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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022097431
(43)【公開日】2022-06-30
(54)【発明の名称】シーラントを備えた空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 19/12 20060101AFI20220623BHJP
   B60C 11/03 20060101ALI20220623BHJP
   B60C 5/00 20060101ALI20220623BHJP
   B29C 73/16 20060101ALI20220623BHJP
   C09K 3/10 20060101ALI20220623BHJP
【FI】
B60C19/12 Z
B60C11/03 100A
B60C5/00 F
B29C73/16
C09K3/10 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021203096
(22)【出願日】2021-12-15
(31)【優先権主張番号】63/127671
(32)【優先日】2020-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】513158760
【氏名又は名称】ザ・グッドイヤー・タイヤ・アンド・ラバー・カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】ジャン-クロード パトリス フィリップ グリフォイン
(72)【発明者】
【氏名】モーリッツ ブルックナー
(72)【発明者】
【氏名】ローマン ゴール
(72)【発明者】
【氏名】サメル ギュプタ
(72)【発明者】
【氏名】ケヴィン エリク エム ピエレ
【テーマコード(参考)】
3D131
4F213
4H017
【Fターム(参考)】
3D131BC24
3D131BC44
3D131EB11Z
3D131EC01Z
3D131LA13
4F213AH20
4F213WM02
4F213WM05
4F213WM35
4H017AD01
4H017AE01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】セルフシーリング特性を有し、向上した乗り心地およびハンドリング特性を支えるシーラント剤層を備えた空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】周方向溝9および周方向リブ8またはトレッドブロックの列を有するトレッド部10と、タイヤキャビティ6を画定する内面と、タイヤキャビティ6内のトレッド部10の半径方向下方の内面を少なくとも部分的に覆うシーラント剤層5と、を含む空気入りタイヤであって、シーラント剤層5はシーラント剤の隆起部19を含み、シーラント剤の隆起部19は、少なくとも2つの周方向溝9の各々の半径方向下方に設けられており、シーラント剤層5は、隆起部19において、周方向リブ8またはトレッドブロックの列の半径方向下方の領域18よりも大きい半径方向厚さを有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)周方向溝(9)および(ii)周方向リブ(8)またはトレッドブロックの列を有するトレッド部(10)と、タイヤキャビティ(6)を画定する内面と、前記タイヤキャビティ(6)内の前記トレッド部(10)の半径方向下方の前記内面を少なくとも部分的に覆うシーラント剤層(5)と、を含み、前記シーラント剤層(5)はシーラント剤の隆起部(19)を含み、シーラント剤の隆起部(19)は、少なくとも2つの前記周方向溝(9)の各々の半径方向下方に設けられており、前記シーラント剤層(5)は、前記隆起部(19)において、前記周方向リブ(8)またはトレッドブロックの列の半径方向下方の領域(18)よりも大きい半径方向厚さを有する、空気入りタイヤ(1,11)。
【請求項2】
各々の前記隆起部(19)は、それぞれの前記隆起部(19)の半径方向上方にある周方向溝(9)の底部の軸方向幅の70%から130%の範囲内の軸方向幅を有することを特徴とする、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
隣接する2つの隆起部(19)のうちの1つの隆起部(19)の、前記タイヤ(1,11)の前記内面からそれぞれの前記隆起部(19)の半径方向に最も内側の面まで測定された半径方向厚さは、前記隣接する2つの隆起部(19)の間の中間におけるシーラント剤層(5)の半径方向厚さよりも少なくとも15%大きい構成と、前記隣接する2つの隆起部(19)の間の中間におけるシーラント剤層(5)の半径方向厚さよりも最大でも100%大きい構成のいずれか一方または両方であることを特徴とする、請求項1または2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記タイヤ(1,11)は、少なくとも3つの周方向溝(8)と、少なくとも4つの周方向リブ(9)またはトレッドブロックの列と、を含むことを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記シーラント剤の隆起部(19)が、前記周方向溝(9)の各々の半径方向下方に設けられていることを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記隆起部(19)の、前記タイヤ(1,11)の前記内面からそれぞれの前記隆起部(19)の半径方向に最も内側の面まで測定された最大の半径方向厚さが、3mmから9mmの範囲内にあり、および/または、隣接する2つの隆起部(19)の間の中間におけるシーラント剤層(5)の半径方向厚さが2mmから6mmの範囲内にあることを特徴とする、請求項1から5のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項7】
