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特開2022-97453触覚センサ、触覚センサの製造方法及び触覚センサにおけるダイナミックレンジの調整方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022097453
(43)【公開日】2022-06-30
(54)【発明の名称】触覚センサ、触覚センサの製造方法及び触覚センサにおけるダイナミックレンジの調整方法
(51)【国際特許分類】
   G01L 1/12 20060101AFI20220623BHJP
【FI】
G01L1/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021204959
(22)【出願日】2021-12-17
(31)【優先権主張番号】P 2020209856
(32)【優先日】2020-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (1)株式会社KRI主催のKRIクライアントカンファレンス・ワークショップにおいてウェブポスター形式で公開 発表日 令和3年10月22日~23日 (2)株式会社KRI主催のKRIクライアントカンファレンス・ワークショップにおいてウェブ上で講演 発表日 令和3年10月23日
(71)【出願人】
【識別番号】591167430
【氏名又は名称】株式会社KRI
(72)【発明者】
【氏名】藤井 泰久
(72)【発明者】
【氏名】出口 朋枝
(72)【発明者】
【氏名】松本 信子
(57)【要約】
【課題】構造が簡単で押圧力の検出を信頼性高く行える触覚センサを提供する。
【解決手段】磁界の変化を検出する磁気センサ2と、磁気センサ2の配設位置に磁界を形成する磁性体層3とを備え、磁気センサ2と磁性体層3の間に非磁性体からなる弾性体層4を備えた触覚センサ1を構成するに、磁性体層3を着磁方向を調整した磁性体粒子6を非磁性の可撓性材料内に分散させた磁性エラストマーから構成し、押圧力を受ける押圧部と着磁方向調整部とを備え、当該着磁方向調整部に分散された磁性体粒子6の着磁方向を、磁気センサ2から磁性体層3に向かう方向であるセンサ厚方向とする。
【選択図】図16

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁界の変化を検出する磁気センサと、
前記磁気センサの配設位置に磁界を形成する磁性体層とを備え、
前記磁気センサと前記磁性体層の間に非磁性体からなる弾性体層を備えた触覚センサであって、
前記磁性体層が、着磁方向を調整した磁性体粒子を非磁性の可撓性材料内に分散させた磁性エラストマーからなるとともに、少なくとも一部に押圧力を受ける押圧部を備え、
前記分散された前記磁性体粒子の着磁方向が調整された着磁方向調整部を備え、
当該着磁方向調整部において、前記磁性体粒子の着磁方向が前記磁気センサから前記磁性体層に向かう方向であるセンサ厚方向、若しくは前記センサ厚方向とは反対方向とされている触覚センサ。
【請求項2】
前記磁性体層が中央領域と前記中央領域を囲う周部領域とからなり、
前記中央領域に対向する位置に前記磁気センサが配置されている請求項1記載の触覚センサ。
【請求項3】
前記磁性体層が中央領域と前記中央領域を囲う周部領域とからなり、
前記周部領域に対向する位置に、少なくとも3個の前記磁気センサが分散配置されている請求項1又は2記載の触覚センサ。
【請求項4】
前記弾性体層に空隙部を備え、
前記弾性体層が多環状に形成されるとともに、
前記空隙部が前記弾性体層に挟まれた環状の空隙として形成されている請求項1~3の何れか一項記載の触覚センサ。
【請求項5】
検出対象とする最大押圧力を前記中央領域に受ける最大押圧状態において、
前記磁性体層の前記磁気センサ側面が、前記磁気センサから離間した位置となる請求項記載の触覚センサ。
【請求項6】
前記磁性体層の極性方向が、当該磁性体層の全面において前記磁気センサから前記磁性体層に向かう方向であるセンサ厚方向、若しくは前記センサ厚方向とは反対方向とされている請求項1~5の何れか一項記載の触覚センサ。
【請求項7】
前記磁性体層が中央領域と前記中央領域を囲う周部領域とから形成され、
前記磁性体層の極性方向が、
前記中央領域において、前記磁気センサから前記磁性体層に向かう方向であるセンサ厚方向、若しくは前記センサ厚方向とは反対方向とされ、
前記周部領域において、前記中央領域の極性方向に従って、当該周部領域から前記中心に向かうセンサ幅方向、若しくは前記センサ幅方向とは反対方向とされている請求項1~5の何れか一項記載の触覚センサ。
【請求項8】
前記磁気センサを支持する基板上に、前記弾性体層、前記磁性体層が順に設けられ、
平面視、前記基板、前記弾性体層及び前記磁性体層の外形形状が同一とされている請求項1~7の何れか一項記載の触覚センサ。
【請求項9】
前記少なくとも3個の磁気センサが、前記中央領域を囲んで周方向に均等配置され、
前記少なくとも3個の磁気センサの出力を処理して、前記押圧力により押圧される前記磁性体層の位置を推定する押圧位置推定手段を備えた請求項3記載の触覚センサ。
【請求項10】
前記弾性体層を挟んで一方側に前記磁気センサを保持する基板を、他方側に前記磁性体層を備えて構成されるととともに、前記基板、弾性体層及び磁性体層が平面視同形且つ膜状に構成され、前記磁性体層のヤング率Y3と前記弾性体層のヤング率Y4の比〔Y4/Y3〕が、0.01~3.6の範囲内とされている請求項1~9の何れか一項記載触覚センサ。
【請求項11】
前記磁性体層のヤング率Y3と前記弾性体層のヤング率Y4の比〔Y4/Y3〕が、0.4~0.6の範囲内とされている請求項10記載の触覚センサ。
【請求項12】
前記磁性体層のヤング率Y3と前記弾性体層のヤング率Y4の比〔Y4/Y3〕が、0.01~0.4の範囲内とされている請求項10記載の触覚センサ。
【請求項13】
前記押圧部にかかる押圧力(N)と前記磁気センサの配設位置の磁束密度(mT)との関係が、0~0.23Nの押圧力の範囲において、0~0.8mTである請求項10記載の触覚センサ。
【請求項14】
前記押圧部にかかる押圧力(N)と前記磁気センサの配設位置の磁束密度(mT)との関係が、0~7Nの押圧力の範囲において、0~0.8mTの検出出力である請求項10記載の触覚センサ。
【請求項15】
前記磁性体粒子が、ネオジム磁石粒子、サマリウム・鉄磁石粒子、サマリウム・コバルト磁石粒子、フェライト磁石粒子から選択される何れか一種、もしくはそれらの組み合わせであり、
前記非磁性の可撓性材料が流動性材料を硬化させた樹脂である請求項1~14の何れか一項記載の触覚センサ。
【請求項16】
センサ幅方向において前記空隙部に対応する位置に、前記磁気センサが配置されている請求項4又は5記載の触覚センサ。
【請求項17】
請求項1から16の何れか一項記載の触覚センサの製造方法であって、
硬化処理前の前記非磁性の可撓性材料内に前記磁性体粒子を分散する分散工程を実行し、
前記分散工程で得られた流動性を有する前駆体を所定形状に成形し、当該前駆体の周部に着磁の為の着磁用磁石を配置して極性方向が領域別に設定された磁性体層を使用する触覚センサの製造方法。
【請求項18】
請求項10記載の触覚センサにおけるダイナミックレンジの調整方法であって、
ダイナミックレンジが大きな触覚センサを第一触覚センサ、ダイナミックレンジが小さい触覚センサを第二触覚センサとして、
前記第一触覚センサの弾性体層のヤング率を前記第二触覚センサの弾性体層のヤング率より大きく設定するダイナミックレンジの調整方法。
【請求項19】
