(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022097488
(43)【公開日】2022-06-30
(54)【発明の名称】認知能力を測定するためのプロセッサ実装システムおよび方法
(51)【国際特許分類】
A61B 10/00 20060101AFI20220623BHJP
G16H 50/20 20180101ALI20220623BHJP
【FI】
A61B10/00 H
G16H50/20
【審査請求】有
【請求項の数】46
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022062332
(22)【出願日】2022-04-04
(62)【分割の表示】P 2017547951の分割
【原出願日】2016-03-11
(31)【優先権主張番号】62/132,009
(32)【優先日】2015-03-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】516350134
【氏名又は名称】アキリ・インタラクティヴ・ラブズ・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ウォルター・エドワード・マルトゥッチ
(72)【発明者】
【氏名】アダム・パイパー
(72)【発明者】
【氏名】マシュー・オマーニック
(72)【発明者】
【氏名】アダム・ガザリー
(72)【発明者】
【氏名】エリック・エレンコ
(72)【発明者】
【氏名】ジェフリー・バウアー
(72)【発明者】
【氏名】スコット・ケロッグ
(72)【発明者】
【氏名】アシュリー・マテウス
(57)【要約】
【課題】認知能力を測定するためのプロセッサ実装システムおよび方法を提供する。
【解決手段】コンピュータ実装認知機能評価ツールは、マルチタスキングを行っている間の個人の認知能力を評価するように実現される。一実施形態において、ツールが実装されているコンピュータ処理システムは、個人から第1の課題への第1の応答および第2の課題への第2の応答を受け取るものとしてよく、第1の課題および第2の課題は、個人に同時に提示される。システムは、第1の課題および第2の課題が、第1の応答および第2の応答に基づき個人によって実施されると決定し、第1の応答および第2の応答のうちの一方または両方を使用して認知尺度を計算し得る。さらに、認知尺度を計算することは、第1の応答および第2の応答のうちの一方または両方のパフォーマンス尺度に基づき得る。認知尺度に基づき、システムは認知機能評価を個人に対して出力し得る。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
個人の認知能力を評価するためのコンピュータ実装方法であって、
コンピュータ処理システムによって、前記個人による第1の課題への第1の複数の応答を受け取るステップであって、前記第1の課題は、一定期間にわたって前記個人から前記第1の複数の応答を喚起する第1の刺激を含む、ステップと、
前記コンピュータ処理システムによって、前記個人による第2の課題への第2の複数の応答を受け取るステップであって、前記第2の課題は、前記期間にわたって前記個人から前記第2の複数の応答を喚起する第2の刺激を含み、前記第2の刺激は前記第1の刺激の少なくとも一部とともに同時に提示される、ステップと、
前記コンピュータ処理システムによって、前記第1の複数の応答および前記第2の複数の応答に基づき前記第1の課題および前記第2の課題が前記個人によって実施されると決定するステップと、
前記コンピュータ処理システムによって、前記第1の複数の応答および前記第2の複数の応答のうちの一方または両方を使用して認知尺度を計算するステップと、
前記コンピュータ処理システムによって、前記認知尺度に基づき認知機能評価を出力するステップとを含むコンピュータ実装方法。
【請求項2】
個人の認知能力を評価するためのコンピュータ実装方法であって、表示コンポーネント、入力デバイス、およびセンサーを有するハンドヘルドコンピューティングデバイスを使用して実装され、
前記表示コンポーネントによって、一定期間にわたって視覚運動課題を前記個人に提示するステップであって、前記視覚運動課題は前記個人からナビゲーション応答を喚起するナビゲーション経路を含む、ステップと、
前記表示コンポーネントによって、前記期間にわたって反応課題を前記個人に提示するステップであって、前記反応課題は、前記個人から反応応答を喚起するターゲット刺激と前記個人からの応答を必要としない阻害刺激とを含み、前記刺激は前記ナビゲーション経路の少なくとも一部とともに同時に提示される、ステップと、
前記センサーを使用して前記ナビゲーション応答を受け取るステップと、
前記入力デバイスを使用して前記反応応答を受け取るステップと、
前記ハンドヘルドコンピューティングデバイスによって、前記視覚運動課題が前記ナビゲーション応答に基づき前記個人によって実施されていると決定するステップと、
前記ハンドヘルドコンピューティングデバイスによって、前記反応応答を使用して認知尺度を計算するステップと、
前記ハンドヘルドコンピューティングデバイスによって、前記認知尺度に基づき認知機能評価を出力するステップとを含むコンピュータ実装方法。
【請求項3】
前記認知尺度を計算するステップは、前記第1の複数の応答および前記第2の複数の応答のうちの一方または両方を使用してパフォーマンス尺度を決定するステップを含む請求項1に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項4】
前記パフォーマンス尺度は、応答の反応時間および応答の正確さからなる群から選択される請求項3に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項5】
前記第1の複数の応答および前記第2の複数の応答のうちの一方または両方は、1つまたは複数のセンサーを使用して検出され、前記センサーは加速度計およびジャイロスコープからなる群から選択される請求項1に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項6】
前記第1の複数の応答および前記第2の複数の応答のうちの一方または両方を使用してパフォーマンス尺度を決定するステップと、
前記期間中に、パフォーマンス尺度に基づき前記第1の課題または前記第2の課題の難易度レベルを修正するステップとをさらに含む請求項1に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項7】
前記難易度レベルは、ゲームレベルに対応する請求項6に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項8】
前記難易度レベルは、刺激に反応する許容可能な反応時間窓、ナビゲーション速度、障害物の数、障害物のサイズ、ナビゲーション経路内の旋回頻度、およびナビゲーション経路内の旋回の旋回半径からなる群から選択される請求項6に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項9】
前記難易度レベルは、前記期間中にリアルタイムで修正され、
前記認知尺度は、前記期間中に行われる前記難易度レベル修正を使用して計算される請求項6に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項10】
前記パフォーマンス尺度が1つまたは複数の所定の基準を満たす前記難易度レベルの閾値を決定するステップであって、
前記認知尺度は、前記難易度レベルの前記決定された閾値を使用して計算される、ステップをさらに含む請求項9に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項11】
前記1つまたは複数の所定の基準は、所定の長さの時間にわたってパフォーマンスの所定のレベルを維持するステップを含む請求項10に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項12】
前記期間中に、前記第1の複数の応答および前記第2の複数の応答のうちの一方または両方のパフォーマンス尺度に基づき前記第1の課題の第1の難易度レベルを修正するステップと、
前記期間中に、前記第1の複数の応答および前記第2の複数の応答のうちの一方または両方のパフォーマンス尺度に基づき前記第2の課題の第2の難易度レベルを修正するステップであって、
前記第1の難易度レベルおよび前記第2の難易度レベルは、前記期間中にリアルタイムで修正され、
前記認知尺度は、前記第1の難易度レベル修正および前記第2の難易度レベル修正のうちの一方または両方を使用して計算される、ステップとをさらに含む請求項1に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項13】
前記第1の課題は視覚運動課題であり、前記第1の刺激はナビゲーション経路を含み、前記第1の複数の応答は連続入力を含む請求項1に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項14】
前記第2の課題は反応課題であり、前記第2の刺激は前記個人からの応答を必要とするターゲット刺激を含み、前記第2の複数の応答は干渉に反応する入力を含む請求項1に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項15】
前記第2の刺激は、前記個人からの応答を必要としない阻害刺激を含む請求項14に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項16】
前記認知尺度を計算するステップは、統計的分析を前記第1の複数の応答および前記第2の複数の応答のうちの一方または両方に適用するステップを含む請求項1に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項17】
前記認知尺度を計算するステップは、前記パフォーマンス尺度を、知られている認知状態を有する個人を表す所定のパフォーマンス尺度と比較するステップを含む請求項3に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項18】
前記認知尺度を計算するステップは、コンピュータデータモデルを前記パフォーマンス尺度に適用するステップを含む請求項3に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項19】
前記コンピュータデータモデルは、知られている認知状態を有する個人のパフォーマンス尺度に基づき学習される請求項18に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項20】
前記コンピュータデータモデルは、機械学習、パターン認識、回帰分析、およびモンテカルロ法からなる群から選択される技術を使用して学習される請求項19に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項21】
前記認知尺度を計算するステップは、ヒット率、誤警報率、正答率、または誤答率を計算するステップを含む請求項1に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項22】
前記認知尺度を計算するステップは、感度指数、受信者動作特性(ROC)、およびバイアスからなる群から選択された信号検出技術を適用するステップを含む請求項1に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項23】
前記認知尺度は、前記第1の課題への前記第1の複数の応答のパフォーマンス尺度および前記第2の課題への前記第2の複数の応答のパフォーマンス尺度を使用して計算される複合尺度である請求項1に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項24】
前記認知尺度は、前記第1の複数の応答および前記第2の複数の応答のうちの一方の少なくとも2種類のパフォーマンス尺度を使用して計算される複合尺度である請求項1に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項25】
前記認知尺度は、前記第1の複数の応答および前記第2の複数の応答のうちの一方または両方の非パフォーマンス情報およびパフォーマンス尺度を使用して計算される複合尺度である請求項1に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項26】
前記非パフォーマンス情報は、前記個人の階層、年齢、性別、および健康データからなる群から選択される請求項25に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項27】
前記認知機能評価は、認知障害の診断を行う請求項1に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項28】
前記認知機能評価は、時間の経過とともに変わる前記個人の認知能力を監視するために使用される請求項1に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項29】
前記認知機能評価は、前記個人の認知能力に対する治療の効果を監視するために使用される請求項1に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項30】
前記第2の刺激は、前記第1の刺激の少なくとも一部とともに全く同時に提示される請求項1に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項31】
前記第2の刺激のうちの1つは、関連付けられている第1の刺激とともに、わずかな時間差で連続して提示される請求項1に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項32】
個人の認知能力を評価するためのコンピュータ実装システムであって、
1つまたは複数のプロセッサと、
命令を含むメモリとを備え、前記命令は実行されると、前記1つまたは複数のプロセッサに、
第1の課題への前記個人による第1の複数の応答を受け取るステップであって、前記第1の課題は、一定期間にわたって前記個人から前記第1の複数の応答を喚起する第1の刺激を含む、ステップと、
前記個人による第2の課題への第2の複数の応答を受け取るステップであって、前記第2の課題は、前記期間にわたって前記個人から前記第2の複数の応答を喚起する第2の刺激を含み、前記第2の刺激は前記第1の刺激の少なくとも一部とともに同時に提示される、ステップと、
前記第1の複数の応答および前記第2の複数の応答に基づき前記第1の課題および前記第2の課題が前記個人によって実施されると決定するステップと、
前記第1の複数の応答および前記第2の複数の応答のうちの一方または両方を使用して認知尺度を計算するステップと、
前記認知尺度に基づき認知機能評価を出力するステップとを含むステップを実行させる、コンピュータ実装システム。
【請求項33】
個人の認知能力を評価するためのコンピュータ実装システムであって、
1つまたは複数のプロセッサ、表示コンポーネント、入力デバイス、およびセンサーを有するハンドヘルドコンピューティングデバイスと、
命令を含むメモリとを備え、前記命令は実行されると、前記1つまたは複数のプロセッサに、
前記表示コンポーネントによって、一定期間にわたって視覚運動課題を前記個人に提示するステップであって、前記視覚運動課題は前記個人からナビゲーション応答を喚起するナビゲーション経路を含む、ステップと、
前記表示コンポーネントによって、前記期間にわたって反応課題を前記個人に提示するステップであって、前記反応課題は、前記個人から反応応答を喚起するターゲット刺激と前記個人からの応答を必要としない阻害刺激とを含み、前記刺激は前記ナビゲーション経路の少なくとも一部とともに同時に提示される、ステップと、
前記センサーを使用して前記ナビゲーション応答を受け取るステップと、
前記入力デバイスを使用して前記反応応答を受け取るステップと、
前記視覚運動課題が前記ナビゲーション応答に基づき前記個人によって実施されていると決定するステップと、
前記反応応答を使用して認知尺度を計算するステップと、
前記認知尺度に基づき認知機能評価を出力するステップとを含むステップを実行させる、コンピュータ実装システム。
【請求項34】
前記認知尺度を計算するステップは、前記第1の複数の応答および前記第2の複数の応答のうちの一方または両方を使用してパフォーマンス尺度を決定するステップを含む請求項32に記載のコンピュータ実装システム。
【請求項35】
前記パフォーマンス尺度は、応答の反応時間および応答の正確さからなる群から選択される請求項34に記載のコンピュータ実装システム。
【請求項36】
前記第1の複数の応答および前記第2の複数の応答のうちの一方または両方は、1つまたは複数のセンサーを使用して検出され、前記センサーは加速度計およびジャイロスコープからなる群から選択される請求項32に記載のコンピュータ実装システム。
【請求項37】
前記メモリは、前記1つまたは複数のプロセッサに、
前記第1の複数の応答および前記第2の複数の応答のうちの一方または両方を使用してパフォーマンス尺度を決定するステップと、
前記期間中に、パフォーマンス尺度に基づき前記第1の課題または前記第2の課題の難易度レベルを修正するステップとを含むさらなるステップを実行させるための命令を含む請求項32に記載のコンピュータ実装システム。
【請求項38】
前記難易度レベルは、ゲームレベルに対応する請求項37に記載のコンピュータ実装システム。
【請求項39】
前記難易度レベルは、刺激に反応する許容可能な反応時間窓、ナビゲーション速度、障害物の数、障害物のサイズ、ナビゲーション経路内の旋回頻度、およびナビゲーション経路内の旋回の旋回半径からなる群から選択される請求項37に記載のコンピュータ実装システム。
【請求項40】
前記難易度レベルは、前記期間中にリアルタイムで修正され、
前記認知尺度は、前記期間中に行われる前記難易度レベル修正を使用して計算される請求項37に記載のコンピュータ実装システム。
【請求項41】
前記メモリは、前記1つまたは複数のプロセッサに、
前記パフォーマンス尺度が1つまたは複数の所定の基準を満たす前記難易度レベルの閾値を決定するステップであって、
前記認知尺度は、前記難易度レベルの前記決定された閾値を使用して計算される、ステップを含むさらなるステップを実行させるための命令を含む請求項40に記載のコンピュータ実装システム。
【請求項42】
前記1つまたは複数の所定の基準は、所定の長さの時間にわたってパフォーマンスの所定のレベルを維持するステップを含む請求項41に記載のコンピュータ実装システム。
【請求項43】
前記メモリは、前記1つまたは複数のプロセッサに、
前記期間中に、前記第1の複数の応答および前記第2の複数の応答のうちの一方または両方のパフォーマンス尺度に基づき前記第1の課題の第1の難易度レベルを修正するステップと、
前記期間中に、前記第1の複数の応答および前記第2の複数の応答のうちの一方または両方のパフォーマンス尺度に基づき前記第2の課題の第2の難易度レベルを修正するステップであって、
前記第1の難易度レベルおよび前記第2の難易度レベルは、前記期間中にリアルタイムで修正され、
前記認知尺度は、前記第1の難易度レベル修正および前記第2の難易度レベル修正のうちの一方または両方を使用して計算される、ステップとを含むさらなるステップを実行させるための命令を含む請求項32に記載のコンピュータ実装システム。
【請求項44】
前記第1の課題は視覚運動課題であり、前記第1の刺激はナビゲーション経路を含み、前記第1の複数の応答は連続入力を含む請求項32に記載のコンピュータ実装システム。
【請求項45】
前記第2の課題は反応課題であり、前記第2の刺激は前記個人からの応答を必要とするターゲット刺激を含み、前記第2の複数の応答は干渉に反応する入力を含む請求項32に記載のコンピュータ実装システム。
【請求項46】
前記第2の刺激は、前記個人からの応答を必要としない阻害刺激を含む請求項45に記載のコンピュータ実装システム。
【請求項47】
前記認知尺度を計算するステップは、統計的分析を前記第1の複数の応答および前記第2の複数の応答のうちの一方または両方に適用するステップを含む請求項32に記載のコンピュータ実装システム。
【請求項48】
前記認知尺度を計算するステップは、前記パフォーマンス尺度を、知られている認知状態を有する個人を表す所定のパフォーマンス尺度と比較するステップを含む請求項34に記載のコンピュータ実装システム。
【請求項49】
前記認知尺度を計算するステップは、コンピュータデータモデルを前記パフォーマンス尺度に適用するステップを含む請求項34に記載のコンピュータ実装システム。
【請求項50】
前記コンピュータデータモデルは、知られている認知状態を有する個人のパフォーマンス尺度に基づき学習される請求項49に記載のコンピュータ実装システム。
【請求項51】
前記コンピュータデータモデルは、機械学習、パターン認識、回帰分析、およびモンテカルロ法からなる群から選択される技術を使用して学習される請求項50に記載のコンピュータ実装システム。
【請求項52】
前記認知尺度を計算するステップは、ヒット率、誤警報率、正答率、または誤答率を計算するステップを含む請求項32に記載のコンピュータ実装システム。
【請求項53】
前記認知尺度を計算するステップは、感度指数、受信者動作特性(ROC)、およびバイアスからなる群から選択された信号検出技術を適用するステップを含む請求項32に記載のコンピュータ実装システム。
【請求項54】
前記認知尺度は、前記第1の課題への前記第1の複数の応答のパフォーマンス尺度および前記第2の課題への前記第2の複数の応答のパフォーマンス尺度を使用して計算される複合尺度である請求項32に記載のコンピュータ実装システム。
【請求項55】
前記認知尺度は、前記第1の複数の応答および前記第2の複数の応答のうちの一方の少なくとも2種類のパフォーマンス尺度を使用して計算される複合尺度である請求項32に記載のコンピュータ実装システム。
【請求項56】
前記認知尺度は、前記第1の複数の応答および前記第2の複数の応答のうちの一方または両方の非パフォーマンス情報およびパフォーマンス尺度を使用して計算される複合尺度である請求項32に記載のコンピュータ実装システム。
【請求項57】
前記非パフォーマンス情報は、前記個人の階層、年齢、性別、および健康データからなる群から選択される請求項56に記載のコンピュータ実装システム。
【請求項58】
前記認知機能評価は、認知障害の診断を行う請求項32に記載のコンピュータ実装システム。
【請求項59】
前記認知機能評価は、時間の経過とともに変わる前記個人の認知能力を監視するために使用される請求項32に記載のコンピュータ実装システム。
【請求項60】
前記認知機能評価は、前記個人の認知能力に対する治療の効果を監視するために使用される請求項32に記載のコンピュータ実装システム。
【請求項61】
前記第2の刺激は、前記第1の刺激の少なくとも一部とともに全く同時に提示される請求項32に記載のコンピュータ実装システム。
【請求項62】
前記第2の刺激のうちの1つは、関連付けられている第1の刺激とともに、わずかな時間差で連続して提示される請求項32に記載のコンピュータ実装システム。
【請求項63】
個人の認知能力を評価するための命令とともに符号化されている非一時的コンピュータ可読媒体であって、前記命令はコンピュータ処理システムに
第1の課題への前記個人による第1の複数の応答を受け取るステップであって、前記第1の課題は、一定期間にわたって前記個人から前記第1の複数の応答を喚起する第1の刺激を含む、ステップと、
前記個人による第2の課題への第2の複数の応答を受け取るステップであって、前記第2の課題は、前記期間にわたって前記個人から前記第2の複数の応答を喚起する第2の刺激を含み、前記第2の刺激は前記第1の刺激の少なくとも一部とともに同時に提示される、ステップと、
前記第1の複数の応答および前記第2の複数の応答に基づき前記第1の課題および前記第2の課題が前記個人によって実施されると決定するステップと、
前記第1の複数の応答および前記第2の複数の応答のうちの一方または両方を使用して認知尺度を計算するステップと、
前記認知尺度に基づき認知機能評価を出力するステップとを含むステップを実行させるように構成される、非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項64】
個人の認知能力を評価するための命令とともに符号化されている非一時的コンピュータ可読媒体であって、前記命令は、表示コンポーネント、入力デバイス、およびセンサーを有するハンドヘルドコンピューティングデバイスに
前記表示コンポーネントによって、一定期間にわたって視覚運動課題を前記個人に提示するステップであって、前記視覚運動課題は前記個人からナビゲーション応答を喚起するナビゲーション経路を含む、ステップと、
前記表示コンポーネントによって、前記期間にわたって反応課題を前記個人に提示するステップであって、前記反応課題は、前記個人から反応応答を喚起するターゲット刺激と前記個人からの応答を必要としない阻害刺激とを含み、前記刺激は前記ナビゲーション経路の少なくとも一部とともに同時に提示される、ステップと、
前記センサーを使用して前記ナビゲーション応答を受け取るステップと、
前記入力デバイスを使用して前記反応応答を受け取るステップと、
前記視覚運動課題が前記ナビゲーション応答に基づき前記個人によって実施されていると決定するステップと、
前記反応応答を使用して認知尺度を計算するステップと、
前記認知尺度に基づき認知機能評価を出力するステップとを含むステップを実行させるように構成される、非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項65】
前記認知尺度を計算するステップは、前記第1の複数の応答および前記第2の複数の応答のうちの一方または両方を使用してパフォーマンス尺度を決定するステップを含む請求項63に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項66】
前記パフォーマンス尺度は、応答の反応時間および応答の正確さからなる群から選択される請求項65に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項67】
前記第1の複数の応答および前記第2の複数の応答のうちの一方または両方は、1つまたは複数のセンサーを使用して検出され、前記センサーは加速度計およびジャイロスコープからなる群から選択される請求項63に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項68】
前記命令は前記コンピュータ処理システムに
前記第1の複数の応答および前記第2の複数の応答のうちの一方または両方を使用してパフォーマンス尺度を決定するステップと、
前記期間中に、パフォーマンス尺度に基づき前記第1の課題または前記第2の課題の難易度レベルを修正するステップとを含むさらなるステップを実行させるように構成される請求項63に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項69】
前記難易度レベルは、ゲームレベルに対応する請求項68に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項70】
前記難易度レベルは、刺激に反応する許容可能な反応時間窓、ナビゲーション速度、障害物の数、障害物のサイズ、ナビゲーション経路内の旋回頻度、およびナビゲーション経路内の旋回の旋回半径からなる群から選択される請求項68に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項71】
前記難易度レベルは、前記期間中にリアルタイムで修正され、
前記認知尺度は、前記期間中に行われる前記難易度レベル修正を使用して計算される請求項68に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項72】
前記命令は前記コンピュータ処理システムに
前記パフォーマンス尺度が1つまたは複数の所定の基準を満たす前記難易度レベルの閾値を決定するステップであって、
前記認知尺度は、前記難易度レベルの前記決定された閾値を使用して計算される、ステップを含むさらなるステップを実行させるように構成される請求項71に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項73】
前記1つまたは複数の所定の基準は、所定の長さの時間にわたってパフォーマンスの所定のレベルを維持するステップを含む請求項72に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項74】
前記命令は前記コンピュータ処理システムに
前記期間中に、前記第1の複数の応答および前記第2の複数の応答のうちの一方または両方のパフォーマンス尺度に基づき前記第1の課題の第1の難易度レベルを修正するステップと、
前記期間中に、前記第1の複数の応答および前記第2の複数の応答のうちの一方または両方のパフォーマンス尺度に基づき前記第2の課題の第2の難易度レベルを修正するステップであって、
前記第1の難易度レベルおよび前記第2の難易度レベルは、前記期間中にリアルタイムで修正され、
前記認知尺度は、前記第1の難易度レベル修正および前記第2の難易度レベル修正のうちの一方または両方を使用して計算される、ステップとを含むさらなるステップを実行させるように構成される請求項63に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項75】
前記第1の課題は視覚運動課題であり、前記第1の刺激はナビゲーション経路を含み、前記第1の複数の応答は連続入力を含む請求項63に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項76】
前記第2の課題は反応課題であり、前記第2の刺激は前記個人からの応答を必要とするターゲット刺激を含み、前記第2の複数の応答は干渉に反応する入力を含む請求項63に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項77】
前記第2の刺激は、前記個人からの応答を必要としない阻害刺激を含む請求項76に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項78】
前記認知尺度を計算するステップは、統計的分析を前記第1の複数の応答および前記第2の複数の応答のうちの一方または両方に適用するステップを含む請求項63に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項79】
前記認知尺度を計算するステップは、前記パフォーマンス尺度を、知られている認知状態を有する個人を表す所定のパフォーマンス尺度と比較するステップを含む請求項65に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項80】
前記認知尺度を計算するステップは、コンピュータデータモデルを前記パフォーマンス尺度に適用するステップを含む請求項65に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項81】
前記コンピュータデータモデルは、知られている認知状態を有する個人のパフォーマンス尺度に基づき学習される請求項80に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項82】
前記コンピュータデータモデルは、機械学習、パターン認識、回帰分析、およびモンテカルロ法からなる群から選択される技術を使用して学習される請求項81に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項83】
前記認知尺度を計算するステップは、ヒット率、誤警報率、正答率、または誤答率を計算するステップを含む請求項63に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項84】
前記認知尺度を計算するステップは、感度指数、受信者動作特性(ROC)、およびバイアスからなる群から選択された信号検出技術を適用するステップを含む請求項63に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項85】
前記認知尺度は、前記第1の課題への前記第1の複数の応答のパフォーマンス尺度および前記第2の課題への前記第2の複数の応答のパフォーマンス尺度を使用して計算される複合尺度である請求項63に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項86】
前記認知尺度は、前記第1の複数の応答および前記第2の複数の応答のうちの一方の少なくとも2種類のパフォーマンス尺度を使用して計算される複合尺度である請求項63に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項87】
前記認知尺度は、前記第1の複数の応答および前記第2の複数の応答のうちの一方または両方の非パフォーマンス情報およびパフォーマンス尺度を使用して計算される複合尺度である請求項63に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項88】
前記非パフォーマンス情報は、前記個人の階層、年齢、性別、および健康データからなる群から選択される請求項87に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項89】
前記認知機能評価は、認知障害の診断を行う請求項63に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項90】
前記認知機能評価は、時間の経過とともに変わる前記個人の認知能力を監視するために使用される請求項63に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項91】
前記認知機能評価は、前記個人の認知能力に対する治療の効果を監視するために使用される請求項63に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項92】
前記第2の刺激は、前記第1の刺激の少なくとも一部とともに全く同時に提示される請求項63に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項93】
前記第2の刺激のうちの1つは、関連付けられている第1の刺激とともに、わずかな時間差で連続して提示される請求項63に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項94】
前記認知尺度を計算するステップは、前記ナビゲーション応答および前記反応応答のうちの一方または両方を使用してパフォーマンス尺度を決定するステップを含む、請求項2に記載のコンピュータ実装方法、請求項33に記載のコンピュータ実装システム、または請求項64に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項95】
前記認知尺度を計算するステップは、前記ナビゲーション応答および前記反応応答のうちの一方または両方を使用してパフォーマンス尺度を決定するステップを含み、
前記パフォーマンス尺度は、応答の反応時間および応答の正確さからなる群から選択される、請求項2に記載のコンピュータ実装方法、請求項33に記載のコンピュータ実装システム、または請求項64に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項96】
前記センサーは加速度計およびジャイロスコープからなる群から選択される、請求項2に記載のコンピュータ実装方法、請求項33に記載のコンピュータ実装システム、または請求項64に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項97】
前記ナビゲーション応答および前記反応応答のうちの一方または両方を使用してパフォーマンス尺度を決定するステップと、
前記期間中に、前記パフォーマンス尺度に基づき前記視覚運動課題または前記反応課題の難易度レベルを修正するステップとをさらに含む請求項2に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項98】
前記メモリは、前記1つまたは複数のプロセッサに、
前記ナビゲーション応答および前記反応応答のうちの一方または両方を使用してパフォーマンス尺度を決定するステップと、
前記期間中に、前記パフォーマンス尺度に基づき前記視覚運動課題または前記反応課題の難易度レベルを修正するステップとを含むさらなるステップを実行させるための命令を含む請求項33に記載のコンピュータ実装システム。
【請求項99】
前記命令は前記コンピュータ処理システムに
前記ナビゲーション応答および前記反応応答のうちの一方または両方を使用してパフォーマンス尺度を決定するステップと、
前記期間中に、前記パフォーマンス尺度に基づき前記視覚運動課題または前記反応課題の難易度レベルを修正するステップとを含むさらなるステップを実行させるように構成される請求項64に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項100】
前記難易度レベルは、刺激に反応する許容可能な反応時間窓、ナビゲーション速度、障害物の数、障害物のサイズ、ナビゲーション経路内の旋回頻度、およびナビゲーション経路内の旋回の旋回半径からなる群から選択される、請求項97に記載のコンピュータ実装方法、請求項98に記載のコンピュータ実装システム、または請求項99に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項101】
前記難易度レベルは、前記期間中にリアルタイムで修正され、
前記認知尺度は、前記期間中に行われる前記難易度レベル修正を使用して計算される、請求項97に記載のコンピュータ実装方法、請求項98に記載のコンピュータ実装システム、または請求項99に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項102】
前記パフォーマンス尺度が1つまたは複数の所定の基準を満たす前記難易度レベルの閾値を決定するステップを含み、
前記認知尺度は、前記難易度レベルの前記決定された閾値を使用して計算される、請求項97に記載のコンピュータ実装方法、請求項98に記載のコンピュータ実装システム、または請求項99に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項103】
前記パフォーマンス尺度が1つまたは複数の所定の基準を満たす前記難易度レベルの閾値を決定するステップを含み、
前記認知尺度は、前記難易度レベルの前記決定された閾値を使用して計算され、
前記1つまたは複数の所定の基準は、所定の長さの時間にわたってパフォーマンスの所定のレベルを維持するステップを含む、請求項97に記載のコンピュータ実装方法、請求項98に記載のコンピュータ実装システム、または請求項99に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項104】
前記期間中に、前記ナビゲーション応答および前記反応応答のうちの一方または両方のパフォーマンス尺度に基づきナビゲーション課題の第1の難易度レベルを修正するステップと、
前記期間中に、前記ナビゲーション応答および前記反応応答のうちの一方または両方のパフォーマンス尺度に基づき前記反応課題の第2の難易度レベルを修正するステップであって、
前記第1の難易度レベルおよび前記第2の難易度レベルは、前記期間中にリアルタイムで修正され、
前記認知尺度は、前記第1の難易度レベル修正および前記第2の難易度レベル修正のうちの一方または両方を使用して計算される、ステップとをさらに含む請求項2に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項105】
前記メモリは、前記1つまたは複数のプロセッサに、
前記期間中に、前記ナビゲーション応答および前記反応応答のうちの一方または両方のパフォーマンス尺度に基づきナビゲーション課題の第1の難易度レベルを修正するステップと、
前記期間中に、前記ナビゲーション応答および前記反応応答のうちの一方または両方のパフォーマンス尺度に基づき前記反応課題の第2の難易度レベルを修正するステップであって、
前記第1の難易度レベルおよび前記第2の難易度レベルは、前記期間中にリアルタイムで修正され、
前記認知尺度は、前記第1の難易度レベル修正および前記第2の難易度レベル修正のうちの一方または両方を使用して計算される、ステップとを含むさらなるステップを実行させるための命令を含む請求項33に記載のコンピュータ実装システム。
【請求項106】
前記命令は前記コンピュータ処理システムに
前記期間中に、前記ナビゲーション応答および前記反応応答のうちの一方または両方のパフォーマンス尺度に基づきナビゲーション課題の第1の難易度レベルを修正するステップと、
前記期間中に、前記ナビゲーション応答および前記反応応答のうちの一方または両方のパフォーマンス尺度に基づき前記反応課題の第2の難易度レベルを修正するステップであって、
前記第1の難易度レベルおよび前記第2の難易度レベルは、前記期間中にリアルタイムで修正され、
前記認知尺度は、前記第1の難易度レベル修正および前記第2の難易度レベル修正のうちの一方または両方を使用して計算される、ステップとを含むさらなるステップを実行させるように構成される請求項64に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項107】
