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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022097581
(43)【公開日】2022-06-30
(54)【発明の名称】表面処理銅箔
(51)【国際特許分類】
   C23C 26/00 20060101AFI20220623BHJP
   B32B 15/20 20060101ALI20220623BHJP
   C23C 28/00 20060101ALI20220623BHJP
   C25D 5/10 20060101ALI20220623BHJP
   C25D 5/16 20060101ALI20220623BHJP
   C25D 7/06 20060101ALI20220623BHJP
【FI】
C23C26/00 A
B32B15/20
C23C28/00 A
C25D5/10
C25D5/16
C25D7/06 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】24
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022072690
(22)【出願日】2022-04-26
(62)【分割の表示】P 2020128604の分割
【原出願日】2020-07-29
(31)【優先権主張番号】16/538,070
(32)【優先日】2019-08-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】591057290
【氏名又は名称】長春石油化學股▲分▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【弁理士】
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【弁理士】
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100151301
【弁理士】
【氏名又は名称】戸崎 富哉
(74)【代理人】
【識別番号】100152308
【弁理士】
【氏名又は名称】中 正道
(74)【代理人】
【識別番号】100201558
【弁理士】
【氏名又は名称】亀井 恵二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100122345
【弁理士】
【氏名又は名称】高山 繁久
(72)【発明者】
【氏名】黄 慧芳
(72)【発明者】
【氏名】鄭 桂森
(72)【発明者】
【氏名】周 瑞昌
(57)【要約】
【課題】本発明は、耐錆性および耐変色性を有し、改良された表面処理銅箔に関する。
【解決手段】より具体的に、前記表面処理銅箔は、クロムフリーであり、(a)銅箔と、必要に応じて(b)前記銅箔の片面または両面に設けられ、Ni、Zn、Co、Mn、Snまたはそれらの混合物を含むバリア層と、(c)前記銅箔の片面または両面あるいは一つまたは二つのバリア層に結合される有機層(c)とを含み、前記有機層におけるN、S、およびSi元素の合計は、5正規化原子%を超える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)銅箔と、
(c)前記銅箔に設けられた有機層と、
を含み、
前記有機層におけるN、S、およびSi元素の合計は、5正規化原子%を超え、
前記正規化原子%は、分析されたC、O、N、SおよびSiの原子%の合計を分母として、分析されたN、SまたはSiの原子%を分子とすることにより計算され、
36.1正規化原子%≦C≦59.8正規化原子%であり、
27正規化原子%≦O≦48.7正規化原子%である、
クロムフリー表面処理銅箔。
【請求項2】
前記(a)銅箔と前記(c)有機層との間にある(b)バリア層をさらに含み、
前記バリア層は、Ni、Zn、Co、Mn、Snまたはそれらの混合物を含む、請求項1に記載のクロムフリー表面処理銅箔。
【請求項3】
前記(a)銅箔の片面または両面にノジュールを有する、請求項1に記載のクロムフリー表面処理銅箔。
【請求項4】
前記(a)銅箔の厚さは、1μm~50μmである、請求項1に記載のクロムフリー表面処理銅箔。
【請求項5】
前記バリア層の厚さは、0.2μm~100μmである、請求項2に記載のクロムフリー表面処理銅箔。
【請求項6】
前記(a)銅箔の片面または両面にノジュールを有する、請求項2に記載のクロムフリー表面処理銅箔。
【請求項7】
第二のバリア層および第二の有機層をさらに含み、
前記バリア層と前記第二のバリア層は、前記銅箔の両面に設けられ、
前記有機層と前記第二の有機層は、前記バリア層に設けられる、請求項2に記載のクロムフリー表面処理銅箔。
【請求項8】
前記(c)有機層は、一つまたは複数の有機分子を含み、
前記一つまたは複数の有機分子は、前記(b)バリア層に結合するための一つまたは複数の結合基を有する熱安定性塩基を含む、請求項2に記載のクロムフリー表面処理銅箔。
【請求項9】
前記一つまたは複数の有機分子は、樹脂に接続するための一つまたは複数の接続基をさらに含む、請求項8に記載のクロムフリー表面処理銅箔。
【請求項10】
前記一つまたは複数の有機分子は、ポルフィリン類、シラン類、ベンゾトリアゾール、トリアジントリチオール、およびそれらの組み合わせからなる群から選ばれる、請求項8に記載のクロムフリー表面処理銅箔。
【請求項11】
前記一つまたは複数の有機分子は、ポルフィリン、ポルフィリン大環、拡張ポルフィリン、収縮ポルフィリン、線状ポルフィリンポリマー、ポルフィリンサンドイッチ配位錯体、ポルフィリンアレイおよびそれらの組み合わせからなるポルフィリン類の群から選ばれる、請求項10に記載のクロムフリー表面処理銅箔。
【請求項12】
前記シラン類は、テトラオルガノシランである、請求項10に記載のクロムフリー表面
処理銅箔。
【請求項13】
