(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022097466
(43)【公開日】2022-06-30
(54)【発明の名称】水素化触媒の再生方法
(51)【国際特許分類】
B01J 38/12 20060101AFI20220623BHJP
B01J 35/08 20060101ALI20220623BHJP
B01J 23/46 20060101ALI20220623BHJP
B01J 23/96 20060101ALI20220623BHJP
C07C 67/303 20060101ALN20220623BHJP
C07C 69/608 20060101ALN20220623BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20220623BHJP
【FI】
B01J38/12
B01J35/08 Z
B01J23/46 301Z
B01J23/96 Z
C07C67/303
C07C69/608
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021205326
(22)【出願日】2021-12-17
(31)【優先権主張番号】20215551.1
(32)【優先日】2020-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】519414848
【氏名又は名称】エボニック オペレーションズ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】ヨハネス クラフト
(72)【発明者】
【氏名】レナ アルトマン
(72)【発明者】
【氏名】ヨハン アントン
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル グラス
【テーマコード(参考)】
4G169
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4G169AA03
4G169AA10
4G169BA01A
4G169BA02A
4G169BA04A
4G169BA04B
4G169BA05A
4G169BA06A
4G169BA08A
4G169BB04A
4G169BB06A
4G169BB15A
4G169BC29A
4G169BC35A
4G169BC66A
4G169BC68A
4G169BC70A
4G169BC70B
4G169BC71A
4G169BC72A
4G169BC75A
4G169BD05A
4G169CB02
4G169CB65
4G169DA06
4G169EA04X
4G169GA06
4H006AA02
4H006AC11
4H006BA23
4H006BA55
4H006BA84
4H006KA31
4H039CA40
4H039CF10
(57)【要約】 (修正有)
【課題】芳香族類、特に芳香族エステルの環水素化に用いられる触媒を再生するための方法を提供する。
【解決手段】芳香族類の環水素化に用いられる触媒を、少なくとも1つの反応器において再生させるための方法であって、以下の:再生させる触媒上に酸素含有量が100~20000ppmであるガス流を通過させ;15~170℃の温度において;かつ触媒は、少なくとも1つの反応器から除去されない;ように、行われる、再生方法である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族類の環水素化に用いられる触媒を、少なくとも1つの反応器において再生させるための方法であって、以下の:
再生させる触媒上に酸素含有量が100ppm~20000ppmであるガス流を通過させ;
15~170℃の温度において;かつ
前記触媒は、前記少なくとも1つの反応器から除去されない;
ように、行われる、再生方法。
【請求項2】
ガス流の酸素含有量は、250ppm~13000ppmである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ガス流の酸素含有量は、380ppm~9000ppmである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
再生は、25℃~150℃の温度で行われる、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
触媒は、担体物質上に少なくとも1つの遷移金属を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
少なくとも1つの遷移金属は、鉄、ルテニウム、ニッケル、ロジウム、白金、パラジウム、及びそれらの混合物からなる群から選択される金属である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
担体物質は、活性炭、炭化ケイ素、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、アルミノケイ酸塩、二酸化チタン、二酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、及びそれらの混合物からなる群より選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
触媒は、卵殻触媒である、請求項5~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
