(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022097219
(43)【公開日】2022-06-30
(54)【発明の名称】三相インバータの3パルスPWM制御法
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20220623BHJP
【FI】
H02M7/48 F
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020210675
(22)【出願日】2020-12-18
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-05-12
(71)【出願人】
【識別番号】594170185
【氏名又は名称】大西 徳生
(72)【発明者】
【氏名】大 西 徳 生
【テーマコード(参考)】
5H770
【Fターム(参考)】
5H770BA03
5H770DA03
5H770DA41
5H770EA01
5H770HA02Y
5H770JA11Y
5H770KA01Y
(57)【要約】 (修正有)
【課題】三相インバータの3パルスPWM制御法を提供する。
【解決手段】三相インバータの出力波の基本周波数の方形波信号と基本波と同期した2倍の周波数の三角波を搬送波として、基本波成分の大きさを制御する基準入力信号との比較した信号の二つの信号を入力とする排他的論理和信号を1相分のPWMスイッチング信号として発生させ、残りの2相についても同様の構成で120度ずつ位相差を有するPWMスイッチング信号を発生させることにより各相単位で3パルスPWM制御を可能とする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
三相電圧形インバータの出力波形の基本波周波数の方形波信号と前記基本波周波数の2倍の周波数の三角波の搬送波信号と前記出力波形の基本波の大きさを制御するための基準入力信号とを比較することにより得られる信号の二つの信号を入力といて排他的論理和をとることにより1相分のPWMスイッチング信号を発生させ、残りの2相についても同様の構成で前記基本波に対して120度ずつ位相差を有するPWMスイッチング信号を発生させ、各相の電圧の大きさが前記基準入力信号の大きさにより制御できることを特徴とする三相インバータの3パルスPWM制御法。
【請求項2】
請求項1記載の3パルスPWM制御法において、前記基準入力信号を前記三角波振幅の2/3から1倍までの大きさの間で比較し、PWM制御することにより、前期基本波出力の大きさを0から100%まで制御できることを特徴とする三相インバータの3パルスPWM制御法。
【請求項3】
請求項1記載の3パルスPWM制御法において、前記基準入力信号を前記三角波振幅の0から2/3 倍までの大きさの間で比較し、PWM制御することにより、前期基本波出力の大きさを100%から0%まで制御できることを特徴とする三相インバータの3パルスPWM制御法。
【請求項4】
請求項1から3記載の3パルスPWM制御法において、負荷電流の大きさが基準電流と一致するように電流制御部を通して各相単位で前記基準入力信号を得て前記PWMスイッチング信号を得ることにより前記三相電圧形インバータの各相の負荷電流の大きさを制御することを特徴とする三相インバータの3パルスPWM制御法
【請求項5】
請求項1から4記載の3パルスPWM制御法で発生する前記三相電圧形インバータのPWM制御三相線間出力電圧波形を三相電流形インバータの三相電流波形としてPWMスイッチング信号を発生させることを特徴とする三相インバータの3パルスPWM制御法。
【請求項6】
請求項5記載の3パルスPWM制御法において、出力端子にキャパシタを接続し、その端子電圧の大きさが基準電圧と一致するように電圧制御部を通して各相単位で前期基準入力信号を得てPWMスイッチング信号を得ることにより前記三相電流形インバータの負荷端子電圧の大きさを制御することを特徴とする三相インバータの3パルスPWM制御法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三相インバータにおいて、高速スイッチングに制約を伴うスイッチ素子を用いる場合や、基本波周波数が高い場合など、基本波出力に対してスイッチング可能な回数に制約を伴う場合のPWM制御法に関する技術である。
【背景技術】
【0002】
三相インバータのスイッチング素子としてGTOのような低速のスイッチング素子を用いる場合は、インバータの基本波出力が高くなるとスイッチング周波数が高くなるので、基本波周波の上昇に伴い、PWMスイッチングのパルス数を切り換える手法が電気鉄道のインバータ制御などで用いられてきた。
