(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022097233
(43)【公開日】2022-06-30
(54)【発明の名称】オイル供給制御装置、伝動ユニットおよび動力システム
(51)【国際特許分類】
F01M 1/16 20060101AFI20220623BHJP
F01M 1/02 20060101ALI20220623BHJP
【FI】
F01M1/16 F
F01M1/02 A
F01M1/02 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020210695
(22)【出願日】2020-12-18
(71)【出願人】
【識別番号】000000561
【氏名又は名称】株式会社オカムラ
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100094400
【氏名又は名称】鈴木 三義
(72)【発明者】
【氏名】荒川 治朗
【テーマコード(参考)】
3G313
【Fターム(参考)】
3G313BB04
3G313BB14
3G313BB18
3G313BB31
3G313BB34
3G313EA02
3G313FA06
(57)【要約】
【課題】大型化を回避した上で安定したオイル供給を実現可能なオイル供給制御装置、伝動ユニットおよび動力システムを提供する。
【解決手段】オイル供給制御装置50は、エンジンの駆動に応じて駆動するオイルポンプ14から油圧クラッチ24への作動オイルの供給を制御するものであって、オイルポンプ14に至る上流側油路54と、オイルポンプ14に至る下流側油路55と、を有して作動オイルが流通する油圧供給路53と、下流側油路55に設けられ、エンジンの回転数の増加に応じて下流側に流出する作動オイルの流量を減少させる比例制御弁75と、比例制御弁75で生じた余剰オイルを上流側油路54に戻す戻し油路78と、を備えている。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源の駆動に応じて駆動するオイルポンプから油圧機器への作動オイルの供給を制御するオイル供給制御装置であって、
前記作動オイルを貯留するオイルタンクから前記オイルポンプに至る上流側油路と、前記オイルポンプから前記油圧機器に至る下流側油路と、を有し、前記作動オイルが流通する油圧供給路と、
前記下流側油路に設けられ、前記駆動源の回転数の増加に応じて下流側に流出する前記作動オイルの流量を減少させる制御弁と、
前記制御弁から前記上流側油路に至り、前記制御弁で前記作動オイルの流量を減少させることで生じた余剰オイルを前記上流側油路に戻す戻し油路と、を備えている、オイル供給制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載のオイル供給制御装置と、
前記駆動源と、前記駆動源の駆動により駆動される被駆動装置と、の間に配置されて、前記駆動源の駆動力を前記被駆動装置に伝達可能とする、前記油圧機器である伝動装置と、
前記伝動装置を収容するとともに前記オイルタンクを兼ねる伝動ケースと、を備え、
前記伝動ケースは、前記駆動源と前記被駆動装置との間に配置されている、伝動ユニット。
【請求項3】
請求項2に記載の伝動ユニットと、
前記駆動源と、
前記被駆動装置と、を備えている、動力システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オイル供給制御装置、伝動ユニットおよび動力システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジン等の駆動源によってオイルポンプを駆動し、このオイルポンプから吐出されるオイルの油圧によって、変速機やクラッチ等の油圧機器を作動させる油圧制御装置が知られている。
例えば、特許文献1には、オイルポンプ21aの二つの吐出ポート21,22からそれぞれ油路31,32を延ばし、第一の油路31は油圧機器(制御対象OC)に接続し、第二の油路32は切換弁51を介して第一の油路31の上流側にそれぞれ接続した構成が開示されている。係る構成において、切換弁51の作動によって、二つの油路31,32で油圧機器にオイルを供給する全吐出状態と、第一の油路31のみで油圧機器にオイルを供給する半吐出状態と、が切り替わる。二つの油路31,32には、それぞれ逆止弁41,42が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、オイルポンプは、エンジンの駆動に連動して駆動する。オイルポンプの回転数(オイル吐出量)は、エンジンの回転数に応じて増減する。エンジン回転数の上昇によりオイル吐出量が上昇すると、油圧制御装置に設けた油圧レギュレータが作動し、余剰オイルを油圧供給路の上流側に戻す。
上述のような油圧システムにおいて、オイルを貯留するオイルタンクの容量は、オイル循環時にもオイルポンプの吸入不足が生じないように設定される。
