(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022097188
(43)【公開日】2022-06-30
(54)【発明の名称】化粧材
(51)【国際特許分類】
B32B 27/00 20060101AFI20220623BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20220623BHJP
B32B 27/16 20060101ALI20220623BHJP
C09D 11/101 20140101ALI20220623BHJP
C09D 5/00 20060101ALI20220623BHJP
C09D 127/06 20060101ALI20220623BHJP
B41M 3/06 20060101ALI20220623BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20220623BHJP
【FI】
B32B27/00 E
B32B27/30
B32B27/16
C09D11/101
C09D5/00 D
C09D127/06
B41M3/06 A
B41J2/01 129
B41J2/01 501
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020210630
(22)【出願日】2020-12-18
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】吉田 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】塩田 歩
【テーマコード(参考)】
2C056
2H113
4F100
4J038
4J039
【Fターム(参考)】
2C056FC01
2C056HA44
2H113AA06
2H113BA00
2H113BB07
2H113BB22
2H113BC10
2H113CA05
2H113DA47
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2H113DA57
2H113DA58
2H113DA63
2H113EA07
2H113EA10
2H113FA05
2H113FA43
4F100AK01A
4F100AK15A
4F100AK15C
4F100AK15D
4F100AK22C
4F100AL01C
4F100BA04
4F100BA07
4F100BA10D
4F100CC02B
4F100EH46C
4F100EJ19D
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4F100GB90
4F100HB31B
4F100JB14B
4F100JL10
4J038CD061
4J038MA13
4J038PA07
4J038PC08
4J039AD09
4J039EA04
4J039FA02
4J039GA24
(57)【要約】 (修正有)
【課題】有機溶剤を含むインキを用いず、かつ層間の密着性が高い化粧材を提供する。
【解決手段】基材11と、基材11の一方の面上に、紫外線硬化型インキにより形成された印刷層12と、表面層14と、基材11の印刷層12形成面と表面層14との間に設けられ、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体樹脂を1μm以上5μm以下の厚さで塗工したプライマー層13と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
前記基材の一方の面上に、紫外線硬化型インキにより形成された印刷層と、
表面層と、
前記基材の前記印刷層形成面と前記表面層との間に設けられ、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体樹脂を1μm以上5μm以下の厚さで塗工したプライマー層と、
を備える化粧材。
【請求項2】
前記プライマー層は、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体を10質量%以上含む樹脂材料により形成されている
請求項1に記載の化粧材。
【請求項3】
前記プライマー層における前記樹脂材料の塗布量は、2g/m2以上である
請求項2に記載の化粧材。
【請求項4】
前記基材及び前記表面層は、ポリ塩化ビニルを含む樹脂材料で形成されている
請求項1から3のいずれか1項に記載の化粧材。
【請求項5】
前記表面層は、ポリ塩化ビニルを50質量%超含む樹脂材料で形成されている
請求項4に記載の化粧材。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の化粧材の色と、前記印刷層の色との色差ΔE00が1以下である化粧材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、化粧材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、化粧材では、例えばグラビア印刷により形成された印刷層が設けられることにより意匠性が付与されている。グラビア印刷は、一般に他の印刷方法と比較して階調が豊富で力強く、かつ速いスピードで印刷を施すことができる。このため、グラビア印刷は、大ロットの化粧材の生産に適した印刷方法である。
