(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022097295
(43)【公開日】2022-06-30
(54)【発明の名称】口腔用組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/49 20060101AFI20220623BHJP
A61K 8/46 20060101ALI20220623BHJP
A61K 8/44 20060101ALI20220623BHJP
A61K 8/55 20060101ALI20220623BHJP
A61Q 11/00 20060101ALI20220623BHJP
【FI】
A61K8/49
A61K8/46
A61K8/44
A61K8/55
A61Q11/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020210800
(22)【出願日】2020-12-18
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】000106324
【氏名又は名称】サンスター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】秋山 智寛
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 優里
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB172
4C083AB222
4C083AB242
4C083AB282
4C083AC102
4C083AC122
4C083AC132
4C083AC172
4C083AC302
4C083AC432
4C083AC472
4C083AC482
4C083AC661
4C083AC662
4C083AC692
4C083AC781
4C083AC782
4C083AC791
4C083AC792
4C083AC851
4C083AC852
4C083AC862
4C083AC882
4C083AC891
4C083AC892
4C083AD092
4C083AD252
4C083AD272
4C083AD282
4C083AD302
4C083AD352
4C083AD532
4C083BB05
4C083CC41
4C083DD22
4C083DD23
4C083DD39
4C083DD41
4C083EE31
(57)【要約】 (修正有)
【課題】含有されるアニオン性界面活性剤の殺菌効果が、唾液によっても低下し難い、口腔用組成物の提供。
【解決手段】(i)C10~C18の炭素直鎖を有するアニオン性界面活性剤、及び(ii)ニコチン酸又はその誘導体を含有する口腔用組成物。(i)が、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウロイルサルコシンナトリウム、ココイルサルコシンナトリウム、ミリストイルサルコシンナトリウムなどからなる群より選択される少なくとも1の化合物である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)C10~C18の炭素直鎖を有するアニオン性界面活性剤、及び
(ii)ニコチン酸又はその誘導体
を含有する口腔用組成物。
【請求項2】
(i)が、式(1-1):
R-(CH
2)
nCH
3 (1-1)
(式(1-1)中、nは9~17の整数を示し、Rは、
式(A):
【化1】
(式中、MはNa又はKを示し、mは1又は2を示す)で表される基、
式(B):
【化2】
(式中、MはNa又はKを示し、pは0~16の整数を示す)で表される基、
式(C):
【化3】
(式中、MはNa又はKを示す)で表される基、
式(D):
【化4】
(式中、MはNa又はKを示す)で表される基、
式(E):
【化5】
(式中、MはNa又はKを示し、qは同一又は異なって12~16の整数を示し、nは前記に同じ)で表される基、
式(F):
【化6】
(式中、MはNa又はKを示す)で表される基、あるいは
式(G):
【化7】
(式中、MはNa又はKを示す)で表される基を示す。)
で表される化合物、及び、
式(1-2):
R-(CH
2)
a-CH=CH-(CH
2)
bCH
3 (1-2)
(式(1-2)中、aは0~15の整数、bは0~15の整数(ただし、7≦a+b≦15)を示し、Rは前記に同じ)
で表される化合物
からなる群より選択される少なくとも1の化合物である、
請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
