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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022097278
(43)【公開日】2022-06-30
(54)【発明の名称】金型装置および射出成形方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/33 20060101AFI20220623BHJP
   B29C 45/16 20060101ALI20220623BHJP
【FI】
B29C45/33
B29C45/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020210763
(22)【出願日】2020-12-18
(71)【出願人】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100087826
【弁理士】
【氏名又は名称】八木 秀人
(72)【発明者】
【氏名】石渡 宰
(72)【発明者】
【氏名】中島 経之
(72)【発明者】
【氏名】佐野 純也
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 宏弥
【テーマコード(参考)】
4F202
4F206
【Fターム(参考)】
4F202AH17
4F202CA11
4F202CB01
4F202CB22
4F202CB28
4F202CK54
4F202CK55
4F206AH17
4F206JA07
4F206JB22
4F206JB28
4F206JN12
4F206JQ81
(57)【要約】      (修正有)
【課題】二色成形において、1次成形後に1次成形品をキャビティ金型に保持可能な金型装置を提供する。
【解決手段】キャビティ金型16と1次コア金型10からなる1次金型26と、キャビティ金型16と2次コア金型12からなる2次金型28とを備え、キャビティ金型16は、第1の空洞C1に出没可能な1次成形品保持部30を備え、2次コア金型16は、第2の空洞C2に出没可能であり、1次成形品保持部30と相補する形状を有するスライド部40を備え、1次成形の型開き時に、第1の空洞C1に突出した1次成形品保持部30が、1次成形品92の端部を係止することにより1次成形品92をキャビティ金型16に保持し、2次成形の型締め時に、1次成形品保持部30が、第2の空洞C2から退避するともにスライド部40が1次成形品保持部30と相互に摺動して第2の空洞C2に突出して、第2の空洞C2を画成する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャビティ金型と1次コア金型とで構成され、型締めすることで形成される第1の空洞に第1の樹脂材料を射出して1次成形品を成形する1次金型と、
前記キャビティ金型と2次コア金型とで構成され、前記1次成形品を保持する前記キャビティ金型と前記2次コア金型とを型締めすることで形成される第2の空洞に第2の樹脂材料を射出して前記1次成形品の周縁部に2次成形品を積層形成する2次金型とを備え、
前記キャビティ金型は、前記1次金型のパーティングラインにおいて前記第1の空洞に出没可能な1次成形品保持部を備え、
前記2次コア金型は、前記2次金型のパーティングラインにおいて前記第2の空洞に出没可能であり、前記1次成形品保持部と相補する形状を有するスライド部を備え、
1次成形の型開き時に、前記第1の空洞に突出した前記1次成形品保持部が、前記1次成形品の端面を係止することにより前記1次成形品を前記キャビティ金型に保持し、
2次成形の型締め時に、前記1次成形品保持部が、前記第2の空洞から退避するともに前記スライド部が前記1次成形品保持部と相互に摺動して前記第2の空洞に突出して、前記第2の空洞を画成することを特徴とする金型装置。
【請求項2】
前記1次成形の型開き時に、前記1次成形品保持部の先端が、前記第1の空洞に突出して前記1次成形品の端部の一部を係止することにより前記1次成形品を前記キャビティ金型に保持することを特徴とする請求項1に記載の金型装置。
【請求項3】
前記1次コア金型は、前記第1の空洞の外周に沿う凹凸構造のコッタを備え、
前記1次成形品保持部は、前記1次成形の型締め時に前記コッタと相補する凹凸構造を有し、
前記スライド部は、前記1次成形品保持部と相補する凹凸構造を有するコッタ部を備え、
前記1次成形品保持部は、前記1次金型の型締め動作に伴なって、前記コッタの凹凸構造と、前記1次成形品保持部の凹凸構造とが連携することにより、前記第1の空洞に向かって前進して前記第1の空洞に突出するようになっており、
前記スライド部は、前記2次金型の型締め動作に伴なって、前記第2の空洞に向かって前進するようになっており、
前記1次成形品保持部は、前記2次金型の型締め動作に伴なって、前記コッタ部の凹凸構造と、前記1次成形品保持部の凹凸構造とが連携することにより、前記第2の空洞から退避するようになっていることを特徴とする請求項1または2に記載の金型装置。
【請求項4】
前記キャビティ金型は、前記1次コア金型および前記2次コア金型の移動方向に対して傾斜して設けられたアンギュラピンを備え、
前記1次コア金型には、前記アンギュラピンを挿入する第1のピン挿入孔が設けられ、
前記スライド部には、前記アンギュラピンを挿入する第2のピン挿入孔が設けられ、
前記スライド部は、前記2次金型の型締め動作に伴なって、前記アンギュラピンが、前記第2のピン挿入孔に挿入されることにより、前記第2の空洞に向かって前進することを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の金型装置。
【請求項5】
1次成形品の周縁部に2次成形品が積層形成された二色成形品の射出成形方法であって、
