(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022097340
(43)【公開日】2022-06-30
(54)【発明の名称】採尿具
(51)【国際特許分類】
E03D 9/00 20060101AFI20220623BHJP
G01N 1/10 20060101ALI20220623BHJP
【FI】
E03D9/00 Z
G01N1/10 V
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021007961
(22)【出願日】2021-01-21
(31)【優先権主張番号】P 2020210887
(32)【優先日】2020-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】598056733
【氏名又は名称】株式会社▲高▼橋型精
(74)【代理人】
【識別番号】100092598
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 伸一
(72)【発明者】
【氏名】高橋 光広
【テーマコード(参考)】
2D038
2G052
【Fターム(参考)】
2D038ZA03
2G052AA32
2G052AD06
2G052AD26
2G052BA17
2G052DA04
2G052DA27
2G052JA04
2G052JA14
2G052JA16
(57)【要約】
【課題】 便座に着座した状態で例えば幼児等の子どもであっても、適切に採尿することができる採尿具を提供する。
【解決手段】 尿を貯留可能な凹状の採取部11と、採取部の左右に設けられた第1バンド部12と、記採取部の前側に設けられた第2バンド部13を備え、第1バンド部の先端下面に設けた接着部位15を着座式の便器の便座の左右上面に貼り付けるとともに、第2バンド部の先端下面に設けた接着部位を便座の手前側上面に貼り付けることで採取部を懸架し、排尿された尿を採取部に溜めるようにする。第2バンド部にあたった尿は、第2バンド部に沿って流れ、採取部に溜まるようにする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
尿を貯留可能な凹状の採取部と、
前記採取部の左右に設けられた第1バンド部と、
前記採取部の前側に設けられた第2バンド部を備え、
前記第1バンド部の先端下面に設けた接着部位を、着座式の便器の左右上面または便座の左右上面に貼り付けるとともに、前記第2バンド部の先端下面に設けた接着部位を、前記便器の手前側上面または前記便座の手前側上面に貼り付けることで前記採取部を懸架し、排尿された尿を前記採取部に溜めるようにし、
前記第2バンド部は、あたった尿を前記採取部に向けて流すものである
採尿具。
【請求項2】
前記採取部、前記第1バンド部並びに前記第2バンド部の外観形状を、キャラクターをモチーフにした形態とする
請求項1に記載の採尿具。
【請求項3】
前記第2バンド部が、前記キャラクターにおける前側に位置するパーツで構成される
請求項2に記載の採尿具。
【請求項4】
前記キャラクターは象であり、前記採取部は前記象の顔、前記第1バンド部は前記象の耳、前記第2バンド部は前記象の鼻を模した形態とする
請求項2または3に記載の採尿具。
【請求項5】
前記採取部の後側には、ひさし状に突出する突片状部位を備え、
前記突片状部位は前記象の頭部を模した形態とする請求項4に記載の採尿具。
【請求項6】
前記採取部は、第1凹部と、その第1凹部の底部の左右方向の中央部位に設けた第2凹部を有し、
前記第1凹部の前壁部と前記第2凹部の前壁部は連続してつながった傾斜面とする
する
請求項1から5のいずれか1項に記載の採尿具。
【請求項7】
前記第2バンド部を前記便座の手前側上面或いは前記便器の手前側上面に装着し、前記第1バンド部を前記便座の左右上面或いは前記便器の左右上面に装着した状態で、前記採取部の前側が前記便座の手前側の内周縁に接触或いは近接するようにした
請求項1から6のいずれか1項に記載の採尿具。
【請求項8】
前記採取部、前記第1バンド部並びに前記第2バンド部は、紙製のベース材を備え、前記採取部の少なくとも底部側には、水に溶けるフィルムを備える
請求項1から7のいずれか1項に記載の採尿具。
【請求項9】
前記第1バンド部並びに前記第2バンド部の前記紙製のベース材の厚さは、前記採取部の前記紙製のベース材の厚さよりも薄くする
請求項8に記載の採尿具。
【請求項10】
前記採取部の外表面と内表面の少なくとも一方の面の一部または全部に、透水性低下材が塗布されて構成される
