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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022009753
(43)【公開日】2022-01-14
(54)【発明の名称】椅子
(51)【国際特許分類】
   A47C 3/029 20060101AFI20220106BHJP
   A47C 9/00 20060101ALI20220106BHJP
【FI】
A47C3/029
A47C9/00 Z
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021177803
(22)【出願日】2021-10-29
(62)【分割の表示】P 2017134512の分割
【原出願日】2017-07-10
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 平成29年5月17日~19日の3日間開催された展示会「第8回教育ITソリューションEXPO」において出品。
(71)【出願人】
【識別番号】000139780
【氏名又は名称】株式会社イトーキ
(74)【代理人】
【識別番号】100099966
【弁理士】
【氏名又は名称】西 博幸
(74)【代理人】
【識別番号】100134751
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 隆一
(72)【発明者】
【氏名】池越 勇佑
(72)【発明者】
【氏名】田中 啓介
(72)【発明者】
【氏名】山本 洋平
【テーマコード(参考)】
3B091
3B095
【Fターム(参考)】
3B091AA07
3B091AB05
3B091AD02
3B095AB07
3B095AC02
3B095CA01
3B095CA03
3B095CA06
(57)【要約】
【課題】着座者の動きに追従して左右にスイングする椅子において、スイング機能を有することを人に知らしめて着座後の使用者の戸惑いを無くすと共に、スイング角度を正確に規定して、安全かつメリハリの利いたスイング動を実現する。
【解決手段】椅子は座1と脚2とを備えており、脚2は、下部枠体6と支柱7とを備えている。下部枠体6のフロントメンバー6aとリアメンバー6cとを下向き凸に曲げることにより、椅子全体として左右にスイングすることが許容されている。フロントメンバー6aの左右端部に、球状等のストッパー12を目立つ状態で設けている。ストッパー12は床から浮いているため、初めて見る人も、椅子がスイング機能を有することを把握できる。スイング動がストッパー12によって規定されるため、惰性による動きをなくして安全であると共に、メリハリの利いた動きを実現できる。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
座とこれを支持する脚とを備えており、前記脚の下端面を、左右中間部に頂点が位置した正面視下向き凸状に形成することにより、前記座と脚とが一体になって左右にスイングできる構成であって、
前記脚の下端面の左右両側部に、床に当接するストッパーを下向きに突設している、
椅子。
【請求項2】
前記脚のうち床に載る下端部は、左右横長のフロントメンバーと、その左右両端から後ろ向きに延びる左右サイドメンバーとを有しており、前記ストッパーは、前記フロントメンバーとサイドメンバーとが連接したコーナー部かその近傍に、人目に触れるように露出した状態で配置されている、
請求項1に記載した椅子。
【請求項3】
前記ストッパーのうち少なくとも下面は丸みを帯びた曲面に形成されている、
請求項1又は2に記載した椅子。
【請求項4】
前記ストッパーは、前記脚に設けたボルト又はナットにねじ込みによって取付けられている、
請求項1~3のうちのいずれかに記載した椅子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、着座者が上半身を左右に動かす(揺する)ことに追従して左右にスイングできる椅子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
椅子は一般に床上に安定して載るようになっているが、脚の下端面(接地面)を正面視で下向き凸状に形成することにより、着座者の左右動に追従して左右にスイングする椅子があり、本願出願人は、その一バージョンとして、座面が着座者の身体(臀部や大腿部)の丸みに倣うように、座面を下向きに凹ませた構成を特許文献1に開示した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特願2017-97353
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、オフィスでのワーカーの健康管理の重要性が指摘されており、従って、運動具としての機能を有して気分転換や血行促進に貢献できるスイング式の椅子をオフィスで有効活用できると、ワーカーにとっても管理者にとっても有益であるが、特許文献1のように座面を凹ませると、使用者の身体の安定性に優れると共に視覚的にも座りやすいというイメージがあるため、オフィスでも違和感なく使用できて、使用範囲を広げることができるといえる。
【0005】
また、幼児用や老人用の椅子として前後に揺動する椅子は古くから存在するが、着座者がアクティブに左右スイングさせ得る椅子は斬新であり、意外性や一種の遊び心によって周囲の環境を柔らかくすることができる効果も有しており、この面でも、オフィスの環境や商談等の環境の向上に貢献できるといえる。
【0006】
