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  • 特開-ワイヤレスマイクロフォン 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022097200
(43)【公開日】2022-06-30
(54)【発明の名称】ワイヤレスマイクロフォン
(51)【国際特許分類】
   H04B 1/034 20060101AFI20220623BHJP
   H03L 7/099 20060101ALI20220623BHJP
   H04B 1/04 20060101ALI20220623BHJP
   H04R 3/00 20060101ALI20220623BHJP
【FI】
H04B1/034 B
H03L7/099
H04B1/04 K
H04B1/04 T
H04R3/00 320
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020210644
(22)【出願日】2020-12-18
(71)【出願人】
【識別番号】390005223
【氏名又は名称】株式会社タムラ製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100081961
【弁理士】
【氏名又は名称】木内 光春
(74)【代理人】
【識別番号】100112564
【弁理士】
【氏名又は名称】大熊 考一
(74)【代理人】
【識別番号】100163500
【弁理士】
【氏名又は名称】片桐 貞典
(74)【代理人】
【識別番号】230115598
【弁護士】
【氏名又は名称】木内 加奈子
(72)【発明者】
【氏名】梶山 篤
(72)【発明者】
【氏名】氷渡 昌輝
【テーマコード(参考)】
5D220
5J106
5K060
【Fターム(参考)】
5D220DD03
5J106AA04
5J106BB04
5J106CC02
5J106CC41
5J106DD32
5J106GG03
5J106HH01
5J106KK03
5J106QQ09
5K060AA11
5K060AA12
5K060DD07
5K060HH25
5K060LL16
(57)【要約】
【課題】PLL回路をロック状態にするまでの時間を短縮して、音声が途切れることを防止したワイヤレスマイクロフォンを提供する。
【解決手段】搬送波を生成し、マイクロフォンアンプ1から入力される音声信号により搬送波を変調し、送信信号としてアンテナ部5に出力するPLL回路2と、PLL回路2に基準信号を出力するオシレータ3と、送信周波数を予め設定する周波数設定スイッチ92と、PLL回路2に、仮の周波数信号と、周波数設定スイッチ92により設定された送信周波数の送信周波数信号とを出力する周波数信号出力部61と、ワイヤレスマイクロフォン1に電源を供給する電源スイッチ91と、を備える。周波数信号出力部61は、電源スイッチ91の投入時において、仮の周波数信号を出力すると共に、周波数設定スイッチ92により設定された送信周波数の読み込みを開始し、読み込まれた送信周波数の送信周波数信号を、仮の周波数信号に代えて、PLL回路2に出力する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送波を生成し、マイクロフォンアンプから入力される音声信号により前記搬送波を変調し、送信信号としてアンテナ部に出力するPLL回路と、
前記PLL回路に基準信号を出力するオシレータと、
送信周波数を予め設定する周波数設定スイッチと、
前記PLL回路に、仮の周波数信号と、前記周波数設定スイッチにより設定された送信周波数の送信周波数信号とを出力する周波数信号出力部と、
ワイヤレスマイクロフォンに電源を供給する電源スイッチと、
を備え、
前記周波数信号出力部は、
前記電源スイッチの投入時において、仮の周波数信号を出力すると共に、前記周波数設定スイッチにより設定された送信周波数の読み込みを開始し、
読み込まれた送信周波数の送信周波数信号を、前記仮の周波数信号に代えて、前記PLL回路に出力する、
ワイヤレスマイクロフォン。
【請求項2】