請求項1から9のいずれか1項に記載の採尿具。
【請求項11】
前記第2バンド部の取り付けた姿勢における上面と下面の少なくとも一方の面の一部または全部に、透水性低下材が塗布されて構成される
請求項1から10のいずれか1項に記載の採尿具。
【請求項12】
前記第1バンド部の前記接着部位が設けられた先端部位並びに前記第2バンド部の前記接着部位が設けられた先端部位を、前記採取部側から切り離すための切離部を備える請求項1から11のいずれか1項に記載の採尿具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば便座に着座した状態で排尿された尿の採取ができる採尿具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば検尿等するために採尿する場合、使い捨ての採尿カップ等が使用され、ユーザはその採尿カップを手で持った状態で排尿カップに尿が溜まるように排尿することが行われる。
【0003】
また、着座式の便器の便座に着座した状態で排尿された尿を採取するものとして、従来、例えば特許文献1に開示された排泄物採取具がある。この排泄物採取具は、受け部とその受け部の中央に形成したカップ部とからなる採取部と、採取部の左右に延設されたバンド部を備える。採取部は、水に溶ける単層紙または積層紙からなる採取部ベース材、水に溶けるフィルムを少なくとも一層含むフィルムと紙との積層体からなる水解調整材を含んで構成される。バンド部は、水に溶ける積層紙からなるバンド部ベース材を含んで構成される。採取部を、水解調整材を含んで構成することで、尿が一定期間貯留されるため、その貯留している際に採尿が可能となる。
【特許文献1】特開2018-189452号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、例えば幼児等の子どもが採尿する場合、尿がうまく排尿カップに収まらず、周囲を汚したり、尿により手が濡れてしまったりすることがあり、衛生上の問題がある。また、上述した特許文献1に開示された排泄物採取具は、採便具をベースとし、採便と採尿の両方に対応することから、特に幼児等の子どもの採尿は、うまく行えないことがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)本発明に係る採尿具は、尿を貯留可能な凹状の採取部と、前記採取部の左右に設けられた第1バンド部と、前記採取部の前側に設けられた第2バンド部を備え、前記第1バンド部の先端下面に設けた接着部位を、着座式の便器の左右上面または前記便座の左右上面に貼り付けるとともに、前記第2バンド部の先端下面に設けた接着部位を、前記便器の手前側上面または便座の手前側上面に貼り付けることで前記採取部を懸架し、排尿された尿を前記採取部に溜めるようにし、前記第2バンド部は、あたった尿を前記採取部に向けて流すものとするとよい。
【0006】
(2)前記採取部、前記第1バンド部並びに前記第2バンド部の外観形状を、キャラクターをモチーフにした形態とするとよい。キャラクターは、例えば子どもに馴染み、好かれるものとするとよい。
【0007】
(3)前記第2バンド部が、前記キャラクターにおける前側に位置するパーツで構成されるとよい。このようにすると、直感的に第2バンド部を手前側に置いた状態で採尿具をセットできるので良い。
【0008】
(4)前記キャラクターは象であり、前記採取部は前記象の顔、前記第1バンド部は前記象の耳、前記第2バンド部は前記象の鼻を模した形態とするとよい。鼻は顔の前にあり手前に延びることから第2バンド部は、採尿具の前側であることを直感的に理解できるのでよい。
【0009】
(5)前記採取部の後側には、ひさし状に突出する突片状部位を備え、前記突片状部位は前記象の頭部を模した形態とするとよい。突片状部位を設けることで、採取部の後方側の強度を増しつつ、頭部と鼻の関係から採尿具の前後の向きがわかるので良い。
【0010】
(6)前記採取部は、第1凹部と、その第1凹部の底部の左右方向の中央部位に設けた第2凹部を有し、前記第1凹部の前壁部と前記第2凹部の前壁部は連続してつながった傾斜面とするとよい。このようにすると、例えば第1凹部の前壁部に当たった尿も、そのまま下に流れて第2凹部に溜まるので良い。
【0011】
(7)前記第2バンド部を前記便座の手前側上面或いは前記便器の手前側上面に装着し、前記第1バンド部を前記便座の左右上面或いは前記便器の左右上面に装着した状態で、前記採取部の前側が前記便座の手前側の内周縁に接触或いは近接するようにするとよい。
【0012】