このように、スイング式の椅子は優れた効果を備えているが、例えば、各種施設の窓口に設置している椅子のように不特定の人が使用する椅子として使用する場合、スイング機能を知らない人が初めて接すると、身体の動きによって椅子が傾くことで戸惑いを与えることが懸念される。椅子が傾いても、そのような機能の椅子であることはすぐに理解できるのであるが、使用前の状態でスイング機能を有することを視覚的に把握できると、ユーザーフレンドリーであるといえる。また、惰性による動きを規制してスイング量を規定できると安心である。
【0007】
本願発明はこのような現状を契機にして成されたものであり、より改良されたスイング式椅子を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明は、請求項1のとおり、座とこれを支持する脚とを備えており、前記脚の下端面を、左右中間部に頂点が位置した正面視下向き凸状に形成することにより、前記座と脚とが一体になって左右にスイングできる構成であって、前記脚の下端面の左右両側部に、床に当接するストッパーを下向きに突設している。
【0009】
本願発明は、様々に展開することができる。その好適な例として、請求項2では、請求項1において、前記脚のうち床に載る下端部は、左右横長のフロントメンバーと、その左
右両端から後ろ向きに延びる左右サイドメンバーとを有しており、前記ストッパーは、前記フロントメンバーとサイドメンバーとが連接したコーナー部かその近傍に、人目に触れるように露出した状態で配置されている。
【0010】
また、請求項3では、請求項1又は2において、前記ストッパーのうち少なくとも下面は丸みを帯びた曲面に形成されている。請求項4の発明は、請求項1~3のうちのいずれかにおいて、前記ストッパーは、前記脚に設けたボルト又はナットにねじ込みによって取付けられている。
【0011】
本願発明では、特許文献1のように、座の上面(座面)を、着座者の臀部及び大腿部がフィットするように(下方から包み込むように)凹ませるのが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
椅子がスイングしたとき、傾ききった状態のときに床に大きな力がモーメントとして作用する。このため、脚の端部が床に直接当たると、床が傷つきやすくなるおそれがあるが、本願発明のようにストッパーを設けると,ストッパーに緩衝機能を持たせることにより、床の傷つきを防止又は抑制可能となる。
【0013】
また、スイング動がストッパーで規制(規定)されるため、メリハリの利いたスイング動を実現できると共に、使用者が椅子に掛ける力が相違してもスイング量が一定に保持されて、安全である。つまり、下向きのストッパーを設けると、ストッパーが床に当たってから更にスイングさせようとすると、ストッパーを支点にして回動させねばならないが、これには非常に大きな運動エネルギが必要になるため、通常の使用状態では、身体を揺する運動エネルギの大きさが相違してもスイング量が正確に規定されるのであり、従って、惰性で過剰にスイングしてしまうようなことはない。
【0014】
なお、使用者の意思によって、非常に大きな加速をつけることにより、ストッパーが床に当接してからも更に椅子をスイングさせることは可能であり、この場合の最大スイング量は、人の運動エネルギの大きさに依存することになる。
【0015】
そして、請求項2のようにストッパーを人目に触れる状態で設けることにより、椅子がスイング機能を有することを使用者に視覚的に把握させることができるため、不特定多数の人が使用する椅子として使用しても、人が着座した後に椅子が傾いて戸惑うようなことを防止できる。
【0016】
すなわち、ストッパーは床から浮いているため、椅子が傾いてストッパーが床に接地することを人に即座に理解させるのであり、このため、人はスイング式の椅子であることを即座に把握して、着座してから戸惑うような事態を防止できるのである。この場合、ストッパーを赤や緑のように目立つ色に形成しておくと、視認性が高まって一層好適である。脚の色と異なる色で、特に暖色系の色を採用すると視認性は高くなるといえる。
【0017】
請求項3のように、ストッパーの少なくとも下面を曲面に形成すると、製造誤差等でストッパーの姿勢に多少の違いがあったり床に凹凸があったりしても、ストッパーが床に点接触状に当接して安定した当接機能を確保できる。すなわち、取付け誤差等を吸収して、安定した当接状態を確保できる。また、ストッパーを球状に形成すると、ストッパーは膨れた状態になっていて表面積が広がるため、椅子の手前からや横から見たときに視認性を一層向上させることができる。
【0018】
請求項4のようにねじ込みによって取り付ける方法を採用すると、椅子の組み立てに際して作業の手間を軽減できると共に、破損した場合の交換も容易である。また、ストッパ
ーを椅子の色とは異なる色にするとワンポイントマーク的な美的特徴が生じるが、ユーザーが好みに応じて異なる色のものと交換することも容易になる。更に、高さが相違する複数種類のストッパーを用意しておくと、スイング角度(正確には、最小スイング角度)を変更することも容易に実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施形態を示す図で、(A)は手前から見た斜視図、(B)は後ろから見た斜視図、(C)は分離斜視図、(D)は下方から見た斜視図である。
図2】(A)は正面図、(B)は底面図である。
図3】(A)は側面図、(B)は背面図、(C)は要部の分離斜視図である。
図4】(A)は部分正面図、(B)は部分側面図、(C)は図1(A)の矢印IIIC方向から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(1).第1実施形態の構造
次に、本願発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下では、方向を特定するため前後・左右の文言を使用するが、この前後・左右は、普通に着座した人の向きを基準にしている。正面視方向は、着座者と対向した方向である。
【0021】
