(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022097320
(43)【公開日】2022-06-30
(54)【発明の名称】18F標識化合物製造装置及び18F標識化合物製造方法
(51)【国際特許分類】
G21G 4/08 20060101AFI20220623BHJP
G21G 1/12 20060101ALI20220623BHJP
【FI】
G21G4/08
G21G1/12
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020210851
(22)【出願日】2020-12-19
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】516344904
【氏名又は名称】株式会社京都メディカルテクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100170025
【弁理士】
【氏名又は名称】福島 一
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 成人
(57)【要約】 (修正有)
【課題】18F標識化合物の収率を飛躍的に向上させることができる18F標識化合物製造装置を提供する。
【解決手段】導入制御部10は、ネオンを核反応容器10aに導入する。照射制御部11は、ネオンが導入された核反応容器10aにガンマ線Rを所定の時間照射させることで、当該ネオンに核反応を起こさせる。調整制御部12は、核反応容器10aから排出された核反応後の生成核種の18Fと18Neとを含むネオンを、当該核反応容器10aと合成容器13aとの間を接続する流路12a内に案内し、当該流路12a内のネオンの流速又は流路12aの長さを調整することで、前記18Neが18Fに変換されるまでの所定の時間、前記ネオンを流路12a内で滞留させる。合成制御部13は、滞留後のネオンに含まれる18Fを、18Fと置換可能な水酸基を有する液体化合物Cに合成容器13a内で反応させることで、18F標識化合物を合成する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネオンを核反応容器に導入する導入制御部と、
前記ネオンが導入された前記核反応容器にガンマ線を所定の時間照射させることで、当該ネオンに核反応を起こさせる照射制御部と、
前記核反応容器から排出された核反応後の生成核種の18Fと18Neとを含むネオンを、当該核反応容器と合成容器との間を接続する流路内に案内し、当該流路内のネオンの流速又は前記流路の長さを調整することで、前記18Neが18Fに変換されるまでの所定の時間、前記ネオンを前記流路内で滞留させる調整制御部と、
前記滞留後のネオンに含まれる18Fを、18Fと置換可能な水酸基を有する液体化合物に前記合成容器内で反応させることで、18F標識化合物を合成する合成制御部と、
を備える18F標識化合物製造装置。
【請求項2】
前記調整制御部は、核反応後のネオンを前記流路に案内する前に、当該流路に接続された真空引き装置を駆動して、前記流路内を真空にして、当該流路内に存在する水分を除去する、
請求項1に記載の18F標識化合物製造装置。
【請求項3】
前記導入制御部は、ネオンを前記核反応容器に導入する前に、当該核反応容器に接続された真空引き装置を駆動して、前記核反応容器内を真空にして、当該核反応容器内に存在する水分を除去する、
請求項1又は2に記載の18F標識化合物製造装置。
【請求項4】
ネオンを核反応容器に導入する導入制御ステップと、
前記ネオンが導入された前記核反応容器にガンマ線を所定の時間照射させることで、当該ネオンに核反応を起こさせる照射制御ステップと、
前記核反応容器から排出された核反応後の生成核種の18Fと18Neとを含むネオンを、当該核反応容器と合成容器との間を接続する流路内に案内し、当該流路内のネオンの流速又は前記流路の長さを調整することで、前記18Neが18Fに変換されるまでの所定の時間、前記ネオンを前記流路内で滞留させる調整制御ステップと、
前記滞留後のネオンに含まれる18Fを、18Fと置換可能な水酸基を有する液体化合物に前記合成容器内で反応させることで、18F標識化合物を合成する合成制御ステップと、
を備える18F標識化合物製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、18F標識化合物製造装置及び18F標識化合物製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、陽電子放射断層撮影(Positron Emission Tomography、以下、PETとする)検査が、放射線を利用したがん診断法の趨勢になっている。
【0003】
