(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022009735
(43)【公開日】2022-01-14
(54)【発明の名称】固定生物学的試料から生体分子を抽出するためのターゲット細胞または組織を決定するための方法
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/04 20060101AFI20220106BHJP
C12Q 1/6806 20180101ALI20220106BHJP
【FI】
C12Q1/04
C12Q1/6806 Z
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021177450
(22)【出願日】2021-10-29
(62)【分割の表示】P 2019235487の分割
【原出願日】2011-06-14
(31)【優先権主張番号】10165797.1
(32)【優先日】2010-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】507214038
【氏名又は名称】キアゲン ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル グレルツ
【テーマコード(参考)】
4B063
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QQ02
4B063QQ08
4B063QQ52
4B063QR52
4B063QR66
4B063QS36
4B063QX02
(57)【要約】
【課題】固定生物学的試料から生体分子を抽出するためのターゲット細胞または組織を決定するための方法を提供すること。
【解決手段】本発明は、固定生物学的試料から生体分子を単離または抽出するためのターゲット細胞または組織を決定するための方法、固定生物学的試料から生体分子を抽出、単離および/または精製するための方法における試料の調製、ならびに前記ターゲット細胞または組織からの生体分子の抽出、単離および/または精製のために固定生物学的試料中のターゲット細胞または組織を可視化するためのキットに関する。一局面において、本発明の方法は:(1)前記固定生物学的試料の少なくとも1つの部分を少なくとも1つの支持体に載置する工程、(2)必要に応じて、前記試料の少なくとも1つの部分を試料処理剤で処理する工程などを包含する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定生物学的試料から生体分子を単離または抽出するためのターゲット細胞または組織の決定方法、固定生物学的試料から生体分子を抽出、単離および/または精製するための方法における試料の調製、ならびに前記ターゲット細胞または組織からの生体分子の抽出、単離および/または精製のために固定生物学的試料中のターゲット細胞または組織を可視化するためのキットに関する。
【0002】
本発明につながる研究は、欧州共同体第7次フレームワークプログラム(FP7/2007-2013)から助成金契約番号222916により資金供与を受けた。
【背景技術】
【0003】
その天然の環境から取り出された生体物質の生体分子の状態は、試料採集とその分析の間の経過時間が長ければ長いほど、ますます変化する。特に、リボ核酸(RNA)は、遍在するRNaseのため急速に分解する。また、核酸の分解に加えて、例えばストレス遺伝子(stress gene)が誘導され、新たなmRNA分子の合成をもたらし、これらの分子もまたその試料の転写パターンを激しく改変する。従って、遺伝子発現プロファイルを保持するために、検査中の試料を直ちに安定させなければならない。
【0004】
タンパク質の化学分析および分子分析は、医療および臨床診断分野以外のエリア、例えば法医学、薬学、食品分析、農業、環境分析においても、ならびに多くの研究エリアにおいても、ますます使用されるようになってきているので、従って、試料の分子構造の完全性の保持およびその結果としてそれらの即時安定化は、これらすべての分野における必要要件である。
【0005】
それ故、何年にもわたって、多数の最も多彩な安定化試薬および安定化方法が、広範な最も多彩な生体物質の安定化のために開発されてきた。
【0006】
組織の組織学的検査のためのホルマリンによる安定化および安定化された試料のその後の包埋は、かねてから公知である。しかし、生体分子の非常に不十分な安定化をもたらす結果にしかならず、そのため生体分子、特に、存在する核酸または核酸フラグメントの定量表示ではなく、よくても定性表示しか可能でないので、このタイプの安定化は、分子生物学プロセスでの使用に大抵は不適切である。さらに、ホルマリンなどの架橋安定剤での安定化は、組織からの核酸またはタンパク質の抽出性低減をもたらす。ホルマリンはまた、毒素学的に無害でない。
【0007】
カチオン性洗剤などの安定化試薬は、特許文献1、特許文献2、特許文献3および特許文献4に記載されており、これらを用いて核酸の非常に良好な定性的同定を達成することができる。例えば高濃度の硫酸アンモニウムを含む他の安定剤(例えば米国特許第6,204,375号参照)は、様々な組織における核酸の安定化に非常に適している。
【0008】
一つのおよび同じ生体物質の中に、例えば細胞構造、細胞完全性(cell integrity)および生体分子の発現パターンが異なる、非常に多様な組織および/または細胞タイプが含まれる場合がある。
【0009】
形態学的な構造の保存のための組織固定剤は、二つの群に分けることができる。群一は、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒドまたはグリオキサールのような架橋剤を含有する。これらからは、4%緩衝化ホルムアルデヒドが最も広く用いられている固定剤である。F.Blumによる1896年のその導入以来唯一なされた変更は、生理学的なpHでのホルマリンの中性緩衝化(NBF、中性緩衝化ホルマリン)である。完全に判ってはいないが、アルデヒドはタンパク質間の架橋を形成すると考えられる。これにより、酵素的活性は停止され、可溶性タンパク質は構造タンパク質に固定される。ホルムアルデヒドは核酸とも反応するので、NBF固定は、低収率、核酸の分解および、PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)またはRT-(逆転写)PCRのような下流の反応の阻害をもたらす。
【0010】
第二の群は、架橋剤を含有せず、アルコールを主成分として含有する。非架橋、アルコール系固定剤は、有害なホルムアルデヒド固定を避けるために、ならびに免疫組織化学法のために組織高分子およびとりわけタンパク質エピトープをより良好に保存するために、導入された。アルコールは、組織を透過しなければならず、タンパク質の沈殿および変性のために一定の局所濃度に達しなければならない。カーノイズ(Carnoy’s)(60%エタノール、30%クロロホルム、10%酢酸)またはメタカーン(Methacarn)(エタノールをメタノールで置換したカーノイズ)のような一部のアルコール固定剤は、アルデヒドと比較して核酸固定剤として優れた結果を生じさせることが見出されている(Coxら、Experimental and Molecular Pathology 2006;80:183-191)。アルコールに基づく他の発表された固定剤は、70%エタノール(Gillespieら、Am.J.Pathol.2002;160(2):449-457)、56%エタノールおよび20% PEG(ポリエチレングリコール、Bostwickら、Arch.Pathol.Lab.Med.1994;118:298-302)または90%メタノールおよび10% PEG300(Vinvekら、Lab.Investigation 2003;83(10):1427-35)から成る。
