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  • 特開-上昇式熱交換器を備えた原子炉 図1
  • 特開-上昇式熱交換器を備えた原子炉 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022097583
(43)【公開日】2022-06-30
(54)【発明の名称】上昇式熱交換器を備えた原子炉
(51)【国際特許分類】
   G21C 1/02 20060101AFI20220623BHJP
   G21D 1/02 20060101ALI20220623BHJP
   G21C 13/00 20060101ALI20220623BHJP
   G21C 15/02 20060101ALI20220623BHJP
【FI】
G21C1/02 200
G21D1/02 A
G21C13/00 100
G21C15/02 R
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022072914
(22)【出願日】2022-04-27
(62)【分割の表示】P 2019500267の分割
【原出願日】2017-07-05
(31)【優先権主張番号】102016000069589
(32)【優先日】2016-07-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(71)【出願人】
【識別番号】518390181
【氏名又は名称】ルチャーノ チノッティ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100211177
【弁理士】
【氏名又は名称】赤木 啓二
(72)【発明者】
【氏名】ルチャーノ チノッティ
(57)【要約】
【課題】原子炉、特に液体金属冷却型原子炉に関して、熱交換器を提供し、公知の解決法の欠点を全体として克服し、構造上および安全上の利点を有する原子炉内の位置を提供すること。
【解決手段】本発明は、液体金属(例えば鉛または鉛ビスマス共晶合金のような重金属)または溶融塩によって冷却される原子炉1であって、下部の一次流体の入口と、低温コレクタ7内の一次流体の自由表面H4近傍の周方向出口窓17とを有する熱交換器10、特に蒸気発生器を備えた原子炉に関する。出口窓17は、低温コレクタ7内の自由表面H4に対して部分的に上昇した管束13に対して中間位置に配置され、その高さ全体にわたって一次流体が、容器2内の被覆ガス29に対して交換器の被覆ガス28内に低圧を生じさせる補助装置26によって、供給される。交換器を上昇させ、一次冷却材の自由表面H4の近傍に出口窓17を位置決めすることにより、熱交換器内の二次流体が偶発的に放出された場合に、一次流体の移動を最小にすることができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炉心(4)の上方にある高温コレクタ(6)と、前記高温コレクタ(6)を取り囲み、分離構造体(5)によって分離される低温コレクタ(7)であって、前記炉心(4)を冷却するために一次流体(F)が循環する低温コレクタと、を収容する原子炉容器(2)を具備する原子炉(1)、特に重金属冷却型原子炉であって、
前記原子炉は、前記高温コレクタ(6)から流入する一次流体を底部から提供するように構成される少なくとも1つの小型の熱交換器(10)、特に蒸気発生器を具備する、原子炉において、
前記交換器(10)は、前記低温コレクタ(7)の前記一次流体の自由表面(H4)にて周方向出口窓(17)を有することを特徴とする、原子炉(1)。
【請求項2】
前記熱交換器(10)の前記出口窓(17)は、前記熱交換器(10)の外部シェル(16)に設けられ、前記熱交換器(10)の管束(13)の中間部分に位置決めされる、請求項1に記載の原子炉(1)。
【請求項3】
前記熱交換器(10)は、内部に循環ポンプ(9)を収容し、
前記窓(17)の上方に位置する前記外部シェル(16)の上部(23)と、前記熱交換器(10)の閉鎖板(18)と、前記ポンプ(9)を支持するフランジ(24)とが、相対シールを用いて、前記低温コレクタ(7)の前記一次流体(F)の前記自由表面(H4)に対して上昇した容積(25)を区切る上向きガラスの形状の構造体を全体として構成する、請求項2に記載の原子炉(1)。
【請求項4】
前記熱交換器(10)の前記管束(13)は、前記容積(25)の内部にて部分的に延び、前記原子炉容器(2)の被覆ガス(29)に対して前記容積(25)内に含有された被覆ガス(28)の低圧であって、補助装置(26)によって得られた低圧によって、一次流体(F)が供給される、請求項3に記載の原子炉(1)。
【請求項5】
前記原子炉容器(2)と安全容器(33)との間に隙間(32)を有する、請求項1~4のいずれか1項に記載の原子炉(1)であって、
前記窓(17)の下縁部(31)が、前記原子炉容器(2)からの一次流体の漏出及び前記隙間(32)の充填の後に前記自由表面(H4)の高さが低下する場合にも、前記低温コレクタ(7)の前記一次流体の前記自由表面(H4)の下に維持される、原子炉(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は原子炉、特に液体金属冷却型原子炉に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの原子炉では、炉心で発生した熱は、第1のプロセス流体である一次冷却材(例えば液体金属)によって伝達され、炉心を備える一次容器の外側又は内側に配置することができる熱交換器によって、第2のプロセス流体(通常沸騰水)に伝達される。