図2から全体を理解できるが、本実施形態において、椅子は、座1とこれを支持する脚2とを備えている。座1は、木製又は樹脂製の座板3とその上面に張ったクッション材4と備えており、クッション材4は図示しない表皮材で覆われている。座1は、平面視略四角形で四隅に丸みをつけた形態になっている。
【0022】
そして、座1は(座板3及びクッション材4は)、正面視では上向き凹となるように下向きに緩く湾曲して(凹んで)、縦断側面視では、後端が上向きに緩く湾曲する形態になっている。すなわち、座1の上面(座板3及びクッション材4の上面)は、着座者の臀部及び大腿部との曲面にフィットする凹面になっている。また、座1は、全体的に前傾気味になっている(水平姿勢であってもよいし、後傾姿勢であってもよい。)。なお、座1の後端には、椅子を引っ張って移動する際に使用するベルト製の引手5を設けている。
【0023】
脚2は金属製のパイプ又は棒材を使用して作られており、床に載る下部枠体6と、下部枠体6における前端部の左右両端から立ち上がった左右の支柱7と、支柱7の上端に設けた上部枠体8とを備えており、上部枠体8にブラケット9を固定し、ブラケット9に座板3を固定している。支柱7の下端は平面視で座1の前端部の箇所に位置しているが、支柱7の上端は、座1の前端よりも少し後ろ(座1の前後中間位置よりも手前)に位置している。従って、支柱7は緩い角度で後傾している。
【0024】
下部枠体6は、左右横長のフロントメンバー6aと前後長手の左右サイドメンバー6b、及び、左右のサイドメンバー6bの後端に繋がったリアメンバー6cとを有しており、サイドメンバー6bとリアメンバー6cとが連接した後ろコーナー部6dは平面視で湾曲している。従って、サイドメンバー6bとリアメンバー6cとは平面視でU型になっている。フロントメンバー6aとサイドメンバー6bとの接続部には、補強部材を固定している。
【0025】
サイドメンバー6bの前端はフロントメンバー6aに溶接されており、フロントメンバー6aの左右両端に支柱7を曲げ形成している。上部枠体8は、支柱7の上端を後ろ向きに曲げてから更に内側に曲げることによって形成されている。従って、上部枠体8も、全体として、平面視前向き開口U形になっている。フロントメンバー6aは前接地部になっている。
【0026】
また、図2に明示するように、下部枠体6を構成するフロントメンバー6aの左右両端部は、平面視で座1の左右外側にはみ出している。このため、スイングに際しても高い安定性を確保できるし、複数の椅子を上下にスタッキングすることができる。すなわち、上段の椅子の下部枠体6を下段の椅子の左右支柱7の間から後ろに嵌め入れて、椅子を上下に積み重ねることができる。従って、不使用時の保管に有利である。
【0027】
ブラケット9は、平面視で後ろ向きに開口したU形の枠体9aと、枠体9aから内向き突設したリップ9bとから成っており、枠体9aは上部枠体8に溶接によって固着されて、リップ9bが、これに下方から挿通したビスによって座板3に固定されている。本実施形態のようにブラケット9を設けると、上部枠体8を座1の外側に配置しつつ、座1をしっかりと固定できる。また、ブラケット9は支柱7の上端よりも手前に張り出しているため、支柱7を後傾させた状態でも、座1を脚2に強固かつ安定的に固定できる。
【0028】
下部枠体6のフロントメンバー6aは正面視で下向き凸のく字形に曲がっており、左右中間部が頂点になっている。この頂点部に、樹脂製の前接地体10が下方から固定されている。他方、下部枠体6のうち後ろ接地部となるリアメンバー6cは、平面視で前向き凹状に緩く湾曲しており、サイドメンバー6bと滑らかに連続している。リアメンバー6cには、樹脂製の後ろ接地体11が下方から固定されており、後ろ接地体11は後ろコーナー部6dまで及んでいる。
【0029】
図3(B)及び図4(A)に示すように、リアメンバー6c(或いは後ろ接地体11)は、背面視(及び正面視)で下向き凸状に緩く湾曲しているが、リアメンバー6cの曲がりの程度はフロントメンバー6aの曲がり角度よりも緩くなっている。つまり、リアメンバー6cの左右端部の高低差は、フロントメンバー6aの左右両端の高低差よりも小さくなっている。これらフロントメンバー6aとリアメンバー6cとの下面の形態の違いにより、椅子を全体として左右にスイングさせる(傾動させる)ことができる。
【0030】
図4(B)に示すように、後ろコーナー部6dは、側面視では上向き凸状に緩く湾曲して見える(反って見える)が、図4(C)に示すように、対角方向から見ると、下向き凸状に緩く湾曲している。このような見え方の違いは、後ろコーナー部6dが平面視で湾曲していることに起因している。そして、後ろコーナー部6dは対角方向から見て下向き凸状に緩く湾曲しているため、椅子のスイングに際しては、リアメンバー6c(後ろ接地体11)は、床に滑らかに接地していく(換言すると、床に対する後ろ接地体11の接地点が滑らかに移動しながらスイングしていく。)。
【0031】
フロントメンバー6aの左右端部には、スイングしきった状態で床に当接するストッパー12を下向きに突設している。従って、ストッパー12と床との高低差が、スイングの最大高低差になっている。ストッパー12は樹脂製で球状に形成されており、フロントメンバー6aの左右端部に設けたボルト(ビス)13にねじ込みによって取付けている。ボルト13は、いわゆるホーローセットを使用している。ストッパー12には、金属製のナットをインサート成形によって埋設している。また、ストッパー12は、フロントメンバー6aとサイドメンバー6bとの連接部であるフロントコーナー部の近傍に位置しているが、サイドメンバー6bの前端部に取り付けることも可能である。
【0032】
フロントメンバー6aにブラインドナット等を設けて、ストッパー12にボルトを設けることも可能である。この場合は、ストッパー12には、ボルトをインサート成形等で一体化したらよい。ストッパー12を金属製として、これをゴム等の緩衝材で覆うといったことも可能であり、この場合は、雌ねじ又は雄ねじをストッパーに一体化したらよい。
