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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022097240
(43)【公開日】2022-06-30
(54)【発明の名称】三次元印刷装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/118 20170101AFI20220623BHJP
   B29C 64/209 20170101ALI20220623BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20220623BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20220623BHJP
   B29C 64/321 20170101ALI20220623BHJP
【FI】
B29C64/118
B29C64/209
B33Y30/00
B33Y10/00
B29C64/321
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020210705
(22)【出願日】2020-12-18
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-10-13
(71)【出願人】
【識別番号】594034005
【氏名又は名称】ホッティーポリマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089026
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 高明
(74)【代理人】
【識別番号】100091580
【氏名又は名称】宮尾 雅文
(72)【発明者】
【氏名】堀田 秀敏
(72)【発明者】
【氏名】田鍋 史生
【テーマコード(参考)】
4F213
【Fターム(参考)】
4F213WA25
4F213WB01
4F213WF36
4F213WL02
4F213WL27
4F213WL32
(57)【要約】
【課題】軟質なフィラメントであってもステージに向けてフィラメントを円滑に供給する。
【解決手段】
三次元印刷装置は、造形前のフィラメントを保持するフィラメント保持部と、フィラメント保持部に対して鉛直下方に配置され、フィラメント保持部から搬送されるフィラメントを溶融させるフィラメント溶融部と、溶融後のフィラメントを造形後の形状に応じて堆積させる造形部とを備える。フィラメント溶融部は、造形前のフィラメントをフィラメント保持部から引き出し、造形部に向けて送り出す搬送部と、送り出された造形前のフィラメントをその溶融温度以上の温度に加熱する加熱部と、溶融後のフィラメントを造形部に向けて射出する射出部とを備え、搬送部におけるフィラメントの送出点を、フィラメント保持部におけるフィラメントの引出点と加熱部におけるフィラメントの導入点とを結ぶ直線上の位置に配置する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
造形前のフィラメントを保持可能に構成されたフィラメント保持部と、
前記フィラメント保持部に対して鉛直方向の下方に配置され、前記フィラメント保持部から搬送されるフィラメントを溶融させるフィラメント溶融部と、
溶融後のフィラメントを造形後の形状に応じて堆積させる造形部と
を備え、
前記フィラメント溶融部は、
前記造形前のフィラメントを前記フィラメント保持部から引き出して、前記造形部に向けて送り出す搬送部と、
前記搬送部により送り出された前記造形前のフィラメントをその溶融温度以上の温度に加熱する加熱部と、
溶融後のフィラメントを前記造形部に向けて射出する射出部と
を備え、
前記搬送部におけるフィラメントの送出点を、前記フィラメント保持部におけるフィラメントの引出点と前記加熱部におけるフィラメントの導入点とを結ぶ直線上の位置に配置可能に構成されたことを特徴とする三次元印刷装置。
【請求項2】
前記フィラメントの送出点および導入点を、前記フィラメントの引出点と前記射出部におけるフィラメントの射出点とを結ぶ直線上の位置に配置可能に構成されたことを特徴とする、
請求項1に記載の三次元印刷装置。
【請求項3】
前記搬送部は、前記加熱部の直上に配置されたことを特徴とする、
請求項1または2に記載の三次元印刷装置。
【請求項4】
造形中の造形物を冷却可能に配置された第1ファンと、
前記搬送部を冷却可能に配置された第2ファンと
をさらに備え、
前記搬送部は、駆動用のモータに接続されかつ前記造形前のフィラメントに圧接されるドライブギアを備え、前記造形前のフィラメントを、前記モータによる前記ドライブギアの回転に伴って前記造形部に向けて送り出し、
前記第2ファンは、前記ドライブギアに向けて冷却風を送風可能に方向付けられたことを特徴とする、
請求項1から3のいずれか一項に記載の三次元印刷装置。
【請求項5】
前記搬送部は、駆動用のモータに接続されかつ前記造形前のフィラメントに圧接されるドライブギアを備え、前記造形前のフィラメントを、前記モータによる前記ドライブギアの回転に伴って前記造形部に向けて送り出し、
前記モータは、ステッピングモータであることを特徴とする、
請求項1から4のいずれか一項に記載の三次元印刷装置。
【請求項6】
前記フィラメント保持部、前記フィラメント溶融部および前記造形部を収容可能に構成されたハウジングをさらに備え、
前記ハウジングは、重心の位置が造形中の造形物よりも低位にあることを特徴とする、
請求項1から5のいずれか一項に記載の三次元印刷装置。
【請求項7】
前記フィラメント保持部により保持されるフィラメントは、そのフィラメント径が3mm以上の軟質なフィラメントであることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の三次元印刷装置。
【請求項8】
前記フィラメント溶融部は、前記フィラメントを射出するノズル部を有するエクストルーダにより構成され、前記ノズル部の先端に開設されたノズル孔部の開口径は0.8mm以上に形成されていることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の三次元印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三次元印刷装置、特に軟質タイプのフィラメントの使用に適した三次元印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
三次元印刷装置による造形に用いられる材料は、フィラメントと呼ばれ、三次元印刷装置に専用の材料として、各種の熱可塑性樹脂により線状に形成される(特許文献1)。
【0003】
MEX方式の三次元印刷装置では、フィラメントが巻き付けられたリールが設置され、フィラメントがドライブギアによりリールから引き出されるとともに、下方に送り出され、バレルおよびノズル内部の細径の通路を経て、造形が実施されるステージ(テーブルまたはプラットフォームとも呼ばれる)に供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-130871号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、MEX方式の三次元印刷装置では、フィラメントがリールから引き出された後、バレルおよびノズルに押し込まれることから、フィラメントは、バレルおよびノズルを通過する過程で座屈による「つまり」を生じることがないように、所定の剛性を有するのが好ましいとされ、硬質なものが採用されるのが一般的であった。
【0006】
ここで、比較的細密な形状ないし構造の造形物を形成する場合は、造形の精度を向上させるうえで硬質なフィラメントでは必ずしも適切ではなく、軟質なものが必要となる場合がある。しかし、軟質なフィラメントを使用する場合は、硬質なフィラメントを使用する場合と比較して座屈による「つまり」が生じ易い。つまり、三次元印刷による造形精度の向上と座屈による「つまり」の抑制とは、互いに相反するというのがこれまでの認識であった。