キャビティ金型と1次コア金型が型締めし、パーティングラインにおいて、前記第1の空洞に出没可能に前記キャビティ金型に設けられた1次成形品保持部が突出することにより第1の空洞を画成するステップと、
前記第1の空洞に第1の樹脂材料を射出して前記1次成形品を成形するステップと、
前記1次成形品保持部が、前記1次成形品の周縁部の端部を係止して前記1次成形品を前記キャビティ金型に保持しながら、1次金型が型開きを行うステップと、
前記1次成形品を保持する前記キャビティ金型と2次コア金型が型締めして第2の空洞を画成するステップであって、前記1次成形品保持部が、前記第2の空洞から退避すると共に、2次金型のパーティングラインにおいて前記第2の空洞に出没可能であり、前記1次成形品保持部と相補する形状を有するスライド部が前記1次成形品保持部と相互に摺動して前記第2の空洞に突出して前記第2の空洞を画成するステップと、
前記第2の空洞の前記1次成形品を除く部分に、第2の樹脂材料を射出して前記2次成形品を形成するステップと、
を備えることを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金型装置および射出成形方法に関し、より詳細には第1の樹脂で構成された1次成形品の周囲に第2の樹脂で構成された2次成形品が配置されてなる二色成形品を製造するための金型装置および射出成形方法に関する。
【0002】
従来、射出成形の1方法として、第1の樹脂で構成された1次成形品の周囲に第2の樹脂で構成された2次成形品が配置されてなる二色成形品を射出成形する方法が知られている。
【0003】
特許文献1および特許文献2には、1次コア金型および2次コア金型との間を通る軸線回りに回転可能に配置された回転部材と、この回転部材に対して、1次コア金型および2次コア金型と型閉め・型開き可能に固定されたキャビティ金型とを用いて二色成形品を射出成形する技術が開示されている。
【0004】
一般的に、成形品は型開きした際にコア金型に保持される。一方、上記技術による2色成形では、1次成形後の1次成形品をキャビティ金型に保持する必要がある。このため、特許文献1では、キャビティ金型に1次形成空間内に出没する1次成形品保持部を設け、1次成形品保持部を1次成形時に1次成形空間に突出させることで、1次成形の型開き時に1次成形品をキャビティ金型に保持するようにしている。また、特許文献2では、1次コア金型に1次成形品をキャビティ金型に向けて付勢する付勢部材を備え、1次成形後の型開き時に、1次成形品をキャビティ金型に保持するようにしている。なお、本明細書において、「成形空間に突出させる」とは、成形空間内に飛び出していることのみならず、成形空間の境界に当接して成形空間の一部を画成することも含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014-168936号公報
【特許文献2】国際公開WO2018/016323号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1の場合には、完成品の表面に、出没部材の係止部の痕跡が残り、見栄えが悪いという問題があった。また、特許文献2の場合には、付勢するために、1次成形品の外縁部にリブを設ける必要がある場合があり、該リブのために外観上の見栄えが悪いという問題があった。また、該リブが、アンダーカットのためのスライド部と干渉する場合があり、その部分にはアンダーカットを設けることができない。このために意匠上の制約を生じて、多様化するデザイン要求に応じられないという問題があった。
【0007】
本発明は係る事情に鑑みてなされたものであり、2色成形において1次成形品をキャビティ金型に保持するため新たな技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の1つ態様に係る金型装置は、キャビティ金型と1次コア金型とで構成され、型締めすることで形成される第1の空洞に第1の樹脂材料を射出して1次成形品を成形する1次金型と、前記キャビティ金型と2次コア金型とで構成され、前記1次成形品を保持する前記キャビティ金型と前記2次コア金型とを型締めすることで形成される第2の空洞に第2の樹脂材料を射出して前記1次成形品の周縁部に2次成形品を積層形成する2次金型とを備え、前記キャビティ金型は、前記1次金型のパーティングラインにおいて前記第1の空洞に出没可能な1次成形品保持部を備え、前記2次コア金型は、前記2次金型のパーティングラインにおいて前記第2の空洞に出没可能であり、前記1次成形品保持部と相補する形状を有するスライド部を備え、1次成形の型開き時に、前記第1の空洞に突出した前記1次成形品保持部が、前記1次成形品の端面を係止することにより前記1次成形品を前記キャビティ金型に保持し、2次成形の型締め時に、前記1次成形品保持部が、前記第2の空洞から退避するともに前記スライド部が前記1次成形品保持部と相互に摺動して前記第2の空洞に突出して、前記第2の空洞を画成する。
【0009】
上記態様において、前記1次成形の型開き時に、前記1次成形品保持部の先端が、前記第1の空洞に突出して前記1次成形品の端部の一部を係止することにより前記1次成形品を前記キャビティ金型に保持するようになっていることも好ましい。
【0010】
また、上記態様において、前記1次コア金型は、前記第1の空洞の外周に沿う凹凸構造のコッタを備え、前記1次成形品保持部は、前記1次成形の型締め時に前記コッタと相補する凹凸構造を有し、前記スライド部は、前記1次成形品保持部と相補する凹凸構造を有するコッタ部を備え、前記1次成形品保持部は、前記1次金型の型締め動作に伴なって、前記コッタの凹凸構造と、前記1次成形品保持部の凹凸構造とが連携することにより、前記第1の空洞に向かって前進して前記第1の空洞に突出するようになっており、前記スライド部は、前記2次金型の型締め動作に伴なって、前記第2の空洞に向かって前進するようになっており、前記1次成形品保持部は、前記2次金型の型締め動作に伴なって、前記コッタ部の凹凸構造と、前記1次成形品保持部の凹凸構造とが連携することにより、前記第2の空洞から退避するようになっていることも好ましい。
