(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022097335
(43)【公開日】2022-06-30
(54)【発明の名称】熱安定性に優れたリナグリプチン含有医薬組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/522 20060101AFI20220623BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20220623BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20220623BHJP
A61K 47/10 20060101ALI20220623BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20220623BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20220623BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20220623BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20220623BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20220623BHJP
A61K 9/48 20060101ALI20220623BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20220623BHJP
【FI】
A61K31/522
A61P3/10
A61K47/32
A61K47/10
A61K47/38
A61K47/36
A61K47/12
A61K47/26
A61K9/20
A61K9/48
A61K9/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2020220008
(22)【出願日】2020-12-18
(71)【出願人】
【識別番号】306020438
【氏名又は名称】日本ジェネリック株式会社
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 隆久
(72)【発明者】
【氏名】小林 佑希子
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA30
4C076AA36
4C076AA53
4C076BB01
4C076CC21
4C076DD41X
4C076DD68X
4C076EE06
4C076EE07
4C076EE09
4C076EE12
4C076EE16
4C076EE16B
4C076EE23
4C076EE32B
4C076EE33
4C076EE38B
4C076FF05
4C076FF06
4C076FF09
4C076FF36
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB10
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA35
4C086MA37
4C086MA43
4C086MA52
4C086NA03
4C086ZC35
(57)【要約】 (修正有)
【課題】熱安定性に優れたリナグリプチン含有医薬組成物を提供する。
【解決手段】リナグリプチン、結合剤、崩壊剤、及び滑沢剤から選択される1種又は2種以上の添加剤とを含有する医薬組成物であって、結合剤が、コポリビドン、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ポリビニルアルコール・ポリエチレングリコール・グラフトコポリマー、ポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体、ヒドロキシプロピルセルロースからなる群から選択される1種又は2種以上の添加剤、崩壊剤が、トウモロコシデンプン、デンプングリコール酸ナトリウム、カルメロース、カルメロースカルシウム、ヒドロキシプロピルスターチ、クロスポビドンからなる群から選択される1種又は2種以上の添加剤、滑沢剤が、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、及びショ糖脂肪酸エステルからなる群から選択される1種又は2種以上の添加剤、である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リナグリプチンと、結合剤、崩壊剤、及び滑沢剤から選択される1種または2種以上の添加剤とを含有する医薬組成物であって、当該結合剤が、コポリビドン、ポリビニルアルコール(部分けん化物)、メチルセルロース、ポリビニルアルコール・ポリエチレングリコール・グラフトコポリマー、ポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体、ヒドロキシプロピルセルロースからなる群から選択される1種または2種以上の添加剤、崩壊剤が、トウモロコシデンプン、デンプングリコール酸ナトリウム、カルメロース、カルメロースカルシウム、ヒドロキシプロピルスターチ、クロスポビドンからなる群から選択される1種または2種以上の添加剤、滑沢剤が、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、及びショ糖脂肪酸エステルからなる群から選択される1種または2種以上の添加剤、である医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱安定性に優れたリナグリプチンを含有する医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
