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  • 特開-スピニングリール 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022097274
(43)【公開日】2022-06-30
(54)【発明の名称】スピニングリール
(51)【国際特許分類】
   A01K 89/01 20060101AFI20220623BHJP
【FI】
A01K89/01 E
A01K89/01 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020210756
(22)【出願日】2020-12-18
(71)【出願人】
【識別番号】000002439
【氏名又は名称】株式会社シマノ
(71)【出願人】
【識別番号】503230070
【氏名又は名称】シマノコンポネンツ マレーシア エスディーエヌ.ビーエッチディー.
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】新樹グローバル・アイピー特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】辻田 尚史
(72)【発明者】
【氏名】ガン リン ブン
(72)【発明者】
【氏名】ウォン キー チュン
【テーマコード(参考)】
2B108
【Fターム(参考)】
2B108BE04
2B108BH04
(57)【要約】
【課題】リール本体の小型化を図り且つ高強度の駆動体を形成可能なスピニングリールを、提供する。
【解決手段】スピニングリール1は、リール本体3と、ロータ7と、スプール軸9と、駆動体13と、を備える。駆動体13は、駆動軸21と、ロータ7を回転させるために駆動軸21に設けられる駆動ギア23と、スプール軸9を移動させるために駆動軸21に設けられる摺動用ギア25と、を有する。駆動体13では、駆動軸21、駆動ギア23、及び摺動用ギア25が、鍛造によって一体に成形される。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リール本体と、
前記リール本体に回転可能に構成されるロータと、
前記リール本体に進退可能に構成されるスプール軸と、
軸部と、前記ロータを回転させるために前記軸部に設けられる第1ギアと、前記スプール軸を移動させるために前記軸部に設けられる第2ギアと、を有し、前記軸部、前記第1ギア、及び前記第2ギアが鍛造によって一体に成形される駆動体と、
を備え、
前記第1ギアは、前記軸部の外周面に設けられる第1円板部と、軸方向において前記第2ギア側に前記第1円板部から突出する第1歯部と、を有し、
前記第2ギアは、前記第1円板部と間隔を隔てて前記軸部の外周面に設けられる第2円板部と、前記軸部の軸心から離れる径方向に前記第2円板部から突出する第2歯部と、を有し、
前記第2歯部の歯先径は、前記第1歯部の内周径より小さい、
スピニングリール。
【請求項2】
前記第1歯部の歯先及び前記第2歯部の側面の軸方向間隔は、前記第2歯部の歯先径以下であり、前記第1歯部の内周径の20%以上である、
請求項1に記載のスピニングリール。
【請求項3】
前記軸方向間隔は、5mm以上且つ12mm以下の範囲である、
請求項2に記載のスピニングリール。
【請求項4】
前記第1歯部の内周径に対する前記第2歯部の歯先径は、30%以上且つ50%以下である、
請求項1から3のいずれか1項に記載のスピニングリール。
【請求項5】
前記第1歯部の内周径及び前記第2歯部の歯先径の差は、4mm以上且つ15mm以下である、
請求項4に記載のスピニングリール。
【請求項6】
前記第2歯部の歯先径に対する前記軸部の直径の比率は、50%以上且つ70%以下である、
請求項1から5のいずれか1項に記載のスピニングリール。
【請求項7】
前記軸部の直径は、6mm以上且つ12mm以下である、
請求項6に記載のスピニングリール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スピニングリールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のスピニングリールでは、ロータの回転及びスプール軸の移動に用いられる駆動体が、開示されている(特許文献1を参照)。駆動体は、駆動軸と、駆動用の歯車と、摺動用の歯車と、を有する。駆動用の歯車は、ロータを回転させるために用いられ、駆動軸と一体に成形される。摺動用の歯車は、スプール軸を移動させるために用いられ、駆動軸に別体に設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-34397号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のスピニングリールでは、摺動用の歯車が駆動軸に別体として設けられる。この場合、摺動用の歯車の内周面及び駆動軸の外周面の間には、摺動用の歯車を駆動軸の外面に取り付けるためのスペースが必要になる。このため、摺動用の歯車の外径が大きくなる。また、摺動用の歯車に噛み合う連動用の歯車の外径も、大きくなる。すなわち、スピニングリールのリール本体が大型化するおそれがある。