【0011】
また、上記態様において、前記キャビティ金型は、前記1次コア金型および前記2次コア金型の移動方向に対して傾斜して設けられたアンギュラピンを備え、前記1次コア金型には、前記アンギュラピンを挿入する第1のピン挿入孔が設けられ、前記スライド部には、前記アンギュラピンを挿入する第2のピン挿入孔が設けられ、前記スライド部は、前記2次金型の型締め動作に伴なって、前記アンギュラピンが、前記第2のピン挿入孔に挿入されることにより、前記第2の空洞に向かって前進することも好ましい。
【0012】
本発明の別の態様にかかる方法は、1次成形品の周縁部に2次成形品が積層形成された二色成形品の射出成形方法であって、キャビティ金型と1次コア金型が型締めし、パーティングラインにおいて、前記第1の空洞に出没可能に前記キャビティ金型に設けられた1次成形品保持部が突出することにより第1の空洞を画成するステップと、前記第1の空洞に第1の樹脂材料を射出して前記1次成形品を成形するステップと、前記1次成形品保持部が、前記1次成形品の周縁部の端部を係止して前記1次成形品を前記キャビティ金型に保持しながら、1次金型が型開きを行うステップと、前記1次成形品を保持する前記キャビティ金型と2次コア金型が型締めして第2の空洞を画成するステップであって、前記1次成形品保持部が、前記第2の空洞から退避すると共に、2次金型のパーティングラインにおいて前記第2の空洞に出没可能であり、前記1次成形品保持部と相補する形状を有するスライド部が前記1次成形品保持部と相互に摺動して前記第2の空洞に突出して前記第2の空洞を画成するステップと、前記第2の空洞の前記1次成形品を除く部分に、第2の樹脂材料を射出して前記2次成形品を形成するステップと、を備える。
【発明の効果】
【0013】
上記態様にかかる金型装置および方法によれば、二色成形において、1次成形後に1次成形品をキャビティ金型に保持することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施の形態に係る射出成形方法を用いて成形される二色成形品の1例の正面図である。
図2】同二色成形品の、図1における線II-IIに沿う断面図である。
図3】同方法に用いられる金型装置の断面模式図である。
図4】同方法の概略を説明する図であり、(A)は、1次成形の型締め時の金型装置の断面模式図、(B)は、1次成形の型開き時の金型装置の断面模式図である。
図5】同方法の概略を説明する図であり、(A)は、2次成形の型締め時の金型装置の断面模式図、(B)は、2次成形の型開き時の金型装置の断面模式図である。
図6】同金型装置の1次金型の当接状態における成形品保持機構の拡大図である。
図7】同金型装置の2次金型の当接状態における成形品保持機構の拡大図である。
図8】(A)は同金型装置の1次成形品保持部の拡大斜視図、(B)は同正面図、であり、(C)は同1次成形品保持部の位置決め部材を(A)と同じ方向から見た拡大斜視図である。
図9】同方法における1次成形時の1次成形品保持部の動作の詳細を説明する図である。
図10】同方法における1次成形時の1次成形品保持部の動作を説明する図である。
図11】同方法における2次成形時の1次成形品保持部の動作を説明する図である。
図12】同方法における2次成形時の1次成形品保持部の動作を説明する図である。
図13】同実施の形態の1つの変形例に係る金型装置の1次金型の当接状態における成形品保持機構の拡大図である。
図14】同変形例に係る金型装置の2次金型の当接状態における成形品保持機構の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態について説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、同等の要素には同一の名称を付し、特に言及しない構成要素は同一であるとして重複する説明は適宜省略する。また、各図において、各部材の寸法比は実際の寸法比とは必ずしも一致していない。
【0016】
(実施の形態)
(二色成形品)
まず、実施の形態に係る金型装置100および射出成形方法を用いて成形される二色成形品90の構成について説明する。図1は、二色成形品90の正面図、図2図1のII-II線に沿う部分断面図である。
【0017】
二色成形品90は、ヘッドランプ等の車両用灯具の灯具ボディの前面開口部に組付けられる前面カバーであって、前面部90aと、この前面部90aの外周縁から後方にかけて延びる周面部90bとを備える。
【0018】
二色成形品90は、1次成形品92の周囲に2次成形品94が配置された構成となっている。その際、1次成形品92は第1の樹脂材料R1(透明樹脂)で構成され、2次成形品94は第2の樹脂材料R2(不透明(具体的には黒色)樹脂)で構成されている。二色成形品90は、周面部90bにおいて、1次成形品92と2次成形品94とが部分的に重なるように形成されている。
【0019】
(金型装置)
図3は、実施の形態に係る射出成形方法に用いる金型装置100を、模式的に示す断面図である。金型装置100は、いわゆる対向方式の2色成形用金型として構成されている。
【0020】
金型装置100は、水平方向に延びるX軸上において互いに向き合った状態で配置される1次コア金型10および2次コア金型12と、1次コア金型10と2次コア金型12との間に配置され、X軸と直交して鉛直方向に延びるY軸周りに回転可能に構成された回転部材14と、Y軸を挟んで互いに背中合わせの状態で回転部材14に固定された、同一形状の1対のキャビティ金型16と、1次コア金型10を支持する第1の可動盤18および2次コア金型12を支持する第2の可動盤20とを備える。