【0003】
一方で、グラビア印刷は、グラビア版を作成したりインキを調肉するといった作業に時間がかかることが短所として挙げられる。また、グラビア印刷に用いるグラビアインキは、主に有機溶剤、樹脂材料、着色剤、助剤を含んでいる。このため、基材上に有機溶剤系のグラビアインキが印刷されると、グラビアインキ内の有機溶剤成分により基材が侵食される。また、グラビアインキの顔料を定着させる際に熱乾燥により溶剤を揮発させることから、周囲に有機溶剤臭が漂うため、局所廃棄装置の設置等の施設、湿温管理を行う必要がある。そこで、紫外線硬化型インキ(UVインキ)等の有機溶剤を含まないインキを用いて印刷を行うことも行われている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
印刷層の形成に有機溶剤を含むグラビアインキを用いる場合、基材の印刷層形成面と表面層とを加熱後に圧着させる熱プレス処理を施すことで基材と表面層との密着性を向上させることができる。一方、印刷層の形成に紫外線硬化型インキを用いる場合、表面層を構成する樹脂材料と紫外線硬化型インキとの密着性が低いため、熱プレス処理を施すのみでは基材と表面層との十分な密着性が得られない場合がある。なお、基材と表面層との密着性の低下により、表面層と印刷層とが基材から浮いてしまい、化粧材形成後の色評価を行うことができなくなるおそれがある。
【0006】
本開示は、上述の問題点に鑑み、密着性を確保しながら、色再現性の高い化粧材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示の一態様に係る化粧材は、基材と、前記基材の一方の面上に、紫外線硬化型インキにより形成された印刷層と、表面層と、前記基材の前記印刷層形成面と前記表面層との間に設けられ、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体樹脂を1μm以上5μm以下の厚さで塗工したプライマー層と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本開示の一態様によれば、密着性を確保しながら、色再現性の高い化粧材を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の第一実施形態に係る化粧材の一構成例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態を通じて本実施形態に係る化粧材を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0011】
[化粧材の構成]
以下、本開示の実施形態に係る化粧材1について、
図1を参照して説明する。
図1に示すように、化粧材1は、基材11と、印刷層12と、プライマー層13と、表面層14とを備えている。化粧材1は、基材11の一方の面上に印刷層12が形成されており、印刷層12の上層にプライマー層13を介して表面層14が設けられている。
以下、化粧材1を構成する各部について詳細に説明する。
【0012】
<基材>
基材11は、化粧材1の基材となる層である。基材11は、例えばポリ塩化ビニル(PVC)樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合(ABS)樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、ナイロン樹脂、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂等の樹脂材料で形成されることが好ましく、ポリ塩化ビニル(PVC)樹脂によりで形成されることがより好ましい。ポリ塩化ビニル(PVC)樹脂は、高耐候性、高耐水性を有し、強度に優れ、また、印刷や接着等を行いやすいためである。
【0013】
ポリ塩化ビニルとしては、例えば、塩化ビニルの単独重合体、塩化ビニルと他の単量体との共重合体を挙げることができるが、寸法安定性の観点から塩化ビニルの単独重合体が好ましい。
他の単量体としては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル;エチレン、プロピレン、スチレン等のオレフィン;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル等の(メタ)アクリル酸エステル;マレイン酸ジブチル、マレイン酸ジエチル等のマレイン酸ジエステル;フマル酸ジブチル、フマル酸ジエチル等のフマル酸ジエステル;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル;塩化ビニリデン、臭化ビニル等のハロゲン化ビニル;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のビニルエーテル等を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
