(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022097108
(43)【公開日】2022-06-30
(54)【発明の名称】建物および建物の製造方法
(51)【国際特許分類】
E04B 1/76 20060101AFI20220623BHJP
E04G 23/02 20060101ALI20220623BHJP
【FI】
E04B1/76 400H
E04B1/76 500K
E04G23/02 E
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020210504
(22)【出願日】2020-12-18
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】520501584
【氏名又は名称】株式会社帯建工業
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】弁理士法人英知国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】國枝 恭二
【テーマコード(参考)】
2E001
2E176
【Fターム(参考)】
2E001DD01
2E001FA03
2E001GA07
2E001HF11
2E176AA21
2E176BB27
(57)【要約】
【課題】施工の作業性の向上を課題とする。
【解決手段】本発明は、内側壁と壁板を備え、前記壁板は、前記内側壁から離れて設けられており、前記壁板の下端は、支持部に固定されることなく載置されており、前記内側壁と前記壁板の間には、発泡断熱材が充填されており、前記壁板は、前記支持部と前記発泡断熱材のみで支持固定されていることを特徴とする建物とすることで課題を解決した。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内側壁と壁板を備え、
前記壁板は、前記内側壁から離れて設けられており、
前記壁板の下端は、支持部に固定されることなく載置されており、
前記内側壁と前記壁板の間には、発泡断熱材が充填されており、
前記壁板は、前記支持部と前記発泡断熱材のみで接着、支持固定されていることを特徴とする建物。
【請求項2】
前記内側壁と前記壁板との間には、スペーサが前記内側壁と前記壁板のいずれにも固定されずに挟まっていることを特徴とする請求項1記載の建物。
【請求項3】
前記壁板が、外壁板または室内壁板である請求項1または請求項2記載の建物。
【請求項4】
前記支持部が、水切または基礎である請求項1~3のいずれか1項記載の建物。
【請求項5】
前記内側壁が、既存建物の外壁であり、前記壁板が新設外壁である請求項1~4のいずれか1項記載の建物。
【請求項6】
躯体に固定された内側壁から離れた支持部に壁板を載置し、内側壁と壁板の間にスペーサを挟み込む壁板設置工程、
前記壁板を前記内側壁側へ向かって押圧する押圧工程、
前記内側壁と前記壁板の間の空間に発泡断熱材を充填する充填工程
を含む建物の製造方法。
【請求項7】
前記充填工程後、前記スペーサを取り除き、前記スペーサを取り除いた空間にさらに前記発泡断熱材を充填する再充填工程を含む請求項6載の建物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下地を施工しない無下地断熱建物および無下地断熱建物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1のような外張り断熱工法や、特許文献2のようなガラス繊維マットから成る断熱材を壁や天井に配置するなどの断熱工法が行われていた。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6002373号
【特許文献2】特開2020-104315号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
建物内部の壁などにおいては、間柱間に断熱材であるグラスウールを嵌め込んだ後に、壁板を取り付ける必要があった。また、外張り断熱では、断熱材や外壁板を取り付けるための胴縁設置や下地の準備が必要であった。さらに、発泡断熱材を使用する時には、発泡断熱材の発泡圧に負けないように予め発泡断熱材が注入される閉空間を強固に作っておく必要があった。
いずれにせよ、壁板設置と断熱を行うには手間を要していた。
【0005】