【0033】
なお、リアメンバー6cは、正面視(及び背面視)で台形状に形成したり、く字形に曲げたりすることも可能ある。或いは、全体を水平状に形成することも可能である。
【0034】
(2).まとめ
以上のとおり、着座者が身体を左右に揺すると椅子が左右にスイングするため、椅子を振動具として使用して、リラックスしたり緊張をほぐして血行を促進させたりすることができる。両足を下部枠体6のフロントメンバー6aに載せると、スイングをダイナミックに行うことができるが、支柱7は後傾しているため、着座者が下部枠体6のフロントメンバー6aに足を載せても足が支柱7に当たることはなくて、使い勝手がよい。
【0035】
本実施形態では、フロントメンバー6aの曲がりの程度がリアメンバー6cの曲がりの程度よりも急激であるため、スイングに際しては、フロントメンバー6aの変位量がリアメンバー6cの変位量よりも大きくなる。このため、座1は(或いは着座者は)、左右外側に移動(傾動)しつつ前方にも移動する動きをする。このため、人は、いつでも足を床に突っ張れるように身構えたような状態でスイングすることができる。従って、安定性を確保しつつ、ダイナミックにスイングできる。
【0036】
また、フロントメンバー6aが回動しきるとストッパー12が床に当たるため、スイング角度を正確に規定して、惰性で回動することを防止できる。すなわち、メリハリの利いたスイングを実現できる。
【0037】
座1の上面は下方に凹んでいて着座者の身体がフィットするため、僅かの重心の移動によって座1が傾くことはない。従って、作業や執務を行うにおいて、着座者は、無意識に足に力を掛けることなく、力を抜いた自然な状態で正しい姿勢を採ることができて、凝りや疲れを防止できる。
【0038】
他方、例えば気分転換などのためにアクティブにスイングする場合も、座1が身体にフィットしているため、身体がダイナミックに動いても座1から振り落とされるような傾向を呈することはなくて、スイング運動を安心して行うことができる。更に、見た目においてもフィット性を把握できて違和感なく使用できるため、作業用や学習用などに幅広く使用できる。
【0039】
そして、ストッパー12はフロントメンバー6aの左右端部にあって人目につくが、ストッパー12が床から浮いていることから、この椅子を初めて見た人であっても、スイング式であることを即座に理解できる。従って、腰掛けてから身体を動かすことによって椅子が揺れても戸惑うことはなくて、逆にスイングを楽しむことができる。
【0040】
本実施形態のように、リアメンバー6cを平面視略U形に形成すると、床との接地長さを長くできるため、スイングの動きをスムース化できる。また、既述のとおり、リアメンバー6cや後ろコーナー部6dは下向き凸状に緩く湾曲していて、スイングに際して接地点が滑らかに移動していくため、滑らかなスイング動を実現できる。
【0041】
さて、既に述べたように、正面視において、リアメンバー6cの曲がりの程度はフロントメンバー6aの曲がりの程度よりも緩く、従って、図4(A)(C)に示すように、リアメンバー6cと床との最大高低差H1は、ストッパー12と床との高低差H2よりも小さい。本実施形態では、H2はH1の1.5倍前後になっている。このように高低差があるため、後ろ接地体11の終端とストッパー12とを結ぶ線14は、床面に対して少し傾斜している。
【0042】
そして、ストッパー12はスイングの最終段階で床に当たるが、ストッパー12が床に
当るまでの間は、椅子はフロントメンバー6aの中間部と後ろ接地体11との二点支持の状態になっており、通常は、フロントメンバー6aの中間部と、後ろ接地体11の端部と、ストッパー12とが床に当たって三点支持状態になるとスイングは停止する。この場合、ストッパー12が点当たり状態で床に当接することにより、スイング角度が規定される。
【0043】
また、後ろ接地体11の最大高さH1(正確には、後ろ接地体11の最終接地位置の最大高さでH1より小さい)とストッパー12の高さH2とが相違しているため、二点支持から三点支持に至る段階では、椅子は、左右方向にはあまり傾動せずに手前に傾く傾向を呈する。従って、後ろ接地体11が床に接地した状態で、ストッパー12の接地に滑らかに移行する。
【0044】
この場合、スイングに際して後ろ接地体11の接地位置は後ろコーナー部6dに向けて移動していくが、椅子の前端の回動支点は前接地体10の箇所で一定しているので、椅子の回動中心線は、図2(B)において符号15で示す完全な前後長手の姿勢から、符号16
で示す平面視傾斜姿勢に移行していく。従って、椅子(及び身体)は、左右方向に回動しつつ手前側にも回動しており、従って、ストッパー12が床に当接する状態にスムースに移行していく。また、後ろ接地体11は平面視で円弧条に湾曲しているため、左右動しつつ前傾動する動きが非常に滑らかになっている。
【0045】
これらにより、ストッパー12が床に当接したときにガタンといった感じで止まることはなくて、滑らかでしかも安全なスイングを実現できる。また、H1とH2との高低差に
より、二点支持状態から三点支持状態に移行するにおいて、前傾傾向が強くなり、これにより、スイングの勢いが殺されて安全性が高くなる。なお、後ろ接地体11の最終接地位置高さとストッパー12の高さとは同じであってもよいし、いずれにおいても、ストッパー12の位置はどこでも良い。
【0046】
通常の使用状態では、ストッパー12が接地するとスイングは停止するが、使用者がよりアクティブな動きを求めて身体を非常に大きく揺すると、ストッパーで規制される角度以上にオーバースイングさせることが可能である。このオーバースイング状態では、椅子及び身体は、後ろ接地体11の端部とストッパー12とを結ぶ線を中心にして、2点支持の状態で回動するが、後ろ接地体11とストッパー12とを結ぶ線は前後長手になっているので、ほぼ左右方向に回動することになる。そして、着座者の自重による戻り力と、スイングによる運動エネルギとが釣り合った時点でオーバースイングは停止し、戻り回動することになる。