PET検査では、放射性同位元素標識化合物(RI標識化合物)が基本的に使用されている。このRI標識化合物は、ガンの病巣部に集積されやすい化合物の特定の位置にある原子を放射性同位体(RI)で置き換えて、通常の化合物と化学的性質は同じであることを利用している。RI標識化合物は、通常の化合物と異なり、RIから放射される放射線を検出することにより、そのRI標識化合物が生体のどの部位に蓄積されているかが特定される。PET検査では、RI標識化合物の代表例としては、グルコース(ブドウ糖)に18-フッ素同位体(18F)を組み込んだ18F-2-フルオロ-2-デオキシ-D-グルコース(18F-FDGとする)をガン患者に投与し、18F-FDGの18Fから放出される陽電子が電子と対消滅し、511keVのエネルギーを持つ2本のガンマ線を放出するので、これらを、体外に設置された放射線測定器で検出することで、体内の18F-FDGの分布を撮影し、グルコースの代謝が著しいガン患部を特定する。
【0004】
PET検査では、特殊なRI標識化合物を用いることから、その検査費用が高いという課題がある。例えば、PET検査は、一回10万円ほどかかると言われている。日本では、PET検査に毎年、数千億円の費用をかけて、ガン治療のための画像診断を行っている。
【0005】
ここで、PET検査で使用される18F-FDGの18Fは、通常、小型サイクロトロンによる陽子ビームを18-酸素同位体(18O)に照射し、18O(p,n)18F反応を利用することで、18Oから18Fを製造する。
【0006】
ところで、天然の酸素は16-酸素同位体(16O)の存在比が、99.762%で、17-酸素同位体(17O)の存在比が、0.038%で、核反応で利用する18-酸素同位体(18O)の存在比は、0.200%と非常に低い。そのため、PET検査用の18Fの製造では、18Oを濃縮した高価な18O濃縮水が使用されている。例えば、特開2004-59356号公報(特許文献1)には、18Fフッ化物イオン生成原料用の18O濃縮水に関する技術が開示されている。
【0007】
又、18Fを製造するために利用する小型サイクロトロンを用いると、18Fの製造にかかわる作業者がかなりの放射線被ばくを受けることが避けられない。つまり、18O濃縮水に小型サイクロトロンからの大強度の陽子ビームを照射させて18Fを製造することから、この陽子ビームの取り出し窓等に由来する大量の放射線物質が必然的に混入する。ビーム取り出し窓は破損のおそれもあり、定期的に交換し、陽子ビームの照射装置の保守を定期的に行う必要がある。この作業により大量の放射線被ばくが必然的に発生する。
【0008】
そのため、近年では、18O濃縮水を用いない18Fの製造方法が各種開発されている。例えば、特開2018-84570号公報(特許文献2)には、ネオンガスにガンマ線を照射して、ネオンの核反応により、18Fを生成し、18Fを液体化合物に反応させることで、18F標識化合物を合成するRI標識化合物製造装置が開示されている。これにより、ターゲットガスは再利用可能であり、放射性同位体の製造効率が高く、放射線被ばくの可能性をゼロに近づけ、更に、低価格で供給することが可能となるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004-59356号公報
【特許文献2】特開2018-84570号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1に記載の技術では、18O濃縮水を用いる必要があるとともに、不純物RIの混入や大量の放射線被ばくの課題がある。又、特許文献2に記載の技術では、低価格で18F標識化合物を合成することが出来るものの、気体状態のネオンをガンマ線に核反応させることから、18Fの収率が悪いという課題がある。
【0011】
本発明は、前記課題を解決するためになされたものであり、18F標識化合物の収率を飛躍的に向上させることが可能な18F標識化合物製造装置及び18F標識化合物製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る18F標識化合物製造装置は、導入制御部と、照射制御部と、調整制御部と、合成制御部と、を備える。導入制御部は、ネオンを核反応容器に導入する。照射制御部は、前記ネオンが導入された前記核反応容器にガンマ線を所定の時間照射させることで、当該ネオンに核反応を起こさせる。調整制御部は、前記核反応容器から排出された核反応後の生成核種の18Fと18Neとを含むネオンを、当該核反応容器と合成容器との間を接続する流路内に案内し、当該流路内のネオンの流速又は前記流路の長さを調整することで、前記18Neが18Fに変換されるまでの所定の時間、前記ネオンを前記流路内で滞留させる。合成制御部は、前記滞留後のネオンに含まれる18Fを、18Fと置換可能な水酸基を有する液体化合物に前記合成容器内で反応させることで、18F標識化合物を合成する。
【0013】
又、本発明に係る18F標識化合物製造方法は、導入制御ステップと、照射制御ステップと、調整制御ステップと、合成制御ステップと、を備える。本発明に係る18F標識化合物製造方法の各ステップは、本発明に係る18F標識化合物製造装置の各部に対応する。
【発明の効果】