【0007】
このような実情に鑑み、本発明は、軟質なフィラメントによる場合であってもステージに向けてフィラメントを円滑に供給することのできる三次元印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一形態に係る三次元印刷装置は、造形前のフィラメントを保持可能に構成されたフィラメント保持部と、フィラメント保持部に対して鉛直方向の下方に配置され、フィラメント保持部から搬送されるフィラメントを溶融させるフィラメント溶融部と、溶融後のフィラメントを造形後の形状に応じて堆積させる造形部とを備える。本形態において、フィラメント溶融部は、造形前のフィラメントをフィラメント保持部から引き出して、造形部に向けて送り出す搬送部と、搬送部により送り出された造形前のフィラメントをその溶融温度以上の温度に加熱する加熱部と、溶融後のフィラメントを造形部に向けて射出する射出部とを備え、搬送部におけるフィラメントの送出点を、フィラメント保持部におけるフィラメントの引出点と加熱部におけるフィラメントの導入点とを結ぶ直線上の位置に配置可能に構成される。
【0009】
他の形態では、フィラメントの送出点および導入点が、フィラメントの引出点と射出部におけるフィラメントの射出点とを結ぶ直線上の位置に配置可能に構成されることを特徴とする。
【0010】
更に別の形態では、搬送部が、加熱部の直上に配置されることを特徴とする。
【0011】
更に別の形態では、造形中の造形物を冷却可能に配置された第1ファンと、搬送部を冷却可能に配置された第2ファンとをさらに備え、搬送部が、駆動用のモータに接続されかつ造形前のフィラメントに圧接されるドライブギアを備え、造形前のフィラメントを、モータによるドライブギアの回転に伴って造形部に向けて送り出し、第2ファンが、ドライブギアに向けて冷却風を送風可能に方向付けられることを特徴とする。
【0012】
更に別の形態では、搬送部が、駆動用のモータに接続されかつ造形前のフィラメントに圧接されるドライブギアを備え、造形前のフィラメントを、モータによるドライブギアの回転に伴って造形部に向けて送り出し、モータが、ステッピングモータであることを特徴とする。
【0013】
更に別の形態では、フィラメント保持部、フィラメント溶融部および造形部を収容可能に構成されたハウジングをさらに備え、ハウジングが、重心の位置が造形中の造形物よりも低位にあることを特徴とする。
【0014】
更に別の形態では、フィラメント保持部により保持されるフィラメントが、そのフィラメント径が3mm以上の軟質なフィラメントであることを特徴とする。この場合、フィラメント径は、3mm以上であって20mm以下であることが望ましい。
【0015】
更に別の形態によれば、前記フィラメント溶融部は、前記フィラメントを射出するノズル部を有するエクストルーダにより構成され、前記ノズル部の先端に開設されたノズル孔部の開口径は0.8mm以上に形成されていることを特徴とする。
この場合、ノズル孔部の開口径は、0.8mm以上5mm以下の範囲で形成されることが望ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の一形態によれば、造形前のフィラメントが、造形中、フィラメント保持部におけるフィラメントの引出点とフィラメント溶融部の加熱部におけるフィラメントの導入点との間で直線状に配置される。
【0017】
これにより、造形前のフィラメントがフィラメント溶融部の搬送部によりフィラメント保持部から真っ直ぐに引き出されるとともに、加熱部に対して真っ直ぐに押し込まれる。よって、造形前のフィラメントを造形部に供給する過程で、特にフィラメント溶融部におけるフィラメントの座屈を生じ難くして、軟質なフィラメントによる場合であっても「つまり」の発生を抑制し、造形部に対してフィラメントを円滑に供給することが可能となる。
【0018】
他の形態によれば、造形前のフィラメントが、造形中、フィラメントの引出点とフィラメント溶融部の射出部におけるフィラメントの射出点との間、即ち、フィラメントがフィラメント保持部から引き出されてからフィラメント溶融部の射出部から造形部に向けて射出されるまでの一連の過程全体に亘って直線状に配置されるので、フィラメントの座屈をより生じ難くし、「つまり」の発生をより確実に抑制可能として、造形部に対し、フィラメントをより円滑に供給することが可能となる。
【0019】
更に別の形態によれば、フィラメント溶融部において、搬送部を加熱部の直上に配置したことで、これらの部分の間でフィラメントを直線状に配置することを容易にして、その結果、加熱部による熱が上方へも及ぶことにより供給されるフィラメントが軟化することによるフィラメントの座屈を原因とする「つまり」を、より確実に抑制することが可能となる。
【0020】
更に別の形態によれば、冷却部として、造形中の造形物を対象とする第1ファンと、搬送部のうち、特にドライブギアを対象とする第2ファンとを設置したことで、造形中の造形物を冷却して、フィラメントを速やかに硬化させながら、加熱部及び駆動用のモータから発せられる熱が搬送中のフィラメントに及び、フィラメントが軟化する事態を抑制することが可能となる。
【0021】
更に別の形態によれば、ドライブギア駆動用のモータとしてステッピングモータを採用したことで、造形中にモータの振動が造形部に伝達されて、造形中の造形物に及び、造形後の目的物の品質に悪影響が及ぶのを抑制することが可能となる。
【0022】
更に別の形態によれば、ハウジングの重心の位置を造形中の造形物よりも低位に設定したことで、造形中におけるハウジング自体の振動を抑制し、造形中の造形物に振動が及んで、造形後の目的物の品質が損なわれるのを抑制することが可能となる。
【0023】
更に別の形態によれば、フィラメントとしてフィラメント径が3mm以上の軟質なフィラメントを採用したことで、比較的細密な形状ないし構造を有する目的物を造形可能としながら、座屈による「つまり」の発生を抑制することが可能となる。
【0024】
更に別の形態によれば、前記フィラメント溶融部は、前記フィラメントを射出するノズル部を有するエクストルーダにより構成され、前記ノズル部の先端に開設されたノズル孔部の開口径は0.8mm以上に形成されていることから、エクストルーダにより溶融されたフィラメントはノズル孔部を通過する際に、座屈が発生しない状態で、かつ円滑に射出されることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る三次元印刷装置の全体的な構成を側方から見た状態で示す模式図である。
図2図2は、同上実施形態に係る三次元印刷装置の全体的な構成を上方から見た状態で示す模式図である。
図3図3は、同上実施形態に係る三次元印刷装置の要部(エクストルーダ)の構成を拡大して示す断面図である。
図4図4は、同上実施形態に係る三次元印刷装置のエクストルーダに備わるノズル冷却用のファンの構成を示す概略図である。
図5図5は、同上実施形態の変形例に係る三次元印刷装置のエクストルーダに備わるノズル冷却用のファンの構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
【0027】
図1および2は、本発明の一実施形態に係る三次元印刷装置1の全体的な構成を示す模式図であり、図1は、三次元印刷装置1を側方から見た状態で、図2は、三次元印刷装置1を上方から見た状態で夫々示す。
【0028】
本実施形態に係る三次元印刷装置1は、フィラメントリール11、エクストルーダ12およびテーブル13を、主な構成要素として備える。フィラメントリール11、エクストルーダ12およびテーブル13は、ハウジングないしケースHに収容され、ハウジングHの内部において、上方からこの順で配置されている。図1および2は、これらフィラメントリール11等の装置要素とハウジングHとの相対的な位置関係を簡潔に示すため、ハウジングHの外形を二点鎖線により模式的に示す。
