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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022097311
(43)【公開日】2022-06-30
(54)【発明の名称】車いす用の補強部材及び車いす
(51)【国際特許分類】
   A61G 5/10 20060101AFI20220623BHJP
   A61G 5/08 20060101ALI20220623BHJP
【FI】
A61G5/10 703
A61G5/08 702
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020210836
(22)【出願日】2020-12-18
(71)【出願人】
【識別番号】000138244
【氏名又は名称】株式会社モルテン
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】村岡 拓
(72)【発明者】
【氏名】河野 博
(57)【要約】
【課題】車いすの折り畳み機構を維持したまま、展開した際の剛性を高め走行性能を向上する補強部材、及びその補強部材を備える車いすを提供する。
【解決手段】車いす10用の補強部材60は、細長の基体61と、基体61の中央に設けられ、基体61の一方側と他方側を屈曲伸展可能に連結する連結部62と、基体61の一方側と他方側それぞれの中間位置に設けられ、補強部材60が車いす10に取り付けられたときの基体61の上面側で回動可能に軸支された一対のアーム部63L,63Rと、を備え、一対のアーム部63L,63Rは、車いす10の着座部12を形成する一対のシートパイプ121L,121Rにそれぞれ着脱可能に組み付けられる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車いす用の補強部材であって、
細長の基体と、
前記基体の中央に設けられ、前記基体の一方側と他方側を屈曲伸展可能に連結する連結部と、
前記基体の一方側と他方側それぞれの中間位置に設けられ、前記補強部材が前記車いすに取り付けられたときの前記基体の上面側で回動可能に軸支された一対のアーム部と、を備え、
前記一対のアーム部は、前記車いすの着座部を形成する一対のシートパイプにそれぞれ着脱可能に組み付けられる、
ことを特徴とする補強部材。
【請求項2】
各アーム部は、
その先端で前記基体の長手方向と交差する方向に拡開して設けられ、各シートパイプの外面に当接する当接部と、
前記当接部の外側に離間して螺着して設けられ、各シートパイプの内面に沿って摺動するレール部と、を備える、
ことを特徴とする請求項1に記載の補強部材。
【請求項3】
前記車いすが展開しているとき、前記基体の両端が前記車いすの基本骨格を形成する一対のフレームの一部に係合し、前記基体は、前記連結部が押し込まれることにより伸展状となる、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の補強部材。
【請求項4】
前記車いすが折り畳まれているとき、前記基体の両端が前記車いすの基本骨格を形成する一対のフレームの一部から離間し、前記基体は、前記連結部が引き上げられることにより前記基体の上面側に向かって屈曲状となる、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の補強部材。
【請求項5】
車いすであって、
基本骨格を形成する一対のフレームと、
着座部を形成する一対のシートパイプと、
請求項1又は2に記載の補強部材と、を備える、
ことを特徴とする車いす。
【請求項6】
前記車いすが展開しているとき、前記補強部材の前記基体の両端が前記一対のフレームの一部に係合し、前記基体は、前記連結部が押し込まれることにより伸展状となる、ことを特徴とする請求項5に記載の車いす。
【請求項7】
前記車いすが折り畳まれているとき、前記補強部材の前記基体の両端が前記一対のフレームの一部から離間し、前記基体は、前記連結部が引き上げられることにより前記基体の上面側に向かって屈曲状となる、ことを特徴とする請求項5に記載の車いす。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車いす用の補強部材及び車いすに関する。