しかし、エンジン回転数が最大まで上昇したときにもオイル不足が生じないようにするためには、オイルタンクの容量を、エンジンの最大回転数に応じた容量に設定する必要がある。このため、オイルタンクひいては装置全体を大型化させるという課題がある。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、大型化を回避した上で安定したオイル供給を実現することができるオイル供給制御装置、伝動ユニットおよび動力システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題の解決手段として、請求項1に記載した発明は、駆動源の駆動に応じて駆動するオイルポンプから油圧機器への作動オイルの供給を制御するオイル供給制御装置であって、前記作動オイルを貯留するオイルタンクから前記オイルポンプに至る上流側油路と、前記オイルポンプから前記油圧機器に至る下流側油路と、を有し、前記作動オイルが流通する油圧供給路と、前記下流側油路に設けられ、前記駆動源の回転数の増加に応じて下流側に流出する前記作動オイルの流量を減少させる制御弁と、前記制御弁から前記上流側油路に至り、前記制御弁で前記作動オイルの流量を減少させることで生じた余剰オイルを前記上流側油路に戻す戻し油路と、を備えている。
【0007】
請求項2に記載した発明は、請求項1に記載のオイル供給制御装置と、前記駆動源と、前記駆動源の駆動により駆動される被駆動装置と、の間に配置されて、前記駆動源の駆動力を前記被駆動装置に伝達可能とする、前記油圧機器である伝動装置と、前記伝動装置を収容するとともに前記オイルタンクを兼ねる伝動ケースと、を備え、前記伝動ケースは、前記駆動源と前記被駆動装置との間に配置されている伝動ユニットを提供する。
【0008】
請求項3に記載した発明は、請求項2に記載の伝動ユニットと、前記駆動源と、前記被駆動装置と、を備えている動力システムを提供する。
【発明の効果】
【0009】
請求項1~3に記載した発明によれば、大型化を回避した上で安定したオイル供給を実現することができるオイル供給制御装置、伝動ユニットおよび動力システムを提供することができる。
すなわち、オイルポンプが駆動源と一体的に駆動し、このオイルポンプから吐出されたオイルを油圧機器に供給する構成では、駆動源の回転数が増加すると、これに伴いオイルポンプの吐出量も増加する。制御弁から延びる戻し油路には、制御弁による油圧(オイル流量)の調整に伴い、上流側油路に戻る余剰オイルが流れる。
一般に、オイルの戻し量およびオイルタンクの容量は、駆動源における使用頻度の高い回転数でオイルポンプが駆動した場合の吐出量(通常流量)を基準に設定される。すなわち、オイルポンプが通常流量で駆動する場合、オイルタンク内のオイルが不足することなく、装置内で安定してオイルを循環させることができる。
これに対し、駆動源の回転数(ひいてはオイルポンプの吐出量)が使用頻度の低い最大回転数まで増加すると、オイルポンプの最大吐出量(最大流量)に対して生じる余剰オイルは、通常流量を基準に設定したオイルの戻し量よりも多くなる。この場合、油圧回路のリリーフ弁が作動したり、オイルタンク内のオイルが不足してオイルポンプの吐出を不安定にさせたりすることが考えられる。
実施形態では、油圧供給路の下流側油路に、駆動源の回転数の増加に応じて作動オイルの流量を減少させる制御弁を備えている。制御弁は、駆動源の回転数(ひいてはオイルポンプの吐出量)が増加した場合は、バルブ開度を変化させて、下流側油路のオイル流量を減少させるとともに、戻し油路のオイル流量を増加させる。これにより、駆動源の回転数が上昇してオイルポンプの吐出量が増加しても、下流側油路のオイル流量が制御弁で制限され、多くの余剰オイルが速やかに上流側油路に戻される。これにより、オイルタンクの容量を増加させる等による装置全体の大型化を回避するとともに、オイルポンプの吐出を安定させて油圧供給を安定させることができる。
【0010】
請求項2に記載した発明によれば、上記効果に加え、駆動源と被駆動装置との間にオイルタンクを兼ねる伝動ケースが配置される構成において、オイルタンクが大型化して駆動源と被駆動部とを大きく離間させることを抑え、伝動ユニットひいては動力システムの大型化を確実に抑えることができる。また、油圧機器である伝動装置がオイルタンク内に配置されるので、伝動装置の潤滑等を良好に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態における動力システムの断面を含む説明図である。
【
図3】上記動力システムの伝動ユニットをエンジンと反対側から見た斜視図である。
【
図4】上記動力システムの伝動ユニットをエンジン側から見た斜視図である。
【
図6】上記伝動ユニットのオイル供給制御装置の構成図である。
【
図7】上記オイル供給制御装置で比例制御弁を用いてオイル流量を調整する場合の各種パラメータ等の変化を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0013】
<動力システム>
図1、
図2に示すように、実施形態の動力システム1は、エンジン10(駆動源)と、油圧ポンプ15(被駆動装置)と、クラッチユニット20(伝動ユニット)と、を備えている。
エンジン10は、例えば直列四気筒型の内燃機関である。エンジン10は、クランクケース11内にクランクシャフト12(駆動軸)を収容している。エンジン10は、例えばクランクシャフト12と同軸の出力軸13をクランクケース11の外部に突出させている。出力軸13は、エンジン10の運転に伴い回転駆動力を出力する。