【0014】
本発明では、18F標識化合物の収率を飛躍的に向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態に係る18F標識化合物製造装置の概念図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る18F標識化合物製造方法の実行手順を示すフローチャートである。
【
図3】本発明の実施形態に係る18F標識化合物製造装置の試作品の斜視図である。
【
図4】18Fの採取時点における放射線のスペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明し、本発明の理解に供する。尚、以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
【0017】
本発明の基礎になる、ネオン(Ne)をターゲットに用い、ガンマ線を照射することで18Fを製造する過程は2通りあり、1つは、2段階を経る20Ne(γ,2n)18Ne,18Ne→18F+β-であり、もう一つは、直接的な20Ne(γ,pn)18F反応である。第1の過程の中間段階で生じる18Neの半減期は1.67秒と大変短いので、18Neは、20秒程度で18Fに変換してしまう。
【0018】
ところが、逆に言えば、第1の過程において、第一段階の核反応後、18Neは、20秒程度経過しないと、18Fに変換しないということになる。本発明者が先に出願し、権利化した先行の特許(特許第6274689号)は、この点が考慮されていなかったために、18FDGの収率が低かった。
【0019】
本発明では、この点を改良し、18Fの収率を大きく向上させた。すなわち、核反応部分からのネオンを18F標識化合物の合成部分まで導入する際にかかる時間を、18Neが18Fに変換するのに十分な時間を設けるようなシステム(装置)にした。
【0020】
本発明の実施形態に係る18F標識化合物製造装置1(18F標識化合物製造システム)は、
図1に示すように、導入制御部10と、照射制御部11と、調整制御部12と、合成制御部13と、を備える。
【0021】
導入制御部10は、ネオンを核反応容器10aに導入する。照射制御部11は、ネオンが導入された核反応容器10aにガンマ線Rを所定の時間照射させることで、当該ネオンに核反応を起こさせる。
【0022】
調整制御部12は、核反応容器10aから排出された核反応後の生成核種の18Fと18Neとネオンを、当該核反応容器10aと合成容器13aとの間を接続する流路12a内に案内(供給)し、当該流路12a内のネオンの流速(流量)又は流路12aの長さを調整することで、18Neが18Fに変換するまでの所定の時間、ネオンを流路12a内で滞留させる。
【0023】
合成制御部13は、滞留後のネオンに含まれる18Fを、18Fと置換可能な水酸基を有する液体化合物Cに合成容器13a内で反応させることで、18F標識化合物を合成する。
【0024】
これにより、18F標識化合物の収率を飛躍的に向上させることが可能となる。即ち、本発明では、ネオンにガンマ線Rを照射させることで、上述のように、第一の過程の20Ne(γ,2n)18Neから18Fへのβ崩壊を経て18Fへ変換させるとともに、第二の過程の20Ne(γ,pn)18F反応から18Fへ変換させる核反応(光核反応)を採用する。この核反応は、放射性不純物の発生が飛躍的に少ないため、18Fの製造に極めて有用である。
【0025】
ここで、本発明者は、上述の各反応を長年研究しており、この核反応が、第一の過程において、ネオンがガンマ線Rに照射された時点から、核反応が進行して、核反応後の生成核種の18Neから18Fが生成する時点まで、所定の時間(例えば、20秒程度)が掛かることが分かっている。
【0026】
つまり、第一の過程において、ネオンのガンマ線照射時点から18Fの生成時点までの間は、18Neは、言わば、中間体の状態であり、この中間体が、液体化合物に接触したとしても、中間体に18Fが存在しないことから、18F標識化合物を全く生成することが出来ない。
【0027】
一方、核反応後、一定時間が経過したネオンは、18Fを含有するものの、18Fは、微小な水分を含む不純物と極めて反応し易いため、18Fが生成された後、直ちに、18Fを液体化合物に接触させなければ、生成された18Fが不純物と反応してしまう。これにより、18F標識化合物の収率が下がる。
【0028】
そこで、本発明では、ネオンのガンマ線照射時点から18Fの生成時点までの間の所定の時間だけ、当該ネオンを流路12a内に滞留させて、18Fの生成まで、ネオン中に含まれる18Neを放置する。この所定の時間は、18Neの崩壊時間に相当する。これにより、安定な20Neから生成した第一の過程の18Neの中間体を経て18Fまで確実に変換させることが可能となる。尚、第二の過程において生成した18Fは、ネオンに当然含まれた状態である。
【0029】