【背景技術】
【0002】
車いすには、固定式の車いすと、折り畳み式の車いすがある。固定式の車いすは、使用時における剛性が高く走行性能も良好である一方、不使用時にはその保管にスペースを取るという難点がある。これに対し、折り畳み式の車いすは、不使用時には折り畳んで省スペースを図ることができるが、例えば、旋回や加速等により車いすに負荷が掛かる場合などに、ねじれ、たわみ、ガタツキが生じてしまい、使用時における剛性や走行性能が不十分となることがある。
【0003】
一般に、折り畳み式の車いすは、左右方向(幅方向)に展開し、かつ、折り畳めるように、左右のフレームをX字状の支持部材で連結しておき、X字の中央の軸を中心として支持部材を回動させることにより横方向に広げたり畳んだりすることができる折り畳み機構を備えている。これを別の視点から見ると、左右のフレームを横方向に直線的に連結する部材は設けられていないことになる。このような態様に対し、例えば特許文献1は、X字状の支持部材(特許文献1ではクロスフレーム91と呼称)の支持力を高めるために、折り畳み可能で車いすを展開した際に横方向に直線的になる補強部材(特許文献1ではロック機構93と呼称)をX字状の支持部材に付加する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-103792号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような車いすでは、補強部材がX字状の支持部材に付加されており、車いす本体の左右のフレームや座面を構成するシートパイプを直接的に支持するものではないため、車いすを展開したときの剛性や走行性能の改善に必ずしも十分とは言えず、また、X字状の支持部材を備える既存の車いすに補強部材を後付けで設けることができないという課題があった。
【0006】
本発明は、上述のような課題に鑑みなされたものであり、車いすの折り畳み機構を維持したまま、展開した際の剛性を高め走行性能を向上する補強部材及びその補強部材を備える車いすを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記目的を達成するために、以下の構成によって把握される。
(1)本発明の第1の観点は、車いす用の補強部材であって、細長の基体と、前記基体の中央に設けられ、前記基体の一方側と他方側を屈曲伸展可能に連結する連結部と、前記基体の一方側と他方側それぞれの中間位置に設けられ、前記補強部材が前記車いすに取り付けられたときの前記基体の上面側で回動可能に軸支された一対のアーム部と、を備え、前記一対のアーム部は、前記車いすの着座部を形成する一対のシートパイプにそれぞれ着脱可能に組み付けられる、ことを特徴とする。
【0008】
(2)上記(1)の構成において、各アーム部は、その先端で前記基体の長手方向と交差する方向に拡開して設けられ、各シートパイプの外面に当接する当接部と、前記当接部の外側に離間して螺着して設けられ、各シートパイプの内面に沿って摺動するレール部と、を備える。
【0009】
(3)上記(1)又は(2)の構成において、前記車いすが展開しているとき、前記基体の両端が前記車いすの基本骨格を形成する一対のフレームの一部に係合し、前記基体は、前記連結部が押し込まれることにより伸展状となる。
【0010】
(4)上記(1)又は(2)の構成において、前記車いすが折り畳まれているとき、前記基体の両端が前記車いすの基本骨格を形成する一対のフレームの一部から離間し、前記基体は、前記連結部が引き上げられることにより前記基体の上面側に向かって屈曲状となる。
【0011】
(5)本発明の第2の観点は、車いすであって、基本骨格を形成する一対のフレームと、着座部を形成する一対のシートパイプと、請求項1又は2に記載の補強部材と、を備える、ことを特徴とする。
【0012】
(6)上記(5)の構成において、前記車いすが展開しているとき、前記補強部材の前記基体の両端が前記一対のフレームの一部に係合し、前記基体は、前記連結部が押し込まれることにより伸展状となる。
【0013】