【0029】
フィラメントリール11は、造形前のフィラメントFを保持するものである。本実施形態において、フィラメントFは、断面が略円形をなす細線状に形成され、フィラメントリール11に巻き付けられた状態で、三次元印刷装置1に装填される。フィラメントFとして、軟質なフィラメントを採用することが可能であり、フィラメントFの直径(以下「フィラメント径」という場合がある)は、例えば、本実施の形態においては直径3mmに形成されている。なお、直径3mmに限定されることはなく、フィラメント径は3mm以上、20mm以下の範囲の径であればよい。
この場合、
【0030】
エクストルーダ12は、フィラメントリール11に対して鉛直方向の下方に配置され、フィラメントリール11からフィラメントFを引き出すとともに、フィラメントFをその溶融温度以上の温度に加熱して、溶融させる。本実施形態において、エクストルーダ12は、ヘッド一体型のエクストルーダとして構成され、溶融後のフィラメントFを射出するノズル123を備える。エクストルーダ12とヘッドとは、図3に示すように一体に構成するばかりでなく、別体に構成することも可能であり、別体のものでは、例えば、ヒータ122およびノズル123が後に述べるドライブギア121a、121bから離間して配置される。
【0031】
テーブル13は、造形中の造形物Mを載置し、溶融後のフィラメントF、本実施形態では、ヒータ122を介してエクストルーダ12のノズル123から射出されたフィラメントFを、造形後のモデル(つまり、造形物)の形状に応じて堆積させる。
本実施の形態にあっては、図3及び図4に示すフィラメントFを射出するノズル123の先端部に開設されたノズル孔部123aの開口径は、0.8mmに形成されている。
なお、本実施の形態にあっては、ノズル孔部の開口径は0.8mmに形成されているが、0.8mm以上に形成され、フィラメントFが射出時にスムーズに流れ、座屈を起こさない程度の径として構成されればよい。好ましくは、0.8mm以上、5mm以下であることが望ましい。
【0032】
本実施形態において、エクストルーダ12は、平面方向の2軸、つまり、図1の紙面に向かって左右方向に延びるx軸および奥行方向に延びるy軸に沿って移動可能に構成され、テーブル13は、鉛直方向の1軸、つまり、図1の紙面において上下方向に延びるz軸に沿って移動可能に構成されている。
【0033】
エクストルーダ12の移動のうち、x軸に沿った移動は、x軸駆動機構(図示せず)により達成され、y軸に沿った移動は、y軸駆動機構21a、21bにより達成される。具体的には、ハウジングHの内部をx軸に沿って延びるx軸駆動用ロッド31が設けられるとともに、y軸に沿って延びるy軸駆動用ロッド32a、32bが設けられ、図示しないx軸駆動機構は、エクストルーダ12をx軸駆動用ロッド31上で移動させ、y軸駆動機構21a、21bは、エクストルーダ12をy軸駆動用ロッド32a、32b上で移動させる。x軸駆動機構およびy軸駆動機構21a、21bは、例えば、電動式のモータを備え、モータの回転運動をラックおよびピニオン機構等、適宜の動力変換装置を介してエクストルーダ12の直線運動に変換する。
【0034】
他方で、テーブル13のz軸に沿った移動は、z軸駆動機構41により達成される。具体的には、ハウジングHの内部をz軸に沿って延びるz軸駆動用ロッド51が設けられ、z軸駆動用ロッド51の一端、つまり、上端は、テーブル13に取り付けられ、他端、つまり、下端は、z軸駆動機構41に取り付けられている。z軸駆動機構41は、例えば、電動式のモータを備え、モータの回転運動を適宜の動力変換装置によりテーブル13の直線運動に変換する。
【0035】
x軸駆動機構(図示せず)、y軸駆動機構21a、21bおよびz軸駆動機構41の動作は、コントロールユニット101により制御される(図2)。コントロールユニット101は、電子制御ユニットとして構成することが可能であり、目標とする造形物に関する三次元情報を入力し、この三次元情報に応じた駆動信号を、対応する駆動機構に出力する。コントロールユニット101は、専用の電子デバイスとして具現するばかりでなく、より汎用性の高い電子デバイスとして、例えば、パーソナルコンピュータにより具現することも可能である。
【0036】
これら3軸の駆動機構21a、21b、41により、エクストルーダ12、特にノズルの先端を、テーブル13およびこれに載置された造形中の造形物Mに対してx、yおよびz軸に沿った三方向に相対的に移動させ、三次元の造形を実現することが可能である。
【0037】
以上に加え、三次元印刷装置1は、ハウジングHの下部または底面近傍に重量物Wが据え付けられ、ハウジングHの重心の位置(つまり、高さ)Hgが造形中の造形物Mよりも低位となるように調整されている。
【0038】
本実施形態において、フィラメントリール11は、「フィラメント保持部」を構成し、エクストルーダ12は、「フィラメント溶融部」を構成し、テーブル13は、「造形部」を構成する。
【0039】
図3は、三次元印刷装置1の要部、具体的には、エクストルーダ12の構成を断面により拡大して示す。
【0040】
本実施形態において、エクストルーダ12は、ドライブギア121a、121bと、ヒータ122と、ノズル123とを備える。
【0041】
ドライブギア121a、121bは、フィラメントFをその側面ないし周面に対して垂直な方向における両側から挟み込むとともに、フィラメントFに圧接され、さらに、ドライブギア121a、121bの外周に形成された歯または摩擦面によりフィラメントFを係止することで、造形前のフィラメントFを回転に伴ってフィラメントリール11から引き出し、造形部であるテーブル13に向けて送り出す。本実施形態では、ドライブギア121a、121bの駆動源として、電動式のモータACT1、ACT2が設けられ、フィラメントFを、モータACT1、ACT2によるドライブギア121a、121bの回転に伴ってフィラメントリール11から引き出し、テーブル13に向けて送り出す。モータACT1、ACT2に採用可能なものとして、ステッピングモータを例示することが可能である。
【0042】
ヒータ122は、ドライブギア121a、121bにより送り出されたフィラメントFを受容し、その溶融温度Tmlt以上の温度に加熱する。本実施形態において、ヒータ122は、ドライブギア121a、121bに対してできる限り近付けて配置され、換言すれば、ドライブギア121a、121bは、ヒータ122の直上に配置される。
【0043】
ノズル123は、ヒータ122を介した溶融後のフィラメントFを、テーブル13に載置された造形中の造形物Mに向けて射出する。エクストルーダ12の動作によりノズル123がx軸およびy軸の2軸に沿って移動するとともに、テーブル13がz軸に沿って移動することで、ノズル123の先端を、造形中の造形物Mに対してx、yおよびz軸に沿った三方向に相対的に移動させ、三次元の造形を実現することが可能である。
【0044】
ここで、本実施形態では、三次元印刷装置1の動作中、換言すれば、三次元印刷装置1による造形物の作成中、ドライブギア121a、121bにおけるフィラメントFの送出点p2が、フィラメントリール11におけるフィラメントFの引出点p1とヒータ122におけるフィラメントFの導入点p3とを結ぶ直線L上の位置に配置される。
本実施形態では、ヒータ122に対するフィラメントFの導入をより円滑なものとするため、ヒータ122の入口側にバレル122aが取り付けられている。そこで、バレル122aとヒータ(ないしヒータ本体)122とで外形上、ヒータが構成されるものとし、バレル122aの入口端を、ヒータ122におけるフィラメントFの導入点p3とする。バレル122aを備えていない場合は、ヒータ122自体の入口端を、導入点p3とすることが可能である。