【0047】
本願発明は、他にも様々に具体化できる。例えば、脚の下端部は実施形態のようなフレーム構造でなくてもよいのであり、板状の形態なども採用可能である。また、支柱を脚の中間部に設けることなども可能である。背もたれ付きの椅子にも適用できる。実施形態のストッパーは樹脂の単一構造品であるが、外周部をゴム等の軟質材で構成することも可能である。また、左右のストッパーをそれぞれ前後に並んだ複数個ずつで構成して、複数個のストッパーを同時に接地させるといったことも可能である。或いは、複数のストッパーを順番に接地させることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本願発明は、実際に椅子に具体化できる。従って、産業上利用できる。
【符号の説明】
【0049】
1 座
2 脚
3 座板
6 脚を構成する下部枠体
6a 下部枠体のフロントメンバー
6b 下部枠体のサイドメンバー
6c 下部枠体のリアメンバー
6d 後ろコーナー部
5 脚を構成する支柱
6 脚を構成する上部枠体
7 ブラケット
10 前接地体
11 後ろ接地体
12 ストッパー
13 ボルト
図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2021-11-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
座とこれを支持する脚とを備えており、
前記脚は、接地部とその両端から立ち上がった支柱とを有し、
前記接地部を、一端と他端との間の中間部に頂点が位置した下向き凸状に形成することにより、前記座と脚とが一体になってスイングできる構成であって、
前記脚を構成する接地部と支柱とは、1本の丸パイプを曲げて一体に形成されており、前記接地部の両端に、床に当接するストッパーを人目に触れる状態で下向きに突設している、
椅子。
【請求項2】
前記接地部の両端から立ち上がった一対の支柱は、上に行くほど互いの間隔が狭まるように傾斜しており、前記一対の支柱の下端間の間隔は前記座のスイング方向の幅よりも大きくなっている、
請求項1に記載した椅子。
【請求項3】
前記脚は、前記支柱の上端に一体に連続した上部枠体を有している一方、
前記座は、正面視で下向きに凹んだ座板とその上に配置されたクッション材とを有しており、前記座板が前記脚の上部枠体で支持されている、
請求項1又は2に記載した椅子。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、着座者が上半身を動かす(揺する)ことに追従してスイングできる椅子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
椅子は一般に床上に安定して載るようになっているが、脚の下端面(接地面)を正面視で下向き凸状に形成することにより、着座者の左右動に追従して左右にスイングする椅子があり、本願出願人は、その一バージョンとして、座面が着座者の身体(臀部や大腿部)の丸みに倣うように、座面を下向きに凹ませた構成を特許文献1に開示した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特願2017-97353
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、オフィスでのワーカーの健康管理の重要性が指摘されており、従って、運動具としての機能を有して気分転換や血行促進に貢献できるスイング式の椅子をオフィスで有効活用できると、ワーカーにとっても管理者にとっても有益であるが、特許文献1のように座面を凹ませると、使用者の身体の安定性に優れると共に視覚的にも座りやすいというイメージがあるため、オフィスでも違和感なく使用できて、使用範囲を広げることができるといえる。
【0005】
また、幼児用や老人用の椅子として前後に揺動する椅子は古くから存在するが、着座者がアクティブに左右スイングさせ得る椅子は斬新であり、意外性や一種の遊び心によって周囲の環境を柔らかくすることができる効果も有しており、この面でも、オフィスの環境や商談等の環境の向上に貢献できるといえる。
【0006】
このように、スイング式の椅子は優れた効果を備えているが、例えば、各種施設の窓口に設置している椅子のように不特定の人が使用する椅子として使用する場合、スイング機能を知らない人が初めて接すると、身体の動きによって椅子が傾くことで戸惑いを与えることが懸念される。椅子が傾いても、そのような機能の椅子であることはすぐに理解できるのであるが、使用前の状態でスイング機能を有することを視覚的に把握できると、ユーザーフレンドリーであるといえる。また、惰性による動きを規制してスイング量を規定できると安心である。
【0007】
本願発明はこのような現状を契機にして成されたものであり、より改良されたスイング式椅子を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明は、請求項1のとおり、
座とこれを支持する脚とを備えており、
前記脚は、接地部とその両端から立ち上がった支柱とを有し、
前記接地部を、一端と他端との間の中間部に頂点が位置した下向き凸状に形成することにより、前記座と脚とが一体になってスイングできる構成であって、
前記脚を構成する接地部と支柱とは、1本の丸パイプを曲げて一体に形成されており、前記接地部の両端に、床に当接するストッパーを人目に触れる状態で下向きに突設している
という構成になっている。
【0009】
本願発明は、様々に展開することができる。その好適な例として、請求項2では、請求項1において、
「前記接地部の両端から立ち上がった一対の支柱は、上に行くほど互いの間隔が狭まるように傾斜しており、前記一対の支柱の下端間の間隔は前記座のスイング方向の幅よりも大きくなっている」