前記PLL回路がロック状態になるまで、前記送信信号を前記アンテナ部に出力させないスイッチを更に備える、
請求項1に記載のワイヤレスマイクロフォン。
【請求項3】
前記PLL回路の出力側に、前記スイッチによってON/OFF制御されるバッファアンプが設けられ、
前記PLL回路には、前記ロック状態を検出してロック通知信号を出力するロック通知部が設けられ、
前記スイッチは、前記ロック通知部からのロック通知信号に基づいて、前記バッファアンプをONにする、
請求項2に記載のワイヤレスマイクロフォン。
【請求項4】
受信機側に設けられた各種機器を制御する制御信号を前記PLL回路に出力する制御信号出力部を更に備え、
前記PLL回路は、前記制御信号出力部から入力された前記制御信号により前記搬送波を変調する、
請求項1乃至3のいずれかに記載のワイヤレスマイクロフォン。
【請求項5】
前記制御信号出力部は、
アナログ制御信号を出力するアナログ制御信号出力部と、
デジタル制御信号を出力するデジタル制御信号出力部と、
を備え、
前記制御信号は、前記アナログ制御信号またはデジタル制御信号の一方である、
請求項4に記載のワイヤレスマイクロフォン。
【請求項6】
前記マイクロフォンアンプと前記PLL回路との間に設けられるアナログ信号抑止スイッチと、
前記アナログ信号抑止スイッチを制御する抑止信号出力部と、
を更に備え、
前記抑止信号出力部は、前記制御信号が前記デジタル制御信号の時に、前記アナログ信号抑止スイッチを所定の時間OFF状態にする、
請求項5に記載のワイヤレスマイクロフォン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤレスマイクロフォンに関する。
【背景技術】
【0002】
ワイヤレスマイクロフォンは、周波数の異なる複数の送信チャンネルを備えている。音声信号の送信に先立ち、ワイヤレスマイクロフォンに設けられた周波数設定スイッチの操作により、送信周波数が設定される。音声信号の送信時には、ワイヤレスマイクロフォンに設けられたPLL回路が、設定された送信周波数に基づいて、入力された音声信号を送信信号に変換する。すなわち、ワイヤレスマイクロフォンには、設定された送信周波数の情報を含む信号を出力する送信周波数信号出力部が設けられ、この信号がPLL回路に入力されることで、PLL回路は、設定された送信周波数に基づいて音声信号を送信信号に変換する。
【0003】
また、ワイヤレスマイクロフォンの中には、音声信号に加えて、受信機側に設けられた各種機器を制御するための制御信号を送信するものも知られている。例えば、駅の構内で使用されるワイヤレスマイクロフォンは、ワイヤレスマイクロフォンに設けられたボタンなどの制御スイッチの操作に応じて、受信機へ数種の制御信号を送信することができる。制御内容の例として、音声を伝送していることを受信機側へ伝えてその音声をスピーカなどから放送させること、放送対象範囲(1番線、2番線など)の指定、発車ベルの鳴動、確認信号の送信などがある。このような制御信号も、音声信号と同様に、PLL回路を介して送信信号に変換される。
【0004】
さらに、このような制御信号をワイヤレスマイクロフォンから受信機へ送信する技術の態様は、アナログトーン制御方式とデジタル制御方式に大別でき、ワイヤレスマイクロフォンの中には両方式を選択できるものも知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2013/136766号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来技術のワイヤレスマイクロフォンにおいて、電源スイッチの投入から音声信号が送信されるまでには、次のような処理が実行される。電源スイッチが投入され、ワイヤレスマイクロフォンの制御部であるCPU回路の初期化が完了すると、CPU回路はまず、周波数設定スイッチによりあらかじめ設定された送信周波数値を読み込む。設定された送信周波数値が読み込まれると、周波数信号出力部は、読み込まれた値の送信周波数をPLL回路に出力する。送信周波数が入力された後、所定のロックアップタイムが経過すると、この送信周波数に基づいてPLL回路がロック状態となり、搬送波が生成される。この搬送波が音声信号により変調され、バッファアンプ及びアンテナ部を介して送信される。