【0011】
さらに幾つかの特許出願に改善された非架橋固定剤が記載されている。ドイツ特許第199 28820号明細書には、異なるアルコールとアセトンとPEGと酢酸の混合物を含有する固定剤が開示されている。米国特許出願公開第2003/0211452号明細書には、少なくとも80%のメタノールと20%までのPEG300とを含有する、RNA、DNAおよび形態の保存のための、「Umfix」として商品化されている固定剤が記載されている。分子の含量(molecular content)および形態の保存のためのエタノールに基づく固定剤は、米国特許出願公開第2005/0074422号明細書(「Finefix」)、国際公開第2004/083369号(「RCL2」)および国際公開第05/121747号(「Boonfix」)に記載されている。米国特許出願公開第2003/119049号明細書には、水ベースであり、かつ緩衝剤成分と一種類のアルコールと固定剤成分と分解を阻害するための薬剤とを含む、汎用収集媒体が記載されている。
【0012】
架橋固定剤およびアルコール固定剤に加えて、両方の群の固定剤を組み合わせる公知の薬剤が多数存在する。一例は、形態、免疫原性ならびにRNAおよびDNA完全性の保存のための、米国特許第5,976,829号A明細書に記載されている「Genofix」である。ホルムアルデヒドが一成分であるので、「Genofix」もまた、架橋剤のすべての欠点を示す。
【0013】
欧州特許出願公開第1965190号明細書には、最大90%のメタノールと追加の添加剤とを含む非水性組成物と試料を接触させ、その後、最大99%のエタノールを含む第二の組成物とその試料を接触させることにより試料を固定する、生物学的試料の固定の概念が記載されている。この方法を用いて、生物学的試料中に含有される生体分子の非常に良好な安定化が達成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】米国特許第5,010,184号明細書
【特許文献2】米国特許第5,300,545号明細書
【特許文献3】国際公開第02/00599号
【特許文献4】国際公開第02/00600号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本出願の目的は、固定生物学的試料から生体分子を抽出および単離するための方法を提供することであり、取得可能な生体分子は、該試料の対象となる細胞または組織(「ターゲット細胞」)の生体分子パターンを表示している。
【課題を解決するための手段】
【0016】
この目的は、固定生物学的試料からの生体分子の単離、抽出または精製のためのターゲット細胞または組織を決定および/または選択するための方法によって達成され、この方法は、以下の工程を含む:
(1)固定生物学的試料の少なくとも1つの部分を少なくとも1つの支持体に載置する(mount)工程、
(2)必要に応じて、前記試料の少なくとも1つの部分を試料処理剤で処理する工程であって、該処理を工程(6)より前の手順の任意の段階で実行することができる、工程、
(3)少なくとも1つの支持体に載置された前記固定生物学的試料の少なくとも1つの部分を染色する工程、
(4)工程2において染色された少なくとも1つの部分を検討して、対象となる生体分子を含むターゲット細胞または組織を決定する工程、
(5)相応の(according)ターゲット細胞または組織を、前記支持体に載置された前記固定試料の残部から分離する工程、
(6)分離された細胞または組織から生体分子を単離する工程。
【0017】
好ましくは、本発明に従って前記工程を提供した順序で実行し、ここで、工程(2)を工程(1)より後かつ工程(6)より前の任意の段階で実行する。好ましくは、工程(2)を工程(3)の前に実行する。工程(1)から(5)、特に工程(3)から(5)は、主として、-好ましくは染色された試料の視覚的検討により-対象となる生体分子をおそらく含む細胞の決定および/または選択を可能にすることに役立ち、その後、工程(6)に従って前記生体分子を単離する。本発明によると、生体分子を単離する前にターゲット細胞の決定/選択を実行することが特に好ましい。
【0018】
前記生物学的試料は、生物全体であってもよく、生物の一部分、特に、ヒト、動物または植物に由来する組織断片または組織切片または培養細胞もしくは組織であってもよく、あるいは微生物であってもよい。細胞培養物から単離された包埋細胞も使用することができる。適する生物学的試料は、例えば、細胞含有体液、例えば血液、精子、脳脊髄液、唾液、痰もしくは尿、白血球画分、バフィーコート、糞便、表面生検材料、吸引液、皮膚断片、生物全体、後生動物の、好ましくは昆虫および哺乳類の、特にヒトの、器官および組織、例えば剖検材料、生検材料、微細針吸引液または組織切片の形態のもの、単離された細胞、例えば付着または浮遊細胞培養物の形のもの、植物、植物の部分、植物組織または植物細胞、細菌、ウイルス、酵母および真菌などの、固定に適するすべての生物学的試料である。
【0019】
用語「固定すること」、「固定」または「固定された」は、生物学的試料が、形態学的および/または組織学的構造の安定化、特に、該試料に含有されている生体分子の安定化をもたらす結果となる薬剤または組成物で処理されることを意味する。当該技術水準から公知のそのような薬剤または組成物の例を上に記載している。好ましい実施形態では、ホルマリンを含まない組成物で生物学的試料を固定した。本発明によると、この試料を「非ホルマリン固定試料」と記述する。好ましくは、上に記載したような市販の非架橋組成物、例えば「カーノイズ」、「メタカーン」、「Umfix」、「Finefix」、「RCL2」、「Boonfix」、またはドイツ特許出願公開第19928820号明細書に記載されているような固定剤で、生物学的試料を固定した。特に好ましい実施形態では、欧州特許出願公開第1965190号明細書に記載されている手順に従って、市販の「PAXgene(登録商標)Tissue」キット(PreAnalytix GmbH、スイス、Hombrechtikon)によって固定されている生物学的試料を用いて、本発明の方法を実行する。固定により、生物学的構造を生きているような様式で実質的に保存して、「現実的な評価(real assessment)」を可能にすることを意図している。固定のさらなる利点は、検体を長期間、記録として保管することができることである。さらに、多くの形態学的調査は、固定された材料に基づいてのみ可能である。
【0020】
用語「生体分子」は、生物学的試料の任意のタイプの核酸およびタンパク質を含む。本発明による好ましい生体分子は、核酸である。前記生体分子について、「安定化」は、好ましくは、該生体分子の分解、修飾または誘導の阻害を意味することを意図したものである。生体物質の組織学的分析の場合、用語「安定化」は、好ましくは、試料の形態の有意な変化の防止を意味することを意図したものである。
【0021】
本方法による「核酸」は、当業者に公知のすべての核酸、例えば、天然または合成核酸を含み、ならびに人工的に試料に導入された核酸、一本鎖および二本鎖核酸、直鎖、分岐または環式核酸、特に、任意のタイプのDNAおよびRNA、好ましくはRNA、特にmRNA、tRNA、hnRNA、siRNA、miRNA、snRNAまたはリボザイム、およびDNA、特に、ゲノムもしくはプラスミドDNAまたは細胞小器官からのDNAも含み、ならびにまたは感染源の核酸も含む。好ましくは、本発明によると、核酸は、前に述べたタイプのうちの少なくとも1つのタイプのRNAを含む。核酸含有試料であって、該試料からRNAを単離するのに十分に安定化された試料からは、通常、DNAの単離も可能である。なぜなら、RNAと比較してDNAはより安定しており、従って、分解されにくいからである。