ガス流は、請求項1に記載の酸素含有量を有する、不活性ガス、好ましくは窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、二酸化炭素及びそれらの混合物である、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
芳香族類は、芳香族エステルである、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
芳香族エステルは、ベンゼンカルボン酸、ベンゼンジカルボン酸、ベンゼントリカルボン酸又はベンゼンテトラカルボン酸のエステル、好ましくはベンゼンジカルボン酸又はベンゼントリカルボン酸のエステル、より好ましくはベンゼンジカルボン酸のエステルである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
芳香族エステルは、フタル酸のC8~C10のアルキルエステル又はテレフタル酸のC8~C10のアルキルエステルである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
再生は、0.5~200バールの範囲の圧力で行われる、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
再生の期間は、少なくとも24時間である、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
再生中のガス流は、水素化における流れの方向と、同方向又は逆方向に、好ましくは同方向に、触媒上に、誘導される、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芳香族化学類、特に芳香族エステルの環水素化に用いられる触媒を再生する方法に関し、特定量の酸素を含むガス流を当該再生に用いる。
【背景技術】
【0002】
芳香族類、特に芳香族エステルの水素化は、芳香族環が水素化されることが知られており、環水素化ともいう。このような環水素化では、例えば遷移金属含有触媒が用いられる。好適な触媒は当業者に公知である。対応する水素化方法もまた、工業規模で用いられる。
【0003】
環水素化が長期化するにつれて、用いられる触媒の活性は、触媒の活性部位のブロッキング、消失又は被毒のいずれかにより、失われる場合がある。活性が著しく低下して、水素化処理工程を十分にかつ経済的に運転できない場合、触媒の活性を上げる必要がある。これは、触媒の堆積物や付着物を除去する再生処理によって行われる。ここでは、高温(200℃以上)で堆積物を除去する触媒の焼成を行うことができるが、これは、特定の触媒では問題がある場合があり、かつ、高温のために純粋にエネルギー的に問題がある。
【0004】
触媒は、あるいは、その上にガス流を通すことによって再生することができ、これによって堆積物が運搬され、かつ、除去される。ルテニウム触媒の再生のこのような方法は、例えば、特許文献1に記載されている。当該文献で開示された再生方法の特徴は、触媒の活性が部分的に又は完全に回復するまで、触媒を不活性ガスでパージすることである。当該文献に記載されたベンゼン水素化に関する、再生機能の理由としては、水の除去、すなわち触媒の乾燥があげられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、既知の方法において、特に、触媒から除去しなければならないのが水のみでない場合、又は水及び水素化活性を低下させる他の物質も触媒上に存在する場合、再生効果が低すぎる場合があるという問題がある。
【0007】
従って、本発明により解決される課題は、芳香族類、特に芳香族エステルの環水素化に用いられる触媒を再生するための方法の提供であり、それにより、許容しうる活性をより良好かつより迅速に達成することができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
当該課題は、請求項1に記載の方法によって解決される。好ましい実施形態は、従属クレームにおいて特定される。本発明に関する方法は、芳香族類の環水素化に用いられる触媒を、少なくとも1つの反応器において再生するための方法であって、前記再生は、以下の:
-再生させる触媒上に酸素含有量が100ppm~20000ppmである、ガス流を通過させて;
-15~170℃の温度において;かつ
-前記触媒は、前記少なくとも1つの反応器から除去されない;
ように、行われる。
【0009】
本発明の方法は、再生媒体であるガス流中に少量の酸素が存在するため、水素化触媒の有利な再生を達成することができる。本発明により再生による触媒活性は改善され、これは低酸素濃度下でも達成することができる。本明細書に記載された再生により、実際に有益な生成物を生成する環水素化を、高変換、かつより効果的な状態で再開することができる。同時に、酸素濃度がかなり低いため、酸化プロセスによって反応器内の温度が大幅に上昇し(必要に応じて局所的に)、触媒が損傷したり、最悪の場合、反応器が損傷したりするのを防ぐことができる。
【0010】
本明細書に記載された芳香族類、特に芳香族エステルの環水素化は、通常、少なくとも1つの反応器中で行われるが、このことは、環水素化が、各々が適当な触媒を含む1つ以上の反応器中で行うことができることを意味する。本発明により用いられる触媒の再生は、存在するいかなる反応器においても行うことができる。複数の反応器が存在する場合、再生は、各反応器に対して異なる時点で、又は同時に行うことができるが、ここで、存在する全ての反応器において全ての触媒を同時に再生することが好ましい。
【0011】
