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  • 特開-光透過性超疎水性薄膜 図1
  • 特開-光透過性超疎水性薄膜 図2
  • 特開-光透過性超疎水性薄膜 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022097620
(43)【公開日】2022-06-30
(54)【発明の名称】光透過性超疎水性薄膜
(51)【国際特許分類】
   B05D 7/24 20060101AFI20220623BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20220623BHJP
   B32B 27/20 20060101ALI20220623BHJP
【FI】
B05D7/24 302L
B05D7/24 303B
B32B27/30 D
B32B27/20 Z
【審査請求】有
【請求項の数】17
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022077798
(22)【出願日】2022-05-10
(62)【分割の表示】P 2020543907の分割
【原出願日】2019-02-27
(31)【優先権主張番号】15/991,873
(32)【優先日】2018-05-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/286,545
(32)【優先日】2019-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/635,993
(32)【優先日】2018-02-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】317015065
【氏名又は名称】ウェイモ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100126480
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 睦
(72)【発明者】
【氏名】シンプソン,ジョン ティー.
(57)【要約】
【課題】容易に適用され、透明で、十分接着され、かつ超疎水性であり得るコーティングを提供する。
【解決手段】一態様では、基材をコーティングするための方法は、表面を有する基材を提供することと、コーティング組成物を表面に隣接して配置することとを含み、組成物は、疎水性フッ素化溶媒、疎水性フッ素化ポリマーを含む結合剤、および疎水性ヒュームドシリカナノ粒子を含む。コーティング層を含む物品も開示され、コーティング層は、その外側表面上に部分的に露出した複数のナノ粒子を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材をコーティングするための方法であって、
表面を有する基材を提供することと、
コーティング組成物を前記表面に隣接して配置することであって、前記組成物が、
疎水性フッ素化溶媒、
疎水性フッ素化ポリマーを含む結合剤、および
疎水性ヒュームドシリカナノ粒子、を含む、配置することと、
前記フッ素化溶媒を蒸発させることと、を含む、方法。
【請求項2】
前記コーティング組成物が、疎水性エアロゲルナノ粒子をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記結合剤が、前記組成物の0.3重量%~1.5重量%の範囲内の量で存在し、
前記シリカナノ粒子が、前記組成物の0.01重量%~0.5重量%の範囲内の量で存在し、
前記エアロゲルナノ粒子が、前記組成物の0.1重量%~0.5重量%の範囲内の量で存在する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記シリカナノ粒子およびエアロゲルナノ粒子の平均サイズが、10nm~200nmの範囲内である、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記コーティング組成物が、架橋シランをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記配置されたコーティング組成物を硬化させることをさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記コーティング組成物を配置する前に、前記基材表面を処理することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記表面を処理することが、プラズマエッチングを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記表面を処理することが、前記表面の少なくとも一部分上にシランを堆積させることを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
請求項1に記載の製品であるコーティングされた基材。
【請求項11】
コーティング層を含む物品であって、前記コーティング層が、内側表面および反対側の外側表面を有し、前記内側表面が、基材表面に隣接して配置され、前記コーティング層が、疎水性フッ素化ポリマーおよび複数のナノ粒子を含み、前記ナノ粒子の少なくとも一部分が、前記コーティング層の前記外側表面上に部分的に露出している、物品。
【請求項12】
前記ナノ粒子が、シリカナノ粒子およびエアロゲルナノ粒子のうちの1つ以上から選択される、請求項11に記載の物品。
【請求項13】
前記ナノ粒子の平均サイズが、10nm~200nmの範囲内である、請求項11に記載の物品。
【請求項14】
前記外側主表面が、複数の窪みをさらに含む、請求項11に記載の物品。
【請求項15】
前記窪みの平均サイズが、10nm~200nmの範囲内である、請求項14に記載の物品。
【請求項16】
前記コーティング層が、架橋シランをさらに含む、請求項11に記載の物品。
【請求項17】
前記基材表面が、複数のヒドロキシル基を含む、請求項11に記載の物品。