前記ナビゲーション応答は、連続入力を含む、請求項2に記載のコンピュータ実装方法、請求項33に記載のコンピュータ実装システム、または請求項64に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項108】
前記認知尺度を計算するステップは、統計的分析を前記ナビゲーション応答および前記反応応答のうちの一方または両方に適用するステップを含む、請求項2に記載のコンピュータ実装方法、請求項33に記載のコンピュータ実装システム、または請求項64に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項109】
前記認知尺度を計算するステップは、前記ナビゲーション応答および前記反応応答のうちの一方または両方を使用してパフォーマンス尺度を決定するステップと、前記パフォーマンス尺度を、知られている認知状態を有する個人を表す所定のパフォーマンス尺度と比較するステップとを含む、請求項2に記載のコンピュータ実装方法、請求項33に記載のコンピュータ実装システム、または請求項64に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項110】
前記認知尺度を計算するステップは、前記ナビゲーション応答および前記反応応答のうちの一方または両方を使用してパフォーマンス尺度を決定するステップと、コンピュータデータモデルを前記パフォーマンス尺度に適用するステップとを含む、請求項2に記載のコンピュータ実装方法、請求項33に記載のコンピュータ実装システム、または請求項64に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項111】
前記認知尺度を計算するステップは、前記ナビゲーション応答および前記反応応答のうちの一方または両方を使用してパフォーマンス尺度を決定するステップと、コンピュータデータモデルを前記パフォーマンス尺度に適用するステップとを含み、前記コンピュータデータモデルは、知られている認知状態を有する個人のパフォーマンス尺度に基づき学習される、請求項2に記載のコンピュータ実装方法、請求項33に記載のコンピュータ実装システム、または請求項64に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項112】
前記認知尺度を計算するステップは、前記ナビゲーション応答および前記反応応答のうちの一方または両方を使用してパフォーマンス尺度を決定するステップと、コンピュータデータモデルを前記パフォーマンス尺度に適用するステップとを含み、前記コンピュータデータモデルは、機械学習、パターン認識、回帰分析、およびモンテカルロ法からなる群から選択される技術を使用して学習される、請求項2に記載のコンピュータ実装方法、請求項33に記載のコンピュータ実装システム、または請求項64に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項113】
前記認知尺度を計算するステップは、ヒット率、誤警報率、正答率、または誤答率を計算するステップを含む請求項2に記載のコンピュータ実装方法、請求項33に記載のコンピュータ実装システム、または請求項64に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項114】
前記認知尺度を計算するステップは、感度指数、受信者動作特性(ROC)、およびバイアスからなる群から選択された信号検出技術を適用するステップを含む、請求項2に記載のコンピュータ実装方法、請求項33に記載のコンピュータ実装システム、または請求項64に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項115】
前記認知尺度は、前記視覚運動課題への前記ナビゲーション応答のパフォーマンス尺度と前記反応課題への前記反応応答のパフォーマンス尺度とを使用して計算される複合尺度である、請求項2に記載のコンピュータ実装方法、請求項33に記載のコンピュータ実装システム、または請求項64に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項116】
前記認知尺度は、前記ナビゲーション応答および前記反応応答のうちの一方の少なくとも2種類のパフォーマンス尺度を使用して計算される複合尺度である、請求項2に記載のコンピュータ実装方法、請求項33に記載のコンピュータ実装システム、または請求項64に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項117】
前記認知尺度は、前記ナビゲーション応答および前記反応応答のうちの一方または両方の非パフォーマンス情報およびパフォーマンス尺度を使用して計算される複合尺度である、請求項2に記載のコンピュータ実装方法、請求項33に記載のコンピュータ実装システム、または請求項64に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項118】
前記認知尺度は、前記ナビゲーション応答および前記反応応答のうちの一方または両方の非パフォーマンス情報およびパフォーマンス尺度を使用して計算される複合尺度であり、前記非パフォーマンス情報は、前記個人の階層、年齢、性別、および健康データからなる群から選択される、請求項2に記載のコンピュータ実装方法、請求項33に記載のコンピュータ実装システム、または請求項64に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項119】
前記認知機能評価は、認知障害の診断を行う、請求項2に記載のコンピュータ実装方法、請求項33に記載のコンピュータ実装システム、または請求項64に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項120】
前記認知機能評価は、時間の経過とともに変わる前記個人の認知能力を監視するために使用される、請求項2に記載のコンピュータ実装方法、請求項33に記載のコンピュータ実装システム、または請求項64に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項121】
前記認知機能評価は、時間の経過とともに変わる前記個人の認知能力に対する療法の効果を監視するために使用される、請求項2に記載のコンピュータ実装方法、請求項33に記載のコンピュータ実装システム、または請求項64に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項122】
前記刺激は、前記ナビゲーション経路の少なくとも一部とともに全く同時に提示される、請求項2に記載のコンピュータ実装方法、請求項33に記載のコンピュータ実装システム、または請求項64に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項123】
刺激の1つは、前記ナビゲーション経路の関連付けられている部分とともに、わずかな時間差で連続して提示される、請求項2に記載のコンピュータ実装方法、請求項33に記載のコンピュータ実装システム、または請求項64に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれている2015年3月12日に出願した米国仮出願第62/132,009号の優先権の利益を主張するものである。
【0002】
開示されている実施形態は、一般に、個人の認知機能を測定するためのコンピュータ実装方法に関する。
【背景技術】
【0003】
認知機能は、認知症、うつ病、自閉症スペクトラム障害、注意欠陥過活動性障害、およびさらには健康的な老化などの多くの疾病過程の情報マーカー(informative marker)として認識されている。この理由から、認知機能を監視することは、個人のスクリーニング、医学的診断、治療の監視、および新興の認知機能トレーニング分野の調査の重要な一部となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第WO2012/064999A1号
【特許文献2】米国特許出願第62001141号
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】CharronおよびKoechlin、「Divided Representation of Concurrent Goals in the Human Frontal Lobes」Science、328:360~363頁
【非特許文献2】MayerおよびMoreno、2003年「Nine ways to reduce cognitive load in multimedia learning」Educational Psychologist、38(2):43~52頁
【非特許文献3】JuncoおよびCotton、2010年「Perceived academic effects of instant messaging use」Computers & Education、56(2):370~378頁
【非特許文献4】Baniqued、Lee、Vossら、「Selling points: What cognitive abilities are tapped by casual video games?」Acta Psychol (Amst.) 2013年、142(1):74頁~
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
従来の有効性が確認されている認知機能評価ツールには2、3の問題点がある。
【0007】
主な問題点は、認知機能評価プロセスは使用者が実施する上で退屈なものであるという点である。魅力のない課題およびインターフェースは、すべての使用者が自分の最高の能力に合わせて実施する環境を形成せず、その結果、スコアおよび規範データセットは不正確なものとなる。それに加えて、使用者が同じ評価プロセスを複数回実施する要求に応じることを嫌がることがある。
【0008】
現在の認知機能評価プロセスに関わる第2の問題点は、それらが使用者と、使用者のパフォーマンスを評価する人の両方にとって時間がかかるものであり得るという点である。いくつかの場合において、これは、提供される情報が価値のあるものだとしても、認知評価を受けないという決定につながる。そのため、認知機能が時間の経過とともにどのように変化しているかを理解するために1人の人に何回も同じ認知機能評価を実施することは後方支援的に困難でもある。
【0009】
最後に、現在利用可能な認知評価は、個体群内の知られている認知障害に対する感度が悪い。行動および認知に関する症状を引き起こす16p.11.2 BP4-BP5における染色体異常を持つ個体群を同年齢の兄弟姉妹の集団から区別できることが知られている、現在利用可能な、一般的に使用される認知ツールはないことを諒解されたい。
【0010】
したがって、新しい認知機能評価ツールは、現在のツールでは最適な識別を行えない、毎日の課題に関わるか、または継ぎ目なく組み込まれている欠陥を検出することが可能ならば有益であろう。本開示では、使用者が少なくとも2つの課題を同時に実施しているときに使用者入力を評価する独自のコンピュータ実装認知機能評価ツールを説明している。この新しいツールは、コンピュータによって使用可能にされ得るが、それは、コンピュータが、2つの課題を提示し、適応させ、同時に評価させることを可能にするからであり、この作業は人間では忠実にかつ確実に達成できないものである。本開示の方法は、医療、教育、および専門業務の環境において使用され得る。以下で説明されている認知機能評価ツールは、認知機能を評価する使用者または人物に大きな負担をかけることなく監視目的のために1回限りの評価として使用されるか、または2回以上行われ得る。
【0011】
以下で説明されている例示的な実施形態の目的および利点は、次の説明において述べられ、明らかになる。例示的な実施形態の追加の利点は、明細書および請求項において特に指摘されているデバイス、システム、および方法によって、さらには添付図面から、実現され達成される。
【0012】
認知機能を測定し、理解することは、多くの分野において、すなわち疾病の診断、神経学的状態の診断、医学的介入への応答および副作用の監視、ならびに教育的配置(educational placement)およびニーズの取り扱いにおいて重要である。しかしながら、現在の認知機能測定ツールは、定期的に実施するのに時間がかかりすぎたり、使用者の積極的関与を持続させないので順守および厳守の面で劣っていたり、または認知障害のある個体群における知られている差異に対する感度が悪い場合がある。本開示では、使用者が少なくとも2つの課題を一度に実施している(「マルチタスキング」)間にコンピュータデバイスへの使用者入力を通してパフォーマンスを測定する新規性のある認知機能評価を実現する。
【0013】
他の認知機能評価は計算デバイスへの使用者入力に頼り得るが、大部分は参加者が一度に1つの課題のみを実施するか、または第2の課題を存在させているが実施されることを意図していない(たとえば、無視されるべき注意散漫)ことに頼る。マルチタスキングを組み込んでいる既存の認知機能評価方法では、この方法の主眼を、マルチタスキングフェーズとシングルタスクコンポーネントの孤立した個別のパフォーマンスとの間の差を際立たせることに置いており、方法の実用性はマルチタスクパフォーマンスと課題が単独で実施されるときとを比較することによってマルチタスキング環境内にあることのパフォーマンスコストを計算することのみにあることがわかる。本開示の独自の態様は、マルチタスキング環境内で収集されたそのパフォーマンスデータが、以前に有用であったマルチタスキング「コスト」データに加えて、使用者の認知状態を特に詳しく伝え、場合によっては、コストデータよりも感度が高い可能性があることを見いだしていることである。
【0014】
説明されている方法は、入力コンポーネントを備えるコンピュータデバイス上に実装される。コンピュータデバイスは、人間では忠実にかつ確実に行うことができない作業である、2つの課題の提示および2つの課題への使用者反応の測定を同時に可能にするのでこれらの方法を使用可能にする。コンピュータデバイスは、両方の課題の難しさを独立して適応させることも可能である。それに加えて、コンピュータデバイスが提供できる時間的解決方法なしでは、パフォーマンス測定は有効な認知尺度とはならない。
【0015】
本開示では、個人の認知能力または機能を測定するためのコンピュータ実装方法を説明しており、この方法は、入力コンポーネントを有するコンピュータデバイスを使用して実装され得る。測定は、使用者が少なくとも2つの明確に異なる課題を実施している(「マルチタスキング」)間に行われるものとしてよく、その各々はコンピュータデバイスへの入力を必要とする。コンピュータは、認知尺度に基づき課題のうちの少なくとも1つのパフォーマンス尺度の分析を実行し、認知尺度に基づき使用者の認知能力もしくは機能を指示する評価を出力するものとしてよい。
【0016】
この方法は、認知機能測定以外の目的のために使用者が2つまたはそれ以上の課題に同時に取り組むときのパフォーマンスの測定(受動的課題)および認知機能評価用に特に設計されている規定された課題に関するパフォーマンスの能動的測定(能動的課題)を含む、複数のシナリオで実装され得る。受動的課題の例は、電子メールを作成する、インスタントメッセージに応答する、およびインターネットをブラウズする作業である。能動的課題は、記憶課題などの、特定の領域における使用者の認知機能を評価するように設計されている課題である。市販のビデオゲームは、多くの場合、使用者をマルチタスキングに取り組ませ、認知機能評価のための優れた機会を提供する。それに加えて、ビデオゲームは、能動的課題でマルチタスキングを提供するように特に設計され得る。
【0017】
一態様において、マルチタスク環境における使用者入力は、異なるパフォーマンス尺度に基づき分析され得る。その中でも、特定の正確さが維持され得るパフォーマンス閾値、一定期間にわたる平均パフォーマンス、時間の経過とともに生じるパフォーマンスレベルの変動、特定の刺激への反応時間、反応時間における変動、および使用者が応答すべき干渉刺激(interference stimuli)と無視されるべきである阻害刺激(distractor stimuli)とを差別化する能力がある。これらのパフォーマンス尺度は、標準的な技術を使用して分析され、組み合わされて複合変数を作成し、時間の経過とともに測定されて追加の認知尺度を形成することができる。
【0018】
本開示の方法は、とりわけ、認知障害を診断する、特定の病状を診断するのを補助する、治療への反応を監視する、認知副作用を引き起こすことが知られている治療または不明な薬動力学を有する治療における副作用を監視する、および教育的評価および配置に役立てるために使用され得る。
【0019】
説明されている例示的な実施形態において、提示されているのは、様々な臨床的個体群におけるこの新しいアプローチの配備、試験、および有効性の特定の実施形態である。いくつかの例示的な実施形態において、コンピュータベースの認知機能評価ツールは、2つの能動的認知課題を同時に提示するビデオゲームで実装される。2、3の具体的に例示されている実施形態において、コンピュータベースの方法は、視覚運動課題および知覚反応課題を同時に提示するビデオゲームで実装される。例示的実施形態は、高齢個体群の知られている認知機能低下を示し、従来の認知尺度よりも正確に個体群を差別化し、異なる臨床的個体群を差別化し、時間の経過に従って行われるツールの測定の安定性を示すために試験され得る。
【0020】
たとえば、本開示は、上で説明されている認知機能評価の様々な例示的な実施形態を実現する。一実施形態において、個人の認知能力を評価するためのコンピュータ実装方法は、表示コンポーネント、入力デバイス、およびセンサーを有するハンドヘルドコンピューティングデバイスを使用して実装される。この方法は、表示コンポーネントによって、一定期間にわたって視覚運動課題を個人に提示するステップであって、視覚運動課題は個人からナビゲーション応答(navigation response)を喚起するナビゲーション経路(navigation path)を含む、ステップと、表示コンポーネントによって、その期間にわたって反応課題を個人に提示するステップであって、反応課題は個人から反応応答を喚起するターゲット刺激と個人からの応答を必要としない阻害刺激とを含み、刺激はナビゲーション経路の少なくとも一部とともに同時に提示される、ステップと、センサーを使用してナビゲーション応答を受け取るステップと、入力デバイスを使用して反応応答を受け取るステップと、ハンドヘルドコンピューティングデバイスによって、視覚運動課題がナビゲーション応答に基づき個人によって実施されていると決定するステップと、ハンドヘルドコンピューティングデバイスによって、反応応答を使用して認知尺度を計算するステップと、ハンドヘルドコンピューティングデバイスによって、認知尺度に基づき認知機能評価を出力するステップとを含む。
【0021】
一実施形態において、本開示は、個人の認知能力を評価するためのコンピュータ実装方法を提供する。一実施形態において、コンピュータ実装方法は、コンピュータ処理システムによって、個人による第1の課題への第1の複数の応答を受け取るステップであって、第1の課題は、一定期間にわたって個人から第1の複数の応答を喚起する第1の刺激を含む、ステップと、コンピュータ処理システムによって、個人による第2の課題への第2の複数の応答を受け取るステップであって、第2の課題はその期間にわたって個人から第2の複数の応答を喚起する第2の刺激を含み、第2の刺激は第1の刺激の少なくとも一部とともに同時に提示される、ステップと、コンピュータ処理システムによって、第1の複数の応答および第2の複数の応答に基づき第1の課題および第2の課題が個人によって実施されると決定するステップと、コンピュータ処理システムによって、第1の複数の応答および第2の複数の応答のうちの一方または両方を使用して認知尺度を計算するステップと、コンピュータ処理システムによって、認知尺度に基づき認知機能評価を出力するステップとを含む。
【0022】
実施形態の関係する例では、認知尺度を計算するステップは、第1の複数の応答および第2の複数の応答のうちの一方または両方を使用してパフォーマンス尺度を決定するステップを含む。
【0023】
実施形態の関係する例では、パフォーマンス尺度は、応答の反応時間および応答の正確さからなる群から選択される。
【0024】
実施形態の関係する例では、第1の複数の応答および第2の複数の応答のうちの一方または両方は、1つまたは複数のセンサーを使用して検出され、センサーは加速度計およびジャイロスコープからなる群から選択される。
【0025】
実施形態の関係する例では、コンピュータ実装方法は、第1の複数の応答および第2の複数の応答のうちの一方または両方を使用してパフォーマンス尺度を決定するステップと、期間中に、パフォーマンス尺度に基づき第1の課題または第2の課題の難易度レベルを修正するステップとをさらに含み得る。
【0026】
実施形態の関係する例では、難易度レベルはゲームレベルに対応する。
【0027】
実施形態の関係する例では、難易度レベルは、刺激に反応する許容可能な反応時間窓、ナビゲーション速度、障害物の数、障害物のサイズ、ナビゲーション経路内の旋回頻度、およびナビゲーション経路内の旋回の旋回半径からなる群から選択される。
【0028】
実施形態の関係する例では、難易度レベルは、期間中にリアルタイムで修正され、認知尺度は、その期間中に行われる難易度レベル修正を使用して計算される。
【0029】
実施形態の関係する例では、コンピュータ実装方法は、パフォーマンス尺度が1つまたは複数の所定の基準を満たす難易度レベルの閾値を決定するステップであって、認知尺度は、難易度レベルの決定された閾値を使用して計算される、ステップをさらに含むことができる。
【0030】
実施形態の関係する例では、1つまたは複数の所定の基準は、所定の長さの時間にわたってパフォーマンスの所定のレベルを維持するステップを含む。
【0031】
実施形態の関係する例では、コンピュータ実装方法は、期間中に、第1の複数の応答および第2の複数の応答のうちの一方または両方のパフォーマンス尺度に基づき第1の課題の第1の難易度レベルを修正するステップと、期間中に、第1の複数の応答および第2の複数の応答のうちの一方または両方のパフォーマンス尺度に基づき第2の課題の第2の難易度レベルを修正するステップであって、第1の難易度レベルおよび第2の難易度レベルは、期間中にリアルタイムで修正され、認知尺度は、第1の難易度レベル修正および第2の難易度レベル修正のうちの一方または両方を使用して計算される。
【0032】
実施形態の関係する例では、第1の課題は視覚運動課題であり、第1の刺激はナビゲーション経路を含み、第1の複数の応答は連続入力を含む。
【0033】
実施形態の関係する例では、第2の課題は反応課題であり、第2の刺激は個人からの応答を必要とするターゲット刺激を含み、第2の複数の応答は干渉に反応する入力を含む。
【0034】
実施形態の関係する例では、第2の刺激は個人からの応答を必要としない阻害刺激を含む。
【0035】
実施形態の関係する例では、認知尺度を計算するステップは、第1の複数の応答および第2の複数の応答のうちの一方または両方に統計的分析を適用するステップを含む。
【0036】
実施形態の関係する例では、認知尺度を計算するステップは、パフォーマンス尺度を、知られている認知状態を有する個人を表す所定のパフォーマンス尺度と比較するステップを含む。
【0037】
実施形態の関係する例では、認知尺度を計算するステップは、コンピュータデータモデルをパフォーマンス尺度に適用するステップを含む。
【0038】
実施形態の関係する例では、コンピュータデータモデルは、知られている認知状態を有する個人のパフォーマンス尺度に基づき学習される。
【0039】
実施形態の関係する例では、コンピュータデータモデルは、機械学習、パターン認識、回帰分析、およびモンテカルロ法からなる群から選択される技術を使用して学習される。
【0040】
実施形態の関係する例では、認知尺度を計算するステップは、ヒット率、誤警報率、正答率、または誤答率を計算するステップを含む。
【0041】
実施形態の関係する例では、認知尺度を計算するステップは、感度指数、受信者動作特性(ROC)、およびバイアスからなる群から選択された信号検出技術を適用するステップを含む。
【0042】
実施形態の関係する例では、認知尺度は、第1の課題への第1の複数の応答のパフォーマンス尺度および第2の課題への第2の複数の応答のパフォーマンス尺度を使用して計算される複合尺度である。
【0043】
実施形態の関係する例では、認知尺度は、第1の複数の応答および第2の複数の応答のうちの一方の少なくとも2種類のパフォーマンス尺度を使用して計算される複合尺度である。
【0044】
実施形態の関係する例では、認知尺度は、第1の複数の応答および第2の複数の応答のうちの一方または両方の非パフォーマンス情報およびパフォーマンス尺度を使用して計算される複合尺度である。
【0045】
実施形態の関係する例では、非パフォーマンス情報は、個人の階層(demographic)、年齢、性別、および健康データからなる群から選択される。
【0046】
実施形態の関係する例では、認知機能評価は、認知障害の診断を行う。
【0047】
実施形態の関係する例では、認知機能評価は、時間の経過とともに変わる個人の認知能力を監視するために使用される。
【0048】
実施形態の関係する例では、認知機能評価は、個人の認知能力に対する治療の効果を監視するために使用される。
【0049】
実施形態の関係する例では、第2の刺激は、第1の刺激の少なくとも一部とともに全く同時に提示される。
【0050】
実施形態の関係する例では、第2の刺激のうちの1つは、関連付けられている第1の刺激とともに、わずかな時間差で連続して提示される。
【0051】
上で説明されているコンピュータ実装方法の例示的な実施形態は、1つまたは複数のプロセッサを備えるコンピュータ実装システムと、実行されたときに1つまたは複数のプロセッサに上で説明されている1つまたは複数のステップを実行させる命令を含むメモリとを使用して実装され得る。一実施形態において、上で説明されているコンピュータ実装方法の例示的な実施形態は、1つまたは複数のプロセッサ、表示コンポーネント、入力デバイス、およびセンサーを有するハンドヘルドコンピューティングデバイスを備えるコンピュータ実装システムと、実行されたときに1つまたは複数のプロセッサに上で説明されている1つまたは複数のステップを実行させる命令を含むメモリとを使用して実装され得る。
【0052】
上で説明されているコンピュータ実装方法の例示的な実施形態は、また、非一時的コンピュータ可読媒体上に符号化されている命令として実装されてもよく、命令はコンピュータ処理システムに上で説明されている1つまたは複数のステップを実行させるように構成される。一実施形態において、上で説明されているコンピュータ実装方法の例示的な実施形態は、非一時的コンピュータ可読媒体上に符号化されている命令として実装されてよく、命令は、表示コンポーネント、入力デバイス、およびセンサーを有するハンドヘルドコンピューティングデバイスに上で説明されている1つまたは複数のステップを実行させるように構成される。
【0053】
付属の付録および/または図面は、本開示による様々な非制限的な例、発明態様を示している。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【
図1】認知機能評価ツールの例示的な一実施形態の流れ図である。
【
図2】認知機能評価ツールが動作し得るコンピュータ処理システムの例を示す図である。
【
図3】認知機能評価ツールの例示的な好ましい一実施形態のスクリーンショットである。
【
図4】認知機能評価ツールの例示的な好ましい実施形態のパイロットスタディの結果を示す図である。
【
図5】例示的な認知機能評価ツールを実装する際に使用するための例示的なコンピュータ処理システムを示す図である。
【
図6】例示的な認知機能評価ツールを実装する際に使用するための例示的なコンピュータ処理システムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0055】
次に、例示されている実施形態は、類似の参照番号は例示の構造的/機能的特徴を識別
する添付図面を参照しつつより完全に説明される。例示的な実施形態は、以下で説明されている実施形態は単なる例にすぎないのでいかなる形でも例示されているものに限定されず、これは当業者によって諒解されるように様々な形態で具現化され得る。したがって、本明細書で開示されている構造および機能に関する詳細は、制限するものとして解釈されるべきでなく、単に請求項の基礎として、また説明されている実施形態を様々な形で採用する当業者を教示するための表現として解釈されるべきである。さらに、本明細書で使用されている用語および語句は、制限することを意図しておらず、むしろ、例示されている実施形態の理解可能な説明を行うためのものである。
【0056】
値の範囲が与えられた場合、その範囲およびその規定されている範囲内の他の規定されている、または間に入る値の上限と下限との間の、文脈上明確に別の値が指示されていない限り下限の1/10までの、それぞれの間に入る値は、例示されている実施形態に包含されることは理解される。これらのより小さな範囲の上限および下限がより小さな範囲に独立に含まれ得るということも、規定されている範囲内の特に除外されている限界を条件として、例示されている実施形態に包含される。規定されている範囲が、これらの限界の一方または両方を含む場合、それらの含まれる限界のいずれか両方を除外する範囲も、例示されている実施形態に含まれる。
【0057】
断りのない限り、本明細書で使用されるすべての技術および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者に通常理解される意味と同じ意味を有する。本明細書で説明されているものと類似のまたは同等の多数の方法および材料は例示されている実施形態を実施または試験する際にも使用され得るが、次に、例示的な方法および材料について以下で説明される。本明細書で言及されているすべての刊行物は、引用されている刊行物が関連している方法および/または材料を開示し、説明するために参照によって組み込まれている。
【0058】
本開示の方法および組成を説明するときに、次の用語は、断りのない限り以下の意味を含むが、それらの用語は、付随する意味に限定されると理解されるべきでなく、むしろ、本発明の教示および開示による意味を包含するものとして理解されるべきである。
【0059】
本明細書で使用されているような、「認知尺度」または「認知能力または機能の尺度」という用語は、知覚、記憶、判断、推論、および/または同様のものの使用者の精神機能の状態の表現を指すものとしてよい。いくつかの実施形態において、この表現は、特定の種類の機能(たとえば、記憶)についてのものであってよい。いくつかの実施形態において、この表現は、いくつかの種類の機能(たとえば、記憶および知覚)についてのものであってよい。いくつかの実施形態において、この表現は、これらすべてに全体として関連し得る。
【0060】
本明細書で使用されているような「課題」という用語は、個人が刺激に応答する方法またはプロセスを指すものとしてよい。いくつかの実施形態において、刺激は、特に認知機能を測定するために提示されるものとしてよく、これは「能動的課題」となる。いくつかの実施形態において、刺激は、コンピュータデバイスの日常的使用の一部として提示され、特に認知機能を測定するために提示されるものでなくてよく、これは「受動的課題」となる。
【0061】
本明細書で使用されているような「同時」という用語は、実質的に同じ期間内にある2つまたはそれ以上のもの(たとえば、時間差が全くないか、または0.1秒、0.5秒、もしくは1秒などのわずかな時間差)を指すものとしてよい。たとえば、いくつかの実施形態において、2つまたはそれ以上のものは、両方とも全く同時に出現する場合に同時である。いくつかの実施形態において、2つまたはそれ以上のものは、わずかな時間差で離れて連続的に出現する場合に同時である。いくつかの実施形態において、2つまたはそれ以上のものは、各々間に中断なく短期間の間に循環ベースで出現する場合に同時である。いくつかの実施形態において、2つまたはそれ以上のものは、同じ期間の間に設定されている場合に同時である。
【0062】
本明細書で使用されているような「マルチタスキング」という用語は、使用者が少なくとも2つの課題を同時に実行することを指すものとしてよい。課題は、能動的課題または受動的課題であり得る。
【0063】
本明細書で使用されているような「シングルタスキング」という用語は、使用者がただ1つの課題を設定された期間の間に実行することを指すものとしてよい。課題は、能動的課題または受動的課題であり得る。
【0064】
本明細書で使用されているような「ゲームレベル」という用語は、ビデオゲームにおいて特定の課題に関連付けられている離散的刺激大きさ値を指すものとしてよい。各レベルは、課題に関係するパラメータの特定の増分に対応し得る。レベルが高いほど、課題の難易度は上がり得る。
【0065】
本明細書で使用されているような「閾値」という用語は、1つまたは複数の所定の基準に基づき指定された正答レベルへの人が課題を実施する制限である課題の刺激大きさのレベルを指すものとしてよい。
【0066】
本明細書で使用されているような「刺激」という用語は、コンピュータデバイスが特定の機能的反応を喚起する使用者に対する感覚事象を提示することを指すものとしてよい。たとえば、反応は、コンピュータデバイスとのインタラクションであってよい。いくつかの実施形態において、刺激は、ユーザがナビゲートを指令される際に辿るナビゲーション経路を含み得る。いくつかの実施形態において、刺激は、別の課題から使用者の注意を逸らし、使用者応答を喚起する干渉を含み得る。いくつかの実施形態において、刺激は、別の課題から使用者の注意を逸らし、使用者からの応答を必要としない阻害因子(distracter)を含み得る。いくつかの実施形態において、刺激は、異なる応答要求条件を持つ複数の種類の刺激を含み得る。
【0067】
本明細書で使用されているような「阻害刺激」という用語は、使用者が刺激に反応するまたはコンピュータ入力を行うことになっていない知覚反応課題に対する特定の刺激を指すものとしてよい。阻害刺激に対する入力を与えることは、刺激を提示する課題への不正な応答と考えられる。いくつかの実施形態において、無応答は、そのような阻害刺激への応答とみなされてよい(たとえば、阻害刺激への正しい応答は、時間窓内において応答が存在しないことであり得る)。
【0068】
本明細書で使用されているような「定型発達」という用語は、知られている認知障害を有していない人の記述を指すものとしてよい。
【0069】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用されているように、単数形「a」、「an」、「the」は、文脈上明らかに他の方法を示していない限り、複数の指示対象を含むことに留意されたい。したがって、たとえば、「刺激」への参照は、複数のそのような刺激を含み、「信号」への参照は、当業者に知られている1つまたは複数の信号およびその等価物などへの参照を含む。
【0070】
以下で説明される例示的な実施形態は、好ましくは、コンピュータプロセッサを有するマシン上での実行を可能にするための制御ロジックを有するコンピュータ使用可能媒体上に置かれているソフトウェアアルゴリズム、プログラム、またはコードであることを諒解されたい。マシンは、典型的には、コンピュータアルゴリズムまたはプログラムの実行から出力をもたらすように構成されているメモリ記憶装置を備える。
【0071】
本明細書で使用されているように、「ソフトウェア」という用語は、実装がハードウェア、ファームウェア内にあろうと、ディスク、メモリ記憶装置デバイス上で利用可能な、またはリモートマシンからのダウンロードに利用可能なソフトウェアコンピュータ製品としてであろうと関係なく、ホストコンピュータのプロセッサ内に置くことができるコードまたはプログラムと同義であることを意図されている。本明細書で説明されている実施形態は、上で説明されている等価物、関係、およびアルゴリズムを実装するためのそのようなソフトウェアを含む。当業者であれば、上で説明されている実施形態に基づく例示的な実施形態のさらなる特徴および利点を諒解するであろう。したがって、例示的な実施形態は、添付の特許請求の範囲によって指示されている場合を除き、特に図示され説明されているものによって制限されない。本明細書で引用されているすべての刊行物および参考文献は、その全体において参照により本明細書に明示的に組み込まれる。
【0072】
図1は、本明細書で説明されているような認知機能評価ツールの一実施形態の一般的な流れ図である。一実施形態において、認知機能評価ツールは、使用者入力機能101を持つコンピュータデバイス上に実装され得る。コンピュータデバイスは、2つの課題102、103の刺激を使用者に同時に提示し得る。課題102および/または103は、認知機能評価を目的としてプログラムによって使用者104に割り当てられている認知機能評価または課題以外の目的のために使用者が自発的に取り組む課題を含み得る。好ましい一実施形態において、課題102は視覚運動課題であり、課題103は知覚反応課題である。次いで、使用者は、両方の課題102、103に応答するものとしてよく、それらの応答は、コンピュータデバイス101によって検出105または測定106される(たとえば、応答は、マウスのクリック、画面へのタップ、加速度計の読み取り値などとして検出され得る)。このコンピュータデバイス101は、課題105、106に使用者応答を分析して、それらを使用者の認知能力または機能を表す認知機能評価107に変換するものとしてよい。いくつかの実施形態において、認知機能評価107は、1つの特定の課題への応答のパフォーマンス尺度(たとえば、課題1 110のパフォーマンス尺度および/または課題2 111のパフォーマンス尺度)に基づき得る。他の実施形態において、認知機能評価107は、一方または両方の課題への応答のパフォーマンス尺度(たとえば、課題1 110のパフォーマンス尺度または課題2 111のパフォーマンス尺度)に基づく複合尺度112であってよい。いくつかの実施形態において、認知機能評価108は、マルチタスキングを行っている間に使用者入力の尺度110、111、および112にのみ基づき得る。いくつかの実施形態において、認知機能評価107は、使用者の階層情報または規範的データなどの、追加の外部もしくは非パフォーマンス情報109を使用して計算された複合尺度113に基づくものとしてよい。
【0073】
図2は、本開示の実施形態が実践される際に使用され得る2種類のコンピュータ処理システム200および201を例示している。一実施形態において、コンピュータ処理システム200は、CPU、メモリ、ハードディスク、およびCD ROMドライブ(図示せず)を有し、モニタ203に接続されている、コンピュータ202を含み得る。モニタ203は、コンピュータプログラムの実行中に視覚的プロンプトおよびフィードバックを被験者に供給する。コンピュータ202には、キーボード204、スピーカー205、ジョイスティック206、マウス207、およびヘッドフォン208が取り付けられている。いくつかの実施形態において、スピーカー205およびヘッドフォン208は、コンピュータプログラムの実行中に聴覚的プロンプト、刺激、およびフィードバックを被験者に供給し得る。ジョイスティック206およびマウス207は、被験者がコンピュータプログラムをナビゲートし、コンピュータプログラムによる視覚的または聴覚的プロンプトの後に特定の応答を選択することを可能にする。キーボード204は、被験者またはインストラクターが被験者に関する英数字情報をコンピュータ202に入力することを可能にする。代替的実施形態において、コンピュータは、物理的状態もしくは使用者を監視するためのセンサーまたは移動を監視するためのビデオカメラ技術などの追加の入力もしくは出力要素を組み込み得る。開示されている方法は、多数の異なるコンピュータプラットフォーム、たとえば、IBMまたはMacintoshまたは他の類似のもしくは互換性を有するコンピュータシステム、ゲームコンサルト、もしくはラップトップ上にデプロイされ得る。
【0074】
図2は、好適なモバイルコンピューティング環境、たとえば、タブレットパーソナルコンピュータまたは携帯電話またはスマートフォン201を例示しており、これらの上に認知機能評価ツールの実施形態がデプロイされ得る。一実施形態において、モバイルコンピューティングデバイスは、入力要素と出力要素の両方を有するハンドヘルドコンピュータであってよい。入力要素は、タッチスクリーンディスプレイ209、情報をモバイルコンピューティングデバイスに使用者が入力することを可能にする入力ボタン(図示せず)、およびデバイスの移動を使用者が記録することを可能にする、加速度計およびジャイロスコープ測定ユニット(図示せず)などの内部センサーを備え得る。スクリーンディスプレイ209は、コンピュータプログラムの実行中に視覚的プロンプト、刺激、およびフィードバックを使用者に供給し得る。出力要素は、いくつかの実施形態においてコンピュータプログラムの実行中に聴覚的プロンプト、刺激、およびフィードバックを使用者に供給し得る内蔵スピーカー(図示せず)を備える。代替的実施形態において、モバイルコンピューティングデバイスは、英数字情報を入力するための物理的キーパッド、物理的状態を監視するためのセンサーのアタッチメント、またはヘッドフォンジャック(図示せず)などの追加の入力もしくは出力要素を組み込み得る。それに加えて、モバイルコンピューティングデバイスは振動モジュール(図示せず)を組み込んでいてもよく、これにより、コンピュータプログラムの実行中にモバイルコンピューティングデバイスが振動して刺激またはフィードバックを使用者に供給する。
【0075】