(8)前記採取部、前記第1バンド部並びに前記第2バンド部は、紙製のベース材を備え、前記採取部の少なくとも底部側には、水に溶けるフィルムを備えるとよい。紙製のベース部材は、水に分解される水解紙(水解性紙とも言う)や水に溶ける水溶紙(水溶性紙とも言う)等を用いると良い。このようにすると、採取部に溜まった尿により当該尿を採取する前に採取部が溶けるなどして底が抜けてしまう恐れを可及的に抑制できる。また、例えば当該フィルムを底部側に設け、上方部位には設けないようにすると、廃棄時に採尿具が短時間で水に溶けたり分解したりするので良い。
【0013】
(9)前記第1バンド部並びに前記第2バンド部の前記紙製のベース材の厚さは、前記採取部の前記紙製のベース材の厚さよりも薄くするとよい。このようにすると、便器に流した際に確実に溶けるなどして、紙詰まりすることなく水洗できる。例えば節水タイプの便器で使用し、廃棄するのに適している。紙の厚さは、例えば積層する紙の枚数を減らすとよい。例えば、バンド部側は1枚の紙・シートから構成し、採取部側は複数枚を積層するとよい。
【0014】
(10)前記採取部の外表面と内表面の少なくとも一方の面の一部または全部に、透水性低下材が塗布されて構成されるようにするとよい。少なくとも前記採取部の表面の一部に、透水性低下材が塗布されて構成されるようにするとよい。透水性低下材を塗布する面は、外表面と内表面のいずれでもよく、両方でもよいが、片面の方が望ましい。また、一部の場合、底部側にすると良く、(6)のように第1凹部と第2凹部を備える場合には、第2凹部側から優先して設けるとよい。
【0015】
(11)前記第2バンド部の取り付けた姿勢における上面と下面の少なくとも一方の面の一部または全部に、透水性低下材が塗布されて構成されるようにするとよい。透水性低下材を塗布する面は、上面と下面のいずれでもよく、両方でもよいが、上面のみに設けるとより好ましく、上面の場合も一部にした方がより好ましい。一部の場合には、採取部側から所定位置までとしたり、幅方向の中央側で全長に渡って形成したりするとよい。また第1バンド部の表面に透水性低下材を設けるのを妨げないが第2バンド部に透水性低下材を塗布し第1バンド部に塗布しない構成とするとよい。
【0016】
(12)前記第1バンド部の前記接着部位が設けられた先端部位並びに前記第2バンド部の前記接着部位が設けられた先端部位を、前記採取部側から切り離すための切離部を備えるとよい。切離部で第1バンド部や第2バンド部の所定部位を切断することで、切り離された採取部等の本体部分には接着部位がなく、よって、そのまま便器に廃棄しても採取部等が便器内にくっついてしまうことがなくなり、より確実かつ簡単に水洗して流すことができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、便座に着座した状態で例えば幼児等の子どもであっても、適切に採尿することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は本発明の採尿具の好適な一実施形態を示す図であり、(a)は採尿具の平面図を示し、(b)はその断面図を示している。
【
図4】
図4は本発明の採尿具の別の実施形態を示す図である。
【
図5】
図5は本発明の採尿具の別の実施形態を示す図である。
【
図6】
図6は本発明の採尿具の別の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の好適な実施形態について図面に基づき、詳細に説明する。なお、本発明は、これに限定されて解釈されるものではなく、本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、種々の変更、修正、改良を加え得るものである。
【0020】
図1は、本発明に係る採尿具の好適な一実施形態を示す図である。同図に示すように、採尿具10は、平面視四角形の凹状部位を有する採取部11と、その採取部11の左右に設けられた第1バンド部12と、採取部11の前側に設けられた第2バンド部13等を備える。また、採取部11の後ろ側にはバンド部は設けないが、ひさし状に外側に突出した突片状部位14を備える。
【0021】
