(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022097096
(43)【公開日】2022-06-30
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法、プログラム、および粉体貯留施設
(51)【国際特許分類】
B65D 90/48 20060101AFI20220623BHJP
【FI】
B65D90/48 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020210479
(22)【出願日】2020-12-18
(71)【出願人】
【識別番号】000004123
【氏名又は名称】JFEエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上西 晴菜
(72)【発明者】
【氏名】山田 慧一
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 礼央
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 加世子
(72)【発明者】
【氏名】草場 健太郎
【テーマコード(参考)】
3E070
3E170
【Fターム(参考)】
3E070AA19
3E070AA21
3E070AB11
3E070CA20
3E070CB20
3E070VA17
3E070WF30
3E070WG02
3E070WG20
3E170AA15
3E170AA16
3E170AB11
3E170CA10
3E170CB10
3E170VA14
3E170WC20
3E170WD02
3E170WD10
(57)【要約】
【課題】粉体貯留部の内部に貯留された粉体の貯留状態を正確に管理すること。
【解決手段】粉体を貯留可能な粉体貯留部に貯留された粉体の貯留状態を管理する制御部を備えた情報処理装置であって、制御部は、粉体貯留部に設けられたセンサ部からセンサ情報を取得して記憶部に格納し、記憶部からセンサ情報を読み出し、読み出したセンサ情報に基づいて、粉体貯留部に貯留された粉体の貯留残量の実測値を導出し、貯留残量の実測値の時間変化に基づいて、粉体における粉体貯留部の内部の貯留状態が正常状態であるか不良状態であるかを判定する。また、複数のセンサ情報のうちの少なくとも1つのセンサ情報に基づいて、粉体貯留部に貯留された粉体の貯留残量の実測値を導出し、読み出した複数のセンサ情報のうちの少なくとも2つのセンサ情報に基づいて、粉体における粉体貯留部の内部の貯留状態が正常状態であるか不良状態であるかを判定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉体を貯留可能な粉体貯留部に貯留された前記粉体の貯留状態を管理する制御部を備えた情報処理装置であって、
前記制御部は、
前記粉体貯留部に設けられたセンサ部からセンサ情報を取得して記憶部に格納し、
前記記憶部から前記センサ情報を読み出し、
読み出した前記センサ情報に基づいて、前記粉体貯留部に貯留された前記粉体の貯留残量の実測値を導出し、
前記貯留残量の実測値の時間変化に基づいて、前記粉体における前記粉体貯留部の内部の貯留状態が正常状態であるか不良状態であるかを判定する
情報処理装置。
【請求項2】
前記制御部は、
あらかじめ設定された前記粉体の前記貯留残量の予測値と、前記貯留残量の実測値との差が所定値以上になった場合に、前記貯留状態が前記不良状態であると判定する
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記センサ部が前記粉体の上面との距離を計測可能な測距センサを備え、
前記センサ情報が、前記センサ部と前記粉体の上面との距離の情報を含み、
前記制御部は、
前記センサ部と前記粉体の上面との距離の情報に基づいて、前記貯留残量の実測値を導出する
請求項1または2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
粉体を貯留可能な粉体貯留部に貯留された前記粉体の貯留状態を管理する制御部を備えた情報処理装置であって、
前記制御部は、
前記粉体貯留部に設けられた複数のセンサからそれぞれセンサ情報を取得して記憶部に格納し、
前記記憶部から、前記複数のセンサから取得した複数の前記センサ情報を読み出し、
読み出した複数の前記センサ情報のうちの少なくとも1つのセンサ情報に基づいて、前記粉体貯留部に貯留された前記粉体の貯留残量の実測値を導出し、
読み出した複数の前記センサ情報のうちの少なくとも2つのセンサ情報に基づいて、前記粉体における前記粉体貯留部の内部の貯留状態が正常状態であるか不良状態であるかを判定する
情報処理装置。
【請求項5】
前記センサが前記粉体の上面との距離を計測可能な測距センサであり、
複数の前記測距センサは、第1測距センサ、および前記第1測距センサが計測する前記粉体の上面の位置とは異なる位置において前記粉体の上面との距離を計測する第2測距センサを含み、
前記第1測距センサは、前記第1測距センサと前記粉体の上面との距離の情報を含む第1センサ情報を出力し、
前記第2測距センサは、前記第2測距センサと前記粉体の上面との距離の情報を含む第2センサ情報を出力し、
前記制御部は、
前記第1センサ情報に基づいて、前記貯留残量の実測値を導出し、
前記第1センサ情報に含まれる距離の情報と、前記第2センサ情報に含まれる距離の情報とに基づいて、前記粉体における前記粉体貯留部の内部の貯留状態が正常状態であるか不良状態であるかを判定する
請求項4に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記複数のセンサのうちの少なくとも1つのセンサが、前記粉体貯留部における前記粉体を排出する排出部の上方に設けられ、
前記複数のセンサのうちの少なくとも1つのセンサが、前記粉体貯留部における前記排出部以外の上方に設けられる
請求項4または5に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記制御部は、
前記貯留状態が前記正常状態であり、かつ前記貯留残量の実測値があらかじめ設定された所定のしきい値以下になった場合に、前記粉体の種類および量の情報を含む発注情報を生成して出力する
請求項1~6のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項8】
粉体を貯留可能な粉体貯留部に貯留された前記粉体の貯留状態を管理する制御部を備えた情報処理装置が実行する情報処理方法であって、
前記粉体貯留部に設けられたセンサ部からセンサ情報を取得して記憶部に格納し、
前記記憶部から前記センサ情報を読み出し、
読み出した前記センサ情報に基づいて、前記粉体貯留部に貯留された前記粉体の貯留残量の実測値を導出し、
前記貯留残量の実測値の時間変化に基づいて、前記粉体における前記粉体貯留部の内部の貯留状態が正常状態であるか不良状態であるかを判定する
情報処理方法。
【請求項9】
