(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022097571
(43)【公開日】2022-06-30
(54)【発明の名称】路面標示板
(51)【国際特許分類】
E01F 9/512 20160101AFI20220623BHJP
E01F 9/559 20160101ALI20220623BHJP
G09F 19/22 20060101ALI20220623BHJP
【FI】
E01F9/512
E01F9/559
G09F19/22 H
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022071846
(22)【出願日】2022-04-25
(62)【分割の表示】P 2018155412の分割
【原出願日】2018-08-22
(71)【出願人】
【識別番号】599012684
【氏名又は名称】唐沢 伸
(71)【出願人】
【識別番号】517266779
【氏名又は名称】株式会社リンコー
(71)【出願人】
【識別番号】516240592
【氏名又は名称】林 弘美
(74)【代理人】
【識別番号】100109553
【弁理士】
【氏名又は名称】工藤 一郎
(72)【発明者】
【氏名】唐沢 伸
(57)【要約】
【課題】防水のための部材の隙間から水が浸透しないように蓄光材を完全に包み込むことで、蓄光材が水に濡れることを完全に防ぐことができる路面標示板を提供する。
【解決手段】基板0101と、前記基板上に基板と端面の少なくとも一部を面一として直接又は間接に配される後記蓄光材層からの光を反射する反射層0102と、反射層上に反射層の端面の少なくとも一部を面一として直接又は間接に配される蓄光材層0103と、蓄光材層上に蓄光材層の端面の少なくとも一部を面一として直接又は間接に配される表面ガラス層0104と、各層及び前記重ねられた端面の隙間の全部又は一部を覆う防水層0105と、前記各層を嵌合して端面側を保護する枠状部0106とからなる路面標示板0100を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に基板と端面の少なくとも一部を面一として直接又は間接に配される後記蓄光材層からの光を反射する酸化チタンを材料とする反射層と、
前記反射層上に反射層の端面の少なくとも一部を面一として直接又は間接に配される蓄光材層と、
前記蓄光材層上に蓄光材層の端面の少なくとも一部を面一として直接又は間接に配される表面ガラス層と、
各層端面及び前記重ねられた端面の隙間の全部又は一部を覆う防水層と、
前記各層を嵌合して端面側を保護する枠状部と、
からなる路面標示板。
【請求項2】
前記表面ガラス層の下面には、標示のための印刷が施されている請求項1に記載の路面標示板。
【請求項3】
前記蓄光材層と前記反射層との間にシリコーンゲル層を配した請求項1又は請求項2に記載の路面標示板。
【請求項4】
前記蓄光材層と前記表面ガラス層との間にシリコーンゲル層を配した請求項1から請求項3のいずれか一に記載の路面標示板。
【請求項5】
前記防水層はシリコーンゲルで構成されている請求項1から請求項4のいずれか一に記載の路面標示板。
【請求項6】
前記防水層は、
ベースフィルムと、
前記ベースフィルム上に配されるベースフィルム反射層と、
前記ベースフィルム反射層上に直接又は間接に配されるシリコーンゲルと、
で構成された防水フィルムで構成されている請求項1から請求項4のいずれか一に記載の路面標示板。
【請求項7】
前記基板上に直接又は間接に前記蓄光材層と同厚で上下面一に外光を反射する外光反射層を有する請求項1から請求項6のいずれか一に記載の路面標示板。
【請求項8】
前記基板は強化ガラスである請求項1から請求項7のいずれか一に記載の路面標示板。
【請求項9】
前記表面ガラス層は強化ガラスである請求項1から請求項8のいずれか一に記載の路面標示板。
【請求項10】
前記枠状部は金属製である請求項1から請求項9のいずれか一に記載の路面標示板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、路面に設置される蓄光標示板(以下「路面標示板」という。)に関し、特に、路面標示板の防水のための構成に関する。
【背景技術】
【0002】