【0007】
以上のように、電源スイッチの投入から変調された搬送波がアンテナ部から送信されるまでには、CPU回路の初期化、設定された送信周波数値の読み込み、周波数出力部による送信周波数の出力、PLL回路のロックアップタイムなど、各処理に時間がかかる。そのため、ユーザが電源スイッチを投入してからすぐに音声を入力すると、PLL回路のロックが間に合わず、音声の最初の部分が途切れてしまう可能性があった。
【0008】
本発明は、上記課題を解決すべく、PLL回路をロック状態にするまでの時間を短縮して、音声が途切れることを防止したワイヤレスマイクロフォンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のワイヤレスマイクロフォンは、次のような構成を備える。
(1)搬送波を生成し、マイクロフォンアンプから入力される音声信号により前記搬送波を変調し、送信信号としてアンテナ部に出力するPLL回路。
(2)前記PLL回路に基準信号を出力するオシレータ。
(3)送信周波数を予め設定する周波数設定スイッチ。
(4)前記PLL回路に、仮の周波数信号と、前記周波数設定スイッチにより設定された送信周波数の送信周波数信号とを出力する周波数信号出力部。
(5)ワイヤレスマイクロフォンに電源を供給する電源スイッチ。
(6)前記周波数信号出力部は、前記電源スイッチの投入時において、仮の周波数信号を出力すると共に、前記周波数設定スイッチにより設定された送信周波数の読み込みを開始し、読み込まれた送信周波数の送信周波数信号を、前記仮の周波数信号に代えて、前記PLL回路に出力する。
【0010】
また、本発明のワイヤレスマイクロフォンは、次のような構成を更に備えてもよい。
(1)前記PLL回路がロック状態になるまで、前記送信信号を前記アンテナ部に出力させないスイッチを更に備える。
(2)前記PLL回路の出力側に、前記スイッチによってON/OFF制御されるバッファアンプが設けられ、前記PLL回路には、前記ロック状態を検出してロック通知信号を出力するロック通知部が設けられ、前記スイッチは、前記ロック通知部からのロック通知信号に基づいて、前記バッファアンプをONにする。
(3)受信機側に設けられた各種機器を制御する制御信号を前記PLL回路に出力する制御信号出力部を更に備え、前記PLL回路は、前記制御信号出力部から入力された前記制御信号により前記搬送波を変調する。
(4)前記制御信号出力部は、アナログ制御信号を出力するアナログ制御信号出力部と、デジタル制御信号を出力するデジタル制御信号出力部と、を備え、前記制御信号は、前記アナログ制御信号またはデジタル制御信号の一方である。
(5)前記マイクロフォンアンプと前記PLL回路との間に設けられるアナログ信号抑止スイッチと、前記アナログ信号抑止スイッチを制御する抑止信号出力部と、を更に備え、前記抑止信号出力部は、前記制御信号が前記デジタル制御信号の時に、前記アナログ信号抑止スイッチを所定の時間OFF状態にする。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、PLL回路をロック状態にするまでの時間を短縮して、音声が途切れることを防止したワイヤレスマイクロフォンを提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態に係るワイヤレスマイクロフォンの構成を示すブロック図。
図2】実施形態に係るワイヤレスマイクロフォンの作用を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[第1の実施形態]
[構成]
(主要部の概略構成)
図1に示すように、本実施形態のワイヤレスマイクロフォン100は、マイクロフォンアンプ1と、PLL回路2と、オシレータ3と、バッファアンプ41と、アンテナ部5と、制御部6と、を備える。また、ワイヤレスマイクロフォン100は、当該ワイヤレスマイクロフォン100に電源を供給する電源スイッチ91と、チャンネル設定のための周波数設定スイッチ92と、制御信号を送信するための制御スイッチ93と、制御信号の種類を選択する動作設定スイッチ94と、を備える。