(7)上記(5)の構成において、前記車いすが折り畳まれているとき、前記補強部材の前記基体の両端が前記一対のフレームの一部から離間し、前記基体は、前記連結部が引き上げられることにより前記基体の上面側に向かって屈曲状となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、車いすの折り畳み機構を維持したまま、展開した際の剛性を高め走行性能を向上する補強部材、及びその補強部材を備える車いすを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態に係る補強部材を適用した車いすの例について、右側方から見た側面図である。
図2】同じく、車いすを前方から見た正面図である。
図3】同じく、車いすを後方から見た背面図である。
図4】同じく、車いすを下方から見た底面図である。
図5】同じく、車いすを上前方から見た斜視図である。
図6】同じく、車いすを下前方から見た斜視図である。
図7】同じく、車いすを上後方から見た斜視図である。
図8】同じく、車いすを下後方から見た斜視図である。
図9】同じく、車いすの着座部の支持構造を下前方から見て説明する図である。
図10】本発明の実施形態に係る補強部材の例について、伸展状態のものを前方から見た正面図である。
図11】同じく、補強部材を上方から見た平面図である。
図12】同じく、補強部材を下方から見た底面図である。
図13】同じく、補強部材を上前方から見た斜視図である。
図14】同じく、補強部材を下前方から見た斜視図である。
図15】同じく、図10において補強部材の一部を長手方向に断面視した縦断面図である。
図16】同じく、屈曲状態の補強部材を前方から見た正面図である。
図17】同じく、補強部材の車いすの着座部への組み付けを下前方から見て説明する拡大図である。
図18】本発明の実施形態に係る車いすにおいて、折り畳み及び展開の動作を前方から見て説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という)を、添付図面に基づいて詳細に説明する。図1から図9は車いす10の全体について、図10から図17は補強部材60について、図18は車いす10を展開及び折り畳みした際の動作について、それぞれ説明する図である。以下の説明において、前後、左右、上下という方向を現す記載については、車いす10に着座する使用者から見た方向を示している。実施形態の説明の全体を通して同じ要素には同じ符号を付しているが、左右に一対の要素の符号には、左側のものには番号に添え字Lを、右側のものには番号に添え字Rを付す一方、特に左右の区別をしない場合には添え字を付さないで番号のみで表記する場合がある。
【0017】
(実施形態)
詳しくは後述するが、本実施形態に係る車いす10用の補強部材60は、細長の基体61と、基体61の中央に設けられ、基体61の一方側と他方側を屈曲伸展可能に連結する連結部62と、基体61の一方側と他方側それぞれの中間位置に設けられ、補強部材60が車いす10に取り付けられたときの基体61の上面側で回動可能に軸支された一対のアーム部63L,63Rと、を備えている。そして、一対のアーム部63L,63Rは、車いす10の着座部12を形成する一対のシートパイプ121L,121Rに着脱可能に組み付けられる。以下、車いす10と補強部材60に分けて詳しく説明する。
【0018】
(車いす)
まず、本実施形態に係る車いす10の構成について、図1から図9を用いて説明する。なお、車いす10の構成は、本実施形態に係る補強部材60の適用において図示されたものには限定されない。補強部材60は、種々の態様の車いす10に適用可能である。また、補強部材60は、折り畳み式の車いす10に好適に用いられるが、固定式の車いすであっても、より一層の剛性が求められるような場合に補強部材60を設けてもよいことに留意されたい。
【0019】
図1から図4に示すように(図5から図8も適宜参照)、車いす10は、基本骨格を形成するフレーム11(左右に一対のフレーム11L,11R。以下同様)と、着座部12を形成するシートパイプ121(左右に一対のシートパイプ121L,121R。以下同様)と、を備える。より詳しくは、車いす10では、フレーム11が下前方から上後方に向かって略横転S字状に延在しており、その途中には使用者が着座する着座部12、背もたれ13及び腕を休める肘掛け14(左右に一対の一肘掛け14L,14R。以下同様)が設けられている。フレーム11の上後方端は、介助者用のグリップ15(左右に一対のグリップ15L,15R。以下同様)となっている。なお、ここでは図示していないが、グリップ15には、介助者用の手動ブレーキを設けてもよい。
