(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022097464
(43)【公開日】2022-06-30
(54)【発明の名称】マニピュレータ用のグリッパ
(51)【国際特許分類】
B25J 15/08 20060101AFI20220623BHJP
【FI】
B25J15/08 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021205219
(22)【出願日】2021-12-17
(31)【優先権主張番号】20215363
(32)【優先日】2020-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】511082414
【氏名又は名称】システム 3アール インターナショナル アーベー
【氏名又は名称原語表記】SYSTEM 3R INTERNATIONAL AB
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ウォルター ロス
(72)【発明者】
【氏名】ジョエル エーベルハルト
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707ES03
3C707ET08
3C707EU14
3C707GS03
3C707HS14
(57)【要約】 (修正有)
【課題】対象物を高速かつ確実に把持し、対象物をローディングおよびアンローディングするための自動ハンドリングアセンブリ用のグリッパを提供する。
【解決手段】対象物を把持するためのハンドリングアセンブリ用のグリッパであって、対象物に取り付けられる連結要素とハンドリングアセンブリに取り付けられる基体であって、ハウジングの外側に配置された締付けブラケットとハウジング内に配置され締付けブラケットに動作可能に接続された締付け機構を含み締付けブラケットはラッチ状態とラッチ解除状態とを有しており、ラッチ状態では締付けブラケットがハウジングに近接した位置に引き寄せられ、ラッチ解除状態では締付けブラケットがハウジングから押し離され、非作動時には、締付けブラケットをラッチ状態に戻し、それによって、連結要素をハウジングに締め付けることができる、基体と、を備えるグリッパに関する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物(1)を把持するためのハンドリングアセンブリ用の、特にハンドリングロボット用のグリッパ(100)であって、
a)前記対象物に取り付けられる連結要素(10)と、
b)前記ハンドリングアセンブリに取付け可能な基体(20)であって、ハウジング(21)と、該ハウジングの外側に配置された締付けブラケット(30a,30b)と、前記ハウジング内に配置され、前記締付けブラケットに動作可能に接続された締付け機構と、を含み、前記締付けブラケットは、ラッチ状態とラッチ解除状態とを有しており、前記ラッチ状態では、前記締付けブラケットが前記ハウジングに近接した位置に引き寄せられ、前記ラッチ解除状態では、前記締付けブラケットと前記ハウジングとの間に前記連結要素を収容するために、前記締付けブラケットが前記ハウジングから押し離され、前記締付け機構は、空気圧駆動または液圧駆動による作動時には、前記締付けブラケットを前記ラッチ状態から前記ラッチ解除状態に強制的に変更することができ、非作動時には、前記締付けブラケットを前記ラッチ状態に戻し、それによって、前記連結要素を前記ハウジングに締め付けることができる、基体(20)と、
を備えるグリッパ(100)。
【請求項2】
前記締付け機構は、前記ハウジングに取り付けられて前記締付けブラケットを前記ラッチ位置に保持する保持手段(53)を備えており、特に、前記保持手段はばねである、請求項1記載のグリッパ。
【請求項3】
前記締付け機構は、ピストン(51)と、一端部が前記締付けブラケットに固定的に接続され、他端部が前記ピストンに動作可能に接続されて、前記ピストンの運動を前記締付けブラケットに伝達するピストンロッド(45a,45b)と、を備えている、請求項1または2記載のグリッパ。
【請求項4】