【0014】
(マイクロフォンアンプ)
マイクロフォンアンプ1は、ユーザから入力される音声信号を増幅し、後段に設けられたPLL回路2に出力する。
【0015】
(PLL回路)
PLL回路2は、電圧制御発振器21と、可変分周器22と、位相比較器23と、ループフィルタ24と、ロック通知部25と、を備える。
【0016】
電圧制御発振器21は、搬送波を生成し、この搬送波を音声信号により変調して送信信号として出力する。より詳細には、電圧制御発振器21は、ループフィルタ24から入力される信号に基づいて制御される発振周波数の搬送波を生成し、マイクロフォンアンプ1から入力される音声信号によりこの搬送波を変調し、送信信号として出力する。
【0017】
可変分周器22は、電圧制御発振器21の後段に設けられ、分周比を変化させることにより、送信信号の周波数を分周する。これにより、可変分周器22は、制御部6から出力される周波数信号に基づいて、送信信号の周波数を変化させる。位相比較器23は、可変分周器22の後段に設けられ、分周された送信信号と、オシレータ3から出力される基準信号との位相差を検出し、位相誤差信号を生成する。位相比較器23は、位相誤差信号を後段に設けられたループフィルタ24に出力する。ループフィルタ24は、例えばローパスフィルタであり、位相誤差信号から交流成分を除去し、平滑化する。この平滑化された信号は、マイクロフォンアンプ1からの音声信号と共に、電圧制御発振器21に入力される。
【0018】
以上のように、PLL回路2は、ループフィルタ24から入力される信号に基づいて電圧制御発振器21の発振周波数を制御する。また、電圧制御発振器21の発振周波数が定常状態(ロック状態)になると、ロック通知部25は、制御部6に対してロック通知信号を出力する。
【0019】
(バッファアンプ)
バッファアンプ41は、電圧制御発振器21から出力される送信信号を増幅させ、後段に設けられるアンテナ部5から送信する。バッファアンプ41には、バッファスイッチ42が設けられ、このバッファスイッチ42によりバッファアンプ41のON/OFFが切り替えられる。すなわち、バッファアンプ41は、ONの場合にのみ、送信信号を増幅させ、後段に設けられるアンテナ部5に出力する。このON/OFFの切り替えは、制御部6からバッファスイッチ42に出力されるバッファアンプON/OFF信号によって行われる。なお、本実施形態のバッファアンプ41は、デフォルトでOFFになっており、バッファアンプON/OFF信号により初めてONとなるものとする。
【0020】
(制御部)
制御部6は、CPU回路及びストレージにより構成され、上述の各構成を制御する。そのため、制御部6は、PLL回路2に仮の周波数信号及び送信周波数信号を出力する周波数信号出力部61と、バッファスイッチ42を制御するバッファアンプON/OFF信号出力部62と、アナログ制御信号出力部63と、デジタル制御信号出力部64と、音声信号及びアナログ制御信号がPLL回路2に入力されるのを抑止する抑止信号出力部65と、各種データを記憶する記憶部66と、を備える。
【0021】
周波数信号出力部61は、仮の周波数信号と、周波数設定スイッチ92によって設定された送信周波数値の情報を含む送信周波数信号とを、異なるタイミングで可変分周器22に出力する。仮の周波数信号は、ワイヤレスマイクロフォン100に設けられた電源スイッチ91の操作により制御部6を構成するCPU回路の初期化が完了すると、直ちに出力されるものであり、送信周波数信号とは異なる値の周波数の情報を含む信号である。一方、送信周波数信号は、あらかじめ周波数設定スイッチ92により設定され、記憶部66に記憶された送信周波数の情報を含む信号であって、CPU回路の初期化完了後、周波数信号出力部61がその値を記憶部66から読み出すことにより、PLL回路2の可変分周器22に出力されるものである。また、周波数信号出力部61は、送信周波数信号の出力にあたって、仮の周波数信号の出力を中断する。
【0022】
バッファアンプON/OFF信号出力部62は、ロック通知部25からPLL回路2が定常状態に達したことを知らせるロック通知信号が入力されると、バッファスイッチ42にバッファアンプON/OFF信号を出力する。