(i)が、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウロイルサルコシンナトリウム、ココイルサルコシンナトリウム、ミリストイルサルコシンナトリウム、ミリストイルサルコシンナトリウム、ラウロイルメチルアラニンナトリウム、パルミトイルメチルアラニンナトリウム、ラウレス硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキル(12~14)スルホコハク酸二ナトリウム、ラウロイルメチルタウリンナトリウム、ココイルメチルタウリンナトリウム、ミリストイルメチルタウリンナトリウム、パルミトイルメチルタウリンナトリウム、ポリオキシエチレンアルキル(12~16)エーテルリン酸、ラウロイルグルタミン酸ナトリウム、ミリストイルグルタミン酸ナトリウム、パルミトイルグルタミン酸ナトリウム、及びテトラデセンスルホン酸ナトリウムからなる群より選択される少なくとも1の化合物である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
(ii)がニコチン酸、2-ヒドロキシニコチン酸、イソニコチン酸、2-クロロニコチン酸、及びニコチン酸メチルからなる群より選択される少なくとも1の化合物である、
請求項1~3のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
口腔内殺菌用組成物である、請求項1~4のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
ニコチン酸又はその誘導体からなる、C10~C18の炭素直鎖を有するアニオン性界面活性剤の口腔内殺菌力増強剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、口腔用組成物や口腔用組成物に含有される成分等に関する。なお、本明細書に記載される全ての文献の内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
口腔用組成物には、口腔内殺菌効果を高めるために、殺菌剤が配合されることがしばしばある。口腔用組成物に配合される殺菌剤として様々な成分が知られており、例えばアニオン性界面活性剤が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ただ、口腔用組成物を口腔内に適用した際、口腔用組成物に配合される殺菌剤は唾液中の成分の影響を受け、その殺菌効果が低下してしまう。
【0005】
そこで、本発明者らは、殺菌剤、特にアニオン性界面活性剤について、唾液の影響により、その殺菌効果が低下しないようにする手段の開発を試みた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、口腔用組成物に、アニオン性界面活性剤に加えて、ニコチン酸又はその誘導体を配合することにより、アニオン性界面活性剤の奏する殺菌効果が唾液によっても低下し難くなる可能性を見出し、さらに改良を重ねた。
【0007】
本開示は例えば以下の項に記載の主題を包含する。
項1.
(i)C10~C18の炭素直鎖を有するアニオン性界面活性剤、及び
(ii)ニコチン酸又はその誘導体
を含有する口腔用組成物。
項2.
(i)が、式(1-1):
R-(CH2)nCH3 (1-1)
(式(1-1)中、nは9~17の整数を示し、Rは、
式(A):
【0008】
【0009】
(式中、MはNa又はKを示し、mは1又は2を示す)で表される基、
式(B):
【0010】
【0011】
(式中、MはNa又はKを示し、pは0~16の整数を示す)で表される基、
式(C):
【0012】
【0013】
(式中、MはNa又はKを示す)で表される基、
式(D):
【0014】
【0015】
(式中、MはNa又はKを示す)で表される基、
式(E):
【0016】
【0017】
(式中、MはNa又はKを示し、qは同一又は異なって12~16の整数を示し、nは前記に同じ)で表される基、
式(F):
【0018】
【0019】
(式中、MはNa又はKを示す)で表される基、あるいは
式(G):
【0020】
【0021】
(式中、MはNa又はKを示す)で表される基を示す。)
で表される化合物、及び、
式(1-2):
R-(CH2)a-CH=CH-(CH2)bCH3 (1-2)
(式(1-2)中、aは0~15の整数、bは0~15の整数(ただし、7≦a+b≦15)を示し、Rは前記に同じ)
で表される化合物
からなる群より選択される少なくとも1の化合物である、
項1に記載の組成物。
項3.
(i)が、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウロイルサルコシンナトリウム、ココイルサルコシンナトリウム、ミリストイルサルコシンナトリウム、ミリストイルサルコシンナトリウム、ラウロイルメチルアラニンナトリウム、パルミトイルメチルアラニンナトリウム、ラウレス硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキル(12~14)スルホコハク酸二ナトリウム、ラウロイルメチルタウリンナトリウム、ココイルメチルタウリンナトリウム、ミリストイルメチルタウリンナトリウム、パルミトイルメチルタウリンナトリウム、ポリオキシエチレンアルキル(12~16)エーテルリン酸、ラウロイルグルタミン酸ナトリウム、ミリストイルグルタミン酸ナトリウム、パルミトイルグルタミン酸ナトリウム、及びテトラデセンスルホン酸ナトリウムからなる群より選択される少なくとも1の化合物である、項1に記載の組成物。
項4.