前記テトラオルガノシランは、アミノエチル-アミノプロピル-トリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、1-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]尿素、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、(3-グリシジルオキシプロピル)トリメトキシシラン、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、ジメチルジクロロシラン、3-(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレート、エチルトリアセトキシシラン、トリエトキシ(イソブチル)シラン、トリエトキシ(オクチル)シラン、トリス(2-メトキシエトキシ)(ビニル)シラン、クロロトリメチルシラン、メチルトリクロロシラン、四塩化ケイ素、テトラエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、クロロトリエトキシシラン、エチレン-トリメトキシシラン、およびそれらの組み合わせから選ばれる、請求項12に記載のクロムフリー表面処理銅箔。
【請求項14】
前記一つまたは複数の有機分子は、1~20個の炭素原子を有するアルコキシシラン、1~20個の炭素原子を有するビニルアルコキシシラン、(メタ)アクリルシラン、およびそれらの混合物からなる群から選ばれる、請求項8に記載のクロムフリー表面処理銅箔。
【請求項15】
前記(c)有機層は、有機層の総重量に基づいて、40正規化原子%以下のO元素を含む、請求項1に記載のクロムフリー表面処理銅箔。
【請求項16】
ZnとNiの重量比(Zn/Ni)は、0.8~8の間にある、請求項2に記載のクロムフリー表面処理銅箔。
【請求項17】
前記(a)銅箔は、ノジュールを含まず、表面粗さ(Rz)が0.5μm~2.5μmである沈積面を有する、請求項2に記載のクロムフリー表面処理銅箔。
【請求項18】
下式で示す劣化率は20%未満である、請求項1に記載のクロムフリー表面処理銅箔。
【数1】
【請求項19】
下式で示す劣化率は20%未満である、請求項2に記載のクロムフリー表面処理銅箔。
【数2】
【請求項20】
前記有機層におけるN、S、およびSi元素の合計が下記関係を満たす、請求項1に記載のクロムフリー表面処理銅箔。
5正規化原子%<(N+S+Si)≦32.8正規化原子%
【請求項21】
Cの含有量が下記関係を満たす、請求項1に記載のクロムフリー表面処理銅箔。
36.1正規化原子%≦C≦51.4正規化原子%
【請求項22】
Cの含有量が下記関係を満たす、請求項1に記載のクロムフリー表面処理銅箔。
43.9正規化原子%≦C≦59.8正規化原子%
【請求項23】
O元素に対するSi元素の比率が、11%~30%の間にある、請求項1に記載のクロ
ムフリー表面処理銅箔。
【請求項24】
樹脂基板と請求項1に記載の表面処理銅箔とを含む、プリント回路板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐腐食性および耐変色性を有し、改良された表面処理銅箔に関する。本発明は、前記表面処理銅箔の製造方法および使用方法も開示している。
【背景技術】
【0002】
電解銅箔は、様々な製品に用いられる。例えば、電解銅箔は、プリント回路板の不可欠な一部である。両面光沢銅箔は、電極活物質が塗布されており、リチウムイオン二次電池の負極板として使用される。したがって、多くの電子製品は、少なくとも部分的に電解銅箔に依存する。
【0003】
電解銅箔を製造するための典型的な装置は、金属カソードドラムおよび不溶性の寸法安定アノード(DSA)とを備え、前記金属カソードドラムは、回転可能であり、研磨された表面を有する。前記不溶性金属アノードは、おおよそ前記金属カソードドラムの下半部に配置され、前記金属カソードドラムを取り囲む。電解銅箔は、前記カソードドラムと前記アノードとの間に銅電解液を流させ、直流電流をこれらの電極の間に印加し、カソードドラムに銅を電着させ、所定の厚さが得られたとき、前記カソードドラムから電解銅箔を分離することにより、連続的に製造される。
【0004】
典型的なプリント回路板は、エポキシ樹脂含浸ガラス繊維基板のような基板に銅箔を貼合することにより、製造される。前記銅箔は、熱と圧力を加えることで基板に接着される。接着を行う際、回路接続に使用されていない銅箔の部分は、例えば、酸性またはアルカリ性エッチング溶液のようなエッチング溶液で除去される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記プリント回路板を適切に機能させるために、銅箔の腐食(corrosion)と変色(discoloration)を防止する必要がある。このような腐食および変色に対する防止は、現在、クロムメッキまたはクロメート処理で銅箔にクロム系成分を施すことにより行われている。しかし、クロムは環境に悪影響を及ぼすため、プリント回路板における銅箔の腐食と変色を防ぐための代替手段が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、耐腐食性および耐変色性を有し、改良された表面処理銅箔に関する。前記銅箔は、クロムフリーという点を特徴とするが、驚くことに、特に、回路板の製造過程において、銅箔を基板に接着するのに必要な熱と圧力を受けた場合は、劣化、腐食および変色を防止できる。前記表面処理銅箔は、必要に応じて、電解銅箔の片面または両面にバリア層(barrier layer)を形成し、前記銅箔の片面または両面あるいは一つまたは二つののバリア層に、有機層を結合することにより、製造される。すなわち、クロムフリー表面処理銅箔の構造は、(1)銅箔の片面または両面に設けられる有機層、または(2)銅箔の片面または両面に設けられるバリア層、および一つまたは二つの前記バリア層に設けられる有機層、を含んでも良い。
【0007】
本発明の表面処理銅箔は、クロムフリーであり、通常、(a)銅箔と、必要に応じて、(b)前記銅箔の片面または両面に設けられ、Ni、Zn、Co、Mn、Snまたはそれらの混合物を含むバリア層と、(c)前記銅箔の片面または両面あるいは一つまたは二つのバリア層に設けられる有機層とを含み、前記有機層におけるN、S、およびSi元素の合計は、5正規化原子%(normalized atomic %、正規化された原子
百分比であり、以下、正規化原子%という)を超える。前記正規化原子%は、分析されたC、O、N、SおよびSiの原子%の合計を分母として、分析されたN、SまたはSiの原子%を分子とすることで計算される。必要に応じて、ノジュールは銅箔の片面または両面に形成されてもよい。いくつかの態様において、ノジュールは存在しておらず、少なくとも銅箔の積層面には存在しておらず、また、沈積面の表面粗さ(Rz)が0.5~2.5μmである。
【0008】
前記銅箔は、通常、約1μm~約50μmの厚さを有する電解銅箔である。
【0009】