リナグリプチンは、化学名8-[(3R)-3-アミノピペリジン-1-イル]-7-(ブト-2-イン-1-イル)-3-メチル-1-[(4-メチルキナゾリン-2-イル)-3,7-ジヒドロ-1H-プリン-2,6-ジオンであり、リナグリプチンを有効成分とする錠剤は2型糖尿病の治療剤であることが知られており、トラゼンタ錠5mgとして販売されている(非特許文献1)。
【0003】
特許文献1には、保存環境の影響などによるリナグリプチン含有医薬組成物の品質の低下を簡易に抑制することができる、リナグリプチンと、カルボキシメチルスターチナトリウム、カルメロース、カルメロースカルシウム及びクロスカルメロースナトリウムからなる群から選択される少なくとも1種とを含むことを特徴とするリナグリプチン含有医薬組成物に関する発明が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】添付文書「トラゼンタ錠5mg」、2020年7月改訂(第1版)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、熱安定性に優れたリナグリプチン含有医薬組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の発明者らは、リナグリプチンの添加剤との配合安定性に着目し、製剤の構成を検討した結果、特定の結合剤、崩壊剤又は滑沢剤とを組み合わせることでリナグリプチンの熱安定性が良好であることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、リナグリプチンと、結合剤、崩壊剤、及び滑沢剤から選択される1種または2種以上の添加剤とを含有する医薬組成物であって、当該結合剤が、コポリビドン、ポリビニルアルコール(部分けん化物)、メチルセルロース、ポリビニルアルコール・ポリエチレングリコール・グラフトコポリマー、ポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体、ヒドロキシプロピルセルロースからなる群から選択される1種または2種以上の添加剤、崩壊剤が、トウモロコシデンプン、デンプングリコール酸ナトリウム、カルメロース、カルメロースカルシウム、ヒドロキシプロピルスターチ、クロスポビドンからなる群から選択される1種または2種以上の添加剤、滑沢剤が、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、及びショ糖脂肪酸エステルからなる群から選択される1種または2種以上の添加剤、である医薬組成物、に関するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、リナグリプチンを含む医薬組成物において、熱安定性に優れたリナグリプチン医薬組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明のリナグリプチンを含有する医薬組成物に関して説明する。
【0011】
本発明に用いられるリナグリプチンは、国際公開第2004/018468号に記載された方法に従って製造され得る。リナグリプチンの医薬的に許容される塩は国際公開第2004/018468号または国際公開第2010/072776号に従って製造される。リナグリプチン結晶A、B及びCは、国際公開第2007/128721号に記載されており、出発材料としての、国際公開第WO2004/018468号に記載されている方法によって得られるリナグリプチンから、国際公開第2007/128721号に記載されている方法により製造される。
【0012】
国際公開第2004/018468号に記載されている方法により製造されるリナグリプチンは結晶Aと結晶Bの混合物として得られることができる。
【0013】
結晶質のリナグリプチンの結晶Aと結晶質のリナグリプチンの結晶Bとの混合物は、国際公開第2007/128721号に従って製造される結晶質Aを、国際公開第2007/128721号に従って製造される結晶質のリナグリプチンの結晶Bと混合することによって、得られることができる。
【0014】
また、本発明に用いられるリナグリプチンは、国際公開第2020/042939号に記載された方法に従って製造されうるF晶を用いることもでき、特開2018-177769号公報に記載された方法に従って製造されうる多形体Fを用いることもでき、インド国特許出願第2250/MUM/2014号公報に記載された方法に従って製造されうるAL晶を用いることもできる。更には、他の新規結晶を用いることもできる。
【0015】
効能・効果は、「2型糖尿病」であり、用法・用量は、「通常、成人にはリナグリプチンとして5mgを1日1回経口投与される」という薬剤である。
【0016】
本発明に用いられる結合剤としては、ポリビニルアルコール(部分けん化物)、コポリビドン、メチルセルロース、ポリビニルアルコール・ポリエチレングリコール・グラフトコポリマー、ポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体、及びヒドロキシプロピルセルロースからなる群から選択される1種または2種以上の添加剤である。
【0017】
本発明に用いられる崩壊剤としては、トウモロコシデンプン、デンプングリコール酸ナトリウム、カルメロース、カルメロースカルシウム、ヒドロキシプロピルスターチ、及びクロスポビドンからなる群から選択される1種または2種以上の添加剤である。
【0018】
