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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022097251
(43)【公開日】2022-06-30
(54)【発明の名称】電気刺激治療器
(51)【国際特許分類】
   A61N 1/36 20060101AFI20220623BHJP
【FI】
A61N1/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020210723
(22)【出願日】2020-12-18
(71)【出願人】
【識別番号】591016334
【氏名又は名称】大塚テクノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】特許業務法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】増田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】沖 慎也
(72)【発明者】
【氏名】隔山 大貴
(72)【発明者】
【氏名】久本 隆
【テーマコード(参考)】
4C053
【Fターム(参考)】
4C053BB03
4C053JJ03
4C053JJ04
4C053JJ18
4C053JJ25
(57)【要約】      (修正有)
【課題】膀胱の弛緩収縮による筋電信号を精度よく検出することができる電気刺激治療器の提供。
【解決手段】被治療者の仙骨の背面の皮膚に配置され、前記仙骨または前記仙骨近傍を通る神経に電気刺激を与える一対の刺激電極と、被治療者の下腹部の膀胱付近に配置され、被治療者の膀胱周辺の筋電信号を検出する検出電極と、一対の刺激電極および検出電極に電気的に接続された制御部とを含み、制御部は、一対の刺激電極に刺激電圧を間欠的に印加(S1)し、間欠的な刺激電圧の印加によって発生する膀胱の弛緩収縮によって誘発する膀胱周辺の筋電信号の変化を、検出電極を通して検出する。
【選択図】図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被治療者の仙骨の背面の皮膚に配置され、前記仙骨または前記仙骨近傍を通る神経に電気刺激を与える一対の刺激電極と、
被治療者の下腹部の膀胱付近に配置され、被治療者の膀胱周辺の筋電信号を検出する検出電極と、
前記一対の刺激電極および前記検出電極に電気的に接続された制御部とを含み、
前記制御部は、前記一対の刺激電極に刺激電圧を間欠的に印加し、当該間欠的な刺激電圧の印加によって発生する膀胱の弛緩収縮によって誘発する膀胱周辺の筋電信号の変化を、前記検出電極を通して検出する、電気刺激治療器。
【請求項2】
前記制御部は、さらに、被治療者の膀胱周辺の筋電信号であっても前記一対の刺激電極による間欠的な刺激電圧に同期していない筋電信号を、ノイズ信号として検出対象から除外する、請求項1に記載の電気刺激治療器。
【請求項3】
前記検出電極は、基準電極と、記録電極とを含み、
前記制御部は、前記基準電極の電位を基準電位として前記記録電極に電圧を印加し、前記基準電極と前記記録電極との間の体表面のインピーダンスの変化を測定することによって、被治療者の膀胱周辺の筋電信号の変化を検出し、
前記基準電極および前記記録電極で検出されたインピーダンス変化から前記ノイズ信号を除外して前記制御部に出力する差動アンプをさらに含む、請求項2に記載の電気刺激治療器。
【請求項4】
被治療者の仙骨の背面の皮膚に配置され、前記仙骨または前記仙骨近傍を通る神経に電気刺激を与える一対の刺激電極と、
被治療者の下腹部の膀胱付近に配置され、被治療者の膀胱へ向けて超音波を放射し、当該超音波の反射波に基づいて被治療者の膀胱の動きを検出する超音波処理部と、
前記一対の刺激電極および前記超音波処理部に電気的に接続された制御部とを含み、
前記制御部は、前記一対の刺激電極に刺激電圧を間欠的に印加し、当該間欠的な刺激電圧の印加によって発生する膀胱の弛緩収縮による膀胱の動きの変化を、前記超音波処理部を通して検出する、電気刺激治療器。
【請求項5】
前記制御部は、さらに、前記超音波処理部で検出された超音波信号であっても前記一対の刺激電極による間欠的な刺激電圧に同期していない超音波信号を、ノイズ信号として検出対象から除外する、請求項4に記載の電気刺激治療器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気刺激治療器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電気刺激療法に使用される機器の一例として、排尿障害を治療するための機器が提案されている。
例えば、特許文献1は、一対の印加電極と、検出電極とを含む、排尿障害治療器を開示している。この排尿障害治療器では、一対の印加電極による刺激パルスと足趾の検出パルスとを比較し、仙骨または仙骨近傍を通る神経が刺激パルスによって適切に刺激されているかを判別している。検出パルスは、仙骨または仙骨近傍を通る神経に、坐骨神経を介してつながり、足趾の先まで延びる脛骨神経および/または腓骨神経の反応によって発生するものである。
【0003】
また、例えば、特許文献2は、筋電位を検出する表面電極と、表面電極で検出された筋電位信号を増幅する増幅器と、増幅された波形よりモニタすべき筋電位成分を抽出するバンドパスフィルタと、バンドパスフィルタを経た成分を整流する整流器と、整流器に設けたレベル設定器と、整流された信号を一定のサンプリング時間の間積分する積分器と、積分された信号をデジタル信号に変換するAD変換器と、変換されたデジタル信号を計数するカウンタと、計数されたデジタル信号を保持し表示器を駆動するラッチ/ドライバと、積分器、AD変換器、カウンタ、ラッチ/ドライバ、表示器の動作タイミングを制御する制御器とを含む、筋電位モニタ装置を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6488498号公報
【特許文献2】実開昭58-10704号公報
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一実施形態に係る電気刺激治療器は、被治療者の仙骨の背面の皮膚に配置され、前記仙骨または前記仙骨近傍を通る神経に電気刺激を与える一対の刺激電極と、被治療者の下腹部の膀胱付近に配置され、被治療者の膀胱周辺の筋電信号を検出する検出電極と、前記一対の刺激電極および前記検出電極に電気的に接続された制御部とを含み、前記制御部は、前記一対の刺激電極に刺激電圧を間欠的に印加し、当該間欠的な刺激電圧の印加によって発生する膀胱の弛緩収縮によって誘発する膀胱周辺の筋電信号の変化を、前記検出電極を通して検出する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、排尿の神経支配を説明するための人体の側断面図である。
図2図2は、排尿の神経支配を説明するための人体の背面図である。
図3A図3Aは、排尿のメカニズムを説明するための図である。
図3B図3Bは、排尿のメカニズムを説明するための図である。
図4図4は、本発明の一実施形態に係る電気刺激治療器の概略図(第1形態)である。
図5図5は、本発明の一実施形態に係る電気刺激治療器の概略図(第2形態)である。
図6図6は、前記電気刺激治療器の電極パッドの正面図である。
図7図7は、前記電気刺激治療器の電極パッドの背面図である。
図8図8は、前記電気刺激治療器の電極パッドの断面図であって、図6のVIII-VIII断面を示している。
図9図9は、図4の電極パッドおよび検出電極の取り付け状態を示す図である。
図10図10は、図4の電気刺激治療器の電気的構成を示すブロック図である。
図11図11は、図10の記憶部に格納されているプログラムの一例を示す図である。
図12図12は、膀胱の弛緩収縮検出のフローチャートである。
図13図13は、膀胱の弛緩収縮検出の確認実験の例を説明するための図である。
図14図14は、膀胱の弛緩収縮検出の確認実験の例を説明するための図である。
図15図15は、膀胱の弛緩収縮検出の確認実験の例を説明するための図である。
図16図16は、本発明の他の実施形態に係る電気刺激治療器の概略図である。
図17図17は、図16の電極パッドおよび超音波プローブの取り付け状態を示す図である。
図18図18は、図16の電気刺激治療器の電気的構成を示すブロック図である。
図19図19は、図18の記憶部に格納されているプログラムの一例を示す図である。