更に、本発明では、滞留後のネオンを直ちに合成容器13aに導入して、液体化合物と反応させて、18F標識化合物を合成する。これにより、第一の過程及び第二の過程において生成された18Fを効率的に18F標識化合物に利用することが出来るため、効率よく大量の18F標識化合物を製造することが可能となり、全体として、18F標識化合物の収率を上げることが可能となるのである。
【0030】
更に、本発明では、ネオンを流すことで、18F標識化合物を連続的に合成する構成としていることから、これらの制御は、コンピュータ等の制御装置で可能な構成としている。つまり、本発明の各構成要素を全自動で行うことが出来るため、遠隔操作で18F標識化合物を得ることが出来る。そのため、作業員が装置に近づく頻度は殆ど無く、放射線被ばくの可能性を低減することが出来る。
【0031】
ここで、導入制御部10の構成に特に限定は無いが、例えば、ネオンを貯留するネオンボンベからコンプレッサー10bを介して核反応容器10aの入口開閉弁10cに接続され、導入制御部10が、コンプレッサー10bを駆動し、入口開閉弁10cを開放することで、ネオンを核反応容器10aに導入する。
【0032】
又、導入制御部10の導入方法に特に限定は無いが、例えば、核反応容器10aの出口開閉弁10dが設けられ、導入制御部10が、コンプレッサー10bを駆動し、入口開閉弁10cを開放するとともに、出口開閉弁10dを閉塞することで、ネオンを核反応容器10aに充填し、その後、導入制御部10が、入口開閉弁10cを閉塞することで、ネオンを核反応容器10a内に密封しても良い。又、コンプレッサー10bと入口開閉弁10cとの間に調整バルブ10eが設けられ、導入制御部10が、コンプレッサー10bを駆動し、入口開閉弁10cと出口開閉弁10dとを開放し、調整バルブ10eでネオンの流速を調整することで、ネオンが核反応容器10a内を流れるようにしても良い。この場合、照射制御部11がガンマ線を照射することで、ネオンの核反応を連続的に行うことが出来る。
【0033】
又、導入制御部10はネオンを核反応容器10aに導入する際に、導入したネオンの圧力を常圧(0.1MPa)以上の高圧にしても構わない。ネオンを高圧にすることで、核反応容器10a内のネオンの密度を高めて、一回のガンマ線照射に対するネオンの核反応を促進させ、18Fの生成量を増加させることが可能となる。尚、ネオンは、気体でも高密度な液体でも構わない。
【0034】
又、核反応容器10aの構成に特に限定は無いが、例えば、熱伝導が優れる素材を採用することが出来る。具体的には、熱伝導が銅と同程度のSiCセラミック容器を採用することにより、ガンマ線Rの吸収により容器内に発熱が生じても、熱伝導により熱が発散して、容器内の圧力増加を防止することが出来る。又、SiCが18Fと化学反応しないことから、製造した18Fの純度を保証することが出来る。その他に、生成されるフッ素の浸蝕性を加味して、耐蝕性に優れるテフロン(登録商標)素材で内面がコーティングされた容器を採用しても良い。
【0035】
又、導入制御部10は、ネオンを核反応容器10aに導入する前に、核反応容器10aを開放し、核反応容器10aに設置された加熱装置を駆動して、核反応容器10a内を加熱して、核反応容器10a内に存在する水分を気化させて外部に放出させるように構成しても良い。具体的には、核反応容器10aの外面には、加熱装置を設け、導入制御部10は、ネオンを核反応容器10aに導入する前の段階で、入口開閉弁10cと出口開閉弁10dとを開放し、加熱装置を駆動させて、核反応容器10a内を加熱して、核反応容器10a内に存在する水分を気化させて、水分を外部に放出させるように構成しても良い。その後、導入制御部10は、ネオンを核反応容器10aに導入する。これにより、生成される18Fが水分に反応することを防止することが可能となる。加熱装置の構成に特に限定は無いが、例えば、ヒーターや加熱媒体の循環など、どのような構成でも構わない。
【0036】
又、導入制御部10は、ネオンを核反応容器10aに導入する前に、核反応容器10aに接続された真空引き装置を駆動して、核反応容器10a内を真空にして、核反応容器10a内に存在する水分を除去するように構成しても良い。具体的には、入口開閉弁10cと出口開閉弁10dとのいずれか又は両方に真空引き装置を接続して、導入制御部10は、ネオンを核反応容器10aに導入する前の段階で、真空引き装置が接続された開閉弁を開放し、他の開閉弁を閉塞して、真空引き装置を駆動させて、核反応容器10a内を真空にする。その後、導入制御部10は、ネオンを核反応容器10aに導入する。これにより、生成される18Fが水分と反応することを防止することが可能となる。もちろん、上述の加熱装置と真空引き装置とを組み合わせても良い。
【0037】
又、照射制御部11の構成に特に限定は無いが、例えば、照射制御部11は、所定のエネルギーを有する電子線を照射する電子線照射部11aと、核反応容器10aの近傍に設けられ、電子線が照射されると、ガンマ線Rを放出するガンマ線放出部11bとを備える。これにより、容易にガンマ線Rを照射することが出来る。ここで、ガンマ線放出部11bは、例えば、タングステン(W)、白金(Pt)、タンタル(Ta)等の電子線によりガンマ線Rを生じる標的が選択される。具体的には、30MeVのエネルギーを持つ電子線をタングステンに照射することで、制動輻射のガンマ線Rが発生することを利用する。