共重合体における塩化ビニルの含有量は、50質量%超であることが好ましく、75質量%以上であることがより好ましい。塩化ビニルの含有量が50質量%を超えると、可塑剤がブリードアウトすることなく印刷適性が優れ、さらに75質量%以上となると、基材11が柔軟になり成形加工性が向上する。
【0014】
ポリ塩化ビニルの平均重合度は特に限定されず、求められるフィルムの硬さや、硬さの調整に用いられる可塑剤の量に応じて調整されるものであり、例えば、700以上1400以下であることが好ましい。平均重合度が700以上であると、樹脂組成物を溶融してカレンダー成形する際に、成形品の表面が粗くなり、成形品がもろくなることを抑制することができる。また、平均重合度が1400以下であると、溶融した樹脂組成物の耐熱性が向上して加工性に優れたり、成形品の耐熱性や耐候性が向上する。
【0015】
基材11は、特に限定されないが、例えば平板状(特にシート状)とすることが好ましい。
基材11の厚さは、化粧材1の基材として求められる強度、剛性、耐衝撃性、耐熱性、耐寒性、加工性等に優れ、加工が容易であれば特に限定されないが、例えば50μm以上400μm以下であることが好ましく、50μm以上150μm以下であることがより好ましい。厚さが50μm以上である場合、化粧材1の基材として求められる強度、剛性、耐衝撃性、耐熱性、耐寒性が良好となる。また、厚さが400μm以下である場合、例えば切削性や曲げ性等の化粧材1の加工性が向上する。
【0016】
<印刷層>
印刷層12は、化粧材1の意匠性を高めるための層である。印刷層12は、基材11の表面全面を覆っていてもよく、部分的に覆っていてもよい。例えば、印刷層12が任意の図柄や情報等に対応する平面形状である場合、印刷層12は、基材11の表面を部分的に覆って形成される。
また、印刷層12は、単層であっても良く、複数層に重なった層であっても良い。
【0017】
印刷層12は、基材11の一方の面上に、例えば無溶剤系の紫外線硬化型インキ(以下、UVインキという場合がある)により形成されている。紫外線硬化型インキは、光重合性樹脂、光重合開始剤、着色剤、助剤等を含んでいる。このような紫外線硬化型インキとしては、例えば紫外線硬化型アクリルアクリレート樹脂インキ等のアクリルモノマーインキを用いることができる。
無溶剤系の紫外線硬化型インキは、グラビアインキと比較して基材11との密着性が劣るものの、基材11を侵食しないため好ましい。
【0018】
印刷層12は、無溶剤系の紫外線硬化型インキを用いてインクジェット印刷機により形成することができる。紫外線硬化型インキは、インクジェット印刷機の印刷ヘッドから基材11に直接吐出された後、照射された紫外光により光化学反応を起こして即時硬化される。このように、インクジェット印刷方法はインキを直接吐出する印刷方法であり、他の印刷方法と違い印刷する基材11の印刷層12形成面は平坦である必要はない。また、インクジェット印刷方法は比較的容易に多色刷りが可能となる。また、インクジェットインクの色は、通常使用されるシアン、マゼンタ、イエロー、ブラックに限らず、オレンジ、グリーン、バイオレットなど、その他の色も使用することができる。また、無溶剤系の紫外線硬化型インキは、インクジェットノズルの目詰まりが生じ難く生産性が向上するため好ましい。
【0019】
また、本実施形態において、表面層14側から観察した化粧材1の色と、印刷層12の色との色差はΔE00≦1.0が好ましく、ΔE00≦0.5がより好ましい。つまり、プライマー層13及び表面層14を形成する前の化粧材1の色と、プライマー層13及び表面層14を形成した後の化粧材1の色との色差はΔE00≦1.0が好ましく、ΔE00≦0.5がより好ましい。上記色差がΔE00≦1.0である場合に、本実施形態の化粧材1の色再現性が向上し、化粧材形成後の色評価を実施することが可能となる。
【0020】
<プライマー層>
プライマー層13は、基材11の印刷層12形成面と表面層14との間に設けられ、基材11と表面層14とを熱ラミネート法によって良好に密着させるための層である。プライマー層13を設けることにより、プライマー層13と基材11及びプライマー層13と表面層14とが高い接着強度で接着され、その結果、基材11と表面層14との接着強度を向上させることができる。また、プライマー層13は、紫外線硬化型インキが柄の濃淡によって積み上がって生じた印刷層12表面の段差を埋め、印刷層12とプライマー層13との接着面積を大きくすることができる。このため、プライマー層13を有することにより、印刷層12と表面層14とが点状に(すなわち、印刷層12表面の凹凸形状の先端部分と表面層14とが接して)接着して接着不良が生じた場合に発現する化粧材1表面の白化を抑制することができる。また、プライマー層13を設けることにより表面層14が基材11から浮いてしまうことを防ぎ、化粧材の色確認が可能となる。
