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特開2022-97393分塊圧延材の製造方法、分塊圧延材及び鋼管の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022097393
(43)【公開日】2022-06-30
(54)【発明の名称】分塊圧延材の製造方法、分塊圧延材及び鋼管の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B21B 1/02 20060101AFI20220623BHJP
   B21B 1/26 20060101ALI20220623BHJP
   B21B 3/02 20060101ALI20220623BHJP
【FI】
B21B1/02 E
B21B1/26 A
B21B3/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021190237
(22)【出願日】2021-11-24
(31)【優先権主張番号】P 2020209953
(32)【優先日】2020-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100184859
【弁理士】
【氏名又は名称】磯村 哲朗
(74)【代理人】
【識別番号】100123386
【弁理士】
【氏名又は名称】熊坂 晃
(74)【代理人】
【識別番号】100196667
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100130834
【弁理士】
【氏名又は名称】森 和弘
(72)【発明者】
【氏名】赤池 淳
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 大祐
(72)【発明者】
【氏名】勝村 龍郎
【テーマコード(参考)】
4E002
【Fターム(参考)】
4E002AA07
4E002AB02
4E002BB01
4E002BC01
4E002BC05
4E002CA08
4E002CA09
4E002CB04
(57)【要約】
【課題】分塊圧延材に疵が形成されることを抑制する技術を提供する。
【解決手段】圧延方向に垂直な断面形状が矩形である被圧延材Sを1対の孔型圧延ロール間に通すことで圧延して分塊圧延材を製造する分塊圧延材の製造方法であって、後半パス中50%以上のパスの圧下において、以下の式(1)及び/又は式(2)を満たし、且つ式(3)を満たすようにする。圧延では、スラブを800℃以上の加熱温度に加熱し、1パス当たりの前記圧下率を70%以下としてよい。
1.40≦被圧延材長短比 ・・・式(1)
20%≦圧下率≦35%、又は圧下率≦10% ・・・式(2)
0.70≦フランジ比≦1.00 ・・・式(3)
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧延方向に垂直な断面形状が矩形である被圧延材を1対の孔型圧延ロール間に通すことで圧延して分塊圧延材を製造する方法であって、
全パス数を2Nパス又は2N+1パスとした場合(N:0以上の整数)、第N+1パス以降、最終パスまでの後半パス中50%以上のパスの圧下において、以下の式(1)及び/又は式(2)を満たし、且つ式(3)を満たす、分塊圧延材の製造方法。
1.40≦被圧延材長短比 ・・・式(1)
20%≦圧下率≦35%、又は圧下率≦10% ・・・式(2)
0.70≦フランジ比≦1.00 ・・・式(3)
ここで、式(1)で、前記被圧延材長短比は、前記矩形における第1辺と、該第1辺に隣接し、第1パスの圧延開始前における長さが前記第1辺の長さ以上である第2辺とに関し、各パスの圧延後における、前記第2辺の長さ(mm)/前記第1辺の長さ(mm)である。
式(2)で、圧下率(%)は、各パスにおいて、
((圧延前の前記第1辺の長さ(mm)-圧延後の前記第1辺の長さ(mm))/圧延前の前記第1辺の長さ(mm))×100、及び
((圧延前の前記第2辺の長さ(mm)-圧延後の前記第2辺の長さ(mm))/圧延前の前記第2辺の長さ(mm))×100のうち、より大きな値である。
但し、前記式(2)において、連続する2パス以上で、圧下率≦10%となる場合は含まない。
式(3)で、フランジ比は、第1辺及び第2辺の長さのうち、各パス前後において長さが縮小する方のパス後辺長Aと、
前記孔型圧延ロールの外表面に形成され、前記被圧延材を支持可能であって孔状部を形成するフランジの先端部から前記被圧延材が当接可能な前記孔状部最深部までの長さであるフランジ長さXとの比について、2X/Aである。
【請求項2】
前記圧延では、前記被圧延材を、800℃以上の加熱温度に加熱した後、前記1対の孔型圧延ロール間に通し、
全パスにおける1パス当たりの前記圧下率を70%以下とする、請求項1に記載の分塊圧延材の製造方法。
【請求項3】
前記被圧延材として、Crを5.0質量%以上含有するCr鋼を用いる、請求項1又は2に記載の分塊圧延材の製造方法。
【請求項4】