【0021】
1次コア金型10および2次コア金型12は、所謂可動型であり、一対のキャビティ金型16はいわゆる固定型である。
【0022】
第1の可動盤18は、回転部材14に対して矢印A1で示すようにX軸方向に移動し得るようになっている。また、第2の可動盤20も、回転部材14に対して矢印A2で示すようにX軸方向に移動し得るようになっている。
【0023】
金型装置100は、型締めにより当接した1次コア金型10とキャビティ金型16との間に形成される第1の空洞C1に、第1の可動盤18に支持された第1の加熱シリンダ22から供給される第1の樹脂材料R1を射出して、1次成形品92を形成する。また、型締めにより当接した2次コア金型12とキャビティ金型16との間に形成される第2の空洞C2の1次成形品92を除く部分に、第2の可動盤20に支持された第2の加熱シリンダ24から供給される第2の樹脂材料R2を射出して、2次成形品94を形成する。従って、1次コア金型10とキャビティ金型16の一方で、1次金型26が構成され、2次コア金型12とキャビティ金型16の他方で2次金型28が構成される。
【0024】
キャビティ金型16は、第1の空洞C1の周縁部に1次成形品保持部としてのキャビキーパ30を備える。また、キャビティ金型16は、キャビキーパ30の外方に、X軸から離れるように傾斜しながら、1次コア金型10または2次コア金型12に向かって突出するアンギュラピン34を備える。
【0025】
一方、1次コア金型10は、キャビキーパ30と対向する位置に、キャビキーパ30と整合する形状のコッタ32を備える。また、アンギュラピン34と対応する位置に、第1のピン挿入孔として機能するピン挿入部38を備える。
【0026】
また、2次コア金型12は、キャビキーパ30と対向する位置に、スライド部40を備える。また、アンギュラピン34と対応する位置に、第2のピン挿入孔として機能するピン挿入孔40eを備える。
【0027】
キャビキーパ30、コッタ32、アンギュラピン34、ピン挿入部38およびピン挿入孔40eは、連携して、1次金型26の型開き時には1次成形品92をキャビティ金型16に保持し、2次金型28の型開き時には、二色成形品90を2次コア金型12に保持する、成形品保持機構として機能する。成形品保持機構は、1次金型26および2次金型28の周縁部に、必要に応じて1つまたは複数個設けられている。成形品保持機構の詳細な動作については後で詳述する。なお、成形品保持機構の説明においては特に言及しない限り、Y軸に沿って成形空間(第1の空洞C1)に向かう方向を前方とし、Y軸に沿って金型装置100の外方に向かう方向を後方とする。
【0028】
(射出成形方法の概略)
ここで、本実施の形態に係る射出成形方法の概略を説明する。まず、図4(A)に示すように、第1の可動盤18と第2の可動盤20とを、回転部材14の方向へ移動させて型締めする。これにより1次コア金型10とキャビティ金型16とは当接され、その間に第1の空洞C1が形成される。この時、キャビキーパ30は、第1の空洞C1内にわずかに突出して、キャビキーパ30の先端が、第1の空洞C1の一部を構成する。そして、第1の可動盤18に支持された第1の加熱シリンダ22から供給される第1の樹脂材料R1が射出され、1次成形品92を形成する。
【0029】
次に、図4(B)に示すように、1次コア金型10および2次コア金型12と、1対のキャビティ金型16とを型開きする。この時、1次成形品92は、第1の樹脂材料R1の収縮作用によって、1次コア金型10に貼り付こうとする。しかし、キャビティ金型16に設けられたキャビキーパ30が、1次成形品92の周縁部の端面に係合して1次成形品92が、キャビティ金型16から離間しないようにするため、1次成形品92は、キャビティ金型16に保持されたまま、1次コア金型10から離脱する。
【0030】
次に、この状態で、回転部材14をY軸周りに180°回転させる。この時、回転部材14と共に回転するキャビティ金型16に保持された1次成形品92には遠心力が作用するが、1次成形品92は、キャビキーパ30により係止されているため、キャビティ金型16に保持されたままになる。このように、本実施の形態に係るキャビティ金型16は型開きされた際に1次成形品92を保持する保持型として機能する。
【0031】
次に、図5(A)に示すように、第1の可動盤18と第2の可動盤20とを、回転部材14の方向へ移動させて型締めする。これにより、2次金型28側では、2次コア金型12と1次成形品92を保持するキャビティ金型16とが当接され、第2の空洞C2が形成される。この時、キャビキーパ30は第2の空洞C2から後退すると共に、スライド部40が第2の空洞C2側に前進して、スライド部40の先端が第2の空洞C2の一部を形成するようになる。この状態で、第2の加熱シリンダ24から供給される第2の樹脂材料R2を、第2の空洞C2の1次成形品92以外の部分に射出して、2次成形品94を成形する。これにより1次成形品92と2次成形品94とが一体化されてなる二色成形品90が製造される。
【0032】
この時、1次金型26側では、図4(A)と同様に1次成形品92が形成される。
【0033】
次に、図5(B)に示すように、1次コア金型10および2次コア金型12と、1対のキャビティ金型16とを型開きする。2次金型28側では、二色成形品90には、キャビキーパ30が係合しておらず、型開きの際2次コア金型12に貼り付いた状態となる。そして、図示しない押し出しピンにより、2次コア金型12に貼り付いた二色成形品90を押し出して、図示しない取り出し機でつかむことにより二色成形品90を2次金型28から取り出す。
【0034】