前記締付け機構は、前記ピストンロッドと前記ピストンとの間に接続されたスライダ(60)を備えており、前記スライダは、第1の方向への前記ピストンの運動を第2の方向への前記ピストンロッドの運動に変換するように、前記ピストンロッドに係合され、特に、前記第1の方向と前記第2の方向とは互いに直交している、請求項1から3までのいずれか1項記載のグリッパ。
【請求項5】
前記スライダは、前記ピストンの運動に追従するように前記ピストンに接続され、前記ピストンロッドに形成された案内ピン(48a)が係合される案内溝(61,61a,61b)を備えており、前記案内ピンは、前記スライダの運動中に前記案内溝に沿って移動可能である、請求項4記載のグリッパ。
【請求項6】
前記ばねは、前記ピストンと、前記ハウジングの内面、特に前記ハウジングの前壁の内面との間に取り付けられ、前記ばねは、前記締付けブラケットが前記ラッチ解除状態にある際に圧縮され、特に、圧縮された前記ばねは、前記締付けブラケットを前記ラッチ状態に保持するために部分的に弛緩される、請求項2から5までのいずれか1項記載のグリッパ。
【請求項7】
前記スライダは、弛緩された前記ばねによって前記ピストンに作用する保持力を増幅させて、前記連結要素と前記ハウジングとを締め付ける締付け力を生成するように構成されており、特に、前記締付け力は前記保持力の少なくとも2倍大きく、好ましくは、前記締付け力は前記保持力の10倍大きい、請求項6記載のグリッパ。
【請求項8】
前記案内溝は、第1の部分(62)と第2の部分(63)とを有しており、前記案内溝は、前記案内ピンが前記第1の部分にロック可能であるように構成されており、特に、前記第1の部分と前記第2の部分とは、異なる傾角(α,β)を有しており、好ましくは、前記第1の部分は、前記第2の部分の傾角(β)よりも小さい傾角(α)を有している、請求項5から7までのいずれか1項記載のグリッパ。
【請求項9】
2つの前記締付けブラケット(30a,30b)が設けられており、前記締付けブラケットの各々は、前記ハウジングの各側方に取り付けられて、前記連結要素と前記ハウジングとを両側方から締め付け、特に、2つの前記側方は互いに対向する側である、請求項1から8までのいずれか1項記載のグリッパ。
【請求項10】
前記ハウジングの外面に少なくとも1つの支持領域(58)が形成されており、該支持領域には、前記連結要素が前記ハウジングに締め付けられる際に前記締付け力の影響が与えられ、前記支持領域に清掃孔(59)が設けられており、特に、前記清掃孔は、前記締付け状態の検出を可能にする、請求項1から9までのいずれか1項記載のグリッパ。
【請求項11】
前記締付けブラケットの高さは前記基体の高さに等しい、請求項1から10までのいずれか1項記載のグリッパ。
【請求項12】
前記締付けブラケットは、前記ピストンロッドを接続するための中央部分と、前記中央部分から突出した2つの締付けジョー(40a,41a)とを有するU字形状を有しており、特に、前記中央部分と前記締付けジョーとは一体形に形成される、請求項1から11までのいずれか1項記載のグリッパ。
【請求項13】
前記締付けジョーに、特に前記締付けジョーの第1の締付け領域(31a)および/または第2の締付け領域に近接して、清掃のために空気を吹き出すことができる清掃出口(36a)が設けられている、請求項1から12までのいずれか1項記載のグリッパ。
【請求項14】
空気圧的な移送手段(56)および/または電気的な移送手段(57)が、前記ハウジングに設けられており、特にハウジングの頂部に配置される、請求項1から13までのいずれか1項記載のグリッパ。
【請求項15】
前記連結要素は、前記基体の前記ハウジングに設けられた少なくとも2つの取付け孔(55)に挿入可能な少なくとも2つの接続ピン(15)を有している、請求項1から14までのいずれか1項記載のグリッパ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物をローディングおよびアンローディングするための自動ハンドリングアセンブリ用の、特にハンドリングロボット用のグリッパに関する。特に、本発明は、工作機械で使用されるパレットまたは工作物を把持するロボット用のグリッパに向けられる。
【背景技術】
【0002】