漏洩磁束探傷により測定される疵深さが3.0mm以上である表面疵が、圧延方向に100個/m以下である、分塊圧延材。
【請求項5】
請求項1~3のいずれかに記載の分塊圧延材の製造方法により得られた分塊圧延材を用いて鋼管を製造する、鋼管の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、継目無鋼管素材、棒鋼素材、線材素材等として用いることが可能な、高耐食性が求められる高Cr鋼やその他の高合金鋼といった難加工鋼材等に分塊圧延を施す技術に関し、特には、得られる分塊圧延材表面に疵が発生することを抑制する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の分塊圧延工程においては、まず、スラブ等の被圧延材を加熱炉で800℃以上1300℃以下に加熱する。次に、上下にセットされ所定の隙間がある分塊圧延機の孔型形状の圧延ロールの間を被圧延材が通り抜けて圧延され、その後被圧延材は周方向に90度回転させられる。
被圧延材を圧延方向に対して反対方向に動かし、ロールも逆回転させるリバース圧延を繰り返し行い、所定の断面形状を有するブルーム等の分塊圧延材を得られるまで圧延する。
リバース圧延では、少ないものは5~8パス程度で所望の断面寸法を得ることが可能であるが、小さな断面寸法を得るまで圧延する場合は、15パス以上のリバース圧延を行う必要がある。
【0003】
圧延が進むにつれ、被圧延材の温度は低下する。炭素鋼等の熱間加工性に優れる鋼材については、一度の加熱で所望の断面寸法を得るまで圧延することが可能である。しかしながら、高Cr鋼やその他の高合金鋼等の熱間加工性が悪い鋼材(以下、難加工鋼材とも記す。)については、得られる分塊圧延材表面に疵が形成され、表面性状を悪化させることがある。このとき、表面、特に角部付近に疵が形成されることで、手入れ時間が増加したり、歩留まりが悪化したりすることになる。
【0004】
そこで、分塊圧延において、分塊圧延材表面に疵が形成されないようにすることを目的に、熱間加工性を向上させるための成分組成が提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。
また、加工温度領域を高温化させることで、熱間強度を下げ、熱間加工性を向上させる方法が提案されている(例えば、特許文献3参照)。また、予加工工程として鍛造工程を含むようにした熱間加工方法も提案されている(例えば、特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭61-201727号公報
【特許文献2】特開2005-205454号公報
【特許文献3】特開平1-262048号公報
【特許文献4】特開2002-194431号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1や特許文献2に記載の技術のように、熱間加工性を向上させるためのMn、Nb、B等の成分の添加は、コストを増加させるという問題があるばかりか、圧延後の被加工材の表面品質は十分とは言い難い。
【0007】
また、特許文献3に記載されているような高温領域での加工については、高温領域においてフェライト分率が高い二相ステンレス鋼やフェライト系ステンレス鋼等は、高温にすると熱間強度が著しく低下することで、炉内で垂れが発生したり、炉材が鋼材に食い込むことで疵が発生したりする。
また、フェライト系ステンレス鋼は、熱間加工性が高いため、疵は発生しにくいが、一方で、二相ステンレス鋼は、熱間加工温度領域でフェライト相とオーステナイト相の強度が異なる相が存在することとなり、一般的に熱間加工性は低く、疵は発生しやすい。そのため、二相ステンレス鋼等においては、加熱温度を高くすることができず、熱間加工性に劣る材質には適用できないという問題がある。
【0008】
また、特許文献4に記載の技術のように、予加工工程として鍛造工程を含むことで、工数が増加し、コストが増加するという問題がある。
【0009】
このように、加工温度を調整したり、鍛造工程を含むようにしたりせずとも、得られる分塊圧延材に疵が形成されることを抑制できる技術の確立が希求されていた。
【0010】
本発明は従来技術の問題点を解決するべくなされたものであり、分塊圧延材に疵が形成されることを抑制する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、孔型圧延ロールのフランジ長さ、被圧延材長短比、圧下率の関係に着目し、得られる分塊圧延材に疵が形成されることを抑制する圧下パターンを知見した。
【0012】
具体的には、疵は、その疵が発生する部位付近に引張応力が作用することで形成される。圧延ロールによって厚さ方向に圧縮された鋼板等の被圧延材は長さ方向だけでなく、幅方向にも延伸する。
被圧延材が延伸する際、被圧延材の圧延ロールと接触している箇所と、圧延ロールと接触していない被圧延材中心とでは、圧延ロールとの摩擦の程度により延伸する量が異なり、被圧延材の中心側の方が大きく延伸する。
そのため、圧延ロールとの接触面に対して被圧延材は山型に変形し、この山型になる変形をバルジング(以降、バルジ変形)と呼ぶ。バルジ変形は、ロール径、圧下率、被圧延材の厚みや幅、摩擦抵抗等の大きさによって変化する。