図20図20は、膀胱の弛緩収縮検出のフローチャートである。
図21図21は、本発明のさらに他の実施形態に係る電気刺激治療器および畜尿量監視機器の概略図である。
図22図22は、図21の電気刺激治療器および畜尿量監視機器の電気的構成を示すブロック図である。
図23図23は、電気刺激信号に同期する膀胱弛緩収縮を反映した信号が検出された典型的な例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
<本発明の実施形態>
まず、本発明の実施形態を列記して説明する。
本発明の一実施形態に係る電気刺激治療器は、被治療者の仙骨の背面の皮膚に配置され、前記仙骨または前記仙骨近傍を通る神経に電気刺激を与える一対の刺激電極と、被治療者の下腹部の膀胱付近に配置され、被治療者の膀胱周辺の筋電信号を検出する検出電極と、前記一対の刺激電極および前記検出電極に電気的に接続された制御部とを含み、前記制御部は、前記一対の刺激電極に刺激電圧を間欠的に印加し、当該間欠的な刺激電圧の印加によって発生する膀胱の弛緩収縮によって誘発する膀胱周辺の筋電信号の変化を、前記検出電極を通して検出する。
【0008】
この構成によれば、膀胱周辺の筋電信号の変化を検出することによって、刺激電極による電気刺激によって膀胱が弛緩収縮しているかどうかを確認することができる。これにより、一対の刺激電極が適切な位置に取り付けられ、電気刺激治療が適切に行われているかどうかを判別できる。
本発明の一実施形態に係る電気刺激治療器では、前記制御部は、さらに、被治療者の膀胱周辺の筋電信号であっても前記一対の刺激電極による間欠的な刺激電圧に同期していない筋電信号を、ノイズ信号として検出対象から除外してもよい。
【0009】
この構成によれば、膀胱の弛緩収縮による筋電信号を精度よく検出することができる。
本発明の一実施形態に係る電気刺激治療器では、前記検出電極は、基準電極と、記録電極とを含み、前記制御部は、前記基準電極の電位を基準電位として前記記録電極に電圧を印加し、前記基準電極と前記記録電極との間の体表面のインピーダンスの変化を測定することによって、被治療者の膀胱周辺の筋電信号の変化を検出し、前記基準電極および前記記録電極で検出されたインピーダンス変化から前記ノイズ信号を除外して前記制御部に出力する差動アンプをさらに含んでいてもよい。
【0010】
本発明の他の実施形態に係る電気刺激治療器は、被治療者の仙骨の背面の皮膚に配置され、前記仙骨または前記仙骨近傍を通る神経に電気刺激を与える一対の刺激電極と、被治療者の下腹部の膀胱付近に配置され、被治療者の膀胱へ向けて超音波を放射し、当該超音波の反射波に基づいて被治療者の膀胱の動きを検出する超音波処理部と、前記一対の刺激電極および前記超音波処理部に電気的に接続された制御部とを含み、前記制御部は、前記一対の刺激電極に刺激電圧を間欠的に印加し、当該間欠的な刺激電圧の印加によって発生する膀胱の弛緩収縮による膀胱の動きの変化を、前記超音波処理部を通して検出する。
【0011】
この構成によれば、膀胱の動きの変化を超音波信号で検出することによって、刺激電極による電気刺激によって膀胱が弛緩収縮しているかどうかを確認することができる。これにより、一対の刺激電極が適切な位置に取り付けられ、電気刺激治療が適切に行われているかどうかを判別できる。
本発明の他の実施形態に係る電気刺激治療器では、前記制御部は、さらに、前記超音波処理部で検出された超音波信号であっても前記一対の刺激電極による間欠的な刺激電圧に同期していない超音波信号を、ノイズ信号として検出対象から除外してもよい。
この構成によれば、膀胱の弛緩収縮による筋電信号を精度よく検出することができる。
【0012】
<本発明の実施形態の詳細な説明>
次に、本発明の実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
[人体における排尿の神経支配の説明]
図1は、排尿の神経支配を説明するための人体1の側断面図である。図2は、排尿の神経支配を説明するための人体1の背面図である。図3Aおよび図3Bは、排尿のメカニズムを説明するための図である。図1図3A,Bでは、人体1の各部位のうち、本発明の一実施形態に係る電気刺激治療器24,31による治療の説明に必要な部位のみを示し、その他の部位については説明を省略する。
【0013】
人体1は、腰椎2、仙骨3等を含む脊椎4を備えている。仙骨3は、略逆三角形の形状を有しており、通常、左右対称に4つずつ、上から順に第1仙骨孔5、第2仙骨孔6、第3仙骨孔7および第4仙骨孔8を有している。
また、人体1は、蓄排尿に関わる部位(器官、筋肉)として、膀胱9と、内尿道括約筋10と、外尿道括約筋11とを備えている。人体1の蓄排尿は、これらの部位9~11が神経に制御されることによって行われる。
【0014】
蓄排尿に寄与する主な神経として、人体1には、下腹神経(交感神経)12、骨盤神経(副交感神経)13および陰部神経(体性神経)14が存在している。
下腹神経12は、排尿の抑制(蓄尿)に寄与するもので、膀胱9および内尿道括約筋10に繋がっている。骨盤神経13は、排尿の開始に寄与するもので、膀胱9および内尿道括約筋10に繋がっている。陰部神経14は、外尿道括約筋11に繋がっている。
【0015】
図3Aに示すように、人体1では、まず、下腹神経12からの信号によって、膀胱9(排尿筋)が弛緩して膀胱9に尿が溜まりやすくなるとともに、内尿道括約筋10が収縮する。これにより、尿の排泄が止められ、膀胱9内に蓄尿される。一方、図3Bに示すように、骨盤神経13からの信号によって、膀胱9(排尿筋)が収縮するとともに、内尿道括約筋10が弛緩する。これにより、尿が膀胱9外に排泄される。そして、人体1の脳からの指令(自らの意志)により、体性神経である陰部神経14を介して、随意筋としての外尿道括約筋11を弛緩させ、腹圧をかけることによって排尿が行われる。
【0016】
上記のように、下腹神経12および骨盤神経13のいずれもが正常に活動することによって、膀胱9および内尿道括約筋10が適切に収縮・弛緩していれば、蓄排尿が適切に行われる。しかしながら、例えば、下腹神経12が低活動になったり、骨盤神経13が過活動になったりすると、膀胱9が収縮しやすく、内尿道括約筋10が弛緩しやすくなる。その結果、膀胱9に尿を溜め難くなり、蓄尿障害(過活動膀胱)といった排尿障害を引き起こす場合がある。
【0017】
そこで、この実施形態では、図3Aに示すように、本発明の刺激対象部位の一例としての仙骨3の背面側から仙骨3上の皮膚に電気的な刺激信号を与えることによって、仙骨神経叢が刺激される。より具体的には、図2に示すように、第1仙骨孔5を通る第1仙骨神経S1、第2仙骨孔6を通る第2仙骨神経S2、第3仙骨孔7を通る第3仙骨神経S3および第4仙骨孔8を通る第4仙骨神経S4が刺激される。これにより、例えば図3Aに示すように、第3仙骨神経S3が刺激され、骨盤神経13による膀胱9を収縮させるという神経支配が抑制される。また、この電気的な刺激は下腹神経12にも伝達され、これにより、下腹神経12による膀胱9を緩和させるという神経支配が促通される。その結果、骨盤神経13の抑制および下腹神経12の促通がバランスよく保たれ、膀胱9が適度に弛緩することになり、過活動膀胱が改善する。
【0018】
そして、上記の電気的な刺激は、仙骨神経叢が存在する臀部およびその周辺部以外に存在する神経にも伝達される。例えば、図2に示すように、第3仙骨神経S3の一部は、坐骨神経15として大腿部を下行し、最終的に、腓骨神経16および脛骨神経17に分かれる。腓骨神経16および脛骨神経17は、坐骨神経15の末端部として、人体1の足趾(第1指18(母指)、第2指19、第3指20、第4指21および第5指22(小指))まで延びている。すなわち、足趾18~22の腓骨神経16および脛骨神経17は、坐骨神経15および仙骨神経叢S3を介して、下腹神経12、骨盤神経13および陰部神経14に繋がっている。
【0019】
[電気刺激治療器の構成説明]
次に、本発明の一実施形態に係る電気刺激治療器31の構成およびその動作について説明する。
図4は、本発明の一実施形態に係る電気刺激治療器31(第1形態)の概略図である。
図4を参照して、電気刺激治療器31は、設置型の電気刺激治療器である。電気刺激治療器31は、例えば病院等の施設に常時設置された状態で使用される。電気刺激治療器31は、物理的な構成として、筐体32(治療器本体)と、モニタ33と、電源ボタン34と、操作ボタン35と、ポート23と、電極パッド37と、本発明の検出電極の一例としての筋電信号検出用の検出電極61とを備えている。この実施形態では、検出電極61は、膀胱9の正面側の皮膚に取り付けられる電極である。