【0020】
フレーム11の前下方端には使用者の足を置くステップ20が配置されている。ステップ20は、支柱部21(左右に一対の支柱部21L,21R。以下同様)と、支柱部21の先端に軸支された足置き部22を含む。支柱部21は、フレーム11の前下方端の内部に収納可能となっており、使用者の体型に合わせて上下方向に伸縮できる。足置き部22は、車いす10を展開した際には、一対の支柱部21L,21Rの先端を架け渡す形となり、車いす10を折り畳んだ際には、中央が上方に向かって二つ折りになる。
【0021】
フレーム11からは、着座部12の前側に対応する位置において、着座部12を形成するシートパイプ121の前方を支持するため、先端が凹状の溝に形成されたフック部122(左右に一対のフック部122L,122R。以下同様)が垂下している(フック部122については、図4から図8を参照)。シートパイプ121の前側は、このフック部122の凹状の溝に載置される。後述するように、シートパイプ121の後側は支持部材50によって支持されており、この前方と後方の支持により、着座部12が形成される。一対のシートパイプ121L,121Rの間には座布123が取り付けられている。なお、座布123の上には、クッションが載置されてもよく、さらにそのクッションは、別に設けた操作部(リモコンなど)の操作によってクッション性が制御されるパワークッションとしてもよい。
【0022】
車いす10は、前輪としてキャスタ30(左右に一対のキャスタ30L,30R。以下同様)を、後輪としてホイール40(左右に一対のホイール40L、40R。以下同様)を備えている。キャスタ30は、フレーム11の下前方端の近傍から下後方側に凸状に湾曲して延在する前輪取付部16(左右に一対の前輪取付部16L,16R。以下同様)に取り付けられている。キャスタ30は、平面視で360度回転することができ、車いす10を自由に方向転換する役割を果たす。
【0023】
ホイール40は、駆動力を床面に伝達する駆動輪であり、ホイール40の外側には、車いす10を使用者が自ら手動で移動できるように、ハンドリム41(左右に一対のハンドリム41L,41R。以下同様)が配置されている。ホイール40(図1から図8では、右側のホイール40R)には、ストッパ42が設けられている。ストッパ42は、手動又は電動としてもよい。なお、ここではハンドリム41を用いた手動による自走型の車いす10について説明しているが、本実施形態ではこれに限定されるものではなく、例えば、電動型や補助駆動装置を装着した車いす10でもよい。
【0024】
ホイール40は、次のような構成をもってフレーム11に取り付けられている。まず、フレーム11には、着座部12の略中央に対応する位置において、下後方に向かって凹状に湾曲して延在する後輪取付部17(左右に一対の後輪取付部17L,17R。以下同様)が設けられている。この後輪取付部17の後側は、上下方向に縦長の支承部18(左右に一対の支承部18L,18R。以下同様)に固定される。そして、支承部18には、車軸19(左右に一対の車軸19L,19R)が高さ調節可能に取り付けられており、車軸19にホイール40が固定される。
【0025】
車いす10は、左右方向(幅方向)に折り畳み可能とし、折り畳んだ際に一対のフレーム11L,11Rを幅寄せできるように、図2から図8にそれぞれ示すとおり、一対のフレーム11L,11Rは、常備の支持構造としてX字状(クロスバー)の支持部材50によって連結されている。
【0026】
図4を見ると明らかなように、支持部材50は、前後方向において、後輪であるホイール40の車軸19よりも若干前方に設けられており、着座部12に対しては、シートパイプ121の後側を支持していることになる。一方、前述したとおり、シートパイプ121の前側は、フレーム11から垂下するフック部122に載置されている状態である。そのため、左右に一対のシートパイプ121L,121Rあるいは左右に一対のフレーム11L,11Rの前後を固定している固定式の車いすと比べて、折り畳み式の車いす10は、旋回や加速等により車いすに負荷が掛かる場合などの使用態様によっては、ねじれ、たわみ、ガタツキが生じる場合がある。これらが生じた場合、例えば、左右に一対のホイール40L,40Rが平行にならず、使用者が手で左右に一対のハンドリム41L,41Rを回転させて前進後進しようとしても、重く感じる。そこで、本実施形態では、補強部材60をシートパイプ121の前側に着脱可能に組み付けることにより、上下方向及び左右方向のねじれ、たわみ、ガタツキを防止するものである。補強部材60のシートパイプ121への組み付けについては、補強部材60の構成について説明したうえで別途説明するが、ここでは、図9を参照して、支持部材50の支持構造を説明する。