自動ハンドリングアセンブリは、産業界において特定の動作を自動的に実行することができる装置であり、例えばハンドリングロボットがこれに当たる。自動化は生産効率を向上させることができる。頻繁に使用される自動化動作の1つは、対象物のローディングおよびアンローディングである。1つの特有の用途として、機械加工産業がある。機械加工の前に、最初に工作物を工作機械にローディングしなければならず、機械加工の後に、生産された部品を工作機械からアンローディングしなければならない。通常、工作物は締付け手段を備えたパレットに取り付けられ、パレットは工作機械の工作台に自動的に締め付けられる。このような用途では、機械加工される工作物を有するパレットをマガジンから取り出して工作機械にローディングし、機械加工された部品を有するパレットを再びマガジンにローディングするために、ハンドリングロボットが使用される。ハンドリングロボットにとって重要な要素の1つは、パレットを安全に把持するためのグリッパである。多くの場合、グリッパは高重量を把持することが求められる。
【0003】
中国特許出願公開第107433484号明細書には、把持装置のメインプレートと把持装置のツールプレートとを備える、パレット交換システムの把持装置が記載されている。把持装置のメインプレートは、ロボットの把持アームのテール端部に接続され、把持装置のツールプレートは、標準パレットに接続される。把持装置のメインプレートは、メインプレート基体を備えている。位置決め用のテーパピンとボール保持フレームとが、メインプレート基体に、外向きに突出して配置されている。各把持装置のツールプレートは、ボール保持フレームに挿入可能なツールプレート基体を備えている。同明細書の把持装置の多くは、メインプレートとツールプレートとが1つの位置で締め付けられ、通常、一方の側面の中央で締め付けられる。そのため、極めて大きな締付け力が要求される。
【0004】
別のグリッパとして、Erowa社のRCSグリッパが知られている。このグリッパは、パレットを取り付けることができるインタフェース要素と、ロボットに取り付けられる対応部品とを備えている。締付けスピゴットがインタフェース要素に取り付けられ、インタフェース要素と対応部品とを締め付けている。インタフェース要素の半分の高さに配置された単一のスピゴットは、安全な締付けを保証するために大きな締付け力を提供する必要がある。さらに、パレットの大半は一定の長さと幅とを有しており、インタフェース要素がパレットに横向きに取り付けられているため、パレットの重心はインタフェース要素に近接して位置せず、インタフェース要素から少なくとも150mm以上離れた位置にある。通常、パレットと、それに取り付けられた工作物との総重量は大きい。パレットによって締付け点で発生するモーメントは、締付けスピゴットにより発生するモーメントによって補正されなければならない。インタフェース要素の高さが限られ、スピゴットがインタフェース要素の半分の高さに配置されているため、締付けスピゴットによって発生するモーメントには僅かな距離しか寄与できず、その結果、締付け力は大きくならざるを得ない。このようなグリッパは、ローディング容量が限られているという欠点を有している。これは、パレットの重量が制限され、空気圧が失われた場合の安全マージンが制限されることを意味する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、対象物を高速かつ確実に把持することができる、対象物をローディングおよびアンローディングするための自動ハンドリングアセンブリ用の、特にハンドリングロボット用のグリッパを提供することである。本発明の更なる目的は、重い対象物を確実に把持するためのコンパクトなグリッパを提供することである。特に、本発明の目的は、空気圧が失われたときに対象物を安全に締め付けるためのグリッパを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、これらの目的は、独立請求項の特徴によって達成される。加えて、更なる有利な実施形態は、従属請求項および説明から導かれる。
【0007】