図3は、開示されている方法Project:EVOの好ましい一実施形態のスクリーンショットである。スクリーンショット300は、知覚反応「タッピング」課題のために提示されているターゲットの画像を示している。スクリーンショット301は、使用者が反応したターゲットも示している。コンピュータは、使用者応答に関する情報を収集する。スクリーンショット302は、使用者が経路を、画面の左下部分に示されている氷山などの経路内の障害物を回避することを試みながらナビゲートするのを示している。これは、Project:EVO認知機能評価に対する視覚運動「ナビゲーション」課題である。この課題からのデータも、収集され分析される。スクリーンショット303は、なおも経路をナビゲートして進みながらターゲットに応答する、使用者のマルチタスキングを示している。
【0076】
図4は、Project:EVO評価のパイロットスタディの結果を含む。この研究では、マルチタスキングを行っている間の若年成人と高齢者とのパフォーマンスを比較した。反応時間の平均(A)および反応時間の標準偏差(B)の両方が、若年成人と高齢者との間で著しく異なっていた。これらのパフォーマンスの測定は、(1)それぞれ、使用者が画面上をタップすることまたはタップするのを控えることによってターゲット刺激および阻害刺激を含む2特徴反応課題を実施するようにされた知覚反応課題および(2)iPad(登録商標)の加速度計を使用してアバターを操縦し障害物の間を通り図形コースを進む視覚運動追跡課題を含むマルチタスクに参加者が取り組んでいる間になされた。
【0077】
認知機能評価ツールの様々な態様の詳細が、以下で説明される。
【0078】
マルチタスキング
マルチタスキングは、人が2つまたはそれ以上課題を同時に実施している状況を指す。これは、また、人が異なる課題を急速に切り替えるか、または複数の異なる短い課題を立て続けに実施している状況も表す。マルチタスキングは、1)一方のアクションを別のアクションの代わりに実施することを決定し、2)現在の課題の規則をアクティベートする、実行機能コントロールを必要とするので一意的なプロセスである。マルチタスキングは次第に当たり前のことになってきているので、研究者らは、マルチタスキングの基礎をなす精神機能およびマルチタスキング、学習到達度、学習、および記憶の間の関係を理解しようと試みてきている(CharronおよびKoechlin、「Divided Representation of Concurrent Goals in the Human Frontal Lobes」Science、328:360~363頁、MayerおよびMoreno、2003年「Nine ways to reduce cognitive load in multimedia learning」Educational Psychologist、38(2):43~52頁、JuncoおよびCotton、2010年「Perceived academic effects of instant messaging use」Computers & Education、56(2):370~378頁)。これらの設定で、調査されている主な特徴は、個人がマルチタスクの1つのシングルタスクコンポーネントを実施しているだけであるシナリオに関するマルチタスクシナリオにおけるパフォーマンスの低下である。
【0079】
それに加えて、最近の目的構築認知パラダイムは、シングルタスクパフォーマンスとマルチタスキングを行っている間の同じ課題でのパフォーマンスとの差を測定することによってこの現象を研究するために構築されている。結果として生じるマルチタスキングコストは、認知診断に使用される(Gazzaley, A.による国際特許第WO2012/064999A1号)。
【0080】
他に類を見ないことだが、われわれの研究の結果、以前に想定されていたのとは反対に、以前に有用であったマルチタスキングコストデータ以外のマルチタスキング環境内で収集されたパフォーマンスデータも、使用者の認知状態を詳しく伝え、場合によっては、従来の認知機能評価および従来のマルチタスキング「コスト」測定に比べてより情報量の多い方法であり得ることがわかった。
【0081】
コンピュータデバイス
コンピュータ上で遂行される多くの課題のパフォーマンスは、信じられない正確さで測定することが可能であり、使用者の入力を測定し、記憶し、分析する人間の能力を超えることも多い。本明細書で説明されている認知機能評価ツールは、入力コンポーネントを備えるコンピュータ処理システム上に実装され得る。コンピュータ処理システムは、人間では忠実にかつ確実に行うことができない作業である、2つの課題の提示および2つの課題への使用者反応の測定を同時に可能にするので適している。コンピュータ処理システムは、また、両方の課題の難しさを独立して適応させることも可能である。それに加えて、コンピュータ処理システムが提供できる時間的解決方法なしでは、パフォーマンス測定は有効な認知尺度とはならない。たとえば、コンピュータデバイスは、同じ課題を測定しようとしている人間には感知できない、キーボード上のキーストロークまたはタッチスクリーン上のクリックのミリ秒のタイミングなどの、入力の差を測定することができる。われわれの開示されている方法の一実施形態において、若年成人と高齢者との間の知覚反応課題への平均反応時間の差は、約1/10秒である。
【0082】
コンピュータデバイスは、多くの人々の毎日の生活にすでに組み込まれている。これらは、現在、多くの種類の通信、データの処理、および電子ビデオゲームなどの娯楽目的に使用されている。これは他の認知テストに欠かせないものではないが、コンピュータデバイスおよびマルチタスキングが遍く存在していることで、毎日のコンピュータ利用の受動的測定が認知機能評価の一部として可能になる。
【0083】
一実施形態において、本開示は、個人の認知機能を測定するためのコンピュータ実装方法を提供し、この方法は、入力コンポーネントを有するコンピュータデバイスを使用して実装される。いくつかの実施形態において、コンピュータデバイスは、デスクトップコンピュータ、ラップトップコンピュータ、コンピュータタブレットデバイス、スマートフォンデバイス、およびビデオゲームデバイスからなる群から選択される。いくつかの実施形態において、コンピュータ入力デバイスは、マウスコンポーネント、スタイラスコンピュータ、キーボードコンポーネント、マイクロフォン、使用者の物理的状態のセンサー(たとえば、加速度計および/またはジャイロスコープ)、およびタッチスクリーンディスプレイからなる群から選択される。多くのそのようなコンピュータ入力方法が利用可能であり、コンピュータ技術の進歩は新しい種類の入力を生み出し続けることが諒解される。現在の特許の方法は、入力モダリティに依存するが、重要なことに、入力を確実に測定する能力が維持されている限り特定の種類の入力モダリティからは独立しており、したがって、開示されている方法は、現在および将来の入力モードに適用可能である。
【0084】
課題
一実施形態において、課題は、コンピュータデバイス上に提示される刺激を含み、使用者からの応答を喚起する。使用者からの応答を喚起する刺激は、複数の形態を取り得る。刺激は、限定はしないが、視覚的、聴覚的、触覚的、言語ベース、または象徴的なものを含む、認知技術分野(cognitive art)において知られている様々な刺激モダリティから選択され得る。使用者応答も、多くの異なる形態を取り得る。使用者応答は、限定はしないが、2値入力(yes/noまたは、真/偽)、多数あるオプションのうちから1つまたは複数のオプションを選択すること、一定入力(変化する刺激に合わせて連続的調整する、たとえば、自動車を道なりに操縦する)、言語ベース(応答内容をタイプするか、または発話する)、コンピュータデバイスに接続されているセンサーによって測定されるバイオフィードバックの要素(EEG信号、加速度計読み取り値など)、および同様のものを含む、技術分野において知られている様々なモダリティからも選択され得る。
【0085】
一実施形態において、使用者は、2、3の状態の下で同時に少なくとも2つの課題に耳を傾けて実施している場合にマルチタスキングに取り組んでいると考えられる。第1に、たとえば、課題は、使用者が同時に2つの課題に入力を行っている場合に同時であると考えられ得る。たとえば、使用者は、ジョイスティックを用いて運動課題に対する動作入力を行い、それと同時に、マウスを使って反応課題への入力を行うこともあり得る。第2に、たとえば、課題は、使用者が設定された長さの時間内に2つの課題を切り替える場合に同時であると考えられ得る。切り替えに対する時間の設定された長さは、約1/10秒、1秒、約5秒、約10秒、約30秒、約1分、または2分もしくはそれ以上であると考えることも可能である。課題は、当業者によってうまく働くことが知られている任意の順序で使用者に提示され得る。たとえば、課題は、循環する順序で(たとえば、A、B、C、...n、A、B、C...nなど)、特定の目的のために馴染みのある誰かによって設定された所定の順序で(たとえば、A、B、A、B、C、A、B、C、D、など、またはA、A、A、B、B、C)、ランダムな順序で、またはいくつかの課題の配布に対していくつかの条件を付けたランダムな順序で提示され得る。たとえば、使用者は、1分間、電子メール課題に言語ベースの入力を行い、30秒間、言語ベース入力でインスタントメッセージに応答してから、2分間、電子メール課題に戻るということも可能である。第3に、たとえば、課題は、課題が短期間のうちのに完了し、中断なく次から次へとすぐに行われる場合に同時であると考えられ得る。短期間というのは、約1/10秒、約1秒、約5秒、約10秒、約30秒、約1分、または1~2分であると考えられる。たとえば、使用者は、30秒間ウェブ閲覧、続いて30秒間インスタントメッセージング、続いて30秒間ゲームプレーに取り組むものとしてよい。第4に、たとえば、課題は、また、使用者が設定された期間内に少なくとも2つの課題を完了するように指示されている場合に同時であると考えられ得る。2つの課題について、その期間は、約10秒、約30秒、約1分、約4分、約5分、約7分、または10分もしくはそれ以上とすることも可能である。
【0086】
使用者が取り組む課題は、いくつかの難易度レベルを有し得る。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの課題は、一定レベルの難易度を有し得る。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの課題は、可変レベルの難易度を有する。課題に対して難易度を変えられるときに、これは、使用者入力に依存しないスケジュールに基づき変えられ得るか、または「適応型課題」と本明細書において称されている使用者の入力に基づき変えられ得る。一実施形態において、適応型課題は、使用者が正しい応答を与えると難易度が上がり、使用者が正しくない応答を与えると難易度が下がる。課題の難易度を高める方法は、特定の課題に依存しているが、一般に、課題の難易度は、当業者に知られている方法はほかにもあるが、使用者が耳を傾けなければならない特徴の数を増やし、知覚上の顕著性を小さくし、使用者からの必要な応答の頻度を高めることによって高められ得る。
【0087】
この説明の目的のために、コンピュータデバイス上で実施される課題は、2つのカテゴリに分けられ得る。課題の第1のカテゴリは、使用者が認知機能評価を目的として特定の刺激に特定の仕方で応答するように求められるものであり、および/または課題は、評価としての役割を果たすように意図的に構造化されている(これ以降、「能動的課題」と称される)。課題の第2のカテゴリは、認知機能測定以外の目的のために使用者が刺激に自発的に応答し、および/または信頼できる測定モダリティとなるように構造化されていないものである(これ以降「受動的課題」と称される)。本開示における「課題」という用語は、特に断りのない限り能動的課題および受動的課題の両方を包含する。
【0088】
使用者の目障りになることなくコンピュータデバイスによって監視できる多数の受動的課題がある。好適な受動的課題は、限定はしないが、キーボードを用いた書面による通信への応答、マウスのクリックによるウェブ閲覧、キーボードを用いたウェブ閲覧、マウスのクリックもしくはタッチスクリーンのタップを用いて新規コンテンツを読み進めること、上で説明されている入力を用いてゲームをプレーすること、写真編集、およびスマートフォンもしくはタブレットまたは他のモバイルデバイスを使用することを伴う、触覚、聴覚、または運動入力を有する他の課題、および同じような仕方の他の課題を含む。受動的課題の長さは、使用者が課題に一度で取り組む時間全体、または30秒以内、約1分、約4分、約7分、約10分から15分またはそれ以上の範囲内の所定の長さの時間と考えられ得る。
【0089】
いくつかの実施形態において、使用者が少なくとも2つの課題を同時に実施することは、使用者が少なくとも1つの受動的課題を実施することを伴う。いくつかの実施形態において、使用者が少なくとも2つの課題を同時に実施することは、使用者が少なくとも2つの受動的課題を同時に実施することを伴う。使用者が少なくとも2つの受動的課題を同時に実施する一実施形態は、使用者が電子メールを作成し、また同僚からのインスタントメッセージングによる質問にも応答することである。使用者が2つの受動的課題を同時に実施する別の好ましい実施形態は、使用者がウェブページを読み、またツイッター(登録商標)フィードを監視することである。
【0090】
開示されている方法の好ましい一実施形態において、使用者が少なくとも2つの受動的課題を同時に実施することは、使用者がビデオゲームにおいて少なくとも2つの受動的課題を同時に実施することを伴う。コンピュータビデオゲームは、多くの場合、使用者が複数の課題を実施しなければならない状況を提示する。たとえば、使用者は、武器を同時に変更しながらゲーム環境をアバターに歩き回させていてもよい。カジュアルなビデオゲームの全体的パフォーマンスは、特定の認知機能と相関していることがすでに示されている(Baniqued、Lee、Vossら、「Selling points: What cognitive abilities are tapped by casual video games?」Acta Psychol (Amst.) 2013年、142(1):74頁~)が、本明細書で説明されている認知機能評価ツールは、最新技術に基づき改善されているが、それは、使用者がゲーム環境内でマルチタスキングを行っておりゲーム上の単なる全体的スコアではなくパフォーマンス尺度としてゲームプレーから特定の使用者入力を受け取る状況に基づいているからである。
【0091】
さらに、使用者に対して能動的課題を提供する方法は多数ある。たとえば、とりわけ、注意、記憶、運動、反応、実行機能、意志決定、問題解決、言語処理、および理解力の領域における使用者の認知能力を評価するタスクが複数ある。能動的課題は、使用者が課題に進んで取り組む限り、または所定の長さの時間、30秒以内、約1分、約4分、約7分、約10分、および15分またはそれ以上の間持続することができる。
【0092】
いくつかの実施形態において、使用者が少なくとも2つの課題を同時に実施することは、使用者が少なくとも1つの能動的課題を実施することを伴う。いくつかの実施形態において、使用者が少なくとも2つの課題を同時に実施することは、使用者が少なくとも2つの能動的課題を同時に実施することを伴う。同時に実施される2つの課題は、上でリストされている同じ認知領域を評価するか、または異なる認知領域を評価することであってよい。使用者が少なくとも2つの能動的課題を同時に実施する好ましい一実施形態は、使用者が視覚運動課題および知覚反応課題を同時に実施することである。一実施形態において、視覚運動課題を実施することは、刺激への反応として細かい運動移動を必要とする視覚的刺激の提示を伴う。いくつかの実施形態において、この視覚運動課題は、連続的視覚運動課題であり、視覚的刺激を変化させ、使用者の運動移動をたとえば毎秒1、5、10、または30回記録する。細かい運動移動を必要とする視覚運動課題に対する刺激の一実施形態は、アバターが載っていなければならない経路の視覚提示であってよい。この経路は、使用者が回避するように指示されている障害物および/または使用者が横切るように指示されている特定の場所を有するものとしてよい。そのような一実施形態において、細かい運動反応は、とりわけ、障害物を回避し、所望の配置を横切りつつ加速度計を使ってデバイスを傾けアバターを操縦して経路上に留めることで可能である。一実施形態において、知覚反応課題を提示することは、使用者からの応答を必要としない阻害刺激と使用者からの応答を必要とするターゲット刺激の両方を提示することを伴う。一実施形態において、阻害刺激およびターゲット刺激は、形状によって差別化される。別の実施形態では、阻害刺激およびターゲット刺激は、色によって差別化される。別の実施形態では、阻害刺激およびターゲット刺激は、形状および色によって差別化され、たとえば、使用者は、緑色の円または赤色の正方形ではなく赤色の円に応答しなければならない。いくつかの実施形態において、使用者が少なくとも2つの課題を同時に実施することは、使用者が少なくとも3つの能動的課題を同時に実施することを伴う。使用者が少なくとも3つの能動的課題を同時に実施する好ましい一実施形態は、視覚運動課題、知覚反応課題、および記憶課題を同時に実施することである。
【0093】
いくつかの実施形態では、使用者が実行する課題は、適応型課題である。課題は、階段法および最尤法などの、当業者に知られている方法によって難易度に関して適応され得るか、または修正され得る。そのような難易度適応は、参加者の能力を決定するために使用され得る。好ましい一実施形態において、課題の難易度は、提示されるすべての刺激と適応され、これは10秒に1回よりも多い頻度で生じる可能性がある。一代替的実施形態において、連続的課題の難易度は、たとえば、30秒おき、10秒、1秒、1秒に2回、または1秒に30回などの設定されたスケジュールで適応する。
【0094】
いくつかの実施形態において、ビデオゲームは、使用者が少なくとも2つの能動的課題を同時に実施するように求められる評価媒体を実現するために使用される。ビデオゲームにおいてこれらの特定の課題を提示する利点の1つは、報酬を与えることおよび取り組みインターフェースを作成することなどによって、参加者が可能な最高レベルで実施することを促すことができる特徴を持たせることができるという点である。好ましい一実施形態において、使用者がビデオゲームで少なくとも2つの能動的課題を同時に実施することは、使用者が視覚運動課題および知覚反応課題を同時に実施することを伴う。一実施形態において、知覚反応課題を提示することは、使用者からの応答を必要としない阻害刺激と使用者からの応答を必要とするターゲット刺激の両方を提示することを伴う。一実施形態において、阻害刺激およびターゲット刺激は、形状によって差別化される。別の実施形態では、阻害刺激およびターゲット刺激は、色によって差別化される。別の実施形態では、阻害刺激およびターゲット刺激は、形状および色によって差別化され、たとえば、使用者は、緑色の円または赤色の正方形ではなく赤色の円に応答しなければならない。
【0095】
使用者入力
使用者は、コンピュータデバイスをインタラクティブに操作することによって課題に応答し得る。一実施形態において、認知機能評価ツールは、入力モダリティを通じて使用者応答を取得するが、重要なことに、入力を確実に測定する能力が維持されている限り特定の種類の入力モダリティは変化することができ、したがって、説明されている方法は、現在および将来の入力モードに適用可能である。デスクトップコンピュータに対する入力の例は、とりわけ、英数字または方向入力のためのキーボード、進む/進まないクリック、画面配置入力、および移動入力のためのマウス、移動入力、画面配置入力、クリック入力のためのジョイスティック、オーディオ入力のためのマイクロフォン、および静止または運動光入力のためのカメラ、デバイス移動入力のための加速度計およびジャイロスコープなどのセンサーを含む。ビデオゲームシステムのための例示的な入力は、限定はしないが、ナビゲーションおよびクリック入力のためのビデオゲームコントローラ、加速度計およびジャイロスコープ入力のためのビデオゲームコントローラ、および運動光入力のためのカメラを含む。モバイルデバイスまたはタブレットのための例示的な入力は、とりわけ、画面配置情報入力、仮想キーボード英数字入力、進む/進まないタップ入力、およびタッチスクリーン移動入力のためのタッチスクリーン、加速度計およびジャイロスコープ運動入力、オーディオ入力のためのマイクロフォン、ならびに静止または運動光入力のためのカメラを含む。それに加えて、これらのデバイスは、生理学的センサーを組み込むことで使用者の物理的状態からの入力を組み込むことができる。入力などの生理学的センサーを組み込む方法は、生理学的入力を有することに依存するが、重要なことに、特定の種類の入力モダリティから独立しており、したがって説明されている方法は現在および将来の生理学的入力モードに適用可能である。開示されている方法に対する生理学的測定の例は、限定はしないが、脳波図(EEG)、脳磁図(MEG)、心拍数、心拍変動、血圧、体重、眼球運動、瞳孔拡張、ガルバニック皮膚応答、血糖値、呼吸数、および血液酸素化などの皮膚電気応答を含む。
【0096】
測定
当業者には、マルチタスキングテストがマルチタスキングを行っているときおよびシングルタスキングを行っているときの課題のパフォーマンスの差(マルチタスキングコスト)を認知尺度として測定することを可能にするという点で有用であることが知られている(Gazzaley、A.による国際公開第WO2012/064999A1号)。しかしながら、発明者らは、マルチタスキングを行っている間のパフォーマンスの他の尺度がマルチタスキングコストと同程度に、または場合によってはそれ以上に、有用であることを予想外に発見した。マルチタスキングパフォーマンス尺度は、当業者に知られているマルチタスクコスト尺度および従来のシングルタスク認知尺度と基本的に異なる、認知機能の尺度であると考えられ得る。説明されている次の尺度は、マルチタスキングを行っている間は測定されないと明示的に言及されていない限り、使用者がマルチタスク環境内にいる間に使用されるすべての尺度である。シングルタスクに通常使用される様々な認知パフォーマンス測定はどれも、開示されている方法において有用であり得ることが諒解される。場合によっては、上記の課題の節で説明されているように、適応型課題と非適応型課題の両方に適切な測定が行われ得る。
【0097】
パフォーマンス尺度は、提示されている特定の課題および調査されている認知機能のカテゴリに依存し得る。すでに述べたように、とりわけ、注意、記憶、運動、反応、実行機能、意志決定、問題解決、言語処理、および理解力の領域の1つまたは複数に関連付けられている課題を有し得る。これらの領域において、使用者入力または応答のパフォーマンス尺度は、認知機能を示す尺度を作成するために使用され得る。たとえば、パフォーマンス尺度は、当技術分野で知られているものがほかにもあるが、とりわけ、応答時間、課題完了時間、設定された長さの時間内に完了した課題の数、課題に対する準備時間、応答の正確さ、設定された条件の下での応答の正確さ(たとえば、刺激難易度または大きさレベルおよび複数の刺激の関連付け)、設定された制限時間内に参加者が登録することができる応答の数、制限時間なしで参加者が行うことができる応答の数、課題を完了するために必要な課題での試行回数、移動安定性、加速度計およびジャイロスコープのデータ、自己評価を含み得る。
【0098】
一実施形態において、パフォーマンス尺度は反応時間であってよい。好ましい一実施形態では、反応時間は、知覚反応課題に対する反応時間として測定される。さらに、知覚反応課題が阻害因子である、参加者が応答すべきでない因子である、刺激を含む場合、反応時間は、任意の刺激への応答までの反応時間、正しい非阻害刺激(ターゲット刺激)への応答のみまでの反応時間、または「誤警報」反応時間と当業者によって知られている阻害刺激への反応時間のいずれかとして測定され得る。
【0099】
いくつかの実施形態において、パフォーマンス尺度は、設定された数の刺激にわたる正しい応答の数などの、応答の正しさであってよい。好ましい一実施形態では、正しい応答は、知覚反応課題に対する正しい応答として測定され得る。阻害因子(すなわち、使用者が応答すべきでない刺激)を含む知覚反応課題については、正しい反応は、使用者がターゲット刺激に応答する回数として、または阻害刺激への非応答の数に加えられたターゲット刺激への応答の数として計算され得る。いくつかの実施形態において、パフォーマンス尺度は、設定された数の刺激にわたる課題への不正な応答の数であってよい。好ましい一実施形態において、不正な応答は、知覚反応課題に対する不正な応答として測定され得る。阻害因子(すなわち、使用者が応答すべきでない刺激)を含む知覚反応課題については、不正な反応は、使用者が阻害刺激に応答する回数として、またはターゲット刺激への非応答の数に加えられた阻害刺激への応答の数として計算され得る。
【0100】
いくつかの実施形態において、パフォーマンス尺度は、使用者が適応型課題において正しくまたは正しくなく課題を実施できる刺激大きさであってよい。好ましい一実施形態において、刺激大きさは、視覚運動「ナビゲーティング」課題に対する経路を進む速度であってよい。好ましい別の実施形態において、刺激大きさは、知覚反応課題に応答するための与えられた反応窓時間であってよい。
【0101】
ユーザ入力から計算されたパフォーマンス尺度から、認知機能のより複雑な尺度を作成するためにさらなる分析が遂行され得る。いくつかの実施形態において、報告されている認知機能を示す尺度は、複合認知尺度である。複合認知尺度を作成する方法はいくつかあり、たとえば、標準的統計的要約方法を使用する方法、信号検出理論を適用する方法、精神物理学パフォーマンス測定基準(psychophysics performance metrics)を適用する方法、データを組み合わせて複合尺度を作成する方法、および時間の経過に従って尺度を調べる方法がある。
【0102】
いくつかの実施形態において、複合認知尺度は、統計的要約尺度(statistical summary measure)であってよい。当業者によって採用されている要約統計量は、平均、標準偏差または標準誤差を用いた分散、移動平均、特定のパフォーマンスレベルにおいて費やされる時間、指定された値よりも上または下にあること、パーセント、相関、二乗平均平方根誤差(RMSE)、R2相関係数、信頼区間、T得点またはZ得点などの標準的な統計分布への当てはめ、基準データセットによる要約、ベイズ統計法、主成分分析で作成される測定、機械学習から作成される測定、グループ間の特にパターン認識、回帰係数およびモンテカルロシミュレーションパラメータなどの統計モデルを適用することからのパラメータ、および同様のものを含む。
【0103】
一実施形態において、記録された統計的要約測定は、一定期間にわたる課題での平均パフォーマンスであってよい。好ましい一実施形態において、課題における平均パフォーマンスは、課題が難易度を連続的に課題に対する使用者の以前のパフォーマンスに適応させるときの平均パフォーマンスからなる。期間は、人が一度に課題を実施する長さの時間として選択され得るか、または約30秒、約1分、約4分、約10分、または10分超などの所定の長さの時間であり得る。好ましい一実施形態において、平均パフォーマンスガンマレベルは、その窓が増えたとき、使用者が正しくなく応答して減ったとき、および使用者が正しく応答したときに知覚反応課題に対する平均反応時間窓として測定される。さらに、反応時間窓は、ゲームでは「levels」というラベルを付けられ、レベル数は反応時間窓が減少するにつれ増大するものとしてよい。いくつかの実施形態において、課題における平均パフォーマンスは、平均パフォーマンスゲームレベルとして測定され得る。いくつかの実施形態において、平均パフォーマンスゲームレベルは、知覚反応課題の平均パフォーマンスゲームレベルである。別の好ましい実施形態において、平均パフォーマンスレベルは、適応型視覚運動課題の平均刺激大きさである。さらに、「ナビゲーティング」視覚運動課題では、ナビゲーション速度および障害物の数が、ナビゲーションゲームレベルを決定するために使用され、レベルは速度が上がり、および/または障害物の数もしくはサイズが増えるにつれ高くなるものとしてよい。このナビゲーションゲームレベルは、平均パフォーマンスレベルを計算するために使用できる。
【0104】
別の実施形態において、統計的要約測定は、一定期間にわたる課題でのパフォーマンスレベルの標準偏差であってよい。好ましい一実施形態において、課題におけるパフォーマンスレベルの標準偏差は、課題が難易度を連続的に課題に対する使用者の以前のパフォーマンスに適応させるときのパフォーマンスレベルの標準偏差である。期間は、人が一度に課題を実施する長さの時間として選択され得るか、または約30秒、約1分、約4分、約7分、約10分、または10分超などの所定の長さの時間であり得る。好ましい一実施形態において、パフォーマンスレベルの標準偏差は、その窓が増えたとき、使用者が正しくなく応答して減ったとき、および使用者が正しく応答したときに知覚反応課題に対する反応時間窓の標準偏差として測定される。さらに、反応時間窓は、ゲームでは「levels」というラベルを付けられ、レベル数は反応時間窓が減少するにつれ増大するものとしてよい。このゲームレベルは、実際の反応時間窓に加えてパフォーマンスレベルの課題の標準偏差を計算するために使用され得る。別の好ましい実施形態において、パフォーマンスレベルの標準偏差は、視覚運動課題の平均刺激大きさである。さらに、「ナビゲーティング」視覚運動課題では、ナビゲーション速度、コースの形状、および障害物の数が、ナビゲーションゲームレベルを決定するために使用され、レベルは速度が上がり、旋回の頻度が増大し、旋回半径が減少し、および/または障害物の数もしくはサイズが増えるにつれ高くなるものとしてよい。このナビゲーションゲームレベルは、パフォーマンスレベルの標準偏差を計算するために使用できる。
【0105】
一実施形態において、統計的要約測定は、一定期間にわたる平均反応時間であってよい。期間は、人が一度に課題を実施する長さの時間として選択され得るか、または約30秒、約1分、約4分、約7分、約10分、または10分超などの所定の長さの時間であり得る。好ましい一実施形態では、平均反応時間は、知覚反応課題に対する平均反応時間として測定される。さらに、知覚反応課題が阻害因子である、参加者がこれもまた応答すべきでない因子である、刺激を含む場合、平均反応時間は、任意の刺激への応答までの平均反応時間、ターゲット刺激への応答のみまでの平均反応時間、または「誤警報」反応時間と当業者によっても知られている阻害刺激への平均反応時間のいずれかとして測定され得る。
【0106】
一実施形態において、行われる統計的要約測定は、反応時間の集合の標準偏差であってよい。反応時間は、人が分析された課題を実施する間、または約30秒、約1分、約4分、約7分、約10分、または10分超などの設定された長さの時間ですべての反応時間事象を選択することによって分析のためにコンパイルできる。好ましい一実施形態において、反応時間の標準偏差は、知覚反応課題における反応時間の標準偏差として測定される。さらに、知覚反応課題が、干渉/ターゲット刺激および阻害刺激である刺激を含む場合、反応時間の標準偏差は、任意の刺激への応答までの反応時間の標準偏差、ターゲット刺激への応答のみまでの反応時間、または阻害刺激への反応時間のいずれかとして測定され得る。
【0107】
一実施形態において、行われる統計的要約測定は、課題が実施される順序とのパフォーマンスレベルの相関であってよい。好ましい一実施形態において、課題が実施される順序とパフォーマンスレベルとの相関は、知覚反応課題の順序と知覚反応課題のゲームレベルの相関である。好ましい一実施形態において、課題が実施される順序とパフォーマンスレベルとの相関は、視覚運動課題に取り組む時間と視覚運動課題のナビゲーションゲームレベルの相関である。好ましい一実施形態において、課題が実施される順序とパフォーマンスレベルとの相関は、知覚反応課題の順序とヒット率および誤警報率(信号検出理論の下で以下で説明されているような)の相関である。
【0108】
いくつかの実施形態において、行われる統計的要約測定は、ベイズ統計法から作成され得る。たとえば、ベイズ分析は、限定はしないが、正しくない応答を与えられた場合の正しい応答の確率および正しい応答を与えられた場合の正しくない応答の確率を含み得る。
【0109】
いくつかの実施形態において、行われる統計的要約測定は、主成分分析または類似の技術を介して作成されるものとしてよく、これにより複数の直接的パフォーマンス尺度を間接的尺度のより小さい集合に変換し、測定の範囲内の変動性への最も重要な寄与因子を要約する。主成分分析法では、複数のサンプルからのマルチタスキングパフォーマンス尺度は、1つのデータセットにまとめられる。たとえば、この集合は、実験参加者(参加者#1~100)の集合に対するパフォーマンス尺度A、B、C、D、およびEからなるものとしてよい。このデータセットは、パフォーマンス尺度A~Eを主成分と呼ばれる線形無相関変数(linearly uncorrelated variable)の集合に変換する直交変換への入力であってよい。出力は、元の変数集合の固有ベクトルからなるものとしてよい。そのような方法を使用したときに、出力または主成分はそれ自体が認知機能の測定基準である。主成分分析は、複合変数を作成する一手段である。
【0110】
いくつかの実施形態において、行われる統計的要約測定は、機械学習から導出され得る。一実施形態において、分類技術は、被験者のラベル付けされた個体群(たとえば、知られている認知障害または能力を有する被験者)のパフォーマンス尺度を使用してコンピュータデータモデルを学習させるために使用され得る。学習済みのコンピュータデータモデルは、どの個体群ラベル(たとえば、認知障害)が使用者に割り当てられるべきかを予測するために使用者のパフォーマンス尺度に適用され得る。たとえば、機械学習は、クラスタ分析を使用することによって実装され得る。参加している個人の各観察結果(たとえば、認知機能評価ツールは、各個人のパフォーマンス尺度を決定するために使用され得る)は、サブセットまたはクラスタに類別される。1つの場合において、部分集合またはクラスタラベルは、実験の各参加者が診断される認知障害であってよい。クラスタ分析機械学習技術を使用することで、出力は各部分集合の類似性測定基準および異なる部分集合間の隔たりを表し得る。異なる例では、教師あり機械学習は、人工ニューラルネットワークに基づくものとしてよい。そのような場合には、知られている認知能力を有する参加している個人のパフォーマンス尺度は、異なるパフォーマンス尺度間の複雑な関係をより良く理解できるようにニューラルネットワークアルゴリズムを学習させるために使用され得る。学習が済んだ後、ニューラルネットワークは、使用者のパフォーマンス尺度に適用されて認知尺度を出力するものとしてよく、これは使用者の認知能力の予測を表すものとしてよい。
【0111】
別の実施形態において、回帰またはモンテカルロ法は、観察されたパフォーマンス尺度を記述し、使用者の認知パフォーマンスに基づきいくつかの使用者の認知能力を予測するコンピュータデータモデルを生成するために使用され得る。いくつかの実施形態において、予測され得ることは、標準化された実力テストに対する注意またはパフォーマンスの外部テストなどの、評価環境(たとえば、ゲーミング環境)の外部にあるものとしてよい。たとえば、モデルは、個人の集団のマルチタスクパフォーマンス尺度およびその外部認知尺度(たとえば、認知障害、注意持続時間、標準化されたテストに対するパフォーマンスなどを含む、知られている認知能力)を使用して学習され得る。モンテカルロまたは回帰法を使用することで、コンピュータデータモデルは、その個人のマルチタスクパフォーマンス尺度を使用して個人の外部認知尺度を予測するように学習され得る。マルチタスクパフォーマンス尺度に加えて、EEGおよび人口統計学的尺度などの、他の潜在的予測変数も使用され得る。
【0112】
一実施形態において、行われる統計的要約測定は、加速度計データの要約に基づくものとしてよい。個別にまたは合成として取られた加速度計ベクトル成分(x,y,z)の統計的要約は、パフォーマンスを測定するために使用され得る。統計的要約は、限定はしないが、たとえば、平均および標準偏差であってよい。それに加えて、加速度計データは、理想的尺度からの逸脱を計算することができる理想的関数と比較され得る。それに加えて、加速度計データは、使用者のパフォーマンスのスペクトル特性を測定するために波形として処理できる。このような分析の一例は、加速度計データのフーリエ変換を伴い、これにより、ゲームプレーの間の使用者のパフォーマンスプロファイルを表す利得、位相、および振幅値を生成し得る。一実施形態において、加速度計データは、たとえば毎秒30回、キャプチャされるものとしてよく、それによりモバイルデバイスの使用者の正確な移動が記録される。生の加速度計データは、任意の時点におけるx、y、およびz方向の加速度の量を指示する。加速度計データは、等しい間隔で並ぶサンプルの有限列の形態を取り、フーリエ変換に通されるものとしてよく、これは周波数領域に関する情報、または正弦関数の有限結合の係数のリストを、その周波数順に出力する。出力は、使用者の運動応答能力、視覚運動課題によって課される認知および運動要求度、ならびに同時知覚反応課題試行に関するこれらの要求のタイミングを指示し得る。
【0113】
いくつかの実施形態において、複合認知尺度は、信号検出理論を使用して計算され得る。信号検出理論は、使用者応答およびパフォーマンス尺度から感度指数(d'またはA')、バイアス、ROC、ヒット率、誤警報率、および同様のものを計算するために当業者によって使用され得る。
【0114】
好ましい一実施形態において、認知機能を表す信号検出理論からの測定基準は、知覚反応課題からのヒット率であってよい。その文脈では、ヒット率はターゲット刺激への正しい応答の数を提示されるターゲット刺激の総数で除算した値として定義され得る。別の好ましい実施形態では、認知機能を表す信号検出理論からの測定基準は、知覚反応課題からの誤警報率であってよい。そのような文脈では、誤警報率は阻害刺激への応答の数を提示される阻害刺激の数で除算した値として定義され得る。別の好ましい実施形態では、認知機能を表す信号検出理論からの測定基準は、知覚反応課題に対する誤答率であってよい。そのような文脈では、誤答率は、ターゲット刺激への無応答の数を正しくない応答の数で除算した値であってよく、これは阻害刺激への応答の数に加えられたターゲット刺激への無応答を含む。別の好ましい実施形態では、認知機能を表す信号検出理論からの測定基準は、信号を含まない正しい応答の割合として定義される、正答率であってよい。正答率は、阻害刺激への無応答の数を阻害刺激への無応答の数+ターゲット刺激への応答の数で除算した値として計算され得る。
【0115】
いくつかの実施形態において、複合認知尺度は、使用者応答またはパフォーマンス尺度の精神物理学的方法から作成され得る。精神物理学理論は、ほかにも多数の測定法があるがとりわけ、極限法、一定刺激法、または調整法を通じて使用者の閾値を測定するために当業者によって使用され得る。
【0116】
一実施形態において、使用者入力から決定される精神物理学的測定基準は、パフォーマンス閾値に基づき得る。この閾値は、使用者が時間の経過に従って適応型課題における正しくない応答に対する正しい応答の指定された比率を達成することができる課題の最大の刺激大きさ(視覚運動ナビゲーション課題における速度など)として定義され得る。たとえば、閾値は、使用者が時間の約1%、約10%、約50%、時間の約70%、時間の約80%、または時間の90~100%で課題を正しく実施することができる課題の最大の刺激大きさとして定義され得る。閾値は、使用者が刺激大きさが増分的に増加するときに正しくない応答に対する正しい応答の指定された比率を達成することができる課題の最大の刺激大きさとしても定義され得る。それに加えて、閾値は、適応型課題における閾値レベルより正しく高く、または低く応答される刺激の量またはパーセントによって特徴付けられ得る。好ましい一実施形態において、パフォーマンス閾値は、使用者が知覚反応課題への80%の正しい応答を連続的に達成できる反応窓時間であってよい。さらに、反応時間窓は、ゲームでは「levels」というラベルを付けられてよく、レベル数は反応時間窓が減少するにつれ増大する。このゲームレベルは、実際の反応時間窓に加えて課題のパフォーマンス閾値を表すために使用され得る。別の好ましい実施形態において、パフォーマンス閾値は、使用者が80%の正しさで視覚運動課題を実施することができる刺激大きさ(すなわち、課題の対象の速度)であってよい。さらに、「ナビゲーティング」視覚運動課題では、ナビゲーション速度および障害物の数が、ナビゲーションゲームレベルを決定するために使用され、レベルは速度が上がり、および/または障害物の数もしくはサイズが増えるにつれ高くなるものとしてよい。このナビゲーションゲームレベルは、ナビゲーションパフォーマンス閾値を表すために使用され得る。別の好ましい実施形態では、パフォーマンス閾値は、使用者が80%の正しさで視覚運動課題を、80%の正しさで知覚反応課題を実施する最大の刺激大きさの組合せであってよい。たとえば、この測定は、この段落ですでに説明されているゲームレベルの平均として表され得る。別の好ましい実施形態において、パフォーマンス閾値は反応時間閾値であってよい。
【0117】
いくつかの実施形態において、複合認知尺度は、複合尺度であってよい。複合尺度の例は、1つの課題からの2つまたはそれ以上のパフォーマンス尺度の組合せ、複数の課題からの2つまたはそれ以上のパフォーマンス尺度の組合せ、およびパフォーマンス尺度と外部情報との組合せである。
【0118】