【0027】
支持部材50は、図9に示すように、X字状に交差して配置された第1バー51Aと第2バー51Bを備えており、その中央の交差部55において互いに対して回動可能となっている。第1バー51Aの上端52Aは左側のシートパイプ121Lに固定され、第1バー51Aの下端53Aは右側の支承部18Rに固定された軸支部54Aに軸支されている。一方、第2バー51Bの上端52Bは右側のシートパイプ121Rに固定され、第2バー51Bの下端53Bは左側の支承部18Lに固定された軸支部54Bに軸支されている。
【0028】
支持部材50は、車いす10を展開した際には、第1バー51Aと第2バー51Bが幅方向に横長のX字となり、車いす10を折り畳んだ際には、第1バー51Aと第2バー51Bが上下方向に縦長のX字となる。車いす10を折り畳む際には、一対のシートパイプ121L,121Rを直接引き上げてもよいし、一対のシートパイプ121L,121Rに取り付けられた座布123の上面に布状の取っ手を付加しておき、その取っ手を引き上げるようにしてもよい。
【0029】
なお、第1バー51A及び第2バー51Bには、それぞれ、補助リンク部材56L,56Rが連結されていてもよい。左側の補助リンク部材56Lは第1バー51Aと左側の支承部18Lとの間に、右側の補助リンク部材56Rは第2バー51Bと右側の支承部18Rとの間に、それぞれ回動自在に連結されており、車いす10を展開したり折り畳んだりする際に第1バー51A及び第2バー51Bがガタつかないよう円滑な動作に資するものである。
【0030】
(補強部材)
次に、本実施形態に係る補強部材60の構成について、図10から図17を用いて説明する。補強部材60は、図10から図12に示すように(図13から図15も適宜参照)、細長の基体61と、基体61の中央に設けられ、基体61の一方側61Lと他方側61Rを屈曲伸展可能に連結する連結部62と、基体61の一方側61Lと他方側61Rそれぞれの中間位置に設けられ、補強部材60が車いす10に取り付けられたときの基体61の上面側で回動可能に軸支された一対のアーム部63と、を備えている。後述するように、一対のアーム部63(一方側のアーム部63L,他方側のアーム部63R。以下同様)は、車いす10の着座部12を形成する一対のシートパイプ121(左右に一対のシートパイプ121L,121R)にそれぞれ着脱可能に組み付けられる。
【0031】
基体61は、図10図15ほかに示しているように、車いす10の左右方向(幅方向)を長手方向として延在するように形成されている。基体61の具体的形状に限定はないが、ここでは、補強部材60の車いす10への組み付けにあたっての利便性や強度等を考慮して、アーム部63が軸支されている箇所から外側の径を内側の径よりも大径とした例を示している。基体61の一方側61L及び他方側61Rともに、径を途中で異ならせることにより、車いす10の展開及び折り畳みの際に基体61ひいては補強部材60の伸縮を許容することも可能となり、基体61の内部には、外側に向かって付勢された弾性体を配置してもよい。
【0032】
基体61の両端には、係合部66(一方側の係合部66L,他方側の係合部66R。以下同様)が車いす10の幅方向において段差状に切り欠かれている。補強部材60を車いす10に組み付ける態様については後述するが、基体61の係合部66を車いす10の一部に係合させることによって車いす10の上下方向及び左右方向(幅方向)のねじれ、たわみ、ガタツキを抑制することができるため、基体61の係合部66は、車いす10側の係合する箇所にかみ合った形状とすることが好ましい。本実施形態では、基体61の係合部66が当接する車いす10の対応箇所に合わせるため段差状の切り欠きとしているが、この形状は、車いす10側の対応箇所に適合するようにすればよい。
【0033】
