成を説明する。
図2又は
図3(B)を参照すると、第1把持部材11は、その内壁から穿設し、ジャンパ線Wjを外周方向から導入可能な第3受入溝11dを有している。第1導電部材1に対して第1把持部材11を閉じることで、第1受入溝1dと第3受入溝11dで、ジャンパ線Wjを外周方向から挟持できる。
【0037】
図2又は
図3(B)を参照すると、第2把持部材12は、その内壁から穿設し、電線Wを外周方向から導入可能な第4受入溝12dを有している。第2導電部材2に対して第2把持部材12を閉じることで、第2受入溝2dと第4受入溝12dで、電線Wを外周方向から挟持できる。
【0038】
次に、実施形態による第1及び第2回転軸4a・4bの構成を説明する。
図1又は
図3(B)を参照すると、第1導電部材1は、第1回転軸4aを更に備えている。第1回転軸4aは、ジャンパ線Wjが延びる方向と略平行に配置されている。第1回転軸4aは、第1挿入穴411に挿入され、第1導電部材1に対して軸方向の移動が規制されている。
【0039】
図1又は
図3(B)を参照すると、第2導電部材2は、第2回転軸4bを更に備えている。第2回転軸4bは、電線Wが延びる方向と略平行に配置されている。第1回転軸4aは、ジャンパ線Wjが延びる方向と略平行に配置されている。第2回転軸4bは、第2挿入穴421に挿入され、第2導電部材2に対して軸方向の移動が規制されている。
【0040】
図1から
図3を参照すると、第1回転軸4aは、一対の第1雄ねじ部材41・41と回転自在に連結している。
図3(B)を参照して、第1雄ねじ部材41を反時計方向に回転することで、第1雄ねじ部材41のねじ部を切り欠き溝1sに導入できる。第1雄ねじ部材41のねじ部にナット部材4nを締結することで、第1把持部材11を第1導電部材1に固定できる(
図1又は
図3参照)。
【0041】
図1から
図3を参照すると、第2回転軸4bは、一対の第2雄ねじ部材42・42と回転自在に連結している。
図3(B)を参照して、第2雄ねじ部材42を時計方向に回転することで、第2雄ねじ部材42のねじ部を切り欠き溝2sに導入できる。第2雄ねじ部材42のねじ部にナット部材4nを締結することで、第2把持部材12を第2導電部材2に固定できる(
図1又は
図3参照)。
【0042】
図1から
図3を参照して、第1回転軸4aと第2回転軸4b、及び、第1雄ねじ部材41と第2雄ねじ部材42は、同じものであるが説明の便宜上符号を変えて区別した。そして、第1雄ねじ部材41を代表して第1雄ねじ部材41の構成を補足する。
【0043】
図2を参照すると、第1雄ねじ部材41は、リング部材41rを頭部に形成している。第1雄ねじ部材41は、アイボルト状に構成している。リング部材41rを切り欠き溝1sに導入後に、リング部材41rに第1回転軸4aを挿入することで、第1雄ねじ部材41にナット部材4nを締結したときに、第1雄ねじ部材41が第1回転軸4aから抜け出すことを防止できる。
【0044】
(円筒部材の構成)
次に、実施形態による円筒部材31の構成を説明する。
図1から
図3を参照すると、クランプ10は、円筒部材31を更に備えている。円筒部材31は、その内部に六角ボルト3の軸部を挿通できる。
図1から
図3を参照して、ヒンジ1hとヒンジ2hが対向した状態で、第1導電部材1の側面と第2導電部材2の側面の間に、円筒部材31を介在させることで、第1導電部材1と第2導電部材2との対向間隔を規定できる。
【0045】
(第1及び第2菊座部の構成)
図2又は
図3(B)を参照すると、第1導電部材1及び第2導電部材2は、円板状に形成した第1菊座部2aをそれらの側面に形成している。円筒部材31は、円板状に形成した第2菊座部3aを両端部に形成している。
【0046】
図2又は
図3(B)を参照すると、第1菊座部2aは、略円形の第1菊座面の中心から放射状に延びると共に、この第1菊座面から隆起した複数の第1突条21sを有している。第2菊座部3aは、略円形の第2菊座面の中心から放射状に延びると共に、この第2菊座面から隆起した複数の第2突条31sを有している(
図2参照)。そして、第1突条21sと第2突条31sが回転方向に噛み合うことで、第1導電部材1と第2導電部材2の交差角度を固定できる。つまり、ジャンパ線Wjと電線Wの交差角度を固定できる(
図4(B)又は
図5参照)。
【0047】
[ジャンパ線用クランプの作用]
次に、実施形態によるクランプ10の動作を説明しながら、クランプ10の作用及び効果を説明する。
【0048】
最初に、
図1から
図3を参照して、第1導電部材1に対して第1把持部材11を開いた状態で、ジャンパ線Wjを第1導電部材1の第1受入溝1dに導入する。次に、第1導電部材1に対して第1把持部材11を閉じた後に、第1回転軸4aを反時計方向に回転し、第1雄ねじ部材41を切り欠き溝1sに導入する。次に、ラチェットレンチなどの工具を用いて、第1雄ねじ部材41にナット部材4nを締結することで、ジャンパ線Wjの端末に第1導電部材1を固定できる。
【0049】
次に、
図1から
図3を参照して、第2導電部材2に対して第2把持部材12を開いた状態で、電線Wを第2導電部材2の第2受入溝2dに導入する。次に、第2導電部材2に対して第2把持部材12を閉じた後に、第2回転軸4bを時計方向に回転し、第2雄ねじ部材42を切り欠き溝2sに導入する。次に、ラチェットレンチなどの工具を用いて、第2雄ねじ部材42にナット部材4nを締結することで、電線Wに第2導電部材2を固定できる。なお、先に第2導電部材2を電線Wに固定した後に、第1導電部材1をジャンパ線Wjに固定してもよい。
【0050】
次に、
図2を参照して、六角ボルト3を第1導電部材1の穴111に挿入した後に、六角ボルト3を円筒部材31の内部に挿通し、六角ボルト3を第2導電部材2の穴211に挿入する。次に、ジャンパ線Wjと電線Wの交差角度を調整して、六角ボルト3の先端部側にナット部材3nを締結する。これにより、ジャンパ線Wjと電線Wの交差角度を固定できる。
【0051】
図5を参照すると、実施形態によるクランプ10は、開放したジャンパ線Wjを電線W側に折り返し、ジャンパ線Wjの端末を電線Wにクランプするのに好適であり、ジャンパ線Wjと電線Wを任意の交差角度で固定できるので、開放したジャンパ線Wjの端末を電線Wに容易にクランプでき、ジャンパ線Wjの端末と電線Wを安全に接続できる。
【0052】
本発明によるジャンパ線用クランプは、以下の効果がある。
(1)二本の電線を平行に保持することなく、ボルトで締めつけて、二本の電線を交差した状態で保持できる。
(2)クランプで電線を把持する作業が容易になり、経験の浅い作業員においても確実な施工が可能でる。
(3)ジャンパ線の跳ね返りで作業員に接触する心配が無くなる。
(4)電線を無理に平行にして保持しないため、電線の変形も抑制され、電線の品質が保たれる。
【符号の説明】
【0053】
1 第1導電部材
2 第2導電部材
3 六角ボルト(締結部材)
10 クランプ(ジャンパ線用クランプ)
11 第1把持部材
12 第2把持部材
W 電線(架空送配電線)
Wj ジャンパ線