採取部11は、外周縁から下方に窪んだ第1凹部21と、その第1凹部21の底部21aの左右方向の中央に更に窪んだ第2凹部22を備える。第1凹部21は、下端先細り状の略角錐台形状からなり、前壁部21b、左右の側壁部21c並びに後壁部21dは、それぞれ下端側が中央に向けて傾斜する傾斜面となる。同様に、第2凹部22は、下端先細り状の略角錐台形状からなり、その底部22aは略矩形状の平面となり、前壁部22b、左右の側壁部22c並びに後壁部22dは、それぞれ下端側が中央に向けて傾斜する傾斜面となる。そして、第1凹部21の側壁部21cと第2凹部22の側壁部22cの間には、第1凹部21の平坦な底部21aが存在する。一方、第1凹部21の前壁部21bと第2凹部22の前壁部22bの間、並びに第1凹部21の後壁部21dと第2凹部22の後壁部22dの間には、底部21aは存在せずそのまま連続してつながった状態に形成される。
【0022】
本実施形態では、採取部11を構成する採取部ベース材及び第1バンド部12,第2バンド部13を構成するバンド部ベース材は、2層(紙層S1,S2)の積層紙からなり、採取部ベース材とバンド部ベース材とは連続した(すなわち、同一枚葉の)単層紙原材または積層紙原材から形成されている。当該紙層は、水に分解される水解紙や水に溶ける水溶紙を用いると良く、いずれか一方或いは両方を積層して構成するとよい。
【0023】
また第1バンド部12と第2バンド部13は、上記のバンド部ベース材のそれぞれの先端側(採取部11から離れた側)の下面に形成した接着材層15を更に備える。そしてこの接着材層15も、水に溶けるものを用いて構成するとよい。なお、接着材層15は、使用前において剥離紙により被覆される。
【0024】
また採取部11は、採取部ベース材に加え少なくとも第2凹部22の領域にフィルム材24を備える。フィルム材24は、水に溶けるフィルム材であるが、所定時間は水に溶けずに第2凹部22内に尿を保持する機能を有する。このようにすると、第2凹部22内に例えば尿が溜まったとしても、フィルム材24はすぐに溶けたり破けたりすることなくカップ状の形態を保持し、当該尿を所定時間貯留することができる。そしてフィルム材24は、水に溶ける材質のため、尿の採取後は採尿具10をそのまま便器内に廃棄することで、水洗できる。
【0025】
水に溶けるフィルム材は、例えば樹脂製のフィルム材とするとよく、例えばPVA系樹脂フィルム)を採用するとよい。またPVA系樹脂は、例えば冷水(たとえば5℃)可解性に優れたものを有するものとするとよい。このようにすると、採尿具を便器に廃棄した際に、便器内に貯留されている水や排水される水などにより容易に溶けるので良い。
【0026】
さらに第2凹部22は、生理食塩水の注入から3分後の保持率が15%以上であることが好ましい。なお、フィルム材24もトイレに流すことから、たとえば尿を満杯に収容した場合において、180秒間は、上記保持率は85%以下または95%以下であることが好ましい。
【0027】
このフィルム材24の実装は、例えば、
図1(b)中に拡大して示す図から明らかなように、採取部ベース材を構成する2層の紙層S1と紙層S2の間にフィルム材24を挟み込んだ3層構造とするとよい。
【0028】
すなわち、例えば排尿量が少なく第2凹部22の底部22a側に少しの尿がたまった状態では、第2凹部22の前壁部22b、側壁部22c、後壁部22dの上側の領域は尿が存在せず尿と非接触の状態となる。係る場合、第2凹部22の内周面側に設けた紙層S1に接触した尿が当該紙層S1の毛細管現象により上方に進み、溜まった尿の表面よりも上方部位に位置しているフィルム材24にも、その表面に配置される紙層S1を介して尿が接触し、確実に所定時間で溶けるのを促進する。
【0029】
また、後述するように採尿具10を使用後に廃棄する場合、そのままトイレに流すべく、そのまま採尿具10ごと着座式の便器31に落とすことになる。このとき、便器31に溜まっている水の量と、採尿具の落下位置の関係などから、採尿具の全体が水に浸かるとはかぎらず、例えば第2凹部22の一部が水に浸かることがある。このような場合でも、本日携帯では第2凹部22の外側に紙層S2を配置したため、当該紙層S2の一部でも水に浸かると、その紙層S2の毛細管現象により、かかる水は第2凹部22の全体に進み、内側のフィルム材24の全体に接触する。これにより、水に溶けるフィルム材24が、確実に所定時間で溶ける。
【0030】
フィルム材24の両面に紙層S1,S2を配置したサンドイッチ構造にすることで、上述した効果を奏することができるので好ましいが、いずれかの効果を発揮すべき一方のみに紙層を設けたり、紙層を設けることなくフィルム材24のみとしたりしてもよい。
【0031】
さらにこのフィルム材24は、第1凹部21の領域にも形成すると好ましい。このようにすると、例えば排尿された尿が、第2凹部22を超えて第1凹部21側にまで溜まったとしても、第1凹部21側でも所定時間にわたり尿を貯留することができる。
【0032】
さらに本実施形態では、採取部11、第1バンド部12及び第2バンド部13の周囲に、押圧力の高い線素片が破線状に表れる縁取りDLが形成されている(