連結部62は、図11から図14ほかに示しているように、基体61の一方側61Lの中央側で雄型に突出した一方側の連結部62Lと、基体61の他方側の61Rの中央側で雌型に突出した他方側の連結部62Rが、基体61の他面側(車いす10に取り付けられたときの下面側)に突出した位置においてボルトによって締結されている。これにより、基体61の一方側61Lと他方側61Rは、連結部62を下方向に押し込んだ際に、一方側の連結部62Lと他方側の連結部62Rが当接することによって図10に示すように伸展状に維持することができる。一方、基体61の一方側61Lと他方側61Rは、連結部62を上方向に引き上げた際には、一方側の連結部62Lと他方側の連結部62Rが離間することによって図16に示すように屈曲状にすることができる。
【0034】
各アーム部63は、その先端で基体61の長手方向と交差する方向に拡開して設けられ、シートパイプ121の外面に当接する当接部64(一方側の当接部64L,他方側の当接部64R。以下同様)と、当接部64の更に外側に離間して螺着して設けられ、シートパイプ121の内面に沿って摺動するレール部65(一方側のレール部65L,他方側のレール部65R)と、を備える。ここで、アーム部63は、基体61が屈曲状になったときに基体61と干渉しないように、基体61を挟んで一対の板状部材によって形成されている。また、アーム部63は、補強部材60が車いす10に取り付けられたときの基体61の上面側で回動可能な長さに設定されており、当接部64の少し軸支側には、一対の板状部材を繋ぐ横断部67(一方側の横断部67L,他方側の横断部67R。以下同様)を設けている。横断部67は、アーム部63の一対の板状部材の変形を防止するとともに、一対の板状部材と当接部64の両側を一体とすることによるアーム部63の基体61への組付け性を確保している。なお、ここでは、アーム部63を一対の板状部材とする場合を説明しているが、その構成はこれに限られることはなく、例えば、内又は外の片側のみの板状部材として構成したり、基体60の上面側において一本の板状部材又は棒状部材として構成したりしてもよい。
【0035】
以上述べた補強部材60を車いす10に組み付ける態様について、図17を用いて説明する。車いす10側のシートパイプ121には、その内側で補強部材60に対向する位置において長手方向に沿って切り欠かれたガイド部124(左右に一対のガイド部124L,124R.以下同様)が設けられている。補強部材60を装着する際には、シートパイプ121の先端に被せてあるキャップを取り除き、アーム部63の最外側に位置しているレール部65をシートパイプ121のガイド部124の内側に嵌入させて摺動させる。そして、基体61の係合部66をシートパイプ121が載置されているフック部122の位置に合わせ、そこで当接部64とレール部65を螺着するネジを締めることにより固定する。補強部材60を離脱させるときは、当接部64とレール部65を螺着するネジを緩めることにより、レール部65を摺動させてシートパイプ121から取り外す。このようにして、補強部材60は、シートパイプ121に対して容易に着脱可能に組み付けることができる。
【0036】
補強部材60は、以上述べたような構成としたことから、アーム部63がシートパイプ121に装着されている状態で、車いす10が展開しているとき、基体61の係合部66が車いす10の基本骨格を形成するフレーム11の一部(本実施形態ではシートパイプ121を載置するフック部122)に係合し、基体61は、連結部62が押し込まれることにより伸展状となる。
【0037】
他方、補強部材60は、アーム部63がシートパイプ121に装着されている状態で、車いす10が折り畳まれているときには、図16に示すように、基体61の係合部66が車いす10の基本骨格を形成するフレーム11の一部(本実施形態ではシートパイプ121を載置するフック部122)から離間し、基体61は、連結部62が引き上げられることにより基体61の上面側に向かって屈曲状となる。
【0038】
(車いすの折り畳み及び展開の動作)
以上、車いす10及び補強部材60の構成を説明したが、最後に、補強部材60を装着した車いす10がどのように折り畳まれ、また、展開するかについて、図18を用いて説明する。なお、図18では各要素の代表的な符号のみを記載しているので、他の図、特に図9及び図17を適宜参照しながらご確認いただきたい。
【0039】