前記バリア層は、通常、Ni、Zn、Co、Mn、Snまたはそれらの混合物を含み、例えば、ZnとNiの混合物(Coフリーであるか、または実質的にCoフリーである)を含んでもよい。また、ZnとNiの重量比(Zn/Ni)は約0.6以上であってもよい。
【0010】
前記有機層は、通常、一つまたは複数の有機分子を含み、前記一つまたは複数の有機分子は、バリア層に結合するための一つまたは複数の結合基を有する熱安定性塩基、および/または、樹脂に接続するための一つまたは複数の接続基を含む。いくつかの態様において、前記有機層は、40正規化原子%を超えるO元素(すなわち、酸素元素)を含まない。
【0011】
さらに、本発明は、前記表面処理銅箔を含む回路板、例えば、樹脂基板と前記表面処理銅箔とを含むプリント回路板について開示する。回路板は、電子装置に用いられる。したがって、本発明は、前記回路板を含む電子装置にも関する。
【0012】
最後、本発明は、前記表面処理銅箔の製造方法について開示する。例えば、前記表面処理銅箔は、(a)電気化学反応を行うことで銅箔を製造する工程と、必要に応じて、(b)銅箔の片面または両面にNi、Zn、Co、Mo、Snまたはそれらの混合物を含むバリア層を電気メッキする工程と、(c)銅箔の片面または両面あるいは一つまたは二つのバリア層に有機層を施す工程により、製造できる。いくつかの態様において、前記方法は、(d)有機層を施した後に約50℃~約150℃の温度で前記表面処理銅箔を乾燥する工程を含んでもよい。
【0013】
以下、添付の図面を参照して、例示的な実施例で本発明の実施形態を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係る表面処理銅箔の製造方法を示す図である。
図2】本発明の表面処理銅箔の断面図である。
【0015】
本発明の様々な態様は、図面に示される配置および手段に限定されないことを理解すべきである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、(a)銅箔と(c)前記銅箔に設けられる有機層とを含み、前記有機層におけるN、S、およびSi元素の合計は5正規化原子%を超える、クロムフリー表面処理銅箔に関する。前記クロムフリー表面処理銅箔は、前記(a)銅箔と前記(c)有機層との間にある(b)バリア層をさらに含み、前記バリア層は、Ni、Zn、Co、Mn、Snまたはそれらの混合物を含む。前記クロムフリー表面処理銅箔は、第二のバリア層および第二の有機層をさらに含んでもよく、前記バリア層と前記第二のバリア層は、それぞれ、前記銅箔の反対の両表面に設けられ、かつ、前記有機層と前記第二の有機層は、それぞれ、前記バリア層と前記第二のバリア層に設けられる。いくつかの態様において、前記バリ
ア層と前記第二のバリア層は、それぞれ、前記銅箔の反対の両表面に設けられ、かつ、前記有機層と前記第二の有機層は、それぞれ、前記第二のバリア層と前記バリア層に設けられる。いくつかの態様において、前記有機層と前記第二の有機層は、それぞれ、前記銅箔の反対の両表面に設けられる。また、前記クロムフリー表面処理銅箔は、必要に応じて、銅箔の片面または両面にあるノジュールを含んでもよい。
【0017】
前記クロムフリー表面処理銅箔において、銅箔部分の厚さは、通常、約1μm~約50μmである。いくつかの態様において、厚さは、約1μm~約25μm、約1μm~約15μm、約4μm~約50μm、約4μm~約25μm、約4μm~約20μm、約4μm~約15μm、約6μm~約50μm、約6μm~約25μm、約6μm~約20μm、約8μm~約16μmであってもよい。銅箔層は、約4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、または30μmの厚さを有してもよい。
【0018】
バリア層が存在する場合、その厚さは、通常、約0.2μm~約100μmである。いくつかの態様において、厚さは約0.2μm~約50μm、約0.2μm~約25μm、約5μm~約100μm、約5μm~約50μm、約5μm~約25μm、約10μm~約100μm、約10μm~約50μm、または約10μm~約25μmである。
【0019】
前記の通り、前記有機層におけるN、S、およびSi元素の合計は、少なくとも5正規化原子%である。いくつかの態様において、前記有機層におけるN、S、およびSi元素の合計は、5正規化原子%を超えるか、少なくとも5.1正規化原子%であるか、または少なくとも5.2正規化原子%である。前記有機層におけるN、S、およびSi元素の合計の最大量は、変化してもよいが、通常、約35正規化原子%、30正規化原子%、25正規化原子%、20正規化原子%、15正規化原子%、または12正規化原子%を明らかに超えない。したがって、いくつかの態様において、N、S、およびSi元素の合計は、約5正規化原子%~約35正規化原子%、約5正規化原子%~約32.8正規化原子%、約5正規化原子%~約20正規化原子%、約5正規化原子%~約15正規化原子%、または約5正規化原子%~約12正規化原子%である。
【0020】
いくつかの態様において、前記有機層におけるC元素は、約35正規化原子%~約60正規化原子%、約36.1正規化原子%~約59.8正規化原子%、約40正規化原子%~約59.8正規化原子%、約43.9正規化原子%~約59.8正規化原子%、約36.1正規化原子%~約51.4正規化原子%、約40正規化原子%~約51.4正規化原子%、または約43.9正規化原子%~約51.4正規化原子%である。いくつかの態様において、前記有機層におけるO元素は、約25正規化原子%~約50正規化原子%、約27正規化原子%~約48.7正規化原子%、約30正規化原子%~約48正規化原子%、または約31.1正規化原子%~約48正規化原子%である。
【0021】
本発明の表面処理銅箔における有機層がSi元素を含む場合、O元素に対するSi元素の比率を11%~30%の間(すなわち、11%≦(Si/O)≦30%)に制御すれば、表面処理銅箔の正常条件(吸湿前)での剥離強度を更に向上させると共に、良好な劣化率特性を維持することができるが発見された。いくつかの態様において、O元素に対するSi元素の比率は、12%~27%の間にあるか、または13%~27%の間にある。
【0022】
前記有機層は、通常、一つまたは複数の有機分子を含み、前記一つまたは複数の有機分子は、バリア層または銅箔に結合するための一つまたは複数の結合基を有する熱安定性塩基、および/または、樹脂に接続するための一つまたは複数の接続基を含む。前記結合基は、メトキシ基、エトキシ基、ジアルコキシ基、トリアルコキシ基、アルコール、エーテル、エステル、アセチレンベンゼン、アリルフェニル基、アミン、インスティゲート(i