【0013】
被圧延材の厚みが小さい時は、厚みの中心にバルジ変形のトップ(変形が最も大きくなる部位)が形成される。
【0014】
一方、被圧延材の厚みが大きく、圧下率が小さい時は、厚みの中心ではなく、被圧延材の幅方向の両端部にバルジ変形が生じる。このようなバルジング形状をダブルバルジと呼ぶ。
【0015】
分塊圧延においては、このダブルバルジが形成され、圧延の際にバルジングが発生する部位(バルジング部)が、圧延ロールに先に接触して圧延されるため、引張応力が作用し、疵が形成されると考えられる。
特に、バルジング部が被圧延材の角部に近い位置で生じた場合、バルジング部の圧延により変形する部位が自由変形部となり、周囲の拘束が少ないことから多軸引張が生じやすいため、角部に疵が形成される。
【0016】
本発明者らは、このような分塊圧延における問題点に着目し、フランジ比、被圧延材長短比、圧下率を制御することで、疵が形成されやすい被圧延材の角部等に多軸引張を生じさせず、疵を低減させた分塊圧延材を得られることを知見した。
【0017】
本発明はかかる知見に基づいて、さらに検討を加えて完成されたものであり、本発明の要旨はつぎのとおりである。
[1]圧延方向に垂直な断面形状が矩形である被圧延材を1対の孔型圧延ロール間に通すことで圧延して分塊圧延材を製造する方法であって、
全パス数を2Nパス又は2N+1パスとした場合(N:0以上の整数)、第N+1パス以降、最終パスまでの後半パス中50%以上のパスの圧下において、以下の式(1)及び/又は式(2)を満たし、且つ式(3)を満たす、分塊圧延材の製造方法。
1.40≦被圧延材長短比 ・・・式(1)
20%≦圧下率≦35%、又は圧下率≦10% ・・・式(2)
0.70≦フランジ比≦1.00 ・・・式(3)
ここで、式(1)で、前記被圧延材長短比は、前記矩形における第1辺と、該第1辺に隣接し、第1パスの圧延開始前における長さが前記第1辺の長さ以上である第2辺とに関し、各パスの圧延後における、前記第2辺の長さ(mm)/前記第1辺の長さ(mm)である。
式(2)で、圧下率(%)は、各パスにおいて、
((圧延前の前記第1辺の長さ(mm)-圧延後の前記第1辺の長さ(mm))/圧延前の前記第1辺の長さ(mm))×100、及び
((圧延前の前記第2辺の長さ(mm)-圧延後の前記第2辺の長さ(mm))/圧延前の前記第2辺の長さ(mm))×100のうち、より大きな値である。
但し、前記式(2)において、連続する2パス以上で、圧下率≦10%となる場合は含まない。
式(3)で、フランジ比は、第1辺及び第2辺の長さのうち、各パス前後において長さが縮小する方のパス後辺長Aと、
前記孔型圧延ロールの外表面に形成され、前記被圧延材を支持可能であって孔状部を形成するフランジの先端部から前記被圧延材が当接可能な前記孔状部最深部までの長さであるフランジ長さXとの比について、2X/Aである。
[2]前記圧延では、前記被圧延材を、800℃以上の加熱温度に加熱した後、前記1対の孔型圧延ロール間に通し、
全パスにおける1パス当たりの前記圧下率を70%以下とする、前記[1]に記載の分塊圧延材の製造方法。
[3]前記被圧延材として、Crを5.0質量%以上含有するCr鋼を用いる、前記[1]又は[2]に記載の分塊圧延材の製造方法。
[4]漏洩磁束探傷により測定される疵深さが3.0mm以上である表面疵が、圧延方向に100個/m以下である、分塊圧延材。
[5]前記[1]~[3]のいずれかに記載の分塊圧延材の製造方法により得られた分塊圧延材を用いて鋼管を製造する、鋼管の製造方法。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、分塊圧延材に疵が形成されることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、被圧延材(スラブ)の断面形状を説明するための図である。
図2図2は、圧延ロールにおけるフランジ長さを説明するための図である。
図3図3は、分塊圧延機の概要を説明するための図である。
図4図4は、FEMに使用した応力ひずみ曲線の一例を示す。
図5図5は、本発明の範囲外(比較例)となる圧延条件により圧延した場合の解析結果(相当塑性ひずみ、延性破壊基準、応力三軸度)を示すグラフである。
図6図6は、本発明例の圧延条件により圧延した場合の解析結果を示すグラフである。
図7図7は、応力三軸度τと応力状態を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の分塊圧延材の製造方法は、圧延方向に垂直な断面形状が矩形である被圧延材を1対の孔型圧延ロール間に通すことで圧延して分塊圧延材を製造する分塊圧延材の製造方法であって、全パス数を2Nパス又は2N+1パスとした場合(N:0以上の整数)、第N+1パス以降、最終パスまでの後半パス中50%以上のパスの圧下において、以下の式(1)及び/又は式(2)を満たし、且つ式(3)を満たす、分塊圧延材の製造方法である。
1.40≦被圧延材長短比 ・・・式(1)