【請求項18】
前記基材表面が、シランを含む、請求項11に記載の物品。
【請求項19】
前記外側主表面が、少なくとも130°の水接触角を有する、請求項11に記載の物品。
【請求項20】
前記外側主表面が、少なくとも150°の水接触角を有する、請求項9に記載の物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、各々の内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、2018年2月27日に出願された米国仮特許出願第62/635,993号、2018年5月29日に出願された米国特許出願第15/991,873号、および2019年2月26日に出願された米国特許出願第16/286,545号に対する優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
本明細書に別段の指示がない限り、本項に記載の資料は、本出願の特許請求の範囲に対する先行技術ではなく、本項に含めることよって先行技術であると認められるものではない。
【0003】
非常に優れた撥水性を有する超疎水性表面およびコーティングは、多くの利用分野で潜在的な用途を有する。光学的に透明な超疎水性コーティングと同様に、十分接着された光学的に透明なコーティングが達成されている。しかし、容易に適用され、光学的に透明で、十分接着された超疎水性コーティングまたは薄膜が依然として必要とされている。これは、これらの3つの特性を達成することができる物理的特性が、従来の薄膜材料および方法を使用する場合に、相互に排他的である傾向があるためである。例えば、超疎水性材料は、典型的には、マイクロメートルからナノメートルの表面粗さを有し、これにより、光が散乱する傾向にあり、光学的透明度の達成が困難になる。同様に、光学的透明度が高い材料は、表面粗さが低く(すなわち、非常に滑らかな表面)になる傾向があり、通常、低表面エネルギーの疎水性材料に対して良好に接着することができない。さらに、広範囲に摩耗した後でも疎水性を保持することができる超疎水性コーティングの必要性が依然として必要とされている。
【発明の概要】
【0004】
一態様では、本開示は、基材をコーティングするための方法であって、表面を有する基材を提供することと、コーティング組成物を表面に隣接して配置することであって、組成物が、疎水性フッ素化溶媒、疎水性フッ素化ポリマーを含む結合剤、およびシリカナノ粒子を含む、配置することと、フッ素化溶媒を蒸発させることと、を含む、方法を提供する。
【0005】
別の態様では、本開示は、コーティング層を含む物品であって、コーティング層が、内側表面および反対側の外側表面を有し、内側表面が、基材表面に隣接して配置され、コーティング層が、疎水性フッ素化ポリマーおよび複数のナノ粒子を含み、ナノ粒子の少なくとも一部分が、コーティング層の外側表面上に部分的に露出している、物品を含む。
【0006】
これらの態様ならびに他の態様、利点、および代替物は、当業者には、添付の図面を適宜参照して以下の詳細な説明を読み取ることによって明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本開示の態様による、種々の薄膜層および関連する疎水性ナノ粒子を含む、例示的な超疎水性光学薄膜の図を示す。
図2】本開示の態様による、種々の薄膜層、関連する疎水性ナノ粒子、および変位したナノ粒子からの窪みを含む、例示的な超疎水性光学薄膜の図を示す。
図3】例示的な実施形態による方法を示すフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下の詳細な説明は、開示された方法、組成物、および構造の種々の特徴および機能を説明している。本明細書に記載の例証的な実施形態は、限定的であることを意味するものではない。開示される方法、組成物、および構造の特定の態様を、多種多様な異なる構成で配列および組み合わせることができ、これらの構成のすべてが、本明細書において企図されることが容易に理解されるであろう。
【0009】
疎水性または光透過性を犠牲にせずに、容易に適用され、かつ十分接着される超疎水性組成物について説明する。本明細書で使用される「超疎水性」は、少なくとも約130°の水接触角を有する表面またはコーティングを説明する。また、本明細書で使用される「光透過性」コーティングは、300nm~1500nmの範囲内の波長を有する入射光の少なくとも約90%を透過する。本明細書で使用される「十分接着された」は、コーティングまたは薄膜として基材に適用された場合に、比較的少量のせん断力(例えば、摩擦)または環境条件(例えば、太陽、雨、風など)への曝露により容易に除去されないように基材に付着する組成物を指す。
【0010】
一態様では、本開示は、
疎水性フッ素化溶媒と、
疎水性フッ素化ポリマーを含む結合剤と、
疎水性ヒュームドシリカナノ粒子と、
任意選択で、疎水性エアロゲルナノ粒子と、を含む、組成物を提供する。
【0011】
疎水性フッ素化溶媒は、本明細書に記載の結合剤を溶解することができるフッ素化材料であり得る。結果として得られる膜またはコーティングの良好な光学的透明度を提供するために、組成物が、堆積工程全体にわたって十分に分散した粒子を含むことが有益である。粒子が大き過ぎるまたは分散が不十分であると、超疎水性表面が曇る可能性がある。望ましい分散は、分散剤として作用し得る適切な疎水性フッ素化溶媒を使用することによって達成し得る。いくつかの実施形態では、疎水性フッ素化溶媒は、フッ素化アルカン、フッ素化トリアルキルアミン、フッ素化シクロアルカン、フッ素化ヘテロシクロアルカン、またはそれらの組み合わせを含み得る。いくつかの実施形態では、フッ素化成分は、過フッ素化され得る。適切なフッ素化溶媒は、Sigma Aldrich(ミズーリ州セントルイス)、3M(ミネソタ州メープルウッド)などの多くの販売元から市販されている。適切なフッ素化溶媒は、ペルフルオロオクタン、2H、3H-ペルフルオロペンタン、ペルフルオロトリブチルアミン、ペルフルオロデカリン、およびペルフルオロノナンなど、例えば、Fluorinert(商標)FC-40、Fluorinert(商標)FC-75、Fluorinert(商標)FC-770、または同等もしくは類似の材料を含む。