nstigate)されたピラゾール、ピラジン、イソニコチンアミド、イミダゾール、ビピリジンおよびその置換誘導体、テルピリジンおよびその置換誘導体、ニトリル、イソニトリル、フェナントロリン類、置換されたオルトフェナントロリン誘導体など、供給される酸素、硫黄、リン、窒素配位子、メルカプト基およびそれらの組み合わせを含む。前記接続基は、ビニル基、エポキシ基、アミノ基、メタクリロキシ基、メルカプト基、チオール基、アミン、アルコール、エーテル、アセチレンベンゼン、アリルフェニル基、およびホスホネートを含む。
【0023】
前記有機層の形成に用いられる有機分子は、ポルフィリン類、シラン類、ベンゾトリアゾール、トリアジントリチオールおよびそれらの組み合わせを含むが、これらに限らない。
【0024】
前記ポルフィリン類は、ポルフィリン、ポルフィリン大環、拡張ポルフィリン、収縮ポルフィリン、線状ポルフィリンポリマー、ポルフィリンサンドイッチ配位錯体、ポルフィリンアレイ、(5,10,15,20-テトラキス(4-アミノフェニル)-ポルフィリン-Zn(II))およびそれらの組み合わせからなる群から選ばれる。
【0025】
前記シラン類は、テトラオルガノシラン(tetraorgano-silane)、アミノエチル-アミノプロピル-トリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、1-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]尿素、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、(3-グリシドキシプロピル)トリメトキシシラン、(3-クロロプロピル)トリメトキシシラン、ジメチルジクロロシラン、3-(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレート、エチルトリアセトキシシラン、トリエトキシ(イソブチル)シラン、トリエトキシ(オクチル)シラン、トリス(2-メトキシエトキシ)(ビニル)シラン、クロロトリメチルシラン、メチルトリクロロシラン、四塩化ケイ素、テトラエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、クロロトリエトキシシラン、エチレン-トリメトキシシラン、1~20個の炭素原子を有するアルコキシシラン、1~20個の炭素原子を有するビニルアルコキシシラン、(メタ)アクリルシランおよびそれらの組み合わせから選ばれる。
【0026】
いくつかの態様において、前記の一つまたは複数の有機分子は、1,2,3-ベンゾトリアゾール、1~20個の炭素原子を有するアルコキシシラン、1~20個の炭素原子を有するビニルアルコキシシラン、(メタ)アクリルシラン、トリアジントリチオール(例えば、1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリチオール三ナトリウム塩溶液)およびそれらの混合物からなる群から選ばれる。さらに、前記有機層は、1~20個の炭素原子を有するアルコキシシラン、例えば、CHSi(OCHを有する一つまたは複数の有機分子で形成されてもよい。前記有機層は、必要に応じて酸素を含んでもよい。ただし、いくつかの態様において、O元素の量は、有機層の総重量に基づいて、約40正規化原子%以下である。
【0027】
上記のように、バリア層が存在する場合、銅箔の片面または両面にあるバリア層は、通常、Ni、Zn、Co、Mo、Snまたはそれらの混合物からなる。前記バリア層は、Znおよび/またはNiまたはZnとNiの混合物のみを含んでもよい。前記バリア層におけるNi、Zn、Co、Mo、Snの合計含有量は、変化可能である。例えば、各元素が単独に存在する場合、その含有量は、約10~約3000μg/dm、約10~約2500μg/dm、約10~約2000μg/dm、または約10~約1500μg/dmの量であってもよい。明確的には、各元素は、それぞれ単独で上記量で含まれてもよく、または一つまたは複数の他の元素との組み合わせで存在してもよい。
【0028】
例えば、バリア層がZnとNiのみを含む(または実質的にZnとNiのみを含む)場
合、Znの総量は、約50~約3000μg/dm、約50~約1500μg/dm、約50~約1000μg/dm、約50~約500μg/dm、約50~約250μg/dm、約75~約150μg/dm、または約100~150μg/dmであってもよい。また、ZnとNiのみを含む(または実質的にZnとNiのみを含む)バリア層におけるZnの総量は、約250~約3000μg/dm、約500~約3000μg/dm、約1000~約3000μg/dm、約1000~約2500μg/dm、約1000~約2000μg/dm、約1000~約1500μg/dm、約1100~約1600μg/dm、または約1200~約1500μg/dmの量であってもよい。ZnとNiのみを含むバリア層におけるNiの総量は、例えば、約10~約1000μg/dm、約10~約800μg/dm、約10~約750μg/dm、約10~約500μg/dm、約10~約250μg/dm、約50~約1000μg/dm、約50~約750μg/dm、約50~約500μg/dm、約50~約250μg/dm、約75~約200μg/dm、または約90~約130μg/dmであってもよい。
【0029】
いくつかの態様において、バリア層におけるZnとNiの比率(Zn/Ni)は変化可能であり、いくつかの態様において、その重量比率が約0.8~8である。バリア層がCoまたは他の材料をさらに含む場合でも、前記比率を適用できる。いくつかの態様において、ZnとNiの比率は約0.6以上である。
【0030】
いくつかの態様において、クロムフリー表面処理銅箔はノジュールを有しない。したがって、表面処理(ノジュールなし)された沈積面は、約0.5μm~約2.5μmである表面粗さ(Rz)を有してもよい。前記表面粗さは、約0.8μm~約2.0μm、約0.8μm~約1.8μm、または約0.8μm~約1.6μmであってもよい。さらに、前記表面粗さは、約1.0μm~約2.5μm、約1.2μm~約2.5μm、約1.5μm~約2.5μm、または約1.0μm~約2.0μmであってもよい。
【0031】