粉体を貯留可能な粉体貯留部に貯留された前記粉体の貯留状態を管理する制御部を備えた情報処理装置が実行する情報処理方法であって、
前記粉体貯留部に設けられた複数のセンサからそれぞれセンサ情報を取得して記憶部に格納し、
前記記憶部から、前記複数のセンサから取得した複数の前記センサ情報を読み出し、
読み出した複数の前記センサ情報のうちの少なくとも1つのセンサ情報に基づいて、前記粉体貯留部に貯留された前記粉体の貯留残量の実測値を導出し、
読み出した複数の前記センサ情報のうちの少なくとも2つのセンサ情報に基づいて、前記粉体における前記粉体貯留部の内部の貯留状態が正常状態であるか不良状態であるかを判定する
情報処理方法。
【請求項10】
粉体を貯留可能な粉体貯留部に貯留された前記粉体の貯留状態を管理する制御部を備えた情報処理装置における前記制御部に、
前記粉体貯留部に設けられたセンサ部からセンサ情報を取得して記憶部に格納し、
前記記憶部から前記センサ情報を読み出し、
読み出した前記センサ情報に基づいて、前記粉体貯留部に貯留された前記粉体の貯留残量の実測値を導出し、
前記貯留残量の実測値の時間変化に基づいて、前記粉体における前記粉体貯留部の内部の貯留状態が正常状態であるか不良状態であるかを判定する
ことを実行させるプログラム。
【請求項11】
粉体を貯留可能な粉体貯留部に貯留された前記粉体の貯留状態を管理する制御部を備えた情報処理装置における前記制御部に、
前記粉体貯留部に設けられた複数のセンサからそれぞれセンサ情報を取得して記憶部に格納し、
前記記憶部から、前記複数のセンサから取得した複数の前記センサ情報を読み出し、
読み出した複数の前記センサ情報のうちの少なくとも1つのセンサ情報に基づいて、前記粉体貯留部に貯留された前記粉体の貯留残量の実測値を導出し、
読み出した複数の前記センサ情報のうちの少なくとも2つのセンサ情報に基づいて、前記粉体における前記粉体貯留部の内部の貯留状態が正常状態であるか不良状態であるかを判定する
ことを実行させるプログラム。
【請求項12】
粉体を貯留する粉体貯留部を備えた粉体貯留施設であって、
請求項1~7のいずれか1項に記載の情報処理装置を備える
粉体貯留施設。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、情報処理方法、プログラム、および粉体貯留施設に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液化天然ガス、灯油、または現像液などの液体を管理する技術が提案され、貯槽内の液体などの流体の残量を管理したり、流体の残量に基づいて自動で流体の受発注を行ったりする流体管理システムが知られている。
【0003】
具体的に、特許文献1には、補充予定時刻における貯槽の流体残量が所定の貯槽下限値と一致するように、経過時間と流体残量との関係からなる第1基準値を設定し、貯槽から流体使用機器に供給された流体の量に関連する実測値を監視し、複数の実測値とその実測値を測定した時点における経過時間とを基に、経過時間と流体残量との関係からなる演算値を演算し、演算値が第1基準値以下の場合に第1警報を発する技術が開示されている。特許文献1に開示された技術においては、複数の実測値を基に演算した演算値に基づいて、流体残量が予定された量よりも多いか少ないかを判定することで、流体残量を判定している。
【0004】
特許文献2には、消費先に設置された流体タンクと、流体タンクの残量が、設定レベル以上の第1の状態、または、設定レベル以下の第2の状態のいずれであるかを検出可能な検出手段と、第1の状態から第2の状態への状態移動完了を、検出手段からの出力信号に基づき判定する状態判別手段と、状態判別手段により第2の状態へ状態移動完了を判別することにより、消費先から販売元へ、消費先を特定する情報を送信手段により自動的に送信する技術が開示されている。特許文献3には、現像液がラボなどに設置されている場合、ラボ側の管理者が、いちいち処理剤の残量を確認せずとも、レベルセンサが、現像液の残量が所定量以下に減少したことに応じて、端末が、メーカーの管理する端末に発注する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013-181601号公報
【特許文献2】特開1997-024999号公報
【特許文献3】特開2002-189277号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来技術において、貯槽内の流体の残量を管理する場合、流体が消費されたり貯槽から排出されたりすると、流体面が下がることから貯槽内の流体の残量は容易に計測することができ、流体管理システムも簡易な構成とすることができる。これにより、流体の残量に基づいて、流体の受発注システムも簡易な構成で構成することができる。
【0007】
しかしながら、従来技術による流体管理システムを粉体に適用して、粉体が貯留された貯槽などの粉体貯留部の内部の粉体の残量を管理しようとすると、粉体特有のアーチやラットホールなどの現象に起因して、貯槽内の粉体の残量を容易に管理することが困難であった。これらのことから、粉体が貯留された粉体貯留部の内部における粉体の貯留状態を正確に管理することができる技術の開発が求められていた。
【0008】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、その目的は、粉体貯留部内に貯留された粉体の貯留状態を正確に管理することができる情報処理装置、情報処理方法、プログラム、および粉体貯留施設を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の一態様に係る情報処理装置は、粉体を貯留可能な粉体貯留部に貯留された前記粉体の貯留状態を管理する制御部を備えた情報処理装置であって、前記制御部は、前記粉体貯留部に設けられたセンサ部からセンサ情報を取得して記憶部に格納し、前記記憶部から前記センサ情報を読み出し、読み出した前記センサ情報に基づいて、前記粉体貯留部に貯留された前記粉体の貯留残量の実測値を導出し、前記貯留残量の実測値の時間変化に基づいて、前記粉体における前記粉体貯留部の内部の貯留状態が正常状態であるか不良状態であるかを判定する。
【0010】
本発明の一態様に係る情報処理装置は、上記の発明において、前記制御部は、あらかじめ設定された前記粉体の前記貯留残量の予測値と、前記貯留残量の実測値との差が所定値以上になった場合に、前記貯留状態が前記不良状態であると判定する。
【0011】
本発明の一態様に係る情報処理装置は、上記の発明において、前記センサ部が前記粉体の上面との距離を計測可能な測距センサを備え、前記センサ情報が、前記センサ部と前記粉体の上面との距離の情報を含み、前記制御部は、前記センサ部と前記粉体の上面との距離の情報に基づいて、前記貯留残量の実測値を導出する。
【0012】