【0012】
いくつかの実施形態では、疎水性フッ素化溶媒は、架橋シランを含み得る。架橋シランは、少なくとも1つのケイ素原子を有する当技術分野で既知の架橋剤から選択され得る。適切な架橋シランは、Sigma Aldrich(ミズーリ州セントルイス)、3M(ミネソタ州メープルウッド)などの多くの販売元から市販されている。適切な架橋シランは、例えば、水素化物官能基、ビニル官能基などを有するシラン、例えば、Novec(商標)2702、Novec(商標)2202、Novec(商標)1720、または同等もしくは類似の材料を含む。架橋シランが含まれる場合、組成物中に使用される結合剤の量は、組成物の約0.3重量%~約1.0重量%に減少され得る。
【0013】
フッ素化ポリマー結合剤は、本明細書に記載の疎水性フッ素化溶媒に溶解することができる疎水性フッ素化ポリマーを含み得る。結合剤は、疎水性粒子が基材の表面に付着することを可能にし得るが、結合剤が適切に選択されない、または間違った量で使用されると、結合剤は、結果として得られる膜またはコーティングの光学的透明度に影響を及ぼし得る。フッ素化ポリマー結合剤は、好ましくは光学的に透明であり、かつ非晶質である。いくつかの実施形態では、フッ素化ポリマー結合剤は、フルオロアルキルポリマー、フルオロアルコキシポリマー、ペルフルオロアルキルポリマー、ペルフルオロアルコキシポリマー、またはそれらの組み合わせであり得る。適切なフッ素化ポリマー結合剤は、Solvay(ベルギー、ブリュッセル)などの多くの販売元から市販されている。適切なフッ素化ポリマー結合剤は、例えば、Teflon(登録商標)AFおよびHyflon(登録商標)ADを含み得る。
【0014】
組成物中の結合剤の量は、本明細書に記載の所望の超疎水性、光透過性、および十分接着された特性を有する膜またはコーティングを形成する組成物の能力に関連する。組成物中に使用される結合剤が多過ぎると、ナノ粒子は、表面がそのナノテクスチャリングひいてはその超疎水性特性を失う程度まで、結合剤によって包み込まれ得る。用いられる結合剤が少な過ぎると、ナノ粒子は、基材に効果的に接着されず、基材への付着に影響が及ぼされ得る。いくつかの実施形態では、フッ素化ポリマー結合剤は、組成物の約0.3重量%~約1.5重量%で存在する。他の実施形態では、結合剤は、組成物の約0.8重量%~約1.2重量%で存在する。結合剤は、組成物の約0.3重量%~約1.4重量%、約0.4重量%~約1.5重量%、約0.3重量%~約1.3重量%、約0.4重量%~約1.3重量%、約0.4重量%~約1.2重量%、約0.重量%5~約1.2重量%、約0.5重量%~約1.1重量%、約0.5重量%~約1.0重量%、約0.6重量%~約1.0重量%、約0.7重量%~約1.4重量%、約0.5重量%~約1.5重量%、約0.5重量%~約1.2重量%、または約0.3重量%~約0.9重量%でも存在し得る。
【0015】
例えば、様々な粒子サイズ分布または平均粒子サイズを有するヒュームドシリカ、または平らに表面処理されたヒュームドシリカを含む、多種多様なヒュームドシリカ材料は、当技術分野で知られている。本明細書に別途記載されている特定の実施形態では、ヒュームドシリカナノ粒子は、平均粒子サイズが約200nm以下の高表面積、ナノ構造、および/またはナノ多孔質粒子である。平均ヒュームドシリカナノ粒子サイズは、粒子の平均線寸法(例えば、実質的に球形の粒子の場合は、平均直径)を表し、平均結粒度もしくは結晶子サイズ、または凝集粒子の場合は、平均凝集体サイズを表し得る。いくつかの実施形態では、平均ヒュームドシリカナノ粒子サイズは、約100nm未満、約75nm未満、または約50nm未満であり得る。しかしながら、過度に小さいヒュームドシリカナノ粒子(例えば、数ナノメートル以下)は分散するのが困難であり得る。いくつかの実施形態では、平均ヒュームドシリカナノ粒子サイズは、約10nm~約200nm、約25nm~約100nm、または約40nm~約60nmである。
【0016】
疎水性ヒュームドシリカナノ粒子は、疎水性シランで化学的に修飾されたシリカナノ粒子であり得る。いくつかの実施形態では、ナノ粒子は、フッ素化材料で化学的に処理される。他の実施形態では、ナノ粒子は、ポリジメチルシロキサン(PDMS)で化学的に処理される。ヒュームドシリカから作製されたコロイド状二酸化ケイ素は、粒子サイズを減少させて表面特性を修飾する適切な工程によって調製される。表面特性は、表面修飾ケイ素化合物(例えば、ケイ素ジメチルビクロリド)により昇温での気相加水分解の条件下でシリカ材料を産生することによって、ヒュームドシリカを産生するように修飾される。ヒュームドシリカナノ粒子の疎水性は、オルガノシラン、フッ素化シラン、およびジシラザンからなる群から選択される少なくとも1つの化合物による処理の結果である。
【0017】
適切なオルガノシランには、アルキルクロロシラン、アルコキシシラン、例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、n-プロピルトリエトキシシラン、i-プロピルトリメトキシシラン、i-プロピルトリエトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、n-オクチルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、およびポリトリエトキシシラン、トリアルコキシアリールシラン、イソオクチルトリメトキシ-シラン、N-(3-トリエトキシシリルプロピル)メトキシエトキシエトキシエチルカルバメート、N-(3-トリエトキシシリルプロピル)メトキシエトキシエトキシエチルカルバメート、例えば、ポリジメチルシロキサンを含むポリジアルキルシロキサン、例えば、置換および非置換アリールシランを含むアリールシラン、例えば、置換および非置換アルキルシランを含むアルキルシラン、例えば、メトキシおよびヒドロキシ置換アルキルシラン、ならびにそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。