IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ コーダンス メディカル インコーポレイテッドの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022097547
(43)【公開日】2022-06-30
(54)【発明の名称】血液脳関門の超音波ガイド下開放
(51)【国際特許分類】
   A61N 7/00 20060101AFI20220623BHJP
   A61B 8/14 20060101ALI20220623BHJP
   A61B 17/00 20060101ALI20220623BHJP
   A61M 37/00 20060101ALI20220623BHJP
   A61B 34/35 20160101ALI20220623BHJP
【FI】
A61N7/00
A61B8/14
A61B17/00 700
A61M37/00
A61B34/35
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022070338
(22)【出願日】2022-04-21
(62)【分割の表示】P 2019506422の分割
【原出願日】2017-07-31
(31)【優先権主張番号】62/369,208
(32)【優先日】2016-08-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】519036352
【氏名又は名称】コーダンス メディカル インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】CORDANCE MEDICAL INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】ラママーシー、バスカー
(57)【要約】
【課題】薬物の脳への送達を容易にするために超音波を適用する装置及び/又は方法を提供する。
【解決手段】
薬物又は他の分子を脳に送達するためのシステムが、低減衰音響窓を通して患者の頭部内のウィリス動脈輪などの構造を撮像するように構成された超音波撮像トランスデューサを備える。このシステムは、構造も含む以前に取得された画像に対して超音波画像をレジストレーションするように構成されたプロセッサを含む。システムは、血液脳関門を開かせるために超音波エネルギーを標的領域に送達する超音波トランスデューサ素子を備える。システムは、血液脳関門を開くことと協調して患者に薬物を送達する薬物送達システムを含んでよい。超音波撮像トランスデューサに相対した標的領域の座標は、レジストレーション情報を使用して決定される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波エネルギーを患者の脳に対して送達すべく動作可能なシステムにおいて、
撮像超音波トランスデューサと、
治療超音波トランスデューサと、
1つ以上の超音波画像を生成するように前記撮像超音波トランスデューサを動作させるために接続された超音波機器と、
データ・ストアと、
以前に取得された画像の参照フレーム内の座標を前記超音波画像の参照フレーム内の座標に対して関係付ける変換を生ずるように、前記超音波画像に対して前記以前に取得された画像をレジストレーションするために、前記データ・ストア内の対応する前記以前に取得された画像とともに前記超音波画像のうちの1つを処理し、
前記変換を使用して、前記超音波画像の前記参照フレーム内の少なくとも1つの標的領域の座標を決定し、
前記少なくとも1つの標的領域の前記座標に基づいて、超音波エネルギーを前記少なくとも1つの標的領域に対して送達するために前記治療超音波トランスデューサのための標的位置を決定する
ように構成されたデータ・プロセッサと
を備えるシステム。
【請求項2】
前記治療トランスデューサが、超音波信号を送信するために接続され、受信用回路に接続されない1つ以上のトランスデューサ素子を備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記治療トランスデューサが、前記撮像トランスデューサの動作の周波数よりも低い動作の周波数を有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記撮像トランスデューサ及び前記治療トランスデューサの一方又は両方を選択的に位置決めするために接続されたロボット・マニピュレータをさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記撮像超音波トランスデューサが前記ロボット・マニピュレータによって担持され、前記データ・プロセッサが、前記1つ以上の画像を生成するために前記撮像超音波トランスデューサを撮像位置に位置決めするように前記ロボット・マニピュレータを制御するように構成される、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記治療超音波トランスデューサが前記ロボット・マニピュレータによって担持され、前記データ・プロセッサが、前記治療超音波トランスデューサを標的位置に位置決めするように前記ロボット・マニピュレータを制御するように構成される、請求項4又は5に記載のシステム。
【請求項7】
前記プロセッサが、前記標的位置において患者の頭蓋に対する接平面を決定するために前記以前に取得された画像を処理するように、及び前記治療トランスデューサを前記接平面に対して直角をなして方位付けするように前記ロボット・マニピュレータを動作させるように構成される、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記システムが、位置及び方向のうちの1つ以上を出力するセンサを備え、前記センサが、前記撮像トランスデューサ及び前記治療トランスデューサのうちの1つ以上に取り付けられ、前記データ・プロセッサが、前記治療トランスデューサがいつ前記標的位置にあるかを決定するために前記位置センサからの出力信号を処理するように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記システムが、患者の頭部を受け入れるような寸法とされた空洞を画定するような形状にされた支持具と、前記支持具の上に分散された複数のトランスデューサ素子とを備え、前記撮像超音波トランスデューサが前記トランスデューサ素子の第1のサブセットを備え、前記治療超音波トランスデューサが前記トランスデューサ素子の第2のサブセットを備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記治療超音波トランスデューサが、前記トランスデューサ素子の複数のサブセットを備え、前記複数のサブセットの各々が、同じ標的領域に対して超音波エネルギーを送達するように構成される、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記支持具が、1つ以上の機械的サブ構造を備え、各機械的サブ構造が、前記トランスデューサ素子のうちの1つ以上を担持し、前記システムが、前記サブ構造の位置及び方向を調整するために結合された1つ以上のアクチュエータを備える、請求項9に記載のシステム。
【請求項12】
前記アクチュエータが、親ネジと、前記親ネジを回転させるために接続されたモータとを備える、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記プロセッサが、前記標的位置において患者の頭蓋に対する接平面を決定するために前記以前に取得された画像を処理するように、及び前記サブ構造によって担持された前記トランスデューサ素子が前記接平面に対して直角をなして方位付けされるように前記サブ構造を方位付けさせるために前記1つ以上のアクチュエータを動作させるように、構成される、請求項11又は12に記載のシステム。
【請求項14】
前記データ・プロセッサが、前記標的位置に基づいて前記トランスデューサ素子から前記トランスデューサ素子の前記第2のサブセットを選択するように構成される、請求項9に記載のシステム。
【請求項15】
前記データ・プロセッサが、前記標的領域と前記標的位置の間の距離に少なくとも一部は基づいて、前記トランスデューサ素子の前記第2のサブセット内に含む前記トランスデューサ素子の数を決定するように構成される、請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
前記データ・プロセッサが、前記標的位置と前記標的領域の間を進行する超音波の推定減衰を計算するように、ならびに、前記トランスデューサ素子の前記第2のサブセット内に含む前記トランスデューサ素子の数、及び前記推定減衰に少なくとも一部は基づいて前記トランスデューサ素子の第2のサブセット内の前記トランスデューサ素子を駆動するためのパワーレベル、のうちの少なくとも1つを決定するように構成される、請求項9乃至15のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項17】
前記システムが薬物送達システムを備え、前記データ・プロセッサが、前記薬物送達システムの動作をトリガするように構成される、請求項1乃至16のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項18】
前記データ・プロセッサが、前記薬物送達システムの動作をトリガした後、所定の時間、前記治療超音波トランスデューサの動作をトリガするように構成される、請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
前記薬物送達システムに対して接続された第1のマイクロバブル及び第2のマイクロバブルのうちの1つ以上のソースを備え、
前記第1のマイクロバブルが、前記撮像トランスデューサに対して反射された信号を増幅するように構成され、
前記第2のマイクロバブルが、前記治療トランスデューサから超音波エネルギーを受信するとき、振動する又は壊れるように構成される、請求項17又は18に記載のシステム。
【請求項20】
前記第2のマイクロバブルが1つ以上の薬物を含有する、請求項19に記載のシステム。
【請求項21】
前記治療超音波トランスデューサが0.25MHzから5MHzの周波数範囲内で動作する、請求項1乃至20のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項22】
前記撮像トランスデューサが1.75MHzから10MHzの周波数範囲内で動作する、請求項1乃至21のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項23】
複数の治療トランスデューサを備え、前記システムが、連続して前記複数の治療トランスデューサによって前記標的領域に対して超音波を送達するように構成される、請求項1乃至22のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項24】
前記複数の治療トランスデューサの各々が、エリアの上に分散された複数のトランスデューサ素子を備え、前記複数の治療トランスデューサのうちの2つ以上の前記エリアが重複する、請求項23に記載のシステム。
【請求項25】
前記システムが、前記サブ期間のうちの異なるサブ期間内に前記複数の治療トランスデューサのうちの1つ以上の異なるセットを動作させることによって、複数のサブ期間を含む治療期間にわたって前記標的領域に対して超音波を実質的に連続的に照射するように構成される、請求項23又は24に記載のシステム。
【請求項26】
前記撮像トランスデューサ及び前記治療トランスデューサの一方又は両方の位置を追跡するように動作する電磁(EM)追跡システムを備える、請求項17乃至20のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項27】
前記EM追跡システムが、前記撮像トランスデューサ及び前記治療トランスデューサのうちの1つ以上に取り付けられたEM送信機とEMセンサを備える、請求項26に記載のシステム。
【請求項28】
前記データ・プロセッサが、
1つ以上の平面に沿って再構築画像を取得するように前記以前に取得された画像を処理し、前記再構築画像及び前記超音波画像内の共通構造を識別することと、
前記再構築画像の各々と前記超音波画像の間の相関値を決定することと、
閾値を上回る最大相関値を有するある前記再構築画像のうちの1つを選択することと、
前記選択された再構築画像内の前記共通構造に、前記超音波画像の参照フレーム内の前記超音波画像内の前記共通構造の座標を割り当てることと
によって前記変換を取得するように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項29】
前記データ・プロセッサが、スケール・ファクタを変更すること、方向角度を変更すること、及び前記再構築画像のうちの1つ以上の上で、ある角度回転させること、のうちの1つ以上を実行することによって、前記相関値を見つけるように構成される、請求項28に記載のシステム。
【請求項30】
超音波機器を構成するための方法において、
撮像超音波トランスデューサを使用して、患者の頭部内の1つ以上の構造を含む超音波画像を取得する工程と、
データ・プロセッサによって、
以前に取得された画像の参照フレーム内の座標を前記超音波画像の参照フレーム内の座標に対して関係付ける変換を生ずるように、前記超音波画像に対して前記患者の頭部の前記以前に取得された画像をレジストレーションする工程であって、前記以前に取得された画像が前記1つ以上の構造を含む、レジストレーションする工程と、
前記変換を使用して、前記超音波画像の前記参照フレーム内の少なくとも1つの標的領域の座標を決定する工程と、
前記少なくとも1つの標的領域の前記座標に基づいて、少なくとも1つの超音波治療トランスデューサが超音波エネルギーを前記少なくとも1つの標的領域に対して送達する位置を決定する工程と
を備える、方法。
【請求項31】
前記1つ以上の構造が、ウィリス動脈輪、脳室、脳梁、歯科用インプラント、外科用ネジ、及び整形外科用ハードウェア、のうちの1つ以上を含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
1つ以上の平面に沿って再構築画像を取得するように前記以前に取得された画像を処理し、前記再構築画像及び前記超音波画像内の共通構造を識別する工程と、
前記再構築画像の各々と前記超音波画像の間の相関値を決定する工程と、
閾値を上回る最大相関値を有するある前記再構築画像のうちの1つを選択する工程と、
前記選択された再構築画像内の前記共通構造に、前記超音波画像の参照フレーム内の前記超音波画像内の前記共通構造の座標を割り当てる工程と
によって前記変換を取得する工程を備える、請求項30又は31に記載の方法。
【請求項33】
前記以前に取得された画像に相対して前記標的領域の前記位置を指定するユーザ入力を受信する工程を備える、請求項30乃至32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
前記以前に取得された画像が磁気共鳴画像(MRI)又はコンピュータ断層撮影(CT)画像を含む、請求項30乃至33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
前記決定された位置において前記超音波撮像トランスデューサ又は前記超音波治療トランスデューサを留置するようにロボット・マニピュレータを動作させる工程を備える、請求項30乃至34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
人間オペレータによる前記決定された位置における前記超音波撮像トランスデューサ又は前記超音波治療トランスデューサの手動留置を含む、請求項30乃至34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
前記治療トランスデューサの位置をモニタし、前記治療トランスデューサがいつ前記決定された位置にあるかを表す、人間が検出可能な信号を提供する工程を備える、請求項30乃至36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
前記治療トランスデューサとして動作されるように、前記決定された位置の近くの複数のトランスデューサ素子を構成する工程を備える、請求項30乃至34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
前記撮像トランスデューサが、患者の頭蓋内の低減衰音響窓に隣接して設置される、請求項30乃至38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
前記低減衰音響窓が、前記患者のこめかみ、前記頭部の後部、又は眼の後ろを含む、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記治療トランスデューサから超音波エネルギーを受信するとき振動する又は壊れるように構成されたマイクロバブルを前記患者に対して送達するように薬物送達システムにコマンドする工程を備える、請求項30乃至40のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
薬物送達システムのためのコントローラにおいて、
以前に取得された画像の参照フレーム内の座標を前記超音波画像の参照フレーム内の座標に対して関係付ける変換を生ずるために、患者の頭部内の1つ以上の構造を含む超音波画像に対して前記患者の頭部の前記以前に取得された画像をレジストレーションし、前記以前に取得された画像が前記1つ以上の構造を含み、
前記変換を使用して、前記超音波画像の前記参照フレーム内の少なくとも1つの標的領域の座標を決定し、
前記少なくとも1つの標的領域の前記座標に基づいて、少なくとも1つの超音波治療トランスデューサが超音波エネルギーを前記少なくとも1つの標的領域に対して送達する位置を決定する
ように構成されたデータ・プロセッサを備えるコントローラ。
【請求項43】
前記データ・プロセッサが、
1つ以上の平面に沿って再構築画像を取得するように前記以前に取得された画像を処理し、前記再構築画像及び前記超音波画像内の共通構造を識別することと、
前記再構築画像の各々と前記超音波画像の間の相関値を決定することと、
閾値を上回る最大相関値を有するある前記再構築画像のうちの1つを選択することと、
前記選択された再構築画像内の前記共通構造に、前記超音波画像の参照フレーム内の前記超音波画像内の前記共通構造の座標を割り当てることと
によって前記変換を取得するように構成される、請求項42に記載のコントローラ。
【請求項44】
前記データ・プロセッサが、前記以前に取得された画像をディスプレイ上に表示し、ユーザ・インタフェースを通して前記以前に取得された画像に相対して前記標的領域の前記位置を指定するユーザ入力を受信するように構成される、請求項42又は43に記載のコントローラ。
【請求項45】
前記コントローラが、前記決定された位置において前記治療トランスデューサを位置決めするようにロボット・マニピュレータを制御するように構成される、請求項42乃至44のいずれか1項に記載のコントローラ。
【請求項46】
前記コントローラが、前記患者の頭部の動きを検出するように、及び、前記標的領域に相対して所望の位置において前記治療トランスデューサを維持するように前記患者の頭部の検出された動きに応答して前記ロボット・マニピュレータを制御するように構成される、請求項45に記載のコントローラ。
【請求項47】
前記コントローラが、前記治療トランスデューサの位置をモニタし、前記治療トランスデューサがいつ前記決定された位置にあるかを表す、人間が検出可能な信号を提供するように構成される、請求項42乃至44のいずれか1項に記載のコントローラ。
【請求項48】
前記コントローラが、前記決定された位置に基づいて、前記超音波治療トランスデューサとして使用されることになる複数の治療トランスデューサ素子のサブセットを選択するように構成される、請求項42乃至44のいずれか1項に記載のコントローラ。
【請求項49】
前記複数の治療トランスデューサ素子の各々が、前記超音波画像の前記参照フレーム内の所定の位置を有する、請求項48に記載のコントローラ。
【請求項50】
前記データ・プロセッサが、前記標的領域と前記決定された位置の間の距離に少なくとも一部は基づいて、前記サブセット内に含む前記治療トランスデューサ素子の数を決定するように構成される、請求項48又は49に記載のコントローラ。
【請求項51】
前記データ・プロセッサが、前記決定された位置と前記標的領域の間を進行する超音波の推定減衰を計算するように、ならびに、前記サブセット内に含む前記トランスデューサ素子の数、及び前記推定減衰に少なくとも一部は基づいて前記サブセット内の前記トランスデューサ素子を駆動するためのパワーレベルのうちの少なくとも1つを決定するように構成される、請求項48乃至50のいずれか1項に記載のコントローラ。
【請求項52】
前記データ・プロセッサが、前記患者に対して薬物を送達するために薬物送達ユニットのトリガリングに相対して指定された時間において前記標的領域に対して超音波エネルギーを送達するように前記治療トランスデューサを制御するように構成される、請求項42乃至51のいずれか1項に記載のコントローラ。
【請求項53】
前記データ・プロセッサが、前記薬物送達ユニットをトリガするように構成される、請求項52に記載のコントローラ。
【請求項54】
前記データ・プロセッサが、前記決定された位置において前記患者の頭蓋に対する接平面を決定するために前記以前に取得された画像を処理するように、及び前記接平面に対して直角をなして前記治療トランスデューサを方位付けさせるために1つ以上のアクチュエータを動作させるように、構成される、請求項42乃至53のいずれか1項に記載のコントローラ。