【0022】
用語「タンパク質」は、例えば構造タンパク質、受容体タンパク質、酵素、細胞質の可溶性タンパク質、膜タンパク質、抗体、ホルモンまたは任意のさらなるタンパク質のような、生物学的試料中に天然に存在するまたは人工的に含められた、グリコシル化されたまたはグリコシル化されていない、任意のタンパク質またはペプチドを意味する。
【0023】
本発明について、生物学的試料の固定後にその固体された材料を蝋、通常はパラフィン、に包埋する工程(いわゆる「固定、パラフィン包埋」(FPE)材料)が続くことは、必須ではないが、長期保存のために非常に一般的である。前記包埋媒体の主目的は、顕微鏡適用および/または組織化学的適用のために天然の状態での検体の切片作製および載置を可能にすることである。しかし、多くの適用について、試料から、例えば該試料の組織学的染色の前に、包埋媒体を除去することが必要である、または少なくとも有利である。
【0024】
本発明については、公知の包埋材料のいずれを使用してもよく、特に、任意の蝋、寒天、エステルまたはポリエステル蝋、樹脂、例えばエポキシ樹脂またはニトロセルロースを使用することができ、ならびに寒天-パラフィン、寒天-エステル蝋またはニトロセルロース-パラフィン蝋での二重包埋法を用いてもよい。そのような蝋は、通常、高級炭化水素の複合混合物から成り、さらなる成分、例えば、高級脂肪酸のエステルおよび/またはグリコールならびにこれらに類するものを含むこともある。前記蝋は、天然および/または合成由来のもの、例えばポリエステル蝋(ポリエチレングリコールジステアラートと1-ヘキサデカノールの混合物)であることもあり、その試料包埋特性を強化する添加剤、例えばDMSOまたは高級ポリオレフィンなど、を追加で含有することもある。好ましくは、前記蝋は、パラフィンであって、室温で固体の主として飽和炭化水素の混合物であり、典型的には石油の蒸留によって調製されるものであるパラフィンを表すだろう。必要に応じて、前記パラフィン蝋は、任意の添加剤を含有することがある。
【0025】
本方法の工程(1)に従って、固定生物学的試料の少なくとも1つの部分を少なくとも1つの支持体に載置する。前記生物学的試料を、例えばガラスまたは任意の透明ポリマーから作製された透明支持体に載置することが好ましい。そのような支持体は、例えば、ガラスプレート、例えば顕微鏡スライド、プレキシグラス製もしくは透明ポリマー(例えば、PET)製のプレート、細胞培養皿またはこれに類するものである。勿論、試料の幾つかの部分もしくは切片を1つの支持体に載置してもよく、または幾つかの切片もしくは部分を幾つかの支持体に載置してもよい。
【0026】
例えば細胞培養物の細胞のように試料自体がそれ相応の厚みを有さないまたはそれより薄い厚みを有する場合には、好ましくは、固定されたおよび場合により包埋された生物学的試料を、0,5から12μmの厚みを有する部分で切片を作製する。ライトまたはバックライトのもとで、例えば顕微鏡のもとで、詳細に検討することができるほど透明である切片に試料を薄切りにするまたは切断することが特に好ましい。好ましくは、厚みは、1から10μmであり、2から8μmがさらに好ましく、および4から6μmが最も好ましい。
【0027】
本発明において蝋包埋試料を使用する場合、好ましくは、該試料を試料処理剤を使用して工程(2)に従って処理する。前記試料処理剤は、好ましくは脱蝋剤(de-waxing agent)または組成物、さらに好ましくは脱パラフィン剤(de-paraffinizing agent)または組成物である。伝統的に、脱蝋または脱パラフィンは、芳香族溶媒、例えばトルエンおよび特にキシレン、の使用を伴う。一方、水と不混和性の少なくとも1つの有機溶媒/化合物を含む非毒性薬剤または組成物を使用することができる。この蝋可溶化剤(wax-solubilizing agent)は、少なくともそれを試料と接触させる瞬間は、液体であり得る。好ましくは、前記溶媒は、線状、分岐および環式C6~C16アルカン、線状、分岐および環式ジアルキルエーテル(この場合の各アルキル鎖は6から16個の炭素原子を含む)、ならびに室温(23±2℃)で液体の油を含む群から選択することができ、さらに好ましくは、C7~C16アルカン、一般式O(CnH2n+1)2(式中のnは8から12の整数である)のジアルキルエーテル、室温より低い、好ましくは15℃より低い融点を有する鉱油、シリコーン油(silicon oil)およびパラフィンを含む群から選択することができ、ならびに最も好ましくは、キシレンまたは市販キシレン代用品、例えばShandonキシレン代用品(Thermo Fisher Scientific、米国Waltham)など、ヘプタン、ヘキサデカン、ジオクチルエーテル、またはそれらの混合物を含む群から選択することができる。純粋な形態でのまたは溶媒の混合物としてのいずれかでそれぞれ蝋包埋試料に適用される任意の溶媒の融点は、25℃より下、好ましくは室温より下であり得る。本明細書において、用語「純粋な形態」は、事前に希釈されることなく、および/または他の溶媒と混合されることなく、蝋を溶解するために蝋包埋試料に適用される溶媒を指す。しかし、この用語は、溶媒に相当しないさらなる化合物の存在に関して、特定の純度グレードには言及しない。溶媒が純粋な形態で試料に適用される場合、その溶媒は、好ましくは、室温より下の融点を有する。しかし、室温より上の融点を有する「溶媒」を、それらが室温で液体である溶媒の混合物の状態で存在する場合には、蝋包埋試料に適用することができる。上記溶媒のすべてが、室温で数秒以内にまたは長くとも数分(好ましくは約15秒から約15分)以内に固体パラフィンを溶解することができる。
【0028】
典型的には、脱蝋剤または脱パラフィン剤または組成物が入っている浴、例えばキシレン浴など、に、パラフィンが可溶化されるまで支持体載置試料を浸漬する。その後の工程で、その脱パラフィンされた試料を、水を使用する最終洗浄の前に、漸減アルコール濃度の一連のアルコール溶液によって洗浄して脱蝋剤を除去して、水性の反応物/試薬の溶液、例えば染色溶液または溶解緩衝液など、がその試料に接近できるようにすることができる。
【0029】
固定包埋生物学的試料の少なくとも1つの部分を、本発明の方法の間に工程(3)に従って染色すること、およびそのために染色前に脱蝋することが好ましい。一方、生体分子を単離する前に試料の一部分または切片を染色しない場合には、その試料のその部分の脱蝋を本方法の工程(3)、(4)または(5)のいずれの後に実行してもよい。
【0030】
染色された切片または部分を生体分子単離には使用しないが、生体分子単離に使用される切片または部分の参照として使用する場合、その試料の少なくとも1つの部分または切片の染色を任意の公知組織学的染色法によって実行することができる。 もう一方で、染色された切片を、その後、生体分子単離に使用することとなっている場合には、特にRNA分解を最小にするために「迅速染色法」として下で説明する染色方法を使用することが特に好ましい。
【0031】