【0014】
出力軸13には、クラッチユニット20に備える油圧クラッチ24(伝動装置)を介して、油圧ポンプ15が接続されている。油圧ポンプ15は、エンジン10および後述するモータジェネレータ18の少なくとも一方から回転動力が入力されて駆動する。油圧ポンプ15は、駆動によって外部に供給する油圧を発生させる。油圧ポンプ15が発生した油圧は、例えば建設機械や産業機械の油圧アクチュエータ等に供給される。
【0015】
以下、油圧クラッチ24を単にクラッチ24ということがある。クラッチ24は、油圧供給により接続状態となって、エンジン10の出力軸13と油圧ポンプ15の入力部16(入力軸)との間で回転駆動力を伝達可能とする。
図中線C1は互いに同軸の出力軸13および入力部16の回転中心軸線を示す。動力システム1は、出力軸13の軸方向(軸線C1に沿う方向、図中矢印F11方向)を水平にして車載される。図中矢印F12は軸方向F11と直交しかつ車載時に水平となる幅方向、図中矢印F13は軸方向F11および幅方向と直交しかつ車載時に垂直となる上下方向、をそれぞれ示している。
【0016】
動力システム1は、例えば油圧ショベル等の建設機械、フォークリフト等の産業機械等の特殊車両に搭載される。これらの搭載車両は、油圧シリンダや油圧モータ等の油圧アクチュエータを備えている。動力システム1は、搭載車両の油圧アクチュエータに供給する油圧を発生させる。
【0017】
クラッチユニット20は、エンジン10の出力軸13と油圧ポンプ15の入力部16との間に配置される。クラッチユニット20は、エンジン10に比べて小型であり、異なるエンジン10にも載せ替えが容易である。油圧ポンプ15の入力部16は、エンジン10の出力軸13と同軸に配置される回転要素である。クラッチユニット20は、エンジン10の出力軸13と油圧ポンプ15の入力部16との間の動力伝達を断接するクラッチ24を備えている。クラッチ24は、エンジン10の出力軸13と油圧ポンプ15の入力部16との間の動力伝達の可否を切り替える。
【0018】
クラッチユニット20は、クラッチ24等を収容する伝動ケース30を備えている。伝動ケース30は、出力軸13の軸方向F11でエンジン10と油圧ポンプ15との間に配置されている。
図3~
図5を併せて参照し、伝動ケース30は、エンジン10の出力軸13およびこれと同軸の回転要素を収容する円筒状の筒状ケース部31と、筒状ケース部31よりも大径をなして筒状ケース部31のエンジン10側に配置され、出力軸13に設けられたフライホイール13aを収容するホイールハウジング32と、筒状ケース部31の油圧ポンプ15側に配置され、前記幅方向F12および上下方向F13の各幅よりも前記軸方向F11の幅が狭い偏平状をなす偏平状ケース部33と、を備えている。
【0019】
偏平状ケース部33は、軸方向F11から見て、幅方向の一側に向けて上下幅を広げつつ延出している。偏平状ケース部33は、軸方向F11から見て、略三角形状をなしている。偏平状ケース部33の幅方向一側の部位は、軸方向視でホイールハウジング32よりも幅方向一側に張り出している。この張り出し部分を張り出し部34と称する。また、偏平状ケース部33における軸方向でエンジン10側を向く側面を第一側面35、偏平状ケース部33における軸方向で油圧ポンプ15側を向く側面を第二側面36と称する。例えば、第一側面35および第二側面36は、軸方向と直交する平面状をなしている。
【0020】
軸方向F11において、偏平状ケース部33のエンジン10側(第一側面35よりもエンジン10側)には、ホイールハウジング32の少なくとも一部(実施形態では全体)が配置されている。軸方向F11において、偏平状ケース部33の張り出し部34のエンジン10側(第一側面35よりもエンジン10側)には、モータジェネレータ18の少なくとも一部(実施形態では全体)が配置されている。軸方向F11において、偏平状ケース部33のエンジン10側(第一側面35よりもエンジン10側)には、さらに、後述する油圧レギュレータ60および油路切替弁70(比例制御弁75)が配置されている。
【0021】
モータジェネレータ18は、例えばMRモータとして構成されている。モータジェネレータ18は、不図示のインバータを介して車載電源(二次バッテリ)に接続されている。モータジェネレータ18は、車載電源からの電力供給に応じて駆動力を発生する電動機として機能する。モータジェネレータ18は、エンジン10からの動力伝達に応じて電力を発電する発電機として機能する。例えば、モータジェネレータ18が発電した電力は、車載電源に充電される。モータジェネレータ18と車載電源との間で授受される電力は、不図示のインバータにより調整される。
【0022】
動力システム1は、電子制御装置(ECU)としての制御部17を備えている。制御部17は、エンジン10の駆動等に係る各種演算処理を行う演算処理回路と、制御用のプログラムやデータが記憶された記憶装置と、を備えている。
【0023】
制御部17には、各種の検出信号が入力されている。この検出信号には、エンジン10の回転数(例えばクランク軸の回転数)、エンジン10の各種温度、アクセル操作量(出力要求量)、車速等の車両状態、車載電源の蓄電量、等が含まれている。これらの検出信号に基づき、制御部17が動力システム1の運転制御を行う。この運転制御には、エンジン10の運転制御、モータジェネレータ18の力行/回生(発電)の制御、オイル供給制御装置50の電磁弁の制御、が含まれている。