【請求項55】
人の脳内の標的領域に対して薬物を送達するための方法において、
1つ以上の撮像超音波トランスデューサを使用して、前記人の頭部内の1つ以上の構造の超音波画像を取得する工程と、
前記人の頭部の以前に獲得された画像に相対して前記超音波画像をレジストレーションする工程と、
前記レジストレーションする工程に基づいて、前記1つ以上の撮像超音波トランスデューサに対して前記標的領域の位置を決定する工程と、
前記患者の血流へと前記薬物を投与し、前記撮像超音波トランスデューサに相対した前記治療超音波トランスデューサの既知の位置及び前記1つ以上の撮像超音波トランスデューサに相対した前記標的領域の前記位置を使用して前記標的領域に対して超音波エネルギーを送達するように1つ以上の治療超音波トランスデューサを制御する工程と
を含む方法。
【請求項56】
前記1つ以上の構造が、ウィリス動脈輪、脳室、脳梁、歯科用インプラント、外科用ネジ、及び整形外科用ハードウェアのうちの1つ以上を含む、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
レジストレーションする工程が、
1つ以上の平面に沿って再構築画像を取得するように前記以前に取得された画像を処理し、前記再構築画像及び前記超音波画像内の共通構造を識別する工程と、
前記再構築画像の各々と前記超音波画像の間の相関値を決定する工程と、
閾値を上回る最大相関値を有するある前記再構築画像のうちの1つを選択する工程と、
前記選択された再構築画像内の前記共通構造に、前記超音波画像の参照フレーム内の前記超音波画像内の前記共通構造の座標を割り当てる工程と
によって変換を取得する工程を備える、請求項55又は56に記載の方法。
【請求項58】
前記超音波画像を取得する工程が、前記人の頭蓋内の低減衰音響窓を通じて実行される、請求項55乃至58のいずれか1項に記載の方法。
【請求項59】
前記薬物を投与する工程が、マイクロバブルとともに前記薬物を投与する工程を含んでなる、請求項55乃至58のいずれか1項に記載の方法。
【請求項60】
前記標的領域において前記マイクロバブルを検出する工程を備える、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
1つ以上の第1のトランスデューサ素子と、
1つ以上の第2のトランスデューサ素子と、
超音波を発するために前記第1のトランスデューサ素子及び前記第2のトランスデューサ素子を駆動するように動作可能な1つ以上の電子チャネルであって、電子チャネルの各々が、前記第1のトランスデューサ素子及び前記第2のトランスデューサ素子のうちの1つ以上を駆動するために結合される、電子チャネルと
を備え、
前記第1のトランスデューサ素子が各々、受信用回路に結合され、前記第2のトランスデューサ素子が受信用回路に接続されない、超音波トランスデューサ・アセンブリ。
【請求項62】
前記第1のトランスデューサ素子及び前記第2のトランスデューサ素子を担持し、前記患者の頭部を受け入れるような寸法とされた空洞を提供するように形成された支持具を備える、請求項42に記載の超音波トランスデューサ・アセンブリ。
【請求項63】
前記トランスデューサ素子が前記支持具上に均一に分散される、請求項43に記載の超音波トランスデューサ・アセンブリ。
【請求項64】
本明細書において説明される、任意の新しい本発明の特徴又は要素、特徴及び要素の少なくとも一方の組み合わせ、又は特徴もしくは要素の副組み合わせを備える装置。
【請求項65】
任意の新しい本発明の工程、行為、工程及び行為の組み合わせ、又は、工程及び行為のうちの少なくとも一方の副組み合わせを含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波システム及び方法に関する。いくつかの実施形態は、薬物の脳への送達を容易にするために超音波を適用する装置及び/又は方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
薬物は、脳癌を含めて脳を冒す、ある範囲の疾患にとって重要な治療モダリティーである。脳の疾患の治療は、一部は血液脳関門の構造に起因して困難である。血液脳関門は、循環血液を他の脳組織から分離し、高度に選択的な透過性を有する。この関門は、小分子の約98%及び大分子のほぼ100%が血流から脳に入るのを防止する。これは、薬物を脳のさまざまな組織に、例えば腫瘍部位に輸送することを困難にする。
【0003】
血液脳関門は、いくつかの領域に対して超音波エネルギーを送達することによって、それらの領域内で開けられ、それによって、異なるサイズのより広範囲の分子が血流から脳の組織へと通過する可能性を増加させることができる。この技法は、薬物が脳に対して送達されることを可能にするために適用され得る。薬物を脳に送達する現在の最新技法では、磁気共鳴映像法(MRI)が、超音波ベースの送達機構と組み合わせて利用される場合がある。これらの技法では、MRIは、超音波ベース機構に、脳内のどこに超音波エネルギーを集束するべきかを知らせるために使用される。
【0004】
これらの技法では、MRIスキャンは、典型的には、2つの異なるステージで取得される。「動作前」ステージすなわち「動作前(pre-op)」ステージと言われる第1のステージは、「動作」すなわち「治療」(薬物が能動的に患者に送達される時間期間)の前である。「動作中」ステージすなわち「動作中(intra-op)」と言われる第2のステージは、動作中である。これらの技法は、典型的には、患者の頭部内の治療の標的領域を識別するMRIスキャナと、血液脳関門の開放を果たすためにエネルギーを送達する超音波トランスデューサとの同時動作を必要とする。
【0005】
図1は、従来技術による例示的な薬物送達システム100を概略的に示す。超音波システム105は、超音波トランスデューサ110に結合され、超音波トランスデューサ110は、患者Pの頭部に隣接して設置される。超音波トランスデューサ110は、患者Pの脳内の選択されたエリアに対して超音波エネルギーを送信するように動作されることができるように据えられてよい。超音波トランスデューサ110は、超音波エネルギーを標的領域に対して送達するように動作可能である1つ以上の超音波素子を備えてよい。MRIシステム120は、治療中に患者Pの頭部の画像を提供するように動作可能であるMRIスキャナ125を含んでよい。患者Pの頭部は、典型的には、スキャニング中、MRIスキャナ125の穴135の中に留置される。MRI画像は、標的領域に対して超音波を照射するように超音波システム105の動作を制御するために使用されてよい。静脈を通して患者Pに対して送達される薬物130は、次いで、患者Pの脳のターゲットとされるエリア内の組織に入ってよい。
【0006】
超音波の送達中のMRIに対する依存は、この技法の広い適用可能性を減少させる。MRIスキャニングは、典型的には、関心のある患者の身体部分(本明細書では、頭部)をMRIスキャナ125の中空部135へと挿入することを伴う。これは、多くの場合に、頭部がMRIスキャナの中央にくるように患者を中空部の中に深く挿入することを伴う。穴の厳重な境界は、治療中に超音波トランスデューサ110などのさまざまな装置を操作する際に治療する医師の自由を阻害する。
【0007】
さらに、上記の構成は、患者にとって重大な難題を提示し得る。一例として、いく人かの患者が閉所恐怖症であり、治療中にMRIシステムの穴の中にいることを余儀なくされる場合、極度の不快感を経験することがある。加えて、MRIスキャナを獲得し、動作させることは非常に費用がかかる。これらの高いコストは、MRIスキャナに対するアクセスを制限する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
血液脳関門の選択された部分を越えた分子の送達を容易にするために適用されることができる、実際的で効果的な方法、システム、及び装置が依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、一緒に適用されてもよいし、個々に適用されてもよいし、任意の副組み合わせで適用されてもよい、いくつかの態様を有する。これらは、限定するものではないが、・患者において血液脳関門を選択的に開くための装置及び方法、・薬物を患者の脳に対して送達するための装置及び方法、・動作前画像とともに超音波画像をレジストレーションするための装置及び方法、・患者において治療のエリアを識別するための装置及び方法、・超音波エネルギーを患者に対して送達するための装置及び方法、ならびに・薬物を患者の脳に対して送達するための装置及び方法のためのコントローラを含む。
【0010】
本発明のいくつかの態様は、超音波を脳の1つ以上の領域に対して送達するシステムを提供する。
本発明の例示的な一態様は、超音波エネルギーを患者の脳に対して送達するように動作可能なシステムを提供する。超音波エネルギーは、血液脳関門の開放を容易にし得る。超音波エネルギーの送達は、血液脳関門の開放時に患者の脳に入り得る薬物の送達と協調され、それによって、治療を容易にし得る。システムは、撮像超音波トランスデューサと、治療超音波トランスデューサと、1つ以上の超音波画像を生成するように撮像超音波トランスデューサを動作させるために接続された超音波機器と、データ・プロセッサとを備える。データ・プロセッサは、以前に取得された画像の参照フレーム内の座標を超音波画像の参照フレーム内の座標に対して関係付ける変換を生ずるように、以前に取得された画像を超音波画像に対してレジストレーションするために、対応する以前に取得された画像とともに超音波画像のうちの1つを処理し、変換を使用して、超音波画像の参照フレーム内の少なくとも1つの標的領域の座標を決定し、この少なくとも1つの標的領域の座標に基づいて、超音波エネルギーを少なくとも1つの標的領域に対して送達するために治療超音波トランスデューサのための標的位置を決定するように構成される。システムは、以前に取得された画像が提供され得るデータ・ストアを含んでよい。
【0011】
治療トランスデューサは、任意選択で、超音波信号を送信するために接続され、かつ受信用回路に接続されない1つ以上のトランスデューサ素子を備える。いくつかの実施形態では、治療トランスデューサは、撮像トランスデューサの動作の周波数よりも低い動作の周波数を有する。
【0012】
システムは、撮像トランスデューサ及び治療トランスデューサの一方又は両方を選択的に位置決めするために接続されたロボット・マニピュレータを備えてよい。そのような実施形態では、撮像超音波トランスデューサはロボット・マニピュレータによって担持されてよく、データ・プロセッサは、1つ以上の画像を生成するために撮像超音波トランスデューサを撮像位置に位置決めするようにロボット・マニピュレータを制御するように構成されてよい。撮像位置は、患者の頭蓋内の低減衰音響窓に対応してよい。そのような実施形態では、治療超音波トランスデューサはロボット・マニピュレータによって担持されてよく、データ・プロセッサは、治療超音波トランスデューサを標的位置に位置決めするようにロボット・マニピュレータを制御するように構成されてよい。標的位置は、変換を使用してロボット・マニピュレータの参照フレーム内で決定されてよい。
【0013】
いくつかの実施形態では、プロセッサは、標的位置において患者の頭蓋に対する接平面を決定するために以前に取得された画像を処理するように、及び治療トランスデューサを接平面に対して直角をなして方位付けするようにロボット・マニピュレータを動作させるように構成される。
【0014】
いくつかの実施形態では、システムは、位置及び方向のうちの1つ以上を出力するセンサを備え、このセンサは、撮像トランスデューサ及び治療トランスデューサのうちの1つ以上に取り付けられ、データ・プロセッサは、治療トランスデューサがいつ標的位置にあるかを決定するために位置センサからの出力信号を処理するように構成される。
【0015】
撮像トランスデューサ及び治療トランスデューサのためのさまざまな形式が可能である。いくつかの実施形態では、システムは、患者の頭部を受け入れるような寸法とされた空洞を画定するような形状にされた支持具を備え、複数のトランスデューサ素子が支持具の上に分散される。そのような実施形態では、撮像超音波トランスデューサは、トランスデューサ素子の第1のサブセットを備えてよく、治療超音波トランスデューサは、トランスデューサ素子の第2のサブセットを備えてよい。治療超音波トランスデューサは、任意選択で、トランスデューサ素子の複数のサブセットを備え、複数のサブセットの各々は、同じ標的領域に対して超音波エネルギーを送達するように構成される。撮像超音波トランスデューサは、任意選択で、トランスデューサ素子の複数のサブセットを備える。データ・プロセッサは、標的位置に基づいてトランスデューサ素子からトランスデューサ素子の第2のサブセットを選択するように構成されてよい。データ・プロセッサは、標的領域と標的位置の間の距離に少なくとも一部は基づいてトランスデューサ素子の第2のサブセット内に含むトランスデューサ素子の数を決定するように構成されてよい。
【0016】
支持具は、任意選択で、1つ以上の機械的サブ構造を備え、各機械的サブ構造は、トランスデューサ素子のうちの1つ以上を担持する。アクチュエータは、サブ構造の位置及び/又は方向を調整するために結合されてよい。システムは、トランスデューサ素子を所望の位置及び方向において留置するように、たとえばトランスデューサ素子を患者の頭部と接触させ、及び/又は患者の頭部に対する接平面に対して直角をなしてトランスデューサ素子を方位付けするように、アクチュエータを制御するように構成されてよい。データ・プロセッサは、標的位置において患者の頭蓋に対する接平面を決定するために以前に取得された画像を処理するように、及びサブ構造によって担持されたトランスデューサ素子が接平面に対して直角をなして方位付けされるようにサブ構造を方位付けさせるために1つ以上のアクチュエータを動作させるように、構成されてよい。
【0017】
いくつかの実施形態では、データ・プロセッサは、標的位置と標的領域の間を進行する超音波の推定減衰を計算するように、ならびに、トランスデューサ素子の第2のサブセット内に含むトランスデューサ素子の数、及び推定減衰に少なくとも一部は基づいてトランスデューサ素子の第2のサブセット内のトランスデューサ素子を駆動するためのパワーレベル、のうちの少なくとも1つを決定するように構成される。
【0018】
いくつかの実施形態では、システムは、複数の(たとえば、2つ又は3つ又はそれ以上の)治療トランスデューサを備え、システムは、連続して複数の治療トランスデューサによって超音波を標的領域に対して送達するように構成される。これは、定在波の増強(buildup)を減少させることができる。いくつかの実施形態では、複数の治療トランスデューサの各々は、エリアの上に分散された複数のトランスデューサ素子を備える。複数の治療トランスデューサのうちの2つ以上のエリアは、任意選択で、重複してよい。いくつかの実施形態では、システムは、サブ期間のうちの異なるサブ期間内に複数の治療トランスデューサのうちの1つ以上の異なるセットを動作させることによって、複数のサブ期間を含む治療期間にわたって標的領域に超音波を実質的に連続的に照射するように構成される。治療トランスデューサの各々は、標的領域上に超音波エネルギーを集束するように制御されてよい。超音波エネルギーは、ビーム・ステアリング、音響レンズ、及び/又は当技術分野で知られているように超音波を集中させるための他の技法の使用を通して、標的領域上に集束されてよい。
【0019】
いくつかの実施形態では、システムは薬物送達システムを備え、データ・プロセッサは、薬物送達システムの動作をトリガするように構成される。たとえば、データ・プロセッサは、薬物送達システムの動作をトリガした後、及び/又は薬物が標的領域に対して血流内で搬送されたことを検出すると(たとえば、標的領域に由来する薬物と関連付けられたマイクロバブルの音響署名を検出することによって-治療超音波トランスデューサは、最初に、マイクロバブルが検出されるまでマイクロバブルとの相互作用時に音響署名を生成する超音波信号を発し、次いで、治療を容易にするために超音波エネルギーを送達することに切り換えられてよい)、所定の時間、治療超音波トランスデューサの動作をトリガするように構成されてよい。
【0020】
第1のマイクロバブル及び第2のマイクロバブルのうちの1つ以上のソースは、薬物送達システムに対して接続されてよい。第1のマイクロバブルは、撮像トランスデューサに対して反射された信号を増幅するように構成されてよい。第2のマイクロバブルは、治療トランスデューサから超音波エネルギーを受信するとき、振動する又は壊れるように構成されてよい。第2のマイクロバブルは、1つ以上の薬物を含有してよい。
【0021】
データ・ストアは、複数の薬物に対する所定の治療超音波パラメータを記憶してよい。異なる超音波パラメータが、異なる薬物又は異なる薬物送達モダリティーに対して記憶されてよい(たとえば、マイクロバブルを有する又は有していない、異なるタイプのマイクロバブル)。いくつかの実施形態では、超音波システムは、機械可読タグから複数の薬物のうちの1つを識別する薬物識別情報を読み取るように動作する読み取り装置を備え、データ・プロセッサは、この薬物識別情報を使用して、この薬物識別情報に対応する複数の薬物のうちの1つに対応する所定の治療超音波パラメータを検索するように構成される。読み取り装置は、たとえば、バー・コード読み取り装置、QRコード(登録商標)読み取り装置、又はRFID読み取り装置を含んでよい。
【0022】
いくつかの実施形態は、撮像トランスデューサ及び治療トランスデューサの一方又は両方の位置を追跡するように動作する電磁(EM)追跡システムを備える。たとえば、EM追跡システムは、撮像トランスデューサ及び治療トランスデューサのうちの1つ以上に取り付けられたEM送信機とEMセンサを備えてよい。
【0023】
いくつかの実施形態では、データ・プロセッサは、1つ以上の平面に沿って再構築画像を取得するように以前に取得された画像を処理し、再構築画像及び超音波画像内の共通構造を識別することと、再構築画像の各々と超音波画像の間の相関値を決定し、閾値を上回る最大相関値を有するある再構築画像のうちの1つを選択し、選択された再構築画像内の共通構造に、超音波画像の参照フレーム内の超音波画像内の共通構造の座標を割り当てることとによって、変換を取得するように構成される。データ・プロセッサは、スケール・ファクタを変更すること、方向角度を変更すること、及び再構築画像のうちの1つ以上の上で、ある角度回転させること、のうちの1つ以上を実行することによって、相関値を見つけるように構成されてよい。
【0024】
本発明の別の例示的な態様は、超音波機器を構成するための方法を提供する。この方法は、撮像超音波トランスデューサを使用して、患者の頭部内の1つ以上の構造を含む超音波画像を取得する工程と、データ・プロセッサによって、以前に取得された画像の参照フレーム内の座標を超音波画像の参照フレーム内の座標に対して関係付ける変換を生ずるように、超音波画像に対して患者の頭部の以前に取得された画像をレジストレーションする工程であって、以前に取得された画像が1つ以上の構造を含む、レジストレーションする工程と、変換を使用して、超音波画像の参照フレーム内の少なくとも1つの標的領域の座標を決定する工程と、この少なくとも1つの標的領域の座標に基づいて、少なくとも1つの超音波治療トランスデューサが超音波エネルギーを少なくとも1つの標的領域に対して送達する位置を決定する工程とを含む。1つ以上の構造は、たとえば、ウィリス動脈輪、脳室、脳梁、歯科用インプラント、外科用ネジ、及び整形外科用ハードウェア、のうちの1つ以上を備えてよい。
【0025】
いくつかの実施形態では、変換を取得する工程は、1つ以上の平面に沿って再構築画像を取得するように以前に取得された画像を処理し、再構築画像及び超音波画像内の共通構造を識別する工程と、再構築画像の各々と超音波画像の間の相関値を決定する工程と、閾値を上回る最大相関値を有するある再構築画像のうちの1つを選択する工程と、選択された再構築画像内の共通構造に、超音波画像の参照フレーム内の超音波画像内の共通構造の座標を割り当てる工程とを含む。
【0026】
以前に取得された画像は、たとえば、磁気共鳴画像(MRI)又はコンピュータ断層撮影(CT)画像を含んでよい。方法は、以前に取得された画像に対して標的領域の位置を指定するユーザ入力を受信してよい。いくつかの実施形態は、決定された位置において超音波撮像トランスデューサ又は超音波治療トランスデューサを留置するようにロボット・マニピュレータを動作させる工程を伴う。他の実施形態は、人間オペレータによる決定された位置における超音波撮像トランスデューサ又は超音波治療トランスデューサの手動留置を伴う。
【0027】
いくつかの実施形態では、方法は、治療トランスデューサとして動作されるように、決定された位置の近くの複数のトランスデューサ素子を構成する工程を備える。
撮像トランスデューサは、患者の頭蓋内の低減衰音響窓に隣接して設置されてよい。この低減衰音響窓は、たとえば、患者のこめかみ、頭部の後部、又は眼の後ろを含んでよい。
【0028】
いくつかの実施形態は、治療トランスデューサから超音波エネルギーを受信するとき振動する又は壊れるように構成されたマイクロバブルを患者に対して送達するように薬物送達システムにコマンドする工程を備える。
【0029】
本発明の別の例示的な態様は、1つ以上の第1のトランスデューサ素子と、1つ以上の第2のトランスデューサ素子と、超音波を発するために第1のトランスデューサ素子及び第2のトランスデューサ素子を駆動するように動作可能な1つ以上の電子チャネルであって、電子チャネルの各々は、第1のトランスデューサ素子及び第2のトランスデューサ素子のうちの1つ以上を駆動するために結合される、電子チャネルとを備え、第1のトランスデューサ素子は各々、受信用回路に結合され、第2のトランスデューサ素子は受信用回路に接続されない、超音波トランスデューサ・アセンブリを提供する。この超音波トランスデューサ・アセンブリは、任意選択で、第1のトランスデューサ素子及び第2のトランスデューサ素子を担持し、患者の頭部を受け入れるような寸法とされた空洞を提供するように形成された支持具を備える。トランスデューサ素子は、支持具上に均一に分散されてよい。