i)隣接する2つの隆起部(19)の間の中間におけるシーラント剤層(5)の半径方向厚さと、ii)前記隣接する隆起部(19)のうちの1つの最大の半径方向厚さと、の差が、少なくとも0.5mmであり、および/または、
シーラント剤層(5)が前記トレッド部(10)の幅の少なくとも90%にわたって軸方向に延びていることを特徴とする、請求項1から6のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項8】
前記シーラント剤が、ブチルゴム系組成物と、ポリイソプレン系組成物と、天然ゴム系組成物と、ポリウレタン系組成物と、ポリブテン系組成物と、エマルジョンスチレンブタジエンゴム系組成物と、EPDM系組成物と、シリコーン系組成物のうちの1つ以上を含むことを特徴とする、請求項1から7のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項9】
前記シーラント剤層は、
(i)前記タイヤ(1,11)の軸を中心として前記タイヤ(1,11)の前記内面に沿って周方向に延びる、軸方向に隣接するシーラント剤ストリップと、
(ii)前記タイヤ(1,11)の軸を中心として前記タイヤ(1、11)の前記内面に沿って螺旋状に巻かれた1つ以上のシーラント剤ストリップと、
のうちの1つを含むことを特徴とする、請求項1から8のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項10】
前記シーラント剤ストリップは、前記隆起部(19)と、前記周方向リブ(9)またはトレッドブロックの列の半径方向下方の前記シーラント剤層(5)の領域と、を形成し、
少なくとも複数の前記シーラント剤ストリップは、
前記シーラント剤層(5)に前記隆起部を形成するように、前記周方向溝(8)の半径方向下方の領域において、前記周方向リブ(9)またはトレッドブロックの列の半径方向下方の前記領域(18)よりも半径方向に厚いことと、
前記シーラント剤層(5)に前記隆起部(19)を形成するように、互いに上下に重なるように配置されることと、
のいずれかの一方または両方を有することを特徴とする、請求項9に記載の空気入りタイヤ。
【請求項11】
トレッド部(10)が、2つのショルダー部と、軸方向において2つのショルダー部の間の中央部とを有し、各々の前記ショルダー部が周方向のショルダーリブまたはショルダートレッドブロックの列を含み、前記中央部が少なくとも3つの周方向リブと少なくとも4つの周方向溝とを含み、各々の前記ショルダーリブは前記少なくとも4つの周方向溝のうちの1つによって画定され、および/または、
前記シーラント剤層(5)の隆起部(19)と、シーラント剤層の、前記隆起部(19)の半径方向厚さよりも小さい半径方向厚さを有する領域(18)とが、タイヤ(1,11)の軸方向(a)に沿って交互に位置し、および/または、
前記シーラント剤層(5)の、前記隆起部(19)の半径方向厚さよりも小さい半径方向厚さを有する前記領域(18)が、半径方向上方のそれぞれのリブまたはトレッドブロックのそれぞれの列の半径方向に最も外側の面の60%から120%の範囲内の軸方向幅を有することを特徴とする、請求項1から10のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項12】
少なくとも1つの発泡部材(7)が、軸方向に隣接する少なくとも2つの隆起部(19)の半径方向内側表面に取り付けられ、それによって、少なくとも1つの空気キャビティ(16)が、前記軸方向に隣接する隆起部(19)と、前記発泡部材(7)の半径方向外側表面と、前記軸方向に隣接する隆起部(19)の間のシーラント剤層(5)の半径方向内側表面との間に形成され、
前記発泡部材(7)は、任意に、タイヤ(11)の軸方向中心で内面に沿って測定された、タイヤ(11)の内周の少なくとも50%、好ましくは少なくとも80%に相当する周方向長さに沿って周方向(c)に延びる発泡ストリップであることを特徴とする、請求項1から11のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項13】
前記発泡部材(7)の軸方向幅が前記シーラント剤層(5)の最大の軸方向幅の20%から50%の範囲内であり、および/または、
前記発泡部材(7)は前記シーラント剤層(5)に面するコーティングまたは箔を含まないことを特徴とする、請求項12に記載の空気入りタイヤ。
【請求項14】
前記発泡部材(7)が、
ノイズ減衰材と、
ポリマー発泡材と、
ポリウレタン発泡材と、
ストリップ形状と、
密度が0.01g/cm3から1g/cm3の範囲内である材料と、
のうちの1つ以上を含むことを特徴とする、請求項12から13のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか1項に記載のタイヤを製造する方法であって、
タイヤ(1,11)を硬化するステップと、
硬化したタイヤ(1,11)の内面に1つ以上のシーラント剤ストリップを貼り付けることにより前記内面にシーラント剤層(5)を形成し、タイヤのトレッド部(10)の周方向溝(9)の半径方向下方の領域においてシーラント剤層(5)に隆起部(19)を形成するステップと、