本発明の一態様に係る情報処理装置は、粉体を貯留可能な粉体貯留部に貯留された前記粉体の貯留状態を管理する制御部を備えた情報処理装置であって、前記制御部は、前記粉体貯留部に設けられた複数のセンサからそれぞれセンサ情報を取得して記憶部に格納し、前記記憶部から、前記複数のセンサから取得した複数の前記センサ情報を読み出し、読み出した複数の前記センサ情報のうちの少なくとも1つのセンサ情報に基づいて、前記粉体貯留部に貯留された前記粉体の貯留残量の実測値を導出し、読み出した複数の前記センサ情報のうちの少なくとも2つのセンサ情報に基づいて、前記粉体における前記粉体貯留部の内部の貯留状態が正常状態であるか不良状態であるかを判定する。
【0013】
本発明の一態様に係る情報処理装置は、この構成において、前記センサが前記粉体の上面との距離を計測可能な測距センサであり、複数の前記測距センサは、第1測距センサ、および前記第1測距センサが計測する前記粉体の上面の位置とは異なる位置において前記粉体の上面との距離を計測する第2測距センサを含み、前記第1測距センサは、前記第1測距センサと前記粉体の上面との距離の情報を含む第1センサ情報を出力し、前記第2測距センサは、前記第2測距センサと前記粉体の上面との距離の情報を含む第2センサ情報を出力し、前記制御部は、前記第1センサ情報に基づいて、前記貯留残量の実測値を導出し、前記第1センサ情報に含まれる距離の情報と、前記第2センサ情報に含まれる距離の情報とに基づいて、前記粉体における前記粉体貯留部の内部の貯留状態が正常状態であるか不良状態であるかを判定する。
【0014】
本発明の一態様に係る情報処理装置は、上記の発明において、前記複数のセンサのうちの少なくとも1つのセンサが、前記粉体貯留部における前記粉体を排出する排出部の上方に設けられ、前記複数のセンサのうちの少なくとも1つのセンサが、前記粉体貯留部における前記排出部以外の上方に設けられる。
【0015】
本発明の一態様に係る情報処理装置は、上記の発明において、前記制御部は、前記貯留状態が前記正常状態であり、かつ前記貯留残量の実測値があらかじめ設定された所定のしきい値以下になった場合に、前記粉体の種類および量の情報を含む発注情報を生成して出力する。
【0016】
本発明の一態様に係る情報処理方法は、粉体を貯留可能な粉体貯留部に貯留された前記粉体の貯留状態を管理する制御部を備えた情報処理装置が実行する情報処理方法であって、前記粉体貯留部に設けられたセンサ部からセンサ情報を取得して記憶部に格納し、前記記憶部から前記センサ情報を読み出し、読み出した前記センサ情報に基づいて、前記粉体貯留部に貯留された前記粉体の貯留残量の実測値を導出し、前記貯留残量の実測値の時間変化に基づいて、前記粉体における前記粉体貯留部の内部の貯留状態が正常状態であるか不良状態であるかを判定する。
【0017】
本発明の一態様に係る情報処理方法は、粉体を貯留可能な粉体貯留部に貯留された前記粉体の貯留状態を管理する制御部を備えた情報処理装置が実行する情報処理方法であって、前記粉体貯留部に設けられた複数のセンサからそれぞれセンサ情報を取得して記憶部に格納し、前記記憶部から、前記複数のセンサから取得した複数の前記センサ情報を読み出し、読み出した複数の前記センサ情報のうちの少なくとも1つのセンサ情報に基づいて、前記粉体貯留部に貯留された前記粉体の貯留残量の実測値を導出し、読み出した複数の前記センサ情報のうちの少なくとも2つのセンサ情報に基づいて、前記粉体における前記粉体貯留部の内部の貯留状態が正常状態であるか不良状態であるかを判定する。
【0018】
本発明の一態様に係るプログラムは、粉体を貯留可能な粉体貯留部に貯留された前記粉体の貯留状態を管理する制御部を備えた情報処理装置における前記制御部に、前記粉体貯留部に設けられたセンサ部からセンサ情報を取得して記憶部に格納し、前記記憶部から前記センサ情報を読み出し、読み出した前記センサ情報に基づいて、前記粉体貯留部に貯留された前記粉体の貯留残量の実測値を導出し、前記貯留残量の実測値の時間変化に基づいて、前記粉体における前記粉体貯留部の内部の貯留状態が正常状態であるか不良状態であるかを判定することを実行させる。
【0019】
本発明の一態様に係るプログラムは、粉体を貯留可能な粉体貯留部に貯留された前記粉体の貯留状態を管理する制御部を備えた情報処理装置における前記制御部に、前記粉体貯留部に設けられた複数のセンサからそれぞれセンサ情報を取得して記憶部に格納し、前記記憶部から、前記複数のセンサから取得した複数の前記センサ情報を読み出し、読み出した複数の前記センサ情報のうちの少なくとも1つのセンサ情報に基づいて、前記粉体貯留部に貯留された前記粉体の貯留残量の実測値を導出し、読み出した複数の前記センサ情報のうちの少なくとも2つのセンサ情報に基づいて、前記粉体における前記粉体貯留部の内部の貯留状態が正常状態であるか不良状態であるかを判定することを実行させる。
【0020】
本発明の一態様に係る粉体貯留施設は、粉体を貯留する粉体貯留部を備えた粉体貯留施設であって、上記の発明による情報処理装置を備える。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る情報処理装置、情報処理方法、プログラム、および粉体貯留施設によれば、粉体貯留部内に貯留された粉体の貯留状態を正確に管理することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態による情報処理装置を適用した粉体管理システムの構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態による粉体の管理方法を説明するためのフローチャートである。
【
図3】
図3は、本発明の一実施形態による貯槽内の粉体の正常状態における粉体の高さの予測値および実測値を示すグラフである。
【
図4】
図4は、本発明の一実施形態による貯槽内の粉体が不良状態である場合の粉体の高さの予測値および実測値を示すグラフである。
【
図5】
図5は、本発明の一実施形態による貯槽内の粉体が不良状態である場合の粉体の高さの予測値および実測値を示すグラフである。
【
図6】
図6は、本発明の一実施形態による貯槽内の粉体の正常状態およびセンサ部による計測状態を示す図である。
【
図7】
図7は、本発明の一実施形態による貯槽内の粉体の不良状態であるアーチおよびセンサ部による計測状態を示す図である。
【
図8】
図8は、本発明の一実施形態による貯槽内の粉体の不良状態であるラットホールおよびセンサ部による計測状態を示す図である。
【
図9】
図9は、本発明の一実施形態による貯槽内の粉体の不良状態である内壁付着およびセンサ部による計測状態を示す図である。
【
図10】
図10は、本発明の一実施形態による粉体(石炭粉)の管理方法の第1実施例を示すグラフである。
【
図11】
図11は、本発明の一実施形態による粉体(消石灰)の管理方法の第2実施例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の一実施形態の全図においては、同一または対応する部分には同一の符号を付す。また、本発明は以下に説明する一実施形態によって限定されるものではない。また、以下に説明する一実施形態は、例えば、粉体を貯留する粉体貯留施設における貯槽内の粉体の貯留状態の判定および貯留残量の計測に関するが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0024】