そして、フィラメントリール11におけるフィラメントFの引出点p1とは、フィラメントFがフィラメントリール11における巻回を解かれる点、換言すれば、フィラメントFの延びる向きが鉛直下向きの方向に変わる点をいい、ドライブギア121a、121bにおけるフィラメントFの送出点p2とは、一対のドライブギア121a、121bの外周が互いに最も近接する位置をフィラメントFの送り方向に通過し、ドライブギア121a、121bによりフィラメントFにかけられる力が圧縮方向に変わる点をいう。
【0045】
これに加え、本実施形態では、ドライブギア121a、121bにおけるフィラメントFの送出点p2およびヒータ122におけるフィラメントFの導入点p3が、フィラメントリール11におけるフィラメントの引出点p1とノズル123におけるフィラメントFの射出点p4とを結ぶ直線上の位置に配置される。本実施形態において、フィラメントFの射出点p4とは、ノズル123の吐出口近傍の点、つまり、出口端をいう。
【0046】
そして、三次元印刷装置1の動作中、フィラメントFの引出点p1、送出点p2、導入点p3および射出点p4の上記関係を配置可能とするため、本実施形態では、フィラメントリール11についてもエクストルーダ12と同様の平面方向の駆動機構を採用する。
【0047】
具体的には、フィラメントリール11は、エクストルーダ12と同様に、平面方向の2軸、つまり、x軸およびy軸に沿って移動可能に構成される。フィラメントリール11のx軸に沿った移動は、x軸駆動機構61により達成され、y軸に沿った移動は、y軸駆動機構62a、62bにより達成される。ハウジングHの内部をx軸に沿って延びるx軸駆動用ロッド71が設けられるとともに、y軸に沿って延びるy軸駆動用ロッド72a、72bが設けられ、x軸駆動用ロッド71は、エクストルーダ12に対して備わるx軸駆動用ロッド31と平行であり、y軸駆動用ロッド72a、72bは、エクストルーダ12に対して備わるy軸駆動用ロッド32a、32bと平行である。そして、x軸駆動機構61は、フィラメントリール11をx軸駆動用ロッド71上で移動させ、y軸駆動機構62a、62bは、フィラメントリール11をy軸駆動用ロッド72a、72b上で移動させる。
【0048】
そして、x軸駆動機構61およびy軸駆動機構62a、62bは、コントロールユニット101からの駆動信号に応じて作動し、エクストルーダ12の平面方向の動きに追従するように移動し、フィラメントリール11をエクストルーダ12の真上の位置に配置する。
【0049】
以上に加え、本実施形態では、三次元印刷装置1の冷却部として、図3に示すように、造形中の造形物Mを冷却可能に配置された第1冷却ファンF11と、エクストルーダ12、特にドライブギア121a、121bを冷却可能に配置された第2冷却ファンF2とが設けられる。第1冷却ファンF11は、造形中の造形物Mに向けて冷却風を送風可能に方向付けられ、第2冷却ファンF2は、ドライブギア121a、121bに向けて冷却風を送風可能に方向付けられている。本実施形態では、第1および第2冷却ファンF11、F2のいずれも、冷却の対象に対して側方から冷却風を供給する。
【0050】
そして、本実施形態では特に、テーブル13に載置された造形中の造形物Mを局所的または集中的に冷却するように、第1冷却ファンF11の先端が先窄まりの形状を有する一方、ドライブギア121a、121bを全体的に冷却するように、第2冷却ファンF2が比較的に大きく開いた送風口を有する。
【0051】
図4は、第1冷却ファンF11およびその周辺要素の構成を(a)側方から見た状態および(b)上方から見た状態で夫々示す。
【0052】
本実施形態において、第1冷却ファンF11は、先端が先窄まりの形状を有することから、ノズル123、特に溶融後のフィラメントMが射出される吐出口周辺の部分を局所的に冷却したり、造形中の造形物Mを局所的に冷却したりすることが可能である。
【0053】
本実施形態において、ドライブギア121a、121bは、「搬送部」を構成し、ヒータ122は、「加熱部」を構成し、ノズル123は、「射出部」を構成する。さらに、第1冷却ファンF11は、「第1ファン」を構成し、第2冷却ファンF2は、「第2ファン」を構成する。
【0054】
本実施形態に係る三次元印刷装置1は、以上のように構成され、本実施形態により得られる作用および効果について、以下に説明する。
【0055】
本実施形態では、フィラメントリール11に対してx軸駆動機構61を設置するとともに、y軸駆動機構62a、62bを設置し、フィラメントリール11をエクストルーダ12の平面方向の移動に追従可能として、三次元印刷装置1の動作中、ドライブギア121a、121bにおけるフィラメントFの送出点p2を、フィラメントリール11におけるフィラメントFの引出点p1とヒータ122におけるフィラメントFの導入点p3とを結ぶ直線L上の位置に配置するようにした。これにより、造形前のフィラメントF、つまり、ドライブギア121a、121bによりフィラメントリール11から引き出されたフィラメントFは、フィラメントリール11におけるフィラメントFの引出点p1とエクストルーダ12のヒータ122におけるフィラメントFの導入点3との間で直線状に配置される。
【0056】
これにより、造形前のフィラメントFをエクストルーダ12のドライブギア121a、121bによりフィラメントリール11から真っ直ぐに引き出すとともに、ヒータ122に対して真っ直ぐに押し込むことが可能となる。よって、造形前のフィラメントFをフィラメントリール11からテーブル13に載置された造形中の造形物Mに供給する過程で、特にエクストルーダ12におけるフィラメントFの座屈を生じ難くして、軟質なフィラメントFによる場合であっても「つまり」の発生を抑制し、造形中の造形物Mに対してフィラメントFを円滑に供給することが可能となる。
【0057】
ここで、本実施形態では、三次元印刷装置1の動作中、造形前のフィラメントFが、フィラメントFの引出点p1とエクストルーダ12のノズル123におけるフィラメントFの射出点p4との間、つまり、フィラメントFがフィラメントリール11から引き出されてからエクストルーダ12のノズル123からテーブル13上の造形中の造形物Mに向けて射出されるまでの一連の過程全体に亘って直線状に配置されるので、フィラメントFの座屈をより生じ難くし、「つまり」の発生をより確実に抑制可能として、造形中の造形物Mに対し、フィラメントFをより円滑に供給することが可能となる。
【0058】
さらに、本実施形態では、エクストルーダ12において、ドライブギア121a、121bをヒータ122の真上に配置したことで、これらの部分の間でフィラメントFを直線状に配置することを容易にして、フィラメントFの座屈による「つまり」をより確実に抑制することが可能となる。
【0059】
さらに、本実施形態では、三次元印刷装置1の冷却部として、造形中の造形物Mを冷却の対象とする第1冷却ファンF11と、エクストルーダ12のうち、特にドライブギア121a、121bを冷却の対象とする第2冷却ファンF2とを設置したことで、造形中の造形物Mを冷却して、フィラメントFを速やかに硬化させながら、ドライブギア駆動用のモータから発せられる熱が搬送中のフィラメントFに及ぶのを抑制することが可能となる。
【0060】
さらに、ドライブギア駆動用のモータとしてステッピングモータを採用したことで、造形中にモータの振動がテーブル13に伝達されて、造形中の造形物Mに及び、造形後の目的物の品質に悪影響が及ぶのを抑制することが可能となる。
【0061】
さらに、ハウジングHに重量物Wを設置し、ハウジングHの重心の位置を造形中の造形物Mよりも低位に設定したことで、造形中におけるハウジングH自体の振動を抑制し、造形中の造形物Mに振動が及んで、造形後の目的物の品質が損なわれるのを抑制することが可能となる。
【0062】
さらに、フィラメントFとしてフィラメント径が3mmの軟質なフィラメントを採用したことで、比較的細密な形状ないし構造を有する目的物を造形可能としながら、座屈による「つまり」の発生を抑制することが可能となる。
【0063】
本実施形態では、造形中の造形物Mを冷却の対象とする第1冷却ファンF11の先端を先窄まりの形状とし、造形中の造形物Mの局所的な冷却の要請に対応可能とする場合を例に説明した。しかし、第1冷却ファンF11による冷却の態様は、これに限定されるものではなく、より広範な範囲に亘って均質な冷却を可能とする態様により具現することも可能である。