蓄光標示板は、板状部材に蓄光材を備え、その発光を利用して避難誘導などのための案内標示を行うものである。蓄光標示板は、屋内外を問わず、壁、床面など様々な場所に設置されるところ、このうち、道路など屋外の路面に設置される路面標示板については、雨水などが標示板の隙間から標示板の内部に浸透して水に弱い蓄光材の発光機能を損なうおそれがあるという問題がある。
【0003】
この問題を解決するための方法として、従来から、蓄光材の上下及び側面のそれぞれに水の浸透を防ぐための部材を配置する方法が知られている。例えば、特許文献1には、床面に設置される誘導標識に関して、蓄光層(蓄光性塗料を含む着色層)の表面を透明なガラス層で覆い、裏面に金属製などの被服層を配置するとともに、蓄光層の外周部に樹脂のシール材を充填することで蓄光層の外周部を密封し、これにより水分が蓄光層に侵入することを完全に防止できることをうたった誘導標識の構造が開示されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された発明では、外周部を密封するのはあくまで蓄光層についてのみであり、蓄光材の表面に配置されているガラス層及び裏面に配置されている金属製の被覆層の外周部は密封されずにその端面を外部に露出したままの状態とされている(同文献の
図2参照)。そうすると、同図からも明らかなように、外周面には、(蓄光層の外周部に充填されている)樹脂のシール材の端面とガラス層の端面とが露出しており、これら隣接する両端面の境界も外周面に露出した状態となる。しかし、ガラスと樹脂とは熱膨張率が異なることから、温度変化によりこの境界に隙間が生じるおそれがあり、その場合、その隙間から水分が侵入して蓄光層に至り、これを濡らしてしまうおそれがある(蓄光層と金属製の被覆層との関係についても同様である)。つまり、特許文献1の発明のように、蓄光層の外周部だけを密封しても、水分が蓄光層に侵入するおそれを完全に防ぐことはできない。このように、従来技術では、蓄光材が水に濡れることを完全に防ぐことは困難であった。
【0006】
本発明は、以上の点に鑑みたものであり、その解決すべき課題は、端面に現れる部材の隙間から水が浸透しないように、蓄光層のみならず、その上下に配置される各層の端面全体を防水層で覆うことで、蓄光材が水に濡れることを完全に防ぐことができる路面標示板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明のうち、第一の発明は、基板と、前記基板上に基板と端面の少なくとも一部を面一として直接又は間接に配される後記蓄光材層からの光を反射する酸化チタンを材料とする反射層と、前記反射層上に反射層の端面の少なくとも一部を面一として直接又は間接に配される蓄光材層と、前記蓄光材層上に蓄光材層の端面の少なくとも一部を面一として直接又は間接に配される表面ガラス層と、各層端面及び前記重ねられた端面の隙間の全部又は一部を覆う防水層と、前記各層を嵌合して端面側を保護する枠状部とからなる路面標示板を提供する。
【0008】
また、第二の発明は、第一の発明を基礎として、前記表面ガラス層の下面には、標示のための印刷が施されている路面標示板を提供する。
【0009】
また、第三の発明は、第一又は第二の発明を基礎として、前記蓄光材層と前記反射層との間にシリコーンゲル層を配した路面標示板を提供する。
【0010】
また、第四の発明は、第一から第三のいずれか一の発明を基礎として、前記蓄光材層と前記表面ガラス層との間にシリコーンゲル層を配した路面標示板を提供する。
【0011】
また、第五の発明は、第一から第四のいずれか一の発明を基礎として、前記防水層はシリコーンゲルで構成されている路面標示板を提供する。
【0012】
また、第六の発明は、第一から第四のいずれか一の発明を基礎として、前記防水層は、ベースフィルムと、前記ベースフィルム上に配されるベースフィルム反射層と、前記ベースフィルム反射層上に直接又は間接に配されるシリコーンゲルと、で構成された防水フィルムで構成されている路面標示板を提供する。
【0013】
また、第七の発明は、第一から第六のいずれか一の発明を基礎として、前記基板上に直接又は間接に前記蓄光材層と同厚で上下面一に外光を反射する外光反射層を有する路面標示板を提供する。
【0014】
また、第八の発明は、第一から第七のいずれか一の発明を基礎として、前記基板は強化ガラスである路面標示板を提供する。
【0015】
