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特開2022-97603可変なスラスター制御を用いた軌道上サービスを提供するためのサービス衛星
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022097603
(43)【公開日】2022-06-30
(54)【発明の名称】可変なスラスター制御を用いた軌道上サービスを提供するためのサービス衛星
(51)【国際特許分類】
   B64G 4/00 20060101AFI20220623BHJP
   B64G 1/26 20060101ALI20220623BHJP
【FI】
B64G4/00 105
B64G1/26 C
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022077232
(22)【出願日】2022-05-09
(62)【分割の表示】P 2021192408の分割
【原出願日】2018-03-05
(31)【優先権主張番号】15/450,601
(32)【優先日】2017-03-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】520428498
【氏名又は名称】アストロスケール イスラエル リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ミハエル・ライトマン
(72)【発明者】
【氏名】アーノン・スピッツァー
(72)【発明者】
【氏名】アリエ・ハルスバンド
(72)【発明者】
【氏名】オフィール・アズリエル
(57)【要約】
【課題】ホスト衛星に対してステーションキーピングサービスを行うサービス衛星を提供する。
【解決手段】サービス衛星は、本体と、本体に取り付けられた把持機構と、を有する。把持機構は、ホスト衛星の外部表面から延在するインターフェースリングに取り付くことによって外方向に延在するインターフェースリングを介するホスト衛星とサービス衛星との間の相互接続を実現する。把持機構がインターフェースリングに取り付くことにより、結合した重心を備える相互接続ユニットが形成される。サービス衛星は、少なくとも2つのスラスターと少なくとも1つのコントローラとを有する。少なくとも1つのコントローラは、少なくとも2つのスラスターから発生した推進ベクトルが結合した重心の通過を避けて該結合した重心からそれぞれオフセットするように少なくとも2つのスラスターを選択的に方向付けすることにより、相互接続ユニットを実質的に静止軌道に維持する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホスト衛星に対してステーションキーピングサービスを行うためのサービス衛星であって、
本体と、
少なくとも2つのスラスターと、
少なくとも1つのコントローラと、を有し、
本体が、本体に取り付けられ、且つ、ホスト衛星の外部表面から延在するインターフェースリングに取り付くことによって外方向に延在するインターフェースリングを介するホスト衛星とサービス衛星との間の相互接続を実現し、それにより結合した重心を備える相互接続ユニットを形成するように構成された把持機構を備え、
少なくとも1つのコントローラが、少なくとも2つのスラスターのそれぞれを、スラスターの点火中において少なくとも2つのスラスターから発生した推進ベクトルが結合した重心の通過を避けて該結合した重心からそれぞれオフセットするような角度方向に選択的に向けることにより、相互接続ユニットを実質的に静止軌道に維持するように構成されている、サービス衛星。
【請求項2】
把持機構が、インターフェースリングと係合するように構成された少なくとも2つのアームを含んでいる、請求項1に記載のサービス衛星。
【請求項3】
少なくとも1つのコントローラが、少なくとも2つのスラスターそれぞれを、結合した重心が複数の推進ベクトルと相互接続ユニットの結合した重心を通過する平面との複数の交点の間に位置するように、選択的に動かすように構成されている、請求項1に記載のサービス衛星。
【請求項4】
少なくとも1つのコントローラが、
第1の期間中、少なくとも2つのスラスターにおける第1のスラスターを第1の角度方向に向けるとともに第1のスラスターを点火し、
第1の期間中、少なくとも2つのスラスターにおける第2のスラスターを第1の角度方向と異なる第2の角度方向に向けるとともに第2のスラスターを点火し、
第1の期間に続く第2の期間中、第1のスラスターを第2の角度方向に向くように動かすとともに第1のスラスターを点火し、
第2の期間中、第2のスラスターを第1の角度方向に向くように動かすとともに第2のスラスターを点火する、ように構成されている、請求項3に記載のサービス衛星。
【請求項5】
少なくとも1つのコントローラがさらに、推進ベクトルによって発生して相互接続ユニットの少なくとも1つの軸を中心とするトルクが実質的に平衡をとるように、少なくとも2つのスラスターのそれぞれの推進レベルを調節するように構成されている、請求項1に記載のサービス衛星。
【請求項6】
コントローラが、
第1のスラスターが第1の角度方向に方向付けされているとき、少なくとも2つのスラスターを第1の推進レベルで点火し、
第1のスラスターが第2の角度方向に方向付けされているとき、少なくとも2つのスラスターを第1の推進レベルと異なる第2の推進レベルで点火する、ように構成されている、請求項4に記載のサービス衛星。
【請求項7】
コントローラが、第2の推進レベルを決定するために、
第1のスラスターが第1の角度方向に方向付けされているときに少なくとも2つのスラスターを第1の推進レベルで点火し、
相互接続ユニットの少なくとも1つの軸を中心とする角運動量を決定し、
角運動量が実質的にゼロに減少するように第1のスラスターが第2の角度方向に方向付けされているときに、少なくとも2つのスラスターが点火されなければならない第2の推進レベルを決定する、ように構成されている、請求項6に記載のサービス衛星。
【請求項8】
少なくとも2つのスラスターが、第1のペアのスラスターと第2のペアのスラスターとを含み、
少なくとも1つのコントローラがさらに、第1のペアのスラスターと第2のペアのスラスターとから発生した推進ベクトルが結合した重心の通過を避けて該結合した重心からオフセットするように、第1のペアのスラスターと第2のペアのスラスターの一方を第1の角度方向に向けるとともに、第1のペアのスラスターと第2のペアのスラスターの他方を第1の角度方向と異なる第2の方向に向けるように構成されている、請求項1に記載のサービス衛星。
【請求項9】
少なくとも1つのコントローラがさらに、推進ベクトルによって発生して相互接続ユニットの少なくとも1つの軸を中心とするトルクが実質的に平衡をとるように、第1の角度方向のスラスターを第1の推進レベルで点火するとともに、第2の角度方向のスラスターを第1の推進レベルと異なる第2の推進レベルで点火するように構成されている、請求項8に記載のサービス衛星。
【請求項10】
コントローラがさらに、第1の期間、第1のペアのスラスターを同時に点火し、第2の期間、第2のペアのスラスターを同時に点火するように構成されている、請求項8に記載のサービス衛星。
【請求項11】
コントローラがさらに、第2の期間の後、第1のペアのスラスターを第3の角度方向に向けるとともに第2のペアのスラスターを第1の角度方向に向け、第1のペアのスラスターと第2のペアのスラスターの動作の後、第1の期間、第2のペアのスラスターを同時に点火するように構成されている、請求項10に記載のサービス衛星。
【請求項12】
少なくとも1つのコントローラがさらに、推進ベクトルによって発生して相互接続ユニットの少なくとも1つの軸を中心とするトルクが実質的に平衡をとるように、第1の期間、第1の角度方向のスラスターを所定の推進レベルで点火するとともに、第1の期間と異なる第2の期間、第2の角度方向のスラスターを所定の推進レベルで点火するように構成されている、請求項8に記載のサービス衛星。
【請求項13】
コントローラはさらに、第1のペアのスラスターと第2のペアのスラスターを順番に点火するように構成されている、請求項11に記載のサービス衛星。
【請求項14】
第2の期間の後の第3の期間において、コントローラはさらに、第1のペアのスラスターを第2の角度方向に向けるとともに第2のペアのスラスターを第1の角度方向に向け、第1のペアのスラスターと第2のペアのスラスターの動作の後、第1のペアのスラスターと第2のペアのスラスターを順番に点火するように構成されている、請求項12に記載のサービス衛星。
【請求項15】
コントローラが、第2の期間を決定するために、
第1の角度方向のスラスターを、第1の期間、所定の推進レベルで点火し、
相互接続された衛星の少なくとも1つの軸を中心とする角運動量を決定し、
角運動量が実質的にゼロに減少するために第2の角度方向のスラスターが点火されなければならない第2の期間を決定する、ように構成されている、請求項12のサービス衛星。
【請求項16】
第1の期間が、サービス衛星のリアクションホイールがフルロードする時間であって、
第2の期間が、リアクションホイールが完全にアンロードする時間である、請求項14に記載のサービス衛星。
【請求項17】
少なくとも2つのスラスターが、
サービス衛星の第1のサイドに配置されて間隔をあけて離れている第1の北側スラスターおよび第2の北側スラスターと、
第1のサイドに対して反対側のサービス衛星の第2のサイドに配置されて間隔をあけて離れている第1の南側スラスターおよび第2の南側スラスターと、を含んでいる、請求項7に記載のサービス衛星。
【請求項18】
第1のペアのスラスターが、第1の北側スラスターと第2の北側スラスターとを含み、
第2のペアのスラスターが、第1の南側スラスターと第2の南側スラスターとを含んでいる、請求項16に記載のサービス衛星。
【請求項19】
第1のペアのスラスターが、第1の北側スラスターと第1の南側スラスターとを含み、
第2のペアのスラスターが、第2の北側スラスターと第2の南側スラスターとを含んでいる、請求項16に記載のサービス衛星。
【請求項20】
ホスト衛星に対してステーションキーピングサービスを行う方法であって、
サービス衛星を宇宙に打ち上げてそれをホスト衛星のドッキング距離の範囲内に飛行させ、
サービス衛星の少なくとも2つのアームとホスト衛星の外部インターフェースリングとが係合することによってサービス衛星とホスト衛星とを接続させ、結合した重心を備える相互接続ユニットを形成し、
ステーションキーピングにおける点火の間、サービス衛星の少なくとも2つのスラスターのそれぞれを、少なくとも2つのスラスターによって発生した推進ベクトルが結合した重心の通過を避けて該結合した重心からそれぞれオフセットするように、選択的に動かす、方法。
【請求項21】
選択的に動かすことには、
第1の期間中、少なくとも2つのスラスターにおける第1のスラスターを第1の角度方向に向けるとともに第1のスラスターを点火し、
第1の期間中、少なくとも2つのスラスターにおける第2のスラスターを第1の角度方向と異なる第2の角度方向に向けるとともに第2のスラスターを点火し、
第1の期間に続く第2の期間中、第1のスラスターを第2の角度方向に向くように動かすとともに第1のスラスターを点火し、
第2の期間中、第2のスラスターを第1の角度方向に向くように動かすとともに第2のスラスターを点火する、ことが含まれている、請求項20に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
地球周りの軌道上に対する通信衛星や他の衛星の配置および維持に関して、商業的な宇宙部門や政府の宇宙部門は高コストの問題に直面している。衛星の寿命は、通常、衛星に搭載された推進剤の量によって支配される。搭載された電子機器がまだ機能可能であっても、ひとたび燃料を使い果たすと、衛星は、通常、その有用性を失う。通常の衛星サイズを備える衛星の接続性についての要求が徐々に高まっている。大きな静止通信衛星を打ち上げるためには相当な初期投資が必要となる。衛星サービスプロバイダーの初期投資には、衛星自体のコストだけでなく、地球から投入軌道に衛星を投入するために必要な打ち上げ機も含まれる。
【0002】
衛星は、通常、投入軌道から最終的な静止軌道に衛星みずから移動するため、且つ、最大でも15年間軌道位置で維持するための推進システムを備えている。推進システムテクノロジーは、年間を通じて成長しており、衛星がケミカルシステムだけでなく高効率な電気推進システムを使用することを可能にしている。これにより、燃料抑制が効果的に進み、それにより大きいおよび/または重い衛星の軌道への配置を可能にしている。
【0003】
地球周りの静止軌道上の衛星は、その衛星を所望の静止位置から離れるように移動させうる重力や太陽力の影響を受けている。衛星は、自身の推進システムを用いて、重力や太陽力によって生じる変位を相殺する修正措置を取る。衛星の静止位置での維持に必要な推進飛行は、ときには、ステーションキーピングと呼ばれる。衛星が搭載された燃料全てを使い果たすと、衛星は静止位置で維持するために自身の推進システムを使用することができず、交換されなければならないことがある。
【0004】
いくつかのケースでは、衛星打ち上げ機が衛星を誤った軌道に投入することがある。その衛星は、誤った軌道から正しい軌道に自身で移動するために、搭載燃料を消費しなければならない。したがって、ステーションキーピング用の燃料の一部を初期軌道修正に使用しなければならず、その結果として、衛星サービスプロバイダーの収入低下を招く衛星の稼動寿命の減少が生じる。別のケースでは、衛星は、様々な商業的理由または稼動に関する理由で、軌道位置および/または向きの変更を必要とされる場合がある。これらの変更もまた、衛星に搭載燃料を消費させる必要があり、その結果、稼動寿命が減少する。
【0005】
宇宙において衛星の交換はコストが高いので、既に軌道にある衛星の寿命を延ばすことに役立つテクノロジーが必要である。
【発明の概要】
【0006】
一態様において、本開示は、ホスト衛星に対してステーションキーピングサービスを行うサービス衛星に向けられている。サービス衛星は、本体と、本体に取り付けられた把持機構とを有する。把持機構は、ホスト衛星の外部表面から延在するインターフェースリングに取り付くように構成されている。把持機構がインターフェースリングに取り付くことにより、外方向に延在するインターフェースリングを介するホスト衛星とサービス衛星との間の相互接続を実現され、結合した重心を備える相互接続ユニットが形成される。サービス衛星は、少なくとも2つのスラスターと少なくとも1つのコントローラとを有する。当該コントローラは、相互接続ユニットを実質的に静止軌道に維持するように構成され、そのために、スラスターの点火中に、少なくとも2つのスラスターから発生した推進ベクトルが結合した重心の通過を避けて該結合した重心からそれぞれオフセットするような角度方向に少なくとも2つのスラスターを選択的に向ける。
【0007】
別の態様において、ステーションキーピング方法は、サービス衛星を宇宙に打ち上げてそれをホスト衛星のドッキング距離の範囲内に飛行させることを含んでいる。方法はまた、サービス衛星の少なくとも2つのアームとホスト衛星の外部インターフェースリングとが係合することによってサービス衛星とホスト衛星とを接続させ、相互接続ユニットを形成することを含んでいる。相互接続ユニットは、結合した重心を備えている。方法は、ステーションキーピングにおける点火の間、サービス衛星の少なくとも2つのスラスターのそれぞれを、少なくとも2つのスラスターによって発生した推進ベクトルが結合した重心の通過を避けて該結合した重心からそれぞれオフセットするように、選択的に動かすことを含んでいる。
【0008】
本開示の実施の形態の付加的な目標や利点は、以下の説明に記載されており、また説明から理解される、あるいは本開示の実施の形態を実施することによって知ることができる。上述の一般的な説明と以下の詳細な説明の両方は、説明のための例示であって、開示の実施の形態に限定するものではないと理解される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
添付の図面は、本開示に組み込まれるととともにその一部を構成し、説明とともに本開示の例示的な開示の実施の形態を示し、本開示の原理を説明する役割をしている。
【0010】
図1Aは、開示の実施の形態に一致する例示的なサービス衛星の上面図である。
【0011】
図1Bは、開示の実施の形態に一致する、図1Aの例示的なサービス衛星の側面図である。
【0012】
図2は、開示の実施の形態に一致する、図2Aに示すサービス衛星の例示的なスラスター展開機構の平面図である。
【0013】
図3は、開示の実施の形態に一致する、図1Aおよび図1Bのサービス衛星とホスト衛星の例示的な相互接続ユニットまたは直列集合体を示す図である。
