IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ Kepler株式会社の特許一覧 ▶ 国立大学法人東北大学の特許一覧

<>
  • 特開-表示装置 図1
  • 特開-表示装置 図2
  • 特開-表示装置 図3
  • 特開-表示装置 図4
  • 特開-表示装置 図5
  • 特開-表示装置 図6
  • 特開-表示装置 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022097487
(43)【公開日】2022-06-30
(54)【発明の名称】表示装置
(51)【国際特許分類】
   G09G 3/36 20060101AFI20220623BHJP
   G09G 3/20 20060101ALI20220623BHJP
   G02F 1/133 20060101ALI20220623BHJP
   G02F 1/1335 20060101ALI20220623BHJP
   G02F 1/13357 20060101ALI20220623BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20220623BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20220623BHJP
【FI】
G09G3/36
G09G3/20 642F
G02F1/133 580
G02F1/1335 505
G02F1/13357
G09F9/00 366Z
G09F9/30 349D
G09F9/30 349A
G09F9/30 349B
G09F9/30 349Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022062096
(22)【出願日】2022-04-01
(62)【分割の表示】P 2019208203の分割
【原出願日】2019-11-18
(31)【優先権主張番号】P 2018216713
(32)【優先日】2018-11-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】518411903
【氏名又は名称】Kepler株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(74)【代理人】
【識別番号】100214938
【弁理士】
【氏名又は名称】樋熊 政一
(72)【発明者】
【氏名】坪井 浩尚
(72)【発明者】
【氏名】藤掛 英夫
(72)【発明者】
【氏名】石鍋 隆宏
(72)【発明者】
【氏名】柴田 陽生
(57)【要約】
【課題】印刷表示媒体の光学特性を再現する表示装置を提供し、特にあたかも表示装置が紙のような印刷媒体であるかのような感覚を与える表示装置を提供する。
【解決手段】表示装置において、表示パネル内の特定領域に入射する外光の光束に対して、特定領域内の画素から出射される光束が、所定の割合の拡散反射率で制御され、出射光束が入射光束と拡散反射率の積により求められる。これにより、表示装置における表示を、紙のような印刷媒体であるかのような感覚を与えることが可能となる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示光を放出するため2次元的に配置された画素を備えた表示パネルと、
外光を検出する少なくとも1つの光センサと、を備え、
印刷表示媒体の外光に対する拡散反射光を再現するために、
前記表示パネル内の特定領域において、前記光センサで検出される、外部から前記表示パネルの前記特定領域に入射する外光の光束に対して、前記特定領域内の画素から出射される光束が、所定の割合の拡散反射率と前記特定領域に入射する外光の光束との積により制御される
ことを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記拡散反射率が1以下の値となる
ことを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記光センサは、3原色の光を個別に検知可能であり、
前記拡散反射率は前記3原色の光ごとに定められ、
前記特定領域内の画素から出射される光束は、前記3原色の光ごとに定められた前記拡散反射率に基づいて制御される