請求項10記載の触覚センサにおけるダイナミックレンジの調整方法であって、
ダイナミックレンジが大きな触覚センサを第一触覚センサ、ダイナミックレンジが小さい触覚センサを第二触覚センサとして、
前記第一触覚センサに於ける前記弾性体層の層厚を前記第二触覚センサに於ける前記弾性体層の層厚より厚く設定するダイナミックレンジの調整方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、
磁界の変化を検出する磁気センサと、
前記磁気センサの配設位置に磁界を形成する磁性体層とを備え、
前記磁気センサと前記磁性体層の間に非磁性体からなる弾性体層を備えた触覚センサに関する。
【背景技術】
【0002】
上記のような触覚センサの例として、特許文献1に開示される触覚センサを挙げることができる。
この触覚センサは、磁気センサ11、弾性体12(弾性体層に相当)、磁性膜13(磁性体層に相当)を備えて構成され、磁性膜13上に所定の磁気パターンを形成している。この触覚センサでは、図1~4に示されるように、触覚センサに沿って働くせん断力を磁気センサの出力として検出する。
明細書の記載から判断すると、この触覚センサにおいて磁性膜13に設定される磁気パターンはS極及びN極を対として認識され、磁気センサがS極領域からN極領域に渡る磁界変化を検知して触覚検知が可能となると理解される。
【0003】
一方、触覚センサとしては静電容量式のセンサがよく使用される。
静電容量式触覚センサの一例は特許文献2に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-165856号公報
【特許文献2】特開平8-5482号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
現今、触覚センサの一用途として、ロボットが把持動作する場合に指先の把持力を好適に検出する用途がある。この種の用途では、触覚センサが比較的小型且つ薄型であることが必要とされるとともに、例えば0.01N(1g重程度)からの低荷重から10N(1kg重程度)の範囲において把持力を分解能良く、定量的に検出する必要がある。また、把持は指先による押圧力とせん断力により行われるが、少なくとも押圧力は検出する必要がある。
【0006】
さらに、同じく指先による押圧といっても、触覚センサの中央領域か、中央領域を離れた周部領域におけるどの部位に押圧力が掛っているかを知る要請もある。即ち、多極検出が要請される。
【0007】
今般、発明者はこの種の問題に着目した。
上記の観点から先行技術を評価すると、特許文献1に開示の構造では、触覚センサを小型且つ薄型にすることは可能であるが、図1~4に示すように、主な検出対象がせん断力となり押圧力に適切に対応できない。結果、把持力の定量化も難しい。同様の理由から多極検出も難しい。
【0008】
一方、特許文献2に開示の構造では、押圧、せん断方向の力を検出可能とは理解できるが、触覚センサの小型且つ薄型化が難しく、さらに内部に可撓性の電極が必要となり、検出対象が1極から5極となると電極自体が非常に複雑な構成となる。また、センサ容量的には、これが小さいため寄生容量の影響が出易く、環境条件である湿度の影響を大きく受ける等の問題がある。
【0009】
この実情に鑑み、本発明の主たる課題は、構造が簡単で少なくとも押圧力の検出を信頼性高く行える触覚センサを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1特徴構成は、
磁界の変化を検出する磁気センサと、
前記磁気センサの配設位置に磁界を形成する磁性体層とを備え、
前記磁気センサと前記磁性体層の間に非磁性体からなる弾性体層を備えた触覚センサであって、
前記磁性体層が、着磁方向を調整した磁性体粒子を非磁性の可撓性材料内に分散させた磁性エラストマーからなるとともに、少なくとも一部に押圧力を受ける押圧部を備え、
前記分散された前記磁性体粒子の着磁方向が調整された着磁方向調整部を備え、
当該着磁方向調整部において、前記磁性体粒子の着磁方向が前記磁気センサから前記磁性体層に向かう方向であるセンサ厚方向、若しくは前記センサ厚方向とは反対方向とされている点にある。
【0011】
本特徴構成によれば、磁性体層の変形を磁気センサの出力として検出するが、磁気センサと磁性体層との間に弾性体層を挟むことにより、磁性体層に変形を許容して押圧力の検出が可能となる。さらに、前記着磁方向調整部に分散された前記磁性体粒子の着磁方向を、前記磁気センサから前記磁性体層に向かう方向であるセンサ厚方向、若しくは前記センサ厚方向とは反対方向とされていることにより、磁気センサ部位での磁界の変化量を大きく確保でき、検出分解能をこれまでの技術より格段に大きくできる。
ここで、着磁方向調整部における磁性体粒子の着磁方向は、センサ厚方向かその逆方向との何れか一方の方向とする。例えば、図2に示すラジアル着磁タイプでは、磁性体層の一部である中央領域Iの着磁方向が同図上方向とされ、図3に示す単着磁タイプでは、磁性体層の全体が同図上方向とされる。
また、弾性体層を柔軟性のあるものとして変形に伴う局所的な応力集中を抑制でき、繰り返し検出でのヒステリシスの発生を抑えることができる。しかも、センサ構造として静電容量式ではないため、構造が複雑となる、湿度の影響を受け易い等の問題が生じることはない。
【0012】
本発明の第2特徴構成は、
前記磁性体層が中央領域と前記中央領域を囲う周部領域とからなり、
前記中央領域に対向する位置に前記磁気センサが配置されている点にある。
【0013】
磁性体層への押圧力の付与は基本的には中央領域に対して行われるが、本特徴構成によれば、この押圧力を磁気センサで良好に検出できる。
【0014】
本発明の第3特徴構成は、
前記磁性体層が中央領域と前記中央領域を囲う周部領域とからなり、
前記周部領域に対向する位置に、少なくとも3個の前記磁気センサが分散配置されている点にある。
【0015】
本特徴構成によれば、周部領域に分散された磁気センサにより平面として押圧力による変形を受容して、押圧力が中央領域から外れて掛かる場合にも検出が可能となる。
この構成において、少なくとも3個の磁気センサに加えて、中央領域に対向する位置に磁気センサを備えておくと、中央に掛る押圧力を精度よく検出できるとともに、偏ってかかる押圧力にも対応できる。
【0016】
本発明の第4特徴構成は、
前記弾性体層内に空隙部を備え、
前記弾性体層が多環状に形成されるとともに、
前記空隙部が前記弾性体層に挟まれた環状の空隙として形成されている点にある。
【0017】
本特徴構成によれば、
磁気センサと磁性体層との間に空隙部を有する弾性体層を挟むことにより、磁性体層に比較的大きな変形を許容して押圧力の検出が可能となる。
ここで、弾性体層を多環状とすることで、空隙部を十分確保できるとともに多環の中央に対して均等な負荷変形を起こすことが可能となり、検出の信頼性が高まる。
【0018】
本発明の第5特徴構成は、
検出対象とする最大押圧力を前記中央領域に受ける最大押圧状態において、
前記磁性体層の前記磁気センサ側面が、前記磁気センサから離間した位置となる点にある。
【0019】
本特徴構成によれば、最大押圧状態でも空隙が確保されることで、検出精度を確保できるとともに、上記したヒステリシスの発生を抑制できる。
【0020】
本発明の第6特徴構成は、
前記磁性体層の極性方向が、当該磁性体層の全面において前記磁気センサから前記磁性体層に向かう方向であるセンサ厚方向、若しくは前記センサ厚方向とは反対方向とされている点にある。
【0021】
本特徴構成によれば、磁気センサの配設位置の磁界を比較的強く、センサ厚方向(あるいはその逆方向)にできることで、検出精度を上げることができる。