少なくとも1つの発泡部材(7)を、隣接する2つの隆起部(19)の半径方向に最も内側の部分に取り付ける任意のステップと、
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に空気入りタイヤに関し、具体的には、少なくとも1つの発泡部材を任意に支持するシーラント層を内面に有する空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
セルフシーリング空気入りタイヤは、通常は、タイヤが釘またはねじなどの鋭利な物体で刺された後に、空気圧が失われることと、その結果生じるタイヤの収縮とを遅らせるか、または防止する。パンクシーラント空気入りタイヤについて、複数の方法、シーラントおよびタイヤ構造が提案されている。しかしながら、これらのアプローチのほとんどは欠点を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第4,895,610号
【特許文献2】米国特許第9,802,446号
【特許文献3】米国特許第8,360,122号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
シーラントは、多くの場合、パンク穴を効率的にシールするのに役立つが、しばしば、重量の追加および断熱をもたらす。この結果、乗り心地およびハンドリング性能が制限され、および/または、タイヤ内の望ましくない熱分布が生じることがある。このような欠点は、追加のノイズ減衰部材がシーラント剤層の半径方向内側に取り付けられている場合には、さらに重大になることがある。特に、このようなノイズ減衰部材は、タイヤ内の温度分布にさらに悪影響を及ぼす可能性がある。
【0005】
さらに、シーラント剤にノイズ減衰部材を取り付けることで、ノイズ減衰部材との相互作用により、シーラント剤のシール性能に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0006】
従って、タイヤキャビティ共振の結果として、低いノイズ発生とともに、良好なシール性能および/または制限された発熱を有する改良されたタイヤを提供することが望ましい。
【0007】
本発明の第1の目的は、セルフシーリング特性を有する進歩した空気入りタイヤを提供することである。
【0008】
本発明の他の目的は、向上した乗り心地およびハンドリング特性を支えるシーラント剤層を備えた進歩した空気入りタイヤを提供することである。
【0009】
本発明の他の目的は、特に高速で、向上した高速特性および/または向上した温度挙動を有する進歩した空気入りタイヤを提供することである。
【0010】
本発明の他の目的は、重量が小さく、好ましくはタイヤキャビティノイズが制限されたシーラントタイヤを提供することである。
【0011】
本発明のさらに他の目的は、コスト効率の良いシーラントタイヤ、特に十分な音波減衰およびシーリング特性を備えたシーラントタイヤを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、独立請求項1によって定義される。好ましい実施態様は、従属請求項と、後述する本発明の概要とにおいて規定される。
【0013】
したがって、本発明の第1の態様では空気入りタイヤが提供され、前記タイヤは、i)周方向溝およびii)周方向リブまたはトレッドブロックの列を有するトレッド部と、任意に設けられる2つのビード部、およびトレッド部と各ビード部との間を延びる2つのサイドウォールと、タイヤキャビティを画定する内面と、タイヤキャビティ内のトレッド部の半径方向下方の内面を少なくとも部分的にまたは完全に覆うシーラント剤層とを含む。シーラント剤層はシーラント剤の隆起部を含み、シーラント剤の隆起部は、少なくとも2つの周方向溝の各々の半径方向下方に設けられており、シーラント剤層は、前記隆起部において、周方向リブまたはトレッドブロックの列の半径方向下方の領域よりも大きい半径方向厚さを有する。
【0014】
本発明によるシーラント剤の配置は、比較的厚いトレッドリブまたはトレッドブロックの下方の発熱を低減するのに役立つが、シーラント剤の厚さは、少なくとも2つの周方向溝の下方(任意には全ての周方向溝の下方)、特に周方向の主溝の下方においてより大きい。前記溝の領域において、トレッドは、リブまたはトレッドブロックの列の下の領域よりも少ないゴム材料を有し、その結果、溝の下方のこれらの領域において発熱は制限される。溝の半径方向下方のゴムの厚さが比較的薄いので、これらの部分は、トレッドリブの下方のようなゴムの厚さがより大きい領域よりも容易にパンクする。溝の下方のシーラント剤層のより大きい厚さが、これらの溝領域におけるパンクのより高い危険性を軽減するのに役立つ。トレッドの軸方向幅全体にわたって比較的厚いシーラント層を設けることは、トレッド部全体の下でより高い発熱をもたらす結果になるので、あまり望ましくないであろう。
【0015】
一実施態様では、各隆起部(言い替えると尾根部)はそれぞれの隆起部の半径方向上方にある周方向溝の底部の軸方向幅の70%から130%の範囲内の軸方向幅を有する。従って、1つの隆起部は、隆起部の半径方向上方または外側の溝の少なくとも実質的な軸方向幅を覆う。特に、より小さい、またはより大きい幅を有することは、シール性または熱伝導性のいずれかを損なうので、あまり望ましくない。
【0016】
他の実施態様では、シーラント剤の隆起部が前記周方向溝の各々の半径方向下方に設けられる。このような配置は、全ての周方向溝に対して本発明の好ましい効果を与える。