【0038】
ここで、電子線を標的に照射することで、標的の制動輻射のガンマ線Rを利用する場合、標的窓は、SiやCで出来ており、光核反応によって生成される残留放射性物質の半減期は、ミリ秒程度であるので、事実上、放射化物は無い。又、長寿命残留放射化物は、生じず、標的装置の取り換えの必要が全く無い。
【0039】
電子線照射部11aは、例えば、電子線型加速器(電子ライナック)を用いると、スイッチ一つで操作することが可能となり、全自動化、遠隔操作の制御が容易となる。電子線型加速器では、素人でも取り扱うことが可能である。電子線型加速器では、放射化物は殆ど無く、大分が産業廃棄物として処理出来るため、廃棄の点でも、電子線型加速器に利点がある。
【0040】
更に、ガンマ線を用いることで、核反応容器10a(標的ターゲット)を厚く構成することが出来る。本発明では、ガンマ線Rを使用し、且つ、電子線型加速器によりガンマ線Rを生じさせる構成とすることで、放射線被ばくの可能性を飛躍的に軽減することが出来る。
【0041】
又、照射制御部11がガンマ線Rを照射する所定時間(照射時間)に特に限定は無いが、例えば、生成される18Fの半減期の1倍から5倍の範囲内と設定されるのが好ましい。18Fの半減期は、110分であるため、例えば、照射時間は110分から550分の範囲内と設定される。
【0042】
又、調整制御部12の構成に特に限定は無いが、核反応後のネオンの滞留方法によって適宜設計される。例えば、核反応後のネオンの流速を調整する場合は、核反応容器10aの出口開閉弁10dと合成容器13aの入口開閉弁13bとの間の流路12aの上流側に、上流側調整バルブ12bを設けるとともに、流路の12aの下流側に、下流側調整バルブ12cを設け、調整制御部12が、上流側調整バルブ12bの開閉具合と下流側調整バルブ12cの開閉具合とを調整することで、流路12aを流れるネオンの流速を調整し、所定の時間、核反応後のネオンを流路12a内で滞留させることが出来る。尚、ネオンの流速の調整は、上流側調整バルブ12b又は下流側調整バルブ12cのいずれか一方でも良いし、両方でも構わない。又、上流側調整バルブ12bと下流側調整バルブ12cとの間に、圧力計12dを設けて、調整制御部12が、圧力計12dの値を確認しながら、上流側調整バルブ12bの開閉具合と下流側調整バルブ12cの開閉具合とを調整しても良い。
【0043】
又、例えば、核反応後のネオンが流れる流路12aの長さを調整する場合は、核反応容器10aの出口開閉弁10dと合成容器13aの入口開閉弁13bとの間の流路12aを伸ばしたり、蛇行させたりすることで、流路12aを延長し、流路12aを流れるネオンの流速を調整し、所定の時間、核反応後のネオンを流路12a内で滞留させることが出来る。流路12aの長さは、例えば、流路12aに導入されるネオンの流速にも寄るものの、1m~40mの範囲内であると好ましく、1m~20mの範囲内であると更に好ましい。又、同様に、流路12aの上流側に、上流側調整バルブ12bを設け、流路の12aの下流側に、下流側調整バルブ12cを設け、調整制御部12が、上流側調整バルブ12bの開閉具合と下流側調整バルブ12cの開閉具合とを調整して、流路12aの長さとともにネオンの流速を調整しても良い。又、流路12aには、ネオンの流速を調整するために、適宜、バッファーを設けても良い。
【0044】
又、調整制御部12が調整するネオンの流速は、所定の時間、ネオンを流路12a内に滞留させることが可能であれば、特に限定は無いが、例えば、小型の製造装置であれば、50mL/分~200mL/分の範囲内であると好ましい。
【0045】
又、調整制御部12は、核反応後のネオンを流路12aに案内する前に、流路12aを開放し、流路12aに設置された加熱装置を駆動して、流路12a内を加熱して、流路12a内に存在する水分を気化させて外部に放出させるように構成しても良い。その後、調整制御部12は、核反応後のネオンを流路12aに案内する。これにより、同様に、18Fが水分と反応することを防止することが出来る。加熱装置は、上述と同様である。
【0046】
又、調整制御部12は、核反応後のネオンを流路12aに案内する前に、流路12aに接続された真空引き装置を駆動して、流路12a内を真空にして、流路12a内に存在する水分を除去するように構成しても良い。具体的には、調整制御部12の流路12aの両端のいずれか又は両方に真空引き装置を接続して、調整制御部12が、核反応後のネオンを流路12aに案内する前の段階で、真空引き装置が接続された端部を開放し、他の端部を閉塞して、真空引き装置を駆動させて、流路12a内を真空にする。その後、調整制御部12は、核反応後のネオンを流路12aに案内する。これにより、同様に、18Fが水分と反応することを防止することが出来る。真空引き装置は、上述と同様である。もちろん、上述の加熱装置と真空引き装置とを組み合わせても良い。