上記のように、前記表面処理銅箔は、クロムフリーであるか、または実質的にクロムフリーである。また、いくつかの態様において、前記表面処理銅箔は、酸化銅層を有しない。例えば、前記表面処理銅箔は、クロムフリーであるか、または実質的にクロムフリーであり、かつ、酸化銅層を有しないか、または実質的に酸化銅層を有しない。いくつかの態様において、前記表面処理銅箔がクロムフリーであるかまたは実質的にクロムフリーであれば、前記表面処理銅箔は酸化銅層を含んでもよい。
【0032】
本発明は、前記の表面処理銅箔の製造方法に関する。この方法は、通常、(a)電気化学反応を行うことで銅箔を製造する工程と、必要に応じて、(b)銅箔の片面または両面にNi、Zn、Co、Mo、Snまたはそれらの混合物を含むバリア層を電気メッキする工程と、(c)銅箔の片面または両面あるいは一つまたは二つのバリア層に有機層を施す工程とを含む。この方法は、必要に応じて、(d)有機層を施した後に約50℃~約150℃の温度で前記表面処理銅箔を乾燥する工程を含んでもよい。
【0033】
本発明の表面処理銅箔は、プリント回路板の使用に特に適する。これは、特に回路板(樹脂基板を有する回路板を含む)の製造過程において、前記表面処理銅箔を基板に接着するために必要な熱と圧力を受ける場合は、驚くことに、劣化、腐食および変色を防止できるためである。したがって、本発明は、本明細書に記載されている表面処理銅箔を含むプリント回路板に関する。また、本発明は、前記プリント回路板の製造方法にも関し、この方法は、本発明に係る表面処理銅箔を取得し、それを基板(例えば、樹脂基板)と結合して回路板を形成する工程を含む。通常、熱および/または圧力を使用して、前記表面処理銅箔を基板に貼合する。
【0034】
本発明のクロムフリー表面処理銅箔が熱または圧力を受けた場合は、劣化を防止できる。劣化率は、正常時および吸湿後の両方の剥離強度試験により計算される。前記劣化率は、30%未満、20%未満、15%未満、10%未満、5%未満、またはひいては0%である。表面処理銅箔の正常時および吸湿後の剥離強度の劣化により、劣化防止性および酸化防止性を示す。前記回路板は、電子装置に組み込むことができるので、本発明は、本明細書に記載されている本発明の表面処理銅箔を含む回路板を有する電子装置に関する。例えば、前記回路板は、電源工具、自動車、電気自動車を含む電気車両、携帯電話、その他の携帯用電子装置、タブレット、家電製品、電動玩具、実験室装置、コンピューターなどの電子装置に使用できる。
【0035】
図1は、本発明に係るクロムフリー表面処理銅箔の製造方法を示す図である。この方法の最初の工程は、電解銅箔を製造するための電着工程である。この最初の工程において、銅線を槽(例えば、電気メッキ槽)3内の溶液2に溶解させることで銅箔4を製造し、以下で説明するように、この銅箔4をドラム5により後続のローラーに送る。図1に示すように、ドラム5は、槽3内の溶液2に部分的に浸かれる。
【0036】
その後、クロムフリー表面処理銅箔を製造する方法は、銅箔4を一連のローラー6により輸送することを含む。銅箔4が一連のローラー6を通過する際、銅箔4は、例えば、粗化処理7、バリア処理(防腐食処理)8および有機処理9を含む一連の表面処理のうちの一つ以上の処理を経し、本明細書では上記表面処理をまとめて処理方法10と呼ぶ。以下、銅箔4が異なる実施例の処理方法10を経た様々な態様を説明する。表1および表2には、各例示方法の条件およびその結果を示す。
【0037】
特定の有機処理プロセス9が完了した後、銅箔4は風11で乾燥される。最後に、表面処理銅箔12がローラー13を使用して圧延された後、輸送(およびプリント回路板の製造)のために包装される。
【0038】
上記のように、表面処理銅箔12は、プリント回路板の製造に特に有用である。このようなプリント回路板は、複数の産業でさまざまな用途があり、コンピューター、モバイル装置、家電製品、工業機器などに使用される回路の構築に広く利用されている。前記プリント回路板は、表面処理銅箔12と基板(エポキシ樹脂含浸ガラス繊維基板など)とを結合することで製造される。一つの態様では、当技術分野で知られているように、結合は、熱と圧力を加えることによって行われる。本発明の概念は、任意の既知の方法で表面処理銅箔12を任意の適切な基板に結合することを意図するので、熱および圧力を使用して表面処理銅箔12をエポキシ樹脂含浸ガラス繊維基板に結合することに限定されない。表面処理銅箔12とエポキシ樹脂含浸ガラス繊維基板との結合が完了した後、エッチング溶液(酸性またはアルカリ性エッチング溶液を含むが、これらに限定されない)を使用することにより、一部の銅箔4を除去(切除)し、その除去される部分は、非導電性のものであるか、または基礎的なプリント回路板を使用して回路を製造するのに必要ではない部分である。
【0039】
図2は、本発明で製造された表面処理銅箔12の断面構造を示す。図2に示されるように、表面処理銅箔12の断面図20は、(沈積面を有する)銅箔4を含む。銅箔4の上面(沈積面)では、銅箔4上に銅ノジュール22が存在する。図2の沈積面にはノジュールが表示されているが、銅箔の沈積面またはドラム面のどちらにもノジュールが必須ではないことに注意することが重要である。とはいえ、銅箔の沈積面とドラム面のいずれかまたは両方は、ノジュールを含んでもよい。
【0040】
必要に応じてノジュール22を形成した後、バリア層24を銅箔の片面または両面に施す。図2は、銅箔4の沈積面にあるノジュール22の上でのバリア層24を含み、銅箔4
のドラム面にある第二のバリア層30も含む。バリア層24および第二のバリア層30は、防腐食特性を提供することに寄与するので、防腐食層とも見なされる。バリア層(または防腐食層)の形成は、図1のバリア処理(防腐食処理)8で示される。いくつかの態様において、バリア層24および第二のバリア層30は、ニッケル(Ni)、亜鉛(Zn)、コバルト(Co)、モリブデン(Mo)、スズ(Sn)からなる群から選択される単一の金属からなる。しかし、いくつかの態様において、バリア層24および第二のバリア層30は、必要に応じて、Ni、Zn、Co、Moおよび/またはSnで組み合わせた合金であってもよい。クロムでなければ、必要に応じて他の金属を含んでも良い。ノジュール面の片面または両面にバリア層が存在することは必須ではないことが重要である。いくつかの態様において、銅箔の沈積面またはドラム面のいずれにも、バリア層が存在することは必須ではない。また、バリア層24と第二のバリア層30は、同一である必要はない。
【0041】