標準的な染色法によると、支持体に載置された試料を、脱蝋ならびにアルコール溶液および水でのすすぎ後、染色剤の供給業者の指示書に従って染色溶液中でインキュベートする。標準的な染色法についての一例は、試料を1分間~3分間、例えばヘマトキシリン(Merck)のような第一の染色剤中で染色すること、その後、前記試料を3分間~5分間、水道水ですすぐこと、前記試料を1分間~2分間、例えばエオシン(Merck)のような第二の染色溶液中で染色すること、前記試料を3分間~5分間、水道水ですすぐこと、その染色された試料を1分間80%エタノールと、2分間96%エタノールと、3分間100%エタノールと、および5分間キシレンと接触させることである。このまたは任意の匹敵する方法によって染色された試料を、下で説明するような生体分子単離に使用する試料の参照として使用することができる。
【0032】
新たに開発された「迅速染色法」によると、試料を、場合により脱蝋およびアルコール溶液でのすすぎおよび水中での短期インキュベーション(好ましくは、数秒、例えば5秒またはほんの1秒間だけ)の後、60秒以下、好ましくは45秒未満、さらに好ましくは30秒未満、最も好ましくは15秒未満、少なくとも1つの細胞染色剤または組織染色剤で染色し、前記試料を水で(好ましくは、数秒、例えば、5秒またはほんの1秒間だけ)すすぎ、その後、場合により前記試料を60秒以下、好ましくは45秒未満、最も好ましくは10秒未満、さらなる細胞染色剤または組織染色剤と接触させる。
【0033】
好ましくは、この方法では、第一の染色剤を試料と最長15秒間接触させ、第二の染色剤を試料と最長3秒間、例えば1秒間、接触させる。水での試料のすすぎは、好ましくは、試料を水に1秒間~2秒間、「浸すこと」によって実行する。染色剤の例は、第一の染色剤についてはヘマトキシリン(Merck)(7,11b-ジヒドロインデノ[2,1-c]クロメン-3,4,6a,9,10(6H)-ペントール、C16H14O6)および第二の染色剤についてはエオシン(Merck)である。さらなる適する染色剤は、トルイジンブルー、アザン、PAS(過ヨウ素酸シッフ染色)であるが、ヘマトキシリン/エオシンでの染色のほうが好ましい。(エオシンY:2’,4’,5’,7’-テトラブロモ-3’,6’-ジヒドロキシスピロ[2-ベンゾフラン-3,9’-キサンテン](-1-オン-二ナトリウム塩。C20H6Br4Na2O5)。
【0034】
好ましい実施形態では、前記固定試料は、ホルマリンを含まない組成物で固定された蝋包埋試料(「非ホルマリン固定パラフィン包埋」非FFPE試料)であり、従って、「迅速法」は、好ましくは、支持体に載置された試料を脱蝋する工程、および脱蝋後、染色前に、漸減量のアルコールを含む一連の組成物でその試料をすすぐ工程をさらに含む。
【0035】
この新たな方法によって染色された試料をRNA単離に使用することになっている場合、すべての組成物(染色組成物、アルコール含有組成物)の調製に、およびすすぐ工程に、RNase不含水を使用することが好ましい。
【0036】
この迅速染色法を用いることにより、染色された試料(切片)から生体分子、特に核酸、を抽出/単離することが可能である。詳細には、染色に基づいて核酸の単離のために、目的の細胞または組織領域を選択すること、およびその後、前記の選択された細胞または領域から核酸を単離することが可能である。
【0037】
本発明の工程(4)において、工程(3)に従って染色された試料の少なくとも1つの部分を、好ましくはライトまたはバックライトのもとで、例えば顕微鏡のもとで、詳細に検討する。染色された試料を、例えば視覚的に、検討することによって、異なる組織または細胞タイプを区別および同定すること、ならびにその試料が特定の対象となる細胞もしくは組織領域、例えば腫瘍細胞、対象となる細胞もしくは組織区画、外来組織または類似物を含むかどうかを決定することが可能である。そのような細胞または組織は、生体分子単離のためのターゲット細胞または組織として役立つ。
【0038】
本発明の方法により、2つの特定の実施形態を実行することができる。生体分子を染色していない試料から単離する;染色された試料はそのための参照として役立つ。または、生体分子を染色された試料から単離する;そのとき、好ましくは迅速染色法を使用するべきである。
【0039】
最初の場合では、前記方法を次の手順によって実行することが好ましい:
固定生物学的試料を0,5から12μm厚の切片(薄片)に分割する、
工程(1)において、元の試料中では互いに隣接していた前記切片のうちの少なくとも2つをそれぞれ別々の透明支持体に載置する、
蝋包埋試料を使用した場合、場合によっては、前記手順の任意の工程において、互いに独立して、前記切片を工程(2)に従って脱蝋剤で処理する、
工程(3)において、前記切片のうちの少なくとも1つを少なくとも1つの組織染色剤で染色し、隣接切片は染色しない、
工程(4)において、染色された試料切片中の対象となる細胞または組織を決定して印を付け、染色していない試料切片を有する透明支持体を、その染色され印が付けられた試料切片の頂部に元の試料と同じ配向で積み重ねる、
工程(5)において、前記染色された試料の印の付いたエリアの頂部の染色していない試料の細胞または組織を該染色していない試料の残部から分離し、該残部を捨て、該染色された試料の印の付いたエリアに対応する細胞/組織を保持する、
工程(6)において、工程(5)において保持された細胞から核酸を単離または抽出する。
【0040】
後者の場合では、前記方法を次の手順に従って実行することが好ましい:
固定生物学的試料を0,5から12μm厚の切片(薄片)に分割する、
工程(1)において、前記切片のうちの少なくとも1つを透明支持体に載置する、
工程(2)において、蝋包埋試料を使用した場合には前記切片を脱蝋剤で処理する、
工程(3)において、上で説明したような「迅速染色」法に従って前記切片を少なくとも1つの組織染色剤で染色する、
工程(4)において、染色された試料切片の中の対象となる細胞または組織を決定する、
工程(5)において、対象となる細胞または組織をその染色された試料の残部から分離し、該残部を捨てる、
工程(6)において、工程(5)において得られた細胞から核酸を単離または抽出する。
【0041】
このように、ターゲット細胞または組織の検討を、生体分子の単離にさらに使用される試料に関して行うか、参照試料(隣接または対応する試料)において、この場合、対象となる細胞または組織を決定することができ、および非染色試料における対応する細胞を見つけ、細胞または組織の残部から分離することができる。その後、分離されたターゲット細胞または組織から生体分子を単離する。
【0042】
工程(5)による細胞の分離は、当該技術水準の任意の公知の方法、例えば、非選択細胞もしくは組織の擦過除去、ターゲット細胞もしくは組織の切り出し、ターゲット細胞のピッキング、ターゲット細胞の吸引、顕微解剖、レーザー切開(例えば、レーザー捕捉顕微解剖)または任意の同様の方法によって実行することができる。ターゲット細胞または組織を分離するための好ましい方法は、ターゲット細胞または組織の顕微解剖、および非選択細胞または組織の擦過除去または拭き取り(wiping away)である。
【0043】
分離された選択細胞または組織から生体分子を抽出/単離する工程を公知の生体分子単離法のいずれによって実行してもよい。用いる単離方法は、有効な方法を用いて有効な様式での前記生体分子の単離が可能である限り、本発明を制限するものではない。しかし、小試料からの核酸の単離に適する単離方法の使用が好ましい。
【0044】