この時、1次金型26側では、図4(B)と同様にして、キャビキーパ30によって1次成形品92がキャビティ金型16に保持される。
【0035】
次いで、回転部材14をY軸周りに180°回転することにより、図5(A)の状態に戻る。これを繰り返すことにより、上記で説明した、1次金型26の型締め、第1の樹脂材料R1の射出、1次金型26の型開き、回転部材14の回転、2次金型28の型締め、第2の樹脂材料R2の射出、2次金型28の型開き、回転部材14の回転が繰り返され、二色成形品90が連続的に製造される。
【0036】
(成形品保持機構)
次に、成形品保持機構の詳細について説明する。
図6は、1次金型26の当接状態における成形品保持機構を示す断面図であり、図7は、2次金型28の当接状態における成形品保持機構を示す断面図である。なお、理解の便宜のため、以下の図面において、1次金型26と2次金型28は、それぞれキャビティ金型16が同じ側となるように図示している。
【0037】
また、図8(A)はキャビキーパ30の斜視図である。図8(B)はキャビキーパ30が、キャビティ金型16に組み込まれた状態を示す正面図である。図8(C)は、キャビキーパ30の位置決め部材30iを図8(A)と同じ方向からみた斜視図である。
【0038】
図6図8(A),(B)に示すように、キャビキーパ30は、前方へ向かって厚みが薄くくちばし状の前端部30aと、谷形の凹部30bと山形の凸部30cとを有する断面形状を有し、該断面形状を断面と直交する方向に平行に移動した略直方体形状のキャビキーパ本体30dとを有する。前端部30aの先端の角度は、金型強度を考慮して適宜設定されるが、45°程度であることが好ましい。谷型の凹部30bと山形の凸部30cがキャビキーパ30の凹凸構造を形成している。キャビキーパ本体30dの下端部には、左右方向に拡幅された拡幅部30gが形成されている。キャビキーパ本体30dの左右には、押え板30eが配置されている。押え板30eは、拡幅部30gの上端に沿うように延在し、キャビキーパ本体30dをキャビティ金型16のキャビキーパ取付凹部29内を、前後方向に移動可能に保持している。押え板30eには左右3個ずつ前後方向に直列に配置される貫通孔(図示せず)が設けられている。
【0039】
キャビキーパ本体30dの下面には、キャビキーパ30の正面と直交する断面形状が逆三角形で左右方向に延在する、三角凹溝30hが形成されている。三角凹溝30hは、キャビキーパ30の前後方向2か所にそれぞれ、前後1対ずつ、計4か所設けられている。前後1対の三角凹溝30hの間の距離は、後述するキャビキーパ30の前後方向の移動距離と相当するように設定されている。キャビキーパ30は、前後方向に離間して配置された2つの位置決め部材30iを備える。図8(C)に示すように、位置決め部材30iは、概略として、円筒形状を有し、前方にねじ挿入孔30iを有する。また、前後方向の平面に沿う断面が略三角形状で、左右方向に延在し、上方に向かって突出する三角凸部30iを有する。位置決め部材30iは、その内部にばね30iを備え、三角凸部30iは、ばね30iによって、上方に付勢されて、位置決め部材30iの上面に設けられた楕円形の窓から上方に向かって突出している。このため、三角凸部30iは、位置決め部材30iの上方から押圧力が作用した場合には、位置決め部材30iの筐体内へと埋没するようになっている。
【0040】
図6図7に示すように、キャビキーパ取付凹部29内には位置決め部材30iと対応する円柱形の凹部31が前後方向に2つ設けられている。キャビキーパ30は、位置決め部材30iを取付ねじ30jで凹部31に取り付け、キャビキーパ本体30dを三角凹溝30hと三角凸部30iが対応するように配置し、左右の押え板30eを両側の拡幅部30gの上端に沿うようにして、押え板貫通孔(図示せず)を介して左右各3個ボルト30fで締結することで、キャビティ金型16に固定される。キャビキーパ本体30dは、キャビキーパ取付凹部29の内部において、摺動して前後方向に移動可能となっている。位置決め部材30iの三角凸部30iは、キャビキーパ本体30dの移動中は、その底面によって押し下げられるようになっており、キャビキーパ本体30dの移動を阻害しない。図6に示すように、キャビキーパ本体30dが最も前進した位置(以下、「(キャビキーパ30の)前進限」という。)では、位置決め部材30iの三角凸部30iが、各対のなかで後方の三角凹溝30hに突出して係合し、キャビキーパ本体30dが位置決めをされる。また、図7に示すように、キャビキーパ本体30dが最も後退した位置(以下、「(キャビキーパ30の)後退限」という。)では、位置決め部材30iの三角凸部30iが、各対のなかで前方の三角凹溝30hに突出して係合し、キャビキーパ本体30dが位置決めをされる。なお、位置決めのための三角凹溝30hおよび三角凸部30iの数および配置は、キャビキーパ本体30dが前進限および後退限で位置決めされるようになっていればこれに限らない。たとえば、位置決め部材30iに前後2つの三角凸部30iを設け、キャビキーパ本体30dの底面に1つの三角凹溝30hを設けてもよい。
【0041】
キャビティ金型16の、キャビキーパ30の後方には、X軸から離れるように傾斜しながら1次コア金型10に向かって突出するアンギュラピン34を備える。アンギュラピン34は、ピン保持孔35aを備える矩形のブロック35に挿入された状態で、ブロック35をキャビティ金型16に埋め込むことにより、先端が1次コア金型10に向かって突出するように、キャビティ金型16に取り付けられている。ブロック35は、公知の手法(例えばボルト)により、キャビティ金型16に固定されている。アンギュラピン34は、頭部34aがアンギュラピン本体34bに対して拡径されており、ピン保持孔35aから抜け落ちるのを防止している。
【0042】