図2では、縁取りDLの図示を省略しているが、
図1と同様に表れる)。なお、図示はしないが第1バンド部12、第2バンド部13の面の全体にわたり、押圧力の高い線素片が破線状に表れる格子等の模様を形成することができる。このようなミシン目を形成することで、積層して製造された採尿具が剥離しにくくなるし、使用に際しての採取部および/またはバンド部材の強度が調整される。その一方で、高い押圧力で加圧することで一部が破断してミシン目のようになることがあり、係るミシン目は水の浸透を助長する。したがって、ミシン目の模様を増やしたり減らしたりすること、破線の太さ,ピッチ等を調整することで、採尿具が水に溶ける速度を調整することができる。
【0033】
さらに第2バンド部13には、左右方向に延びる押圧力の高い線素片18が前後に適宜数形成する。この線素片18は、リブのように機能し、第2バンド部13がよじれるのを抑止しつつ、その線素片18に沿って曲がることで例えば第2バンド部13の先端を採取部11よりも少し上に持ち上げた姿態にすることができる。
【0034】
図1,
図2の採尿具10では、縁取りDLにより採尿具10を構成する水溶・水解性紙が剥離しにくいので、採取部11、第1バンド部12及び第2バンド部13の強度が保障される。また、押圧力の高い線素片が破線状に表れる格子等の模様を増やしたり減らしたりすること、破線の太さ,ピッチ等を調整することで、水に溶ける速度を調製することができる。
【0035】
本実施形態の採尿具10の製造に際して、採取部ベース材とバンド部ベースとの一体品は水溶紙及びまたは水解紙やフィルム材等の所定の材料シートを適宜層重ね合わせ、これを所望形状に打ち抜くと同時に、熱プレスにより成型することで製造することができる。なお、熱プレスの前工程、熱プレスと同時、または熱プレスの後工程において、消毒剤、消臭剤、脱臭剤、芳香剤の少なくとも1つを採尿具10に含ませる(染み込ませる)ようにするとよい。
【0036】
さらに本実施形態では、採尿具10の外観形状を、所定のキャラクターをモチーフにした形態とすると良く、特に、子どもが興味を持ちやすいキャラクター、例えば、動物などとするとよい。本実施形態では、動物の一例である象の顔を模した形状とした。具体的には、採取部11を象の顔の部分に見立て、左右に配置される第1バンド部12を象の耳に対応させ、第2バンド部13を象の鼻に対応させ、後ろ側に位置する突片状部位14を象の頭の部分に対応させるようにした。第1バンド部12の外周縁は、耳を模した適宜の湾曲部を表するとともに、中央に大きな孔部12aを設け耳の穴を模した形態としている。
【0037】
また、その孔部12aの内周縁形状は、耳の穴に合わせて適宜の湾曲部を有する形状としている。さらに象の耳は大きいことも相まって、第1バンド部12の外形状を大きくするとともに、先端枠部位12bを前後方向に比較的長く伸ばすことができる。この先端枠部位12bの下面に接着材層15を形成するため、接着材層15は細長くすることができ、後述するように便座32に第1バンド部12を貼り付ける際に接着面積を確保しつつ、長い区間で接着でき、採取部11を安定した姿勢で支持できる。さらに本実施形態では、第1バンド部12に大きな孔部12aを設けたので、紙の総量を減らし、紙詰まりが生じにくい構造となる。そして、係る孔部12aは、耳の穴を模したものであるので、違和感なく大きくすることができるのでよい。
【0038】
さらに本実施形態では、第2凹部22の左右に位置する第1凹部21の底部21aには、楕円形の円周に沿って線状に形成される凸状部19を設ける。この凸状部19は、象の目をモチーフとしたものであり、採取部11が顔のパーツを模したものであることをより強く醸し出す。
【0039】
象の鼻も太くて長いため、第2バンド部13も幅広である程度の長さを違和感なく形成できる。また、突片状部位14の外周縁は、頭部に見立てて緩やかな湾曲としている。そして、顔の部分を基準にした場合、耳は左右に位置し、鼻は顔の前にあり手前に延びることから第2バンド部13は、採尿具10の前側であることを直感的に理解できる。さらに、頭部に対応する突片状部位14を設けたことで、それとの対比でも第2バンド部13が前側であることが理解できる。
【0040】
上述した構成の採尿具10は、例えば以下のようにして使用する。使用に先立ち、採尿具10の第1バンド部12並びに第2バンド部13のそれぞれの先端に設けた接着材層15の剥離紙を剥がし、便座32の所定位置に貼付け接着固定する(