【0003】
この場合において出力できる三相の出力波形は3パルスPWMであり、限られたスイッチング回数で正負波形および三相間の対称性を維持しながら制御しなければならないため、3パルスの特殊なケースで生じる課題を克服するPWM制御手法が検討されてきた。
【0004】
最近では、電気自動車の普及とともに電動機の駆動電源として三相インバータが用いられていて低速ではトルク脈動の低減や応答特性の観点から多パルスPWM制御が用いられるが、高速回転領域においてはインバータの出力波形の低次調波成分によるトルク脈動の影響は少なくなるので、スイッチング損失を限りなく低減させるために1パルス方形波出力が用いられている。
【0005】
しかしながら、1パルス方形波の出力電圧の制御ができないので、位相を付加制御することにより、高速領域までの速度制御を実現しているため制御システムが複雑化している。
【0006】
一方で、近年のスイッチング素子の著しい発達により、従来とは比較できないほど低損失でPWMスイッチング制御が行えるようになっており、1パルス方形波の低次高調波成分による電流波形ひずみとの兼ね合いも考えると、高速回転領域においても基本波出力制御には3パルスPWM制御を活用し、最大出力時に1パルス方形波と連続的に制御するのが更なる特性改善につながるものと思われる。
【0007】
また、容量の大きな分野においては、基本波成分の制御には1パルス方形波では高速回転領域でない限り制御特性に問題を生じるので、数パルスであってもスイッチング回数はできるだけ抑制した効果的なPWM制御手法の開発が望まれている。
【0008】
さらに、三相インバータの基本波周波数が比較的高く、出力波形に多少の高調波成分が含まれていてもフィルタによって低次の調波成分は比較的容易に低減できる応用分野においては、大きさのみが制御できるスイッチング回数を低減したPWM制御手法の開発が望まれる。
【0009】
以上により、三相インバータの3パルスPWM制御手法は古くからの課題であるが、スイッチング素子の発達とパワーエレクトロニクスの応用分野の拡大ない伴い、低次調波成分の発生を抑制しながら基本波出力の大きさを制御できるより良いPWM制御手法の開発が期待される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【非特許文献1】矢野、内田著、「パワーエレクトロニクス」、丸善株式会社、pp.144-pp.146、2000.
【特許文献1】特開平4-67780号
【特許文献2】特開昭58-182480号
【特許文献3】特開平5-284751号
【0011】
(非特許文献1)では、PWMインバータの制御技術のうち、出力基本波に対してスイッチング周波数をあまり高くできない場合は、搬送波の周波数は基本波周波数の整数倍に選ぶ同期PWM制御が用いられるとされている。
【0012】
(特許文献1)では、出力周波数が低周波から高周波まで制御されるのに対し、PWM制御波形のパルス数を3から整数倍で段階的に増やしていくときの出力電圧のステップ的な変化を無くす制御手法が提案されている。
【0013】
(特許文献2)および(特許文献3)では、3パルス波形を発生させるとき、搬送三角波と基準入力との比較による信号をパルス分配してPWMスイッチング信号を得る一般的な手法が用いられ、三相インバータを働かせるときに制御上の問題や素子のスイッチング特性のばらつきなどによってPWM波形の対称性が崩れることを抑制する制御手法が提案されている。
【0014】
これらの特許文献は、いずれも従来からの3パルスPWM制御手法による一括制御をベースにしているため、各相制御に対しての課題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
三相インバータの出力波形の任意のタイミングで出力パルス幅を制御しようとすると、三相間での出力波形の対称性を保つことができないので、3パルスPWM制御においても三相出力のパルス幅制御には、限られたタイミングでしか制御することができない点が基本的な課題がある。
【0016】
三相インバータの3パルスPWM制御法として、一般には出力波の基本波と同期した6倍の周波数の三角波が各相共通の搬送波として用いられ、基本波成分の大きさを制御する基準入力信号との比較した出力をパルス分配器にかけて三相一括して3パルスのPWM制御信号を発生させている。
【0017】