【0014】
図4Aは、開示の実施の形態に一致する、直列集合体を示すとともに、図1Aおよび図1Bのサービス衛星のスラスターの例示的な方向を示している。
【0015】
図4Bは、開示の実施の形態に一致する、直列集合体を示すとともに、図1Aおよび図1Bのサービス衛星のスラスターの別の例示的な方向を示している。
【0016】
図5Aは、開示の実施の形態に一致する、Z軸に沿った、図3の相互接続ユニットの例示的な構成の端面図である。
【0017】
図5Bは、開示の実施の形態に一致する、Y軸に沿った、図3の相互接続ユニットの例示的な構成の側面図である。
【0018】
図5Cは、開示の実施の形態に一致する、X軸に沿った、図3の相互接続ユニットの例示的な構成の上面図である。
【0019】
図6Aは、開示の実施の形態に一致する、直列集合体を示すとともに、図1Aおよび図1Bに示すサービス衛星のスラスターの例示的な方向を示している。
【0020】
図6Bは、開示の実施の形態に一致する、直列集合体を示すとともに、図1Aおよび図1Bに示すサービス衛星のスラスターの別の例示的な方向を示している。
【0021】
図7Aは、開示の実施の形態に一致する、直列集合体を示すとともに、図1Aおよび図1Bに示すサービス衛星のスラスターのさらに別の例示的な方向を示している。
【0022】
図7Bは、開示の実施の形態に一致する、直列集合体を示すとともに、図1Aおよび図1Bに示すサービス衛星のスラスターのさらなる例示的な方向を示している。
【0023】
図8は、開示の実施の形態に一致する、図1Aおよび図1Bのサービス衛星を用いて実行される例示的な方法のステップを示している。
【0024】
図9は、開示の実施の形態に一致する、図1Aおよび図1Bのサービス衛星を用いて実行される例示的な方法のステップを示している。
【0025】
図10は、開示の実施の形態に一致する、図1Aおよび図1Bのサービス衛星を用いて実行される例示的な方法のステップを示している。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本開示の態様は、ホスト衛星に対してステーションキーピングサービスを提供するサービス衛星に関する。用語”衛星”は、ほとんどの場合、宇宙に打ち上げられ、惑星体を周回可能な宇宙機(spacecraft)を言う。一例として、衛星は地球の周りを周回してもよい。用語”ホスト衛星”は、ほとんどの場合、既に宇宙にあって惑星体の軌道上に存在する宇宙機を言う。いくつかの例示的な実施の形態において、ホスト衛星は、地球周りの静止軌道上に位置してもよい。用語”サービス衛星”は、ホスト衛星とサービス衛星の両方が惑星体周りの軌道上に存在する間、ホスト衛星に対してサービスを提供することができる衛星すなわち宇宙機を言う。一例として、サービス衛星によってホスト衛星に提供される軌道上サービスには、軌道上昇(orbit raising)、ステーションキーピング、ステーションチェンジ、傾斜変更(inclination change)、軌道離脱、軌道再配置(orbital repositioning)、燃料補給、またはホスト衛星の修理、移動、または延命作業のための他の飛行(マニューバ)や動作が含まれてもよい。
【0027】
本開示はサービス衛星の例示の構成を提供するが、本開示の態様は、広義には、開示の構成に限定されないことに留意すべきである。正確に言えば、上述の原理はサービス衛星の他の構成にも適用可能であると考えられる。図1Aは、本開示に係る例示的な実施の形態のサービス衛星10の正面図である。図1Bは、例示として開示されたサービス衛星10の側面図である。
【0028】
本開示によれば、サービス衛星は、ホスト衛星に対してステーションキーピングサービスを提供してもよい。上述したように、ホスト衛星は、重力および/または太陽力(solar force)を受け、それにより、静止軌道上の割り当て位置から移動してもよい。サービス衛星は、このような移動を、静止軌道上の割り当て位置でホスト衛星を維持することによって相殺してもよい。ステーションキーピングの用語は、ほとんどの場合、静止軌道上の割り当て位置でホスト衛星を維持するために必要な変位補償に関連する飛行を指すことがある。
【0029】
いくつかの例示的な実施の形態において、ホスト衛星は、ホスト衛星の外部表面から延在するインターフェースリングを備えてもよい。用語”インターフェースリング”は、ほとんどの場合、ホスト衛星の外部表面に取り付けられた構造物を言う。インターフェースリングは、ホスト衛星を宇宙に打ち上げるための打ち上げ機すなわちロケットに対してホスト衛星を取り付けるために使用されてもよい。代わりとして、インターフェースリングは、ホスト衛星をペイロードとして打ち上げ機に対して取付けるために使用されることを意味するペイロード取り付けリングとして呼ばれることがある。インターフェースリングは、ホスト衛星の外側表面(outer surface)(すなわち外部表面(extenal surface))に取り付けられてもよい。いくつかの例示的な実施の形態において、インターフェースリングは略円形状であってもよい。しかしながら、インターフェースリングが、他の形状、例えば、楕円、多角形、正方形、長方形、または耕地の形状であってもよいことが考えられる。一例として、図3に示すように、ホスト衛星200は、インターフェースリング202を備えていてもよい。
【0030】
本開示に係るサービス衛星は、本体(body)を含んでもよい。用語”本体”は、ほとんどの場合、1つまたはそれ以上のサービス衛星の部品を包むエンクロージャまたはハウジングを指すことがある。例えば、本体は、サービス衛星の様々な部品を制御するための電子回路、通信回路、衛星の推進に必要な燃料を保持する燃料タンク、サービス衛星の残留角モーメントを蓄積するリアクションホイール、サービス衛星の加速度やトルクを測定するセンサを含む種々のセンサ、および他の公知の衛星部品を包んで収容してもよい。幾つかの例示的な実施の形態において、サービス衛星の本体は、実質的に完全密閉を形成してもよい。他の例示的な実施の形態において、本体の1つまたはそれ以上の側壁が開口を備えてもよい。サービス衛星の本体は、任意の形状であってもよい。例えば、サービス衛星の本体は、立方体、立方体状、円柱状、多角形状、または公知の形状であってもよい。図1Aおよび図1Bは、例えは、サービス衛星10の略立方体状の本体12を示している。
【0031】
本開示に係るサービス衛星は、本体に取り付けられた把持機構を含んでいてもよい。把持機構は、ホスト衛星の外部表面から延在するインターフェースリングに取り付くように構成されてもよい。用語”把持機構”は、ほとんどの場合、ホスト衛星に機械的に取り付くまたは接続することができる、サービス衛星に関連する1つまたはそれ以上の構成要素を言う。本開示によれば、把持機構は、様々な代わりの構造物によって実現されてもよい。例えば、把持機構は、サービス衛星の本体に対して一端が取り付けられた1つまたはそれ以上のアームを含んでもよい。アームの自由端が、対向し合うクランプ部材の間でホスト衛星の一部分を受け取るように構成されたクランプデバイスを含んでもよい。本開示に係る1つの例示的な実施の形態において、ホスト衛星のインターフェースリングが、クランプデバイスの対向し合うクランプ部材の間で受け取られてもよい。対向し合うクランプ部材は、対向し合うクランプ部材の間でインターフェースリングを挟むように構成されてもよい。
【0032】
別の例示的な実施の形態の把持機構において、アームの自由端が、1つまたはそれ以上の箇所でインターフェースリングの内側表面に係合可能な放射方向に拡大する構成要素を含んでいてもよい。放射方向に拡大する構成要素によってインターフェースリングに作用する放射方向外側の力は、インターフェースリングに対してアームが固定される力であってもよい。本開示は把持機構の様々な例を開示するが、本開示は、広義には、特定の把持機構の構成や構造に限定されない。正確に言えば、本開示の意図の範囲の”把持機構”として、ホスト衛星に確実に接続することができる任意の構造や構成が考えられる。図1Aおよび図1Bは、例示的な実施の形態の把持機構14を示している。
【0033】
したがって、本開示において、把持機構は、例えば、インターフェースリングと係合するように構成されている少なくとも2つのアームを含んでもよい。用語”アーム”は、サービス衛星の本体から外側に向かって延在する1つまたはそれ以上の構造部材を含む、いわゆる”ドッキングアーム”を指す場合もある。アームそれぞれは、1つまたはそれ以上の関節点または肘を備えてもよい。いくつかの例示的な実施の形態において、サービス衛星が2つ以上のアームを含んでいる場合も考えられる。図1Aは、4つのドッキングアーム16を含んでいる例示的な実施の形態のサービス衛星10を示している。図1Bに示すように、ドッキングアーム16それぞれは、4本のバーリンク機構であってもよい。しかしながら、本開示に係るドッキングアームは、開示されている4本のバーリンク構造に限定されない。正確に言えば、ドッキングアーム16は、2本、3本、または6本のバーリンク機構であってもよい。本開示に係るいくつかの例示的な実施の形態においては、ドッキングアーム16は、任意の数のリンク機構を含んでもよい。いくつかの実施の形態においては、リンク機構が使用されないことも考えられる。
【0034】
図1Bに示す例示的な実施の形態のサービス衛星10において、ドッキングアーム16は、サービス衛星10の本体12に取り付けられている固定クランク18を含んでもよい。図1Bに示すように、ドッキングアーム16は、互いに間隔をあけて離れ、それぞれヒンジ24、26で固定クランク18に旋回可能に接続されたクランク20、22を含んでもよい。ヒンジ24、26それぞれを中心とするクランク20、22それぞれの回転は、ドッキングアーム16を移動させるために、別々に制御されてもよい。いくつかの例示的な実施の形態において、サービス衛星10の本体10の一部は、4本のバーリンク機構の固定クランク18に置き換わってもよい。したがって、例えば、クランク20、22は、互いに間隔をあけて離れてもよく、またヒンジ24、26それぞれを介して、サービス衛星10の本体12に旋回可能に接続されてもよい。
【0035】
図1Bに示す例示的な実施の形態のドッキングアーム16において、操作アーム28は2つのクランク(例えばクランク20)の一方に一端30で旋回可能に接続されてもよく、他方のクランク(例えばクランク22)が接続端30と自由端32の間で操作アーム28に接続してもよい。操作アーム28の自由端32は、ホスト衛星のインターフェースリングに係合するように構成されたリング係合部34を含んでもよい。リング係合部34は、上述の1つまたはそれ以上のクランプ機構を含んでもよい。本開示は4つのドッキングアーム16を備えるサービス衛星10を説明しているが、サービス衛星10が任意の数のドッキングアーム16を含むことができると考えられる。
【0036】
さらに、本開示はホスト衛星のインターフェースリングにドッキングアームが取り付くことについて説明しているが、本開示は、広義には、特定の取り付き方法に限定されない。把持機構の自由端がインターフェースリング以外のホスト衛星の外部の構造的特徴部に対して取り付くように構成されることも考えられる。例えば、把持機構の自由端が、ホスト衛星の外部表面に設けられた突起または他の構造的特徴部に取り付くように構成されてもよい。
【0037】
本開示によれば、インターフェースリングに取り付くことにより、把持機構が、外部に延在するインターフェースリングを介してホスト衛星とサービス衛星との間の相互接続を確立してもよい。用語”相互接続”は、ほとんどの場合、2つの対象間における取り付け、接続、または連結を言う。本開示に係るサービス衛星とホスト衛星との間の相互接続は、サービス衛星からホスト衛星に向かってまたはその逆方向に推進力を伝達することができる十分な剛性も持ってもよい。図3は、例えば、サービス衛星10とホスト衛星200との間の相互接続204を示している。
【0038】
本開示によれば、ホスト衛星へのサービス衛星の把持機構の取り付きにより、結合した重心を備える相互接続ユニットが実現されてもよい。用語”相互接続ユニット”は、ほとんどの場合、2つの対象が取り付く、接続する、または連結することによって形成された集合体を言う。例えば、ホスト衛星へのサービス衛星の把持機構の取り付きにより、サービス衛星とホスト衛星を含む相互接続ユニットすなわち集合体が形成されてもよい。いくつかの例示的な実施の形態において、ホスト衛星にサービス衛星が接続することによって形成された相互接続ユニットは、”直列(tandem)集合体”と呼ばれることがある。図3は、例えば、ホスト衛星200のインターフェースリング202にサービス衛星10の把持機構14が取り付くことによって形成された相互接続ユニット206を示している。相互接続ユニット206は、ホスト衛星200にサービス衛星10のいくつかまたは全てのアーム16が取り付くことによって形成されてもよい。本開示と一致する例示的な実施の形態の把持機構が、本明細書に参照として組み込まれた、2015年8月26日出願の国際特許出願第PCT/IL2015/055856号および2014年8月26日出願の米国仮特許出願第62/041780号に開示されている。
【0039】
用語”結合した重心”は、ほとんどの場合、互いに接続された2つの対象の重心を言う。サービス衛星とホスト衛星によって形成された相互接続ユニットの結合した重心は、例えば、サービス衛星の質量とホスト衛星の質量に基づいてもよい。結合した重心はまた、例えば、サービス衛星の質量とホスト衛星の質量の空間的な分布状態に基づいてもよい。サービス衛星とホスト衛星を含む相互接続ユニットは、必然的に結合した重心を持つことになる。
【0040】
本開示によれば、サービス衛星は、少なくとも2つのスラスターを含んでもよい。本明細書においては、スラスターは、ほとんどの場合、スラスターが取り付けられた対象を移動させる推進力を提供することができるデバイスを言う。いくつかの例示的な実施の形態において、スラスターは、推進剤を略所定の方向にスラスターから流出させ、それによりその所定の方向と反対方向に推進力を発生させてもよい。スラスターによって使用される推進剤は、液状またはガス状であってもよい。本開示の種々の実施の形態に係るスラスターは、化学的スラスター、抵抗ジェットスラスター、コールドガススラスター、電気推進スラスター、二元推進剤スラスター、ホール効果スラスター、格子イオンスラスター、アークジェットスラスター、プラズマ推進エンジン、または宇宙で対象を移動させるために使用される他のタイプの公知のスラスターであってもよい。
【0041】
本開示の実施の形態によれば、少なくとも2つのスラスターは、第1のペアのスラスターと第2のペアのスラスターを含んでもよい。本明細書においては、用語”ペア”は、2つのスラスターを意味する。しかしながら、本開示における”フレーズ”ペアのスラスター”は、機械的、電気的、または他の方法で互いに関連する2つのスラスターに限定されない。例えば、第1のペアのスラスターと第2のペアのスラスターは、別々であって独立して制御可能な4つのスラスターをトータルで含んでもよい。本開示はスラスターの特定の構成や位置を説明するが、本開示は、広義には、特定のスラスター構成や位置に限定されない。したがって、例えば、いくつかの例示的な実施の形態において、サービス衛星が奇数個のスラスターを備えうることも考えられる。さらに、他の例示的な実施の形態においては、本開示のサービス衛星は、2組のペア以上のスラスターを備え得ることも考えられる。
【0042】
本開示の実施の形態によれば、少なくとも2つのスラスターは、第1の北側スラスターと第2の北側スラスターを含んでもよい。第1の北側スラスターと第2の北側スラスターは、サービス衛星の第1のサイドに配置されてもよい。第1の北側スラスターは、第2の北側スラスターに対して間隔をあけて離れていてもよい。本開示のいくつかの実施の形態によれば、少なくとも2つのスラスターは、第1の南側スラスターと第2の南側スラスターを含んでもよい。第1の南側スラスターと第2の南側スラスターは、サービス衛星の第1のサイドの反対サイドに配置されてもよい。第1の南側スラスターは、第2の南側スラスターに対して間隔をあけて離れていてもよい。北側および南側の用語は、広義には、サービス衛星に対する特定の位置に限定されない。正確に言えば、広義には、北側および南側の用語は、サービス衛星の対向し合うサイドを意味する。対向し合うサイドは、サービス衛星の本体を通過する座表面の両側に配置されてもよい。
【0043】