【0024】
モータジェネレータ18は、エンジン10に対しては、クラッチ24を介して動力伝達可能に連結されている。モータジェネレータ18は、クラッチ接続時には、エンジン10と動力伝達可能であり、クラッチ切断時には、エンジン10と動力伝達不能である。モータジェネレータ18は、油圧ポンプ15に対しては、クラッチ24を介さず常に動力伝達可能に連結されている。
【0025】
動力システム1は、クラッチ24の断接によって、エンジン10と油圧ポンプ15との間、およびエンジン10とモータジェネレータ18との間の各々で、動力伝達の可否を切り替える。クラッチ24が接続状態にあるとき、エンジン10と油圧ポンプ15との間、およびエンジン10とモータジェネレータ18との間の各々で、動力伝達が可能となる。クラッチ24が切断状態にあるとき、エンジン10と油圧ポンプ15との間、およびエンジン10とモータジェネレータ18との間の各々で、動力伝達が不能となる。
【0026】
動力システム1は、クラッチ24の断接を伴う制御により、以下の第一、第二および第三運転モードでの運転が可能である。クラッチユニット20は、油圧ポンプ15を駆動する動力を、エンジン10およびモータジェネレータ18の少なくとも一方で行うように、動力伝達経路を切り替える。
【0027】
第一運転モード(エンジン駆動モード(充電モード))は、クラッチ24を接続状態とし、エンジン10の駆動により油圧ポンプ15を駆動するとともに、エンジン10の駆動によりモータジェネレータ18を駆動する。すなわち、エンジン10でモータジェネレータ18を駆動して発電を行いながら、エンジン10で油圧ポンプ15を駆動させて油圧を発生させることが可能である。これにより、車載電源の充電を行いながら、油圧ポンプ15の出力で車両走行等を行うことが可能である。また、車両の運動エネルギーを出力軸13からモータジェネレータ18へ入力可能な構成であれば、第一運転モードは車両の運動エネルギーを電気に回生する回生モードでもある。
【0028】
第二運転モード(エンジン+モータ駆動モード(エンジンアシストモード))は、クラッチ24を接続状態とし、エンジン10およびモータジェネレータ18の両方の駆動により油圧ポンプ15を駆動する。すなわち、エンジン10およびモータの両方の動力で油圧ポンプ15を駆動させて油圧を発生させることが可能である。これにより、エンジン10による油圧ポンプ15の駆動をモータジェネレータ18でアシストし、高出力を得ることが可能である。
【0029】
第三運転モード(モータ駆動モード)は、クラッチ24を切断状態とし、エンジン10を停止させるとともにモータジェネレータ18のみを駆動させ、モータジェネレータ18の駆動により油圧ポンプ15を駆動する。すなわち、エンジン10を停止させてモータジェネレータ18の駆動のみで油圧ポンプ15を駆動させて油圧を発生させることが可能である。これにより、エンジン10を停止させた状態で、モータジェネレータ18によって油圧ポンプ15を駆動させて油圧を得ることが可能である。
【0030】
<クラッチユニット>
図5、
図6に示すように、クラッチユニット20は、油圧供給により作動するクラッチ24と、クラッチ24に対する作動オイルの供給を制御するオイル供給制御装置50と、を備えている。
図5を参照し、クラッチユニット20は、エンジン10の出力軸13に一体回転可能に連結される第一連結軸21と、油圧ポンプ15の入力部16に一体回転可能に連結される第二連結軸22と、を備えている。第一連結軸21は、エンジン10の出力軸13と同軸に配置され、出力軸13と常時一体に回転する。第二連結軸22は、油圧ポンプ15の入力部16と同軸に配置され、入力軸と常時一体に回転する。第一連結軸21および第二連結軸22は、互いに同軸に配置され、これら第一連結軸21と第二連結軸22との間に、クラッチ24が構成されている。第一連結軸21および第二連結軸22は、クラッチ24を介して動力伝達を断接可能に連結されている。
【0031】
クラッチ24は、外部(オイルポンプ14)から油圧が供給されて作動する。クラッチ24は、ノーマルオープンの油圧クラッチである。クラッチ24は、外部からの油圧供給により接続状態(エンジン10および油圧ポンプ15間の動力伝達が可能な状態)となる。クラッチ24は、外部からの油圧供給の消失により切断状態(エンジン10および油圧ポンプ15間の動力伝達が不能な状態)となる。
【0032】
例えば、クラッチ24は、出力軸13と同軸の円板状の摩擦板(クラッチ板)を複数備えた多板クラッチである。
図6を参照し、オイル供給制御装置50は、エンジン10に連動するオイルポンプ14が吐出したオイル(油圧)を、一定圧に制御(調圧)して出力する。オイル供給制御装置50は、クラッチ接続時、調圧した一定の油圧をクラッチ24に供給する。オイルポンプ14は、エンジン10に一体に設けられている。オイルポンプ14は、エンジン10の駆動に伴い駆動する。オイルポンプ14は、エンジン始動後は常にクランクシャフト12に連動して駆動する。エンジン10は、出力要求の増加に応じて回転数を増加させる。オイルポンプ14は、エンジン回転数の増加に応じて吐出量を増加させる。オイル供給制御装置50からオイルポンプ14よりも上流側に戻されるオイルの流量は、エンジン回転数の増加に応じて増加する。