適切なアルキルクロロシランには、例えば、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、オクチルメチルジクロロシラン、オクチルトリクロロシラン、オクタデシルメチルジクロロシラン、およびオクタデシルトリクロロシランが含まれる。他の適切な材料には、例えば、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、およびトリメチルメトキシシランなどのメチルメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、およびトリメチルエトキシシランなどのメチルエトキシシラン、メチルトリアセトキシシラン、ジメチルジアセトキシシラン、およびトリメチルアセトキシシランなどのメチルアセトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルメチルジクロロシラン、ビニルジメチルクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルジメチルメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、およびビニルジメチルエトキシシランなどのビニルシランが含まれる。
【0018】
適切なフッ素化シランには、フッ素化アルキル-、アルコキシ-、アリール-、および/またはアルキルアリール-シラン、ならびに完全過フッ素化アルキル-、アルコキシ-、アリール-、および/またはアルキルアリール-シランが含まれる。適切なフッ素化アルコキシ-シランの例として、ペルフルオロオクチルトリメトキシシランが挙げられる。
【0019】
適切なジシラザンには、例えば、ヘキサメチルジシラザン、ジビニルテトラメチルジシラザン、およびビス(3,3-トリフルオロプロピル)テトラメチルジシラザンが含まれる。シクロシラザンも適切であり、例えば、オクタメチルシクロテトラシラザンが含まれる。
【0020】
適切な疎水性ヒュームドシリカナノ粒子は、商品名CAB-O-SILの下でのCabot Corporation(イリノイ州タスコーラ)、および商品名AEROSILの下でのDegussa,Inc.(ニュージャージー州ピスカタウェイ)を含む多くの販売元から市販されている。適切な疎水性ヒュームドシリカ粒子には、例えば、AEROSIL[R]R202、AEROSIL[R]R805、AEROSIL[R]R812、AEROSIL[R]R812S、AEROSIL[R]R972、AEROSIL[R]R974、AEROSIL[R]R8200、AEROXIDE[R]LE-1、およびAEROXIDE[R]LE-2が含まれる。
【0021】
いくつかの実施形態では、疎水性ヒュームドシリカナノ粒子は、組成物の約0.01重量%~約0.5重量%で存在する。他の実施形態では、疎水性ヒュームドシリカナノ粒子は、組成物の約0.08重量%~約0.12重量%で存在する。疎水性ヒュームドシリカナノ粒子は、組成物の約0.03重量%~約0.5重量%、約0.04重量%~約0.5重量%、約0.03重量%~約0.4重量%、約0.04重量%~約0.4重量%、約0.04重量%~約0.3重量%、約0.05重量%~約0.2重量%、約0.05重量%~約0.1重量%、約0.05重量%~約0.1重量%、約0.06重量%~約0.1重量%、約0.07重量%~約0.1重量%、約0.05重量%~約0.5重量%、約0.05重量%~約0.3重量%、または約0.01重量%~約0.09重量%でも存在し得る。
【0022】
いくつかの実施形態では、組成物は、疎水性エアロゲルナノ粒子をさらに含み得る。疎水性エアロゲルナノ粒子と共に疎水性ヒュームドシリカナノ粒子を組み合わせることにより、コーティングまたは膜に追加の撥水性が提供され得る。疎水性エアロゲルナノ粒子を含むがヒュームドシリカナノ粒子を含まない超疎水性コーティングは、超疎水性で光学的に透明な薄膜を提供し得る。しかし、これらの膜は、少量のせん断力で崩壊する。したがって、このようなコーティングは、摩擦によって容易に破壊され、コーティングされた表面に対する持続的な保護を提供しない。しかしながら、疎水性ヒュームドシリカナノ粒子を含む組成物は、ガラス表面に十分に接着することができる、より耐久性のある超疎水性コーティングを提供する。疎水性エアロゲルを疎水性ヒュームドシリカと組み合わせることにより、エアロゲルは、十分接着されたヒュームドシリカナノ粒子間を「隠す」ことによって、摩擦せん断力から保護されることが可能になる(図1参照)。疎水性エアロゲルナノ粒子を追加することによって、良好な耐久性を維持しながら、膜の超疎水性挙動をさらに高めることができる。
【0023】
適切な疎水性エアロゲルナノ粒子は、密度が約100~200kg/mの密度および平均粒子サイズが約200nm以下の非常に高い表面積(600~800m/g)の粒子である。平均エアロゲルナノ粒子サイズは、粒子の平均線寸法(例えば、実質的に球形の粒子の場合は、平均直径)を表し、平均結粒度もしくは結晶子サイズ、または凝集粒子の場合は、平均凝集体サイズを表し得る。いくつかの実施形態では、平均エアロゲルナノ粒子サイズは、約100nm未満、約75nm未満、または約50nm未満であり得る。しかしながら、過度に小さいエアロゲルナノ粒子(例えば、数ナノメートル以下)は分散するのが困難であり得る。いくつかの実施形態では、平均エアロゲルナノ粒子サイズは、約10nm~約200nm、約25nm~約100nm、または約40nm~約60nmである。
【0024】