1次コア金型10の、キャビキーパ30と対向する位置には、山形の凸部32bと、谷形の凹部32cを有するコッタ32が取り付けられている。凸部32bと凹部32cがコッタ32の凸凹構造を構成する。コッタ32の凸凹構造は、キャビキーパ30の凹凸構造と相補するようになっている。すなわち、正対して組み合うようになっている。コッタ32も、キャビキーパ30と同様に、図6に示された断面を平行に移動した略直方体形状を有する。1次コア金型10には、このコッタ32の略直方体形状に相補する凹部33が設けられている。コッタ32は、ブロック35と同様に、凹部33に嵌合した状態で、公知の手法(例えばボルト)により、1次コア金型10に固定されている。
【0043】
1次コア金型10のコッタ32の外方には、断面に直交する方向の幅がアンギュラピン34の径よりもやや大きく、前後方向の長さがアンギュラピン34の通路を確保できる長さの開口部を有するピン挿入部38が設けられている。ピン挿入部38は、型締めされるに従って突出するアンギュラピン34を受け入れるようになっている。この、当接状態において、キャビキーパ30の前端部30a(の先端)は1次コア金型10およびキャビティ金型16と共に第1の空洞C1を形成している。
【0044】
一方、図7に示すように、2次コア金型12の、キャビキーパ30と対向する位置には、コッタ32と同じ形状の凸部40bおよび凹部40cからなるコッタ部40dを備えるスライド部40が取り付けられている。スライド部40はコッタ部40dからさらに後方に延在し、アンギュラピン34と対応する位置に、アンギュラピン34より若干径の大きい円筒形状を有するピン挿入孔40eを備える。スライド部40は、従来公知の射出成形用金型の外スライドと同様の公知の手法により、2次コア金型12に前後方向にスライド可能に取り付けられている。また、2次コア金型12のピン挿入孔40eと対応する位置には、ピン挿入部38と同形状のピン挿入部42が設けられている。
【0045】
(成形品保持機構の動作の詳細)
図9は、1次成形の型締め開始から型開きまでにおける成形品保持機構、すなわち、キャビキーパ30、コッタ32およびアンギュラピン34の動作の詳細を説明する図である。
【0046】
図9に示すように、型締め開始時には、キャビキーパ30は、後退限にあり、キャビキーパ30の凹部30bおよび凸部30cとコッタ32の凸部32bおよび凹部32cは、X軸に直交する方向に所定距離だけずれている。
【0047】
そして、型締め動作に伴なって、アンギュラピン34が、ピン挿入部38に挿入されていく。
【0048】
この時、図10(A)に拡大して示すように、コッタ32の凹部32cの後側斜面32cが、X軸と平行に矢印方向に前進しようとすると、キャビキーパ30の凸部30cの後ろ側斜面30cに当接してキャビキーパ30を前方へと押すことになり、キャビキーパ本体30dが、押え板30eに案内されて、前方へと移動する。
【0049】
そして、各対の後方の三角凹溝30hが位置決め部材30iの三角凸部30iと嵌合する前進限まで来ると、1次コア金型10とキャビティ金型16とが当接し、キャビキーパ30の凹凸構造(凹部30bおよび凸部30c)は、コッタ32の凸凹構造(凸部32bおよび凹部32c)と組みあって前進を停止し、前端部30aの先端が、第1の空洞C1の一部を画成するように、第1の空洞C1内にわずかに突出するようにして停止する。このようにして、キャビキーパ30の前端部30aと2次コア金型12でパーティングラインPLが形成される。その後、第1の加熱シリンダ22から第1の樹脂材料R1が射出されて1次成形品92が形成される。
【0050】
次に、型開き時には、1次コア金型10がキャビティ金型16から離間する方向に移動すると、ピン挿入部38がアンギュラピン34から離間する方向に移動して、アンギュラピン34がピン挿入部38から抜けていく。コッタ32も同様にキャビキーパ30から離間するが、型締め時のような相互作用はなくキャビキーパ30の前端部30aが前進限にある状態で保持される。
【0051】
この時、図10(B)に拡大して示すように、キャビキーパ30の前端部30aの先端は、1次成形品92の周縁部の端面の一部と係合して、型開きおよびそれに続く回転部材14の回転の際に、1次成形品92をキャビティ金型16に保持し、1次成形品92がキャビティ金型16から離脱するのを防止する。
【0052】
(2次成形時の成形品保持部の動作)
図11、12は、2次成形時の型締め開始から型開きまでにおける成形品保持機構すなわち、キャビキーパ30、スライド部40およびアンギュラピン34の動作の詳細を説明する図である。
【0053】
図11に示すように、型締め開始時には、キャビキーパ30は、キャビティ金型16に固定された位置決め部材30iに対して、前方にずらされた状態(キャビキーパ本体30dが前進限にある状態)となっている。そして、型締め動作に伴なって、アンギュラピン34がピン挿入孔40eを進行するのに従って、スライド部40が前進を開始する。これと同時に、図12(A)に示すように、コッタ部40dの凹部40cの後斜面40c2とキャビキーパ30の凸部30cの前斜面30c1が、作用しあってキャビキーパ30がキャビティ金型16に対して後退する。
【0054】
そして、各対の前方の三角凹溝30hが位置決め部材30iの三角凸部30iと嵌合する後退限まで来ると、2次コア金型12とキャビティ金型16とが完全に当接し、図12(B)に拡大して示すように、キャビキーパ30の前端部30aは、完全に第2の空洞C2から後退して停止する。そして、スライド部40の先端部40aが、1次成形品92および2次コア金型12とで2次成形品94の形成空間を画成し、スライド部40の先端部40aとキャビティ金型16の当接面がパーティングラインPLを形成する。
【0055】
