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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022097354
(43)【公開日】2022-06-30
(54)【発明の名称】検知装置
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/12 20200101AFI20220623BHJP
   G01R 31/50 20200101ALI20220623BHJP
   G01R 31/58 20200101ALI20220623BHJP
【FI】
G01R31/12 A
G01R31/50
G01R31/58
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021084589
(22)【出願日】2021-05-19
(31)【優先権主張番号】P 2020210792
(32)【優先日】2020-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】320001260
【氏名又は名称】センスネットシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100171206
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 茂
(72)【発明者】
【氏名】折橋 雅之
(72)【発明者】
【氏名】村竹 充志
【テーマコード(参考)】
2G014
2G015
【Fターム(参考)】
2G014AA18
2G014AB04
2G014AB33
2G015AA07
2G015AA27
2G015BA04
2G015CA01
(57)【要約】
【課題】高電圧電力を低電圧電力に変換する送配電システムにおいて、低電圧側の電力系統における交流信号に基づいて絶縁破壊の発生を検知できることに寄与する。
【解決手段】検知装置100は、一次側電力系統10における所定周波数の高電圧電力が変電装置30によって電圧変換された低電圧電力を受け取る二次側電力系統20における電力線から交流信号を受け取るセンサー部101と、センサー部101が受け取った交流信号から少なくとも所定周波数の周波数成分を除去した一又は複数のノイズ信号を出力するフィルタ部102と、一又は複数のノイズ信号を受け取り、一又は複数のノイズ信号のうち少なくとも一のノイズ信号において第1所定値以上の振幅を有する信号を検知したとき、一次側電力系統10における電力線において絶縁破壊が生じたことを示す検知信号を出力する検知部103と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次側電力系統における所定周波数の高電圧電力が変電装置によって電圧変換された低電圧電力を受け取る二次側電力系統における電力線から交流信号を受け取るセンサー部と、
前記センサー部が受け取った前記交流信号から少なくとも前記所定周波数の周波数成分を除去した一又は複数のノイズ信号を出力するフィルタ部と、
前記一又は複数のノイズ信号を受け取り、前記一又は複数のノイズ信号のうち少なくとも一のノイズ信号において第1所定値以上の振幅を有する信号を検知したとき、前記一次側電力系統における電力線において絶縁破壊が生じたことを示す検知信号を出力する検知部と、
を備える検知装置。
【請求項2】
前記二次側電力系統は、一又は複数の電気設備に対して送電し、
前記フィルタ部は、前記所定周波数の周波数成分、及び、前記電気設備に基づく雑音信号の周波数成分を除去する第1フィルタを含み、
前記一又は複数のノイズ信号は、前記第1フィルタによって前記交流信号から抽出された第1ノイズ信号を少なくとも含む、
請求項1に記載の検知装置。
【請求項3】
前記フィルタ部は、前記所定周波数より高く、且つ、前記変電装置におけるインダクタンス結合の周波数特性に対応する周波数帯を通過させる第1フィルタを含み、
前記一又は複数のノイズ信号は、前記第1フィルタによって前記交流信号から抽出された第1ノイズ信号を少なくとも含む、
請求項1に記載の検知装置。
【請求項4】
前記一又は複数のノイズ信号は、第1周波数帯を通過させる第1フィルタによって前記交流信号から抽出された第1ノイズ信号、及び、前記第1周波数帯よりも高い周波数帯である第2周波数帯を通過させる第2フィルタによって前記交流信号から抽出された第2ノイズ信号を含み、
前記検知部は、前記第1ノイズ信号において前記第1所定値以上の振幅を有する信号を検知した場合、および、前記第2ノイズ信号において第2所定値以上の振幅を有する信号を検知した場合のうち少なくとも一の場合において、前記検知信号を出力する、
請求項1に記載の検知装置。
【請求項5】
前記第1フィルタは、ローパスフィルタ又はバンドパスフィルタであり、前記第2フィルタは、ハイパスフィルタ又はバンドパスフィルタである、
請求項4に記載の検知装置。
【請求項6】
前記第2所定値は、前記第1所定値と実質的に同じ値である、
請求項4に記載の検知装置。
【請求項7】
前記第2所定値は、前記第1所定値より小さい値である、
請求項4に記載の検知装置。
【請求項8】
前記検知部は、前記第1ノイズ信号において前記第1所定値以上の振幅を有する信号を検知できない場合に、前記第2ノイズ信号において前記第2所定値以上の振幅を有する信号の有無を判定する、
請求項4に記載の検知装置。
【請求項9】
前記フィルタ部は、前記センサー部が受け取った前記交流信号に基づき、前記交流信号の信号レベルの絶対値が最大となる少なくとも一の第1位相の情報を少なくとも含む位相情報を抽出する抽出機能をさらに備え、
前記検知部は、前記第2ノイズ信号において前記第1位相に同期しない第3所定値以上の振幅を有する信号を検知したとき、前記第1ノイズ信号において前記第1所定値以上の振幅を有する信号を検知したことに基づいて前記検知信号を出力する、
請求項4に記載の検知装置。
【請求項10】
前記検知部は、前記第1ノイズ信号において、前記第1所定値以上の振幅を有し、さらに、前記第1位相に同期した信号を検知したとき、前記検知信号を出力する、
請求項9に記載の検知装置。
【請求項11】
前記フィルタ部は、前記センサー部が受け取った前記交流信号に基づき、前記交流信号の信号レベルの絶対値が最大となる少なくとも一の第1位相の情報を少なくとも含む位相情報を抽出する抽出機能をさらに備え、
前記検知部は、前記一又は複数のノイズ信号のうち少なくとも一のノイズ信号において、前記第1所定値以上の振幅を有し、さらに、前記第1位相に同期した信号を検知したとき、前記検知信号を出力する、
請求項1に記載の検知装置。
【請求項12】
前記センサー部は、前記二次側電力系統における第1端点を含む第1電力線から第1交流信号を受け取り、前記二次側電力系統における第2端点を含む第2電力線から第2交流信号を受け取り、
前記フィルタ部は、前記センサー部が受け取った前記第1交流信号から少なくとも前記所定周波数の周波数成分を除去した第3ノイズ信号を出力し、前記第2交流信号から少なくとも前記所定周波数の周波数成分を除去した第4ノイズ信号を出力し、
前記検知部は、前記第3ノイズ信号及び前記第4ノイズ信号を受け取り、前記第3ノイズ信号と前記第4ノイズ信号とに基づいて、前記検知信号を出力する、
請求項1に記載の検知装置。
【請求項13】
前記高電圧電力が高電圧三相交流電力であり、
前記センサー部は、前記二次側電力系統において、前記一次側電力系統における三相のうち一次側第1相及び一次側第2相と前記変電装置によってインダクタンス結合した前記二次側電力系統における二次側第1相の電力線における第1相交流信号、及び、前記一次側第2相及び一次側第3相と前記インダクタンス結合した二次側第2相の電力線における第2相交流信号を受け取り、
前記フィルタ部は、前記第1相交流信号から少なくとも前記所定周波数の周波数成分を除去した一又は複数の第1相ノイズ信号、及び、前記第2相交流信号から少なくとも前記所定周波数の周波数成分を除去した一又は複数の第2相ノイズ信号を少なくとも出力し、
前記検知部は、前記第1相ノイズ信号及び前記第2相ノイズ信号を受け取り、前記第1相ノイズ信号及び前記第2相ノイズ信号のうち少なくとも一のノイズ信号において前記第1所定値以上の振幅を有する信号を検知したとき、前記検知信号を出力する、
請求項1に記載の検知装置。
【請求項14】
前記二次側電力系統は、一又は複数の電気設備に対して送電し、
前記フィルタ部は、前記所定周波数の周波数成分、及び、前記電気設備に基づく雑音信号の周波数成分を除去する一又は複数の第1フィルタを含み、
前記一又は複数の第1相ノイズ信号は、前記第1フィルタによって前記第1相交流信号から抽出されたノイズ信号を少なくとも含み、前記一又は複数の第2相ノイズ信号は、前記第1フィルタによって前記第2相交流信号から抽出されたノイズ信号を少なくとも含む、
請求項13に記載の検知装置。
【請求項15】
前記フィルタ部は、前記所定周波数より高く、且つ、前記変電装置におけるインダクタンス結合の周波数特性に対応する周波数帯を通過させる一又は複数の第1フィルタを含み、
前記一又は複数の第1相ノイズ信号は、前記第1フィルタによって前記第1相交流信号から抽出されたノイズ信号を少なくとも含み、前記一又は複数の第2相ノイズ信号は、前記第1フィルタによって前記第2相交流信号から抽出されたノイズ信号を少なくとも含む、
請求項13に記載の検知装置。
【請求項16】
前記検知部は、前記第1相ノイズ信号と前記第2相ノイズ信号とを加算し、加算された信号において、第5所定値以上の振幅を有する信号が検知されたとき、前記検知信号を出力する、
請求項13に記載の検知装置。
【請求項17】
前記一次側電力系統における三相それぞれの電力線における交流信号のベクトル和に対応する第3交流信号を受け取り、前記第3交流信号において第6所定値以上の振幅を有し、且つ、所定の位相間隔で定期的に発生する信号を検知したとき、前記一次側電力系統における電力線において絶縁破壊が生じたことを示す一次側検知信号を出力する一次側検知装置を、さらに備え、
前記検知部は、前記一次側検知装置から前記一次側検知信号を受け取り、且つ、前記第1相ノイズ信号及び前記第2相ノイズ信号のうち少なくとも一のノイズ信号において前記第1所定値以上の振幅を有する信号を検知したとき、前記検知信号を出力する、
請求項13に記載の検知装置。
【請求項18】