本発明は、施工の作業性の向上を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような課題を解決するために、本発明は、一形態として以下の構成を具備する。
内側壁と壁板を備え、前記壁板は、前記内側壁から離れて設けられており、前記壁板の下端は、支持部に固定されることなく載置されており、前記内側壁と前記壁板の間には、発泡断熱材が充填されており、前記壁板は、前記支持部と前記発泡断熱材のみで接着、支持固定されていることを特徴とする建物。
【0007】
また、このような課題を解決するために、別形態として、躯体に固定された内側壁から離れた支持部に壁板を載置し、内側壁と壁板の間にスペーサを挟み込む壁板設置工程、前記壁板を前記内側壁側へ向かって押圧する押圧工程、前記内側壁と前記壁板の間の空間に発泡断熱材を充填する充填工程を含む建物の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0008】
壁板(外壁板および内壁板)を固定する工程を省くことにより、作業性を高めることができた。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】実施形態1の支持部の取付工程の説明図(A)支持部となる水切を取り付けた斜視図(B)支持材となる水切にガルバリウム鋼板(登録商標)(壁板)の下端を載置した斜視図
【
図3】ガルバリウム鋼板(登録商標)(壁板)の仮固定工程の説明図
【
図4】実施形態1の工程の繰り返しの説明図(A)施工途中の外観斜視図(一部透視図)(B)発泡材注入工程の外観斜視図
【発明を実施するための形態】
【0010】
図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下の説明では、異なる図における同一符号は同一機能の部位を示しており、各図における重複説明は適宜省略する。
【0011】
(実施形態1)
図面を参照して本発明の実施形態1を説明する。実施形態1は、既存建物1の既存外壁111に新たに外張り断熱を施す例である。
図1は実施形態1の施工中の既存建物1の外観斜視図ある。既存建物1の既存外壁111より外側にガルバリウム鋼板(登録商標)(壁板)41が新たな外壁として設置される。実施形態1では、既存建物1の既存外壁111は、内側壁11として機能する。そして、新設の壁板4であるガルバリウム鋼板(登録商標)41と既存外壁111(内側壁11)との間に、発泡断熱材6が充填され、既存建物1の周囲に外張り断熱が施されて行く。
【0012】
詳細に、実施形態1の施工工程を説明する。
(工程1)ガルバリウム鋼板(登録商標)(壁板)下端の支持
新たな外壁の壁板4となるガルバリウム鋼板(登録商標)41を内側壁11となる既存外壁111から外側に離間して配置する。そのためにガルバリウム鋼板(登録商標)(壁板)41の下端を支える支持部2が必要となる。既存建物1が支持部2に適した部材を有しているのであれば、それを利用することができる。また、既存建物1が支持部2に適した部材を有していないのであれば、支持部2となる部材を別途取り付ける。
【0013】
図2は実施形態1の支持部2の取付工程の説明図である。
図2(A)は支持部2となる水切21を取り付けた斜視図である。既存外壁111の最下部に支持部2となる水切21を締結し固定する。
図2(B)は支持部2となる水切21にガルバリウム鋼板(登録商標)(壁板)41の下端を載置する斜視図である。ガルバリウム鋼板(登録商標)(壁板)41の下端は、水切21を支持部2として水切21の上に立てかけられる。外張り断熱が施されて内側壁11となる既存外壁111と新たな外壁となるガルバリウム鋼板(登録商標)(壁板)41の間には、スペーサとして断熱性のあるスペーサブロック5が挟まれる。断熱性のあるスペーサブロック5は、既存外壁111とガルバリウム鋼板(登録商標)(壁板)41との間に生じた隙間の間隔を一定に保つ役割を果たす。断熱性のあるスペーサブロック5は、この役割を果たすのに必要数、ガルバリウム鋼板(登録商標)(壁板)41の下端から上端まで、間隔を空けて配置される。ガルバリウム鋼板(登録商標)(壁板)41は、
図2(B)の方向に動かされ、既存外壁111と平行になるように設置される。
【0014】
(工程2) ガルバリウム鋼板(登録商標)(壁板)の押圧工程
図3は、ガルバリウム鋼板(登録商標)(壁板)41の仮固定工程の説明図である。
ガルバリウム鋼板(登録商標)(壁板)41は、その上端が、軒天井12に当接するまでの長さとなるように、前処理工程で切断されている。そのため、ガルバリウム鋼板(登録商標)(壁板)は、下端は水切21から上端は軒天井12まで、既存外壁111を全体にわたって被覆する。