【0030】
別の例示的な態様は、薬物送達システムのためのコントローラを提供する。このコントローラは、以前に取得された画像の参照フレーム内の座標を超音波画像の参照フレーム内の座標に対して関係付ける変換を生ずるために患者の頭部内の1つ以上の構造を含む超音波画像に対して患者の頭部の以前に取得された画像をレジストレーションし、以前に取得された画像は1つ以上の構造を含み、変換を使用して、超音波画像の参照フレーム内の少なくとも1つの標的領域の座標を決定し、この少なくとも1つの標的領域の座標に基づいて、少なくとも1つの超音波治療トランスデューサが超音波エネルギーを少なくとも1つの標的領域に対して送達する位置を決定するように構成されたデータ・プロセッサを備える。超音波画像が標的領域を含むことは必要でない。超音波画像は、以前に取得された画像よりもはるかに小さい視野を有してよい。コントローラは、任意選択で、1つ以上の超音波トランスデューサ又はトランスデューサ素子を位置決めするために薬物送達システム及び/又はロボット・マニピュレータを制御するように構成されてよい。
【0031】
別の例示的な態様は、人の脳内の標的領域に対して薬物を送達するための方法を提供し、この方法は、1つ以上の撮像超音波トランスデューサを使用して、人の頭部内の1つ以上の構造の超音波画像を取得する工程と、人の頭部の以前に獲得された画像に対して超音波画像をレジストレーションする工程と、このレジストレーションする工程に基づいて、1つ以上の撮像超音波トランスデューサに対して標的領域の位置を決定する工程と、患者の血流へと薬物を投与し、撮像超音波トランスデューサに対する治療超音波トランスデューサの知られている位置及び1つ以上の撮像超音波トランスデューサに対する標的領域の位置を使用して標的領域に対して超音波エネルギーを送達するように1つ以上の治療超音波トランスデューサを制御する工程とを含む。
【0032】
本発明のさらなる態様及び本発明の例示的な実施形態の特徴が、以下で説明され、及び/又は添付の図面において図示される。
非限定的な例示的な実施形態が、添付の図面において図示される。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】治療中にMRIスキャニングを使用して超音波トランスデューサの留置をガイドする例示的な従来技術による薬物送達システムを示す概略図。
図2】薬物を患者に対して送達するように動作可能な、例示的な一実施形態による超音波システムを示す概略図。
図3】低減衰音響窓を活用して超音波を標的領域に対してガイドする例示的な方法のためのフローチャート。
図4】超音波エネルギーを送信することのみ、又は超音波エネルギーを送信及び受信することを行うように構成された複数の超音波トランスデューサを示すことを含む例示的な一実施形態による装置の概略図。
図5】別の例示的な一実施形態による装置のブロック図。
図6A】例示的な超音波トランスデューサ素子を個々に示す概略図。
図6B】互いに結合された例示的な超音波トランスデューサ素子を示す概略図。
図7A】超音波トランスデューサを位置決めするように動作可能なロボット・アームを含む例示的な超音波システムを示す概略図。
図7B】手動で留置されたトランスデューサをもつ例示的な超音波システムを示す概略図。
図8】1つ以上のセンサをトランスデューサに対して結合するための例示的な配置を示す概略図。
図9】動作前画像を超音波画像とレジストレーションするための例示的な方法のためのフローチャート。
図10】例示的なレジストレーション・プロセスを示す概略図。
図11】動作前画像を超音波画像とレジストレーションするための例示的な方法のためのフローチャート。
図12A】どのようにしてレジストレーション・プロセスが実行され得るかの図。
図12B】どのようにしてレジストレーション・プロセスが実行され得るかの図。
図13】頭蓋の表面から標的領域までの距離を決定するための例示的な方法を示す概略図。
図14】(A)撮像モードで動作する素子から送信及び受信され得る超音波エネルギーの例示的な波形を図示するグラフ、(B)治療モードで動作する素子によって送信され得る超音波エネルギーの例示的な波形を図示するグラフ。
図15A】撮像のため及び治療を容易にするための異なるタイプのマイクロバブルの使用を用いる例示的な方法のためのフローチャート。
図15B】撮像のため及び治療を容易にするための異なるタイプのマイクロバブルの使用を用いる例示的な方法のためのフローチャート。
図16】どのようにして定在波が減少又は解消され得るかを示す概略図。
図17】どのようにして素子の同じサブセットが異なるスキャニング平面に使用され得るかを示す概略図。
図18】ユーザが超音波システムと相互作用するために使用し得るユーザ・インタフェースの1つの構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下の説明全体を通じて、本発明のより徹底的な理解を提供するために具体的な詳細が記載されている。しかしながら、本発明は、これらの詳細なしに実践され得る。他の事例では、よく知られている要素は、本発明を不必要に曖昧にすることを回避するために、詳細に示されず、説明されない。したがって、明細書及び図面は、制限的な意味でなく、図示的な意味でみなされるべきである。
【0035】
本発明のいくつかの態様は、超音波を使用して患者の頭部の一部の1つ以上の超音波画像を作成するシステム及び方法を提供する。これらの1つ以上の画像は、超音波画像と以前に獲得された画像の両方に存在する1つ以上の構造(「共通構造」)を識別することによって、以前に獲得された画像とともにレジストレーションされてよい。次いで、レジストレーションされた画像は、超音波画像を獲得するために使用されるトランスデューサに対して1つ以上の標的領域を設置するために使用されてよい。標的領域は、共通構造に対する知られている位置を有することがある。次いで、超音波が、薬物が脳組織に入ることを可能にするように、血液脳関門を開くために、標的領域に対して送達され得る。標的領域に対する超音波の送達は、患者の循環系への1つ以上の薬物の注入と協調されてよい。超音波エネルギーは、血液脳関門が標的領域内で選択的に開けられるように、標的領域上へ集束されてよい。
【0036】
本明細書において説明される方法及び装置は、任意選択で有益に、2つ以上の超音波トランスデューサを適用し得る。トランスデューサのうちの1つ以上は、脳の部分を含む患者の頭部内の構造の画像を獲得するために動作可能である(「撮像トランスデューサ」)。トランスデューサのうちの1つ以上は、標的領域内で血液脳関門の選択的開放を促進するために超音波エネルギーを送達するように動作可能である(「治療トランスデューサ」)。
【0037】
頭蓋は超音波エネルギーを減衰させるので、超音波を用いて脳を撮像すること又は超音波エネルギーを脳へと送信することは、難題である。本発明のいくつかの実施形態は、頭蓋が、超音波の減衰が頭蓋の他のエリア内よりも低いいくつかのエリアを有することを活用する。これらのエリアは、限定されるものではないが、耳の近くの頭部のこめかみ、及び眼の後ろ、及び頭部の後部内を含む。これらのエリア内の頭蓋は、頭蓋の残りと比較して、薄い傾向がある。したがって、超音波エネルギーは、頭蓋の他のエリアと比較して、これらのエリアをより容易に通過することができる。頭蓋の残りと比較して超音波の減衰が低いエリアは、本明細書において「低減衰音響窓」と呼ばれる。超音波エネルギーは、低減衰音響窓を介して脳へと送信されてよく、及び/又はエコー信号は、頭蓋の他のエリアを介するよりも容易に低減衰音響窓を介して脳内の構造から受信されてよい。
【0038】
超音波撮像は、患者の身体への超音波エネルギーの送信と、その後、内部組織によって反射されたエネルギーを検出することに依拠する。頭蓋内には少数の低減衰音響窓しかないので、超音波によって撮像されることができる頭部内の領域は限られている。これらの低減衰音響窓を通してですら、効果的に撮像されることができる構造は限られている。
【0039】
診断撮像は、多くの場合、脳腫瘍に関して患者を診断するときに遂行される。したがって、MRI又はコンピュータ断層撮影(CT)などの他のモダリティーを使用して獲得される脳画像は、多くの患者のために利用可能である。MRI及びCTは、超音波撮像と同様に、頭蓋を貫通する穿通の問題が生じない。そのため、脳のMRIスキャンは、低減衰音響窓を通して超音波トランスデューサを用いて撮像され得る同じ構造を含む脳全体を撮像することが可能である。本発明のさまざまな実装形態は、同じ構造が2つの異なる撮像モダリティーを用いて撮像され得るという現実化を適用する。
【0040】
いくつかの構造は、一方又は両方のこめかみなどの低減衰音響窓を通して実行される超音波撮像によって撮像され得る。これらの構造は、たとえば、ウィリス動脈輪、脳室、及び脳梁などの脳の構造、ならびに/又は患者の脳に相対して既知の位置にある他の構造(たとえば、患者の頭蓋に対して付けられた歯科用インプラント、外科用ネジ、及び整形外科用ハードウェアなど)を含んでよい。これらの同じ構造のすべて又は部分は、動作前MRIスキャン又は動作前CTスキャンにおいて可視であってよい。本発明のいくつかの実施形態では、低減衰音響窓を介して1つ以上の撮像超音波トランスデューサによって取得される超音波画像は、取得された同じ患者のMRI画像又はCT画像に対して「レジストレーション」される。レジストレーションは、両方の撮像モダリティーにおいて撮像された共通構造の画像を処理することによって実行されてよい。
【0041】
治療を容易にするために超音波エネルギーが送達されることになる領域(「標的領域」)は、一般に、動作前画像(たとえば、MRIスキャン及び/又はCTスキャン)内に知られている位置を有する。標的領域の位置は、レジストレーションのプロセスを通して現在取得される超音波画像の座標系内で見つけられ得る。標的領域が超音波画像の視野内にあることは必要でない。次いで、超音波エネルギーは、超音波画像に相対して既知の位置及び方向を有する1つ以上の治療超音波トランスデューサ又はトランスデューサ素子を使用して標的領域に対して送達され得る。
【0042】
治療トランスデューサ及び撮像トランスデューサの知られている位置及び方向は、超音波画像を取得するために使用される治療トランスデューサ及び撮像トランスデューサを共通固定支持構造に対して載置すること、治療トランスデューサ及び撮像トランスデューサを、移動可能である1つ以上の接合部を有する支持構造(たとえば、関節式アーム又は他のマニピュレータ)に対して載置し、接合部の位置を追跡すること、治療トランスデューサ及び撮像トランスデューサをオペレータによって手動で位置決めすること、ならびに位置追跡システム(たとえば、電磁位置追跡装置)を使用して、治療トランスデューサ及び撮像トランスデューサの相対的な位置及び方向をモニタすること、のうちの任意の1つ以上によって維持されてよい。これらの手法を活用する例示的な実装形態が、本明細書において説明される。
【0043】
図2は、患者Pの脳の少なくとも一部分を撮像し、その後、患者Pの血液脳関門を選択的に開くために超音波を送達するために使用され得る例示的なシステム200を示す。システム200は、治療(「動作中期間」)中のMRIスキャナの使用を必要としない。システム200は、超音波システム210を含む。超音波システム210は、トランスデューサ・ケーブル225を介して超音波トランスデューサ・アセンブリ220に結合される。超音波トランスデューサ・アセンブリ220は、患者の頭部の少なくとも上部部分を受け入れるような寸法とされた凹状開放を有するヘルメットの形状であるように示されている。他の構成も除外されない。超音波トランスデューサ・アセンブリ220は、1つ以上の撮像トランスデューサ及び/又は治療トランスデューサ素子を備えてよい。
【0044】
図示されたシステム200は、電子的に制御された静脈内(IV)薬物送達システム230を含む。この非限定的な例では、IVシステム230は、1つのIVバッグ235と、電子弁又は弁システム240とを含むように示されている。他の実施形態では、IVシステム230は、複数のバッグ235を備えてよい。電子弁240は、IVシステム230内の1つ以上のバッグの内容の流量を制御するために使用されてよい。電子弁240は、制御ライン245を介して制御信号を送出し得る超音波システム210によって制御されてよい。信号相互接続モジュール250は、後で説明されるように、電子弁240などの外部デバイス及び周辺デバイスから信号を送出及び受信し、超音波システム210内の周辺機器及びI/Oモジュールと通信し得る。信号相互接続モジュール250は、外部デバイス及び周辺機器に接続するケーブルを接続及び切断する機能も含んでよい。概要
図3は、患者を治療することに関連して超音波を送達するように構成され得る1つ以上の治療トランスデューサのための位置及び方向を決定するために実行され得る非限定的な例示的な方法300を示すフローチャートである。工程305では、動作前CT画像又は動作前MRI画像がシステム200へとインポートされる。システム200は、患者の脳の少なくとも一部分を撮像し、その後、患者の血液脳関門を選択的に開くために超音波を送達するために適用されてよい。図示される実施形態では、超音波システム210は、システム200に対する全体的な制御を提供するコントローラを含み、動作前画像が、超音波システム210によってアクセス可能なデータ・ストア内で提供される、又はこれへとインポートされる。
【0045】
工程310は、いくつかのターゲット構造(たとえば、ウィリス動脈輪)の画像を取得するために、超音波撮像を実行する。撮像は、リアル・タイムで実行され、人間オペレータによってモニタされてよい。これは、患者の頭蓋内の低減衰音響窓を通して超音波画像を取得するように撮像トランスデューサを留置することによって有益になされ得る。
【0046】
工程310はまた、レジストレーションに使用され得る共通構造を識別する。工程320は、超音波画像内の共通構造の位置及び方向を、動作前画像内で可視の同じ共通構造の位置及び方向と比較することによって、超音波画像及び動作前画像をレジストレーションする。レジストレーションは、超音波画像の参照フレーム内の同じ点の座標を生ずるために動作前画像内の点の座標が変換され得る又はその逆である変換を生ずる。
【0047】
工程325では、超音波が送達されることになる標的領域が識別される。標的領域は、動作前画像内で選択されてよい。工程325は、たとえば、治療を必要とする腫瘍もしくは他の罹患エリア、又は開かれることになる血液脳関門のエリアを識別することを含んでよい。この選択は、動作前画像が取得された後の任意の時間に発生してよい。いくつかのケースでは、システム200の外側で、たとえば、治療計画ソフトウェアを使用して、1つ以上の標的領域が識別される。そのようなケースでは、標的領域を識別するデータは、工程305においてシステム200へとインポートされてよい。
【0048】
ひとたびレジストレーションが発生し、標的領域が選択されると、超音波エネルギーが1つ以上の治療トランスデューサによって送達されるべき現在の所望の座標が知られる。次いで、工程330では、1つ以上の治療トランスデューサの位置及び方向が計算されてよい。工程330は、たとえば、1つもしくは複数の治療トランスデューサが留置されるべき所望の座標、及び/又は複数のトランスデューサもしくはトランスデューサのトランスデューサ素子の中からの選択、及び/又は超音波エネルギーを具体的な標的領域に対して送達するために使用されることになるトランスデューサ素子を決定することを含んでよい。方法300は、たとえば、以下で論じられる超音波システム構成のいずれかとともに実行されてよい。
【0049】
超音波システム装置
図4は、患者Pの頭部の上に留置されてよい例示的な超音波トランスデューサ・アセンブリ220を示す。超音波トランスデューサ・アセンブリ220は、複数のトランスデューサ素子を患者の頭部上の所望の位置範囲内に保持及び位置決めする支持構造405を含む。超音波トランスデューサ・アセンブリ220の後ろにある患者Pの頭部410の部分は、太い破線で示されている。
【0050】
超音波トランスデューサ・アセンブリ220は、トランスデューサ素子415を備える。任意選択で、素子415は、撮像するために適合された撮像素子415Aと、治療を容易にするために超音波を送達するために適合された治療素子415Bとを含む。
【0051】
素子415のグループ、すなわちサブセットは、脳を撮像すること又は(たとえば、血液脳関門を開くことによって)治療を容易にするために超音波を送達することなどの共通機能を実行するように構成されてよい。図4では、いくつかの撮像素子415Aが、サブセット420A及び420Bの各々に含まれる。いくつかの治療素子415Bは、サブセット425A及び425Bの各々に含まれる。
【0052】
素子415A及び415Bは、・位置(たとえば、撮像素子415Aは、1つ以上の低減衰音響窓の近くでクラスタリング又は集結されてよく、素子415Bは、より広く分散されてよい-1つ以上の標的領域のおおよその位置が前もって知られているケースでは、トランスデューサ・アセンブリ220は、任意選択で、超音波エネルギーを標的領域に対して送達することに適したエリア内に素子415Bを集結させることによってカスタマイズされてよい)、・受信用回路への接続(たとえば、撮像素子415Aは、超音波エコーを検出し得る受信用回路に接続され、治療素子415Bは、任意選択で、受信用回路に接続されない);・異なる送信用回路への接続(たとえば、治療素子及び撮像素子は、異なるように設計された駆動回路によって駆動されてよい。治療素子は、たとえば、撮像素子よりも低い周波数で動作するように最適化されたより高いパワーの駆動回路によって駆動されてよい)、・パワー(たとえば、治療素子415Bは、撮像素子415Aよりも高いパワーの超音波を生成するように構築されてよい)、・最適な動作周波数(たとえば、治療素子415Bは、撮像素子415Aよりも低い周波数で最も効率的に動作してよい)、・サイズ(たとえば、治療素子415Bは、撮像素子415Aよりも大きくてよい、及び/又は、これよりも広く離間されてよい);・構成(たとえば、治療素子415Bは、撮像素子415Aとは異なる深さにおいて集束する音響レンズを含んでよい)、のうちの1つ以上を含むさまざまな様式において、互いと異なる場合がある。
【0053】
撮像素子415Aは、超音波トランスデューサ・アセンブリ220が患者Pによって装着されるときに低減衰音響窓に隣接する、トランスデューサ・アセンブリ220内の位置において設置されてよい。これは、図4のサブセット420A及び420Bがこめかみに設置されることによって図示される。画像を作成するように構成されたトランスデューサ素子のサブセットは、一般に、「撮像サブセット」と呼ばれる場合がある。
【0054】
治療を容易にするために超音波エネルギーを送達するために使用されるトランスデューサ素子のサブセットは、低減衰音響窓の近くに据えられなくてもよい。したがって、「治療サブセット」は、これらの治療素子を、超音波を標的領域に対して送達することが最適である位置において含むように選択されてよい。治療サブセットは、多くの場合、撮像サブセットとは異なる位置にある。これは、サブセット425A及び425Bによって図示される。いくつかの実施形態では、トランスデューサ220は、超音波エネルギーが広範囲の標的領域に対して送達され得る広範囲の位置において設置された多数の治療素子を含む。この多数の治療素子から、サブセットは、超音波エネルギーを具体的な標的領域に対して送達するように選定されてよい。
【0055】
トランスデューサ素子のサブセットは、撮像であっても、又は治療を容易にする超音波エネルギーを送達することであっても、タスクを達成するのに十分な素子を含む。サブセット内の素子の編成も、効果的な動作のための要因であり得る。図4では、サブセット420A、420B、425A、及び425Bは円形であるように描かれ、個々の素子は2D配列で編成される。しかしながら、サブセット内の素子グルーピングは、本質的に円形である必要はない。素子グルーピングは、湾曲した直線状フォーマットなどの任意の適切な形状であってよい。例示的な一実施形態では、サブセットの好ましいサイズは、直径に関して2~3cmの範囲内にある。個々のトランスデューサ素子415は、ある範囲の形状を有してよい。各素子は円形断面を有してよいが、方形形状などの他の形状も除外されない。
【0056】
異なるサブセットは、サブセット内に含まれるトランスデューサ素子の数、含まれるトランスデューサ素子が分散されるエリアの形状及びサイズ、ならびに所望の機能(たとえば、撮像又は治療を容易にするために超音波を送達すること)を実行するようにトランスデューサ素子が動作させられる様式を含むさまざまな様式に関して、互いと異なってよい。
【0057】
超音波制御サブシステム
図5は、撮像し、治療を患者の脳に対して送達するように動作可能な超音波システム210の制御サブシステムの動作を図示する。本明細書において説明される制御サブシステムは、他の構成を有する超音波システムに適用されてよく、及び/又はスタンド・アロン構成要素として供給されてよい。ブロック505は、他のモダリティー(たとえば、MRIスキャン又はCTスキャン)からの画像、ならびに他のデータを含有し得る、データ・ストアを備える。ブロック505は、制御及び算出ブロック510と通信し、制御及び算出ブロック510は、1つ以上のモジュールを含んでよい。制御及び算出ブロック510内のモジュールは、個々に、又は互いとの任意の組み合わせもしくは副組み合わせで、のどちらかで、用いられてよい。
【0058】