一次側電力系統における所定周波数の高電圧電力が変電装置によって電圧変換された低電圧電力を受け取る二次側電力系統における電力線から交流信号を受け取るセンサー部と、
前記センサー部が受け取った前記交流信号に基づき、前記交流信号の信号レベルの絶対値が最大となる少なくとも一の第1位相の情報を少なくとも含む位相情報を抽出するフィルタ部と、
前記交流信号において、第1所定値以上の振幅を有し、さらに、前記第1位相に同期した信号を検知したとき、前記一次側電力系統における電力線において絶縁破壊が生じたことを示す検知信号を出力する検知部と、
を備える検知装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送配電システムにおける絶縁破壊を検出する検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
送配電システムにおける電力線の絶縁破壊、及び、絶縁破壊に基づくコロナ放電を検知する装置が開発されている。例えば、磁気抵抗素子を含み、絶縁被覆された送電線からコロナ放電を含む部分放電が発生した際に生じる磁気変化を検知する磁気センサーと、磁気センサーの出力信号から部分放電による特徴的な周波数成分を含む周波数帯域を取り出すフィルタとを備える送電線の絶縁状態検知装置がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-124629号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述した特許文献1の技術(以下、従来技術)においては、高圧線で発生する絶縁破壊にセンサーを接近させて検出するため、センサー取り付け時における作業容易性に課題があった。
【0005】
本発明の目的は、高電圧電力を低電圧電力に変換する送配電システムにおいて、低電圧側の電力系統における交流信号に基づいて絶縁破壊の発生を検知できることに寄与する検知装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る検知装置は、一次側電力系統における所定周波数の高電圧電力が変電装置によって電圧変換された低電圧電力を受け取る二次側電力系統における電力線から交流信号を受け取るセンサー部と、前記センサー部が受け取った前記交流信号から少なくとも前記所定周波数の周波数成分を除去した一又は複数のノイズ信号を出力するフィルタ部と、前記一又は複数のノイズ信号を受け取り、前記一又は複数のノイズ信号のうち少なくとも一のノイズ信号において第1所定値以上の振幅を有する信号を検知したとき、前記一次側電力系統における電力線において絶縁破壊が生じたことを示す検知信号を出力する検知部と、を備える構成を採る。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、高電圧電力を低電圧電力に変換する送配電システムにおいて、低電圧側の電力系統における交流信号に基づいて絶縁破壊の発生を検知できることに寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態1に係る送配電システムおよび検知装置の機能的な構成の一例を示すブロック図
図2】本発明の実施形態1に係るフィルタ部の機能的な構成の一例を示すブロック図
図3】本発明の実施形態1に係るフィルタ部の機能的な構成の他の例を示すブロック図
図4】変電装置における信号透過の周波数特性の説明の用に供する図
図5】本発明の実施形態1に係る検知部の動作の流れの一例を示すフロー図
図6】本発明の実施形態1に係る検知装置およびフィルタ部の機能的な構成の他の例を示すブロック図
図7】本発明の実施形態1に係る検知部の動作の流れの他の例を示すフロー図
図8】本発明の実施形態1に係る検知部においてノイズ信号に含まれる絶縁破壊信号の検知方法の説明の用に供する図
図9】本発明の実施形態1に係る送配電システムおよび検知装置の機能的な構成の他の例を示すブロック図
図10】一次側電力系統において三相交流電力が入力される場合の送配電システムおよび検知装置の機能的な構成の一例を示すブロック図
図11】一次側電力系統において三相交流電力が入力される場合の送配電システムおよび検知装置の機能的な構成の他の例を示すブロック図
図12】変形例1における送配電システムに含まれる一次側電力系統および一次側検知装置の機能的な構成の一例を示すブロック図
図13】変形例1における一次側電力系統および一次側検知装置の構成の他の例を示すブロック図
図14】変形例1における一次側検知装置の機能的な構成の一例を示すブロック図
図15】変形例1における一次側検知装置の機能的な構成の他の例を示すブロック図
図16】変形例1における一次側電力系統および一次側検知装置の機能的な具体的構成の一例を示すブロック図
図17】変形例1における一次側電力系統および一次側検知装置の機能的な具体的構成の他の例を示すブロック図
【発明を実施するための形態】
【0009】
(本発明に係る一態様を発明するに至った経緯)
【0010】
まず、技術背景として、近年、電力をエネルギー源とする機器が増大し、電力需要を支える送配電施設に対する負担が増大している。さらに、常時または断続的に演算処理を行うコンピュータに接続された機器の利用が拡大する中においては、瞬時であっても電力の提供が不安定になることは世界経済に対して多大な影響を及ぼすため、高品質な送配電網の提供が求められている。
【0011】
送配電施設は、エネルギー効率の観点から高電圧で送配電されるように設計されており、交流電力が伝搬する電力線には絶縁素材が被膜されている。しかし、絶縁素材は使用年月に伴って経年劣化するため、絶縁特性の劣化が進んだ結果、絶縁破壊が生じることがある。また、沿岸部の送配電施設においては、海水に含まれる塩分の影響によって部分的な絶縁破壊が生じることもある。係る絶縁破壊が生じた場合、絶縁素材の特性は加速度的に劣化する。そのため、上述した高品質な送配電網を安定的に提供するためには、絶縁破壊を未然に、または、早期に発見することが重要である。
【0012】
一般的に、絶縁破壊は送配電システムにおいて高電圧が印加されている高電圧側で発生し、絶縁破壊が生じた場合、電力線における部分短絡が初期症状として発生する。そのため、絶縁破壊を早期に発見するためには、部分短絡によって引き起こされる現象を捉える技術が求められ、上述した従来技術のように、係る技術の開発が従前から行われている。
【0013】
しかし、従来技術等においては、上述のとおり、高圧線で発生する絶縁破壊にセンサーを接触または接近させて検出するため、センサー取り付け時または絶縁破壊現象の検知時における作業容易性に課題があった。具体的には、例えば、従来技術においては、高電圧の電力線に従来のセンサーを取り付けるためには、作業の安全性の確保のために、送配電網を一時的に休止させる必要があり、また、高い専門技術性に基づく作業が必要であった。
【0014】
そこで、本発明の発明者は、高電圧側の一次側電力系統、変電装置、および低電圧側の二次側電力系統を含む送配電システムにおいて、作業困難性の伴う高電圧側ではなく低電圧側に、センサーおよびフィルタを適用することによって絶縁破壊を検知する検知装置を想起し、本発明に係る一態様を発明するに至った。
【0015】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。実施形態において、同一機能を有する構成には同一符号を付し、重複する説明は省略する。以下に説明される実施形態は本開示の一具体例を示す。実施形態において示される構成、フロー図における処理または処理の順序などは一例であって、本開示の技術を限定しない。
【0016】
(実施形態1)
本実施形態に係る送配電システム1および検知装置100の構成について、図1を参照して説明する。
【0017】
図1は、本発明の実施形態1に係る送配電システムおよび検知装置の機能的な構成の一例を示すブロック図である。図1において、送配電システム1は、一次側電力系統10、二次側電力系統20、変電装置30、および、検知装置100を備える。
【0018】
図1において、一次側電力系統10は、高電圧電力が接続された電力系統であって、例えば、電圧が6000Vである高電圧電力が接続されてもよい。一次側電力系統10の電力線においては高電圧電力の交流信号が伝搬され、高電圧電力の交流信号の所定周波数は商用として配電される電力の周波数であってもよい。当該所定周波数は、例えば、50Hzまたは60Hzであってもよい。
【0019】
図1において、二次側電力系統20は、低電圧電力が接続された電力系統であって、例えば、電圧が100Vである低電圧電力が接続されてもよい。二次側電力系統20の電力線においては低電圧電力の交流信号が伝搬され、低電圧電力の交流信号の所定周波数は、高電圧電力の交流信号と同様に、例えば、50Hzまたは60Hzであってもよい。
【0020】
なお、図1においては、一次側電力系統10および二次側電力系統20は、説明の便宜のため、それぞれ一系統であるものとして説明されるが、この限りではない。一次側電力系統10および二次側電力系統20は、それぞれ一系統であってもよく、または、後述するように電力線が三相三線式であってもよい。各電力系統における系の数は本開示の範囲を限定しない。なお、図1に示す一系統は、電力線が三相三線式である場合における一の相であってもよい。
【0021】
なお、高電圧電力は、第1電圧電力と呼称され、低電圧電力は、第1電圧電力より電圧が低い第2電圧電力と呼称されてもよい。
【0022】
図1において、変電装置30は、一次側電力系統10における高電圧電力を、二次側電力系統20における低電圧電力に電圧変換する機能を有する装置であってもよい。図1に示すように、変電装置30は、例えば、トランスを含む構造であってもよい。トランスは、磁性体に複数のコイルが巻き付けられた構造であり、少なくとも一対のコイルがインダクタンス結合されている。
【0023】
変電装置30における変電機能は、当該インダクタンス結合に基づいて、一次側電力系統10における高電圧電力を二次側電力系統20における低電圧電力に電圧変換する。なお、変電装置30における変電機能、および、変電装置30の具体的な構造例は公知であるため、詳細な説明は省略する。
【0024】
図1において、検知装置100は、センサー部101、フィルタ部102、および検知部103を有する。本実施の形態においては、一次側電力系統10の電力線における絶縁破壊を検知するための検知装置100は、検知作業の安全性等の確保のため、二次側電力系統20の電力線に対して接続される。具体的には、例えば、センサー部101が二次側電力系統20の電力線に接続される。