【0015】
設置されたガルバリウム鋼板(登録商標)(壁板)41の外側には、当て木7が当てられ、矢印の方向に押圧される。ガルバリウム鋼板(登録商標)(壁板)41の内側には、断熱性のあるスペーサブロック5が入っているため、矢印の方向に押圧されると、設置されたガルバリウム鋼板(登録商標)(壁板)41は動かなくなり、隙間Sを空けて押圧されて固定される。
当て木7の押圧手段は、どのようなものでもよいが、既存建物1に沿って強固な足場を組み、足場から当て木7に向けて押し付けるようにしてもよい。
これまでの工程で明らかなように、支持部2である水切21から軒天井12までの間に、ガルバリウム鋼板(登録商標)(壁板)41が設置されるが、ガルバリウム鋼板(登録商標)(壁板)41と断熱性のあるスペーサブロック5は共に、如何なる部材にも締結されていない。当て木7と断熱性のあるスペーサブロック5の間にガルバリウム鋼板(登録商標)(壁板)41が挟まり押圧されているだけである。
【0016】
(発泡断熱材注入工程)
注入装置61を用いて、ガルバリウム鋼板(登録商標)(壁板)41と内側壁11となる既存外壁111の隙間Sに発泡断熱材6が注入される。発泡断熱材6の種類は問わないが、短時間で硬化するものが施工性を向上のために好ましい。例えば、発泡ウレタンなどが好ましい。当て木7を用いたガルバリウム鋼板(登録商標)(壁板)41の押圧は、発泡断熱材6の膨張圧で、何ら締結されていないガルバリウム鋼板(登録商標)(壁板)41が動かないよう対抗するためである。ガルバリウム鋼板(登録商標)(壁板)41が膨張圧に負けないように、ガルバリウム鋼板(登録商標)(壁板)41の上から下まで満遍なく当て木7が当てられ、押圧される。
断熱性のあるスペーサブロック5は断熱性を有するため、そのまま残して施工を続けても、断熱性に影響を与えることはない。
しかし、断熱性がないスペーサブロック5を使用する場合は、発泡断熱材6が硬化した後、断熱性がないスペーサブロック5が取り外され、取り除かれた部分に、発泡断熱材6が注入される。
このようにすれば、新たに出来る断熱層には発泡断熱材6以外のものは入っていないので断熱欠損(ヒートブリッジなど)がない。
【0017】
ここで、スペーサブロック5について補足説明する。スペーサブロック5に断熱性がある場合、前述したようにそのまま発泡断熱材6に埋められたまま施工を続けても問題ない。また、スペーサブロック5の材質は、軽い方が作業性向上の観点からし好ましい。また、スペーサブロック5は押圧されるため変形しないものであることが好ましい。スペーサブロック5が変形してしまうと、ガルバリウム鋼板(登録商標)(壁板)41と内側壁11となる既存外壁111の間にできた中空空間の間隔が不均一になり、良好な施工が出来なくなってしまう。
このような特性を有するものであれば、スペーサブロック5の材質は何でもよい。
さらに、スペーサブロック5を実施形態1で採用しているが、ブロック状である必要もない。
【0018】
以上の工程により、ガルバリウム鋼板(登録商標)(壁板)41は、支持部2である水切21と発泡断熱材6のみで支持固定されることとなる。発泡断熱材6を用いた施工には、中空空間を作る必要があるが、既存外壁111は、内側壁11となりガルバリウム鋼板(登録商標)41が壁板4となって、中空空間を作ることができる。そのため、従来の外張り断熱工法で必要とされていた、胴縁をつけるなどの下地処理やガルバリウム鋼板(登録商標)(壁板)41を既存建物1の躯体に固定する工程等が不要となり、コストを下げるとともに作業性が向上する。
また、作業性が向上するため工期を短縮できる。既存建物1の躯体に締結のための孔を多数開ける必要が無くなり、既存建物1にかかる負担も少ない。
【0019】
(工程の繰り返し)
図4は実施形態1の工程の繰り返しの説明図であり、
図4(A)は施工途中の外観斜視図(一部透視図)である。
図4(A)では、説明のため発泡断熱材6の注入後取り除かれるスペーサブロック5を残している。本来は、スペーサブロック5が取り除かれたことで生じる隙間に発泡断熱材6が充填されるので、端面は発泡性断熱材6しか残っていない。
施工は、奥の1枚目のガルバリウム鋼板(登録商標)(壁板)41から始まる。1枚目のガルバリウム鋼板(登録商標)(壁板)41に注入された発泡断熱材6が、硬化した後、2枚目のガルバリウム鋼板(登録商標)(壁板)41の施工が開始される。1枚目のガルバリウム鋼板(登録商標)(壁板)41の端部と2枚目のガルバリウム鋼板(登録商標)(壁板)41の一端は重ね合わされ、2枚目のガルバリウム鋼板(登録商標)(壁板)41の他端は、隙間Sが設けられるようにスペーサブロック5が設置される。