本発明に用いられる滑沢剤としては、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、及びショ糖脂肪酸エステルからなる群から選択される1種または2種以上の添加剤である。
【0019】
本発明の医薬組成物は、錠剤、カプセル剤、又は散剤等の固形製剤を含む。
【0020】
本発明の医薬組成物には、必要に応じて、更に医薬品添加物を配合することができる。具体的には、例えば、賦形剤、界面活性剤、コーティング剤、酸味料、発泡剤、甘味剤、香料、着色剤、緩衝剤、抗酸化剤等が挙げられる。崩壊剤、結合剤、滑沢剤については、特定の添加剤の他、任意の添加剤を追加して使用することもできる。
【0021】
賦形剤としては、例えば、D-マンニトール、トウモロコシデンプン、結晶セルロース、トレハロース、無水リン酸水素カルシウム、D-ソルビトール、乳糖、白糖、デンプン、α化デンプン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルメロースナトリウム、アラビアゴム、デキストリン、プルラン、軽質無水ケイ酸、合成ケイ酸アルミニウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム等が挙げられる。
【0022】
崩壊剤としては、例えば、バレイショデンプン、クロスカルメロース、クロスカルメロースナトリウム、部分アルファ化デンプン等が挙げられる。
【0023】
界面活性剤としては、例えば、ポリソルベート80、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等が挙げられる。
【0024】
結合剤としては、例えば、ヒプロメロース、アラビアゴム、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。
【0025】
コーティング剤としては、例えば、ヒプロメロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ポリエチレングリコール、酸化チタン等が挙げられる。
【0026】
酸味料としては、例えば、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸等が挙げられる。
【0027】
発泡剤としては、例えば、重層等が挙げられる。
【0028】
甘味剤としては、例えば、スクラロース、サッカリンナトリウム、グリチルリチン二カリウム、アスパルテーム、ステビア、ソーマチン等が挙げられる。
【0029】
香料としては、例えば、レモン、レモンライム、オレンジ、メントール等が挙げられる。
【0030】
着色剤としては、例えば、三二酸化鉄、黄色三二酸化鉄、黒酸化鉄、酸化チタン、食用黄色4号、食用黄色5号、食用赤色3号、食用赤色102号、食用青色3号等が挙げられる。
【0031】
緩衝剤としては、例えば、クエン酸、コハク酸、フマル酸、酒石酸、アスコルビン酸又はその塩類、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、アスパラギン酸、アラニン、アルギニン又はその塩類、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、水酸化マグネシウム、リン酸、ホウ酸又はその塩類等が挙げられる。
【0032】
抗酸化剤としては、例えば、アスコルビン酸、ジブチルヒドロキシトルエン、没食子酸プロピル等が挙げられる。
【0033】
滑沢剤としては、例えば、フマル酸ステアリルナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、タルク、ステアリン酸カルシウム、硬化油等が挙げられる。
【0034】
配合量は、本発明の所望の効果の達成に影響を与えない量であれば特に制限されない。
【0035】
本発明の医薬組成物は公知の製造方法により製造することが可能である。より具体的には、例えば、錠剤を製造する場合、リナグリプチン、D-マンニトールを流動層造粒機に投入して、精製水に溶解させた結合剤溶液を噴霧し、造粒・乾燥する。乾燥終了後、整粒機を用いて整粒し、得られる整粒品に、崩壊剤、滑沢剤を添加し、混合することで打錠用末が得られる。
【0036】
またある様態では、例えば、リナグリプチン、D-マンニトール、結合剤を乳鉢に投入し、精製水を滴下して造粒し、棚乾燥機を用いて乾燥する。乾燥終了後、篩を用いて整粒し、得られる整粒品に、崩壊剤、滑沢剤を添加し、混合することで打錠用末が得られる。
【0037】
次に、得られた打錠用末を打錠して、錠剤を製造する。必要に応じて、例えば、ヒプロメロース(三二酸化鉄、黄色三二酸化鉄、酸化チタン、タルク、ポリエチレングリコール等を含む)等のフィルム基剤溶液を噴霧して、フィルムコーティング錠を製造する。
【実施例0038】
以下に、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
流動層造粒乾燥機(パウレック製:FM-MP-01)を用いてリナグリプチン10g、D-マンニトール(三菱商事フードテック製:マンニットP)297.8gを混合したのち、コポリビドン(BASF製:コリドンVA64)10.8gを精製水205.2gに溶解させた結合剤溶液を噴霧し、噴霧終了後、乾燥することで薬物含有造粒末を得た。上記作業を3回繰返して得られた3バッチの薬物含有造粒末を1分間混合し、混合終了後、1.575mmのスクリーンを取り付けた整粒機(パウレック製:QC-U5)を用いて整粒し、薬物含有整粒末を得た。
得られた薬物含有整粒末79.7gにトウモロコシデンプン(日本コーンスターチ製:局方コーンスターチホワイト)9g、ステアリン酸マグネシウム(太平化学産業製:ステアリン酸マグネシウム(植物性))1.4gを加えて調製した打錠末を打錠し、錠剤質量180mg、φ8.0mmの円形の素錠を得た。