図3参照)。すなわち、例えばまず剥離紙を剥がした第2バンド部13の先端の接着材層15を、便座32の手前側の上面に貼り付ける。また、その状態で第1バンド部12の先端の接着材層15を、便座32の左右の上面に貼り付ける。これにより、採取部11は、第1バンド部12並びらに第2バンド部13により、便座32に懸架される。また、このように懸架された状態では、採取部11は、第1バンド部12並びに第2バンド部13の先端よりも低位置に位置する。つまり、第2バンド部13は採取部11から先端に行くほど上昇する上り傾斜状で象の鼻を上に上げた姿態となり、第1バンド部12は採取部11から先端に行くほど上昇する上り傾斜状になる。さらに、採尿具10を便座32の所定位置に取り付けた状態では、採取部11の中心は、便座32の前後方向の中心よりも前側に位置するように、各バンド部や採取部11の寸法形状が設定される。
【0041】
上述したように採尿具10を便座32に取り付けた状態で、使用者は便座32に座り、排尿する。すると、使用者から排尿された尿は、採取部11の特に第2凹部22に溜まる。すなわち、採取部11は、上方開口部位を比較的大きくした第1凹部21を設けたことで、排尿された尿の多くは、採取部11内に至る。そして、第1凹部21並びに第2凹部22は、下端先細り状の略角錐台形状になっていることから、最終的に第2凹部22に導かれ、第2凹部22に溜まる。
【0042】
さらに、排尿された尿は、前方に向かって放出されることが多く、係る場合には例えば第1凹部21の前壁部21bに当たることがある。第2凹部22の前壁部22bの上端はそのまま第1凹部21の前壁部21bにつながり、左右方向のようにフラットな底部21aが存在しないので、例えば第1凹部21の前壁部21bに当たった尿は、そのままスムーズに前壁部21bに沿って下降移動し、そのまま第2凹部22の前壁部22bを伝わり第2凹部22内に溜まる。
【0043】
さらに、排尿の勢いが強かったり、排尿の方向が前方等を向いていたりした場合には、尿が第2バンド部13に当たることがある。係る場合、当該尿は、第2バンド部13に沿って下方に移動し、採取部11内に至る。よって、排尿された尿は、確実に採尿具10に溜めることができる。
【0044】
第2バンド部13の長さは、その先端の接着材層15を便座32の手前側上面に貼り付けると共に採取部11を少し低い位置に配置した状態で第1バンド部12を便座32に貼り付けると、採取部11の前側が便座32の手前側の内周縁に接触或いは近接し、平面視で採取部11の外周縁及び第2バンド部13の外周縁と、便座32の間に隙間Sが少なくなるようにするとよい。また、同様に第2バンド部13の横幅は、隙間Sが少なくなるような長さとするとよい。このようにすると、排尿された尿は、採取部11に直接或いは第2バンド部13を伝わり採取部11内に導かれ、溜まるので良い。
【0045】
さらに、使用者が子どもの場合、例えば、「象さんに向けてオシッコしようね」等声かけすることで、排尿の目標ができ、象の顔である採取部11や、象の鼻である第2バンド部13に向けて排尿し、採尿することができる。また、子どもは、無機質なカップその他の採尿具ではなく、キャラクター(象)に向けて排尿することで、興味を持ちやすく、楽しんで排尿でき、採尿が容易に行えるので良い。
【0046】
そして、排尿後は、使用者は着座式の便器31(便座32)から降り、採取部11に溜まった尿を、スポイト等を用いて必要量を採取する。フィルム材24の機能により、例えば2から3分或いはそれ以上の一定時間は溶けずに採取部11は所望のカップ状の形態を保持しているため、その間に必要量の尿を採取することができる。その後、第1バンド部12と第2バンド部13の接着材層15を便座32からはずし、例えば採尿具10をそのまま便器31に落とし、水洗することで廃棄できる。フィルム材24は、紙のように水にすぐに溶けたり分解したりすることはないものの、水に溶ける材質のため、詰まることなく流せる。また、1回の水流では流れないことがあっても、例えばそのまま放置し少し時間が経過した後で再度水を流すことで水洗できる。
【0047】
また、上述した実施形態では、第2バンド部13は、水に溶けたり分解したりする2層(紙層S1,S2)の積層紙からなるバンド部ベース材から構成し、フィルム材24を備えていない。排尿された尿が第2バンド部13にあたったとしても、尿はそのまますぐに下に流れ採取部11に至るため、問題なく採取部11に尿を溜めることができる。また、第2バンド部13も、採取部11と同様に、フィルム材24を介在させるとより好ましい。
【0048】
また、