図1は、本発明の一実施形態による情報処理装置を適用した粉体管理システムの構成を示すブロック図である。
図1に示すように、本発明の一実施形態による粉体管理システム1は、ネットワーク2を介して互いに通信可能な、粉体管理サーバ10および粉体貯留設備20を備えて構成される。なお、粉体管理サーバ10は、粉体貯留設備20に設けられていても良く、この場合、粉体貯留設備20が粉体管理システム1を構成する。ネットワーク2には、粉体管理システム1と通信可能な事業者サーバ30が接続されている。事業者サーバ30は、例えば、粉体の供給事業者などが管理したり使用したりするサーバである。
【0025】
ネットワーク2は、例えば、インターネットなどの公衆通信網であって、例えばLAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)、携帯電話などの電話通信網や公衆回線、VPN(Virtual Private Network)、および専用線などの一または複数の組み合わせからなる。ネットワーク2は、有線通信および無線通信が適宜組み合わされている。
【0026】
(粉体管理サーバ)
図1に示すように、一実施形態による情報処理装置としての粉体管理サーバ10は、粉体貯留設備20から、貯槽25に設けられたセンサ部26により計測されたセンサ情報を取得可能に構成される。粉体管理サーバ10は、必要に応じて粉体貯留設備20において得られた情報によって機械学習を実行することも可能である。粉体管理サーバ10は、制御部11、記憶部12、通信部13、および入出力部14を備える。
【0027】
制御部11は、具体的に、CPU(Central Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)などのプロセッサ、およびRAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)などの主記憶部(いずれも図示せず)を備える。
【0028】
記憶部12は、物理的には、RAMなどの揮発性メモリ、ROMなどの不揮発性メモリ、EPROM(Erasable Programmable ROM)、ハードディスクドライブ(HDD、Hard Disk Drive)、ソリッドステートドライブ(SSD、Solid State Drive)、およびリムーバブルメディアなどから選ばれた記憶媒体から構成される。なお、リムーバブルメディアは、例えば、USB(Universal Serial Bus)メモリ、または、CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)、またはBD(Blu-ray(登録商標) Disc)のようなディスク記録媒体である。また、外部から装着可能なメモリカードなどのコンピュータ読み取り可能な記録媒体を用いて記憶部12を構成しても良い。記憶部12には、粉体管理サーバ10の動作を実行するための、オペレーティングシステム(Operating System:OS)、各種プログラム、各種テーブル、各種データベースなどが記憶可能である。各種プログラムには、本実施形態による学習モデルやニューラルネットワーク(Neural Network)、および学習モデルやニューラルネットワークに基づいた処理を実現するプログラムも含まれる。これらの各種プログラムは、ハードディスク、フラッシュメモリ、CD-ROM、DVD-ROM、フレキシブルディスクなどのコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して広く流通させることも可能である。
【0029】
記憶部12には、粉体情報データベース121および貯留学習モデル122が格納されている。粉体情報データベース121には、貯槽25に貯留された粉体5に関する各種情報(以下、粉体情報)、およびセンサ部26から出力された種々のセンサ情報が格納される。粉体情報は、貯槽25内に貯留される例えば活性炭(石炭粉)や消石灰などの粉体の種類の情報(粉体種類情報)、および残量の情報(粉体残量情報)を含む。なお、粉体情報は、粉体5に関するその他の情報を含んでいても良い。
【0030】
本実施形態において制御部11は、記憶部12に記憶されたプログラムを主記憶部の作業領域にロードして実行し、プログラムの実行を通じて各構成部などを制御することで、所定の目的に合致した機能を実現できる。具体的に、制御部11は、プログラムの実行によって、状態判定部111、貯槽制御部112、発注部113、および学習部114の機能を実現できる。なお、記憶部12が学習部114に対応するプログラムを格納していなくても良く、制御部11が学習部114を有していなくても良い。
【0031】
通信手段としての通信部13は、例えば、LAN(Local Area Network)インターフェースボードや、無線通信のための無線通信回路などである。LANインターフェースボードや無線通信回路は、ネットワーク2に接続される。通信部13は、ネットワーク2に接続して、粉体貯留設備20、または事業者サーバ30との間で通信を行う。
【0032】
入出力手段としての入出力部14は、例えばタッチパネルディスプレイやスピーカマイクロホンなどから構成される。出力手段としての入出力部14は、制御部11による制御に従って、液晶ディスプレイやプラズマディスプレイなどの表示部としてのディスプレイの画面上に、文字や図形などを表示したり、スピーカから音声を出力したりして、所定の情報を外部に通知するように構成される。入出力部14は、警報信号を出力して外部に報知可能に構成される。入出力部14の表示部は、制御部11から入力された情報を表示可能に構成される。さらに、入出力部14は、印刷用紙などに所定の情報を印刷することによって出力するプリンタを含む。記憶部12に格納された各種情報は、例えば所定の事務所などに設置された入出力部14のモニタなどで確認することができる。
【0033】
入力手段としての入出力部14は、例えば、キーボードや入出力部14の内部に組み込まれて表示パネルのタッチ操作を検出するタッチパネル式キーボード、または外部との間の通話を可能とする音声入力デバイスなどから構成される。
【0034】
(粉体貯留設備)
粉体貯留設備20は、ネットワーク2を介して粉体管理サーバ10と通信可能な構成を有する。粉体貯留設備20は、制御部21、記憶部22、通信部23、貯留正常化部24、および貯槽25を備える。制御部21、記憶部22、および通信部23はそれぞれ、物理的および機能的には、上述した制御部11、記憶部12、および通信部13と同様の構成を有する。
【0035】
本実施形態において制御部21は、記憶部22に記憶されたプログラムを主記憶部の作業領域にロードして実行し、プログラムの実行を通じて各構成部を制御することによって、所定の目的に合致した機能を実現できる。具体的に、制御部21は、センサ部26から入力されたセンサ情報を、通信部23を通じて粉体管理サーバ10に送信する。また、制御部21は、粉体管理サーバ10から送信された制御信号に基づいて、後述する貯留正常化部24を制御する。記憶部22には、粉体管理サーバ10の記憶部12における粉体情報データベース121と同様のデータベースを、粉体情報データベース121と同期可能に格納しても良い。