【0022】
本発明の第7特徴構成は、
前記磁性体層が中央領域と前記中央領域を囲う周部領域とから形成され、
前記磁性体層の極性方向が、
前記中央領域において、前記磁気センサから前記磁性体層に向かう方向であるセンサ厚方向、若しくは前記センサ厚方向とは反対方向とされ、
前記周部領域において、前記中央領域の極性方向に従って、当該周部領域から前記中心に向かうセンサ幅方向、若しくは前記センサ幅方向とは反対方向とされている点にある。
【0023】
本特徴構成によれば、中心近傍の押圧力に対して、磁気センサの配設位置の磁界を比較的強く確保しながら、検出出力において分解能と定量性の高い出力を得ることができる。
【0024】
本発明の第8特徴構成は、
前記磁気センサを支持する基板上に、前記弾性体層、前記磁性体層が順に設けられ、
平面視、前記基板、前記弾性体層及び前記磁性体層の外形形状が同一とされている点にある。
【0025】
本特徴構成によれば、基板により触覚センサの機能部位(磁気センサ、弾性体層、磁性体層)を良好に支持できるとともに、比較的構成簡単で実用性の高い触覚センサを実現できる。さらに、製作も容易である。
【0026】
本発明の第9特徴構成は、
前記少なくとも3個の磁気センサが、前記中央領域を囲んで周方向に均等配置され、
前記少なくとも3個の磁気センサの出力を処理して、前記押圧力により押圧される前記磁性体層の位置を推定する押圧位置推定手段を備えた点にある。
【0027】
本特徴構成によれば、統計的に得ることができるデータから押圧位置推定手段を構築することで、押圧位置推定手段により押圧位置の推定を良好に行える。
【0028】
本発明の第10特徴構成は、
前記弾性体層を挟んで一方側に前記磁気センサを保持する基板を、他方側に前記磁性体層を備えて構成されるととともに、前記基板、弾性体層及び磁性体層が平面視同形且つ膜状に構成され、前記磁性体層のヤング率Y3と前記弾性体層のヤング率Y4の比〔Y4/Y3〕が、0.01~3.6の範囲内とされている点にある。
【0029】
本特徴構成によれば、基板に磁気センサを保持した状態で、押圧部を備えた磁性体層を弾性体層を挟んで支えることとなり、磁気センサの配設位置の磁界を良好に変化させることができる。また、これら層を同形、膜状とすることで、一体性の高い触覚センサを容易にえることができる。
ここで、前記磁性体層のヤング率Y3と前記弾性体層のヤング率Y4の比〔Y4/Y3〕を、0.01~3.6の範囲内とすることで、様々なダイナミックレンジの触覚センサを得ることができる(後述する第4実施形態の1~3参照)。
また、ヒステリシスの調整の用も果たせる(後述する第4実施形態の4,5参照)。
【0030】
本発明の第11特徴構成は
前記磁性体層のヤング率Y3と前記弾性体層のヤング率Y4の比〔Y4/Y3〕が、0.4~0.6の範囲内とされている点にある。
【0031】
本特徴構成によれば、
本特徴構成によれば、ダイナミックレンジを比較的狭くしながら、分解能の高い検出を行える。
【0032】
発明者らに検討によれば、本発明の第13の特徴構成に示すように、
前記押圧部にかかる押圧力(N)と前記磁気センサの配設位置の磁束密度(mT)との関係が、押圧力0~0.23N(23g重程度)の範囲において、磁束密度0~0.8mTである触覚センサを得ることができる(後述する第4実施形態の2参照)。
【0033】
本発明の第12特徴構成は
前記磁性体層のヤング率Y3と前記弾性体層のヤング率Y4の比〔Y4/Y3〕が、0.01~0.4の範囲内とされている点にある。
【0034】
弾性体層のヤング率を比較的小さく設定することで、ダイナミックレンジを比較的広くすることができる。この場合、当然に分解能は低くなる。
【0035】
発明者らに検討によれば、本発明の第14の特徴構成に示すように、
前記押圧部にかかる押圧力(N)と前記磁気センサの配設位置の磁束密度(mT)との関係が、押圧力0~7N(700g重程度)の範囲において、磁束密度0~0.8mTである触覚センサを得ることができる(後述する第4実施形態の1参照)。
【0036】
換言すると、本発明の触覚センサにおけるダイナミックレンジを調整する場合、
本発明の第18特徴構成に示すように、
ダイナミックレンジが広い触覚センサを第一触覚センサ、ダイナミックレンジが狭い触覚センサを第二触覚センサとして、前記第一触覚センサの弾性体層のヤング率を前記第二触覚センサの弾性体層のヤング率より大きく設定する。この点、後述するように、第一触覚センサと第二触覚センサにおいて、磁性体層の組成及びその厚みを同一とし、さらに弾性体層の厚みを同一とする場合、ヤング率の大小関係でダイナミックレンジを調整でき、結果的に分解能の調整が成される(後述する第4実施形態の2,3参照)。
【0037】
これまでの説明では、ダイナミックレンジの調整に関して、弾性体層のヤング率により調整するダイナミックレンジを調整する方法を述べたが、弾性体層の層厚(膜厚)によっても調整することはできる。
即ち、本発明の第19特徴構成に示すように、ダイナミックレンジが広い触覚センサを第一触覚センサ、ダイナミックレンジが狭い触覚センサを第二触覚センサとして、
前記第一触覚センサに於ける前記弾性体層の層厚を前記第二触覚センサに於ける前記弾性体層の層厚より厚く設定して調整する。第一触覚センサと第二触覚センサにおいて、磁性体層の組成及びその厚みを同一とし、さらに弾性体層のヤング率を同一とする場合、層厚の調整でダイナミックレンジを調整でき、結果的に分解能の調整が成される。
【0038】
本発明の第15特徴構成は、
前記磁性体粒子が、ネオジム磁石粒子、サマリウム・鉄磁石粒子、サマリウム・コバルト磁石粒子、フェライト磁石粒子から選択される何れか一種、もしくはそれらの組み合わせであり、
前記非磁性の可撓性材料が流動性材料を硬化させた樹脂である点にある。
【0039】
本特徴構成によれば、磁気センサの配設位置での磁界を確実に確保でき、磁性体層を薄くできるとともに、その検出精度を確保できる。
【0040】
本発明の第16特徴構成は、
センサ幅方向において前記空隙部に対応する位置に、前記磁気センサが配置されている点にある。
【0041】
本特徴構成によれば、磁気センサの近接に空隙部を確保することで、磁気センサ近傍での磁性体層の変形、特に磁気センサへの近接・離間動作が可能となり、検出の精度が上がる。さらに、磁性体層に分散された磁性体粒子が局所的に集中し、この要因により、検出出力にヒステリシスが生じるのを低減できる。
【0042】
本発明の第17特徴構成は、
触覚センサの製造方法であって、
硬化処理前の前記非磁性の可撓性材料内に前記磁性体粒子を分散する分散工程を実行し、
前記分散工程で得られた流動性を有する前駆体を所定形状に成形し、当該前駆体の周部に着磁の為の着磁用磁石を配置して極性方向が領域別に設定された磁性体層を使用する点にある。
【0043】
本特徴構成によれば、磁気センサの配設位置を考慮した、磁性体層における各領域での極性方向を適切に設定でき、結果的に触覚センサの使用目的(押圧力の絶対値検出を主な目的とする。押圧力の負荷位置の検出を主な目的とする等)に応じた極性設定を行える。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1】弾性体層に空隙部を備えた触覚センサの基本構造を示す分解斜視図
図2】ラジアル着磁タイプの磁性体層の極性説明図
図3】単極着磁タイプの磁性体層の極性説明図
図4】磁性体層の製造工程を示すフロー図
図5】ラジアル着磁タイプの磁性体層の製造工程を示す図
図6】単着磁タイプの磁性体層の製造工程を示す図
図7】弾性体層の構成を示す図
図8】基板と一体化した弾性体層の構成を示す図