次に、型開き動作に伴なって、2次コア金型12が、キャビティ金型16から離間するように移動するとともに、アンギュラピン34はピン挿入孔40eから解放される。これに伴って、スライド部40が後退する。同時に、コッタ部40dとキャビキーパ30の凹部および凸部との篏合が解放され、スライド部40は、キャビキーパから離間するが、型締時のような相互作用はなくキャビキーパ本体30dが後退限にある状態で保持される。
【0056】
このように、金型装置100は、第1の空洞C1に出没可能なキャビキーパ30と、第2の空洞C2に出没可能なスライド部40を備え、キャビキーパ30とスライド部1次成形の型締め時に、パーティングラインPLにおいて、キャビキーパ30の前端部30aの先端を成形空間である第1の空洞C1に突出させて、第1の空洞C1を画成するようにし、1次成形の型開き時に、前端部30aが1次成形品92を周縁部の端面で係止することで1次成形品92をキャビティ金型16に保持することできるように構成した。また、2次成形の型締め時に、キャビキーパ30とスライド部40を相互に摺動させて、キャビキーパ30を成形空間から後退させると共にスライド部40を前進させ、スライド部40の先端と、2次コア金型12およびキャビティ金型16で第2の空洞C2を画成するようにした。
【0057】
上記構成によれば、キャビキーパ30は、1次成形品92をパーティングラインPL、すなわち、周縁部の端面で係止してキャビティ金型16に保持するため、二色成形品90において、キャビキーパ30の跡は目立たず、二色成形品90の見栄えが向上する。ここで、キャビキーパ30は必ずしも端面の厚み方向の全域で係止する必要はなく、図10に拡大して示すように、端面の厚み方向の一部で係止するようになっていてもよい。係止量が小さければ、二色成形品90に残るキャビキーパの跡も小さくなり、より目立たなくなるからである。
【0058】
また、従来、1次成形後のキャビティ金型16への保持のためだけに設けていたリブやフランジを設ける必要がなくなり、この点において二色成形品90の見栄えが向上する。さらに、パーティングラインPLで1次成形品92を保持するキャビキーパ30と、2次コア金型12の外スライドを両立することが可能となるので、2次成形品94にアンダーカットが必要な構成を取り入れることが可能となり、多様なデザインに対応することが可能となり、二色成形品90の意匠性が向上する。
【0059】
特に、本実施の形態では、キャビキーパ30と、スライド部40とに相補する形状の凹凸構造(キャビキーパ30の凹部30bおよび凸部30cとスライド部40の凸部40bおよび凹部40c)を備え、型締め、型開き動作に伴なって、キャビキーパ30の凹凸構造と、スライド部40の凸凹構造とが連携することによりキャビキーパ30の前後方向の動作を可能とした。キャビキーパ30の動作機構はこれに限定されるものではない。しかし、上記構成によれば、モータや油圧シリンダなどのキャビキーパ30の駆動機構を備える必要がなく、金型装置100の構成を単純なものとすることができ、製造コストを削減することができる。
【0060】
また、本実施の形態では、キャビキーパ30の凹凸構造はコッタ32の凸凹構造と相補するものとなっている。コッタ32は、金型装置100において、固定型と可動型の位置ずれを防ぐために本来必要な構造であり、キャビキーパ30の導入のために新たに必要とされるものではない。この点においても、金型装置100の過度の複雑化を防止している。
【0061】
さらに、本実施の形態では、キャビティ金型16に可動型の移動方向に対して傾斜したアンギュラピン34を備え、アンギュラピン34とスライド部40のスライド機構により、型締め、型開き動作に伴なうスライド部40の前後方向の動作を可能とした。上記構成によれば、型締め、型開きの動作により連動してスライド部40を動作させ、スライド部40の動作により連動してキャビキーパ30の第2の空洞C2からの退避を可能となる。従って、スライド部40及びキャビキーパ30を動作させるための駆動機構を別途備える必要が無く、金型装置100の構成を単純なものとすることができ、製造コストを削減することができる。
【0062】
なお、上記実施の形態において、コッタ32、アンギュラピン34はそれぞれ、1次コア金型10、キャビティ金型16と別体の部材として構成し、それぞれを1次コア金型10、キャビティ金型16に固定したものとして説明した。しかし、これらの型締め、型開きの動作に伴なって移動しない部材は、それぞれ、1次コア金型10、キャビティ金型16と一体に形成されていてもよい。
【0063】
(変形例)
上記に述べたように、金型装置100は、1次成形時には、コッタ32とキャビキーパ30の相互作用により、キャビキーパ30を駆動し、2次成形時には、アンギュラピン34によりスライド部40を駆動し、スライド部40とおキャビキーパ30の相互作用により、キャビキーパ30を駆動する。しかし、本発明は、キャビキーパ30、スライド部40が別途制御される駆動機構により駆動されるように変形することを妨げない。
【0064】
図13は、そのような変形例の1つに係る金型装置100Aの、図6と対応する1次金型の当接状態における成形品保持機構の拡大図である。図14は、同変形例の図7と対応する2次金型の当接状態における成形品保持機構の拡大図である。
【0065】
金型装置100Aの1次金型26Aは、1次コア金型10Aと、キャビティ金型16Aを備える。キャビティ金型16Aは、1次成形品保持部として、キャビキーパ30Aを備える。キャビキーパ30Aは、キャビキーパ30と同様の構成を有する位置決め部材30iを備える。一方、キャビキーパ30とは異なり、第1の空洞C1に向かう前方へ向かって傾斜する傾斜面30Abを有する略台形の断面形状のキャビキーパ本体30Adを備える。キャビキーパ30Aは、前方へ向かって、厚みが薄くなるくちばし状の前端部30Aaを有する。