図4に示すように、少なくとも第2凹部22の内表面、すなわち、紙層S1の表面に透水性低下材25を備えるとよい。この透水性低下材25は、第1凹部21の内表面にも設けるとより好ましい。この透水性低下材25は、例えば紙層S1の表面に、所定の塗料を塗布して成膜すると良い。この透水性低下材25に用いる塗料としては、例えばポリエチレンテレフタレートやポリオレフィン等を含む塗料を使用するとよく、セルロースを主成分とする塗料を使用しても良い。
【0049】
透水性低下材25を用いることで、第2凹部22内に尿が溜まったとしても、透水性低下材25はすぐに溶けたり破けたりすることなく、第2凹部22はカップ状の形態を保持し、当該尿を所定時間貯留することができる。そして透水性低下材25は、紙のように水にすぐに溶けることはないものの、水に溶ける材質のため、採取後は採尿具10をそのまま便器内に廃棄することで、水洗できる。
【0050】
またこの透水性低下材25を形成する部位は、上記の説明では、第2凹部22や第1凹部21の内表面としたが、外表面或いは両方に設けてもよい。さらには、第1バンド部12並びに第2バンド部13にも設けてもよい。但し、あまり広範囲に塗布形成すると、採尿具が水に溶けるに要する時間がかかるため、便器にスムーズに流すことがデキない恐れがあるので、例えばバンド部については第2バンド部側にのみ設けるとよく、特に第2バンド部13の場合には上面側に設けるとよい。さらに上面に設ける場合に、幅方向中央で第1凹部21につながる部分から先端に向けて延びるように形成するとよい。このようにすると、第2バンド部13の上面に当たった尿は、透水性低下材25に案内されてスムーズに下に流れ、その間に紙層S1に接することを可及的に抑制できるのでよい。紙層S1内を毛細管現象で移動することを可及的に抑制できるので良い。
【0051】
また、この採尿具の使用対象者は、上述した実施形態では、子どもを例に挙げて説明したが、例えば高齢者や身体に不自由な人などにも適して使用できる。なおまた、第1バンド部12並びに第2バンド部13の先端に設けた接着材層15は、便座32に貼り付けるように説明したが、便器の上面に貼り付けるようにしてもよい。
【0052】
各層を構成する紙層は、1または複数枚の紙を積層して構成される。枚数は全体的に同じにしてもよいが、部位により異ならせると良く、採取部の枚数が、バンド部の部分に使用される紙の枚数より多くするとよい。採取部の枚数を多くすることで、採尿時に凹状の状態を長く保てるので良い。また、バンド部の部分の枚数を少なくするとよい。そのようにすると、採尿具全体の紙の使用量を削減し、採尿具を便器に廃棄した際に、短時間で溶けたり分解したりして、例えば節水タイプ(例えば排水が6リットルなど)の便器であっても、一回の排水で確実に水洗できるのでよい。
【0053】
図5は、別の実施形態の平面図を示している。本実施形態では、第1バンド部12の先端枠部位12b並びに第2バンド部13の先端部位13aを、採取部11側から切り離すための切離部を設けた。切り離す先端枠部位12b並びに先端部位13a、接着材層15を設けた領域を含む。
【0054】
この実施形態では、切離部は、切り離しを案内するための目印41である。この目印41は、枠状の第1バンド部12の内外周の両側に挟むように配置する三角形状のマーク41aや、切り裂く位置を示すライン41bなどとするとよい。第1バンド部12は、環状の枠形状としていることから、接着材層15を含む領域を切り離すため、接着材層15の長手方向両端の外側にそれぞれ一対のマーク41aを配置した。これにより、ユーザは、例えば接着材層15の両側にそれぞれ設けられた一対のマーク41a間を切り裂くように第1バンド部12を切断することで、
図5(b)に、第1バンド部12の先端枠部位12bを切り離すことができる。
【0055】
同様に、第2バンド部13は、幅広な帯状であり、一端が採取部11につながり先端部位13aは、フリー状態のため、接着材層15の長手方向に沿った採取部11側の左右両側縁にそれぞれ一対のマーク41aを設けた。さらにこの第2バンド部13側では、一対のマーク41aを結ぶライン41bを設けている。よって、ユーザは例えば接着材層15の両側にそれぞれ設けられた一対のマーク41a間を切り裂くように、或いはライン41bに沿って第1バンド部12を切断することで、
図5(b)に、第2バンド部13の先端部位13aを切り離すことができる。
【0056】
そして、係る切り離しは、採尿具10の使用後、
図3に示すように便座32に採尿具10を取り付けた状態のまま行う。よって、