疎水性エアロゲルナノ粒子は、平均粒子サイズを約200nm以下に減少させるように加工されている前駆体粉末から入手され得る。疎水性エアロゲルナノ粒子は、ナノスケールの表面凹凸、すなわち、粒子表面の凹んだ特徴および/または細孔によって分離された突出特徴または鋭利な特徴を特色とするナノスケールの表面テクスチャを含み得る。このようなナノスケールの表面凹凸を有する粒子を含むコーティング組成物は、より高い水接触角を有するコーティングをもたらし、こうして疎水性を向上させ得る。当業者が認識するように、表面テクスチャの規模は、平均粒子サイズよりも小さく、一般に、表面の凹凸は少なくとも約50%小さい。例えば、平均粒子サイズが約100nmのエアロゲル粒子は、平均サイズが約25nm以下の表面の凹凸を含み得、平均粒子サイズが約50nmの疎水性粒子は、サイズが約25nm以下の表面の凹凸を含み得る。
【0025】
適切なエアロゲル前駆体粉末は、Cabot Corp.(マサチューセッツ州ボストン)を含む多くの販売元から市販されている。適切なエアロゲル前駆体粉末は、Nanogel(登録商標)Aerogel、LUMIRA(登録商標)Aerogel、およびENOVA(登録商標)Aerogelの商品名の下で販売され、例えばENOVA(商標)Aerogel IC3110、ENOVA(商標)Aerogel MT1100、ENOVA(商標)Aerogel MT1200、ENOVA(商標)Aerogel IC3120を含む。これらの多孔性のナノ構造粒子は、約5マイクロメートル~4mmの範囲の粒子サイズで利用可能であるが、超疎水性コーティングの形成に使用するために、サイズの小さい(例えば、約50nm未満)粒子を入手するために、以下で説明するように機械的に粉砕または超音波処理され得る。
【0026】
別の態様では、本開示は、本明細書に記載されている組成物を作製するための方法を提供する。この方法は、
(a)疎水性フッ素化溶媒、疎水性フッ素化ポリマーを含む結合剤、ヒュームドシリカナノ粒子、および任意選択で、疎水性エアロゲルナノ粒子を組み合わせることと、
(b)組み合わせを混合することと、
(c)混合物を乾燥させて組成物を提供することと、を伴う。
【0027】
組成物が疎水性エアロゲルナノ粒子を含む実施形態では、組み合わせは、混合前に添加される疎水性エアロゲルナノ粒子をさらに含み得る。超音波処理による(例えば、超音波プローブによる)混合は、例えば、集塊したナノ粒子が相当な量の光を散乱させるのに十分な大きさである場合に、疎水性ヒュームドシリカナノ粒子および/または疎水性エアロゲルナノ粒子の集塊を破壊するために使用することができる。
【0028】
有利なことに、本発明者は、このような組成物を基材に容易に適用して、十分接着された光学的に透明な疎水性コーティングを提供することができると判断した。したがって、開示の別の態様は、基材をコーティングするための方法である。基材をコーティングする例示的な方法300が図3に示されている。方法300は、ブロック302において、表面を有する基材を提供することと、ブロック304において、コーティング組成物を表面に隣接して配置することと、を含み得る。特定の実施形態では、方法300は、ブロック304でコーティング組成物を配置することの前に、ブロック308で基材を処理することを含み得る。組成物は、疎水性フッ素化溶媒、疎水性フッ素化ポリマーを含む結合剤、および疎水性ヒュームドシリカナノ粒子を含む。ブロック306では、方法は、フッ素化溶媒を蒸発させることをさらに含み得る。
【0029】
種々の成分の量および同一性は、本開示の組成物に関して上記に別途記載されたとおりであり得る。例えば、本明細書に別途記載されている特定の実施形態では、コーティング組成物は、疎水性エアロゲルナノ粒子をさらに含む。
【0030】
したがって、本明細書に別途記載されている特定の実施形態では、結合剤は、コーティング組成物中に0.3重量%~1.5重量%の範囲内の量で存在する。例えば、特定のこのような実施形態では、結合剤は、コーティング組成物の0.5重量%~1.5重量%、または0.8重量%~1.5重量%、または0.3重量%~1.2重量%、または0.8重量%~1.2重量%の範囲内の量で存在する。本明細書に別途記載されている特定の実施形態では、シリカナノ粒子は、コーティング組成物中に0.01重量%~0.5重量%の範囲内の量で存在する。例えば、特定のこのような実施形態では、シリカナノ粒子は、コーティング組成物の0.03重量%~0.5重量%、または0.05重量%~0.5重量%、または0.08重量%~0.5重量%、または0.01重量%~0.4重量%、または0.01重量%~0.25重量%、または0.01重量%~0.12重量%、または0.03重量%~0.4重量%、または0.05重量%~0.25重量%、または0.08重量%~0.12重量%の範囲内の量で存在する。本明細書に別途記載されている特定の実施形態では、エアロゲルナノ粒子は、コーティング組成物中に0.1重量%~0.5重量%の範囲内の量で存在する。例えば、特定のこのような実施形態では、エアロゲルナノ粒子は、コーティング組成物の0.2重量%~0.5重量%、または0.3重量%~0.5重量%、または0.1重量%~0.4重量%、または0.1重量%~0.3重量%、または0.15重量%~0.45重量%の範囲内の量で存在する。
【0031】
例えば、本明細書に別途記載されている特定の実施形態では、シリカナノ粒子の平均サイズ、またはシリカナノ粒子およびエアロゲルナノ粒子の平均サイズは、10nm~200nm、または25nm~200nm、または50nm~200nm、または100nm~200nm、または10nm~150nm、または10nm~100nm、または10nm~50nm、または25nm~150nm、または50nm~100nmの範囲内である。いくつかの例では、粒子を電磁放射に透過させるために、シリカナノ粒子およびエアロゲルナノ粒子の平均サイズを電磁放射波長(すなわち、電波および/または光)の10%以下と同等にすることが望ましい場合がある。
【0032】
本明細書に別途記載されている特定の実施形態では、コーティング組成物を配置することは、組成物を基材表面上に噴霧することを含む。有利なことに、本発明者らは、当技術分野で既知の、他の十分接着された超疎水性の光透過性薄膜とは異なり、本明細書に別途記載の噴霧可能な組成物を容易に取り扱って適用することができると判断した。従来の組成物は、物理蒸着などの複雑で高価で扱いにくい工程で適用されることが多いが、本明細書に記載の組成物は、例えば、スプレーコーティング、スピンコーティング、ディップコーティング、または当技術分野で既知の他の堆積技術によって基材に適用され得る。典型的には、組成物は、ガラスまたはアクリルなどの光透過性材料から形成された透明な基材上に堆積されるが、他の基材を使用してもよい。