【0020】
筐体32は、この実施形態では、略長方形状に形成され、例えば、プラスチック製のケースからなっていてもよい。図示しないが、筐体32の背面には、ACアダプタ等の接続用の差込口が設けられていてもよい。
モニタ33は、筐体32の前面に設けられている。モニタ33は、筐体32の長手方向に沿って長い長方形状に形成されていてもよい。モニタ33は、例えば、モノクロもしくはカラーの液晶モニタであってよい。モニタ33には、例えば、電極パッド37による電気的な刺激信号のパルス波形や周波数、刺激対象者である被治療者の心電波形および心拍数、エラーメッセージ、後述する筋電信号モニタリングに関連する通知等を表示することができる。これにより、被治療者は、電気刺激治療器31の動作状況を簡単に知ることができる。モニタ33は、例えば、所定の操作画面が表示され、当該画面を操作可能なタッチパネルであってもよい。
【0021】
電源ボタン34および操作ボタン35は、例えばモニタ33の下方に設けられている。操作ボタン35は、電気刺激治療器31の機種によって、様々な機能を有していてもよい。例えば、電気刺激治療器31のメモリ機能として、複数の被治療者それぞれに適した刺激信号のパルス波の幅(パルス幅)、周波数等を含む治療メニューを電気刺激治療器31に記憶させておき、それを読み出す際に操作するボタン等であってもよい。
【0022】
ポート23は、筐体32の前面に複数設けられている。各ポート23には、電極パッド37が1つずつ接続される。ポート23に電極パッド37を1つずつ接続することによって、複数の被治療者が同時に、電気刺激治療を受けることができる。
電極パッド37は、配線36を介してポート23に接続されている。検出電極61は、足趾用の配線62を介してポート23に接続されている。電極パッド37および検出電極61は1セットで同じポート23に接続されている。
【0023】
図5は、本発明の一実施形態に係る電気刺激治療器24の概略図(第2形態)である。
図5を参照して、本発明の一実施形態として使用される電気刺激治療器は、図4の設置型の電気刺激治療器31の他、携帯型の電気刺激治療器24であってもよい。
電気刺激治療器24は、例えば病院等の施設から持ち帰って自宅で使用される。電気刺激治療器24は、被治療者が持ち運び可能である。被治療者は、電気刺激治療器24を通院時に病院に持参し、電気刺激治療の治療状況を医師に確認してもらうことができる。
【0024】
電気刺激治療器24は、物理的な構成として、筐体25(治療器本体)と、モニタ26と、スタート/ストップボタン27と、操作ボタン28と、電極パッド37と、検出電極61とを備えている。
筐体25は、この実施形態では、略楕円形状に形成され、例えば、プラスチック製のケースからなっていてもよい。図示しないが、筐体25の背面には、電気刺激治療器24の電源用の電池を収容するための取り外し可能な裏蓋が設けられていてもよい。なお、電気刺激治療器24の電源は、電池である必要はなく、例えば、ACアダプタを介してコンセントから得てもよいし、電池およびコンセントの併用であってもよい。
【0025】
モニタ26は、筐体25の前面に設けられている。モニタ26は、筐体25の長手方向に沿って長い長方形状に形成され、筐体25の長手方向の一端部寄りに配置されていてもよい。また、モニタ26は、例えば、モノクロもしくはカラーの液晶モニタであってよい。モニタ26には、例えば、電極パッド37による電気的な刺激信号のパルス波形や周波数、被治療者の心電波形および心拍数、エラーメッセージ、後述する筋電信号モニタリングに関連する通知等を表示することができる。これにより、被治療者は、電気刺激治療器24の動作状況を簡単に知ることができる。モニタ26は、例えば、所定の操作画面が表示され、当該画面を操作可能なタッチパネルであってもよい。
【0026】
スタート/ストップボタン27および複数の操作ボタン28は、モニタ26に対して、筐体25の長手方向他端部側に配置されていてもよい。操作ボタン28は、電気刺激治療器24の機種によって、様々な機能を有していてもよい。例えば、電気刺激治療器24のメモリ機能として、複数の被治療者それぞれに適した刺激信号のパルス波の幅(パルス幅)、周波数等を含む治療メニューを電気刺激治療器24に記憶させておき、それを読み出す際に操作するボタン等であってもよい。
電極パッド37および検出電極61は、前述の電気刺激治療器31に使用された電極と同じであってもよい。
【0027】
[電極パッドの構成説明]
図6は、電極パッド37の正面図である。図7は、電極パッド37の背面図である。図8は、電極パッド37の断面図であって、図6のVIII-VIII断面を示している。
電極パッド37は、不関電極38と、一対の刺激電極39A,39Bとを含む。
不関電極38および一対の刺激電極39A,39Bは、人体1が屈曲(可動)したときに、その屈曲に合わせて湾曲可能な可撓性を有している。この実施形態では、不関電極38および一対の刺激電極39A,39Bは、それぞれ、人体1の皮膚に面する第1面40,42A,42Bおよび第1面40,42A,42Bの反対側の第2面41,43A,43Bを有するシート状(板状)のゴム基材44で構成されている。
【0028】
ここで、「シート状のゴム基材44」とは、例えば、厚さが0.5mm~2.0mmの領域が大部分を占める部材を意味している。むろん、当該ゴム基材44は、部分的に、上記範囲の厚さを超える構造を有していてもよい。そのような構造としては、例えば、後述する第1端子90、第2端子92A,92B等が挙げられる。
不関電極38は、この実施形態では横長な略四角形状である。不関電極38は、四角形の辺を構成する第1端部45、第2端部46、第3端部47および第4端部48を有している。
【0029】
第1端部45は、例えば、不関電極38が人体1に取り付けられた際の不関電極38の上端部であり、第3端部47と対向している。つまり、第3端部47は、不関電極38が人体1に取り付けられた際の不関電極38の下端部である。第2端部46および第4端部48は、第1端部45と第3端部47とを連結しており、互いに対向している。
不関電極38は、例えば、第1端部45および第3端部47に沿う横方向Bの長さが9.5cm程度であり、第2端部46および第4端部48に沿う縦方向Aの長さが5.3cm程度である。
【0030】
一対の刺激電極39A,39Bは、それぞれ、この実施形態では縦長な略四角形状である。各刺激電極39A,39Bは、それぞれ、四角形の辺を構成する第1端部86A,86B、第2端部87A,87B、第3端部88A,88Bおよび第4端部89A,89Bを有している。
第1端部86A,86Bは、例えば、各刺激電極39A,39Bが人体1に取り付けられた際の各刺激電極39A,39Bの上端部であり、第3端部88A,88Bと対向している。つまり、第3端部88A,88Bは、各刺激電極39A,39Bが人体1に取り付けられた際の各刺激電極39A,39Bの下端部である。第2端部87A,87Bおよび第4端部89A,89Bは、第1端部86A,86Bと第3端部88A,88Bとを連結しており、互いに対向している。
【0031】
各刺激電極39A,39Bは、例えば、第1端部86A,86Bおよび第3端部88A,88Bに沿う横方向Bの長さが5.3cm程度であり、第2端部87A,87Bおよび第4端部89A,89Bに沿う縦方向Aの長さが9.5cm程度である。つまり、一対の刺激電極39A,39Bの横方向Bのトータルの長さは、不関電極38の横方向Bの長さよりも長くなっている。
【0032】
不関電極38の第2面41には、第1端子90が一体的に設けられている。第1端子90は、不関電極38の第2面41から突出している。第1端子90は、一方側(図6の上側)に向く第1差込口91を有し、他方側(図6の下側)が閉塞された筒状に形成されている。この実施形態では、第1差込口91は、不関電極38の第1端部45と面一である。
【0033】
一対の刺激電極39A,39Bの第2面43A,43Bには、それぞれ、第2端子92A,92Bが一体的に設けられている。第2端子92A,92Bは、一対の刺激電極39A,39Bの第2面43A,43Bから突出している。第2端子92A,92Bは、第1差込口91と同じ方向に向く第2差込口93A,93Bを有し、他方側(図6の下側)が閉塞された筒状に形成されている。この実施形態では、第2差込口93A,93Bは、それぞれ、一対の刺激電極39A,39Bの第1端部86A,86Bと面一である。
【0034】