【0003】
特に液体金属冷却型原子炉の場合には、液体金属熱交換器が容器内に設置される。容器は、その容積内に原子炉構成要素を包含し、一次システムと呼ばれる。このシステムは、ある高さまで液体金属で満たされ、残りは液体金属を原子炉のルーフから分離する被覆ガスを包含する。このルーフには貫通孔が一次システムの構成要素のために配置される。
【0004】
一次冷却材は自然循環または強制循環によって循環させることができる。
【0005】
多くの原子炉では、一次冷却材は蒸気圧の低い流体であり、これにより一次容器を原子炉の運転中低圧に保つことができる。第2のプロセス流体は一般に、高圧で作動する流体である。これは、熱交換器の1つまたは複数の管の破損およびその結果としての第2のプロセス流体の流出を含む事故の結果を考慮しなければならないことを意味する。一次容器の過剰な加圧を回避するために、被覆ガスと圧力抑制システムとの間の連絡を提供する通気システムを使用することが一般的な実践である。
【0006】
現在の技術では、この事故は、(i)(例えば、螺旋管、直管、U字管を有する)熱交換器が非常に長く、(ii)熱交換器の内部では、原子炉ルーフのガスを巻き込まないために入口窓が上部ではあるが、一次冷却材の自由表面のかなり下にある状態で、一次冷却材が上から下へ循環し、その結果、(iii)出口窓は非常に低い(典型的には数百MWの電力の原子炉内の一次冷却材の自由表面より5~10m下)という事実によって悪化する。管が破損した場合にはこのほか、第2のプロセス流体は結果的に容器内の深部に放出され、通気システムに向かって上昇するにつれて、交換器の内側と外側の両方で一次冷却剤の大きな移動を引き起こす。
【0007】
扁平螺旋管型交換器に一次冷却剤の流出を垂直方向ではなく半径方向に提供する特許文献1(イタリア国特許出願公開第MI2007A001685号明細書)の主要解決策によって改善が得られるが、この解決策でさえも、管束の下部での管の破損の場合には、二次冷却材が典型的には2~3mの深さで一次容器内に放出されることがあるため、問題を解決しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】イタリア国特許出願公開第MI2007A001685号明細書
【発明の概要】
【0009】
このため、本発明の目的は、熱交換器を提供し、公知の解決法の欠点を全体として克服し、構造上および安全上の利点を有する原子炉内の位置を提供することである。
【0010】
このため、本発明は、添付請求項1に定義されているような熱交換器に関し、添付の従属請求項に定義されているその付随的な特徴およびプラントエンジニアリング構成を備える。
【0011】
都合の良いことには、熱交換器管の破損事故の間に移動する一次冷却剤の最大量を減少させるために、一次冷却剤流出窓は自由表面にて熱交換器の外部ケーシングの中間領域に位置決めされる。
【0012】
交換管束は、サイフォン構成によって一次冷却材の自由表面に対して部分的に上昇している。
【0013】
冷却液が熱交換器内の垂直ダクト内で底部から頂部へ搬送され、次いで熱交換器へ半径方向に流れ、その後、本発明によれば、管束の上部または下部を通って流れる一次流体の一部に対してそれぞれ、交換器の外部ケーシングによって垂直方向の下方または上方に迂回して、原子炉の低温コレクタの一次冷却材の自由表面の近傍の出口窓に達する特許文献1(イタリア国特許出願公開第MI2007A001685号明細書)に記載されているように、扁平螺旋管を有する管束を使用することが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
本発明は、添付の図面の図を参照して、以下の非限定的な実施形態の例にてさらに説明される。
図1】本発明による原子炉及び熱交換器の概略断面図。
図2】本発明による交換器の管束の垂直断面の拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1及び図2を参照すると、原子炉1は、ルーフ3で覆われてその内部に炉心4を含む原子炉容器2と、高温コレクタ6とコア4冷却用一次流体Fが循環する低温コレクタ7とを区切る液圧分離構造体5と、を備える。低温コレクタ7は、原子炉容器2と液圧分離構造体5との間の範囲の環状領域8によって規定され、このため高温コレクタ6の周囲に配置される。
【0016】
低温コレクタ7に浸漬された原子炉容器2の内部には、ポンプ9がこのほか、一次流体Fを循環させるために収容され、一次流体Fと交差する熱交換器10、好ましくは蒸気発生器が収容され、(既知であり図示しない)外部二次回路にて循環する二次冷却流体に炉心4にて発生した動力を伝達する。好ましくは、一次流体Fは液体金属、特に重液体金属、例えば鉛または鉛ビスマス共晶合金である。原子炉容器2の内部にはこのほか、例えば計装および制御棒のための支持構造、残留動力を除去するための補助熱交換器など、既知であり本発明に関連しないことから簡略化のために記載されていない種々の補助装置が収容される。
【0017】
原子炉1は、熱循環および交換のための複数の熱交換器10を備える。複数の熱交換器は全体として低温コレクタ7内に配置され、分離構造体5の周囲に円周方向に隙間を置いて配置される。
【0018】