【0033】
本明細書に別途記載されている特定の実施形態では、フッ素化溶媒を蒸発させることは、フッ素化溶媒の沸点を超える温度で基材および/または堆積組成物を空気乾燥または加熱することを含む。例えば、フッ素化溶媒としてFluorinert(商標)FC-40(沸点165°C)を使用する場合、基材を165°Cを超える温度まで加熱して、フッ素化溶媒の蒸発を促進し得る。
【0034】
上述のように、架橋シランは、コーティング組成物に含まれ得る。特定のこのような実施形態では、方法は、配置されたコーティング組成物を硬化させることをさらに含む。本明細書に別途記載されている特定の実施形態では、配置されたコーティング組成物を硬化させることは、架橋コーティングを提供するのに十分な温度まで、配置された組成物を加熱することを含む。例えば、特定のこのような実施形態では、方法は、架橋シランを含むコーティング組成物を、基材表面に隣接して配置することと、配置されたコーティング組成物を、架橋コーティング組成物を提供するのに十分な時間、少なくとも150℃、または少なくとも175℃、または少なくとも200℃の温度で硬化させることと、を含む。特定のこのような実施形態では、方法は、コーティング組成物を、30分~90分、または45分~90分、または60分~90分、または30分~75分、または30分~60分、または45分~75分の範囲内の時間、硬化させることを含み、例えば、本明細書に別途記載されている特定の実施形態では、配置されたコーティング組成物を硬化させることは、配置された組成物を、架橋コーティングを提供するのに十分な温度(例えば、少なくとも150℃の温度)まで、約60分間加熱することを含む。
【0035】
本明細書に別途記載されている特定の実施形態では、方法は、基材を処理すること(例えば、方法300のブロック308)を含む。例えば、特定のこのような実施形態では、基材を処理することは、基材表面の少なくとも一部分上に(すなわち、コーティング組成物を配置する前に)シランを堆積させることを含む。別の例において、本明細書に別途記載されている特定の実施形態では、基材を処理することは、基材をプラズマエッチングすることを含む。特定のこのような実施形態では、基材をプラズマエッチングすることにより、基材表面上にヒドロキシル官能基が生成される。
【0036】
有利なことに、本発明者らは、基材表面を処理することおよび/または架橋シランを含むコーティング組成物を配置することが、コーティング組成物の基材(例えば、基材がガラスなどの親水性の高い材料である場合)への付着を改善することができると判断した。本明細書に別途記載されている特定の実施形態では、架橋シランを含むコーティング組成物は、未処理の基材表面(例えば、有意なヒドロキシル基官能基および/またはシラン官能基を欠く表面)に隣接して配置される。他の実施形態では、架橋シランを欠くコーティング組成物は、処理された基材表面(例えば、プラズマエッチングおよび/またはシラン官能化表面)に隣接して配置される。当然ながら、本明細書に別途記載されている特定の実施形態では、架橋シランを含むコーティング組成物は、処理された基材表面(例えば、プラズマエッチングされた表面)に隣接して配置される。
【0037】
本開示の別の態様は、本明細書に記載されている方法によって調製されるコーティングされた基材である。例えば、特定の実施形態では、コーティングされた基材は、基材と、基材の少なくとも一部分上の超疎水性コーティングとを含む構造である。コーティングが基材上にある場合、結果として得られる膜は、超疎水性であり、光学的に透明で、かつ基材に十分接着される。超疎水性コーティングは、少なくとも130°の水接触角を有し得る。特定のこのような実施形態では、超疎水性コーティングは、少なくとも150°の水接触角を有する。例えば、水接触角は、少なくとも130°、少なくとも135°、少なくとも140°、少なくとも145°、少なくとも150°、少なくとも、155°、少なくとも160°、少なくとも165°、少なくとも170°、または少なくとも175°であり得る。いくつかの実施形態では、水接触角は、前進および後退水接触角の両方を包含する。
【0038】
いくつかの実施形態では、超疎水性コーティングは、300nm~1500nmの波長、または400nm~700nmの可視波長に対して少なくとも95%の光透過率を有し得る。基材も、ガラスまたはプラスチックなどの光透過性材料であり得る。基材も光透過性である実施形態では、コーティングされた基材は、光(例えば、レーザーまたは光学センサーからの)が、限られた干渉で基材および超疎水性コーティングを透過することを可能にする。コーティングの超疎水性はまた、水(例えば、雨)およびほこりまたは塵が表面に蓄積する能力を制限することにより、基材が清潔かつ乾燥した状態を保つことを可能にし得る。
【0039】
超疎水性コーティングはまた、摩擦によって、または環境条件(例えば、太陽、雨、風など)への曝露によって除去されないように基材に付着し得る。超疎水性コーティングに関する本態様は、単一の適用が長期間基材上に残存することを可能にし、超疎水性の光透過性コーティングではこれまで知られていなかった特徴である。
【0040】
いくつかの実施形態では、構造は、超疎水性コーティングと基材との間に配置されたシラン層をさらに含む。シランは、超疎水性組成物の適用前に、基材の表面の表面エネルギーまたは湿潤性を修飾するために用いられ得る。シランは、二脚状シランを含む、線状アルキル、分岐アルキル、またはアリール基を有するケイ素含有化合物であってもよく、任意選択によりフッ素化されていてもよい。いくつかの実施形態では、シランは、疎水性シランである。適切なシランには、例えば、オルガノエトキシシラン、トリメトキシシラン、(ペルフルオロブチル)エチルトリエトキシシラン、(3,3,3-トリフルオロプロピル)トリメトキシシラン、および本明細書に記載の任意のシランが含まれる。しかしながら、フッ素化溶媒が架橋シランを含む場合、フッ素化シラン層は、必要ではない場合がある。