また、第九の発明は、第一から第八のいずれか一の発明を基礎として、前記表面ガラス層は強化ガラスである路面標示板を提供する。
【0016】
また、第十の発明は、第一から第九のいずれか一の発明を基礎として、前記枠状部は金属製である路面標示板を提供する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、端面に現れる部材の隙間から水が浸透しないように、蓄光層のみならず、その上下に配置される各層の端面全体を防水層で覆うことで、蓄光材が水に濡れることを完全に防ぐことができる路面標示板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図2】反射層が基板と端面の一部を面一として配される構成の一例を示す図
【
図3】実施例3、実施例4及び実施例5の構成を含む路面標示板の構成の一例を示す図
【
図4】実施例7の路面標示板の外観の一例を示す斜視図
【
図6】外光反射層が基板上に直接配される構成の一例を示す図
【
図7】実施例1の路面標示板の防水層の被覆対象について説明するための概念図
【
図9】実施例6における防水層の構成の一例を示す図
【符号の説明】
【0019】
0100 路面標示板
0101 基板
0102 反射層
0103 蓄光材層
0104 表面ガラス層
0105 防水層
0106 枠状部
0307、0308 シリコーンゲル層
0409 外光反射層
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明の実施例を説明する。実施例と請求項の相互の関係は以下のとおりである。実施例1は主に請求項1、請求項8、請求項9、請求項10などに関し、実施例2は主に請求項2などに関し、実施例3は主に請求項3などに関し、実施例4は主に請求項4などに関し、実施例5は主に請求項5などに関し、実施例6は主に請求項6などに関し、実施例7は主に請求項7などに関する。なお、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施しうる。
【実施例0021】
<概要>
本実施例の路面標示板は、その構成要素である基板、反射層、蓄光材層、表面ガラス層の各層及びこれらの各層が重ねられた端面の隙間の全部又は一部を防水層で覆った点に特徴を有する。
【0022】
<構成>
(全般)
図1に本実施例の路面標示板の構成の概要を示す。本図に示すように、本実施例の路面標示板0100は、基板0101と、反射層0102と、蓄光材層0103と、表面ガラス層0104と、防水層0105と、枠状部0106とを有する。
【0023】
(基板)
基板は、その上層に反射層、蓄光材層、表面ガラス層を順次配置して、路面標示板の本体部分(基板、反射層、蓄光材層及び表面ガラス層を合わせた部分をいう。以下同じ。)の一部をなすものであり、本体部分全体をその最下層で支持するための部分である。基板の材料は、その役目に照らし、硬く変形しにくいものであることが望ましく、例えば、強化ガラスなどのガラス、硬質樹脂(アクリル樹脂、ポリカーボネイト樹脂など)、金属(ステンレス、アルミニウムなど)、セラミックなどが考えられる。なかでも特に好適な基板の材料として、強化ガラスが挙げられる。なお、強化ガラスとは、通常のガラス(フロートガラスとも呼ばれる)を約650~700℃で加熱した後、ガラス表面に空気を吹き付け急激に冷やすなどの方法で生成されたガラスをいい、耐圧性や耐衝撃強度に極めて優れたものである。
【0024】
基板の厚みの一例は、約4~6mmであり、より好適には約5mmである。これは、本体部分の寸法が長さ60cm程度、幅6cm程度、厚み1.2cm程度である場合の一例である(以下に記載する本実施例の反射層、蓄光材層、表面ガラス層、防水層及び枠状部の寸法の一例についても同様である)。
【0025】
(反射層)
反射層は、基板上に配される反射材を含む部材であり、その上層に配置される蓄光材層からの光を表面ガラス層方向(即ち、路面標示板の表面方向)に反射することで蓄光材層の輝度を増し、これにより路面標示板の視認性を向上させるためのものである。反射材の材料としては、例えば酸化チタンが考えられる。反射層の厚みの一例は、約0.18~0.22mmであり、より好適には約0.20mmである。反射層の形成方法には特に限定はなく、例えば、基板の表面に反射材を塗布する方法、基板の表面に反射材を備えた反射テープ又は反射フィルムを貼付する方法などが考えられる。