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記光センサが2次元のアレイとして配置される
ことを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の表示装置。
【請求項5】
前記光センサが、前記画素を駆動するための薄膜トランジスタが形成された後方基板の面、前方基板の内側面又は外側面、他に積層する透明基板の面のいずれかに設けられる
ことを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の表示装置。
【請求項6】
前記画素の前記光センサが設けられる面に黒色吸収部が形成される
ことを特徴とする請求項5に記載の表示装置。
【請求項7】
前記光センサの受光面に3原色用のカラーフィルタが設けられる
ことを特徴とする請求項3~6のいずれかに記載の表示装置。
【請求項8】
前記画素が、薄膜トランジスタで電圧駆動される液晶素子または有機EL素子で構成される
ことを特徴とする請求項1~7のいずれかに記載の表示装置。
【請求項9】
前記表示パネルに反射抑制層やアンチグレア層が積層される
ことを特徴とする請求項1~8のいずれかに記載の表示装置。
【請求項10】
前記画素の放射光強度の角度依存性が、ランベルトの余弦法則に基づき、完全拡散板の均等拡散分布になる、もしくは輝度の半値角が120°以上で、基板面垂直方向からなだらかに減少する配光分布を有する
ことを特徴とする請求項1~9のいずれかに記載の表示装置。
【請求項11】
液晶素子に用いられるバックライトの配向特性が、完全拡散板の均等拡散分布になる、もしくは輝度の半値画が40°以上で、基板面垂直方向からなだらかに減少する
ことを特徴とする請求項1~10のいずれかに記載の表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は表示装置に関し、特に印刷表示媒体の拡散反射光を再現する表示装置に関する。
【0002】
従来より、液晶表示装置や有機EL表示装置等の表示装置が知られている。これらの表示装置においては、表示の輝度を外光の照度に応じて制御する方法も知られている。
バックライトを用いた液晶ディスプレイなどの従来の表示装置では、周囲が明るいときに視認性を高めるため輝度を高める一方、周囲が暗いときにはぎらつき感を無くすため輝度を下げる方法が一般的である。また、さらに暗所では、省電力の観点からも輝度を押さえることが求められている。
【0003】
一方、コピー紙、写真、カレンダーなど紙の印刷表示媒体の光学特性に似た表示を行うような、電気泳動ディスプレイや反射型液晶ディスプレイなどの、外光などの周囲光を反射して表示する反射ディスプレイの開発も行われている。
【0004】
特許文献1には、表示装置において、外光の明るさに応じて輝度や色調を調整し、部分ごとに表示装置の輝度を変化させたり、物の影になって外光の照度が低くなった場合に、該当箇所の輝度を下げて表示させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011-48196号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来技術や特許文献1に開示されている技術は、外光の明るさに応じて輝度や色調を調整して、表示装置の輝度を変化させることについては記載されているものの、見やすさや省電力の観点から輝度を調整することが記載されているに留まっている。特許文献1には、実物の紙に文字を書いているような雰囲気を提供することができるという記載はあるものの、これについても、ペンの影になる領域に含まれている絵素の輝度を下げることによって、ペンの影が映り込んでいるように見せることが示されているだけであって、物の影になって外光の照度が低くなった場合に、低くなった外光の照度に合わせて該当箇所の輝度を下げて表示させる点に変わりはない。
【0007】
また、外光などの周囲光を反射して表示する反射ディスプレイにおいても、カラー表示にすると、3原色のカラーフィルタによる光吸収などで反射光が大きく減り、印刷媒体に比べると視認性が著しく低下するおそれがある。
【0008】
そこで本発明は、印刷表示媒体の光学特性を再現する表示装置を提供し、あたかも表示装置が紙のような印刷媒体であるかのような感覚を与え、視認者に対して見慣れた印刷媒体であるかのような表示を行って、違和感なく情報を伝えることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の表示装置は、表示パネルと、少なくとも1つの光センサとを備え、印刷表示媒体の外光に対する拡散反射光を再現するために、表示パネル内の特定領域において、画素から出射される光束が、所定の割合の拡散反射率で制御されることを特徴とする。