【0033】
オイル供給制御装置50からクラッチ24に油圧が供給されると、クラッチ24が接続状態となり、第一連結軸21と第二連結軸22とが動力伝達可能に連結される。クラッチ24への油圧供給がなくなると、クラッチ24が切断状態となり、第一連結軸21と第二連結軸22との動力伝達可能な連結が解除される(すなわち動力伝達が不能となる)。
【0034】
図3、
図4を併せて参照し、伝動ケース30の偏平状ケース部33は、軸方向F11から見て、幅方向の一側に向けて上下幅を広げつつ延出している。偏平状ケース部33は、軸方向F11から見て、略三角形状をなしている。以下、偏平状ケース部33の軸方向F11視の形状について説明する。偏平状ケース部33には、出力軸13を中心とした円形状の第一円形部37と、第一円形部37に対して幅方向一側に離間した位置で上下に並ぶ第二円形部38および第三円形部39と、が形成されている。偏平状ケース部33の外周部には、第一円形部37および第二円形部38に上方から接する接線に沿う上辺部41と、第一円形部37および第三円形部39に下方から接する接線に沿う下辺部42と、第二円形部38および第三円形部39に幅方向一側から接する接線に沿う側辺部43と、が形成されている。
【0035】
図5を参照し、偏平状ケース部33の幅方向他側のエンジン10側には、第一側面35よりもエンジン10側に突出する筒状ケース部31が設けられている。伝動ケース30の内部には、クラッチ作動用オイルであるクラッチフルードが貯留されている。伝動ケース30は、クラッチフルードを貯留するオイルタンク30aを兼ねている。
【0036】
モータジェネレータ18と油圧ポンプ15との間には、伝動ギヤ列44が構成されている。伝動ギヤ列44は、モータジェネレータ18の出力軸13と同軸の第一ギヤ軸45と、油圧ポンプ15の入力部16と同軸の第二ギヤ軸46と、第一ギヤ軸45及び第二ギヤ軸46の間に配置される中継ギヤ軸47と、を備えている。
【0037】
第一ギヤ軸45には、第一伝動ギヤ45aが一体に設けられている。第二ギヤ軸46には、第二伝動ギヤ46aが一体に設けられている。中継ギヤ軸47には、第一伝動ギヤ45aに噛み合う第一中継ギヤ47aと、第二伝動ギヤ46aに噛み合う第二中継ギヤ47bと、が一体回転可能に設けられている。第一伝動ギヤ45aは、第一中継ギヤ47aより小径である。第二中継ギヤ47bギヤは、第二伝動ギヤ46aよりも小径である。
【0038】
したがって、モータジェネレータ18の駆動力は、第一伝動ギヤ45aと第一中継ギヤ47aとの間で減速されるとともに、第二中継ギヤ47bと第二伝動ギヤ46aとの間でも減速されて、油圧ポンプ15に伝達される。クラッチ接続時には、エンジン10の駆動力は、第二伝動ギヤ46aと第二中継ギヤ47bとの間で増速されるとともに、第一中継ギヤ47aと第一伝動ギヤ45aとの間でも増速されて、モータジェネレータ18に伝達される。
【0039】
<オイル供給制御装置50>
図6は、実施形態のオイル供給制御装置50の構成を示している。オイル供給制御装置50は、オイルポンプ14の駆動によりオイルタンク30a内のクラッチオイルを循環させる油圧回路51と、油圧回路51の各部に設けられてクラッチ24に供給するオイルの圧力および流量を制御する各種の油圧制御弁と、を備えている。実施形態のオイル供給制御装置50は、エンジン10に一体に(着脱不能に)設けられたオイルポンプ14を含まないが、この構成に限らない。例えば、エンジン10に対して着脱可能なオイルポンプ14を含む構成でもよい。
【0040】
油圧回路51の上流端には、サクションフィルタ52が設けられている。サクションフィルタ52は、オイルタンク30a内のクラッチオイルに浸漬されている。オイルタンク30aは、油圧回路51を循環させるクラッチオイルを貯留するとともに、油圧回路51を循環したクラッチオイルを回収する。オイルタンク30aは、貯留したクラッチオイルの温度を検出する油温センサ30bを備えている。実施形態のオイルタンク30aは、伝動ケース30で構成されているが、この構成に限らない。例えば、専用のオイルタンク30aを備えてもよい。
【0041】
油圧回路51は、オイルタンク30aからオイルポンプ14を経てクラッチ24に至る油圧供給路53を備えている。油圧供給路53は、オイルタンク30aからオイルポンプ14に至る上流側油路54と、オイルポンプ14から油圧機器に至る下流側油路55と、を備えている。
上流側油路54には、後述する戻し油路78が接続されている。戻し油路78は、上流側油路54の下流端であるオイルポンプ14の吸入部において接続されてもよい。上流側油路54の上流端は、サクションフィルタ52に接続されている。
【0042】
下流側油路55の途中には、油圧レギュレータ60と、油路切替弁70と、が設けられている。また、下流側油路55には、オイルポンプ14と油圧レギュレータ60との間の油路で油圧を検出する第一油圧センサ58aと、油圧レギュレータ60と油路切替弁70との間の油路に配置されるオイルフィルタ59と、油路切替弁70とクラッチ24との間の油路で油圧を検出する第二油圧センサ58bと、が設けられている。油圧レギュレータ60および油路切替弁70は、下流側油路55の上流端(オイルポンプ14の吐出部)や下流端(クラッチ24の入力部)に配置されてもよい。