【0021】
プライマー層13は、貼り合せる基材11及び表面層14のそれぞれに近い材質の材料により形成されることが好ましい。基材11と表面層14との双方との相溶性がよく、基材11と表面層14との密着強度がより向上する。また、プライマー層13は、軟化点が低く、加工しやすい樹脂材料により形成されることが好ましい。熱ラミネート法による基材11と表面層14との接着強度がさらに向上するためである。
【0022】
本実施形態において、プライマー層13は、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体樹脂を用いて形成されている。この場合、プライマー層13は、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体を10質量%以上含む樹脂材料により形成されていることがより好ましい。塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体は、軟化点が低く、加工しやすい点で好ましい。プライマー層13が印刷層12の段差をより良好に埋めて、基材11と表面層14との接着強度をより向上させることができるためである。
【0023】
プライマー層13における樹脂材料の塗布量は、2g/m2以上5g/m2以下であることが好ましい。ここで、塗布量は、樹脂材料を塗布・乾燥した後の塗布量である。このような塗布量で樹脂材料を塗布して形成したプライマー層13の厚さは、1μm以上5μm以下の範囲内である。プライマー層13の厚さが1μm以上である場合、プライマー層13の厚さが印刷層12の段差を良好に埋めるのに十分な厚さとなり、基材11と表面層14との接着強度をより向上させることができる。また、プライマー層13の厚さが5μm以下である場合、プライマー層13によって基材11を侵しにくくなる。
【0024】
印刷層12を構成する紫外線硬化型インキは、紫外光を当てて硬化させる前はプラスチックフィルムのような非吸収性の基材にも印刷することができるが、硬化後は紫外光への反応に寄与するインキの主成分であるモノマーが重合体になって構造が固まってしまう。この場合、基材11と表面層14に熱を加えて圧着させようとしても、印刷層12の軟化点が高く加工することが困難である。
一方、基材11及び表面層14に近い材質の材料により形成されたプライマー層13を有することで、基材11及び表面層14とプライマー層13との相溶性が向上し、印刷層12を介していても密着強度が向上する。
【0025】
<表面層>
表面層14は、印刷層12を保護するための層である。
表面層14は、基材11に近い材質の樹脂材料により形成されることが好ましく、基材11と同じ樹脂材料により形成されることがより好ましい。プライマー層13の材料の選定が容易となり、基材11と表面層14との接着強度が向上しやすいためである。
表面層14は、ポリ塩化ビニル(PVC)樹脂を含有する樹脂材料により形成されることがさらに好ましい。この場合、表面層14を基材11に貼り付ける際に表面層14の伸びがよく、破断し難いため、基材11表面への優れた追従性(成形性)が得られるため好ましい。
【0026】
ポリ塩化ビニルとしては、例えば、塩化ビニルの単独重合体、塩化ビニルと他の単量体との共重合体を挙げることができるが、寸法安定性の観点から塩化ビニルの単独重合体が好ましい。
他の単量体としては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル;エチレン、プロピレン、スチレン等のオレフィン;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル等の(メタ)アクリル酸エステル;マレイン酸ジブチル、マレイン酸ジエチル等のマレイン酸ジエステル;フマル酸ジブチル、フマル酸ジエチル等のフマル酸ジエステル;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル;塩化ビニリデン、臭化ビニル等のハロゲン化ビニル;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のビニルエーテル等を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
共重合体における塩化ビニルの含有量は、50質量%超であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましい。塩化ビニルの含有量が50質量%を超えると、表面層14の屈曲性が向上し、基材11との接着性が向上する。
【0027】
ポリ塩化ビニルの平均重合度は特に限定されず、求められるフィルムの硬さや、硬さの調整に用いられる可塑剤の量に応じて調整されるものであり、例えば、800以上1300以下であることが好ましく、800以上1050以下であることがより好ましい。平均重合度が800以上であると、比較的低温での成形性が特に良好であり、また成形時におけるエンボス形状の維持が容易となる。また、平均重合度が1300以下であると、表面層14の基材11表面への追従性が向上する。