【0047】
又、流路12aの出口開閉弁付近と合成容器13aの入口開閉弁13bとの間に、圧力計12eを設けて、調整制御部12が、圧力計12eの値を確認しながら、上流側調整バルブ12bの開閉具合と下流側調整バルブ12cの開閉具合とを調整しても良い。
【0048】
又、合成制御部13の構成に特に限定は無いが、例えば、18F標識化合物が18F-FDGである場合、合成制御部13は、液体化合物Cとしてグルコース(例えば、D-グルコース、L-グルコース)やマンノースなどの糖類溶液を貯留する合成容器13aと、流路12aの出口開閉弁と接続される入口開閉弁13bと、流路12aから排出されたネオンを合成容器14aの液体化合物C中にバブリングするバブリング部13cと、を備えている。これにより、滞留後のネオンを液体化合物Cのグルコース溶液内でバブリングすることで、ネオン内の18FがグルコースCと反応し、18F-FDGを簡単に合成することが出来る。ここで、具体的には、グルコースの水酸基が18Fに置換され、18F-FDGを生成させる。核反応していない気体ネオンは、不活性なため、グルコースCにバブリングされても、反応することなく通過する。これにより、気体ネオンを回収して、再度、原料として利用することが出来る。
【0049】
ここで、合成制御部14は、バブリング後のネオンを放出する出口開閉弁13dと、合成容器13a内に液体化合物Cを供給する供給口13eと、合成容器13a内に反応後の18F標識化合物を取り出す取り出し口13fと、を備えると好ましい。これにより、液体化合物Cの補充と18F標識化合物の取り出しを容易にする。供給口13eの上流には、液体化合物Cの供給を制御する供給バルブ13gが設けられ、取り出し口13fの下流には、反応後の18F標識化合物の取り出しを制御する取り出しバルブ13hが設けられる。合成制御部13は、必要に応じて、反応容器13aの温度を一定に保つ温度調整部を更に備えても良い。
【0050】
ここで、18F標識化合物は18F-FDGに特に限定する必要は無い。例えば、18F標識化合物がNa-18Fである場合、合成制御部13の合成容器13aは、液体化合物Cとして水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液を貯留し、バブリング部14bは、水酸化ナトリウム水溶液に核反応後の気体ネオンをバブリングする。すると、水酸化ナトリウム水溶液中のNaOHの水酸基が18Fに置換され、Na-18Fを生成させる。尚、Na-18Fは、水溶液中で、Na+と18F-のイオンとなっている。つまり、18Fと置換可能な水酸基を有する液体であれば、この液体を18F標識化合物にすることが出来る。18Fと置換可能な水酸基を有する液体は、例えば、アルコール、カルボン酸、アミノ酸等を挙げることが出来る。
【0051】
さて、本発明では、合成容器13aの出口開閉弁13dからネオンを外部に放出することで、一回のネオンを核反応容器10a、流路12a、合成容器13aに通して、18F標識化合物を合成するバッチ式の生成方法でも良いし、合成容器13aの出口開閉弁13dから放出されるネオンを、再度、ネオンボンベ又はコンプレッサー10bに戻して、ネオンを核反応容器10a、流路12a、合成容器13aに繰り返し通して、18F標識化合物を合成する循環式の生成方法でも構わない。
【0052】
ここで、循環式の生成方法の場合、合成容器13aの出口開閉弁13dから放出されるネオンの不純物を除去する除去制御部14を設けても良い。除去制御部14の構成に特に限定は無く、例えば、除去制御部14は、合成容器13aの出口開閉弁13dから放出された反応後のネオンを0度以下まで冷却する冷却容器を備える。これにより、合成容器13aで反応後のネオンには、液状化合物C(例えば、水酸基を有する液体)でバブリングした際に混入される水等の不純物が含まれる可能性が高いため、そのような不純物を除去するために、ネオンを一度0度以下までに冷却する。すると、不純物が液化又は固化し、水等の不純物をネオンから分離させることが出来る。不純物を確実に除去することで、除去後のネオンを核反応容器10aに再度戻しても、不純物が18Fと反応することが無いことから、18Fの生成効率を維持し、目的の18F標識化合物の収率の低下を防止することが出来る。
【0053】
冷却容器では、簡便さの点から、冷却媒体を利用することが可能であり、冷却媒体は、例えば、マイナス196度(77K)まで冷却している液体窒素を利用することが出来る。又、冷却媒体は、液体窒素に限らず、例えば、ドライアイスを入れたメタノールでも良い。ドライアイスを入れたメタノールは、マイナス30度まで冷却することが出来る。
【0054】