【0036】
通信部23は、ネットワーク2に接続して、粉体管理サーバ10との間で通信可能である。通信部23は、制御部21による制御に基づいて出力される指令信号によって、センサ部26により得られたセンサ情報などの各種情報を収集する。なお、通信部23によって送受信される情報は、これらの情報に限定されない。
【0037】
貯留正常化部24は、制御部21によって制御され、貯槽25に対して物理的に所定の作用を与えることにより、内部の粉体5に物理的な衝撃を与える機構である。貯留正常化部24は、具体的に例えば、貯槽25に対して打撃を与えたり貯槽25内に貯留された粉体5に気体を噴射したりして、粉体5に物理的な作用を与える。通常、貯留された粉体5は、液体などの流体と異なり、貯槽25内で偏在したり固まったりする場合がある。貯留正常化部24は、貯槽25内で偏在したり固まったりした粉体5を、その上面が略水平になるように均すための機構である。
【0038】
粉体貯留部としての貯槽25は、例えばホッパなどの粉体5を貯留した後に外部に供給するための貯留槽である。貯槽25は、上部に粉体5の投入部としての粉体投入口25aが設けられているとともに、下部に粉体5の排出部としての粉体排出口25bが設けられている。粉体5は、上部の粉体投入口25aから投入されて貯槽25に貯留され、下部の粉体排出口25bから排出されて、所定の装置に供給される。
【0039】
貯槽25には、粉体5の種々の物理量を計測するためのセンサ部26が設けられている。センサ部26は、少なくとも1つの測距センサ、具体的に第1測距センサとしての測距センサ261を含む。センサ部26は、必要に応じて、複数のセンサを含んでも良い。すなわち、センサ部26は、第2測距センサとしての測距センサ262、および排出量計測センサ263を含んでいても良い。測距センサ261,262は、例えばマイクロウェーブセンサ、レーザセンサ、赤外線センサ、もしくは3D-LiDAR(3 Dimension Laser Imaging Detection and Ranging)センサなどからなる測距センサ、またはこれらの測距センサを組み合わせて構成される。貯槽25内において粉体5が舞い上がることによるノイズの発生を考慮すると、測距センサ261としては、マイクロウェーブセンサが好ましいが、必ずしも限定されない。
【0040】
測距センサ261は、貯槽25の粉体排出口25bの略上方、ここでは例えば貯槽25の上部における略中心に設けられ、粉体5の上面までの距離を計測可能なセンサである。測距センサ262は、貯槽25の粉体排出口25b以外の上方、例えば貯槽25の内側の側面(内壁)における上部付近に設けられ、粉体5の上面までの距離を計測可能なセンサである。測距センサ261は、計測した距離の情報を含む第1センサ情報を制御部21に出力する。測距センサ262は、計測した距離の情報を含む第2センサ情報を制御部21に出力する。排出量計測センサ263は、例えば静電容量式粉体流量計などの粉体流量計からなり、粉体排出口25bから排出される粉体5の排出量、または排出流量を計測可能に構成される。なお、測距センサ261,262の設置高さが異なる場合、センサ情報に含まれる距離の情報は、粉体管理サーバ10の制御部11または粉体貯留設備20の制御部21によって、測距センサ261,262の設置高さが同じ高さであるように補正される。
【0041】
(事業者サーバ)
事業者サーバ30は、制御部31、記憶部32、通信部33、および入出力部34を備える。制御部31、記憶部32、通信部33、および入出力部34はそれぞれ、物理的および機能的には、上述した制御部11,21、記憶部12,22、通信部13,23、および入出力部14と同様の構成を有する。
【0042】
記憶部32には受発注データベース321が格納されている。受発注データベース321は、粉体管理システム1、すなわち粉体管理サーバ10から送信された粉体5の発注情報、すなわち事業者サーバ30を管理する事業者においては受注情報を含む。受注情報および発注情報(以下、受発注情報)は、事業者サーバ30を管理する事業者に対する粉体5の受発注に関する情報を含む。受発注情報は、具体的に例えば、発注情報を送信した事業者の識別ID、および粉体5の種類、発注量、もしくは単価などの、粉体貯留設備20の貯槽25に貯留される粉体5の供給および販売に関する各種情報を含む。粉体5を供給する事業者は、記憶部32から読み出した受発注情報に基づいて、粉体貯留設備20を管理する事業者に粉体5を供給する。
【0043】
(粉体管理方法)
次に、以上のように構成された粉体管理システム1における粉体管理サーバ10において実行される情報処理方法としての、粉体貯留設備20における粉体管理方法について説明する。
図2は、本実施形態による粉体管理方法を説明するためのフローチャートである。なお、粉体管理サーバ10と粉体貯留設備20と事業者サーバ30との間における情報の送受信、供給、または取得は、ネットワーク2を介して実行されるが、都度の説明は省略する。また、以下に説明するフローチャートによる処理は繰り返し実行される。
【0044】
図2に示すように、ステップST1において、しきい値を設定する。本実施形態において設定されるしきい値は、貯槽内における粉体5の貯留量に関するしきい値である。粉体管理サーバ10において、粉体の貯留量がしきい値以下になった場合に、粉体5の補充の必要をアラートとして外部に報知するしきい値である。しきい値は、貯槽25の容量や貯槽25から供給される粉体5の排出流量に応じて決定される。しきい値は、作業者が決定して入出力部14を用いて制御部11に入力される。なお、制御部11の学習部114が貯留学習モデル122を読み出してしきい値を決定しても良く、制御部の発注部113がしきい値を設定しても良い。設定されたしきい値の情報は、粉体管理サーバ10の記憶部12の粉体情報データベース121に格納される。
【0045】
ここで、制御部11は、事業者サーバ30から適宜、粉体5に関する在庫量の情報(在庫情報)を受信して、受信した粉体5の在庫情報に基づいてしきい値を決定することも可能である。すなわち、在庫情報に含まれる在庫量が少ない場合にはしきい値を大きく設定したり、在庫量が多い場合にはしきい値を小さく設定したりすることが可能である。
【0046】
次に、ステップST2に移行して、制御部11の状態判定部111は、貯槽25に貯留された粉体5の残量(以下、貯留残量)を確認する。すなわち、粉体貯留設備20のセンサ部26の測距センサ261から、制御部21、記憶部22、および通信部23を介して粉体管理サーバ10にセンサ情報が送信される。センサ情報は、測距センサ261から粉体5までの距離のデータを含む。センサ情報を受信した制御部11は、受信したセンサ情報を記憶部12の粉体情報データベース121に格納する。状態判定部111は、記憶部12の粉体情報データベース121からセンサ情報を読み出して、測距センサ261から粉体5までの距離に基づいて、粉体5の貯留残量を導出する。その後、ステップST3に移行する。