本発明では、対象物を把持するためのハンドリングアセンブリ用の、特にハンドリングロボット用のグリッパが、連結要素と、基体とを備えている。基体は、ハウジングと、ハウジングの外側に配置された締付けブラケットと、ハウジング内に配置され、締付けブラケットに動作可能に接続された締付け機構とを含む。連結要素は、対象物に固定可能である。締付けブラケットは、ラッチ状態とラッチ解除状態とを有している。ラッチ状態では、締付けブラケットがハウジングに近接した位置に引き寄せられ、ラッチ解除状態では、締付けブラケットとハウジングとの間に連結要素を収容するために、締付けブラケットがハウジングから押し離される。締付け機構は、空気圧または液圧による作動時には、締付けブラケットをラッチ状態からラッチ解除状態に強制的に変更することができる。さらに、締付け機構は、非作動時には、締付けブラケットをラッチ状態に戻し、それによって、連結要素をハウジングに締め付けることができる。締付け機構が作動していない場合、締付けブラケットはラッチ状態を維持する。これにより、安全性をさらに向上させることができる。例えば、グリッパにかかる空気圧が低すぎるかまたはゼロに降下したとしても、連結要素が締付けブラケットによってハウジングに締め付けられているので、連結要素と重い対象物とが落下することはない。これにより、セルフロック効果が得られ、安全性が向上する。
【0008】
一実施形態では、締付け機構は、ピストンと、一端部が締付けブラケットに固定的に接続され、他端部がピストンに動作可能に接続されて、ピストンの運動を締付けブラケットに伝達するピストンロッドと、を備えている。
【0009】
ロボット、自動工具交換器、自動パレット交換器など、対象物を自動的にローディングするシステムは、産業界で広く使用されている。例えば、機械加工時間を短縮して生産効率を向上させるために、工作機械へのパレットのローディングおよび工作機械からのパレットのアンローディングには、自動パレット交換器が適用される。通常、連結要素はパレットに取り付けられ、基体はロボットアームに取り付けられている。ロボットアームがパレットを工作機械にローディングまたはアンローディングする際には、最初にパレットをグリッパで確実に把持し、ロボットアームがローディングおよびアンローディングを実施することができるようにする必要がある。
【0010】
締付けブラケットは、中央部分と2つの締付けジョーとを有しており、その間で連結要素とハウジングとを締め付ける。特に、締付けブラケットはU字形状を有しており、締付けジョーはU字形状のうちの脚部を形成している。この構造により、耐荷重を向上させることができる。特に、パレットの重量と、重心までの距離と、空気圧が失われたときに維持される締付け力とが、既知のグリッパと比較して大きくなる。好ましくは、高剛性を実現するために、中央部分と締付けジョーとが一体化されている。締付けブラケットによって発生する締付け力が、連結要素とハウジングとの高さ全体に作用し、したがって、クランプトルクを向上させることができる。締付けブラケットは、ピストンによって発生する引込み力を増幅させることで大きな締付け力を発生させるように、すなわち締付け力が引込み力の数倍大きくなるように構成されている。これは、締付けジョーと中央部分との間の角度を5°~25°の範囲で選択することで実現される。これにより、締付けブラケットと連結要素との間だけで、約2:1~5:1の動力伝達比をすでに得ることができる。例えば、ピストンロッドによって締付けブラケットに作用する引込み力が4,000Nのオーダであれば、締付けジョーによって作用する締付け力は20,000Nのオーダになる。
【0011】
ハウジングは、実質的に矩形形状を有しており、剛性がある。好ましい変形例では、ハウジングは、前壁と、後壁と、頂壁と、底壁と、2つの側壁とを有している。
【0012】
一実施形態では、締付けブラケットは、ハウジングの側方に配置されており、締付けブラケットがラッチ位置からラッチ解除位置に変更するとき、かつその逆のとき、締付け機構によって側方にシフトすることができる。パレットを有する連結要素を、ハウジングの前面に接触させ、その間の締付けジョーによって締め付けることができる。確実な締付けを実現するために、締付けジョーはハウジングと同一の高さを有し、連結要素は少なくともハウジングと同一の高さを有しており、したがって、締付け力はハウジングの高さ全体に沿って作用し、これにより高いトルクを得ることができる。
【0013】
さらに、連結接触領域が連結要素に形成され、締付けジョーに形成された締付け領域と係合する。ハウジングの前壁および/または後壁には、少なくとも1つの支持領域が形成されており、この支持領域には、連結要素がハウジングに締め付けられた際に、締付け力の影響が与えられる。
【0014】