上記の構成によれば、画素から出射される光束が、所定の割合の拡散反射率で制御されていることによって、表示装置によって、印刷表示媒体の拡散反射光を再現して、表示装置が紙のような印刷媒体であるかのような感覚を与えることが可能となる。
【0010】
また、拡散反射率は1以下の値として定めることもできる。表示装置における光束の出射量に比べて、紙などの印刷媒体の出射量は少なくなることが一般的であるため、拡散反射率の値を1以下とすることによって、よりよく拡散反射光の制御を行うことが可能となる。
【0011】
さらに、光センサを3原色の光を個別に検知可能として、拡散反射率を3原色の光ごとに定め、それらの拡散反射率に基づいて画素から出射される光束を制御するようにしてもよい。これにより、さまざまな種類の紙などの印刷媒体における光拡散、分光吸収が3原色の色ごとに考慮された各色の拡散反射率を定めて、その拡散反射率に基づいて光束を制御することができ、より細やかな拡散反射光の制御を行うことが可能となる。
【0012】
また、光センサは2次元のアレイとして配置するようにしてもよい。これにより、表示パネルへの入射光束の領域ごとの分布を適切に反映させることが可能となる。また、配置箇所としては、後方基板の面、前方基板の面、他の透明基板の面等、種々の箇所を選択することが可能である。
【0013】
また、画素の光センサが設けられる面に黒色吸収部を形成してもよい。これにより、外光を検出する光センサの障害となる表示光を遮光することが可能となる。
【0014】
さらに、光センサの受光面に3原色用のカラーフィルタを設けるようにしてもよい。この際には、画素の3原色用のカラーフィルタと同等のカラーフィルタを用いるようにすることが好ましい。これにより、光センサの受光面における感度が画素の感度と同様のものとすることが可能となる。
【0015】
また、表示パネルに反射抑制層やアンチグレア層を積層されるようにしてもよい。これにより、紙などの印刷表示媒体では生じないが、通常の表示装置では生じる正反射光を抑制することが可能となる。
【0016】
さらに、画素の放射光強度の角度依存性が、ランベルトの余弦法則に基づき、完全拡散板の均等拡散分布になる、すなわち輝度に角度依存性がない(輝度が等方的である)、もしくは輝度の半値角(正面輝度の半分の値となるまでの角度)が全角で120°以上と広く、基板面垂直方向からなだらかに減少する配光分布を有するようにしてもよい。これにより、より紙などの印刷表示媒体の光学特性を再現することが可能となる。また、液晶素子を使用する場合、光源となるバックライトを同様の配光分布としてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明により、印刷表示媒体の光学特性を再現する表示装置を提供し、あたかも表示装置が紙のような印刷媒体であるかのような感覚を与えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態にかかる液晶表示装置の構成を示すブロック図である。
図2】液晶パネルの詳細な構成を示す図である。
図3】液晶パネルの断面とバックライトを示す図である。
図4】画素と光センサとの関係を示す図である。
図5】液晶パネルにおける、入射した光の強度と、光センサの出力信号や、印刷表示媒体の反射光の強度の関係を示す図である。
図6】液晶パネルの構造の変形例である。
図7】ランベルト配光に近似したバックライトと液晶素子を用いた表示実験の画像である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図に基づいて説明する。図1は、本発明の実施形態にかかる液晶表示装置の構成を示すブロック図である。液晶表示装置10は、液晶パネル11、画像処理部12、A/D変換器13、バックライト電源回路14、及びバックライト15を備えている。液晶パネル11は、パネル駆動回路17と表示領域18を含み、表示領域18は、後述するように、2次元状に配置された複数の画素回路と複数の光センサを備えている。
【0020】