いくつかの実施形態において、複合尺度は、同じ課題からの少なくとも2つの尺度の複合体であってよい。複合尺度は、少なくとも2つの方法で作成され得る。第1の方法では、複合尺度は、知られている認知または心理学的構造を表すようにあらかじめ作成される尺度であってよい。そのような構造のリストは次のとおりである。好ましい一実施形態において、同じ課題からの2つの尺度の複合体は、刺激への応答に対する反応時間を使用者が知覚反応課題において反応時間に応答できると思われる反応時間窓で除算した値であり、これは使用者が応答するためにそれらに配分された時間をどのように割り振ったかを示す指標を与える。別の好ましい実施形態において、同じ課題からの2つの尺度の複合体は、刺激への平均反応時間を知覚反応課題における反応時間の標準偏差で除算した値であり、これは多様なベースライン特性を持つ被験者間の比較のために使用できる反応時間変動性の正規化された尺度を与える。別の好ましい実施形態において、複合尺度は、すべての応答に対する反応時間の標準偏差に加えられた、またはそれとの平均を取った平均反応時間を含み、これはベースラインパフォーマンスおよび変動性の影響のバランスを取る一方法を提供する。別の好ましい実施形態において、同じ課題からの2つの尺度の複合体は、反応時間と刺激大きさまたは課題の難易度との相関である。刺激への反応時間と課題の刺激大きさとの相関は、測定中にゲームレベルが変化するときの知覚反応課題への反応時間と知覚反応課題のゲームレベルとの相関であり得る。これは、それらに配分された時間を使用者がどのように割り振るかを示す別の指標である。
【0119】
いくつかの実施形態において、複合尺度は、少なくとも2つの異なる課題からの少なくとも2つの尺度の複合体であってよい。一実施形態において、2つの異なる課題からの2つの尺度の複合尺度は、それら2つの課題のパフォーマンスの差であってよい。好ましい一実施形態において、パフォーマンスの差は、知覚反応課題のゲームレベルとナビゲーション課題のゲームレベルの差であってよい。尺度の統計的要約測定は、ナビゲーション課題のパフォーマンスゲームレベルおよび知覚反応課題のパフォーマンスゲームレベルの差がこの差の移動平均よりも大きいか、小さいかということであってよい。この測定は、使用者が時間の経過に従ってその戦略を調整しそれらのリソースを2つの課題の間に割り振る程度についてのものである。一実施形態において、少なくとも2つの異なる課題からの2つの尺度の複合尺度は、トレードオフ要約であってよい。トレードオフ要約を計算するための一方法は、一方の課題に対する閾値を別の課題に対する閾値で除算することによる方法であってよい。好ましい一実施形態において、トレードオフ要約は、知覚反応課題に対するゲームレベル閾値を視覚運動課題に対するゲームレベル閾値で除算した値であってよい。トレードオフ要約は、使用者による課題間へのリソースの割り振りの別の指標である。
【0120】
いくつかの実施形態において、複合尺度は、マルチタスクパフォーマンス尺度と使用者に関する外部情報との複合体であってよい。認知尺度を決定するために有用であり得る、外部情報、または瞬間マルチタスキング評価からは得られない情報は、異なる状況下での同じ課題からの測定、異なる認知課題からの測定、コンピュータを利用しない課題でのパフォーマンス、使用者に関する人口統計学的情報などの非パフォーマンス情報、症状および疾病情報、地理的および他の文脈情報、および同様のものを含む。一実施形態において、使用者入力および外部データの複合体は、マルチタスキングパフォーマンス尺度およびシングルタスキングを行っている間の使用者入力の異なるパフォーマンス尺度の複合体であってよい。この複合変数は、事前干渉またはマルチタスクコスト測定から区別されるが、それは、これらの尺度がシングルタスクおよびマルチタスク環境内の同じパフォーマンス変数を直接比較しないからである。この種類は、構造がその後決定され得るが、統計的方法またはモデルを使用して特定の構造を評価するようにあらかじめ決定されない一意的変数を作成することによって、複合認知尺度を作成する第2の方法の一表現であることも多い。そのような変数を作成するための方法の例は、主成分分析およびニューラルネットワーク機械学習である。好ましい一実施形態において、シングルタスクおよびマルチタスク測定の複合体は、1)使用者がシングルタスキングを行っている間に時間窓内で非阻害刺激に正しく反応する知覚反応課題ゲームレベルの標準偏差と2)マルチタスキングを行っている間の非阻害刺激への正しい応答の平均反応時間との集合体であってよい。別の好ましい実施形態において、シングルタスクおよびマルチタスク尺度の複合体は、2で除算された量(単独で実施された知覚反応課題のゲームレベルの標準偏差+マルチタスキングを行いながらの知覚反応課題の平均反応時間-単独での知覚反応課題の平均反応時間)であってよい。
【0121】
いくつかの実施形態において、マルチタスキング評価ツールから作成されたパフォーマンス尺度のパターンは、認知能力の評価に使用され得る。たとえば、パターン認識は、異なる知られている医療診断を持つ定型発達個人および明確に異なる集団の集合のパフォーマンス尺度に基づき得る。これらの集団は、感覚処理障害および自閉症を患っている、または脳血管性認知症およびアルツハイマー病を患っているなど、症状が類似している集団であるものとしてよい。たとえば、機械学習または分類分析を使用してマルチタスキング評価ツールおよび知られている認知機能評価からの異なる種類のパフォーマンス尺度を処理することによって、臨床的に類似する集団の診断または差別化を行うことができるものとしてよい。たとえば、反応時間変動性、連続的運動課題のゲームレベル、および反応課題の誤警報率などの3つの予測尺度の集合が使用される場合、アルツハイマーの集団は、高い誤警報率で差別化され、脳血管集団は、連続的運動課題のより低いゲームレベルと高い誤警報率の両方によって差別化され得る。
【0122】
いくつかの実施形態において、複合認知尺度は、時間の経過とともに取られる尺度であってよい。時間の経過に従って取られる尺度は、時間の経過による使用者入力の変化、課題またはゲームにおける進行状況、および課題またはゲームとのインタラクション変数を含む。
【0123】
一実施形態において、時間の経過に従って取られる尺度は、時間の経過による使用者入力の変化であってよい。当技術分野で知られているように、人が特定の技能を取得するか、または維持する能力は、認知機能により変わり得る。好ましい一実施形態において、時間の経過による使用者入力のこの変化は、課題パフォーマンスの変化を表す、特定の使用期間にわたる測定基準の変化として計算され得る。これらの場合における特定の使用期間は、10分の課題取り組み、20分の課題取り組み、30分の課題取り組み、または60分の課題取り組みなどの時間ベースであるものとしてよい。他の場合には、特定の使用期間は、ゲームがプレーされた回数(2回、4回、7回、10回、25回、35回、50回、70回、100回、140回、または150回以上)または作成された書面による通信の数などの、使用者によって課題が取り組まれた事例の数によって決定され得る。特定の使用期間は、また、課題が完了した事例の数または回数を考慮しない設定された期間によって決定され得る。たとえば、使用者入力の変化は、1時間、1日、2日、1週間、2週間、1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、1年、または1年超にわたる変化として計算され得る。この測定基準の逆数もまた、有用であり得る、すなわち、尺度の特定の変化を達成するのに要する時間の長さまたは取り組み回数であるものとしてよい。
【0124】
一実施形態において、時間の経過による使用者入力の変化は、マルチタスキングを行っている間に使用者が知覚反応課題に取り組んだ第1回目から使用者が同じ課題に取り組んだ第7回目までの平均反応時間の変化であってよい。別の好ましい実施形態において、技能レベルの変化は、使用者入力の指定された変化を得るために必要な時間の長さとして測定され得る。たとえば、使用者入力の変化は、知覚反応課題において100ミリ秒だけ平均反応時間を短縮するのに要する時間または閾値パフォーマンスの次のゲームレベルを達成するのに要する時間として測定され得る。
【0125】
一実施形態において、少なくとも2つの課題が、ビデオゲーム環境において使用者によって実施され、時間の経過による使用者入力の複合認知尺度は、使用者がゲームを進めることができる能力であるものとしてよい。使用者がゲームを進める好ましい一実施形態は、使用者が両方の課題の使用者が以前に計算した閾値パフォーマンスレベルに近いか、またはそれを超えるレベルに使用者が費やす時間の長さの測定である。この時間の長さは、とりわけ特定のレベルに費やされる最長時間および多数の測定にわたって費やされる総時間などの当業者に知られている要約方法で報告され得る。使用者がゲームを進める別の好ましい実施形態は、設定された期間内に使用者が達成できるレベルの数であってよい。使用者がゲームを進める別の好ましい実施形態は、使用者が次のゲームレベルに進むためにパフォーマンスの閾値レベルを満たすまたは改善することに失敗した回数であってよい。
【0126】
別の実施形態において、使用者からの入力は、行動の尺度および認知機能評価ツールとのインタラクションを表す時間の経過による複合認知尺度を作成するために使用され得る。認知機能評価ツールとのインタラクションを測定する好ましい一実施形態は、使用者が使用者が指示された方法でデバイスをインタラクティブに操作するかどうかの順守の測定である。たとえば、使用者が設定された期間または毎日の課題活動の設定された数に対してマルチタスキング環境内にあるように指示された場合、尺度は、使用者が要求条件を満たす月内の日数のパーセントとすることも可能である。インタラクション測定の別の好ましい実施形態は、マルチタスキング環境である頻度の測定であってよい。インタラクション測定の別の好ましい実施形態は、たとえば使用者が毎日1回または毎日複数回マルチタスキングに取り組んでいる場合に、デバイスとのインタラクションのパターンの測定であってよい。別の実施形態において、行動を表す複合認知尺度は、ビデオゲームの無関係の特徴への使用者の注意であってよい。たとえば、ゲームの規定された目標が、ビデオゲームにおける視覚運動課題および知覚反応課題を実施することであるが、コイン収集のような第3の課題も含まれ、認知尺度を計算するため、第3の課題に使用者が取り組む頻度が使用され得る。
【0127】
当業者に知られているように、この説で説明されている尺度は、使用者が最大の努力をするときに変化し得る。したがって、これらの尺度は、任意の期間にわたって、または使用者が最大の努力を行っていると識別することができるときにのみ取られるものとしてよく、各々異なる認知意味を有するであろう。一実施形態において、使用者入力の分析は、難易度のレベルが2つまたはそれ以上の適応型課題に対して閾値レベルに近いときに使用者入力に対して隔離される。好ましい一実施形態において、分析された使用者入力は、適応型視覚運動課題および適応型知覚反応課題について、両方の課題のゲームレベルが閾値レベルに近づくときに使用者入力であり得る。
【0128】
受動的課題の多くは、使用者入力から取ることができる標準的な認知尺度を有し得ないことが諒解される。これらの場合には、使用者入力に関して2、3の中間分析ステップがあってよい。第1に、いつマルチタスキングが行われ、データを処理しているかを識別する。
【0129】
使用者を受動的に監視しているときにマルチタスキングの識別は、2、3の異なる形態を取ることができる、すなわち、計算デバイス上の異なるプログラムを使用者がいつ頻繁に切り替えるかを決定し、使用者がマルチタスキングを伴うゲームにいつ取り組むかを識別する。
【0130】
当業者に知られているように、受動的監視からのデータを処理することは、偽マルチシグナリングフラグを識別すること、外れ値データ点を識別し場合によっては取り除くこと、より長期間にわたって患者を追跡してノイズから信号を区別することを伴い得る。この設定に従って、本明細書で説明されている能動的課題における使用者入力を評価するための同じ技術が適用され得る。
【0131】
測定の使用
本開示で説明されている認知測定は、とりわけ保健医療、雇用評価、および教育を含む、多くの領域において有用であり得る。
【0132】
医療機関において、認知機能評価ツールは、それだけで使用され得るか、または他の臨床測定とともに、特定の疾病または病状を診断するために使用され得る。医療機関における別の実施形態では、このツールは、疾病または病状に関連する認知障害の重症度を評価するために使用され得る。そのような認知尺度が診断に役立つであろう特定の個体群の一覧が、一部、本開示の次の節において取りあげられている。
【0133】
一実施形態において、認知機能評価ツールは、認知障害を監視するために使用され得る。認知障害を監視することで、患者、臨床医、および介護人らは疾病の進行を追跡することができる。たとえば、アルツハイマー病では、長年にわたって軽度の症状を有する人々もいれば、劇的に大きくなる症状を有する人々もいる。認知的症状が測定できる場合、これは患者を独り暮らしさせないなどのいくつかの予防措置をいつ講じるべきかを示す指示を与えることができる。認知障害を監視することで、患者、臨床医、および介護人は、特にインターベンションが個体群全体に対して有効であることが知られていない場合に、治療またはインターベンションへの応答も監視することができる。そのような一実施形態の一例は、注意欠陥過活動性障害(ADHD)を患っている患者に対する刺激薬の投与の有効性を監視するために認知機能評価ツールを使用することである。認知モニタとしてのツールの別の用途は、化学療法などの、知られている認知影響を有する療法、または特徴的ではない薬動力学を有する療法からの認知副作用の有無および重症度の観察である。好ましい実施形態において、監視は、30分毎、2、3時間毎、毎日、週2、3回、毎週、隔週、毎月、または毎年の間隔で繰り返されてよい。
【0134】
一実施形態において、認知機能評価ツールは、学生の認知状態を特徴付けるために使用されてよい。学校および訓練プログラムで使用されるときには、説明されている方法は、ほかにもあるがとりわけ、特別なリソースを必要とする学生を識別する、さらなる神経学的評価を必要とする学生を識別する、認知訓練が有益であろう学生を識別する、学生を主題の正しい難易度レベルに設定する、ならびに教育カリキュラムおよびプログラムの有効性を評価する、ために使用され得る。説明されている方法は、新しいカリキュラムまたは学校プログラム、特に認知能力を改善するように設計されているものを評価するためにも使用され得る。
【0135】
一実施形態において、認知機能評価ツールは、認知能力を評価して、要求度の高い仕事、特に使用者マルチタスキングに定期的に頼る仕事で働く使用者の能力を評価するために使用され得る。
【0136】
いくつかの実施形態において、認知機能評価ツールは、認知機能に対する物理的および感情的環境の効果を測定するために使用されてよい。説明されている方法は、従業員、病院および診療所内の患者の周囲にあるもの、使用者に対するストレスのレベルおよびその認知影響などに対する作業場環境の効果をテストするために使用され得る。
【0137】
いくつかの実施形態において、認知機能評価ツールは、認知機能に対する物理的環境暴露の効果を測定するために使用されてよい。研究において、または個人の使用のために、このツールは、使用者の認知機能に対する、ほかにもあるがとりわけ、化学物質、汚染物質、食材、および空気品質の影響を理解するために使用され得る。
【0138】
一実施形態において、認知機能評価ツールは、使用者が自分の認知状態を変えるために物質を摂取しているかどうかを決定するために使用され得る。たとえば、このテストは、臨時入国許可を受けた人の薬物使用を審査し、さらなるテストの対象と考えられるべき人を識別するために使用され得る。
【0139】
この認知機能評価ツールは複数のコンピュータデバイスプラットフォーム上にデプロイされ得るので、説明されている方法は、コンピュータデバイスがあるいかなる場所でも使用できる。説明されている認知機能測定ツールは、医院内、病院内、学校内、職場内、家庭内、移動している車両内、公園の外、通りを歩いている間、およびモバイルデバイスが携帯できる任意の場所で使用できるという利点を有する。
【0140】
当業者に知られているように、使用者入力は、1回だけ、設定された期間にわたってもしくは設定されたスケジュールで複数回、または特に特定の変更が行われる前および後2回、測定されるものとしてよく、使用者の入力が測定される回数は、認知機能測定ツールが採用されている機能によって決定される。
【0141】
ターゲット個体群
認知機能評価ツールの恩恵を受けることができる個人は、どのような人であってもよい。以下で説明されているターゲット個体群のうちのどれかについて、1人の認知能力(たとえば、障害、または干渉への脆弱性)を評価するための診断、評価、または進行中監視ツールは、本明細書で説明されている認知機能評価ツールの特に有用な応用である。マルチタスキング環境によって生じる認知機能への干渉が知覚、注意、および記憶を含む、ある範囲の機能にわたる認知パフォーマンスに重大な影響を及ぼし得ることが認知分野において認識されている。したがって、特に認知機能を測定することを目指している新しい方法の恩恵を受けるであろう潜在的個体群が多数ある。
【0142】
主題の方法およびツールの恩恵を受け得る個人は、限定はしないが、高齢の成人などの成人を含む。健康な高齢の成人は、認知干渉の処理において著しい欠陥を有することがよく知られている。それに加えて、最近の研究成果から、若い成人であっても、そのような欠陥の兆候を示し得ることが知られている(Gazzaley、A.による国際公開第WO2012/064999A1号)。したがって、約30歳以上の成人は、本開示の方法の恩恵を受け得る。低下は、典型的には、50歳から始まって加速し、「加齢関連認知低下」と臨床的に称される現象でその後数10年にわたって悪化する。そのような症状は、軽度認識障害として知られているより重大な病気に至る可能性がある。障害が識別された場合、認知訓練などの早期の認知療法ステップが開始され得る。それに加えて、予防対策が、自動車を運転するなどの、マルチタスキングを行っているか、または注意散漫を回避している間に視覚的または聴覚的情報の抽出を必要とする課題に導入され得る。
【0143】
慢性神経疾患および精神病を患っている個人について、抑制性ニューロン個体群の変化、髄鞘形成、応答遅延、緊急応答非協調、空間、スペクトル、および時間の詳細における応答選択性の低下、および背景刺激とターゲット刺激との間の区別の低下は、加齢関連認知低下の効果に非常によく似ている。したがって、加齢における障害と平行する認知障害のプロファイルを有する任意の年齢の個人は、本開示の方法およびツールに対するターゲット個体群である。
【0144】
加齢とは別に、認知機能障害を測定することは、危険にさらされている他のものにおける障害を識別するために使用できる。たとえば、開示されている認知機能評価ツールは、怪我(たとえば、外傷性脳損傷)、薬物療法、慢性疾患、または未知の原因の結果として生じた認知能力喪失を識別するのに有用であり得る。そのような認知障害は、加齢関連であろうとなかろうと、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、うつ病、統合失調症、認知症(限定はしないが、AIDS関連認知症、血管性認知症、加齢関連認知症、レビー小体に関連する認知症、および突発性認知症を含む)、ピック病、疲労に関連する認知障害、多発性硬化症、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、強迫性障害(OCD)、および他の障害を含む、様々な状態の寄与要因または顕性症状であり得る。他の認知機能喪失は、ほかにもあるがとりわけ感染性病原体、医学的介入、アルコール、または薬物に起因する脳損傷を含み得る。それに加えて、認知低下は、表面上認知には無関係であるが、不安、ストレス、パニック、うつ病、情動不安、倦怠に著しい悪影響を及ぼす様々な病状からの二次的症状の結果として生じ得る。したがって、著しい痛み要素、不眠症、または全身麻酔、透析、化学療法、もしくは放射線療法などの疾病治療の潜在的悪影響を有する痛みまたは疾病を経験している個人も、認知機能評価ツールを使用することから恩恵を受けることができる。
【0145】
本発明の認知機能評価ツールから恩恵をさらに受け得る個体群は、注意欠陥障害(たとえば、ADHD)を患っている人々をさらに包含する。同様に、認知機能喪失は、一般または診断未確定の発育遅延、感覚処理障害(SPD)、および自閉スペクトラム症(ASD)を包含する、発達障害の子供および成人の個体群について特徴付けられ得る。
【0146】
本開示において説明されているような、2つの課題を一度に実施することに関係する特異認知能力を評価することは、専門能力を評価する上で極めて重要であり得る。著しいマルチタスキングを必要とする専門的職業は、限定はしないが、運動選手、航空パイロット、軍人、医者、コールセンター職員、教師、および車両の運転手を含む。
【0147】
特異認知能力を評価することは、また、現在または以前の薬物乱用問題または依存症を抱える人々に対しても有用である。
【0148】
認知機能評価ツールから恩恵を受け得る別の非医療個体群は、学齢児童である。認知訓練の評価は、特別なニーズを有する、または認知訓練および特定の教育プログラムの対象とすべき子供を識別する際に役立ち得る。
【0149】
有効性の実証
個人の認知および関係する効果を評価することを目的として、診断の精度を実験的に決定することが望ましいものとしてよい。実験テストの好適な方法は、人間によるパイロットスタディおよび臨床試験を含む、新しい認知測定の精度を試験するための当技術分野で知られている種類の研究を含む。これらの種類の実験は、個人のグループで実施されるものとしてよく、好ましくは、最終的な市場製品のターゲット集団を表す個人のグループで実施され得る。好ましくは、これらの研究は結論に対して強い統計的な裏付けを与えるためにそのようにして実施される。
【0150】
そのような研究の一実施形態において、開示されている方法は、2つの結果を比較するために別の適切に特徴付けられている評価と同時に認知を測定するために使用される。この評価は、一般的な認知機能に主眼を置くものとしてよく、これは健康な個人および臨床患者個体群を含む、認知障害を経験した、または経験する危険性のある個人の両方に関係する。そのような好適なテストは、知覚能力、反応、および他の運動機能、視力、長期記憶、作業記憶、短期記憶、論理、意志決定、および同様のものに対するテストを含む、認知または行動研究における一定範囲の認知の特定の機能を試験する当技術分野で知られているテストを含む。
【0151】
有効性研究の別の実施形態において、説明されている認知機能評価ツールが、広い年齢範囲にわたって試験されたときに加齢に関連する知られている認知障害を捕らえるかどうかが試験され得る。そのような一実施形態では、上で説明されているような当業者に知られている認知機能評価などの機能と相関する年齢、または日常の生活の実際の機能的活動に加えて、他のツールも使用できる。そのような機能的帰結を測定するために特に構築されるか、妥当性確認されたテストの例は、高齢者個体群に対する日常生活動作、または指令された課題を実施し、読書し、または会話を理解する能力、職場環境における有効性、および同様のものなどの単純な測定である。
【0152】
有効性研究の別の実施形態において、刺激薬、抑制薬、および睡眠遮断などの知られている変化剤に関連する認知変化を捕らえる能力について試験され得る。そのような研究は、または、認知を評価するために開示されている方法との比較について以前に説明されている知られている認知機能評価も採用し得る。
【0153】
有効性研究の別の実施形態において、特定の疾病個体群に関連付けられている知られている認知障害を捕らえ、疾病個体群内の重症度を差別化する能力について試験され得る。そのような一実施形態では、認知を評価するための開示されている方法は、特定の疾病または症状と関連する症状または機能を測定するテストとともに上で説明されている他の認知評価および機能的尺度と比較することができる。好適な種類のテストは、疾患もしくは状態の症状重症度またはバイオマーカーを客観的に測定するテスト、症状重症度の主観的臨床医または観察者測定を使用するテスト、被験者の状態の自己報告された知覚を使用するテスト、および病状と相関することが知られている認知機能を測定するテストを含む。そのようなテストの例は、限定はしないが、ミニメンタルステート検査、CANTAB認知バッテリー、注意の変数のテスト(TOVA)、神経心理学的状況の評価のための再現可能なバッテリー、特定の病状に関連する臨床総合所見尺度、臨床家の問診に基づく変化の所見、重篤障害バッテリー、アルツハイマー病評価尺度、陽性および陰性症候群尺度、統合失調症認知評価尺度、コナーズ成人期ADHD評価尺度、ハミルトンうつ病評価尺度、ハミルトン不安尺度、モントゴメリー-アスベルグうつ病評価尺度、ヤング躁病評価尺度、小児うつ病評価尺度、ペンシルバニア州心配の自己評定式質問紙、病院不安およびうつ病尺度、異常行動チェックリスト、日常生活動作尺度、ADHD自己報告尺度、陽性および陰性影響スケジュール、うつ不安ストレス尺度、簡易抑うつ症状尺度、およびPTSDチェックリスト、アミロイドベータ、コルチゾール、および他のストレス反応マーカーの検出などの疾病または健康の内部マーカーを測定する生理学的テスト、ならびに特定の神経信号の存在に基づき状態を評価する脳画像研究(たとえば、fMRI、PETなど)を含む。
【0154】
有効性研究の別の実施形態では、認知機能評価ツールは、類似の表現型を有する異なる疾病個体群を差別化する能力についてテストされ得る。そのような研究は、類似の表現型のある疾病について知られている診断を有する参加者、および潜在的に、認知機能に関係する知られている病状を有していない個人を使用する。そのような研究は、この節においてすでに説明されている認知、機能、および症状関係テストも採用することが可能である。
【0155】
有効性研究の別の実施形態では、認知機能評価ツールは、認知尺度の安定性を実証する研究において一斉にまたは固定されたスケジュールで各人について複数回採用され得る。そのような研究は、比較のため開示されている認知測定ツールと同時にこの節においてすでに説明されている認知、機能、および症状関係テストを参加者に与えることも可能である。
【0156】
有効性研究の別の実施形態では、認知機能評価ツールは、知られている治療に対する尺度の感度を実証するため同時に使用者に知られている認知促進または認知障害治療を与えながら一斉にまたは固定されたスケジュールで各人について複数回採用され得る。そのような研究では、認知促進治療のための神経刺激薬もしくはカフェインまたは認知障害治療のためのアルコールもしくは睡眠遮断を使用することが可能である。そのような研究は、説明されている認知測定ツールの各使用と同時に、この節においてすでに説明されている認知、機能、および症状関係テストを採用することも可能である。
【0157】
(実施例)
本明細書で説明されている実施例および実施形態は、例示することのみを目的としており、このことを考慮して様々な修正形態または変更形態が、当業者によって示唆され、また本出願の精神および範囲ならびに添付の請求項の範囲の中に含まれるものであることは理解される。本明細書で引用されているすべての公開、特許、および特許出願は、全体がすべての目的に関して参照により本明細書に組み込まれる。
【0158】
Project:EVO-計算認知機能評価システム
われわれは、モバイルタブレットまたはスマートフォン上で個人によって操作される、「Project:EVO」と称する臨床的プロトタイプ認知機能評価ゲームにおける基本的なソフトウェアメカニックとして適応型認知機能評価システムを設計し、構築した。Project:EVOの動力となる適応型認知機能評価システムは、測定の方法を使用して、プレーヤーの認知能力を評価する。
【0159】
Project:EVOの背景
Project:EVOは、関わっているコンピュータ環境において、2つの課題を同時に実行している(マルチタスキング)間に個人が与える入力を測定することによって個人の実行機能を評価することができるモバイルビデオゲームとして構築された。今まで、ゲームは、認知、行動、および症状測定について標準的な評価との比較結果を使用する複数の臨床研究においてデプロイされてきた。Project:EVOの機能的臨床的バージョンからの例示的なスクリーンショットが、上で説明されている
図3に示されている。
【0160】
Project:EVOは、個人に2種類の課題、すなわち、知覚反応課題(ゲームでは「タッピング」と呼ばれる)と視覚運動追跡課題(ゲームでは「ナビゲーション」と呼ばれる)を与える。知覚反応課題では、個人が注目する視覚的ターゲットが現れたときに(たとえば、緑色の円形の魚)モバイルタブレット/スマートフォンの画面上をタップすることによって応答するが、注目していないターゲットが現れたときには(たとえば、緑色の正方形の魚または赤色の円形の魚)その応答を抑制し、タップしないことを要求する。視覚運動課題は、個人がモバイルタブレット/スマートフォンの画面を微妙に傾けることによって視覚的フィギュア/アバターに川を下らせアバターを常に川の真ん中に来るように「ナビゲートする」ことを要求する。個人は、成功させるためにアバターの通り道に生成される障害物を回避しなければならない。2つの課題は、マルチタスキングパラダイムの基本フレームワークに基づく。
【0161】
Project:EVOにおける難易度レベル
使用者が実施する課題の難易度レベルは、ユーザパフォーマンスに基づき修正される。個人が課題を正確に実施するときには個人に対する各課題の難易度を上げさせ、個人が課題を正しく実施することができないときに難易度を下げさせる。反応課題については、課題を正しく実施することは、注目するターゲットに対しては適切な時間内に応答し、注目していないターゲットに対しては応答しないと考えられる。反応課題を正しくなく実施することはその反対であり、注目していないターゲットに対して応答し、注目しているターゲットに対しては配分された時間内に応答しない。反応課題の難易度は、各ターゲットが提示されるときに許される応答時間を増やしたり減らしたりすることによって修正される。反応課題に対するゲームレベルは、参加者に提示される反応時間窓によって決定される。ナビゲーション課題は、使用者がアバターの経路内の壁および対象物を回避したときに正しく実施されていると考えられる。アバターが壁および対象物と衝突することを許すことは、ナビゲーション課題を正しくなく実施することであると考えられる。ナビゲーション課題の個人に対する難易度レベルは、アバターが経路上を移動する速度を変更することによって修正される。ナビゲーション課題に対するゲームレベルは、アバターが経路上を移動する速度よって決定される。Project:EVOは、両方の課題の難易度レベルをリアルタイムで適応させ、ユーザをチャレンジングな状態に適切に保ち、使用者によって可能なパフォーマンスの閾値を決定する。したがって、ゲームプレーの前の事象における個人のパフォーマンスは、次の事象の正確な難易度を決定し、延長期間における総パフォーマンスは、一般に、どの時点においても個人が経験している可能性のある平均難易度レベルを決定する。
【0162】
Project:EVOの「ワールド」
Project:EVO評価ツールの現在のバージョンは、課題が行われる4つの異なる「ワールド」を使用するように設計された。異なるワールドの各々について、異なるグラフィックス、異なる配色、およびわずかに異なる知覚反応課題がある。いくつかの場合において、ワールドはすべて、評価において使用され、他の場合には、それらのワールドのうちの1つのみが評価として使用される。
【0163】
プレーするProject:EVOの評価
Project:EVOは、ゲームが1回、または設定された期間に複数回、たとえば、4日間毎日1回プレーできるようにセットアップされる。プレーヤーは、短期間、4~12分の間、2の課題を実施することによって評価プロセスを開始する。プレーヤーは、すべてのターゲット事象および正しくないナビゲーション事象への視覚的および聴覚的フィードバックによってその最大能力でプレーするようにやる気を起こさせられる。いくつかの場合において、プレーヤーは、また、課題を正しく実施するために、アバターを購入するのに使用できる「ポイント」の報酬も受ける。このウォームアップ期間の後、プレーヤーは評価フェーズを開始する。プレーヤーは、各課題をそれだけで(シングルタスキング)、および両方の課題を同時に(マルチタスキング)完了させることを、パフォーマンスの閾値レベルに達するまで続ける。
【0164】
Project:EVO評価で記録されるデータ
プレーヤーがゲームのマルチタスキングフェーズに没頭している間、使用者のパフォーマンス尺度は記録される。特に、ナビゲーションレベル、タッピングレベル、知覚反応課題における刺激への反応時間、およびタップすることによって使用者が干渉刺激に正しく応答しているかどうか、またはタッチスクリーンをタップしないことによって阻害刺激に正しく応答しているかどうか、が記録される。これらの特定のデータ点は、閾値パフォーマンスレベル、平均パフォーマンスレベル、パフォーマンスレベルの変動、平均反応時間、反応時間の変化、および他の複雑な、複合認知機能変数などの、認知尺度を表す他の尺度を計算するために使用される。
【0165】
Project:EVOによる訓練プログラム
ときには、Project:EVO評価ツールには、適応報酬(adaptive reward)のあるProject:EVO個人化訓練プログラム(Project: EVO personalized training program)が付随する(Gazzaley, A.による国際公開第WO2012/064999A1号、Martucci、Piper、Omernick、Gazzaley、Elenko、およびKaranamによる米国特許出願第62001141号)。個人化訓練プログラムは、両方の課題をうまく実施するように奨励および報酬を用いて評価のマルチタスキングフェーズを実施することを伴う。適応報酬プログラムの難易度および使用者が次のワールドに進むことを許すゲートは、Project:EVO評価結果によって設定される。評価のためのデータも、この訓練フェーズで生成され得る。
【0166】
パイロットスタディ:マルチタスキングシステムで加齢における知られている認知機能低下を検出する
われわれは、高齢者の集団(60歳から75歳、n=15)および若年成人の集団(20歳から30歳、n=19)に対してわれわれの評価ツールを使用して研究を実施した。この研究は、認知機能評価方法で訓練されたアカデミックパートナー(academic partner)とともに実施された。参加者は、他の知られている認知障害を有さず、うつ病の症状も有していなかった。高齢者は、ミニメンタルステート検査スコアが27以上である必要もあった。
【0167】
この研究の参加者は、ゲーム内の異なるEVOワールドにおいて評価を与えられた。次いで、参加者は、各ワールド内で少なくともさらに2回評価を行うことを含む、Project:EVO認知訓練プログラムに参加した。このプロセスは、少なくとも3つのワールドについて繰り返された。参加者は、ランダムな順序でワールドを与えられた。参加者は、28日間、毎日Project:EVO訓練または評価を多くても7ラウンド、プレーした。初期評価は、研究者の監督の下で研究室環境において実施された。残りのセッションはすべて、研究チームからのガイダンスまたは干渉なしで自宅でプレーされた。
【0168】
存在している結果は、Project:EVOゲーム内のワールドのうちのただ1つからのものである。
図4は、評価研究の結果を提示している。参加者がマルチタスキング環境にある間、刺激に対する平均反応時間(
図4.A)および反応時間の標準偏差(
図4.B)について、高齢者と若年成人との間に有意な差(p<0.05)があった。われわれの認知測定ツールは、高齢者に存在していることが知られている認知機能低下を示すことができた。
【0169】
パイロットスタディ:マルチタスキング尺度では他の認知テストおよびシングルパスキング尺度よりもよく個体群を差別化する
本開示で説明されている実施形態は、自閉症を含む神経発達障害に対する確定した危険性を有する個体群、染色体16p.11.2 BP4-BP5に欠失と重複がある個体群を他の認知テストよりもよく定型発達の年齢適合した兄弟姉妹から差別化することができたとすれば最新技術を超える認知尺度であることが証明される。潜在的に、これを、この特定の疾患を有する子供の家族に対して年に一度の会合でテストすることも可能であろう。
【0170】
このような研究では、16p.11キャリアの子供およびその兄弟姉妹は両方とも、基本的な運動および処理速度能力を評価する運動速度および記号数字テスト(Motor Speed and Symbol Digit tests)ならびに阻害の存在下で注意ベースの処理を評価するフランカーおよび視覚的探索テスト(Flanker and Visual Search test)とともにProject:EVO評価をプレーするであろう。
【0171】
この研究は、マルチタスキングの間にゲームレベル閾値および反応時間などのProject:EVOマルチタスキング尺度がキャリアの子供と定型発達の子供とを、マルチタスキングを行っていない従来の認知テストよりもよく差別化することができた場合に成功であると証明される。
【0172】
パイロットスタディ:マルチタスキング測定は一意的な疾病シグネチャを使用可能にし得る
認知機能を測定するための開示されている方法は、マルチタスキング認知尺度が感覚処理障害、自閉症スペクトラム障害、および注意欠陥過活動性障害(ADHD)などの、異なる認知障害のある個体群を差別化することができる場合に、最新技術を上回る有用性を示す。異なる臨床的研究プロトコルを通じて潜在的に収集され得る、これらの個体群からのデータが、マルチタスク尺度の明確に異なるパターンを通じて定型発達コホートから差別化されること示している場合、このツールは臨床的に有用であろう。測定におけるこれらのパターンは、一意的な疾病シグネチャであり、われわれの認知測定ツールが、一部は自閉症スペクトラム障害および感覚処理障害のある類似の認知表現型を有する、異なる認知障害のある個体群を差別化することができることを示している。
【0173】
パイロットスタディ:時間が経過したときのマルチタスキングパフォーマンス尺度の安定性
本開示において説明されているツールは、マルチタスキング認知尺度が、時間が経過しても、また測定ツールを複数回使用しても信頼性があり、安定している場合に臨床的で有用であろう。EVO評価ツールは、様々なスケジュールに基づき使用者によってプレーされ得る。そのようなスケジュールは、毎日1回ツールを使用すること、その日1日に分散して複数回ツールを使用すること、毎週2、3回ツールを使用すること、および毎週複数回ツールを使用することを含む。特定の使用者の範囲内で、または使用者の集団の範囲内で、安定性は類似のスケジュールに基づき、クラス内相関係数(ICC)を計算することによって評価することができ、0.70を超えるICCスコアはよい信頼性を示す。ICCは、定型発達個体群および知られている病気または認知障害を持つ個体群の両方について計算できる。
【0174】
パイロットスタディ:ファラコロジー剤(Pharacologic Agent)またはサーカディアンリズムに対するマルチタスキング認知測定の感度
本開示で説明されているツールは、ツールを使用している人が認知促進剤(メチルフェニデートなど)または認知能力に有害な薬剤(トリアゾラムなど)を摂取しているときに測定が予想される変動の範囲を外れて変化する場合に敏感な認知測定と考えられる。これらの薬剤に対する感度は、参加者にプラシーボ、メチルフェニデート、およびトリアゾラムをランダムな知られていない順序で摂取させることによってテストすることが可能である。マルチタスキングテストでのパフォーマンスが薬物摂取前から薬物摂取後で変化した場合、ツールは、認知機能の変化に敏感である。
【0175】
それに加えて、認知薬剤を使用しない場合、サーカディアンリズムおよび目覚めている時間により、認知機能の知られている微妙な向上および低下がある。本開示で説明されているマルチタスキング認知尺度が、そのような状態を統計的に検出することができることによって定義されているように、そのようなサーカディアンリズムまたは目覚めている長い期間に敏感である場合、これは敏感な認知測定のマーカーであろう。
【0176】
認知機能評価としての市販のビデオゲームのプレー中のマルチタスキングパフォーマンスの測定
説明されている認知測定方法は、使用者がゲーム機で市販のビデオゲームにマルチタスキングで取り組んでいる間に使用者入力の測定によって具現化される。ビデオゲーム中に、使用者は、ビデオゲーム内に作成された「ワールド」を探索して、敵兵士を探す。使用者が敵兵士を識別したときに、使用者はその兵士を射撃しようとする。時々、使用者は、ワールド内をあちこち移動することと、ターゲット(敵兵士)を射撃することの両方に取り組むことができる。使用者がこれらの課題の両方に取り組んだときに、使用者はマルチタスキングを行っている。使用者入力からのデータは、使用者がゲームプレーのセッションにマルチタスキングで取り組んだ瞬間に抽出される。使用者入力データはコンピュータデバイスによって分析され、ターゲット設定の正確さ、難易度増大の下でのターゲット設定の正確さ(移動するターゲット)、使用者が移動しているペース、使用者がビデオゲームワールドのナビゲーション中に誤りを犯す(たとえば、障害物に突入する)回数、ワールドをナビゲートしている間の移動のパターン(たとえば、アバターがバックトラックする必要がある回数)、および他のパフォーマンス尺度を決定する。標準的な統計的要約方法も、認知尺度を表すように計算される。使用者のパフォーマンスに関するデータが、使用者の現在の認知機能評価の指示としてコンピュータデバイスによって出力される。パフォーマンスベースラインが確立された後、ビデオゲームプレーのこの取り組み方の受動的監視は、健康な個人に対する睡眠遮断のレベルを評価するか、またはADHDを患っている若年成人に対する刺激剤療法などの医学的インターベンションの後の認知機能の変化を監視するために使用され得る。