【0017】
一実施態様では、空気入りタイヤが、少なくとも2つ(好ましくは少なくとも3つ、より好ましくは少なくとも4つ、またはさらにより好ましくは少なくとも5つ)の周方向溝と、少なくとも3つ(好ましくは少なくとも4つ、より好ましくは少なくとも5つ、またはさらにより好ましくは少なくとも6つ)の周方向リブまたはトレッドブロックの列とを含む。周方向溝は、周方向の主溝として記載することもできる。
【0018】
他の実施態様では、前記隆起部は、(特にそれぞれの隆起部の軸方向位置で)タイヤの内周または内面の少なくとも95%にわたって周方向に延びている。
【0019】
他の実施態様では、隆起部の、タイヤの内面からそれぞれの隆起部の半径方向の最も内側の面まで測定された最大の半径方向厚さは、3mmから9mm(好ましくは3mmまたは4mmから8mm)の範囲内である。一般に、半径方向内面、すなわち、言い替えると内側表面は、好ましくはタイヤのインナーライナーによって形成される。
【0020】
さらに他の実施態様では、シーラント剤層の半径方向厚さは、隣接する2つの隆起部の間の中間の軸方向位置において、2mmから6mm(好ましくは3mmから5mm)の範囲内である。隣接する2つの隆起部は、本明細書で別途示されない限り、軸方向に隣接する隆起部であると理解される。
【0021】
さらに他の実施態様では、隣接する2つの隆起部の間のシーラント剤層の半径方向厚さは、平均して2mmから6mmの範囲内である。特に、シーラント剤の表面は、例えばシーラント剤ストリップの貼り付けなどの製造方法に起因する特定の粗さを有し得る。
【0022】
さらに他の実施態様では、i)隣接する2つの隆起部の間の中間におけるシーラント剤層の半径方向厚さ(または隣接する2つの隆起部の間のシーラント剤の半径方向厚さの平均)と、ii)隣接する隆起部のうちの1つの最大の半径方向厚さと、の差が、少なくとも0.5mm、好ましくは少なくとも0.8mm、より好ましくは少なくとも1mm、さらに好ましくは少なくとも1.5mmである。それに加えて、またはその代わりに、前記差は、大きくとも3mm、好ましくは大きくとも2mm、または大きくとも1.6mmであってよい。隣接する2つの隆起部が、異なる最大半径方向厚さを有する場合、より小さい最大半径方向厚さを有する隆起部がここでは考慮される。
【0023】
さらに他の実施態様では、シーラント剤層が、前記トレッド部の幅、すなわちタイヤの軸方向に測定されたトレッドの少なくとも90%にわたって延びている。さらに他の実施態様では、タイヤがトレッド部の半径方向下方にあるベルト部を含み、前記ベルト部は互いに半径方向の上下に重ねて配置された複数のベルトプライを含み、シーラント剤層は、軸方向において最大のベルトプライの、軸方向に測定された幅の少なくとも95%にわたって延びている。
【0024】
さらに他の実施態様では、タイヤの内面(例えばインナーライナー)から、半径方向に最も内側の表面またはそれぞれの隆起部の先端まで測定された、隣接する2つの隆起部の隆起部のうちの1つの隆起部の半径方向厚さは、以下の一方または両方である。
(i)隣接する2つの隆起部の間の中間におけるシーラント剤層の半径方向厚さ、またはこれらの隣接する隆起部の間の平均の半径方向厚さよりも、少なくとも15%大きく、好ましくは少なくとも20%大きい。
(ii)隣接する2つの隆起部の間の中央におけるシーラント剤層の半径方向厚さ、または、前記隣接する隆起部の間のシーラント剤層の平均の半径方向の厚さよりも、最大でも100%大きく、好ましくは最大でも50%大きい。特に、シーラント剤の非常に厚い領域は、溝の位置においてさえ、あまり望ましくないであろう。
【0025】
例えば、隆起部の前記半径方向厚さは、隣接する2つの隆起部の間の中間におけるシーラント剤層の半径方向厚さ、またはこれらの隣接する隆起部の間の平均の半径方向厚さよりも、15%から100%、20%から90%、30%から80%、または40%から70%大きくすることができる。
【0026】
さらに他の実施態様では、シーラント剤層が、
(i)タイヤの軸を中心として(例えばタイヤのインナーライナー上で)タイヤの内面に沿って(例えばタイヤの赤道面に対して0°から0.5°の角度で、または0°の角度で)基本的に周方向に延びる、軸方向に隣接するシーラント剤ストリップ
(ii)タイヤの軸を中心としてタイヤの内面、例えばインナーライナーに沿って(例えばタイヤの赤道面に対して5°未満の角度で、または2°よりもさらに小さい角度で)螺旋状に巻かれた1つ以上のシーラント剤ストリップ
のうちの1つを含む。
【0027】
特に、このようなシーラント層は、タイヤ硬化後のタイヤに効率的に貼り付けることができる。
【0028】
さらに他の実施態様では、シーラント剤ストリップが、隆起部、および/またはシーラント剤層の周方向リブまたはトレッドブロックの列の半径方向下方の領域を形成し、シーラント剤ストリップは、任意に、以下の一方または両方である。
-シーラント剤層に隆起部を形成するように、周方向溝の半径方向下方の領域では、周方向リブまたはトレッドブロックの列の半径方向下方の領域よりも半径方向に厚い。
-好ましくは、シーラント剤層に少なくとも複数の隆起部を形成するように、少なくとも隆起部でシーラント剤層において互いに上下に重なるように配置される。
【0029】
このように、シーラント剤ストリップ、または言い替えるとビードは、隆起部において互いに上下に重なるようにのみ配置されることが可能である。また、隣接する2つの隆起部の間の領域が、半径方向に互いに上下に配置されたストリップの複数の層を含むことも可能である。このような場合、隆起部は、通常はシーラント剤のストリップのより多くの層を有することができる。