図9】数値モデルの構成を示す図
図10】押圧力を10g重から1kg重とした場合の解析モデルの変形状態を示す図
図11】押圧力と磁気センサ位置での磁束密度の関係を示す図
図12】第2実施形態に係る触覚センサの構成を示す分解斜視図
図13】第3実施形態の触覚センサにおける磁気センサの配置状態を示す図
図14】第3実施形態の触覚センサにおける押圧力の負荷状態(中心負荷)を示す図
図15】第3実施形態の触覚センサにおける押圧力の負荷位置(上下左右独立負荷)を示す図
図16】第4実施形態の触覚センサの構造を示す分解斜視図
図17】第4実施形態の1の触覚センサの特性を示す図
図18】第4実施形態の2の触覚センサの特性を示す図
図19】第4実施形態の3の触覚センサの特性を示す図
図20】第4実施形態の4の触覚センサの特性を示す図
図21】第4実施形態の5の触覚センサの特性を示す図
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下、図面を参照して本発明について説明する。
本実施の形態では、第1実施形態、第2実施形態、第3実施形態及び第4実施形態に関して説明する。ここで、第1~第3実施形態は、A:弾性体層に空隙部を設ける形態であり(図1図7,8参照)、第4実施形態は、B:弾性体層に空隙部を設けない形態である(図16参照)。
【0046】
〔基本構成〕
本発明に係る触覚センサ1は、磁界の変化を検出する磁気センサ2、この磁気センサ2の配設位置に磁界を形成する磁性体層3を備え、これら磁気センサ2と磁性体層3の間に非磁性体からなる弾性体層4を備えて構成される。
具体的には、図1図16に示す例では、触覚センサ1は磁気センサ2を支持する基板5上に、弾性体層4、磁性体層3を順に設けて構成されており、平面視、基板5、弾性体層4及び磁性体層3の外形形状が同一円盤状とされている。
【0047】
この構成を採用することにより、本発明に係る触覚センサ1は、前記磁性体層3が押圧力を受けて変形(主にはセンサ厚方向Hに変形)した場合に、前記磁気センサ2の配設位置における磁界が変化することとなり、この変化を磁気センサ2で検出することができる。従って、前記磁性体層3は、その一部若しくは全体が本発明に於ける「押圧部」としての働きをする。
【0048】
本発明の触覚センサ1において、「センサ厚方向H」は磁気センサ2、弾性体層4、磁性体層3の積層方向であり、図1図16においては上下方向となる。一方、「センサ幅方向W」は前記「センサ厚方向H」に直交する方向であり、図1においては左右方向となる。図1に示すように、触覚センサ1を概略円盤状のシートとして構成する場合、この「センサ幅方向W」は円盤の中心Oに対して、この中心Oに近接する、あるいは中心Oから離間する方向が「ラジアル方向R」となる。
【0049】
さらに、本発明に係る触覚センサ1では、円盤の中心Oを含む領域と、その周辺の領域とに対して領域間で磁極方向を異ならせる場合があるが、中心Oを含む領域を「中央領域I」と、この中央領域Iに対してその外側周辺に位置する領域を「周部領域F」と呼ぶことがある。
【0050】
磁気センサ2
磁気センサ2としては、例えば、ホールセンサ、磁気抵抗センサ、及び磁気インピーダンスセンサ等を用いることができる。
各実施形態では、磁気センサ2として、リニアホールIC・3ピン(旭化成社製 EQ430L)を使用した。このホールセンサは、その縦×横×高さが3mm×3.6mm×1.2mm程度の直方体形状である。
【0051】
磁性体層3
磁性体層3としては、着磁方向を調整した磁性体粒子6を非磁性の可撓性材料7内に分散させた磁性エラストマーを用いることができる。
【0052】
磁性体粒子6としては、強磁磁性粒子、例えば、平均粒径3~200μm程度の強磁性体粒子を用いることができる。強磁磁性粒子としては、ネオジム磁石(Nd-Fe-B系磁石)粒子が代表的であるが、この種の材料として希土類を主成分とする強磁性粒子を好適に採用することが有効であり、例えば、サマリウム・鉄磁石(Sm-Fe-N系磁石)粒子、サマリウム・コバルト磁石(Sm-Co系磁石)粒子、フェライト磁石粒子等も使用できる。
磁性体層3全体に対する、磁性体粒子6の混合割合は5~40%(体積%)とすることが好ましい。
【0053】
以下に示す各実施形態では、磁性体粒子6としてネオジム磁石粒子(Magnequench社製;製品名 MQFP-15-7)を利用した。その平均粒径は5μm、密度は7.6g/cmであった。
さらに、磁性体粒子6の混合割合は20%(体積%)とした。
【0054】
非磁性の可撓性材料7としては、硬化処理前の状態で流動性を有し、前記磁性体粒子6を混合可能で、かつ、硬化後の状態で可撓性を備えていればよい。例えば、シリコンエラストマー、エポキシエラストマー、不飽和ポリエステルエラストマー等を採用できる。さらに、非磁性体となっており硬化後に可撓性を備えておれば、フェノール、ウレタン、アクリル等を例示できる。
【0055】
磁性体層3を、上記の磁性体粒子6と非磁性の可撓性材料7のみから構成する場合は、可撓性材料7の割合は、上記磁性体粒子6の混合割合を除いた残量、即ち95~60%(体積%)となる。
【0056】
第1実施形態、第2実施形態、第3実施形態では、非磁性の可撓性材料7としてシリコーンポッティングゲル(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製 TSE3062)を使用した。この材料は主剤と硬化剤とを混合することにより得ることができる二液性であり、その混合比を調整することで材料のヤング率が調整可能である。
第1実施形態、第2実施形態、第3実施形態で使用したこの材料のヤング率は0.5〔MPa〕、ポアソン比は0.49〔―〕とした。この可撓性材料7の割合は80%(体積%)とした。
第4実施形態では、非磁性の可撓性材料7として、上記TSE3062の他、シリコンエラストマー(ダウ・東レ株式会社製 PDMS)を使用した。
この材料も主剤と硬化剤とを混合することにより得ることができる二液性であり、混合比は調整が可能である。第4実施形態では、主剤と硬化剤との混合比を変えて、この材料のヤング率を調整した(第4実施形態の項参照)。この可撓性材料7の割合は80%(体積%)とした。
【0057】
本実施形態では、着磁方向を調整した磁性体粒子6の分散状態に関して2つの着磁タイプを紹介する。一方が「ラジアル着磁タイプ」であり、他方が「単極着磁タイプ」である。各タイプの磁性体層3における極性分布を図2図3に示した。これらの図において、矢印は極性方向を示しており、極性表示はS極からN極に向かう方向としている。
【0058】
磁性体層3を成す磁性エラストマーは、その製造工程が独特であり、図4に示すように、1.前駆体製造工程(分散工程S1、成形工程S2)、2.着磁工程S3を経て製造する。
【0059】
1 前駆体製造工程
この工程は、図4に示すように、分散工程S1と成型工程S2とからなる。
分散工程S1は、硬化処理前の非磁性の可撓性材料7内に磁性体粒子6を分散して一次前駆体X1を得る工程である。即ち、図5(a)、図6(a)に示すように硬化処理前、流動性を有する非磁性の可撓性材料7内に所定量の磁性体粒子6を混合し、撹拌することにより一次前駆体X1を得ることができる。ここで製造される一次前駆体X1は流動性を有するため所定の型内で成形可能である。
【0060】
成型工程S2は、前記分散工程S2で得られた一次前駆体X1に関して、混合分散されている磁性体粒子分散可塑性材料を成型する工程である。即ち、図5(b)、図6(b)に示すように、当該混合材料を型Mに注いで、硬化させる。硬化に際しては、ヒータRにより加熱することが好ましい。