【0028】
表面層14の厚さは特に限定されないが、50μm以上450μm以下であることが好ましく、50μm以上150μm以下であることがより好ましい。厚さが50μm以上である場合、表面層14自体の強度が不足し、耐久性・耐候性が低下するおそれがある。また、厚さが450μm以下である場合、フィルムが適度なコシを有し、基材11への貼付けが容易となる。
【0029】
表面層14は、印刷層12の図柄が化粧材1表面に現れていれば、任意の意匠性が付与されていてもよい。例えば、表面層14は、任意の色、柄(模様)が付与されていても良い。意匠は、表面層14の全面に施されてもよく、部分的に施されてもよい。意匠を付与する方法は特に限定されず、例えば、エンボス加工等が挙げられる。エンボスの仕様によって表面層14の意匠性を変えることができる。
【0030】
表面層14は、紫外線吸収剤や光安定剤を含有していてもよい。紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤及びベンゾフェノン系紫外線吸収剤等が用いられることが好ましい。これらの紫外線吸収剤の少なくとも一種を用いる場合、表面層14を構成する樹脂材料との相溶性が充分に確保されることから、表面層14の耐候性が向上する。また、これら紫外線吸収剤を組み合わせて用いることにより、吸収する紫外光の波長範囲を調整することができる。
【0031】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、2-(2-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、2-(5-メチル-2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-[2-ヒドロキシ-3,5-ビス(α,α-ジメチルベンジル)フェニル]-2H-ベンゾトリアゾール、2-(3,5-ジ-t-ブチル-2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(3-t-ブチル-5-メチル-2-ヒドロキシフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(3,5-ジ-t-ブチル-2-ヒドロキシフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(3,5-ジ-t-アミル-2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール等やこれらの混合物、変性物、重合物、誘導体が挙げられる。
【0032】
トリアジン系紫外線吸収剤としては、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-[(ヘキシル)オキシ]-フェノール、2-〔4-[(2-ヒドロキシ-3-ドデシルオキシプロピル)オキシ]-2-ヒドロキシフェニル〕-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-〔4-[(2-ヒドロキシ-3-トリデシルオキシプロピル)オキシ]-2-ヒドロキシフェニル〕-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-6-(2-ヒドロキシ-4-イソ-オクチルオキシフェニル)-s-トリアジン等やこれらの混合物、変性物、重合物、誘導体等が挙げられる。
【0033】
ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-オクトキシベンゾフェノン、5,5’-メチレンビス(2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン)等やこれらの混合物、変性物、重合物、誘導体等が挙げられる。
紫外線吸収剤の含有量は、表面層14全体に対して0.1質量%以上50質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上30質量%以下であることがより好ましい。紫外線吸収効果を十分に発揮するとともに、紫外線吸収剤のブリードアウトを抑制することができるためである。
【0034】
表面層14に添加される光安定剤としては、ヒンダードアミン系光安定剤が用いられることが好ましい。
ヒンダードアミン系光安定剤としては、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニル)〔[3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル]メチル〕ブチルマロネート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニル)セバケート、メチル(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニル)セバケート、デカン二酸ビス[2,2,6,6-テトラメチル-1-オクチルオキシ)-4-ピペリジニル]エステル等やこれらの混合物、変性物、重合物、誘導体などが挙げられる。