【0025】
センサー部101は、例えば、二次側電力系統20における電力線から交流信号を受け取る機能を有してもよい。センサー部101は、例えば、センサー素子を有する容量性センサーであってもよい。具体的には、例えば、容量性センサーは、二次側電力系統20の電力線に対して絶縁材質を介してセンサー素子が接続されることによって形成されるセンサーであってもよい。係る場合、電力線とセンサー素子との間に当該絶縁材質が有する誘電率に応じた容量性結合が形成され、容量性センサーは、当該容量性結合に基づいて電力線に伝搬される交流信号を受け取ってもよい。
【0026】
センサー部101が受け取る交流信号には、後述するように、送配電対象の所定周波数の周波数成分の他、ノイズ信号が含まれ得る。当該ノイズ信号には、後述するように、一次側電力系統10において絶縁破壊が生じた場合における絶縁破壊信号、および、二次側電力系統20に接続された電気設備が発する雑音信号のうち少なくとも一方が含まれ得る。詳細は後述する。
【0027】
なお、絶縁破壊信号とは、一次側電力系統10の電力線において絶縁破壊が生じた際に発生する信号である。絶縁破壊は、電力線の瞬時電圧の絶対値が大きいときに、インパルス性の高い電流を伴って発生する現象である。
【0028】
なお、当該絶縁材質は、センサー素子に対して設ける絶縁被膜、および、電力線の絶縁被膜のうち少なくとも一方を含んでもよい。電力線の絶縁被膜を用いる場合、センサー素子の表面に導電性を持たせることによって電力線との密着性を保ち、良好な信号取得が可能となる。一方、センサー素子に対して設ける絶縁被膜を用いる場合、センサー素子を導電性のある電力線に対して取り付け可能である。なお、絶縁被膜は、例えば、樹脂、陶器などの絶縁材であってもよい。なお、本開示において、電力線は、配電線または送電線と言い換えてもよい。
【0029】
図1において、フィルタ部102は、例えば、センサー部101が受け取った交流信号から、少なくとも所定周波数の周波数成分を除去した一又は複数のノイズ信号を出力する。すなわち、フィルタ部102は、例えば、二次側電力系統20の電力線に伝搬する交流信号を受け取り、当該交流信号から、少なくとも交流電力信号の周波数成分である50Hzまたは60Hzの信号を除去したノイズ信号を出力してもよい。このように、電力周波数である50Hz帯等を除去することによって、後述するように、一次側電力系統10から二次側電力系統20に伝搬された絶縁破壊信号の検知を容易にさせることができる。
【0030】
フィルタ部102から出力されるノイズ信号は、一または複数であってもよい。複数のノイズ信号が出力される場合、フィルタ部102は、信号分配機能を有し、当該信号分配機能によって交流信号を複数の信号に分配し、分配された信号のそれぞれから所定周波数の周波数成分を除去してもよい。
【0031】
図1において、検知部103は、フィルタ部102から出力されるノイズ信号を受け取り、当該ノイズ信号において絶縁破壊信号を検知したとき、一次側電力系統における電力線において絶縁破壊が生じたことを示す検知信号を出力してもよい。
【0032】
具体的には、例えば、検知部103は、交流信号から少なくとも電力周波数の周波数成分を除去したノイズ信号において、予め設定された第1所定値以上の振幅を有する信号を検知したとき、検知された信号は、一次側電力系統10において絶縁破壊によって生じ、変電装置30を介して二次側電力系統20に伝搬してきた絶縁破壊信号であると判定してもよい。第1所定値の具体的な数値は、絶縁破壊信号と、その他のノイズ信号とを区別するための閾値情報であって、予め実行される計測または実験等によって一意に定められてもよい。
【0033】
すなわち、検知部103は、一又は複数のノイズ信号を受け取り、一又は複数のノイズ信号のうち少なくとも一のノイズ信号において第1所定値以上の振幅を有する信号を検知したとき、一次側電力系統における電力線において絶縁破壊が生じたことを示す検知信号を出力してもよい。
【0034】
なお、検知部103は、電気信号によって各部を制御する制御回路(control circuitry)であってもよい。具体的には、検知部103は、例えば、FPGA(Field Programmable Gate Array)等の集積回路によって構成されてもよい。また、検知部103は、例えば、CPU(Central Processing Unit)またはMPU(Micro Processing Unit)などにより実現されてもよい。
【0035】
このように、本実施の形態における検知装置100は、一次側電力系統10における所定周波数の高電圧電力が変電装置30によって電圧変換された低電圧電力を受け取る二次側電力系統20における電力線から交流信号を受け取るセンサー部101と、センサー部101が受け取った交流信号から少なくとも所定周波数の周波数成分を除去した一又は複数のノイズ信号を出力するフィルタ部102と、一又は複数のノイズ信号を受け取り、一又は複数のノイズ信号のうち少なくとも一のノイズ信号において第1所定値以上の振幅を有する信号を検知したとき、一次側電力系統10における電力線において絶縁破壊が生じたことを示す検知信号を出力する検知部103と、を備えてもよい。
【0036】
これにより、高電圧電力を低電圧電力に変換する送配電システムにおいて、低電圧側の電力系統における交流信号に基づいて絶縁破壊の発生を検知できることに寄与することができる。
【0037】
具体的には、例えば、低圧側である二次側電力系統20の電力線に対してセンサー101を取り付け、当該センサー101から受け取る交流信号に基づいて絶縁破壊の発生を検知することにより、絶縁破壊を検知する検知装置の取り付け作業性および安全性を大幅に向上させることができる。
【0038】
以上、図1を参照して、本実施の形態における検知装置100の機能的な構成、および、基本的な動作について説明した。
【0039】
図2は、本発明の実施形態1に係るフィルタ部の機能的な構成の一例を示すブロック図である。図2に示すように、フィルタ部102aは第1フィルタ201aを有してもよい。第1フィルタ201aは、交流信号を受け取り、図2に示すように、交流電力の電力周波数である50Hzまたは60Hzの周波数成分を除去する第1フィルタの周波数通過特性に基づき、交流信号から所定周波数の周波数成分を少なくとも除去した第1ノイズ信号を出力してもよい。
【0040】
係る場合において、第1フィルタの周波数通過特性は、図2に示すように、例えば、二次側電力系統20に接続される電気設備が発する雑音信号の設備雑音周波数を、さらに除去するものであってもよい。電気設備とは、例えば、商用電力を利用するインバータ等の機器であってもよい。
【0041】
本実施の形態における検知装置100は、送配電システム1の二次側電力系統20において用いられるため、従来技術に比べて作業等の安全性を確保できる一方、二次側電力系統20に特有の問題が生じる場合がある。当該特有の問題とは、例えば、二次側電力系統20に接続された電気設備が発する雑音信号である。
【0042】
これに対して、本実施の形態におけるフィルタ部102aは、センサー部101から受け取った交流信号から、所定周波数の周波数成分と、さらに、設備雑音の周波数成分とを除去してもよい。電気設備から生じる設備雑音の周波数成分は、予め計測することによって特定されてもよい。また、設備雑音の周波数帯は、電力周波数である50Hz等に対して数100倍以上の場合があるため、第1フィルタ201aをバンドパスフィルタとすることによって、交流信号から、所定周波数の周波数成分と、さらに、設備雑音の周波数成分とを除去してもよい。
【0043】
すなわち、二次側電力系統20は、一又は複数の電気設備に対して送電し、フィルタ部102は、所定周波数の周波数成分、及び、電気設備に基づく雑音信号の周波数成分を除去する第1フィルタ201aを含み、一又は複数のノイズ信号は、第1フィルタ201aによって交流信号から抽出された第1ノイズ信号を少なくとも含んでもよい。
【0044】
これにより、フィルタ部102から出力されるノイズ信号に重畳される絶縁破壊信号を検知部103において高精度に検知することができる。
【0045】
なお、後述するように、一次側電力系統10の電力線において生じる絶縁破壊はインパルス特性を有するため、絶縁破壊によって電力線上に伝搬される絶縁破壊信号は非常に広帯域な周波数成分を有する信号である。そのため、絶縁破壊信号を検知するという観点では、第1フィルタ201aは、電力周波数の周波数成分のみを除去し、電力周波数より高い周波数帯は通過させる周波数特性を有するハイパスフィルタであることが望ましい。しかし、上述した通り、本実施形態に特有の二次側電力系統20側にて絶縁破壊信号を検知する場合においては、二次側電力系統20に接続される電気設備からの雑音信号を除去する必要があり、第1フィルタ201aは、絶縁破壊信号が有する広帯域な周波数成分のうち一部を除去する機能を有することが望ましい。
【0046】
また、一方で、第1フィルタの周波数通過特性は、図2に示すように、例えば、変電装置30におけるインダクタンス結合の周波数特性に対応する周波数帯を通過させるものであってもよい。
【0047】
変電装置30におけるトランスのインダクタンス結合は周波数特性を有しており、当該インダクタンス結合の周波数特性は、電力周波数帯である50Hz帯または60Hz帯において通過損失が最小となるバンドパス特性を有するように設定されている。そのため、第1フィルタ201aの周波数通過特性を、電力周波数の周波数成分を除去しつつ、トランスにおけるインダクタンス結合の周波数特性に対応したものとすることにより、センサー部101が受け取った交流信号から、所定周波数の周波数成分と、さらに、所定周波数に比べて高周波である設備雑音の周波数成分とを除去してもよい。
【0048】
すなわち、フィルタ部102は、所定周波数より高く、且つ、変電装置30におけるインダクタンス結合の周波数特性に対応する周波数帯を通過させる第1フィルタ201aを含み、一又は複数のノイズ信号は、第1フィルタ201aによって交流信号から抽出された第1ノイズ信号を少なくとも含んでもよい。
【0049】
これにより、フィルタ部102から出力されるノイズ信号に重畳される絶縁破壊信号を検知部103において高精度に検知することができる。その他の効果については、上述した通りである。