モジュール510Aは、送信動作に使用されるトランスデューサ素子の動作に影響する制御信号を生成する(すなわち、素子が超音波エネルギーを脳へと送出する場合)。
たとえば、ブロック510Aは、・どのトランスデューサ素子415又はトランスデューサ素子415を備えるサブセットが送信動作に使用されるか、・どの波形がトランスデューサ素子415によって送信されるか、・どの送信遅延が個々のトランスデューサ素子415に適用されるか、・どの振幅において、個々のトランスデューサ素子415が駆動されるか、・どの送信アポダイゼーション機能がトランスデューサ素子415に適用されるか、・どの時間に、トランスデューサ素子415が超音波を送信するように動作させられるか、・どの周波数でトランスデューサ素子415が駆動されるか、・などのうちの1つ以上を決定する制御信号を生成し得る。モジュール510Aは、トランスデューサ素子415の位置を指摘するデータ構造を含んでもよいし、又はこれにアクセスできてもよい。このデータ構造は、たとえば、特定の送信動作のために、及び/又は送信遅延を計算するために、どのトランスデューサ素子415が使用されるかという決定において使用され得る。
【0059】
モジュール510Bは、受信動作に使用されるトランスデューサ素子の動作に影響する制御信号を生成する(すなわち、素子が、脳内の構造からエコー信号を受信する場合)。モジュール510Bからの制御信号は、たとえば、・どのトランスデューサ素子415が、受信するために使用されるか、・ビームフォーミング・パラメータ・受信アポダイゼーション機能・受信ゲイン・受信深さ・適用される画像処理・などのうちの1つ以上を決定し得る。
【0060】
記憶モジュール510Cは、限定されるものではないが、受信するように構成された素子において受信されるデジタル化された無線周波数(RF)データ、他のモダリティーから獲得され、超音波システム210に対して移された画像、ならびに制御及び算出ブロック510内で実行される算出の中間結果又は最終結果を含むさまざまな情報を記憶するために使用され得るデータ・ストアを含む。
【0061】
モジュール510Dは、画像形成及び画像処理に関係付けられた算出を実行してよい。モジュール510Dは、超音波画像形成に適した任意の技術を適用してよい。画像形成に関係付けられた算出の非限定的な例では、いくつか又はすべての撮像素子415Aから受信されたRFデータは、モジュール510Bによって算出された受信遅延に基づいてモジュール510D内で合計されてよい。これらの合計に基づいて、解剖学的構造の画像が形成されてよい。画像処理に関係付けられた算出の非限定的な例では、画像が形成された後、画像は、限定されるものではないが、フィルタリング、ログ圧縮、後処理マップに対するマッピングなどを含むさまざまな様式で処理されてよい。
【0062】
モジュール510Eは、限定されるものではないが、他の撮像モダリティーからの画像に対する動作中超音波画像のレジストレーションに関する算出などの、さまざまな算出を実行してよい。これらの算出の結果は、適切なエネルギーを送信するように動作可能なトランスデューサを選択及び/又は位置決めするために適用されてよい。
【0063】
モジュール510Fは、限定されるものではないが、リアル・タイム撮像、及び患者に対する超音波エネルギーの送信のタイミングとの患者への薬物又は他の化合物の静脈内注入のタイミングの協調などのさまざまなプロセスのための制御信号を生成及び提供してよい。
【0064】
周辺制御機構及びI/Oモジュール510Gは、超音波システム210に関連して使用され得る外部デバイス及び周辺機器に対して送出され得る制御信号を生成してよい。これらのデバイス及び周辺機器は、限定するものではないが、静脈内薬物送達システム、トランスデューサ位置決めシステム、トランスデューサ位置検出システムなどを含んでよい。I/Oモジュール510Gはまた、外部デバイス及び周辺機器からの入力を受け付け、その入力を制御及び算出ブロック510内の他のモジュールに対して提供してよい。
【0065】
制御及び算出ブロック510はまた、ユーザ・インタフェース・モジュール515に対してインタフェースしてもよい。ユーザ・インタフェース・モジュール515は、限定されるものではないが、キーボード、マウス、タッチ・スクリーン、トラックボール、タッチ・パッド、ジェスチャ・ベース・インタフェース、音声コマンド・インタフェース、ディスクリート・スイッチ又は制御機構、及びディスプレイ520などの、1つ以上のユーザ・インタフェース・デバイスの使用を可能にしてよい。ユーザ・インタフェースを通じて、許可されたユーザは、超音波システム210を動作させ得る。これらの動作は、標的領域を選定し、治療のために超音波を生成するために使用されることになる素子415Bのサブセットを選定するアビリティを含んでよい(手動制御オプションが選択される場合)。他の動作も可能である。いくつかの実施形態では、標的領域の選択は、ユーザがユーザ・インタフェース・デバイスのうちの1つ以上を使用して3Dレンダリングされた画像をナビゲートすることを可能にすることによってされる。ディスプレイ520は、限定されるものではないが、取得された超音波画像、他のモダリティーからの画像、マージされた画像、患者情報、及び許可されたユーザのための命令又はオプションを含むさまざまな情報を表示するために使用されてよい。
【0066】
たとえば、超音波エネルギーを送信することになるトランスデューサ素子415のサブセットを決定した後、送信動作のためのパラメータが設定されてよい。これらのパラメータは、限定されるものではないが、遅延の長さ及び送信周波数を含んでよい。これらのパラメータは、本明細書において他の場所で論じられるように、オペレータによって手動で選択されてもよいし、パラメータのセットに基づいて自動的に選択されてもよい。これらのパラメータは、超音波システム210のさまざまなモジュールに対して使用及び適用されてよい。
【0067】
送信動作中に、システム制御モジュール510Fは、パラメータに基づいた適切な制御信号を送信(TX)増幅器430に対して送出してよい。次いで、TX増幅器430は、マルチプレクサ(MUX)435を通じて直接的に、又は送信/受信(TX/RX)スイッチ440を通じて、次いでMUX435を通じて、のどちらかで、適切な信号を超音波トランスデューサ・アセンブリ220の素子に対して適用してよい。図5では、TX増幅器430は、点線525によってMUX435に結合され、破線530によってTX/RXスイッチに結合されるように示されている。この構成によって、超音波システムは、送信と受信の両方に接続された素子に加えて、送信専用素子を駆動することができる。このやり方において、異なる素子タイプの動作は、本明細書において他の場所で解説されるいくつかの利点を提供する。
【0068】
対照的に、従来の超音波撮像システムでは、TX増幅器は、典型的には、TX/RXスイッチのみ(素子に対するその後の接続は、おそらく、MUXを通してである)と、送信と受信の両方ができる支持素子のみに結合される。したがって、点線525が図示するように、TX増幅器430はMUX435に対して結合し、次いで、MUX435は、接続225Cを介して送信専用素子415Bの一例に対して結合する。同時に、TX増幅器430はTX/RXスイッチ440に対して結合してよく、次いで、TX/RXスイッチ440は、接続225Aを通して例示的な送信及び受信素子415Aに対して接続するために、MUX435を通して結合する。図5に示されるTX増幅器430からMUX435への接続525は、従来の超音波撮像システム内には存在しない。
【0069】
TX/RXスイッチ440は、受信パス内の電子機器を送信パス内に存在し得る比較的高い電圧から保護する働きをしてよい。送信する電子機器と受信する電子機器が同じ物理的トランスデューサ素子に電気的に接続されるので、送信及び受信する素子に対する保護が必要とされ得る。図5に示される例示的な実施形態では、素子415Bは受信動作に使用されないので、TX/RXスイッチ440は、送信専用素子415Bに必要でない。
【0070】
いくつかの実施形態では、超音波トランスデューサ・アセンブリ220内の素子の数が超音波システム210内の電子チャネルの数よりも大きい場合、MUX435が設けられてよい。MUX435があれば、超音波トランスデューサ・アセンブリ220内の素子のさまざまなサブセットは、素子よりも少ない電子チャネルがある場合でも、適切なパラメータとともに動作させられてよい。実際には、これらのシステム及び方法を利用するとき、その超音波トランスデューサ・アセンブリ220が、各種類を動作させることが可能であるチャネルよりも多い、各種類の素子(たとえば、撮像素子415A及び治療素子415B)を有するであろうことが予期される。
【0071】
受信動作の場合、MUX435は、送信及び受信する素子を受信側電子機器に対して接続する。受信信号パスは、例示的な送信及び受信素子415Aから開始して右に向かう矢印によって示されている。この例示的な実施形態では、信号は、MUX435、TX/RXスイッチ440、低雑音増幅器(LNA)445、時間ゲイン補償器(TGC)450、及びアナログ・デジタル変換(ADC)455を通過する。次いで、ADC455によってデジタル化された信号は、制御及び算出ブロック510によるさらなる処理のために、記憶モジュール510C内に記憶され得る。
【0072】
図4は、異なるトランスデューサ素子のための図5の一般的な制御サブシステムの構成を図示する。撮像素子415Aは、上記で論じられたような送信動作及び受信動作を可能にする電子機器429Aに結合される。TX増幅器430AはTX/RXスイッチ440Aに結合され、次いで、TX/RXスイッチ440Aは、破線矢印によって示されるように、ケーブル225Aを通して素子415Aに対して結合する前にMUX435Aに結合される。受信動作の場合、超音波信号は、実線矢印によって示されるように、MUX435A、TX/RXスイッチ440A、LNA445A、TGC450A、及びADC455Aを通過する。送信機能と受信機能の両方の動作によって、超音波撮像が超音波システム210によって実行されることが可能になる。電子機器429Bは、上記で説明されたセットと反対の別の撮像素子415Aのために構成される。電子機器429Bは、電子機器429Aと同じであってもよいし、これに類似していてもよい。電子機器429B内に含まれる構成要素は、接尾辞「Β」を含む参照によって識別される。
【0073】
素子415Bは、治療を容易にするために超音波エネルギーを送達するように構成された素子の一例である。この例では、素子415Bは、超音波を標的領域に対して送達するようにのみ構成される。素子415Bは、素子415Bがエコー信号を受信することを可能にするために電子機器を必要としない。そのため、素子415Bは、送信動作のみを可能にする電子構成要素429Cに結合されるように示される。ここで、TX増幅器430Cは、MUX435Cに対して直接的に結合され、次いで、MUX435Cは、ケーブル225C(点線矢印によって図示される)を介して素子415Bに対して結合される。電子機器429Cに類似している電子機器429Dのセットは、別の治療素子415Bのために構成される。電子機器429D内に含まれる構成要素は、接尾辞「D」を含む参照によって識別される。
【0074】
サブセット内のすべての素子が送信のみ又は送信及び受信のどちらかの同じ動作を実行するように構成され得る素子のサブセットを形成することが、有利な場合がある。図4では、サブセット420A及び420B内のすべての素子は、送信及び受信するように構成されてよいが、サブセット425A及び425B内の素子などのすべての他の素子は、送信することのみを行うように構成されてよい。この手法によって提案される利点は、いくつかのサブセットは、画像を形成するために最適に送信及び受信するように構成されてよいが、他のサブセットは、血液脳関門を開くことを促進するために最適に送信することのみを行うように構成されてよいことである。いくつかの実施形態では、さまざまなサブセット内の素子は、限定されるものではないが、送信周波数及び送信帯域幅などの異なるパラメータとともに動作させられてよい。
【0075】
これらのさまざまなサブセット内の素子は、異なるように設計され、異なるように挙動してよい。比較的に高い超音波周波数は、より少量の減衰を経験し、脳のいくつかの部分を撮像するために効果的であることが示されている。したがって、非限定的な例では、画像を形成する素子のサブセットは、より高い周波数応答(たとえば、2MHzに中心が置かれる)を有してよい。対照的に、脳に適用される比較的に低い超音波周波数は、血液脳関門の透過性を選択的に増加させることができる。したがって、非限定的な例では、治療を容易にするために超音波エネルギーを送達するために使用される素子のサブセットは、より低い周波数応答(たとえば、0.5MHzに中心が置かれる)を有してよい。いくつかの実装形態では、治療素子は、0.25MHz~5MHzの範囲内にある周波数において駆動される。いくつかの実装形態では、撮像トランスデューサ素子は、約1.75MHz~10MHzの周波数範囲内にある周波数において駆動される。
【0076】
図4に示される例では、及び本発明のいくつかの他の例示的な実施形態では、送信することのみを行うことができる1つ以上のトランスデューサ素子の動作とともに、送信及び受信することができる1つ以上のトランスデューサ素子の動作は、有利である。そのような構成によって、より多くのトランスデューサ素子が、より少ない電子回路によって支持されることが可能になる。一例として、送信専用素子は、より少ない電子機器を必要とする。送信及び受信する素子とともに送信専用素子を有することが望ましいが、本明細書において説明されるシステム及び方法は、他の構成を排除しない。いくつかの実施形態では、同じ素子は、「送信専用」モードでは、治療を容易にするために超音波エネルギーを送達するとき、パラメータの1つのセットとともに、ならびに「送信及び受信」モードでは、撮像するとき、パラメータの別のセットとともに、動作させられることができる。
【0077】
図6A及び図6Bは、1つ以上の素子が、限定されるものではないが、角度センサ、圧力センサ、熱センサ、近接性センサ、脳波(EEG)センサ、及び滑りセンサなどの1つ以上のセンサに対して結合される例示的な一実施形態を図示する。そのようなセンサは、任意選択で有益に、超音波トランスデューサ・アセンブリ220内で提供されてよい。
【0078】
図6Aでは、素子グループ600は2つの超音波素子415を備え、超音波素子415は、共通機械的サブ構造605上に載置される。機械的サブ構造605の方向は、さまざまな機構のいずれかによって制御されてよい。この例示的な実施形態では、機械的サブ構造605の方向は、モータ610(たとえば、ステッパ・モータ、サーボ・モータ)を備えるリニア・アクチュエータ又は他のリニア・アクチュエータによって制御され、わかりやすくするため、これらのうちの1つのみがラベル付けられている。各モータ610は親ネジ615に対して結合されてよく、そのうちの1つのみがラベル付けられ、その位置は、対応するモータ610によって制御されてよい。したがって、各親ネジ615の位置を独立して制御することによって、素子415の方向が制御され得る。他の実装形態は、他のタイプのリニア・アクチュエータを使用してよい。
【0079】
センサ620及び625も示されている。図示される実施形態では、センサ620及び625はカバー630の中に埋め込まれ、これによって、超音波エネルギーがカバー630を通過することが可能になり得る。カバー630は、素子と皮膚を分離し、各一方を他方から保護する働きもする場合がある。いくつかの実施形態では、センサ620及び625のうちの1つ以上は、素子のグループの方向を測定し、超音波システムに対して報告を返すために使用されてよい。これら及び他の実施形態では、他の感知されたパラメータは、任意選択で、超音波システムに対して報告を返してよい。この例示的な実施形態では、2つのセンサが示されているが、より多い又はより少ないセンサが設けられてよい。
【0080】
図6Aは、4つのモータ610(たとえば、ステッパ・モータ、サーボ・モータ、又は他の回転アクチュエータ)が機械的構造635に対して結合されていることを示す。機械的構造635は、超音波トランスデューサ・アセンブリ220の構造を提供してよい。図6Bは、素子グループ600の3つのインスタンスが機械的構造635に対して結合され、これが超音波トランスデューサ・アセンブリ220を形成する又はその一部であるケースを示す。わかりやすいように、図では、素子及びセンサに対する電気接続は示されない。超音波トランスデューサ・アセンブリ220の構造内での素子グループ600の空間的位置は、各素子グループ600に取り付けられたセンサの出力から、及び/又は素子グループ600内に含まれるトランスデューサ素子の知られている位置から、超音波システムに対して知られる場合がある。
【0081】
超音波トランスデューサ・アセンブリ220内の素子の方向を測定及び制御する能力は、この能力が、頭蓋の表面に対して垂直又はほぼ垂直など、所望の構成内で素子を方位付けすることを容易にするので、有利である。この方向は、頭蓋の表面における縦波とせん断波の間のモード転換の可能性を減少又は除去することが知られている。いくつかの実施形態では、素子の方向は、自動的に調整されてよい。動作前画像は、任意の位置において、(たとえば、接平面を決定することによって)頭蓋の傾斜度(angularity)を評価するために使用されてよく、レジストレーションのプロセスを通じて、本明細書において論じられるように、頭蓋の任意の断面の傾斜度は知られ得る。したがって、素子は、この知識を使用して頭蓋に対する所望の角度で方位付けされるように自動的に調整されてよい。
【0082】
この能力はまた、それによって超音波トランスデューサ・アセンブリ220が、異なるような形状にされた頭部に対応することが可能になるので、有利である。いくつかの実施形態では、モータ610は、超音波トランスデューサ・アセンブリ220が患者の頭部の形状をなぞるように、1つ以上の超音波素子415又は素子グループ600を位置決めするために、1つ以上の親ネジ615を前進又は後退させてよい。モータ610は、ステッパ・モータ又はサーボ・モータなどの、素子415を前進又は後退させるように動作可能な任意のタイプのリニア・アクチュエータとすることができることが理解されるであろう。ロボット的に位置決めされるトランスデューサ
図7Aは、ロボット・マニピュレータ(この例では、電気機械アームによって提供される)を特徴づける例示的な一実施形態による超音波システム700を示す。システム700では、超音波素子は、素子ハウジング705A、705B、及び705C(本明細書において素子ハウジング705と呼ばれる、又は総称して素子ハウジング705と呼ばれる、任意の個々の素子ハウジング)内にある。素子ハウジング705及びそれに含有される素子は、総称してトランスデューサ710と言われる場合がある。
【0083】
各トランスデューサ710は、1つ以上のトランスデューサ素子を含むことができる。素子は、限定されるものではないが、直線状、2D配列フォーマットで、ランダムに分散される、平面内に、1Dの凸状もしくは凹状の形状で、又は2Dの凸状もしくは凹状の形状で、などの、さまざまな構成のいずれかで配置されることができる。素子は、素子の表面の柔軟な形状を手に入れることを可能にする構造上に造られてよい。そのような能力の1つの利益は、頭蓋と接触するハウジングの専有面積(footprint)の領域の上で頭蓋の表面にマッチングする又はぴったりマッチングすることが可能になり得ることである。この能力は、たとえば、図6A及び図6Bに示される機構を用いて成し遂げられ得る。トランスデューサ710は、1つ以上の素子グループ600を備えてよく、上記で説明されたように素子を位置決めするための方法を実装してよい。
【0084】
素子ハウジング705によって支持される素子はすべて、送信及び受信することが可能であってもよいし、送信するためにのみ接続されてもよい。両方のタイプの素子が素子ハウジング705内に存在することも可能である。
【0085】
各トランスデューサ710は、電気機械アーム715に対して結合されてもよいし、対応するハウジング705を1つ以上の自由度(DOF)で位置決めすることが可能である他の移動可能な支持具に対して結合されてもよい。いくつかの実施形態では、アーム715は、対応するトランスデューサ710を6つのDOFで位置決めすることが可能である。アーム715A、715B、及び715C(本明細書においてアーム715と呼ばれる、又は総称してアーム715と呼ばれる、任意の個々のアーム)。3つのアームが図示されているが、より多い又はより少ないアーム715をもつ構成が可能であることが留意されるべきである。トランスデューサ710を位置決めすることが可能であることに加えて、アーム715は、電気ケーブル又は他のパイプもしくは管腔を支持してよい。パイプ又は管腔は、限定されるものではないが、超音波結合ゲルなどの流体を搬送してよい。いくつかの実施形態では、パイプ又は管腔は、トランスデューサ710と患者の間のインタフェースにおいて超音波結合ゲルを分配するように配置される。電気ケーブル、パイプ、又は管腔は、たとえば、アーム715に沿って延びるコンジット内で担持されてよい。いくつかの実施形態では、コンジットは、アーム715内に設置される。
【0086】
各アーム715の位置及び方向は、手動で調整されてもよいし、ロボット的に調整されてもよい。非限定的な例では、逆運動学が、トランスデューサ710にとっての所望の位置を成し遂げるように、機械的アームの各接合部の角度を決定するために使用されてよい。アーム715A、715B、及び715Cは、それぞれアーム制御ユニット720A、720B、及び720C(本明細書においてアーム制御ユニット720と呼ばれる、又は総称してアーム制御ユニット720と呼ばれる、任意の個々のアーム制御ユニット)に対して結合されているように示されている。アーム制御ユニット720は、アーム715の方向及び位置を制御するように動作可能な電気システム又は電気機械システムを含有してよい。そのような電気機械システムの詳細は、一般によく知られており、そのため、本明細書では提供されない。