また、不関電極38の第2面41には、薄肉部94が形成されている。薄肉部94は、不関電極38において比較的薄く形成された部分であり、例えば、0.3mm~2.0mmの厚さを有している。薄肉部94は、第2端部46および第4端部48に沿う直線状の領域(例えば、53mm程度の長さを有している)である一対の薄肉部94を含んでいる。
【0035】
一対の薄肉部94は、互いに平行に延び、かつ第1端子90を間に挟んで配置されている。なお、一対の薄肉部94は、いずれも、第1端部45および第3端部47に沿う方向Bにおいて、第1端子90から離れている。不関電極38は、一対の薄肉部94が形成されていることによって、薄肉部94を折り目として折り曲げやすく形成されている。これにより、不関電極38を、人体1の皮膚の湾曲に合わせて良好に貼着することができる。
【0036】
各刺激電極39A,39Bの第2面43A,43Bには、薄肉部95A,95Bが形成されている。薄肉部95A,95Bは、各刺激電極39A,39Bにおいて比較的薄く形成された部分であり、例えば、0.3mm~2.0mmの厚さを有している。薄肉部95A,95Bは、それぞれ、各刺激電極39A,39Bの端部(例えば、刺激電極39Aの第2端部87Aおよび刺激電極39Bの第4端部89B)から第3端部88A,88Bに延びる直線状の領域(例えば、53mm程度の長さを有している)である複数の薄肉部95A,95Bを含んでいる。
【0037】
複数の薄肉部95A,95Bは、互いに平行に延びている。この実施形態では、3本の薄肉部95A,95Bが、ストライプ状に形成されている。
各刺激電極39A,39Bは、複数の薄肉部95A,95Bが形成されていることによって、薄肉部95A,95Bを折り目として折り曲げやすく形成されている。これにより、各刺激電極39A,39Bを、人体1の皮膚の湾曲に合わせて良好に貼着することができる。また、各刺激電極39A,39Bの角部96A,96Bを境に隣り合う端部同士を繋ぐ直線状の薄肉部95A,95Bが形成され、さらにこの実施形態では、角部96A,96Bから内方領域に向かって順にストライプ状に形成されている。そのため、例えば治療後に、角部96A,96Bを指で摘まむことによって、各刺激電極39A,39Bを角部96A,96Bから剥がしやすくすることができる。
【0038】
そして、不関電極38および一対の刺激電極39A,39Bは、いずれも、ゴム基材44と、ゴム基材44に埋め込まれた導電性シート97とからなる導電性ゴムシートによって構成されている。
ゴム基材44は、不関電極38および一対の刺激電極39A,39Bの外形を形成している。一方、導電性シート97は、ゴム基材44に覆われることによって、ゴム基材44に埋め込まれている。図6および図7では、不関電極38および一対の刺激電極39A,39Bのそれぞれにおいて、導電性シート97が埋め込まれた領域を破線で示している。
【0039】
ゴム基材44は、この実施形態では、カーボンブラックを含有するシリコーンゴムからなるシートで構成されている。ゴム基材44の材料としては、導電性を有するゴムであれば、カーボンブラックを含有するシリコーンゴムに限らない。例えば、シリコーンゴムに混入する導体(導電性充填剤)としては、カーボンブラックの他、銀粉末、金メッキされたシリカやグラファイト、導電性酸化亜鉛等であってもよい。また、イオン導電性シリコーンゴムを、ゴム基材44の材料として使用してもよい。
【0040】
導電性シート97は、この実施形態では、導電性メッシュで構成されている。導電性メッシュとしては、例えば、銀糸等の導電性繊維で形成されたメッシュが挙げられる。導電性シート97は、図8に示すように、その面内に多数の開口49(格子の窓部分)を有している。
導電性シート97は、シート状のゴム基材44のほぼ全体にわたって埋め込まれている。ここで、「ほぼ全体」とは、導電性シート97の周縁とゴム基材44の周縁(この実施形態では、不関電極38および一対の刺激電極39A,39Bの各端部45~48および86A,86B~89A,89B)との間に、少しのマージン(厚さ方向全体がゴム基材44のみからなる部分98)が設けられていてもよいということである。この実施形態では、導電性シート97は、その全周がゴム基材44の当該部分98に取り囲まれている。マージンの大きさは、例えば、製造時の導電性シート97の位置ずれを考慮して設定された大きさであってもよい。
【0041】
したがって、図6に示すように、導電性シート97は、不関電極38および一対の刺激電極39A,39Bの各第1端部45,86A,86Bに設けられた第1端子90および第2端子92A,92Bにオーバーラップしていてもよい。言い換えれば、不関電極38および一対の刺激電極39A,39Bにおいて、導電性シート97は、第1端子90および第2端子92A,92Bに埋め込まれていてもよい。
【0042】
また、この実施形態では、導電性シート97は、ゴム基材44の厚さ方向において、ゴム基材44の第2面41,43A,43B(人体1の皮膚に接触しない面)側に偏って配置されている。これにより、導電性シート97からゴム基材44の第1面40,42A,42B(人体1の皮膚に接触する面)までの厚さTと、導電性シート97からゴム基材44の第2面41,43A,43Bまでの厚さTとを比べると、厚さTが厚さTよりも大きくなっている。
【0043】
つまり、不関電極38および一対の刺激電極39A,39Bは、第1面40,42A,42B側から順に、相対的に大きな厚さTを有するゴム基材44の第1部分99、導電性シート97、相対的に小さな厚さTを有するゴム基材44の第2部分100を有していてもよい。他の言い方で、不関電極38および一対の刺激電極39A,39Bは、第1面40,42A,42B側から順に、相対的に大きな厚さTを有する第1ゴム層99、導電性シート97、相対的に小さな厚さTを有する第2ゴム層100の3層構造を有していてもよい。
【0044】
以上のような電極パッド37を作製するには、例えば、まず、導電性シート97およびゴム基材44の材料としてのゴムシートが準備される。次に、ゴムシートが軟化する温度以上である所定の温度まで金型が事前に加熱された後、金型内に、導電性シート97とゴムシートとがこの順に積層される。次に、ゴムシートの表面を押圧することによって、導電性シート97およびゴムシートをプレス成形する。これにより、軟化したゴムシートの材料が金型の形状まで広がると共に、導電性シート97の開口49を通って、導電性シート97の表面および裏面の両面に行き渡る。その結果、導電性シート97が、ゴム基材44の形状となったゴムシートの材料に埋め込まれた状態となる。その後、金型が冷却され、金型からゴム基材44を取り外すことによって、不関電極38および一対の刺激電極39A,39Bが得られる。
【0045】
[電極パッドおよび検出電極の取り付け位置の説明]
図9は、電極パッド37および検出電極61の取り付け状態を示す図である。
電極パッド37を人体1に取り付けるには、図9に示すように、例えば別途準備した導電性粘着パッド29(例えば、導電性の粘着ゲル等)を、一対の刺激電極39A,39Bおよび不関電極38に貼り付ける。次に、当該導電性粘着パッド29を介して、電極パッド37を、自分の仙骨3の背面直上の皮膚に貼り付ければよい。
【0046】
検出電極61は、第1電極63、第2電極64および第3電極65を含んでいてもよい。この実施形態では、第3電極65が基準電極(Reference electrode)であってもよく、第1電極63は、第3電極65に対して正電位の電極(正電極)であってもよい。第2電極64は、第3電極65に対して負電位の電極(負電極)であってもよい。
検出電極61を人体1に取り付けるには、図9に示すように、人体1の下腹部30において、膀胱9に対向するように検出電極61を貼り付ければよい。例えば、両側の恥骨66の結合部である恥骨結合部67を指で確認し、恥骨結合部67から2cm~3cm程度上側に離れた位置に検出電極61を貼り付ける。これにより、膀胱9に対向するように検出電極61を簡単に取り付けることができる。3つの検出電極61の位置関係については、第3電極65を中央に配置し、この第3電極65を挟む位置に第1電極63および第2電極64を配置すればよい。例えば、第3電極65を左右から挟むように第1電極63および第2電極64を配置してもよい。この実施形態では、人体1の正面視において、第3電極65が膀胱9の直上領域に配置され、第3電極65の左側に第1電極63が配置され、第3電極65の右側に第2電極64が配置されている。第1電極63および第2電極64も第3電極65と同様に、人体1の正面視において膀胱9を覆うように配置されていてもよい。
【0047】
[膀胱の弛緩収縮検出のための電気的構成の説明]