図1Aは、スラスター36、38、40、42を備える例示的な実施の形態のサービス衛星10を示している。図1Aに示すように、スラスター36、38は、サービス衛星10の本体12の第1のサイド44に配置されてもよい。例えば、スラスター36、38は、本体12を通過する平面46の第1のサイド44に配置されてもよい。スラスター36、38は、互いに間隔をあけて離れていてもよい。いくつかの例示的な実施の形態において、平面46は、サービス衛星10の略縦方向の対称面を定義してもよい。他の例示的な実施の形態において、平面46は、地球に対するサービス衛星の天頂-天底平面を定義してもよい。図1Aの例示的な実施の形態に示すように、スラスター40、42は、サービス衛星10の本体12の第2のサイド48に配置されてもよい。例えば、スラスター40、42は、平面46の第2のサイド48に配置されてもよい。本体12の第2のサイド48は、第1のサイド44の反対側であってもよい。
【0044】
図1Aに示す例示的な実施の形態において、第1のサイド44はサービス衛星10の北側サイドとして特定されてもよく、第2のサイド38はサービス衛星10の南側サイドとして特定されてもよい。スラスター36、38は、第1の北側スラスター36と第2の北側スラスター38として分類されてもよい。同様に、スラスター40、42は、第1の南側スラスター40と第2の南側スラスター42として分類されてもよい。しかしながら、いくつかの実施の形態において、サイド44をサービス衛星10の南側サイドとして分類し、サイド48を北側サイドとして分類することもありうる。これらの例示的な実施の形態において、スラスター36、38は、第1の南側スラスター36と第2の南側スラスター38として分類されてもよく、スラスター40、42は、第1の北側スラスター40と第2の北側スラスター42として分類されてもよい。
【0045】
本発明のいくつかの態様によれば、第1のペアのスラスターは、第1の北側スラスターと第1の南側スラスターを含んでもよい。同様に、第2のペアのスラスターは、第2の北側スラスターと第2の南側スラスターを含んでもよい。図1Aは、例えば、スラスター36とスラスター40とを含む第1のペアのスラスター54と、スラスター38とスラスター42とを含む第2のペアのスラスター56を示している。ある例示的な実施の形態において、第1のサイド44がサービス衛星10の北側サイドと分類され、第2のサイド48が南側サイドと分類される場合、第1のペアのスラスター54は、第1の北側スラスター36と第1の南側スラスター40を含んでもよい。同様に、第2のペアのスラスター56は、第2の北側スラスター38と第2の南側スラスター42を含んでもよい。
【0046】
図1Aに示すようないくつかの例示的な実施の形態において、第3のサイド58がサービス衛星10の東側サイドとして特定されてもよく、第4のサイド60がサービス衛星10の西側サイドとして特定されてもよい。第3のサイド58と第4のサイド60は、サービス衛星10の本体12を通過する平面62の両側に配置されてもよい。平面62は、平面46に対して略垂直に配置されてもよい。本開示のいくつかの態様において、平面62は、サービス衛星10の対称面であってもよい。スラスター36、40は、第1の東側スラスター36と第2の東側スラスター40として分類されてもよく、互いに間隔をあけて離れてもよく、また、サービス衛星10の第3のサイド58に配置されてもよい。同様に、スラスター38、42は、第1の西側スラスター38と第2の西側スラスター42として分類されてもよく、互いに間隔をあけて離れてもよく、また、第3のサイド58とは反対側のサービス衛星10の第4のサイド60に配置されてもよい。しかしながら、いくつかの実施の形態において、サイド58はサービス衛星10の西側サイドとして分類されてもよく、サイド60は東側サイドとして分類されてもよい。これらの例示的な実施の形態において、スラスター36、40は第1の西側スラスター36と第2の西側スラスター40として分類されてもよく、スラスター38、42は第1の東側スラスター38と第2の東側スラスター42として分類されてもよい。
【0047】
本開示によれば、サービス衛星は、スラスター展開機構を含んでもよい。用語”スラスター展開機構”は、ほとんどの場合、サービス衛星に取り付けられ、サービス衛星の本体から離れるように外側に向かって伸展することができる1つまたはそれ以上の構成要素を言う。スラスター展開機構は、スラスターを展開することができる構造である限り、様々な代わりの構造を含んでもよい。本開示に係るいくつかの例示的な実施の形態において、スラスターそれぞれは、専用のスラスター展開機構を備えてもよい。例えば、スラスターそれぞれは、サービス衛星の本体に取り付けられた第1の端とその第1の端から離れている自由端とを備える伸張アームまたはブームに取り付けられてもよい。スラスターは、伸長アームまたはブームの自由端に取り付けられてもよい。本開示に係る他の例示的な実施の形態において、1つ以上のスラスターが、同一の伸張アームまたはブームに取り付けられてもよい。さらに他の例示的な実施の形態において、スラスター展開機構は、サービス衛星の本体から所定の距離にスラスターを位置決めできる1つまたはそれ以上のリンク機構を含んでもよい。例えば、スラスター展開機構は、上述した把持機構と同様の2本、4本、または6本のバーリンク機構を含んでもよい。
【0048】
図1Aは、例えば、サービス衛星10のスラスター展開機構64を示している。スラスター展開機構64は、スラスター展開ヨーク66(図1A参照)を含んでもよい。図2に示すように、スラスター展開ヨーク66は、ヨークベース70とヨークアーム72、74とを含んでもよい。ヨークベース70は、ヨークベース端76でサービス衛星10の本体12に回転可能に接続されてもよい。ヨークアーム72、74は、ヨークベース70からヨークアーム端78、80それぞれに向かって延在してもよい。ヨークアーム端78、80は、互いに間隔をあけて離れていてもよい。図2Aおよび図2Bに示すようなある例示的な実施の形態において、ヨークベース70とヨークアーム72、74は、略”Y”字形状を備える構造部材を形成してもよい。図2には示していないが、スラスター展開ヨーク68(図1A参照)は、スラスター展開ヨーク66について上述したような類似の構造を備えてもよい。ヨークベース70とヨークアーム72、74は、ヨーク平面86、88(図1B参照)を定義してもよい。図2Aおよび図2Bは2つのヨークアーム72、74のみを備えるものとしてスラスター展開ヨーク66、68それぞれを示しているが、スラスター展開ヨーク66、68は、任意の数のヨークアームを備えうると考えられる。さらに、図1Aおよび図1Bは2つのスラスター展開ヨーク66、68のみを備えるものとしてサービス衛星10を示しているが、サービス衛星10は任意の数のスラスター展開ヨークを備えうると考えられる。
【0049】
図1Bに戻り、スラスター展開ヨーク66、68は、スラスター展開ヨーク66、68が平面46(図1A参照)に対して回転することにより、所定の方向に方向付けされてもよい。図1Bに示すようなある例示的な実施の形態において、スラスター展開ヨーク66、68の姿勢は、ヨーク平面86、88それぞれとサービス衛星10の平面46と平行な平面との間の角度φによって決定されてもよい。スラスター展開ヨーク66、68は、平面46に対して同一または異なる角度φで方向付けされうると考えられる。
【0050】
本開示によれば、サービス衛星のスラスター展開機構はまた、スラスター展開ヨークに連結され、スラスターの方向を変更することができる構成要素を含んでもよい。これは、スラスターを回転させる、傾ける、旋回させる、または別の方向に向ける機構を介して実現されてもよい。スラスターは、このような構成要素に取り付けられてもよい。本開示はスラスター展開ヨークに取り付けられたスラスター位置決めデバイスを備える構成を説明しているが、本開示は、広義には、その開示された構成に限定されない。例えば、スラスター位置決めデバイスがサービス衛星の本体に直接的に取り付けられている場合も考えられる。また、1つ以上のスラスターがスラスター位置決めデバイスそれぞれに取り付けられている場合も考えられる。さらに、サービス衛星が任意の数のスラスター位置決めデバイスを備えうると考えられる。
【0051】
図1Aは、例示的なスラスター位置決めデバイスを示しており、特にスラスターアーム90、92、94、96が具体化された例を示している。図1Aに示すように、例えば、スラスターアーム90は、第1の端98と第2の端100とを含んでもよい。スラスターアーム90の第1の端98は、スラスター展開ヨーク66のヨークアーム端78に回転可能に取り付けられてもよい。スラスター36は、スラスターアーム90の第2の端100に不動に取り付けられてもよい。また、図1Aに示すように、例えば、スラスターアーム92は、第1の端102と第2の端104とを含んでもよい。スラスターアーム92の第1の端102は、第1のスラスター展開ヨーク66のヨークアーム端80に回転可能に取り付けられてもよい。スラスター38は、スラスターアーム92の第2の端104に不動に取り付けられてもよい。
【0052】
さらに、図1Aに示すように、例えば、スラスターアーム94は、第1の端106と第2の端108とを含んでもよい。スラスターアーム94の第1の端106は、スラスター展開ヨーク68のヨークアーム端82に回転可能に取り付けられてもよい。スラスター40は、スラスターアーム94の第2の端108に不動に取り付けられてもよい。さらに、図1Aに示すように、例えば、スラスターアーム96は、第1の端110と第2の端112とを含んでもよい。スラスターアーム96の第1の端110は、スラスター展開ヨーク68のヨークアーム端84に回転可能に取り付けられてもよい。スラスター42は、スラスターアーム96の第2の端112に不動に取り付けられてもよい。
【0053】
本開示のいくつかの実施の形態によれば、スラスターアームに取り付けられたスラスターの方向は、スラスターアームとそのスラスターアームが取り付けられたスラスター展開ヨークの平面との間の角度変位量θによって決定されてもよい。したがって、例えば、図1Bに示すように、スラスター36の方向は、スラスターアーム90とスラスター展開ヨーク66との間の角度変位量θによって決定されてもよい。スラスターアーム90の角度変位量θは、第1の位置P1を定義してもよい。スラスター36、38、40、および42のいずれかは、対応するスラスターアームとスラスターヨークの間の角度変位量θを規定することにより、位置P1で方向付けされてもよい。スラスター36、38、40、および42は、同一または異なる値の角度変位量θで方向付けされうると考えられる。本開示はスラスターアームと対応するスラスター展開ヨークとの間の角度変位量θによってスラスターの方向が決定される構成を説明しているが、本開示は、広義には、その開示された構成に限定されない。例えば、スラスター36、38、38、40の方向は、平面46に対するスラスターアーム90、92、94、および96それぞれの角度変位量によって決定されうると考えられる。他の例示的な実施の形態において、スラスター36、38、38、40の方向は、平面58に対するスラスターアーム90、92、94、および96それぞれの角度変位量によって決定されうると考えられる。さらに他の例示的な実施の形態において、スラスター36、38、38、40の方向は、サービス衛星10の本体12の任意の他の表面に対するスラスターアーム90、92、94、および96の角度変位量によって決定してもよい。
【0054】
本開示によれば、サービス衛星は、少なくとも1つのコントローラを含んでもよい。本明細書においては、コントローラの用語は、サービス衛星の様々なオペレーションを制御することができる電気的な構成要素または他の構成要素を言う。例えば、少なくとも1つのコントローラが、特定の用途の要件にしたがって構成された適切なロジック部品またはコンピュータ部品を備えるデバイスを含んでもよい。いくつかの実施の形態において、コントローラは、入力または複数の入力に対して論理演算を実行する電気回路を備える任意の物理的なデバイスを含んでもよい。例えば、少なくとも1つのコントローラは、1つ以上の、集積回路、マイクロチップ、マイクロコントローラ、マクロプロセッサ、中央処理ユニット(CPU)の全てまたは一部、グラフィック処理ユニット(GPU)、デジタル信号プロセッサ(DSP)、フィールド-プログラマブルゲートアレイ(FPGA)、または指示の実行や論理演算の実行に適した他の回路を備えるプロセッサを含んでもよい。コントローラによって実行される指示は、例えば、コントローラに統合または組み込まれたメモリユニットから読み出されてもよく、またはランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリーメモリ(ROM)、ハードディスク、光ディスク、磁気媒体、フラッシュメモリ、他の永久、固定、または揮発性メモリ、あるいはコントローラの指示を蓄積できる任意の他の機構などの別のメモリユニットに蓄積されてよい。1つまたはそれ以上のコントローラは、RISC,CISC、または任意の他のコンピュータ指示アーキテクチャーに基づくシングルコアまたはマルチコアのプロセッサを含んでもよい。
【0055】
1つ以上のコントローラまたはプロセッサが使用される場合、全てが同様の構造であってもよいし、あるいは、互いに電気的に接続されているまたは接続されていない異なる構造であってもよい。これらは、別々の回路であってもよいし、または1つの回路として集積されてもよい。1つ以上のコントローラまたはプロセッサが使用される場合、これらは独立してまたは協力して演算を行ってもよい。これらは、電気的、磁気的、光学的、音響学的、機械的、またはこれらの相互作用を可能にする他の手段により、連結されてもよい。いくつかの実施の形態において、少なくとも1つのプロセッサはメモリに関連してもよい。
【0056】
コントローラまたはプロセッサに関連するメモリは、例えば、NOR型またはNAND型フラッシュメモリーデバイス、リードオンリーメモリ(ROM)デバイス、ランダムアクセスメモリ(RAM)デバイスなどを含んでもよい。コントローラに関連するストレージデバイスは、例えば、ハードディスク、半導体ドライブなどを含んでもよい。
【0057】
少なくとも1つのコントローラは、軌道上に配置されているとき、1つまたはそれ以上の遠隔通信インターフェースまたは他の遠隔通信回路を介して、地球上の地上コントロールステーションに配置されている1つまたはそれ以上のコントローラと通信するように構成されてもよい。図1Aおよび図1Bは、例えば、一例のコントローラ120を示している。
【0058】
本開示のいくつかの態様において、コントローラは、サービス衛星に搭載されてもよい。他の態様において、コントローラは、地球上の地上コントロールステーションに配置されてもよい。さらに本開示の他の態様において、コントローラは、サービス衛星と異なる宇宙機に搭載されてもよい。コントローラがサービス衛星に搭載されていない場合、コントローラは、1つまたはそれ以上の遠隔通信インターフェースまたは他の遠隔通信回路を介してコントローラからサービス衛星に送信された信号に基づいて、サービス衛星の様々なオペレーションを制御可能であってもよい。
【0059】
本開示によれば、少なくとも1つのコントローラは、実質的な静止軌道内に相互接続ユニットを維持するように構成されてもよい。本明細書においては、用語”静止軌道”は、地球周りの静止軌道を言う。静止軌道内のホスト衛星は、割り当てスロットを備えてもよい。割り当てスロットは、東西方向(すなわち静止軌道に沿った方向)の第1の所定の距離と、南北方向(すなわち静止軌道に直交する方向)の第2の所定の距離とによって定義されてもよい。相互接続ユニットに作用する重力や太陽力のために、相互接続ユニットは、静止軌道内の位置から移動しうる。サービス衛星、ホスト衛星、またはその両方のスラスターが、割り当てスロット内のホスト衛星を移動させる相互接続ユニットの移動を引き起こす重力や太陽力に対して対抗するように動作してもよい。したがって、本明細書において使用される”実質的な静止軌道”は、静止軌道内の割り当てスロット内および中心とする相互接続ユニットの移動が含まれうる。
【0060】
少なくとも1つのコントローラは、少なくとも2つのスラスターそれぞれを、スラスター点火中において少なくとも2つのスラスターそれぞれの推進ベクトルが重心を避けるような角度方向に選択的に動かすことにより、相互接続ユニットを実質的な静止軌道に維持してもよい。いくつかの例示的な実施の形態において、コントローラは、例えば、スラスターから推進剤を噴出させることにより、スラスターを点火してもよい。上述したように、スラスターから推進剤を噴出することにより、推進剤が噴出された方向と反対方向の反動力をスラスターに発生させてもよい。本明細書においては、用語”推進ベクトル”は、ほとんどの場合、スラスターに作用する反動力の大きさと反動力の方向の組み合わせを言う。スラスターに作用する反動力は、サービス衛星に作用するとともに、サービス衛星がホスト衛星に接続されているときには相互接続ユニットに作用する。スラスターによって発生した反動力により、選択されたスラスターによって発生した推進ベクトルのベクトル和の方向に対応する方向に相互接続ユニットが移動してもよい。