【0061】
2 着磁工程
この工程は、前駆体製造工程で得られた二次前駆体としての磁性エラストマーX2をその周部に、着磁用磁石8a,8b,9,90を配置して、磁性体層3の極性方向を領域別に設定し着磁する工程である。ここで、着磁用磁石としては、図5(c)、図6(c)左図に示すように、永久磁石8a,8b,9を使用できる他、図6(c)右図に示すように、電磁石90も使用することができる。図5(c)、図6(c)に、それぞれこの工程の概要を示しているが、使用する着磁用磁石8a,8b,9,90の形状および配置が着磁タイプにより異なるため、以下、個別に説明する。
【0062】
1 ラジアル着磁タイプ
図2からも判明するように、このタイプでは、磁極方向を、磁性体層3の中央領域Iにおいて、磁気センサ2から磁性体層3に向かう方向であるセンサ厚方向Hとしており、周部領域Fにおいて、中央領域Iの極性方向に従って、即ち磁力線の方向が同一となるようにして、当該周部領域Fから中心Oに向かう方向としている。
【0063】
このラジアル着磁タイプの着磁
このタイプの着磁工程S3を模式的に示したのが図5(c)である。
図からも判明するように、概略円盤状に成形された磁性エラストマーX2を保持する形態で、この磁性エラストマーX2の周部に、複数分割された永久磁石8aを分散配置するとともに、磁性エラストマーX2の中央領域I上下に、この領域Iを挟んで断面円状の永久磁石8bを配置して、磁性エラストマーX2の着磁処理を実行する。
【0064】
前者の永久磁石8aは、複数組み合わせて、磁性エラストマーX2を、その周辺全域からドーナツ状に囲むように形成・配置し、外径側を一方の極(図示するものはS極)としており、内径側を他方の極概(図示するものはN極)としている。図5(c)では、理解を容易とするため磁性エラストマーX2の後方(裏面側)に位置する永久磁石8aのみを示した。
【0065】
後者の永久磁石8bは、円盤状をなす磁性エラストマー体X2の中央領域Iを、その上下から挟むように配置し、磁性エラストマーX2の中央領域Iに関して、その底面から上面に向かうように磁極を形成する。即ち、図示する例では、上側及び下側に配置される永久磁石8bに関しては、底面をS極とし上面をN極とする。
着磁用磁石としては、永久磁石8a,8bの他、電磁石(図示省略)も使用できる。
このようにすることで、ラジアル着磁タイプの磁性体層3を得ることができる。
【0066】
この例では、磁極方向を周部領域Fから中央領域Iに向かう方向とし、中央領域Iから上面に抜ける方向としているが、当然に着磁方向を選択(図5(c)に示すS,N極の方向を逆とする)ことで、磁極方向を逆転することも可能である。
従って、このラジアル着磁タイプでは、中央領域I(磁性体層3の一部)が、本発明の「着磁方向調整部」となり、当該部位に分散された磁性体粒子6の着磁方向が、ほぼその全域において前磁気センサ2から磁性体層3に向かう方向であるセンサ厚方向、若しくはこのセンサ厚方向とは反対方向となっている。ここで、中央領域Iと周部領域Fとの領域比は、上記製造手法からも判るように任意に設定できるが、例えば、中央領域Iと周部領域Fとの領域比を1:1~1:10程度とすることができる。押圧力を受ける押圧部は、磁性体層3の一部とも全部ともすることができる。
【0067】
2 単極着磁タイプ
図3からも判明するように、この単極着磁タイプでは、磁性体層3の極性方向が、当該磁性体層3の全面において磁気センサ2から前記磁性体層3に向かう方向であるセンサ厚方向Hとしている。
この単極着磁タイプの着磁工程S3を示したのが図6(c)である。
このタイプの例では、着磁を前タイプと同様に永久磁石9を使用して行う場合と、電磁石90を使用して行う場合との両方を模式的に示している。図6(c)において左側の図面が永久磁石9を使用する場合であり、同図右側が電磁石90を使用する場合の例である。
図からも判明するように、概略円盤状の磁性エラストマーX2を保持する形態で、この磁性エラストマーX2の上下に、磁性エラストマーX2と同径以上の断面円状の着磁用磁石9、90を配置して、磁性エラストマーX2の着磁処理を実行する。このタイプの場合、磁性エラストマーX2の周部には何も配置しない。
このようにすることで、単極着磁タイプの磁性体層3を得ることができる。
【0068】
この例においても、当然に着磁方向を選択(図6(c)に示すS,N極の方向を逆とする)ことで、磁極方向を逆転することも可能である。
従って、この単極着磁タイプでは、磁性体層3の全部が、本発明の「着磁方向調整部」となり、当該部位に分散された磁性体粒子6の着磁方向が、前磁気センサ2から磁性体層3に向かう方向であるセンサ厚方向、若しくはこのセンサ厚方向とは反対方向となっている。押圧力を受ける押圧部は、磁性体層の一部とも全部ともすることができる。
【0069】
弾性体層4
弾性体層4は、弾性を有する非磁性体でこれを構成することができる。
【0070】
この層に使用する弾性を有する非磁性体としては、例えば、先に示したシリコンエラストマーは代表例である。エポキシエラストマー、不飽和ポリエステルエラストマー等やさらに、非磁性体となっており硬化後に可撓性を備えておれば、フェノール、ウレタン、アクリル等を例示できる。この種のシリコンエラストマー、エポキシエラストマー、不飽和ポリエステルエラストマー等のヤング率は概略0.01~10.0Mpaである。
第1、第2、第3実施形態では、シリコーンポッティングゲル(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製 TSE3062)を使用した。
第4実施形態では、上記TSE3062の他、上記したシリコンエラストマー(ダウ・東レ株式会社製 PDMS)も使用した。
【0071】
図1図7から判明するように、第1、第2、第3実施形態に係る触覚センサ1では、この弾性体層4の構造として独特の構造を採用している。
弾性体層4は概略円盤状としているが、表面側(磁性体層3の配置側)に複数の環状の溝10が穿たれている。結果、弾性体層4は多環状(図に示すものは4環)に形成され、これら環状部位の間が、弾性体層4に挟まれた環状の空隙部として形成されている。図に示すものは4環となっている。さらに、弾性体層4の中央にも円状の溝11が形成され、この部位も空隙部となっている。
結果、この弾性体層4は、その断面形状として、後述する数値モデルの断面を示す図9からも判明するように、複数の柱状支持部4で磁性体層3を支持する構造が採用されている。
図16から判明するように、第4実施形態に係る触覚センサ1では、この弾性体層4は単純な円盤状としている。即ち、上記の空隙部は設けていない。
【0072】
基板5
基板5は、弾性体層4を構成する非磁性体と同質もしくはそれより硬い非磁性体で構成することができる。この種の非磁性体材料としては、例えば、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂またはジアリルフタレート樹脂等を採用できる。さらに、非磁性体となっており可撓性を備えておれば好ましく、先に示した、シリコンエラストマー、フェノール、ウレタン、アクリル等を例示できる。また、弾性材料でなくても良く、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリメチルぺンテン、ポリブタジエン、ポリイミドなどの熱可塑性樹脂なども例示できる。
【0073】
図1図16に示した例は、この基板5を前記弾性体層4とは別体に円盤状に形成した例である。基板5には磁気センサ2の収納部20を設けている。この構成では弾性体層4に関しては、弾性体層4の底部を基板5に固定して、この層4を支持する。従って、センサ幅方向Wにおいて、空隙部(円状の溝11)に対応する位置(図上下側)に、磁気センサ2が配置されている。