【0020】
図4(B)は発泡断熱材注入工程の外観斜視図であり、4枚目のガルバリウム鋼板(壁板)41の施工に取り掛かっている状態を示している。
図4(B)のように、1枚目から4枚目までのガルバリウム鋼板(登録商標)(壁板)41でできた隙間Sに一挙に発泡断熱材を注入すると、均等に発泡断熱材6が入らず一部が何も充填されていない空隙として残ってしまう施工不良が起きやすくなる。そのため、ガルバリウム鋼板(登録商標)(壁板)41の取り付けを1枚毎に行い、順番に施工することにより、確実に発泡断熱材6を注入でき施工不良を防止することができる。
このように、奥から手前へと1枚1枚順番にガルバリウム鋼板(登録商標)(壁板)41の設置がなされて行く。最後に当て木7や足場が取り外されて施工が終了する。
【0021】
(実施形態2)
実施形態1は、外張り断熱によるものであった。実施形態2では、既存建物1の内断熱に使う例である。
古い家屋などでは、断熱材が内壁に取り付けられていないことがある。前述の実施形態1と同様に、既存建物1の既存の内壁を内側壁11とし、断熱性のあるスペーサブロック5を用いて新たな壁板4となる室内壁板を仮固定する。この他の工程は、実施形態1と同様である。
【0022】
(実施形態3)
実施形態1は、水切21を支持部2とした例であった。寒冷地では、基礎3にも断熱を施すことがある。
図5は、基礎断熱を兼ねた外張り断熱工法の説明図である。地表は、基礎3の根が現れるまで掘られる。そして、ガルバリウム鋼板(登録商標)(壁板)41の支持部2として基礎3そのものが用いられる。基礎3の一部は、ガルバリウム鋼板(登録商標)(壁板)41と対向し、内側壁11となる。その他の工程は、実施形態1と同様である。施工終了後、基礎3は埋め戻される。
【0023】
以上の実施形態1~実施形態3のいずれでも、内側壁(既存外壁111または基礎3)と壁板(ガルバリウム鋼板(登録商標)41や室内壁板)を備え、壁板(ガルバリウム鋼板(登録商標)41や室内壁板)は、内側壁(既存外壁111または基礎3)から離れて設けられており、壁板(ガルバリウム鋼板41や室内壁板)の下端は、支持部(水切21または基礎3)に固定されることなく載置されており、内側壁(既存外壁111または基礎3)と壁板(ガルバリウム鋼板(登録商標)41や室内壁板)の間には、発泡断熱材6が充填されており、壁板(ガルバリウム鋼板(登録商標)41や室内壁板)は、支持部(水切21または基礎3)と発泡断熱材6のみで支持固定されていることを特徴とする建物が作られる。
【0024】
また、実施形態1~実施形態3では、既存建物1の施工例であったが、新設建物でも応用できることは言うまでもない。壁板(ガルバリウム鋼板(登録商標)41や室内壁板)について、説明してきたが、壁となるものであれば何でもよい。仕上材といった特定の壁とは異なる部位に使用するものも(例えば、床材、天井材等)も本発明の壁材に含まれる。
また、実施例では1枚の壁板4を水切(支持部)21から軒天井12まで縦に使用する工法であったが、壁材4を横に積み上げる工法も本発明に含まれる。
また、壁全面を断熱化する形態を説明してきたが、壁の一部だけを断熱するものでも、本発明に含まれる。
【0025】
そして、いずれの実施形態も、下地工程や外壁となる壁板4の固定が不要となるなど、作業性を著しく向上できる。
さらに、既存建物1をそのまま外断熱や内断熱に出来ること。アンカー打ちなど音の出る工事がないため住民が住んだまま施工できること。既存外壁111の材質や凸凹、あるいは不陸に関係なく施工できること。外壁仕上げ材はどのようなものにでも対応が出来ること。断熱層には発泡断熱材6以外のものは入っていないので断熱欠損(ヒートブリッジなど)がないこと。アンカー等で既存の躯体を痛めないことなど、実施形態1~3は、さまざまな有利な効果を奏する。
【0026】
以上、本発明に係る実施形態を、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成は、これらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
また、前述の各実施形態は、その目的および構成等に特に矛盾や問題がない限り、互いの技術を流用して組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0027】