【0087】
アーム715の位置及び方向を制御する制御信号は、周辺制御機構及びI/Oモジュール510Gに由来し、超音波システム700から各アーム制御ユニット720に対して送出されてよい。これらの制御信号を伝えるケーブルは、725A、725B、及び725Cとラベル付けされた破線によって図示されている。いくつかのケーブリング及び電子的構成が可能であり、図7Aは非限定的な例を示すことが理解されるであろう。例示的な一実施形態では、図5に示されるMUX435は、超音波システム700内に物理的に留置されてよい。別の例示的な一実施形態では、MUX435は、アーム制御ユニット720内に留置されてよい。
【0088】
各アーム制御ユニット720は、限定されるものではないが、自立型支持構造、ベッドのレール、及び化学療法用椅子に対して結合された支持構造などの、機械的グラウンド(mechanical ground)に対して結合されてよい。機械的グラウンドの使用は、アーム715の位置及び方向が制御され得るように、支持を提供する助けとなり得る。ちょうど図2に示されるように、超音波システム700は、電子的に制御されたIV薬物送達システム230に対しても結合されてよい。
【0089】
多くのタイプのセンサが、超音波トランスデューサと関連付けられ得る。たとえば、そのようなセンサは、・トランスデューサと患者の間の力を測定する1つ以上の圧力センサ、・1つ以上の位置センサ、・脳の電気活動を測定する1つ以上の脳波センサ(EEG)、・などのうちの1つ以上を含んでよい。そのようなセンサの構造及びそのようなセンサがどのようにトランスデューサに対して取り付けられるかが、図8を参照しながらさらに詳細に解説される。
【0090】
センサから収集された情報は、ケーブル725A、725B、及び725Cを介して制御及び算出ブロック510に対して送出されてよい。限定されるものではないが超音波パラメータ(ゲイン、周波数など)などのパラメータ、又はアーム715の位置を制御する制御信号は、受信されたセンサ情報に応答して生成されてよい。
【0091】
例示的な一実施形態では、患者の頭蓋と接触する接触角センサが、トランスデューサ710に対して結合される。このセンサは、頭蓋の接触点における頭部の角度を算出ブロック510に対して報告してよく、これによって、周辺制御機構及びI/Oモジュール510Gが制御信号を生成することが可能になる。これらの制御信号は、アーム制御ユニット720Cに対して送出されてよく、アーム制御ユニット720Cがコマンドを実施し、素子ハウジング705Cが頭蓋に対して所望の位置及び角度で方位付けされるような様式でアーム715Cを移動させるために必要なコマンドを備えてよい。
【0092】
いくつかの実施形態では、ひとたび所望の構成で位置決めされると、アーム715は、患者が移動した場合、自らを自動的に再位置決めしてよい。この自動的再位置決めは、患者の動きに関係なく脳の同じ領域が超音波照射又は撮像され得るように素子ハウジング705を再位置決めすることを含んでよい。
【0093】
超音波システム700は、超音波照射又は撮像されるターゲット・エリア又はボリュームが特定の閾値だけ異なる場合、いくつかのアクションがトリガされるようにプログラムされてよい。非限定的な例では、この閾値は、ターゲット・エリア又はボリュームの閾値比率又は量(たとえば1%)が基準ターゲット・エリア又はボリュームと異なるとき、トリガされる。いくつかの例示的な実施形態では、超音波画像は、本明細書において説明されるように周期的又は連続的に取得され、現在の超音波画像のすべて又はいくつかの特徴は、前の超音波画像の対応する特徴と比較される。現在の超音波画像と以前に獲得された超音波画像との差を表すメトリックの値が閾値を超す場合、アクションがトリガされてよい。
【0094】
トリガされるアクションは、限定されるものではないが、撮像セッション又は治療セッションをストップすること、同じエリアが(閾値内で)対処されるようにトランスデューサ710を自動的に再位置決めしようとすること、又は許可された人間オペレータに、トランスデューサ710を手動で再位置決めするように介入することを求めること(たとえば、セッションを一時停止して、ユーザ・インタフェースを通じてオペレータに対して命令を提供することによって)を含んでよい。
【0095】
超音波システム700は、各アーム715を他のアーム715から独立して調整する能力を含んでよい。あるいは、アーム715は、患者の頭部の形状及びその動きに関する情報が与えられると、互いと協力して自動的に位置決めされてよい。
【0096】
いくつかの実施形態では、患者の移動に関する情報は、素子ハウジング705内のセンサによって提供される情報に限定されない場合がある。限定されるものではないが、カメラなどのセンサは、ベッド、天井、患者、及び他の自立型構造などの他の位置内にも留置されてよい。そのようなセンサは、患者の動きに関する情報を供給するために使用されてよい。カメラ・ベースの位置追跡システムは商業的に入手可能であり、トランスデューサ710及び/又は患者の頭部の位置及び方向を追跡するために適用されてよい。
【0097】
図7Aは、患者の頭部上に留置された慣性測定ユニット(IMU)センサ730を示す。このセンサからの示度は、周辺制御機構及びI/Oモジュール510Gによって処理されるために、ケーブル735を介して超音波システム700に対して送出されてよい。患者の動きの示度が閾値を超える場合、モジュール510Gは、アーム715のための新しい位置を計算してよい。
【0098】
患者位置の変化に関する計算は、超音波システム700がどのように構成されるかに応じて、絶えず実行されてもよいし、周期的に実行されてもよい。例示的な計算では、患者の頭部の初期位置は、トランスデューサ710の位置及び方向とともに取得及び記憶される。トランスデューサ710は、初期には、トランスデューサ710が実行するように構成された機能にとって適切な位置にあると仮定すると、患者のいかなる移動も記録され得る。したがって、患者に対するトランスデューサ710の位置のいかなる変化も、トランスデューサ710の現在の位置は依然として適切なターゲットボリュームの閾値内にあるかどうかを決定する計算をトリガし得る。閾値が超えられる場合、制御信号は、所望のボリュームをターゲットにするように、素子ハウジング705を再位置決めするために、アーム制御ユニット720に対して送出されてよい。素子ハウジング705の位置を更新すること以外のアクションも、起こるようにプログラムされてよい。例示的な一実施形態では、閾値が、特定の量だけ超えられる場合、スキャニングをストップすること、又は警告メッセージを提供することなどのアクションが、超音波システム700によって実行されてよい。
【0099】
いくつかのシナリオでは、超音波システム700が、超音波システム210に勝るいくつかの利点を提供する場合がある。たとえば、トランスデューサ素子は治療中に動的に位置決めされ得るので、超音波システム700が、動作のために、より少ないトランスデューサ素子を必要とする場合がある。そのうえ、患者の解剖学的構造すなわち頭部のサイズ及び形状の変動は、ある範囲の患者とともに使用するのに適した超音波トランスデューサ・アセンブリ220の製作を困難にし得る。手動で位置決めされるトランスデューサ
図7Bは、さらに別の構成を有する超音波システム750を図示する。超音波システム750は、超音波システム700に類似しており、撮像し、及び/又は治療を容易にするために超音波エネルギーを送達してもよい1つ以上のトランスデューサも備える。システム750では、1つ以上の超音波トランスデューサは、人によって手動で患者の頭部上の適切な位置に留置されてよい。いくつかの実施形態では、6DOFセンサは、トランスデューサ760A及び760Bに対して結合されてよい。そのようなセンサは、トランスデューサ760A及び760Bの位置及び方向が追跡され、超音波システム750に対して通信されることを可能にし得る。図示されていないが、患者の移動は、この構成では、ちょうど図7Aで説明されるようにモニタされてよい。他の実施形態では、撮像を実行することと治療を容易にすることの両方を行うためにオペレータが1つ以上の位置の中に適切に留置することができるであろう単一のトランスデューサが設けられてよい。
【0100】
位置センサ又は圧力センサなどのセンサが、超音波システム750とともに有益に使用され得る。図示する例として、トランスデューサ760B上に位置センサを設けることによって、超音波システム750が、トランスデューサ760Bの実際の位置を所望の位置と比較することが可能になるであろう。これによって、その位置を調整するために、さらなるフィードバック及び命令がユーザに対して提供されることが可能になるであろう。
【0101】
図8は、1つ以上のセンサをトランスデューサに対して結合するための例示的な構造を示す。この例では、剛性スリーブ805は、トランスデューサ810上に密に嵌合する。スリーブ805は、1つ以上のセンサを支持する。センサ815A、815B、及び815C(本明細書においてセンサ815と呼ばれる、又は総称してセンサ815と呼ばれる、任意の個々のセンサ)は、描かれるようにスリーブ805上に留置されてもよいし、その他の適切なところならどこでも留置されてもよい。スリーブ805の剛性によって、トランスデューサ810とセンサ815は、ひとたびスリーブ805がトランスデューサ810上に嵌合されると、互いに対して静止したままであることが可能になる。この例示的な実施形態では、スリーブ面820は、トランスデューサ810の表面と同じ高さではない。しかしながら、他の実施形態では、2つの面は同じ平面内にある場合がある。
【0102】
センサ815Cなどのセンサは、トランスデューサが患者の皮膚に対して押し付けられる圧力を測定する圧力センサであってよい。示されるように、トランスデューサ810は、トランスデューサ・ケーブル825に対して電気的に接続されてよい。同様に、センサ815は、センサ・ケーブル830に対して接続されてよい。本例では、センサ815Cは、センサ・ケーブル830を通して超音波システム700又は750に対して圧力データを出力してよく、次いで、圧力データは、制御及び算出ブロック510によって受信されてよい。
【0103】
制御及び算出ブロック510内のモジュールは、受信された圧力データを所望の圧力の範囲と比較してよい。所望の圧力の範囲に関するデータは、記憶モジュール510C内に記憶されてよい。受信された圧力データが所望の範囲外である場合、いくつかのアクションがトリガされてよい。これらのアクションは、限定されるものではないが、ユーザ・インタフェース515を通じて警告を示すことを含み、トランスデューサ810が、図7Aに示されるものなどの電気機械アーム715に対して結合される場合、所望の範囲内の圧力を取得するようにトランスデューサ810の位置を変えるために、制御がアーム制御ユニット720に対して送出されることがある。共通参照フレームの確立
共通座標系におけるさまざまなセンサの位置及び方向の測定について説明するために共通参照フレームを確立することが有利な場合がある。共通参照フレームは、すべての画像及び位置が参照されることができる原点及び方向を有する、便利であるが恣意的に選定された座標系である。たとえば、図7Aに図示される構成では、座標系740は、アーム制御ユニット720Aに対して設置されてよい。次いで、この座標系は、すべての他の位置及び方向に関係する測定のための参照フレーム(「共通参照フレーム」)として使用されてよい。図7Bに図示される構成では、座標系790は、共通参照フレームを確立するために使用されてよい。これらの例の両方において、参照フレームの原点は、機械的グラウンド(それぞれ745及び795)に設置される。図4に示される構成における参照フレームは、座標系460によって表される。この参照フレームは、この参照フレームは機械的にグラウンドされないという点で、図7A及び図7Bに示される参照フレームと異なる。座標系460は、患者が頭部を移動させた場合、移動することができる。しかしながら、超音波トランスデューサ・アセンブリ220及び頭部410は互いに対して移動していないという仮定の下で、このタイプの参照フレームは等しく有効かつ適切であり、さらなる算出複雑性をもたらさない。
【0104】
いくつかの実装形態は、位置感知システムを使用して共通参照フレームを確立するためのシステム及び方法を提供する。限定されるものではないが、電磁(EM)ベース・システム又は光ベース・システムなどのさまざまなタイプの位置感知システムが利用されてよい。
【0105】
図7B及び図8は、EM送信機785を使用して、超音波トランスデューサと関連付けられたセンサの位置を決定する例示的な一実施形態を示す。たとえば、EMセンサはスリーブ805上に留置されてよく、参照EM送信機785は、参照EM信号生成器785に対して定義された座標系におけるトランスデューサの位置及び方向を確立することが可能であってよい。したがって、複数のトランスデューサが存在し(図7Bに示されるように)、各トランスデューサが1つ以上のEMセンサに対して結合される場合、トランスデューサの各々の位置及び方向は、参照フレームに関係して、そしてその後、互いに関係して見つけられてよい。トランスデューサの位置及び方向の知識は、上記で論じられたようにトランスデューサを適切な位置に留置する方法を用いて、任意選択で有益に使用されてよい。
【0106】
超音波画像の取得
図3における例示的な方法300に戻ると、工程305において、頭部の動作前MRI画像又は動作前CT画像が取得され、超音波システムへとインポートされた後、工程310において、患者の頭部の少なくとも一部分のリアル・タイム撮像が実行される。脳内のいくつかの構造を含む患者の脳の部分の画像を取得することが望ましい。以前に説明されたように、いくつかの構造は、超音波を使用して低減衰音響窓を通して撮像されてよい。したがって、いくつかの実施形態では、画像を形成するために使用される超音波トランスデューサは、これらの低減衰音響窓に位置決めされてよい。次いで、超音波撮像が実行されてよく、これらの画像内で可視の構造は、超音波画像参照領域として働くために選択されてよい。選択のプロセスは、以下で解説されるように、セグメンテーションによって達成されてよい。
【0107】
これが図4における構成とともにどのように実行され得るかを図示するために、超音波トランスデューサ・アセンブリ220は、サブセット420A及び/又は420Bが患者Pのこめかみに隣接するように、患者Pの頭部上に位置決めされてよい。一般的な頭蓋の解剖学的構造についての知識を使用して、超音波トランスデューサ・アセンブリ220は、患者がアセンブリを装着するとき、撮像するように構成されたサブセットが1つ以上の低減衰音響窓に隣接して位置決めされるように構築されてよい。
【0108】
図7Aに示される構成では、命令は、撮像トランスデューサ710A及び/又は710Bが低減衰音響窓に隣接して位置決めされるようにアーム715を制御するために、超音波システム700によって提供されてよい。
【0109】
図7Bに示される構成では、人間オペレータは、トランスデューサ760Aがこれらの窓のうちの1つに適切に留置されるように、トランスデューサ760Aを手動で位置決めしてよい。トランスデューサ760A上のセンサは、所望の位置が到達されたかどうかを検出してよく、調整が必要とされる場合、オペレータに対してフィードバックを与えてよい。
【0110】
参照領域選択
工程315において、工程310において取得される超音波画像参照領域内で見られる構造の画像は、動作前MRスキャン又は動作前CTスキャン内で識別され得る。一例として、これは、人間オペレータがこの構造を動作前画像データ・セットのスライス内又は動作前画像データ・セットから構築された3Dモデル内で選択することを伴う場合がある。また、この選択も、セグメンテーションによって達成されてよい。共通構造を含有する動作前画像と超音波画像の両方における領域は、総称して「参照領域」と呼ばれる。いくつかの実施形態では、参照領域は、以下の構造すなわち、ウィリス動脈輪、脳室、及び/又は脳梁、のうちの1つ以上を含んでよい。工程315において識別された共通構造を利用して、超音波スキャンの画像は、工程320において動作前MRIスキャン又は動作前CTスキャンに対してレジストレーションされることができる。
【0111】
レジストレーション
レジストレーション・プロセスは、参照領域の1つ以上の特徴を使用してよい。一例として、レジストレーションは、超音波と動作前モダリティーの両方における参照領域の形状をマッチングさせることによって実行されてよい。予想方向に対する参照領域の方向、又は2つ以上の参照領域が現存する場合は2つ以上の参照領域の相対的方向などの、他の特性が使用されてよい。一例として、ウィリス動脈輪は、典型的には、超音波画像内では、一般に不規則な六角形又は凹凸のある円のように見える独特の形状を有する。しかしながら、形状に関係なく、同じ解剖学的構造が2つのモダリティーによって撮像されるので、2つのモダリティーにおける参照領域の画像の間に、強い相関が現存し得る。
【0112】
図9は、工程320においてレジストレーションを達成する例示的な方法を図示する。工程320Aでは、共通参照フレームが、上記で説明されたように座標系を確立することによって選定されてよい。工程320Bにおいて、超音波画像の構造が、選択された座標系内に設置されてよい。トランスデューサからの撮像された構造の距離は、超音波エコーの進行時間に基づいて計算されてよく、トランスデューサの位置及び方向は知られており、これによって、工程320Bが達成されることが可能になる。工程320Cは、超音波画像及び動作前画像内に存在する同じ参照領域を使用することによって座標フレーム内に動作前MRスキャン又は動作前CTスキャンを留置することを伴う。
【0113】
図10は、例示的なレジストレーション・プロセスを図示する。座標系1000は、工程320Aにおいて選択されてよい。座標系1000は、アーム制御ユニット720Aなどの機械的グラウンドに対して結合されるように恣意的に選定されてよい。超音波画像1005は、撮像トランスデューサ1010に対する位置及び方向において破線によって表される。これは、超音波画像1005とこの画像を作成した撮像トランスデューサ1010との関係を図示する働きをする。示されるように、Ρ1(Χ1,Y1,Ζ1,α1,β1,φ1)は、超音波画像1005の原点の位置及び方向を表してよく、トランスデューサ素子の撮像トランスデューサ1010の面の中心の位置及び方向も表してよい。変数x、y、及びzは座標系1000内の座標を指摘してよく、変数α、β、及びφは座標系1000内のロール、ピッチ、及びヨーを指摘してよい。次いで、工程320Bは、超音波画像1005を座標系1000内に留置することによって完了されてよく、その原点はP1(X1,Y1,Z1,α1,β1,φ1)にある。変数X1、Y1、Z1、α1、β1、φ1は、トランスデューサ及び付随するEM送信機に対して結合されたEM位置感知システムのEMセンサなどのセンサの出力から知られ得る。
【0114】
図10は、(たとえば、素子ハウジング及び中に含有される素子としての)トランスデューサの使用を図示しているが、他の構成も除外されない。たとえば、これらの方法は、図4に描かれる超音波トランスデューサ・アセンブリ220とともに実行されてよく、撮像トランスデューサ1010は、いくつかの素子を備えてもよいし、画像を形成するように一緒に構成された素子のサブセット(たとえば、サブセット420A)を備えてもよい。
【0115】
ウィリス動脈輪などの、図10の1015によって描かれる、参照領域は、低減衰音響窓を通して撮像トランスデューサ1010によって撮像されてよい。方法320の工程320Cは、この例示的な実施形態では、ボリューム1020によって表される動作前画像を座標系1000内に留置することによって、実行されてよい。レジストレーション工程320Cのためのソフトウェアは、レジストレーションモジュール510Eを利用して実装されてよい。
【0116】
図11は、動作前画像を参照座標系へと留置する工程320Cを実行するために取られ得るさらなるアクションを含む、例示的な方法を図示するフローチャートである。工程320C1では、患者のライブ撮像が超音波撮像システムとともに実行中であると仮定すると、ライブ超音波撮像がストップされる場合があり、参照領域の画像を含有する適切なフレームが選択される。これに続いて、選択された超音波フレーム内の参照領域の画像に最もよく対応する動作前画像内の適切なスライスが選択されたことを見つけることが望ましい。
【0117】
図12A及び図12Bは、参照領域を使用する例示的なレジストレーション・プロセスを図示する。頭蓋を通るスライス1205は、動作前モダリティーによって獲得される画像データ・セットを通るスライスの1セットを描写する。参照のために、スライス1205は、図10のボリューム1020を表してよい。破線1210は、超音波画像の境界線を表し、図10の超音波画像1020に対応してよい。動作前画像の他のスライス及び超音波平面の他の方向が取得されてよく、示される例は、単なる1つの可能な構成であることが留意されるべきである。参照領域1215は、この例では、患者の脳内の卵形によって表され、図10の1015に対応し得る。
【0118】
方法320Cの工程320C2では、超音波画像にぴったりとマッチングする初期テスト・フレームが動作前画像内で選択される。そのようなテスト・フレームの一例は、図12Bでは平面1220によって図示されている(太い点線において示されている)。平面1220の選択は、自動的に実行されてもよいし、人間によってガイドされてもよい。画像は、スライス1205内に含有される動作前画像データから平面1220に沿って再構築されてよい。図12Bでは、構築される画像は、スライス1205に対して実質的に垂直な平面内にあるであろう。しかしながら、スライス1205に対する任意の数の方向において構築された画像を提供するテスト・フレームが選択されてよいことに留意されたい。