【0061】
サービス衛星は、複数の相互接続ユニットを形成する任意の複数のホスト衛星に接続されてもよい。ホスト衛星にサービス衛星が接続することによって形成されたこのような相互接続ユニットそれぞれは、結合した重心(combined center of mass)を備えてもよい。
【0062】
本開示によれば、コントローラは、少なくとも2つのスラスターを、複数のホスト衛星にサービス衛星が接続することによって形成された複数の相互接続ユニットに対応する任意の結合した重心を少なくとも2つのスラスターの推進ベクトルが通過しないように方向付けされるように構成されうると考えられる。実際には、本開示の様々な実施の形態によれば、少なくとも2つのスラスターの推進ベクトルは、結合した重心からオフセットされうる。本明細書においては、用語”オフセット”は、ほとんどの場合、空間的な離間を言う。したがって、例えば、少なくとも1つのコントローラが、選択されたスラスターを、上述したように複数の相互接続ユニットに対応する結合した重心から選択されたスラスターの推進ベクトルが空間的に離間するように方向付けしうる。本開示は少なくとも2つのスラスターが選択される構成を説明しているが、本発明は、広義には、特定の構成に限定されない。例えば、少なくとも1つのコントローラが、上述の飛行のために、1つ、2つ、または任意の数のスラスターを選択しうることが考えられる。少なくとも1つのコントローラは、1つまたはそれ以上の選択されたスラスターを、上述したように複数の相互接続ユニットに対応する結合した重心を選択されたスラスターによって発生した推進ベクトルが通過しないように方向付けするように構成されてもよい。
【0063】
図4Aおよび図4Bは、相互接続ユニットの結合した重心を推進ベクトルが通過しないような一例のスラスター点火を示している。例えば、図4Aに示すように、少なくとも1つのコントローラ120は、第1のスラスター展開ヨーク66に対して角度変位量θでスラスターアーム90を方向付けしてもよい。いくつかの実施の形態において、角度変位量θは、位置P2を定義してもよい。また、図4Aに示すように、コントローラ120は、第1のスラスター展開ヨーク66に対して角度変位量θでスラスターアーム92を方向付けしてもよい。いくつかの実施の形態において、角度変位量θは、位置P3を定義してもよい。コントローラ120は、スラスター36、38を点火してもよい。点火中のスラスター36によって推進ベクトル122が発生してもよく、点火中のスラスター38によって推進ベクトル124が発生してもよい。図4Aの例示的な実施の形態に示すように、推進ベクトル122、124は、結合した重心126を通過していない。図4Aに示すように推進ベクトルの方向が固定されている場合、サービス衛星10は異なる重心をそれぞれ持つ複数の異なるホスト衛星にドッキングすることができ、どのような場合も、結合した重心は、それでもなお、推進ベクトル122、124の中間に位置する。
【0064】
図4Bは、スラスターアーム90が角度変位量θ(位置P3)で方向付けされるとともにスラスターアーム92が角度変位量θ(位置P2)で方向付けされている、別の例示的な実施の形態を示している。コントローラ120は、スラスター36、38を点火してもよい。点火中のスラスター36によって推進ベクトル132が発生してもよく、点火中のスラスター38によって推進ベクトル134が発生してもよい。図4Bに示すように、スラスターベクトル132、134は、結合した重心126を通過していない。図4Aに示すように推進ベクトルの方向が固定されている場合、サービス衛星10は異なる重心をそれぞれ持つ複数の異なるホスト衛星にドッキングすることができ、どのような場合も、結合した重心は、それでもなお、推進ベクトル132、134の中間に位置する。
【0065】
本開示の実施の形態はさらに、推進ベクトルの交点と相互接続ユニットの結合した重心を通過する平面との間に結合した重心が配置されるように、少なくとも2つのスラスターそれぞれを選択的に動かすように構成されている少なくとも1つのコントローラを含んでもよい。用語”交点”は、推進ベクトルがある平面と交差する位置を言う。本開示に係るいくつかの例示的な実施の形態において、その平面は、ホスト衛星とサービス衛星を含む相互接続ユニットを通過する縦方向の平面であってもよい。サービス衛星の複数のスラスターの点火によって発生した複数の推進ベクトルは、縦方向平面に複数の位置で交差してもよい。本開示の実施の形態に係る少なくとも1つのコントローラは、サービス衛星とホスト衛星の結合した重心が複数のスラスターと縦方向平面の複数の交点の間に存在するように、サービス衛星を方向付けしてもよい。
【0066】
図4Aは、例えば、推進ベクトル122、124が位置128、130で平面62に交差するように、スラスターアーム90、92を角度変位量θ、θで方向づけうる構成を示している。図4Aの例示的な実施の形態に示すように、位置128、130は、結合した重心126からオフセットされてもよい、すなわち空間的に離れていてもよい。さらに図4Aに示すように、結合した重心126は、交差位置128、130の間に存在してもよい。同様に、図4Bの例示的な実施の形態に示すように、推進ベクトル132、134が、サービス衛星10とホスト衛星200を通過する平面62に、結合した重心126からオフセットした(すなわち空間的に離れた)位置136、138で交差するように、スラスターアーム90、92は角度変位量θ、θで方向付けされてもよい。図4Bに示すように、結合した重心126は、交差位置136、138の間に存在してもよい。
【0067】
図1Aおよび図1Bに戻って、いくつかの例示的な実施の形態において、サービス衛星10は、1つまたはそれ以上のソーラーパネル140を含んでもよく、それはサービス衛星10の本体12に取り付けられてもよい。ソーラーパネル140は、サービス衛星10の本体12から外側に向かって展開可能であってもよい。ソーラーパネル140は、本体12(図1B参照)の表面142に対して略垂直に配置されるように構成されてもよい。しかしながら、ソーラーパネル140は、本体12の表面142に対して傾きうることが考えられる。ソーラーパネル140は、サービス衛星10に関連する様々なオペレーションを実行するために使用されうる電力を発生してもよい。例えば、ソーラーパネル140によって発生した電力は、把持機構、スラスター展開機構64(図2A、2B参照)、スラスター36、38、40、42、コントローラ120、および関連する電気回路などを作動させるために使用されてもよく、また、コントローラ120、および他の電気回路や通信回路に供給されてもよい。
【0068】
本開示の実施の形態によれば、少なくとも1つのコントローラはさらに、推進ベクトルによって発生して相互接続ユニットの少なくとも1つの座標軸を中心とするトルクが実質的に平衡を保つように、少なくとも2つのスラスターそれぞれの推進レベルを調節するように構成されてもよい。本明細書においては、用語”推進レベル”は、スラスターによって発生する反動力の大きさを言う。いくつかの例示的な実施の形態において、推進レベルは、スラスターから噴射される所定時間あたりの推進剤量を制御することによって調節されてもよい。他の例示的な実施の形態において、推進レベルは、スラスターから吐出された推進剤の速度によって測定されてもよい。本明細書においては、用語”トルク”は、スラスターによって発生した推進ベクトルのサービス衛星またはホスト衛星に関連する軸を中心とするモーメントを言う。そのモーメントは、その軸と推進ベクトルとの間の垂線長さと推進レベルの積として決定されてもよい。本明細書のおいては、用語”平衡を保つ”は、トルクをなくすことを言う。したがって、例えば、本開示に係る少なくとも1つのコントローラは、少なくとも2つのスラスターの一方によって生じた推進ベクトルによって発生したトルクが、2つのスラスターの他方によって生じた推進ベクトルによって発生したトルクに対して正確に等しく且つ反対方向になるように、その少なくとも2つのスラスターの推進レベルを選択してもよい。発生したトルクの合計である正味のトルクは、実質的にゼロに等しくてもよい。いくつかの例示的な実施の形態において、トルクの平衡は、2つ以上のスラスターに基づいて達成されてもよい。
【0069】
図4Aおよび図4Bは、例えば、トルクが平衡している構成を示している。したがって、図4Aに示す例示的な実施の形態において、コントローラ120は、スラスターアーム90、92を角度変位量θ(位置P2)、θ(位置P3)で方向付けしてもよい。コントローラ120は、推進ベクトル122、124を発生するために、スラスター36、38を点火してもよい。推進ベクトル122、124それぞれは、サービス衛星10のY軸を中心とするトルクを発生させてもよい。推進ベクトル122、124によって発生したトルクの影響によって生じた相互接続ユニット206の回転力が、図4Aに矢印148で示されている。
【0070】
同様に、図4Bに示す例示的な実施の形態において、コントローラ120は、スラスターアーム90、92を角度変位量θ(位置P3)、θ(位置P2)で方向付けしてもよい。コントローラ120は、推進ベクトル132、134を発生するために、スラスター36、38を点火してもよい。推進ベクトル132、134それぞれは、サービス衛星10のY軸を中心とするトルクを発生させてもよい。推進ベクトル132、134によって発生したトルクの影響によって生じた相互接続ユニット206の回転力が、図4Bに矢印152で示されている。コントローラ120は、矢印148(図4A)で示すトルクの大きさと方向が、矢印152(図4B)で示すトルクの大きさと方向に対して正確に等しく且つ反対方向になるように、スラスター36、38のレベルを選択してもよい。別の言い方をすれば、コントローラ120は、矢印148、152で示すトルクのベクトル合計が実質的にゼロになるように、スラスター36、38のレベルを選択してもよい。36,38の推進レベルはゼロであってもよく、またはゼロでなくてもよいと考えられる。
【0071】
図5A、5B、および5Cは、2つの軸についてトルクが平衡に保たれている例示的な構成を示している。図5Aは、Z軸が図5Aの平面に対して略直交する状態の相互接続ユニット206を示している。いくつかの例示的な実施の形態において、図5Aに示すように、本図のZ軸は、相互接続ユニット206を形成するサービス衛星10とホスト衛星200の両方の中心線に沿った縦軸であってもよい。スラスター36、38は、図4Aに示すものと同様に、位置P2、P3で方向付けされてもよい。コントローラ120は、図5Aにおいて2つの反対方向の矢印69で示して推進ベクトル122、124によってZ軸中心に発生したトルクが互いに実質的に相殺しうるように、スラスター36、38の推進レベルを選択してもよい。
【0072】
同様に、図5Bは、Y軸が図5Bの平面に対して略直交する状態の相互接続ユニット206を示している。Y軸は、Z軸に対して略直交してもよい。スラスター36、38が位置P2、P3で方向付けされる場合(図4A参照)、推進ベクトル122、124は、Y軸中心のトルクを発生してもよい。これらのトルクは、図5Bにおいて矢印で示され、図4Aに示す矢印148と同様であってもよい。後述するが、これらのトルクは、リアクションホイールに蓄えられる角運動量を発生させてもよい。スラスター36が位置P3にあってスラスター38が位置P2にあるように(図4B参照)スラスター36、38の位置をスイッチした場合、図4Bに示すように、推進ベクトル132、134によって発生するトルクは、リアクションホイールをアンロードし、リアクションホイールに蓄積された角運動量を消耗し、それにより、実質的にY軸中心に発生する正味のトルクを平衡に保ってもよい。
【0073】
図5Cは、X軸が図5Cの平面に対して略直交する状態の相互接続ユニット206を示している。X軸は、Y軸およびZ軸に対して略直交してもよい。スラスター36、38は位置P2、P3で方向付けされてもよい(図4A参照)。コントローラ120は、図5Cにおいて2つの反対方向の矢印71で示して推進ベクトル122、124によってX軸中心に発生したトルクが互いに実質的に相殺しうるように、スラスター36、38の推進レベルを選択してもよい。
【0074】
本開示の実施の形態によれば、コントローラは、第1のスラスターが第1の角度方向に方向付けされている場合、少なくとも2つのスラスターを第1の推進レベルで点火するように構成されてもよい。コントローラは、第1のスラスターが第2の角度方向に方向付けされている場合、少なくとも2つのスラスターを、第1の推進レベルと異なる第2の推進レベルで点火するように構成されてもよい。いくつかの例示的な実施の形態において、コントローラは、スラスターの推進レベルを、これらの位置および/または方向に基づいて選択してもよい。例えば、コントローラは、位置P2では第1の推進レベルTH1でスラスターを点火し、位置P3では第2の推進レベルTH2でスラスターを点火してもよい。他の例示的な実施の形態において、コントローラは、少なくとも2つのスラスターの中の第1のスラスターが位置P2または位置P3の一方で方向付けされている場合、少なくとも2つのスラスターの両方を第1の推進レベルTH1で点火してもよい。コントローラは、少なくとも2つのスラスターの中の第1のスラスターが位置P2または位置P3の他方で方向付けされている場合、少なくとも2つのスラスターの両方を第1の推進レベルTH1で点火してもよい。推進レベルTH1、TH2は等しくてもよく、また等しくなくてもよいと考えられる。
【0075】
図4Aおよび図4Bは、コントローラ120がスラスター36、38、40、42を異なる推進レベルで点火するように構成されうる例示的な実施の形態を示している。図4Aの例示的な実施の形態において、コントローラ120は、スラスターアーム90、92を、角度変位量θ(位置P2)、θ(位置P3)で方向付けしてもよい。コントローラ120は、推進ベクトル122、124を発生させるために、スラスター36、38を推進レベルTH1で点火してもよい。コントローラ120は、スラスター36が位置P2で方向付けされている場合、スラスター36、38の両方を推進レベルTH1で点火してもよい。図4Bの例示的な実施の形態において、コントローラ120は、スラスターアーム90、92を、角度変位量θ(位置P3)、θ(位置P2)で方向付けしてもよい。コントローラ120は、推進ベクトル132、134を発生させるために、スラスター36、38を推進レベルTH2で点火してもよい。コントローラ120は、スラスター36が位置P2で方向付けされている場合、スラスター36、38の両方を推進レベルTH2で点火してもよい。
【0076】
本開示のいくつかの実施の形態によれば、コントローラは、第2の推進レベルを決定するように構成されてもよい。コントローラは、第1のスラスターが第1の角度方向に方向付けされているときに少なくとも2つのスラスターを第1の推進レベルで点火することにより、それを行うように構成されてもよい。コントローラは、相互接続ユニットの少なくとも1つの軸中心の角運動量を決定するように構成されてもよい。さらに、コントローラは、第1のスラスターが第2の角度方向に方向付けされて角運動量が実質的にゼロに減少したとき、点火される必要がある少なくとも2つのスラスターの第2の推進レベルを決定するように構成されてもよい。本明細書においては、用語”角運動量”は、回転軸を中心とする対象の回転慣性と回転速度との積を言う。コントローラは、様々な方法で角運動量を決定してもよい。いくつかの例示的な実施の形態において、コントローラは、サービス衛星またはホスト衛星に配置されたセンサーに基づいて、相互接続ユニットの回転速度または角速度を決定してもよい。コントローラは、サービス衛星とホスト衛星の質量分布に基づいて、相互接続ユニットの回転慣性を決定してもよい。コントローラは、決定された回転速度と回転慣性に基づいて相互接続ユニットの回転慣性を決定してもよい。他の例示的な実施の形態において、角運動量は、角運動量センサを用いた測定によって決定されてもよい。別の他の例示的な実施の形態において、角運動量は、サービス衛星またはホスト衛星に関連するリアクションホイールの回転速度の変化に基づいて決定されてもよい。
【0077】