【0064】
図5は、本実施形態の変形例に係る三次元印刷装置1に備わる第1冷却ファンF12およびその周辺要素の構成を(a)側方から見た状態および(b)上方から見た状態で夫々示す。
【0065】
変形例では、第1冷却ファンF12は、エクストルーダ12のノズル123をその全周に亘って包囲する円環状の管路を有し、この管路は、内側面に所定の間隔を空けるかまたは等しい間隔で形成された貫通孔hを有する。貫通孔hは、冷却の対象とする部位、例えば、造形中の造形物Mに向けられ、造形中の造形物Mに対し、全方位から均等に冷却風を供給することが可能である。
【符号の説明】
【0066】
1…三次元印刷装置
11…フィラメントリール
12…エクストルーダ
121a、121b…ドライブギア
122…ヒータ
123…ノズル
123a…ノズル孔部
13…テーブル
21a、21b、62a、62b…y軸駆動機構
31、71…x軸駆動用ロッド
32a、32b、72a、72b…y軸駆動用ロッド
51…z軸駆動用ロッド
41…z軸駆動機構
61…x軸駆動機構
101…コントロールユニット
F…フィラメント
F11、F12…第1冷却ファン
F2…第2冷却ファン
H…ハウジング
M…造形中の造形物
W…重量物
p1…引出点
p2…送出点
p3…導入点
p4…射出点

図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2021-08-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
造形前のフィラメントを保持可能に構成されたフィラメント保持部と、
前記フィラメント保持部に対して鉛直方向の下方に配置され、前記フィラメント保持部から搬送されるフィラメントを溶融させるフィラメント溶融部と、
溶融後のフィラメントを造形後の形状に応じて堆積させる造形部と
前記フィラメント保持部、前記フィラメント溶融部および前記造形部を収容可能に構成されたハウジングと、を備え、
前記フィラメント溶融部は、
前記造形前のフィラメントを前記フィラメント保持部から引き出して、前記造形部に向けて送り出す搬送部と、
前記搬送部により送り出された前記造形前のフィラメントをその溶融温度以上の温度に加熱する加熱部と、
溶融後のフィラメントを前記造形部に向けて射出する射出部と
を備え、
前記搬送部におけるフィラメントの送出点を、前記フィラメント保持部におけるフィラメントの引出点と前記加熱部におけるフィラメントの導入点とを結ぶ直線上の位置に配置可能に構成され
前記ハウジングの下部または底面近傍に重量物が据え付けられ、前記ハウジングの重心の位置が造形中の造形物よりも低位となるように調整されていることを特徴とする三次元印刷装置。
【請求項2】
前記フィラメントの送出点および導入点を、前記フィラメントの引出点と前記射出部におけるフィラメントの射出点とを結ぶ直線上の位置に配置可能に構成されたことを特徴とする、
請求項1に記載の三次元印刷装置。
【請求項3】
前記搬送部は、前記加熱部の直上に配置されたことを特徴とする、
請求項1または2に記載の三次元印刷装置。
【請求項4】
造形中の造形物を冷却可能に配置された第1ファンと、
前記搬送部を冷却可能に配置された第2ファンと
をさらに備え、
前記搬送部は、駆動用のモータに接続されかつ前記造形前のフィラメントに圧接されるドライブギアを備え、前記造形前のフィラメントを、前記モータによる前記ドライブギアの回転に伴って前記造形部に向けて送り出し、
前記第2ファンは、前記ドライブギアに向けて冷却風を送風可能に方向付けられたことを特徴とする、
請求項1から3のいずれか一項に記載の三次元印刷装置。
【請求項5】
前記搬送部は、駆動用のモータに接続されかつ前記造形前のフィラメントに圧接されるドライブギアを備え、前記造形前のフィラメントを、前記モータによる前記ドライブギアの回転に伴って前記造形部に向けて送り出し、
前記モータは、ステッピングモータであることを特徴とする、
請求項1から4のいずれか一項に記載の三次元印刷装置。
【請求項6】
前記フィラメント保持部により保持されるフィラメントは、そのフィラメント径が3mm以上の軟質なフィラメントであることを特徴とする、
請求項1から5のいずれか一項に記載の三次元印刷装置。
【請求項7】
前記フィラメント溶融部は、前記フィラメントを射出するノズル部を有するエクストルーダにより構成され、前記ノズル部の先端に開設されたノズル孔部の開口径は0.8mm以上に形成されていることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の三次元印刷装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三次元印刷装置、特に軟質タイプのフィラメントの使用に適した三次元印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
三次元印刷装置による造形に用いられる材料は、フィラメントと呼ばれ、三次元印刷装置に専用の材料として、各種の熱可塑性樹脂により線状に形成される(特許文献1)。
【0003】
MEX方式の三次元印刷装置では、フィラメントが巻き付けられたリールが設置され、フィラメントがドライブギアによりリールから引き出されるとともに、下方に送り出され、バレルおよびノズル内部の細径の通路を経て、造形が実施されるステージ(テーブルまたはプラットフォームとも呼ばれる)に供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-130871号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、MEX方式の三次元印刷装置では、フィラメントがリールから引き出された後、バレルおよびノズルに押し込まれることから、フィラメントは、バレルおよびノズルを通過する過程で座屈による「つまり」を生じることがないように、所定の剛性を有するのが好ましいとされ、硬質なものが採用されるのが一般的であった。
【0006】
ここで、比較的細密な形状ないし構造の造形物を形成する場合は、造形の精度を向上させるうえで硬質なフィラメントでは必ずしも適切ではなく、軟質なものが必要となる場合がある。しかし、軟質なフィラメントを使用する場合は、硬質なフィラメントを使用する場合と比較して座屈による「つまり」が生じ易い。つまり、三次元印刷による造形精度の向上と座屈による「つまり」の抑制とは、互いに相反するというのがこれまでの認識であった。
【0007】
このような実情に鑑み、本発明は、軟質なフィラメントによる場合であってもステージに向けてフィラメントを円滑に供給することのできる三次元印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一形態に係る三次元印刷装置は、造形前のフィラメントを保持可能に構成されたフィラメント保持部と、前記フィラメント保持部に対して鉛直方向の下方に配置され、前記フィラメント保持部から搬送されるフィラメントを溶融させるフィラメント溶融部と、溶融後のフィラメントを造形後の形状に応じて堆積させる造形部と、前記フィラメント保持部、前記フィラメント溶融部および前記造形部を収容可能に構成されたハウジングと、を備え、前記フィラメント溶融部は、前記造形前のフィラメントを前記フィラメント保持部から引き出して、前記造形部に向けて送り出す搬送部と、前記搬送部により送り出された前記造形前のフィラメントをその溶融温度以上の温度に加熱する加熱部と、
溶融後のフィラメントを前記造形部に向けて射出する射出部とを備え、前記搬送部におけるフィラメントの送出点を、前記フィラメント保持部におけるフィラメントの引出点と前記加熱部におけるフィラメントの導入点とを結ぶ直線上の位置に配置可能に構成され、前記ハウジングの下部または底面近傍に重量物が据え付けられ、前記ハウジングの重心の位置が造形中の造形物よりも低位となるように調整されている