液晶表示装置10の画像処理部12には、外部から表示データD1と出力制御信号OCが入力され、画像処理部12内において表示データ処理が行われ、表示データD2が液晶パネル11に出力される。表示データD2は液晶パネル11のパネル駆動回路17に入力され、パネル駆動回路17は、表示データD2に基づいて表示領域18の画素回路に書き込みを行う。これにより、表示領域18には画像が表示される。
【0021】
バックライト15はLEDで構成され、液晶パネル11の背面から背面光としての光を照射する。バックライト電源回路14は、画像処理部12から出力された制御信号に基づいて、バックライト15への電源の供給や遮断を行う。また、後述するように、光センサからの信号に基づいて、液晶パネル11の駆動制御やバックライト15の制御も行う。バックライト15は、白色LEDで構成されているが、赤色、緑色、青色のLEDを組み合わせて構成することも可能である。
【0022】
パネル駆動回路17では、液晶パネル11の画素回路に電圧を書き込む動作を行う。また、それとともに液晶パネル11の光センサ2(図1では図示せず)から受光量に応じた電圧を読み出す動作も行う。光センサから出力された信号SSは、液晶パネル11の外部に出力され、A/D変換器13に入力される。A/D変換器13は光センサ2からアナログで出力された信号を、デジタル信号に変換する。画像処理部12は、A/D変換器13から出力されたデジタル信号に基づき、後述する制御によって液晶パネル11の駆動制御やバックライト15の制御を行う。
【0023】
図2は、液晶パネル11の詳細な構成を示す図である。表示領域18の画素アレイは、m本の走査信号線G1~Gm、3n本のデータ信号線Sr1~Srn、Sg1~Sgn、Sb1~Sbnを備えており、走査信号線とデータ信号線の交点にm×3n個の画素回路が形成されている。さらに、表示領域18の画素アレイには、各画素回路に対応した光センサ2、センサ読み出し線Rw1~Rwmと、センサ線Srw1~Srwn、Sgw1~Sgwn、Sbw1~Sbwnを備えている。
【0024】
走査信号線G1~Gmは、それぞれ平行に配置される。データ信号線Sr1~Srn、Sg1~Sgn、Sb1~Sbnは、いずれも走査信号線G1~Gmと直交するようにたがいに平行に配置され、走査信号線G1~Gmとデータ信号線Sr1~Srn、Sg1~Sgn、Sb1~Sbnの交点には画素回路1が設けられる。画素回路1は、走査信号線と平行な方向にm個ずつ、データ信号線と平行な方向に3n個ずつ設けられ、2次元状に配列される。データ信号線と平行な方向には、順に赤色、緑色、青色のカラーフィルタを設けて、R(赤色)画素回路1r、G(緑色)画素回路1g、B(青色)画素回路1bを順に構成し、3種類の画素回路で1つの画素を構成する。
【0025】
画素回路1は、TFT3と液晶容量4を備えている。TFT3のゲート端子は、走査信号線に接続され、ソース端子はデータ信号線のいずれかに接続される。また、ドレイン端子は液晶容量の電極に接続される。また、ドレイン端子が接続された電極とは異なる電極には、共通電圧が印加される。
【0026】
表示領域18の周辺には、走査信号線駆動回路31、データ信号線駆動回路32、センサ行駆動回路33、センサ列駆動回路34やスイッチ(35,36)等が設けられる。走査信号線駆動回路31、データ信号線駆動回路32、センサ行駆動回路33、センサ列駆動回路34は、図1におけるパネル駆動回路17に相当する。
データ信号線駆動回路32は、3n本のデータ信号線に対応して3n個の出力端子を有する。それぞれデータ信号線駆動回路32とデータ線の間にはスイッチが設けられている。
【0027】
画素回路1の輝度は、画素回路1に書き込まれる電圧によって定まる。画素回路1への電圧の書き込みは、走査信号線Gi(iは1からmの整数)に、TFT3をオンにするためのハイレベル電圧を印加し、データ信号線Sxj(xはr,g,bのいずれか。jは1からnの整数)に書き込むべき電圧を印加すればよい。表示データD2に応じた電圧を画素回路1に書き込むことにより、それぞれの画素の輝度を所望のレベルに設定することが可能となる。
【0028】