【0119】
方法320Cは、工程320C2において作成された画像と工程320C1において作成された平面1210に沿った超音波画像フレームとの間の相関が見つけられる工程320C3へと続く。工程320C4において、選択された超音波画像と選択されたスライス1205に沿った再構築画像との間の相関は、ある範囲のテスト・フレームの方向角度及びスケール・ファクタにわたって見つけられる。このプロセスは、コンピュータによって自動的に行われてよいが、より適切なやり方で解決策に収斂(converge)するために人間によってガイドされてもよい。さまざまな変換の所望の数の置換(permutation)が算出された後、方法320Cは、判定ブロック320C5へと続く。相関値のすべてが所望の閾値を下回る場合、方法320Cは、平面1220の位置が修正される工程320C6へと続き、工程320C2~320C5が繰り返される。反対に、計算のいずれかに対する相関値が所望の閾値を上回る場合、判定ブロック320C5は工程320C7へと続く。工程320C7は、いっそう高い相関値をもつスライスを見つけようと試みる。
【0120】
例示的な方法320Cを使用することによって、「最良フィット」スライスが見つけられることが可能になる。最良フィット・スライスは、同じ平面内で超音波画像によって見られる同じ構造を示し、超音波画像平面に対して最も近くにある、動作前画像のスライスと説明され得る。たとえば、図12Bにおいて、最良フィット・スライスは、超音波平面1210沿いにある。方法300においてレジストレーション・プロセスを完了し、スライス最良フィットを取得したので、動作前撮像モダリティーからの画像は、参照座標系内で現在取得される超音波画像のそばに設置されてよい。超音波画像の参照領域の座標は座標系内で知られているので、動作前画像内の最良フィット・スライスは、これらの同じ座標が割り当てられてよい。1つのモダリティーにおいて識別される領域の座標は、ここで、他のモダリティーにおいて見つけられることができる。これによって、動作前モダリティーにおいて識別され標的領域が、超音波画像及び共通座標系内で設置されることが可能になる。
【0121】
工程320Cにおけるアライメントのプロセスでは、スケーリング、回転、及び変換などの動作が、動作前画像上で実行されてよい。これらの動作の必要性は、撮像モダリティーの性質及び画像がどのようにして獲得されるかにより生じ得る。これらの動作がセクションに対してセクションごとになされることも可能である(すなわち、各画像は、異なるセクションに分けられてよく、動作の異なるセットが各セクション上で使用されてよい)。スケーリングがどのようにして実行され得るかを図示する非限定的な例では、工程320C1における選択された超音波フレーム及び工程320C2における動作前モダリティーからのテスト・フレームは、異なる数のピクセルを含有してよい。超音波システムにおける1cmは50ピクセルを含有してよいが、MR画像における1cmは60ピクセルを含有してよい。この例では、MR画像は、両方の画像が同じピクセル密度を有するように、ダウンサンプリングされてよい。他の実施形態では、超音波画像は、動作前画像のピクセル密度に対して順応するように、アップサンプリング又はダウンサンプリングされてよい。
【0122】
いくつかの実施形態では、超音波画像及び動作前画像が処理される場合がある。処理は、限定されるものではないが、画像平滑化、スペックル減少、及びエッジ検出を含んでよい。この処理は、任意選択だが有益に、レジストレーション工程320の前又はその間に実行されてよい。画像品質を改善するためにこれらの工程を実行することによって、最良フィット・スライスを見つけるアビリティが改善され得る。各撮像モダリティーからの個々の特性は、さまざまなモダリティーからの画像が、たとえば、相関を見つけるためにアルゴリズム内でより良く比較又は利用されるように、減少又は除去されてよい。
【0123】
いくつかの実施形態では、レジストレーション工程は、異なる低減衰音響窓から取得された超音波画像を使用して複数回行われる。本発明の例示的な実施形態は、これまでのところ、撮像を実行するためにこめかみに据えられた超音波トランスデューサ又はトランスデューサ素子を示してきた。しかしながら、頭蓋はまた、眼の後ろ及び頭部の後部内などのエリアでは、より薄く、いくつかの脳構造が超音波によって撮像されることを可能にする、より低い超音波減衰をもたらす。これは、たとえば、図4に示される構成において頭部の後部内に設置された超音波トランスデューサ・アセンブリ220上のトランスデューサ素子を使用することによって、又は図7Aに示される構成において頭部の後部内にトランスデューサを位置決めすることによって、達成され得る。異なる超音波画像を使用するレジストレーション手順を繰り返すことによって、レジストレーションの精度は、最も高い相関値を作成する超音波画像/動作前画像ペアを選択することによって改善され得る。
【0124】
標的領域の選択
方法300において、工程305において動作前画像が取得された後で、かつ使用されることになるサブセット及びトランスデューサの構成が工程330において決定される前の、任意の時点で、1つ以上の領域が、工程325において超音波エネルギーが送達されるために動作前画像内で医師によって選択されてよい(上記で「標的領域」と定義される)。図10では、そのような1つの標的領域は、黒い点1025によって表されている。レジストレーションのプロセスを通して、標的領域1025の位置は、それがひとたび選択されると、座標系1000内で知られる。ひとたび工程320におけるレジストレーションが発生すると、標的領域の座標が知られる場合があり、これは、本明細書において論じられるさまざまな超音波システム構成のうちの1つに対して提供される場合がある。いくつかのシナリオでは、患者の治療を始める前に標的領域を選択することが有利な場合がある。たとえば、医師は、治療の前にこの工程を実行するかもしれない。患者を治療する間に存在する時間制約がなければ、標的領域のより注意深い考慮によって、より良い成果がもたらされるであろう。
【0125】
送達サブセットの計算
方法300の工程330において、超音波システムの構成に応じて、超音波エネルギーを標的領域に対して送達するために利用され得る、素子のサブセットを見つけること又はトランスデューサの位置及び方向を見つけること(どちらも送達サブセットと呼ばれる場合がある)のどちらかのために計算がなされる。そうする際の目標は、血液脳関門の開放を促進することが望ましい1つ以上の位置に対して送達されることになる超音波が、薬物が脳組織に入ることを可能にすることを、可能にすることである。これらの計算は、たとえば、図10のトランスデューサ1030などの第2のトランスデューサが、標的領域に対して超音波を照射するために、どこに位置決めされるべきかを決定するために使用されてよい。この例では、計算によって、参照座標系1000内の位置及び方向Ρ2(Χ2,Y2,Ζ2,α2,β2,φ2)がもたらされる場合、トランスデューサ1030は、標的領域1025に対して超音波を照射するためにP2に留置されてよい。
【0126】
いくつかの実施形態では、上記で言及された計算を実行する際に、いくつかの要因が考慮に入れられてよい。関連要因は、限定されるものではないが、標的領域とトランスデューサ素子の間の距離、介在組織の減衰、頭蓋の方向、及びトランスデューサ素子の周波数特性を含む。加えて、いくつかの目標が割り当てられてよい。例示的な目標は、最小の音響パワーの量とともに、又は別の例では、具体的な音響パワー設定が与えられる最短の時間の量とともに、薬物が送達されることを可能にするために血液脳関門を開くことができる送達サブセットを選択することを含んでよい。これらの要因は、異なる様式で計算に影響してよく、個々に互いと相互作用してよい。たとえば、標的領域に最も近いサブセットを選定することは、必ずしも最適な選定とは限らない。これらのサブセットに隣接する頭蓋の形状は、著しいモード転換をもたらす標的領域を含有する平面に対する角度であるようなものであってよい。その結果、十分なエネルギーが、標的領域に堆積しない場合がある。この例では、標的領域からより遠いサブセットを選択することがより望ましいが、より少ないモード転換が発生する場合がある。
【0127】
いくつかの実施形態では、標的領域と送達サブセットの間の距離は、動作前画像を使用して計算されてよい。動作前画像は、各素子の位置(撮像するため又は治療を容易にするためのその使用に関係なく)及び標的領域の位置を含む共通参照フレーム内でレジストレーションされるので、介在距離が容易に取得されてよい。
【0128】
いくつかの実施形態では、患者の頭部の表面上の特定の点における介在組織の減衰が、動作前画像を使用して計算されてよい。動作前画像の分析は、トランスデューサ素子と標的領域との間の組織の異なる層を明らかにし得る。これらの層を自動又は手動のどちらかでセグメンテーションすることによって、各層は、演繹的データに基づいて減衰パラメータと関連付けられ得る。したがって、異なる送達サブセット位置に関して経験され得る減衰を知ることが可能である。この情報は、送達サブセットの選定に影響するために、及び/又は振幅又は他の送信パラメータを設定するために、適用される場合がある。
【0129】
3Dモデル生成
コンピュータ処理された患者の頭部の3Dモデルが、超音波システムによって頭部モデル生成モジュール510H内で生成され得る。このモデルは、共通参照フレーム内でレジストレーションされた動作前画像に基づいて生成され得る。治療中の患者の頭部の移動は、この概念の有用な一態様を図示する助けとなる。患者の頭部の移動が発生すると、その移動は、本明細書において他の場所で説明されるように、さまざまなセンサによって追跡されることができる。参照フレーム内のモデルの位置は、参照座標系内の新しい位置を反映するために再計算されてよい。これは、患者の頭部の位置が変更されるたびにレジストレーション工程320を実行しなくてもよい利点を提供する。
【0130】
頭部モデルは、さまざまな洗練度を有する場合がある。たとえば、3Dモデルは、皮膚の最も外側の層に対応する頭蓋のアウトラインのみを含んでよい。より洗練された例示的な3Dモデルは、頭蓋のアウトラインと頭蓋の厚さとを含んでよい。よりいっそう洗練された例示的な3Dモデルは、脳組織のさまざまな層内の音速の推定を含む脳のさまざまな層を含んでよい。コンピュータ処理されたモデルの使用は、計算及び変換を容易にするので有益であり、その例は以下で論じられる。
【0131】
図13は、送達サブセットを決定する際の頭部モデルの例示的な適用例を図示する。単純なモデル1300は、頭部410の最も外側の層についての情報を含んでよい。このモデル内で、標的領域1310の位置が知られてよい。治療サブセットの選択のための計算のこの非限定的な例では、頭蓋の最も外側の層上の領域から標的領域1310までの距離は、考慮に入れられる唯一の要因である。頭部の表面上の領域A、B、及びCから標的領域1310までの距離はそれぞれ、ライン1320、1330、及び1340によって指摘される。この例では、領域Bが最も短い距離を有し、したがって、領域Bのまわりの素子のサブセットが治療サブセットとして選定されてよい。
【0132】
いくつかの実施形態では、頭部の表面上のどの領域が標的領域1310への最も短い距離を有するかという算出は、送信サブセットの算出及び送信パラメータ・モジュール510Aによって実行されてよい。各前記領域は、この例示的な実施形態では、1つ以上のトランスデューサ素子を含んでよい。
【0133】
ここで、トランスデューサ素子の治療サブセットのサイズの計算の例示的な一実施形態が提供される。単純な例では、送達サブセットのサイズは、血液脳関門を開くために必要とされる最小音響パワーに依存し得る。この最小音響パワーは、実験又は他の手段を通じて演繹的に知られ得る。サブセットのサイズに影響し得る別の関連する要因は、ビーム伝播の影響である。各トランスデューサ素子は、そのサイズ及び動作の周波数などのいくつかの要因によって指図され得る角のある(angular)指向性を有する。したがって、標的領域に対して非常に角のある素子は、送達サブセットに含めることに対して選定されない場合がある。
【0134】
方法300の工程330において治療サブセットを決定するためにモジュール510Aによって実装され得るソフトウェア工程の一例が、本明細書において説明される。最初に、ソフトウェアは、人間オペレータが、特定の量の音響パワーをもつ脳の領域に対してエネルギーを送達することなどの、目標及び関連する要因のセットを提供することを要求する場合がある。これらの目標及び要因は、オペレータが1つ以上のオプションから選定することを可能にするために、ドロップ・ダウン・メニュー、チェックボックス、又はラジオ・ボタンの形式で提示されてよい。次いで、ソフトウェアは、動作前画像及び頭部モデル生成モジュール510Hを使用して、患者の頭部のモデルを生成してよい。頭部モデル、及び規定された目標を与えられると、超音波エネルギーを標的領域に対して送達するために使用され得る超音波トランスデューサ素子の位置及び方向が計算される。この工程は、1つ以上の目標及び要因がパラメータ化される最適化のプロセスを伴うことがあり、この最適化プロセスは、最高「スコア」を生ずる構成を選択することを伴う。パラメータ化プロセスは、任意選択で有益に、ユーザに割り当てられた重みを考慮に入れてよい。送達サブセットの最終的な選択は、人間オペレータによって手動でなされてもよいし、ソフトウェアによって自動的になされてもよい。
【0135】
超音波システム210(図4を参照されたい)では、送達サブセットの選択に続いて、超音波トランスデューサ・アセンブリ220内の素子のサブセットが、治療モードで動作するために選択されてよい。これは、たとえば、所与の送信遅延及び周波数で超音波を送信し始めるために、サブセット425A内のすべての素子に対して命令を提供することを伴ってよい。図7Aに示される構成では、制御信号が、アーム715の各接合部が位置決めされるべき角度を知らせるために、周辺制御機構及びI/Oモジュール510Gから生じてよい。最終結果は、計算された位置にあることになるアーム100の末端効果器(すなわち、トランスデューサが設置されるところ)をもたらすべきである。
【0136】
図7Bに示される構成では、人間オペレータは、トランスデューサ760Bが超音波システム750内のソフトウェアからのガイダンスとともに所望の位置に留置されるように、トランスデューサ760Bを手動で位置決めしてよい。トランスデューサ760B上のセンサは、所望の位置が到達されたかどうかを検出してよく、調整が必要とされる場合、オペレータに対してフィードバックを与えてよい。
【0137】
計算及び選択が自動的に実行される場合、上記で論じられた要因のすべてに加えて、制御及び算出ブロック510は、限定されるものではないが、最小の音響パワーの量を用いて、又は具体的な音響パワー設定が与えられると最短の時間量を用いて、薬物が送達されることを可能にするために血液脳関門を開くことができるサブセット又はトランスデューサを選択することなどの、目標によってガイドされてよい。
【0138】
複数のサブセット
いくつかの実施形態では、2つ以上のサブセットが生成される。各サブセットは、最終的な影響はビーム・パターンが交差する領域において血液脳関門を開くことであるように協調されたやり方で励起され得る1つ以上のトランスデューサ素子を備える。さらに、サブセットは近接する必要はない。複数の非近接サブセットの1つの利点は、1つ以上の標的領域において必要とされるパワーを送達しながら、介在組織に対して送達されるパワーは最小にされることができることである。
【0139】
どのサブセットが、超音波エネルギーを標的領域に対して送達するために選定されるべきかという計算は、限定されるものではないが、標的領域の数及び各領域のサイズなどのいくつかの要因に依存してよい。標的領域が小さい場合、近接素子をもつサブセットが選択され得ることが可能である。一方、小さい領域の場合ですら、介在組織に潜在的なリスクがあり得る(おそらく、トランスデューサ素子から遠く設置された標的領域に対して高い音響パワーが必要とされることにより)と決定される場合、非近接サブセットがより適切な場合がある。複数の標的領域、又は大きい(その後、より小さい複数の領域に分けられることができる)標的領域がある場合、各領域は、それ自体の計算及びそれ自体の送達サブセットと関連付けられてよい。
【0140】
図7A及び図7Bに図示される構成では、治療トランスデューサ内に存在する全素子よりも少ない素子のサブセットが選定され得ることが可能であることに留意されたい。この、より小さいサブセットのサイズは、図4の超音波トランスデューサ・アセンブリ220に関して説明された方法に類似したやり方で選定されてよい。
【0141】
送達サブセットの代替決定
いくつかの実施形態では、送達サブセットは、あらかじめ決定されてもよいし、ルック・アップ・テーブル(LUT)への参照を介して見つけられることもできる。一例として、神経膠腫は、多くの場合に脳幹内に発現する、ありふれたタイプの脳腫瘍である。そのため、脳幹に最も近い血液脳関門の領域に対して超音波を送達するために治療トランスデューサ素子が頭部の後部のまわりに局所化される超音波トランスデューサ・アセンブリ(図4に示されるものなど)を構築することが有利な場合がある。使用されることになる治療素子のサブセットを決定するこのシナリオでは、計算は実行されなくてよいであろう。これは、デバイスの構築及び維持のコストを減少し、ならびに、治療中に使用されるシステムの算出複雑性を減少し得る。
【0142】
他の実施形態では、超音波トランスデューサ・アセンブリは、いくつかの素子を含んでよく、使用されることになる素子のサブセットの決定は、LUTへの参照を通じて確立されてよい。たとえば、演繹的実験からの経験的分析及び患者の動作前画像に関する分析に基づいて、LUTは、患者の頭部上でどこが、超音波エネルギーが標的領域に到達することが可能な可能性が最も高いかを指摘するデータを提供することができる。次いで、この結果に基づいて、治療を送達するために1つのサブセット/複数のサブセットが選定されてよい。トランスデューサが使用中である構成(すなわち図7A及び図7B)では、LUTへの参照は、上記の要因などの関連する要因に基づいて所望の位置及び方向を取得するために使用されてよい。
【0143】
他の実施形態では、すべての利用可能なトランスデューサ素子が、治療のために超音波エネルギーを送達するように構成されてよい。振幅又は他の送信パラメータは、いくつかの要因に基づいて各治療に対して決定されてよい。これらの要因は、限定されるものではないが、素子から標的領域までの距離、作成された超音波ビームと標的領域との間の角度、及び介在組織の性質を含んでよい。特定の素子を使用して標的領域に対して超音波を照射することが望ましくない場合、そのような素子は、0dBに近い振幅において送信するように設定されてよい。
【0144】
送信モード
上記で説明されたシステムのさまざまな構成において、及び等価な構成において、いくつかのトランスデューサ素子は送信及び受信するように動作可能であってよいが、いくつかの他のトランスデューサ素子は、送信するアビリティのみを有してよい。図14Aは、撮像モードで動作することが可能であるトランスデューサ素子において作成及び受信される例示的な波形を図示する。このモードでは、素子は、超音波エネルギーを送信することと受信することの両方を行うことができる。この図では、2つのグラフが図示されている。1つは送信動作に関するものであり、もう1つは受信動作に関するものである。領域Aでは、素子は、2サイクル・パルスによって2MHzの周波数にて振幅Pで励起される。これは、素子が送信の結果として頭蓋からエコー・データを受信する領域Bによって続かれる。ある時間期間の後、素子が再び励起される。このサイクルは、画像を形成するために、必要に応じて繰り返される。
【0145】
図14Bは、治療モードで動作することが可能である素子によって作成される例示的な波形を図示する。この素子は、0.5MHzなどのはるかに低い周波数によって励起されるように示されており、また、はるかに長い時間(図に示されるように8サイクル)にわたって励起される。このモードでは、素子は、データを受信する必要はなく、そのため、画像を形成しない。送信することのみが可能である素子は、治療モードのみで動作させられてよく、送信することと受信することの両方が可能である素子は、撮像モードと治療モードの両方で動作させられてよい。
【0146】
いくつかは送信及び受信することが可能であり、他のものは送信のみし得るように、トランスデューサ素子を構成することに対して、いくつかの利点がある。1つの利点は、いくつかの素子を送信のみ可能であることにすることによって、本明細書において説明されるシステムを実装するためのコストが減少され得ることである。ここで、超音波エコー・データを受信及び処理するために必要とされる電子機器及び処理は、これらの素子のために含まれる必要はない。治療モードのみで動作する(すなわち、送信専用)素子を、頭蓋の減衰が高く、撮像は典型的には実行されないエリアに隣接して留置することが有利な場合がある。
【0147】
一方、いくつかの状況では、撮像モードのみで動作する(すなわち、送信及び受信する)素子を有することが有利な場合がある。本明細書において他の場所で解説されるように、これらの素子は、薬物の送達をモニタするために使用されてよい。さらに、いくつかの状況では、撮像モードと治療モードの両方で動作することができる素子を有することも、有利であることができる。ほとんどの人間は、こめかみに隣接して低音響減衰音響窓を有することが述べられている。標的領域が、これらのエリアの近くにある場合、画像を形成する同じ素子も、標的領域に対して超音波を照射するのに最もよく適している場合がある。