図10は、電気刺激治療器31の電気的構成を示すブロック図である。図11は、図10の記憶部56に格納されているプログラム59の一例を示す図である。
図10および図11の説明に先立って、この実施形態では、一対の刺激電極39A,39Bからの電気刺激に付随して膀胱9がきちんと弛緩収縮しているかを確認する。これにより、電極パッド37が適切な位置に取り付けられ、電気刺激治療が適切に行われているかどうかを判別できる。より具体的には、一対の刺激電極39A,39Bから人体1に刺激電圧を印加し、この刺激電圧に同期する筋電信号が膀胱9の付近から検出されるか否かを判別する。当該筋電信号が検出されれば、刺激電圧の印加に付随して膀胱9が弛緩収縮していると言える。一方、当該筋電信号が検出されない場合や、筋電信号が検出されても刺激電圧に同期していない場合や筋電信号に規則性がない場合は、刺激電圧の印加に付随して膀胱9が弛緩収縮していると言えない。
【0048】
図10を参照して、電気刺激治療器31は、電気的構成として、本発明の制御部の一例としてのコントローラ50と、入力部51と、ガイダンス部の一例としての出力部52と、通信I/F53とを含む。
コントローラ50は、マイコン(マイクロコンピュータ)等の半導体チップで構成されていてもよい。コントローラ50は、例えば、プロセッサ55と、記憶部56と、タイマ57と、インピーダンス変化検出回路58とを含んでいてもよい。
【0049】
プロセッサ55は、例えば、制御装置、演算装置、レジスタ、記憶部56とのインターフェース、ならびに、入力部51、出力部52および通信I/F53とのインターフェース等を含むCPUで構成されていてもよい。プロセッサ55は、記憶部56に格納されているプログラム59(PGM:Program)を実行する。プロセッサ55は、演算結果を出力部52に出力したり、通信I/F53を介して外部の機器に出力したりしてもよい。
【0050】
記憶部56は、例えば、ROM、RAMを含んでおり、プログラム59が格納されている。プログラム59は、例えば、刺激電圧印加プログラム59A、筋電波形生成プログラム59B、波形比較プログラム59C、膀胱弛緩収縮判別プログラム59D、電極位置ガイダンス情報信号生成プログラム59E等を含んでいてもよい。
刺激電圧印加プログラム59Aは、不関電極38および刺激電極39A,39Bに電圧を印加するプログラムであってもよい。筋電波形生成プログラム59Bは、検出電極61で検出された筋電信号の波形を生成するプログラムであってもよい。波形比較プログラム59Cは、刺激電圧印加プログラム59Aで印加された電圧の波形と、筋電波形生成プログラム59Bによって生成された筋電信号の波形とを比較するプログラムであってもよい。膀胱弛緩収縮判別プログラム59Dは、刺激電極39A,39Bから仙骨神経叢への電気刺激によって膀胱9が弛緩収縮しているかを判別するプログラムであってもよい。電極位置ガイダンス情報信号生成プログラム59Eは、膀胱弛緩収縮判別プログラム59Dの判別結果に基づいて、電極パッド37の取り付け位置が「適切」か「不適切」である旨を知らせるガイダンス情報信号を生成するプログラムであってもよい。
【0051】
記憶部56は、プロセッサ55で実行された処理結果をデータとして格納していてもよい。処理結果のデータとしては、例えば、電気刺激治療の開始日時、終了日時、治療時間、基準電圧(例えば、ドクターが設定した初期電圧)、治療電圧(例えば、被治療者の治療回ごとの体調等に合わせて調整された電圧)等が含まれていてもよい。
タイマ57は、例えば、クロックを数えるカウンタ機能を有している。タイマ57は、刺激電圧印加プログラム59Aを実行するときの刺激電圧のパルス数をカウントしてもよい。プロセッサ55は、タイマ57のカウント数に基づいて、一方の刺激電極39Aと不関電極38との間に印加する電圧の極性、および刺激電極39Bと不関電極38との間に印加する電圧の極性を変更してもよい。
【0052】
インピーダンス変化検出回路58は、プロセッサ55に電気的に接続されており、検出電極61が人体1の体表面に貼り付けられることによって、プロセッサ55と人体1との間に閉回路を形成する。プロセッサ55の制御によって検出電極61から人体1に電圧を印加する。これにより、記録電極である第1電極63と基準電極である第3電極65との間の体表面のインピーダンス69の変化、および記録電極である第2電極64と基準電極である第3電極65との間の体表面のインピーダンス70の変化を検出する。このインピーダンス69,70の変化が、筋電信号の変化として筋電信号波形に現われる。
【0053】
インピーダンス変化検出回路58は、電流・電圧ドライバ68と、第1差動アンプ74と、第2差動アンプ75と、第3差動アンプ76とを含んでいてもよい。電流・電圧ドライバ68は、人体1に対して一次側の回路に形成されている。第1~第3差動アンプ74~76は、人体1に対して二次側の回路に形成されている。
電流・電圧ドライバ68は、プロセッサ55の制御によって、膀胱9の弛緩収縮による体表面のインピーダンス変化を測定するための電流・電圧を供給する。電流・電圧ドライバ68は、複数の半導体素子を組み合わせて構成された半導体デバイスからなっていてもよい。複数の半導体素子は、例えば、MOSFET等のスイッチング素子、ダイオード素子、抵抗素子、アンプ等を含んでいてもよい。
【0054】
第1差動アンプ74は、第1電極63および第3電極65(基準電極)から入力された2つの筋電信号(入力信号)の差分を増幅し、かつ筋電信号からノイズ信号を除外する。第2差動アンプ75は、第2電極64および第3電極65(基準電極)から入力された2つの筋電信号(入力信号)の差分を増幅し、かつ筋電信号からノイズ信号を除外する。第3差動アンプ76は、第1差動アンプ74および第2差動アンプ75を通過して入力された2つの筋電信号(入力信号)の差分を増幅し、膀胱9の弛緩収縮を反映した筋電信号としてプロセッサ55に出力する。
【0055】
入力部51は、コントローラ50に電気的に接続されている。入力部51は、プロセッサ55に所望の処理を実行させるための操作部71を含んでいてもよい。操作部71は、例えば、前述の操作ボタン28,35や、モニタ26,33のタッチパネル等を含んでいてもよい。
出力部52は、コントローラ50に電気的に接続されている。出力部52は、プロセッサ55で実行された処理結果が視覚的に出力される表示部72、当該処理結果が聴覚的に出力される音声出力部73を含んでいてもよい。この実施形態では、プロセッサ55で判別された電極パッド37の取り付け位置が「適切」か「不適切」であるかのガイダンス情報が出力されてもよい。表示部72は、例えば、前述のモニタ26,33を含んでいてもよい。音声出力部73は、例えば、前述の筐体25,32に取り付けられたスピーカ(図示せず)を含んでいてもよい。
【0056】
通信I/F53は、電気刺激治療器31と、外部の電子機器(例えば、ドクター用端末等の医療用電子機器、スマートフォンやタブレットコンピュータ等の個人用端末等)との間のデータ交換を仲介する。そのようなデータ交換は、有線通信、無線通信のいずれで行われてもよい。例えば、通信I/F53を介して電気刺激治療器31と外部の電子機器とを接続することによって、プロセッサ55で実行された処理結果を外部の電子機器に出力することができる。処理結果として、プロセッサ55で判別された電極パッド37の取り付け位置が「適切」か「不適切」に関するガイダンス情報が、スマートフォンやタブレットコンピュータ等の個人用端末のディスプレイおよびスピーカの少なくとも一方から出力されてもよい。
【0057】
[膀胱の弛緩収縮検出のフローの説明]
図12は、膀胱9の弛緩収縮検出のフローチャートである。図13図15は、膀胱9の弛緩収縮検出の確認実験の例を説明するための図である。
電気刺激治療器31を使用して治療を行うには、例えば、被治療者は、図9に示すように、まず電極パッド37を自身の仙骨3の背面に取り付ける。検出電極61は、自身の膀胱9の正面側に取り付けられる。
【0058】