このため、三相インバータを働かせるうえで、三相PWMスイッチング制御動作にばらつきがあると、出力波形の対称性法が崩れ、波形ひずみや直流成分を発生し、変圧器が接続されている場合などでは直流偏磁の問題などを招くので、(特許文献3)にみられるような何らかの対策を付加する必要があり、PWM制御が複雑化する課題がある。
【0018】
また、三相インバータに接続される負荷が不平衡の場合、多パルスPWM制御法では三相電流の瞬時値制御を行うことができるが、3パルスPWM制御では適用することはできない。
【0019】
これまでの3パルスPWM制御では、三相一括PWM制御によっており、(特許文献3)のなどの波形補償制御で大幅な出力制御には対応できない。
【0020】
このため、各相単位で出力波形の大幅な出力制御ができる3パルスPWM制御をどのように実現するかが課題となる。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明では、出力周波数の方形波信号と基本波と同期した2倍の周波数の三角波を搬送波として、基本波成分の大きさを制御する基準入力信号との比較した信号の二つの信号を入力とする排他的論理和信号を1相分のPWMスイッチング信号として発生させ、残りの2相についても同様の構成で120度ずつ位相差を有するPWMスイッチング信号を発生させる手段をとることにより各相単位で3パルスPWM制御を可能とする。
【0022】
図1は、本発明で対象とする三相電圧形インバータの主回路構成であり、スイッチング素子S1~S3に対し、3パルスPWM制御する手法を各相単位で制御するものである。
【0023】
本発明の3パルスPWM制御する手法では、各相単位で制御するために、3組の搬送波用三角波に対し、各相単位で出力の大きさを制御する各相の3組の基準入力と比較し、スイッチングタイミングを決定する。
【0024】
本発明の3パルスPWM制御する手法では、三角波比較基準入力xの大きさが、a) 三角波振幅の2/3以上のときと、b)三角波振幅の2/3以下のときの2ケースに分かれる。
【0025】
以下では、本発明による3パルスPWM制御の説明において前者をa) A-Type、後者を b) B-Typeと呼び区別することとする。
【0026】
図2は、a) A-Typeにおける3パルスPWM制御原理を示しており、三相(a,b,c相)制御に対する各三角波をfa,fb,fcとおくと、三角波faに対してfbは、遅れ位相差120度のある三角波で基本周波数の2倍であることから、a、b、c各相の基本波に対してはfbは進み位相差120度のある三角波、fcは遅れ位相差120度のある三角波となる。
【0027】
そして、これら三角波と比較する基準入力xをx=xa=xb=xcと三相共に同じとし,a) A-Type(x>xo)のときのタイミングチャートを示している。
【0028】
さて、インバータの出力周波数に対して2倍の周波数の三角波信号faと基準入力信号xとの比較により、パルス信号qaが得られるが、これと出力周波数と同期する方形波信号gaとの排他的論理和をとることにより、a 相のPWMスイッチング信号paが得られる。
【0029】
次に、b相のPWMスイッチング信号pbは同様にして、a 相のPWMスイッチング信号paに対して120度の位相差信号として発生させることができる。
【0030】
また、c相のPWMスイッチング信号pcも同様にして、b相のPWMスイッチング信号pbに対して120度の位相差信号として発生させることができる。
【0031】
そして、このときの出力電圧波形はこれらスイッチング信号に差に比例した波形となり、a相、b相信号を三相電圧形インバータのスイッチング信号とすると、同図に示すように正負対称の3パルスPWM制御波形となる。
【0032】
この3パルスPWM波形の大きさは、120度通電期間TDにおける二つの零電圧期間Toによって制御することができる。
【0033】
3パルスPWM波形の零電圧期間Toは、基準入力xが大きくなると広がり、1になると120度幅の方形波となり、xが小さくなると狭ばり、x=xo (2/3)になると中央と両サイドのパルス幅はなくなり零電圧となる。
【0034】
次に、
図3は、b) B-Typeにおける3パルスPWM制御原理を示しており、a) A-Typeの場合と同様であるが、三角波fa,fb,fcと比較する共通の基準入力xがb) B-Type(x<xo)のときのタイミングチャートを示している。
【0035】
この場合に得られる3パルスPWM制御の線間電圧波形euvは、図示するように三相方形波インバータ波形の120度区間TDの両サイドにパルスが発生し、基準入力xの大きさによって3パルスPWM波形の大きさが制御できる。
【0036】