特に、清掃孔が、ハウジングの前面にある支持領域に設けられている。グリッパは産業用であり、特に機械加工産業用であるため、例えば破片や切粉がある環境で適用される。支持領域が破片で覆われていると、締付け力が大幅に低下し、締付けの安全性に直接影響を与える。したがって、清潔な接触面であることが重要である。加えて、清掃孔を通る空気圧を測定し、連結要素とハウジングとの締付け状態を監視することができる。
【0015】
さらに、清掃スロットが、締付けジョーに近接して締付けブラケットに形成されている。特に、清掃スロットは締付けジョーの剛体の間に形成され、空気入口から供給される空気を接触面に吹き付けることができる。
【0016】
幾つかの実施形態では、締付け機構は保持手段を備えており、保持手段は、ハウジングに固定的に取り付けられて、締付けブラケットをラッチ位置に保持する。特に、リセット手段が、ハウジングの前壁の内面とピストンとの間に取り付けられ、ピストンに保持力を作用させる。
【0017】
有利な変形例では、保持手段は、少なくとも1つのばねを備えており、好ましくは、十分な保持力を発生させるために複数のばねが設けられる。例えば、保持力は1,000Nのオーダである。好ましい変形例では、ばねは圧縮ばねである。締付けブラケットがラッチ解除状態の際には、ばねは圧縮され、ひいては強い予荷重が加えられている。空気圧駆動が非作動になると、圧縮されていたばねが部分的に弛緩されてピストンが押し戻され、ピストンロッドが締付けブラケットをラッチ状態に引き込む。この状態では、ばねの予荷重は弱くはなるが、保持力を得るために予荷重は維持される。外部からの駆動がなければ、締付けブラケットはラッチ状態で保持される。
【0018】
さらに、ピストンは空気圧または液圧で駆動され、保持力に打ち勝って締付けブラケットをラッチ位置からラッチ解除位置に運動させることができ、その際、締付けブラケットはハウジングから横方向に押し離される。好ましくは、ピストンロッドは、締付けブラケットをハウジングから押し離し、そして、締付けブラケットをハウジングに引き戻すために、締付けブラケットに対して垂直に、かつ締付けブラケットの運動方向に対して平行に配置される。
【0019】
1つの変形例では、ピストンは円筒形状を有しており、ハウジングの後壁から孔に取り付けられている。ばねは、ピストンの軸線方向に起立しているピストンに取り付けられ、ハウジングの前壁の内面に押し付けられている。
【0020】
1つの変形例では、締付け機構は、ピストンの運動をピストンロッドに伝達する伝達手段を備えている。伝達手段は、ピストンの軸線方向の運動を別の方向に変えること、特に、ピストンの軸線方向に対して直交する方向にピストンロッドを運動させることを可能にする。
【0021】
グリッパはコンパクトであることが求められるため、ハウジング内の空間は限られている。したがって、伝達手段としてスライダを採用する。スライダは、ピストンの運動に追従するようにピストンに接続され、第1の方向として定義される軸線方向のピストンの運動を、第1の方向に対して直交する第2の方向のピストンロッドの運動に変換するように構成されている。好ましくは、第1の方向と第2の方向とは同一平面上にあり、特に水平面上にある。
【0022】
スライダは、厚さが定義されたプレートの形状を有しており、ハウジングの頂壁に対して平行な水平面上に位置し、一端部がピストンに取り付けられてピストンの運動に追従する。案内溝が、スライダの1つの表面に、ピストンロッドの一端部に形成された案内ピンを収容するように形成されている。ピストンロッドは円筒形状を有し、ハウジングの側壁に開けられた孔に収容され、したがって、ピストンロッドは実質的にピストンロッドの軸線方向にのみ運動することができる。案内ピンは、常に案内溝に係合している。スライダがピストンの運動に追従する際に、案内ピンは案内溝に沿って移動することができる。特に、案内溝は、ピストンの軸線方向に対して傾斜した方向に沿って走行している。ピストンが、第1の方向に運動するスライダを押圧すると、案内溝の傾斜により、案内ピンと案内溝との係合を介してピストンロッドに側方への力が発生し、ピストンロッドを側方に押圧する。
【0023】
生産精度の補償を可能にするために、スライダは、その位置が一軸線方向に数十mm程度の浮動性を有し得るように取り付けられている。
【0024】