1 既存建物
11 内側壁
111 既存外壁
12 軒天井
2 支持部
21 水切(支持部)
3 基礎
4 壁板
41 ガルバリウム鋼板(登録商標)(壁板)
5 スペーサブロック
6 発泡断熱材
61 注入装置
7 当て木
S 隙間
【手続補正書】
【提出日】2021-12-03
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持部に壁板を載置し躯体に固定された内側壁から離れた位置に壁板を位置させる工程、
前記内側壁と前記壁板の間にスペーサを挟み込む壁板設置工程、
前記壁板を前記内側壁側へ向かって押圧する押圧工程、
前記内側壁と前記壁板の間の空間に発泡断熱材を充填する充填工程を含むものであり、
前記壁板を位置させる工程、前記壁板設置工程、前記押圧工程、および、充填工程を含む工程により設置された前記壁板は、前記支持部と前記発泡断熱材のみで支持、接着されている建物の製造方法。
【請求項2】
内側壁と壁板を備え、
前記壁板は、前記内側壁から離れて設けられており、
前記壁板の下端は、支持部に固定されることなく載置されており、
前記内側壁と前記壁板との間には、スペーサが前記内側壁と前記壁板のいずれにも固定されずに挟まっており、
前記内側壁と前記壁板の間には、発泡断熱材が充填されており、
前記壁板は、前記支持部と前記発泡断熱材のみで支持、接着されていることを特徴とする建物。
【請求項3】
前記充填工程後、前記スペーサを取り除き、前記スペーサを取り除いた空間にさらに前記発泡断熱材を充填する再充填工程を含む請求項1に記載の建物の製造方法。
【請求項4】
前記内側壁と前記壁板との間には、スペーサが前記内側壁と前記壁板のいずれにも固定されずに挟まっていることを特徴とする請求項1または3記載の建物の製造方法。
【請求項5】
前記壁板が、外壁板または室内壁板である請求項1、3または4のいずれか1項に記載の建物の製造方法。
【請求項6】
前記支持部が、水切または基礎である請求項1、3~5のいずれか1項に記載の建物の製造方法。
【請求項7】
前記内側壁が、既存建物の外壁であり、前記壁板が新設外壁である請求項1、3~6のいずれか1項記載の建物の製造方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下地を施工しない無下地断熱建物および無下地断熱建物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1のような外張り断熱工法や、特許文献2のようなガラス繊維マットから成る断熱材を壁や天井に配置するなどの断熱工法が行われていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6002373号
【特許文献2】特開2020-104315号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
建物内部の壁などにおいては、間柱間に断熱材であるグラスウールを嵌め込んだ後に、壁板を取り付ける必要があった。また、外張り断熱では、断熱材や外壁板を取り付けるための胴縁設置や下地の準備が必要であった。さらに、発泡断熱材を使用する時には、発泡断熱材の発泡圧に負けないように予め発泡断熱材が注入される閉空間を強固に作っておく必要があった。
いずれにせよ、壁板設置と断熱を行うには手間を要していた。
【0005】
本発明は、施工の作業性の向上を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は次のように課題の解決を図った。
支持部に壁板を載置し躯体に固定された内側壁から離れた位置に壁板を位置させる工程、前記内側壁と前記壁板の間にスペーサを挟み込む壁板設置工程、前記壁板を前記内側壁側へ向かって押圧する押圧工程、前記内側壁と前記壁板の間の空間に発泡断熱材を充填する充填工程を含むものであり、前記壁板を位置させる工程、前記壁板設置工程、前記押圧工程、および、充填工程を含む工程により設置された前記壁板は、前記支持部と前記発泡断熱材のみで支持されている建物の製造方法。
【0007】
本発明の製造方法により製造される建物は、一形態として以下の構成を具備する。内側壁と壁板を備え、前記壁板は、前記内側壁から離れて設けられており、前記壁板の下端は、支持部に固定されることなく載置されており、前記内側壁と前記壁板の間には、発泡断熱材が充填されており、前記壁板は、前記支持部と前記発泡断熱材のみで支持されていることを特徴とする建物となる。