【0009】
他の形態では、フィラメントの送出点および導入点が、フィラメントの引出点と射出部におけるフィラメントの射出点とを結ぶ直線上の位置に配置可能に構成されることを特徴とする。
【0010】
更に別の形態では、搬送部が、加熱部の直上に配置されることを特徴とする。
【0011】
更に別の形態では、造形中の造形物を冷却可能に配置された第1ファンと、搬送部を冷却可能に配置された第2ファンとをさらに備え、搬送部が、駆動用のモータに接続されかつ造形前のフィラメントに圧接されるドライブギアを備え、造形前のフィラメントを、モータによるドライブギアの回転に伴って造形部に向けて送り出し、第2ファンが、ドライブギアに向けて冷却風を送風可能に方向付けられることを特徴とする。
【0012】
更に別の形態では、搬送部が、駆動用のモータに接続されかつ造形前のフィラメントに圧接されるドライブギアを備え、造形前のフィラメントを、モータによるドライブギアの回転に伴って造形部に向けて送り出し、モータが、ステッピングモータであることを特徴とする。
【0013】
更に別の形態では、更に別の形態では、フィラメント保持部により保持されるフィラメントが、そのフィラメント径が3mm以上の軟質なフィラメントであることを特徴とする。この場合、フィラメント径は、3mm以上であって20mm以下であることが望ましい。
【0014】
更に別の形態によれば、前記フィラメント溶融部は、前記フィラメントを射出するノズル部を有するエクストルーダにより構成され、前記ノズル部の先端に開設されたノズル孔部の開口径は0.8mm以上に形成されていることを特徴とする。
この場合、ノズル孔部の開口径は、0.8mm以上5mm以下の範囲で形成されることが望ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の一形態によれば、造形前のフィラメントが、造形中、フィラメント保持部におけるフィラメントの引出点とフィラメント溶融部の加熱部におけるフィラメントの導入点との間で直線状に配置される。
【0016】
これにより、造形前のフィラメントがフィラメント溶融部の搬送部によりフィラメント保持部から真っ直ぐに引き出されるとともに、加熱部に対して真っ直ぐに押し込まれる。よって、造形前のフィラメントを造形部に供給する過程で、特にフィラメント溶融部におけるフィラメントの座屈を生じ難くして、軟質なフィラメントによる場合であっても「つまり」の発生を抑制し、造形部に対してフィラメントを円滑に供給することが可能となる。
【0017】
そして、ハウジングの重心の位置を造形中の造形物よりも低位に設定したことで、造形中におけるハウジング自体の振動を抑制し、造形中の造形物に振動が及んで、造形後の目的物の品質が損なわれるのを抑制することが可能となる。
【0018】
他の形態によれば、造形前のフィラメントが、造形中、フィラメントの引出点とフィラメント溶融部の射出部におけるフィラメントの射出点との間、即ち、フィラメントがフィラメント保持部から引き出されてからフィラメント溶融部の射出部から造形部に向けて射出されるまでの一連の過程全体に亘って直線状に配置されるので、フィラメントの座屈をより生じ難くし、「つまり」の発生をより確実に抑制可能として、造形部に対し、フィラメントをより円滑に供給することが可能となる。
【0019】
更に別の形態によれば、フィラメント溶融部において、搬送部を加熱部の直上に配置したことで、これらの部分の間でフィラメントを直線状に配置することを容易にして、その結果、加熱部による熱が上方へも及ぶことにより供給されるフィラメントが軟化することによるフィラメントの座屈を原因とする「つまり」を、より確実に抑制することが可能となる。
【0020】
更に別の形態によれば、冷却部として、造形中の造形物を対象とする第1ファンと、搬送部のうち、特にドライブギアを対象とする第2ファンとを設置したことで、造形中の造形物を冷却して、フィラメントを速やかに硬化させながら、加熱部及び駆動用のモータから発せられる熱が搬送中のフィラメントに及び、フィラメントが軟化する事態を抑制することが可能となる。
【0021】
更に別の形態によれば、ドライブギア駆動用のモータとしてステッピングモータを採用したことで、造形中にモータの振動が造形部に伝達されて、造形中の造形物に及び、造形後の目的物の品質に悪影響が及ぶのを抑制することが可能となる。
【0022】
更に別の形態によれば、フィラメントとしてフィラメント径が3mm以上の軟質なフィラメントを採用したことで、比較的細密な形状ないし構造を有する目的物を造形可能としながら、座屈による「つまり」の発生を抑制することが可能となる。
【0023】
更に別の形態によれば、前記フィラメント溶融部は、前記フィラメントを射出するノズル部を有するエクストルーダにより構成され、前記ノズル部の先端に開設されたノズル孔部の開口径は0.8mm以上に形成されていることから、エクストルーダにより溶融されたフィラメントはノズル孔部を通過する際に、座屈が発生しない状態で、かつ円滑に射出されることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る三次元印刷装置の全体的な構成を側方から見た状態で示す模式図である。
図2図2は、同上実施形態に係る三次元印刷装置の全体的な構成を上方から見た状態で示す模式図である。
図3図3は、同上実施形態に係る三次元印刷装置の要部(エクストルーダ)の構成を拡大して示す断面図である。
図4図4は、同上実施形態に係る三次元印刷装置のエクストルーダに備わるノズル冷却用のファンの構成を示す概略図である。
図5図5は、同上実施形態の変形例に係る三次元印刷装置のエクストルーダに備わるノズル冷却用のファンの構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
【0026】
図1および2は、本発明の一実施形態に係る三次元印刷装置1の全体的な構成を示す模式図であり、図1は、三次元印刷装置1を側方から見た状態で、図2は、三次元印刷装置1を上方から見た状態で夫々示す。
【0027】
本実施形態に係る三次元印刷装置1は、フィラメントリール11、エクストルーダ12およびテーブル13を、主な構成要素として備える。フィラメントリール11、エクストルーダ12およびテーブル13は、ハウジングないしケースHに収容され、ハウジングHの内部において、上方からこの順で配置されている。図1および2は、これらフィラメントリール11等の装置要素とハウジングHとの相対的な位置関係を簡潔に示すため、ハウジングHの外形を二点鎖線により模式的に示す。
【0028】
フィラメントリール11は、造形前のフィラメントFを保持するものである。本実施形態において、フィラメントFは、断面が略円形をなす細線状に形成され、フィラメントリール11に巻き付けられた状態で、三次元印刷装置1に装填される。フィラメントFとして、軟質なフィラメントを採用することが可能であり、フィラメントFの直径(以下「フィラメント径」という場合がある)は、例えば、本実施の形態においては直径3mmに形成されている。なお、直径3mmに限定されることはなく、フィラメント径は3mm以上、20mm以下の範囲の径であればよい。
この場合、
【0029】
エクストルーダ12は、フィラメントリール11に対して鉛直方向の下方に配置され、フィラメントリール11からフィラメントFを引き出すとともに、フィラメントFをその溶融温度以上の温度に加熱して、溶融させる。本実施形態において、エクストルーダ12は、ヘッド一体型のエクストルーダとして構成され、溶融後のフィラメントFを射出するノズル123を備える。エクストルーダ12とヘッドとは、図3に示すように一体に構成するばかりでなく、別体に構成することも可能であり、別体のものでは、例えば、ヒータ122およびノズル123が後に述べるドライブギア121a、121bから離間して配置される。
【0030】