【0023】
アナログ制御信号出力部63は、高周波成分を除去するローパスフィルタ71及び後述のアナログ信号抑止スイッチ8を介して、アナログ制御信号を電圧制御発振器21に出力する。デジタル制御信号出力部64は、高周波成分を除去するローパスフィルタ72を介して、デジタル制御信号を電圧制御発振器21に出力する。
【0024】
抑止信号出力部65は、デジタル制御信号出力部64がデジタル制御信号を出力する場合に、抑止信号をアナログ信号抑止スイッチ8に出力し、アナログ信号抑止スイッチ8を所定の時間OFF状態にする。これにより、デジタル制御信号を用いる場合に音声信号を遮断する。このように、アナログ信号抑止スイッチ8は、電圧制御発振器21に入力される変調信号として、音声信号またはアナログ制御信号の少なくとも一方を用いる場合と、デジタル制御信号を用いる場合とを切り替える。なお、本実施形態のアナログ信号抑止スイッチ8は、デフォルトでON状態である。
【0025】
記憶部66は、ストレージにより構成され、制御部6を動作させる各種プログラムや、送信周波数信号に設定される周波数、アナログ制御信号及びデジタル制御信号のいずれを選択するか、その制御内容など、制御部6の動作に必要な情報を記憶する。
【0026】
(スイッチ)
制御スイッチ93は、アナログ制御信号出力部63またはデジタル制御信号出力部64に対して、アナログ制御信号またはデジタル制御信号の出力を指示する。動作設定スイッチ94は、制御信号としてアナログ制御信号を用いるか、デジタル制御信号を用いるかを設定する。これにより、アナログ制御信号出力部63またはデジタル制御信号出力部64のいずれを作動させるかを設定する。
【0027】
動作設定スイッチ94は、これらの制御信号の内容を設定することも出来る。制御信号の内容は、例えば、音声信号の出力先を、駅のホームに設けられたスピーカから、駅務室や非常時の連絡先に設けられたスピーカに切り替えるものである。これにより、制御信号の出力前後で、音声信号の出力先を変更することが出来る。他にも、制御信号により、駅のホーム扉を閉める合図や、発車ベルの鳴動などを受信機側に設けられた各種機器に出力させることが出来る。なお、これらの設定は、記憶部66に記憶されるので、アナログ制御信号出力部63、デジタル制御信号出力部64、抑止信号出力部65は、記憶部66を参照して動作する。
【0028】
なお、電源スイッチ91、周波数設定スイッチ92、制御スイッチ93、動作設定スイッチ94は、ユーザが操作するためのスライドスイッチやロータリースイッチ、押しボタン、タッチパネルなどにより構成される。
【0029】
[作用]
(1)音声信号の送信
図2を参照しつつ、本実施形態におけるワイヤレスマイクロフォン100の作用について説明する。使用状況に合わせて、周波数設定スイッチ92により、送信周波数信号の周波数が設定され、また動作設定スイッチ94により、アナログ制御信号とデジタル制御信号のいずれを用いるかが設定されているものとする。また、ワイヤレスマイクロフォン100の電源スイッチがONになった時には、バッファアンプ41はOFF状態、アナログ信号抑止スイッチ8はON状態であるものとする。
【0030】
ワイヤレスマイクロフォン100の電源スイッチがONになると、制御部6を構成するCPU回路が初期化される(ステップS01)。ただし、記憶部66に記憶されている情報は初期化されない。CPU回路の初期化が完了すると、周波数信号出力部61は、仮の周波数信号を可変分周器22に出力し、また、周波数設定スイッチ92により設定されている送信周波数の読み込みを開始する(ステップS02)。
【0031】
次にPLL回路2の動作を説明する。電圧制御発振器21の出力信号は、可変分周器22において、仮の周波数信号に設定された周波数に基づいて分周され、位相比較器23に入力される。位相比較器23において、分周された出力信号は、オシレータ3から入力された基準信号と比較され、両信号の位相差から、位相誤差信号を出力する。この位相誤差信号は、ループフィルタ24を介して交流成分が除去され、電圧制御発振器21に入力される。これにより、PLL回路2が、仮の周波数信号に設定された周波数で動作し始める(ステップS03)。すなわち、電圧制御発振器21の発振周波数が、仮の周波数信号に含まれる周波数の値に追従を始める。