前記単離方法の最初の工程で、選択された細胞または組織を溶解するための溶液、好ましくは水溶液を、細胞または組織に添加する。溶解溶液として、細胞含有材料中の細胞を溶解/破壊することができる、従って、生体分子を溶液中に放出させることができる、任意の溶液、好ましくは任意の水溶液、を使用することができる。本発明の方法に使用することができる多くの水性の溶解緩衝液または消化緩衝液が、当該技術水準から公知である。試料の選択部分が依然として支持体に載置されている(例えば、非選択部分を顕微解剖後に擦過除去した)場合、溶解溶液を支持体上で直接ターゲット細胞または組織と接触させることができる(例えば、該溶液を該ターゲット試料の頂部にピペッティングすることにより)。ターゲット細胞または組織を、例えばピッキング、吸引または擦過によって、支持体から剥離させた場合、例えばカップまたはチューブの中で、溶解溶液を該ターゲット試料部分と接触させることができる。
【0045】
ターゲット細胞または組織を溶解溶液と接触させた後、その混合物を、例えばピペットに吸い上げて吐出す(pipetting up and down)ことにより、ボルテックスにかけることにより、または任意の他の適する方法により、均質化することができる。ターゲット試料部分を支持体上で溶解溶液と接触させた場合、ターゲット試料部分と溶解溶液の混合物全体を、好ましくはインキュベーション後、さらなる加工処理に適する容器、例えばカップまたはチューブなど、に移す。
【0046】
公知溶解溶液のどれがターゲット細胞または組織の溶解に適切であるかは、主として、溶解すべき細胞に左右される。使用する溶解溶液は、例えば、カオトロピック(choatropic)塩含有溶解緩衝液、界面活性剤含有溶解緩衝液、タンパク質分解化合物を含む溶解緩衝液、または前記化合物の幾つかもしくは混合物を含む溶解緩衝液であり得るが、これらに限定されない。
【0047】
本発明の方法は、当該技術水準から公知の広範な溶解溶液および溶解プロトコルを用いて実行することができる。溶解溶液は、例えば、緩衝剤、好ましくはTris、Mops、Mes、Hepesおよびクエン酸塩を含む群から選択される緩衝剤、場合により洗剤、好ましくは非イオン性、カチオン性、アニオン性および両性イオン性洗剤を含む群から選択される洗剤、さらに好ましくはアニオン性洗剤、最も好ましくはドデシル硫酸ナトリウムを含む群から選択される洗剤を含み得る。非イオン性洗剤は、例えば、多価アルコールのエトキシル化脂肪酸エステルなどのエチレンオキシド縮合生成物であり得る。好ましい非イオン性洗剤は、Sigma Chemical Co.から商品名TWEEN(登録商標)20で販売されているポリオキシエチレンソルビタンモノラウラートである。他のTWEEN(登録商標)洗剤も適する。Triton洗剤(オクチルフェノキシポリエトキシエタノール)の群からの他の適する洗剤、有利にはTriton X-100(同じくSigmaから入手できる)、を採用してもよい。前記洗剤は、細胞を溶解するために有効な量で含まれ、1.5~20%(v/v)の範囲が代表的に有効である。前記洗剤は、核酸とミセルおよび他の複合体を形成することもあり、それによって、他のメカニズムによってDNAを保護する。
【0048】
前記溶解溶液は、1つ以上の追加の物質を含むことがあり、該物質は、好ましくは、キレート剤、還元剤、無機塩を含む群から選択され、かつ好ましくは、5から11の、好ましくは6から8の、最も好ましくは6から7の、範囲のpHを有し得る。
【0049】
溶解溶液に加えて、タンパク質分解剤を溶解溶液とターゲット細胞または組織の混合物に添加してもよい。タンパク質分解剤は、試料に添加される溶解溶液に既に含まれていることもあり、または細胞もしくは組織を溶解溶液と接触させた後に添加されることもある。前記タンパク質分解剤は、好ましくは、プロテアーゼおよび非酵素的タンパク質分解化合物を含む群から選択することができ、好ましくは、プロテイナーゼK、トリプシン、キモトリプシン、パパイン、ペプシン、プロナーゼ、エンドプロテイナーゼLys-C、ブロモシアン(bromocyane)またはそれらの混合物を表し得る。
【0050】
試料へ溶解溶液を添加した後に得られた混合物をインキュベートする工程を、好ましくは、2℃~95℃の、好ましくは15℃~70℃の、および最も好ましくは室温~60℃の、範囲の温度で実行することができる。このインキュベーションを、好ましくは10秒間~10時間、さらに好ましくは45秒間~5時間、および最も好ましくは1分間~2時間、実行することができる。しかし、インキュベーションの温度および時間の両方は、試料の種類、量および生じてからの時間(age)、ならびに利用される溶解溶液によって様々であり得る。これは当業者には周知であり、特にインキュベーション時間および温度に関する最適な溶解条件を当業者は慣例的実験によって容易に決定することができる。
【0051】
ターゲット細胞または組織から放出されて、その後溶解混合物に含まれている生体分子を単離および/または精製する工程を、好ましくは、当該技術水準の公知方法のいずれかによって実行することができる。
【0052】
好ましくは、シリカビーズまたは膜へのカオトロープまたは非カオトロープ媒介吸着、ゲル濾過クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィーおよびカオトロープなしの親和性結合(吸着)を含む群から好ましくは選択される少なくとも1つのクロマトグラフィーおよび/または固相ベースの方法によって、核酸を単離する。
【0053】
DNAおよびRNAを含む生体分子の単離のための幾つかの市販キットが、市場で入手できる。さらに、固定生物学的試料から核酸を単離するための幾つかのキットが開発されており、それらの大部分が、脱パラフィン剤、溶解緩衝液、ならびに核酸を抽出、単離および精製するためのさらなる緩衝液および器具を含む。そのような市販キットの例は、PreAnalytix(スイスHombrechticon)からのPAXgene(登録商標)Tissueキット、QIAGEN(ドイツHilden)からのRNeasy、AllPrep、DNeasyおよびQIAampキット、Roche Applied Science(ドイツMannheim)からのHigh Pure Kits、Invitrogen(米国Carlsbad)からのPureLink Kits、Applied Biosystems(米国Foster City)からのRecoverAll Kitsである。
【0054】
本発明の特に好ましい実施形態では、試料の固定、場合により試料の脱蝋および核酸単離のためにPAXgene Tissue Containerの化合物および組成物をPreAnalytixからのPAXgene(登録商標)Tissue RNA、miRNAまたはDNAキットと組み合わせて使用することができ、試料(部分)の染色をヘマトキシリンおよびエオシンで実行し、そしてRNA単離のために試料部分を本明細書中で説明する迅速染色法によって染色する。DNAはRNAより安定しているので、ほんの少ししか分解されていないRNAのみが単離可能な試料からは良好な結果でDNAを単離できることが特に指摘される。
【0055】
本発明に従って、固定生物学的試料中のターゲット細胞または組織を含む生体分子を、該ターゲット細胞または組織から生体分子を抽出、単離および/または精製するための方法の間、視覚化するためのキットも提供し、このキットは、以下のものを含む:
a.任意選択の、少なくとも1つの透明支持体
b.任意選択の、少なくとも1つの組織染色剤
c.任意選択の、少なくとも1つの、上で説明したような、試料処理剤
d.請求項7、8または9に記載の方法のための指示書
e. 生体分子、好ましくは核酸、最も好ましくはRNAを含むもの、を単離するため
の少なくとも1つの緩衝液および/または器具。
【0056】