【0050】
図3は、本発明の実施形態1に係るフィルタ部の機能的な構成の他の例を示すブロック図である。図2においては、フィルタ部102aは、第1フィルタ201aのみを有してもよいと説明したが、図3に示すように、フィルタ部102bは、第1フィルタ201bおよび第2フィルタ202bを有してもよい。
【0051】
第1フィルタ201bは、図3に示すように、電力周波数の周波数成分を除去し、第2フィルタ202bが通過させる第2周波数帯よりも低い第1周波数帯301を通過させる第1周波数特性を有し、第1周波数特性に基づいて第1ノイズ信号を出力してもよい。第2フィルタ202bは、図3に示すように、電力周波数の周波数成分を除去し、第1周波数帯よりも高い第2周波数帯302を通過させる第2周波数特性を有し、第2周波数特性に基づいて第2ノイズ信号を出力してもよい。
【0052】
すなわち、一又は複数のノイズ信号は、第1周波数帯301を通過させる第1フィルタ201bによって交流信号から抽出された第1ノイズ信号、及び、第1周波数帯301よりも高い周波数帯である第2周波数帯302を通過させる第2フィルタ202bによって交流信号から抽出された第2ノイズ信号を含んでもよい。
【0053】
そして、検知部103bは、例えば、第1ノイズ信号において第1所定値以上の振幅を有する信号を検知した場合、および、第2ノイズ信号において第2所定値以上の振幅を有する信号を検知した場合のうち少なくとも一の場合において、検知信号を出力してもよい。係る場合において、例えば、第1所定値と第2所定値とは互いに実質的に同じ値であってもよく、異なる値であってもよい。
【0054】
このように、フィルタ部102bが、当該第1周波数帯を通過させる第1フィルタ201bと、当該第1周波数帯よりも高い当該第2周波数帯を通過させる第2フィルタ202bとを有することにより、後述するようにインパルス特性を有する絶縁破壊信号の周波数成分を幅広い周波数帯において捕捉することができ、検知部103において、より高精度に絶縁破壊信号を検知することができる。なお、第1周波数帯301と、第2周波数帯302とは、例えば、図3に示すような境界周波数より、それぞれ低い周波数帯と高い周波数帯とに区分されることが望ましい。境界周波数は、例えば、数百kHz程度であってもよい。
【0055】
なお、第1フィルタ201bは、ローパスフィルタまたはバンドパスフィルタであり、第2フィルタ202bは、ハイパスフィルタまたはバンドパスフィルタであってもよい。第1フィルタ201bは、第1周波数帯301より高い周波数成分を除去するため、ローパスフィルタであってもよいが、検知部103bにおける絶縁破壊信号の検知処理を容易にするため、電力周波数の周波数成分を除去するバンドパスフィルタがより望ましい。第2フィルタ202bは、第2周波数帯302より低い周波数成分を除去するため、ハイパスフィルタ、または、不要となる第2周波数帯302より高い周波数成分を除去するバンドパスフィルタであってもよい。
【0056】
なお、係る場合において、第1周波数帯301は、変電装置30におけるインダクタンス結合の周波数成分に適合させ、第2周波数帯302は、変電装置30における容量性結合の周波数成分に適合させることが望ましい。
【0057】
図4は、変電装置30における信号透過の周波数特性の説明の用に供する図である。以下、図4を参照して、変電装置30における交流信号の周波数通過特性について説明し、第1周波数帯301および第2周波数帯302のそれぞれを、変電装置30におけるインダクタンス結合の周波数成分および容量性結合の周波数成分に適合させることの効果について説明する。
【0058】
変電装置30におけるトランスのインダクタンス結合は周波数特性を有しており、当該インダクタンス結合の周波数特性は、電力周波数帯において通過損失が最小となるように設定される。具体的には、例えば、インダクタンス結合の周波数特性は、図4(a)に示すようにバンドパス特性を有し、電力周波数である50Hz帯または60Hz帯において通過損失が最小となり、当該電力周波数から離れるほど通過損失が増加してもよい。
【0059】
一方で、変電装置30におけるトランスは、複数のコイルが巻き付けられた構造となっているため、コイル間およびトランスの筐体などの間において容量性結合が生じる。当該容量性結合は、図4(b)に示すように、周波数が高くなるほどインピーダンスが低くなる特性を有しているため、一次側電力系統10の電力線を伝搬する信号のうち、高い周波数成分はインダクタンス結合ではなく容量性結合によって二次側電力系統20に伝搬することになる。
【0060】
そのため、変電装置30における信号透過は、全体として図4(c)に示すように、電力周波数を伝搬する周波数特性を有しながら、電力周波数に対して高い周波数帯においても、一定程度の信号レベルを伝搬する周波数特性を有する。
【0061】
このように、変電装置30は、一次側電力系統10から二次側電力系統20に対して、主にインダクタンス結合を介して交流電力を効率的に変電するように設計されている一方、一次側電力系統10と二次側電力系統20との間には容量性結合も存在しており、高周波数領域においても、高周波信号が伝搬する特性を有する。
【0062】
そのため、インパルス特性を有する絶縁破壊信号が一次側電力系統10から変電装置30を介して二次側電力系統20へ伝搬されるとき、絶縁破壊信号のインパルス特性に基づく広帯域な周波数成分のうち、インダクタンス結合の周波数帯および容量性結合の周波数帯における周波数成分が、より低損失に伝搬される。すなわち、上述した第1フィルタ201bにおける第1周波数特性、および、第2フィルタ202bにおける第2周波数特性を、それぞれインダクタンス結合の周波数帯、および、容量性結合の周波数帯に適合させることにより、検知部103bにおいて、より高精度に絶縁破壊信号を検知することができる。
【0063】
なお、係る場合において、図3に示す検知部103bにおける信号検知の判定処理において、第2所定値は、第1所定値と実質的に同じ値であってもよい。
【0064】
または、第2所定値は、第1所定値より小さい値であってもよい。第2ノイズ信号における絶縁破壊信号の有無を判定する閾値である第2所定値を、第1ノイズ信号における閾値である第1所定値より小さくすることによって、図4に示すようなインダクタンス結合の通過特性よりも高損失である容量性結合の通過特性を考慮した設計とすることができる。通過特性は、結合の電気的特性、周波数特性によって変化するため、通過特性によって与えられる損失の大きさに応じて第1所定値および第2所定値の値が設定されることが望ましい。
【0065】
さらに、第1フィルタ201bおよび第2フィルタ202bを用いることにより、高周波領域において発生しうる電気設備に起因する雑音信号のうち、第2フィルタ202bの通過周波数帯以外の周波数帯の成分を除去することができ、本実施の形態に特有の二次側電力系統20における電気設備に起因する雑音信号の課題を併せて解決することができる。
【0066】
なお、容量性結合の周波数帯は、一次側電力系統10および二次側電力系統20の接続形態、変電装置30における構成に基づくため、予め計測または実験等によって明らかにし、容量性結合の周波数帯の情報に基づいて第2フィルタ202bが設計されてもよい。また、容量性結合の周波数帯は、互いに具体的な構成が異なる複数の変電装置30に対応する複数の容量性結合の周波数特性を網羅するように設計されてもよい。第1所定値の値、および、第2所定値の値も同様に、予め設計、計測、または実験等によって明らかになったインダクタンス結合および容量性結合の周波数特性に基づいて設定されてもよい。
【0067】
係る場合において、検知部103bは、第1ノイズ信号において第1所定値以上の振幅を有する信号を検知できない場合に、第2ノイズ信号において第1所定値以上の振幅を有する信号の有無を判定してもよい。
【0068】
図5は、本発明の実施形態1に係る検知部の動作の流れの一例を示すフロー図である。以下、図5を参照して、検知部103bの基本動作の処理の手順の一例について説明する。
【0069】
なお、下記に説明される各フロー図は、本開示に係る検知装置100の動作の処理手順について説明するために必要なステップを例示として記載しているにすぎない。本発明の実施形態における機能が発揮される範囲において、各フロー図の各ステップの間に他の動作の処理に関するステップが適切に挿入されることを妨げるものではない。以上のフロー図に関する説明は、下記で説明されるフロー図において適用されてもよい。
【0070】
図5において、検知部103bは、第1ノイズ信号および第2ノイズ信号を受け取る(ステップS501)。次に、検知部103bは、第1ノイズ信号において、上述した第1所定値以上の振幅を有する信号の有無を判定してもよい(ステップS502)。検知部103bは、当該信号を検知したとき(ステップS502:YES)、一次側電力系統10における電力線において絶縁破壊が生じたことを示す検知信号を出力してもよい(ステップS503)。
【0071】
一方、検知部103bは、第1ノイズ信号において、第1所定値以上の振幅を有する信号を検知できないとき(ステップS502:NO)、第2ノイズ信号において、第2所定値以上の振幅を有する信号の有無を判定してもよい(ステップS504)。そして、検知部103bは、第2ノイズ信号において、第2所定値以上の振幅を有する信号を検知したとき(ステップS504:YES)、検知信号を出力してもよい。一方、検知部103bは、第2ノイズ信号において、第2所定値以上の振幅を有する信号を検知できないとき(ステップS504:NO)、待機状態となってもよい。
【0072】
このように、検知部103bにおいて、第1ノイズ信号における絶縁破壊信号の検知判定処理を、第2ノイズ信号における絶縁破壊信号の検知判定よりも優先させることにより、変電装置30における透過損失が低いインダクタンス結合によって二次側電力系統20に伝搬してくる絶縁破壊信号の周波数成分を優先的に検知対象とすることができ、第1所定値および第2所定値の設定における自由度が増す効果を奏する。
【0073】
なお、図5においては、第1ノイズ信号における絶縁破壊信号の検知判定処理を、第2ノイズ信号における絶縁破壊信号の検知判定よりも優先させるものとして説明したが、この限りではない。検知部103は、第1ノイズ信号における検知判定処理と、第2ノイズ信号における検知判定処理とを並行して実行し、いずれか一方において、または、双方において、絶縁破壊信号を検知したときに検知信号を出力してもよい。また、検知部103は、第2ノイズ信号における絶縁破壊信号の検知判定処理を、第1ノイズ信号における絶縁破壊信号の検知判定よりも優先させてもよい。