(ii)がニコチン酸、2-ヒドロキシニコチン酸、イソニコチン酸、2-クロロニコチン酸、及びニコチン酸メチルからなる群より選択される少なくとも1の化合物である、
項1~3のいずれかに記載の組成物。
項5.
口腔内殺菌用組成物である、項1~4のいずれかに記載の組成物。
項6.
ニコチン酸又はその誘導体からなる、C10~C18の炭素直鎖を有するアニオン性界面活性剤の口腔内殺菌力増強剤。
【発明の効果】
【0022】
含有されるアニオン性界面活性剤の殺菌効果が、唾液中成分によっても低下し難い、口腔用組成物が提供される。また、口腔内における、アニオン性界面活性剤の殺菌効果増強剤が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本開示に包含される各実施形態について、さらに詳細に説明する。本開示は、口腔用組成物や、口腔内におけるアニオン性界面活性剤の殺菌効果増強剤等を好ましく包含するが、これらに限定されるわけではなく、本開示は本明細書に開示され当業者が認識できる全てを包含する。
【0024】
本開示に包含される口腔用組成物は、(i)C10~C18の炭素直鎖を有するアニオン性界面活性剤、及び(ii)ニコチン酸又はその誘導体を含有する。以下、本開示に包含される当該口腔用組成物を「本開示の口腔用組成物」ということがある。また、C10~C18の炭素直鎖を有するアニオン性界面活性剤を成分(i)ということがある。また、ニコチン酸又はその誘導体を成分(ii)ということがある。
【0025】
成分(i)におけるC10~C18の炭素直鎖は、飽和であっても不飽和であってもよい。不飽和である場合は、当該炭素直鎖中に1又は2の炭素間二重結合を持つものが好ましく、1の炭素間二重結合を持つものがより好ましい。
【0026】
成分(i)、すなわちC10~C18(C10、C11、C12、C13、C14、C15、C16、C17、又はC18)の炭素直鎖を有するアニオン性界面活性剤としては、式(1-1):
R-(CH2)nCH3 (1-1)
で表される化合物が好ましく挙げられる。
【0027】
nは9~17の整数(9、10、11、12、13、14、15、16、又は17)を示す。
【0028】
また、式(1-2):
R-(CH2)a-CH=CH-(CH2)bCH3 (1-2)
で表される化合物が好ましく挙げられる。
【0029】
aは0~15の整数、bは0~15の整数(ただし、7≦a+b≦15)を示す。つまり、a+b=7、8、9、10、11、12、13、14、又は15になる範囲において、aは0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、又は15で有り得、bは0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、又は15で有り得る。(a、b)の特に好ましい組み合わせとして、例えば、(a、b)=(4、7)が挙げられる。
【0030】
また、式(1-1)及び式(1-2)における、Rとしては、好ましくは例えば、
式(A):
【0031】
【0032】
(式中、MはNa又はKを示し、mは1又は2を示す)で表される基、
式(B):
【0033】
【0034】
(式中、MはNa又はKを示し、pは0~16の整数を示す)で表される基、
式(C):
【0035】
【0036】
(式中、MはNa又はKを示す)で表される基、
式(D):
【0037】
【0038】
(式中、MはNa又はKを示す)で表される基、
式(E):
【0039】
【0040】
(式中、MはNa又はKを示し、qは同一又は異なって12~16の整数を示し、nは前記に同じ)で表される基、
式(F):
【0041】
【0042】
(式中、MはNa又はKを示す)で表される基、あるいは、
式(G):
【0043】
【0044】
(式中、MはNa又はKを示す)で表される基
が挙げられる。
【0045】
なお、上記の通り、pは0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、又は16を示し、qは12、13、14、15、又は16を示す。また、Rが式(E)で表される基である場合には、式(1-1)にはnが2つ存在するが、この場合nは同一又は異なっていてよく、同一であることが好ましい。
【0046】