20%≦圧下率≦35%、又は圧下率≦10% ・・・式(2)
0.70≦フランジ比≦1.00 ・・・式(3)
ここで、式(1)で、被圧延材長短比は、矩形における第1辺と、該第1辺に隣接し、第1パスの圧延開始前における長さが第1辺の長さ以上である第2辺とに関し、各パスの圧延後における、第2辺の長さ(mm)/第1辺の長さ(mm)である。
式(2)で、圧下率(%)は、各パスにおいて、
((圧延前の第1辺の長さ(mm)-圧延後の第1辺の長さ(mm))/圧延前の第1辺の長さ(mm))×100、及び
((圧延前の第2辺の長さ(mm)-圧延後の第2辺の長さ(mm))/圧延前の第2辺の長さ(mm))×100のうち、より大きな値である。
但し、式(2)において、連続する2パス以上で、圧下率≦10%となる場合は含まない。
式(3)で、フランジ比は、第1辺及び第2辺の長さのうち、各パス前後において長さが縮小する方のパス後辺長Aと、孔型圧延ロールの外表面に形成され、被圧延材を支持可能であって孔状部を形成するフランジの先端部から被圧延材が当接可能な孔状部最深部までの長さであるフランジ長さXとの比について、2X/Aである。
本発明で、分塊圧延を施す被圧延材は、鋼塊(インゴット)だけでなく、鍛造によって得られるビレット、ブルーム、スラブなどの鋳片も含む。
【0021】
図1は、本発明で用いるスラブ等の被圧延材Sの断面形状を説明するための図である。図2は、圧延ロールにおけるフランジ長さを説明するための図である。
図1に示すように、被圧延材Sは圧延方向垂直断面視で、形状が矩形であり、第1辺(短辺)と、第1辺に隣接し、第1パスの圧延開始前における長さが第1辺の長さ以上である第2辺(長辺)を有する。
そして、対向する孔型圧延ロールRの外表面に設けられ、被圧延材Sを支持可能であるフランジにより形成される孔状部に被圧延材Sを挿入させながら、被圧延材Sに対して分塊圧延がなされる。図2中、符号Xは、フランジの先端部から被圧延材Sが当接可能な孔状部最深部までの長さであるフランジ長さのことを指す。
【0022】
図3は、分塊圧延機を説明するための図である。
被圧延材Sは、加熱炉で800℃以上に加熱することができ、その後、図3(a)に示す分塊圧延機Bが有する1対の孔型圧延ロールR間を通り抜けることで、圧延方向に圧延される。その後、被圧延材Sは、周方向に90度回転させられ、上記の圧延方向に対して逆方向に移動しながら再度圧延される。このように、被圧延材Sが孔型圧延ロールRを通り抜けると、その度にロールを逆回転させながらリバース圧延を繰り返し行い、被圧延材Sが所定の断面形状の分塊圧延材(ブルーム等)になるまで圧延する。
ここで、第1辺、第2辺は、周方向に90度回転させても、各パス後において夫々同じ部位を指す。第2辺の第1パスの圧延開始前における長さが前記第1辺の長さ以上であればよく、第1パスより後の長さにおいては、第2辺の長さが第1辺の長さ以下となる場合もある。
【0023】
ロールRは、詳細には、図3(b)に示すように、ロール幅方向(圧延方向の垂直方向)に形状の異なる複数の孔を有する。各パスでの第1辺と第2辺の長さ比に応じて、被圧延材Sを通す孔を適宜選択することができる。
【0024】
次に、本発明で特定する式(1)、式(2)、式(3)の説明をする前に、本発明の圧下パターンにより、分塊圧延材の疵の形成が抑制されていることを調べた評価方法及び結果を説明する。
以下の表1と表2は、評価した圧延条件を示す。
表1は本発明の範囲外となる比較例の圧延条件を示し、表2は本発明の範囲内となる本発明例の圧延条件を示す。
また、フランジ比は、表1の圧延条件ではいずれのパスにおいても0.6であり、表2の圧延条件ではいずれのパスにおいても0.9であった。被圧延材としては、SUS329J1を用いた。また、その他採用した条件は、表3に示す通りである。
【0025】
【表1】
【0026】
【表2】
【0027】
被圧延材の初期断面寸法は長辺710mm×短辺275mmである。
加熱炉で1100℃まで加熱した被圧延材を表1又は表2に示す圧延条件で圧延した。圧延が終わった後の分塊圧延材に対して、フェルスター社製の漏洩磁束探傷機を用いて、漏洩磁束探傷試験法(Magnetic Leakage Flux Testing method、以下、MLFTとも記す。)により、表面の疵の深さを非破壊検査し、3.0mm以上の疵深さを圧延方向に測定し、個数をカウントし、評価項目とした。
それぞれのMLFTによる評価結果は、表1の条件では115.1個/mであり、表2の条件では15.6個/mであった。これより、表1に示す条件に対し、表2に示す条件により圧延をすることで、疵の形成が抑制されることが認められた。MLFTによる疵個数が多いほど、分塊圧延材表面の疵を除去するためのグラインダー等による手入れをする時間が増加し、歩留まりも悪くなる。
【0028】
本発明では、歩留まりを悪くしないように、分塊圧延材の表面において、漏洩磁束探傷により測定される疵深さが3.0mm以上である疵が、圧延方向に100個/m以下とする。また、3.0mm以上の疵深さは30個/m以下であることが好ましい。
【0029】