【0074】
なお、図3および図5においては、フィルタ部102bは第1フィルタ201bおよび第2フィルタ202bを有するものとして説明したが、さらに、抽出部を有してもよい。図6は、本発明の実施形態1に係る検知装置およびフィルタ部の機能的な構成の他の例を示すブロック図である。
【0075】
図6に示すように、フィルタ部102cは、第1フィルタ201bおよび第2フィルタ202bを有し、さらに、抽出部600を有してもよい。すなわち、フィルタ部102cは、センサー部101が受け取った交流信号に基づき、交流信号の信号レベルの絶対値が最大となる少なくとも一の第1位相の情報を少なくとも含む位相情報を抽出する抽出機能をさらに備えてもよい。
【0076】
抽出部600は、具体的には、例えば位相情報抽出機能であってもよく、位相情報抽出処理は情報処理演算によって実行されてもよい。抽出部600は、交流信号に含まれる電力周波数の周波数成分の位相情報を抽出する機能を有してもよい。抽出される位相情報には、交流信号の信号レベルの絶対値が最大となる位相の情報を少なくとも含めばよい。なお、交流信号から一又は複数の位相情報を抽出する技術は公知であるため、詳細な説明を省略する。
【0077】
交流信号の信号レベルの絶対値が最大となる第1位相の情報は、後段の検知部103cにおいて、ノイズ信号に含まれる絶縁破壊信号を検知判定する場合に用いられる。なぜならば、一次側電力系統10の電力線において発生しうる絶縁破壊は交流信号の信号レベルの絶対値が最大となるタイミングで発生するため、当該タイミングに相当する第1位相の情報を用いることにより、後段の検知部103cにおいて、ノイズ信号に含まれる信号が絶縁破壊信号であるのか否かを高精度に判定できるからである。
【0078】
なお、位相情報に含まれる第1位相の情報は、一又は複数の情報であってもよい。後段の検知部103cにおける絶縁破壊信号の検知判定において、一の第1位相の情報を用いることによって高精度に判定できるが、複数の第1位相の情報を用いることによって、さらに高精度に判定することができる。
【0079】
なお、一次側電力系統10の電力線において伝搬する電力信号と二次側電力系統20の電力線において伝搬する電力信号との間には、変電装置30の存在に起因した位相差が生じるが、当該位相差は、電力系統の接続形態、または、変電装置におけるトランスの特性などによって一定の値で固定されるため、ノイズ信号に含まれる絶縁破壊信号の有無を位相情報に基づいて判定する場合、二次側電力系統20における交流信号の位相情報を基準とすることができる。
【0080】
係る場合において、図6における検知部103cは、第2ノイズ信号において第1位相に同期しない第3所定値以上の振幅を有する信号を検知したとき、第1ノイズ信号において第1所定値以上の振幅を有する信号を検知したことに基づいて検知信号を出力してもよい。
【0081】
図7は、本発明の実施形態1に係る検知部の動作の流れの他の例を示すフロー図である。図8は、本発明の実施形態1に係る検知部においてノイズ信号に含まれる絶縁破壊信号の検知方法の説明の用に供する図である。以下、図7および図8を参照して、検知部103cの基本動作の処理の一例について説明する。なお、図7の説明において、図5と重複するステップについては説明を省略する。
【0082】
図7において、検知部103cは、第1ノイズ信号および第2ノイズ信号を受け取った場合(ステップS501)、第2フィルタ202bから出力された第2ノイズ信号において、第1位相に同期しない第3所定値以上の振幅を有する信号の有無を判定する(ステップS701)。
【0083】
第2ノイズ信号は、第1ノイズ信号よりも高周波帯の周波数成分を有する信号である。そのため、ノイズ信号に絶縁破壊信号が含まれる場合、第2ノイズ信号には、インパルス特性を有する絶縁破壊信号のうち高周波帯の周波数成分が含まれている。
【0084】
ところで、一次側電力系統10の電力線において絶縁破壊が生じた場合、図8(b)に示すように第1ノイズ信号において第1位相800に同期して絶縁破壊信号801が検知され、一方、図8(c)に示すように第2ノイズ信号において第1位相800に同期して絶縁破壊信号802が検知される。絶縁破壊信号801の周波数は、絶縁破壊信号802の周波数よりも低く波長が長いため、第1位相800に同期して検知される波数は比較的に少なくなる。そのため、第1位相800に同期した絶縁破壊信号の検知の機会は、第2ノイズ信号に基づいた検知の方が多くなる。
【0085】
一方で、二次側電力系統20においては、電気設備に起因する雑音信号803が交流信号に含まれることがあり、当該雑音信号は、交流信号における第1位相800に同期することなくランダムに発生し、且つ、上述のとおり、第1ノイズ信号よりも第2ノイズ信号に重畳されやすい。したがって、第2ノイズ信号に含まれる電気設備に起因する雑音信号803の振幅レベルが予め設定される第3所定値以上である場合、第1位相800に同期した絶縁破壊信号の検知の機会の頻度に関わらず、第2ノイズ信号に基づいて絶縁破壊信号の有無を判定することは困難になりうる。
【0086】
そこで、検知部103cは、ステップS701において、第2フィルタ202bから出力された第2ノイズ信号において、第1位相に同期しない第3所定値以上の振幅を有する電気設備に起因する雑音信号803の有無を判定し、第3所定値以上の振幅を有する雑音信号803を検知したときには(ステップS701:YES)、第1ノイズ信号において第1所定値以上の振幅を有する信号の検知に基づいて検知信号を出力するものとしている(ステップS702)。
【0087】
具体的には、例えば、検知部103cは、第1ノイズ信号において第1所定値以上の振幅を有する信号を検知したとき(ステップS702:YES)、検知信号を出力し(ステップS503)、当該信号を検知しないとき(ステップS702:NO)、待機状態となってもよい。
【0088】
一方で、検知部103cは、第2ノイズ信号において、第1位相800に同期しない第3所定値以上の振幅を有する電気設備に起因する雑音信号803を検知しないとき(ステップS701:NO)、絶縁破壊信号を検知できる頻度が比較的高い第2ノイズ信号に基づいて検知信号の出力を行ってもよい(ステップS703)。
【0089】
このように、第2ノイズ信号において雑音信号803が検知されるか否かに応じて、第1ノイズ信号における絶縁破壊信号の検知判定処理、および、第2ノイズ信号における絶縁破壊信号の検知判定処理のうち、いずれを優先させるかを決定することにより、第1位相800に同期する信号の検知機会の確保と、第1所定値および第2所定値の設定における自由度の確保とを両立させることができる。
【0090】
なお、図7のステップS702において、検知部103cは、第1ノイズ信号において、第1所定値以上の振幅を有し、さらに、第1位相に同期した信号を検知したとき、検知信号を出力してもよい。これにより、第1ノイズ信号において絶縁破壊信号を、より高精度に検知することができる。
【0091】
なお、図6において、フィルタ部102は、複数のフィルタを有するものとして説明したが、例えば、フィルタ部102は、一のフィルタと、抽出部600とを有する構成であってもよい。すなわち、フィルタ部102は、センサー部101が受け取った交流信号に基づき、交流信号の信号レベルの絶対値が最大となる少なくとも一の第1位相の情報を少なくとも含む位相情報を抽出する抽出機能をさらに備え、検知部103は、一又は複数のノイズ信号のうち少なくとも一のノイズ信号において、第1所定値以上の振幅を有し、さらに、第1位相に同期した信号を検知したとき、検知信号を出力してもよい。
【0092】
これにより、交流信号から電力周波数の周波数成分を除去したノイズ信号を、周波数によって分離をせず、位相情報に基づいて高精度に絶縁破壊信号の有無を判定できる。
【0093】
なお、上記説明においては、二次側電力系統20における一の電力線から交流信号をセンサー部101が受け取るものとして説明したが、例えば、図9に示すように、二次側電力系統20における複数の電力線から交流信号をセンサー部101dが受け取ってもよい。係る場合、センサー部101dおよびフィルタ部102dは、上述したセンサー部101およびフィルタ部102に含まれる機能および構成を2系列有してもよい。
【0094】
すなわち、センサー部101dは、二次側電力系統20における第1端点901を含む第1電力線から第1交流信号を受け取り、二次側電力系統20における第2端点を含む第2電力線から第2交流信号を受け取り、フィルタ部102dは、センサー部101dが受け取った第1交流信号から少なくとも所定周波数の周波数成分を除去した第3ノイズ信号を出力し、第2交流信号から少なくとも所定周波数の周波数成分を除去した第4ノイズ信号を出力し、検知部103dは、第3ノイズ信号及び第4ノイズ信号を受け取り、第3ノイズ信号と第4ノイズ信号とに基づいて、検知信号を出力してもよい。
【0095】
図9において、例えば、第1端点901と第2端点902との間において商用電力として取り出される交流電力は200Vであってもよく、第1端点901と第2端点902との中点がグランドに接地されているため、各端点と接地点との間において100Vが取り出されてもよい。
【0096】
係る場合において、一次側電力系統10における絶縁破壊により絶縁破壊信号が発生したとき、絶縁破壊信号は二次側電力系統20に伝搬し、第1端点901を含む第1電力線、および、第2端点902を含む第2電力線を伝搬する。一方、二次側電力系統20は上述した中点において系が区分され、それぞれ独立した負荷がかかっているため、負荷雑音信号の発生も独立して発生する。
【0097】
すなわち、一次側電力系統10において発生した絶縁破壊信号は、第1電力線および第2電力線に伝搬するのに対して、二次側電力系統20の各電力線において伝搬する負荷雑音信号は相互に独立しているため、第1電力線から受け取った第1交流信号から少なくとも所定周波数の周波数成分を除去した第3ノイズ信号と、第2電力線から受け取った第2交流信号から少なくとも所定周波数の周波数成分を除去した第4ノイズ信号とを、例えば、加算することによって、絶縁破壊が生じた場合においては、絶縁破壊信号は振幅レベルが高くなるのに対して、第3ノイズ信号および第4ノイズ信号のそれぞれに含まれる負荷雑音信号は相殺される。