大きな締付け力を提供する有利な変形例では、スライダは、弛緩されたばねによってピストンに作用する保持力を増幅させて、連結要素とハウジングとを締め付けるための締付け力を生成するように構成され、特に、締付け力は、保持力よりも少なくとも2倍大きく、好ましくは、締付け力は、保持力よりも10倍大きい。例えば、保持力は1,000Nのオーダであり、ピストンロッドによって締付けブラケットに作用する引込み力は4,000Nのオーダであり、締付けジョーにより作用する締付け力は16,000Nのオーダである。
【0025】
好ましい変形例では、案内溝は、第1の部分と第2の部分とを有している。案内溝は、案内ピンが第1の部分にロックされてセルフロック機能を提供するように構成されている。好ましい変形例では、第1の部分と第2の部分とは、ピストンの軸線方向に対して定義される2つの異なる傾角αおよびβを有している。特に、第1の部分は、例えば20°以下、好ましくは約10°の小さな傾角を有し、第2の部分は、第1の部分よりも大きな傾角を有している。締付けブラケットがラッチ状態にある際に、案内ピンは第1の部分に係合している。第1の部分の小さな傾角は、セルフロック機能を提供し、したがって、締付けブラケットはラッチ位置で確実にロックされる。外部からの駆動力がなければ、案内ピンは第1の部分から第2の部分へ移動することができない。その結果、連結要素は、ハウジングの前面に安全に固定される。ピストンを空気圧で駆動してスライダをハウジングの前面方向に押圧すると、案内ピンが案内溝内で案内され、第1の部分から第2の部分に再配置される。ピストンロッドとピストンとの運動距離が等しくなるように、第2の部分の大きな傾角が選択される。
【0026】
確実な締付けを保証するために、2つの締付けブラケットが設けられ、それぞれの締付けブラケットがハウジングの1つの側方に取り付けられて、連結要素とハウジングとを2つの側方から締め付ける。特に、2つの側方は、互いに対向する側である。好ましくは、締付けブラケットは、ハウジングの2つの側面に近接して配置される。
【0027】
グリッパは、パレットを把持するグリッパに限らず、例えば、更なるグリッパを含む。したがって、グリッパは、2つの空気圧機構および/または電気機器を接続するための空気圧的な移送手段および/または電気的な移送手段を備えている。
【0028】
さらに、ハウジングの前面には、連結要素に形成された接続ピンを収容するための少なくとも1つの取付け孔が設けられている。さらに、接続ピンと取付け孔とは、グリッパと連結要素との整合要素として機能する。
【0029】
上記で簡単に説明した原理のより具体的な説明は、図面に示されているその具体的な実施形態を参照することによって、以下に示される。これらの図面は、本開示の例示的な実施形態を示すものであり、したがって、その範囲を限定するものとはみなされない。本開示の原理は、以下の添付図面を用いて詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】パレットと締付け状態のグリッパとを示す3次元図である。
【
図8c】異なる位置で連結要素に取り付けられたパレットを示す図である。
【
図8d】異なる位置で連結要素に取り付けられたパレットを示す図である。
【
図9a】ラッチ解除状態のグリッパを示す図である。
【
図9b】ラッチ解除状態のグリッパを示す図である。
【
図10】更なるグリップ装置が取り付けられたグリッパを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1は、パレット1の側壁に固定的に取り付けることができる、基体20と連結要素10とを含むグリッパ100の3次元図である。基体は、ロボットまたはローディング装置に取り付けることができる。ロボットがパレットを工作機械にローディングする必要がある際に、
図1に示すように、基体を、パレットが取り付けられた連結要素に近接させて、連結要素を収容し、締め付ける。その後、ロボットはパレットを工作機械に向けて運動させ、パレットを工作機械の工作台に載せることができる。
【0032】
図2aおよび
図2bは、基体20をそれぞれ背面および前面から見た3次元図である。基体は、前壁23、後壁22および2つの側壁24を備えたハウジング21と、ハウジングの各側方にそれぞれ設けられた2つの締付けブラケット30a,30bとを含む。
【0033】
図3および