【0030】
他の実施態様では、シーラント剤ストリップは、例えば、基本的に長方形の断面と、基本的に多角形の断面と、基本的に円形の断面と、基本的に楕円形の断面とのうちの1つを有することができる。
【0031】
さらに他の実施態様では、シーラント剤ストリップの最大の半径方向厚さは、隆起部の最大の半径方向厚さに対応し、それによりシール剤層に隆起部を形成する。
【0032】
さらに他の実施態様では、シーラント剤層が、隆起部の半径方向高さを有するストリップと、隆起部の間のシーラント剤層の領域を形成するように、隆起部を形成するストリップよりも小さい半径方向高さを有するストリップなど、異なる半径方向厚さを有する複数のシーラント剤ストリップを含む。
【0033】
さらに他の実施態様では、隆起部が、隆起部の半径方向上方に、それぞれの溝の底部の軸方向幅の80%から120%、好ましくは90%から110%の範囲内の軸方向幅を有する。
【0034】
他の実施態様では、各隆起部が、隆起部の半径方向上方に配置されたそれぞれの溝の底部の軸方向中心に対して、基本的に軸方向に中心合わせされる。
【0035】
さらに他の実施態様では、トレッド部が、2つのショルダー部と、軸方向において2つのショルダー部の間に配置された中間すなわち中央部と、を有し、各ショルダー部は、周方向ショルダーリブ、またはショルダートレッドブロックの周方向の列を含む。それに加えて、またはその代わりに、中央部は、少なくとも3つの周方向リブと、少なくとも4つの周方向溝とを含む。各ショルダーリブは、任意に、少なくとも4つの周方向溝のうちの1つ、特にそれぞれの軸方向で最も外側の周方向溝によって区切られていてよい。このようなリブおよび溝の配置は、通常は、比較的広い高性能タイヤ、特にUHP夏用タイヤにおいて見られる。
【0036】
さらに他の実施態様では、i)シーラント剤層の隆起部と、ii)シーラント剤層の、前記隆起部の半径方向厚さよりも小さい半径方向厚さを有する領域とが、タイヤの軸方向に沿って交互に位置する。好ましくは、タイヤが、軸方向に沿って交互に配置された、少なくとも3つの前記領域と4つのそのような隆起部とを有する。
【0037】
一実施態様では、シーラント剤層が、軸方向に見て、前記隆起部よりも小さい半径方向厚さを有する、シーラント剤の隣接する領域の間に形成された少なくとも3つの隆起部を有する。また、シーラント剤の、軸方向において隣接する2つの隆起部の間の領域は、シーラント剤層の谷部として一般的に記載されてもよい。
【0038】
さらに他の実施態様では、シーラント剤層の、前記隆起部の半径方向厚さよりも小さい半径方向厚さを有する前記領域が、半径方向上方の、それぞれのリブまたはトレッドブロックのそれぞれの列の半径方向に最も外側の面の60%から120%の範囲内の軸方向幅を有する。
【0039】
さらに他の実施態様では、シーラント剤は、ブチルゴム系組成物、ポリイソプレン系組成物、天然ゴム系組成物、ポリウレタン系組成物、ポリブテン系組成物、エマルションスチレンブタジエンゴム系組成物、EPDM系組成物、およびシリコーン系組成物のうちの1つ以上である。例えば、シーラント剤は、米国特許第4,895,610号に記載されているように、ブチルゴムとポリイソブチレンとのブレンドであってもよい。他の実施態様では、シーラント剤は、米国特許第9,802,446号に記載されているように、発泡性グラフェン構造およびミクロスフェアを含む発泡固体から構成することができる。他の実施態様では、シーラント剤組成物が、少なくとも1つの非ハロゲン化ブチルゴムと2,2’-ジベンズアミド-二硫化ジフェニルとからなるものであってよく、シーラント剤組成物は、タイヤ組立プロセス中にシーラント剤組成物がタイヤに組み込まれることを可能にする粘度を有し、より低い粘度に低下させて、低下したシーラント剤組成物がタイヤのパンク穴に流入してシールすることが可能である。このシーラント組成物は、米国特許第8,360,122号により詳細に記載されている。
【0040】
他の実施態様では、発泡部材(すなわち、言い替えると、周方向に延びる発泡ストリップなどの発泡材)が、隣接する少なくとも2つの隆起部の半径方向内側表面に取り付けられ、それにより、少なくとも1つの空気キャビティが、前記隣接する隆起部と、発泡部材(例えば前記発泡ストリップ)の半径方向外側表面と、前記隣接する隆起部の間のシーラント剤層の表面との間に形成される。特に、シーラント剤層上の発泡ブロックまたは周方向に延びる発泡ストリップのような発泡部材の存在は、パンクの場合にシーラント剤の流動特性および/またはシーラント特性に悪影響を及ぼし得ることが見出されている。さらに、発泡体の存在は、タイヤキャビティに向かう熱伝導率の低減をもたらし、従って発熱の可能性の低減をもたらす。発泡部材(ブロックまたは周方向に延びるストリップなど)を、隣接する隆起部に取り付けることは、前記欠点を軽減するのに役立つ。
【0041】
他の実施態様では、複数の発泡ブロックがタイヤの周方向に沿って配置される。
【0042】
さらに他の実施態様では、発泡部材が、タイヤの軸方向中心で内面に沿って測定されたタイヤの内周の少なくとも50%、好ましくは少なくとも80%に相当する周方向長さに沿って連続的または不連続的に延びる少なくとも1つの発泡ストリップである。
【0043】
さらに他の実施態様では、発泡ストリップがタイヤの(中心)軸の周りに延びている。
【0044】