好ましくは、各熱交換器10は内部に循環ポンプ9を収容する。この循環ポンプは、作動時に、低温コレクタ7内の一次流体Fの高さH4を高温コレクタ6内の高さH5よりも高くするようにポンプで加圧する。熱交換器10のそれぞれは、一次流体Fと交差する孔12を備えた円筒状内部シェル11を有し、それぞれ下部板14および上部板15によって底部および上部で閉じられた管束13を半径方向に供給する。
【0019】
本発明によれば、管束13は、交換器10の外部シェル16によって閉じられる。この交換器は、都合の良いことには、管束13に対して可変の対応する半径方向ギャップdを規定するために軸方向に可変の厚さを有し、熱交換器10から一次流体Fを流出させる円周窓17が管束13の中心線の近くに設けられる。都合の良いことには、外部シェル16は交換器10の閉鎖板18と一体であり、管束13の下部板14に対して垂直に摺動することができる。
【0020】
管束の上部板15は、半径方向隔壁19によって管束13の内部シェル11と一体であり、内部容積21を分離する垂直円周方向隔壁20を備え、管束13の出口と液圧的に連通する外部容積22から管束13への入口と流体連通する。
【0021】
外部シェルの窓17より上の部分23と、熱交換器の閉鎖板18と、相対的なシールを有してポンプ9を支持するフランジ24とは、全体として上向きのガラスの形状を有する構造を構成し、容積25の範囲を定める。
【0022】
ダクト27によって容積25に接続されており、当該技術分野で知られているため図示しない補助装置26が、その中の被覆ガス28を、熱交換器10の外側の容器2の被覆ガス29に対して低圧に維持する。
【0023】
被覆ガス28内の低圧と、ポンプ9のヘッドと、一次回路のさまざまな部分の圧力損失の累積的な影響は、一次冷却剤の5つの異なる高さを確定する。すなわち、有孔シェル11内の高さH1から容積21の高さH2、容積22の高さH3、低温コレクタ7の高さH4および高温コレクタ6の高さH5に徐々に減少する。
【0024】
円周窓17は、以下のように配置される。
‐上縁部30は、低温コレクタの高さH4が、ポンプ9の停止過渡事象を含むさまざまなプラント過渡事象に従って変化する際に、常に一次流体に浸漬される。
‐下縁部31は、容器2からの一次流体の任意の損失および容器2と安全容器33との間の間隙32の充填による容器2内の一次流体の高さの低下の後にも、少なくとも50mmの一次流体に常に浸漬される。
【0025】
ルーフ3は、容器2内の被覆ガス29内の圧力を制御する制御システム35に接続されたダクト34を備える。
【0026】
解決策の利点は図面から明らかである。
【0027】
‐管束13の中間位置にある交換器から出口窓17を位置決めすることにより、交換器10の内側の二次流体の予定の放出点と出口窓との間の最大距離(典型的には1メートル程度)を減少させ、交換器管が破損した場合に、一次流体Fが被覆ガス29に向かってあふれ出る際に、圧力下で二次冷却剤によって置換される交換器の一次流体Fの量を最小限に抑える。
【0028】
‐低温コレクタ7内の自由表面H4の近傍にて交換器の高さから出口窓17を位置決めすることにより、交換器管が破損した場合に、一次流体Fが被覆ガス29に向かってオーバーフローする際に、圧力下で二次冷却剤によって置換される、交換器の外側にある一次流体Fの質量を最小にする。典型的には、圧力下の二次冷却材は、公知の解決策と同じように、一次冷却材のヘッドの下、数メートルではなく最大数十cmの深さに放出することができる。
【0029】
特に熱交換器が蒸気発生器である場合、蒸気発生器の1つまたは複数の管の破損によって放出された水‐水蒸気混合物は、一次冷却材Fと接触して沸騰を完了し、一次冷却材から自由表面H4の高さで分離し、次いで被覆ガス29と混合する。この被覆ガスは、その後、相当量の蒸気が放出された場合に圧力抑制システムとして動作する補助システム35によって圧力が制御される。
【0030】
‐低温コレクタ7の自由表面H4からの熱交換器10の管束の部分的な上昇は、コアに対する高さの相対的な差を増大させ、その結果自然循環での性能が向上する。
【0031】
‐容器2から一次流体Fが流出する場合、窓17の上縁部30が露出することにより、交換器10の管束の高さH4より上の部分が空になる。これは、隙間32を埋めることに寄与し、窓17の寸法を小さくしても、窓17の下縁部31が露出し、交換器10を通る循環が停止するのを回避する。
【0032】
添付の特許請求の範囲から逸脱しない修正および変形は、前述し図示した交換器および交換器を備えた原子炉に対して実施することができることを理解されたい。
図1
図2
【手続補正書】
【提出日】2022-05-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炉心(4)の上方にある高温コレクタ(6)と、前記高温コレクタ(6)を取り囲み、分離構造体(5)によって分離される低温コレクタ(7)であって、前記炉心(4)を冷却するために一次流体(F)が循環する低温コレクタと、を収容する原子炉容器(2)を具備する原子炉(1)あって、
前記原子炉は、前記高温コレクタ(6)から流入する一次流体を底部から提供するように構成される少なくとも1つの交換器(10)具備する、原子炉において、
前記交換器(10)は、前記低温コレクタ(7)次流体の自由表面(H4)にて周方向出口窓(17)を有し、前記周方向出口窓(17)は、前記熱交換器(10)の管束(13)の中間部分に位置決めされることを特徴とする、原子炉(1)。
【外国語明細書】