好ましい実施形態において、前記キットは、構成要素(d)および(e)と組み合わせて、構成要素(a)、(b)および(c)のうちの少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つ、より好ましくは3つすべてを含む。
【0057】
さらに、本発明に従って、上で説明したような方法を用いることにより生物学的試料から生体分子を抽出、単離および/または精製するためのさらなるキットを提供し、このキットは、以下のものを含む:
(i)任意選択の、生物学的試料を固定するための指示書
(ii)任意選択の、ホルマリンを含まない固定剤または混合物
(iii)任意選択の、少なくとも1つの透明支持体
(iv)任意選択の、少なくとも1つの組織染色剤
(v)任意選択の、少なくとも1つの、上で説明したような、試料処理剤
(vi)ターゲット細胞または組織を場合により染色および選択するための方法についての指示書
(vii) 生体分子、好ましくは核酸、最も好ましくはRNAを含むもの、を単離す
るための少なくとも1つの緩衝液および/または器具。
【0058】
好ましい実施形態において、前記キットは、構成要素(vi)および(vii)と組み合わせて、構成要素(i)、(ii)、(iii)、(iv)および(v)のうちの少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つ、より好ましくは少なくとも3つ、さらに好ましくは少なくとも4つ、そして最も好ましくはすべてを含む。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【
図1】
図1は、実施例1に従ってスライドに載置した漸減面積の6μm切片からのRNA収量を示す。参照:1つの切片を微量遠心管に直接移した;スライド上:異なる面積の元の切片(50%、25%および10%)をRNA抽出に使用した;すべての抽出を三連で行った。
【
図2】
図2は、実施例1に従ってスライドに載置した漸減面積の6μm切片および参照から単離したRNAについてのRNA完全性を示す。RIN-RNA Integrity Number-として測定した完全性。
【
図3】
図3は、定量的RT-PCRにおける実施例1に従って単離したRNAの性能を示す。TaqMan 7400でのβ-アクチンプライマー/プローブアッセイを用いる一工程RT-PCRのためのテンプレートとして1μLの溶離液を使用した。
【
図4】
図4は、実施例2によるパラフィン包埋組織の1つの4μm切片からのRNA収量を示す。参照:RNA単離のために微量遠心管に移した切片;染色1および2:迅速染色後のスライドからのRNA抽出;すべての抽出を三連で行った。
【
図5】
図5は、Agilent Bioanalyserを使用してRIN値として測定した、実施例2に従って単離したRNAについてのRNA完全性を示す。パラフィン包埋組織の1つの4μm切片からRNAを単離した。参照:RNA単離のために微量遠心管に移した切片;染色1および2:迅速染色後のスライドからのRNA抽出;すべての抽出を三連で行った。
【
図6】
図6は、定量的リアルタイムRT-PCRにおける実施例2に従って単離したRNAの性能を示す。TaqMan 7400でのβ-アクチンプライマー/プローブアッセイを用いる一工程qRT-PCRのためのテンプレートとして2μLの溶離液を使用した。パラフィン包埋組織の1つの4μm切片からRNAを単離した。参照:RNA単離のために微量遠心管に移した切片;染色1および2:迅速染色後のスライドからのRNA抽出;すべての抽出を三連で行った。
【
図7】
図7は、実施例2によるラット腎臓組織のヘマトキシリンおよびエオシン迅速染色を示す。A:染色1、B:染色2。
【発明を実施するための形態】
【0060】
実施例
実験手順:
組織固定:
PAXgene(登録商標)Tissue Fix(PreAnalytix)による固定:検討する組織検体を5mLの固定試薬に沈めた。室温で2~4時間インキュベーションを行い、その後、PAXgene(登録商標)Tissue Stabilizer溶液に移した。
【0061】
ホルマリンによる固定:室温で保持した5mLの中性緩衝化ホルマリンに組織を沈め、室温で24時間、固定した。
【0062】
組織加工処理およびパラフィン包埋:
固定組織検体を固定溶液から標準ヒストカセット(standard histocasette)に移した。生体分子の保存のために、PAXgene(登録商標)Tissue Containerハンドブックにおいて推奨されているようなプロトコル(15分70%、30分80%、60分90%そして2回99%エタノール、2回60分100%イソプロパノール、2回60分100%キシレン、その後、50℃で60分キシレン-パラフィン(50-50%)、そして56℃で2回60分パラフィンでの脱水)を用いて、Leica組織プロセッサTP1020で加工処理を行った。パラフィンとして、低融点Paraplast-XTRA(SPIが供給)を使用した。加工処理後、前記インキュベーションについてのものと同じパラフィンを使用して、パラフィンブロックに組織を包埋した。
【0063】
スライドガラスに載置した組織のヘマトキシリンおよびエオシン染色:
スライドに載置した4~6μm切片の、キシレン中で5分間、続いて96%、80%、70%、60%エタノール中で各3分間のインキュベーション、水道水中で3分間のインキュベーション、ヘマトキシリン(Merck、使用準備済み)中で1分間のインキュベーション、3分水道水、エオシン(Merck、使用準備済み)中で1分間のインキュベーション、3分水道水、1分80%、2分96%、3分100%エタノールそして5分1005キシレンにより、手作業でヘマトキシリンおよびエオシン染色を行った。最後に、それらの切片にエンテラン(Merck)を上塗りし、カバーガラスをかぶせた。
【0064】
スライドガラスに載置した組織を染色するためのヘマトキシリンおよびエオシンを使用する改変された迅速染色法:
スライドに載置した4~6μm切片のキシレン中で5分、続いて96%、80%、70%エタノール中で各1~3分間のインキュベーション、RNase不含水中で2~10秒間のインキュベーション、ヘマトキシリン(Gillに従って調製したもの)中で30秒間のインキュベーション、RNase不含水中で1秒間タッピング、 エオシン(RNase不含水中0.5%)中で1秒間のインキュベーション、RNase不含水中で1秒間タッピング、1分80%、2分96%、3分100%エタノールおよび5分キシレンにより、手作業でヘマトキシリンおよびエオシン染色を行った。顕微鏡検査だけのために、それらの切片を5分キシレン中でさらにインキュベートし、エンテラン(Merck)を上塗りし、カバーガラスで封止した。
【0065】
新鮮な染色溶液の調製:
Gillによるヘマトキシリン溶液
2gヘマトキシリン、0.2gヨウ素酸ナトリウムおよび17.6g硫酸アルミニウム(・18H2O)を250gエチレングリコールと730mL RNase不含水の混合物に溶解した。20mL氷酢酸を添加し、2時間、室温で攪拌した。
【0066】
Harrisによるヘマトキシリン溶液
100gカリウムミョウバン(alaun)を攪拌および加熱により950mL RNase不含水に溶解した。水浴中で加熱しながら5gヘマトキシリンを50mLエタノールに溶解した。そのヘマトキシリン溶液を前記高温ミョウバン(alaun)溶液に添加し、沸騰させた。熱から外した後、370mgヨウ素酸ナトリウムを添加した。4mL氷酢酸を添加し、得られた溶液を使用前に濾過した。
【0067】
エオシンY溶液 0.5%水溶液
5gエオシンYを1000mL RNase不含水に添加し、2時間、室温で攪拌した。攪拌しながら2mL氷酢酸を添加した。