上記のように、表1に示す圧延条件に比べ、表2に示す圧延条件で圧延を行うことにより、疵の発生を低減することができた。
【0030】
次に、疵の形成が抑制された要因について調査した。
各種圧下パターンを有限要素法(以下、FEMとも記す。)で解析した。疵の評価としては、応力三軸度と相当塑性ひずみの関係から算出される、延性破壊基準Dを元に評価した。FEMは、Abaqus/Explicit 2017を使用した。延性破壊基準Dとは、応力とひずみ履歴を用いた積分型の延性破壊条件式に基づき、延性破壊の進行度を示すものである。延性破壊基準Dは以下の式によって求めることができる。
【0031】
【数1】
【0032】
ここで、Dは延性破壊基準、εplは相当塑性ひずみ、ε plは延性破壊開始時の相当塑性ひずみ(延性開始ひずみ)、τは応力三軸度(静水圧応力/Misesの相当応力)である。
延性破壊基準Dは、破壊開始ひずみε plに対するひずみ増分dεplの割合を積算したパラメータであり、D=1となった時に延性破壊が開始し、疵が形成されることを意味する。延性破壊開始時の相当塑性ひずみε plは、応力三軸度τに依存して決まるパラメータである。
【0033】
被圧延材としては、難加工材である二相ステンレス鋼SUS329J1を用いた。
表1、表2に示す圧延条件以外の条件は、表3と図4に示す。
【0034】
【表3】
【0035】
表1に示す圧延条件(比較例の条件)での解析結果において、最初にD=1となった要素に着目した。その要素について、横軸に時間(sec)をとり、縦軸に、延性破壊基準Dと、それに関する応力三軸度τと相当塑性ひずみεplの値をとったグラフを図5に示す。
これに対し、図6では、表2に示す圧延条件(本発明例の条件)に基づき、その他は、図5に示す比較例の条件と同様に評価した結果を示す。図5、6では、時間が経過するほど圧延が進んでいることを表す。具体的には、図5、6中、相当塑性ひずみを示す実線は、時間と共に階段状に増加しており、段が上がると圧延が次パスに移行していることを示す。
【0036】
まず、図5及び図6の夫々において、延性破壊基準Dに着目する。比較例での条件ではD=1に到達し、破壊が起きていることが分かる。一方、本発明例での条件ではD=1に到達しておらず、破壊が起きていない。このことから、本発明例での条件は、破壊、すなわち疵の形成が抑制される条件であると言える。
【0037】
次に、式(4)より、延性破壊基準Dに関係する相当塑性ひずみεplに着目する。
図5及び図6に示す条件では、圧下パターンは異なるが、初期寸法と圧延後寸法が同一であるため、最終的な相当塑性ひずみεplはほぼ同様である。そのため、比較例の条件と本発明例の条件の間で、延性破壊基準D値に差が付いた要因は、応力三軸度τに由来すると考えられる。
【0038】
次に、その応力三軸度τについて着目する。
比較例の条件では、応力三軸度τが全体的に引張応力側に存在する。ここで図7を参照する。図7は、応力三軸度τと応力状態を説明するための図である。図7中のグラフはここでの評価で用いた値に基づいており、グラフに示された実線よりも高τ、高ひずみ側(グラフの右上側)では、D=1となり破壊する。ここでの評価で用いた値によれば、せん断や圧縮応力では破壊せず、引張応力で割れると判断できる。図中に示すように、τ=0のときがせん断、τ<0のときが圧縮応力、τ>0の時は引張応力で破壊することになる。より具体的に、図5に示す比較例条件の場合、応力三軸度は正の値を示している時間が長く、引張応力が作用することになる。特に、後半パス(約14秒以降)では、多軸(二軸)引張状態が続くことになる。比較例条件では、応力三軸度τが多軸(二軸)引張となる2/3以上の時に、延性破壊基準Dが増加し、後半パスの圧延ではD=1に達し、破壊が起きている。
【0039】
一方、本発明例の条件では、比較例に比べ、応力三軸度τが小さい値を示す。具体的には、応力三軸度が負の値を示しているので圧縮応力が作用していることが分かる。
特に、後半パスの圧延では、図5に示す比較例では多軸引張になっているのに対し、図6に示す本発明例では、応力三軸度τが圧縮応力側に存在し、延性破壊基準Dは増加していない。このように、応力三軸度τの推移が延性破壊基準Dに大きく影響したと言える。
【0040】
以上より、深い疵の要因は多軸引張にあると考えられた。
【0041】
上記の検討に基づいて、被圧延材の断面寸法比(被圧延材長短比)、拘束長さ、応力三軸度、相当塑性ひずみ量の関係から疵の形成を抑制する圧下パターンを知見した。
ここで、拘束長さとは、「フランジ長さ×2+ロール孔底(カリバー底)の幅」であり、図3(b)中の「a+b+c」である。拘束長さが長いほど、フランジ長さが長くなり、被圧延材のC断面(圧延方向に垂直な断面)の周方向を広範囲で接触していることになる。同じ寸法の被圧延材を圧延する時に、フランジ長さが長いほど拘束長さが長いという関係にある。
【0042】
上記知見に基づいて鋭意検討の結果、本発明で規定した式(1)、式(2)、式(3)の詳細について以下で説明する。
【0043】
1.40≦被圧延材長短比 ・・・式(1)