以下、下流側油路55におけるオイルポンプ14と油圧レギュレータ60との間の油路を第一下流側油路55a、油圧レギュレータ60と油路切替弁70との間の油路を第二下流側油路55b、油路切替弁70とクラッチ24との間の油路を第三下流側油路55c、と称する。
【0043】
油圧レギュレータ60は、第一下流側油路内の油圧(すなわちオイルポンプ14の吐出圧)を予め設定した規定の油圧に調整する。油圧レギュレータ60は、例えば機械式の減圧弁(調圧弁)であり、二次側の油圧を一次側の油圧よりも低い一定圧力に維持する。
【0044】
図6を参照し、油圧回路51は、油圧レギュレータ60から延びて上流側油路54に至り、油圧レギュレータ60で生じた余剰オイルをオイルタンク30aに戻す戻し油路56を備えている。
【0045】
オイルポンプ14の吐出口は、第一下流側油路55aを介して、油圧レギュレータ60に接続されている。オイルポンプ14の吸入口は、上流側油路54を介して、サクションフィルタ52に接続されている。
クラッチ24には、第三下流側油路55cを介して、油路切替弁70が接続されている。
【0046】
実施形態の油路切替弁70は、油圧レギュレータ60から出力された油圧(オイル)のクラッチ24への供給の有無を切り替えるとともに、油圧レギュレータ60から出力された油圧(オイル)の流量を調整可能な流量調整弁である。例えば、油路切替弁70は、エンジン回転数に応じてクラッチ24に対する油圧供給量(オイル流量)を変化させる比例制御弁75(リニアソレノイドバルブ)である。クラッチ24は、油路切替弁70の作動により、接続状態と切断状態とを切り替える。クラッチ24の接続状態では、クラッチ24における作動油圧が供給される油室は、油路切替弁70の連通ポート76を介して第二下流側油路55bに連通する。これにより、クラッチ24の油室には、第二下流側油路55bの油圧(油圧レギュレータ60を経た油圧)が供給される。クラッチ24の切断状態では、クラッチ24の油室は、油路切替弁70の戻しポート77(ドレンポート)を介して戻し油路78に連通する。これにより、クラッチ24の油室から作動油圧が排出される。例えば、戻し油路78は、上流側油路54に連通している。
【0047】
さらに、実施形態では、比例制御弁75の作動により、エンジン回転数に応じた量のオイルをクラッチ24に供給可能である。オイルポンプ14は、エンジン回転数の増加に応じてオイル吐出量を増加させる。実施形態では、エンジン回転数の増加に応じて、比例制御弁75のバルブ開度を減少させて、連通ポート76のオイル流量を減少させる。このとき、エンジン回転数の増加に応じて、戻しポート77のオイル流量を増加させることとなる。すなわち、比例制御弁75からのオイル戻り量が、エンジン10の回転数に応じて可変となる。
【0048】
比例制御弁75は、連通ポート76の開通量もしくは開通時間を電気的に制御するソレノイド75aを備えている。比例制御弁75は、動力システム1の各部の動作を電気的に制御するECUとしての制御部17によって、ソレノイド75aに通電する電流値が制御される。比例制御弁75は、連通ポート76の開通量もしくは開通時間を調整することによって、クラッチ24への油圧供給量を0~100%の間で無段階に調整可能である。
【0049】
比例制御弁75は、バルブ開度を段階的に調整するものでもよい。すなわち、比例制御弁75は、エンジン10の回転数が第一回転数にあるとき、バルブ開度を第一開度とし、エンジン10の回転数が前記第一回転数よりも高い第二回転数にあるとき、バルブ開度を前記第一開度よりも低い第二開度としてもよい。
【0050】
図7は、比例制御弁75を用いてオイル流量を調整する場合の各種パラメータ等の変化を示すタイムチャートである。
動力システム1において、エンジン始動後、クラッチ24に油圧が供給されると、クラッチ24がOFF状態(切断状態)からON状態(接続状態)に変化する(図中タイミングT1)。これにより、エンジン10の出力によって油圧ポンプ15やモータジェネレータ18を駆動させることが可能となる。
【0051】
クラッチ接続時、クラッチ油圧(供給油圧)は、クラッチ24を接続作動させない(切断状態を維持する)程度の待機油圧P1(油圧0を含む)から、クラッチ24を接続作動させる接続油圧P2に変化する。このとき、比例制御弁75の連通ポート76の開度は、クラッチ24に油圧を供給しない(または接続油圧P2未満の油圧(例えば待機油圧P1)を供給する)開度D1(全閉を含む)から、クラッチに接続油圧P2を供給する開度D2に変化する。またこのとき、クラッチ24への供給油圧の増加により、オイルタンク30aの残油量は、タイミングT1前の油量V1から油量V2に減少する。
【0052】
クラッチ接続状態では、クラッチ油圧は一定の規定値(クラッチ接続油圧P2)に保たれる。一方、タイミングT1以降、エンジン10への出力要求によってエンジン回転数が増加した場合には(図中範囲N1)、比例制御弁75が開度D2のままでは(図中線L11)、オイルタンク30aに戻るオイルの流量が不足し、タンク残量が減少することがある(図中線L12)。タンク残量が減りすぎると、オイルポンプ14の吸入不足が生じてしまう。オイルタンク30aの容量を増加させると、装置を大型化させてしまう。