図2は、バリア層24に施された有機層26と、第二のバリア層30に施された第二の有機層28を示す。図1は、有機処理9における有機層の形成を示す。図2は、バリア層24および第二のバリア層30に形成された有機層を含むが、バリア層および第二のバリア層の両方に有機層が存在する必要はないことが重要である。有機層26および第二の有機層28は、同じでも異なっていてもよい。
【実施例0042】
以下、処理方法10の異なる組み合わせを経た銅箔4の実施例を説明する。以下の表1は、銅箔4に適用して表面処理銅箔12を得る処理方法10の特定の組み合わせを列挙する。バリア(防腐食)処理の適用について、各実施例では、バリア層としてNi、Zn、Co、MoおよびSn元素の異なる組み合わせが適用されている。各元素(または元素の組み合わせ)の具体の適用を以下で説明する。
【0043】
(a)Znメッキ浴:5~15g/Lの硫酸亜鉛(ZnSO・7HO)と0.1~0.4g/Lのバナジン酸アンモニウムとを含む硫酸亜鉛電解質を用意した。液体温度が20℃であり、電流密度が0.5A/dmであった。
【0044】
(b)Niメッキ浴:20℃および電流密度0.5A/dmの条件で、170~200g/Lの硫酸ニッケル(NiSO・6HO)と20~40g/Lのホウ酸とを含む硫酸ニッケル電解質を用意した。
【0045】
(c)Ni-Coメッキ浴:20℃および電流密度0.5A/dmの条件で、2~50g/Lの硫酸ニッケル(NiSO・6HO)と、2~50g/Lの硫酸コバルト(CoSO・7HO)と、50~150g/Lのクエン酸三ナトリウム二水和物[HOC(COONa)(CHCOONa)・2HO]とを含む電解質を用意した。
【0046】
(d)Ni-Moメッキ浴:20℃及び電流密度0.5A/dmの条件で、25~250g/Lの硫酸ニッケル(NiSO・6HO)と、1~80g/Lのモリブデン酸ナトリウム二水和物(NaMoO・2HO)と、50~150g/Lのクエン酸三ナトリウム二水和物[HOC(COONa)(CHCOONa)・2HO]とを含む電解質を用意した。
【0047】
(e)Snメッキ浴:20℃および電流密度0.5A/dmの条件で、1~10g/Lのスズ酸ナトリウム(NaSnO・3HO)と5~10g/Lの水酸化ナトリウムとを含むスズ酸塩電解質を用意した。
【0048】
(f)Crメッキ浴:20℃および電流密度1.0A/dmの条件で、1~2g/Lの三酸化クロム(CrO)と20g/Lの水酸化ナトリウムとを含むクロム酸電解質を
用意した。
【0049】
実施例1
銅線を50重量%の硫酸水溶液に溶解させることにより、320g/Lの硫酸銅(CuSO・5HO)と100g/Lの硫酸とを含む硫酸銅電解質を製造した。硫酸銅電解質溶液1リットル当たり、0.24mgのヒドロキシエチルセルロース(LC-400、DAICEL社)、0.08mgのゼラチン(2CP、KOEI CHEMICAL株式会社)および25mg塩素イオンを添加した。その後、液温50℃および電流密度34A/dmの条件で、厚さが18μmである銅箔を製造した。
【0050】
その後、銅箔の沈積面に粗化処理を施した。200g/Lの硫酸銅(CuSO・5HO)と100g/Lの硫酸とを含む硫酸銅電解質を製造した。液温25℃および電流密度30A/dmの条件で、前記の厚さ18μmの銅箔を処理した。
【0051】
粗化処理の後、銅箔の沈積面に形成されたノジュールに電着によりバリア層を施した。バリア層としては、上記の(b)Niメッキ浴、(a)Znメッキ浴を順次に使用した。
【0052】
バリア層を施した後、有機層を施した。具体的には、0.25%の(3-グリシドキシプロピル)トリメトキシシラン(KBM403、信越化学工業株式会社)を10秒間施した。表面処理銅箔を50℃~150℃の温度で乾燥した。
【0053】
実施例2
実施例1に記載されるように、銅箔を製造し、ノジュールおよびバリア層の処理をした。ただし、この例の場合では、トリアジントリチオールを有機処理剤として使用した。具体的には、0.25%のトリアジントリチオール(1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリチオール三ナトリウム塩溶液、Sigma-Aldrich)を10秒間施した。
【0054】
実施例3
実施例1に記載されるように、銅箔を製造し、ノジュールおよびバリア層の処理をした。ただし、この例の場合では、ポルフィリンを有機処理剤として使用した。具体的には、0.3%のポルフィリン(5,10,15,20-テトラキス(4-アミノフェニル)-ポルフィリン-Zn(II))を10秒間施した。
【0055】
実施例4
実施例1に記載されるように、銅箔を製造し、ノジュールおよびバリア層の処理をした。ただし、この例の場合では、3-アミノプロピルトリエトキシシラン(KBE903)を有機処理剤として使用した。具体的には、0.25%の3-アミノプロピルトリエトキシシラン(KBE903)を10秒間施した。
【0056】
実施例5
実施例1に記載されるように、銅箔を製造し、ノジュールおよびバリア層の処理をした。有機層として、0.3%のポルフィリン(5,10,15,20-テトラキス(4-アミノフェニル)-ポルフィリン-Zn(II))と0.2%の3-アミノプロピルトリエトキシシラン(KBE903)との組み合わせを10秒間施した。
【0057】
実施例6
実施例1に記載されるように、銅箔を製造し、粗化処理した。ただし、バリア層として上記の(b)Niメッキ浴を用いた。有機層として、0.25%の(3-グリシドキシプロピル)トリメトキシシラン(KBM403)を10秒間施した。
【0058】
実施例7
実施例1に記載されるように、銅箔を製造し、粗化処理した。ただし、バリア層として上記の(a)Znメッキ浴を用いた。有機層として、0.25%の(3-グリシドキシプロピル)トリメトキシシラン(KBM403)を10秒間施した。
【0059】
実施例8
実施例1に記載されるように、銅箔を製造し、粗化処理した。ただし、バリア層として上記の(c)Ni-Coメッキ浴を用いた。有機層として、0.25%の(3-グリシドキシプロピル)トリメトキシシラン(KBM403)を10秒間施した。
【0060】
実施例9
実施例1に記載されるように、銅箔を製造し、粗化処理した。ただし、バリア層として上記の(d)Ni-Moメッキ浴を用いた。有機層として、0.25%の(3-グリシドキシプロピル)トリメトキシシラン(KBM403)を10秒間施した。
【0061】
実施例10
実施例1に記載されるように、銅箔を製造し、粗化処理した。ただし、バリア層として上記の(e)Snメッキ浴を用いた。有機層として、0.25%の(3-グリシドキシプロピル)トリメトキシシラン(KBM403)を10秒間施した。
【0062】
実施例11