また、本発明は次のように課題の解決を図った。
内側壁と壁板を備え、前記壁板は、前記内側壁から離れて設けられており、前記壁板の下端は、支持部に固定されることなく載置されており、前記内側壁と前記壁板との間には、スペーサが前記内側壁と前記壁板のいずれにも固定されずに挟まっており、前記内側壁と前記壁板の間には、発泡断熱材が充填されており、前記壁板は、前記支持部と前記発泡断熱材のみで支持、接着されていることを特徴とする建物。
【発明の効果】
【0008】
壁板を、前記支持部と前記発泡断熱材のみで支持することで、作業性を高めることができた。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】実施形態1の支持部の取付工程の説明図(A)支持部となる水切を取り付けた斜視図(B)支持材となる水切にガルバリウム鋼板(登録商標)(壁板)の下端を載置した斜視図
【
図3】ガルバリウム鋼板(登録商標)(壁板)の仮固定工程の説明図
【
図4】実施形態1の工程の繰り返しの説明図(A)施工途中の外観斜視図(一部透視図)(B)発泡材注入工程の外観斜視図
【発明を実施するための形態】
【0010】
図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下の説明では、異なる図における同一符号は同一機能の部位を示しており、各図における重複説明は適宜省略する。
【0011】
(実施形態1)
図面を参照して本発明の実施形態1を説明する。実施形態1は、既存建物1の既存外壁111に新たに外張り断熱を施す例である。
図1は実施形態1の施工中の既存建物1の外観斜視図ある。既存建物1の既存外壁111より外側にガルバリウム鋼板(登録商標)(壁板)41が新たな外壁として設置される。実施形態1では、既存建物1の既存外壁111は、内側壁11として機能する。そして、新設の壁板4であるガルバリウム鋼板(登録商標)41と既存外壁111(内側壁11)との間に、発泡断熱材6が充填され、既存建物1の周囲に外張り断熱が施されて行く。
【0012】
詳細に、実施形態1の施工工程を説明する。
(工程1)ガルバリウム鋼板(登録商標)(壁板)下端の支持
新たな外壁の壁板4となるガルバリウム鋼板(登録商標)41を内側壁11となる既存外壁111から外側に離間して配置する。そのためにガルバリウム鋼板(登録商標)(壁板)41の下端を支える支持部2が必要となる。既存建物1が支持部2に適した部材を有しているのであれば、それを利用することができる。また、既存建物1が支持部2に適した部材を有していないのであれば、支持部2となる部材を別途取り付ける。
【0013】
図2は実施形態1の支持部2の取付工程の説明図である。
図2(A)は支持部2となる水切21を取り付けた斜視図である。既存外壁111の最下部に支持部2となる水切21を締結し固定する。
図2(B)は支持部2となる水切21にガルバリウム鋼板(登録商標)(壁板)41の下端を載置する斜視図である。ガルバリウム鋼板(登録商標)(壁板)41の下端は、水切21を支持部2として水切21の上に立てかけられる。外張り断熱が施されて内側壁11となる既存外壁111と新たな外壁となるガルバリウム鋼板(登録商標)(壁板)41の間には、スペーサとして断熱性のあるスペーサブロック5が挟まれる。断熱性のあるスペーサブロック5は、既存外壁111とガルバリウム鋼板(登録商標)(壁板)41との間に生じた隙間の間隔を一定に保つ役割を果たす。断熱性のあるスペーサブロック5は、この役割を果たすのに必要数、ガルバリウム鋼板(登録商標)(壁板)41の下端から上端まで、間隔を空けて配置される。ガルバリウム鋼板(登録商標)(壁板)41は、
図2(B)の方向に動かされ、既存外壁111と平行になるように設置され
る。
【0014】
(工程2) ガルバリウム鋼板(登録商標)(壁板)の押圧工程
図3は、ガルバリウム鋼板(登録商標)(壁板)41の仮固定工程の説明図である。
ガルバリウム鋼板(登録商標)(壁板)41は、その上端が、軒天井12に当接するまでの長さとなるように、前処理工程で切断されている。そのため、ガルバリウム鋼板(登録商標)(壁板)は、下端は水切21から上端は軒天井12まで、既存外壁111を全体にわたって被覆する。
【0015】
設置されたガルバリウム鋼板(登録商標)(壁板)41の外側には、当て木7が当てられ、矢印の方向に押圧される。ガルバリウム鋼板(登録商標)(壁板)41の内側には、断熱性のあるスペーサブロック5が入っているため、矢印の方向に押圧されると、設置されたガルバリウム鋼板(登録商標)(壁板)41は動かなくなり、隙間Sを空けて押圧されて固定される。