【0032】
以上のようなPLL回路2の動作と並行して、周波数信号出力部61による送信周波数の読み込みが完了すると、周波数信号出力部61は、仮の周波数信号の出力を中断し、代わりにこの読み込んだ送信周波数の情報を含んだ送信周波数信号を可変分周器22に出力する。これにより、電圧制御発振器21は、送信周波数でロック状態となり、送信周波数の搬送波を生成する(ステップS04)。この搬送波は、マイクロフォンアンプ1から入力された音声信号により変調されて送信信号となり、PLL回路2から出力される(ステップS05)。
【0033】
また、PLL回路2がロック状態となったことを受けて、ロック通知部25は、バッファアンプON/OFF信号出力部62にロック通知信号を出力する。ロック通知信号が入力されたバッファアンプON/OFF信号出力部62は、バッファスイッチ42にバッファアンプON/OFF信号を出力し、これを受けてバッファスイッチ42は、バッファアンプ41をONにする(ステップS06)。これにより、バッファアンプ41において送信信号が増幅され、アンテナ部5から送信される(ステップS07)。
【0034】
(2)制御信号の送信
次に、制御信号による搬送波の変調について説明する。上述のステップS05に相当する部分であるので、ステップS01~S04、S06、S07の説明は省略する。ワイヤレスマイクロフォン100の電源スイッチがONになった後、制御スイッチ93の操作により、アナログ制御信号出力部63またはデジタル制御信号出力部64は、アナログ制御信号またはデジタル制御信号を出力する。いずれの制御信号を出力するかは、動作設定スイッチ94に設定された通りであるが、まず、アナログ制御信号が設定されている場合を考える。アナログ制御信号は、ローパスフィルタ71を介してアナログ信号抑止スイッチ8に出力される。この場合、アナログ信号抑止スイッチ8は制御されず、ON状態のままであるので、そのまま電圧制御発振器21に出力される。このアナログ制御信号により、電圧制御発振器21が生成した搬送波が変調され、変調された搬送波が送信信号としてアンテナ部5から送信される。
【0035】
動作設定スイッチ94にデジタル制御信号が設定されている場合について説明する。デジタル制御信号は、ローパスフィルタ72を介して電圧制御発振器21に出力される。この場合に、抑止信号出力部65は、アナログ信号抑止スイッチ8に抑止信号を出力し、アナログ信号抑止スイッチ8を所定の時間OFF状態にする。これにより、アナログ信号抑止スイッチ8はOFF状態になっているので、例えばデジタル制御信号と同時にマイクロフォンアンプ1から音声信号が入力されていても、音声信号は電圧制御発振器21に出力されない。アナログ信号抑止スイッチ8は所定の時間でON状態に戻るので、以降はマイクロフォンアンプ1からの音声信号も電圧制御発振器21に出力される。このデジタル制御信号により、電圧制御発振器21が生成した搬送波が変調され、変調された搬送波が送信信号としてアンテナ部5から送信される。
【0036】
[効果]
(1)本実施形態のワイヤレスマイクロフォン100は、電源スイッチ91による電源供給後直ちに仮の周波数信号をPLL回路2に出力すると共に、使用する送信周波数の読み込みを開始する。仮の周波数信号を受けてPLL回路2が動作を始める。送信周波数の読み込みが完了すると、仮の周波数信号の出力を中断し、代わりに読み込みが完了した送信周波数の情報を含む送信周波数信号をPLL回路2に出力する。この送信周波数信号により、PLL回路2がロック状態となる。本実施形態では、送信周波数信号が読み込まれる前に、仮の周波数信号によりPLL回路2を動作させておくので、PLL回路2のロックアップタイムが短縮される。
【0037】
(2)本実施形態のワイヤレスマイクロフォン100においては、PLL回路2がロック状態になるまではバッファアンプ41がOFF状態であるので、仮の周波数信号に設定された周波数で電波を送信するおそれがない。
【0038】