という構成になっている。
【0010】
また、請求項3では、請求項1又は2において、
「前記脚は、前記支柱の上端に一体に連続した上部枠体を有している一方、
前記座は、正面視で下向きに凹んだ座板とその上に配置されたクッション材とを有しており、前記座板が前記脚の上部枠体で支持されている」
という構成になっている。
【0011】
本願発明では、特許文献1のように、座の上面(座面)を、着座者の臀部及び大腿部がフィットするように(下方から包み込むように)凹ませるのが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
椅子がスイングしたとき、傾ききった状態のときに床に大きな力がモーメントとして作用する。このため、脚の端部が床に直接当たると、床が傷つきやすくなるおそれがあるが、本願発明のようにストッパーを設けると,ストッパーに緩衝機能を持たせることにより、床の傷つきを防止又は抑制可能となる。
【0013】
また、スイング動がストッパーで規制(規定)されるため、メリハリの利いたスイング動を実現できると共に、使用者が椅子に掛ける力が相違してもスイング量が一定に保持されて、安全である。つまり、下向きのストッパーを設けると、ストッパーが床に当たってから更にスイングさせようとすると、ストッパーを支点にして回動させねばならないが、これには非常に大きな運動エネルギが必要になるため、通常の使用状態では、身体を揺する運動エネルギの大きさが相違してもスイング量が正確に規定されるのであり、従って、惰性で過剰にスイングしてしまうようなことはない。
【0014】
なお、使用者の意思によって、非常に大きな加速をつけることにより、ストッパーが床に当接してからも更に椅子をスイングさせることは可能であり、この場合の最大スイング量は、人の運動エネルギの大きさに依存することになる。
【0015】
そして、本願発明では、ストッパーを人目に触れる状態で設けられていて、椅子がスイング機能を有することを使用者に視覚的に把握させることができるため、不特定多数の人が使用する椅子として使用しても、人が着座した後に椅子が傾いて戸惑うようなことを防止できる。
【0016】
すなわち、ストッパーは床から浮いているため、椅子が傾いてストッパーが床に接地することを人に即座に理解させるのであり、このため、人はスイング式の椅子であることを即座に把握して、着座してから戸惑うような事態を防止できるのである。この場合、ストッパーを赤や緑のように目立つ色に形成しておくと、視認性が高まって一層好適である。脚の色と異なる色で、特に暖色系の色を採用すると視認性は高くなるといえる。
請求項2の構成では、スイングに際して高い安定性を確保できる。
【0017】
実施形態のように、ストッパーの少なくとも下面を曲面に形成すると、製造誤差等でストッパーの姿勢に多少の違いがあったり床に凹凸があったりしても、ストッパーが床に点接触状に当接して安定した当接機能を確保できる。すなわち、取付け誤差等を吸収して、安定した当接状態を確保できる。また、ストッパーを球状に形成すると、ストッパーは膨れた状態になっていて表面積が広がるため、椅子の手前からや横から見たときに視認性を一層向上させることができる。
【0018】
実施形態のようにストッパーをねじ込みによって取り付ける方法を採用すると、椅子の組み立てに際して作業の手間を軽減できると共に、破損した場合の交換も容易である。また、ストッパーを椅子の色とは異なる色にするとワンポイントマーク的な美的特徴が生じるが、ユーザーが好みに応じて異なる色のものと交換することも容易になる。更に、高さが相違する複数種類のストッパーを用意しておくと、スイング角度(正確には、最小スイング角度)を変更することも容易に実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施形態を示す図で、(A)は手前から見た斜視図、(B)は後ろから見た斜視図、(C)は分離斜視図、(D)は下方から見た斜視図である。
図2】(A)は正面図、(B)は底面図である。
図3】(A)は側面図、(B)は背面図、(C)は要部の分離斜視図である。
図4】(A)は部分正面図、(B)は部分側面図、(C)は図1(A)の矢印IIIC方向から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(1).第1実施形態の構造
次に、本願発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下では、方向を特定するため前後・左右の文言を使用するが、この前後・左右は、普通に着座した人の向きを基準にしている。正面視方向は、着座者と対向した方向である。
【0021】
図2から全体を理解できるが、本実施形態において、椅子は、座1とこれを支持する脚2とを備えている。座1は、木製又は樹脂製の座板3とその上面に張ったクッション材4と備えており、クッション材4は図示しない表皮材で覆われている。座1は、平面視略四角形で四隅に丸みをつけた形態になっている。
【0022】
そして、座1は(座板3及びクッション材4は)、正面視では下向きに凹むように緩く湾曲して、縦断側面視では、後端が上向きに緩く湾曲する形態になっている。すなわち、座1の上面(座板3及びクッション材4の上面)は、着座者の臀部及び大腿部の曲面にフィットする凹面になっている。また、座1は、全体的に前傾気味になっている(水平姿勢であってもよいし、後傾姿勢であってもよい。)。なお、座1の後端には、椅子を引っ張って移動する際に使用するベルト製の引手5を設けている。
【0023】
脚2は金属製の丸パイプを使用して作られており、床に載る下部枠体6と、下部枠体6における前端部の左右両端から立ち上がった左右の支柱7と、支柱7の上端に設けた上部枠体8とを備えており、上部枠体8にブラケット9を固定し、ブラケット9に座板3を固定している。支柱7の下端は平面視で座1の前端部の箇所に位置しているが、支柱7の上端は、座1の前端よりも少し後ろ(座1の前後中間位置よりも手前)に位置している。従って、支柱7は緩い角度で後傾している。