【0098】
そのため、検知部103dは、加算されたノイズ信号において、上述した第1所定値よりも大きい第4所定値以上の振幅を有する信号を検知したとき検知信号を出力することにより、より高精度に絶縁破壊を検知することができる。
【0099】
また、検知部103dは、第1電力線から受け取った第1交流信号から少なくとも所定周波数の周波数成分を除去した第3ノイズ信号と、第2電力線から受け取った第2交流信号から少なくとも所定周波数の周波数成分を除去した第4ノイズ信号とのうち、少なくとも一方において、第1所定値以上の振幅を有する信号を検知したときに当該検知信号を出力してもよい。
【0100】
さらに、検知部103dは、第1電力線から受け取った第1交流信号から少なくとも所定周波数の周波数成分を除去した第3ノイズ信号と、第2電力線から受け取った第2交流信号から少なくとも所定周波数の周波数成分を除去した第4ノイズ信号とを用いて、加算とは異なる他の公知の演算処理を実行した結果に基づいて検知信号を出力してもよい。
【0101】
すなわち、検知部103dは、第3ノイズ信号及び第4ノイズ信号を受け取り、第3ノイズ信号と第4ノイズ信号とに基づいて、検知信号を出力してもよい。
【0102】
このように、二次側電力系統20における第1端点を含む第1電力線、および、第2端点を含む第2電力線のそれぞれから受け取った交流電力を加算したうえで絶縁破壊信号の検知判定を行うことにより、負荷雑音信号が相殺されて、高精度に絶縁破壊を検知することができる。
【0103】
また、上記説明においては、一次側電力系統10および二次側電力系統20は、いずれも一の電力系を含むものとして説明したが、例えば、少なくとも一次側電力系統10において三相交流電力が入力される場合、センサー部101は複数の相における電力線から交流信号を受け取ってもよい。
【0104】
図10は、一次側電力系統10において三相交流電力が入力される場合の送配電システムおよび検知装置の機能的な構成の一例を示すブロック図である。以下、図10を参照し、一次側電力系統10において三相交流電力が入力される場合における送配電システム1および検知装置100の機能的な構成および動作について説明する。なお、図10においては、説明の便宜のため、一次側電力系統10の構成図は省略する。
【0105】
図10に示すように、一次側電力系統10における高電圧電力は高電圧三相交流電力であり、高圧の三相交流電力が変電装置30に入力されて二次側電力系統20として低圧の交流電力が出力されてもよい。係る場合、一次側電力系統10における三相は、例えば、R相、S相、T相であってもよい。一方、二次側電力系統20においては、二次側電力系統20における低電圧電力は、二相交流電力であってもよく、または、低電圧三相交流電力であってもよい。図10に示すように、二相交流電力である場合、例えば、U相、V相であってもよい。なお、三相交流電力である場合においては、U相、V相、および、W相であってもよい。
【0106】
図10に示すように、例えば、二次側電力系統20におけるU相は、一次側電力系統10における三相のうちR相およびS相と変電装置30によってインダクタンス結合し、二次側電力系統20におけるV相は、一次側電力系統10におけるS相およびT相とインダクタンス結合していてもよい。
【0107】
なお、一次側電力系統10における三相は、一次側第1相、一次側第2相、一次側第3相と呼称され、二次側電力系統20における二相は、二次側第1相、二次側第2相と呼称されてもよい。一次側における第1相、第2相、第3相のそれぞれがR相、S相、T相のいずれに対応するかについては任意であってもよく、二次側における第1相、第2相のそれぞれがU相、V相のいずれに対応するかについても任意であってもよい。なお、一次側電力系統10と二次側電力系統20との接続形態は、本開示の範囲を限定しない。
【0108】
係る場合において、検知装置100eに含まれるセンサー部101eは、例えば、二次側電力系統20における二相の電力線から交流信号を受け取ってもよい。すなわち、センサー部101eは、二次側電力系統20において、一次側電力系統10における三相のうち一次側第1相及び一次側第2相と変電装置30によってインダクタンス結合した二次側電力系統20における二次側第1相の電力線における第1相交流信号、及び、一次側第2相及び一次側第3相とインダクタンス結合した二次側第2相の電力線における第2相交流信号を受け取ってもよい。
【0109】
具体的には、例えば、図10に示すように、センサー部101eは、U相における電力線、および、V相における電力線のそれぞれから交流信号を受け取ってもよい。なお、図10における二相の選択は例示であって、例えば、センサー101eは、V相における電力線、および、W相における電力のそれぞれから交流信号を受け取ってもよい。
【0110】
係る場合、フィルタ部102eは、第1相交流信号から少なくとも所定周波数の周波数成分を除去した一又は複数の第1相ノイズ信号、及び、第2相交流信号から少なくとも所定周波数の周波数成分を除去した一又は複数の第2相ノイズ信号を少なくとも出力してもよい。
【0111】
フィルタ部102eは、第1相交流信号および第2相交流信号のそれぞれに対して、図2において説明したように、例えば、第1フィルタ201aを適用することによって、各交流信号から所定周波数の周波数成分を少なくとも除去した第1相ノイズ信号および第2相ノイズ信号を出力してもよい。
【0112】
ところで、一次側電力系統10における電力線が三相三線式である場合において、一次側電力系統10の三相のうちいずれかの相において絶縁破壊が発生したとき、絶縁破壊信号は二次側電力系統20におけるすべての相に伝搬される。
【0113】
具体的には、例えば、R相において絶縁破壊が発生したとき、絶縁破壊信号は変電装置30におけるインダクタンス結合によってR相からU相およびW相に伝搬される。一方、上述したとおり、絶縁破壊信号はインパルス特性を有するため、絶縁破壊信号の周波数成分のうち高周波成分については、変電装置30、ならびに、一次側電力系統10および二次側電力系統20における容量性結合によって、例えば、U相およびV相に伝搬される。なお、R相ではなく、S相またはT相に接続される電力線上において絶縁破壊が発生した場合も同様に説明される。なお、変電装置30等における容量性結合とは、具体的には、例えば、変電装置30における、複数の導体および導電性を有する筐体の配置または配線によって生じる容量性結合を含んでもよい。
【0114】
そのため、一次側電力系統10のいずれかの相において絶縁破壊が発生した場合、フィルタ部102eにおいて各交流信号から所定周波数の周波数成分を除去した第1相ノイズ信号および第2相ノイズ信号のいずれにおいても、第1所定値以上の振幅を有する絶縁破壊信号が検知される。
【0115】
したがって、後段の検知部103eにおいては、第1相ノイズ信号及び2相ノイズ信号のうち少なくとも一のノイズ信号において第1所定値以上の振幅を有する信号を検知したとき、一次側電力系統10における電力線において絶縁破壊が生じたことを示す検知信号を出力するとしてもよい。
【0116】
一方で、上述したとおり、二次側電力系統20に対して電気設備が接続されるため、二次側電力系統20における電力線に伝搬する交流信号には、電気設備に起因する雑音信号が重畳される。
【0117】
そのため、上述したとおり、雑音信号を排除することが望ましく、例えば、フィルタ部102eが有する第1フィルタ201aは、図2において説明したように、二次側電力系統20に接続される電気設備が発する雑音信号の設備雑音周波数を、さらに除去するものであってもよい。すなわち、二次側電力系統20は、一又は複数の電気設備に対して送電し、フィルタ部102は、所定周波数の周波数成分、及び、電気設備に基づく雑音信号の周波数成分を除去する一又は複数の第1フィルタを含み、一又は複数の第1相ノイズ信号は、第1フィルタによって第1相交流信号から抽出されたノイズ信号を少なくとも含み、一又は複数の第2相ノイズ信号は、第1フィルタによって第2相交流信号から抽出されたノイズ信号を少なくとも含んでもよい。
【0118】
また、第1フィルタ201aは、所定周波数より高く、且つ、変電装置30におけるインダクタンス結合の周波数特性に対応する周波数帯を通過させるフィルタであってもよい。すなわち、フィルタ部102は、所定周波数より高く、且つ、変電装置30におけるインダクタンス結合の周波数特性に対応する周波数帯を通過させる一又は複数の第1フィルタを含み、一又は複数の第1相ノイズ信号は、第1フィルタによって第1相交流信号から抽出されたノイズ信号を少なくとも含み、一又は複数の第2相ノイズ信号は、第1フィルタによって第2相交流信号から抽出されたノイズ信号を少なくとも含んでもよい。
【0119】
係る場合において、一次側電力系統10において絶縁破壊が発生したとき、検知部103eに入力される第1相ノイズ信号および第2相ノイズ信号に含まれる絶縁破壊信号は、いずれも変電装置30におけるインダクタンス結合によって一次側電力系統10から伝搬された絶縁信号の周波数成分である。そのため、例えば、一次側第1相において絶縁破壊が発生した場合には、第1相ノイズ信号においては絶縁破壊信号が検知されるが、第2相ノイズ信号においては絶縁破壊信号が検知されない。
【0120】
係る場合においては、検知部103eは、第1相ノイズ信号および第2相ノイズ信号のうち少なくとも一方において、第1所定値の振幅を有する絶縁破壊信号が検知されたとき検知信号を出力してもよい。さらに、検知信号は、例えば、絶縁破壊が一次側第1相の電力線において生じたことをさらに示す信号であってもよい。
【0121】
なお、フィルタ部102eから出力される第1相ノイズ信号および第2相ノイズ信号のそれぞれは、一または複数であってもよい。複数のノイズ信号が出力される場合、フィルタ部102eは、信号分配機能を有し、当該信号分配機能によって各交流信号を複数の信号に分配し、分配された信号のそれぞれから所定周波数の周波数成分を除去してもよい。
【0122】
すなわち、検知部103eは、第1相ノイズ信号及び第2相ノイズ信号を受け取り、第1相ノイズ信号及び第2相ノイズ信号のうち少なくとも一のノイズ信号において第1所定値以上の振幅を有する信号を検知したとき、検知信号を出力してもよい。
【0123】