又、上述では、除去制御部14は、反応後のネオンを冷却することで、ネオン中の不純物を液化し、ネオンから不純物を除去する方法を採用したが、他の除去方法を採用しても構わない。例えば、除去制御部14は、水や低分子の不純物を吸着し、ネオンのみを通過させる不純物吸着部を備えても良い。不純物吸着部では、多孔質の空孔に分子を吸着し、特に水分子を強く吸着するモレキュラーシーブ(乾燥剤)に反応後のターゲットガスを通過させる。他に、除去制御部14は、触媒を不純物と反応させ、不純物を除去する不純物触媒部を備えても良い。触媒は、例えば、排ガスの浄化装置で使用される、このように、他の除去方法でも良く、除去方法は、単独でも組み合わせでも構わない。
【0055】
又、循環式の生成方法では、ネオンは、循環により、18Fの生成及び18F標識化合物の合成に伴って減少していくため、例えば、ネオンを補充するガス補充部を更に備えると好ましい。
【0056】
次に、本発明に係る18F標識化合物製造方法の実行手順を説明する。先ず、作業者は、18F標識化合物製造装置1を起動すると、18F標識化合物製造装置1の導入制御部10は、ネオンを核反応容器10aに導入する(
図2:S101)。
【0057】
ここで、導入制御部10は、例えば、ネオンの導入前に、核反応容器10a内を加熱及び真空引きすることで、核反応容器10a内の水分を除去する。そして、導入制御部10は、コンプレッサー10bを駆動し、入口開閉弁10cを開放することで、ネオンを核反応容器10aに導入する。この際、導入制御部10は、出口開閉弁10dを閉塞し、核反応容器10aにネオンが充填されると、入口開閉弁10cを閉塞して、核反応容器10aを密封する。
【0058】
ネオンが核反応容器10aに導入されると、次に、18F標識化合物製造装置1の照射制御部11は、ネオンが導入された核反応容器10aにガンマ線Rを所定の時間照射させることで、当該ネオンに核反応を起こさせる(
図2:S102)。
【0059】
ここで、照射制御部11は、例えば、電子線照射部11aで電子線をガンマ線放出部11bに所定時間照射することで、ガンマ線放出部11bからガンマ線Rを放出させて、核反応容器10aに照射させる。
【0060】
ガンマ線の照射が完了すると、次に、18F標識化合物製造装置1の調整制御部12は、核反応容器10aから排出された核反応後の生成核種の18Neとネオンを、当該核反応容器10aと合成容器13aとの間を接続する流路12a内に案内し、当該流路12a内のネオンの流速又は流路12aの長さを調整することで、生成核種の18Neが18Fに変換するまでの所定の時間、ネオンを流路12a内で滞留させる(
図2:S103)。
【0061】
ここで、調整制御部12は、例えば、ネオンの案内前に、流路12a内を加熱及び/又は真空引きすることで、流路12a内の水分を除去する。調整制御部12が、核反応容器10aの出口開閉弁10dを開放し、核反応後の18Neとネオンを流路12a内に案内する。調整制御部12が、18Neを含むネオンの流速を調整する場合は、上流側調整バルブ12bの開閉具合と下流側調整バルブ12cの開閉具合とを調整し、18Neを含むネオンの流速を調整して、所定の時間、核反応後の18Neとネオンを流路12a内で滞留させる。又、調整制御部12が、流慮12aの長さを調整する場合は、延長された流路12a又は蛇行後の流路12aにネオンを案内し、ネオンが所定の長さを有する流路12a内を移動することで、所定の時間、核反応後のネオンを流路12a内で滞留させる。これにより、核反応後の生成核種の18Neから効果的に18Fを生成することが可能となる。
【0062】
ネオンの滞留が所定の時間経過すると、合成制御部13は、滞留後のネオンに含まれる18Fを、18Fと置換可能な水酸基を有する液体化合物C(グルコース)に合成容器13a内で反応させることで、18F標識化合物を合成する(
図2:S104)。
【0063】
ここで、合成制御部13は、例えば、バブリング部13cでネオンを合成容器13aのグルコース溶液C中にバブリングすることで、ネオン内の18Fをグルコース溶液Cと反応させて、18F標識化合物を合成する。つまり、滞留後のネオンを直ぐに合成容器13aに導入することで、生成された18Fを無駄なく液体化合物Cに接触することが出来るため、大量の18F標識化合物を合成することが可能となる。
【0064】
そして、作業者は、合成された18F標識化合物を取り出し口13fから取り出すことで、18F標識化合物を取得することが出来る。又、グルコースCが少なくなれば、作業者は、供給口13eでグルコースCを供給すれば良い。
【0065】
さらには、ネオンを一度、核反応容器10aに導入した後、ガンマ線照射を始める。この時、照射中に出口開閉弁10dを開け、ネオンを、流路12aを介して、合成容器13aへ導く。さらに、合成容器13aで液体化合物Cと反応しなかったネオンは、所定の導入管を用いて、合成容器13aから核反応容器10aまで案内することで、装置内を循環させて、入口開閉弁10cより核反応容器10aに戻す。この循環サイクルを、ガンマ線照射中に連続で繰り返し、18F標識化合物を合成容器13a内に蓄積させる。これにより、18F標識化合物を大量に製造することが出来る。
【実施例0066】
以下、実施例等によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0067】