電極パッド37の取り付け後、操作ボタン35を操作して、自分に適した治療メニューを選択する。これにより、電極パッド37から電気的な刺激信号が出力されて第3仙骨神経S3が刺激され、電気刺激治療器31による治療を開始することができる(ステップS1)。一方の刺激電極39A,39Bには、刺激電圧が間欠的に印加される。間欠的な電圧印加とは、刺激電圧の印加過程において、電圧の印加状態と電圧の非印加状態とが交互に発生させる印加方法である。これにより、刺激電圧の波形は、所定の時間間隔を空けて発生するパルス波形であってもよい。例えば、出力パルスの条件は、パルス幅が1μs(秒)~500μs(秒)であってもよい。この出力パルスが、1Hz~50Hzの周波数で連続して出力されることによって1周期をTとする刺激信号パルスが構成されていてもよい。より具体的には、刺激信号パルスは、立ち上がり部分t=2秒、継続部分t=2秒、立ち下り部分t=1秒および次のパルスまでの間隔t=1秒の合計6秒のパターンで継続的に印加されてもよい。むろん、t、t、tおよびtの長さや、電圧の大きさ等は、使用者の体の大きさ等に合わせて適宜変更することができる。例えば、立ち上がり部分tと立ち下り部分tとを同じ時間に設定してもよい。
【0059】
そして、電極パッド37からの電気刺激を継続しつつ、検出電極61から筋電信号が検出される。筋電信号の検出にあたっては、電流・電圧ドライバ68から検出電極61に電圧が印加される。例えば、第3電極65に対して第1電極63が正電位となるように、かつ第3電極65に対して第2電極64が負電位となるように電圧が印加される。これにより、人体1の体表面を介してプロセッサ55と人体1との間に閉回路であるインピーダンス変化検出回路58が形成される。プロセッサ55では、インピーダンス変化検出回路58から得られた実測データに基づいて筋電信号の波形が作成される。そして、この筋電信号の波形と刺激信号パルスの波形とが比較される(ステップS2)。
【0060】
次に、筋電信号の波形が刺激信号パルスの波形に同期(同調)しているかどうかが判別される(ステップS3)。筋電信号の波形が刺激信号パルスの波形に同期していない場合(ステップS3のNO)、電極パッド37の取り付け位置が「不適切」である旨を知らせるガイダンス情報信号がコントローラ50で生成される。そして、このガイダンス情報信号に基づくガイダンスが、被治療者に伝えられる(ステップS4)。ガイダンスは、表示部72および音声出力部73によって提供されてもよいし、通信I/F53を介して外部の出力機器(スマートフォンやタブレットコンピュータ等)によって提供されてもよい。
【0061】
一方、筋電信号の波形が刺激信号パルスの波形に同期していれば(ステップS3のYES)、電極パッド37の取り付け位置が「適切」である旨を知らせるガイダンス情報信号がコントローラ50で生成される。そして、このガイダンス情報信号に基づくガイダンスが、被治療者に伝えられる(ステップS5)。
図12のステップS2およびステップS3に関連する電極パッド37の取り付け位置の適切・不適切の判別方法は、例えば、図13図15を参照して説明することができる。図13図15には、刺激電極39A,39Bに印加された電圧の波形101および検出電極61で検出された筋電信号の波形102が示されている。印加電圧波形101が上段に示され、検出電圧波形102が下段に示されている。以下、図13図15の各確認実験を参照して、電極パッド37の取り付け位置の適切・不適切の判別の仕方を具体的に説明する。
【0062】
図13は、一対の刺激電極39A,39Bから電気刺激を与えていないときに観測される筋電信号の波形を示す例である。
図13を参照して、印加電圧波形101は、直線状のベースライン103のみで形成されており、ベースライン103に対して上下いずれかに突出するノッチが形成されていない。これは、一対の刺激電極39A,39Bに電圧が印加されていないことを意味している。
【0063】
検出電圧波形102は、直線状のベースライン104に対して上側に突出する複数のノッチ105を有している。これは、検出電極61の取り付け部分の周辺において筋伸縮が発生してインピーダンス69,70に変化が生じ、当該インピーダンス69,70の変化に基づいて筋電信号が検出されたことを意味している。しかしながら、一対の刺激電極39A,39Bに電圧が印加されていないことを考慮すると、複数のノッチ105は、一対の刺激電極39A,39Bからの電気刺激に付随して発生したものではない。つまり、人体1の下腹部30に検出電極61を貼り付けた状態では、一対の刺激電極39A,39Bに電圧を印加しなくても、検出電極61によって筋電信号が検出されることがある。この種の筋電信号は、例えば、随意的な筋肉の運動(例えば、臀部の筋肉に力を入れる運動等)によって発生する。
【0064】
図14は、一対の刺激電極39A,39Bに、不関電極38に対して負電圧のみが印加されたときに観測される筋電信号の波形を示す例である。
図14を参照して、印加電圧波形101は、直線状のベースライン106に対して下側に突出する複数のノッチ107を有している。複数のノッチ107は、一定の間隔を空けて規則的に形成されている。これは、一対の刺激電極39A,39Bに対して負電圧が間欠的に印加されていることを意味している。
【0065】
検出電圧波形102は、直線状のベースライン108に対して上側に突出する複数のノッチ109を有している。これは、検出電極61の取り付け部分の周辺において筋伸縮が発生してインピーダンス69,70に変化が生じ、当該インピーダンス69,70の変化に基づいて筋電信号が検出されたことを意味している。図14において、検出電圧波形102のノッチ109は、印加電圧波形101のノッチ107に同期して発生している。ノッチ109がノッチ107に同期しているとは、図14の横方向に沿う時間軸において、ノッチ107の発生時点と、ノッチ109の発生時点とがほぼ同じであることと定義してもよい。また、ノッチ109がノッチ107に同期しているとは、ノッチ107のピークとノッチ109のピークとが上下方向に対向していると定義してもよい。つまり、図14の例では、一対の刺激電極39A,39Bに負電圧を印加したことによって、一対の刺激電極39A,39Bからの電気刺激(マイナス刺激)に付随して、検出電圧波形102にノッチ109が発生している。したがって、図14の例では、一対の刺激電極39A,39Bが人体1の仙骨3の直上領域に適切に取り付けられており、電気刺激治療が適切に行われていると判別される(図12のステップS3のYES)。その結果、電極パッド37の取り付け位置が適切である旨のガイダンスが、被治療者に伝えられる(図12のステップS5)。
【0066】
図15は、一対の刺激電極39A,39Bに、不関電極38に対して正電圧および負電圧の両方が印加されたときに観測される筋電信号の波形を示す例である。
図15を参照して、印加電圧波形101は、直線状のベースライン110に対して上側に突出する複数の第1ノッチ111と、下側に突出する複数の第2ノッチ112とを有している。複数の第1ノッチ111および第2ノッチ112は、一定の間隔を空けて規則的に形成されている。これは、一対の刺激電極39A,39Bに対して正電圧および負電圧が間欠的に印加されていることを意味している。
【0067】
検出電圧波形102は、直線状のベースライン113に対して上側に突出する複数の第1ノッチ114および第2ノッチ115を有している。これは、検出電極61の取り付け部分の周辺において筋伸縮が発生してインピーダンス69,70に変化が生じ、当該インピーダンス69,70の変化に基づいて筋電信号が検出されたことを意味している。
図15において、検出電圧波形102の第1ノッチ114は、印加電圧波形101の第1ノッチ111に同期して発生し、検出電圧波形102の第2ノッチ115は、印加電圧波形101の第2ノッチ112に同期して発生している。第1ノッチ114(第2ノッチ115)が第1ノッチ111(第2ノッチ112)に同期しているとは、図14で示した「同期」の定義と同じであってよい。
【0068】
また、図15では、検出電圧波形102の第1ノッチ114の高さが、第2ノッチ115の高さよりも小さい。第2ノッチ115の高さが大きくなるのは、負電圧(-)が印加された一対の刺激電極39A,39Bの直下では、皮下組織中で、電圧が印加される前に比べてマイナスの電位を持ち、その直下に存在する神経細胞の細胞壁の内側にプラスイオンが蓄積されることによって、神経興奮が引き起こされるためである。これにより、膀胱9の弛緩収縮が活発になり、それによって誘発されるインピーダンス69,70の変化も大きくなるためである。
【0069】
一方、正電圧(+)が印加された一対の刺激電極39A,39Bの直下では、皮膚組織中で、電圧を印加している時間内で、電圧が印加される前に比べてプラスの電位を持ち、その直下に存在する神経細胞の細胞壁の内側にマイナスイオンが蓄積されることによって、神経興奮が抑制される。そのため、膀胱9が弛緩収縮しても、その活動は活発ではなく、それによって誘発されるインピーダンス69,70の変化が小さくなる。これが、検出電圧波形102の第2ノッチ115の高さと第1ノッチ114の高さとの差に表れる。第1ノッチ114は、膀胱9の弛緩収縮の有無によっては、観測されない場合があってもよい。