成分(i)の、より具体的な例としては、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウロイルサルコシンナトリウム、ココイルサルコシンナトリウム、ミリストイルサルコシンナトリウム、ミリストイルサルコシンナトリウム、ラウロイルメチルアラニンナトリウム、パルミトイルメチルアラニンナトリウム、ラウレス硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキル(12~14)スルホコハク酸二ナトリウム、ラウロイルメチルタウリンナトリウム、ココイルメチルタウリンナトリウム、ミリストイルメチルタウリンナトリウム、パルミトイルメチルタウリンナトリウム、ポリオキシエチレンアルキル(12~16)エーテルリン酸、ラウロイルグルタミン酸ナトリウム、ミリストイルグルタミン酸ナトリウム、パルミトイルグルタミン酸ナトリウム、テトラデセンスルホン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0047】
成分(i)の化合物は1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0048】
成分(ii)、すなわちニコチン酸又はその誘導体における、ニコチン酸誘導体としては、例えば、2-ヒドロキシニコチン酸、イソニコチン酸、2-クロロニコチン酸、ニコチン酸メチル等が好ましく挙げられる。成分(ii)の化合物は1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0049】
本開示の口腔用組成物においては、成分(i)1質量部に対して成分(ii)が0.05~10質量部含有されることが好ましい。当該範囲(0.05~10質量部)の上限又は下限は、例えば0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、5、5.1、5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、6、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、7、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8、7.9、8、8.1、8.2、8.3、8.4、8.5、8.6、8.7、8.8、8.9、9、9.1、9.2、9.3、9.4、9.5、9.6、9.7、9.8、又は9.9質量部であってもよい。例えば当該範囲は0.1~9であってもよい。
【0050】
また、本開示の口腔用組成物においては、成分(i)は、0.05~2質量%程度含有されることが好ましい。当該範囲(0.05~2質量%)の上限又は下限は、例えば0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、又は1.9質量%であってもよい。例えば当該範囲は、0.1~1.5質量%であってもよい。
【0051】
また、本開示の口腔用組成物においては、成分(ii)は、0.01~1質量%程度含有されることが好ましい。当該範囲(0.01~1質量%)の上限又は下限は、例えば0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.11、0.12、0.13、0.14、0.15、0.16、0.17、0.18、0.19、0.2、0.21、0.22、0.23、0.24、0.25、0.26、0.27、0.28、0.29、0.3、0.31、0.32、0.33、0.34、0.35、0.36、0.37、0.38、0.39、0.4、0.41、0.42、0.43、0.44、0.45、0.46、0.47、0.48、0.49、0.5、0.51、0.52、0.53、0.54、0.55、0.56、0.57、0.58、0.59、0.6、0.61、0.62、0.63、0.64、0.65、0.66、0.67、0.68、0.69、0.7、0.71、0.72、0.73、0.74、0.75、0.76、0.77、0.78、0.79、0.8、0.81、0.82、0.83、0.84、0.85、0.86、0.87、0.88、0.89、0.9、0.91、0.92、0.93、0.94、0.95、0.96、0.97、0.98、又は0.99質量%であってもよい。例えば当該範囲は0.02~0.9質量%であってもよい。なお、特に限定はされないが、成分(ii)としてニコチン酸誘導体を用いる場合は、0.1~0.5質量%程度であることが好ましい。
【0052】
本開示の口腔用組成物は、公知の方法又は公知の方法から容易に想到する方法により製造することができる。また、本開示の口腔用組成物は、例えば医薬品、医薬部外品、化粧品としても用いることができる。また、本開示の口腔用組成物の形態は、特に限定するものではないが、例えば軟膏剤、ペースト剤、パスタ剤、ジェル剤、液剤、スプレー剤、洗口液剤、液体歯磨剤、練歯磨剤、塗布剤等の形態(剤形)にすることができる。