式(1)において、被圧延材長短比は、被圧延材の圧延方向に垂直な断面形状である矩形における第1辺と、該第1辺に隣接し、第1パスの圧延開始前における長さが前記第1辺の長さ以上である第2辺とに関し、各パスの圧延後における、第2辺の長さ(mm)/第1辺の長さ(mm)である。本発明では、バルジ変形を抑えることで、疵を抑制している。本発明では、被圧延材に対して、高い圧下率によりひずみを浸透させ、長いフランジによる物理的な抑え込みをしている。被圧延材長短比が1.40未満の場合、圧下量を大きくすると、ロールギャップ(開度)を確保できず、上下のロールが接触し、圧延できなくなる。よって、本発明では、被圧延材長短比を1.40以上とする。好ましくは1.50以上であり、より好ましくは1.80以上である。また、被圧延材長短比は、大きすぎると、被圧延材のハンドリング性が悪くなり、圧延時に倒れる可能性があるため、好ましくは3.00以下であり、より好ましくは2.50以下である。
【0044】
20%≦圧下率≦35%、又は圧下率≦10% ・・・式(2)
式(2)において、圧下率(%)は、各パスにおいて、((圧延前の第1辺の長さ(mm)-圧延後の第1辺の長さ(mm))/圧延前の第1辺の長さ(mm))×100、及び((圧延前の第2辺の長さ(mm)-圧延後の第2辺の長さ(mm))/圧延前の第2辺の長さ(mm))×100のうち、より大きな値である。
後半パスの圧下において、圧下率が10%超え20%未満であると、ひずみが材料中にまで浸透せず、表面ばかりが圧延され、ひずみ量の増加や、バルジ変形の抑制を実現できなくなる。また、圧下率が35%超えであると、通常のロールと被圧延材との摩擦状態では、被圧延材がロールバイト内に入っていかず、噛み込み不良となる。よって、本発明では、後半パスの圧下において、20%≦圧下率≦35%、又は圧下率≦10%とする。
但し、式(2)において、連続する2パス以上で、圧下率≦10%となる場合は含まない。本発明では、圧下率≦10%となる圧延を2パス以上連続で行わないようにすることで、材料温度が低下し、熱間加工性が低下することを抑制し、この点からも疵の形成を抑制できる。
式(2)については、好ましくは、圧下率は22%以上であり、より好ましくは、25%以上である。また、圧下率は、好ましくは、32%以下であり、より好ましくは、30%以下である。
なお、式(2)において、圧下率が低過ぎると所定の寸法にするために時間がかかりすぎ、被圧延材の温度が下がる可能性があるため、圧下率≦10%とする場合には、5%≦圧下率<10%とすることが好ましい。
【0045】
0.70≦フランジ比≦1.00 ・・・式(3)
式(3)において、フランジ比は、第1辺及び第2辺の長さのうち、各パス前後において長さが縮小する方のパス後辺長Aと、孔型圧延ロールの外表面に形成され、被圧延材を支持可能であって孔状部を形成するフランジの先端部から被圧延材が当接可能な孔状部最深部までの長さであるフランジ長さXとの比について、2X/Aである。
フランジ比が0.70未満であると、バルジ変形位置が被圧延材の角部付近に形成され、多軸引張応力状態になりやすくなり、疵が増加する。一方、フランジ比が1.00超えであると、上下ロールが接触することになり、物理的に圧延ができなくなる。よって、本発明では、フランジ比を0.70以上1.00以下とする。好ましくは、0.75以上であり、より好ましくは、0.80以上である。また、フランジ比は、大きい場合、ロールバイト内の被圧延材の充填率が高くなり、幅広がりがなくなり、全て圧延方向にしか伸びることができず、周方向の疵が形成されるため、好ましくは、0.95以下であり、より好ましくは、0.90以下である。
【0046】
本発明では、全パス数を2Nパス又は2N+1パスとした場合(N:0以上の整数)、第N+1パス以降、最終パスまでの後半パス中50%以上のパスの圧下において、上記式(1)及び/又は式(2)を満たし、且つ式(3)を満たすようにする。
式(1)、式(2)のいずれも満たさない場合、または式(3)を満たさない場合、バルジトップが高く形成し、ロールとバルジが最初に接触することで、幅方向の引張応力が働き、疵が形成される。また、バルジの位置が被圧延材の角部付近に形成され、多軸引張応力となり、疵が形成される。式(1)、式(2)、式(3)は3つ全てを満たすことが好ましい。
【0047】
また、上記の条件を満たすのが、後半パス中50%未満のパスの圧下である場合、疵の深さが増加する。上記の条件は、応力三軸度を低減させ、疵を抑制するための条件式である。応力三軸度の低減には、疵抑制効果だけでなく、すでに形成された疵の深さを増加させない効果も得られる。この点、上記条件を満たすのが、後半パス中50%未満のパスの圧下である場合、形成された疵が圧延によって深く形成されやすくなる。よって、本発明において、上記の条件を満たすのは、後半パス中50%以上のパスの圧下とする。
また、上記の条件を満たすのは、好ましくは、後半パス中65%以上のパスであり、より好ましくは、後半パス中80%以上のパスである。
【0048】