【0047】
ステップST3において状態判定部111は、記憶部12の粉体情報データベース121からしきい値の情報を読み出して、ステップST2において導出した粉体5の貯留残量と比較する。状態判定部111は、粉体5の貯留残量がしきい値以下であるか否かを判定する。状態判定部111が粉体5の貯留残量がしきい値より多いと判定した場合(ステップST3:No)、ステップST5に移行する。一方、状態判定部111が粉体5の貯留残量がしきい値以下であると判定した場合(ステップST3:Yes)、ステップST4に移行する。
【0048】
ステップST4に移行すると、粉体管理サーバ10の制御部11の発注部113は、粉体5の発注情報を生成して、事業者サーバ30に送信する。発注情報は、粉体5を発注した注文事業者の識別ID、粉体5の種類および量の情報を含む。発注情報を受信した事業者サーバ30は、発注情報を記憶部32の受発注データベース321に格納する。事業者サーバ30は、受発注データベース321から発注情報を読み出して入出力部34から出力する。事業者は、発注情報に基づいて受注した粉体5を用意して、粉体5を発注した注文事業者の粉体貯留設備20に供給する。粉体貯留設備20においては、自動または手動で粉体投入口25aから貯槽25に粉体5が補充される。その後、ステップST2に復帰して、状態判定部111が粉体5の貯留残量がしきい値より多いと判定する(ステップST3:No)まで、制御部11は、ステップST2、ST3、ST4の処理を繰り返し実行する。
【0049】
一方、ステップST5に移行すると状態判定部111は、粉体5の貯留残量の確認を継続しつつ、貯留状態判定処理を実行する。すなわち、粉体管理サーバ10は、粉体貯留設備20におけるセンサ部26の測距センサ261からのセンサ情報の受信を継続する。状態判定部111は、測距センサ261からのセンサ情報に基づいて粉体5の貯留残量を導出して、貯留残量の時間経過に伴う変化に基づいて、貯槽25内の粉体5の貯留状態が不良であるか否かを判定する。また、ステップST5において状態判定部111は、貯槽25内における粉体5の不良状態がどのような不良状態であるかを合わせて判定しても良い。粉体5の不良状態の現象としては、ラットホール、内壁付着、アーチ(ブリッジ)などがある。なお、状態判定部111が行う粉体5の不良状態の判定方法の詳細については後述する。
【0050】
ステップST5における貯留状態判定処理によって状態判定部111が、貯槽25内の粉体5の貯留状態が正常状態であると判定した場合(ステップST6:No)、ステップST2に復帰して、ステップST2,ST3、およびステップST4またはST5を繰り返し実行する。一方、状態判定部111が、貯槽25内の粉体5の貯留状態が不良状態であると判定した場合(ステップST6:Yes)、ステップST7に移行する。
【0051】
ステップST7において制御部11の状態判定部111は、入出力部14に警報信号を出力して、粉体5の貯留状態が不良であることを外部に報知する。なお、警報信号として、警報として判断可能な音声を出力することも可能である。その後、ステップST8に移行する。
【0052】
ステップST8において状態判定部111は、貯槽制御部112に対して、貯槽25内の粉体5の貯留状態が不良状態であることを示す制御信号を出力する。制御信号が入力された貯槽制御部112は、粉体貯留設備20に貯槽25内における粉体5を正常化させる正常化信号を送信する。通信部23を介して正常化信号を受信した制御部21は、貯留正常化部24に制御信号を出力する。制御信号が入力された貯留正常化部24は、正常化処理を行う。貯留正常化部24は、具体的に例えば、貯槽25に対して打撃を与えたり貯槽25内に貯留された粉体5に気体を噴射したりして、粉体5に物理的な作用を与える。
【0053】
ステップST8における処理は、作業者が行うことも可能である。すなわち、ステップST7において入出力部14から警報信号が出力されると、作業者は、貯槽25内に貯留された粉体5の貯留状態が不良であることを認識できる。作業者は貯槽25に移動して投入口や所定の確認可能箇所から貯槽25内の粉体5の貯留状態を確認する。粉体5の貯留状態が不良であることを確認した作業者は、貯留正常化部24を稼働させて貯槽25に対して所定の物理的な作用を与える。これにより、貯槽25内の粉体5の貯留状態が正常状態に復帰する。なお、作業者は、粉体5の不良状態がどのような不良状態であるか、すなわちラットホール、アーチ、または内壁付着のいずれであるかを確認することもできる。以上により、本実施形態による粉体管理処理が終了する。
【0054】
以上のフローチャートにおいて、ステップST1の処理は初回のみ実行しても良く、フローチャートの繰り返しごとに実行しても良い。また、ステップST2は継続して実行しても良く、ステップST3,ST4の処理と、ステップST5~ST8の処理とは並行して実行しても良い。
【0055】
(貯留状態判定処理)
次に、上述したステップST5における貯留状態判定処理について説明する。まず、センサ部26のうちの測距センサ261から出力されるセンサ情報に基づいて、不良状態の判定を行う方法について説明する。
図3は、本実施形態による貯槽25内の粉体5の正常状態における粉体5の高さの予測値および実測値を示すグラフである。
図4および
図5はそれぞれ、本実施形態による貯槽25内の粉体5が不良状態である場合の粉体の高さの予測値および実測値を示すグラフである。
【0056】
図1および
図3に示すように、センサ部26の測距センサ261は、測距センサ261から粉体5の上面までの距離を計測して、センサ情報として、制御部21および通信部23を通じて粉体管理サーバ10に送信する。粉体管理サーバ10の制御部11の状態判定部111は、受信したセンサ情報に基づいて、貯槽25内に貯留された粉体5の貯留残量(以下、レベルともいう)を導出する。
図3において実測値を黒点および実線で示す。並行して粉体管理サーバ10の制御部11は、貯槽25における過去の粉体5の供給の情報に基づいて、貯槽25内の粉体の量の予測値を導出する。なお、制御部11は、貯槽25の粉体排出口25bから排出される粉体5の排出流量の設定値に基づいて、貯槽25内の粉体の量の予測値を導出しても良い。
図3において予測値を点線で示す。
【0057】
状態判定部111は、実測値と予測値とのレベル差ΔLを導出し、レベル差ΔLがあらかじめ設定された所定レベル差ΔLs以下である場合(ΔL≦ΔLs)に、貯槽25内の粉体5の貯留状態は正常状態であると判定する。
図3に示す例においては、時間の経過に伴って実測値の時間変化は予測値に沿って低減しており、時間が経過してもレベル差ΔLはあらかじめ設定された所定レベル差ΔLsを超えていない。
【0058】
一方、
図4に示すように、時間が経過しても粉体5のレベルの実測値がほとんど変わらず、予測値とのレベル差ΔLが時間の経過に伴って、レベル差ΔLの時間変化が増加する場合がある。この場合、状態判定部111は、レベル差ΔLがあらかじめ設定された所定レベル差ΔLsを超えた時点(ΔL>ΔLs)で、粉体5の貯留状態が不良状態であると判定する。