【0070】
つまり、図15の例では、一対の刺激電極39A,39Bに正電圧および負電圧を印加したことによって、一対の刺激電極39A,39Bからの電気刺激(プラス刺激およびマイナス刺激)に付随して、検出電圧波形102に第1ノッチ114および第2ノッチ115が発生している。したがって、図15の例では、一対の刺激電極39A,39Bが人体1の仙骨3の直上領域に適切に取り付けられており、電気刺激治療が適切に行われていると判別される(図12のステップS3のYES)。その結果、電極パッド37の取り付け位置が適切である旨のガイダンスが、被治療者に伝えられる(図12のステップS5)。なお、図15の例では、第1ノッチ114および第2ノッチ115は、互いに類似するものではなく、第2ノッチ115の高さが第1ノッチ114の高さよりも大きくなっている。
【0071】
以上、図13図15を参照して電極パッド37の取り付け位置の適切・不適切の判別方法の一例を示した。図13の結果から、検出電極61で検出される筋電信号は、一対の刺激電極39A,39Bからの電気刺激に付随する信号だけでなく、膀胱9の周縁における随意的な筋肉の運動による信号も含む。そのため、電極パッド37の取り付け位置の適切・不適切の判別にあたっては、後者の随意的な筋肉の運動による信号をノイズ信号として除外することが好ましい。
【0072】
そこで、この実施形態では、第1~第3差動アンプ74~76が人体1に対して二次側の回路に設けられることによって、随意的な筋肉の運動による信号が、一対の刺激電極39A,39Bに印加された間欠的な電圧に同期しないノイズ信号として除外されている。これにより、コントローラ50では、ノイズ信号が除外された検出電圧波形102と印加電圧波形101とを比較できるので、電極パッド37の取り付け位置の適切・不適切を、精度よく判別することができる。
【0073】
[電気刺激治療器の他の実施形態]
図16は、本発明の他の実施形態に係る電気刺激治療器31の概略図である。図17は、図16の電極パッド37および超音波プローブ54の取り付け状態を示す図である。以下では、図4で示した構成と共通する構成については同一の参照符号を付して説明を省略する。
【0074】
図16の電気刺激治療器31は、検出電極61に代えて、本発明の超音波処理部の一例としての超音波プローブ54を備えている。超音波プローブ54は、配線62を介してポート23に接続されている。電極パッド37および超音波プローブ54は1セットで同じポート23に接続されている。超音波プローブ54は、対象物に超音波を発信するとともに、対象物で反射した超音波を受信する。
【0075】
図17を参照して、超音波プローブ54を人体1に取り付けるには、人体1の下腹部30において、膀胱9に対向するように超音波プローブ54を貼り付ければよい。例えば、両側の恥骨66の結合部である恥骨結合部67を指で確認し、恥骨結合部67から2cm~3cm程度上側に離れた位置に超音波プローブ54を貼り付ける。これにより、膀胱9に対向するように超音波プローブ54を簡単に取り付けることができる。
【0076】
図18は、図16の電気刺激治療器31の電気的構成を示すブロック図である。図19は、図18の記憶部77に格納されているプログラム78の一例を示す図である。図18において、図10で示した構成と共通する構成については同一の参照符号を付して説明を省略する。
図18を参照して、コントローラ50は、記憶部77と、超音波発信・検出回路79とを含んでいてもよい。
【0077】
記憶部77は、例えば、ROM、RAMを含んでおり、プログラム78が格納されている。プログラム78は、例えば、刺激電圧印加プログラム78A、超音波波形生成プログラム78B、波形比較プログラム78C、膀胱弛緩収縮判別プログラム78D、電極位置ガイダンス情報信号生成プログラム78E等を含んでいてもよい。プログラム78は、コントローラ50のプロセッサ55によって実行される。
【0078】
刺激電圧印加プログラム78Aは、不関電極38および刺激電極39A,39Bに電圧を印加するプログラムであってもよい。超音波波形生成プログラム78Bは、超音波プローブ54で検出された超音波信号の波形を生成するプログラムであってもよい。この実施形態では、図18に示すように、超音波プローブ54から超音波80(例えば、Aモード)を発信し、膀胱9の前壁82および後壁83で反射した超音波81を超音波プローブ54で受信(検出)する。これにより、膀胱9の前壁82と後壁83との間の距離Dを要素とする指標を用いて、膀胱9のサイズや膀胱9内に溜まっている尿量が推定される。超音波波形生成プログラム78Bは、超音波プローブ54で検出された超音波81に基づく超音波信号を波形化する。
【0079】
波形比較プログラム78Cは、刺激電圧印加プログラム78Aで印加された電圧の波形と、超音波波形生成プログラム78Bによって生成された超音波信号の波形とを比較するプログラムであってもよい。膀胱弛緩収縮判別プログラム78Dは、刺激電極39A,39Bから仙骨神経叢への電気刺激によって膀胱9が弛緩収縮しているかを判別するプログラムであってもよい。電極位置ガイダンス情報信号生成プログラム78Eは、膀胱弛緩収縮判別プログラム78Dの判別結果に基づいて、電極パッド37の取り付け位置が「適切」か「不適切」である旨を知らせるガイダンス情報信号を生成するプログラムであってもよい。
【0080】
記憶部77は、プロセッサ55で実行された処理結果をデータとして格納していてもよい。処理結果のデータとしては、例えば、電気刺激治療の開始日時、終了日時、治療時間、基準電圧(例えば、ドクターが設定した初期電圧)、治療電圧(例えば、被治療者の治療回ごとの体調等に合わせて調整された電圧)等が含まれていてもよい。
超音波発信・検出回路79は、プロセッサ55に電気的に接続されており、超音波プローブ54が人体1の体表面に貼り付けられることによって、プロセッサ55と人体1との間に閉回路を形成する。プロセッサ55の制御によって超音波プローブ54から膀胱9へ向かって超音波80を発信する。
【0081】
超音波発信・検出回路79は、超音波ドライバ84と、アンプ85とを含んでいてもよい。超音波ドライバ84は、人体1に対して一次側の回路に形成されている。アンプ85は、人体1に対して二次側の回路に形成されている。
超音波ドライバ84は、プロセッサ55の制御によって、超音波プローブ54から膀胱9への超音波80の発信を制御する。超音波ドライバ84は、複数の半導体素子を組み合わせて構成された半導体デバイスからなっていてもよい。複数の半導体素子は、例えば、MOSFET等のスイッチング素子、ダイオード素子、抵抗素子、アンプ等を含んでいてもよい。
【0082】
アンプ85は、超音波プローブ54で受信した超音波81の超音波信号を増幅し、かつ超音波信号からノイズ信号を除外する。ノイズ信号は、例えば、一対の刺激電極39A,39Bに印加された間欠的な電圧に同期しない信号を含んでいてもよい。アンプ85を通って、膀胱9の弛緩収縮を反映した超音波信号がプロセッサ55に入力される。
図20は、膀胱9の弛緩収縮検出のフローチャートである。
【0083】
図16の電気刺激治療器31を使用して治療を行うには、例えば、被治療者は、図17に示すように、まず電極パッド37を自身の仙骨3の背面に取り付ける。超音波プローブ54は、自身の膀胱9の正面側に取り付けられる。
電極パッド37の取り付け後、操作ボタン35を操作して、自分に適した治療メニューを選択する。これにより、電極パッド37から電気的な刺激信号が出力されて第3仙骨神経S3が刺激され、電気刺激治療器31による治療を開始することができる(ステップS1)。一方の刺激電極39A,39Bには、刺激電圧が間欠的に印加される。
【0084】
そして、電極パッド37からの電気刺激を継続しつつ、超音波プローブ54から膀胱9へ向かって超音波80が発信されるとともに、膀胱9の前壁82および後壁83で反射した超音波81が超音波プローブ54で受信される。プロセッサ55では、超音波発信・検出回路79から得られた実測データに基づいて超音波信号の波形が作成される。そして、この超音波信号の波形と刺激信号パルスの波形とが比較される(ステップS2)。
【0085】
次に、超音波信号の波形が刺激信号パルスの波形に同期(同調)しているかどうかが判別される(ステップS3)。超音波信号の波形と刺激信号パルスの波形との比較については、図13図15に示した判別方法に倣って行うことができる。