上記の圧延では、被圧延材を、800℃以上の加熱温度に加熱した後、1対の孔型圧延ロール間に通すことが好ましい。また、全パスにおいて、1パス当たりの圧下率を70%以下とすることが好ましい。すなわち、全パス数を2Nパス又は2N+1パスとした場合(N:0以上の整数)、第N+1パス以降は、圧下率を20~35%又は10%以下とするため、第1パスから第Nパスまでを70%以下とすることが好ましい。
また、前半パス(第1パスから第Nパスまで)では、第Nパス終了時に疵が発生していることを抑制するためにも、被圧延材の表面温度の低下による熱間加工性の低下を抑制できる条件で圧延することが好ましい。具体的には、1パス当たりの圧下率を5%以上とすることが好ましい。より好ましくは、10%以上とすることが好ましい。
加熱温度が800℃未満では、被圧延材の変形抵抗が高くなり、ロールの耐荷重を超える場合がある。よって、上記加熱温度は、800℃以上とすることが好ましい。また、より好ましくは、1000℃以上であり、さらに好ましくは、1200℃以上である。一方、加熱温度の上限値は特に限定されないが、1300℃超えでは、22質量%Cr等の高Cr鋼はフェライトの分率が高いため、被圧延材の変形抵抗が低く、炉内で材料が垂れる場合がある。よって、上記加熱温度は、1300℃以下とすることが好ましい。また、より好ましくは、1290℃以下であり、さらに好ましくは、1250℃以下である。
また、1パス当たりの圧下率が70%超えでは、一様な変形挙動がされず、材料の対角線上にズレるように割れ、せん断割れのような現象となる場合がある。よって、上記圧下率は、70%以下とすることが好ましい。また、より好ましくは、50%以下であり、さらに好ましくは、35%以下である。また、前半パス(第1パスから第Nパスまで)については、圧下率が低過ぎると所定の寸法にするために時間がかかりすぎ、被圧延材の温度が下がるため、前述の通り、より好ましくは、5%以上であり、さらに好ましくは、10%以上である。
【0049】
上記の本発明の分塊圧延材の製造方法で用いる被圧延材としては、Crを5.0質量%以上含有するCr鋼やステンレス鋼等の難加工鋼材(難加工高合金鋼)が挙げられる。ここで難加工鋼材とは圧延温度領域時に二相以上の状態となる鋼材のことを指し、具体的には、17質量%Cr、22質量%Cr、25質量%Crなどの高Cr量を有するステンレス鋼が挙げられる。難加工鋼材は、単相の鋼材に比べ、相の強度差を有することから加工が難しいものの、本発明の分塊圧延材の製造方法では、被圧延材がこれらの難加工鋼材であっても、疵の発生を抑制することができる。
【0050】
被圧延材は以下のプロセスで作製される。まず、高炉で鉄鉱石を溶かしながら、コークスを同時に溶かすことで銑鉄を作製する。その後、脱珪処理、脱硫処理など溶銑予備処理を行い、転炉で炭素を除去し、溶鋼を作製する。溶鋼に必要な合金元素など成分を微調整する二次精錬を行った後に、連続鋳造機に運び、被圧延材を得る。
【0051】
また、本発明では、前述した分塊圧延材の製造方法により得られた分塊圧延材を用いて鋼管を製造することができる。
鋼管の製造条件としては、好ましくは、矩形形状の分塊圧延材を連続タンデム圧延設備によって製造される丸鋼片を材料とし、加熱炉で1100~1300℃に加熱し、マンネスマン穿孔機で中空素管にする。中空素管は、マンドレルミルで圧延し、外径と厚さを減少させ長尺素管にする。次に、これを再加熱炉において700~1000℃で1時間保持し、再加熱してからストレッチレデューサーで仕上がり寸法とし、冷却、矯正、切断を経て鋼管とする。
【実施例0052】
本発明の疵抑制技術を調査するために、本発明条件と比較条件を用意し、圧延後のMLFT結果を調査した。
被圧延材としてはSUS329J1を用いた。被圧延材の初期断面寸法は長辺710mm×短辺275mmであった。加熱炉で被圧延材を1100℃まで加熱したものを圧延した。その他の条件は表3と図4に示す通りである。各圧下パターンを表4~表12に示す。表4~表12に示す例の各条件は以下の通りである。
【0053】
【表4】
【0054】
【表5】
【0055】
【表6】
【0056】
【表7】
【0057】
【表8】
【0058】
【表9】
【0059】
【表10】
【0060】
【表11】
【0061】
【表12】
【0062】
表4は、式(1)~(3)の全てを満たす条件で圧延した例である。
具体的には、式(1)に関しては、後半パスとなる第6パス~第11パスの6パス中、50%以上となる第6~8、10の4パスが本発明の範囲内となっている。
また、式(2)に関しては、後半パスとなる第6パス~第11パスの6パス中、50%以上となる第7、9~11パスの4パスが本発明の範囲内となっている。
また、式(3)に関しては、後半パスとなる第6パス~第11パスの6パス中、全てのパスが本発明の範囲内となっている。
【0063】
表5は、式(1)と式(3)を満たす条件で圧延した例である。
具体的には、式(1)に関しては、後半パスとなる第6~第11パスの6パス中、50%以上となる第6~10パスの5パスが本発明の範囲内となっている。
また、式(3)に関しては、後半パスとなる第6パス~第11パスの6パス中、全てのパスが本発明の範囲内となっている。
【0064】
表6は、式(2)と式(3)を満たす条件で圧延した例である。