図3は、液晶パネル11の断面とバックライト15を示す図である。液晶パネル11は、2枚のガラス基板41a、41bの間に液晶層42を挟み込んだ構造となっている。ガラス基板41aには3色のカラーフィルタ43r、43g、43b、黒色吸収部44、対向電極45が設けられている。また、ガラス基板41bには画素電極46、データ信号線47が設けられている。さらに、この例においてはガラス基板41bに光センサ2も設けられている。光センサ2内のフォトダイオード6は、画素電極46の近傍に設けられている。ガラス基板(41a,41b)の、互いに対向する面には配向膜48が設けられ、配向膜48が設けられるのと反対側の面には偏光板49が設けられる。図3においては、ガラス基板41a側の面が表面となり、ガラス基板41b側の面が背面となる。背面側でありガラス基板41b側には、バックライト15が設けられる。なお、図3においては、光センサ2はガラス基板41b側の画素電極46の近傍に設けられているが、ガラス基板41a側の、ガラス基板41bと対向する面に設けることもできるし、ガラス基板41aまたはガラス基板41bの側面部に設けるようにすることもできる。
【0029】
図2に示された例では、光センサ2は1つの画素回路に対して1つ設けられており、フォトダイオード6を含んでいる。フォトダイオード6のアノード電極には、センサ読み出し線Rwiが接続され、フォトダイオード6のカソード電極には、センサ線(Srwj,Sgwj,Sbwj(jは1からnの整数))が接続されている。フォトダイオード6には、センサ列駆動回路14からセンサ線(Srwj,Sgwj,Sbwj(jは1からnの整数))に逆バイアス電圧が印加されると、入射光量に応じた電流がフォトダイオード6に流れることによって、その分フォトダイオード6のカソード端子の電圧が低下する。これにより、光センサ2で検知された光量を求めることが可能となる。
【0030】
また、図2に示された例においては、マトリックス回路部において配線交差部にフォトダイオードを接続する単純な構成とされているが、ライン選択用の電界効果トランジスタ、増幅用トランジスタ、リセット用トランジスタ、転送用トランジスタを交差部に設けて、トランジスタの出力にフォトダイオードを接続する構成としてもよい。このような接続構成とすることにより、個々のフォトダイオードから、電気ノイズの少ない明瞭な電流や電圧などの光検出信号を得ることが可能となる。電界効果トランジスタに用いられる半導体としては、既存の薄膜トランジスタに用いられるアモルファスや多結晶形のSi、金属酸化物などの半導体を用いることが可能である。
【0031】
液晶パネル11においては、背面側に配置されたバックライト15によって直接的に出射光が放射され、画素回路1における制御によって輝度が制御されている。一方、紙などの印刷表示媒体には、液晶パネルにおけるバックライトのような発光光源を備えていないため、外部から入射された光は紙の表面において反射され、拡散反射光として観察者の目に入ることとなる。そのため、一般的には、液晶パネルにおけるバックライト等による直接的な出射光と比較して、出射される光量は少なくなり、外部から入射される光量に対しても低い光量となる。
【0032】
本発明では、これらの液晶パネルと紙などの印刷表示媒体との出射光の違いに着目し、液晶パネルにおけるバックライト等による直接的な出射光を、紙における拡散反射光と同等のものになるように制御することによって、液晶パネルによる表示を行っているにもかかわらず、紙における印刷のように見せるように表示することを特徴としている。
【0033】
図5(a)は、液晶パネル11における、単位面積に入射した光の強さを示す光強度と、光センサ2から出力される電圧信号との関係を示すグラフである。このグラフに示されているように、光強度と電圧信号とは、オフセット電圧(Vs)が存在するものの、概ね比例関係となっている。この関係に基づき、実際の測定によってパラメータを求め、求めたパラメータに基づいて、電圧信号に対する光強度を算出することが可能となる。
【0034】
図5(b)は、単位面積に入射した光の強さを示す光強度と、そのときの紙などの印刷表示媒体の強度との関係を示すグラフである。このグラフに示されているように、光強度と反射光の強度との関係は、概ね比例関係にある。この関係に基づき、実際の測定によってパラメータを求め、求めたパラメータに基づいて、光強度に対する反射光の強度を算出することが可能となる。この比例定数は、先に説明したように概ね1以下の数値となる。
【0035】
これらの、外光の入射量の検知にあたっては、液晶パネルにおける画素の駆動にあたっては、画素ごとに設けられている光センサの出力の平均値を取って行っているが、それぞれの光センサからの出力を用いて、画素ごとに拡散反射率を乗じて求めるようにすることも可能である。
【0036】