さらに他の実施態様では発泡部材(例えば発泡ブロックまたは発泡ストリップ)の軸方向幅は、シーラント剤層の最大の軸方向幅の20%から50%の範囲内である。タイヤは、前記ストリップまたはブロックのような複数の発泡部材を有していてよい。特に、発泡部材が取り付けられるタイヤの領域における不必要な発熱を回避するために、発泡部材の軸方向の幅を制限することが望ましい場合がある。一般に、発泡部材、特に発泡ストリップは、限定するものではない例では、多角形、例えば長方形の断面を有することができる。
【0045】
さらに他の実施態様では、発泡部材が、発泡部材が取り付けられている隣接する2つの隆起部の間の距離よりも大きい軸方向幅を有する。
【0046】
さらに他の実施態様では、発泡部材が、隣接する2つの隆起部に取り付けられた半径方向外側部分または最も外側の面よりも大きい軸方向幅を有する半径方向内側部分を有する。そのような実施態様は、シーラント剤層に近接する表面が限定された比較的大きな体積の発泡体をもたらす。
【0047】
他の実施態様では、各隆起部の軸方向幅が、周方向発泡ストリップなどの発泡部材の軸方向幅の50%よりも小さく、好ましくは30%よりも小さく、さらに好ましくは20%よりも小さい。
【0048】
さらに他の実施態様では、発泡部材、特にストリップまたはブロックは、シーラント剤層に面するコーティングまたは箔を含まない。
【0049】
他の実施態様では、発泡部材が、ノイズ減衰材、多孔質材、ポリマー発泡材、ポリウレタン発泡材、0.01g/cm3から1g/cm3の範囲内の密度を有する材料のうちの1つ以上を含む(またはこれらのうちの1つ以上からなる)。ダンピングおよび減衰という用語は、本明細書では交換可能に用いられる。
【0050】
他の実施態様では、発泡部材が、多孔質材、および/または、ポリウレタン発泡体(例えばポリエーテル-ウレタン、ポリエステル-ウレタン)、メラミン発泡体、ポリプロピレン発泡体、発泡ゴム(例えばEPDM、ネオプレン系発泡体)、天然材料系発泡体(例えばセルロース、キトサン系発泡体)、不織材(例えばポリエステル、ポリアミド、PE、PET、PP、セルロース、綿、羊毛または絹の、メルトブローン繊維、スパンレイドまたはエレクトロスピニングの繊維、または天然繊維からなるフェルト)のうちの1つ以上を含むか、またはそれらのうちの1つ以上からなる。それに加えて、またはその代わりに、発泡部材は、ポリウレタン発泡体、ポリエチレン発泡体、発泡ゴムなどのうちの1つ以上を含むか、またはそれらのうちの1つ以上からなる。好適なポリウレタン発泡体は、通常は、好適な発泡剤の存在する状態でのジイソシアネートおよびポリオールの重合によって形成される。本発明の実施において、広範な様々なゴム発泡体を用いることができ、天然ゴム、合成ポリイソプレンゴム、ポリブタジエンゴム、ニトリルゴム、およびスチレン-ブタジエンゴム発泡体が一般的に用いられている。このような発泡ゴムは、通常は、天然ゴムまたは合成ゴムのラテックスを化学発泡剤で発泡させることによって形成される。化学発泡剤は、通常は、アゾジカーボンアミドなどのアゾ化合物、ヒドラジン化合物、カルバジド、テトラゾール、ニトロソ化合物、および/または炭酸塩、例えば重炭酸ナトリウムであるだろう。
【0051】
さらに他の実施態様では、1つまたは複数の発泡ストリップが、周方向に沿って(好ましくは基本的に平行に)配置される。複数のストリップを設けることにより、ノイズ減衰材によって覆われる連続する領域の大きさを小さくすることができ、従って、ストリップの半径方向上方のタイヤ内の発熱を低減することができる。
【0052】
他の実施態様では、発泡部材が、連続気泡(オープンセル)発泡材から形成される。好ましくは、このような材料が、その材料中に、(全気泡の)55%から95%(または好ましくは60%から90%)の連続気泡を含む。連続気泡は、少なくとも1つの開口を有する気泡と理解することができる。言い替えると、連続気泡は、完全には閉じておらず、すなわち気泡壁(セルウォール)によって完全に囲まれてはいない。独立気泡(クローズドセル)発泡体は、このタイプの発泡体のほとんどの気泡が閉じているので、前述した範囲には入らない。完全に、またはほぼ完全に網状になった発泡体は、ほとんど壁を持たず、むしろ開放した格子を構成しているので、いずれもこの範囲には該当しない。連続気泡であるかどうか(すなわち、閉じているかどうか)は、例えば、光学顕微鏡法、SEMまたはNMRによって判定することができる。気泡のサイズは、通常は、(最大直径)10μmから1mmの範囲であり得る。
【0053】
他の実施態様では、発泡体が、タイヤキャビティノイズ、特に100Hzから300Hzの範囲、または100Hzから200Hzの範囲、または200Hzから300Hzの範囲のタイヤキャビティノイズを減衰させるために適応および/または使用される。本明細書に記載するように、タイヤキャビティという用語は、特に、何かに取り付けられておらず、膨張していない状態で、タイヤの内面(またはタイヤのインナーライナーが存在する場合にはインナーライナー)によって囲まれ、両方のビード部の半径方向に最も内側の縁部に接触する(仮想の)リング形状の周方向面によって閉じられた容積部分であるものとする。
【0054】
さらに他の実施態様では、発泡部材がシーラント剤に(直接)接着される。言い替えると、シーラント剤と発泡部材との間の境界部分は、追加の粘着性物質または接着剤を含まない。むしろ、発泡部材を適切な位置に保持するのは、シーラント剤の粘着性である。
【0055】
本発明の他の態様では、空気入りタイヤ、好ましくは前述した態様またはその例のうちの1つまたは複数に係る空気入りタイヤの製造方法が提供され、この方法は、
a)トレッド部と、任意に設けられる2つのビード部および各ビード部をトレッド部に連結する2つのサイドウォールと、を含み、トレッド部が複数の周方向溝を有する、非硬化の空気入りタイヤを提供するステップと、