【0053】
これに対し、実施形態では、エンジン回転数の増加と反比例するように、比例制御弁75の開度を減少させるようにした(図中線L21)。これにより、エンジン回転数の増加に伴いオイルポンプ14の吐出量が増加しても、比例制御弁75のバルブ開度が減少してオイル戻し量を増加させるので、比例制御弁75が開度一定の場合に比べて、タンク残量の減少を抑えることができる(図中線L22)。
【0054】
図4を参照し、油圧レギュレータ60の伝動ケース30への取り付け状態において、油圧レギュレータ60は、バルブ軸方向(図中線C2に沿う方向)を動力システム1の上下方向に対して上側ほど幅方向の一側(図中左側)に位置するように傾斜して配置されている。油圧レギュレータ60のバルブ軸方向の中間部には、軸方向F11でエンジン10側を向いて開口する入力ポート111が設けられている。入力ポート111には、オイルポンプ14の吐出口から延びる不図示の配管(上流側油路54)が接続されている。
【0055】
油圧レギュレータ60のバルブ軸方向の中間部における上向きの側面には、斜め上方を向いて開口する出力ポート112が設けられている。油圧レギュレータ60よりも幅方向の他側(図中右側)には、伝動ケース30の筒状ケース部31が配置されている。筒状ケース部31の上方には、幅方向に延びる油路切替弁70(比例制御弁75)が配置されている(
図2、
図3参照)。油圧レギュレータ60の出力ポート112は、第一下流側油路55aを介して、油路切替弁70の入力ポート(不図示)に接続されている。
【0056】
油路切替弁70の下端部には、下方(筒状ケース部31側)に向けて開口する出力ポート(連通ポート76)が設けられている。筒状ケース部31の上端部には、筒状ケース部31の外周壁を貫通する油路が形成されている。この油路を介して、油路切替弁70の出力ポートと、筒状ケース部31内に収容されたクラッチ24の油室とが連通されている。油路切替弁70の上端部には、上方に向けて開口する戻しポート77(
図6参照)が設けられている。油路切替弁70の戻しポート77には、不図示の配管(戻し油路78)の一端が接続されている。例えば、前記配管の他端は、伝動ケース30(オイルタンク30a)に接続されている。
【0057】
油圧レギュレータ60のバルブ軸方向の中間部における下向きの側面には、下向きにオフセットした後に軸方向F11でエンジン10側を向いて開口する戻しポート113が設けられている。油圧レギュレータ60よりも戻しポート113側に離間した部位には、伝動ケース30の第三円形部39が配置されている。第三円形部39内には、サクションフィルタ52が収容されている。第三円形部39およびサクションフィルタ52は、車両搭載時には伝動ケース30(オイルタンク30a)の下端部に位置する。第三円形部39のエンジン10側の中心部には、エンジン10側を向いて開口する接続ポート52aが設けられている。接続ポート52aには、オイルポンプ14の吸入口に至る不図示の配管(上流側油路54)が接続されている。
【0058】
<作用>
次に、実施形態の作用について説明する。
まず、エンジン10が始動すると、クランクシャフト12の駆動に連動してオイルポンプ14が駆動する。伝動ケース30(オイルタンク30a)内には、クラッチ作動用のオイル(クラッチフルード)が貯留されている。オイルポンプ14は、上流側油路54を介してオイルタンク30a内のフルードを吸入するとともに、下流側油路55に向けてフルードを吐出する。クラッチ24の少なくとも一部はフルード内に浸漬され、もってクラッチ24の潤滑および冷却等が良好になされる。
エンジン10は、出力要求に応じて回転数を増減させる。出力要求によりエンジン回転数が増加すると、これに伴いオイルポンプ14の吐出量も増加する。このとき、クラッチ24に供給する油圧は一定なので、油圧回路51の上流側へ戻すオイル戻し量が増加する。
【0059】
実施形態では、油路切替弁を比例制御弁75とし、エンジン回転数に応じて油路切替弁の開度を変更する。換言すれば、油路切替弁から上流側油路に戻すオイル流量を比例弁開度によって制御する。
例えば、比例制御弁75は、パラメータ(実施形態ではエンジン回転数)に応じて、供給路の開度を0~100%の間で無段階に変化させる。比例制御弁75は、エンジンが低回転のときは、油圧供給路の開度を相対的に大きくする(流路断面積を大きくする)。比例制御弁75は、エンジンが高回転のときは、油圧供給路の開度を相対的に小さくする(流路断面積を小さくする)。比例制御弁75でカットオフされた油圧は、オイルタンク30aに戻してもよいが、実施形態では、上流側油路54に戻している。これにより、オイルポンプ14の吸入負圧によってオイルが強制的にオイルポンプ14へ戻されるので、余剰オイルを効率的に循環させることができる。
【0060】