【0074】
一方、基板5は、弾性体層4と一体化することもできる。図8に示す例がこの例であり、同図(a)は溝10、11が穿たれた弾性体層・基板一体化物50を表面側から見た斜視図である。この一体化物50の表面には複数の溝10、11を穿ち、4環状の柱状支持部を設けている。同図(b)は一体化物50の裏面図であり、磁気センサ2の収納部20が穿たれている。この構成を採用する場合、一体化物50は、強度を増し、基板5及び弾性体層4の肉厚を合算した肉厚となる。
【0075】
以上の説明から明らかなように、本発明に係る触覚センサ1では、磁気センサ2に対向する形態で、弾性体層4を挟んで、その上部を覆うように磁性体層3が設けられることにより、磁気センサ2の配設位置に磁界が形成される。そして、磁性体層3が押圧力を受けて変形(主には磁気センサ2側にひずむ)すると、磁気センサ2周りの磁界が変化することにより、この変化を磁気センサ2が検出することとなる。
【0076】
図1に示す触覚センサ1は弾性体層4内に空隙部10,11を設けているため、多数回の検出を繰り返し行うことによっても検出精度が変わらないという一つの特徴がある。
【0077】
以上が、本発明に係る触覚センサ1の共通構成であるが、以下、個々の実施形態に関して説明する。
【0078】
A:弾性体層に空隙部を設ける形態(第1,第2,第3実施形態)
1.第1実施形態
この実施形態の構成は、これまで説明してきた図1に示したものである。
磁気センサ2は触覚センサ1の底部中央に位置され、磁性体層3としては、ラジアル着磁タイプのものを採用した。さらに、弾性体層4と基板5とは別個とした。
【0079】
触覚センサ1の構成概要を、以下に整理しておく。
外形形状 ;基板5、弾性体層4及び磁性体層3の外形形状 円盤状で同一径
外径15mm、全センサ厚2mm
基板5 ;厚1.2mm
磁気センサ2;個数 単数、位置 センサ中央領域I
弾性体層4 ;4環柱状(図7に示すもの)
層厚0.5mm
磁性体層3 :ラジアル着磁タイプ(図2に示すもの)
層厚0.3mm
【0080】
この触覚センサ1の検出動作を、図9に示す数値モデルにて数値実験にて検証した。検証に際しては、触覚センサ1の要部を有限要素に分割し、押圧負荷に対して静解析と磁場解析を行った。この数値モデルでは基板5及び弾性体層4の底面は省略している。
【0081】
同図には、触覚センサ1の各部位の符号に従って符号を付した。さらに、30は押圧力を掛ける指先の数値モデルである。弾性体層4(柱状支持部)のヤング率は0.5〔MPa〕、ポアソン比は0.49〔―〕とし、指先のヤング率は、7.0〔MPa〕とした。弾性体層3の磁化の強さは、0.25〔T〕とし、比透磁率を1.05とした。
【0082】
図9に押圧力が加えていない無負荷状態を示し、図10(a)(b)にそれぞれ押圧力を加えた状態を示している。
【0083】
数値実験の結果、無負荷状態で、磁気センサ2の配置位置での磁束密度は5.8mTとなった。図10(a)に示す押圧力10g重(0.1N程度)で、5.9mTであった。さらに、図10(b)に示す押圧力1kg重(10N程度)で、28.1mTであった。
【0084】
図10(b)から判明するように、この例における触覚センサ1にあっては、検出対象とする最大押圧力(1kg重)を中央領域Iに受ける最大押圧状態において、磁性体層3の磁気センサ2側面が、磁気センサ2から離間した位置とできた。
【0085】
図11に、この第1実施形態の触覚センサ1における押圧力〔g〕と磁気センサ2の配設位置での磁束密度〔mT〕の関係を示した。この図では押圧力の単位を単に〔g〕と記載しているが、当該質量の物質により生じる力(重力加速度を積算した値)となる。ここで、同図において直線近似する場合と指数近似する場合の結果を示した。結果、上述の押圧力範囲(10g重~1kg重)で十分分解能が得られることがわかる。
【0086】
2.第2実施形態
この実施形態は、第1実施形態で示した触覚センサ1の構成に、弾性体層4と基板5との間に緩衝層としての付加弾性体層40を加えるとともに、磁性体層3をラジアル着磁タイプのものとする他、単着磁タイプのものに変えた場合の実施形態である。この構成の触覚センサ1を図12に示した。
【0087】
触覚センサ1の構成概要を第1実施形態の記載に従って以下に整理した。
触覚センサ1 ;基板5、弾性体層4、付加弾性体層40及び磁性体層3の外形形状 円盤状で同一径
外径15mm、全センサ厚3mm
基板5 ;厚1.2mm
磁気センサ2 ;個数 単数
位置 センサ中央領域I
弾性体層4 ;4環柱状(図12に示すもの)
層厚0.5mm
付加弾性体層40;円盤状(図12に示すもの)
層厚0.5mm
磁性体層3 :ラジアル着磁タイプ及び単着磁タイプ(図2及び図3に示すもの)
層厚0.8mm
【0088】
第2実施形態において、磁性体層3をラジアル着磁タイプとする場合の、磁気センサ2で検出された磁束密度は無負荷状態で5.38mTであり、10g重の押圧負荷状態で、5.4mTであった。
磁性体層3を単着磁タイプとする場合の、磁気センサ2で検出された磁束密度は、無負荷状態で11.5mTであり、10g重の押圧負荷状態で、11.6mTであった。
従って、付加弾性体層40を加えた場合も単着磁タイプの磁性体層3を使用すると、10g重の分解能を得られる。
【0089】
3,第3実施形態
この実施形態は、多極センサとしての本発明の触覚センサ1の可能性に関する検討を行った。
磁気センサ2の個数及び配置
検討に使用した触覚センサ1は、磁気センサ2の個数及び配置を除いて第2実施形態のものと基本同一とした。
【0090】
図13に、この実施形態における磁気センサ2の配置を示した。この図面は先に説明した数値モデルに対応している。同図で(a)は平面視図を示し、Pで押圧負荷を中心に掛ける場合を例示した。(b)は底面視図であり、黒方形で示す各磁気センサ2の配設位置に対応した主検出領域を示している。図からも判明するように、磁気センサ2は、触覚センサ1の中心Oを外した周部領域Fに周方向に均等3位置に配置した。
【0091】
触覚センサ1の構成概要を第1実施形態の記載に従って以下に整理した。

触覚センサ1 ;基板5、弾性体層4、付加弾性体層40及び磁性体層3の外形形状 円盤状で同一径
外径15mm、全センサ厚3mm
基板5 ;厚1.2mm
磁気センサ2 ;個数 3
位置 センサ中央領域Iを囲って周方向に3ヶ所均等配置
弾性体層4 ;4環柱状(図12に示すもの)
層厚0.5mm
付加弾性体層40;円盤状(図12に示すもの)
層厚0.5mm
磁性体層3 :ラジアル着磁タイプ(図2に示すもの)
層厚0.8mm
【0092】
このように中心周りに均等分散して配置した磁気センサ2により検出できた各磁気センサ2の配置位置における磁束密度の変化量〔mT〕を示したのが下記する表1である。
【0093】
図14,15にこの実施形態における押圧力の負荷位置Pを示した。
図14(a)は触覚センサ1の中心Oに所定面積を有する押圧力を負荷した状態を示しており、(b)に平面視での押圧力位置Pを示している。
図15は、図14(b)に対応する平面視での押圧力負荷位置Pを示し、触覚センサ1の中心に対して、それを囲む状態で位相90度ごとに負荷位置を変えている。図面上は中心周りの上下左右で独立した位置となる。
【0094】
表1においては、図13(a)において中心Oに対して右上側に位置する磁気センサ2を「上磁気センサ」、この磁気センサ2は対して時計方向120度回転した位置に配置した磁気センサ2を「右下磁気センサ」、さらに120度回転した位置に配置した磁気センサ2を「左下磁気センサ」と呼んでいる。