【0059】
反対に、
図5に示すように、時間の経過に伴って実測値が大きく低減して、予測値とのレベル差ΔLが時間の経過に伴って急激に増加する場合がある。この場合、状態判定部111は、レベル差ΔLがあらかじめ設定された所定レベル差ΔLsを超えた時点(ΔL>ΔLs)で、粉体5の貯留状態が不良状態であると判定する。
【0060】
また、
図3~
図5に示すように、実測値が所定のしきい値以下の発注レベルに入った時点でステップST4に移行して、制御部11の発注部113は、粉体5の発注情報を生成して、発注情報を事業者サーバ30に送信する。
【0061】
次に、上述したステップST5における貯留状態判定処理を、センサ部26のうちの測距センサ261,262の少なくとも2台の測距センサから出力されるセンサ情報に基づいて行う方法について説明する。
図6は、本実施形態による貯槽25内の粉体5の正常状態およびセンサ部26による計測状態を示す図である。
図7および
図8はそれぞれ、本実施形態による貯槽25内の粉体5の不良状態の現象であるアーチならびにラットホール、およびセンサ部26による計測状態を示す図である。
【0062】
図1および
図6に示すように、センサ部26の測距センサ261,262はそれぞれ、測距センサ261,262から粉体5の上面までの距離を計測して、第1センサ情報および第2センサ情報として、制御部21および通信部23を通じて粉体管理サーバ10に送信する。粉体管理サーバ10の状態判定部111は、測距センサ261から送信された第1センサ情報に基づいて、貯槽25内に貯留された粉体5の貯留残量を導出する。また、状態判定部111は、測距センサ261,262から送信された第1センサ情報および第2センサ情報に基づいて、貯槽25内における粉体5の貯留状態が、正常状態か不良状態かを判定する。さらに状態判定部111は、第1センサ情報および第2センサ情報に基づいて、不良状態が、アーチ(ブリッジ)であるかラットホールもしくは内壁付着であるかを判定しても良い。
【0063】
図6に示すように、センサ部26の測距センサ261,262においては、貯槽25内において測距センサ261,262と粉体5との距離を計測することによって、粉体5の貯留残量を計測することができる。粉体5にラットホールやアーチ(ブリッジ)などの現象が生じていない場合、
図6に示すように粉体5の上面はほぼ均されており、測距センサ261と粉体5との距離と、測距センサ262と粉体5との距離とはほぼ等しくなる。この場合、測距センサ261と粉体5との距離と、測距センサ262と粉体5との距離との差Δhが、粉体5の上面がほぼ均されていると判定可能な所定値(後述する第1所定値や第3所定値)未満であれば、これらの距離が互いにほぼ等しいと判断することができる。
【0064】
これに対し、
図7に示すように、粉体5がアーチ(ブリッジ)を形成している場合、測距センサ261と粉体5との距離と、測距センサ262と粉体5との距離とは異なることになる。粉体5の貯留状態がアーチの状態である場合、測距センサ261により計測された粉体5までの距離と、測距センサ262によって計測された粉体5までの距離とのレベル差Δh
1は、所定値以上大きくなると考えられる。そこで、上述したステップST5における貯留状態判定処理においては、測距センサ261により計測された粉体5までの距離が、測距センサ262によって計測された粉体5までの距離より小さく、かつ距離のレベル差Δh
1が第1所定値以上になった場合(Δh
1≧第1所定値)に、状態判定部111は貯槽25内の粉体5の貯留状態がアーチ現象による不良状態にあると判定するようにしても良い。
【0065】
また、
図8に示すように、粉体5がラットホールを形成している場合においても、測距センサ261と粉体5との距離と、測距センサ262と粉体5との距離とが異なることになる。粉体5の貯留状態がラットホールの状態である場合、測距センサ262によって計測された粉体5までの距離と、測距センサ261により計測された粉体5までの距離とのレベル差Δh
2は、所定値以上大きくなると考えられる。そこで、上述したステップST5における貯留状態判定処理においては、
図7に示す例とは反対に、測距センサ261により計測された粉体5までの距離が、測距センサ262によって計測された粉体5までの距離より大きく、かつ距離のレベル差Δh
2が第2所定値以上になった場合(Δh
2≧第2所定値)に、状態判定部111は貯槽25内の粉体5の貯留状態がラットホール現象による不良状態にあると判定する。
【0066】
さらに、
図9に示すように、粉体5が貯槽25の内壁に付着した内壁付着の場合においても、測距センサ261と粉体5との距離と、測距センサ262と粉体5との距離とが異なることになる。粉体5の貯留状態が内壁付着の状態である場合、測距センサ262によって計測された粉体5までの距離と、測距センサ261により計測された粉体5までの距離とのレベル差Δh
3は、所定値以上大きくなると考えられる。そこで、上述したステップST5における貯留状態判定処理においては、
図7に示す例とは反対に、測距センサ261により計測された粉体5までの距離が、測距センサ262によって計測された粉体5までの距離より大きく、かつ距離のレベル差Δh
3が第3所定値以上大きくなった場合(Δh
3≧第3所定値)に、状態判定部111は貯槽25内の粉体5の貯留状態が内壁付着現象による不良状態にあると判定する。
【0067】
状態判定部111は、
図8に示すラットホール現象と
図9に示す内壁付着現象とについて、測距センサ261により計測された粉体5までの距離と、測距センサ262により計測された粉体5までの距離とのレベル差(Δh
2,Δh
3)に基づいて判定するようにしても良い。すなわち、粉体5の種類によって、内壁付着現象の場合のレベル差Δh
3に比してラットホール現象の場合のレベル差Δh
2が大きくなる場合には、上述した第2所定値を、第3所定値より大きくすることによって、貯槽25内の粉体5が不良状態である場合に、不良状態がどのような不良状態であるかを推定できる。すなわち、測距センサ261により計測された粉体5までの距離が、測距センサ262によって計測された粉体5までの距離より大きく、レベル差Δhが第2所定値以上の場合には、ラットホール現象、レベル差Δhが第3所定値以上第2所定値未満の場合には、内壁付着現象であると推定できる。なお、不良状態であるか否かの判定のみが必要な場合には、不良状態がどのような不良状態であるかを判定しなくても良い。
【0068】
(第1実施例)
図10は、上述した一実施形態による粉体の管理方法の第1実施例を示すグラフである。
図10に示す例においては、粉体5として石炭粉を採用した場合を示す。
図10に示すように、一実施形態による粉体の管理方法においては、時間の経過に伴って粉体5の貯留残量が低減し、所定のしきい値以下になった直後に粉体5が補充されていることが分かる。また、実測値が部分的に大きくずれた場合(
図10中、打点円部)においても、直後に正常化されていることが分かる。
【0069】
(第2実施例)