【0026】
反射層は、基板上に直接又は間接に配される。反射層が基板上に間接に配される構成としては、例えば、基板上に直接シリコーンゲル層が配され、さらにシリコーンゲル層上に直接反射層が配されるというものが考えられる(詳細については別の実施例にて後述する)。
【0027】
また、反射層は、基板と端面の少なくとも一部を面一として配される。即ち、基板の端面と反射層の端面は少なくとも一部が面一になっているということである。
図1に示した例は、基板の端面0101aと反射層の端面0102aの全部が面一になっている例である(煩雑を避けるため同図の右側の端面についてのみ符号を付したが、左側の端面についても同様である。また、
図2についても同様である。)。これに対して、「端面の一部を面一として配される」とは、基板の端面と反射層の端面とが、面一になっている部分もあるがそうなっていない部分もあるという意味である。このような構成の一例としては、
図2に示すように、基板の端面の下方部分が切り欠かれた状態になっており、基板の端面のうち上方部分0201aだけが反射層の端面0202aと面一になっているものが挙げられる。
【0028】
(蓄光材層)
蓄光材層は、蓄光材を含み反射層上に配されるものであり、例えば、粉末状の蓄光材をフェニルシリコーン液などの溶媒に溶解し、固化して形成したものである。蓄光材の材料としては、例えばアルミン酸ストロンチウム系蓄光材原料(アルミン酸ストロンチウム(SrAl2O4、Sr4Al14O25など)を母結晶とし、これにケイ素、リン、カルシウム、セリウム、ユーロピウム、ディスプロシウムなどを添加したもの)や硫化亜鉛系のものなどが挙げられる。蓄光材層の厚みの一例は、約1.0~1.75mmであり、より好適には、約1.5mmである。
【0029】
蓄光材層は、発光部分の形状、模様等により標示の内容を示すためのものである。そこで、その標示の内容に応じて、例えば、文字(例えば「と」、「ま」、「れ」という文字群)、ピクトグラム(例えば、非常用電話の位置を示すためのピクトグラム)、図形(例えば避難誘導方向を示す矢印マーク)など適宜の形状、模様等に形成された蓄光材層を使用することができる。あるいは、蓄光材層の可視部分と、蓄光材層の上層の一部に配された不透光性の樹脂シートなどの不透光部分とを組み合わせた形状、模様等によって、これらの文字、ピクトグラム、図形などを表すようにしてもよい。なお、かかる不透光部分を表面ガラス層の下面に印刷を施すことにより配する例については、次実施例で説明する。
【0030】
蓄光材層は、反射層上に直接又は間接に配される。蓄光材層が反射層上に間接に配される構成の例は、反射層が基板上に間接に配される例として前述したところと同様である(詳細については別の実施例にて後述する)。
また、蓄光材層は、反射層の端面の少なくとも一部を面一として配される。即ち、蓄光材層の端面と反射層の端面は少なくとも一部が面一になっているということである。
図1に示した例は、蓄光材層の端面0103aと反射層の端面0102aの全部が面一になっている例である。なお、「端面の一部を面一として配される」ことの意味は、基板の端面と反射層の端面の関係について説明したところと同様である。
【0031】
(表面ガラス層)
表面ガラス層は、蓄光材層上に配される部材であり、その下層に配される蓄光材層等の損傷・劣化や汚れを防止するためのものである。表面ガラス層の材料は、文字通りガラスを典型例とし、特に好適な材料としては、基板の材料の一例として挙げたのと同様の強化ガラスが挙げられる。強化ガラスは、上述の耐圧性や対衝撃強度に極めて優れているという特性のほかに、万一割れた場合でも破片が鋭い刃先のようにならず粉々になるため人が破片でけがをしにくいという特徴もあることから、人などが踏むことの多い路面標示板の表面に配する部材としては、強度面のみならず安全面からも適したものである。表面ガラス層の厚みの一例は、約4~6mmであり、より好適には約5mmである。
【0032】
また、表面ガラス層には、滑り止めのために多数の小さな突起が設けられていてもよい。この突起の具体的形状の一例は、別の実施例にて後述する。
【0033】