本発明によれば、本方法は、芳香族類、特に芳香族エステルの環水素化に用いられる全ての触媒に適する。好ましくは、触媒は、しかしながら、支持材料上に少なくとも1つの遷移金属を含むか、又は支持材料上に少なくとも1つの遷移金属を含む。適当な触媒は、しかしながら、当業者にはよく知られており、例えば、国際公開第03/103830号パンフレットに記載されている。
【0012】
再生される触媒の遷移金属は、好ましくは、鉄、ルテニウム、ニッケル、ロジウム、白金、パラジウム及びそれらの混合物からなる群から選択される金属である。ルテニウムは、本発明で用いるのに、特に好ましい触媒用の遷移金属である。再生される触媒中の遷移金属の含有量は、一般に、0.1~30質量%である。金属として計算されるルテニウムの含有量は、好ましくは0.1質量%~10質量%、特に0.3質量%~5質量%、特に0.4質量%~2.5質量%の範囲である。
【0013】
遷移金属が存在する担体材料は、好ましくは、活性炭、炭化ケイ素、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、アルミノケイ酸塩、二酸化チタン、二酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛及びそれらの混合物からなる群から選択される。好ましい担体材料は、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、二酸化チタン及びそれらの混合物である。さらに、これらの担体材料は、アルカリ金属、アルカリ土類金属及び/又は硫黄を含んでよい。本発明の特に好ましい実施形態では、再生される触媒は卵殻触媒である。
【0014】
本発明によれば、用いられる再生媒体はガス流である。このガス流は好ましくは不活性ガスと酸素からなり、ガス流の酸素含有量は、100ppm、好ましくは250ppm、より好ましくは380ppmから、20000ppm、好ましくは13000ppm、より好ましくは9000ppmまでである。不活性ガスは、窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、二酸化炭素又はそれらの混合物であってよい。窒素を不活性ガスとして用いることが、特に好ましい。再生におけるガス流は、環水素化の流れ方向に対して、同方向又は逆方向の流れで、好ましくは同方向の流れで、触媒上に通過することができる。
【0015】
複数の水素化反応器が存在する場合、再生媒体は、第1の反応器のみに供給されてよい。その場合、再生媒体はまた、触媒を再生するため、第1の反応器から下流の反応器へ供給される。しかし、複数の反応器が存在する場合、再生媒体を各反応器に供給するのが望ましい。したがって、再生媒体は、個々の反応器に直接供給され、最初に上流の反応器を通過することはない。
【0016】
再生が行われる温度は、15~170℃、好ましくは25~150℃、より好ましくは25~120℃である。ここで重要なのは、高温で不純物を除去する触媒のバーンアウトがないことである。再生中の圧力は、好ましくは0.5~200バール、好ましくは1~110バールの範囲である。
【0017】
触媒活性を十分に向上させるために、本文中で説明した再生期間は、様々な要因に依存する。これらの要因の例は、不純物の性質及び量、反応器の特性(サイズ、直径)又は触媒粒子の特性(特に、サイズ、形状、表面積、孔構造、金属充填、及び担体中への金属の浸透深さ)である。本発明の好ましい実施形態では、再生の持続期間は少なくとも24時間である。再生をあまりに早く終了してしまうと、環水素化に比較的短期間しか用いていないのに、触媒を再度再生しなければならない場合がある。
【0018】
本発明による再生は、芳香族類の環水素化に用いられる触媒に対して行われる。好ましい実施形態では、本発明による再生は、芳香族エステルの環水素化に用いられる触媒に対して行われる。芳香族エステルは、好ましくは、ベンゼンカルボン酸のエステル、ベンゼンジカルボン酸のエステル、ベンゼントリカルボン酸のエステル、又はベンゼンテトラカルボン酸のエステル、好ましくはベンゼンジカルボン酸のエステル、又はベンゼントリカルボン酸のエステルである。これらには、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸及びトリメリタートがあげられる。ベンゼンジカルボン酸、すなわちフタル酸、イソフタル酸及びテレフタル酸のエステルが好ましい。これらのうち、特に、C8~C10のアルキルエステル、特にフタル酸のC8~C10のアルキルエステル(例えば、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジエチルヘキシル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジプロピルヘプチル)又はテレフタル酸のC8~C10のアルキルエステル(例えば、テレフタル酸ジオクチル、テレフタル酸ジエチルヘキシル、テレフタル酸ジイソノニル、テレフタル酸ジプロピルヘプチル)が好ましい。
【0019】
環水素化は、好ましくは液相中で行われる。環水素化は、固定床に配置された懸濁触媒又は塊状触媒で連続的または非連続的に行うことができる。本発明の方法では、好ましくは、固定床に配置された触媒上における、生成物/反応物相が主として液体状態にある反応条件下でも、連続的な環水素化が行われる。好ましくは、反応器は、完全に又は部分的に浸水することができるトリクルベッド型反応器として運転される。
【0020】