【0035】
[化粧材の製造方法]
以下、上述した化粧材1の製造方法について説明する。
基材11は、射出成形、押出成形、ブロー成形、真空成形、圧縮成形、カレンダー成形、熱溶融積層法等の成形方法により、樹脂材料をシート状に形成することにより得ることができる。
【0036】
印刷層12は、無溶剤系の紫外線硬化型インキを用いてインクジェット印刷機により基材11の表面上に紫外線硬化型インキを吐出した後、紫外光により紫外線硬化型インキを硬化することで形成することができる。
【0037】
プライマー層13は、基材11の印刷層12形成面に、プライマー層13となる材料をバーコーター等により塗布し、乾燥することにより形成される。このとき、プライマー層13となる材料を、メチルエチルケトン(MEK)等を添加して希釈し、粘度を調整したあと、乾燥後の塗布量が2g/m2以上となるように塗布する。
最後に、表面層14となる透明の樹脂フィルムを準備し、基材11上に塗布されたプライマー層13と貼り合わせた後、熱ラミネートによりプライマー層13を介して基材11と表面層14とを貼り合せる。
以上により、化粧材1が形成される。
【0038】
<本実施形態の効果>
上述した化粧材は、以下の効果を有する。
(1)本開示の化粧材は、基材の一方の面上に、紫外線硬化型インキにより形成された印刷層と、表面層と、基材の印刷層形成面と表面層との間に設けられ、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体樹脂を1μm以上5μm以下の厚さで塗工したプライマー層と、を備えている。
このため、プライマー層と基材及びプライマー層と表面層との接着性を向上させて、層間の接着強度を向上させるとともに、高い色再現性を付与することができる。
【0039】
(2)本開示の化粧材のプライマー層は、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体を10質量%以上含む樹脂材料により形成されていることが好ましい。
これにより、プライマー層は、軟化点が低く、加工しやすい塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体を含むため、プライマー層が印刷層の段差をより良好に埋めて、基材と表面層との接着強度をより向上させることができるためである。
【0040】
(3)本開示の化粧材のプライマー層は、樹脂材料の塗布量が2g/m2以上となるように形成されていることが好ましい。
これにより、プライマー層の厚さが印刷層の段差を良好に埋めるのに十分な厚さとなり、基材と表面層との接着強度をさらに向上させることができる。
【0041】
(4)本開示の化粧材の表面層は、ポリ塩化ビニルを50質量%超含む樹脂材料で形成されていることが好ましい。
これにより、表面層の屈曲性が向上し、基材との接着性が向上する。
【0042】
(5)本開示の化粧材は、プライマー層13及び表面層14を形成する前の化粧材1の色と、プライマー層13及び表面層14を形成した後の化粧材の色との色差はΔE00≦1.0が好ましい。
これにより、化粧材の加工後においての高い色再現性が担保される。
【実施例0043】
以下、本開示に係る化粧材について、実施例を挙げて説明する
実施例では、上述の実施形態で説明した構成の化粧材を作製し、後述する評価を行った。
【0044】
<実施例1>
基材として、ポリ塩化ビニルフィルム(バンドー化学株式会社製「ビニバン」)を用い、当該フィルムの一方の面に、インクジェット印刷機を用いて紫外線硬化型インキ(株式会社リコー製)でベタ塗りして印刷層を形成した。また、インクジェットインキの色は、シアンを使用した。
続いて、基材の印刷層形成面に、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体(塩酢ビ)系のプライマー(東洋インキ株式会社「K588HP接着グロスAワニス」)を、温風乾燥後の塗布量が2g/m2となるように塗布、乾燥してプライマー層を形成した。このとき、メチルエチルケトンを用いて希釈し、粘度を17~19秒(ZC#3)に調整した塩酢ビ系のプライマーをバーコーターにより塗布した後、40℃の環境下で60秒乾燥させてプライマー層を形成した。ここで、本実施例で用いたプライマー材料中における塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体の含有量は、10質量%であった。
【0045】
最後に、乾燥後のプライマー層上に、表面層となるポリ塩化ビニルクリアフィルム(オカモト株式会社製「#360」)を熱ラミネートにより貼り合わせた。このとき、熱ラミネートは、160℃で2kg/cm2圧の条件で行った。
以上により、実施例1の化粧材を形成した。
【0046】
<実施例2>
インクジェットインキの色をマゼンタに変更して印刷層を形成した以外は、実施例1と同様にして実施例2の化粧材を形成した。
【0047】
<実施例3>