【0024】
下部枠体6は、左右横長のフロントメンバー6aと前後長手の左右サイドメンバー6b、及び、左右のサイドメンバー6bの後端に繋がったリアメンバー6cとを有しており、サイドメンバー6bとリアメンバー6cとが連接した後ろコーナー部6dは平面視で湾曲している。従って、サイドメンバー6bとリアメンバー6cとは平面視でU型になっている。フロントメンバー6aとサイドメンバー6bとの接続部には、補強部材を固定している。
【0025】
サイドメンバー6bの前端はフロントメンバー6aに溶接されており、フロントメンバー6aの左右両端に支柱7を曲げ形成している。上部枠体8は、支柱7の上端を後ろ向きに曲げてから更に内側に曲げることによって形成されている。従って、上部枠体8も、全体として、平面視前向き開口U形になっている。フロントメンバー6aは前接地部になっている。
【0026】
また、図2に明示するように、下部枠体6の前接地部を構成するフロントメンバー6aの左右両端部は、平面視で座1の左右外側にはみ出している。従って、左右の支柱7の下端間の間隔は座1のスイング方向の幅である左右幅よりも大きくなっている。このため、スイングに際しても高い安定性を確保できるし、複数の椅子を上下にスタッキングすることができる。すなわち、上段の椅子の下部枠体6を下段の椅子の左右支柱7の間から後ろに嵌め入れて、椅子を上下に積み重ねることができる。従って、不使用時の保管に有利である。
【0027】
ブラケット9は、平面視で後ろ向きに開口したU形の枠体9aと、枠体9aから内向き突設したリップ9bとから成っており、枠体9aは上部枠体8に溶接によって固着されて、リップ9bが、これに下方から挿通したビスによって座板3に固定されている。本実施形態のようにブラケット9を設けると、上部枠体8を座1の外側に配置しつつ、座1をしっかりと固定できる。また、ブラケット9は支柱7の上端よりも手前に張り出しているため、支柱7を後傾させた状態でも、座1を脚2に強固かつ安定的に固定できる。
【0028】
下部枠体6のフロントメンバー6aは正面視で下向き凸のく字形に曲がっており、左右中間部が頂点になっている。この頂点部に、樹脂製の前接地体10が下方から固定されている。他方、下部枠体6のうち後ろ接地部となるリアメンバー6cは、平面視で前向き凹状に緩く湾曲しており、サイドメンバー6bと滑らかに連続している。リアメンバー6cには、樹脂製の後ろ接地体11が下方から固定されており、後ろ接地体11は後ろコーナー部6dまで及んでいる。
【0029】
図3(B)及び図4(A)に示すように、リアメンバー6c(或いは後ろ接地体11)は、背面視(及び正面視)で下向き凸状に緩く湾曲しているが、リアメンバー6cの曲がりの程度はフロントメンバー6aの曲がり角度よりも緩くなっている。つまり、リアメンバー6cの左右端部の高低差は、フロントメンバー6aの左右両端の高低差よりも小さくなっている。これらフロントメンバー6aとリアメンバー6cとの下面の形態の違いにより、椅子を全体として左右にスイングさせる(傾動させる)ことができる。
【0030】
図4(B)に示すように、後ろコーナー部6dは、側面視では上向き凸状に緩く湾曲して見える(反って見える)が、図4(C)に示すように、対角方向から見ると、下向き凸状に緩く湾曲している。このような見え方の違いは、後ろコーナー部6dが平面視で湾曲
していることに起因している。そして、後ろコーナー部6dは対角方向から見て下向き凸状に緩く湾曲しているため、椅子のスイングに際しては、リアメンバー6c(後ろ接地体11)は、床に滑らかに接地していく(換言すると、床に対する後ろ接地体11の接地点が滑らかに移動しながらスイングしていく。)。
【0031】
前接地部を構成するフロントメンバー6aの左右端部には、スイングしきった状態で床に当接するストッパー12を下向きに突設している。従って、ストッパー12と床との高低差が、スイングの最大高低差になっている。ストッパー12は樹脂製で球状に形成されており、フロントメンバー6aの左右端部に設けたボルト(ビス)13にねじ込みによって取付けている。ボルト13は、いわゆるホーローセットを使用している。ストッパー12には、金属製のナットをインサート成形によって埋設している。また、ストッパー12は、フロントメンバー6aとサイドメンバー6bとの連接部であるフロントコーナー部の近傍に位置しているが、サイドメンバー6bの前端部に取り付けることも可能である。
【0032】
フロントメンバー6aにブラインドナット等を設けて、ストッパー12にボルトを設けることも可能である。この場合は、ストッパー12には、ボルトをインサート成形等で一体化したらよい。ストッパー12を金属製として、これをゴム等の緩衝材で覆うといったことも可能であり、この場合は、雌ねじ又は雄ねじをストッパーに一体化したらよい。
【0033】
なお、リアメンバー6cは、正面視(及び背面視)で台形状に形成したり、く字形に曲げたりすることも可能ある。或いは、全体を水平状に形成することも可能である。
【0034】
(2).まとめ
以上のとおり、着座者が身体を左右に揺すると椅子が左右にスイングするため、椅子を振動具として使用して、リラックスしたり緊張をほぐして血行を促進させたりすることができる。両足を下部枠体6のフロントメンバー6aに載せると、スイングをダイナミックに行うことができるが、支柱7は後傾しているため、着座者が下部枠体6のフロントメンバー6aに足を載せても足が支柱7に当たることはなくて、使い勝手がよい。
【0035】
本実施形態では、フロントメンバー6aの曲がりの程度がリアメンバー6cの曲がりの程度よりも急激であるため、スイングに際しては、フロントメンバー6aの変位量がリアメンバー6cの変位量よりも大きくなる。このため、座1は(或いは着座者は)、左右外側に移動(傾動)しつつ前方にも移動する動きをする。このため、人は、いつでも足を床に突っ張れるように身構えたような状態でスイングすることができる。従って、安定性を確保しつつ、ダイナミックにスイングできる。