図4Aおよび図4Bは、コントローラが角運動量に基づいて推進レベルを決定するように構成されている例示的な実施の形態を示している。図4Aの例示的な実施の形態において、コントローラ120は、スラスターアーム90、92を角度変位量θ(位置P2)、θ(位置P3)で方向付けしてもよい。コントローラ120は、推進ベクトル122、124を発生させるために、スラスター36、38を推進レベルTH1で点火してもよい。コントローラ120は、スラスターアーム90が角度変位量θ2(位置P2)で方向付けされている場合、スラスター36、38の両方を推進レベルTH1で点火してもよい。コントローラ120は、サービス衛星の少なくとも1つの軸を中心とする、サービス衛星10とホスト衛星200を含む相互接続ユニット206の角運動量AM1を決定してもよい。したがって、例えば、コントローラ120は、図5Bに示すようにY軸中心に発生する角運動量AM1を決定してもよい。コントローラ120は、サービス衛星10とホスト衛星200の質量分布と、Y軸中心のサービス衛星10とホスト衛星200の角速度と、サービス衛星10とホスト衛星200の様々な部分とY軸との間の距離とに基づいて角運動量AM1を決定してもよい。いくつかの例示的な実施の形態において、コントローラ120は、サービス衛星10の1つまたはそれ以上の角運動量センサを用いることにより、および/またはサービス衛星10に配置された1つまたはそれ以上のモーメンタムホイールを用いることにより、角運動量AM1を決定してもよい。
【0078】
図4Bの例示的な実施の形態において、コントローラ120は、スラスターアーム90、92を角度変位量θ(位置P3)、θ(位置P2)で方向付けしてもよい。コントローラ120は、例えばY軸中心に(図5Bに示すように)発生する角運動量AM2が図4Aの実施の形態に対する上述の角運動量AM1に対して正確に等しく且つ反対方向になるように、コントローラ120が点火する必要があるスラスター36、38の推進レベルTH2を決定してもよい。コントローラ120は、スラスターアーム90が角度変位量θ(位置P3)で方向付けされてトータルの角運動量AM1+AM2が約ゼロである場合、スラスター36、38の両方を推進レベルTH2で点火してもよい。
【0079】
本開示の実施の形態によれば、少なくとも1つのコントローラは、第1の期間中、少なくとも2つのスラスターの中の第1のスラスターを第1の角度方向に位置決めするとともにその第1のスラスターを点火するように構成されてもよい。少なくとも1つのコントローラはまた、第1の期間中、少なくとも2つのスラスターの中の第2のスラスターを、第1の角度方向と異なる第2の角度方向に位置決めするとともにその第2のスラスターを点火するように構成されてもよい。コントローラは様々な異なる方法でスラスターを位置決めしてもよく、本発明は、広義には、特定の方法に限定されない。ある意味では、例えば、コントローラは、両方のスラスターをそれぞれの位置に、同時にまたは順番に位置決めしてもよい。コントローラはまた、両方のスラスターを同時にまたは順番に点火してもよい。いくつかの例示的な実施の形態において、コントローラは、第1のスラスターを第1の位置に位置決めし、第1の期間に比べて短い第1の点火期間第1のスラスターを点火してもよい。第1のスラスターを第1の点火期間点火した後、コントローラは、第2のスラスターを第2の位置に位置決めし、第2の点火期間第2のスラスターを点火してもよい。他の例示的な実施の形態において、コントローラは、第1および第2のスラスターの両方をそれぞれの第1および第2の位置に位置決めしてもよい。両方のスラスターが位置決めされた後、コントローラは、第1および第2のスラスターの両方を同時に、それぞれの第1および第2の点火期間点火してもよい。
【0080】
図4Aは、コントローラが2つのスラスターを位置決めし、それらを第1の期間T中点火する例示的な実施の形態を示している。図4Aの例示的な実施の形態において、コントローラ120は、スラスターアーム90を角度変位量θ(位置P2)で方向付けしてもよい。コントローラ120は、第1の期間Tに比べて短い点火期間Δt、スラスター36を点火してもよい。期間Δtが経過した後、コントローラ120は、スラスター92を角度変位量θ(位置P3)で方向付けしてもよい。コントローラ120は、第1の期間Tに比べて短い点火期間Δt、スラスター38を点火してもよい。コントローラ120は、トータルの期間Δt+Δtが第1の期間Tに比べて短くなるように、Δt、Δtを選択してもよい。代わりとして、コントローラ120は、スラスターアーム90、92両方の角度変位量θ(位置P2)、θ(位置P3)での方向付けを同時に行ってもよい。スラスターアーム90、92を方向付けした後、コントローラ120は、点火期間Δt、Δtそれぞれが第1の期間Tに比べて短くなるように、同時にまたは順番にスラスター36、38を点火期間Δt、Δt点火してもよい。点火期間Δt、Δtは、等しくてもよく、また異なってもよい。
【0081】
本開示の実施の形態によれば、少なくとも1つのコントローラは、第1の期間に続く第2の期間中、第2の角度方向に向くように第1のスラスターを動かし、その第1のスラスターを点火するように構成されてもよい。少なくとも1つのコントローラはまた、第2の期間中、第1の角度方向に向くように第2のスラスターを動かし、その第2のスラスターを点火するように構成されてもよい。本開示のいくつかの実施の形態において、コントローラは、第1の期間の後、第1および第2のスラスターの位置をスイッチするように構成されてもよい。したがって、例えば、コントローラは、第2の期間中、第1のスラスターを第2の位置に位置決めするとともに第2のスラスターを第1の位置に位置決めするように構成されてもよい。コントローラは、両方のスラスターをそれぞれの位置に同時にまたは順番に位置決めしてもよい。コントローラはまた、両方のスラスターを同時にまたは順番に点火してもよい。いくつかの例示的な実施の形態において、コントローラは、第1のスラスターを第2の位置に位置決めし、その第1のスラスターを第2の点火期間点火してもよい。第2の点火期間第1のスラスターを点火した後、コントローラは、第2のスラスターを第1の位置に位置決めし、その第2のスラスターを第1の点火期間点火してもよい。他の例示的な実施の形態において、コントローラは、第1のスラスターを第2の位置に位置決めするとともに、第2のスラスターを第1の位置に位置決めしてもよい。両方のスラスターを位置決めした後、コントローラは、第1のスラスターを第2の点火期間点火するとともに、第2のスラスターを第1の点火期間点火してもよい。
【0082】
図4Bは、コントローラが2つのスラスターを再位置決めし、それらを第2の期間T中点火するように構成されている例示的な実施の形態を示している。図4Bの例示的な実施の形態において、第1の期間Tが経過した後、コントローラ120は、スラスターアーム90を角度変位量θ3(位置P3)で方向付けしてもよい。コントローラ120は、第2の期間Tに比べて短い点火期間Δt、スラスター36を点火してもよい。点火期間Δtが経過した後、コントローラ120は、スラスターアーム92を角度変位量θ(位置P2)で方向付けしてもよい。コントローラ120は、第2の期間Tに比べて短い点火期間Δt、スラスター38を点火してもよい。コントローラ120は、トータルの点火期間Δt+Δtが第2の期間T2に比べて短くなるように、Δt、Δtを選択してもよい。代わりとして、コントローラ120は、スラスターアーム90、92両方の角度変位量θ(位置P3)、θ(位置P2)での方向付けを同時に行ってもよい。スラスターアーム90、92を方向付けした後、コントローラ120は、点火期間Δt、Δtそれぞれが第2の期間Tに比べて短くなるように、同時にまたは順番にスラスター36、38を点火期間Δt、Δt点火してもよい。点火期間Δt、Δtは、等しくてもよく、また異なってもよい。点火期間Δt、Δtはまた、点火期間Δt、Δtのいずれかと等しくてもよく、異なっていてもよい。
【0083】
本開示によれば、少なくとも1つのコントローラはさらに、第1のペアのスラスターと第2のペアのスラスターの一方を第1の角度方向に向けるように構成されてもよい。本開示のいくつかの例示的な実施の形態において、サービス衛星は、1ペア以上のスラスターを備えてもよい。これらの例示的な実施の形態において、コントローラは、ペア内のスラスター両方が同一方向になるように、1ペアのスラスターを動かすように構成されてもよい。コントローラは、第1のペア内の2つのスラスターを、2つのスラスターに関連するスラスター展開機構の位置を調節することによって方向付けしてもよい。
【0084】
本開示に係る少なくとも1つのコントローラはまた、第1のペアのスラスターと第2のペアのスラスターの他方を、第1の角度方向と異なる第2の角度方向に向けるように構成されてもよい。いくつかの例示的な実施の形態において、コントローラは、第1のペアと異なる第2のペアのスラスターを選択してもよい。コントローラは、第2のペア内のスラスター両方が同一方向になるように、第2のペアのスラスターを動かすように構成されてもよい。コントローラは、第2のペアのスラスター内の2つのスラスターを、第2のペアのスラスター内の2つのスラスターに関連するスラスター展開機構の位置を調節することによって方向付けしてもよい。
【0085】
本開示によれば、コントローラは、第1のペアのスラスターと第2のペアのスラスターの推進ベクトルが結合した重心を通過せずにその結合した重心からオフセットするように、第1および第2の角度方向を選択するように構成されてもよい。これは、例えば、第1および第2のペアのスラスターが点火しているときに、第1および第2のペアのスラスターの両方によって発生した推進ベクトルがサービス衛星とホスト衛星の結合した重心を通過しないように、少なくとも1つのコントローラが、第1および第2のペアのスラスターに関連するスラスター展開機構の1つまたはそれ以上の構成要素の位置を調節することによって実現されてもよい。いくつかの例示的な実施の形態において、コントローラは、第1および第2のペアのスラスターから発生した推進ベクトルがサービス衛星とホスト衛星の結合した重心から空間的に離れる(すなわちオフセットする)ように、第1のペアのスラスターと第2のペアのスラスターの方向を選択してもよい。他の例示的な実施の形態において、コントローラは、第1および第2のペアのスラスターから発生した推進ベクトルがサービス衛星と異なる重心をそれぞれ持つ複数のホスト衛星とが接続することによって生じた複数の結合した重心のいずれかを通過しないように、第1のペアのスラスターと第2のペアのスラスターの方向を選択してもよい。
【0086】
図6Aおよび図6Bは、コントローラが第1および第2のペアのスラスターを異なる方向に方向付けするように構成されている例示的な実施の形態を示している。例えば、図6Aに示すように、少なくとも1つのコントローラ120は、第1のペアのスラスター50を第1の方向に方向付けしてもよい。コントローラ120は、第1のスラスター展開ヨーク66に対して角度変位量θでスラスターアーム90を方向付けしてもよい。角度変位量θは、スラスター36に対して位置P4を定義してもよい。コントローラ120はまた、第1のスラスター展開ヨーク66に対して角度変位量θでスラスターアーム92を方向付けしてもよい。したがって、例えば、両方のスラスター36、38は、スラスターアーム90、92が角度変位量θで方向付けされている場合、位置P4に存在しうる。コントローラ120は、スラスター36、38を点火してもよい。スラスター36、38の点火により、推進ベクトル160、162が発生してもよい。図6Aに示すように、推進ベクトル160、162は、相互接続ユニット206の結合した重心126を通過しなくてもよい。図6Aに示すいくつかの例示的な実施の形態において、推進ベクトル160、162は、結合した重心126からオフセットした(すなわち間隔をあけて離れている)交点164で互いに交差してもよい。図6Aに示すように推進ベクトルの方向が固定されている場合、サービス衛星10は異なる重心をそれぞれ持つ複数の異なるホスト衛星にドッキングすることが可能であり、交点164は、どの場合も結合した重心の正確な位置にかかわらず、すべてが直列に接続したときの結合した重心から空間的に離れる。
【0087】
図6Bに示すように、少なくとも1つのコントローラ120は、第2のペアのスラスター52を第2の方向に方向付けしてもよい。例えば、コントローラ120は、第2のスラスター展開ヨーク68に対して角度変位量θでスラスターアーム94を方向付けしてもよい。角度変位量θは、スラスター40に対して位置P5を定義してもよい。コントローラ120はまた、第2のスラスター展開ヨーク68に対して角度変位量θでスラスターアーム96を方向付けしてもよい。したがって。例えば、スラスター40、42は、スラスターアーム94、96が角度変位量θで方向付けされている場合、位置P5に存在しうる。コントローラ120は、スラスター40、42を点火してもよい。スラスター36、38の点火により、推進ベクトル166、168が発生してもよい。図6Bに示すように、推進ベクトル166、168は、相互接続ユニット206の結合した重心126を通過しなくてもよい。図6Bに示すいくつかの例示的な実施の形態において、推進ベクトル166、168は、互いに略平行であってもよく、結合した重心126から間隔をあけて離れていてもよい。ホスト衛星の特定の重心にかかわらず、推進ベクトル166、168が、直列に接続したときの結合重心の位置にかかわらず、結合した重心から間隔をあけて離れるようなスラスターの万能な方向が存在すると考えられる。
【0088】
本開示の実施の形態によれば、少なくとも1つのコントローラは、第1の角度方向に配置されたスラスターを第1の推進レベルで点火するように構成されてもよい。少なくとも1つのコントローラはまた、第2の角度方向に配置されたスラスターを、推進ベクトルによって発生した相互接続ユニットの少なくとも1つの軸中心のトルクが実質的に平衡を保つように、第1の推進レベルと異なる第2の推進レベルで点火してもよい。本開示に係るいくつかの例示的な実施の形態において、少なくとも1つのコントローラは、第1のペアのスラスターと第2のペアのスラスターの推進レベルを選択してもよい。コントローラは、第1のペアのスラスターの推進ベクトルによって発生したサービス衛星の軸中心のトルクが第2のペアのスラスターの2つのスラスターの推進ベクトルによって発生したトルクに対して正確に等しく且つ反対方向になるように、推進レベルを選択してもよい。
【0089】
図6Aおよび図6Bは、例えば、コントローラ120がトルクの平衡を保ちうる構成を示している。したがって、図6Aの例示的な実施の形態において、コントローラ120は、スラスターアーム90、92の両方を、同一の角度変位量θ(位置P4)で方向付けしてもよい。コントローラ120は、推進ベクトル160、162を発生させるために、スラスター36、38を点火してもよい。推進ベクトル160,162は、例えば、平面62(図4B参照)に対して略垂直に配置されているX軸を中心とするトルクを発生させてもよい。発生したトルクの結果として相互接続ユニット206に作用する回転力は、矢印170で示されている。
【0090】
同様に、図6Bに示す例示的な実施の形態において、コントローラ120は、スラスターアーム94、96の両方を、同一の角度変位量θ(位置P5)で方向付けしてもよい。コントローラ120は、推進ベクトル168、170を発生させるために、スラスター40、42を点火してもよい。推進ベクトル168、170は、例えばX軸を中心とするトルクを発生させてもよい。発生したトルクの結果として相互接続ユニット206に作用する回転力は、矢印172で示されている。コントローラ120は、矢印170に示すトルクが矢印172に示すトルクに対して正確に等しく且つ反対方向になるようにスラスター36、38、40、および42の推進レベルを選択し、それによりX軸中心の正味のトルクについて平衡を保つ、すなわちゼロにしてもよい。スラスター36、38、40、および42の推進レベルは、等しくてもよく、また異なってもよいと考えられる。
【0091】
本開示に係るいくつかの例示的な実施の形態において、少なくとも1つのコントローラは、第1のペアのスラスターを、第1の期間、同時に点火するように構成されてもよい。少なくとも1つのコントローラはまた、第2のペアのスラスターを、第2の期間、同時に点火するように構成されてもよい。本明細書においては、用語”同時に”は、第1または第2のペアのスラスターに含まれている2つのスラスターが、約同一の時刻で約同一の期間、点火されていることを指している。用語”同時に”は、第1または第2のペアのスラスターに含まれる2つのスラスターのそれぞれの点火開始時刻の差または点火終了時刻の差が短い時間差(例えば、0.5秒のオーダー)でありうる実施の形態をカバーしている。用語”同時に”はまた、複数のスラスターが同一の期間に点火されている間においてその期間内に点火のオーバーラップが存在しないように、スラスターの点火中に、スラスターそれぞれがパルス駆動され、個々のスラスターが点火を断続的に行う場合もカバーしている。少なくとも1つのコントローラは、第1および第2のペアのスラスターによって発生したサービス衛星の少なくとも1つの軸中心のトルクがゼロになるように、第1および第2の期間と第1および第2のペアのスラスターの推進レベルとを選択してもよい。第1の期間と第2の期間は、等しくてもよく、異なっていてもよい。