図4は、それぞれ基体のX-Z平面およびY-Z平面における断面図である。これらの図では、締付けブラケットは、連結要素を締め付けてはいないが、ラッチ状態にある。ラッチ状態は、締付けブラケットの初期状態であり、何らかの駆動がなければ、この状態を維持する。
図3に示すように、各締付けブラケットは、ピストンロッド45a,45bによってスライダ60に接続されている。ピストン51は、ハウジングの後壁に設けられた孔を介してハウジング内に配置され、第1の方向、すなわち、その軸線方向、この例ではY方向に運動可能である。スライダは、水平面上、すなわち、X-Y平面上に位置し、一端部がピストンに接続され、第1の方向へのピストンの運動に追従する。各ピストンロッドは、ハウジングの側壁に設けられた孔に収容され、第2の方向、この例ではX方向に運動可能である。ピストンロッドの一端部は締付けブラケットに固定的に接続され、他端部はスライダに係合している。
【0034】
図5および
図6は、ピストンロッドとスライダ60とを詳細に示している。案内ピン48が、ピストンロッドの一端部に形成され、ピストンロッドがスライダに係合するように、スライダに形成された案内溝61aに収容することができる。
図6に示すように、スライダは2つの案内溝61a,61bを有しており、それぞれが、案内溝の第1の部分62と、異なる傾斜を有する案内溝の第2の部分63との2つの部分によって形成されている。案内溝の第1の部分は、点線で象徴される第1の方向に対して第1の角度αを有し、案内溝の第2の部分は、第1の方向に対して第2の角度βを有している。第1の角度αは、第2の角度βよりも小さい。締付けブラケットがラッチ状態にある際に、案内ピンは案内溝の第1の部分に位置し、第1の部分の角度が小さいほど、ピストンロッドとスライダとが強く係合して、締付けブラケットの締付け力を高めることができるという利点がある。締付けブラケットがラッチ状態からラッチ解除状態に駆動されると、ピストンが駆動されて第1の方向に運動し、スライダがこの運動に追従して、案内ピンが案内溝に沿って案内され、第1の部分から第2の部分に運動するので、第2の部分の角度が大きいほど、案内ピンの第2の部分への移動を容易にすることができる。
【0035】
図4に示すように、保持手段として少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つのばね53がハウジングに取り付けられ、ピストンをハウジングの後壁に近接した初期位置に保持する。ばねは、ピストンの前面に取り付けられ、ハウジングの前壁の内面に押し付けられている。
図4に示す実施形態では、スライダの上側に3つのばねが配置され、下側に3つのばねが配置されている。
【0036】
締付けブラケットのラッチ状態では、ばねはピストンと前壁の内面との間に配置され、スライダとピストンとを初期位置に保持し、このとき、案内ピンは案内溝の第1の部分62に配置されている。ピストンが空気によって駆動されてY方向に運動すると、スライダがピストンによって同一方向に押圧され、案内ピンが案内溝の第1の部分から第2の部分63に移動して、ピストンロッドがハウジングから押し離されてラッチ解除状態になる。同時に、ばねがピストンによって押圧され、予荷重が与えられる。ラッチ解除状態では、ハウジングの前壁に対象物を収容することができる。ピストンに供給される空気が遮断されると、予荷重が加えられたばねがピストンを後方に押圧して初期位置に戻す。その結果、スライダがピストンの運動に追従して初期位置に戻され、案内ピンが案内溝の第1の部分に戻る。したがって、締付けブラケットがハウジングに向かって引き戻され、前壁とハウジングとに収容された対象物を共に締め付ける。
【0037】
図2bに示すように、ピストンを駆動するための空気を供給する圧縮空気入口52がハウジングの頂部に設けられている。
【0038】
図7aは、締付けブラケットの3次元図である。締付けブラケットは、各側に締付けジョー40a,40bとしての2つの突出部を有するU字形状を有している。各締付けジョーは、対象物をハウジングに締め付ける際に、対象物と接触する2つの締付け領域を有している。第1の締付けジョー40aは、上端部に第1の締付け領域31aを有し、下端部に第2の締付け領域32aを有し、第2の締付けジョー41aは、上端部に第3の締付け領域33aを有し、下端部に第4の締付け領域34aを有している。図に示す変形例では、一方で大きな締付け力を保証し、生産公差を補償するために、締付け領域が傾斜面を有している。したがって、締付け領域に作用する締付け力は、ピストンロッドが締付けブラケットに作用する力よりも大きく、例えば3倍である。