図5(b)では切り離された先端枠部位12b、先端部位13aが外に離れていくように示しているが、実際の使用状況では先端枠部位12b、先端部位13aは、便座32に貼り付けて固定された状態で、採取部11及びそれにつながる第1バンド部12と第2バンド部13の根元側の部分が便座32から取り外されてフリーな状態となる。そして、そのようフリーな状態になった採取部11等を便器31内に廃棄し、水洗するとよい。
【0057】
例えば本実施形態のように先端枠部位12b、先端部位13aを切り離すことなく、接着材層15がついたまま採尿具10を流した場合、接着材層15が便器31の内周面にくっつくおそれがあり、仮にくっつくと剥がすのが煩雑である。例えば、本実施形態の採尿具10は、採取部11を中心に3方に延びて広がった姿態となっており、採取部11に溜まった尿も、例えば便に比べるとさほど重量はないことから、便器31内に落下させた場合にそのままの広がった姿態で落ちることがある。また、広がった姿態で落ちていくことで便器内での落下位置も定まらず、横にずれることもある。すると、例えば採取部11等が便器31内に溜まった水に浸かったとしても、先端枠部位12b、先端部位13aのうちの一部が便器31の内周面に触れ、たまたま接着材層15が内周面にくっつく場合がある。このようにくっついた場合でも、採取部11その他の部位が水溶/水解し、採尿具10の全体が便器内に残ることはないものの、その一部が水洗できない場合がある。
【0058】
これに対し、本実施形態では、例えば採取部11等は軽く、広がった姿態となり、採取部11に溜まった尿も、例えば便に比べるとさほど重量はないことから、便器内に落下させた場合にそのままの姿態で落ちたとしても、このとき落下する部分には、接着材層15がないので、仮に周縁が便器の内周面に接したとしても、その内周面にくっつくことはなく、便器31の水に接触した状態で一定時間経過することで、水解或いは水に溶け、水洗することができる。
【0059】
一方、便座32に残った先端枠部位12bと先端部位13aは、その後に便座32から取り外し、廃棄すればよい。この廃棄は、例えば一般ゴミとして廃棄してもよいし、便器31内に流してもよい。便器31に流す際も、先端枠部位12b、先端部位13aと小さくなっているため、例えば便器31に溜まっている水の部分に確実に廃棄でき、そのまま潜水することができる。
【0060】
また、第2バンド部13に設けた目印41は、マーク41aとライン41bを備えたが、ライン41bのみとしてもよい。また、便宜上、第1バンド部12側の目印41(マーク41a)と、第2バンド部13側の目印41(マーク41aとライン41b)を異なる態様としたが、同じにしてもよい。
【0061】
切離部は、上述した実施形態のように目印41に限らず、例えば
図6(a)に示すように、切断を案内するミシン目42とするとよい。ミシン目42を設けることで、より簡単に第1バンド部12や第2バンド部13の所定部位を切断できる。また、図示するようにミシン目42に加え、その両端に目印(マーク41a)を設けると、ミシン目42の位置がわかりやすくなるのでよい。
【0062】
さらにまた、切離部は、例えば
図6(b)に示すように、マーク41aを設けた部位を切除した切り込み部43を設けるとよい。このように切り込み部43を設けることで、切断開始部分がより容易に切り裂いていくことができる。また、図示の例では、一対の切り込み部43を結ぶようにミシン目42を設けており、より容易に切断できるようにしたが、ミシン目を設けなくてもよい。
【0063】
以上、本発明の様々な側面を実施形態並びに変形例を用いて説明してきたが、これらの実施形態や説明は、本発明の範囲を制限する目的でなされたものではなく、本発明の理解に資するために提供されたものであることを付言しておく。本発明の範囲は、明細書に明示的に説明された構成や製法に限定されるものではなく、本明細書に開示される本発明の様々な側面の組み合わせをも、その範囲に含むものである。本発明のうち、特許を受けようとする構成を、添付の特許請求の範囲に特定したが、現在の処は特許請求の範囲に特定されていない構成であっても、本明細書に開示される構成を、将来的に特許請求する可能性があることを、念のために申し述べる。
【符号の説明】
【0064】
10 :採尿具
11 :採取部
12 :第1バンド部
12a :孔部
12b :先端枠部位
13 :第2バンド部
14 :突片状部位
15 :接着材層
18 :線素片
21 :第1凹部
21a :底部
21b :前壁部
21c :側壁部
21d :後壁部
22 :第2凹部
22a :底部
22b :前壁部
22c :側壁部
22d :後壁部
24 :フィルム材
25 :透水性低下材
31 :便器
32 :便座
DL :縁取り
S :隙間
S1 :紙層
S2 :紙層