b)タイヤを硬化するステップと、
c)硬化したタイヤの内面(例えばインナーライナー)に1つ以上のシーラント剤ストリップを貼り付けることにより、前記内面にシーラント剤層を形成し、トレッド部の周方向溝の半径方向下方(すなわち言い替えると半径方向内側)の領域においてシーラント剤層に隆起部を形成するステップと、
d)少なくとも1つの発泡部材を、隣接する2つの隆起部の半径方向に最も内側の部分に取り付けるステップと、のうちの1つまたは複数を含む。
【0056】
一実施態様では、シーラント剤層は、1つ以上のシーラント剤ストリップをタイヤの軸の周りに、かつタイヤの内面に沿って螺旋状に貼り付けることによって形成される。
【0057】
他の実施態様では、シーラント剤層を形成するステップは、タイヤをその回転軸を中心として回転させ、シーラント剤ストリップをタイヤの回転する内面上に押し出すことを含む。
【0058】
さらに他の実施態様では、ストリップが、シーラント剤ストリップを押し出している間にタイヤに対して軸方向に移動可能な、または移動された押出ヘッドおよび/またはダイによって押し出される。タイヤの前記回転とともに、周方向または螺旋状のストリップをタイヤの内面に貼り付けてよい。
【0059】
他の実施態様では、シーラント剤層が、タイヤの軸の周りにタイヤの内面に沿って周方向に延びる、軸方向に隣接する複数のシーラント剤ストリップを(同時に、または続けて)貼り付けることによって形成される。
【0060】
さらに他の実施態様では、前記ストリップが隆起部を形成するときに、より大きな厚さで押し出されるか、または貼り付けられる。
【0061】
さらに他の実施態様では、ストリップの複数の層(特に2層または3層)が、少なくとも隆起部において互いに上下に重なるように配置される。
【0062】
さらに他の実施態様では、シーラント剤ストリップは、2mmから15mm、好ましくは5mmから12mm、さらに好ましくは7.5mmから12mmまたは8mmから15mmの範囲内の軸方向幅を有する。
【0063】
さらに他の実施態様では、隆起部におけるシーラント剤のより大きい厚さは、より小さい半径方向厚さを有する領域よりも高速でシーラント剤ストリップを押し出すことと、より小さい半径方向厚さを有する領域よりも高い圧力でシーラント剤ストリップを押し出すことと、より大きい出口直径を有する(押し出し)ダイを使用することと、調節可能な、特に拡大可能な出口直径を有する押し出しダイを使用することと、隆起部においてストリップを押し出すときに、より小さい半径方向厚さを有する領域においてストリップを押し出すときよりも、タイヤをその回転軸の周りでより遅く回転させることと、のうちの1つまたは複数によってもたらされる。
【0064】
シーラント剤ストリップを前述したように貼り付けることは、発泡ストリップ、すなわち言い替えると、基本的に周方向に延びるノイズ減衰発泡ストリップとの組み合わせにおいて特に興味深い。
【0065】
さらに他の実施態様では、この方法が、シーラント剤層の軸方向幅全体にわたって1つまたは複数のシーラント剤ストリップの第1の層を貼り付けるステップと、1つまたは複数のシーラント剤ストリップの少なくとも第2の層を(不連続的にまたは連続的に)貼り付けるさらなるステップと、をさらに含み、シーラント剤ストリップの第2の層はシーラント剤の隆起部を形成する。
【0066】
一実施態様では、タイヤは、乗用車用タイヤ、トラック用タイヤ又はバス用タイヤである。
【0067】
他の実施態様では、タイヤは、少なくとも225の幅、好ましくは少なくとも245の幅を有する。
【0068】
さらに他の実施態様では、タイヤは夏用タイヤである。
【0069】
他の実施態様では、タイヤはオールシーズンタイヤであり、任意には、少なくとも1つのサイドウォール上に3ピークマウンテン・スノーフレーク記号(3PMSF記号)を示している。
【0070】
他の実施態様では、タイヤが、少なくとも1つのサイドウォール上に3ピークマウンテン・スノーフレーク記号(3PMSF記号)を示す冬用タイヤである。
【0071】
一般に、以下に説明される特徴だけでなく、本発明の異なる態様および実施形態の特徴を互いに組み合わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
図1】シーラント剤層を含む従来技術のタイヤの概略断面図を示す。
図2】本発明に係るシーラントタイヤの一実施形態の概略断面図を示す。
図3】シーラント剤層に取り付けられた発泡剤ストリップを含む従来技術のタイヤの概略断面図を示す。
図4】本発明の一実施形態に係るノイズ減衰シーラントタイヤの概略断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0073】
本発明の構造、作用および利点が、添付の図面とともに以下の説明を考察することにより、より明らかになるであろう。
【0074】
図1は、従来技術によるタイヤ1’の概略断面図である。この例のタイヤ1’は、トレッド部10と、2つのビード部3と、トレッド部10の軸方向外側縁部をそれぞれのビード部3に接合する2つのサイドウォール2と、を有する。トレッド部10は、複数の周方向溝9とリブ8とを有している。このような空気タイヤの構造は、タイヤ業界では一般的に公知である。タイヤ1’は、タイヤキャビティ6を画定する内面を有している。シーラント剤層5’が、トレッド部10と反対の領域においてタイヤ1’の内側すなわち内面に設けられている。シーラント剤層5’の厚さは、タイヤ1’の軸方向幅および外周にわたって基本的に一定である。理解しやすくするために、参照符号(数字)2,3,6,8,9および10は、図2~4の説明において以下に記載するのと同じ部材に用いられる。