【0005】
一方で、駆動用の歯車及び摺動用の歯車が、亜鉛ダイキャスト等の鋳造によって、駆動軸と一体に成形されることがある。ここで、駆動用の歯車はロータを回転させるので、駆動用の歯車には所定の強度が要求される。しかし、駆動用の歯車が鋳造によって駆動軸に一体に成形される場合、駆動用の歯車の強度を十分に確保できないおそれがある。また、高トルクで巻き上げ可能なハンドルが、鋳造によって形成された駆動軸にねじ込まれる場合、駆動軸の雌ねじ部が潰れるおそれもある。
【0006】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであって、本発明の目的は、リール本体の小型化を図り且つ高強度の駆動体を形成可能なスピニングリールを、提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面に係るスピニングリールは、リール本体と、ロータと、スプール軸と、駆動体と、を備える。ロータは、リール本体に回転可能に構成される。スプール軸は、リール本体に進退可能に構成される。駆動体は、軸部と、ロータを回転させるために軸部に設けられる第1ギアと、スプール軸を移動させるために軸部に設けられる第2ギアと、を有する。駆動体では、軸部、第1ギア、及び第2ギアが鍛造によって一体に成形される。
【0008】
第1ギアは、軸部の外周面に設けられる第1円板部と、軸方向において第2ギア側に第1円板部から突出する第1歯部と、を有する。第2ギアは、第1円板部と間隔を隔てて軸部の外周面に設けられる第2円板部と、軸部の軸心から離れる径方向に第2円板部から突出する第2歯部と、を有する。第2歯部の歯先径は、第1歯部の内周径より小さい。
【0009】
本発明のスピニングリールでは、スプール軸を移動させるための第2ギアが、軸部と一体に成形されるので、従来技術と比較して、リール本体を小型化することができる。また、本発明のスピニングリールでは、駆動体(軸部、第1ギア、及び第2ギア)が鍛造によって形成されるので、従来技術と比較して、高強度の駆動体を形成することができる。
【0010】
本発明の他の側面に係るスピニングリールでは、第1歯部の歯先及び第2歯部の側面の軸方向間隔は、第2歯部の歯先径以下であり、第1歯部の内周径の20%以上であることが好ましい。このように構成することによって、高強度の駆動体を鍛造によって好適に形成することができる。
【0011】
本発明の他の側面に係るスピニングリールでは、上記の軸方向間隔は、5mm以上且つ12mm以下の範囲であることが好ましい。このように構成することによって、高強度の駆動体を鍛造によってより好適に形成することができる。
【0012】
本発明の他の側面に係るスピニングリールでは、第1歯部の内周径に対する第2歯部の歯先径は、30%以上且つ50%以下であることが好ましい。このように構成することによって、高強度の駆動体を鍛造によって好適に形成することができる。
【0013】
本発明の他の側面に係るスピニングリールでは、第1歯部の内周径及び第2歯部の歯先径の差は、4mm以上且つ15mm以下であることが好ましい。このように構成することによって、高強度の駆動体を鍛造によってより好適に形成することができる。
【0014】
本発明の他の側面に係るスピニングリールでは、第2歯部の歯先径に対する軸部の直径の比率は、50%以上且つ70%以下であることが好ましい。このように構成することによって、高強度の駆動体を鍛造によって好適に形成することができる。
【0015】
本発明の他の側面に係るスピニングリールでは、軸部の直径は、6mm以上且つ12mm以下であることが好ましい。この場合、駆動体が鍛造によって形成されるので、軸部の直径を従来技術より小さくなる。これにより、軸部に設けられる第2ギアの外径も小さくすることができるので、従来技術と比較して、リール本体を小型化することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明では、スピニングリールにおいて、リール本体の小型化を図り且つ高強度の駆動体を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態によるスピニングリールの側面図。