【0148】
造影剤撮像
コントラスト撮像は、組織からの信号を増強するために超音波撮像において使用される技法である。コントラスト撮像では、マイクロバブルが循環系へと注入される。超音波エネルギーによって超音波が照射されるとき、バブルが壊れないならば、バブルは振動し、調波周波数でエネルギーを反射する。したがって、典型的なケースでは、送信のエネルギーがf0の周波数である場合、バブルは、f0で、及び2f0などの他の周波数で、エネルギーを反射する。バブルからの反射は、組織インタフェースからの典型的な反射と比較して極めて強い。したがって、画像は、組織に血管が新生した(vascularized)エリアから形成されることができる。脳を撮像し、治療を提供する目的のために、マイクロバブル技法は、以下で説明されるように修正及び適合されてよい。
【0149】
いくつかの実施形態では、異なるタイプのマイクロバブルが使用される。2つのタイプのマイクロバブルが使用される非限定的な例では、1つのタイプのマイクロバブルは「撮像マイクロバブル」と呼ばれる場合があり、他のタイプのマイクロバブルは「治療マイクロバブル」と呼ばれる場合がある。よりわかりやすくするため、血液脳関門を開くことに関連して使用されるマイクロバブルは、治療マイクロバブルと呼ばれる。いくつかの実施形態では、これらのマイクロバブルは、図2図7A、及び図7Bに描写された超音波システム内に描かれたIVシステム230を通じて、患者に対して供給される場合がある。
【0150】
図15Aは、撮像マイクロバブルの使用を図示する例示的な方法1500を示す。初期には、工程1505において、患者は、撮像マイクロバブルを注入される。マイクロバブルは脳まで進行し、そこで、マイクロバブルは、脳を撮像することを容易にするために使用されることができる。簡略化のために、この例におけるすべてのトランスデューサ/トランスデューサ素子は、撮像モードと治療モードの両方で動作することが可能であると仮定される。工程1510において、脳の画像が、撮像マイクロバブルの助けをかりて超音波トランスデューサを使用して取得される。この例では、送信パラメータは、撮像マイクロバブルが非線形的に振動させられるように選定されてよい。マイクロバブルからの信号は、典型的には強いので、脳を撮像するために典型的に使用されるよりも高い受信周波数を使用することが可能な場合がある。非限定的な例では、撮像トランスデューサは、2MHz送信及び4MHz受信の周波数で動作し得る。他の組み合わせも可能である。
【0151】
撮像マイクロバブルを用いて撮像を実行するとき、限定されるものではないが、送信パワー、送信及び受信アポダイゼーション、受信機ゲイン、ならびに受信機フィルタなどの他の送信パラメータ及び受信パラメータも、それに応じて調整されてよい。これらのパラメータ、特に送信パラメータは、撮像バブルが安定しており、撮像が実行されることができる前の十分な時間期間にわたって中断しないように、選定され得る。マイクロバブルの安定性に対する影響を有することが知られているいくつかのパラメータは、送信パワーと、送信周波数である。したがって、脳を撮像するために、十分なエネルギーをターゲットとされる領域に対して送達するが、撮像期間中にマイクロバブルを壊すのに十分なほど高くない、低パワー送信が使用されてよい。このやり方で脳の画像がひとたび取得されると、工程1515において、1つ以上の標的領域が選択されてよい(たとえば、方法300の工程325に関して説明された方法を使用して)。しかしながら、この前に、撮像マイクロバブルを使用して取得された画像は、動作前画像を超音波画像に対してレジストレーションする際に使用されてよい(すなわち、方法300の工程320)。
【0152】
超音波撮像におけるマイクロバブルの使用は、頭蓋の減衰を補償し、分解能及び侵入深度を増加させる。そのため、いくつかの実施形態では、撮像サブセット又はトランスデューサは、適切なマイクロバブルが使用されるときに脳の画像を形成するために低減衰音響窓に隣接して留置されることは必要とされない。いくつかのケースでは、撮像マイクロバブルからの信号は、標的領域が超音波画像に完全に基づいて選択され得るのに十分に強い。たとえば、標的領域又は脳内腫瘍に血管が高度に新生されることが可能な場合がある。これらのシナリオでは、撮像マイクロバブルが使用されるとき、超音波画像内でこれらのエリアを見分けることが可能な場合がある。
【0153】
治療マイクロバブル
工程1515において標的領域が選択された後、方法1500は、1つ以上のトランスデューサ、又はトランスデューサ素子のサブセットが、超音波エネルギーを標的領域に対して送達するために選択及び/又は位置決めされる、工程1520へと続く。これを達成するための方法は、異なる超音波システム構成のために方法300の工程330に関して上記で説明された方法に実質的に類似していてよい。ひとたび素子のサブセットが選択されると、又は治療トランスデューサが適切に位置決めされると、工程1525において、患者は、治療マイクロバブルを注入される。
【0154】
いくつかの実施形態では、治療マイクロバブルは、薬物を含有してよい。他の実施形態では、薬物は、治療マイクロバブルから独立して注入されてよく、マイクロバブルは、血液脳関門の開放を支援する働きをするが、薬物自体を送達する働きはしない。ここでボックス1530では、治療モードであることが選定された素子の1つ以上のサブセットがアクティブにされ、治療マイクロバブルは、激しく振動させられ、及び/又は壊れ、薬物の通過を可能にするまで血液脳関門を開かせる。
【0155】
治療マイクロバブル及び撮像マイクロバブルは、いくつかの様式において異なる場合があり、ここで、これらの違いの部分的なリストが提供される。マイクロバブルは、異なる周波数に応答するように製造されることができる。たとえば、より低い周波数で壊れるマイクロバブルは、治療トランスデューサに関連して使用されてよい。限定されるものではないが、そのサイズ及び内容などのいくつかのマイクロバブル特性は、その応答に衝撃を与え得る。いくつかの実施形態では、撮像マイクロバブルは、空気又は液体で満たされてよいが、治療マイクロバブルは、薬物で満たされてよい。他の違いも現存する場合があり、これらの違いは、マイクロバブルが撮像動作又は治療送達動作を容易にするように、超音波システム・パラメータの選択を可能にするために活用されてよい。
【0156】
図15Bの方法1550は、上記で説明された概念の別の変形形態を図示し、撮像マイクロバブル及び治療マイクロバブルは同じである。工程1555では、患者はまた、マイクロバブルを注入される。方法1550は工程1560へと続き、工程1560では、マイクロバブルが撮像を容易にし、血液脳関門を損なわないように、超音波トランスデューサ送信パラメータを選定することによって、脳の画像が取得される。これら送信パラメータは、限定されるものではないが、特定の閾値以下の送信パワー、送信周波数、バースト長さ、及びパルス繰り返し周波数を含んでよい。工程1565において標的領域が選択され、これに続いて、工程1570において、治療モードでペーシングされることになる素子の1つ以上のサブセットの選択がなされる。ここで、工程1575において、薬物と、任意選択で、より多くのマイクロバブルが、循環系へと注入される。工程1580において、マイクロバブルがより激しく振動し、薬物が送達され得るように血液脳関門が開かれるように、送達サブセットの送信パラメータが調整される。
【0157】
薬物を送信シーケンスに関連付ける
いくつかの実施形態では、送達サブセットが治療モードで動作している間、送信パラメータは、具体的には、送達されている薬物に基づいて選択されてよい。一例として、以前の知識及び/又は実験を通じて、薬物Aが、10分の期間にわたって1KHzのパルス繰り返し周波数とともに0.5MHzにおいて10サイクル・パルスを用いて最適に送達されており、薬物Bが、15分の期間にわたって1.2KHzのパルス繰り返し周波数とともに0.25MHzにおいて15サイクル・パルスを用いて最適に送達されていることが知られている場合がある。これらの最適な値は、限定されるものではないが、動物試験で取得された結果、人間試験で取得された結果、薬物組成の知識、マイクロバブル組成の知識、及び患者の体形などの、いくつかの要因に依存し得る。
【0158】
この概念の非限定的な実装形態では、撮像及び治療システムは、バー・コード読み取り装置、スキャナ、又は薬物の容器上のラベルから情報を読み取る別のタイプの入力デバイスを含んでよい。ひとたびシステムがこの情報を読み取ると、システムは、1つ以上の薬物にとって最適な送信パラメータのセットが記憶されるLUTなどのメモリ記憶装置にアクセスすることができる。このパラメータのセットは、限定されるものではないが、周波数、送信電圧、パルス長、及びパルス繰り返し周波数などの、1つ以上のパラメータを含んでよい。そうするように命令されるとき、撮像及び治療システムは、この記憶された情報にアクセスし、これらのパラメータにより超音波トランスデューサを動作させてよい。他の実施形態では、許可された医療関係者が、限定されるものではないが、薬物及び体形についての情報などの、関連する情報を手動で入力してよい。
【0159】
いくつかの実施形態では、システムは、薬物情報が、上記で説明された方法のうちの1つによって、又は他の任意の方法によって、入力されない場合、超音波トランスデューサは治療モードで動作するのを防止されるように、プログラムされることができる。より具体的な実施形態によれば、薬物についての情報を必要とすることは、このアクションの使用が料金請求機能を可能にすることも、可能にする。システムは、さまざまな当事者の間で薬物及び/又は治療の返済に対する責任がどのように共有されることになるかについて、報告を送出してもよいし、電子メールを送出してもよい。
【0160】
定在波の減少又は解消
頭蓋腔内の定在波は、著しいリスクを患者に対して提示し得る。定在波は、撮像モードと治療モードの両方の間に作成され得る。不均一なパルス繰り返し間隔を使用することによって、定在波の作成の可能性が減少又は解消され得る。この方法は撮像動作に有利な場合があるが、この方法は、治療モードに理想的でない場合がある。上記で解説されたように、薬物は、送信パラメータの特定のセットを用いて最も効果的に送達され得る。これは、標的領域を超音波に対して特定の時間量、曝露することを伴ってよい。いくつかの実施形態では、必要な曝露時間を提供するため、及び定在波の生成の可能性を減少又は解消するために、素子の異なるサブセット(図4のサブセット425Aなど)が、エネルギーを送達するために使用されてよい。
【0161】
図16は、異なるサブセットが同じ標的領域に対して超音波を照射するためにどのようにして選定され得るかの例示的な一実施形態を図示する。この方法は、必要とされる線量の超音波を標的領域に対して送達しながら定在波を減少又は解消することを容易にし得る。標的領域1605は、初期には、ある時間期間にわたって、サブセット1610によって、送信治療パルスを用いて超音波が照射される。このサブセットの素子の送信遅延は、領域1605がサブセット1610を用いて超音波が照射されるように選定される。サブセット1610内の素子によって発された超音波エネルギーの集束は、サブセット1610から標的領域1605まで延びる破線1620によって描写される。その後であるが連続した時間において、サブセット1615は、別の時間期間にわたって治療パルスを送信するために使用されてよい。このサブセット内の素子によって発された超音波エネルギーの集束は、実線1625によって描写される。図16は、サブセット1610と1615の間の重複の領域を示しているが、重複のない構成も利用されてよい。図には2つのサブセットのみが図示されているが、この技法の実行において、3つ以上のサブセットが利用されてもよい。
【0162】
いくつかの実施形態では、上記の方法を実装するソフトウェアは、使用されることになる治療サブセットの数を入力することをユーザに要求する場合がある。各サブセットの目標は、さらに指定されてよい。プログラムされ得る要因は、限定されるものではないが、最大許容軸外し角度、各サブセットがアクティブになり得る最大時間、及びサブセット重複の最大量を含む。たとえば、入力される目標のセットは、標的領域への最短距離の3°以内(0°と指定される場合がある)にあり、最小量の重複をもつサブセットを見つけることである場合がある。これらの例示的な命令が与えられると、ソフトウェアは、中心が最短距離から3°以下であるサブセットを見つけ、次いで、これらのサブセットの適切なサイズ、サブセットがアクティブである順序、及び各サブセットに関する送信パラメータを決定してよい。
【0163】
いくつかの実施形態では、そのような命令は、超音波システムのためのソフトウェア・プログラミング・プロセスの一部として入力されてよい。他の実施形態では、ユーザは、ユーザ・インタフェースを通じて超音波システムに対して命令を提供する場合がある。ひとたび命令が超音波システムに対して提供されると、システム制御モジュール510Fは、制御信号を生成し、超音波エネルギーを患者に対して送信するために、選択されたサブセットに対して提供してよい。
【0164】
この方法の図は、トランスデューサ素子のサブセットを参照しているが、同じ概念は、図7A及び図7Bに示される構成などの、トランスデューサを利用する構成にも適用されてよい。これらのケースでは、治療モードで動作することが可能である複数の個々のトランスデューサ素子は、これらの方法を達成するために一緒にグループ化されてよい。他の実施形態では、治療素子のグループは、異なるトランスデューサ内に設置されてよい。
【0165】
ボリュメトリック画像を造る
従来の超音波撮像システムでは、3D画像又は4D画像は、典型的には、素子が同じ平面内にあり、1D配列が高さ寸法(elevation dimension)において「ぐらつく(wobbled)」2Dトランスデューサ、又は経食道的撮像において使用されるトランスデューサなどの1D回転トランスデューサによって作成される。脳の構造のより代表的なモデルは、レジストレーション・プロセス中に動作前画像との比較を実行する際に、より高い精度を可能にするので、ボリュメトリック画像を造ることは、本明細書において説明される超音波システムにおいて望ましい場合がある。別の例では、超音波撮像によって取得される構造の分解能が十分に高い(たとえば、マイクロバブルの使用を通じて)場合、ボリュメトリック超音波画像は、標的領域が選択されることを可能にし得る。しかしながら、図4に示される構成では、たとえば、超音波トランスデューサ・アセンブリ220内の素子は、典型的なトランスデューサ配置と比較して、異なるように配置される。そのため、異なるスキャニング技法が、本明細書において説明されるシステムを用いて3D画像又は4D画像を形成するために必要とされる場合がある。
【0166】
いくつかの実施形態では、異なる撮像平面は、素子の同じサブセットとともに使用されてよい。複数の素子を含有する素子の任意のサブセットにおいて、素子は、限定されるものではないが、配列構成において、又は凹状曲線構成においてなどの、さまざまな様式において、電子的に配置されることができる。曲線構成の方向は、望まれる場合、選定されてもよい。この概念の例示的な非限定的な実施形態が図17に示されている。ここで、素子の配列1700が図示されている。この素子の配列は、たとえば、図4の超音波トランスデューサ・アセンブリ220のサブセット420Aの一部であってよい。この配列内の素子の各々は、独立してケーブルでつながれ、そのため、超音波システムを介して制御可能であるので、さまざまなスキャニング平面は、電子的に成し遂げられてよい。2つのそのような例示的なグループは、1710及び1720によって図示されている。完全には破線内にない任意の素子は、グループから除外されてよい。モジュール510A及び510Bによって計算される電子的遅延は、グループ1710及び1720の各々のスキャニング平面が、図17の平面に対して(ページへと)直角をなすが、これらのグループの境界線の長辺と平行であるようなものであってよい。
【0167】
これらの方法を通じて、複数のスキャニング平面が生成されてよい。これらのスキャニング平面から取得される画像は、異なる解剖学的平面にインテロゲートする(interrogate)であろう。したがって、異なるスキャニング平面に沿って複数の平面を生成することによって、ボリュームがスキャンされてよく、ボリュメトリック画像が生成されてよい。
【0168】
他の実施形態では、異なる撮像平面は、欠落したボリュメトリック情報を埋めるために使用されてよい。これらの異なる撮像平面は、互いに対する同じ方向又は角度又は位置を有する必要はない。しかしながら、画像平面の6DOF位置は、共通参照フレーム内で知られているので、それは、ボリュメトリック画像が構築されることができるように、同じ座標系内の他の画像のそばに留置されることができる。ボリュームを構築するこの方法は、多くの場合、脳のボリューム全体についてのデータが不完全であるので、有利な場合がある。説明される部分的ボリューム再構築は、利用可能な画像データが有意味な使用に至らされることを可能にする。より具体的な一実施形態では、RFエコー・データの補間は、欠落したデータ要素を埋めるためにボリューム構造データ・セットにおいて使用されることができる。
【0169】
合成開口撮像
任意の適切な超音波撮像技術が適用されてよい。例示的な超音波撮像技術は、ビームフォーミング技術及び合成開口撮像技術を含む。
【0170】
合成開口撮像によって、十分にポピュレート(populate)された開口において必要とされるものと比較して、より少ないトランスデューサ素子を用いた画像の形成が可能になる。合成開口撮像の概念は、脳の超音波画像を作成する目的のために修正されてよい。いくつかの実施形態では、異なるトランスデューサ素子は、各送信動作に使用されてよい。各送信の後、エコーが複数の素子において受信される場合があり、エコー・データは、デジタル化及び記憶されてよい。次いで、超音波システムは、関与させられる素子の数を用いて通常は可能であろうよりも高い分解能の画像を合成及び構築するために、さまざまなパルス-エコー応答ペアを処理してよい。
【0171】
合成開口撮像を使用することによって得られることができる別の利点は、異なる素子が送信に使用されているので、定在波を生成する可能性が減少又は解消されることである。本明細書において説明される合成開口撮像の方法は、論じられるさまざまな超音波システム構成のすべてに適用されてよい。頭蓋の表面に近い領域に対して超音波を照射する
追加の難題は、頭蓋の表面に近い標的領域に対して超音波を照射しようと試みるときに遭遇される。たとえば、素子が接点において頭蓋の表面と平行であり、依然としてエネルギーを標的領域に対して向けるように、素子を位置決めすることは、困難である。超音波エネルギーを集束することも、低い周波数及び標的領域と素子との間の短い距離により、難しい場合がある。いくつかの実施形態では、標的領域から比較的遠い素子のサブセットは、これらのサブセットが接点において頭蓋と平行又はほぼ平行であるように選定される。非限定的な例では、頭部の左側の、耳の近くの標的領域は、頭部の右側からの素子のサブセットによって超音波が照射されてよい。適切な送信パラメータを使用すると、左側の血液脳関門は、薬物が通過することを可能にするまで開くようになされることができる。位置に加えて、限定されるものではないが、周波数及びパワーなどの送信パラメータは、そのような標的領域に対してある距離から超音波を照射するように調整されてよい。
【0172】
別の実施形態では、トランスデューサ(図7A及び図7Bに示されるトランスデューサなど)は、頭蓋からある距離離れたところに位置決めされてよい。スタンド・オフ材料は、2つの構成要素が結合されたままであり得るように、前記トランスデューサと頭蓋の間に留置されてよい。スタンド・オフ材料は、典型的には、軟質でゼラチン状である。スタンド・オフ材料は、本質的に超音波の減衰が材料を通って発生しないように選択されてよい。非限定的な例では、この材料を通る音の速度は1540m/sであってよい。加えて、材料の厚さは、任意の場所で1cmから5cmの間であってよい。この技法を通して、トランスデューサは、頭蓋に対して平行又はほぼ平行なやり方で留置されることができる。標的領域と素子との間の距離はより大きいので、短距離における集束の問題は、最小にされる又は除去される。標的領域に近いトランスデューサ素子を動作させるこれらの方法は、撮像モードで動作するトランスデューサ又はサブセットに対して等しく適用可能であることが留意されるべきである。
【0173】
スタンド・オフ材料はまた、1つ以上のトランスデューサ素子がアセンブリ上で散らされる構成(図4に示されるものなど)において、任意選択で有益に使用されてよい。いくつかの実施形態では、スタンド・オフ材料の層は、患者の頭部のまわりに、これと接触して留置されてよい。超音波トランスデューサ・アセンブリ220は、たとえば、材料の上に留置されてよく、トランスデューサ素子415は、それと接触する。スタンド・オフ材料の性質及び厚さは、素子415と接触することが可能であるように選択されてよく、素子415の方向を制御するアビリティが阻害されるのに十分な反力を発揮しない。これによって、標準的なサイズにされた超音波トランスデューサ・アセンブリが、患者の頭部サイズの範囲にわたって使用されることが可能になる。サブセット固有のシステム・パラメータ
いくつかの実施形態では、各サブセット又はトランスデューサは、限定されるものではないが、送信パラメータ、受信パラメータ、素子の数、素子構成、開口寸法などのそれ自体のパラメータのセットとともに動作させられてよい。非限定的な例では、側頭骨の近くで治療モードで動作するサブセットは、0.5MHzで動作し得る頭部の上部に近いサブセットと比較して、より高い周波数、たとえば2MHzで、動作してよい。同様に、側頭骨に近いアクティブな開口は、一般に半径20mmの円の中にある素子を含んでよいが、頭部の上部に近い開口は、一般に形状に関して方形であってよく、70mm×10mmの寸法をもつ。