【0068】
DEPC処理水
水100mLあたり0.1mL DEPC(ピロ炭酸ジエチル)を添加した。DEPCを溶液にするために、それを激しく攪拌し、12時間37℃でインキュベートし、15分間オートクレーブ処理して残留DEPCを低減させた。
【0069】
参照試料からのRNA抽出:
PAXgene(登録商標)Tissue RNAプロトコル「Purification of Total RNA from Sections of PAXgene
Treated,Paraffin-Embedded Tissue」に述べられているようにキシレンおよびエタノール中でのインキュベーションにより、4~6μm厚を有する切片からパラフィンを除去した(Leica RM2245 Microtomで行った)。キシレンおよびエタノールの除去後、ペレットを溶解緩衝液TR1、水で溶解し、10分間、55℃で消化した。PAXgene(登録商標)Shredderを使用して、均質化を行った。前記プロトコルに従って、エタノールを添加した後、溶解産物をPAXgene(登録商標)MinEluteカラムに移し、緩衝液TR2で洗浄し、そのカラム上でDNaseと共にインキュベートし、TR3および80%エタノールで洗浄した。RNAを15μL~40μLの緩衝液TR4で溶離した。
【0070】
スライドガラスに載置した組織の全切片または精査するエリアからのRNA抽出:
スライドガラスに載置した組織切片を5分間キシレン中および3分間100%エタノール中でのインキュベーションによって脱パラフィンした。組織の染色および/または望ましくないエリアの除去後、そのスライド上の選択された組織に、プロテアーゼ、水および緩衝液TR1(150μL TR1、10μLプロテアーゼ、290μL水)を含有する150μLの溶解用混合物を上塗りした。室温での10分のインキュベーションの後、ピペッティングによってその混合物および組織を微量遠心管に移した。残りの溶解用混合物を添加し、その後、10分、55℃でのインキュベーションを行った。PAXgene(登録商標)-Shredderを使用して、均質化を行った。前記プロトコルに従って、エタノールを添加した後、溶解産物をPAXgene(登録商標)MinEluteカラムに移し、緩衝液TR2で洗浄し、そのカラム上でDNaseと共にインキュベートし、TR3および80%エタノールで洗浄した。RNAを15μL~40μLの緩衝液TR4で溶離した。
【0071】
RNA分析:
RNAを15μL~40μLの緩衝液TR4で溶離した。純度および収量の分光光度分析をNanodrop光度計で行った。RNA 6000 Nanoアッセイを用いてAgilent BionanalyzerでRNA完全性を測定した。Quantitect Probe RT Mix(QIAGEN)と、ヒトベータアクチン遺伝子の294bpフラグメントを増幅および検出するためのプライマーおよびプローブとを使用して、一工程アプローチでのTaqMan 7700(Applied Biosystems)上でリアルタイムRT-PCRを行った。
【0072】
実施例1 スライドに載置した肝臓組織からのRNA単離
最大3mm厚の小片に切断したラット肝臓を3時間、PAXgene(登録商標)Tissue Fix中でおよび52時間、PAXgene(登録商標)Tissue Stabilizer中で固定した。加工処理およびパラフィン包埋後、6μm切片を、PAXgene(登録商標)Tissue RNAキットハンドブックに従って微量遠心管の中での直接RNA抽出に使用したか、スライドガラスに載置した。スライドガラスに載置した切片を脱パラフィンし、漸増する試料の部分(切片の50%、75%および90%)をセルスクレーパで除去した。スライドに載置した切片からのRNA抽出のために改変したプロトコルでPAXgene(登録商標)Tissue RNAキットを使用して、残りの組織(元の切片の50%、25%、10%)からRNAを精製した。前記プロトコルは、スライドガラスに載置された(残りの)試料の頂部への溶解緩衝液の少なくとも一部の直接添加、そして10分のインキュベーション後、全組織を含む溶解用混合物の微量遠心管への移入、その後、前記キットハンドブックによるさらなる加工処理によって改変した。
【0073】
RNAを、収量についてはNanodrop(登録商標)Spectrophotometer(Thermo Scientific、米国Wilmington)で分光光度法によって、完全性についてはRNA 6000 Nano Assayを用いるAgilent(登録商標)Bioanalyzer(Agilent Technologies、米国Santa Clara)で、および定量的RT-PCRにおいてTaqMan 7700(Applied Biosystems)でのβ-アクチンについてのプライマー/プローブアッセイを使用して分析した。分析の結果を
図1(収量)、2(完全性)および3(定量的RT-PCRにおける性能)に示す。
【0074】
この実施例は、スライドに載置されたPAXgene(登録商標)Tissue処理試料の切片から高品質RNAを単離できることを実証する。脱パラフィン後、ターゲット組織または細胞を、例えば切片の望ましくないエリアを除去することによって、選択することができる。このRNAを、切片を微量遠心管に直接移し、PAXgene(登録商標)Tissue RNAプロトコルに従って加工処理した参照と、品質および収量に関して比較できる。リアルタイムRT-PCRのような要求の厳しい下流での適用にRNAを使用することができる。CT値は、参照と比較できる、すなわち、CT値は、RNA投入量減少と相関して線形に増加する(
図3参照)。
【0075】
実施例2 ヘマトキシリンおよびエオシンでの染色後の組織の切片からのRNA単離および組織形態学的分析
ラット腎臓を最大4mm厚の小片に切断し、PAXgene(登録商標)Tissueシステムで処理した。加工処理およびパラフィン包埋後、1つの4μm切片の三連の試料を、PAXgene(登録商標)Tissue RNAキットを使用する直接RNA抽出に使用した、またはスライドガラスに載置してヘマトキシリンおよびエオシンで染色した。染色中のRNA分解を避けるために、ヘマトキシリンでの60秒染色およびエオシンでの1秒染色(染色1)またはヘマトキシリンでの30秒染色およびエオシンでの1秒染色(染色2)を含む、迅速染色法を用いた。染色後、染色された切片からRNAを直接単離した。
【0076】
RNAを、収量についてはNanodrop(登録商標)Spectrophotometer(Thermo Scientific、米国Wilmington)で分光光度法によって、完全性についてはRNA 6000 Nano Assayを用いるAgilent Bioanalyzer(Agilent Technologies、米国Santa Clara)で、および定量的RT-PCRにおいてTaqMan 7700(Applied Biosystems)でのβ-アクチンについてのプライマー/プローブアッセイを使用して分析した。標準的な方法に従ってヘマトキシリンおよびエオシンで4μm切片を染色することにより、組織形態を評価した。
【0077】
【0078】