具体的には、式(2)に関しては、後半パスとなる第7パス~第12パスの6パス中、50%以上となる第7~9、11、12パスの5パスが本発明の範囲内となっている。
また、式(3)に関しては、後半パスとなる第7パス~第12パスの6パス中、50%以上となる第8~12の5パスが本発明の範囲内となっている。
【0065】
表7は、式(2)のみを満たす条件で圧延した例である。
具体的には、式(2)に関しては、後半パスとなる第8パス~第15パスの8パス中、50%以上となる第8、10、12~14の5パスが本発明の範囲内となっている。
しかしながら、式(1)に関しては、第8、10、12パスの3パスのみしか本発明の範囲内となっていない。
また、式(3)に関しては、第12パスの1パスのみしか本発明の範囲内となっていない。
【0066】
表8は、式(3)のみを満たす条件で圧延した例である。
具体的には、式(3)に関しては、後半パスとなる第7パス~第13パスの7パス中、50%以上となる第8~13パスの6パスが本発明の範囲内となっている。
しかしながら、式(1)に関しては、第7、8、10の3パスのみしか本発明の範囲内となっていない。
また、式(2)に関しては、第9、10、12パスの3パスのみしか本発明の範囲内となっていない。
【0067】
表9は、いずれの式も満たさない条件で圧延した例である。
具体的には、式(1)に関しては、後半パスとなる第8パス~第15パスの8パス中、第8、12の2パスのみしか本発明の範囲内となっていない。
また、式(2)に関しては、第10、14パスの2パスのみしか本発明の範囲内となっていない。
また、式(3)に関しては、本発明の範囲内となるパスはない。
【0068】
表10~12は、表4~9に示した例に比べて最終寸法が小さくなる例である。すなわち、ひずみ量が大きい場合の例である。図7を参照しながら説明したように、ひずみ量が大きいと応力三軸度が正になることで破壊しやすくなる。
【0069】
表10は、式(3)のみを満たす条件で圧延した例である。
具体的には、式(3)に関しては、後半パスとなる第7パス~第12パスの6パス中、50%以上となる第8~12パスの5パスが本発明の範囲内となっている。
しかしながら、式(1)に関しては、第8パスの1パスのみしか本発明の範囲内となっていない。
また、式(2)に関しては、第9、12パスの2パスのみしか本発明の範囲内となっていない。
【0070】
表11は、式(2)と式(3)を満たす条件で圧延した例である。
具体的には、式(2)に関しては、後半パスとなる第7パス~第12パスの6パス中、50%以上となる第7~9、11、12パスの5パスが本発明の範囲内となっている。
また、式(3)に関しては、後半パスとなる第7パス~第12パスの6パス中、50%以上となる第8~12の5パスが本発明の範囲内となっている。
【0071】
表12は、式(1)~(3)の全てを満たす条件で圧延した例である。
具体的には、式(1)に関しては、後半パスとなる第5パス~第9パスの5パス中、50%以上となる第5~6、8の3パスが本発明の範囲内となっている。
また、式(2)に関しては、後半パスとなる第5パス~第9パスの5パス中、全てのパスが本発明の範囲内となっている。
また、式(3)に関しては、後半パスとなる第5パス~第9パスの5パス中、第5~6、第8~9の4パスが本発明の範囲内となっている。
【0072】
なお、各表中、被圧延材長短比、圧下率(%)、フランジ比は以下の通りである。
被圧延材長短比は、矩形における第1辺と、該第1辺に隣接し、第1パスの圧延開始前における長さが第1辺の長さ以上である第2辺とに関し、各パスの圧延後における、第2辺の長さ(mm)/第1辺の長さ(mm)である。
【0073】
圧下率(%)は、各パスにおいて、((圧延前の第1辺の長さ(mm)-圧延後の第1辺の長さ(mm))/圧延前の第1辺の長さ(mm))×100、及び((圧延前の第2辺の長さ(mm)-圧延後の第2辺の長さ(mm))/圧延前の第2辺の長さ(mm))×100のうち、より大きな値である。
【0074】
フランジ比は、第1辺及び第2辺の長さのうち、各パス前後において長さが縮小する方のパス後辺長Aと、孔型圧延ロールの外表面に形成され、被圧延材を支持可能であって孔状部を形成するフランジの先端部から被圧延材が当接可能な孔状部最深部までの長さであるフランジ長さXとの比について、2X/Aである。
【0075】
また、得られた分塊圧延材の表面において、漏洩磁束探傷により測定される疵深さが3.0mm以上である疵の個数の結果を表13に示す。表13には本発明の条件として、式(1)、式(2)、式(3)を満たしているか否かを記載する。表13中「○」は、後半パス中50%以上のパスが各式を満たしていることを示す。
【0076】
【表13】
【0077】
表13より、本発明の条件で圧延することにより、疵が形成されることを抑制できることが明らかになった。
【符号の説明】
【0078】
S 被圧延材
B 分塊圧延機
R 孔型圧延ロール
X フランジ長さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7