【0177】
認知機能評価としての書面による通信におけるマルチタスキングパフォーマンスの測定
開示されている認知機能評価ツールは、使用者が書面による通信およびインスタントメッセージングに取り組んでいる間、ラップトップまたはデスクトップコンピュータ上のキーボード使用者入力の測定によって具現化され得る。娯楽または仕事に関係する目的のためにコンピュータを使用しているときに、使用者は、同時にインスタントメッセージに応答しながら手紙、報告書、または電子メールを書く作業に取り組むことが多い。能動的なタイピングの30秒以内の時間として決定され、インスタントメッセージングに能動的に応答して、使用者がインスタントメッセージ通信ウィンドウに取り組み、キーボードで応答をタイプするときの時間として決定される、ワード文書または電子メールで使用者が能動的に書いている事例では、使用者はマルチタスキングを行っていると決定される。マルチタスキングの期間中、コンピュータデバイスへの使用者入力は、抽出される。このデータは、タイピング速度、タイピングの正確さ(スペルを間違った単語の数、使用者がテキストを削除しなければならない回数、またはこれら2つの複合)、処理時間(能動的なインスタントメッセージング、メール、または文書ウィンドウがタイピングが開始する前に起動される時間またはタイピングが行われていない間に能動的なインスタントメッセージング、電子メール、または文書ウィンドウが起動される時間のパーセント)、新規インスタントメッセージが受信されているというアラートまでの反応時間、および他のパフォーマンス尺度を評価するために使用される。これらのデータは、また、認知機能の複合尺度を作成するためにも使用される。使用者のパフォーマンスに関するデータは、使用者の現在の認知機能評価の指示としてコンピュータデバイスによって出力される。パフォーマンスベースラインが確立された後、認知評価ツールは、従業員のための理想的な職場を確立するために雇用主によって使用され、認知訓練または注意または感覚障害のためのさらなる認知テストを必要とし得る学生を識別するために受動的スクリーンとして学校で使用される。
【0178】
本発明の開示されている方法の態様は、本発明の実施形態による方法、装置(システム)、およびコンピュータプログラム製品のフローチャート図および/またはブロック図を参照しつつ以下で説明される。フローチャート図および/またはブロック図の各ブロック、ならびにフローチャート図および/またはブロック図中のブロックの組合せは、コンピュータプログラム命令によって実施され得ることは理解されるであろう。これらのコンピュータプログラム命令は、汎用コンピュータ、特殊目的コンピュータ、または他のプログラム可能データ処理装置のプロセッサに提供されて機械を生成して、その命令が、そのコンピュータまたは他のプログラム可能データ処理装置のプロセッサを介して実行されて、フローチャートおよび/またはブロック図の1つまたは複数のブロックに指定される機能/作用を実施するための手段を生成するようにすることができる。
【0179】
これらのコンピュータプログラム命令は、コンピュータ、他のプログラム可能データ処理装置、または他のデバイスを特定の様式で機能させることができるコンピュータ可読媒体にも記憶され得、コンピュータ可読媒体に記憶されたそれらの命令が、フローチャートおよび/またはブロック図の1つまたは複数のブロックに指定される機能/作用を実施する命令を含む製品を生成するようにすることができる。
【0180】
コンピュータプログラム命令は、コンピュータ、他のプログラム可能データ処理装置、または他のデバイスにもロードされてよく、それにより、コンピュータまたは他のプログラム可能装置上で実行されるそれらの命令が、フローチャートおよび/またはブロック図の1つまたは複数のブロックに指定される機能/作用を実施するためのプロセスを提供するように、コンピュータ、他のプログラム可能装置、または他のデバイス上で一連の動作ステップが実行されてコンピュータ実装プロセスを生成する。
【0181】
図5は、例示的なネットワーク500およびたとえばネットワーク500内に示されているノードのうちの1つとして本明細書で説明されている1つまたは複数の実施形態とともに使用され得るコンピューティングデバイス(またはそれらのコンポーネント)の概略ブロック図である。一実施形態において、認知能力を評価するためのコンピュータ処理システムは、単一のモバイルデバイス501であってよい。たとえば、モバイルデバイス501は、課題を個人の使用者に提示し、個人から応答を受け取り、課題が個人によって実施される(使用者はマルチタスキングを行っている)と決定し、応答を使用してパフォーマンス尺度を決定し、パフォーマンス尺度を使用して認知尺度を計算し、認知能力評価を出力するものとしてよい。別の実施形態において、認知状態を評価するためのコンピュータ処理システムは、いくつかの処理ユニットを備える分散型コンピューティングシステムであってよい。たとえば、モバイルデバイス503は、課題を個人に提示し、個人から応答を受け取り、通信ネットワーク500を通じて応答をサーバ506に送信してその後の処理を行うものとしてよい。サーバ506は、応答を受け取り、課題が個人によって実施されると決定し、応答を使用してパフォーマンス尺度を決定し、パフォーマンス尺度を使用して認知尺度を計算し、認知能力評価を表示のためモバイルデバイス503に出力するものとしてよい。別の実施形態において、パフォーマンス尺度は、サーバ506ではなくモバイルデバイス503によって決定され得る。分散型処理コンポーネント間に作業分割する(2つよりも多くてもよい)他の方法は、当業者の予見の範囲内にある。
【0182】
図6は、例示的なコンピュータ処理システムまたはコンピューティングデバイス600のブロック図である。図示されているシステムは、好適なシステムの一例にすぎず、本明細書で説明されている本発明の実施形態の用途または機能性の範囲に関する制限を示唆することを意図していない。一実施形態において、システム600は、処理ユニット616(たとえば、CPU、GPUなど)を備える。処理ユニット616は、バス618を通じてメモリ628へのアクセスおよび書き込みを行うものとしてよい。メモリ628は、たとえば、ランダムアクセスメモリ(RAM)630、キャッシュ632、および記憶装置システム634(たとえば、ハードドライブ、フラッシュドライブ、DVDドライブなど)を含み得る。メモリ628内で、ファイルおよびデータ615を記憶し、アクセスできるようにファイル構造640が実装され得る。処理ユニット616は、また、システム600がネットワーク内の他のデバイスと通信できるようにするネットワークアダプタ620と通信し得る。ネットワークアダプタ620の例は、たとえば、Ethernetアダプタ、WiFiワイヤレスアダプタ、およびセルラーネットワークアダプタを含む。さらに、処理ユニット616は、システム600がデータを外部デバイス(たとえば、マウス、キーボード、CDドライブなど)614およびディスプレイ(たとえば、モニタ、タッチスクリーンなど)624に出力し、そこからデータを受け取ることを可能にし得る、入出力インターフェース(I/Oインターフェース)622を通じてデータを出力し、データを受け取ることができる。
【0183】
上で説明されているいくつかの例示的な実施形態により、本明細書で説明されている様々な非制限的な実施形態が、別々に使用されるか、組み合わされるか、または特定の用途について選択的に組み合わされ得ることを諒解されたい。さらに、上記の非制限的な実施形態の様々な特徴のうちのいくつかは、他の説明されている特徴の対応する使用がなくても使用され得る。前述の説明は、したがって、本発明の原理、教示、および例示的な実施形態を単に例示しているだけであり、その制限となっていないと考えられるべきである。
【0184】
上で説明されている配置構成は、例示されている実施形態の原理の適用のみを示していることは理解されるべきである。多数の修正および代替的配置構成は、例示されている実施形態の範囲から逸脱することなく当業者によって考案されるものとしてよく、添付の請求項は、そのような修正および配置構成を対象とすることを意図されている。
【符号の説明】
【0185】
110 課題1
111 課題2
101 使用者入力機能
102、103 課題
104 使用者
105 検出
106 測定
107 認知機能評価
109 非パフォーマンス情報
112、113 複合尺度
200、201 コンピュータ処理システム
202 コンピュータ
203 モニタ
204 キーボード
205 スピーカー
206 ジョイスティック
207 マウス
208 ヘッドフォン
209 タッチスクリーンディスプレイ
300、301、302、303 スクリーンショット
500 ネットワーク
501、503 モバイルデバイス
506 サーバ
600 コンピュータ処理システム、コンピューティングデバイス
614 外部デバイス
615 ファイルおよびデータ
616 処理ユニット
618 バス
620 ネットワークアダプタ
622 入出力インターフェース(I/Oインターフェース)
624 ディスプレイ
628 メモリ
630 ランダムアクセスメモリ(RAM)
632 キャッシュ
634 記憶装置システム
640 ファイル構造
【手続補正書】
【提出日】2022-05-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータによって実装される方法であって、
コンピュータ処理システムによって、個人による第1の課題への第1の複数の応答を受け取るステップであって、前記第1の課題は、一定期間にわたって前記個人から前記第1の複数の応答を喚起する第1の刺激を含む、ステップと、
前記コンピュータ処理システムによって、前記個人による第2の課題への第2の複数の応答を受け取るステップであって、前記第2の課題は、前記一定期間にわたって前記個人から前記第2の複数の応答を喚起する第2の刺激を含み、前記第2の刺激は前記第1の刺激の少なくとも一部とともに同時に提示され、前記第1の刺激および前記第2の刺激は、1つまたは複数の特定の疾病または病状に関連する1つまたは複数の認知機能の予測尺度を提供するように構成される、ステップと、
前記コンピュータ処理システムによって、前記第1の複数の応答および前記第2の複数の応答のうちの一方または両方と、外部情報との組み合わせを使用して認知尺度を計算するステップであって、前記認知尺度を計算するステップは、
(i)前記第1の複数の応答および前記第2の複数の応答のうちの一方または両方を使用してパフォーマンス尺度を決定するステップであって、前記パフォーマンス尺度は、前記1つまたは複数の特定の疾病または病状に関連する前記1つまたは複数の認知機能に関連している、ステップと、
(ii)前記パフォーマンス尺度を前記外部情報と比較するステップであって、前記外部情報は、前記1つまたは複数の特定の疾病または病状に関連する知られている認知状態を有する個人のパフォーマンス尺度を含む、ステップと、
(iii)少なくとも1つの機械学習技術を含むコンピュータデータモデルを、前記パフォーマンス尺度および前記外部情報に適用するステップであって、前記少なくとも1つの機械学習技術は、前記個人の前記パフォーマンス尺度と、前記知られている認知状態を有する前記個人の前記パフォーマンス尺度との間の1つまたは複数のパターンを分析し、前記1つまたは複数の特定の疾病または病状のための予測尺度を計算するように構成される、ステップと
を含む、ステップと、
前記コンピュータ処理システムによって、前記認知尺度に基づいて認知機能評価を出力するステップであって、前記認知機能評価は、前記1つまたは複数の特定の疾病の診断または前記1つまたは複数の特定の病状の機能評価を含む、ステップと
を含み、
前記第1の複数の応答および前記第2の複数の応答のうちの一方または両方は、(i)前記個人による運動または前記個人からの生理学的入力の少なくとも1つを含み、かつ(ii)1つまたは複数のセンサーを使用して検出され、前記センサーは、加速度計、ジャイロスコープ、および生理学的センサーからなる群から選択される、方法。
【請求項2】
前記一定期間中に、前記パフォーマンス尺度は、応答の反応時間および応答の正確さからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記パフォーマンス尺度に基づいて前記第1の課題または前記第2の課題の難易度レベルを修正するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記難易度レベルは、刺激に反応する許容可能な反応時間窓、ナビゲーション速度、障害物の数、障害物のサイズ、ナビゲーション経路内の旋回頻度、およびナビゲーション経路内の旋回の旋回半径からなる群から選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記難易度レベルは、前記一定期間中にリアルタイムで修正され、
前記認知尺度は、前記一定期間中に行われる前記難易度レベルの修正を使用して計算される、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記パフォーマンス尺度が1つまたは複数の所定の基準を満たす難易度レベルの閾値を決定するステップであって、前記認知尺度は、前記難易度レベルの前記決定された閾値を使用して計算される、ステップをさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記一定期間中に、前記第1の複数の応答および前記第2の複数の応答のうちの一方または両方のパフォーマンス尺度に基づき前記第1の課題の第1の難易度レベルを修正するステップと、
前記一定期間中に、前記第1の複数の応答および前記第2の複数の応答のうちの一方または両方のパフォーマンス尺度に基づき前記第2の課題の第2の難易度レベルを修正するステップと
をさらに含み、前記第1の難易度レベルおよび前記第2の難易度レベルは前記一定期間中にリアルタイムで修正され、
前記認知尺度は、前記第1の難易度レベル修正および前記第2の難易度レベル修正の一方または両方を使用して計算される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記認知尺度を計算するステップは、感度指数、受信者動作特性(ROC)、およびバイアスからなる群から選択された信号検出技術を適用するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記認知尺度は、前記第1の課題への前記第1の複数の応答のパフォーマンス尺度および前記第2の課題への前記第2の複数の応答のパフォーマンス尺度を使用して計算される複合尺度である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記認知尺度は、前記第1の複数の応答および前記第2の複数の応答のうちの一方の少なくとも2種類のパフォーマンス尺度を使用して計算される複合尺度である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記認知尺度は、前記外部情報と、前記前記第1の複数の応答および前記第2の複数の応答のうちの一方または両方のパフォーマンス尺度とを使用して計算される複合尺度である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記第1の課題は視覚運動課題であり、前記第1の刺激はナビゲーション経路を含み、前記第1の複数の応答は前記個人による連続入力を含み、
前記第2の課題は反応課題であり、前記第2の刺激は、前記個人からの応答を必要とするターゲット刺激と、前記個人からの応答を必要としない阻害刺激とを含み、前記第2の複数の応答は、少なくとも1つの干渉に反応する前記個人による入力を含み、
前記認知尺度は、前記外部情報と、前記第1の複数の応答および前記第2の複数の応答の両方の前記パフォーマンス尺度とを使用して計算される複合尺度である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記認知尺度を計算するステップは、感度指数およびバイアスから選択された信号検出技術を適用するステップをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
個人の認知障害を監視するためのコンピュータによって実装される方法であって、前記方法は、表示コンポーネントと、入力デバイスと、センサーとを有するコンピューティングデバイスを使用して実装され、
前記表示コンポーネントによって、一定期間にわたって視覚運動課題を前記個人に提示するステップであって、前記視覚運動課題は前記個人からナビゲーション応答を喚起するナビゲーション経路を含む、ステップと、
前記表示コンポーネントによって、前記一定期間にわたって反応課題を前記個人に提示するステップであって、前記反応課題は、前記個人から反応応答を喚起するターゲット刺激と前記個人からの応答を必要としない阻害刺激とを含み、前記ターゲット刺激および前記阻害刺激は前記ナビゲーション経路の少なくとも一部とともに同時に提示される、ステップと、
前記センサーを介して、前記個人の前記ナビゲーション応答を受け取るステップであって、前記センサーは加速度計と、ジャイロスコープと、生理学的センサーとからなる群から選択される、ステップと、
前記入力デバイスを介して、前記個人の前記反応応答を受け取るステップであって、前記入力デバイスは、キーボードと、マウスと、マイクロフォンと、カメラと、ビデオゲームコントローラと、タッチスクリーンと、仮想キーボードと、生理学的入力デバイスとからなる群から選択される、ステップと、
前記コンピューティングデバイスによって、前記反応応答と外部情報との組み合わせを使用して認知尺度を計算するステップであって、前記認知尺度を計算するステップは、
(i)前記第1の複数の応答および前記第2の複数の応答のうちの一方または両方を使用して、パフォーマンス尺度を決定するステップであって、前記パフォーマンス尺度は所定の認知障害の存在および重症度と相関している、ステップと、
(ii)前記ナビゲーション応答および前記反応応答の一方または両方を、前記個人からの以前のナビゲーション応答および/または反応応答の少なくとも1つのセットと比較するステップと、
(iii)前記パフォーマンス尺度を前記外部情報と比較するステップであって、前記外部情報は、前記所定の認知障害の前記存在および前記重症度に関連する知られている認知状態を有する個人のパフォーマンス尺度を含む、ステップと、
(iv)少なくとも1つの機械学習技術を含むコンピュータデータモデルを、前記パフォーマンス尺度および前記外部情報に適用するステップであって、前記少なくとも1つの機械学習技術は、前記個人の前記パフォーマンス尺度と、前記知られている認知状態を有する前記個人の前記パフォーマンス尺度との間の1つまたは複数のパターンを分析し、前記所定の認知障害の前記存在および前記重症度のための予測尺度を計算するように構成される、ステップと
を含む、ステップと、
前記コンピューティングデバイスによって、前記認知尺度に基づいて認知機能評価を出力するステップであって、前記認知機能評価は、指定された一定期間にわたって前記個人における前記所定の認知障害の進行の尺度を含む、ステップと
を含む、方法。
【請求項15】
前記認知尺度は、前記外部情報と、前記視覚運動課題への前記個人の前記ナビゲーション応答および前記反応課題への前記個人の前記反応応答の前記パフォーマンス尺度とを使用して計算される複合尺度であり、
前記認知尺度を計算するステップは、感度指数およびバイアスから選択された信号検出技術を適用するステップをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
コンピュータ実装システムであって、
1つまたは複数のプロセッサと、
実行されたときに前記1つまたは複数のプロセッサに
個人による第1の課題への第1の複数の応答を受け取るステップであって、前記第1の課題は、一定期間にわたって前記個人から前記第1の複数の応答を喚起する第1の刺激を含む、ステップと、
前記個人による第2の課題への第2の複数の応答を受け取るステップであって、前記第2の課題は、前記一定期間にわたって前記個人から前記第2の複数の応答を喚起する第2の刺激を含み、
前記第2の刺激は前記第1の刺激の少なくとも一部とともに同時に提示され、
前記第1の刺激および前記第2の刺激は、1つまたは複数の特定の疾病または病状に関連する1つまたは複数の認知機能の予測尺度を提供するように構成され、
前記第1の複数の応答および前記第2の複数の応答のうちの一方または両方は、(i)前記個人による運動または前記個人からの生理学的入力の少なくとも1つを含み、(ii)1つまたは複数のセンサーを使用して検出され、前記1つまたは複数のセンサーは、加速度計と、ジャイロスコープと、生理学的センサーとからなる群から選択される、
ステップと、
パフォーマンス尺度および外部情報の組み合わせを含む認知尺度を計算するステップであって、前記認知尺度を計算するステップは、
(i)前記第1の複数の応答および前記第2の複数の応答のうちの一方または両方を使用して前記パフォーマンス尺度を決定するステップと、
(ii)前記パフォーマンス尺度を前記外部情報と比較するステップであって、前記外部情報は、前記1つまたは複数の特定の疾病または病状に関連する知られている認知状態を有する個人のパフォーマンス尺度を含む、ステップと、
(iii)ニューラルネットワークまたは分類アルゴリズムを含む少なくとも1つの機械学習技術を含むコンピュータデータモデルを、前記パフォーマンス尺度および前記外部情報に適用するステップであって、前記コンピュータデータモデルは、知られている認知状態を有する前記個人の前記パフォーマンス尺度に基づいて訓練され、前記少なくとも1つの機械学習技術は、前記個人の前記パフォーマンス尺度と、前記知られている認知状態を有する前記個人の前記パフォーマンス尺度との間の1つまたは複数のパターンを分析し、前記1つまたは複数の特定の疾病または病状のための予測尺度を計算するように構成される、ステップと
を含む、ステップと、
前記認知尺度に基づいて認知機能評価を出力するステップであって、前記認知機能評価は、前記1つまたは複数の特定の疾病の診断、または、前記個人における前記1つまたは複数の特定の病状の機能評価を含む、ステップと
を実行させる命令を含むメモリと
を含む、コンピュータ実装システム。
【請求項17】
前記メモリは、前記1つまたは複数のプロセッサに、
前記一定期間中に、前記パフォーマンス尺度に基づいて前記第1の課題または前記第2の課題の難易度レベルを修正するステップをさらに実行させるための命令
を含む、請求項16に記載のコンピュータ実装システム。
【請求項18】
前記第1の課題または前記第2の課題の前記難易度レベルは、刺激に反応する許容可能な反応時間窓、ナビゲーション速度、障害物の数、障害物のサイズ、ナビゲーション経路内の旋回頻度、およびナビゲーション経路内の旋回の旋回半径からなる群から選択される、請求項17に記載のコンピュータ実装システム。
【請求項19】
前記第1の課題または前記第2の課題の前記難易度レベルは、前記一定期間中にリアルタイムで修正され、
前記認知尺度は、前記一定期間中に行われる前記難易度レベルの修正を使用して計算される、請求項17に記載のコンピュータ実装システム。
【請求項20】
前記メモリは、前記1つまたは複数のプロセッサに、
前記パフォーマンス尺度が1つまたは複数の所定の基準を満たす前記第1の課題または前記第2の課題の難易度レベルの閾値を決定するステップであって、前記認知尺度は、前記第1の課題または前記第2の課題の前記難易度レベルの前記決定された閾値を使用して計算される、ステップをさらに実行させるための命令
を含む、請求項19に記載のコンピュータ実装システム。
【請求項21】
前記1つまたは複数の所定の基準は、所定の長さの時間にわたってパフォーマンスの所定のレベルを維持することを含む、請求項20に記載のコンピュータ実装システム。
【請求項22】
前記メモリは、前記1つまたは複数のプロセッサに、
前記一定期間中に、前記第1の複数の応答および前記第2の複数の応答のうちの一方または両方のパフォーマンス尺度に基づいて、前記第1の課題の第1の難易度レベルを修正するステップと、
前記一定期間中に、前記第1の複数の応答および前記第2の複数の応答のうちの一方または両方のパフォーマンス尺度に基づいて、前記第2の課題の第2の難易度レベルを修正するステップであって、
前記第1の難易度レベルおよび前記第2の難易度レベルは前記一定期間中にリアルタイムで修正され、
前記認知尺度は、前記第1の難易度レベル修正および前記第2の難易度レベル修正の一方または両方を使用して計算される、
ステップと
をさらに実行させるための命令
を含む、請求項16に記載のコンピュータ実装システム。
【請求項23】
前記第1の課題は視覚運動課題であり、前記第1の刺激はナビゲーション経路を含み、前記第1の複数の応答は連続入力を含む、請求項16に記載のコンピュータ実装システム。
【請求項24】
前記第2の課題は反応課題であり、前記第2の刺激は前記個人からの応答を必要とするターゲット刺激を含み、前記第2の複数の応答は少なくとも1つの干渉に反応する入力を含む、請求項16に記載のコンピュータ実装システム。
【請求項25】
前記第2の刺激は、前記個人からの応答を必要としない阻害刺激を含む、請求項24に記載のコンピュータ実装システム。
【請求項26】
前記認知尺度を計算するステップは、前記第1の複数の応答および前記第2の複数の応答のうちの一方または両方に統計的分析を適用するステップを含む、請求項16に記載のコンピュータ実装システム。
【請求項27】
前記認知尺度は、前記外部情報と、前記前記第1の複数の応答および前記第2の複数の応答のうちの一方または両方のパフォーマンス尺度とを使用して計算される複合尺度である、請求項16に記載のコンピュータ実装システム。
【請求項28】
個人の認知障害を監視するためのコンピュータ実装システムであって、
1つまたは複数のプロセッサと、表示コンポーネントと、入力デバイスと、センサーとを含むコンピューティングデバイスと、
実行されたときに前記1つまたは複数のプロセッサに
前記表示コンポーネントによって、一定期間にわたって視覚運動課題を前記個人に提示するステップであって、前記視覚運動課題は前記個人からナビゲーション応答を喚起するナビゲーション経路を含む、ステップと、
前記表示コンポーネントによって、前記一定期間にわたって反応課題を前記個人に提示するステップであって、前記反応課題は、前記個人から反応応答を喚起するターゲット刺激と前記個人からの応答を必要としない阻害刺激とを含み、前記ターゲット刺激および前記阻害刺激は前記ナビゲーション経路の少なくとも一部とともに同時に提示される、ステップと、
前記センサーを介して、前記個人の前記ナビゲーション応答を受け取るステップであって、前記センサーは加速度計と、ジャイロスコープと、生理学的センサーとからなる群から選択される、ステップと、
前記入力デバイスを介して、前記個人の前記反応応答を受け取るステップであって、前記入力デバイスは、キーボードと、マウスと、マイクロフォンと、カメラと、ビデオゲームコントローラと、タッチスクリーンと、仮想キーボードと、生理学的入力デバイスとからなる群から選択される、ステップと、
前記コンピューティングデバイスによって、前記反応応答と外部情報との組み合わせを使用して認知尺度を計算するステップであって、前記認知尺度を計算するステップは、
(i)前記反応応答を使用して、パフォーマンス尺度を決定するステップであって、前記パフォーマンス尺度は所定の認知障害の存在および重症度と相関している、ステップと、
(ii)前記ナビゲーション応答および前記反応応答の一方または両方を、前記個人からの以前のナビゲーション応答および/または反応応答の少なくとも1つのセットと比較するステップと、
(iii)前記パフォーマンス尺度を前記外部情報と比較するステップであって、前記外部情報は、前記所定の認知障害の前記存在および前記重症度に関連する知られている認知状態を有する個人のパフォーマンス尺度を含む、ステップと、
(iv)少なくとも1つの機械学習技術を含むコンピュータデータモデルを、前記パフォーマンス尺度および前記外部情報に適用するステップであって、前記少なくとも1つの機械学習技術は、前記個人の前記パフォーマンス尺度と、前記知られている認知状態を有する前記個人の前記パフォーマンス尺度との間の1つまたは複数のパターンを分析し、前記所定の認知障害の前記存在および前記重症度のための予測尺度を計算するように構成される、ステップと
を含む、ステップと、
前記コンピューティングデバイスによって、前記認知尺度に基づいて認知機能評価を出力するステップであって、前記認知機能評価は、指定された一定期間にわたって前記個人における前記所定の認知障害の進行の尺度を含む、ステップと
を実行させる命令を含むメモリと
を含む、コンピュータ実装システム。
【請求項29】
前記所定の認知障害は、治療または投薬の認知副作用である、請求項28に記載のコンピュータ実装システム。
【請求項30】
前記所定の認知障害は、病状の症状を含む、請求項28に記載のコンピュータ実装システム。
【請求項31】
前記認知尺度は、前記外部情報と、前記視覚運動課題への前記個人の前記ナビゲーション応答および前記反応課題への前記個人の前記反応応答の一方または両方の前記パフォーマンス尺度とを使用して計算される複合尺度であり、
前記認知尺度を計算するステップは、感度指数およびバイアスから選択された信号検出技術を適用するステップをさらに含む、請求項28に記載のコンピュータ実装システム。
【請求項32】
前記認知尺度を計算するステップは、
使用者が第1の課題における反応時間に応答できる反応時間窓で除算した刺激に対する応答の反応時間か、または、前記第1の課題における前記反応時間の標準偏差で除算した刺激に対する平均反応時間かを計算するステップをさらに含む、請求項28に記載のコンピュータ実装システム。
【請求項33】
パフォーマンス尺度の組み合わせは、別の課題に対するゲームレベル閾値によって除算された一方の課題に対するゲームレベル閾値を含むトレードオフ要約を含む、請求項32に記載のコンピュータ実装システム。
【請求項34】
個人における疾病を診断し、または病状を評価するための命令とともに符号化されている非一時的コンピュータ可読記録媒体であって前記命令は、コンピュータ処理システムに、
前記個人による第1の課題への第1の複数の応答を受け取るステップであって、前記第1の課題は、一定期間にわたって前記個人から前記第1の複数の応答を喚起する第1の刺激を含む、ステップと、
前記個人による第2の課題への第2の複数の応答を受け取るステップであって、前記第2の課題は、前記一定期間にわたって前記個人から前記第2の複数の応答を喚起する第2の刺激を含み、
前記第2の刺激は前記第1の刺激の少なくとも一部とともに同時に提示され、
前記第1の刺激および前記第2の刺激は、1つまたは複数の特定の疾病または病状に関連する1つまたは複数の認知機能の予測尺度を提供するように構成され、
前記第1の複数の応答および前記第2の複数の応答は、
(i)前記個人による運動または前記個人からの生理学的入力の少なくとも1つを含み、
(ii)1つまたは複数のセンサーを使用して検出され、前記センサーは、加速度計と、ジャイロスコープと、生理学的センサーとからなる群から選択される、
ステップと、
前記第1の複数の応答および前記第2の複数の応答のうちの一方または両方を使用して認知尺度を計算するステップ、ならびに、感度指数、受信者動作特性(ROC)曲線、およびバイアスからなる群から選択された信号検出技術を適用するステップであって、前記認知尺度を計算するステップは、
(i)前記第1の複数の応答および前記第2の複数の応答のうちの一方または両方を使用してパフォーマンス尺度を決定するステップであって、前記パフォーマンス尺度は、前記1つまたは複数の特定の疾病または病状に関連する前記1つまたは複数の認知機能に関連する、ステップと、
(ii)前記パフォーマンス尺度を外部情報と比較するステップであって、前記外部情報は、前記1つまたは複数の特定の疾病または病状を含む知られている認知状態を有する個人のパフォーマンス尺度を含む、ステップと、
(iii)少なくとも1つの機械学習技術を含むコンピュータデータモデルを、前記パフォーマンス尺度および前記外部情報に適用するステップであって、前記少なくとも1つの機械学習技術は、前記個人の前記パフォーマンス尺度と、前記知られている認知状態を有する前記個人の前記パフォーマンス尺度との間の1つまたは複数のパターンを分析し、前記1つまたは複数の特定の疾病または病状のための予測尺度を計算するように構成される、ステップと
を含む、ステップと、
前記認知尺度に基づいて認知機能評価を出力するステップであって、前記認知機能評価は、前記1つまたは複数の特定の疾病の診断、または、前記1つまたは複数の特定の病状の機能評価を含む、ステップと
を実行させるように構成された、非一時的コンピュータ可読記録媒体。
【請求項35】
前記命令は、前記コンピュータ処理システムに、
前記一定期間中に、前記パフォーマンス尺度に基づいて前記第1の課題または前記第2の課題の難易度レベルを修正するステップを追加的に実行させるように構成された、請求項34に記載の非一時的コンピュータ可読記録媒体。
【請求項36】
前記第1の課題または前記第2の課題の前記難易度レベルは、前記一定期間中にリアルタイムで修正され、
前記認知尺度は、前記一定期間中に行われる前記難易度レベルの修正を使用して計算される、請求項35に記載の非一時的コンピュータ可読記録媒体。
【請求項37】
前記命令は、前記コンピュータ処理システムに、
前記パフォーマンス尺度が1つまたは複数の所定の基準を満たす前記第1の課題または前記第2の課題の難易度レベルの閾値を決定するステップと、
前記難易度レベルの前記決定された閾値を使用して前記認知尺度を計算するステップと
を追加的に実行させるように構成された、請求項36に記載の非一時的コンピュータ可読記録媒体。
【請求項38】
前記命令は、前記コンピュータ処理システムに、
前記一定期間中に、前記第1の複数の応答および前記第2の複数の応答のうちの一方または両方のパフォーマンス尺度に基づき前記第1の課題の第1の難易度レベルを修正するステップと、
前記一定期間中に、前記第1の複数の応答および前記第2の複数の応答のうちの一方または両方のパフォーマンス尺度に基づき前記第2の課題の第2の難易度レベルを修正するステップと
をさらに実行させるように構成され、前記第1の難易度レベルおよび前記第2の難易度レベルは前記一定期間中にリアルタイムで修正され、
前記認知尺度は、前記第1の難易度レベル修正および前記第2の難易度レベル修正の一方または両方を使用して計算される、請求項34に記載の非一時的コンピュータ可読記録媒体。
【請求項39】
前記第1の課題は視覚運動課題であり、前記第1の刺激はナビゲーション経路を含み、前記第1の複数の応答は連続入力を含む、請求項34に記載の非一時的コンピュータ可読記録媒体。
【請求項40】
前記認知尺度を計算するステップは、信号検出技術として感度指数またはバイアスを適用するステップを含む、請求項34に記載の非一時的コンピュータ可読記録媒体。
【請求項41】
前記認知尺度は、前記第1の課題への前記第1の複数の応答のパフォーマンス尺度と、前記第2の課題への前記第2の複数の応答のパフォーマンス尺度とを使用して計算される複合尺度である、請求項34に記載の非一時的コンピュータ可読記録媒体。
【請求項42】
前記認知尺度は、前記第1の複数の応答および前記第2の複数の応答の1つのパフォーマンス尺度の少なくとも2種類を使用して計算される複合尺度である、請求項34に記載の非一時的コンピュータ可読記録媒体。
【請求項43】
前記認知尺度は、前記外部情報と、前記前記第1の複数の応答および前記第2の複数の応答のうちの一方または両方のパフォーマンス尺度とを使用して計算される複合尺度である、請求項34に記載の非一時的コンピュータ可読記録媒体。
【請求項44】
前記外部情報は、前記1つまたは複数の特定の疾病または病状の症状の重症度を測定するように構成された1つまたは複数のテストをさらに含む、請求項34に記載の非一時的コンピュータ可読記録媒体。
【請求項45】
前記外部情報は、前記1つまたは複数の特定の疾病または病状に関連するバイオマーカーを識別するように構成された1つまたは複数のテストをさらに含む、請求項34に記載の非一時的コンピュータ可読記録媒体。
【請求項46】
個人の認知障害を監視するための命令とともに符号化されている非一時的コンピュータ可読記録媒体であって、前記命令は、表示コンポーネントと、入力デバイスと、センサーとを有するコンピューティングデバイスに、
前記表示コンポーネントによって、一定期間にわたって視覚運動課題を前記個人に提示するステップであって、前記視覚運動課題は前記個人からナビゲーション応答を喚起するナビゲーション経路を含む、ステップと、
前記表示コンポーネントによって、前記一定期間にわたって反応課題を前記個人に提示するステップであって、前記反応課題は、前記個人から反応応答を喚起するターゲット刺激と前記個人からの応答を必要としない阻害刺激とを含み、前記ターゲット刺激および前記阻害刺激は前記ナビゲーション経路の少なくとも一部とともに同時に提示される、ステップと、
前記センサーを介して、前記個人の前記ナビゲーション応答を受け取るステップであって、前記センサーは加速度計と、ジャイロスコープと、生理学的センサーとからなる群から選択される、ステップと、
前記入力デバイスを介して、前記個人の前記反応応答を受け取るステップであって、前記入力デバイスは、キーボードと、マウスと、マイクロフォンと、カメラと、ビデオゲームコントローラと、タッチスクリーンと、仮想キーボードと、生理学的入力デバイスとからなる群から選択される、ステップと、
前記コンピューティングデバイスによって、前記ナビゲーション応答および前記反応応答を使用して認知尺度を計算するステップであって、前記認知尺度を計算するステップは、
(i)前記ナビゲーション応答および前記反応応答の一方または両方を使用して、パフォーマンス尺度を決定するステップであって、前記パフォーマンス尺度は所定の認知障害の存在および重症度と相関している、ステップと、
(ii)前記ナビゲーション応答および前記反応応答の一方または両方を、前記個人からの以前のナビゲーション応答および/または反応応答の少なくとも1つのセットと比較するステップと、
(iii)前記パフォーマンス尺度を外部情報と比較するステップであって、前記外部情報は、前記所定の認知障害の前記存在および前記重症度に関連する知られている認知状態を有する個人のパフォーマンス尺度を含む、ステップと、
(iv)少なくとも1つの機械学習技術を含むコンピュータデータモデルを、前記パフォーマンス尺度および前記外部情報に適用するステップであって、前記少なくとも1つの機械学習技術は、前記個人の前記パフォーマンス尺度と、前記知られている認知状態を有する前記個人の前記パフォーマンス尺度との間の1つまたは複数のパターンを分析し、前記所定の認知障害の前記存在および前記重症度のための予測尺度を計算するように構成される、ステップと
を含む、ステップと、
前記コンピューティングデバイスによって、前記認知尺度に基づいて認知機能評価を出力するステップであって、前記認知機能評価は、指定された一定期間にわたって前記個人における前記所定の認知障害の進行の尺度を含む、ステップと
を実行させるように構成された、非一時的コンピュータ可読記録媒体。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれている2015年3月12日に出願した米国仮出願第62/132,009号の優先権の利益を主張するものである。
【0002】
開示されている実施形態は、一般に、個人の認知機能を測定するためのコンピュータ実装方法に関する。
【背景技術】
【0003】
認知機能は、認知症、うつ病、自閉症スペクトラム障害、注意欠陥過活動性障害、およびさらには健康的な老化などの多くの疾病過程の情報マーカー(informative marker)として認識されている。この理由から、認知機能を監視することは、個人のスクリーニング、医学的診断、治療の監視、および新興の認知機能トレーニング分野の調査の重要な一部となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第WO2012/064999A1号
【特許文献2】米国特許出願第62001141号
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】CharronおよびKoechlin、「Divided Representation of Concurrent Goals in the Human Frontal Lobes」Science、328:360~363頁
【非特許文献2】MayerおよびMoreno、2003年「Nine ways to reduce cognitive load in multimedia learning」Educational Psychologist、38(2):43~52頁
【非特許文献3】JuncoおよびCotton、2010年「Perceived academic effects of instant messaging use」Computers & Education、56(2):370~378頁
【非特許文献4】Baniqued、Lee、Vossら、「Selling points: What cognitive abilities are tapped by casual video games?」Acta Psychol (Amst.) 2013年、142(1):74頁~
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
従来の有効性が確認されている認知機能評価ツールには2、3の問題点がある。