図11は、上述した一実施形態による粉体の管理方法の第2実施例を示すグラフである。
図11に示す例においては、粉体5として消石灰を採用した場合を示す。
図10に示すように、一実施形態による粉体の管理方法においては、時間の経過に伴って粉体5の貯留残量が低減し、所定のしきい値以下になった直後に粉体5が補充されていることが分かる。
【0070】
以上説明した一実施形態によれば、粉体5を貯留可能な貯槽25内に設けられたセンサ部26によって貯槽25内における粉体5までの距離を計測し、センサ部26から粉体の上面までの距離を含むセンサ情報に基づいて、貯槽25内における粉体5の貯留状態が正常であるか否かを判定し、貯留状態が不良状態である場合に、アラートを出力している。これにより、貯槽25内における粉体5の貯留状態が不良状態である場合に作業者などは、貯槽25内の粉体5の貯留状態が不良状態であることを早期に認識できるので、粉体5の貯留状態を正常状態に復帰させるまでの時間を短縮できる。また、作業者が貯槽25内を直接目視する必要が低減するので、貯槽25が設けられた粉体貯留設備20における作業者の安全性を向上できる。
【0071】
また、従来、貯槽内の粉体の残量に基づいて粉体を発注する受発注システムの構築も困難であった。そのため、貯槽内の粉体の残量を正確に管理することによって、粉体の発注や補充を適切に行うことができる技術も求められていた。これに対し、一実施形態によれば、従来に比して、貯槽25内の粉体5の貯留状態を早期に正常状態に復帰させることができるので、貯槽25内の粉体5の貯留残量を正確に計測することが可能になり、さらに貯留残量が所定のしきい値以下になった場合に、事業者サーバ30に発注情報を送信しているので、貯槽25への粉体5の補充を迅速に行うことが可能になる。
【0072】
(記録媒体)
上述の一実施形態において、粉体管理サーバ10や粉体貯留設備20が実行する処理方法を実行させるプログラムを、コンピュータその他の機械やウェアラブルデバイスなどの装置(以下、コンピュータなど、という)が読み取り可能な記録媒体に記録することができる。コンピュータなどに、この記録媒体のプログラムを読み込ませて実行させることにより、当該コンピュータなどが粉体管理サーバ10として機能する。ここで、コンピュータなどが読み取り可能な記録媒体とは、データやプログラムなどの情報を電気的、磁気的、光学的、機械的、または化学的作用によって蓄積し、コンピュータなどから読み取ることができる非一時的な記録媒体をいう。このような記録媒体のうちのコンピュータ等から取り外し可能なものとしては、例えばフレキシブルディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、CD-R/W、DVD、BD、DAT、磁気テープ、フラッシュメモリなどのメモリカードなどがある。また、コンピュータなどに固定された記録媒体としてハードディスク、ROMなどがある。さらに、SSDは、コンピュータなどから取り外し可能な記録媒体としても、コンピュータなどに固定された記録媒体としても利用可能である。
【0073】
また、一実施形態による粉体管理サーバ10、および粉体貯留設備20に実行させるプログラムは、インターネットなどのネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成しても良い。
【0074】
(その他の実施形態)
一実施形態においては、上述した「部」を、「回路」などに読み替えることができる。例えば、制御部は、制御回路に読み替えることができる。
【0075】
なお、本明細書におけるフローチャートの説明では、「まず」、「次に」、「その後」、「続いて」などの表現を用いてステップ間の処理の前後関係を明示していたが、本実施の形態を実施するために必要な処理の順序は、それらの表現によって一意的に定められるわけではない。すなわち、本明細書で記載したフローチャートにおける処理の順序は、矛盾のない範囲で変更することができる。
【0076】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。本開示のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付のクレームおよびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。例えば、上述の一実施形態において挙げた数値や情報の種類はあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれと異なる数値や情報の種類を用いても良く、上述の一実施形態による本発明の開示の一部をなす記述および図面により本発明は限定されることはない。
【0077】
例えば、上述の一実施形態においては、粉体管理システム1において、粉体管理サーバ10、粉体貯留設備20、貯槽25、および事業者サーバ30をそれぞれ別体として説明しているが、必ずしも別体で構成することに限定されない。具体的に例えば、粉体管理サーバ10と粉体貯留設備20とを一体に構成しても良い。また、貯槽25が粉体管理サーバ10を備えていても良い。さらに、粉体貯留設備20を備える貯槽25が粉体管理サーバ10をさらに備えても良い。粉体貯留設備20のみを貯槽25に備えるように構成しても良い。
【0078】
また、上述した一実施形態において、制御部11によるプログラムの実行によって、学習部114の機能を実行できる。学習部114は、粉体管理サーバ10が受信した過去のセンサ部26から得られたセンサ情報や、粉体5の貯留残量の実測値を学習用入力データ、粉体5の各種の貯留状態を学習用出力データとした、入出力データセットに基づいて機械学習を行うことができる。学習部114は、学習した粉体5の貯留状態に関する学習結果を、貯留学習モデル122として記憶部12に記憶させる。貯留学習モデル122は、例えばニューラルネットワークによる深層学習(ディープラーニング)により生成される学習モデルである。これにより、センサ部26から得られたセンサ情報などを貯留学習モデル122に入力することによって、貯槽25内の粉体5の貯留状態の正常状態および不良状態を判定することができる。
【0079】
ここで、機械学習としては、ニューラルネットワークを用いたディープラーニング(深層学習)に限定されず、それ以外の方法に基づく機械学習を行っても良い。例えば、サポートベクターマシン、決定木、単純ベイズ、k近傍法など、他の教師あり学習を用いても良い。また、教師あり学習に代えて半教師あり学習を用いても良い。
【符号の説明】
【0080】
1 粉体管理システム
2 ネットワーク
5 粉体
10 粉体管理サーバ
11,21,31 制御部
12,22,32 記憶部
13,23,33 通信部
14,34 入出力部
20 粉体貯留設備
24 貯留正常化部
25 貯槽
25a 粉体投入口
25b 粉体排出口
26 センサ部
30 事業者サーバ
111 状態判定部
112 貯槽制御部
113 発注部
114 学習部
121 粉体情報データベース
122 貯留学習モデル
261,262 測距センサ
263 排出量計測センサ
321 受発注データベース