固定床に配置された触媒上で連続的に環水素化を行う場合、環水素化を最初に行う前に、触媒を活性型に変換するのが適する。再生後、当該活性は必ずしも必要でない。当該活性化は、温度プログラムに従って、活性化は、水素含有ガスで触媒を還元することによって行うことができる。当該還元は、場合によっては、触媒上に滴下する液相の存在下で行ってよい。液相には、溶媒や水素化反応生成物であってよい。
【0021】
この活性化も反応条件下で行われるため、対応する水素化条件により、活性化を省略してもよい。
【0022】
環水素化のため、様々なプロセスバリエーションを選択することができる。これは、断熱的に、ポリトロピックに、または実質的に等温的に、すなわち通常10℃未満の温度上昇で、一段階またはそれ以上の数段階で実施することができる。後者の場合、すべての反応器、好都合には管状反応器、を断熱的にまたは実質的に等温的に運転することができ、かつ、1以上を断熱的に、その他を実質的に等温的に運転してもよい。あるいは、環水素化をトリクルベッドとして実施してもよい。当該反応器はまた、部分的又は完全に浸水してもよい。
【0023】
環水素化は、共流における、液相/気相の混合相又は三相反応器の液相で行うことができ、それによって水素化ガスは、それ自体既知の方法で液体の反応物/生成物の流れに分配される。液体分布が均一であり、反応熱の除去が改善され、かつ時空収率が高いため、反応器は、空の反応器の断面1m2当たり及び時間当たり15~120、特に25~80m3の高い液体負荷で運転されることが好ましい。反応器をストレートパスで運転する場合、比触媒負荷(LHSV)は0.1~10/時の値であることができる。
【0024】
環水素化は、溶媒の非存在下、又は好ましくは溶媒の存在下で行ってよい。溶媒としては、反応物及び生成物と均一な溶液を形成し、水素化条件下で不活性であり、生成物から容易に分離できるいかなる液体であってよい。当該溶媒は、複数の物質の混合物であってよく、場合によっては、水を含んでよい。
【0025】
例えば、テトラヒドロフラン又はジオキサンのような直鎖又は環状エーテル、及びアルキルラジカルの炭素原子が1~13個である脂肪族アルコールを溶媒として用いることができる。好ましくは、例えば、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、n-ペンタノール、2-エチルヘキサノール、ノナノール、工業用ノナノール混合物、デカノール、工業用デカノール混合物、トリデカノール等のアルコールを用いてよい。
【0026】
溶媒としてアルコールを用いる場合、その生成物を鹸化する際に生成されるであろうアルコールまたはその混合物を用いることが適する場合がある。そのため、エステル交換による副生成物の生成を抑制できる。さらに好ましい溶媒としては、水素化反応生成物そのものがあげられる。
【0027】
溶媒を用いることで、反応器供給中の芳香族類の濃度を制限することができ、結果として反応器の温度制御が改良される。その結果、副反応を最小限に抑制することができ、生成物の収率を高めることができる。好ましくは、反応器供給中の芳香族含有量は、1~35%、特に5~25%である。循環モードで運転される反応器では、循環速度(反応物に対する水素化反応排出物の再利用量の量比)により、望ましい濃度範囲に調整することができる。
【0028】
環水素化の圧力範囲は、20~300バール、好ましくは40~200バールであってよい。水素化のための温度は、好ましくは60℃~200℃、特に80℃~180℃の範囲である。
【0029】
水素化ガスとしては、有害な量の触媒毒物、例えば一酸化炭素又は硫化水素を含まなければ、いかなる所望の水素含有ガス混合物があげられる。不活性ガス成分は、例えば、窒素又はメタンであってよい。あ、好ましくは、95%を超える純度、特に98%を超える純度で用いることができる。
【0030】
以下、実施例により本発明を説明する。これらの例は、例示的な実施形態を示すものであり、限定的であると見なされるべきではない。
【実施例0031】
等酸素濃度
今回の実験では、まず触媒を再現できるように製造し、かつそれを再生させる必要があった。今回は、そのためにジイソノニルテレフタレート(DINT)を連続的に水素化した。DINTの環水素化は、管状反応器を用いて再循環モードで行った。液相(DINTと水素化生成物)と気相(水素)は、トリクルベッドで循環管状反応器に共流で流した。実施例1の水素化触媒として、市販のルテニウム触媒(Evonik Operations GmbH社製Specialyst(登録商標)102:TiO2担体上に1% Ru)を用いた。これを不活性物質(TiO2)で等量に希釈し、内径40mm、長さ378mmの管状反応器で用いた。環水素化で用いるDINTの供給量は常に130g/時で、再循環流量は80L/時であった。H2レベルは、排気ガス流量0.5l/時の定常排気ガスモードで制御した。実験は、いずれの場合もプラント圧力100バール、管状反応器温度110℃で行った。DINTの濃度は、インラインラマン分析で測定した。経時的に、DINT回転数は連続的に減少する。約3700時間から5700時間後に、各々再生を行った。
【0032】
再生前に、循環ポンプと反応物の供給を停止し、循環反応器から液体を排出した。そして、各再生条件(圧力、温度等)を設定し、一定期間の再生を行った(表1参照)。再生後、再循環ポンプと反応物供給を再開し、上記同様に再び環水素化を行った。再生効果の評価には、反応物供給停止直前(再生前のDINT回転数)及び反応物供給再開の約20~40時間後に試料採取(再生後のDINT回転数)したものを用いた。その結果を以下の表1に示す。
【0033】
表1:実施例1の実験データ
【0034】
【表1】
表1から、圧力及び再生期間のいずれも再生に大きな影響を与えないことが示された。