また、光センサ2は図4に示されているように、各画素回路ごとに設けられる例で説明したが、画素ごとに1つ設けるようにしてもよいし、さらに多くの画素ごとに1つ設けるようにしてもよい。また、液晶パネル全体で1つの光センサを設けたり、液晶パネルの周辺部に複数の光センサを設けるようにすることも可能である。図4に示されているように、光センサを赤色、緑色、青色の各サブ画素ごとに設ける場合、各光センサに対して、画素に設けられているカラーフィルタと同じものを用いて、赤色、緑色、青色の3原色を画素における感度と同程度で個別に検知できるようにすることもできる。そのように構成した場合、3原色ごとに、あらかじめ紙などの印刷表示媒体について、印刷表示媒体の種類に応じた拡散反射率を、実際に印刷表示媒体に光を照射して、それに対する拡散反射光の値に基づいて求めておく。
【0037】
また、一般に拡散反射率(全光線反射率)については、コピー用紙などに用いられる白色紙が85~91%、新聞紙が40~50%となることが知られており、それらの拡散反射率の値を使用すれば、紙質の違いも容易に表現できる。また、それらの拡散反射率の値を複数記憶しておき、適宜切り替えることも有用である。さらには、同じ白色であっても、白布の拡散反射率は60~70%、白色タイルが70~80%であるため、それらの拡散反射率の値を用いることで、紙以外の表面も再現可能である。また、本発明において3原色のカラーセンサーと表示画素で構成するのであれば、紙において3原色毎に拡散反射率を求めて使用する必要がある。これにより、紙の明るさだけでなく、色合いも容易に再現できる。
【0038】
また、液晶パネル側においても、外光の入射量と光センサの出力との関係、画素の駆動状態と画素からの光の放射量との関係を3原色ごとにあらかじめ求めておく。そして、3原色個別に、液晶パネルにおける画素からの光の放射量が、光センサで検知される外光の入射量に対して、特定の印刷表示媒体における拡散反射率を乗じた拡散反射率の光の放射量となるように、液晶パネルにおける画素の駆動を行う。
【0039】
具体的な液晶パネルにおける事前調整・校正と駆動方法の例について、以下に説明する。使用を想定する標準白色照明を最大照度で照射して、そのときの光センサの入力と出力の最大値を設定する。光センサの出力値は、光センサの光強度に比例させる。標準白色光としては、国際照明委員会によって定義された白色標準光源であるD50光源やD65光源を用いるとよい。これらの光源による照度の下、市販の標準拡散白色板の拡散反射率を理想的な100%とした上で、輝度=照度/πとして輝度を計算して求めるか、もしくは標準拡散白色板の輝度を輝度計による測定で求める。そして、このようにして求めた輝度の値とディスプレイの輝度が一致するように3原色駆動信号を調整する。この時の3原色の駆動信号は、各色の最大値として対応付ける。
【0040】
また、ディスプレイの駆動信号が光センサの出力信号に比例して変化するように設定する。これらの調整により、照明光の強度が変わっても3原色光のバランス、すなわち色度・色温度・色合いが、ディスプレイの表示でも保持される。なお、ディスプレイの輝度調整にあたっては、3原色光のバランスを一定に保ちながら駆動信号を調整してもよいが、省電力化のためバックライトの光源(LEDなど)を調整してもよい。
【0041】
その一方、模擬したい紙の3原色反射率を測定しておく。紙の反射率は、標準拡散白色板に代えて紙を用いた場合の輝度の低下比率とおおよそ考えてもよい。紙の3原色ごとの反射率が既知であれば、その反射率の比率(1以下)を、標準拡散白色板を使用した時の最大駆動信号に掛けることによって、ディスプレイの駆動信号を計算で求めることができる。例えば、反射率が3原色でいずれも等しく80%のコピー用白色紙の反射光を再現する場合、3原色の駆動信号にそれぞれ80%をかけることによって、実際に駆動する信号を求めることができる。なお、コピー用白色紙の反射光をランベルト配光に仮定するならば、コピー用白色紙の輝度は、輝度=反射率×照度/πの計算式から、おおよそ近似することもできる。
【0042】
これにより、使用環境の照明環境が変わっても、ディスプレイの3原色輝度を自動的に決定して制御できる。例えば、光を標準白色光から、明るさや色温度の異なる照明光に切り換えれば、光センサの3原色出力の変化に応じてディスプレイの3原色表示も連動するため、ディスプレイ上においても白色紙の輝度と色合いを同時に再現できる。さらに、ディスプレイにおいてコピー用白色紙以外の他の紙(白がくすんだ紙や、色つきの紙など)の反射光を再現する場合、それぞれの紙の3原色の反射率を、あらかじめ求められた値や、輝度測定を行って値を求め、それらの拡散反射率を3原色の表示の最大駆動レベルにそれぞれ掛け合わせることによって、3原色ごとの駆動レベルを求めることができる。これにより、種々の拡散反射率の紙の反射光を、ディスプレイの表示光として再現できる。