【0053】
本開示の口腔用組成物には、成分(i)及び成分(ii)の他に、本発明の効果を損なわない範囲で、口腔用組成物に配合し得る任意成分を、単独で又は2種以上組み合わせて、さらに配合してもよい。
【0054】
例えば、界面活性剤として、成分(i)以外の界面活性剤、例えばノニオン界面活性剤及び/又は両性界面活性剤をさらに配合することができる。具体的には、ノニオン界面活性剤としてはショ糖脂肪酸エステル、マルトース脂肪酸エステル、ラクトース脂肪酸エステル等の糖脂肪酸エステル;脂肪酸アルカノールアミド類;ソルビタン脂肪酸エステル;脂肪酸モノグリセライド;ポリオキシエチレン付加係数が8~10、アルキル基の炭素数が13~15であるポリオキシエチレンアルキルエーテル;ポリオキシエチレン付加係数が10~18、アルキル基の炭素数が9であるポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル;セバシン酸ジエチル;ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油;脂肪酸ポリオキシエチレンソルビタン、アルキル基の炭素数が8~16のアルキルグルコシド等が例示される。両性イオン界面活性剤としては、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン等の酢酸ベタイン型活性剤;N-ココイル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルエチレンジアミンナトリウム等のイミダゾリン型活性剤;N-ラウリルジアミノエチルグリシン等のアミノ酸型活性剤等が例示される。また、ヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド、ヤシ油脂肪酸アミドベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン及びN-ヤシ油脂肪酸アシルL-アルギニンエチルdl-ピロリドンカルボン酸塩等も好ましく例示される。これらの界面活性剤は、単独または2種以上を組み合わせて配合することができる。
【0055】
また、サッカリンナトリウム、アセスルファムカリウム、ステビオサイド、スクラロース、ネオヘスペリジルジヒドロカルコン、ペリラルチン、タウマチン、アスパラチルフェニルアラニルメチルエステル、p-メトキシシンナミックアルデヒド等の甘味剤を配合し得る。これらは、単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。またこれらは、組成物全量に対して例えば0.01~1質量%配合することができる。
【0056】
また、粘結剤として、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルエチルセルロース塩、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのセルロース誘導体、キサンタンガム、ジェランガムなどの微生物産生高分子、トラガントガム、カラヤガム、アラビアガム、カラギーナン、デキストリンなどの天然高分子または天然ゴム類、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンなどの合成高分子、増粘性シリカ、ビーガムなどの無機粘結剤、塩化O-[2-ヒドロキシ-3-(トリメチルアンモニオ)プロピル]ヒドロキシエチルセルロースなどのカチオン性粘結剤を1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0057】
さらに、湿潤剤として、ソルビトール、グリセリン、プロピレングリコール、キシリット、マルチット、ラクチット、ポリオキシエチレングリコール等を単独または2種以上を組み合わせて配合することができる。
【0058】
防腐剤として、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベン等のパラベン類、安息香酸ナトリウム、フェノキシエタノール、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン等を単独又は2種以上組み合わせて配合することができる。
【0059】