b) B-Typeの場合は、基準入力x が小さくなると3パルスPWM波形の両サイドパルスの零電圧期間Txは小さくなり、中央パルス幅Tyが広くなり、0になると120度幅の方形波となり、xが大きくなると3パルス幅は狭くなり、xがxo (=2/3)になるとPWM制御のパルス幅はなくなり出力は零電圧となる。
【0037】
ここで、a) A-Typeとb) B-Typeで制御された線間電圧波形を見ると、3パルスPWM制御の波形は基準入力によって制御でき、基準入力xを1の場合から小さくすると、X=2/3のときに出力パルスは出なくなるが、それより小さくなるとパルス幅は広がり、再び120度幅の方形波となることが分かる。
【0038】
そして、a) A-Type制御における線間出力電圧euvの波形に対してb) B-Type制御における線間出力電圧euvの波形は符号が反転する。
【0039】
図4は本発明による3パルスPWM制御における基準入力変化に対する線間出力電圧の基本波成分の最大値に対する変化割合を示した制御特性である。
【0040】
また、
図5は基準入力変化に対する特定の時点での基本波成分の大きさの変化割合を符号変化も含めた制御特性であり、+100%から-100%まで連続的に3パルスPWM制御できることを示している。
【0041】
図6に示す3パルスPWM制御波形の(1)と(2)のスイッチング区間における三相PWM波形時の電圧形インバータにおけるスイッチング状態図を
図7に示す。
【0042】
区間(1)における三相電圧形インバータのスイッチング状態は、S1:オン、S2:オフ、S3:オンであり、S4,S5,S6はこれらと逆となり、区間(2)では、S1:オフ、S2:オフ、S3:オンで、S4,S5,S6はこれらと逆となる。
【0043】
図8は、3パルスPWM制御波形を出力するときの三相電圧形インバータの線間出力電圧波形に対する6個のスイッチング素子のスイッチング信号を示している。
【0044】
本発明の3パルスPWM制御では、各相に対する三角波と基準入力の比較制御によっているため、基準入力によって各相独立のPWM制御が可能であり、基準入力が同じときに上述した3パルスPWM制御波形となるが、基準入力を変えることにより相毎にPWM制御ができる。
【0045】
これまでは、三相電圧形インバータに適用して説明したが、三相インバータには電圧形インバータと電流形インバータがあり、本発明の3パルスPWM制御は電流形インバータにも容易に適用することができる。
【0046】
図9は、三相電流形インバータの主回路構成例を示しており、本発明の3パルスPWM制御手法は電流形を構成する6個のスイッチング素子に対して電圧形と同様に適用することができる。
【0047】
図10は、本発明により発生した3パルスPWM制御波形であり、区間(1)および区間(2)における三相電流形インバータの通流経路を示したのが、
図11である。
【0048】
電流形インバータでは、如何なるPWM制御区間においても一定の直流電流の経路を確保する必要があるが、PWM制御の全ての区間においても電流経路が確保できることが確認できる。
【0049】
図12は、本発明の3パルスPWM制御波形に対する電流形インバータの6個の各スイッチング素子に与えるスイッチング信号を示している。
【発明の効果】
【0050】
本発明の3パルスPWM制御では、従来の制御手法と異なり、3組の搬送三角波と基準入力で各相独立に制御できる特徴があり、任意の三相負荷制御が可能である。
【0051】
本発明の3パルスPWM制御は、PWM制御基準入力の制御範囲によってa) A-Type とb) B-Type の二種の3パルスPWM制御パターンを発生することができる。
【0052】
本発明の3パルスPWM制御は、PWM制御波形の大きさは搬送三角波に対する比較基準入力によって連続的に制御することができる。
【0053】
本発明の3パルスPWM制御は、三相電圧形インバータだけでなく三相電流形インバータにも適用することができるだけでなく、3パルスPWM制御は三相整流電源にも適用することができるなど、幅広い応用が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【
図4】基準入力変化に対する3パルスPWM制御の出力制御特性
【
図5】基準入力変化に対する3パルスPWM制御の正負出力制御特性
【
図6】三相電圧形インバータの3パルスPWMパターン
【
図7】3パルスPWMパターンの動作区間に対する電圧形インバータのスイッチ回路状態
【
図8】3パルスPWMパターンに対する三相電圧形インバータのスイッチング信号
【
図10】三相電流形インバータの3パルスPWMパターン
【
図11】3パルスPWMパターンの動作区間に対する電流形インバータのスイッチ回路状態