先ず、
図1-
図2に示す図面に基づいて18F標識化合物製造装置1の試作品(実施例)を作成した。
図3に示すように、18F標識化合物製造装置1は、導入制御部10と、調整制御部12と、を備えている。導入制御部10は、チューブ状の導入管を介して前方からネオンの導入を受ける核反応容器10aと、導入管に設けられ、ネオンの導入を制御する入口開閉弁10cとを備えている。核反応容器10aの後方には、図示しない出口開閉弁10dが設けられる。調整制御部12は、核反応容器10aの後方に接続されたチューブ状の流路12aと、流路12aの所定の位置に、流路12a内の流速又は流量を調整する調整バルブ12bとを備える。
【0068】
ここで、流路12aの先端には、所定の金属缶15(例えば、アルミ缶)の開口部を接続し、流路12aから放出されるネオンを充填出来るようにした。実際の18F標識化合物の合成では、金属缶15を合成容器13aに代えることになる。
【0069】
さて、この18F標識化合物製造装置1の試作品を、電子線型加速器(電子ライナック)の施設に搬入し、18Fの製造試験を行った。電子線型加速器が、照射制御部11に該当する。
【0070】
核反応容器10aは、直径が2cm、長さが50cmであり、出口開閉弁10dを閉塞して、核反応容器10aの入口開閉弁10cからネオンを核反応容器10aに封入した。その後、入口開閉弁10cを閉塞し、電子線型加速器の先端にタングステンを設け、電子線型加速器で電子線をタングステンに照射して、制動輻射のガンマ線Rを核反応容器10aに照射し、ネオンにガンマ線Rを所定の時間照射させた。電子線型加速器の電子線エネルギーは40MeV、電流値は3μA、フォトンフラックスは1012photon/secであった。その後、出口開閉弁10dを開放するとともに、18Fと18Neとを含むネオンを流路12aに案内し、調整バルブ12bにより、ネオンの流速を最小限にして、ネオンを流路12a内で所定の時間(約20秒)滞留させた。その後、滞留後のネオンを金属缶15に充填して採取した。金属缶15の外面に放射線検出用のCdTe検出器の検出面を当てて、金属缶15に充填した18Fから発生する放射線のスペクトルを経時的に測定し、スペクトルの経時変化を求めた。又、放射線のスペクトルの解析は、所定の端末装置で行った。
【0071】
18Fの採取時点における放射線のスペクトルは、
図4に示すように、縦軸に計数(count/keV)、横軸にエネルギー(keV)で表現されるが、エネルギーが511keVのピークのみが極めて強く見られることが理解される。この511keVのピークは、18Fのβ+崩壊で生じるピークに対応する。更に、驚くべきことに、511keVのピークの計数は、1200以上となった。先行の特許(特許第6274689号)では、600程度であることから、今回の実施例では、極めて多くの18Fの製造量を確認出来た。
【0072】
次に、経過時間毎に測定された放射線のスペクトルの面積を算出して、放射線量の減衰曲線を作成した。作成した放射線量の減衰曲線は、
図5に示すように、縦軸に全計数(count/200sec)、横軸に経過時間(sec)で表現される。ここで、18Fの半減期の109.77分を用いて、減衰曲線の式を挿入すると、時間経過による放射線量の減衰は、1秒から8000秒まで18Fの半減期の減衰曲線にフィットした。これにより、金属缶に収集された製造物は、ほぼ18Fであることを確認することが出来た。尚、減衰曲線から、経過時間0秒での18Fの放射能は約30kBqであることが分かった。
【0073】
図4-
図5により、511keVのピークの計数の比率と他の条件とを加味した結果、今回の実施例では、18Fの製造に関して、先行の特許(特許第6274689号)の収率と比較して約4倍の収率であった。この18Fを液体化合物(例えば、グルコース)と反応させることで、先行の特許と比較して、18F標識化合物の収率を更に高めることが出来た。
【0074】
従って、18F標識化合物製造装置1の試作品では、極めて高い収率で18F標識化合物を製造出来ることを確認出来た。
【0075】
次に、18F標識化合物製造装置1の試作品の流路12aのうち、調整バルブ12bを開放した状態で、流路12aの長さを所定の長さ(約20m)まで伸ばして、核反応容器10aの出口開閉弁10dの開放により放出されたネオンが流路12a内に所定の時間(約20秒)を掛けて通過し、金属缶15に到達するように調整した。そして、同様に、ネオンにガンマ線を照射して、18Fを製造したところ、上述と同様に、大量の18Fを製造することが出来た。
以上のように、本発明に係る18F標識化合物製造装置及び18F標識化合物製造方法は、PET検査等の18F標識化合物を用いる全ての検査に有用であり、医療用に限らず、研究用、産業用、食品用等、様々な業界で使用される18F標識化合物の製造に利用出来る。又、18F標識化合物の収率を飛躍的に向上させることが可能な18F標識化合物製造装置及び18F標識化合物製造方法として有効である。