【0092】
図6Aおよび図6Bは、例えば、コントローラ120が第1または第2のペアのスラスターを同時に点火する構成を示している。例えば、図6Aに示すようにスラスター36、38が位置P4で方向付けされている場合、コントローラ120は、第1の期間T、スラスター36、38を同時に点火してもよい。同様に、図6Bに示すようにスラスター40、42が例えば位置P5で方向付けされている場合、コントローラ120は、第2の期間T、スラスター40、42を同時に点火してもよい。期間T、Tは、等しくてもよく、異なっていてもよい。
【0093】
本開示の実施の形態によれば、コントローラはさらに、第3の期間の後、第1のペアのスラスターを第2の角度方向にするために動かすとともに第2のペアのスラスターを第1の角度方向にするために動かすように構成されてもよい。コントローラはまた、第1のペアのスラスターと第2のペアのスラスターを動かした後、第1の期間、第2のペアのスラスターを同時に点火するように構成されてもよい。いくつかの例示的な実施の形態において、コントローラは、第1の期間と第2の期間の経過後に、第3の期間を評価し(evaluating)始めてもよい。これらの実施の形態において、第3の期間は、ゼロであってもよいし、ゼロでなくてもよい。他の例示的な実施の形態において、コントローラは、第1のペアのスラスターが点火し始めたときから第3の期間を評価し始めてもよい。これらの実施の形態において、第3の期間は、第1の期間と第2の期間の少なくとも合計に略等しいまたはそれ以上であってもよい。
【0094】
非限定的な例として、図7Aおよび図7Bは、第3の期間Tの後、第1および第2のペアのスラスターの位置を示している。図7Aの例示的な実施の形態において、コントローラ120は、スラスターアーム90、92の両方を、同一の角度変位量θ(位置P5)で方向付けしてもよい。コントローラ120は、第1の期間T、スラスター36、38を点火してもよい。図7Bの例示的な実施の形態に示すように、コントローラは、スラスターアーム94、96の両方を同一の角度変位量θ(位置P4)で方向付けしてもよい。コントローラ120は、第2の期間T、スラスター40、42を点火してもよい。
【0095】
本開示のいくつかの実施の形態によれば、少なくとも1つのコントローラは、第1の期間、第1の角度方向に向けられたスラスターを所定の推進レベルで点火するように構成されてもよい。コントローラはまた、第1の期間と異なる第2の期間、第2の角度方向に向けられたスラスターを所定の推進レベルで点火し、それにより、推進ベクトルによって発生した相互接続ユニットの少なくとも1つの軸中心のトルクの平衡を同時にとるように構成されてもよい。いくつかの例示的な実施の形態において、第1および第2の期間は等しくてもよい。他の例示的な実施の形態において、第1および第2の期間は異なっていてもよい。いくつかの例示的な実施の形態においては、コントローラが第1および第2のペアのスラスターを同時に点火しうることも考えられる。
【0096】
非限定的な例として、図6Aおよび図6Bは、第1および第2のペアのスラスターの構成を示している。図6Aの例示的な実施の形態に示すように、コントローラ120は、スラスターアーム90、92の両方を、同一の角度変位量θ(位置P4)で方向付けしてもよい。コントローラ120は、第1の期間T、スラスター36、38を所定の推進レベルTHPREで点火してもよい。図6Bの例示的な実施の形態に示すように、コントローラ120は、スラスターアーム94、96の両方を、同一の角度変位量θ(位置P5)で方向付けしてもよい。コントローラ120は、第2の期間T、スラスター40、42を所定の推進レベルTHPREで点火してもよい。
【0097】
本開示のいくつかの実施の形態によれば、コントローラは、第2の期間を決定するように構成されてもよい。コントローラは、第1の期間、第1の角度方向に向いているスラスターを所定の推進レベルで点火することにより、それを実行するように構成されてもよい。コントローラはまた、相互接続された衛星の少なくとも1つの軸中心の角運動量を決定するように構成されてもよい。さらに、コントローラは、第2の角度方向に向けられたスラスターが角運動量を実質的にゼロまで減少させるために点火される第2の期間を決定するように構成されてもよい。
【0098】
図6Aおよび図6Bに示す非限定的な例として、コントローラ120は、スラスターアーム90、92の両方を、同一の角度変位量θ(位置P4)で方向付けしてもよい。コントローラ120は、第1の期間T1、スラスター36、38を所定の推進レベルTHPREで点火してもよい。コントローラ120は、例えば相互接続ユニット206(図5C参照)のX軸中心に発生する角運動量AM1を決定してもよい。コントローラ120は、推進ベクトル168、170によって発生したX軸中心の角運動量AM2が角運動量AM1に対して正確に等しく且つ反対の符号になるように、スラスター40、42が所定の推進レベルTHPREで点火する第2の期間Tを決定してもよい。言い換えると、コントローラ120は、正味の角運動量AM1+AM2が実質的にゼロになるように、期間Tを決定してもよい。
【0099】
本開示のいくつかの例示的な実施の形態において、第1の期間はサービス衛星のリアクションホイールがフルロードする時間であり、第2の期間はリアクションホイールが完全にアンロードする時間である。本開示のいくつかの態様は、サービス衛星に搭載された1つまたはそれ以上のリアクションホイールを含んでもよい。本明細書においては、用語”リアクションホイール”は、角運動量を蓄積することができるデバイスを指す。いくつかの例示的な実施の形態において、リアクションホイールは、回転軸を中心にして回転することができるフライホイールを含んでもよい。リアクションホイールは、フライホイールの回転速度の増加が起こることによって角運動量が蓄積されてもよい。リアクションホイールは、所定の最小回転速度と所定の最大回転速度を備えてもよく、所定の最大回転速度に達するとフルロードされたとみなしてもよい。
【0100】
非限定的な例として、図6Aに示すように、コントローラ120は、スラスターアーム90、92の両方を、同一の角度変位量θ(位置P4)で方向付けしてもよい。コントローラ120は、サービス衛星10内のリアクションホイールがフルロードされるまで(すなわち所定の最大回転速度に達するまで)、スラスター36、38を所定の推進レベルTHPREで点火してもよい。リアクションホイールがフルロードになるために必要な時間は、第1の期間Tであってもよい。リアクションホイールがフルロードした後、コントローラ120は、スラスター36、38の点火をストップし、その代わりにスラスター40、42(図6B参照)の点火を開始してもよい。コントローラ120は、リアクションホイールが完全にアンロードするまで(すなわち所定の最小回転速度に達するまで)、スラスター40、42を点火し続けてもよい。リアクションホイールが完全にアンロードされるために必要な時間は、第2の期間Tであってもよい。
【0101】
本開示のいくつかの例示的な実施の形態によれば、コントローラは、第1のペアのスラスターと第2のペアのスラスターを順番に点火するように構成されてもよい。図6Aおよび図6Bに示す非限定的な例として、スラスターアーム90、92、94、および96を方向付けした後、コントローラ120は、第1の期間Tのスラスター36、38の点火を開始してもよい。第1の期間の経過後、コントローラ120は、第2の期間Tのスラスター40、42の点火を開始してもよい。したがって、コントローラ120は、第1のペアのスラスター36、38の点火の後に続いて、第2のペアのスラスター40、42を点火してもよい。
【0102】
本開示の実施の形態によれば、第2の期間の後の第3の期間において、コントローラは、第1のペアのスラスターを第2の角度方向にし、第2のペアのスラスターを第1の角度方向にしてもよい。コントローラはまた、第1のペアのスラスターと第2のペアのスラスターを動かした後に、第1のペアのスラスターと第2のペアのスラスターを順番に点火するように構成されてもよい。スラスター36,38を第1の期間T点火した後、およびスラスター40、42を第2の期間T点火した後、コントローラ120は、第3の期間Tの間に、スラスター36、38、40、および42の位置をスイッチするように構成されてもよい。したがって、例えば、コントローラ120は、スラスターアーム90、92が角度変位量θ(位置5)で方向付けされるように(図7Aに示すように)、スラスターアーム90、92の方向を角度変位量θ(位置P4)(図6Aに示すように)から変更してもよい。同様に、コントローラ120は、第3の期間Tの間、スラスターアーム94、96の方向を、同一の角度変位量θ(位置P5)(図6Aに示すように)から角度変位量θ(位置P4)(図7Aに示すように)に変更してもよい。コントローラ120は、スラスターアーム90、92、94、および96の方向を同時にまたは任意の順番で変更してもよい。スラスターアーム90、92、94、および96の再方向付けの後、コントローラ120は、第1の期間T、スラスター36、38またはスラスター40、42のいずれか一方を、所定の推進レベルTHPREで点火してもよい。期間Tが経過した後、コントローラ120は、スラスター36、38またはスラスター40、42の他方を、第2の期間T、所定の推進レベルTHPREで点火してもよい。
【0103】
本開示はまた、ホスト衛星に対してステーションキーピングサービスを提供する方法に関する。上述したように、ステーションキーピングは、静止軌道上の割り当て位置にホスト衛星を維持するために必要な補整変位の提供に関連する飛行を含んでいてもよい。いくつかの例示的な実施の形態において、方法は、宇宙にサービス衛星を打ち上げることと、それをホスト衛星のドッキング距離範囲に飛行させることを含んでいてもよい。用語”打ち上げ”は、ほとんどの場合、サービス衛星を宇宙の軌道内に移動させることを言う。本開示のいくつかの態様によれば、サービス衛星は、地球から宇宙に移動する打ち上げ機または打ち上げロケットに搭載されて宇宙に打ち上げられてもよい。打ち上げ機または打ち上げロケットは、宇宙の所定の軌道にサービス衛星をリリースしてもよい。本開示の他の態様によれば、サービス衛星は、再利用可能な打ち上げ機、例えばスペースシャトルに搭載されて宇宙に搬送されてもよい。衛星は、スペースシャトルによって所定の軌道内にそのスペースシャトルからリリースされてもよい。サービス衛星は、他の衛星や他のペイロードとともに共通の打ち上げ機に搭載されて宇宙に打ち上げ可能なマイクロ衛星であってもよい。
【0104】
本開示のいくつかの例示的な実施の形態によれば、ホスト衛星にステーションキーピングサービスを提供する方法は、サービス衛星の少なくとも2つのアームがホスト衛星の外部インターフェースリングに係合することにより、サービス衛星とホスト衛星とが接続されて相互接続ユニットを形成することを含んでもよい。相互接続ユニットは、結合した重心を備えてもよい。いくつかの例示的な実施の形態において、方法はまた、少なくとも2つのスラスターから発生した推進ベクトルが結合した重心を通過せずにその結合した重心からオフセットするように、ステーションキーピング中の飛行において、点火のためにサービス衛星の少なくとも2つのスラスターそれぞれを選択的に動かすことも含んでいてもよい。
【0105】
図8は、ホスト衛星200にステーションキーピングサービスを提供する一例の方法800を示している。方法800におけるステップの順番および構成は、図示するためのものである。本開示から分かるように、例えば、方法800のステップの追加、組み合わせ、除去、および/または再配置することによって方法800を変更してもよい。方法800のいくつかのステップは、サービス衛星10のコントローラ120によって実行されるものとして説明されている。しかしながら、これらのステップが、地上コントロールステーションまたは別の宇宙機に設けられているコントローラによって付加的にまたは代わりとして実行されうることも考えられる。また、いくつかの例示的な実施の形態においては、サービス衛星10のコントローラ120が、地上コントロールステーションまたは他の宇宙機に設けられたコントローラから送信されてコントローラ120によって受信された指示に基づいて、開示されたステップを実行しうることも考えられる。
【0106】
方法800は、サービス衛星10の打ち上げのステップを含んでもよい(ステップ802)。サービス衛星10の打ち上げには、打ち上げ機のペイロードベイにサービス衛星10を積み込むことが含まれてもよい。打ち上げ機は、ミサイル、ロケット、再利用可能な宇宙機、スペースシャトル、地球から軌道にサービス衛星を運搬するように構成された他のコンジットなどである。したがって、サービス衛星10の打ち上げにはさらに、地球表面から宇宙に打ち上げ機を移動させることが含まれうる。サービス衛星10の打ち上げはまた、宇宙の所定の軌道にサービス衛星10をリリースすることを含んでもよい。いくつかの例示的な実施の形態において、サービス衛星10は静止軌道と異なる軌道にリリースされてもよい。
【0107】
方法800は、ホスト衛星200のドッキング距離範囲に向かってサービス衛星10を飛行させるステップを含んでもよい(ステップ804)。サービス衛星10の飛行には、例えば、スラスターアーム90、92、94、および96の少なくとも2つを、対応するスラスター展開ヨーク66、68の平面に対して角度変位量θ(位置P1)で方向付けすることが含まれてもよい。図1Bは、スラスター36、40の位置P1を示している。サービス衛星10の飛行はさらに、例えば、位置P1で方向付けされたスラスター36、38、40、42の2つ以上を点火し、サービス衛星を静止軌道から所定の距離範囲に移動させることを含んでもよい。いくつかの例示的な実施の形態において、サービス衛星10の軌道は、約42,166kmの高度であってもよい。
【0108】
方法800は、ホスト衛星200にサービス衛星10を接続するステップを含んでもよい(ステップ806)。このような接続を行う方法はいくつも存在し、方法は、広義には、特定の構成に限定されない。一例として、サービス衛星10の接続は、サービス衛星10の1つまたはそれ以上のドッキングアーム16を展開することを含んでもよい。サービス衛星10のコントローラ120は、1つまたはそれ以上のドッキングアームのリング係合部24がホスト衛星200のインターフェースリング202を受け取る位置に位置決めされるように、ドッキングアーム16を調節してもよい。コントローラ120は、リング係合部34がリングインターフェースリング202の1つまたはそれ以上の箇所で該インターフェースリング202に係合できるように、ドッキングアーム16の位置を調整してもよい。インターフェースリング202との係合において、相互接続ユニット206を形成するために、ホスト衛星200とのドッキングをサービス衛星10に許可してもよい。
【0109】
方法800は、サービス衛星の少なくとも2つのスラスターを選択的に動かすステップを含んでもよい(ステップ808)。スラスターを動かす方法はいくつも存在し、方法は、広義には、特定の構成や制御ロジックに限定されない。一例として、サービス衛星10のコントローラ120は、スラスターアーム90、92、94、および96の2つ以上を、角度変位量θ(位置P2)、θ(位置P3)、θ(位置P4)、またはθ(位置P5)の1つで動かしてもよい。コントローラ120は、スラスター36、36、40、42の1つ以上が点火された場合に、推進ベクトル122、124、132、134、160、162、166、または168の1つ以上が結合した重心を通過しないように、位置P2、P3、P4、またはP5を選択してもよい。
【0110】
方法800は、スラスター36、38、40、42の1つ以上を点火するステップを含んでもよい(ステップ810)。例えば、コントローラ120は、期間T、T、Tなどの1つ以上の期間でスラスター36、38、40、42の1つ以上を点火し、それによりホスト衛星200が割り当てられた静止スロットに留まれるように支援してもよい。当然ながら、スラスター点火のパターンやタイミングはいくつか存在し、方法は、広義には、特定の1つに限定されない。
【0111】
本開示のいくつかの例示的な実施の形態によれば、ホスト衛星に対してステーションキーピングサービスを提供する方法におけるスラスターを選択的に動かすステップは、以下のステップを含んでもよい。方法は、少なくとも2つのスラスターの中の第1のスラスターを第1の角度方向に向け、第1の期間中に第1のスラスターを点火することを含んでもよい。方法はまた、少なくとも2つのスラスターの中の第2のスラスターを、第1の角動方向と異なる第2の角度方向に向け、第1の期間中、第2のスラスターを点火することを含んでもよい。さらに、方法は、第2の角度方向に向けるために第1のスラスターを動かし、第1の期間に続く第2の期間中、第1のスラスターを点火することを含んでもよい。さらに、方法は、第1の角度方向に向けるために第2のスラスターを動かし、第2の期間中、第2のスラスターを点火することを含んでもよい。