【0075】
図2は、本発明の第1の実施形態に係るタイヤ1を示している。図1に示されているタイヤ1’と同様に、タイヤ1は、サイドウォール2と、ビード部3と、トレッド部10と、タイヤ1のインナーライナーによって任意に区切られているタイヤキャビティ6と、周方向溝9(すなわち言い替えると周方向の主溝)と、周方向リブ8と、を有している。
【0076】
図2に示す実施形態に係るシーラント剤層5は、タイヤ1の内面に沿って、周方向cおよび軸方向aに延びている。シーラント剤層5は4つの隆起部19を有し、各隆起部19は、軸方向において、溝9の半径方向下方に位置している。言い替えると、シーラント剤層5は、溝9の軸方向位置に、リブ8の半径方向下方の軸方向位置に配置された半径方向厚さがより小さい領域18よりも厚い部分を有する。結果として、溝の半径方向内側の領域の厚いシーラント剤は、リブ8の軸方向位置におけるトレッドゴム材が比較的厚い領域と比較してトレッドゴム材が比較的薄い領域において、タイヤ1のシール性能を向上させる。この構成は、シーラント剤のシーリング性と重量衝撃とを良好に折衷させる。特に、大量のシーラント剤は、結果としてタイヤ1の重量を増大させ、したがって、乗り心地およびハンドリング特性の低下につながる可能性がある。なお、図1に示すように、タイヤ1’と比較してコスト効率が向上する。さらに、リブ8の半径方向下方の領域に、厚さがより小さいシーラント剤を有することで、特に、高速性能の向上と頻繁なコーナリング操作のために、これらの領域で熱伝導性が向上し、および/または、発熱が回避される。図示されている隆起部19、すなわち言い換えると、半径方向内側方向のシーラント剤の突出部すなわち尾根部の相対的な厚さが、図1に概略的に示されていることに留意される。好ましい厚さの絶対値および相対値は、本明細書中で前述されている。限定するものではない実施形態では、シーラント剤層5の厚さは、隆起部19の間の領域18において約3.6mmであり、一方、隆起部19におけるシーラント剤層5の最大厚さは約4.5mmである。
【0077】
より分かりやすくするために、タイヤの幾何形状の説明において一般的に用いられている通り、軸方向a、周方向cおよび半径方向rが図2に示されている。方向という用語は、本明細書中で別途示されていない限り、特定の方位付けに限定されない。軸方向aは、タイヤ1の回転軸に平行な方向と理解することができる。周方向cは、タイヤ1の回転軸と同心であり、半径方向rは、タイヤ業界において一般に理解されている通り、回転軸から放射状に延びている。
【0078】
図3は、部材2,3,6,8,9,10を有する従来技術のタイヤ1”を、前述した図1および図2に関連して既に説明した通りに示しているが、ノイズ減衰部材7”を支持するシーラント剤層5”を含んでいる。このようなノイズ減衰部材7”は、運転時にタイヤキャビティ6内に発生するノイズを減衰または低減するために用いられてよい。このような構成の欠点は、断熱材としてシーラント剤層5”とともに作用するノイズ減衰部材7”の半径方向上方の比較的大きな発熱である。これは、タイヤの性能および/または安定性に悪影響を及ぼす可能性がある。さらに、このようなノイズ減衰部材7”は、トレッド内のパンクの穴へのシーラント剤の自由な流れを妨げることにより、シーラント剤の性能に悪影響を及ぼす可能性があることが判明している。従って、このような構成は、通常、コスト、重量および熱伝導率、従って、タイヤの性能にも悪影響をさらに及ぼす比較的厚いシーラント剤層5”を必要とする。
【0079】
本発明の好ましい実施形態によれば、前に説明した図面と同じ参照符号を再び用いて図4に示すように、タイヤ11の構造内で、貼り付け可能な周方向発泡ストリップ7などの発泡部材がシーラント剤層5に取り付けられている。限定するものではない例で、シーラント剤層5は、図2の実施形態と同じ形状を有し、それにより、溝9の半径方向下方に隆起部19を有し、リブ8の半径方向下方にシーラント剤の厚さがより薄い領域18を有する。発泡ストリップ7は、シーラント剤層5と発泡ストリップ7との間に空気キャビティ16を形成するように、2つの隆起部19に取り付けられている。したがって、発泡ストリップ7は、その軸方向幅全体にわたってシーラント剤層5に直接接触するわけではない。発泡ストリップの下方とリブの領域とにおける発熱は低減する。さらに、シーラント剤が発泡ストリップ7に接触する位置におけるシーラント剤の厚さが比較的大きいため、および隣接する2つの隆起部19の間の発泡ストリップ7によって覆われた領域の空気キャビティ16のために、発泡ストリップ7の半径方向上方のパンクの穴にシーラント剤が確実に流れる。さらに、周方向の主溝9の半径方向下方のシーラント剤の厚さが比較的大きいことで、安全性が向上する。全体の重量を減らし、熱伝導性を向上させるために、シーラント剤が領域18に蓄えられる。
【0080】
本実施形態では、発泡部材の一例として発泡ストリップ7を説明したが、複数の発泡ストリップセグメントを周方向に一列に並ぶように設けるか、または、複数の発泡ブロックを周方向に沿って設け、軸方向に隣接する少なくとも2つの隆起部に取り付けることも可能である。
【0081】
周方向の発泡ストリップ7のような発泡部材は、図4に示すように、タイヤ11の軸方向中心に配置される、すなわち言い替えると、タイヤ11の赤道面EPに沿って配置されることが好ましい。このような配置は、タイヤのバランスを向上させる。
図1
図2
図3
図4
【外国語明細書】