このように、一次側電力系統10における電力線が三相三線式である送配電システムにおいて、二次側電力系統20における二層の電力線から交流信号を受け取り、当該交流信号から電力周波数の周波数成分を少なくとも除去したとき、少なくとも、一次側電力系統10において絶縁破壊が生じたことを検知できる。
【0124】
さらに、フィルタ部102eにおいて、当該交流信号から電力周波数の周波数成分と、さらに、容量性結合によって伝搬される周波数成分とを除去することによって、一次側電力系統10の三相のうち絶縁破壊が発生した相を特定できる。
【0125】
なお、検知部103eは、第1相ノイズ信号と第2相ノイズ信号とを加算し、加算された信号において、第5所定値以上の振幅を有する信号が検知されたとき、検知信号を出力してもよい。このように、二次側電力系統20における第1相交流信号と、第2相交流信号とを加算したうえで絶縁破壊信号の検知判定を行うことにより、上述のとおり、負荷雑音信号が相殺されて、高精度に絶縁破壊を検知できる。
【0126】
なお、上記説明においては、二次側電力系統20における二層の電力線から交流信号を受け取り、当該交流信号に対して第1フィルタを適用することによって絶縁破壊の発生を検知するものとして説明したが、さらに、図11に示すように、二次側電力系統20における三相の電力線から交流信号を受け取り、3つの交流信号に基づいて絶縁破壊信号の検知が行われてもよい。これにより、二次側電力系統20における絶縁破壊信号の検知機会が増加し、より高精度に絶縁破壊の発生を検知することができる。
【0127】
図11に示すように、二次側電力系統20におけるU相、V相、W相のそれぞれの電力線に伝搬される各種雑音信号は、相互に独立した位相情報を有するため、三相の各電力線から受け取られる3つの交流信号に基づいて絶縁破壊信号の検知を行うことによって、高精度に絶縁破壊の発生を検知することができる。
【0128】
なお、上記説明においては、センサー部101は容量性センサーであってもよいと説明したが、例えば、電力線に伝搬する交流信号を少なくとも受け取ることができるセンサーであれば容量性センサーに限定されない。例えば、電力線に対して導電性を保った状態でセンサー101が取り付けられてもよい。係る場合、絶縁材が介在しないため、センサー101が受け取った交流信号に微細な信号が含まれているため、より高精度に絶縁破壊信号を検出することができる効果を奏する。
【0129】
なお、上記説明においては、二次側電力系統20の電力線から交流信号をセンサー101が受け取り、センサー101が受け取った交流信号から電力周波数の周波数成分を除去するものとして説明したが、例えば、当該交流信号から電力周波数の周波数成分を除去せずに、抽出部を用いて交流信号から抽出される第1位相の情報を用いることによって、絶縁破壊信号の有無を判定してもよい。
【0130】
すなわち、検知装置100は、一次側電力系統10における所定周波数の高電圧電力が変電装置30によって電圧変換された低電圧電力を受け取る二次側電力系統20における電力線から交流信号を受け取るセンサー部101と、センサー部101が受け取った交流信号に基づき、交流信号の信号レベルの絶対値が最大となる少なくとも一の第1位相の情報を少なくとも含む位相情報を抽出するフィルタ部102と、交流信号において、第1所定値以上の振幅を有し、さらに、第1位相に同期した信号を検知したとき、一次側電力系統10における電力線において絶縁破壊が生じたことを示す検知信号を出力する検知部103と、を備えてもよい。
【0131】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。以下、各変形例について説明する。
【0132】
(変形例1)
実施形態1の説明においては、一次側電力系統10における電力線において絶縁破壊が生じたことを、二次側電力系統20における電力線からセンサー部101が受け取った交流信号のみに基づいて検知するものとして説明したが、例えば、図10および図11に示すように一次側電力系統10における高電圧電力が高電圧三相交流電力である場合においては、二次側電力系統20における電力線を伝搬する交流信号と、さらに、一次側電力系統10の三相それぞれの電力線における交流信号のベクトル和に対応する第3交流信号とに基づいて、絶縁破壊信号が発生したか否かが検知されてもよい。
【0133】
すなわち、実施形態1において、検知装置100は、絶縁破壊の検知作業の安全性等の確保のため、二次側電力系統20の電力線に対して接続されるものとして説明したが、一次側電力系統10の三相それぞれの電力線における交流信号のベクトル和は、絶縁破壊、地絡または漏電などの異常が発生していない状態ではゼロであって平衡状態が保たれているため、当該ベクトル和に基づく絶縁破壊の検知作業は、高圧線で発生する絶縁破壊にセンサーを接触または接近させて検出する場合に比べて安全性等が高い。
【0134】
本変形例1においては、三相のうち少なくとも一の相における電力線において絶縁破壊が生じた場合、当該絶縁破壊に基づいて生じる放電現象が上記の平衡状態を乱すこと、及び、絶縁破壊は交流信号の絶対値が最大のときに生じるために三相それぞれにおける絶縁破壊は互いに相殺しないことに鑑み、上記の平衡状態の乱れを示す信号を検知することで、絶縁破壊を検知するものであってもよい。
【0135】
図12は、変形例1における送配電システムに含まれる一次側電力系統10および一次側検知装置の機能的な構成の一例を示すブロック図である。図13は、変形例1における一次側電力系統10および一次側検知装置の構成の他の例を示すブロック図である。
【0136】
以下、図12および図13を参照して、変形例1に係る一次側電力系統10および一次側検知装置1200の機能的な構成および動作について説明する。なお、図12および図13においては、説明の便宜のため、二次側電力系統20の構成図、および、変電装置30のうち二次側電力系統20に対応するインダクタンスの構成図は省略する。
【0137】
図12において、一次側電力系統10における高電圧電力は高電圧三相交流電力であり、高圧の三相交流電力が変電装置30に入力され、一次側電力系統10における三相は、例えば、R相、S相、T相であってもよい。係る場合、変電装置30におけるインダクタンスの結線形態はスター型、V型、または、デルタ型であってもよく、当該インダクタンスの結線形態は、本開示の範囲を限定しない。
【0138】
図12において、一次側検知装置1200は、一次側電力系統10における三相それぞれの電力線における交流信号のベクトル和に対応する第3交流信号を受け取ってもよい。第3交流信号は、一次側電力系統10における三相それぞれの電力線における交流信号のベクトル和に対応する交流信号であってもよい。例えば、第3交流信号は、一次側電力系統10における三相それぞれの電力線から容量性結合または誘導性結合によって伝搬される信号のベクトル和であってもよい。例えば、第3交流信号は、一次側電力系統10における三相それぞれの電力線に伝搬される交流信号のベクトル和を容量性結合によって受け取られる交流信号であってもよい。例えば、後段において詳述するように、第3交流信号は、三相それぞれの電力線における交流信号のベクトル和に基づいて誘導起電される交流信号であってもよい。すなわち、第3交流信号は、三相それぞれの電力線における交流信号のベクトル和における振幅情報および位相情報を示す信号であってもよい。なお、第3交流信号は、零相信号と呼称されてもよい。零相信号は、零相電流であってもよく、または、零相電圧であってもよい。
【0139】
三相それぞれの電力線における交流信号のベクトル和に対応する第3交流信号は、三相それぞれの電力線において、絶縁破壊、漏電などの異常が発生していない場合においてはゼロであって、平衡状態が保たれる。一方、三相のうち少なくとも一の相の電力線において絶縁破壊または漏電などの異常が発生した場合、第3交流信号は値を有することになる。上述した通り、各相の電力線を伝搬する交流信号の振幅の絶対値が最大となるタイミングにおいて絶縁破壊信号は発生し得るため、例えば、三相すべてにおいて絶縁破壊が発生した場合であっても、第3交流信号に現れる複数の絶縁破壊信号は互いに相殺することがない。そのため、第3交流信号に基づいて、三相の電力線における絶縁破壊を検知することが可能となる。
【0140】
例えば、図13に示すように、変電装置30におけるインダクタンスの結線形態がスター型である場合においては、一次側検知装置1200は、中性点とグランドとを接続するグランド線上に伝搬される信号に基づいて第3交流信号を受け取ってもよい。グランド線上に伝搬される信号は、三相それぞれの電力線上を伝搬する交流信号のベクトル和であって、本開示において一次側ノイズ信号と呼称されてもよい。
【0141】
図13において、一次側ノイズ信号は、例えば、一次側電力系統10において発生するノイズ信号を含み、一次側電力系統10における電力線において絶縁破壊が生じた場合、絶縁破壊に起因して発生するインパルス信号が重畳され得る。一次側検知装置1200は、一次側ノイズ信号に基づき、例えば容量性結合を介して第3交流信号を受け取ってもよい。一次側検知装置1200は、第3交流信号に含まれるインパルス信号を検知してもよい。なお、図13に示す中性点の接地方式は一例であり、中性点の接地方式は本開示の範囲を限定しない。
【0142】
図14は、変形例1における一次側検知装置の機能的な構成の一例を示すブロック図である。図14に示すように、一次側検知装置1200aは、一次側センサー部1201、および、一次側検知部1202を有してもよい。例えば、図13に示すように、一次側センサー部1201はグランド線に接続され、容量性結合または誘導性結合によって、第3交流信号を受け取る機能を有してもよい。一次側センサー部1201は、例えば、センサー素子を有する容量性センサーであってもよい。
【0143】
具体的には、例えば、容量性センサーは、グランド線に対して絶縁材質を介してセンサー素子が接続されることによって形成されるセンサーであってもよい。係る場合、グランド線とセンサー素子との間に当該絶縁材質が有する誘電率に応じた容量性結合が形成され、容量性センサーは、一次側ノイズ信号に基づき、容量性結合を介して第3交流信号を受け取ってもよい。一次側センサー部1201が受け取る第3交流信号には、上述したように、一次側電力系統10において絶縁破壊が生じた場合における絶縁破壊信号が含まれ得る。
【0144】