【0036】
また、フロントメンバー6aが回動しきるとストッパー12が床に当たるため、スイング角度を正確に規定して、惰性で回動することを防止できる。すなわち、メリハリの利いたスイングを実現できる。
【0037】
座1の上面は下方に凹んでいて着座者の身体がフィットするため、僅かの重心の移動によって座1が傾くことはない。従って、作業や執務を行うにおいて、着座者は、無意識に足に力を掛けることなく、力を抜いた自然な状態で正しい姿勢を採ることができて、凝りや疲れを防止できる。
【0038】
他方、例えば気分転換などのためにアクティブにスイングする場合も、座1が身体にフィットしているため、身体がダイナミックに動いても座1から振り落とされるような傾向を呈することはなくて、スイング運動を安心して行うことができる。更に、見た目においてもフィット性を把握できて違和感なく使用できるため、作業用や学習用などに幅広く使用できる。
【0039】
そして、ストッパー12はフロントメンバー6aの左右端部にあって人目につくが、ストッパー12が床から浮いていることから、この椅子を初めて見た人であっても、スイング式であることを即座に理解できる。従って、腰掛けてから身体を動かすことによって椅子が揺れても戸惑うことはなくて、逆にスイングを楽しむことができる。
【0040】
本実施形態のように、リアメンバー6cを平面視略U形に形成すると、床との接地長さを長くできるため、スイングの動きをスムース化できる。また、既述のとおり、リアメンバー6cや後ろコーナー部6dは下向き凸状に緩く湾曲していて、スイングに際して接地点が滑らかに移動していくため、滑らかなスイング動を実現できる。
【0041】
さて、既に述べたように、正面視において、リアメンバー6cの曲がりの程度はフロントメンバー6aの曲がりの程度よりも緩く、従って、図4(A)(C)に示すように、リアメンバー6cと床との最大高低差H1は、ストッパー12と床との高低差H2よりも小さい。本実施形態では、H2はH1の1.5倍前後になっている。このように高低差があるため、後ろ接地体11の終端とストッパー12とを結ぶ線14は、床面に対して少し傾斜している。
【0042】
そして、ストッパー12はスイングの最終段階で床に当たるが、ストッパー12が床に当るまでの間は、椅子はフロントメンバー6aの中間部と後ろ接地体11との二点支持の状態になっており、通常は、フロントメンバー6aの中間部と、後ろ接地体11の端部と、ストッパー12とが床に当たって三点支持状態になるとスイングは停止する。この場合、ストッパー12が点当たり状態で床に当接することにより、スイング角度が規定される。
【0043】
また、後ろ接地体11の最大高さH1(正確には、後ろ接地体11の最終接地位置の最大高さでH1より小さい)とストッパー12の高さH2とが相違しているため、二点支持から三点支持に至る段階では、椅子は、左右方向にはあまり傾動せずに手前に傾く傾向を呈する。従って、後ろ接地体11が床に接地した状態で、ストッパー12の接地に滑らかに移行する。
【0044】
この場合、スイングに際して後ろ接地体11の接地位置は後ろコーナー部6dに向けて移動していくが、椅子の前端の回動支点は前接地体10の箇所で一定しているので、椅子の回動中心線は、図2(B)において符号15 で示す完全な前後長手の姿勢から、符号16で示す平面視傾斜姿勢に移行していく。従って、椅子( 及び身体) は、左右方向に回動しつつ手前側にも回動しており、従って、ストッパー12が床に当接する状態にスムースに移行していく。また、後ろ接地体11は平面視で円弧条に湾曲しているため、左右動しつつ前傾動する動きが非常に滑らかになっている。
【0045】
これらにより、ストッパー12が床に当接したときにガタンといった感じで止まることはなくて、滑らかでしかも安全なスイングを実現できる。また、H1とH2との高低差により、二点支持状態から三点支持状態に移行するにおいて、前傾傾向が強くなり、これにより、スイングの勢いが殺されて安全性が高くなる。なお、後ろ接地体11の最終接地位置高さとストッパー12の高さとは同じであってもよい
【0046】
通常の使用状態では、ストッパー12が接地するとスイングは停止するが、使用者がよりアクティブな動きを求めて身体を非常に大きく揺すると、ストッパーで規制される角度以上にオーバースイングさせることが可能である。このオーバースイング状態では、椅子及び身体は、後ろ接地体11の端部とストッパー12とを結ぶ線を中心にして、2点支持
の状態で回動するが、後ろ接地体11とストッパー12とを結ぶ線は前後長手になっているので、ほぼ左右方向に回動することになる。そして、着座者の自重による戻り力と、スイングによる運動エネルギとが釣り合った時点でオーバースイングは停止し、戻り回動することになる。
【0047】
本願発明は、他にも様々に具体化できる。例えば、背もたれ付きの椅子にも適用できる。実施形態のストッパーは樹脂の単一構造品であるが、外周部をゴム等の軟質材で構成することも可能である。また、左右のストッパーをそれぞれ前後に並んだ複数個ずつで構成して、複数個のストッパーを同時に接地させるといったことも可能である。或いは、複数のストッパーを順番に接地させることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本願発明は、実際に椅子に具体化できる。従って、産業上利用できる。
【符号の説明】
【0049】
1 座
2 脚
3 座板
6 脚を構成する下部枠体
6a 下部枠体の前接地部を構成するフロントメンバー
6b 下部枠体のサイドメンバー
6c 下部枠体のリアメンバー
6d 後ろコーナー部
脚を構成する支柱
脚を構成する上部枠体
ブラケット
10 前接地体
11 後ろ接地体
12 ストッパー
13 ボルト