【0112】
図9は、上述の例において説明したようにスラスターアームを動かすことによってホスト衛星200に対してステーションキーピングサービスを提供する一例の方法900が示されている。方法900におけるステップの順番や構成は、図示するためのものである。本開示から分かるように、例えば、方法900のステップの追加、組み合わせ、除去、および/または再配置することによって方法900を変更してもよい。方法900のいくつかのステップは、以下の開示において、サービス衛星10のコントローラ120によって実行されるものとして説明されている。しかしながら、これらのステップが、地上コントロールステーションまたは別の宇宙機に設けられているコントローラによって付加的にまたは代わりとして実行されうることも考えられる。また、いくつかの例示的な実施の形態においては、サービス衛星10のコントローラ120が、地上コントロールステーションまたは他の宇宙機に設けられたコントローラから送信されてコントローラ120によって受信された指示に基づいて、開示されたステップを実行しうることも考えられる。
【0113】
方法900は、位置P2で第1のスラスターを方向付けするとともに位置P3で第2のスラスターを方向付けするステップを含んでいる(ステップ902)。ある例示的な実施の形態において、コントローラ120は、スラスター36が位置P2に存在するように(図4A参照)、スラスター展開ヨーク66に対して角度変位量θでスラスターアーム90を方向付けしてもよい。コントローラ120はまた、スラスター38が位置P3で存在するように(図4A参照)、スラスター展開ヨーク66に対して角度変位量θでスラスターアーム92を方向付けしてもよい。図9を参照しながら説明される方法は、スラスターや方向の特定の選択に限定されないと理解される。例えば、いくつかの実施の形態において、コントローラ120は、代わりに、角度変位量θでスラスターアーム90を方向付けるとともに、角度変位量θでスラスターアーム92を方向付けしてもよい(図4B参照)。
【0114】
方法900は、第1の点火期間、第1の推進レベルで第1および第2のスラスターを点火するステップを含んでもよい(ステップ902)。例えば、スラスター36が位置P2に存在してスラスター38が位置P3に存在するとき(図4A参照)、コントローラ120は、第1の点火期間Δt、推進レベルTHでスラスター36、38を点火してもよい。
【0115】
方法900は、1つまたはそれ以上の軸を中心とするトルクおよび/または角運動量を決定するステップを含んでもよい(ステップ904)。ある例示的な実施の形態において、コントローラ120は、相互接続ユニット206のX軸、Y軸、またはZ軸の1つまたはそれ以上を中心とする1つまたはそれ以上のトルクおよび/または角運動量を決定してもよい。コントローラ120は、サービス衛星10またはホスト衛星200に設けられた1つまたはそれ以上のセンサから得られた力、回転速度の測定値に基づいて、トルクおよび/または角運動量を決定してもよい。ある例示的な実施の形態において、コントローラ120は、サービス衛星10のX軸(例えば図5C参照)を中心とするトルクF1または角運動量AM1を決定してもよい。
【0116】
ある例示的な実施の形態において、コントローラ120は、第1の期間Tにおいて、ステップ902-906を実行してもよい。他の例示的な実施の形態において、第1の期間T内に、コントローラ120は、スラスター36、38を同時に点火してもよい。また、いくつかの実施の形態において、第1の期間T内に、コントローラ120は、スラスター36、38を任意の順番で点火してもよい。
【0117】
方法900は、第1のスラスターを位置P3で方向付けするとともに第2のスラスターを位置P3で方向付けするステップを含んでもよい(ステップ908)。方法のステップ908において、コントローラ120は、例えばステップ902において選択された複数のスラスターの位置をスイッチしてもよい。例えば、コントローラ120は、スラスター36が位置P3に存在するように(図4B参照)、位置P2に存在するスラスターアーム90を、スラスター展開ヨーク66に対して角度変位量θで方向付けしてもよい。同様に、コントローラ120は、スラスター38が位置P2に存在するように(図4B参照)、位置P3に存在するスラスターアーム92を、スラスター展開ヨーク66に対して角度変位量θ2で方向付けしてもよい。
【0118】
方法900は、第2の点火期間、第2の推進レベルで第1および第2のスラスターを点火するステップを含んでもよい(ステップ910)。例えば、スラスター36が位置P3に存在してスラスター38が位置P2に存在する場合、コントローラ120は、第2の点火期間Δt、第2の推進レベルTH2で、スラスター36,38を点火してもよい。
【0119】
方法900は、1つまたはそれ以上の軸を中心とするトルクおよび/または角運動量を決定するステップを含んでもよい(ステップ912)。コントローラ120は、例えばステップ906に対して上述したものと同様の1つまたはそれ以上のステップを実行してもよい。ある例示的な実施の形態において、コントローラ120は、サービス衛星10のX軸(図5B参照)を中心とするトルクF2または角運動量AM2を決定してもよい。
【0120】
ある例示的な実施の形態において、コントローラ120は、第2の期間Tにおいて、ステップ908-912を実行してもよい。他の例示的な実施の形態において、第2の期間T内に、コントローラ120は、スラスター36、38を同時に点火してもよい。また、いくつかの実施の形態においては、第2の期間T内に、コントローラ120が任意の順番でスラスター36、38を点火しうることも考えられる。期間T、Tは、等しくてもよく、また異なってもよい。
【0121】
方法900は、正味のトルクおよび/または角運動量がゼロになるように第1および/または第2の推進レベルを決定するステップを含んでもよい(ステップ914)。ある例示的な実施の形態において、コントローラ120は、例えばX軸を中心とする正味のトルクF1+F2および/または角運動量AM1+AM2が実質的にゼロになるように、推進レベルTH1、TH2の一方または両方を決定してもよい。
【0122】
方法900は、位置P2で方向付けされている場合、スラスターを第1の推進レベルで点火するステップを含んでもよい(ステップ916)。ある例示的な実施の形態において、コントローラ120は、スラスター36またはスラスター38が位置P2で方向付けされている場合、スラスター36、38のいずれかを推進レベルTH1で点火してもよい。方法900はまた、位置P3で方向付けされている場合、スラスターを第2の推進レベルで点火するステップを含んでもよい(ステップ918)。ある例示的な実施の形態において、コントローラ120は、スラスター36またはスラスター38が位置P3で方向付けされている場合、スラスター36、38のいずれかを推進レベルTH2で点火してもよい。
【0123】
上述の開示はスラスター36、38に関するステップ902-918を説明しているが、本開示は、広義には、構成、特定の構造、スラスターの点火順、または角度位置に限定されない。例えば、本開示に係るいくつかの実施の形態において、コントローラは、角度変位量θまたはθの一方でスラスターアームを方向付けするために、スラスターアーム90、92の代わりにスラスターアーム94、96を選択してもよい。コントローラ120は、スラスター40、42を用いて方法900のステップ902-918を実行してもよい。コントローラ120がまずスラスター40、42を用いてステップ902-918を実行する場合、コントローラ120は、約12時間後に、他のペアのスラスター36、38を用いてステップ902-918を繰り返してもよい。コントローラ120はまた、所定の時間後に、ペアのスラスター36、38とペアのスラスター40、42の両方を用いてステップ902-918を繰り返し、ホスト衛星が割り当てられた静止スロットに留まれるように支援してもよい。
【0124】
いくつかの例示的な実施の形態において、コントローラ120はまず、スラスター36、40を用いてステップ902-918を実行してもよい。したがって、ステップ902において、コントローラ120は、スラスター36が位置P2に存在するように、スラスターアーム90をスラスター展開ヨーク66に対して角度変位量θで方向付けしてもよい。コントローラ120はまた、スラスター42が位置P3に存在するように、スラスターアーム94をスラスター展開ヨーク68に対して角度変位量θで方向付けしてもよい。同様に、ステップ908において、コントローラ120は、スラスター36が位置P3に存在するように、スラスターアーム90をスラスター展開ヨーク66に対して角度変位量θで方向付けしてもよい。コントローラ120はまた、スラスター42が位置P2に存在するように、スラスターアーム94をスラスター展開ヨーク68に対して角度変位量θで方向付けしてもよい。スラスター36、40を用いてステップ902-918を実行した後、コントローラは、約12時間後、スラスターアーム92、96と対応するスラスター38,42を用いてステップ902-918を繰り返してもよい。コントローラ120はまた、所定の時間後に、ペアのスラスター36、40とペアのスラスター38、42の両方を用いてステップ902-918を繰り返し、ホスト衛星が割り当てられた静止スロットに留まれるように支援してもよい。
【0125】
図10は、ホスト衛星200に対してステーションキーピングサービスを提供する別例の方法1000を示している。方法1000における順番および構成は、図示するためのものである。本開示から分かるように、例えば、方法1000のステップの追加、組み合わせ、除去、および/または再配置することによって方法1000を変更してもよい。方法1000のいくつかのステップは、以下の開示において、サービス衛星10のコントローラ120によって実行されるものとして説明されている。しかしながら、これらのステップが、地上コントロールステーションまたは別の宇宙機に設けられているコントローラによって付加的にまたは代わりとして実行されうることが考えられる。また、いくつかの例示的な実施の形態においては、サービス衛星10のコントローラ120が、地上コントロールステーションまたは他の宇宙機に設けられたコントローラから送信されてコントローラ120によって受信された指示に基づいて、開示されたステップを実行しうることも考えられる。
【0126】
方法1000は、第1ペアのスラスターを位置P4で方向付けするとともに、第2のペアのスラスターを位置P5で方向付けするステップを含んでいる(ステップ1002)。ある例示的な実施の形態において、コントローラ120は、スラスター36、38が位置P4に存在するように(図6A参照)、スラスターアーム90、92を、スラスター展開ヨーク66に対して角度変位量θで方向付けしてもよい。コントローラ120また、スラスター40、42が位置P5に存在するように(図6A参照)、スラスターアーム94、96を、スラスター展開ヨーク68に対して角度変位量θで方向付けしてもよい。図10に関連して説明される方法は、スラスターや方向の特定の選択に限定されないと理解される。例えば、いくつかの実施の形態において、コントローラ120は、代わりに、角度変位量θでスラスターアーム90、92を方向付けするとともに、角度変位量θでスラスターアーム94、96を方向付けしてもよい。
【0127】
方法1000は、第1のペアのスラスターを所定の推進レベルで点火するステップを含んでもよい(ステップ1004)。例えば、スラスター36、38が位置P4に存在する場合、コントローラ120は、スラスター36、38を所定の推進レベルTHPREで点火してもよい(図6A参照)。方法1000は、リアクションホイールがフルロードされているか否かを判定するステップを含んでもよい(ステップ1006)。いくつかの例示的な実施の形態において、コントローラ120は、サービス衛星10に関連するリアクションホイールがフルロードされているか否か(すなわち、それが所定の最大回転速度に達しているか否か)を判定してもよい。コントローラ120がサービス衛星10に関連するリアクションホイールがフルロードではないと判定した場合(ステップ1006:NO)、方法1000は、ステップ1004に戻ってスラスター36、38を所定の推進レベルTHPREで点火し続けてもよい。しかしながら、コントローラ120がサービス衛星10に関連するリアクションホイールがフルロードであると判定した場合(ステップ1006:YES)、方法100はステップ1008に進んでもよい。
【0128】
方法1000のステップ1008は、リアクションホイールをフルロードするための点火期間Δtを決定することを含んでもよい。いくつかの例示的な実施の形態において、コントローラ120は、スラスター36、38の点火を停止し、所定の推進レベルTHPREでスラスター36、38を点火した結果としてのサービス衛星10に関連するリアクションホイールをフルロードするために必要な期間Δtを決定してもよい。
【0129】
方法1000は、第2のペアのスラスターを所定の推進レベルで点火するステップを含んでもよい(ステップ1010)。例えば、スラスター40、42が位置P5に存在する場合、コントローラ120は、スラスター40、42を所定の推進レベルTHPREで点火してもよい(図6B参照)。方法1000は、リアクションホイールが完全にアンロードしているか否かを判定するステップを含んでもよい(ステップ1012)。いくつかの例示的な実施の形態において、コントローラ120は、サービス衛星10に関連するリアクションホイールが完全にアンロードしている(すなわち所定の最小回転速度に達している)か否かを判定してもよい。コントローラ120がサービス衛星10に関連するリアクションホイールが完全にアンロードしていないと判定した場合(ステップ1012:NO)、方法1000は、ステップ1010に戻ってスラスター40、42を所定の推進レベルTHPREで点火し続けてもよい。しかしながら、コントローラ120がサービス衛星10に関連するリアクションホイールが完全にアンロードしていると判定した場合(ステップ1012:YES)、方法1000はステップ1014に進んでもよい。
【0130】
方法1000のステップ1014は、リアクションホイールを完全にアンロードするための点火期間Δtを決定することを含んでもよい。いくつかの例示的な実施の形態において、コントローラ120は、スラスター40、42の点火を停止し、所定の推進レベルTHPREでスラスター40、42を点火した結果としてのサービス衛星10に関連するリアクションホイールを完全にアンロードするために必要なΔtを決定してもよい。
【0131】
方法1000は、位置P4で方向付けされている場合、第1の期間Δt、所定の推進レベルTHPREでスラスターを点火するステップを含んでもよい(ステップ1016)。ある例示的な実施の形態において、コントローラ120は、スラスター36、38、40、42のスラスターのいずれかが位置P4で方向付けされている場合、第1の期間Δt、推進レベルTHPREでスラスター36、38、40、42のいずれかを点火してもよい。
【0132】
方法1000はまた、位置P5で方向付けされている場合、第2の期間Δt、所定の推進レベルTHPREでスラスターを点火するステップを含んでもよい(ステップ1018)。ある例示的な実施の形態において、コントローラ120は、スラスター36、38、40、42のスラスターのいずれかが位置P5で方向付けされている場合、第2の期間Δt、推進レベルTHPREでスラスター36、38、40、42のいずれかを点火してもよい。
【0133】
したがって、例えば、いくつかの実施の形態において、コントローラ120は、第1のペアのスラスター36,38を位置P4で方向付けし、第1の期間Δt、所定の推進レベルTHPREでスラスター36、38を点火してもよい。コントローラ120は、第2のペアのスラスター40、42を位置P5で方向付けし、第2の期間Δt、所定の推進レベルTHPREでスラスター40、42を点火してもよい。約12時間後、コントローラ120は、第1のペアのスラスター36、38を位置P5で方向付けし、第2の期間Δt、所定の推進レベルTHPREでスラスター36、38を点火してもよい。さらに、コントローラ120は、第2のペアのスラスター40、42を位置P4で方向付けし、第1の期間Δt、所定の推進レベルTHPREでスラスター40、42を点火してもよい。コントローラ120は、所定の時間後、これらのステップを繰り返し、ホスト衛星が割り当てられた静止スロットに留まれるように支援してもよい。
【0134】