着色剤として、青色1号、黄色4号、赤色202号、緑3号等の法定色素、群青、強化群青、紺青等の鉱物系色素、酸化チタン等を単独又は2種以上組み合わせて配合してもよい。
【0060】
pH調整剤として、クエン酸、リン酸、リンゴ酸、ピロリン酸、乳酸、酒石酸、グリセロリン酸、酢酸、硝酸、またはこれらの化学的に可能な塩や水酸化ナトリウム等を配合してもよい。これらは、組成物のpHが例えば4~9、好ましくは5~8の範囲となるよう、単独または2種以上を組み合わせて配合することができる。pH調整剤の配合量は例えば0.01~2重量%が例示される。
【0061】
薬効成分として、例えば、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩酸クロルヘキシジン、グルコン酸クロルヘキシジン等のカチオン性殺菌剤、ドデシルジアミノエチルグリシン等の両性殺菌剤、トリクロサン、イソプロピルメチルフェノール等の非イオン性殺菌剤、ヒノキチオール等が挙げられる。またさらに、殺菌剤以外の薬効成分を配合することもできる。例えば、乳酸アルミニウム、硝酸カリウム、酢酸dl-α-トコフェロール、コハク酸トコフェロール、またはニコチン酸トコフェロール等のビタミンE類、フッ化ナトリウム、β-グリチルレチン酸、グリチルリチン酸二カリウム等を配合してもよい。薬効成分は単独または2種以上を組み合わせて配合することができる。
【0062】
また、基剤として、例えば、アルコール類、シリコン、アパタイト、白色ワセリン、パラフィン、流動パラフィン、マイクロクリスタリンワックス、スクワラン、プラスチベース等を単独または2種以上を組み合わせて添加することも可能である。
【0063】
なお、以上の任意成分の記載は例示であり、用い得る任意成分を限定するものではない。
【0064】
本開示の口腔用組成物には、成分(ii)が含有されるため、唾液による成分(i)の殺菌力低下が抑制されている。このため、殺菌に要する時間が成分(ii)が含有されない場合に比べ、短くてすむ。よって、口腔ケアに要する時間を短縮することが可能になる。また、成分(i)の殺菌力は、口腔用組成物においては例えば歯周病菌の殺菌のために好ましく用いられる。このため、特に限定はされないが、本開示の口腔用組成物は、例えば口腔内歯周病菌保有対象(特に歯周病患者)のためにも好ましく用いることができる。またさらに、唾液による成分(i)の殺菌力低下は、個人差がある(例えば、唾液による成分(i)の殺菌力低下が著しい人もいれば、唾液による成分(i)の殺菌力低下が穏やかな人もいる)ことから、特に限定はされないが、本開示の口腔用組成物は、例えば唾液による成分(i)の殺菌力低下抑制が求められる対象(より具体的には、例えば、唾液により成分(i)の殺菌力が低下する対象、歯周病など菌による口腔内疾患を患っている対象等)のためにも好ましく用いることができる。また、対象としては、ヒトのみならず、非ヒト哺乳類も包含される。例えば、ペットや家畜も包含され得る。より具体的には、例えばイヌ、ネコ、サル、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、マウス、ラット等も包含され得る。
【0065】
本開示は、成分(i)と成分(ii)とを組み合わせて用いることを含む、唾液による成分(i)殺菌力低下抑制方法、並びに、成分(i)と成分(ii)とを組成物に含有させることを含む、口腔用組成物製造方法も包含する。
【0066】
またさらに、本開示は、成分(ii)からなる、成分(i)の口腔内殺菌力増強剤をも包含する。当該口腔用殺菌増強剤は、特に口腔内殺菌時間短縮剤として好ましく用いることができる。
【0067】
なお、本明細書において「含む」とは、「本質的にからなる」と、「からなる」をも包含する(The term "comprising" includes "consisting essentially of” and "consisting of.")。また、本開示は、本明細書に説明した構成要件を任意の組み合わせを全て包含する。
【0068】
また、上述した本開示の各実施形態について説明した各種特性(性質、構造、機能等)は、本開示に包含される主題を特定するにあたり、どのように組み合わせられてもよい。すなわち、本開示には、本明細書に記載される組み合わせ可能な各特性のあらゆる組み合わせからなる主題が全て包含される。
【実施例0069】
以下、例を示して本開示の実施形態をより具体的に説明するが、本開示の実施形態は下記の例に限定されるものではない。
【0070】
唾液採取