【0043】
図6は、図3における液晶パネルの構造の変形例である。図6の例においては、偏光板49の外側の面に正反射光を抑制するためのアンチグレア層が設けられている。紙などの印刷表示媒体においては、液晶パネルとは異なり、表面における正反射光が存在しないため、液晶パネルの表面にアンチグレア層を設けて正反射光を抑制することによって、表示をより紙などの印刷表示媒体に近づけるようにすることが可能となる。また、図6の例では偏光板49の外側の面にアンチグレア層を設けるようにしているが、アンチグレア層に代えて反射抑制層を設けるようにすることも可能である。
【0044】
紙や布によっては、表面に模様等が施されているものもある。そのようなものの場合、模様の有無や模様の形状等によって、表面の拡散反射率が異なる場合がある。このような場合、紙や布における領域ごとの拡散反射率を、模様に合わせて細かく事前に求めておき、液晶パネルにおける表示にあたって、模様に合わせて各領域ごとに異なる拡散反射率を乗じることによって、紙や布の質感を再現しつつ、模様についても輝度の変更によって表示することが可能となる。
【0045】
なお、これらの実施形態の説明においては、液晶を用いた表示装置で説明を行ってきたが、これらは液晶表示装置に限ったものではなく、有機EL等の自発光型の表示装置においても適用可能である。自発光型の表示装置の場合も、液晶表示装置の場合の駆動と同様に、発光する光束を外光の入射光束と拡散反射率の積で求めて駆動すればよい。
【0046】
表示装置の配光分布は、ランベルト配光が理想的であるが、コピー用白色紙の輝度の半値角を測定したところ、おおよそ160°であり、表示面垂直方向からなだらかに減少する配光分布を有していた。そこで、輝度が等方的なランベルト配光に近くなるようにLED光を拡散したバックライトボックス(輝度の半値角は160°)を試作して、市販の液晶素子と積層して表示実験を行った。その結果、正面または斜め方向から見ても、カラー印刷紙と見分けが付かない高画質の表示画像が得られることを確認した。室内照明のもと、試作装置と印刷画像を比較して観察した結果を図7に示す。
【0047】
また、既存の導光板バックライトに、強い拡散板を積層してもランベルト分布に近い配光分布(輝度の半値角は160°)が得られることを確認している。この場合、拡散板の拡散効果が強くなるほど、ランベルト配光に近くなるが、輝度が低下するおそれがある。さらに、偏光板、液晶パネル、光拡散フィルムなどとの積層関係において、間に空気層が存在するとフレネル反射が生じて、入射角の大きな傾いた光が全反射して外に放出されずに表示のための光に寄与しないため、この場合も輝度が低下して暗くなることがある。これを防止するためには、各種の光学部材の積層において貼合やマッチングオイル注入などの密着構造で構成することが好ましい。これにより、斜め出射光強度の低下を防ぐことでき、フレネル反射による輝度の半値角の低下を大幅に抑制できる。
【0048】
その一方、バックライトをランベルト配光に近づけるため光拡散効果を増やして配光分布を拡げるほど、正面輝度が低下する問題が生じる。そのため実用的な観点からは、表示装置もしくはバックライトの輝度の半値角は120°以上が望ましい。バックライトに積層する液晶素子については、インプレーンスイッチング液晶方式(IPS)や、垂直配向液晶方式(VA)のような広視野角特性が得られる表示動作方式を用いることが望ましい。
【符号の説明】
【0049】
1 画素回路
2 光センサ
6 フォトダイオード
10 液晶表示装置
11 液晶パネル
12 画像処理部
13 A/D変換器
14 バックライト電源回路
15 バックライト
17 パネル駆動回路
18 表示領域
31 走査信号線駆動回路
32 データ信号線駆動回路
33 センサ行駆動回路
34 センサ列駆動回路
41 ガラス基板
42 液晶層
43 カラーフィルタ
44 黒色吸収部
45 対向電極
46 画素電極
48 配向膜
49 偏光板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7