以上説明したように、上記実施形態におけるオイル供給制御装置50は、エンジン10の駆動に応じて駆動するオイルポンプ14から油圧クラッチ24への作動オイルの供給を制御するものであって、前記作動オイルを貯留するオイルタンク30aから前記オイルポンプ14に至る上流側油路54と、前記オイルポンプ14から前記クラッチ24に至る下流側油路55と、を有し、前記作動オイルが流通する油圧供給路53と、前記下流側油路55に設けられ、前記エンジン10の回転数の増加に応じて下流側に流出する前記作動オイルの流量を減少させる比例制御弁75と、前記比例制御弁75から前記上流側油路54に至り、前記比例制御弁75で前記作動オイルの流量を減少させることで生じた余剰オイルを前記上流側油路54に戻す戻し油路78と、を備えている。
実施形態のクラッチユニット20は、上記オイル供給制御装置50と、以下のクラッチ24と、を備えている。クラッチ24は、エンジン10と、エンジン10の駆動により駆動される油圧ポンプ15と、の間に配置されて、エンジン10の駆動力を油圧ポンプ15に伝達可能とする。
実施形態の動力システム1は、上記クラッチユニット20と、エンジン10と、油圧ポンプ15と、を備えている。
【0061】
上記構成によれば、大型化を回避した上で安定したオイル供給を実現可能なオイル供給制御装置50、クラッチユニット20および動力システム1を提供することができる。
すなわち、オイルポンプ14がエンジン10と一体的に駆動し、このオイルポンプ14から吐出されたオイルを油圧機器に供給する構成では、エンジン10の回転数が増加すると、これに伴いオイルポンプ14の吐出量も増加する。クラッチ24には、油圧供給により接続状態となった後も、一定量の油圧(オイル)が供給され続ける。したがって、油路切替弁70から延びる戻し油路78には、上流側油路54に戻す余剰オイルが流れる。
一般に、オイルの戻し量およびオイルタンク30aの容量は、エンジン10における使用頻度の高い回転数でオイルポンプ14が駆動した場合の吐出量(通常流量)を基準に設定される。すなわち、オイルポンプ14が通常流量で駆動する場合、オイルタンク30a内のオイルが不足することなく、装置内で安定してオイルを循環させることができる。
これに対し、エンジン10の回転数(ひいてはオイルポンプ14の吐出量)が使用頻度の低い最大回転数まで増加すると、オイルポンプ14の最大吐出量(最大流量)に対して生じる余剰オイルは、通常流量を基準に設定したオイルの戻し量よりも多くなる。この場合、油路切替弁70のバルブ開度が一定では、油圧回路51のリリーフ弁が作動したり、オイルタンク30a内のオイルが不足してオイルポンプ14の吐出を不安定にさせたりすることが考えられる。
実施形態では、油圧供給路の下流側油路に設けた油路切替弁に、エンジンの回転数の増加に応じて作動オイルの流量を減少させる比例制御弁を採用している。比例制御弁は、エンジンの回転数(ひいてはオイルポンプの吐出量)が増加した場合は、バルブ開度を変化させて、下流側油路のオイル流量を減少させるとともに、戻し油路のオイル流量を増加させる。これにより、エンジン10の回転数が上昇してオイルポンプ14の吐出量が増加しても、下流側油路のオイル流量が制限され、多くの余剰オイルが速やかに上流側油路に戻される。これにより、オイルタンク30aの容量を増加させる等による装置全体の大型化を回避するとともに、オイルポンプ14の吐出を安定させて油圧供給を安定させることができる。
【0062】
上記クラッチユニット20において、前記エンジン10と前記油圧ポンプ15との間に配置され、前記エンジン10の駆動力を前記油圧ポンプ15に伝達可能とする前記クラッチ24と、前記クラッチ24を収容するとともに前記オイルタンク30aを兼ねる伝動ケース30と、を備え、前記伝動ケース30は、前記エンジン10と前記油圧ポンプ15との間に配置されている。
この構成によれば、上記効果に加え、エンジン10と油圧ポンプ15との間にオイルタンク30aを兼ねる伝動ケース30が配置される構成において、オイルタンク30aが大型化してエンジン10と油圧ポンプ15とを大きく離間させることを抑え、クラッチユニット20ひいては動力システム1の大型化を確実に抑えることができる。また、油圧機器であるクラッチ24がオイルタンク30a内に配置されるので、クラッチ24の潤滑等を良好に行うことができる。
【0063】
なお、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、例えば、駆動源は、エンジン10(内燃機関)に限らず、電動機でもよい。クラッチ24は、油圧供給により接続状態となるノーマルオープンではなく、油圧供給により切断状態となるノーマルクローズでもよい。伝動装置は、動力伝達を断接するクラッチ24に限らず、変速機の変速動作を制御するクラッチでもよい。また、伝動装置は、油圧供給により変速作動する変速機でもよい。
そして、上記実施形態における構成は本発明の一例であり、実施形態の構成要素を周知の構成要素に置き換える等、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0064】
1 動力システム
10 エンジン(駆動源)
13 出力軸
13a フライホイール
14 オイルポンプ
18 モータジェネレータ
20 クラッチユニット(伝動ユニット)
24 クラッチ(油圧機器、伝動装置)
30 伝動ケース
30a オイルタンク
32 ホイールハウジング
33 偏平状ケース部
50 オイル供給制御装置
53 油圧供給路
54 上流側油路
55 下流側油路
70 油路切替弁(制御弁)
75 比例制御弁(制御弁)
78 戻し油路
F11 軸方向