(3)本実施形態のワイヤレスマイクロフォン100は、アナログ制御信号出力部63及びデジタル制御信号出力部64を備える。アナログ制御信号出力部63は、アナログ制御信号を出力し、デジタル制御信号出力部64は、デジタル制御信号を出力する。これにより、制御信号により受信機側に設けられた各種機器を制御したい場合に、これらの各種機器がアナログ制御信号またはデジタル制御信号の一方にしか対応していない場合であっても制御することが出来る。
【0039】
(4)本実施形態のワイヤレスマイクロフォン100は、アナログ信号抑止スイッチ8を備え、デジタル制御信号を出力する際には、抑止信号出力部65によりアナログ信号抑止スイッチ8をOFF状態にし、音声信号の出力を遮断することが出来る。これにより、アナログ信号である音声信号とデジタル信号であるデジタル制御信号が同時にPLL回路2に出力されるおそれが無くなる。
【0040】
[他の実施形態]
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。具体的には、次のような他の実施形態も包含する。
【0041】
(1)上記実施形態の制御部6は、アナログ制御信号出力部63、デジタル制御信号出力部64及び抑止信号出力部65を備えるようにしたが、これらの構成を省略しても良い。
【0042】
(2)上記実施形態の制御部6は、アナログ制御信号出力部63及びデジタル制御信号出力部64を備えるようにしたが、制御信号出力部は1つであってもよい。制御信号出力部がアナログ制御信号のみを出力するのであれば、同じアナログ信号である音声信号と同時に搬送波を変調することが出来るので、アナログ信号抑止スイッチ8を省略しても良い。
【0043】
(3)上記実施形態においては、バッファアンプ41及びこのバッファアンプ41のON/OFFを切り替えるバッファスイッチ42を備えるようにしたが、例えばバッファアンプとその後段に設けられるスイッチとの組み合わせとしても良い。これにより、送信信号の増幅をバッファアンプに、送信信号の出力制御をスイッチに、それぞれ担わせることが出来る。
【0044】
(4)上記実施形態のバッファスイッチ42は、ロック通知部25からのロック通知信号により、バッファアンプON/OFF信号出力部62を介して制御されたが、これに限られない。例えば、PLL回路2のロックアップタイムを予め計測しておいて、この時間が経過すると同時に、バッファアンプON/OFF信号出力部62がバッファアンプON/OFF信号を出力しても良い。すなわち、バッファスイッチ42は、ロック通知信号に基づいてではなく、経過時間に基づいてON/OFF制御されても良い。この場合、何らかの拍子にPLL回路2のロックが外れた場合にバッファアンプ41を再びOFFにする制御を行っていたとしても、通信が途絶えるおそれが無い。また、仮の周波数でPLL回路2がロック状態になった場合に、仮の周波数で音声信号を送信してしまうおそれもない。従って、仮の周波数信号に基づいて生成された送信信号は、最終的にバッファアンプ41からアンテナ部5に出力されないため、仮の周波数信号に設定されている周波数は、ワイヤレスマイクロフォン100が利用しない周波数帯域のものであっても良い。
【0045】
(5)上記実施形態の周波数設定スイッチ92は、2つ設けられても良い。例えば、一方がロータリースイッチにより構成され、他方がスライドスイッチにより構成されても良い。スライドスイッチにより構成された周波数設定スイッチ92は、ユーザによる素早い操作に対応したものなので、特に本発明に適している。
【符号の説明】
【0046】
100…ワイヤレスマイクロフォン
1…マイクロフォンアンプ
2…PLL回路
21…電圧制御発振器
22…可変分周器
23…位相比較器
24…ループフィルタ
25…ロック通知部
3…オシレータ
41…バッファアンプ
42…バッファスイッチ
5…アンテナ部
6…制御部
61…周波数信号出力部
62…バッファアンプON/OFF信号出力部
63…アナログ制御信号出力部
64…デジタル制御信号出力部
65…抑止信号出力部
66…記憶部
71、72…ローパスフィルタ
8…アナログ信号抑止スイッチ
91…電源スイッチ
92…周波数設定スイッチ
93…制御スイッチ
94…動作設定スイッチ
図1
図2