当て木7の押圧手段は、どのようなものでもよいが、既存建物1に沿って強固な足場を組み、足場から当て木7に向けて押し付けるようにしてもよい。
これまでの工程で明らかなように、支持部2である水切21から軒天井12までの間に、ガルバリウム鋼板(登録商標)(壁板)41が設置されるが、ガルバリウム鋼板(登録商標)(壁板)41と断熱性のあるスペーサブロック5は共に、如何なる部材にも締結されていない。当て木7と断熱性のあるスペーサブロック5の間にガルバリウム鋼板(登録商標)(壁板)41が挟まり押圧されているだけである。
【0016】
(発泡断熱材注入工程)
注入装置61を用いて、ガルバリウム鋼板(登録商標)(壁板)41と内側壁11となる既存外壁111の隙間Sに発泡断熱材6が注入される。発泡断熱材6の種類は問わないが、短時間で硬化するものが施工性を向上のために好ましい。例えば、発泡ウレタンなどが好ましい。当て木7を用いたガルバリウム鋼板(登録商標)(壁板)41の押圧は、発泡断熱材6の膨張圧で、何ら締結されていないガルバリウム鋼板(登録商標)(壁板)41が動かないよう対抗するためである。ガルバリウム鋼板(登録商標)(壁板)41が膨張圧に負けないように、ガルバリウム鋼板(登録商標)(壁板)41の上から下まで満遍なく当て木7が当てられ、押圧される。
断熱性のあるスペーサブロック5は断熱性を有するため、そのまま残して施工を続けても、断熱性に影響を与えることはない。
しかし、断熱性がないスペーサブロック5を使用する場合は、発泡断熱材6が硬化した後、断熱性がないスペーサブロック5が取り外され、取り除かれた部分に、発泡断熱材6が注入される。
このようにすれば、新たに出来る断熱層には発泡断熱材6以外のものは入っていないので断熱欠損(ヒートブリッジなど)がない。
【0017】
ここで、スペーサブロック5について補足説明する。スペーサブロック5に断熱性がある場合、前述したようにそのまま発泡断熱材6に埋められたまま施工を続けても問題ない。また、スペーサブロック5の材質は、軽い方が作業性向上の観点からし好ましい。また、スペーサブロック5は押圧されるため変形しないものであることが好ましい。スペーサブロック5が変形してしまうと、ガルバリウム鋼板(登録商標)(壁板)41と内側壁11となる既存外壁111の間にできた中空空間の間隔が不均一になり、良好な施工が出来なくなってしまう。
このような特性を有するものであれば、スペーサブロック5の材質は何でもよい。
さらに、スペーサブロック5を実施形態1で採用しているが、ブロック状である必要もない。
【0018】
以上の工程により、ガルバリウム鋼板(登録商標)(壁板)41は、支持部2である水切21と発泡断熱材6のみで支持されることとなる。発泡断熱材6を用いた施工には、中空空間を作る必要があるが、既存外壁111は、内側壁11となりガルバリウム鋼板(登録商標)41が壁板4となって、中空空間を作ることができる。そのため、従来の外張り断熱工法で必要とされていた、胴縁をつけるなどの下地処理やガルバリウム鋼板(登録商標)(壁板)41を既存建物1の躯体に固定する工程等が不要となり、コストを下げるとともに作業性が向上する。
また、作業性が向上するため工期を短縮できる。既存建物1の躯体に締結のための孔を多数開ける必要が無くなり、既存建物1にかかる負担も少ない。
【0019】
(工程の繰り返し)
図4は実施形態1の工程の繰り返しの説明図であり、
図4(A)は施工途中の外観斜視図(一部透視図)である。
図4(A)では、説明のため発泡断熱材6の注入後取り除かれるスペーサブロック5を残している。本来は、スペーサブロック5が取り除かれたことで生じる隙間に発泡断熱材6が充填されるので、端面は発泡
断熱材6しか残っていない。
施工は、奥の1枚目のガルバリウム鋼板(登録商標)(壁板)41から始まる。1枚目のガルバリウム鋼板(登録商標)(壁板)41に注入された発泡断熱材6が、硬化した後、2枚目のガルバリウム鋼板(登録商標)(壁板)41の施工が開始される。1枚目のガルバリウム鋼板(登録商標)(壁板)41の端部と2枚目のガルバリウム鋼板(登録商標)(壁板)41の一端は重ね合わされ、2枚目のガルバリウム鋼板(登録商標)(壁板)41の他端は、隙間Sが設けられるようにスペーサブロック5が設置される。
【0020】
図4(B)は発泡断熱材注入工程の外観斜視図であり、4枚目のガルバリウム鋼板
(登録商標)(壁板)41の施工に取り掛かっている状態を示している。