【0066】
また、図13に示す当接状態において、キャビキーパ30Aの前端部30AaがパーティングラインPLにおいて、1次成形品92に対応する第1の空洞C1の周縁部の端面を画成するように突出している。
【0067】
キャビキーパ30Aは、キャビキーパ30と同様の機構により、キャビティ金型16に対してX軸と直交する前後方向に移動可能になっている。
【0068】
キャビティ金型16Aは、キャビティ金型16と異なり、アンギュラピン34を備えないが、キャビキーパ30Aの外方に、キャビキーパ30Aに接続された油圧シリンダ52を備える。油圧シリンダ52は、図示しない制御部の制御により、キャビキーパ30Aを両矢印で示す前後方向に移動可能としている。
【0069】
1次コア金型10Aは、キャビキーパ30Aと対向する位置にコッタ(図示せず)を備えることを要しない。1次コア金型10Aのキャビキーパ30Aと対向する位置には、当接状態において、キャビキーパ30Aの傾斜面30Abと相補して整合する傾斜面54が形成されている。そして、1次金型の当接状態において、キャビキーパ30Aが前進限に配置されるようになっている。また、1次コア金型10Aは、第1のピン挿入孔として機能するピン挿入部38を備える必要もない。
【0070】
図14に示すように、金型装置100Aの2次金型は、2次コア金型12Aとキャビティ金型16Aを備える。2次コア金型12Aは、スライド部40に代えて、X軸方向を直交する前後方向にスライド可能なスライド部40Aを備える。スライド部40Aは、コッタ部40dを備えず、キャビキーパ30Aの傾斜面30Abと相補し、整合する傾斜面40Abを備える略台形の断面を有する略直方体形状を有する。スライド部40Aの先端部40Aaは、第2の空洞C2に突出して、1次成形品92、2次コア金型12A、と共に第2の空洞C2を画成している。
【0071】
2次コア金型12Aは第2のピン挿入孔としてのピン挿入孔40e、ピン挿入部42を備えない。しかし、スライド部40Aの後方に、スライド部40Aに接続された油圧シリンダ56を備え、スライド部40Aをアンギュラピン34によらず、X方向と直交する前後方向に移動可能としている。
【0072】
2次金型28Aの当接状態において、キャビキーパ30Aは、前端部30Aaが成形空間から退避した、後退限に位置している。
【0073】
そして、1次成形の型締め時には、型締め動作に伴なって、キャビキーパ30Aを前進させるよう油圧シリンダ52を制御し、前進限まで前進させて、パーティングラインPLにおいて第1の空洞C1に突出させる。次に、第1の樹脂材料R1を第1の空洞C1に射出して、1次成形品92を形成する。そして、キャビキーパ30Aの前端部30Aaを1次成形品92の周縁部の端面に係止させた状態で型開きを行い、回転部材14を180°回転させる。
【0074】
ついで、2次成形の型締め動作に伴なって、油圧シリンダ52および油圧シリンダ56を制御して、キャビキーパ30Aを前進限から後退させると同時に、スライド部40Aを前進させる。キャビキーパ30Aとスライド部40Aは、傾斜面30Ab,40Abにより、キャビキーパ30Aの後退と、スライド部40Aの前進との間で相互に摺動可能となっており、滑らかに移動して先端部40Aaが第2の空洞C2に突出して、第2の空洞C2を画成する。次に第2の樹脂材料R2を、第2の空洞C2の1次成形品92以外の部分に射出して、2次成形品94を形成する。その後型開きを行い、形成された二色成形品90を取り出す。
【0075】
このように、成形品保持機構である、キャビキーパ30A,スライド部40Aを別途制御される駆動機構を用いる場合であっても、1次コア金型10Aのキャビキーパ30Aと、2次コア金型12Aのスライド部40Aとを、当接状態で整合する互いに相補する形状に構成し、1次成形の型締め時にキャビキーパ30Aを成形空間(第1の空洞C1)に突出させて、型開き時にキャビキーパ30Aの前端部30Aaで1次成形品92の周縁部の端面を係止するようにしたので、金型装置100と同様に、1次成形後に、1次成形品92をキャビティ金型16Aに保持することが可能とする。また、2次成形の型締め時に、キャビキーパ30Aとスライド部40Aの相補する形状により、キャビキーパ30Aの後退と、スライド部40Aの前進を同時にすることを可能としたので、キャビキーパ30Aと外スライドの両立が可能となる。
【0076】
尚、キャビキーパ30Aおよびスライド部40Aを駆動する駆動機構は、油圧シリンダに限らず、例えばモータを用いてもよい。
【0077】
以上、本発明の好ましい実施の形態について述べたが、上記の実施の形態は本発明の一例でありこれに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0078】
10,10A :1次コア金型
12,12A :2次コア金型
16,16A :キャビティ金型
26,26A :1次金型
28,28A :2次金型
30,30A :キャビキーパ(1次成形品保持部)
30b :凹部(キャビキーパの凹凸構造)
30c :凸部(キャビキーパの凹凸構造)
30e :押え板
30Ab :傾斜面
32 :コッタ
34 :アンギュラピン
38 :ピン挿入部(第1のピン挿入孔)
40,40A :スライド部
40a,40Aa :先端部
40b :凸部(スライド部凹凸構造)
40c :凹部(スライド部凹凸構造)
40Ab :傾斜面
40d :コッタ部
40e :ピン挿入孔(第2のピン挿入孔)
90 :二色成形品
92 :1次成形品
94 :2次成形品
100,100A :金型装置
C1 :第1の空洞
C2 :第2の空洞
PL :パーティングライン
R1 :第1の樹脂材料
R2 :第2の樹脂材料
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14