【0095】
【表1】
【0096】
表1から、3個の磁気センサ2を周部領域Fに周方向で均等配置する場合は、負荷位置に従って以下の特徴的な出力を得ることができる。
【0097】
負荷位置Pを中心Oとする場合、各磁気センサ2でほぼ均等な検出出力を得ることができる。
負荷位置Pを上とする場合、右下及び左下磁気センサに特徴的な検出出力を得ることができる。
負荷位置Pを下とする場合、全ての磁気センサに特徴的な検出出力を得ることができる。
負荷位置Pを左とする場合、左下磁気センサに特徴的な検出出力を得ることができる。
負荷位置Pを右とする場合、右下磁気センサに特徴的な検出出力を得ることができる。
【0098】
以上の結果により、周方向に均等分散配置した磁気センサ2の検出出力を利用して、磁気センサ2に設定する縦横方向(中心を原点とするX-Y方向)の位置、あるいはラジアル位置(中心からの径R及び周回角度Θ)を、統計的処理より近似式として得ることができる。
【0099】
縦横方向で使用する統計的に求めることができる近似式の例は以下の式となる。
X=x1*(上磁気センサの検出出力)+x2*(右下磁気センサの検出出力)+x3*(右下磁気センサの検出出力)+XC
Y=y1*(上磁気センサの検出出力)+y2*(右下磁気センサの検出出力)+y3*(右下磁気センサ2の検出出力)+YC
ここで、x1~x3、y1~y3は係数、XC,YCは定数である。
【0100】
従って、上記のような近似式に従って押圧力の作用位置を推定する手段を押圧位置推定手段と呼ぶ。ここでは、センサの個数として3個の例を示したが、3個以上の磁気センサ2を備えることにより、中心O、中心Oを囲む4位置に関する検出(所謂5極センサ機能)を行うことができる。
【0101】
即ち、本発明の触覚センサ1は、少なくとも3個の磁気センサ2が、中央領域Iを囲んで周方向に均等配置され、これら少なくとも3個の磁気センサ2の出力を処理して、押圧力により押圧される磁性体層3の位置を推定する押圧位置推定手段を備えて、5極センサとして働く。
以上説明したように、第1~第3実施形態の触覚センサ1は、押圧力範囲0~10N(0g重~1kg重程度)で十分分解能が得られることがわかる。
【0102】
B:弾性体層に空隙部を設けない形態(第4実施形態)
この実施形態の構成は、これまで説明してきた図16に示したものである。
磁気センサ2は触覚センサ1の底部中央に位置され、磁性体層3としては、単極着磁タイプのものを採用した。さらに、弾性体層4と基板5とは別個とした。
【0103】
本明細書では、第4実施形態として、第4実施形態の1~第4実施形態の5まで紹介する。以下に、これら実施形態の共通する構成の概要を整理した。
【0104】
外形形状 ;基板5、弾性体層4及び磁性体層3の外形形状 円盤状で同一径
外径15mm若しくは8mm、全センサ厚2mm
基板5 ;厚1.2mm
;材質;エポキシ樹脂(ヤング率;3.0〔GPa〕)
磁気センサ2;個数 単数、位置 センサ中央領域I
弾性体層4 ;円盤状(空隙部なし)
;層厚0.5mm
;材質;PDMS若しくはTSE3062
磁性体層3 :単極着磁タイプ(図3に示すもの)
層厚0.3mm
;基材材質;PDMS若しくはTSE3062
;磁性体粒子 ネオジム磁石粒子(Nd粒子)
;混合割合20%(体積%)
【0105】
第4実施形態の1~5では、外径、弾性体層4の材質及び磁性体層の材質が異なるため、以下に整理して示す。
整理に際しては、第4実施形態の別、外径、弾性体層4の材質及びそのヤング率Y4;、弾性体層4を得るための主剤と硬化剤の比、磁性体層3の構成材の材質及びそのヤング率Y3、磁性体層3の主剤と硬化剤の比を記した。
【0106】
第4実施形態の1
外径 ;15mm
弾性体層4;材質;PDMS(ヤング率Y4=0.02MPa)
主剤と硬化剤の比;40:1
磁性体層3;材質;PDMS+Nd粒子(ヤング率Y3=1.38MPa)
主剤と硬化剤の比;20:1
【0107】
第4実施形態の2
外径 ;15mm
弾性体層4;材質;TSE3062(ヤング率Y4=0.02MPa)
主剤と硬化剤の比;1:1
磁性体層3;材質;TSE3062+Nd粒子(ヤング率Y3=0.04MPa)
主剤と硬化剤の比;1:1
【0108】
第4実施形態の3
外径 ;15mm
弾性体層4;材質;PDMS(ヤング率Y4=0.14MPa)
主剤と硬化剤の比;30:1
磁性体層3;材質;TSE3062+Nd粒子(ヤング率Y3=0.04MPa)
主剤と硬化剤の比;1:1
【0109】
第4実施形態の4
外径 ;8mm
弾性体層4;材質;PDMS(ヤング率Y4=0.14MPa)
主剤と硬化剤の比;30:1
磁性体層3;材質;PDMS+Nd粒子(ヤング率Y3=0.37MPa)
主剤と硬化剤の比;30:1
【0110】
第4実施形態の5
外径 ;15mm
弾性体層4;材質;TSE3062(ヤング率Y4=0.02MPa)
主剤と硬化剤の比;1:1
磁性体層3;材質;PDMS+Nd粒子(ヤング率Y3=1.38MPa)
主剤と硬化剤の比;20:1
【0111】
〔第4実施形態の触覚センサの特性試験〕
試験に際しては、各第4実施形態の接触センサを作成して、磁性体層3の天面に接触センサ1の外径と同等な負荷領域を設定し、押圧負荷速度0.05mm/secで、下記する所定の荷重を負荷した。
【0112】
上記第4実施形態の1,2、3は、本接触センサ1により検出可能な荷重範囲を確認する試験とし、負荷荷重0~最大荷重までを10等分して各回の到達所定荷重とした。
各回の負荷荷重試験において、圧縮、所定荷重への到達、緩和を単位負荷荷重試験として順に繰り返した。また、同一の負荷荷重での試験回数を10回とした。得られた結果を図17、18、19に示した。これらに図において、横軸は、センサ位置の磁束密度〔mT〕を示し、縦軸は負荷荷重〔g〕を示している。図上に示す式は、磁束密度と負荷荷重との間の一次近似式である。これらの図では負荷荷重の単位を単に〔g〕と記載しているが、当該質量の物質により生じる力(重力加速度を積算した値)となる。
図17に示す第4実施形態の1では、0~700g重(0~7N程度)までを10等分している。図18に示す第4実施形態の2では、0~23g重(0~0.23N程度)までを10等分している。図19に示す第4実施形態の3では、0~160g重(0~1.60N程度)までを10等分している。
ここでは負荷荷重を基本に説明しているが、最大荷重は磁気センサ2の配設位置での磁束密度が0.8mTとなる荷重を検出可能な負荷荷重判断の基準とした。結果からも判るように、良好な直線性を示した。
【0113】
上記第4実施形態の4,5は、所定の荷重範囲(具体的には0~1N(100g重程度))の範囲で、現れるヒステリシスを確認する試験とした。
この試験においては、所定の最大荷重(1N)まで、0.2N刻みで、段階的に増加圧縮を行うとともに、各負荷荷重で磁気センサの出力電圧を得る「圧縮過程」を実行し、負荷荷重0Nまで、0.2N刻みで、段階的に減少緩和を行うとともに、各負荷荷重で磁気センサの出力電圧を得る「緩和過程」を実行した。従って、ヒステリシスは、同一の負荷荷重に於ける圧縮過程の出力電圧と緩和過程の出力電圧との差となる。
第4実施形態の4の結果を図20に第4実施形態の5の結果を図21に示した。
これら図の横軸は、負荷荷重〔N〕を示し、縦軸は磁気センサの出力電圧〔V〕を示している。これらの図には、「圧縮過程」を黒丸で示し、「緩和過程」を白丸で示した。
【0114】
〔第4実施形態の触覚センサの特性〕
第4実施形態の1