図2】スピニングリールから側カバー及び駆動体を取り外した側面図。
図3】駆動体の斜視図。
図4】駆動体の断面図。
図5】駆動体の正面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の一実施形態が採用されたスピニングリール1は、図1に示すように、リール本体3と、ロータ7と、スプール軸9(図2を参照)と、駆動体13(図2を参照)と、を備える。詳細には、スピニングリール1は、リール本体3と、ハンドル5と、ロータ7と、スプール軸9(図2を参照)と、スプール11と、駆動体13(図2を参照)と、を備える。
【0019】
図1に示すように、ハンドル5は、リール本体3に回転可能に支持される。本実施形態では、ハンドル5がリール本体3の左側に配置される場合の例を示すが、ハンドル5はリール本体3の右側に配置されてもよい。図2に示すように、リール本体3の内部空間には、スプール11を前後方向に移動するためのオシレーティング機構15が、配置される。オシレーティング機構15は、従来の構成と実質的に同じであるので、ここでは説明を省略する。
【0020】
ロータ7は、スプール11に釣り糸を巻き付けるために用いられる。図1及び図2に示すように、ロータ7は、リール本体3の前部に配置される。ロータ7は、リール本体3に対して回転可能に構成される。例えば、図2に示すように、ロータ7は、ピニオンギア17と一体回転可能に連結される。ピニオンギア17は、リール本体3に回転可能に支持される。ロータ7は、ピニオンギア17の回転に連動して回転する。
【0021】
図2に示すように、スプール軸9は、リール本体3に進退可能に構成される。例えば、スプール軸9は、リール本体3に進退可能に支持される。詳細には、スプール軸9は、筒状のピニオンギア17の内周部に挿通される。スプール軸9は、オシレーティング機構15の作動によって、リール本体3に対して前後方向に往復移動する。前後方向は、スプール軸9のスプール軸心X1が延びる方向である。
【0022】
スプール11には、釣り糸が巻き付けられる。図2に示すように、スプール11は、スプール軸9と一体的に移動可能に構成される。例えば、スプール11は、スプール軸9の先端部に装着される。
【0023】
図3に示すように、駆動体13は、駆動軸21(軸部の一例)と、駆動ギア23(第1ギアの一例)と、摺動用ギア25(第2ギアの一例)と、を有する。駆動軸21、駆動ギア23、及び摺動用ギア25は、鍛造によって一体に成形される。
【0024】
駆動軸21は、ハンドル5の回転に連動して回転する。駆動軸21は、駆動軸心X2(軸部の軸心の一例)を有する。駆動軸21には、ハンドル5のハンドル軸6(図2を参照)が装着される。例えば、駆動軸21は筒状に形成される。駆動軸21の内周部には、ハンドル軸6が着脱可能に装着される。
【0025】
駆動ギア23は、ロータ7を回転させるために用いられる。図3に示すように、駆動ギア23には、駆動軸21に設けられる。駆動ギア23は、ピニオンギア17(図2を参照)に噛み合う。
【0026】
図3に示すように、駆動ギア23は、第1円板部23aと、第1歯部23bと、を有する。第1円板部23aは、駆動軸21の外周面に設けられる。例えば、第1円板部23aは、鍛造によって駆動軸21と一体に成形される。
【0027】
第1歯部23bは、駆動軸方向において摺動用ギア25側に第1円板部23aから突出する。第1歯部23bは、鍛造によって第1円板部23aの外周部に一体に成形される。第1歯部23bは複数のギア歯から構成される。駆動軸方向は、駆動軸心X2が延びる方向である。
【0028】
摺動用ギア25は、スプール軸9を移動させるために用いられる。図3に示すように、摺動用ギア25は、駆動軸21に設けられる。図2に示すように、摺動用ギア25は、オシレーティング機構15のカムギア22に噛み合う。摺動用ギア25の回転に連動して、オシレーティング機構15は作動する。
【0029】
図3に示すように、摺動用ギア25は、第2円板部25aと、第2歯部25bと、を有する。第2円板部25aは、第1円板部23aと間隔を隔てて駆動軸21の外周面に設けられる。例えば、第2円板部25aは、鍛造によって駆動軸21と一体に成形される。
【0030】
第2歯部25bは、駆動軸心X2から離れる径方向に第2円板部25aから突出する。第2歯部25bは、鍛造によって第2円板部25aの外周部に一体に成形される。第2歯部25bは複数のギア歯から構成される。
【0031】
図4及び図5に示すように、第2歯部25bの歯先径R2は、第1歯部23bの内周径R1より小さい。第1歯部23bの内周面23cは、第1歯部23bにおける径方向内側の側面である。
【0032】