上述の開示は第1のペアのスラスター36、38と第2のペアのスラスター40、42とに関する方法ステップ1002-1018を説明しているが、方法1000またはその開示は、広義には、その構成に限定されない。例えば、本開示に係るいくつかの実施の形態において、コントローラは、第1のペアのスラスターとしてスラスター36、40を選択し、第2のペアのスラスターとしてスラスター38、40を選択し、方法ステップ1002-1018を実行してもよい。
【0135】
実施において、いくつかの開示された実施の形態は、従来のステーションキーピングの方法に対していくつかの利益を提供することができる。例えば、本開示の実施の形態において、サービス衛星とホスト衛星を含む相互接続ユニットの結合した重心の正確な位置を決定する必要はない。代わりとして、角度変位量θ、θ、θ、θそれぞれに対応するスラスター位置P2、P3、P4、P5が、ホスト衛星のサイズおよび/または質量に関係なく、決定されればよく、また同一であってもよい。特に、スラスター位置P2、P3、P4、P5は、サービス衛星のいずれかのスラスターによって発生した推進ベクトルがサービス衛星とそれと宇宙でドッキング可能な複数のホスト衛星とを含む相互接続ユニットにおけるいずれかの結合した重心を通過しないように、選択されればよい。代わりとして、スラスター位置P2、P3、P4、およびP5で方向付けされたスラスターによって発生した推進ベクトルが、複数の相互接続ユニットの結合した重心の全てからオフセットされればよい(すなわち空間的に離れていればよい)。
【0136】
開示された実施の形態はまた、相互接続ユニットの結合した重心を正確に決定することが困難な可能性があるという認識に基づくことがある。例えば、サービス衛星またはホスト衛星の燃料が消費されるにしたがい、結合した重心が変化しうる。さらに、サービス衛星とホスト衛星の正確な質量分布の決定にエラーが起こると、結合した重心の決定のエラーを引き起こしうる。開示されたサービス衛星は、サービス衛星とホスト衛星の結合した重心に頼ることなく、有利に、ステーションキーピングサービスを提供することができる。
【0137】
開示されたサービス衛星は、可変な推進方法(例えば図9の方法900)または可変な時間法(例えば図10の方法1000)を介して、ステーションキーピングサービスを提供することができる。上述の開示で詳細に説明したように、可変な推進方法において、サービス衛星は、位置P2、P3それぞれの一方側(北、南、東、または西)にペアのスラスターを位置決めしてもよい。選択されたスラスターは、第1の推進レベルTH1で点火されてもよい。これらのスラスター点火によって発生して相互接続ユニットの少なくとも1の軸中心のトルクおよび/または角運動量が決定されもよい。サービス衛星は、位置P2に前もって位置決めされたスラスターが位置P3に移動するようにそれとは逆に移動するように、スラスターを再位置決めしてもよい。再位置決めされたスラスターは、少なくとも1つの軸中心に発生したトルクおよび/または角運動量が実質的に相殺またはゼロになるように選択された第2の推進レベルTH2で点火されてもよい。
【0138】
サービス衛星は、位置P2、P3それぞれの一方側(北、南、東、または西)にペアのスラスターを位置決めしてもよい。サービス衛星は、推進レベルTH1で選択されたスラスターを点火し、スラスター位置をスイッチして推進レベルTH2でスラスターを点火し、そして、残留トルクをゼロにしつつ相互接続ユニットに対して必要な並進移動を行うプロセスを繰り返してもよい。サービス衛星は、12時間おきに、反対側で同様のことをスラスターに対して繰り返してもよい。したがって、サービス衛星は、サービス衛星とホスト衛星の結合した重心を決定することなく、また結合した重心を介してスラスターを点火することなく、有利に、ホスト衛星に対してステーションキーピングサービスを行うことができる。
【0139】
上述の開示で詳細に説明したように、可変な時間法において、サービス衛星は、例えば位置P4の一方側(北、南、東、または西)に第1のペアのスラスターにおける両方のスラスターを位置決めしてもよい。サービス衛星は、第1のペアのスラスターと異なる第2のペアのスラスターを、例えば位置P5に位置決めしてもよい。第2のペアのスラスターは、第1のスラスターに対して反対側に配置されてもよい。第1のペアのスラスターにおける両方のスラスターは、サービス衛星またはホスト衛星の1つまたはそれ以上のリアクションホイールがフルロードするまで、第1の期間T、所定の推進レベルTHPREで点火されてもよい。第1の期間Tが経過した後、第1のペアのスラスターの点火は、停止してもよい。サービス衛星は次に、第2のペアのスラスターを所定の推進レベルTHPREで点火してもよい。サービス衛星は、1つまたはそれ以上のリアクションホイールのアンロードに必要な第2の期間Tを決定してもよい。第1のペアによって発生した推進ベクトルまたは第2のペアによって発生した推進ベクトルは、サービス衛星とホスト衛星の結合した重心を通過しないことは注意すべきである。
【0140】
サービス衛星は、第1の期間T、推進レベルTHPREで第1のペアのスラスターを点火し、第2の期間T、推進レベルTHPREで第2のペアのスラスターを点火してもよい。約12時間後、サービス衛星は、第1および第2のペアのスラスターの位置をスイッチしてもよい。すなわち、位置P4で前もって方向付けされた第1のペアのスラスターが、位置P5に第1のペアのスラスターが存在するように再方向付けされてもよい。同様に、位置P5で前もって方向付けされた第2のペアのスラスターが、位置P4に存在するように再方向付けされてもよい。サービス衛星は次に、第2の期間T、推進レベルTHPREで第1のペアのスラスターを点火し、第1の期間T、推進レベルTHPREで第1のペアのスラスターを点火してもよい。サービス衛星は、所定の時間後、これらのことを繰り返してもよい。したがって、サービス衛星は、サービス衛星とホスト衛星の結合した重心を決定することなく、また結合した重心を介してスラスターを点火することなく、ホスト衛星に対してステーションキーピングサービスを行うことができる。
【0141】
添付の請求項の位置または開示範囲から逸脱することなく、開示された例示的な実施の形態を様々に変更および改良することが可能である。明細書や例は単なる例示的なものであって、発明の範囲や意図は添付の請求項によって示されている。
図1A
図1B
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図7A
図7B
図8
図9
図10
【手続補正書】
【提出日】2022-05-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステーションキーピングサービス衛星であって、
本体と、
前記本体に取り付けられた把持機構であって、ホスト衛星に取り付くことによって、前記ホスト衛星と前記サービス衛星とを含む、結合した重心を有する相互接続ユニットを形成するように適合された、把持機構と、
第1のスラスターアームに回転可能に接続された第1のヨークアームを備える第1の展開可能伸長アームであって、前記第1のヨークアームの近位端が前記本体に回転可能に接続され、前記第1のスラスターアームの遠位端が第1のスラスターに固定的に取り付けられ、前記第1のスラスターが、第1のスラスター推進軸に沿って方向付けられ、且つ、ホスト衛星本体に向けて方向付けられた第1のスラスター推進ベクトルを生成するように構成される、第1の展開可能伸長アームと、
第2のスラスターアームに回転可能に接続された第2のヨークアームを備える第2の展開可能伸長アームであって、前記第2のヨークアームの近位端が前記本体に回転可能に接続され、前記第2のスラスターアームの遠位端が第2のスラスターに固定的に取り付けられ、前記第2のスラスターが、第2のスラスター推進軸に沿って方向付けられ、且つ、前記ホスト衛星本体に向けて方向付けられた第2のスラスター推進ベクトルを生成するように構成される、第2の展開可能伸長アームと、
前記ホスト衛星本体内に位置決めされた推進ベクトル交点で、前記第1のスラスター推進軸が前記第2のスラスター推進軸と交差するように前記第1のスラスター及び前記第2のスラスターを点火するように動作するコントローラと、を備え、
前記相互接続ユニットは、前記第1のスラスター及び前記第2のスラスターのスラスター点火によって、実質的に静止軌道に維持される、ステーションキーピングサービス衛星。
【請求項2】
前記相互接続ユニットの角運動量又は回転速度を検知するように動作するセンサをさらに備える、請求項1に記載のステーションキーピングサービス衛星。
【請求項3】
前記第1のスラスターの点火及び前記第2のスラスターの点火は、前記相互接続ユニットの角運動量又は回転速度を実質的に約ゼロまで減少させる、請求項2に記載のステーションキーピングサービス衛星。
【請求項4】
スラスター点火中において、前記第1のスラスター及び前記第2のスラスターのそれぞれからの推進ベクトルは、前記結合した重心を通過せず、且つ、前記結合した重心の両側で前記相互接続ユニットの縦方向の平面と交差する、請求項1に記載のステーションキーピングサービス衛星。
【請求項5】
前記第1のスラスター及び前記第2のスラスターは、前記相互接続ユニットの縦方向の平面と、前記第1のスラスター及び前記第2のスラスターのそれぞれからの推進ベクトルと、の交点の間に、前記結合した重心が位置するように位置決めされる、請求項1に記載のステーションキーピングサービス衛星。
【請求項6】
前記コントローラは、所定の第1の向きのセットのうちの所定の第1の向きで前記第1のスラスターを点火するように構成され、且つ、所定の第2の向きのセットのうちの所定の第2の向きで前記第2のスラスターを点火するように構成される、請求項1に記載のステーションキーピングサービス衛星。
【請求項7】
前記第1のスラスターは、前記サービス衛星の第1のサイドに位置決めされ、且つ、前記第2のスラスターは、前記第1のサイドと反対側の前記サービス衛星の第2のサイドに位置決めされる、請求項1に記載のステーションキーピングサービス衛星。
【請求項8】
前記第1のヨークアームに接続された第3のスラスターアームであって、前記第3のスラスターアームの遠位端が第3のスラスターに取り付けられる、第3のスラスターアームと、
前記第2のヨークアームに接続された第4のスラスターアームであって、前記第4のスラスターアームの遠位端が第4のスラスターに取り付けられる、第4のスラスターアームと、
をさらに備える、請求項1に記載のステーションキーピングサービス衛星。
【請求項9】
前記第1のスラスターと前記第3のスラスターとは、離間し、且つ、異なる所定の向きに位置決めされ、
前記第2のスラスターと前記第4のスラスターとは、離間し、且つ、異なる所定の向きに位置決めされる、請求項8に記載のステーションキーピングサービス衛星。
【請求項10】
前記第1のスラスター及び前記第3のスラスターは、前記サービス衛星の第1のサイドに配置され、
前記第2のスラスター及び前記第4のスラスターは、前記第1のサイドと反対側の前記サービス衛星のサイドに配置される、請求項8に記載のステーションキーピングサービス衛星。
【請求項11】
ステーションキーピングサービス衛星であって、
本体と、
前記本体に取り付けられた把持機構であって、ホスト衛星の外部表面に取り付くことによって、前記ホスト衛星と前記サービス衛星とを含む、結合した重心を有する相互接続ユニットを形成するように適合された、把持機構と、
第1のヨークアームと第1のスラスターアームとを備える第1の展開可能伸長アームであって、前記第1のヨークアームが、第1の端部で前記サービス衛星に回転可能に取り付けられ、且つ、第2の端部で、前記第1のスラスターアームの第1の端部に回転可能に接続され、前記第1のスラスターアームの第2の端部が第1のスラスターに取り付けられ、前記第1のスラスターが、第1のスラスター推進軸に沿って方向付けられ、且つ、ホスト衛星本体に向けて方向付けられた第1のスラスター推進ベクトルを生成するように構成される、第1の展開可能伸長アームと、
第2のヨークアームと第2のスラスターアームとを備える第2の展開可能伸長アームであって、前記第2のヨークアームが、第1の端部で前記サービス衛星に回転可能に取り付けられ、且つ、第2の端部で前記第2のスラスターアームの第1の端部に回転可能に接続され、前記第2のスラスターアームの第2の端部が第2のスラスターに取り付けられ、前記第2のスラスターが、第2のスラスター推進軸に沿って方向付けられ、且つ、前記ホスト衛星本体に向けて方向付けられた第2のスラスター推進ベクトルを生成するように構成される、第2の展開可能伸長アームと、
前記ホスト衛星本体内に位置決めされた推進ベクトル交点で、前記第1のスラスター推進軸が前記第2のスラスター推進軸と交差するように前記第1のスラスターを点火し、且つ、前記第2のスラスターを点火するコントローラと、を備え、
前記第1のスラスターは、前記サービス衛星の第1のサイドに配置され、
前記第2のスラスターは、前記第1のサイドと反対側の前記サービス衛星の第2のサイドに配置され、
前記相互接続ユニットは、前記第1のスラスター及び前記第2のスラスターの動作によって、実質的に静止軌道に維持される、ステーションキーピングサービス衛星。
【請求項12】
スラスター点火中において、前記第1のスラスター及び前記第2のスラスターのそれぞれからの推進ベクトルは、前記結合した重心を通過しない、請求項11に記載のステーションキーピングサービス衛星。
【請求項13】
前記第1のスラスターアームの前記第2の端部は、前記第1のスラスターに固定的に取り付けられ、前記第2のスラスターアームの前記第2の端部は、前記第2のスラスターに固定的に取り付けられる、請求項11に記載のステーションキーピングサービス衛星。
【請求項14】
前記第1のスラスターの前記点火及び前記第2のスラスターの前記点火は、同時に起こる、請求項11に記載のステーションキーピングサービス衛星。
【請求項15】
前記コントローラは、所定の第1の向きのセットのうちの所定の第1の向きで前記第1のスラスターを点火し、且つ、所定の第2の向きのセットのうちの所定の第2の向きで前記第2のスラスターを点火する、請求項11に記載のステーションキーピングサービス衛星。
【請求項16】
ステーションキーピングサービス衛星であって、
本体と、
前記本体に取り付けられた把持機構であって、ホスト衛星の外部表面に取り付くことによって、前記ホスト衛星と前記サービス衛星とを含む、結合した重心を有する相互接続ユニットを形成するように適合された、把持機構と、
第1の端部で前記サービス衛星に回転可能に取り付けられ、且つ、第2の端部で第1のスラスターに接続された第1の展開可能伸長アームであって、前記第1のスラスターが、第1のスラスター推進軸に沿って方向付けられ、且つ、ホスト衛星本体に向けて方向付けられた第1のスラスター推進ベクトルを生成するように構成される、第1の展開可能伸長アームと、
第1の端部で前記サービス衛星に回転可能に取り付けられ、且つ、第2の端部で第2のスラスターに接続された第2の展開可能伸長アームであって、前記第2のスラスターが、第2のスラスター推進軸に沿って方向付けられ、且つ、前記ホスト衛星本体に向けて方向付けられた第2のスラスター推進ベクトルを生成するように構成される、第2の展開可能伸長アームと、
前記ホスト衛星本体内に位置決めされた推進ベクトル交点で、前記第1のスラスター推進軸が前記第2のスラスター推進軸と交差するように前記第1のスラスターを点火し、且つ、前記第2のスラスターを点火するコントローラと、を備え、
前記第1のスラスターは、前記サービス衛星の第1のサイドに配置され、
前記第2のスラスターは、前記第1のサイドと反対側の前記サービス衛星の第2のサイドに配置され、
前記相互接続ユニットは、前記第1のスラスター及び前記第2のスラスターの動作によって、実質的に静止軌道に維持される、ステーションキーピングサービス衛星。
【請求項17】
前記コントローラは、所定の第1の向きのセットのうちの所定の第1の向きで前記第1のスラスターを点火し、且つ、所定の第2の向きのセットのうちの所定の第2の向きで前記第2のスラスターを点火する、請求項16に記載のステーションキーピングサービス衛星。
【請求項18】
スラスター点火中において、前記第1のスラスター及び前記第2のスラスターのそれぞれからの推進ベクトルは、前記結合した重心を通過しない、請求項17に記載のステーションキーピングサービス衛星。
【請求項19】
前記第1の展開可能伸長アームに接続された第3のスラスターと、
前記第2の展開可能伸長アームに接続された第4のスラスターと、
をさらに備える、請求項16に記載のステーションキーピングサービス衛星。
【請求項20】
前記把持機構は、前記ホスト衛星の前記外部表面から形成されたインターフェースリングに取り付くように構成される、請求項16に記載のステーションキーピングサービス衛星。
【外国語明細書】