また、表面ガラス層に上述のような多数の突起を設けることで、この突起等がいわばレンズのような役目を果たし、蓄光材層から発せられる光を表面ガラス層内で乱反射させつつ発出することで、蓄光材層の発光輝度をさらに高めるという効果を得ることができる。
【0034】
表面ガラス層は、蓄光材層上に直接又は間接に配される。表面ガラス層が蓄光材層上に間接に配される構成の例は、反射層が基板上に間接に配される例などとして前述したところと同様である(詳細については別の実施例にて後述する)。
【0035】
また、表面ガラス層は、蓄光材層上に蓄光材層の端面の少なくとも一部を面一として配される。
図1に示した例は、表面ガラス層の端面0104aと蓄光材層の端面0103aの全部が面一になっている例である。なお、「端面の一部を面一として配される」の意味は、基板の端面と反射層の端面の関係などについて説明したところと同様である。
【0036】
(防水層)
防水層は、各層端面及び重ねられた端面の隙間の全部又は一部を覆う防水のための部材である。「各層」とは基板、反射層、蓄光材層及び表面ガラス層をいい、「端面」とは、各層の側部に現れる面をいう。また、「重ねられた端面の隙間」とは、これら各層が下から上に積み重ねられた状態において隣接する各層の端面間に現れる境界に生じ得る隙間をいう。
【0037】
図1において、防水層は、基板の端面0101a、反射層の端面0102a、蓄光材層の端面0103a及び表面ガラス層の端面0104aという各層の端面を覆うように配置されるとともに、これら各層が重ねられた端面の隙間の全部をも覆うように配置されている。即ち、本実施例において、防水層は、従来の例のように、単に蓄光材層の端面を覆う位置に配置されているだけではなく、他の各層の端面及びこれらの端面の隙間の全部又は一部をも覆うように配置される。この結果、従来の例とは異なり、少なくとも蓄光材層の端面及び蓄光材層とその上層及び下層に配置される表面ガラス層及び反射層の端面の隙間が防水層によって覆われた状態となり、蓄光材層が水に濡れるおそれをなくすことができる。
【0038】
このことから明らかなように、防水層によって覆われる対象である「各層端面及び重ねられた端面の隙間の全部又は一部」には、少なくとも「蓄光材層の端面」、「蓄光材層の端面と反射層の端面の隙間」及び「蓄光材層の端面と表面ガラス層の端面の隙間」が含まれる。
【0039】
図7は、本実施例の路面標示板の防水層の被覆対象について説明するための概念図であって、上述の「各層端面及び重ねられた端面の隙間の全部又は一部」について、より詳細に説明するためのものである(なお、説明の便宜上、隙間を誇張した寸法で描いており、したがって、各層端面及びその隙間の寸法を正確に表したものではない)。同図(a)に示すように、下から順に基板0701、基板と反射層の隙間0701b、反射層0702、反射層と蓄光材層の隙間0702b、蓄光材層0703、蓄光材層と表面ガラス層の隙間0703b、表面ガラス層0704が配置されている。ここで、上述のように、「蓄光材層の端面」、「蓄光材層の端面と反射層の端面の隙間」及び「蓄光材層の端面と表面ガラス層の端面の隙間」が防水層0705で覆われていることが必須であり、(b)がこの状態を示している。一方、「各層端面及び重ねられた端面の隙間の全部」が防水層0705で覆われている状態を(c)が示している。なお、(b)において、蓄光材層の上下の隙間に水が浸透することをより確実に防ぐために、同図の例とは異なり、反射層の端面0702aと表面ガラス層の端面0704aが防水層の端面0705aと面一になる位置まで張り出していてもよい。
【0040】
防水層の好適な材料の一例は、シリコーンゲルである。その具体的構成については、別の実施例にて後述する。また、防水層の厚みの一例は、約0.2~2.0mmであり、特にシリコーンゲルを用いた場合の好適な厚みの一例は約1.0mmである。防水層の形成方法には特に限定はなく、例えば、防水材を備えたテープ又はフィルムを貼付する方法などが考えられる。
【0041】
(枠状部)
枠状部は、上述した基板、反射層、蓄光材層、表面ガラス層の各層を嵌合して端面側を保護するように構成されている。平たく言えば、枠状部は、その中に本体部分をぴったりと過不足なく収容して保護するための部材である。このため、枠状部は、底板及び周壁を有し、上部が開口した盆状ないし箱状の形状をなしている。枠状部の好適な材料の一例としては、アルミニウム、ステンレスなどの金属が挙げられる。枠状部の寸法の一例としては、部材の厚みが約2.5~3.5mmであって、凹部部分の寸法が長さ60cm程度、幅6cm程度、厚み1.2cm程度である(即ち、本体部分をぴったりと過不足なく収容できるように本体部分とほぼ同一の寸法である)。