【
図12】3パルスPWMパターンに対する三相電流形インバータのスイッチング信号
【
図13】3パルスPWM制御三相電圧形インバータの負荷電流制御システム
【
図14】3パルスPWM制御三相電流形インバータの負荷電圧制御システム
【
図15】3パルスPWM制御三相電圧形インバータの共振負荷電流制御システム
【
図16】A-Type領域(x=0.9)領域における3パルスPWMスイッチング動作波形
【
図17】境界領域(X=2/3)における領域における3パルスPWMスイッチング動作波形
【
図18】B-Type領域(x=0.3)における3パルスPWMスイッチング動作波形
【
図19】最大出力時(X=1.0)の3パルスPWM制御三相電圧形インバータの動作波形
【
図20】A-Type領域(x=0.9)領域における3パルスPWM制御動作波形
【
図21】B-Type領域(x=0.1)領域における3パルスPWM制御動作波形
【
図22】B-Type領域(x=0.1)領域における動作波形の周波数スペクトル
【
図23】同じ電流基準(Ir=100A)における電流制御システムの動作波形
【
図24】電流基準を1相のみ低減時の電流制御システムの動作波形
【
図25】負荷インピーダンスを1相のみ変化時の電流制御システムの動作波形
【発明を実施するための形態】
【0055】
図13は、三相電流を検出して三相電流の基準値と大きさが一致するようにPI電流調節器を通して各相の三角波比較基準入力xを発生させることにより、3パルスPWM波形を制御することで三相電流の大きさを制御するシステム構成を示している。
【0056】
本発明の3パルスPWM制御は、以上のように基準入力を変えてパルス幅制御することにより、出力波形の大きさを制御することができる。
【0057】
電流形インバータでは、通常負荷インダクタンスを含むため、出力端にキャパシタが接続され、キャパシタフィルタの両端に表れる出力端子間電圧の大きさを3パルスPWM制御により制御することとなる。
【0058】
図14は、3パルスPWM制御による三相電圧制御システムを示しており、三相負荷端子電圧を検出して三相電圧の基準値と大きさが一致するようにPI電圧調節器を通して各相の三角波比較基準入力xを発生させ3パルスPWM波形を制御することで三相負荷電圧の大きさを制御する構成となっている。
【0059】
本発明による3パルスPWM制御は、三相整流回路部にも三相電流形インバータの電流パルス幅制御が容易に適用することができる。
【0060】
以上のように、本発明による3パルスPWM制御法は電圧形、電流形を問わず、三相インバータ構成の電力変換器におけるPWM波形の大きさを連続的制御できる手法として様々な分野への適用が期待できる。
【0061】
以下に、本発明による3パルスPWM制御法を三相電圧形インバータに適用した
図15に示す共振負荷電流制御システムに対して、PWMスイッチング動作波形と電圧形インバータの出力制御動作波形を実施例として示す。
【0062】
以下のシミュレーション解析における動作条件としては、電圧形インバータの直流電圧Ed=300V,インバータの基本波周波数は1kHz,3組の搬送三角波の周波数は基本波周波数の2倍の2kHzとし、共振負荷回路定数はR=1オーム、L=200uH,C=126uFとした。
【0063】
なお、本発明の3パルスPWM制御は、低次調波成分の発生を抑えた出力波形制御法で基本波出力の大きさを制御するものであり、共振回路のフィルタ効果で容易に三相正弦波電流の大きさが制御できることを確認するため、実施例として図示するLCR共振回路を用いた。
【実施例0064】
本発明の3パルスPWM制御によるPWMスイッチング動作を確認するために、基準入力xが大きいA-Type領域(x=0.9)と境界領域(X=2/3)および小さいB-Type領域(x=0.3)におけるスイッチング動作波形を
図16~18に示す。
【0065】
A-Type領域(x=0.9)動作を示す
図16は原理波形
図2、B-Type領域(x=0.3)動作を示す
図18は原理波形
図3に対応するものであり、PWM制御システムが原理道理のスイッチング信号が発生できていることが分かる。
【0066】
図17は、境界領域(X=2/3)におけるスイッチング動作波形を示しており、出力電圧euvのパルス幅はほぼなくなり、出力電圧は零まで制御できることが分かる。
【0067】
なお、
図16~18における電圧euNは三相負荷の中性点に対する相電圧波形、euRは抵抗負荷両端の電圧波形を示しており、共振動作状態にあるため3パルスPWM制御に寄っているが正弦波電流波形となっていることが分かる。