テーブル13は、造形中の造形物Mを載置し、溶融後のフィラメントF、本実施形態では、ヒータ122を介してエクストルーダ12のノズル123から射出されたフィラメントFを、造形後のモデル(つまり、造形物)の形状に応じて堆積させる。
本実施の形態にあっては、図3及び図4に示すフィラメントFを射出するノズル123の先端部に開設されたノズル孔部123aの開口径は、0.8mmに形成されている。
なお、本実施の形態にあっては、ノズル孔部の開口径は0.8mmに形成されているが、0.8mm以上に形成され、フィラメントFが射出時にスムーズに流れ、座屈を起こさない程度の径として構成されればよい。好ましくは、0.8mm以上、5mm以下であることが望ましい。
【0031】
本実施形態において、エクストルーダ12は、平面方向の2軸、つまり、図1の紙面に向かって左右方向に延びるx軸および奥行方向に延びるy軸に沿って移動可能に構成され、テーブル13は、鉛直方向の1軸、つまり、図1の紙面において上下方向に延びるz軸に沿って移動可能に構成されている。
【0032】
エクストルーダ12の移動のうち、x軸に沿った移動は、x軸駆動機構(図示せず)により達成され、y軸に沿った移動は、y軸駆動機構21a、21bにより達成される。具体的には、ハウジングHの内部をx軸に沿って延びるx軸駆動用ロッド31が設けられるとともに、y軸に沿って延びるy軸駆動用ロッド32a、32bが設けられ、図示しないx軸駆動機構は、エクストルーダ12をx軸駆動用ロッド31上で移動させ、y軸駆動機構21a、21bは、エクストルーダ12をy軸駆動用ロッド32a、32b上で移動させる。x軸駆動機構およびy軸駆動機構21a、21bは、例えば、電動式のモータを備え、モータの回転運動をラックおよびピニオン機構等、適宜の動力変換装置を介してエクストルーダ12の直線運動に変換する。
【0033】
他方で、テーブル13のz軸に沿った移動は、z軸駆動機構41により達成される。具体的には、ハウジングHの内部をz軸に沿って延びるz軸駆動用ロッド51が設けられ、z軸駆動用ロッド51の一端、つまり、上端は、テーブル13に取り付けられ、他端、つまり、下端は、z軸駆動機構41に取り付けられている。z軸駆動機構41は、例えば、電動式のモータを備え、モータの回転運動を適宜の動力変換装置によりテーブル13の直線運動に変換する。
【0034】
x軸駆動機構(図示せず)、y軸駆動機構21a、21bおよびz軸駆動機構41の動作は、コントロールユニット101により制御される(図2)。コントロールユニット101は、電子制御ユニットとして構成することが可能であり、目標とする造形物に関する三次元情報を入力し、この三次元情報に応じた駆動信号を、対応する駆動機構に出力する。コントロールユニット101は、専用の電子デバイスとして具現するばかりでなく、より汎用性の高い電子デバイスとして、例えば、パーソナルコンピュータにより具現することも可能である。
【0035】
これら3軸の駆動機構21a、21b、41により、エクストルーダ12、特にノズルの先端を、テーブル13およびこれに載置された造形中の造形物Mに対してx、yおよびz軸に沿った三方向に相対的に移動させ、三次元の造形を実現することが可能である。
【0036】
以上に加え、三次元印刷装置1は、ハウジングHの下部または底面近傍に重量物Wが据え付けられ、ハウジングHの重心の位置(つまり、高さ)Hgが造形中の造形物Mよりも低位となるように調整されている。
【0037】
本実施形態において、フィラメントリール11は、「フィラメント保持部」を構成し、エクストルーダ12は、「フィラメント溶融部」を構成し、テーブル13は、「造形部」を構成する。
【0038】
図3は、三次元印刷装置1の要部、具体的には、エクストルーダ12の構成を断面により拡大して示す。
【0039】
本実施形態において、エクストルーダ12は、ドライブギア121a、121bと、ヒータ122と、ノズル123とを備える。
【0040】
ドライブギア121a、121bは、フィラメントFをその側面ないし周面に対して垂直な方向における両側から挟み込むとともに、フィラメントFに圧接され、さらに、ドライブギア121a、121bの外周に形成された歯または摩擦面によりフィラメントFを係止することで、造形前のフィラメントFを回転に伴ってフィラメントリール11から引き出し、造形部であるテーブル13に向けて送り出す。本実施形態では、ドライブギア121a、121bの駆動源として、電動式のモータACT1、ACT2が設けられ、フィラメントFを、モータACT1、ACT2によるドライブギア121a、121bの回転に伴ってフィラメントリール11から引き出し、テーブル13に向けて送り出す。モータACT1、ACT2に採用可能なものとして、ステッピングモータを例示することが可能である。
【0041】
ヒータ122は、ドライブギア121a、121bにより送り出されたフィラメントFを受容し、その溶融温度Tmlt以上の温度に加熱する。本実施形態において、ヒータ122は、ドライブギア121a、121bに対してできる限り近付けて配置され、換言すれば、ドライブギア121a、121bは、ヒータ122の直上に配置される。
【0042】
ノズル123は、ヒータ122を介した溶融後のフィラメントFを、テーブル13に載置された造形中の造形物Mに向けて射出する。エクストルーダ12の動作によりノズル123がx軸およびy軸の2軸に沿って移動するとともに、テーブル13がz軸に沿って移動することで、ノズル123の先端を、造形中の造形物Mに対してx、yおよびz軸に沿った三方向に相対的に移動させ、三次元の造形を実現することが可能である。
【0043】
ここで、本実施形態では、三次元印刷装置1の動作中、換言すれば、三次元印刷装置1による造形物の作成中、ドライブギア121a、121bにおけるフィラメントFの送出点p2が、フィラメントリール11におけるフィラメントFの引出点p1とヒータ122におけるフィラメントFの導入点p3とを結ぶ直線L上の位置に配置される。
本実施形態では、ヒータ122に対するフィラメントFの導入をより円滑なものとするため、ヒータ122の入口側にバレル122aが取り付けられている。そこで、バレル122aとヒータ(ないしヒータ本体)122とで外形上、ヒータが構成されるものとし、バレル122aの入口端を、ヒータ122におけるフィラメントFの導入点p3とする。バレル122aを備えていない場合は、ヒータ122自体の入口端を、導入点p3とすることが可能である。
そして、フィラメントリール11におけるフィラメントFの引出点p1とは、フィラメントFがフィラメントリール11における巻回を解かれる点、換言すれば、フィラメントFの延びる向きが鉛直下向きの方向に変わる点をいい、ドライブギア121a、121bにおけるフィラメントFの送出点p2とは、一対のドライブギア121a、121bの外周が互いに最も近接する位置をフィラメントFの送り方向に通過し、ドライブギア121a、121bによりフィラメントFにかけられる力が圧縮方向に変わる点をいう。
【0044】
これに加え、本実施形態では、ドライブギア121a、121bにおけるフィラメントFの送出点p2およびヒータ122におけるフィラメントFの導入点p3が、フィラメントリール11におけるフィラメントの引出点p1とノズル123におけるフィラメントFの射出点p4とを結ぶ直線上の位置に配置される。本実施形態において、フィラメントFの射出点p4とは、ノズル123の吐出口近傍の点、つまり、出口端をいう。
【0045】
そして、三次元印刷装置1の動作中、フィラメントFの引出点p1、送出点p2、導入点p3および射出点p4の上記関係を配置可能とするため、本実施形態では、フィラメントリール11についてもエクストルーダ12と同様の平面方向の駆動機構を採用する。
【0046】