図4(B)のように、1枚目から4枚目までのガルバリウム鋼板(登録商標)(壁板)41でできた隙間Sに一挙に発泡断熱材を注入すると、均等に発泡断熱材6が入らず一部が何も充填されていない空隙として残ってしまう施工不良が起きやすくなる。そのため、ガルバリウム鋼板(登録商標)(壁板)41の取り付けを1枚毎に行い、順番に施工することにより、確実に発泡断熱材6を注入でき施工不良を防止することができる。
このように、奥から手前へと1枚1枚順番にガルバリウム鋼板(登録商標)(壁板)41の設置がなされて行く。最後に当て木7や足場が取り外されて施工が終了する。
【0021】
(実施形態2)
実施形態1は、外張り断熱によるものであった。実施形態2では、既存建物1の内断熱に使う例である。
古い家屋などでは、断熱材が内壁に取り付けられていないことがある。前述の実施形態1と同様に、既存建物1の既存の内壁を内側壁11とし、断熱性のあるスペーサブロック5を用いて新たな壁板4となる室内壁板を仮固定する。この他の工程は、実施形態1と同様である。
【0022】
(実施形態3)
実施形態1は、水切21を支持部2とした例であった。寒冷地では、基礎3にも断熱を施すことがある。
図5は、基礎断熱を兼ねた外張り断熱工法の説明図である。地表は、基礎3の根が現れるまで掘られる。そして、ガルバリウム鋼板(登録商標)(壁板)41の支持部2として基礎3そのものが用いられる。基礎3の一部は、ガルバリウム鋼板(登録商標)(壁板)41と対向し、内側壁11となる。その他の工程は、実施形態1と同様である。施工終了後、基礎3は埋め戻される。
【0023】
以上の実施形態1~実施形態3のいずれでも、内側壁(既存外壁111または基礎3)と壁板(ガルバリウム鋼板(登録商標)41や室内壁板)を備え、壁板(ガルバリウム鋼板(登録商標)41や室内壁板)は、内側壁(既存外壁111または基礎3)から離れて設けられており、壁板(ガルバリウム鋼板(登録商標)(壁板)41や室内壁板)の下端は、支持部(水切21または基礎3)に固定されることなく載置されており、内側壁(既存外壁111または基礎3)と壁板(ガルバリウム鋼板(登録商標)(壁板)41や室内壁板)の間には、発泡断熱材6が充填されており、壁板(ガルバリウム鋼板(登録商標)41や室内壁板)は、支持部(水切21または基礎3)と発泡断熱材6のみで支持されていることを特徴とする建物が作られる。
【0024】
また、実施形態1~実施形態3では、既存建物1の施工例であったが、新設建物でも応用できることは言うまでもない。壁板(ガルバリウム鋼板(登録商標)41や室内壁板)について、説明してきたが、壁となるものであれば何でもよい。仕上材といった特定の壁とは異なる部位に使用するものも(例えば、床材、天井材等)も本発明の壁材に含まれる。
また、実施例では1枚の壁板4を水切(支持部)21から軒天井12まで縦に使用する工法であったが、壁板4を横に積み上げる工法も本発明に含まれる。
また、壁全面を断熱化する形態を説明してきたが、壁の一部だけを断熱するものでも、本発明に含まれる。
【0025】
そして、いずれの実施形態も、下地工程や外壁となる壁板4の固定が不要となるなど、作業性を著しく向上できる。
さらに、既存建物1をそのまま外断熱や内断熱に出来る作用効果がある。アンカー打ちなど音の出る工事がないため住民が住んだまま施工できる作用効果がある。既存外壁111の材質や凸凹、あるいは不陸に関係なく施工できる作用効果がある。外壁仕上げ材はどのようなものでも対応が出来る作用効果がある。断熱層には発泡断熱材6以外のものは入っていないので断熱欠損(ヒートブリッジなど)がない作用効果がある。アンカー等で既存の躯体を痛めないことなど、実施形態1~3は、さまざまな有利な効果を奏する。
【0026】
以上、本発明に係る実施形態を、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成は、これらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
また、前述の各実施形態は、その目的および構成等に特に矛盾や問題がない限り、互いの技術を流用して組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0027】
1 既存建物
11 内側壁
111 既存外壁
12 軒天井
2 支持部
21 水切(支持部)
3 基礎
4 壁板
41 ガルバリウム鋼板(登録商標)(壁板)
5 スペーサブロック
6 発泡断熱材
61 注入装置
7 当て木
S 隙間