この実施例は、PFPE(PAXgene(登録商標)固定パラフィン包埋)組織切片の好酸性特性に起因して、ヘマトキシリンでの60秒間または30秒間およびエオシンでの1秒間だけの染色で十分であることを実証する。細胞質および核のようなすべての関連細胞構造が見えるようになり、それらを使用して精査のための特別な細胞または組織エリアを選択することができる。染色された切片中のRNAは、依然として保存されており、上で説明したような改変型プロトコルでPAXgene(登録商標)Tissue RNAキットを使用してそれらを単離することができる。このRNAを、切片を微量遠心管に直接移し、PAXgene(登録商標)Tissue RNAプロトコルに従って加工処理した参照と、品質および収量に関して比較できる。リアルタイムRT-PCRのような要求の厳しい下流での適用にRNAを使用することができ、かつCT値は、参照と比較できる。
本発明は、例えば、以下を提供する。
(項目1)
固定生物学的試料からの生体分子の単離、抽出または精製のためのターゲット細胞または組織を決定するための方法であって、前記方法は:
(1)前記固定生物学的試料の少なくとも1つの部分を少なくとも1つの支持体に載置する工程、
(2)必要に応じて、前記試料の少なくとも1つの部分を試料処理剤で処理する工程であって、前記処理を工程(6)より前の手順の任意の段階で実行することができる、工程、
(3)少なくとも1つの支持体に載置された前記固定生物学的試料の少なくとも1つの部分を染色する工程、
(4)工程3において染色された前記少なくとも1つの部分を検討して、対象となる生体分子を含むターゲット細胞または組織を決定する工程、
(5)相応のターゲット細胞または組織を、前記支持体に載置された前記固定試料の残部から分離する工程、
(6)分離された前記細胞または組織から前記生体分子を単離する工程
を包含する、方法。
(項目2)
前記生体分子がRNAを含む、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記固定生物学的試料が、蝋包埋試料、好ましくはパラフィン包埋試料、好ましくは非ホルマリン固定パラフィン包埋試料(非FFPE-試料)であり、かつ前記試料処理剤が、以下:脱蝋剤、好ましくは、トルエン、キシレン、線状C6~C16アルカン、分岐C6~C16アルカンおよび環式C6~C16アルカン、線状ジアルキルエーテル、分岐ジアルキルエーテルおよび環式ジアルキルエーテル(ここで、各アルキル鎖は6から16個の炭素原子を含む)および室温(23±2℃)で液体の油を含む群から選択される、さらに好ましくはC13~C16アルカン、一般式O(CnH2n+1)2(式中のnは8から12の整数である)のジアルキルエーテル、室温より下の融点を有する、好ましくは室温より下の融点を有する、鉱油、シリコン油およびパラフィンを含む群から選択される、ならびに最も好ましくはキシレンまたは市販のキシレン代用品またはヘキサデカン、ジオクチルエーテル、ヘプタンまたはそれらの混合物を含む群から選択される脱パラフィン剤から選択される、項目1または2に記載の方法。
(項目4)
前記支持体が透明である、好ましくは、前記支持体がガラスまたは透明ポリマーから作製されている、項目1から3のいずれか一項に記載の方法。
(項目5)
工程(4)における前記試料(単数または複数)が、ライトまたはバックライトのもとで、好ましくは顕微鏡のもとで検討される、項目1から4のいずれか一項に記載の方法。(項目6)
前記ターゲット細胞または組織が、工程(5)において顕微解剖、レーザー捕捉顕微解剖、擦過または切り出しによって分離される、項目1から5のいずれか一項に記載の方法。
(項目7)
固定生物学的試料、好ましくは蝋包埋非ホルマリン固定パラフィン包埋試料(非FFPE-試料)、さらに好ましくは非ホルマリン固定パラフィン包埋試料の0,5から12μm厚の少なくとも1つの切片、を染色するための方法であって、前記方法は:
前記試料を60秒以下、好ましくは45秒未満、さらに好ましくは30秒未満、最も好ましくは15秒未満、少なくとも1つの組織染色剤と接触させる工程、
前記試料を水ですすぐ工程、およびその後、
必要に応じて、前記試料を10秒未満、さらなる組織染色剤と接触させる工程を包含する、方法。
(項目8)
前記試料を、30秒以下ヘマトキシリンと接触させ、かつ3秒未満、好ましくは1秒、エオシンと接触させる、項目7に記載の方法。
(項目9)
項目1から6のいずれか一項に記載の方法であって、ここで、
固定生物学的試料を0,5から12μm厚の切片に分割し、かつ
工程(1)において、元の試料中では互いに隣接していた前記切片のうちの少なくとも2つをそれぞれ別々の透明支持体上に載置する、
蝋包埋試料を使用した場合には、必要に応じて、前記手順の任意の段階において、互いに独立して、前記切片を工程(2)に従って脱蝋剤で処理する、
工程(3)において、前記切片のうちの少なくとも1つを少なくとも1つの組織染色剤で染色し、隣接切片を染色しない、
工程(4)において、染色された前記試料切片中の対象となる細胞または組織を決定して印を付け、染色していない前記試料切片を有する前記透明支持体を、染色されかつ印が付けられた前記試料切片の頂部に前記元の試料の場合と同じ配向で積み重ねる、
工程(5)において、染色された前記試料の印の付いたエリアの頂部にある染色していない前記試料の前記細胞または組織を、染色していない前記試料の残部から分離し、前記残部を捨て、そして染色された前記試料の印の付いた前記エリアに対応する細胞/組織を保持する、
工程(6)において、工程(5)において保持された前記細胞から核酸を単離または抽出する、
方法。
(項目10)
項目1から6のいずれか一項に記載の方法であって、ここで、
固定生物学的試料を0,5から12μm厚の切片に分割し、かつ
工程(1)において、前記切片のうちの少なくとも1つを透明支持体に載置する、
工程(2)において、蝋包埋試料を使用した場合には前記切片を脱蝋剤で処理する、
工程(3)において、項目7または8に記載の方法に従って前記切片を少なくとも1つの組織染色剤で処理する、
工程(4)において、染色された前記試料切片中の対象となる細胞または組織を決定する、
工程(5)において、対象となる前記細胞または組織を、染色された前記試料の残部から分離し、前記残部を捨てる、
工程(6)において、工程(5)において得られた前記細胞から核酸を単離または抽出する、
方法。
(項目11)
項目7または8に記載の方法に従って染色された組織の使用であって、前記使用は、前記組織の少なくとも一部分から生体分子を単離するためのものである、使用。
(項目12)
前記生体分子の単離が、RNA単離を含む、項目1から6、9もしくは10のいずれか一項に記載の方法または項目11に記載の使用。
(項目13)
固定生物学的試料中のターゲット細胞または組織を含む生体分子を、前記ターゲット細胞または組織から生体分子を抽出、単離および/または精製するための方法の間、視覚化するためのキットであって、前記キットは:
b.任意選択の、少なくとも1つの透明支持体
c.任意選択の、少なくとも1つの組織染色剤
d.任意選択の、少なくとも1つの項目3に記載の試料処理剤
e.項目7、8、9または10に記載の方法のための指示書
f.生体分子、好ましくは核酸、最も好ましくはRNAを含むもの、を単離するための少なくとも1つの緩衝液および/または器具
を含む、キット。
(項目14)
生物学的試料から生体分子を抽出、単離および/または精製するためのキットであって、前記キットは:
(i)任意選択の、前記生物学的試料を固定するための指示書
(ii)任意選択の、ホルマリンを含まない固定剤または混合物
(iii)任意選択の、少なくとも1つの透明支持体
(iv)任意選択の、少なくとも1つの組織染色剤
(v)任意選択の、少なくとも1つの項目3に記載の試料処理剤
(vi)項目7、8、9または10に記載の方法のための指示書
(vii)生体分子、好ましくは核酸、最も好ましくはRNAを含むもの、を単離するための少なくとも1つの緩衝液および/または器具
を含む、キット。
【外国語明細書】