【0039】
図2bに示すように、ハウジングの前壁の外面、特に外面の各縁部には、支持領域58が形成されている。連結要素とハウジングとが締付けブラケットによって締め付けられる際に、締付け力は主に4つの支持領域に作用する。
【0040】
工作機械に取り付けられるパレットを把持するためにグリッパを適用する際、確実な把持を保証するためには、締付け領域の清掃が重要である。したがって、清掃空気流路が締付けブラケットに形成されている。第1の対の空気出口36aが、第1の締付け領域31aと第2の締付け領域32aとにそれぞれ近接して形成され、
図7cのA部の拡大図である
図7bに示すように、締付け領域に近接して形成された一対の第1の対の清掃空気入口39aに流路を介して接続されている。点線で示した矢印は、エアブレード清掃の空気流の方向を示している。空気出口36aは、カバーとブラケットとの間の0.3mm以下、好ましくは0.1mmの小さな隙間によって形成されている。
【0041】
清掃用の空気を第1の対の空気入口に供給してスロットから吹き出し、締付け領域を清掃することができる。さらに、各支持領域58は、その支持領域に設けられた清掃孔59から空気を吹き出すことで清掃することができる。さらに、清掃孔は、その内部の圧力を測定することにより締付け状態を確認するためのセンシングユニットとして使用することができる。
【0042】
図8aおよび
図8bは、連結要素を詳細に示している。この実施形態では、連結要素はプレートの形状を有しているが、連結要素はこの形状に限定されるものではない。連結プレートには、パレットに取り付けるための複数の接続孔16が設けられている。連結要素の高さは、グリッパがパレットを保持する際のトルクを大きくするために、パレットよりも大きくなっている。加えて、連結要素には、グリッパの基体に挿入される2つの接続ピン15が固定されている。これらの接続ピンは、整合手段としても機能する。連結要素は、連結要素の2つの縁部に連結接触領域11が形成され、締付けブラケットの締付けジョー内に収容されるように設計されている。
図8cおよび
図8dに示すように、連結要素は、パレットのフレキシブルな取付けを可能にするために、2つの異なる配置でパレットに取り付けることができる。
【0043】
図9a、
図9bおよび
図9cは、パレットを把持する際の動作を示す図である。
図9aは、基体のハウジング内に圧縮空気を供給することで、締付けブラケットを開く様子を示している。パレットを有する連結要素を基体に挿入することができる。
図9bに示すように、連結要素が基体に挿入されると、空気をオフにすることができる。締付けブラケットは、両側から連結要素をハウジングに固定する。
【0044】
図10は、グリッパの別の用途を示している。グリッパはロボット2に取り付けられ、連結要素は付加的なグリッパ200に取り付けられる。
図2aおよび
図2bに示すように、ハウジングの頂部には、電気的な移送手段57と空気圧的な移送手段56とが設けられている。電気的な移送手段は、付加的なグリッパを電気的に接続するように働き、グリッパと付加的なグリッパとの間の通信、例えば、センサ信号の送受信を可能にする。空気圧的な移送手段は、圧縮空気を移送することができる。
【符号の説明】
【0045】
1 パレット
2 ロボット
10 連結要素
11 連結接触領域
15 連結接続ピン
16 連結接続孔
20 基体
21 ハウジング
22 ハウジングの後壁
23 ハウジングの前壁
24 ハウジングの側壁
30 締付けブラケット
31a,31b 第1の締付け領域
32a,32b 第2の締付け領域
33a,33b 第3の締付け領域
34a,34b 第4の締付け領域
36a 第1の対の空気出口
39a 清掃空気入口
40a,40b 第1の締付けジョー
41a,41b 第2の締付けジョー
45a,45b ピストンロッド
48a,48b 案内ピン
51 ピストン
52 圧縮空気入口
53 ばね
56 空気圧的な移送手段
57 電気的な移送手段
58 支持領域
59 清掃孔
60 スライダ
61a,61b 案内溝
62 案内溝の第1の部分
63 案内溝の第2の部分
100 グリッパ
200 付加的なグリッパ
210 付加的なグリッパの連結要素
【外国語明細書】