【0042】
<効果>
本実施例の発明によれば、防水のための部材の隙間から水が浸透しないように蓄光材を完全に包み込むことで、蓄光材が水に濡れることを完全に防ぐことができる路面標示板を提供することができる。
本実施例における係る構成の特徴は、この印刷部分に水が浸透しないように構成されているため、油性のみならず水性の塗料を用いることもでき、様々な種類の塗料を用いることができる点にある。ただし、屋外で紫外線にさらされても劣化しにくいものとするため、耐候性に優れた塗料を用いることが望ましい。かかる塗料として、例えばセラミック塗料が好適である。セラミック塗料は、粉末状などのセラミックを成分に含む塗料であり、耐候性のほか、耐熱性や耐久性にも優れたものである。また、金属類を蒸着したり、スパッタリングすることで文字やピクトグラムを描くように構成してもよい。金属類の蒸着やスパッタリングは、金属製や有機系のマスクをガラス面に配置してその上から金属薄膜を積層するように処理する。この場合、金属類としては酸化しづらい金などが最適であるが、本発明の湿気のシール性が高いことから酸化しやすい金属を用いても問題が生じない。例えば、鉄、銅、アルミ、チタン等を採用することができる。さらにチタンなどは予め酸化雰囲気中で蒸着、スパッタリングすることで安定な酸化チタンを印刷文字、ピクトグラム材料として利用できより信頼性の高い路面標示をすることができる。スパッタリングする場合には酸化雰囲気になくても、予め酸化金属ターゲットをスパッタリングすることでガラス面に酸化金属文字、ピクトグラムを構成することができる。また、マスクと蒸着、スパッタリングの方法以外に、ガラス面全面に金属膜、酸化金属膜を構成し、有機系のマスク(レジスト)を文字、ピクトグラムを構成するように配置しエッチングすることで文字、ピクトグラムを構成するようにすることもできる。金属、酸化金属による文字、ピクトグラムは紫外線耐性が高いので屋外の路面標示には適したものとなる。これら、蒸着、スパッタリング、エッチングを用いて文字、ピクトグラムを構成するものも本発明においては「印刷」に含めて解釈するものとする。さらに、印刷は、薄い金属箔を文字やピクトグラム形状に切り抜いてガラスに張り付けたり、あるいは薄い金属箔を切り抜いた部分で文字やピクトグラムを構成するようにしてガラスに張り付けたりして構成してもよい。薄い金属箔としてはアルミ箔、銅箔、ステンレス箔などを採用することができる。これらの箔の厚みは20μm程度から100μm程度が好ましい。薄すぎると機械的強度が弱くなり、厚すぎると隙間が生じる問題がある。好ましくは30μm程度から60μm程度が良い。これら薄い金属箔を利用する処理で文字やピクトグラムを構成するものも本発明においては「印刷」に含める。なお、薄い金属箔のガラスへの固定はシリコーンを用いて行うことが好ましい。
印刷方法としては、ディスペンサ等を用いて直接ガラス表面に塗料を塗布する方法や、例えば、セラミック塗料を用いる場合にはセラミック印刷を用いることもできる。セラミック印刷とは、セラミック塗料をガラス表面に吹き付け、焼き付けることで印刷する方法をいう。また、スクリーン印刷を用いることもできる。スクリーン印刷は、塗料を載せたスクリーンを印刷対象(本実施例ではガラス面)上に固定し、スキージ等をスクリーンに押し当てて摺動することで、塗料をスクリーンに穿った開口部から通過させて印刷する方法である。同じデザインの印刷を短時間に大量に施すことができるので、様々な場所への設置のニーズが近年急速に高まっている路面標示板に用いる印刷方法としては極めて好適なものである。また、この方法は、様々な種類の塗料を用いることができるという利点も有している。
このように構成すれば、表面ガラス層の印刷部分と蓄光材層との間に空気の隙間が生じることがなく、蓄光材層からの発光輝度を損なうおそれをなくすことができる。この場合、蓄光材層とシリコーンゲル層の屈折率を等しくすることが望ましい。また、印刷部分をシリコーン層で覆うことで、印刷部分が剥がれにくくなるという効果もある。なお、表面ガラス層と蓄光材層との間にシリコーンゲル層を配する構成の詳細については、別の実施例にて後述する。