【0007】
主な問題点は、認知機能評価プロセスは使用者が実施する上で退屈なものであるという点である。魅力のない課題およびインターフェースは、すべての使用者が自分の最高の能力に合わせて実施する環境を形成せず、その結果、スコアおよび規範データセットは不正確なものとなる。それに加えて、使用者が同じ評価プロセスを複数回実施する要求に応じることを嫌がることがある。
【0008】
現在の認知機能評価プロセスに関わる第2の問題点は、それらが使用者と、使用者のパフォーマンスを評価する人の両方にとって時間がかかるものであり得るという点である。いくつかの場合において、これは、提供される情報が価値のあるものだとしても、認知機能評価を受けないという決定につながる。そのため、認知機能が時間の経過とともにどのように変化しているかを理解するために1人の人に何回も同じ認知機能評価を実施することは後方支援的に困難でもある。
【0009】
最後に、現在利用可能な認知機能評価は、個体群内の知られている認知障害に対する感度が悪い。行動および認知に関する症状を引き起こす16p.11.2 BP4-BP5における染色体異常を持つ個体群を同年齢の兄弟姉妹の集団から区別できることが知られている、現在利用可能な、一般的に使用される認知ツールはないことを諒解されたい。
【0010】
したがって、新しい認知機能評価ツールは、現在のツールでは最適に識別されていない欠陥であって、日常のタスクに関与し、またはシームレスに組み込まれてしまっている欠陥を検出するのに役立つ。本開示では、使用者が少なくとも2つの課題を同時に実施しているときに使用者入力を評価する独自のコンピュータ実装認知機能評価ツールを説明している。この新しいツールは、コンピュータによって使用可能にされ得るが、それは、コンピュータが、2つの課題を提示し、適応させ、同時に評価させることを可能にするからであり、この作業は人間では忠実にかつ確実に達成できないものである。本開示の方法は、医療、教育、および専門業務の環境において使用され得る。以下で説明されている認知機能評価ツールは、認知機能を評価する使用者または人物に大きな負担をかけることなく監視目的のために1回限りの評価として使用されるか、または2回以上行われ得る。
【0011】
以下で説明されている例示的な実施形態の目的および利点は、次の説明において述べられ、明らかになる。例示的な実施形態の追加の利点は、明細書および請求項において特に指摘されているデバイス、システム、および方法によって、さらには添付図面から、実現され達成される。
【0012】
認知機能を測定し、理解することは、多くの分野において、すなわち疾病の診断、神経学的状態の診断、医学的介入への応答および副作用の監視、ならびに教育的実習(educational placement)および教育的ニーズの取り扱いにおいて重要である。しかしながら、現在の認知機能測定ツールは、定期的に実施するのに時間がかかりすぎたり、使用者の積極的関与を持続させないので順守および厳守の面で劣っていたり、または認知障害のある個体群における知られている差異に対する感度が悪い場合がある。本開示では、使用者が少なくとも2つの課題を一度に実施している(「マルチタスキング」)間にコンピュータデバイスへの使用者入力を通してパフォーマンスを測定する新規性のある認知機能評価を実現する。
【0013】
他の認知機能評価は計算デバイスへの使用者入力に頼り得るが、大部分は参加者が一度に1つの課題のみを実施するか、または第2の課題を存在させているが実施されることを意図していない(たとえば、無視されるべき注意散漫)ことに頼る。マルチタスキングを組み込んでいる既存の認知機能評価方法では、この方法の主眼を、マルチタスキングフェーズとシングルタスクコンポーネントの孤立した個別のパフォーマンスとの間の差を際立たせることに置いており、方法の実用性はマルチタスクパフォーマンスと課題が単独で実施されるときとを比較することによってマルチタスキング環境内にあることのパフォーマンスコストを計算することのみにあることがわかる。本開示の独自の態様は、マルチタスキング環境内で収集されたそのパフォーマンスデータが、以前に有用であったマルチタスキング「コスト」データに加えて、使用者の認知状態を特に詳しく伝え、場合によっては、コストデータよりも感度が高い可能性があることを見いだしていることである。
【0014】
説明されている方法は、入力コンポーネントを備えるコンピュータデバイス上に実装される。コンピュータデバイスは、人間では忠実にかつ確実に行うことができない作業である、2つの課題の提示および2つの課題への使用者反応の測定を同時に可能にするのでこれらの方法を使用可能にする。コンピュータデバイスは、両方の課題の難しさを独立して適応させることも可能である。それに加えて、コンピュータデバイスが提供できる時間的解決方法なしでは、パフォーマンス測定は有効な認知尺度とはならない。
【0015】
本開示では、個人の認知能力または機能を測定するためのコンピュータ実装方法を説明しており、この方法は、入力コンポーネントを有するコンピュータデバイスを使用して実装され得る。測定は、使用者が少なくとも2つの明確に異なる課題を実施している(「マルチタスキング」)間に行われるものとしてよく、その各々はコンピュータデバイスへの入力を必要とする。コンピュータは、認知尺度に基づき課題のうちの少なくとも1つのパフォーマンス尺度の分析を実行し、認知尺度に基づき使用者の認知能力もしくは機能を指示する評価を出力するものとしてよい。
【0016】
この方法は、認知機能測定以外の目的のために使用者が2つまたはそれ以上の課題に同時に取り組むときのパフォーマンスの測定(受動的課題)および認知機能評価用に特に設計されている規定された課題に関するパフォーマンスの能動的測定(能動的課題)を含む、複数のシナリオで実装され得る。受動的課題の例は、電子メールを作成する、インスタントメッセージに応答する、およびインターネットをブラウズする作業である。能動的課題は、記憶課題などの、特定の領域における使用者の認知機能を評価するように設計されている課題である。市販のビデオゲームは、多くの場合、使用者をマルチタスキングに取り組ませ、認知機能評価のための優れた機会を提供する。それに加えて、ビデオゲームは、能動的課題でマルチタスキングを提供するように特に設計され得る。
【0017】
一態様において、マルチタスク環境における使用者入力は、異なるパフォーマンス尺度に基づき分析され得る。その中でも、特定の正確さが維持され得るパフォーマンス閾値、一定期間にわたる平均パフォーマンス、時間の経過とともに生じるパフォーマンスレベルの変動、特定の刺激への反応時間、反応時間における変動、および使用者が応答すべき干渉刺激(interference stimuli)と無視されるべきである阻害刺激(distractor stimuli)とを差別化する能力がある。これらのパフォーマンス尺度は、標準的な技術を使用して分析され、組み合わされて複合変数を作成し、時間の経過とともに測定されて追加の認知尺度を形成することができる。
【0018】
本開示の方法は、とりわけ、認知障害を診断する、特定の病状を診断するのを補助する、治療への反応を監視する、認知副作用を引き起こすことが知られている治療または不明な薬動力学を有する治療における副作用を監視する、および教育のプログラムの有効性評価および教育的実習に役立てるために使用され得る。
【0019】
説明されている例示的な実施形態において、提示されているのは、様々な臨床的個体群におけるこの新しいアプローチの配備、試験、および有効性の特定の実施形態である。いくつかの例示的な実施形態において、コンピュータベースの認知機能評価ツールは、2つの能動的認知課題を同時に提示するビデオゲームで実装される。2、3の具体的に例示されている実施形態において、コンピュータベースの方法は、視覚運動課題および知覚反応課題を同時に提示するビデオゲームで実装される。例示的実施形態は、高齢個体群の知られている認知機能低下を示し、従来の認知尺度よりも正確に個体群を差別化し、異なる臨床的個体群を差別化し、時間の経過に従って行われるツールの測定の安定性を示すために試験され得る。
【0020】
たとえば、本開示は、上で説明されている認知機能評価の様々な例示的な実施形態を実現する。一実施形態において、個人の認知能力を評価するためのコンピュータ実装方法は、表示コンポーネント、入力デバイス、およびセンサーを有するハンドヘルドコンピューティングデバイスを使用して実装される。この方法は、表示コンポーネントによって、一定期間にわたって視覚運動課題を個人に提示するステップであって、視覚運動課題は個人からナビゲーション応答(navigation response)を喚起するナビゲーション経路(navigation path)を含む、ステップと、表示コンポーネントによって、その期間にわたって反応課題を個人に提示するステップであって、反応課題は個人から反応応答を喚起するターゲット刺激と個人からの応答を必要としない阻害刺激とを含み、刺激はナビゲーション経路の少なくとも一部とともに同時に提示される、ステップと、センサーを使用してナビゲーション応答を受け取るステップと、入力デバイスを使用して反応応答を受け取るステップと、ハンドヘルドコンピューティングデバイスによって、視覚運動課題がナビゲーション応答に基づき個人によって実施されていると決定するステップと、ハンドヘルドコンピューティングデバイスによって、反応応答を使用して認知尺度を計算するステップと、ハンドヘルドコンピューティングデバイスによって、認知尺度に基づき認知機能評価を出力するステップとを含む。
【0021】
一実施形態において、本開示は、個人の認知能力を評価するためのコンピュータ実装方法を提供する。一実施形態において、コンピュータ実装方法は、コンピュータ処理システムによって、個人による第1の課題への第1の複数の応答を受け取るステップであって、第1の課題は、一定期間にわたって個人から第1の複数の応答を喚起する第1の刺激を含む、ステップと、コンピュータ処理システムによって、個人による第2の課題への第2の複数の応答を受け取るステップであって、第2の課題はその期間にわたって個人から第2の複数の応答を喚起する第2の刺激を含み、第2の刺激は第1の刺激の少なくとも一部とともに同時に提示される、ステップと、コンピュータ処理システムによって、第1の複数の応答および第2の複数の応答に基づき第1の課題および第2の課題が個人によって実施されると決定するステップと、コンピュータ処理システムによって、第1の複数の応答および第2の複数の応答のうちの一方または両方を使用して認知尺度を計算するステップと、コンピュータ処理システムによって、認知尺度に基づき認知機能評価を出力するステップとを含む。
【0022】
実施形態の関係する例では、認知尺度を計算するステップは、第1の複数の応答および第2の複数の応答のうちの一方または両方を使用してパフォーマンス尺度を決定するステップを含む。
【0023】
実施形態の関係する例では、パフォーマンス尺度は、応答の反応時間および応答の正確さからなる群から選択される。
【0024】
実施形態の関係する例では、第1の複数の応答および第2の複数の応答のうちの一方または両方は、1つまたは複数のセンサーを使用して検出され、センサーは加速度計およびジャイロスコープからなる群から選択される。
【0025】
実施形態の関係する例では、コンピュータ実装方法は、第1の複数の応答および第2の複数の応答のうちの一方または両方を使用してパフォーマンス尺度を決定するステップと、期間中に、パフォーマンス尺度に基づき第1の課題または第2の課題の難易度レベルを修正するステップとをさらに含み得る。
【0026】
実施形態の関係する例では、難易度レベルはゲームレベルに対応する。
【0027】
実施形態の関係する例では、難易度レベルは、刺激に反応する許容可能な反応時間窓、ナビゲーション速度、障害物の数、障害物のサイズ、ナビゲーション経路内の旋回頻度、およびナビゲーション経路内の旋回の旋回半径からなる群から選択される。
【0028】
実施形態の関係する例では、難易度レベルは、期間中にリアルタイムで修正され、認知尺度は、その期間中に行われる難易度レベル修正を使用して計算される。
【0029】
実施形態の関係する例では、コンピュータ実装方法は、パフォーマンス尺度が1つまたは複数の所定の基準を満たす難易度レベルの閾値を決定するステップであって、認知尺度は、難易度レベルの決定された閾値を使用して計算される、ステップをさらに含むことができる。
【0030】
実施形態の関係する例では、1つまたは複数の所定の基準は、所定の長さの時間にわたってパフォーマンスの所定のレベルを維持するステップを含む。
【0031】
実施形態の関係する例では、コンピュータ実装方法は、期間中に、第1の複数の応答および第2の複数の応答のうちの一方または両方のパフォーマンス尺度に基づき第1の課題の第1の難易度レベルを修正するステップと、期間中に、第1の複数の応答および第2の複数の応答のうちの一方または両方のパフォーマンス尺度に基づき第2の課題の第2の難易度レベルを修正するステップであって、第1の難易度レベルおよび第2の難易度レベルは、期間中にリアルタイムで修正され、認知尺度は、第1の難易度レベル修正および第2の難易度レベル修正のうちの一方または両方を使用して計算される。
【0032】
実施形態の関係する例では、第1の課題は視覚運動課題であり、第1の刺激はナビゲーション経路を含み、第1の複数の応答は連続入力を含む。
【0033】
実施形態の関係する例では、第2の課題は反応課題であり、第2の刺激は個人からの応答を必要とするターゲット刺激を含み、第2の複数の応答は干渉に反応する入力を含む。
【0034】
実施形態の関係する例では、第2の刺激は個人からの応答を必要としない阻害刺激を含む。
【0035】
実施形態の関係する例では、認知尺度を計算するステップは、第1の複数の応答および第2の複数の応答のうちの一方または両方に統計的分析を適用するステップを含む。
【0036】
実施形態の関係する例では、認知尺度を計算するステップは、パフォーマンス尺度を、知られている認知状態を有する個人を表す所定のパフォーマンス尺度と比較するステップを含む。
【0037】
実施形態の関係する例では、認知尺度を計算するステップは、コンピュータデータモデルをパフォーマンス尺度に適用するステップを含む。
【0038】
実施形態の関係する例では、コンピュータデータモデルは、知られている認知状態を有する個人のパフォーマンス尺度に基づき学習される。
【0039】
実施形態の関係する例では、コンピュータデータモデルは、機械学習、パターン認識、回帰分析、およびモンテカルロ法からなる群から選択される技術を使用して学習される。
【0040】
実施形態の関係する例では、認知尺度を計算するステップは、ヒット率、誤警報率、正答率、または誤答率を計算するステップを含む。
【0041】
実施形態の関係する例では、認知尺度を計算するステップは、感度指数、受信者動作特性(ROC)、およびバイアスからなる群から選択された信号検出技術を適用するステップを含む。
【0042】
実施形態の関係する例では、認知尺度は、第1の課題への第1の複数の応答のパフォーマンス尺度および第2の課題への第2の複数の応答のパフォーマンス尺度を使用して計算される複合尺度である。
【0043】
実施形態の関係する例では、認知尺度は、第1の複数の応答および第2の複数の応答のうちの一方の少なくとも2種類のパフォーマンス尺度を使用して計算される複合尺度である。
【0044】
実施形態の関係する例では、認知尺度は、第1の複数の応答および第2の複数の応答のうちの一方または両方の非パフォーマンス情報およびパフォーマンス尺度を使用して計算される複合尺度である。
【0045】
実施形態の関係する例では、非パフォーマンス情報は、個人の階層(demographic)、年齢、性別、および健康データからなる群から選択される。
【0046】
実施形態の関係する例では、認知機能評価は、認知障害の診断を行う。
【0047】
実施形態の関係する例では、認知機能評価は、時間の経過とともに変わる個人の認知能力を監視するために使用される。
【0048】
実施形態の関係する例では、認知機能評価は、個人の認知能力に対する治療の効果を監視するために使用される。
【0049】
実施形態の関係する例では、第2の刺激は、第1の刺激の少なくとも一部とともに全く同時に提示される。
【0050】
実施形態の関係する例では、第2の刺激のうちの1つは、関連付けられている第1の刺激とともに、わずかな時間差で連続して提示される。
【0051】
上で説明されているコンピュータ実装方法の例示的な実施形態は、1つまたは複数のプロセッサを備えるコンピュータ実装システムと、実行されたときに1つまたは複数のプロセッサに上で説明されている1つまたは複数のステップを実行させる命令を含むメモリとを使用して実装され得る。一実施形態において、上で説明されているコンピュータ実装方法の例示的な実施形態は、1つまたは複数のプロセッサ、表示コンポーネント、入力デバイス、およびセンサーを有するハンドヘルドコンピューティングデバイスを備えるコンピュータ実装システムと、実行されたときに1つまたは複数のプロセッサに上で説明されている1つまたは複数のステップを実行させる命令を含むメモリとを使用して実装され得る。
【0052】
上で説明されているコンピュータ実装方法の例示的な実施形態は、また、非一時的コンピュータ可読媒体上に符号化されている命令として実装されてもよく、命令はコンピュータ処理システムに上で説明されている1つまたは複数のステップを実行させるように構成される。一実施形態において、上で説明されているコンピュータ実装方法の例示的な実施形態は、非一時的コンピュータ可読媒体上に符号化されている命令として実装されてよく、命令は、表示コンポーネント、入力デバイス、およびセンサーを有するハンドヘルドコンピューティングデバイスに上で説明されている1つまたは複数のステップを実行させるように構成される。
【0053】
付属の付録および/または図面は、本開示による様々な非制限的な例、発明態様を示している。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【
図1】認知機能評価ツールの例示的な一実施形態の流れ図である。
【
図2】認知機能評価ツールが動作し得るコンピュータ処理システムの例を示す図である。
【
図3】認知機能評価ツールの例示的な好ましい一実施形態のスクリーンショットである。
【
図4】認知機能評価ツールの例示的な好ましい実施形態のパイロットスタディの結果を示す図である。
【
図5】例示的な認知機能評価ツールを実装する際に使用するための例示的なコンピュータ処理システムを示す図である。
【
図6】例示的な認知機能評価ツールを実装する際に使用するための例示的なコンピュータ処理システムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0055】
次に、例示されている実施形態は、類似の参照番号は例示の構造的/機能的特徴を識別
する添付図面を参照しつつより完全に説明される。例示的な実施形態は、以下で説明されている実施形態は単なる例にすぎないのでいかなる形でも例示されているものに限定されず、これは当業者によって諒解されるように様々な形態で具現化され得る。したがって、本明細書で開示されている構造および機能に関する詳細は、制限するものとして解釈されるべきでなく、単に請求項の基礎として、また説明されている実施形態を様々な形で採用する当業者を教示するための表現として解釈されるべきである。さらに、本明細書で使用されている用語および語句は、制限することを意図しておらず、むしろ、例示されている実施形態の理解可能な説明を行うためのものである。
【0056】
値の範囲が与えられた場合、その範囲およびその規定されている範囲内の他の規定されている、または間に入る値の上限と下限との間の、文脈上明確に別の値が指示されていない限り下限の1/10までの、それぞれの間に入る値は、例示されている実施形態に包含されることは理解される。これらのより小さな範囲の上限および下限がより小さな範囲に独立に含まれ得るということも、規定されている範囲内の特に除外されている限界を条件として、例示されている実施形態に包含される。規定されている範囲が、これらの限界の一方または両方を含む場合、それらの含まれる限界のいずれか両方を除外する範囲も、例示されている実施形態に含まれる。
【0057】
断りのない限り、本明細書で使用されるすべての技術および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者に通常理解される意味と同じ意味を有する。本明細書で説明されているものと類似のまたは同等の多数の方法および材料は例示されている実施形態を実施または試験する際にも使用され得るが、次に、例示的な方法および材料について以下で説明される。本明細書で言及されているすべての刊行物は、引用されている刊行物が関連している方法および/または材料を開示し、説明するために参照によって組み込まれている。
【0058】
本開示の方法および組成を説明するときに、次の用語は、断りのない限り以下の意味を含むが、それらの用語は、付随する意味に限定されると理解されるべきでなく、むしろ、本発明の教示および開示による意味を包含するものとして理解されるべきである。
【0059】
本明細書で使用されているような、「認知尺度」または「認知能力または機能の尺度」という用語は、知覚、記憶、判断、推論、および/または同様のものの使用者の精神機能の状態の表現を指すものとしてよい。いくつかの実施形態において、この表現は、特定の種類の機能(たとえば、記憶)についてのものであってよい。いくつかの実施形態において、この表現は、いくつかの種類の機能(たとえば、記憶および知覚)についてのものであってよい。いくつかの実施形態において、この表現は、これらすべてに全体として関連し得る。
【0060】
本明細書で使用されているような「課題」という用語は、個人が刺激に応答する方法またはプロセスを指すものとしてよい。いくつかの実施形態において、刺激は、特に認知機能を測定するために提示されるものとしてよく、これは「能動的課題」となる。いくつかの実施形態において、刺激は、コンピュータデバイスの日常的使用の一部として提示され、特に認知機能を測定するために提示されるものでなくてよく、これは「受動的課題」となる。
【0061】
本明細書で使用されているような「同時」という用語は、実質的に同じ期間内にある2つまたはそれ以上のもの(たとえば、時間差が全くないか、または0.1秒、0.5秒、もしくは1秒などのわずかな時間差)を指すものとしてよい。たとえば、いくつかの実施形態において、2つまたはそれ以上のものは、両方とも全く同時に出現する場合に同時である。いくつかの実施形態において、2つまたはそれ以上のものは、わずかな時間差で離れて連続的に出現する場合に同時である。いくつかの実施形態において、2つまたはそれ以上のものは、各々間に中断なく短期間の間に循環ベースで出現する場合に同時である。いくつかの実施形態において、2つまたはそれ以上のものは、同じ期間の間に設定されている場合に同時である。
【0062】
本明細書で使用されているような「マルチタスキング」という用語は、使用者が少なくとも2つの課題を同時に実行することを指すものとしてよい。課題は、能動的課題または受動的課題であり得る。
【0063】
本明細書で使用されているような「シングルタスキング」という用語は、使用者がただ1つの課題を設定された期間の間に実行することを指すものとしてよい。課題は、能動的課題または受動的課題であり得る。
【0064】
本明細書で使用されているような「ゲームレベル」という用語は、ビデオゲームにおいて特定の課題に関連付けられている離散的刺激大きさ値を指すものとしてよい。各レベルは、課題に関係するパラメータの特定の増分に対応し得る。レベルが高いほど、課題の難易度は上がり得る。
【0065】
本明細書で使用されているような「閾値」という用語は、1つまたは複数の所定の基準に基づき指定された正答レベルへの人が課題を実施する制限である課題の刺激大きさのレベルを指すものとしてよい。
【0066】
本明細書で使用されているような「刺激」という用語は、コンピュータデバイスが特定の機能的反応を喚起する使用者に対する感覚事象を提示することを指すものとしてよい。たとえば、反応は、コンピュータデバイスとのインタラクションであってよい。いくつかの実施形態において、刺激は、ユーザがナビゲートを指令される際に辿るナビゲーション経路を含み得る。いくつかの実施形態において、刺激は、別の課題から使用者の注意を逸らし、使用者応答を喚起する干渉を含み得る。いくつかの実施形態において、刺激は、別の課題から使用者の注意を逸らし、使用者からの応答を必要としない阻害因子(distracter)を含み得る。いくつかの実施形態において、刺激は、異なる応答要求条件を持つ複数の種類の刺激を含み得る。
【0067】
本明細書で使用されているような「阻害刺激」という用語は、使用者が刺激に反応するまたはコンピュータ入力を行うことになっていない知覚反応課題に対する特定の刺激を指すものとしてよい。阻害刺激に対する入力を与えることは、刺激を提示する課題への不正な応答と考えられる。いくつかの実施形態において、無応答は、そのような阻害刺激への応答とみなされてよい(たとえば、阻害刺激への正しい応答は、時間窓内において応答が存在しないことであり得る)。
【0068】
本明細書で使用されているような「定型発達」という用語は、知られている認知障害を有していない人の記述を指すものとしてよい。
【0069】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用されているように、単数形「a」、「an」、「the」は、文脈上明らかに他の方法を示していない限り、複数の指示対象を含むことに留意されたい。したがって、たとえば、「刺激」への参照は、複数のそのような刺激を含み、「信号」への参照は、当業者に知られている1つまたは複数の信号およびその等価物などへの参照を含む。
【0070】
以下で説明される例示的な実施形態は、好ましくは、コンピュータプロセッサを有するマシン上での実行を可能にするための制御ロジックを有するコンピュータ使用可能媒体上に置かれているソフトウェアアルゴリズム、プログラム、またはコードであることを諒解されたい。マシンは、典型的には、コンピュータアルゴリズムまたはプログラムの実行から出力をもたらすように構成されているメモリ記憶装置を備える。
【0071】
本明細書で使用されているように、「ソフトウェア」という用語は、実装がハードウェア、ファームウェア内にあろうと、ディスク、メモリ記憶装置デバイス上で利用可能な、またはリモートマシンからのダウンロードに利用可能なソフトウェアコンピュータ製品としてであろうと関係なく、ホストコンピュータのプロセッサ内に置くことができるコードまたはプログラムと同義であることを意図されている。本明細書で説明されている実施形態は、上で説明されている等価物、関係、およびアルゴリズムを実装するためのそのようなソフトウェアを含む。当業者であれば、上で説明されている実施形態に基づく例示的な実施形態のさらなる特徴および利点を諒解するであろう。したがって、例示的な実施形態は、添付の特許請求の範囲によって指示されている場合を除き、特に図示され説明されているものによって制限されない。本明細書で引用されているすべての刊行物および参考文献は、その全体において参照により本明細書に明示的に組み込まれる。
【0072】
図1は、本明細書で説明されているような認知機能評価ツールの一実施形態の一般的な流れ図である。一実施形態において、認知機能評価ツールは、使用者入力機
能を持つコンピュータデバイス
101上に実装され得る。コンピュータデバイスは、2つの課題102、103の刺激を使用者に同時に提示し得る。課題102および/または103は、認知機能評価を目的としてプログラムによって使用者104に割り当てられている認知機能評価または課題以外の目的のために使用者が自発的に取り組む課題を含み得る。好ましい一実施形態において、課題102は視覚運動課題であり、課題103は知覚反応課題である。次いで、使用者は、両方の課題102、103に応答するものとしてよく、それらの応答は、コンピュータデバイス101によって検
出または測定
105、106される(たとえば、応答は、マウスのクリック、画面へのタップ、加速度計の読み取り値などとして検出され得る)。このコンピュータデバイス101は、課題
102、
103に使用者応答を分析して、それらを使用者の認知能力または機能を表す認知機能評価107に変換するものとしてよい。いくつかの実施形態において、認知機能評価107は、1つの特定の課題への応答のパフォーマンス尺度(たとえば、課題
1のパフォーマンス尺度
110または課題
2のパフォーマンス尺度
111)に基づき得る。他の実施形態において、認知機能評価107は、一方または両方の課題への応答のパフォーマンス尺度(たとえば、課題
1のパフォーマンス尺度
110および/または課題
2のパフォーマンス尺度
111)に基づく複合尺度112であってよい。いくつかの実施形態において、認知機能評価108は、マルチタスキングを行っている間に使用者入力の尺度110、111、および112にのみ基づき得る。いくつかの実施形態において、認知機能評価107は、使用者の階層情報または規範的データなどの、追加の外部もしくは非パフォーマンス情報109を使用して計算された複合尺度113に基づくものとしてよい。
【0073】
図2は、本開示の実施形態が実践される際に使用され得る2種類のコンピュータ処理システム200および201を例示している。一実施形態において、コンピュータ処理システム200は、CPU、メモリ、ハードディスク、およびCD ROMドライブ(図示せず)を有し、モニタ203に接続されている、コンピュータ202を含み得る。モニタ203は、コンピュータプログラムの実行中に視覚的プロンプトおよびフィードバックを被験者に供給する。コンピュータ202には、キーボード204、スピーカー205、ジョイスティック206、マウス207、およびヘッドフォン208が取り付けられている。いくつかの実施形態において、スピーカー205およびヘッドフォン208は、コンピュータプログラムの実行中に聴覚的プロンプト、刺激、およびフィードバックを被験者に供給し得る。ジョイスティック206およびマウス207は、被験者がコンピュータプログラムをナビゲートし、コンピュータプログラムによる視覚的または聴覚的プロンプトの後に特定の応答を選択することを可能にする。キーボード204は、被験者またはインストラクターが被験者に関する英数字情報をコンピュータ202に入力することを可能にする。代替的実施形態において、コンピュータは、物理的状態もしくは使用者を監視するためのセンサーまたは移動を監視するためのビデオカメラ技術などの追加の入力もしくは出力要素を組み込み得る。開示されている方法は、多数の異なるコンピュータプラットフォーム、たとえば、IBM
(登録商標)またはMacintosh
(登録商標)または他の類似のもしくは互換性を有するコンピュータシステム、ゲーム
機、もしくはラップトップ上に
配備され得る。
【0074】
図2は、好適なモバイルコンピューティング環境、たとえば、タブレットパーソナルコンピュータまたは携帯電話またはスマートフォン201を例示しており、これらの上に認知機能評価ツールの実施形態が
配備され得る。一実施形態において、モバイルコンピューティングデバイスは、入力要素と出力要素の両方を有するハンドヘルドコンピュータであってよい。入力要素は、タッチスクリーンディスプレイ209、情報をモバイルコンピューティングデバイスに使用者が入力することを可能にする入力ボタン(図示せず)、およびデバイスの移動を使用者が記録することを可能にする、加速度計およびジャイロスコープ測定ユニット(図示せず)などの内部センサーを備え得る。スクリーンディスプレイ209は、コンピュータプログラムの実行中に視覚的プロンプト、刺激、およびフィードバックを使用者に供給し得る。出力要素は、いくつかの実施形態においてコンピュータプログラムの実行中に聴覚的プロンプト、刺激、およびフィードバックを使用者に供給し得る内蔵スピーカー(図示せず)を備える。代替的実施形態において、モバイルコンピューティングデバイスは、英数字情報を入力するための物理的キーパッド、物理的状態を監視するためのセンサーのアタッチメント、またはヘッドフォンジャック(図示せず)などの追加の入力もしくは出力要素を組み込み得る。それに加えて、モバイルコンピューティングデバイスは振動モジュール(図示せず)を組み込んでいてもよく、これにより、コンピュータプログラムの実行中にモバイルコンピューティングデバイスが振動して刺激またはフィードバックを使用者に供給する。
【0075】
図3は、開示されている方法Project:EVOの好ましい一実施形態のスクリーンショットである。スクリーンショット300は、知覚反応「タッピング」課題のために提示されているターゲットの画像を示している。スクリーンショット301は、使用者が反応したターゲットも示している。コンピュータは、使用者応答に関する情報を収集する。スクリーンショット302は、使用者が経路を、画面の左下部分に示されている氷山などの経路内の障害物を回避することを試みながらナビゲートするのを示している。これは、Project:EVO認知機能評価に対する視覚運動「ナビゲーション」課題である。この課題からのデータも、収集され分析される。スクリーンショット303は、なおも経路をナビゲートして進みながらターゲットに応答する、使用者のマルチタスキングを示している。
【0076】
図4は、Project:EVO評価のパイロットスタディの結果を含む。この研究では、マルチタスキングを行っている間の若年成人と高齢者とのパフォーマンスを比較した。反応時間の平均(A)および反応時間の標準偏差(B)の両方が、若年成人と高齢者との間で著しく異なっていた。これらのパフォーマンスの測定は、(1)それぞれ、使用者が画面上をタップすることまたはタップするのを控えることによってターゲット刺激および阻害刺激を含む2特徴反応課題を実施するようにされた知覚反応課題および(2)iPad(登録商標)の加速度計を使用してアバターを操縦し障害物の間を通り図形コースを進む視覚運動追跡課題を含むマルチタスクに参加者が取り組んでいる間になされた。
【0077】
認知機能評価ツールの様々な態様の詳細が、以下で説明される。
【0078】
マルチタスキング
マルチタスキングは、人が2つまたはそれ以上課題を同時に実施している状況を指す。これは、また、人が異なる課題を急速に切り替えるか、または複数の異なる短い課題を立て続けに実施している状況も表す。マルチタスキングは、一方のアクションを別のアクションの代わりに実施することを決定するための実行機能コントロールを必要とする。マルチタスキングは次第に当たり前のことになってきているので、研究者らは、マルチタスキングの基礎をなす精神機能およびマルチタスキング、学習到達度、学習、および記憶の間の関係を理解しようと試みてきている(CharronおよびKoechlin、「Divided Representation of Concurrent Goals in the Human Frontal Lobes」Science、328:360~363頁、MayerおよびMoreno、2003年「Nine ways to reduce cognitive load in multimedia learning」Educational Psychologist、38(2):43~52頁、JuncoおよびCotton、2010年「Perceived academic effects of instant messaging use」Computers & Education、56(2):370~378頁)。これらの文献では主に、個人がマルチタスクの1つのシングルタスクコンポーネントを実施しているだけであるシングルタスクシナリオを、マルチタスクシナリオにしたときのパフォーマンスの低下が調査されている。
【0079】
それに加えて、最近の目的構築認知パラダイムは、シングルタスクパフォーマンスとマルチタスキングを行っている間の同じ課題でのパフォーマンスとの差を測定することによってこの現象を研究するために構築されている。結果として生じるマルチタスキングコストは、認知診断に使用される(Gazzaley, A.による国際特許第WO2012/064999A1号)。
【0080】
他に類を見ないことだが、われわれの研究の結果、以前に想定されていたのとは反対に、以前に有用であったマルチタスキングコストデータ以外のマルチタスキング環境内で収集されたパフォーマンスデータも、使用者の認知状態を詳しく伝え、場合によっては、従来の認知機能評価および従来のマルチタスキング「コスト」測定に比べてより情報量の多い方法であり得ることがわかった。
【0081】
コンピュータデバイス
コンピュータ上で遂行される多くの課題のパフォーマンスは、信じられない正確さで測定することが可能であり、使用者の入力を測定し、記憶し、分析する人間の能力を超えることも多い。本明細書で説明されている認知機能評価ツールは、入力コンポーネントを備えるコンピュータ処理システム上に実装され得る。コンピュータ処理システムは、人間では忠実にかつ確実に行うことができない作業である、2つの課題の提示および2つの課題への使用者反応の測定を同時に可能にするので適している。コンピュータ処理システムは、また、両方の課題の難しさを独立して適応させることも可能である。それに加えて、コンピュータ処理システムが提供できる時間的解決方法なしでは、パフォーマンス測定は有効な認知尺度とはならない。たとえば、コンピュータデバイスは、同じ課題を測定しようとしている人間には感知できない、キーボード上のキーストロークまたはタッチスクリーン上のクリックのミリ秒のタイミングなどの、入力の差を測定することができる。われわれの開示されている方法の一実施形態において、若年成人と高齢者との間の知覚反応課題への平均反応時間の差は、約1/10秒である。
【0082】
コンピュータデバイスは、多くの人々の毎日の生活にすでに組み込まれている。これらは、現在、多くの種類の通信、データの処理、および電子ビデオゲームなどの娯楽目的に使用されている。これは他の認知テストに欠かせないものではないが、コンピュータデバイスおよびマルチタスキングが遍く存在していることで、毎日のコンピュータ利用の受動的測定が認知機能評価の一部として可能になる。
【0083】
一実施形態において、本開示は、個人の認知機能を測定するためのコンピュータ実装方法を提供し、この方法は、入力コンポーネントを有するコンピュータデバイスを使用して実装される。いくつかの実施形態において、コンピュータデバイスは、デスクトップコンピュータ、ラップトップコンピュータ、コンピュータタブレットデバイス、スマートフォンデバイス、およびビデオゲームデバイスからなる群から選択される。いくつかの実施形態において、コンピュータ入力デバイスは、マウスコンポーネント、スタイラスコンピュータ、キーボードコンポーネント、マイクロフォン、使用者の物理的状態のセンサー(たとえば、加速度計および/またはジャイロスコープ)、およびタッチスクリーンディスプレイからなる群から選択される。多くのそのようなコンピュータ入力方法が利用可能であり、コンピュータ技術の進歩は新しい種類の入力を生み出し続けることが諒解される。現在の特許の方法は、入力モダリティに依存するが、重要なことに、入力を確実に測定する能力が維持されている限り特定の種類の入力モダリティからは独立しており、したがって、開示されている方法は、現在および将来の入力モードに適用可能である。
【0084】
課題
一実施形態において、課題は、コンピュータデバイス上に提示される刺激を含み、使用者からの応答を喚起する。使用者からの応答を喚起する刺激は、複数の形態を取り得る。刺激は、限定はしないが、視覚的、聴覚的、触覚的、言語ベース、または象徴的なものを含む、認知技術分野(cognitive art)において知られている様々な刺激モダリティから選択され得る。使用者応答も、多くの異なる形態を取り得る。使用者応答は、限定はしないが、2値入力(yes/noまたは、真/偽)、多数あるオプションのうちから1つまたは複数のオプションを選択すること、一定入力(変化する刺激に合わせて連続的調整する、たとえば、自動車を道なりに操縦する)、言語ベース(応答内容をタイプするか、または発話する)、コンピュータデバイスに接続されているセンサーによって測定されるバイオフィードバックの要素(EEG信号、加速度計読み取り値など)、および同様のものを含む、技術分野において知られている様々なモダリティからも選択され得る。
【0085】
一実施形態において、使用者は、2、3の状態の下で同時に少なくとも2つの課題に耳を傾けて実施している場合にマルチタスキングに取り組んでいると考えられる。第1に、たとえば、課題は、使用者が同時に2つの課題に入力を行っている場合に同時であると考えられ得る。たとえば、使用者は、ジョイスティックを用いて運動課題に対する動作入力を行い、それと同時に、マウスを使って反応課題への入力を行うこともあり得る。第2に、たとえば、課題は、使用者が設定された長さの時間内に2つの課題を切り替える場合に同時であると考えられ得る。切り替えに対する時間の設定された長さは、約1/10秒、1秒、約5秒、約10秒、約30秒、約1分、または2分もしくはそれ以上であると考えることも可能である。課題は、当業者によってうまく働くことが知られている任意の順序で使用者に提示され得る。たとえば、課題は、循環する順序で(たとえば、A、B、C、...n、A、B、C...nなど)、特定の目的のために馴染みのある誰かによって設定された所定の順序で(たとえば、A、B、A、B、C、A、B、C、D、など、またはA、A、A、B、B、C)、ランダムな順序で、またはいくつかの課題の配布に対していくつかの条件を付けたランダムな順序で提示され得る。たとえば、使用者は、1分間、電子メール課題に言語ベースの入力を行い、30秒間、言語ベース入力でインスタントメッセージに応答してから、2分間、電子メール課題に戻るということも可能である。第3に、たとえば、課題は、課題が短期間のうちに完了し、中断なく次から次へとすぐに行われる場合に同時であると考えられ得る。短期間というのは、約1/10秒、約1秒、約5秒、約10秒、約30秒、約1分、または1~2分であると考えられる。たとえば、使用者は、30秒間ウェブ閲覧、続いて30秒間インスタントメッセージング、続いて30秒間ゲームプレーに取り組むものとしてよい。第4に、たとえば、課題は、また、使用者が設定された期間内に少なくとも2つの課題を完了するように指示されている場合に同時であると考えられ得る。2つの課題について、その期間は、約10秒、約30秒、約1分、約4分、約5分、約7分、または10分もしくはそれ以上とすることも可能である。