【0174】
サブセット・パラメータ又はトランスデューサ・パラメータは、自動的に、又は手動で、計算されてよい。いくつかの実施形態では、自動計算は、制御及び算出ブロック510によって行われてよい。これらの計算は、頭蓋上でのサブセット/トランスデューサの位置についての情報を含んでよく、この情報に基づいてパラメータを計算してよい。したがって、パラメータは、位置と、どの撮像目標又は治療目標が定義されているかに応じて、各サブセット又はトランスデューサのために最適化されてよい。サブセット・パラメータ又はトランスデューサ・パラメータが手動で計算されるか自動的に計算されるかに関係なく、送信パラメータ算出モジュール510A及び受信パラメータ算出モジュール510Bは、音響限界又は熱的限界などの安全性限界が違反されないことを保証し得る。これらの概念の適用例は、頭蓋の局所的条件、素子付近の組織、及び超音波が照射される組織の適応を可能にし得る。
【0175】
基準点
患者が超音波スキャン、MRIスキャン、及びにCTスキャンにおいて観察可能な、ネジ又は歯科用インプラントなどの物体を頭部内に有する場合がある。いくつかの実施形態では、そのような物体は、レジストレーションの精度を改善するために基準点マーカとして使用される場合がある。非限定的な例では、歯科用インプラントは、1つ以上のトランスデューサ素子によって撮像されてよい。トランスデューサ素子の位置が知られている場合、超音波トランスデューサ・アセンブリ(図4の超音波トランスデューサ・アセンブリ220を参照されたい)又はトランスデューサは、歯科用インプラントに対して留置されることができる。同じインプラントの位置が動作前画像内で知られる場合、動作前画像に対する超音波画像のレジストレーションが、歯科用インプラントに対して実行されてよい。この方法は、トランスデューサ素子が具体的には低音響減衰窓において設置されることを必要としない、動作前画像及び超音波画像をレジストレーションすることの代替形態を提案する。
【0176】
用量送達の確認
マイクロバブルなどの造影剤は、薬物の送達を容易にし、薬物が送達されたという確認を取得するために使用されてよい。いくつかの実施形態では、超音波トランスデューサ又はサブセットは、血液脳関門が開くときマイクロバブルから放出されたエネルギーを受信するように特別に同調された素子が点在させられている。このエネルギーは、低調波範囲又は調波範囲内であってよい。より具体的な一実施形態では、1つ以上の受信専用素子は、超音波用量及び/又は薬物の送達を確認するために、これらの具体的な周波数を検出するように同調される。ディスプレイ及びユーザ・インタフェース
図18は、上記で説明された例示的な超音波システムと相互作用するために医師などの許可された人に提供され得るディスプレイ及びユーザ・インタフェース1800の非限定的な例を図示する。この構成では、ディスプレイは、4つのウィンドウすなわち1810と、1830と、1850と、1870とを含有してよい。ウィンドウ1810において、低減衰音響窓からの超音波画像が表示されてよい。画像1815は、低減衰音響窓から取得され、ウィリス動脈輪1820がその中に描かれる。ウィンドウ1830において、動作前画像1835が同時に表示されてもよい。動作前画像1835は、たとえば、MRIスキャンから取得された画像の3Dレンダリングであってよい。動作前画像内で1840とラベル付けされたウィリス動脈輪は、しかし、物理的に、それは、超音波画像1815内の1820と同じ構造である。
【0177】
このユーザ・インタフェース1800の図に示されていない初期工程として、ユーザは、患者の脳の動作前画像をインポートすることを超音波システムによって要求される場合がある。次いで、ユーザは、超音波システムが画像を収集することを可能にするために、撮像トランスデューサを低減衰音響窓において留置するように命令される場合がある。これらの工程はそれぞれ、方法300の工程305及び310に関係する。ユーザ・インタフェースの他の実施形態では、命令メッセージ及び確認メッセージが、超音波システムによって提供される場合がある。
【0178】
適切なユーザ・インタフェースは、ユーザが2つの画像をレジストレーションすることを可能にするために提供されてよい。図18は、いくつかのユーザ選択可能ボックス1855と1860と1865とをもつワークフローウィンドウ1850を図示する。ユーザは、超音波画像の動作前画像とのレジストレーションのプロセスを始めるためにボックス1855を選択してよい。この選択の後、ユーザ・インタフェース1800は、レジストレーションに使用され得る超音波画像を選択するようにユーザに求めてよい。低減衰音響窓を通したライブ撮像が実行されている場合、システムは、ライブ撮像を停止し、ウィンドウ1810の中で最近獲得及び記憶されたばかりの画像をスクロールし、この画像のセットから画像を選定するオプションをユーザに提供してよい。従来の超音波撮像システムでは、記憶機能は「映写(cine)」機能と言われる。ひとたび適切な画像が選択されると、ユーザは、画像内の構造(この例では、ウィリス動脈輪1820など)のアウトラインを描くように求められる場合がある。このプロセスは、セグメンテーションと言われる。
【0179】
セグメンテーションは、自動的に行われてもよいし、手動で行われてもよいし、この2つの組み合わせで行われてもよい。本例では、医師が、ウィリス動脈輪1820の初期アウトラインを提供してよい。本明細書において説明される超音波システムは、任意選択で有益に、セグメンテーション・プロセスを支援するために、カラー・ドップラー撮像モードを提供し得る。このモードで動作することによって、ウィリス動脈輪内の血流が検出及び表示されることが可能になり、ウィリス動脈輪を形成する血管の境界線が容易に区別できるようになる。そのため、ユーザは、脳組織の残りの白黒画像に対して、カラーが付けられた血管を使用して、ウィリス動脈輪のアウトラインを容易に引くことができる。超音波システムは、次の工程に進んでもよいし、あるいは、手動で引かれた境界線をセグメンテーション・アルゴリズム・プログラムのための基礎として内部で使用して、より正確なセグメンテーションを生成してもよい。この選択プロセスは、方法300の工程310に関係する。
【0180】
ひとたびセグメンテーションが完成すると、ユーザ・インタフェース1800は、セグメンテーションされた画像に最もぴったりとマッチングする平面の選択を要求してよい。再び、これは、手動で行われてもよいし、自動的に行われてもよいし、この2つの組み合わせで行われてもよい。自動プロセスでは、超音波システムは、動作前画像1835内を見て、セグメンテーションされた超音波画像に最もぴったりとマッチングする画像平面を見つけようとしてよい。混合動作では、ユーザ・インタフェース1800は、MR画像内で平面を自動的に決定した後、融合された超音波及びMRI画像をウィンドウ1830内に表示し、そのマッチングが許容可能であったかどうかに関する決定をなすようにユーザに求めてよい。
【0181】
ウィンドウ1870は、メッセージを表示し、ユーザからの入力を受け付けるために使用されてよい。受け付けるボックス1875及び拒否するボックス1880などの選択可能なボックスが、ユーザから入力を受け付けるために表示されてよい。そのため、ユーザは、超音波画像と動作前画像とのマッチングの受け付けを指摘してもよいし、より良いマッチングを引き続き見つけるように超音波システムに指図してもよい。他のユーザ・インタフェース要素も、マッチング・プロセスをガイドするためにユーザに提供されてよい。動作前画像内の望ましい平面の選択は、レジストレーション・プロセスにおける開始点として使用されてよい(これは、たとえば、方法320Cにおける工程320C2を反映してよい)。超音波システムがレジストレーションのプロセスを実行すると、超音波システムは、メッセージ・ウィンドウ1885内にステータス・インジケータを表示してよい。メッセージ・ウィンドウは、レジストレーションが完了したときユーザに通知してよく、及び/又は、さらなる命令を提供してよい。
【0182】
その後、ウィンドウ1850内で、ユーザ・インタフェース1800が、方法300における工程315に対応して、ボックス1860内で標的領域を選択するようにユーザに求めてよい。以前に説明されたように、標的領域は、MR画像内で選定されてよい。この図では、ユーザは、領域1845などの領域を指して、それを標的領域として選択してよい。この工程は、動作前画像が取得された後の任意の時点で実行されてよいことが留意されるべきである。これらの工程にそれを含めることは、それがどのように実行され得るかを共通ユーザ・インタフェース内で他の工程のそばに図示する働きのみをする。
【0183】
超音波システムは、ユーザによって選択されたエリアのまわりの領域を自動的に選択してよい。この領域選択は、演繹的に超音波システムへと入力されたあらかじめプログラムされたデータによってガイドされてよい。あるいは、ユーザ・インタフェース1800は、ユーザが、自動的に選択された標的領域の境界線を修正することを可能にしてもよいし、それを完全に手動で選択することを可能にしてもよい。ユーザが、標的領域のサイズ及び形状に満足していることを(ウィンドウ1870内のメッセージ・ボックス1885ならびにボックス1875及び1880の使用を通じて)指摘した後、次いで、ユーザ・インタフェース1800は、治療を始めるようにユーザに求めてよい。このプロセスは、方法300の工程325の例示的な一実施形態を反映し、標的領域の座標を出力として提供してよい。治療開始ボタン1865は、以前に灰色になっている可能性もあるが、選択可能になってよく、選択すると、いくつかのアクションをトリガしてよい。
【0184】
治療を開始した後、超音波システムは、上記で方法300の工程330において解説されたように、送達サブセットを計算してよい。これに続いて、超音波システムは、治療トランスデューサを、図7Aに示される構成において頭部上の適切な位置に対して移動させてもよいし、図4に示される構成において治療サブセットを選択してもよい。治療トランスデューサが、図7Bに示される構成などにおいて、手動で制御される場合、現在の治療トランスデューサ座標は、所望の計算された座標とともに、メッセージ・ウィンドウ1885内に表示されてよい。ユーザが、トランスデューサを所望の座標に正しく留置したとき、メッセージ・ウィンドウ1885は、これを指摘するメッセージを表示してよい。ユーザを所望の位置にガイドする他の方法も可能である。
【0185】
ひとたび治療素子が選択されると、又は治療トランスデューサが適切な位置にくると、超音波システムは、超音波の送達のタイミングをIVポンプの動作と協調させるために、IVポンプ及び治療トランスデューサ素子に対して信号を送出してよい。トランスデューサ及び/又は他のセンサから取得された信号に応じて、ユーザ・インタフェース1800は、血液脳関門がいつ開かれたか、又は他の関連するステータス更新を表示してよい。この情報は、リアル・タイムで計算されてもよいし、演繹的実験からの経験的分析に基づいてもよい。ひとたび薬物が送達されると、治療が完了したこと又はユーザは別の領域を治療することに進むべきであることを指摘するメッセージが、メッセージ・ウィンドウ1885内に表示されてよい。
【0186】
用語の解釈
文脈が別途明白に要求しない限り、説明及び特許請求の範囲の全体にわたって、以下のとおりである。・「備える、含む(comprise)」、「備える、含む(comprising)」などは、排他的又は網羅的な意味とは対照的に、包括的な意味で解されるべきである。すなわち、「限定されるものではないが、~を含む」の意味で解されるべきである。・「接続される」、「結合される」、又はそれらのいかなる変形も、2つ以上の要素間の、直接的又は間接的のどちらかの、任意の接続又は結合を意味する。要素間の結合又は接続は、物理的、論理的、又はそれらの組み合わせとすることができる。・「本明細書において」、「上記で」、「以下で」、及び類似の趣旨の単語は、本明細書について説明するために使用されるとき、本明細書を全体として参照し、本明細書の特定の一部分を参照しないものとする。・2つ以上の項目のリストに関する「又は、もしくは」は、単語の、以下の解釈のすべてを包含する。すなわち、リスト内の項目のいずれか、リスト内の項目のすべて、及びリスト内の項目の任意の組み合わせ。・単数形「a」、「an」、及び「the」は、任意の適切な複数形の意味も含む。
【0187】
本明細書及び任意の添付の特許請求の範囲(存在する場合)において使用される、「垂直」、「横向き」、「水平」、「上向き」、「下向き」、「前方」、「後方」、「内側」、「外側」、「縦」、「横」、「左」、「右」、「前部」、「後部」、「上部」、「下部」、「~の下」、「~より上」、「~より下」などの、方位を指摘する単語は、説明及び図示される装置の具体的な方向に依存する。本明細書において説明される主題は、さまざまな代替方向を仮定してよい。したがって、これらの方位用語は、厳密に定義されず、狭く解釈されるべきでない。
【0188】
本発明の実装形態は、特別に設計されたハードウェア、構成可能なハードウェア、データ・プロセッサ上で実施することが可能であるソフトウェア(任意選択で、「ファームウェア」を含んでよい)の提供によって構成されたプログラマブル・データ・プロセッサ、本明細書において詳細に解説される方法における1つもしくは複数の工程及び/又はこれらの2つ以上の組み合わせを実行するように具体的にプログラム、構成、又は構築された特殊目的コンピュータ又はデータ・プロセッサ、のいずれかを備えてよい。特別に設計されたハードウェアの例は、論理回路、特定用途向け集積回路(「ASIC」)、大規模集積回路(「LSI」)、超大規模集積回路(「VLSI」)などである。構成可能なハードウェアの例は、プログラマブル・アレイ・ロジック(「PAL」)、プログラマブル・ロジック・アレイ(「PLA」)、及びフィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(「FPGA」)などの、1つ以上のプログラマブル・ロジック・デバイスである。プログラマブル・データ・プロセッサの例は、マイクロプロセッサ、デジタル信号プロセッサ(「DSP」)、埋め込みプロセッサ、グラフィックス・プロセッサ、数値演算コプロセッサ、汎用コンピュータ、サーバ・コンピュータ、クラウド・コンピュータ、メインフレーム・コンピュータ、コンピュータ・ワークステーションなどである。
【0189】
たとえば、本明細書において説明されるシステムのため又は本明細書において説明される超音波機器のため又は本明細書において説明されるモジュールのための制御回路内の1つ以上のデータ・プロセッサは、プロセッサにとってアクセス可能なプログラム・メモリ内でソフトウェア命令を実施することによって、及び/又は論理回路もしくはFPGAなどの構成可能なデバイス内で構成された論理によりデータを処理することによって、及び/又は本明細書において説明される方法工程を実行するように構成されたASIC又は他の論理回路内でデータを処理することによって、本明細書において説明される方法を実装してよい。
【0190】
本明細書において説明されるモジュールのグループは、別個のハードウェア(たとえば、別個のプロセッサ及び/又は構成可能な論理回路及び/又はハード・ワイヤード論理回路)を使用して実装されてよいが、2つ以上のモジュールが、ハードウェア・プラットフォームのいくつか又はすべてを共有してもよい。たとえば、2つ以上のモジュールは、2つ以上のモジュールの各々の機能を実行するようにソフトウェア命令によって又は別の方法で構成された、共通データ・プロセッサ及び/又は構成可能な論理回路及び/又はハード・ワイヤード論理回路によって実装されてよい。
【0191】
処理は、集中されてもよいし、分散されてもよい。処理が分散される場合、ソフトウェア及び/又はデータを含む情報は、中央で保有されてもよいし、分散されてもよい。そのような情報は、ローカル・エリア・ネットワーク(LAN)、ワイド・エリア・ネットワーク(WAN)、又はインターネット、ワイヤード・データ・リンクもしくはワイヤレス・データ・リンク、電磁信号、又は他のデータ通信チャネルなどの通信ネットワークを通して、異なる機能ユニット間で交換されてよい。
【0192】
プロセス又はブロックは所与の順序で提示されているが、代替例は、異なる順序で、工程を有するルーチンを実行してもよいし、ブロックを有するシステムを用いてもよく、いくつかのプロセス又はブロックが、代替形態又は副組み合わせを提供するために、削除、移動、追加、再分割、組み合わせ、及び/又は修正されてよい。これらのプロセス又はブロックの各々は、種々の異なる様式で実装されてよい。また、プロセス又はブロックは、時々、直列に実行されるように示されているが、その代わりに、これらのプロセス又はブロックは、並列に実行されてもよいし、異なる時間に実行されてもよい。
【0193】
本発明のいくつかの態様は、プログラム製品の形式で提供されてよい。プログラム製品は、データ・プロセッサによって実行されるときデータ・プロセッサに本発明の方法を実施させるコンピュータ可読命令のセットをもつ任意の非一時的な媒体を含んでよい。本発明によるプログラム製品は、多種多様の形式のいずれかであってよい。プログラム製品は、たとえば、フロッピー・ディスケット、ハード・ディスク・ドライブを含む磁気データ記憶媒体、CD ROM、DVDを含む光データ記憶媒体、ROM、フラッシュRAM、EPROM、ハード・ワイヤード・チップ又はあらかじめプログラムされたチップ(たとえば、EEPROM半導体チップ)、ナノテクノロジー・メモリを含む電子データ記憶媒体などの、非一時的な媒体を含んでよい。プログラム製品上のコンピュータ可読信号は、任意選択で、圧縮されてもよいし、暗号化されてもよい。
【0194】
いくつかの実装形態では、本発明は、ソフトウェア内で実装されてよい。よりわかりやすくするため、「ソフトウェア」は、プロセッサ上で実施される任意の命令を含み、(限定されるものではないが)ファームウェア、常駐ソフトウェア、マイクロコードなどを含んでよい。当業者に知られているように、処理ハードウェアとソフトウェアの両方は、全体的又は部分的に、集中されてもよいし、分散されてもよい(又はそれらの組み合わせ)。たとえば、ソフトウェア及び他のモジュールは、ローカル・メモリを介して、ネットワークを介して、分散コンピューティング文脈におけるブラウザもしくは他のアプリケーションを介して、又は上記で説明された目的に適した他の手段を介して、アクセス可能であってよい。
【0195】
構成要素(たとえば、ソフトウェア・モジュール、プロセッサ、アセンブリ、デバイス、回路など)が上記で参照される場合、別途指摘されない限り、その構成要素への参照(「手段」への参照を含む)は、その構成要素の等価物として、本発明の図示された例となる実装形態における機能を実行する開示された構造に構造的に等しくない構成要素を含む、説明された構成要素の機能を実行する(すなわち、機能的に等価である)任意の構成要素を含むと解釈されるべきである。
【0196】
システム、方法、及び装置の具体例が、図示の目的で、本明細書において説明されてきた。これらは例にすぎない。本明細書において提供される技術は、上記で説明された例示的なシステム以外のシステムに適用されることができる。本発明の実践において、多くの改変、修正、追加、省略、及び置換が可能である。本発明は、特徴、要素、及び/もしくは行為を、等価な特徴、要素、及び/もしくは行為と置き換えること、異なる実装形態からの特徴、要素、及び/もしくは行為の混合及びマッチング、本明細書において説明される実装形態からの特徴、要素、及び/もしくは行為を、他の技術の特徴、要素、及び/もしくは行為と組み合わせること、ならびに/又は説明された実装形態からの特徴、要素、及び/もしくは行為を組み合わせないでおくことによって取得される変形形態を含む、当業者には明らかであろう、説明される実装形態に関する変形形態を含む。
【0197】
そのため、以下で紹介される特許請求の範囲は、合理的に推測され得るすべてのそのような修正、置換、追加、省略、及び副組み合わせを含むように解釈されることが意図される。特許請求の範囲は、例に記載される好ましい実装形態によって制限されるべきでなく、説明に全体として矛盾しない最も広い解釈が与えられるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
図8
図9
図10
図11
図12A
図12B
図13
図14
図15A
図15B
図16
図17
図18
【手続補正書】
【提出日】2022-05-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波エネルギーを患者の脳に対して送達すべく動作可能なシステムにおいて、
撮像超音波トランスデューサと、
治療超音波トランスデューサと、
1つ以上の超音波画像を生成するように前記撮像超音波トランスデューサを動作させるために接続された超音波機器と、
データ・ストアと、
以前に取得された画像の参照フレーム内の座標を前記超音波画像の参照フレーム内の座標に対して関係付ける変換を生ずるように、前記超音波画像に対して前記以前に取得された画像をレジストレーションするために、前記データ・ストア内の対応する前記以前に取得された画像とともに前記超音波画像のうちの1つを処理し、
前記変換を使用して、前記超音波画像の前記参照フレーム内の少なくとも1つの標的領域の座標を決定し、
前記少なくとも1つの標的領域の前記座標に基づいて、超音波エネルギーを前記少なくとも1つの標的領域に対して送達するために前記治療超音波トランスデューサのための標的位置を決定する
ように構成されたデータ・プロセッサと
を備えるシステム。