負荷荷重が0~700g重(0~7N程度)の範囲内で、センサ配設位置の磁束密度が0~0.8mTの範囲で線形に変化しており、この負荷荷重範囲内で押圧力である負荷荷重を良好に検出できることが分る。この結果を下記する第4実施形態の2と比較すると、この触覚センサは、「広域ダイナミックレンジ用」に使用できる。
この実施形態は、磁性体層のヤング率Y3と前記弾性体層のヤング率Y4の比〔Y4=0.02/Y3=1.38〕が0.014となっており、比を0.01~0.4の範囲内とする触覚センサの一例となる。
【0115】
第4実施形態の2
負荷荷重が0~23g重(0~0.23N程度)の範囲内で、センサ配設位置の磁束密度が0~0.8mTの範囲で線形に変化しており、この負荷荷重範囲内で押圧力である負荷荷重を良好に検出できることが分る。この結果を第4実施形態の1と比較すると、この触覚センサは、「狭域ダイナミックレンジ用」に使用できることが分る。即ち、「超高感度用」の接触センサとなる。
この実施形態は、磁性体層のヤング率Y3と前記弾性体層のヤング率Y4の比〔Y4=0.02/Y3=0.04〕が0.5となっており、比を0.4~0.6の範囲内とする触覚センサの一例となる。
【0116】
第4実施形態の3
負荷荷重が0~160g重(0~1.60N程度)の範囲内で、センサ配設位置の磁束密度が0~0.8mTの範囲で線形に変化しており、この負荷荷重範囲内で押圧力である負荷荷重を良好に検出できることが分る。この結果を第4実施形態の1,2と比較すると、この触覚センサは、「中間ダイナミックレンジ用」に使用できることが分る。
この実施形態は、磁性体層のヤング率Y3と前記弾性体層のヤング率Y4の比〔Y4=0.14/Y3=0.04〕が3.5となっており、比を3.6以下とする触覚センサの一例となる。
この実施形態を第4実施形態の2と比較すると、磁性体層のヤング率Y3が同一で、弾性体層のヤング率Y4のヤング率を大きくすることで(余の条件は同一)、ダイナミックレンジが広がっていることが分る。
【0117】
以上の第4実施形態の2、3の比較から、
本発明の触覚センサにおけるダイナミックレンジを調整する場合、
ダイナミックレンジが広い触覚センサを第一触覚センサ、ダイナミックレンジが狭い触覚センサを第二触覚センサとして、
第一触覚センサの弾性体層のヤング率を第二触覚センサの弾性体層のヤング率より大きく設定することにより、ダイナミックレンジを調整できることが分る。
【0118】
第4実施形態の4
負荷荷重が0~1Nの範囲内で、磁気センサの出力電圧が1~2Vの範囲で線形に変化しており、この負荷荷重範囲内で押圧力である負荷荷重を,ほぼヒステリシス無く検出できることが分る。この結果を第4実施形態の5と比較すると、この触覚センサは、ヒステリシスの低減効果が大きい。この例では、出力電圧幅0V(負荷荷重1N時の電圧出力-負荷荷重0時の電圧出力)に対する最大ヒステリシスHmax(負荷荷重0.2N時のヒステリシス)の比〔Hmax/OV×100〕が7.3%となり、良好な結果であった。
この実施形態は、磁性体層のヤング率Y3と前記弾性体層のヤング率Y4の比〔Y4=0.14/Y3=0.37〕が0.38となっており、比を0.01~0.4の範囲内とする触覚センサの一例となる。この例では、ダイナミックレンジを比較的大きくとりながら、ヒステリシスの低減された触覚センサが得られた。
【0119】
第4実施形態の5
負荷荷重が0~1Nの範囲内で、磁気センサの出力が1~2Vの範囲で変化しており、この負荷荷重範囲内で押圧力である負荷荷重を検出できることが分る。
前記磁性体層のヤング率Y3と前記弾性体層のヤング率Y4の比〔Y4=0.02/Y3=1.38〕が0.014となっており、比を0.01~0.4の範囲内とする触覚センサの一例となる。ただし、「圧縮過程」と「緩和過程」との間に出力電圧〔V〕の差であるヒステリシスが残る。
【0120】
以上の第4実施形態の4、5の比較から、
本発明の触覚センサにおけるヒステリシスの低減には、磁性体層のヤング率Y3と弾性体層のヤング率Y4の比〔Y4/Y3〕の調整が有用であり、発明者らは、この比を、0.1以上に調整するのか好ましいと考えている。
【0121】
結果、第4実施形態の触覚センサ1は広域ダイナミックレンジ、中域ダイナミックレンジ及び狭域ダイナミックレンジの範囲で十分な分解能を持って使用できることがわかる。さらに、ヒステリシスの調整も可能となっている。このセンシング特性は、本発明が目的とする、指先の把持力の検出に特に有用となっている。
【0122】
〔別実施形態〕
(1)上記の実施形態では、弾性体層4の構成として4円環状の構成を示したが、この環の数は任意に選択できるとともに、円環に限らす三角環、四角環等任意の形状とすることができる。
この場合、磁性体層3に掛かる押圧力の形態、磁気センサ2の形状、大きさ、配置位置に従って任意の形状を選択できる。さらに、触覚センサ1の耐荷重を考慮して弾性体層4の構成を決定することが好ましい。例えば、図7に示すものと、図12に示したものとを比較すると、後者の方が耐荷重は高くできる。
【0123】
(2)上記の実施形態では、成形工程S2と着磁工程S3とを別工程として説明したが、成形・着磁の結果、着磁方向を調整した磁性体粒子を非磁性の可撓性材料内に分散させた磁性エラストマーが得られればよく、これら両工程を同時に実行してもよい。
【0124】
(3)弾性体層を構成する材料としては、シリコンエラストマー、エポキシエラストマー、不飽和ポリエステルエラストマー等や、非磁性体となっており硬化後に可撓性を備えておれば、フェノール、ウレタン、アクリル等を例示できる。この種のシリコンエラストマー、エポキシエラストマー、不飽和ポリエステルエラストマー等のヤング率は概略0.01~10Mpa程度であり、この程度のヤング率の弾性体層に対して、本発明において採用できる磁性体層のヤング率Y3とこの弾性体層のヤング率Y4の比〔Y4/Y3〕としては、0.01~3.6の範囲内で採用可能であることを発明者等は確認した。
【0125】
(4)上記の実施形態では、ダイナミックレンジの調整に関して、主に、磁性体層のヤング率Y3の調整に関して説明したが、磁性体層3と弾性体層4との層厚の調整でも可能である。即ち、ダイナミックレンジが広い触覚センサを第一触覚センサ、ダイナミックレンジが狭い触覚センサを第二触覚センサとして、第一触覚センサと第二触覚センサにおいて、磁性体層3の組成及びその厚みを同一とし、さらに弾性体層4のヤング率を同一とする場合、第一触覚センサに於ける弾性体層4の層厚を第二触覚センサに於ける弾性体層4の層厚より厚く設定して調整することができる。そして、層厚の調整でダイナミックレンジを調整、分解能の調整を行うことができる。
【0126】
(5)上記の実施形態では、第3実施形態で、磁気センサ2を複数分散配置した構成に関して説明し、第4実施形態で磁気センサ2を中央領域Iに単一配置した構成について説明したが、当然、第4実施形態の構成(空隙部を設けない構成)において、複数の磁気センサ2を分散配置してもよい。
【符号の説明】
【0127】
1 触覚センサ
2 磁気センサ
3 磁性体層
4 弾性体層
5 基板
6 磁性体粒子
7 可撓性材料
8a 永久磁石(着磁用磁石)
8b 永久磁石(着磁用磁石)
9 永久磁石(着磁用磁石)
10 環状溝(空隙部)
11 円状の溝(空隙部)
20 収納部
40 付加的弾性体層
50 基板・弾性体層一体化物
90 電磁石(着磁用磁石)
F 周部領域
H センサ厚方向
I 中央領域
M 数値モデル
O 中心
R ラジアル方向
S1 分散工程(前駆体製造工程)
S2 成形工程(前駆体製造工程)
S3 着磁工程
W センサ幅方向
X1 一次前駆体
X2 磁性エラストマー(前駆体)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21