【0086】
使用者が取り組む課題は、いくつかの難易度レベルを有し得る。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの課題は、一定レベルの難易度を有し得る。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの課題は、可変レベルの難易度を有する。課題に対して難易度を変えられるときに、これは、使用者入力に依存しないスケジュールに基づき変えられ得るか、または「適応型課題」と本明細書において称されている使用者の入力に基づき変えられ得る。一実施形態において、適応型課題は、使用者が正しい応答を与えると難易度が上がり、使用者が正しくない応答を与えると難易度が下がる。課題の難易度を高める方法は、特定の課題に依存しているが、一般に、課題の難易度は、当業者に知られている方法はほかにもあるが、使用者が対応しなければならない特徴の数を増やし、知覚上の顕著性を小さくし、使用者からの必要な応答の頻度を高めることによって高められ得る。
【0087】
この説明の目的のために、コンピュータデバイス上で実施される課題は、2つのカテゴリに分けられ得る。課題の第1のカテゴリは、使用者が認知機能評価を目的として特定の刺激に特定の仕方で応答するように求められるものであり、および/または課題は、評価としての役割を果たすように意図的に構造化されている(これ以降、「能動的課題」と称される)。課題の第2のカテゴリは、認知機能測定以外の目的のために使用者が刺激に自発的に応答し、および/または信頼できる測定モダリティとなるように構造化されていないものである(これ以降「受動的課題」と称される)。本開示における「課題」という用語は、特に断りのない限り能動的課題および受動的課題の両方を包含する。
【0088】
使用者の目障りになることなくコンピュータデバイスによって監視できる多数の受動的課題がある。好適な受動的課題は、限定はしないが、キーボードを用いた書面による通信への応答、マウスのクリックによるウェブ閲覧、キーボードを用いたウェブ閲覧、マウスのクリックもしくはタッチスクリーンのタップを用いて新規コンテンツを読み進めること、上で説明されている入力を用いてゲームをプレーすること、写真編集、およびスマートフォンもしくはタブレットまたは他のモバイルデバイスを使用することを伴う、触覚、聴覚、または運動入力を有する他の課題、および同じような仕方の他の課題を含む。受動的課題の長さは、使用者が課題に一度で取り組む時間全体、または30秒以内、約1分、約4分、約7分、約10分から15分またはそれ以上の範囲内の所定の長さの時間と考えられ得る。
【0089】
いくつかの実施形態において、使用者が少なくとも2つの課題を同時に実施することは、使用者が少なくとも1つの受動的課題を実施することを伴う。いくつかの実施形態において、使用者が少なくとも2つの課題を同時に実施することは、使用者が少なくとも2つの受動的課題を同時に実施することを伴う。使用者が少なくとも2つの受動的課題を同時に実施する一実施形態は、使用者が電子メールを作成し、また同僚からのインスタントメッセージングによる質問にも応答することである。使用者が2つの受動的課題を同時に実施する別の好ましい実施形態は、使用者がウェブページを読み、またツイッター(登録商標)フィードを監視することである。
【0090】
開示されている方法の好ましい一実施形態において、使用者が少なくとも2つの受動的課題を同時に実施することは、使用者がビデオゲームにおいて少なくとも2つの受動的課題を同時に実施することを伴う。コンピュータビデオゲームは、多くの場合、使用者が複数の課題を実施しなければならない状況を提示する。たとえば、使用者は、武器を同時に変更しながらゲーム環境をアバターに歩き回させていてもよい。カジュアルなビデオゲームの全体的パフォーマンスは、特定の認知機能と相関していることがすでに示されている(Baniqued、Lee、Vossら、「Selling points: What cognitive abilities are tapped by casual video games?」Acta Psychol (Amst.) 2013年、142(1):74頁~)が、本明細書で説明されている認知機能評価ツールは、最新技術に基づき改善されているが、それは、使用者がゲーム環境内でマルチタスキングを行っておりゲーム上の単なる全体的スコアではなくパフォーマンス尺度としてゲームプレーから特定の使用者入力を受け取る状況に基づいているからである。
【0091】
さらに、使用者に対して能動的課題を提供する方法は多数ある。たとえば、とりわけ、注意、記憶、運動、反応、実行機能、意志決定、問題解決、言語処理、および理解力の領域における使用者の認知能力を評価するタスクが複数ある。能動的課題は、使用者が課題に進んで取り組む限り、または所定の長さの時間、30秒以内、約1分、約4分、約7分、約10分、および15分またはそれ以上の間持続することができる。
【0092】
いくつかの実施形態において、使用者が少なくとも2つの課題を同時に実施することは、使用者が少なくとも1つの能動的課題を実施することを伴う。いくつかの実施形態において、使用者が少なくとも2つの課題を同時に実施することは、使用者が少なくとも2つの能動的課題を同時に実施することを伴う。同時に実施される2つの課題は、上でリストされている同じ認知領域を評価するか、または異なる認知領域を評価することであってよい。使用者が少なくとも2つの能動的課題を同時に実施する好ましい一実施形態は、使用者が視覚運動課題および知覚反応課題を同時に実施することである。一実施形態において、視覚運動課題を実施することは、刺激への反応として細かい運動による移動を必要とする視覚的刺激の提示を伴う。いくつかの実施形態において、この視覚運動課題は、連続的視覚運動課題であり、視覚的刺激を変化させ、使用者の運動による移動をたとえば毎秒1、5、10、または30回記録する。細かい運動による移動を必要とする視覚運動課題に対する刺激の一実施形態は、アバターが載っていなければならない経路の視覚提示であってよい。この経路は、使用者が回避するように指示されている障害物および/または使用者が横切るように指示されている特定の場所を有するものとしてよい。そのような一実施形態において、細かい運動反応は、とりわけ、障害物を回避し、所望の配置を横切りつつ加速度計を使ってデバイスを傾けアバターを操縦して経路上に留めることで可能である。一実施形態において、知覚反応課題を提示することは、使用者からの応答を必要としない阻害刺激と使用者からの応答を必要とするターゲット刺激の両方を提示することを伴う。一実施形態において、阻害刺激およびターゲット刺激は、形状によって差別化される。別の実施形態では、阻害刺激およびターゲット刺激は、色によって差別化される。別の実施形態では、阻害刺激およびターゲット刺激は、形状および色によって差別化され、たとえば、使用者は、緑色の円または赤色の正方形ではなく赤色の円に応答しなければならない。いくつかの実施形態において、使用者が少なくとも2つの課題を同時に実施することは、使用者が少なくとも3つの能動的課題を同時に実施することを伴う。使用者が少なくとも3つの能動的課題を同時に実施する好ましい一実施形態は、視覚運動課題、知覚反応課題、および記憶課題を同時に実施することである。
【0093】
いくつかの実施形態では、使用者が実行する課題は、適応型課題である。課題は、階段法および最尤法などの、当業者に知られている方法によって難易度に関して適応され得るか、または修正され得る。そのような難易度適応は、参加者の能力を決定するために使用され得る。好ましい一実施形態において、課題の難易度は、提示されるすべての刺激と適応され、これは10秒に1回よりも多い頻度で生じる可能性がある。一代替的実施形態において、連続的課題の難易度は、たとえば、30秒おき、10秒、1秒、1秒に2回、または1秒に30回などの設定されたスケジュールで適応する。
【0094】
いくつかの実施形態において、ビデオゲームは、使用者が少なくとも2つの能動的課題を同時に実施するように求められる評価媒体を実現するために使用される。ビデオゲームにおいてこれらの特定の課題を提示する利点の1つは、報酬を与えることおよび取り組みインターフェースを作成することなどによって、参加者が可能な最高レベルで実施することを促すことができる特徴を持たせることができるという点である。好ましい一実施形態において、使用者がビデオゲームで少なくとも2つの能動的課題を同時に実施することは、使用者が視覚運動課題および知覚反応課題を同時に実施することを伴う。一実施形態において、知覚反応課題を提示することは、使用者からの応答を必要としない阻害刺激と使用者からの応答を必要とするターゲット刺激の両方を提示することを伴う。一実施形態において、阻害刺激およびターゲット刺激は、形状によって差別化される。別の実施形態では、阻害刺激およびターゲット刺激は、色によって差別化される。別の実施形態では、阻害刺激およびターゲット刺激は、形状および色によって差別化され、たとえば、使用者は、緑色の円または赤色の正方形ではなく赤色の円に応答しなければならない。
【0095】
使用者入力
使用者は、コンピュータデバイスをインタラクティブに操作することによって課題に応答し得る。一実施形態において、認知機能評価ツールは、入力モダリティを通じて使用者応答を取得するが、重要なことに、入力を確実に測定する能力が維持されている限り特定の種類の入力モダリティは変更することができ、したがって、説明されている方法は、現在および将来の入力モードに適用可能である。デスクトップコンピュータに対する入力の例は、とりわけ、英数字または方向入力のためのキーボード、進む/進まないクリック、画面配置入力、および移動入力のためのマウス、移動入力、画面配置入力、クリック入力のためのジョイスティック、オーディオ入力のためのマイクロフォン、および静止または運動光入力のためのカメラ、デバイス移動入力のための加速度計およびジャイロスコープなどのセンサーを含む。ビデオゲームシステムのための例示的な入力は、限定はしないが、ナビゲーションおよびクリック入力のためのビデオゲームコントローラ、加速度計およびジャイロスコープ入力のためのビデオゲームコントローラ、および運動光入力のためのカメラを含む。モバイルデバイスまたはタブレットのための例示的な入力は、とりわけ、画面配置情報入力、仮想キーボード英数字入力、進む/進まないタップ入力、およびタッチスクリーン移動入力のためのタッチスクリーン、加速度計およびジャイロスコープ運動入力、オーディオ入力のためのマイクロフォン、ならびに静止または運動光入力のためのカメラを含む。それに加えて、これらのデバイスは、生理学的センサーを組み込むことで使用者の物理的状態からの入力を組み込むことができる。入力などの生理学的センサーを組み込む方法は、生理学的入力を有することに依存するが、重要なことに、特定の種類の入力モダリティから独立しており、したがって説明されている方法は現在および将来の生理学的入力モードに適用可能である。開示されている方法に対する生理学的測定の例は、限定はしないが、脳波図(EEG)、脳磁図(MEG)、心拍数、心拍変動、血圧、体重、眼球運動、瞳孔拡張、ガルバニック皮膚応答、血糖値、呼吸数、および血液酸素化などの皮膚電気応答を含む。
【0096】
測定
当業者には、マルチタスキングテストがマルチタスキングを行っているときおよびシングルタスキングを行っているときの課題のパフォーマンスの差(マルチタスキングコスト)を認知尺度として測定することを可能にするという点で有用であることが知られている(Gazzaley、A.による国際公開第WO2012/064999A1号)。しかしながら、発明者らは、マルチタスキングを行っている間のパフォーマンスの他の尺度がマルチタスキングコストと同程度に、または場合によってはそれ以上に、有用であることを予想外に発見した。マルチタスキングパフォーマンス尺度は、当業者に知られているマルチタスクコスト尺度および従来のシングルタスク認知尺度と基本的に異なる、認知機能の尺度であると考えられ得る。説明されている次の尺度は、マルチタスキングを行っている間は測定されないと明示的に言及されていない限り、使用者がマルチタスク環境内にいる間に使用されるすべての尺度である。シングルタスクに通常使用される様々な認知パフォーマンス測定はどれも、開示されている方法において有用であり得ることが諒解される。場合によっては、上記の課題の節で説明されているように、適応型課題と非適応型課題の両方に適切な測定が行われ得る。
【0097】
パフォーマンス尺度は、提示されている特定の課題および調査されている認知機能のカテゴリに依存し得る。すでに述べたように、とりわけ、注意、記憶、運動、反応、実行機能、意志決定、問題解決、言語処理、および理解力の領域の1つまたは複数に関連付けられている課題を有し得る。これらの領域において、使用者入力または応答のパフォーマンス尺度は、認知機能を示す尺度を作成するために使用され得る。たとえば、パフォーマンス尺度は、当技術分野で知られているものがほかにもあるが、とりわけ、応答時間、課題完了時間、設定された長さの時間内に完了した課題の数、課題に対する準備時間、応答の正確さ、設定された条件(たとえば、刺激の難易度または大きさレベルおよび複数の刺激の関連付け)の下での応答の正確さ、設定された制限時間内に参加者が登録することができる応答の数、制限時間なしで参加者が行うことができる応答の数、課題を完了するために必要な課題での試行回数、移動安定性、加速度計およびジャイロスコープのデータ、自己評価を含み得る。
【0098】
一実施形態において、パフォーマンス尺度は反応時間であってよい。好ましい一実施形態では、反応時間は、知覚反応課題に対する反応時間として測定される。さらに、知覚反応課題が阻害因子である、参加者が応答すべきでない因子である、刺激を含む場合、反応時間は、任意の刺激への応答までの反応時間、正しい非阻害刺激(ターゲット刺激)への応答のみまでの反応時間、または「誤警報」反応時間と当業者によって知られている阻害刺激への反応時間のいずれかとして測定され得る。
【0099】
いくつかの実施形態において、パフォーマンス尺度は、設定された数の刺激にわたる正しい応答の数などの、応答の正しさであってよい。好ましい一実施形態では、正しい応答は、知覚反応課題に対する正しい応答として測定され得る。阻害因子(すなわち、使用者が応答すべきでない刺激)を含む知覚反応課題については、正しい反応は、使用者がターゲット刺激に応答する回数として、または阻害刺激への非応答の数に加えられたターゲット刺激への応答の数として計算され得る。いくつかの実施形態において、パフォーマンス尺度は、設定された数の刺激にわたる課題への不正な応答の数であってよい。好ましい一実施形態において、不正な応答は、知覚反応課題に対する不正な応答として測定され得る。阻害因子(すなわち、使用者が応答すべきでない刺激)を含む知覚反応課題については、不正な反応は、使用者が阻害刺激に応答する回数として、またはターゲット刺激への非応答の数に加えられた阻害刺激への応答の数として計算され得る。
【0100】
いくつかの実施形態において、パフォーマンス尺度は、使用者が適応型課題において正しくまたは正しくなく課題を実施できる刺激大きさであってよい。好ましい一実施形態において、刺激大きさは、視覚運動「ナビゲーティング」課題に対する経路を進む速度であってよい。好ましい別の実施形態において、刺激大きさは、知覚反応課題に応答するための与えられた反応窓時間であってよい。
【0101】
ユーザ入力から計算されたパフォーマンス尺度から、認知機能のより複雑な尺度を作成するためにさらなる分析が遂行され得る。いくつかの実施形態において、報告されている認知機能を示す尺度は、複合認知尺度である。複合認知尺度を作成する方法はいくつかあり、たとえば、標準的統計的要約方法を使用する方法、信号検出理論を適用する方法、精神物理学パフォーマンス測定基準(psychophysics performance metrics)を適用する方法、データを組み合わせて複合尺度を作成する方法、および時間の経過に従って尺度を調べる方法がある。
【0102】
いくつかの実施形態において、複合認知尺度は、統計的要約尺度(statistical summary measure)であってよい。当業者によって採用されている要約統計量は、平均、標準偏差または標準誤差を用いた分散、移動平均、特定のパフォーマンスレベルにおいて費やされる時間、指定された値よりも上または下にあること、パーセント、相関、二乗平均平方根誤差(RMSE)、R2相関係数、信頼区間、T得点またはZ得点などの標準的な統計分布への当てはめ、基準データセットによる要約、ベイズ統計法、主成分分析で作成される測定、機械学習から作成される測定、グループ間の特にパターン認識、回帰係数およびモンテカルロシミュレーションパラメータなどの統計モデルを適用することからのパラメータ、および同様のものを含む。
【0103】
一実施形態において、記録された統計的要約測定は、一定期間にわたる課題での平均パフォーマンスであってよい。好ましい一実施形態において、課題における平均パフォーマンスは、課題が難易度を連続的に課題に対する使用者の以前のパフォーマンスに適応させるときの平均パフォーマンスからなる。期間は、人が一度に課題を実施する長さの時間として選択され得るか、または約30秒、約1分、約4分、約10分、または10分超などの所定の長さの時間であり得る。好ましい一実施形態において、平均パフォーマンスレベルは、知覚反応課題に対する平均反応時間窓として測定され、その窓は、使用者が正しくなく応答した時に増加し、使用者が正しく応答したときに減少する。さらに、反応時間窓は、ゲームでは「levels」というラベルを付けられ、レベル数は反応時間窓が減少するにつれ増大するものとしてよい。いくつかの実施形態において、課題における平均パフォーマンスは、平均パフォーマンスレベルとして測定され得る。いくつかの実施形態において、平均パフォーマンスレベルは、知覚反応課題の平均パフォーマンスレベルである。別の好ましい実施形態において、平均パフォーマンスレベルは、適応型視覚運動課題の平均刺激大きさである。さらに、「ナビゲーティング」視覚運動課題では、ナビゲーション速度および障害物の数が、ナビゲーションゲームレベルを決定するために使用され、レベルは速度が上がり、および/または障害物の数もしくはサイズが増えるにつれ高くなるものとしてよい。このナビゲーションゲームレベルは、平均パフォーマンスレベルを計算するために使用できる。
【0104】
別の実施形態において、統計的要約測定は、一定期間にわたる課題でのパフォーマンスレベルの標準偏差であってよい。好ましい一実施形態において、課題におけるパフォーマンスレベルの標準偏差は、課題が難易度を連続的に課題に対する使用者の以前のパフォーマンスに適応させるときのパフォーマンスレベルの標準偏差である。期間は、人が一度に課題を実施する長さの時間として選択され得るか、または約30秒、約1分、約4分、約7分、約10分、または10分超などの所定の長さの時間であり得る。好ましい一実施形態において、パフォーマンスレベルの標準偏差は、知覚反応課題に対する反応時間窓の標準偏差として測定され、その窓は、使用者が正しくなく応答した時に増加し、使用者が正しく応答したときに減少する。さらに、反応時間窓は、ゲームでは「levels」というラベルを付けられ、レベル数は反応時間窓が減少するにつれ増大するものとしてよい。このゲームレベルは、実際の反応時間窓に加えてパフォーマンスレベルの課題の標準偏差を計算するために使用され得る。別の好ましい実施形態において、パフォーマンスレベルの標準偏差は、視覚運動課題の平均刺激大きさである。さらに、「ナビゲーティング」視覚運動課題では、ナビゲーション速度、コースの形状、および障害物の数が、ナビゲーションゲームレベルを決定するために使用され、レベルは速度が上がり、旋回の頻度が増大し、旋回半径が減少し、および/または障害物の数もしくはサイズが増えるにつれ高くなるものとしてよい。このナビゲーションゲームレベルは、パフォーマンスレベルの標準偏差を計算するために使用できる。
【0105】
一実施形態において、統計的要約測定は、一定期間にわたる平均反応時間であってよい。期間は、人が一度に課題を実施する長さの時間として選択され得るか、または約30秒、約1分、約4分、約7分、約10分、または10分超などの所定の長さの時間であり得る。好ましい一実施形態では、平均反応時間は、知覚反応課題に対する平均反応時間として測定される。さらに、知覚反応課題が阻害因子である、参加者がこれもまた応答すべきでない因子である、刺激を含む場合、平均反応時間は、任意の刺激への応答までの平均反応時間、ターゲット刺激への応答のみまでの平均反応時間、または「誤警報」反応時間と当業者によっても知られている阻害刺激への平均反応時間のいずれかとして測定され得る。
【0106】
一実施形態において、行われる統計的要約測定は、反応時間の集合の標準偏差であってよい。反応時間は、人が分析された課題を実施する間、または約30秒、約1分、約4分、約7分、約10分、または10分超などの設定された長さの時間ですべての反応時間事象を選択することによって分析のためにコンパイルできる。好ましい一実施形態において、反応時間の標準偏差は、知覚反応課題における反応時間の標準偏差として測定される。さらに、知覚反応課題が、干渉/ターゲット刺激および阻害刺激である刺激を含む場合、反応時間の標準偏差は、任意の刺激への応答までの反応時間の標準偏差、ターゲット刺激への応答のみまでの反応時間、または阻害刺激への反応時間のいずれかとして測定され得る。
【0107】
一実施形態において、行われる統計的要約測定は、課題が実施される順序とのパフォーマンスレベルの相関であってよい。好ましい一実施形態において、課題が実施される順序とパフォーマンスレベルとの相関は、知覚反応課題の順序と知覚反応課題のゲームレベルの相関である。好ましい一実施形態において、課題が実施される順序とパフォーマンスレベルとの相関は、視覚運動課題に取り組む時間と視覚運動課題のナビゲーションゲームレベルの相関である。好ましい一実施形態において、課題が実施される順序とパフォーマンスレベルとの相関は、知覚反応課題の順序とヒット率および誤警報率(信号検出理論の下で以下で説明されているような)の相関である。
【0108】
いくつかの実施形態において、行われる統計的要約測定は、ベイズ統計法から作成され得る。たとえば、ベイズ分析は、限定はしないが、正しくない応答を与えられた場合の正しい応答の確率および正しい応答を与えられた場合の正しくない応答の確率を含み得る。
【0109】
いくつかの実施形態において、行われる統計的要約測定は、主成分分析または類似の技術を介して作成されるものとしてよく、これにより複数の直接的パフォーマンス尺度を間接的尺度のより小さい集合に変換し、測定の範囲内の変動性への最も重要な寄与因子を要約する。主成分分析法では、複数のサンプルからのマルチタスキングパフォーマンス尺度は、1つのデータセットにまとめられる。たとえば、この集合は、実験参加者(参加者#1~100)の集合に対するパフォーマンス尺度A、B、C、D、およびEからなるものとしてよい。このデータセットは、パフォーマンス尺度A~Eを主成分と呼ばれる線形無相関変数(linearly uncorrelated variable)の集合に変換する直交変換への入力であってよい。出力は、元の変数集合の固有ベクトルからなるものとしてよい。そのような方法を使用したときに、出力または主成分はそれ自体が認知機能の測定基準である。主成分分析は、複合変数を作成する一手段である。
【0110】
いくつかの実施形態において、行われる統計的要約測定は、機械学習から導出され得る。一実施形態において、分類技術は、被験者のラベル付けされた個体群(たとえば、知られている認知障害または能力を有する被験者)のパフォーマンス尺度を使用してコンピュータデータモデルを学習させるために使用され得る。学習済みのコンピュータデータモデルは、どの個体群ラベル(たとえば、認知障害)が使用者に割り当てられるべきかを予測するために使用者のパフォーマンス尺度に適用され得る。たとえば、機械学習は、クラスタ分析を使用することによって実装され得る。参加している個人の各観察結果(たとえば、認知機能評価ツールは、各個人のパフォーマンス尺度を決定するために使用され得る)は、サブセットまたはクラスタに類別される。1つの場合において、部分集合またはクラスタラベルは、実験の各参加者が診断される認知障害であってよい。クラスタ分析機械学習技術を使用することで、出力は各部分集合の類似性測定基準および異なる部分集合間の隔たりを表し得る。異なる例では、教師あり機械学習は、人工ニューラルネットワークに基づくものとしてよい。そのような場合には、知られている認知能力を有する参加している個人のパフォーマンス尺度は、異なるパフォーマンス尺度間の複雑な関係をより良く理解できるようにニューラルネットワークアルゴリズムを学習させるために使用され得る。学習が済んだ後、ニューラルネットワークは、使用者のパフォーマンス尺度に適用されて認知尺度を出力するものとしてよく、これは使用者の認知能力の予測を表すものとしてよい。
【0111】
別の実施形態において、回帰またはモンテカルロ法は、観察されたパフォーマンス尺度を記述し、使用者の認知パフォーマンスに基づきいくつかの使用者の認知能力を予測するコンピュータデータモデルを生成するために使用され得る。いくつかの実施形態において、予測され得ることは、標準化された実力テストに対する注意またはパフォーマンスの外部テストなどの、評価環境(たとえば、ゲーミング環境)の外部にあるものとしてよい。たとえば、モデルは、個人の集団のマルチタスクパフォーマンス尺度およびその外部認知尺度(たとえば、認知障害、注意持続時間、標準化されたテストに対するパフォーマンスなどを含む、知られている認知能力)を使用して学習され得る。モンテカルロまたは回帰法を使用することで、コンピュータデータモデルは、その個人のマルチタスクパフォーマンス尺度を使用して個人の外部認知尺度を予測するように学習され得る。マルチタスクパフォーマンス尺度に加えて、EEGなどの、他の潜在的予測変数も使用され得る。
【0112】
一実施形態において、行われる統計的要約測定は、加速度計データの要約に基づくものとしてよい。個別にまたは合成として取られた加速度計ベクトル成分(x,y,z)の統計的要約は、パフォーマンスを測定するために使用され得る。統計的要約は、限定はしないが、たとえば、平均および標準偏差であってよい。それに加えて、加速度計データは、理想的尺度からの逸脱を計算することができる理想的関数と比較され得る。それに加えて、加速度計データは、使用者のパフォーマンスのスペクトル特性を測定するために波形として処理できる。このような分析の一例は、加速度計データのフーリエ変換を伴い、これにより、ゲームプレーの間の使用者のパフォーマンスプロファイルを表す利得、位相、および振幅値を生成し得る。一実施形態において、加速度計データは、たとえば毎秒30回、キャプチャされるものとしてよく、それによりモバイルデバイスの使用者の正確な移動が記録される。生の加速度計データは、任意の時点におけるx、y、およびz方向の加速度の量を指示する。加速度計データは、等しい間隔で並ぶサンプルの有限列の形態を取り、フーリエ変換に通されるものとしてよく、これは周波数領域に関する情報、または正弦関数の有限結合の係数のリストを、その周波数順に出力する。出力は、使用者の運動応答能力、視覚運動課題によって課される認知および運動要求度、ならびに同時知覚反応課題試行に関するこれらの要求のタイミングを指示し得る。
【0113】
いくつかの実施形態において、複合認知尺度は、信号検出理論を使用して計算され得る。信号検出理論は、使用者応答およびパフォーマンス尺度から感度指数(d'またはA')、バイアス、ROC、ヒット率、誤警報率、および同様のものを計算するために当業者によって使用され得る。
【0114】
好ましい一実施形態において、認知機能を表す信号検出理論からの測定基準は、知覚反応課題からのヒット率であってよい。その文脈では、ヒット率はターゲット刺激への正しい応答の数を提示されるターゲット刺激の総数で除算した値として定義され得る。別の好ましい実施形態では、認知機能を表す信号検出理論からの測定基準は、知覚反応課題からの誤警報率であってよい。そのような文脈では、誤警報率は阻害刺激への応答の数を提示される阻害刺激の数で除算した値として定義され得る。別の好ましい実施形態では、認知機能を表す信号検出理論からの測定基準は、知覚反応課題に対する誤答率であってよい。そのような文脈では、誤答率は、ターゲット刺激への無応答の数を正しくない応答の数で除算した値であってよく、これは阻害刺激への応答の数に加えられたターゲット刺激への無応答を含む。別の好ましい実施形態では、認知機能を表す信号検出理論からの測定基準は、信号を含まない正しい応答の割合として定義される、正答率であってよい。正答率は、阻害刺激への無応答の数を阻害刺激への無応答の数+ターゲット刺激への応答の数で除算した値として計算され得る。
【0115】
いくつかの実施形態において、複合認知尺度は、使用者応答またはパフォーマンス尺度の精神物理学的方法から作成され得る。精神物理学理論は、ほかにも多数の測定法があるがとりわけ、極限法、一定刺激法、または調整法を通じて使用者の閾値を測定するために当業者によって使用され得る。
【0116】
一実施形態において、使用者入力から決定される精神物理学的測定基準は、パフォーマンス閾値に基づき得る。この閾値は、使用者が時間の経過に従って適応型課題における正しくない応答に対する正しい応答の指定された比率を達成することができる課題の最大の刺激大きさ(視覚運動ナビゲーション課題における速度など)として定義され得る。たとえば、閾値は、使用者が時間の約1%、約10%、約50%、時間の約70%、時間の約80%、または時間の90~100%で課題を正しく実施することができる課題の最大の刺激大きさとして定義され得る。閾値は、使用者が刺激大きさが増分的に増加するときに正しくない応答に対する正しい応答の指定された比率を達成することができる課題の最大の刺激大きさとしても定義され得る。それに加えて、閾値は、適応型課題における閾値レベルより正しく高く、または低く応答される刺激の量またはパーセントによって特徴付けられ得る。好ましい一実施形態において、パフォーマンス閾値は、使用者が知覚反応課題への80%の正しい応答を連続的に達成できる反応窓時間であってよい。さらに、反応時間窓は、ゲームでは「levels」というラベルを付けられてよく、レベル数は反応時間窓が減少するにつれ増大する。このゲームレベルは、実際の反応時間窓に加えて課題のパフォーマンス閾値を表すために使用され得る。別の好ましい実施形態において、パフォーマンス閾値は、使用者が80%の正しさで視覚運動課題を実施することができる刺激大きさ(すなわち、課題の対象の速度)であってよい。さらに、「ナビゲーティング」視覚運動課題では、ナビゲーション速度および障害物の数が、ナビゲーションゲームレベルを決定するために使用され、レベルは速度が上がり、および/または障害物の数もしくはサイズが増えるにつれ高くなるものとしてよい。このナビゲーションゲームレベルは、ナビゲーションパフォーマンス閾値を表すために使用され得る。別の好ましい実施形態では、パフォーマンス閾値は、使用者が80%の正しさで視覚運動課題を、80%の正しさで知覚反応課題を実施する最大の刺激大きさの組合せであってよい。たとえば、この測定は、この段落ですでに説明されているゲームレベルの平均として表され得る。別の好ましい実施形態において、パフォーマンス閾値は反応時間閾値であってよい。
【0117】
いくつかの実施形態において、複合認知尺度は、複合尺度であってよい。複合尺度の例は、1つの課題からの2つまたはそれ以上のパフォーマンス尺度の組合せ、複数の課題からの2つまたはそれ以上のパフォーマンス尺度の組合せ、およびパフォーマンス尺度と外部情報との組合せである。
【0118】
いくつかの実施形態において、複合尺度は、同じ課題からの少なくとも2つの尺度の複合体であってよい。複合尺度は、少なくとも2つの方法で作成され得る。第1の方法では、複合尺度は、知られている認知または心理学的構造を表すようにあらかじめ作成される尺度であってよい。そのような構造のリストは次のとおりである。好ましい一実施形態において、同じ課題からの2つの尺度の複合体は、刺激への応答に対する反応時間を使用者が知覚反応課題において反応時間に応答できると思われる反応時間窓で除算した値であり、これは使用者が応答するためにそれらに配分された時間をどのように割り振ったかを示す指標を与える。別の好ましい実施形態において、同じ課題からの2つの尺度の複合体は、刺激への平均反応時間を知覚反応課題における反応時間の標準偏差で除算した値であり、これは多様なベースライン特性を持つ被験者間の比較のために使用できる反応時間変動性の正規化された尺度を与える。別の好ましい実施形態において、複合尺度は、すべての応答に対する反応時間の標準偏差に加えられた、またはそれとの平均を取った平均反応時間を含み、これはベースラインパフォーマンスおよび変動性の影響のバランスを取る一方法を提供する。別の好ましい実施形態において、同じ課題からの2つの尺度の複合体は、反応時間と刺激大きさまたは課題の難易度との相関である。刺激への反応時間と課題の刺激大きさとの相関は、測定中にゲームレベルが変化するときの知覚反応課題への反応時間と知覚反応課題のゲームレベルとの相関であり得る。これは、それらに配分された時間を使用者がどのように割り振るかを示す別の指標である。
【0119】
いくつかの実施形態において、複合尺度は、少なくとも2つの異なる課題からの少なくとも2つの尺度の複合体であってよい。一実施形態において、2つの異なる課題からの2つの尺度の複合尺度は、それら2つの課題のパフォーマンスの差であってよい。好ましい一実施形態において、パフォーマンスの差は、知覚反応課題のゲームレベルとナビゲーション課題のゲームレベルの差であってよい。尺度の統計的要約測定は、ナビゲーション課題のパフォーマンスレベルおよび知覚反応課題のパフォーマンスレベルの差がこの差の移動平均よりも大きいか、小さいかということであってよい。この測定は、使用者が時間の経過に従ってその戦略を調整しそれらのリソースを2つの課題の間に割り振る程度についてのものである。一実施形態において、少なくとも2つの異なる課題からの2つの尺度の複合尺度は、トレードオフ要約であってよい。トレードオフ要約を計算するための一方法は、一方の課題に対する閾値を別の課題に対する閾値で除算することによる方法であってよい。好ましい一実施形態において、トレードオフ要約は、知覚反応課題に対するゲームレベル閾値を視覚運動課題に対するゲームレベル閾値で除算した値であってよい。トレードオフ要約は、使用者による課題間へのリソースの割り振りの別の指標である。
【0120】
いくつかの実施形態において、複合尺度は、マルチタスクパフォーマンス尺度と使用者に関する外部情報との複合体であってよい。認知尺度を決定するために有用であり得る、外部情報、または瞬間マルチタスキング評価からは得られない情報は、異なる状況下での同じ課題からの測定、異なる認知課題からの測定、コンピュータを利用しない課題でのパフォーマンス、使用者の階層の情報などの非パフォーマンス情報、症状および疾病情報、地理的および他の文脈情報、および同様のものを含む。一実施形態において、使用者入力および外部データの複合体は、マルチタスキングパフォーマンス尺度およびシングルタスキングを行っている間の使用者入力の異なるパフォーマンス尺度の複合体であってよい。この複合変数は、事前干渉またはマルチタスクコスト測定から区別されるが、それは、これらの尺度がシングルタスクおよびマルチタスク環境内の同じパフォーマンス変数を直接比較しないからである。この種類は、構造がその後決定され得るが、統計的方法またはモデルを使用して特定の構造を評価するようにあらかじめ決定されない一意的変数を作成することによって、複合認知尺度を作成する第2の方法の一表現であることも多い。そのような変数を作成するための方法の例は、主成分分析およびニューラルネットワーク機械学習である。好ましい一実施形態において、シングルタスクおよびマルチタスク測定の複合体は、1)使用者がシングルタスキングを行っている間に時間窓内で非阻害刺激に正しく反応する知覚反応課題ゲームレベルの標準偏差と2)マルチタスキングを行っている間の非阻害刺激への正しい応答の平均反応時間との集合体であってよい。別の好ましい実施形態において、シングルタスクおよびマルチタスク尺度の複合体は、2で除算された量(単独で実施された知覚反応課題のゲームレベルの標準偏差+マルチタスキングを行いながらの知覚反応課題の平均反応時間-単独での知覚反応課題の平均反応時間)であってよい。
【0121】
いくつかの実施形態において、マルチタスキング評価ツールから作成されたパフォーマンス尺度のパターンは、認知能力の評価に使用され得る。たとえば、パターン認識は、異なる知られている医療診断を持つ定型発達個人および明確に異なる集団の集合のパフォーマンス尺度に基づき得る。これらの集団は、感覚処理障害および自閉症を患っている、または脳血管性認知症およびアルツハイマー病を患っているなど、症状が類似している集団であるものとしてよい。たとえば、機械学習または分類分析を使用してマルチタスキング評価ツールおよび知られている認知機能評価からの異なる種類のパフォーマンス尺度を処理することによって、臨床的に類似する集団の診断または差別化を行うことができるものとしてよい。たとえば、反応時間変動性、連続的運動課題のゲームレベル、および反応課題の誤警報率などの3つの予測尺度の集合が使用される場合、アルツハイマーの集団は、高い誤警報率で差別化され、脳血管集団は、連続的運動課題のより低いゲームレベルと高い誤警報率の両方によって差別化され得る。
【0122】
いくつかの実施形態において、複合認知尺度は、時間の経過とともに取られる尺度であってよい。時間の経過に従って取られる尺度は、時間の経過による使用者入力の変化、課題またはゲームにおける進行状況、および課題またはゲームとのインタラクション変数を含む。
【0123】
一実施形態において、時間の経過に従って取られる尺度は、時間の経過による使用者入力の変化であってよい。当技術分野で知られているように、人が特定の技能を取得するか、または維持する能力は、認知機能により変わり得る。好ましい一実施形態において、時間の経過による使用者入力のこの変化は、課題パフォーマンスの変化を表す、特定の使用期間にわたる測定基準の変化として計算され得る。これらの場合における特定の使用期間は、10分の課題取り組み、20分の課題取り組み、30分の課題取り組み、または60分の課題取り組みなどの時間ベースであるものとしてよい。他の場合には、特定の使用期間は、ゲームがプレーされた回数(2回、4回、7回、10回、25回、35回、50回、70回、100回、140回、または150回以上)または作成された書面による通信の数などの、使用者によって課題が取り組まれた事例の数によって決定され得る。特定の使用期間は、また、課題が完了した事例の数または回数を考慮しない設定された期間によって決定され得る。たとえば、使用者入力の変化は、1時間、1日、2日、1週間、2週間、1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、1年、または1年超にわたる変化として計算され得る。この測定基準の逆数もまた、有用であり得る、すなわち、尺度の特定の変化を達成するのに要する時間の長さまたは取り組み回数であるものとしてよい。
【0124】
一実施形態において、時間の経過による使用者入力の変化は、マルチタスキングを行っている間に使用者が知覚反応課題に取り組んだ第1回目から使用者が同じ課題に取り組んだ第7回目までの平均反応時間の変化であってよい。別の好ましい実施形態において、技能レベルの変化は、使用者入力の指定された変化を得るために必要な時間の長さとして測定され得る。たとえば、使用者入力の変化は、知覚反応課題において100ミリ秒だけ平均反応時間を短縮するのに要する時間または閾値パフォーマンスの次のゲームレベルを達成するのに要する時間として測定され得る。
【0125】
一実施形態において、少なくとも2つの課題が、ビデオゲーム環境において使用者によって実施され、時間の経過による使用者入力の複合認知尺度は、使用者がゲームを進めることができる能力であるものとしてよい。使用者がゲームを進める好ましい一実施形態は、使用者が両方の課題の使用者が以前に計算した閾値パフォーマンスレベルに近いか、またはそれを超えるレベルに使用者が費やす時間の長さの測定である。この時間の長さは、とりわけ特定のレベルに費やされる最長時間および多数の測定にわたって費やされる総時間などの当業者に知られている要約方法で報告され得る。使用者がゲームを進める別の好ましい実施形態は、設定された期間内に使用者が達成できるレベルの数であってよい。使用者がゲームを進める別の好ましい実施形態は、使用者が次のゲームレベルに進むためにパフォーマンスの閾値レベルを満たすまたは改善することに失敗した回数であってよい。
【0126】