実施例1に記載されるように銅箔を製造したが、銅箔は粗化処理されなかった(銅箔にノジュールを添加しなかった)。この例の場合では、銅箔の沈積面に電着によりNi-Znバリア層を施した(バリア層として上記のNiメッキ浴(b)とZnメッキ浴(a)を順次に用いた)。バリア層を施した後、有機層として、0.25%の3-アミノプロピルトリエトキシシラン(KBE903)を10秒間施した。
【0063】
実施例12
実施例1に記載されるように銅箔を製造したが、銅箔は粗化処理されなかった(銅箔にノジュールを添加しなかった)。この例の場合では、バリア層も施さなかった。有機層として、0.3%のポルフィリン(5,10,15,20-テトラキス(4-アミノフェニル)-ポルフィリン-Zn(II))を10秒間施した。
【0064】
実施例13
実施例1に記載されるように、銅箔を製造し、粗化処理した。この例の場合では、バリア層は施さなかった。有機層として、0.3%のポルフィリン(5,10,15,20-テトラキス(4-アミノフェニル)-ポルフィリン-Zn(II))を10秒間施した。
【0065】
実施例14
実施例1に記載されるように、銅箔を製造し、ノジュールおよびバリア層の処理をした。有機層として、0.3%のポルフィリン(5,10,15,20-テトラキス(4-アミノフェニル)-ポルフィリン-Zn(II))と0.2%のKBE903との組み合わせを30秒間施した。
【0066】
比較例1
実施例1に記載されるように、銅箔を製造し、粗化処理した。ただし、バリア層は、Ni、ZnおよびCrの組み合わせで形成された。10g/Lの硫酸亜鉛(ZnSO・7HO)と100g/Lのバナジン酸アンモニウムとを含む硫酸亜鉛電解質、180g/Lの硫酸ニッケル(NiSO・6HO)と30g/Lのホウ酸とを含む硫酸ニッケル電解質、および5g/Lの三酸化クロム(CrO)と20g/Lの水酸化ナトリウムと
を含むクロム酸電解質を製造した。液体温度20℃および電流密度1.0A/dmの条件で、バリア層として、上記のNiメッキ浴(b)、Znメッキ浴(a)およびCrメッキ浴(f)を順次に用いた。この例の場合では、有機層は添加されなかった。
【0067】
比較例2
実施例1に記載されるように、銅箔を製造し、粗化処理した。バリア層として、上記のNiメッキ浴(b)およびZnメッキ浴(a)を順次に用いた。この例の場合では、有機層は添加されなかった。
【0068】
比較例3
実施例1に記載されるように、銅箔を製造し、粗化処理した。バリア層として、上記のNiメッキ浴(b)およびZnメッキ浴(a)を順次に用いた。ただし、この例の場合では、有機層として、0.01%の(3-グリシドキシプロピル)トリメトキシシラン(KBM403)を10秒間施した。
【0069】
比較例4
実施例1に記載されるように、銅箔を製造し、粗化処理した。バリア層については、バリア層として、上記のNiメッキ浴(b)およびZnメッキ浴(a)を順次に用いた。ただし、この例の場合では、有機層として、0.01%のトリアジントリチオールを10秒間施した。
【0070】
比較例5
実施例1に記載されるように、銅箔を製造し、粗化処理した。バリア層として、上記のNiメッキ浴(b)およびZnメッキ浴(a)を順次に用いた。ただし、この例の場合では、有機層として、0.05%のポルフィリンを10秒間施した。
【0071】
比較例6
実施例1に記載されるように、銅箔を製造し、粗化処理した。バリア層として、上記のNiメッキ浴(b)およびZnメッキ浴(a)を順次に用いた。ただし、この例の場合では、有機層として、0.01%の3-アミノプロピルトリエトキシシラン(KBE903。信越化学工業株式会社)を10秒間施した。
【0072】
比較例7
実施例1に記載されるように銅箔を製造し、粗化処理した。バリア層として、上記のNiメッキ浴(b)およびZnメッキ浴(a)を順次に用いた。ただし、この例の場合では、有機層として、0.03%のポルフィリンと0.02%の3-アミノプロピルトリエトキシシラン(KBE903)との組み合わせを10秒間施した。
【0073】
比較例8
実施例1に記載されるように、銅箔を製造し、粗化処理した。バリア層として、上記のNiメッキ浴(b)を用いた。有機層として、0.01%の(3-グリシドキシプロピル)トリメトキシシラン(KBM403)を10秒間施した。
【0074】
比較例9
実施例1に記載されるように、銅箔を製造し、粗化処理した。バリア層として、上記のZnメッキ浴(a)を用いた。有機層として、0.01%の(3-グリシドキシプロピル)トリメトキシシラン(KBM403)を10秒間施した。
【0075】
比較例10
実施例1に記載されるように、銅箔を製造し、粗化処理した。バリア層として、上記の
Ni-Coメッキ浴(c)を用いた。有機層として、0.01%の(3-グリシドキシプロピル)トリメトキシシラン(KBM403)を10秒間施した。
【0076】
比較例11
実施例1に記載されるように、銅箔を製造し、粗化処理した。バリア層として、上記のNi-Moメッキ浴(d)を用いた。有機層として、0.01%の(3-グリシドキシプロピル)トリメトキシシラン(KBM403)を10秒間施した。
【0077】
比較例12
実施例1に記載されるように、銅箔を製造し、粗化処理した。バリア層として、上記のSnメッキ浴(e)を用いた。有機層として、0.01%の(3-グリシドキシプロピル)トリメトキシシラン(KBM403)を10秒間施した。
【0078】
比較例13
実施例1に記載されるように銅箔を製造したが、粗化処理は施さなかった。バリア層として、上記のNiメッキ浴(b)およびZnメッキ浴(a)を順次に用いた。この例の場合では、有機層は施さなかった。
【0079】
比較例14
実施例1に記載されるように、銅箔を製造した。この例の場合では、粗化処理、バリア層または有機層は施さなかった。
【0080】
比較例15
実施例1に記載されるように、銅箔を製造し、粗化処理した。この例の場合では、バリア層または有機層は施さなかった。
【0081】
比較例16
実施例1に記載されるように、銅箔を製造し、粗化処理した。比較例1で述べたように、バリア層として、上記のNiメッキ浴(b)、Znメッキ浴(a)およびCrメッキ浴(f)を順次に用いた。有機層として、0.3%のポルフィリンを10秒間施した。
実施例1~14および比較例1~16は、まとめて下記の表1に記載される。
【0082】
【表1-1】
【0083】
【表1-2】
【0084】
実施例1~14および比較例1~16の様々な表面処理銅箔を分析することにより、有機層とバリア層が存在する場合の有機層の元素含有量およびバリア層の金属含有量を測定した。表面処理銅箔の特徴を分析してまとめた後、その耐腐食性および剥離強度を評価した。