具体的には、フィラメントリール11は、エクストルーダ12と同様に、平面方向の2軸、つまり、x軸およびy軸に沿って移動可能に構成される。フィラメントリール11のx軸に沿った移動は、x軸駆動機構61により達成され、y軸に沿った移動は、y軸駆動機構62a、62bにより達成される。ハウジングHの内部をx軸に沿って延びるx軸駆動用ロッド71が設けられるとともに、y軸に沿って延びるy軸駆動用ロッド72a、72bが設けられ、x軸駆動用ロッド71は、エクストルーダ12に対して備わるx軸駆動用ロッド31と平行であり、y軸駆動用ロッド72a、72bは、エクストルーダ12に対して備わるy軸駆動用ロッド32a、32bと平行である。そして、x軸駆動機構61は、フィラメントリール11をx軸駆動用ロッド71上で移動させ、y軸駆動機構62a、62bは、フィラメントリール11をy軸駆動用ロッド72a、72b上で移動させる。
【0047】
そして、x軸駆動機構61およびy軸駆動機構62a、62bは、コントロールユニット101からの駆動信号に応じて作動し、エクストルーダ12の平面方向の動きに追従するように移動し、フィラメントリール11をエクストルーダ12の真上の位置に配置する。
【0048】
以上に加え、本実施形態では、三次元印刷装置1の冷却部として、図3に示すように、造形中の造形物Mを冷却可能に配置された第1冷却ファンF11と、エクストルーダ12、特にドライブギア121a、121bを冷却可能に配置された第2冷却ファンF2とが設けられる。第1冷却ファンF11は、造形中の造形物Mに向けて冷却風を送風可能に方向付けられ、第2冷却ファンF2は、ドライブギア121a、121bに向けて冷却風を送風可能に方向付けられている。本実施形態では、第1および第2冷却ファンF11、F2のいずれも、冷却の対象に対して側方から冷却風を供給する。
【0049】
そして、本実施形態では特に、テーブル13に載置された造形中の造形物Mを局所的または集中的に冷却するように、第1冷却ファンF11の先端が先窄まりの形状を有する一方、ドライブギア121a、121bを全体的に冷却するように、第2冷却ファンF2が比較的に大きく開いた送風口を有する。
【0050】
図4は、第1冷却ファンF11およびその周辺要素の構成を(a)側方から見た状態および(b)上方から見た状態で夫々示す。
【0051】
本実施形態において、第1冷却ファンF11は、先端が先窄まりの形状を有することから、ノズル123、特に溶融後のフィラメントMが射出される吐出口周辺の部分を局所的に冷却したり、造形中の造形物Mを局所的に冷却したりすることが可能である。
【0052】
本実施形態において、ドライブギア121a、121bは、「搬送部」を構成し、ヒータ122は、「加熱部」を構成し、ノズル123は、「射出部」を構成する。さらに、第1冷却ファンF11は、「第1ファン」を構成し、第2冷却ファンF2は、「第2ファン」を構成する。
【0053】
本実施形態に係る三次元印刷装置1は、以上のように構成され、本実施形態により得られる作用および効果について、以下に説明する。
【0054】
本実施形態では、フィラメントリール11に対してx軸駆動機構61を設置するとともに、y軸駆動機構62a、62bを設置し、フィラメントリール11をエクストルーダ12の平面方向の移動に追従可能として、三次元印刷装置1の動作中、ドライブギア121a、121bにおけるフィラメントFの送出点p2を、フィラメントリール11におけるフィラメントFの引出点p1とヒータ122におけるフィラメントFの導入点p3とを結ぶ直線L上の位置に配置するようにした。これにより、造形前のフィラメントF、つまり、ドライブギア121a、121bによりフィラメントリール11から引き出されたフィラメントFは、フィラメントリール11におけるフィラメントFの引出点p1とエクストルーダ12のヒータ122におけるフィラメントFの導入点3との間で直線状に配置される。
【0055】
これにより、造形前のフィラメントFをエクストルーダ12のドライブギア121a、121bによりフィラメントリール11から真っ直ぐに引き出すとともに、ヒータ122に対して真っ直ぐに押し込むことが可能となる。よって、造形前のフィラメントFをフィラメントリール11からテーブル13に載置された造形中の造形物Mに供給する過程で、特にエクストルーダ12におけるフィラメントFの座屈を生じ難くして、軟質なフィラメントFによる場合であっても「つまり」の発生を抑制し、造形中の造形物Mに対してフィラメントFを円滑に供給することが可能となる。
【0056】
ここで、本実施形態では、三次元印刷装置1の動作中、造形前のフィラメントFが、フィラメントFの引出点p1とエクストルーダ12のノズル123におけるフィラメントFの射出点p4との間、つまり、フィラメントFがフィラメントリール11から引き出されてからエクストルーダ12のノズル123からテーブル13上の造形中の造形物Mに向けて射出されるまでの一連の過程全体に亘って直線状に配置されるので、フィラメントFの座屈をより生じ難くし、「つまり」の発生をより確実に抑制可能として、造形中の造形物Mに対し、フィラメントFをより円滑に供給することが可能となる。
【0057】
さらに、本実施形態では、エクストルーダ12において、ドライブギア121a、121bをヒータ122の真上に配置したことで、これらの部分の間でフィラメントFを直線状に配置することを容易にして、フィラメントFの座屈による「つまり」をより確実に抑制することが可能となる。
【0058】
さらに、本実施形態では、三次元印刷装置1の冷却部として、造形中の造形物Mを冷却の対象とする第1冷却ファンF11と、エクストルーダ12のうち、特にドライブギア121a、121bを冷却の対象とする第2冷却ファンF2とを設置したことで、造形中の造形物Mを冷却して、フィラメントFを速やかに硬化させながら、ドライブギア駆動用のモータから発せられる熱が搬送中のフィラメントFに及ぶのを抑制することが可能となる。
【0059】
さらに、ドライブギア駆動用のモータとしてステッピングモータを採用したことで、造形中にモータの振動がテーブル13に伝達されて、造形中の造形物Mに及び、造形後の目的物の品質に悪影響が及ぶのを抑制することが可能となる。
【0060】
さらに、ハウジングHに重量物Wを設置し、ハウジングHの重心の位置を造形中の造形物Mよりも低位に設定したことで、造形中におけるハウジングH自体の振動を抑制し、造形中の造形物Mに振動が及んで、造形後の目的物の品質が損なわれるのを抑制することが可能となる。
【0061】
さらに、フィラメントFとしてフィラメント径が3mmの軟質なフィラメントを採用したことで、比較的細密な形状ないし構造を有する目的物を造形可能としながら、座屈による「つまり」の発生を抑制することが可能となる。
【0062】
本実施形態では、造形中の造形物Mを冷却の対象とする第1冷却ファンF11の先端を先窄まりの形状とし、造形中の造形物Mの局所的な冷却の要請に対応可能とする場合を例に説明した。しかし、第1冷却ファンF11による冷却の態様は、これに限定されるものではなく、より広範な範囲に亘って均質な冷却を可能とする態様により具現することも可能である。
【0063】
図5は、本実施形態の変形例に係る三次元印刷装置1に備わる第1冷却ファンF12およびその周辺要素の構成を(a)側方から見た状態および(b)上方から見た状態で夫々示す。
【0064】
変形例では、第1冷却ファンF12は、エクストルーダ12のノズル123をその全周に亘って包囲する円環状の管路を有し、この管路は、内側面に所定の間隔を空けるかまたは等しい間隔で形成された貫通孔hを有する。貫通孔hは、冷却の対象とする部位、例えば、造形中の造形物Mに向けられ、造形中の造形物Mに対し、全方位から均等に冷却風を供給することが可能である。
【符号の説明】
【0065】
1…三次元印刷装置
11…フィラメントリール
12…エクストルーダ
121a、121b…ドライブギア
122…ヒータ
123…ノズル
123a…ノズル孔部
13…テーブル
21a、21b、62a、62b…y軸駆動機構
31、71…x軸駆動用ロッド
32a、32b、72a、72b…y軸駆動用ロッド
51…z軸駆動用ロッド
41…z軸駆動機構
61…x軸駆動機構
101…コントロールユニット
F…フィラメント
F11、F12…第1冷却ファン
F2…第2冷却ファン
H…ハウジング
M…造形中の造形物
W…重量物
p1…引出点
p2…送出点
p3…導入点
p4…射出点