【0041】
本開示の別の態様は、コーティング層を含む物品であり、コーティング層は、内側表面および反対側の外側表面を有し、内側表面は、基材表面に隣接して配置される。コーティング層は、疎水性フッ素化ポリマーおよび複数のナノ粒子を含み、ナノ粒子の少なくとも一部は、コーティング層の外側表面上に部分的に露出している。特定の実施形態では、コーティング層は、本明細書に別途記載されているコーティング組成物の乾燥生成物である。したがって、このような実施形態では、種々の成分の量および同一性は、本開示の組成物に関して上記に別途記載したとおりであり得る。
【0042】
例えば、本明細書に別途記載されている特定の実施形態では、ナノ粒子は、シリカナノ粒子およびエアロゲルナノ粒子のうちの1つ以上から選択される。特定のこのような実施形態では、ナノ粒子の平均サイズは、10nm~200nmの範囲内である。例えば、本明細書に別途記載されている特定の実施形態では、ナノ粒子は、シリカナノ粒子およびエアロゲルナノ粒子のうちの1つ以上から選択され、10nm~200nm、または25nm~200nm、または50nm~200nm、または100nm~200nm、または10nm~150nm、または10nm~100nm、または10nm~50nm、または25nm~150nm、または50nm~100nmの範囲内の平均サイズを有する。
【0043】
本明細書に別途記載されている特定の実施形態では、ナノ粒子は、コーティング層全体にわたって比較的均一に分散している。他の実施形態では、ナノ粒子は、コーティング層の外側表面(例えば、ナノ粒子をコーティング層の表面上に堆積させた生成物)に局在化する。
【0044】
特定の態様では、コーティング層の外側表面上に部分的に露出しているナノ粒子は、例えば、天候に曝されることにより、コーティング層から変位する可能性があり、コーティング層の外側表面に対応する窪みを提供する(図2参照)。本発明者は、コーティング層のナノ粒子規模の平均サイズを有するこのような窪みが、疎水性ナノテクスチャ表面を(例えば、単独でまたは部分的に露出しているナノ粒子と組み合わせて)提供することができると有利に判断した。
【0045】
したがって、本明細書に別途記載されている特定の実施形態では、コーティング層の外側主表面は、複数の窪みをさらに含む。特定のこのような実施形態では、窪みの平均サイズは、10nm~200nm、または25nm~200nm、または50nm~200nm、または100nm~200nm、または10nm~150nm、または10nm~100nm、または10nm~50nm、または25nm~150nm、または50nm~100nmの範囲内である。
【0046】
本明細書に別途記載されている特定の実施形態では、コーティング層は、架橋シラン(例えば、架橋シランを含むコーティング組成物を硬化させた生成物)をさらに含む。本明細書に別途記載されている特定の実施形態では、基材は、複数のヒドロキシル基(例えば、基材表面をプラズマエッチングした生成物)を含む。本明細書に別途記載されている特定の実施形態では、基材表面は、フッ素化シラン(例えば、シランを基材表面上に堆積させた生成物)を含む。本明細書に別途記載されている特定の実施形態では、物品の外側主表面は、少なくとも130°の水接触角を有する。例えば、特定のこのような実施形態では、外側主表面は、少なくとも135°、または少なくとも140°、または少なくとも150°、または少なくとも155°、または少なくとも160°の水接触角を有する。
【0047】
特定の実施形態では、物品のコーティング層を通る光透過率は、300nm~1500nmの範囲内の波長、または400nm~700nmの範囲内の可視波長に対して少なくとも95%である。本明細書に別途記載されている特定の実施形態では、基材も、例えば、ガラスまたはプラスチックなどの光透過性材料であり得る。特定の実施形態では、基材は、光透過性であり、コーティング層および基材は、光(例えば、レーザーまたは光学センサーからの)が比較的少ない干渉(例えば、実質的に干渉なし)で基材およびコーティング層を透過することを可能にする。
【実施例0048】
実施例1:超疎水性組成物の形成
非晶質フルオロポリマー結合剤を、フッ素化溶媒中に溶解する。疎水性ヒュームドシリカナノ粒子を添加する。任意選択で、疎水性エアロゲルナノ粒子を添加する。混合物を音波プローブで混合して、疎水性ヒュームドシリカ粒子および疎水性エアロゲル粒子の集塊を破壊し、乾燥させて所望の材料を提供する。表1は、例示的な組成物および組成物の重量パーセントとしての各成分の量を列挙している。
【表1】
【0049】
実施例2:超疎水性コーティング方法
疎水性シランを微量の水とイソプロピルアルコールまたはアセトンとの混合物に添加して、1体積%のシラン溶液を提供する。任意選択でプラズマエッチングされたガラスウエハーを溶液に浸漬し、次に、空気乾燥してからオーブンにて約100℃で約15~20分間加熱し、シラン官能化表面を提供する。
【0050】
非晶質フルオロポリマー結合剤の1~2重量%のコーティング溶液を、結合剤粉末および溶剤を約50℃で約10分間撹拌することによって、フッ素化溶剤中で調製して、光学的に透明で完全に溶解したフルオロポリマー溶液を提供する。この溶液を、シラン官能基化されたウエハー上にスピンコーティングして、150~450nmのコーティングを提供する。コーティングされたウエハーを空気乾燥してから、オーブンにて約200℃で約60分間加熱する。
【0051】
0.1重量%のエアロゲルナノ粒子および0.2重量%のシリカナノ粒子を含むナノ粒子コーティング溶液を、1~2重量%のフルオロポリマーコーティング溶液中で、ナノ粒子が十分に分散するまで30分単位で音波プローブを用いて混合することによって調製する。ナノ粒子溶液をコーティングされたウエハー上に噴霧して、コーティング層に部分的に埋め込まれた50~75nmのナノ粒子を提供する。次に、ウエハーを空気乾燥してから、オーブンにて約200℃で約60分間加熱する。