【0085】
有機層の原子比の測定
各実施例および比較例の有機層が形成された後の銅箔の積層面の表面をESCAで分析することにより、原子%を評価した。有機層における原子%は、VG社製のESCA Scientific Theta Probe(Model:2012)を使用して測定した(ビームエネルギー=3kv、電流=1mA)。
分析された銅箔の積層面上の有機層のC、O、N、S、Si原子%については、C、O、N、SおよびSiの原子%の合計を分母として用いて計算し、さらに正規化した(正規化原子%)。
上記の有機層における各元素の含有量の正規化原子%により、O元素に対するSi元素の比率(Si/O)を計算した。
【0086】
バリア層の金属含有量の測定
バリア層の金属含有量は、表面処理銅箔を150mm×150mmのサイズにカットし
、表面処理銅箔の片面に保護コーティング層(このコーティング層により、銅箔のこの面の溶解を防ぐことができる)を配置することにより、測定された。乾燥後、サンプルをさらに100mm×100mmのサイズにカットした(面積=1dm)。サンプルを皿に入れ、25mLの18%HCl溶液で溶解させた。得られた溶液に50mLになるまで水を添加し、誘導結合型プラズマ(ICP)分析で分析した。
【0087】
表面処理銅箔の耐腐食性の測定
耐腐食性は、表面処理銅箔の表面に酸化スポットがあるか否かを観察することによって決定された。スポットを1~10ポイントのスケールでランク付けた。カットされた表面処理銅箔の表面はA4(すなわち、210mm×297mm)のサイズであった。カットされた各部分において、表面処理銅箔のスポットのランクがいずれも5を超えた場合、この表面処理銅箔は試験不合格とされた。表面処理銅箔を温度70℃/80%RH(相対湿度)で14時間放置した後に分析した。
【0088】
表面処理銅箔の剥離強度の測定
正常条件及び吸湿後で剥離強度を測定し、その後に劣化率を計算した。IPC-TM-650の方法に従った。表面処理銅箔をサイズ100mm×12.7mm(長さ×幅)にカットし、サンプルを得た。吸湿試験を行うために、サンプルを脱イオン水で2時間煮沸した。株式会社島津製作所のモデルAG-I試験機を使用して、室温(約25℃)で50mmのチャック距離と50mm/minのクロスヘッド速度の条件で、各サンプルの剥離強度を測定した。剥離強度の試験結果および吸湿後の剥離強度の試験結果を用いて、次の式に従って劣化率(%)を計算した。
【0089】
【数1】
【0090】
上記の各試験の結果は、表2にまとめられる。
【0091】
【表2-1】
【0092】
【表2-2】
【0093】
実施例1~14およびそれらに関連する試験結果は上記の通りである。実施例1~14の共通点は下記の通りである。
(1)実施例1~14において、表面処理銅箔はクロムフリーである。
(2)実施例1~14において、表面処理銅箔の表面にあるN、SおよびSi元素の合計百分比率は5正規化原子%を超える。
(3)実施例1~14において、表面処理銅箔の剥離強度の劣化率は、比較例1~15の剥離強度の劣化率に比べて著しく低い。
【0094】
また、比較例16のデータから分かるように、クロム含有表面処理銅箔は、N、Sおよ
びSi元素の合計百分比率が5正規化原子%を超えても、剥離強度の劣化率を改善できない。
【0095】
また、本発明の実施例において、Si元素を含有する実施例1、4~11、14を比較すると、さらに、O元素に対するSi元素の比率(Si/O)を11%~30%の間に制御すれば、正常条件(吸湿前)での剥離強度を向上させると共に良好な劣化率特性を維持できることが分かった。
【0096】
上記の実施形態は、本発明の原理およびその効果を説明するのにのみ使用され、本発明を限定するものとして解釈されるべきではない。上記の実施形態は、本発明の趣旨および範囲から逸脱しない限り、当業者によって修正および変更することができる。したがって、本発明の保護範囲は、添付の特許請求の範囲で定義される。本発明の効果および達成可能な目標に影響を与えない限り、本明細書に開示される技術的内容に含まれるべきである。用語「からなる」、「有する」および「含む」は、開放的で非限定的という意味で使用されている。
【0097】
用語「一つの」および「前記」は、複数および単数を含むと理解されるべきである。用語「少なくとも一つ」とは、一つまたは複数のものを意味し、個別の成分およびその混合物・組み合わせを含むことを意味する。
【0098】
数値を記載する場合、用語「約」は、特にその数値に四捨五入できる測定値を意味する。例えば、「約1.5」とは、1.45~1.54を意味する。
【0099】
用語「〇」および「×」は、表に使用される。用語「〇」とは、「はい」または「肯定的」を示し、用語「×」とは、「いいえ」または「否定的」を示す。
【0100】
用語「直接に」とは、「へ」や「に」などの用語と組み合わせて使用して、「…に直接に」または「…へ直接に」などのフレーズになる。このようなフレーズは、構成要素や層、並びにお互いの関係を説明するときに特に有用である。この文句(すなわち、修飾語「直接」を使用する文句)は、構成要素または層は、直接にお互いの上にあるか、またはお互いに直接に適用して相互に物理的に接触するため、介在する中間構成要素または中間層が存在しないことを示す。例えば、層Aが層Bの上に直接にある場合、層Aと層Bは互いに物理的に接触し、層Aと層Bの間に介在する中間層(例えば、層C)は存在しないことになる。
【0101】
本発明に記載されている全ての数値および範囲は、包含的であり、組み合わせることが可能である。例えば、本発明に記載されている範囲内にあるいずれかの数値またはポイントは、サブ範囲(sub-range)を導出するための最小値または最大値として機能することができる。
【0102】
本明細書で引用されたすべての刊行物および特許出願文献は、引用により本明細書に組み込まれ、また、任意の全ての目的で、個々の出版物または特許出願文献は、明確に、独立に、引用により組み込まれる。本発明と引用により本明細書に組み込まれる刊行物または特許出願との間に矛盾がある場合、本発明に準ずる。
【符号の説明】
【0103】
2 溶液
3 槽
4 銅箔
5 ドラム
6 一連のローラー
7 粗化処理
8 バリア処理
9 有機処理
10 処理方法
11 風
12 表面処理銅箔
13 ローラー
20 断面図
22 ノジュール
24 バリア層
26 有機層
28 第二の有機層
30 第二のバリア層
図1
図2