図18の上段は、車いす10を折り畳む手順を示している。車いす10が展開している状態で、着座部12に設けられている布製の取っ手を引き上げる(図18(a))。そうすると、車いす10のフック部122に載置されているシートパイプ121がフック部122から離脱するとともに、シートパイプ121に着脱可能に組み付けられている補強部材60のアーム部63が追従して上方に移動する(図18(b))。同時に、補強部材60の基体61は連結部62において屈曲状となり(図16参照)、基体61の係合部66はシートパイプ121のフック部122から離脱する。この過程で、支持部材50の上端も引き上げられ、車いす10の左右の一対のフレーム11L,11Rが引き寄せられるとともに、足置き22は、その中央が上方向に向かって二つ折りになる。そして、取っ手を最大限引き上げた状態では、補強部材60は図16のように屈曲状となり、横長のX字状であった支持部材50が縦長のX字状となり、足置き22はほぼ二つ折りで直立状となる(図18(c))。
【0040】
図18の下段は、車いす10を展開する手順を示している。車いす10が折り畳まれている状態で、着座部12のシートパイプ121を押し下げる(図18(d))。その際には、少し外側に広げるようにシートパイプ121に力を加えると展開し易い。シートパイプ121が押し下げられるにつれて補強部材60のアーム部63も下がっていき、連結部62が屈曲状から伸展状に遷移していく。この過程で、支持部材50の上端も押し下げられ、車いす10の左右の一対のフレーム11L,11Rが引き放されるとともに、足置き22の中央が下方向に向かって伸びていく(図18(e))。そして、シートパイプ121がフック部122に載置され、基体61の係合部66がフック部122に係合した時点で、補強部材60の連結部62を強く押し下げると、補強部材60は図10のように伸展状となり、縦長のX字状であった支持部材50は横長のX字状に、足置き22はフラット状となる(図18(f))。
【0041】
(実施形態の効果)
補強部材60は、折り畳み式の車いす10に取り付けることで、折り畳み機構を維持したまま車体剛性が向上し、固定式の車いすと比べても遜色のない走行性能を達成することが可能となる。具体的には、上下方向のねじれ、たわみ、ガタツキについては、補強部材60の基体61の係合部66がフック部122ひいてはフレーム11に係合することで、アーム部63によって把持されている状態のシートパイプ121がフック部122から抜け難くなり、ねじれ、たわみ、ガタツキが低減せる。また、左右方向(幅方向)のねじれ、たわみ、ガタツキについては、補強部材60の基体61そのもののラインとアーム部63を経由したラインが左右方向の突っ張り棒の役割をすることとなり、ねじれ、たわみ、ガタツキが低減する。
【0042】
以上、実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。また、そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0043】
10…車いす
11(11L,11R)…フレーム
12…着座部
121(121L,121R)…シートパイプ
122(122L,122R)…フック部
123…座布
124(124L,124R)…ガイド部
13…背もたれ
14(14L,14R)…肘掛け
15(15L,15R)…グリップ
16(16L,16R)…前輪取付部
17(17L,17R)…後輪取付部
18(18L,18R)…支承部
19(19L,19R)…車軸
20…ステップ
21(21L,21R)…支柱部
22…足置き部
30(30L,30R)…キャスタ(前輪)
40(40L,40R)…ホイール(後輪)
41(41L,41R)…ハンドリム
42…ストッパ
50…支持部材(クロスバー)
51A…第1バー
52A…上端
53A…下端
54A…軸支部
51B…第2バー
52B…上端
53B…下端
54B…軸支部
55…交差部
56(56L,56R)…補助リンク部材
60…補強部材
61(61L,61R)…基体
62(62L,62R)…連結部
63(63L,63R)…アーム部
64(64L,64R)…当接部
65(65L,65R)…レール部
66(66L,66R)…係合部
67(67L,67R)…横断部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18