【0052】
結果として得られたコーティングの屈折率は約1.33であり、コーティングの水接触角は約165°である。
【0053】
実施例3:超疎水性コーティング方法
フッ素化溶媒中の2重量%のフルオロポリマー結合剤および架橋シランのコーティング溶液を、プラズマエッチングされたガラスウエハー上にスピンコーティングして、150~450nmのコーティングを提供する。コーティングされたウエハーを空気乾燥してから、オーブンにて約150℃で約60分間加熱して、架橋コーティング層を提供する。
【0054】
0.1重量%のエアロゲルナノ粒子および0.2重量%のシリカナノ粒子を含むナノ粒子コーティング溶液を、2重量%のフルオロポリマー/架橋シランコーティング溶液中で、ナノ粒子が十分に分散するまで、音波プローブを用いて約3時間、混合することによって調製する。ナノ粒子溶液をコーティングされたウエハー上に噴霧して、コーティング層に部分的に埋め込まれたナノ粒子を提供する。ウエハーを空気乾燥し、次に、オーブンにて約150℃で約60分間加熱する。
【0055】
結果的に得られたコーティングの屈折率は、約1.41である。
【0056】
実施例4:超疎水性コーティング方法
フルオロポリマー結合剤の層を、物理蒸着(PVD)を使用して、任意選択によりプラズマエッチングされたガラスウエハー上に堆積させる。堆積に続いて、実施例2または3によるナノ粒子コーティング溶液を、コーティングされたウエハー上に噴霧して、コーティング層に部分的に埋め込まれたナノ粒子を提供する。ウエハーを空気乾燥し、次に、オーブンにて150~200℃で60分間加熱する。
【0057】
例5:コーティングの過度な風化
実施例2のコーティングされたウエハーを、長期間にわたって模擬降雨および風に曝した。部分的に埋め込まれたナノ粒子の一部分がコーティングから変位し、結果として、残りの部分的に埋め込まれたナノ粒子およびナノスケールの窪みを含む表面になる(図2を参照)。風化後の表面は、依然として超疎水性であり、水接触角は約135°である。
【0058】
本明細書に記載の配列が、例示のみを目的としていることを理解されたい。したがって、当業者であれば、他の配列および他の要素を代わりに使用することができ、いくつかの要素を所望の結果に応じて一括して省略してもよいことを理解するであろう。
【0059】
種々の態様および実装態様が本明細書において開示されているが、当業者には、その他の態様および実装態様が明らかとなるであろう。本明細書に開示される種々の態様および実施形態は、例示を目的とするものであり、限定することを意図するものではなく、かかる特許請求の範囲の権利が与えられる同等物の全範囲と共に、真の範囲および趣旨は、以下の特許請求の範囲により示される。本明細書において使用される専門用語が、特定の実施形態を説明するためのものに過ぎず、限定することを意図するものではないことも理解されたい。
図1
図2
図3
【手続補正書】
【提出日】2022-05-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
疎水性フッ素化溶媒、
疎水性フッ素化ポリマーを含む結合剤、
疎水性ヒュームドシリカナノ粒子、および
疎水性エアロゲルナノ粒子を含む、組成物。
【請求項2】
前記結合剤が、前記組成物の約0.3~約1.5重量%で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記結合剤が、前記組成物の約0.8~約1.2重量%で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記疎水性ヒュームドシリカナノ粒子が、前記組成物の約0.01~約0.5重量%で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記疎水性ヒュームドシリカナノ粒子が、前記組成物の約0.08~約0.12重量%で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記結合剤は非晶質で、光学的に透明で、前記疎水性フッ素化溶媒に可溶である、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記疎水性ヒュームドシリカナノ粒子が、フッ素化材料で化学的に処理される、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記疎水性ヒュームドシリカナノ粒子が、ポリジメチルシロキサン(PDMS)で化学的に処理される、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記ヒュームドシリカナノ粒子の平均サイズが、10nm~200nmの範囲内である、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記疎水性エアロゲルナノ粒子の平均サイズが、10nm~200nmの範囲内である、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記疎水性エアロゲルナノ粒子が、前記組成物の約0.1~約0.5重量%で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
基材と、
前記基材上の超疎水性コーティングであって、請求項1に記載の前記組成物を含む超疎水性コーティングと
を含む構造。
【請求項13】
前記超疎水性コーティングは、約130°以上の水接触角を有する、請求項12に記載の構造。
【請求項14】
前記超疎水性コーティングは、約130°以上の前進および後退の両方の水接触角を有する、請求項12に記載の構造。
【請求項15】
前記超疎水性コーティングは、400nm~700nmの波長に対して少なくとも95%の光透過率を有する、請求項12に記載の構造。
【請求項16】
前記基材は、光学的に透明である、請求項12に記載の構造。
【請求項17】
前記超疎水性コーティングと前記基材との間に配置されたシラン層をさらに含む、請求項12に記載の構造。
【外国語明細書】