なお、当該絶縁材質は、センサー素子に対して設ける絶縁被膜、および、グランド線の絶縁被膜のうち少なくとも一方を含んでもよい。グランド線の絶縁被膜を用いる場合、センサー素子の表面に導電性を持たせることによってグランド線との密着性を保ち、良好な信号取得が可能となる。一方、センサー素子に対して設ける絶縁被膜を用いる場合、センサー素子を導電性のあるグランド線に対して取り付け可能である。なお、絶縁被膜は、例えば、樹脂、陶器などの絶縁材であってもよい。
【0145】
図14において、一次側検知部1202は、一次側センサー部1201から第3交流信号を受け取り、第3交流信号において絶縁破壊信号を検知したとき、一次側電力系統における電力線において絶縁破壊が生じたことを示す一次側検知信号を出力してもよい。具体的には、例えば、一次側検知部1202は、第3交流信号において、予め設定された第6所定値以上の振幅を有し、且つ、所定の位相間隔で定期的に発生する信号を検知したとき、検知された信号は、一次側電力系統10における電力線における絶縁破壊によって生じた絶縁破壊信号であると判定してもよい。
【0146】
第6所定値の具体的な数値は、絶縁破壊信号と、その他のノイズ信号とを区別するための閾値情報であって、予め実行される計測または実験等によって一意に定められてもよい。
【0147】
また、絶縁破壊は、一次側電力系統の電力線の瞬時電圧の絶対値が大きいときに、インパルス性の高い電流を伴って発生する現象であるため、例えば、三相のうち一の相において絶縁破壊が生じた場合、絶縁破壊信号は180度の位相間隔で定期的に発生する。また、三相のうち二つの相において絶縁破壊信号が生じた場合、絶縁破壊信号は60度および120度の位相間隔で定期的に発生する。また、三相すべてにおいて絶縁破壊信号が生じた場合、絶縁破壊信号は60度の位相間隔で定期的に発生する。
【0148】
このように、絶縁破壊信号は所定の位相間隔で定期的に発生するため、一次側検知部1202は、第6所定値以上の振幅を有し、且つ、所定の位相間隔で定期的に発生する信号を検知したとき、絶縁破壊が発生したと判定してもよい。なお、所定の位相間隔で定期的に発生する信号を検知する方法は公知であるため、詳細な説明を省略する。
【0149】
なお、一次側検知部1202は、電気信号によって各部を制御する制御回路(control circuitry)であってもよい。具体的には、一次側検知部1202は、例えば、FPGA(Field Programmable Gate Array)等の集積回路によって構成されてもよい。また、一次側検知部1202は、例えば、CPU(Central Processing Unit)またはMPU(Micro Processing Unit)などにより実現されてもよい。
【0150】
一次側検知部1202から出力された一次側検知信号は、検知部103が受け取ってもよい。例えば、検知部103は、一次側検知装置1200から一次側検知信号を受け取り、且つ、第1相ノイズ信号および第2相ノイズ信号のうち少なくとも一のノイズ信号において第1所定値以上の振幅を有する信号を検知したとき、検知信号を出力してもよい。
【0151】
すなわち、検知部103は、一次側検知装置1200において絶縁破壊信号を検知した場合であって、且つ、第1相ノイズ信号および第2相ノイズ信号のうち少なくとも一のノイズ信号において第1所定値以上の振幅を有する信号を検知したとき、一次側電力系統10において絶縁破壊が生じたと判定してもよい。なお、図10および図11に係る説明と重複する構成および機能については、詳細な説明を省略する。
【0152】
このように、本変形例1に係る検知装置100は、一次側電力系統10における三相それぞれの電力線における交流信号のベクトル和に対応する第3交流信号を受け取り、第3交流信号において第6所定値以上の振幅を有し、且つ、所定の位相間隔で定期的に発生する信号を検知したとき、一次側電力系統10における電力線において絶縁破壊が生じたことを示す一次側検知信号を出力する一次側検知装置1200を、さらに備え、検知部103は、一次側検知装置1200から一次側検知信号を受け取り、且つ、第1相ノイズ信号および第2相ノイズ信号のうち少なくとも一のノイズ信号において第1所定値以上の振幅を有する信号を検知したとき、検知信号を出力してもよい。
【0153】
これにより、高電圧電力を低電圧電力に変換する送配電システムにおいて、低電圧側の電力系統における交流信号に基づいて絶縁破壊の発生を高精度に検知できることに寄与することができる。
【0154】
なお、一次側検知装置1200は、図15に示すように、さらに、一次側フィルタ部1203を有してもよい。図15は、変形例1における一次側検知装置の機能的な構成の他の例を示すブロック図である。一次側フィルタ部1203は、変電装置30におけるコイル間およびトランスの筐体などの間で生じる容量性結合に基づいて一次側電力系統10に伝搬され得る、二次側電力系統20に接続された電気設備が発する雑音信号の周波数成分を除去してもよい。
【0155】
すなわち、係る場合において、二次側電力系統20は、一又は複数の電気設備に対して送電し、一次側検知装置1200は、さらに、一次側フィルタ部1203を有し、一次側フィルタ部1203は、電気設備に基づく雑音信号の周波数成分を除去し、一次側検知部1202は、第3交流信号から、電気設備に基づく雑音信号の周波数成分が除去された信号において第6所定値以上の振幅を有し、且つ、所定の位相間隔で定期的に発生する信号を検知したとき、一次側電力系統10における電力線において絶縁破壊が生じたことを示す一次側検知信号を出力してもよい。
【0156】
これにより、一次側検知装置1200においても、第3交流信号に重畳される絶縁破壊信号を高精度に検知することができる。
【0157】
なお、上記の説明においては、図13に示すように、インダクタンスの結線形態がスター型である場合を例として説明したが、この限りではなく、インダクタンスの結線形態は本開示の範囲を限定しない。
【0158】
図16は、変形例1における一次側電力系統および一次側検知装置の機能的な具体的構成の一例を示すブロック図である。例えば、図16に示すように、第3交流信号は、三相それぞれの電力線を被覆するシールド1600を結合した導体上に伝搬される信号のベクトル和であってもよい。当該第3交流信号に基づき、上述したとおり、三相のうち少なくとも一の相において生じた絶縁破壊が検知されてもよい。
【0159】
また、上述したとおり、第3交流信号は、三相それぞれの電力線における交流信号のベクトル和に基づいて誘導起電される交流信号であってもよい。図17は、変形例1における一次側電力系統および一次側検知装置の機能的な具体的構成の他の例を示すブロック図である。
【0160】
図17に示すように、三相それぞれの電力線を電流センサー1700に通過させ、一次側検知装置1200は、電流センサー1700において誘導起電された電流を第3交流信号として受け取ってもよい。電流センサー1700は、例えば、磁気コア、鉄心、コイル等を含むカレントトランスが用いられてもよい。絶縁破壊などに起因して、三相それぞれの電力線における交流信号のベクトル和がゼロではない場合、電流センサー1700において誘導起電された電流が生じるため、一次側検知装置1200は、当該電流を第3交流信号として受け取ってもよい。電流センサー1700は、例えば、漏電検知用の零相変流器(Zero phase Current Transformer:ZCT)であってもよい。係る場合、既設のセンサーに追加して部分放電の検出が行えるようになり、既設変電設備への導入が容易になる効果を奏する。なお、電流センサー1700に関する詳細な説明は公知技術であるため省略する。また、電流センサー1700の具体的な構成は、本開示の範囲を限定しない。
【0161】
なお、図16および図17においては、説明の便宜のため、二次側電力系統20の構成図、および、変電装置30のうち二次側電力系統20に対応するインダクタンスの構成図は省略される。また、図16および図17に示す変電装置30におけるインダクタンスの結線形態は一例であり、一次側電力系統10と二次側電力系統20との接続形態は、本開示の範囲を限定しない。
【0162】
なお、本変形例1における上記説明においては、二次側電力系統20における電力線を伝搬する交流信号と、一次側電力系統10における第3交流信号とに基づいて、絶縁破壊信号が発生したか否かが検知されるものとして説明したが、例えば、一次側電力系統10における第3交流信号のみに基づいて、絶縁破壊信号が発生したか否かが検知されてもよい。
【0163】
すなわち、一次側電力系統における所定周波数の高電圧三相交流電力が変電装置によって電圧変換される変電システムにおける一次側検知装置であって、一次側電力系統における三相それぞれの電力線における交流信号のベクトル和に対応する第3交流信号を受け取る一次側センサー部と、一次側ノイズ信号において第6所定値以上の振幅を有し、且つ、所定の位相間隔で定期的に発生する信号を検知したとき、一次側電力系統における電力線において絶縁破壊が生じたことを示す一次側検知信号を出力する一次側検知部と、を備える検知装置であってもよい。
【0164】
これにより、一次側検知装置1200においても、一次側ノイズ信号に重畳される絶縁破壊信号を簡易に検知することができる。
【0165】
なお、上記の説明において、各機能に関する公知技術の説明は省略している。例えば、本開示における交流電力回路において、回路素子などが適宜挿入されてもよい。
【0166】
なお、以上の説明において、A、BおよびCのうち少なくとも1つ(at least one of)が含まれるとは、A、B、Cのうち1つまたは2つ以上(one or two or more of)の組み合わせでもよいという意味であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0167】
本発明に係る検知装置は、送配電システムにおける絶縁破壊を検出する技術全般に有効である。
【符号の説明】
【0168】
1 送配電システム
10 一次側電力系統
20 二次側電力系統
30 変電装置
100 検知装置
101 センサー部
102 フィルタ部
103 検知部
600 抽出部
1200 一次側検知装置
1201 一次側センサー部
1202 一次側検知部
1203 一次側フィルタ部
1600 シールド
1700 電流センサー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図16
図17