別の実施形態において、使用者からの入力は、行動の尺度および認知機能評価ツールとのインタラクションを表す時間の経過による複合認知尺度を作成するために使用され得る。認知機能評価ツールとのインタラクションを測定する好ましい一実施形態は、使用者が使用者が指示された方法でデバイスをインタラクティブに操作するかどうかの順守の測定である。たとえば、使用者が設定された期間または毎日の課題活動の設定された数に対してマルチタスキング環境内にあるように指示された場合、尺度は、使用者が要求条件を満たす月内の日数のパーセントとすることも可能である。インタラクション測定の別の好ましい実施形態は、マルチタスキング環境である頻度の測定であってよい。インタラクション測定の別の好ましい実施形態は、たとえば使用者が毎日1回または毎日複数回マルチタスキングに取り組んでいる場合に、デバイスとのインタラクションのパターンの測定であってよい。別の実施形態において、行動を表す複合認知尺度は、ビデオゲームの無関係の特徴への使用者の注意であってよい。たとえば、ゲームの規定された目標が、ビデオゲームにおける視覚運動課題および知覚反応課題を実施することであるが、コイン収集のような第3の課題も含まれ、認知尺度を計算するため、第3の課題に使用者が取り組む頻度が使用され得る。
【0127】
当業者に知られているように、この説で説明されている尺度は、使用者が最大の努力をするときに変化し得る。したがって、これらの尺度は、任意の期間にわたって、または使用者が最大の努力を行っていると識別することができるときにのみ取られるものとしてよく、各々異なる認知意味を有するであろう。一実施形態において、使用者入力の分析は、難易度のレベルが2つまたはそれ以上の適応型課題に対して閾値レベルに近いときに使用者入力に対して隔離される。好ましい一実施形態において、分析された使用者入力は、適応型視覚運動課題および適応型知覚反応課題について、両方の課題のゲームレベルが閾値レベルに近づくときに使用者入力であり得る。
【0128】
受動的課題の多くは、使用者入力から取ることができる標準的な認知尺度を有し得ないことが諒解される。これらの場合には、使用者入力に関して2、3の中間分析ステップがあってよい。第1に、いつマルチタスキングが行われ、データを処理しているかを識別する。
【0129】
使用者を受動的に監視しているときにマルチタスキングの識別は、2、3の異なる形態を取ることができる、すなわち、計算デバイス上の異なるプログラムを使用者がいつ頻繁に切り替えるかを決定し、使用者がマルチタスキングを伴うゲームにいつ取り組むかを識別する。
【0130】
当業者に知られているように、受動的監視からのデータを処理することは、偽マルチシグナリングフラグを識別すること、外れ値データ点を識別し場合によっては取り除くこと、より長期間にわたって患者を追跡してノイズから信号を区別することを伴い得る。この設定に従って、本明細書で説明されている能動的課題における使用者入力を評価するための同じ技術が適用され得る。
【0131】
測定の使用
本開示で説明されている認知測定は、とりわけ保健医療、雇用評価、および教育を含む、多くの領域において有用であり得る。
【0132】
医療機関において、認知機能評価ツールは、それだけで使用され得るか、または他の臨床測定とともに、特定の疾病または病状を診断するために使用され得る。医療機関における別の実施形態では、このツールは、疾病または病状に関連する認知障害の重症度を評価するために使用され得る。そのような認知尺度が診断に役立つであろう特定の個体群の一覧が、一部、本開示の次の節において取りあげられている。
【0133】
一実施形態において、認知機能評価ツールは、認知障害を監視するために使用され得る。認知障害を監視することで、患者、臨床医、および介護人らは疾病の進行を追跡することができる。たとえば、アルツハイマー病では、長年にわたって軽度の症状を有する人々もいれば、劇的に大きくなる症状を有する人々もいる。認知的症状が測定できる場合、これは患者を独り暮らしさせないなどのいくつかの予防措置をいつ講じるべきかを示す指示を与えることができる。認知障害を監視することで、患者、臨床医、および介護人は、特にインターベンションが個体群全体に対して有効であることが知られていない場合に、治療またはインターベンションへの応答も監視することができる。そのような一実施形態の一例は、注意欠陥過活動性障害(ADHD)を患っている患者に対する刺激薬の投与の有効性を監視するために認知機能評価ツールを使用することである。認知モニタとしてのツールの別の用途は、化学療法などの、知られている認知影響を有する療法、または特徴的ではない薬動力学を有する療法からの認知副作用の有無および重症度の観察である。好ましい実施形態において、監視は、30分毎、2、3時間毎、毎日、週2、3回、毎週、隔週、毎月、または毎年の間隔で繰り返されてよい。
【0134】
一実施形態において、認知機能評価ツールは、学生の認知状態を特徴付けるために使用されてよい。学校および訓練プログラムで使用されるときには、説明されている方法は、ほかにもあるがとりわけ、特別なリソースを必要とする学生を識別する、さらなる神経学的評価を必要とする学生を識別する、認知訓練が有益であろう学生を識別する、学生を主題の正しい難易度レベルに設定する、ならびに教育カリキュラムおよびプログラムの有効性を評価する、ために使用され得る。説明されている方法は、新しいカリキュラムまたは学校プログラム、特に認知能力を改善するように設計されているものを評価するためにも使用され得る。
【0135】
一実施形態において、認知機能評価ツールは、認知能力を評価して、要求度の高い仕事、特に使用者マルチタスキングに定期的に頼る仕事で働く使用者の能力を評価するために使用され得る。
【0136】
いくつかの実施形態において、認知機能評価ツールは、認知機能に対する物理的および感情的環境の効果を測定するために使用されてよい。説明されている方法は、従業員、病院および診療所内の患者の周囲にあるもの、使用者に対するストレスのレベルおよびその認知影響などに対する作業場環境の効果をテストするために使用され得る。
【0137】
いくつかの実施形態において、認知機能評価ツールは、認知機能に対する物理的環境暴露の効果を測定するために使用されてよい。研究において、または個人の使用のために、このツールは、使用者の認知機能に対する、ほかにもあるがとりわけ、化学物質、汚染物質、食材、および空気品質の影響を理解するために使用され得る。
【0138】
一実施形態において、認知機能評価ツールは、使用者が自分の認知状態を変えるために物質を摂取しているかどうかを決定するために使用され得る。たとえば、このテストは、臨時入国許可を受けた人の薬物使用を審査し、さらなるテストの対象と考えられるべき人を識別するために使用され得る。
【0139】
この認知機能評価ツールは複数のコンピュータデバイスプラットフォーム上に配備され得るので、説明されている方法は、コンピュータデバイスがあるいかなる場所でも使用できる。説明されている認知機能測定ツールは、医院内、病院内、学校内、職場内、家庭内、移動している車両内、公園の外、通りを歩いている間、およびモバイルデバイスが携帯できる任意の場所で使用できるという利点を有する。
【0140】
当業者に知られているように、使用者入力は、1回だけ、設定された期間にわたってもしくは設定されたスケジュールで複数回、または特に特定の変更が行われる前および後2回、測定されるものとしてよく、使用者の入力が測定される回数は、認知機能測定ツールが採用されている機能によって決定される。
【0141】
ターゲット個体群
認知機能評価ツールの恩恵を受けることができる個人は、どのような人であってもよい。以下で説明されているターゲット個体群のうちのどれかについて、1人の認知能力(たとえば、障害、または干渉への脆弱性)を評価するための診断、評価、または進行中監視ツールは、本明細書で説明されている認知機能評価ツールの特に有用な応用である。マルチタスキング環境によって生じる認知機能への干渉が知覚、注意、および記憶を含む、ある範囲の機能にわたる認知パフォーマンスに重大な影響を及ぼし得ることが認知分野において認識されている。したがって、特に認知機能を測定することを目指している新しい方法の恩恵を受けるであろう潜在的個体群が多数ある。
【0142】
主題の方法およびツールの恩恵を受け得る個人は、限定はしないが、高齢の成人などの成人を含む。健康な高齢の成人は、認知干渉の処理において著しい欠陥を有することがよく知られている。それに加えて、最近の研究成果から、若い成人であっても、そのような欠陥の兆候を示し得ることが知られている(Gazzaley、A.による国際公開第WO2012/064999A1号)。したがって、約30歳以上の成人は、本開示の方法の恩恵を受け得る。低下は、典型的には、50歳から始まって加速し、「加齢関連認知低下」と臨床的に称される現象でその後数10年にわたって悪化する。そのような症状は、軽度認識障害として知られているより重大な病気に至る可能性がある。障害が識別された場合、認知訓練などの早期の認知療法ステップが開始され得る。それに加えて、予防対策が、自動車を運転するなどの、マルチタスキングを行っているか、または注意散漫を回避している間に視覚的または聴覚的情報の抽出を必要とする課題に導入され得る。
【0143】
慢性神経疾患および精神病を患っている個人について、抑制性ニューロン個体群の変化、髄鞘形成、応答遅延、緊急応答非協調、空間、スペクトル、および時間の詳細における応答選択性の低下、および背景刺激とターゲット刺激との間の区別の低下は、加齢関連認知低下の効果に非常によく似ている。したがって、加齢における障害と平行する認知障害のプロファイルを有する任意の年齢の個人は、本開示の方法およびツールに対するターゲット個体群である。
【0144】
加齢とは別に、認知機能障害を測定することは、危険にさらされている他のものにおける障害を識別するために使用できる。たとえば、開示されている認知機能評価ツールは、怪我(たとえば、外傷性脳損傷)、薬物療法、慢性疾患、または未知の原因の結果として生じた認知能力喪失を識別するのに有用であり得る。そのような認知障害は、加齢関連であろうとなかろうと、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、うつ病、統合失調症、認知症(限定はしないが、AIDS関連認知症、血管性認知症、加齢関連認知症、レビー小体に関連する認知症、および突発性認知症を含む)、ピック病、疲労に関連する認知障害、多発性硬化症、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、強迫性障害(OCD)、および他の障害を含む、様々な状態の寄与要因または顕性症状であり得る。他の認知機能喪失は、ほかにもあるがとりわけ感染性病原体、医学的介入、アルコール、または薬物に起因する脳損傷を含み得る。それに加えて、認知低下は、表面上認知には無関係であるが、不安、ストレス、パニック、うつ病、情動不安、倦怠に著しい悪影響を及ぼす様々な病状からの二次的症状の結果として生じ得る。したがって、著しい痛み要素、不眠症、または全身麻酔、透析、化学療法、もしくは放射線療法などの疾病治療の潜在的悪影響を有する痛みまたは疾病を経験している個人も、認知機能評価ツールを使用することから恩恵を受けることができる。
【0145】
本発明の認知機能評価ツールから恩恵をさらに受け得る個体群は、注意欠陥障害(たとえば、ADHD)を患っている人々をさらに包含する。同様に、認知機能喪失は、一般または診断未確定の発育遅延、感覚処理障害(SPD)、および自閉スペクトラム症(ASD)を包含する、発達障害の子供および成人の個体群について特徴付けられ得る。
【0146】
本開示において説明されているような、2つの課題を一度に実施することに関係する特異認知能力を評価することは、専門能力を評価する上で極めて重要であり得る。著しいマルチタスキングを必要とする専門的職業は、限定はしないが、運動選手、航空パイロット、軍人、医者、コールセンター職員、教師、および車両の運転手を含む。
【0147】
特異認知能力を評価することは、また、現在または以前の薬物乱用問題または依存症を抱える人々に対しても有用である。
【0148】
認知機能評価ツールから恩恵を受け得る別の非医療個体群は、学齢児童である。認知訓練の評価は、特別なニーズを有する、または認知訓練および特定の教育プログラムの対象とすべき子供を識別する際に役立ち得る。
【0149】
有効性の実証
個人の認知および関係する効果を評価することを目的として、診断の精度を実験的に決定することが望ましいものとしてよい。実験テストの好適な方法は、人間によるパイロットスタディおよび臨床試験を含む、新しい認知測定の精度を試験するための当技術分野で知られている種類の研究を含む。これらの種類の実験は、個人のグループで実施されるものとしてよく、好ましくは、最終的な市場製品のターゲット集団を表す個人のグループで実施され得る。好ましくは、これらの研究は結論に対して強い統計的な裏付けを与えるためにそのようにして実施される。
【0150】
そのような研究の一実施形態において、開示されている方法は、2つの結果を比較するために別の適切に特徴付けられている評価と同時に認知を測定するために使用される。この評価は、一般的な認知機能に主眼を置くものとしてよく、これは健康な個人および臨床患者個体群を含む、認知障害を経験した、または経験する危険性のある個人の両方に関係する。そのような好適なテストは、知覚能力、反応、および他の運動機能、視力、長期記憶、作業記憶、短期記憶、論理、意志決定、および同様のものに対するテストを含む、認知または行動研究における一定範囲の認知の特定の機能を試験する当技術分野で知られているテストを含む。
【0151】
有効性研究の別の実施形態において、説明されている認知機能評価ツールが、広い年齢範囲にわたって試験されたときに加齢に関連する知られている認知障害を捕らえるかどうかが試験され得る。そのような一実施形態では、上で説明されているような当業者に知られている認知機能評価などの機能と相関する年齢、または日常の生活の実際の機能的活動に加えて、他のツールも使用できる。そのような機能的帰結を測定するために特に構築されるか、妥当性確認されたテストの例は、高齢者個体群に対する日常生活動作、または指令された課題を実施し、読書し、または会話を理解する能力、職場環境における有効性、および同様のものなどの単純な測定である。
【0152】
有効性研究の別の実施形態において、刺激薬、抑制薬、および睡眠遮断などの知られている変化剤に関連する認知変化を捕らえる能力について試験され得る。そのような研究は、または、認知を評価するために開示されている方法との比較について以前に説明されている知られている認知機能評価も採用し得る。
【0153】
有効性研究の別の実施形態において、特定の疾病個体群に関連付けられている知られている認知障害を捕らえ、疾病個体群内の重症度を差別化する能力について試験され得る。そのような一実施形態では、認知を評価するための開示されている方法は、特定の疾病または症状と関連する症状または機能を測定するテストとともに上で説明されている他の認知機能評価および機能的尺度と比較することができる。好適な種類のテストは、疾患もしくは状態の症状重症度またはバイオマーカーを客観的に測定するテスト、症状重症度の主観的臨床医または観察者測定を使用するテスト、被験者の状態の自己報告された知覚を使用するテスト、および病状と相関することが知られている認知機能を測定するテストを含む。そのようなテストの例は、限定はしないが、ミニメンタルステート検査、CANTAB認知バッテリー、注意の変数のテスト(TOVA)、神経心理学的状況の評価のための再現可能なバッテリー、特定の病状に関連する臨床総合所見尺度、臨床家の問診に基づく変化の所見、重篤障害バッテリー、アルツハイマー病評価尺度、陽性および陰性症候群尺度、統合失調症認知機能評価尺度、コナーズ成人期ADHD評価尺度、ハミルトンうつ病評価尺度、ハミルトン不安尺度、モントゴメリー-アスベルグうつ病評価尺度、ヤング躁病評価尺度、小児うつ病評価尺度、ペンシルバニア州心配の自己評定式質問紙、病院不安およびうつ病尺度、異常行動チェックリスト、日常生活動作尺度、ADHD自己報告尺度、陽性および陰性影響スケジュール、うつ不安ストレス尺度、簡易抑うつ症状尺度、およびPTSDチェックリスト、アミロイドベータ、コルチゾール、および他のストレス反応マーカーの検出などの疾病または健康の内部マーカーを測定する生理学的テスト、ならびに特定の神経信号の存在に基づき状態を評価する脳画像研究(たとえば、fMRI、PETなど)を含む。
【0154】
有効性研究の別の実施形態では、認知機能評価ツールは、類似の表現型を有する異なる疾病個体群を差別化する能力についてテストされ得る。そのような研究は、類似の表現型のある疾病について知られている診断を有する参加者、および潜在的に、認知機能に関係する知られている病状を有していない個人を使用する。そのような研究は、この節においてすでに説明されている認知、機能、および症状関係テストも採用することが可能である。
【0155】
有効性研究の別の実施形態では、認知機能評価ツールは、認知尺度の安定性を実証する研究において一斉にまたは固定されたスケジュールで各人について複数回採用され得る。そのような研究は、比較のため開示されている認知測定ツールと同時にこの節においてすでに説明されている認知、機能、および症状関係テストを参加者に与えることも可能である。
【0156】
有効性研究の別の実施形態では、認知機能評価ツールは、知られている治療に対する尺度の感度を実証するため同時に使用者に知られている認知促進または認知障害治療を与えながら一斉にまたは固定されたスケジュールで各人について複数回採用され得る。そのような研究では、認知促進治療のための神経刺激薬もしくはカフェインまたは認知障害治療のためのアルコールもしくは睡眠遮断を使用することが可能である。そのような研究は、説明されている認知測定ツールの各使用と同時に、この節においてすでに説明されている認知、機能、および症状関係テストを採用することも可能である。
【0157】
(実施例)
本明細書で説明されている実施例および実施形態は、例示することのみを目的としており、このことを考慮して様々な修正形態または変更形態が、当業者によって示唆され、また本出願の精神および範囲ならびに添付の請求項の範囲の中に含まれるものであることは理解される。本明細書で引用されているすべての公開、特許、および特許出願は、全体がすべての目的に関して参照により本明細書に組み込まれる。
【0158】
Project:EVO-計算認知機能評価システム
われわれは、モバイルタブレットまたはスマートフォン上で個人によって操作される、「Project:EVO」と称する臨床的プロトタイプ認知機能評価ゲームにおける基本的なソフトウェアメカニックとして適応型認知機能評価システムを設計し、構築した。Project:EVOの動力となる適応型認知機能評価システムは、測定の方法を使用して、プレーヤーの認知能力を評価する。
【0159】
Project:EVOの背景
Project:EVOは、関わっているコンピュータ環境において、2つの課題を同時に実行している(マルチタスキング)間に個人が与える入力を測定することによって個人の実行機能を評価することができるモバイルビデオゲームとして構築された。今まで、ゲームは、認知、行動、および症状測定について標準的な評価との比較結果を使用する複数の臨床研究において
配備されてきた。Project:EVOの機能的臨床的バージョンからの例示的なスクリーンショットが、上で説明されている
図3に示されている。
【0160】
Project:EVOは、個人に2種類の課題、すなわち、知覚反応課題(ゲームでは「タッピング」と呼ばれる)と視覚運動追跡課題(ゲームでは「ナビゲーション」と呼ばれる)を与える。知覚反応課題では、個人が注目する視覚的ターゲットが現れたときに(たとえば、緑色の円形の魚)モバイルタブレット/スマートフォンの画面上をタップすることによって応答するが、注目していないターゲットが現れたときには(たとえば、緑色の正方形の魚または赤色の円形の魚)その応答を抑制し、タップしないことを要求する。視覚運動課題は、個人がモバイルタブレット/スマートフォンの画面を微妙に傾けることによって視覚的フィギュア/アバターに川を下らせアバターを常に川の真ん中に来るように「ナビゲートする」ことを要求する。個人は、成功させるためにアバターの通り道に生成される障害物を回避しなければならない。2つの課題は、マルチタスキングパラダイムの基本フレームワークに基づく。
【0161】
Project:EVOにおける難易度レベル
使用者が実施する課題の難易度レベルは、ユーザパフォーマンスに基づき修正される。個人が課題を正確に実施するときには個人に対する各課題の難易度を上げさせ、個人が課題を正しく実施することができないときに難易度を下げさせる。反応課題については、課題を正しく実施することは、注目するターゲットに対しては適切な時間内に応答し、注目していないターゲットに対しては応答しないと考えられる。反応課題を正しくなく実施することはその反対であり、注目していないターゲットに対して応答し、注目しているターゲットに対しては配分された時間内に応答しない。反応課題の難易度は、各ターゲットが提示されるときに許される応答時間を増やしたり減らしたりすることによって修正される。反応課題に対するゲームレベルは、参加者に提示される反応時間窓によって決定される。ナビゲーション課題は、使用者がアバターの経路内の壁および対象物を回避したときに正しく実施されていると考えられる。アバターが壁および対象物と衝突することを許すことは、ナビゲーション課題を正しくなく実施することであると考えられる。ナビゲーション課題の個人に対する難易度レベルは、アバターが経路上を移動する速度を変更することによって修正される。ナビゲーション課題に対するゲームレベルは、アバターが経路上を移動する速度よって決定される。Project:EVOは、両方の課題の難易度レベルをリアルタイムで適応させ、ユーザをチャレンジングな状態に適切に保ち、使用者によって可能なパフォーマンスの閾値を決定する。したがって、ゲームプレーの前の事象における個人のパフォーマンスは、次の事象の正確な難易度を決定し、延長期間における総パフォーマンスは、一般に、どの時点においても個人が経験している可能性のある平均難易度レベルを決定する。
【0162】
Project:EVOの「ワールド」
Project:EVO評価ツールの現在のバージョンは、課題が行われる4つの異なる「ワールド」を使用するように設計された。異なるワールドの各々について、異なるグラフィックス、異なる配色、およびわずかに異なる知覚反応課題がある。いくつかの場合において、ワールドはすべて、評価において使用され、他の場合には、それらのワールドのうちの1つのみが評価として使用される。
【0163】
プレーするProject:EVOの評価
Project:EVOは、ゲームが1回、または設定された期間に複数回、たとえば、4日間毎日1回プレーできるようにセットアップされる。プレーヤーは、短期間、4~12分の間、2の課題を実施することによって評価プロセスを開始する。プレーヤーは、すべてのターゲット事象および正しくないナビゲーション事象への視覚的および聴覚的フィードバックによってその最大能力でプレーするようにやる気を起こさせられる。いくつかの場合において、プレーヤーは、また、課題を正しく実施するために、アバターを購入するのに使用できる「ポイント」の報酬も受ける。このウォームアップ期間の後、プレーヤーは評価フェーズを開始する。プレーヤーは、各課題をそれだけで(シングルタスキング)、および両方の課題を同時に(マルチタスキング)完了させることを、パフォーマンスの閾値レベルに達するまで続ける。
【0164】
Project:EVO評価で記録されるデータ
プレーヤーがゲームのマルチタスキングフェーズに没頭している間、使用者のパフォーマンス尺度は記録される。特に、ナビゲーションレベル、タッピングレベル、知覚反応課題における刺激への反応時間、およびタップすることによって使用者が干渉刺激に正しく応答しているかどうか、またはタッチスクリーンをタップしないことによって阻害刺激に正しく応答しているかどうか、が記録される。これらの特定のデータ点は、閾値パフォーマンスレベル、平均パフォーマンスレベル、パフォーマンスレベルの変動、平均反応時間、反応時間の変化、および他の複雑な、複合認知機能変数などの、認知尺度を表す他の尺度を計算するために使用される。
【0165】
Project:EVOによる訓練プログラム
ときには、Project:EVO評価ツールには、適応報酬(adaptive reward)のあるProject:EVO個人化訓練プログラム(Project: EVO personalized training program)が付随する(Gazzaley, A.による国際公開第WO2012/064999A1号、Martucci、Piper、Omernick、Gazzaley、Elenko、およびKaranamによる米国特許出願第62001141号)。個人化訓練プログラムは、両方の課題をうまく実施するように奨励および報酬を用いて評価のマルチタスキングフェーズを実施することを伴う。適応報酬プログラムの難易度および使用者が次のワールドに進むことを許すゲートは、Project:EVO評価結果によって設定される。評価のためのデータも、この訓練フェーズで生成され得る。
【0166】
パイロットスタディ:マルチタスキングシステムで加齢における知られている認知機能低下を検出する
われわれは、高齢者の集団(60歳から75歳、n=15)および若年成人の集団(20歳から30歳、n=19)に対してわれわれの評価ツールを使用して研究を実施した。この研究は、認知機能評価方法で訓練されたアカデミックパートナー(academic partner)とともに実施された。参加者は、他の知られている認知障害を有さず、うつ病の症状も有していなかった。高齢者は、ミニメンタルステート検査スコアが27以上である必要もあった。
【0167】
この研究の参加者は、ゲーム内の異なるEVOワールドにおいて評価を与えられた。次いで、参加者は、各ワールド内で少なくともさらに2回評価を行うことを含む、Project:EVO認知訓練プログラムに参加した。このプロセスは、少なくとも3つのワールドについて繰り返された。参加者は、ランダムな順序でワールドを与えられた。参加者は、28日間、毎日Project:EVO訓練または評価を多くても7ラウンド、プレーした。初期評価は、研究者の監督の下で研究室環境において実施された。残りのセッションはすべて、研究チームからのガイダンスまたは干渉なしで自宅でプレーされた。
【0168】
存在している結果は、Project:EVOゲーム内のワールドのうちのただ1つからのものである。
図4は、評価研究の結果を提示している。参加者がマルチタスキング環境にある間、刺激に対する平均反応時間(
図4.A)および反応時間の標準偏差(
図4.B)について、高齢者と若年成人との間に有意な差(p<0.05)があった。われわれの認知測定ツールは、高齢者に存在していることが知られている認知機能低下を示すことができた。
【0169】
パイロットスタディ:マルチタスキング尺度では他の認知テストおよびシングルパスキング尺度よりもよく個体群を差別化する
本開示で説明されている実施形態は、自閉症を含む神経発達障害に対する確定した危険性を有する個体群、染色体16p.11.2 BP4-BP5に欠失と重複がある個体群を他の認知テストよりもよく定型発達の年齢適合した兄弟姉妹から差別化することができたとすれば最新技術を超える認知尺度であることが証明される。潜在的に、これを、この特定の疾患を有する子供の家族に対して年に一度の会合でテストすることも可能であろう。
【0170】
このような研究では、16p.11キャリアの子供およびその兄弟姉妹は両方とも、基本的な運動および処理速度能力を評価する運動速度および記号数字テスト(Motor Speed and Symbol Digit tests)ならびに阻害の存在下で注意ベースの処理を評価するフランカーおよび視覚的探索テスト(Flanker and Visual Search test)とともにProject:EVO評価をプレーするであろう。
【0171】
この研究は、マルチタスキングの間にゲームレベル閾値および反応時間などのProject:EVOマルチタスキング尺度がキャリアの子供と定型発達の子供とを、マルチタスキングを行っていない従来の認知テストよりもよく差別化することができた場合に成功であると証明される。
【0172】
パイロットスタディ:マルチタスキング測定は一意的な疾病シグネチャを使用可能にし得る
認知機能を測定するための開示されている方法は、マルチタスキング認知尺度が感覚処理障害、自閉症スペクトラム障害、および注意欠陥過活動性障害(ADHD)などの、異なる認知障害のある個体群を差別化することができる場合に、最新技術を上回る有用性を示す。異なる臨床的研究プロトコルを通じて潜在的に収集され得る、これらの個体群からのデータが、マルチタスク尺度の明確に異なるパターンを通じて定型発達コホートから差別化されること示している場合、このツールは臨床的に有用であろう。測定におけるこれらのパターンは、一意的な疾病シグネチャであり、われわれの認知測定ツールが、一部は自閉症スペクトラム障害および感覚処理障害のある類似の認知表現型を有する、異なる認知障害のある個体群を差別化することができることを示している。
【0173】
パイロットスタディ:時間が経過したときのマルチタスキングパフォーマンス尺度の安定性
本開示において説明されているツールは、マルチタスキング認知尺度が、時間が経過しても、また測定ツールを複数回使用しても信頼性があり、安定している場合に臨床的で有用であろう。EVO評価ツールは、様々なスケジュールに基づき使用者によってプレーされ得る。そのようなスケジュールは、毎日1回ツールを使用すること、その日1日に分散して複数回ツールを使用すること、毎週2、3回ツールを使用すること、および毎週複数回ツールを使用することを含む。特定の使用者の範囲内で、または使用者の集団の範囲内で、安定性は類似のスケジュールに基づき、クラス内相関係数(ICC)を計算することによって評価することができ、0.70を超えるICCスコアはよい信頼性を示す。ICCは、定型発達個体群および知られている病気または認知障害を持つ個体群の両方について計算できる。
【0174】
パイロットスタディ:ファラコロジー剤(Pharacologic Agent)またはサーカディアンリズムに対するマルチタスキング認知測定の感度
本開示で説明されているツールは、ツールを使用している人が認知促進剤(メチルフェニデートなど)または認知能力に有害な薬剤(トリアゾラムなど)を摂取しているときに測定が予想される変動の範囲を外れて変化する場合に敏感な認知測定と考えられる。これらの薬剤に対する感度は、参加者にプラシーボ、メチルフェニデート、およびトリアゾラムをランダムな知られていない順序で摂取させることによってテストすることが可能である。マルチタスキングテストでのパフォーマンスが薬物摂取前から薬物摂取後で変化した場合、ツールは、認知機能の変化に敏感である。
【0175】
それに加えて、認知薬剤を使用しない場合、サーカディアンリズムおよび目覚めている時間により、認知機能の知られている微妙な向上および低下がある。本開示で説明されているマルチタスキング認知尺度が、そのような状態を統計的に検出することができることによって定義されているように、そのようなサーカディアンリズムまたは目覚めている長い期間に敏感である場合、これは敏感な認知測定のマーカーであろう。
【0176】
認知機能評価としての市販のビデオゲームのプレー中のマルチタスキングパフォーマンスの測定
説明されている認知測定方法は、使用者がゲーム機で市販のビデオゲームにマルチタスキングで取り組んでいる間に使用者入力の測定によって具現化される。ビデオゲーム中に、使用者は、ビデオゲーム内に作成された「ワールド」を探索して、敵兵士を探す。使用者が敵兵士を識別したときに、使用者はその兵士を射撃しようとする。時々、使用者は、ワールド内をあちこち移動することと、ターゲット(敵兵士)を射撃することの両方に取り組むことができる。使用者がこれらの課題の両方に取り組んだときに、使用者はマルチタスキングを行っている。使用者入力からのデータは、使用者がゲームプレーのセッションにマルチタスキングで取り組んだ瞬間に抽出される。使用者入力データはコンピュータデバイスによって分析され、ターゲット設定の正確さ、難易度増大の下でのターゲット設定の正確さ(移動するターゲット)、使用者が移動しているペース、使用者がビデオゲームワールドのナビゲーション中に誤りを犯す(たとえば、障害物に突入する)回数、ワールドをナビゲートしている間の移動のパターン(たとえば、アバターがバックトラックする必要がある回数)、および他のパフォーマンス尺度を決定する。標準的な統計的要約方法も、認知尺度を表すように計算される。使用者のパフォーマンスに関するデータが、使用者の現在の認知機能評価の指示としてコンピュータデバイスによって出力される。パフォーマンスベースラインが確立された後、ビデオゲームプレーのこの取り組み方の受動的監視は、健康な個人に対する睡眠遮断のレベルを評価するか、またはADHDを患っている若年成人に対する刺激剤療法などの医学的インターベンションの後の認知機能の変化を監視するために使用され得る。
【0177】
認知機能評価としての書面による通信におけるマルチタスキングパフォーマンスの測定
開示されている認知機能評価ツールは、使用者が書面による通信およびインスタントメッセージングに取り組んでいる間、ラップトップまたはデスクトップコンピュータ上のキーボード使用者入力の測定によって具現化され得る。娯楽または仕事に関係する目的のためにコンピュータを使用しているときに、使用者は、同時にインスタントメッセージに応答しながら手紙、報告書、または電子メールを書く作業に取り組むことが多い。能動的なタイピングの30秒以内の時間として決定され、インスタントメッセージングに能動的に応答して、使用者がインスタントメッセージ通信ウィンドウに取り組み、キーボードで応答をタイプするときの時間として決定される、ワード文書または電子メールで使用者が能動的に書いている事例では、使用者はマルチタスキングを行っていると決定される。マルチタスキングの期間中、コンピュータデバイスへの使用者入力は、抽出される。このデータは、タイピング速度、タイピングの正確さ(スペルを間違った単語の数、使用者がテキストを削除しなければならない回数、またはこれら2つの複合)、処理時間(能動的なインスタントメッセージング、メール、または文書ウィンドウがタイピングが開始する前に起動される時間またはタイピングが行われていない間に能動的なインスタントメッセージング、電子メール、または文書ウィンドウが起動される時間のパーセント)、新規インスタントメッセージが受信されているというアラートまでの反応時間、および他のパフォーマンス尺度を評価するために使用される。これらのデータは、また、認知機能の複合尺度を作成するためにも使用される。使用者のパフォーマンスに関するデータは、使用者の現在の認知機能評価の指示としてコンピュータデバイスによって出力される。パフォーマンスベースラインが確立された後、認知機能評価ツールは、従業員のための理想的な職場を確立するために雇用主によって使用され、認知訓練または注意または感覚障害のためのさらなる認知テストを必要とし得る学生を識別するために受動的スクリーンとして学校で使用される。
【0178】
本発明の開示されている方法の態様は、本発明の実施形態による方法、装置(システム)、およびコンピュータプログラム製品のフローチャート図および/またはブロック図を参照しつつ以下で説明される。フローチャート図および/またはブロック図の各ブロック、ならびにフローチャート図および/またはブロック図中のブロックの組合せは、コンピュータプログラム命令によって実施され得ることは理解されるであろう。これらのコンピュータプログラム命令は、汎用コンピュータ、特殊目的コンピュータ、または他のプログラム可能データ処理装置のプロセッサに提供されて機械を生成して、その命令が、そのコンピュータまたは他のプログラム可能データ処理装置のプロセッサを介して実行されて、フローチャートおよび/またはブロック図の1つまたは複数のブロックに指定される機能/作用を実施するための手段を生成するようにすることができる。
【0179】
これらのコンピュータプログラム命令は、コンピュータ、他のプログラム可能データ処理装置、または他のデバイスを特定の様式で機能させることができるコンピュータ可読媒体にも記憶され得、コンピュータ可読媒体に記憶されたそれらの命令が、フローチャートおよび/またはブロック図の1つまたは複数のブロックに指定される機能/作用を実施する命令を含む製品を生成するようにすることができる。
【0180】
コンピュータプログラム命令は、コンピュータ、他のプログラム可能データ処理装置、または他のデバイスにもロードされてよく、それにより、コンピュータまたは他のプログラム可能装置上で実行されるそれらの命令が、フローチャートおよび/またはブロック図の1つまたは複数のブロックに指定される機能/作用を実施するためのプロセスを提供するように、コンピュータ、他のプログラム可能装置、または他のデバイス上で一連の動作ステップが実行されてコンピュータ実装プロセスを生成する。
【0181】
図5は、例示的なネットワーク500およびたとえばネットワーク500内に示されているノードのうちの1つとして本明細書で説明されている1つまたは複数の実施形態とともに使用され得るコンピューティングデバイス(またはそれらのコンポーネント)の概略ブロック図である。一実施形態において、認知能力を評価するためのコンピュータ処理システムは、単一のモバイルデバイス501であってよい。たとえば、モバイルデバイス501は、課題を個人の使用者に提示し、個人から応答を受け取り、課題が個人によって実施される(使用者はマルチタスキングを行っている)と決定し、応答を使用してパフォーマンス尺度を決定し、パフォーマンス尺度を使用して認知尺度を計算し、認知能力評価を出力するものとしてよい。別の実施形態において、認知状態を評価するためのコンピュータ処理システムは、いくつかの処理ユニットを備える分散型コンピューティングシステムであってよい。たとえば、モバイルデバイス
501は、課題を個人に提示し、個人から応答を受け取り、通信ネットワーク500を通じて応答をサーバ506に送信してその後の処理を行うものとしてよい。サーバ506は、応答を受け取り、課題が個人によって実施されると決定し、応答を使用してパフォーマンス尺度を決定し、パフォーマンス尺度を使用して認知尺度を計算し、認知能力評価を表示のためモバイルデバイス
501に出力するものとしてよい。別の実施形態において、パフォーマンス尺度は、サーバ506ではなくモバイルデバイス
501によって決定され得る。分散型処理コンポーネント間に作業分割する(2つよりも多くてもよい)他の方法は、当業者の予見の範囲内にある。
【0182】
図6は、例示的なコンピュータ処理システムまたはコンピューティングデバイス600のブロック図である。図示されているシステムは、好適なシステムの一例にすぎず、本明細書で説明されている本発明の実施形態の用途または機能性の範囲に関する制限を示唆することを意図していない。一実施形態において、システム600は、処理ユニット616(たとえば、CPU、GPUなど)を備える。処理ユニット616は、バス618を通じてメモリ628へのアクセスおよび書き込みを行うものとしてよい。メモリ628は、たとえば、ランダムアクセスメモリ(RAM)630、キャッシュ632、および記憶装置システム634(たとえば、ハードドライブ、フラッシュドライブ、DVDドライブなど)を含み得る。メモリ628内で、ファイルおよびデータ615を記憶し、アクセスできるようにファイル構造640が実装され得る。処理ユニット616は、また、システム600がネットワーク内の他のデバイスと通信できるようにするネットワークアダプタ620と通信し得る。ネットワークアダプタ620の例は、たとえば、Ethernetアダプタ、WiFiワイヤレスアダプタ、およびセルラーネットワークアダプタを含む。さらに、処理ユニット616は、システム600がデータを外部デバイス(たとえば、マウス、キーボード、CDドライブなど)614およびディスプレイ(たとえば、モニタ、タッチスクリーンなど)624に出力し、そこからデータを受け取ることを可能にし得る、入出力インターフェース(I/Oインターフェース)622を通じてデータを出力し、データを受け取ることができる。
【0183】
上で説明されているいくつかの例示的な実施形態により、本明細書で説明されている様々な非制限的な実施形態が、別々に使用されるか、組み合わされるか、または特定の用途について選択的に組み合わされ得ることを諒解されたい。さらに、上記の非制限的な実施形態の様々な特徴のうちのいくつかは、他の説明されている特徴の対応する使用がなくても使用され得る。前述の説明は、したがって、本発明の原理、教示、および例示的な実施形態を単に例示しているだけであり、その制限となっていないと考えられるべきである。
【0184】
上で説明されている配置構成は、例示されている実施形態の原理の適用のみを示していることは理解されるべきである。多数の修正および代替的配置構成は、例示されている実施形態の範囲から逸脱することなく当業者によって考案されるものとしてよく、添付の請求項は、そのような修正および配置構成を対象とすることを意図されている。
【符号の説明】
【0185】
110 課題1のパフォーマンス尺度
111 課題2のパフォーマンス尺度
101 使用者入力機能
102、103 課題1、2
104 使用者
105、106 検出、測定
107 認知機能評価
109 非パフォーマンス情報
112、113 複合尺度
200、201 コンピュータ処理システム
202 コンピュータ
203 モニタ
204 キーボード
205 スピーカー
206 ジョイスティック
207 マウス
208 ヘッドフォン
209 タッチスクリーンディスプレイ
300、301、302、303 スクリーンショット
500 ネットワーク
501 モバイルデバイス
506 サーバ
600 コンピュータ処理システム、コンピューティングデバイス
614 外部デバイス
615 ファイルおよびデータ
616 処理ユニット
618 バス
620 ネットワークアダプタ
622 入出力インターフェース(I/Oインターフェース)
624 ディスプレイ
628 メモリ
630 ランダムアクセスメモリ(RAM)
632 キャッシュ
634 記憶装置システム
640 ファイル構造
【手続補正3】
【補正対象書類名】図面
【補正方法】変更
【補正の内容】
【外国語明細書】