各被験者(被験者A又はB)に界面活性剤及び殺菌剤を含まない歯磨剤で歯磨き(ブラッシング)を行ってもらい、唾液(無刺激唾液)を10mLずつ採取した。なお、採取した唾液は冷蔵保存し、使用直前に、23Gの注射針および10mlシリンジ(ともにテルモ社製)を用いて吸引と吐出を5回繰り返してから、使用に供した。
【0071】
被験薬剤溶液の調製
成分(i)に属する各化合物を0.05~2%(w/v)、及び、成分(ii)に属する各化合物を0.01~1%(w/v)を含有する被験薬剤溶液を調製した。なお、当該被験薬剤溶液の調製にあたっては、ニコチン酸、イソニコチン酸、ニコチン酸メチル、及びニコチン酸アミドを含有する溶液については、水溶液を調製して、これを用いた。2-ヒドロキシニコチン酸及び2-クロロニコチン酸を含有する溶液については、終濃度5%(v/v)のDMSO溶液を調製して、これを水で10倍希釈して用いた。
【0072】
なお、いずれの被験薬剤溶液も濃度は%(w/v)で示すが、これは%(w/w)の値とほとんど変わらない(%(w/w)の方が僅かに大きくなる程度である)ため、%(w/w)(すなわち、質量%)と解釈しても差し支えない。より具体的には、例えば、JIS K 9702、JIS Z 8804より算出した5%(v/v)のDMSO溶液の密度は、0.994g/cm3であるため、2-ヒドロキシニコチン酸及び2-クロロニコチン酸0.1%(w/v)は、0.10060362質量%と計算できる。
【0073】
殺菌試験
96ウェルプレートA列に被験薬剤溶液を200μLずつ分注し、B~H列に、アニオン性界面活性剤の殺菌作用の不活のため及び口腔内細菌培養のための、TSB/Y/VH培地を200μLずつ分注した。
【0074】
なお、TSB/Y/VH培地は、アニオン性界面活性剤の殺菌作用を不活化することができるため、当該培地の添加タイミングを調整することにより殺菌時間を調整することができる。TSB/Y/VH培地は、Tripticase Soy Broth(TSB)30g、Yeast Extract 1g、Hemin/menadion solution 1g、レシチン 0.7g、およびTween80 5gを蒸留水に溶解させ、1Lにメスアップしたものをオートクレーブ滅菌して調製したものを用いた。Hemin/menadion solutionは、Hemin 0.25gを1N NaOH 5mlに溶解し、蒸留水20mlを加えたのち、menadion(VitaminK3) 0.025gを99%エタノール 25mlに溶解したものを混合して調製したものである。
【0075】
前記A列に唾液を20μL添加し、ピペッティングした後、各時間ごとにA列からB~H列へ20μLずつ添加した。より具体的には、唾液20μlをA列に添加しピペッティングにて混合した時点を計測開始点とし、当該A列の溶液20μlを、30秒経過後にはB列に、60秒経過後にはC列に、90秒経過後にはD列に、120秒経過後にはE列に、180秒経過後にはF列に、240秒経過後にはG列に、300秒経過後にはH列に、それぞれ添加しピペッティングにて混合した。その後、アネロパック・ケンキ(三菱ガス化学社製)を用いて48時間嫌気培養を行い、菌の生育の有無を目視で確認し、生死の判定を行った。より具体的には、目視にて培地が混濁している場合は細菌が増殖し、溶液中の細菌が完全に殺菌されていないと判定した。
【0076】
30秒、60秒、90秒、120秒、180秒、240秒、300秒後にA列から採取した各溶液について判定を行い、初めて培地が混濁せず、溶液中の細菌が殺菌された時間を殺菌時間とした。
【0077】
表1及び表2に結果を示す。表1では、成分(i)として用いたラウリル硫酸ナトリウム単独での各被験者の唾液に対する上記殺菌時間を100%とした場合の、各成分(ii)を更に添加した際の殺菌時間を相対値で示した。また、表2では、各成分(i)単独での各被験者の唾液に対する上記殺菌時間を100%とした場合の、成分(ii)として用いたニコチン酸を更に添加した際の殺菌時間を相対値で示した。例えば、被験者A唾液にラウリル硫酸ナトリウム0.1%(w/v)を混合したときの殺菌時間が360秒であり、被験者A唾液にラウリル硫酸ナトリウム0.1%(w/v)及びニコチン酸0.1%(w/v)を含有する被験薬剤溶液を混合したときの殺菌時間が180秒であったとすると、この場合の殺菌時間相対値は50%である。
【0078】
【0079】
【0080】
以下に処方例を示す。なお、以下の処方例を示す表に記載される各成分の数値(配合量)は質量%を示す。
【0081】
【0082】
【0083】
【0084】
【0085】
【0086】
【0087】