例えば、図5に示すように、駆動軸方向において駆動体13を外側から見た場合、第1歯部23bの内周面23cは円形に形成される。すなわち、第1歯部23bの内周径R1は、第1歯部23bの内周面23cによって形成された円の直径である。
【0033】
上記の構成を有するスピニングリール1では、上述したように、駆動軸21、駆動ギア23、及び摺動用ギア25が、鍛造によって一体に成形される。この構成において、駆動軸21、駆動ギア23、及び摺動用ギア25は、以下のように形成されることが好ましい。
【0034】
図4に示すように、第1歯部23bの歯先23d及び第2歯部25bの側面25cの軸方向間隔D1は、第2歯部25bの歯先径R2以下であり、第1歯部23bの内周径R1の20%以上である。この条件の下で、軸方向間隔D1は、5mm以上且つ12mm以下の範囲であることが好ましい。第2歯部25bの側面25cは、駆動軸方向において第1歯部23b側に形成される側面である。
【0035】
第1歯部23bの内周径R1に対する第2歯部25bの歯先径R2は、30%以上且つ50%以下である。この条件の下で、第1歯部23bの内周径R1及び第2歯部25bの歯先径R2の差(=R1-R2)は、4mm以上且つ15mm以下であることが好ましい。
【0036】
第2歯部25bの歯先径R2に対する駆動軸21の直径R3の比率P(=R3/R2)は、50%以上且つ70%以下である。この条件の下で、駆動軸21の直径R3は、6mm以上且つ12mm以下であることが好ましい。
【0037】
駆動軸21の直径R3は、駆動軸21において最も細い部分において定義されることが好ましい。例えば、図4では、駆動軸21における駆動ギア23及び摺動用ギア25の間の部分が、駆動軸21において最も細い部分になっている。
【0038】
上述したスピニングリール1は、以下のような特徴を有する。
【0039】
スピニングリール1では、スプール軸9を移動させるための摺動用ギア25が、駆動軸21と一体に形成されるので、従来技術と比較して、リール本体3を小型化することができる。また、スピニングリール1では、駆動体13(駆動軸21、駆動ギア23、及び摺動用ギア25)が鍛造によって形成されるので、従来技術と比較して、高強度の駆動体13を形成することができる。
【0040】
また、スピニングリール1では、第1歯部23bの歯先23d及び第2歯部25bの側面25cの軸方向間隔D1は、第2歯部25bの歯先径R2以下であり、第1歯部23bの内周径R1の20%以上である。このように構成することによって、高強度の駆動体13を鍛造によって好適に形成することができる。
【0041】
また、スピニングリール1では、軸方向間隔D1は、5mm以上且つ12mm以下の範囲である。このように構成することによって、高強度の駆動体13を鍛造によってより好適に形成することができる。
【0042】
また、スピニングリール1では、第1歯部23bの内周径R1に対する第2歯部25bの歯先径R2は、30%以上且つ50%以下である。このように構成することによって、高強度の駆動体13を鍛造によって好適に形成することができる。
【0043】
また、スピニングリール1では、第1歯部23bの内周径R1及び第2歯部25bの歯先径R2の差(=R1-R2)は、4mm以上且つ15mm以下である。このように構成することによって、高強度の駆動体13を鍛造によってより好適に形成することができる。
【0044】
また、スピニングリール1では、第2歯部25bの歯先径R2に対する駆動軸21の直径R3の比率P(=R3/R2)は、50%以上且つ70%以下である。このように構成することによって、高強度の駆動体13を鍛造によって好適に形成することができる。
【0045】
さらに、スピニングリール1では、駆動軸21の直径R3は、6mm以上且つ12mm以下である。この場合、駆動体13が鍛造によって形成されるので、駆動軸21の直径R3を従来技術より小さくなる。これにより、駆動軸21に設けられる摺動用ギア25の外径も小さくすることができるので、従来技術と比較して、リール本体3を小型化することができる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、ロータを回転させるための第1ギアとスプール軸を移動させるための第2ギアとを有するスピニングリールに、利用することができる。
【符号の説明】
【0047】
1 スピニングリール
3 リール本体
7 ロータ
9 スプール軸
13 駆動体
21 駆動軸
23 駆動ギア
23a 第1円板部
23b 第1歯部
23c 第1歯部の内周面
23d 第1歯部の歯先
25 摺動用ギア
25a 第2円板部
25b 第2歯部
25c 第2歯部の側面
D1 軸方向間隔
P 比率
R1 第1歯部の内周径
R2 第2歯部の歯先径
R3 駆動軸の直径
図1
図2
図3
図4
図5