超音波信号の波形が刺激信号パルスの波形に同期していない場合(ステップS3のNO)、電極パッド37の取り付け位置が「不適切」である旨を知らせるガイダンス情報信号がコントローラ50で生成される。そして、このガイダンス情報信号に基づくガイダンスが、被治療者に伝えられる(ステップS4)。ガイダンスは、表示部72および音声出力部73によって提供されてもよいし、通信I/F53を介して外部の出力機器(スマートフォンやタブレットコンピュータ等)によって提供されてもよい。
【0086】
一方、超音波信号の波形が刺激信号パルスの波形に同期していれば(ステップS3のYES)、電極パッド37の取り付け位置が「適切」である旨を知らせるガイダンス情報信号がコントローラ50で生成される。そして、このガイダンス情報信号に基づくガイダンスが、被治療者に伝えられる(ステップS5)。
以上のように、図16の電気刺激治療器31によれば、膀胱9の動きの変化を超音波信号として検出し、この超音波信号の波形と刺激信号パルスの波形とを比較することによって、刺激電極39A,39Bによる電気刺激によって膀胱9が弛緩収縮しているかどうかを確認することができる。その結果、電極パッド37が適切な位置に取り付けられ、電気刺激治療が適切に行われているかどうかを判別することができる。
【0087】
さらに、この実施形態では、アンプ85が人体1に対して二次側の回路に設けられることによって、一対の刺激電極39A,39Bに印加された間欠的な電圧に同期しないノイズ信号として除外されている。これにより、コントローラ50では、ノイズ信号が除外された超音波信号の波形と刺激信号パルスとを比較できるので、電極パッド37の取り付け位置の適切・不適切を、精度よく判別することができる。
【0088】
[電気刺激治療器(超音波タイプ)のさらに他の実施形態]
図21は、本発明のさらに他の実施形態に係る電気刺激治療器31および畜尿量監視機器201の概略図である。図22は、図21の電気刺激治療器31および畜尿量監視機器201の電気的構成を示すブロック図である。
例えば、図16の電気刺激治療器31では、超音波発信・検出回路79およびこれに関連する構成が内蔵されていたが、図21に示すように、電気刺激治療器31から独立した畜尿量監視機器201に内蔵されていてもよい。
【0089】
図22を参照して、畜尿量監視機器201は、電気的構成として、コントローラ202と、通信I/F203とを含んでいてもよい。
コントローラ202は、マイコン(マイクロコンピュータ)等の半導体チップで構成されていてもよい。コントローラ202は、例えば、プロセッサ204と、前述の超音波発信・検出回路79とを含んでいてもよい。プロセッサ204は、例えば、超音波ドライバ84を制御し、かつ超音波プローブ54で受信した超音波信号データを通信I/F203から出力する。
【0090】
通信I/F203は、畜尿量監視機器201と電気刺激治療器31との間のデータ交換を仲介する。そのようなデータ交換は、有線通信、無線通信のいずれで行われてもよい。例えば、通信I/F203を介して畜尿量監視機器201と電気刺激治療器31とを接続することによって、プロセッサ204で処理された超音波信号データを電気刺激治療器31に出力することができる。電気刺激治療器31では、畜尿量監視機器201から入力された超音波信号データに基づいて超音波信号の波形が生成され、刺激信号パルスの波形と比較される(図20のステップS2)。
【0091】
以上をまとめると、本発明の実施形態によれば、図12および図20のフローに示すように、電気刺激信号と、この電気刺激信号に同期して検出される膀胱弛緩収縮を反映した信号とを比較することによって、電気刺激治療が適切に行われているかどうかを判別することができる。膀胱弛緩収縮を反映した信号は、前述のように、検出電極61で検出される筋電信号、超音波プローブ54で検出される超音波信号が波形化されたものを含んでいてもよい。
【0092】
図23は、電気刺激信号301に同期する膀胱弛緩収縮を反映した信号302が検出された典型的な例である。図23では、信号301,302の一部(破線300で囲まれた領域)を拡大して示している。
図23を参照して、典型例では、電気刺激信号(パルス集合体)301に同期するように、膀胱弛緩収縮を反映した信号302が検出されている。例えば、電気刺激信号301のオン時には、膀胱の内圧が低下して膀胱が弛緩するので信号302の波形に山303が形成される。一方、電気刺激信号301のオフ時には、膀胱の内圧が上昇して膀胱が収縮するので信号302の波形の山303が縮小する。図23では、電気刺激信号301の1パルス304毎の膀胱弛緩収縮を反映した信号305を整流積分することによって、信号302の波形として示されている。
【0093】
以上、本発明の一実施形態を説明したが、本発明は、他の形態で実施することもできる。
例えば、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0094】
1 :人体
2 :腰椎
3 :仙骨
4 :脊椎
5 :第1仙骨孔
6 :第2仙骨孔
7 :第3仙骨孔
8 :第4仙骨孔
9 :膀胱
10 :内尿道括約筋
11 :外尿道括約筋
12 :下腹神経
13 :骨盤神経
14 :陰部神経
15 :坐骨神経
16 :腓骨神経
17 :脛骨神経
18 :第1指
19 :第2指
20 :第3指
21 :第4指
22 :第5指
23 :ポート
24 :電気刺激治療器
25 :筐体
26 :モニタ
27 :ストップボタン
28 :操作ボタン
29 :導電性粘着パッド
30 :下腹部
31 :電気刺激治療器
32 :筐体
33 :モニタ
34 :電源ボタン
35 :操作ボタン
36 :配線
37 :電極パッド
38 :不関電極
39A :刺激電極
39B :刺激電極
40 :(不関電極)第1面
41 :(不関電極)第2面
42A :(刺激電極)第1面
42B :(刺激電極)第1面
43A :(刺激電極)第2面
43B :(刺激電極)第2面
44 :ゴム基材
45 :(不関電極)第1端部
46 :(不関電極)第2端部
47 :(不関電極)第3端部
48 :(不関電極)第4端部
49 :開口
50 :コントローラ
51 :入力部
52 :出力部
53 :通信I/F
54 :超音波プローブ
55 :プロセッサ
56 :記憶部
57 :タイマ
58 :インピーダンス変化検出回路
59 :プログラム
59A :刺激電圧印加プログラム
59B :筋電波形生成プログラム
59C :波形比較プログラム
59D :膀胱弛緩収縮判別プログラム
59E :電極位置ガイダンス情報信号生成プログラム
61 :検出電極
62 :配線
63 :第1電極
64 :第2電極
65 :第3電極
66 :恥骨
67 :恥骨結合部
68 :電圧ドライバ
69 :インピーダンス
70 :インピーダンス
71 :操作部
72 :表示部
73 :音声出力部
74 :第1差動アンプ
75 :第2差動アンプ
76 :第3差動アンプ
77 :記憶部
78 :プログラム
78A :刺激電圧印加プログラム
78B :超音波波形生成プログラム
78C :波形比較プログラム
78D :膀胱弛緩収縮判別プログラム
78E :電極位置ガイダンス情報信号生成プログラム
79 :検出回路
80 :超音波
81 :超音波
82 :前壁
83 :後壁
84 :超音波ドライバ
85 :アンプ
86A :(刺激電極)第1端部
86B :(刺激電極)第1端部
87A :(刺激電極)第2端部
87B :(刺激電極)第2端部
88A :(刺激電極)第3端部
88B :(刺激電極)第3端部
89A :(刺激電極)第4端部
89B :(刺激電極)第4端部
90 :第1端子
91 :第1差込口
92A :第2端子
92B :第2端子
93A :第2差込口
93B :第2差込口
94 :薄肉部
95A :薄肉部
95B :薄肉部
96A :角部
96B :角部
97 :導電性シート
98 :部分
99 :第1部分
100 :第2部分
101 :印加電圧波形
102 :検出電圧波形
103 :ベースライン
104 :ベースライン
105 :ノッチ
106 :ベースライン
107 :ノッチ
108 :ベースライン
109 :ノッチ
110 :ベースライン
111 :第1ノッチ
112 :第2ノッチ
113 :ベースライン
114 :第1ノッチ
115 :第2ノッチ
201 :畜尿量監視機器
202 :コントローラ
203 :通信I/F
204 :プロセッサ
301 :電気刺激信号
302 :膀胱弛緩収縮を反映した信号
303 :山
304 :1パルス
305 :膀胱弛緩収縮を反映した信号
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23