インクジェットインキの色をイエローに変更して印刷層を形成した以外は、実施例1と同様にして実施例3の化粧材を形成した。
【0048】
<実施例4>
インクジェットインキの色をブラックに変更して印刷層を形成した以外は、実施例1と同様にして実施例4の化粧材を形成した。
【0049】
<実施例5>
基材及び表面層を、ポリ塩化ビニルフィルムに替えてポリブチレンテレフタレート(PBT)を用いて形成した以外は、実施例1と同様にして実施例5の化粧材を形成した。
【0050】
<実施例6>
塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体の含有量が5質量%である塩酢ビ系のプライマーを用いてプライマー層を形成した以外は、実施例1と同様にして実施例6の化粧材を形成した。
【0051】
<実施例7>
温風乾燥後の塩酢ビ系のプライマーの塗布量が1g/m2となるように塗布、乾燥してプライマー層を形成した以外は、実施例1と同様にして実施例7の化粧材を形成した。
【0052】
<比較例1>
プライマー層を設けなかった以外は実施例1と同様にして比較例1の化粧材を形成した。
【0053】
<比較例2>
塩酢ビ系のプライマーに替えてアクリル塩酢ビ系のプライマー(東栄化成株式会社製「アクリルポリオール」)を用いた以外は、実施例1と同様にして比較例2の化粧材を形成した。ここで、本実施例で用いたプライマー材料中における塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体の含有量は、40質量%であった。
【0054】
<比較例3>
塩酢ビ系のプライマーに替えてアクリル系のプライマー(綜研化学株式会社製「SK2094」)を用いた以外は、実施例1と同様にして比較例3の化粧材を形成した。ここで、本実施例で用いたプライマー材料中における塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体の含有量は、40質量%であった。
【0055】
<評価方法>
上述した実施例1~7、比較例1~3で得られた化粧材について、次の評価を実施した。
〔CIE Lab表色系の色相(L*値、a*値、b*値)の測定〕
実施例1~7及び比較例1~3の化粧材について、分光測色計(コニカミノルタ株式会社製、CM-5)を使用して、測定基準JIS Z 8722に従って、表面層の側から色相を測定し、以下の◎、○、△、×の4段階で評価した。
<評価基準>
◎:ΔE00が0.5以下となる場合
○:ΔE00が0.5より大きく1.0以下となる場合
△:ΔE00が1.0より大きく1.5以下となる場合
×:ΔE00が1.5より大きくなる場合
【0056】
〔層間強度試験〕
実施例1~7及び比較例1~3の化粧材について、基材及び表面層の熱ラミネートによる貼り合せ時間を10秒として作成した場合の、層間強度[N/inch]を測定し、以下の◎、○、△、×の4段階で評価した。層間強度の測定は、引張速度150mm/minで表面層を基材から引き剥した際の強度を測定した。
<評価基準>
◎:層間強度が1.5N/inchより大きくなる場合
○:層間強度が1.0N/inchより大きく1.5N/inch以下となる場合
△:層間強度が0.5N/inchより大きく1.0N/inch以下となる場合
×:層間強度が0.5N/inch以下となる場合
【0057】
以下の表1に、各実施例及び比較例の構成の抜粋及び評価結果を示す。
【0058】
【0059】
表1中に表されるように、実施例1~7、比較例1の評価結果から、実施例1~7のようにプライマー層を有する場合には、比較例1のようにプライマー層を有さない場合と比べて色再現性が高いことがわかった。
また、実施例1~7、比較例2,3の評価結果から、実施例1~7のようにプライマー層に用いるプライマーに塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体樹脂を含む場合には、比較例2,3のようにプライマー層に用いるプライマーに塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体樹脂を含まない場合と比べて層間強度が高いことがわかった。また、実施例1~5と実施例6との比較から、プライマーは、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体樹脂を10%以上含む材料が好ましいことがわかった。さらに、実施例1~6と実施例7との比較から、プライマーの塗布量は、2g/m2以上であることが好ましいことがわかった。
また、実施例1~4と実施例5との比較から、基材の材料は、ポリ塩化ビニルが好ましいことがわかった。
【0060】
本開示の範囲は、図示され記載された例示的な実施形態に限定されるものではなく、本開示が目的とするものと均等な効果をもたらす全ての実施形態をも含む。さらに、本開示の範囲は、請求項により画される発明の特徴の組み合わせに限定されるものではなく、全ての開示されたそれぞれの特徴のうち特定の特徴のあらゆる所望する組み合わせによって画されうる。