(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022097637
(43)【公開日】2022-06-30
(54)【発明の名称】抗LGR5モノクローナル抗体の投与
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20220623BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220623BHJP
A61P 35/04 20060101ALI20220623BHJP
A61K 31/337 20060101ALI20220623BHJP
A61K 31/4745 20060101ALI20220623BHJP
A61K 31/513 20060101ALI20220623BHJP
A61K 31/519 20060101ALI20220623BHJP
A61K 31/7068 20060101ALI20220623BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220623BHJP
C07K 16/28 20060101ALN20220623BHJP
【FI】
A61K39/395 N
A61K39/395 T
A61P35/00
A61P35/04
A61K31/337
A61K31/4745
A61K31/513
A61K31/519
A61K31/7068
A61P43/00 121
C07K16/28 ZNA
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022077913
(22)【出願日】2022-05-11
(62)【分割の表示】P 2018549944の分割
【原出願日】2017-03-21
(31)【優先権主張番号】62/311,631
(32)【優先日】2016-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】509106566
【氏名又は名称】バイオノミクス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100126505
【弁理士】
【氏名又は名称】佐貫 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100131392
【弁理士】
【氏名又は名称】丹羽 武司
(72)【発明者】
【氏名】レイエス,クリストファー エル
(72)【発明者】
【氏名】チュウ,ピーター
(72)【発明者】
【氏名】ドゥーリン,エリザベス
(72)【発明者】
【氏名】イグレシアス,ホセ
(57)【要約】
【課題】本出願は、がん生物学の分野に関し、LRG5と特異的に結合するヒト化抗体またはその抗原結合性フラグメントを投与して特定のがんを治療する方法や当該治療のための組成物を提供することを課題とする。
【解決手段】LRG5と特異的に結合するヒト化抗体またはその抗原結合性フラグメントを投与して特定のがんを治療する方法や当該治療のための組成物を提供することができた。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロイシンリッチリピート含有Gタンパク質共役受容体5(LGR5)と特異的に結合するヒト化モノクローナル抗体を、化学療法薬と併用してそれを必要とするヒト対象に投与することにより、転移性大腸がんを患っている前記ヒト対象を治療するための医薬組成物であって:
前記モノクローナル抗体は、配列番号13で表されるアミノ酸配列を含む重鎖および配列番号14で表されるアミノ酸配列を含む軽鎖を含み;
前記モノクローナル抗体は、少なくとも4週間、毎週静脈内に投与され;
前記モノクローナル抗体の投与量は、2.5mg/kg~15mg/kgであり;
前記モノクローナル抗体の初回用量が、前記化学療法薬の投与前に投与されるものである、
前記組成物。
【請求項2】
前記対象が、モノクローナル抗体の投与前に転移性疾患に対する少なくとも1回の化学療法を受けている対象である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記モノクローナル抗体が、フォリン酸、フルオロウラシル、およびイリノテカンと併用して投与されるものである、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記イリノテカンの初回用量は180mg/m2であり、90分かけて投与され;前記フォリン酸の初回用量は400mg/m2であり、120分かけて、かつ、前記イリノテカンの初回用量と同時に投与され;前記フルオロウラシルの初回用量は400mg/m2であり、前記フォリン酸の初回用量の投与後に投与され;前記フォリン酸、フルオロウラシル、およびイリノテカンが14日毎に投与されるものである、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記対象が、既知の脳転移がないこと;平均余命12週間以上であること;前記モノクローナル抗体の投与前の前記14日間中に成長因子の助けなしに1500細胞/mLを超える好中球絶対数を有すること;前記モノクローナル抗体の投与前の前記14日間中に輸血なしで100,000血小板/mLを超える血小板数を有すること;9.0g/dL以上のヘモグロビンを有すること;および3g/dL以上の血清アルブミンを有することからなる群から選択される特徴を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記化学療法薬が、フォリン酸、フルオロウラシル、イリノテカン、ゲムシタビンおよびナノ粒子アルブミン結合パクリタキセル(アブラキサン)からなる群から選択される、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項7】
前記化学療法薬が、ベバシズマブ、アフリベルセプト、セツキシマブ、およびパニツムマブからなる群から選択される、請求項1又は2に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、2016年3月22日に出願され、「抗LGR5モノクローナル抗体の投与」と題された米国特許仮出願第62/311,631号(参照することにより本明細書に組み入れられるものとする)の優先権を主張する。
【0002】
技術分野
本発明は、概して、がん生物学の分野に関する。本明細書中に提供される方法および組成物のいくつかの実施形態は、ロイシンリッチリピート含有Gタンパク質共役受容体5(LGR5)と特異的に結合するヒト化抗体またはその抗原結合性フラグメントを投与して特定のがんを治療することに関する。
【0003】
配列リストの参照
本願は、電子フォーマット式配列リストと共に出願されるものである。配列リストは、約40Kbのサイズであり、2017年3月8日に作成し、BIONO14WOSEQLISTINGという題のファイルとして提供される。この配列リストの電子フォーマットの情報は、その全文を参照することにより本明細書に組み入れられるものとする。
【背景技術】
【0004】
GPR49/HG38/FEXとしても公知であるロイシンリッチリピート含有Gタンパク質共役受容体5(LGR5)は、ロイシンリッチリピート含有Gタンパク質共役受容体(LGR)/糖タンパク質ホルモン受容体と構造的に類似する受容体タンパク質のGタンパク質共役受容体(GPR)タンパク質ファミリーに属する。LGRは、3つのサブグループに分けられる:(1)甲状腺刺激ホルモン(TSH)受容体、卵胞刺激ホルモン(FSH)受容体、および黄体ホルモン(LH)受容体を含む糖タンパク質ホルモン受容体;(2)リラキシン受容体LGR7およびLGR8;ならびに(3)LGR4、LGR5、およびLGR6。LGR5は、腸、骨格筋、胎盤、脳、および脊髄を含むいくつかの組織において発現される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書中提供される方法および組成物の実施形態としては、ロイシンリッチリピート含有Gタンパク質共役受容体5(LGR5)と特異的に結合するヒト化モノクローナル抗体の有効量を、それを必要とする対象に投与することを含む転移性大腸がんを患っているヒト対象の治療方法であって、該モノクローナル抗体は配列番号13を含む重鎖および配列番号14を含む軽鎖を含み;該モノクローナル抗体は、少なくとも4週間、毎週静脈内に投与され;および該モノクローナル抗体の投与量は、約2.5mg/kg~約15mg/kgである該方法が挙げられる。
【0006】
いくつかの実施形態では、モノクローナル抗体を、フォリン酸、フルオロウラシル、およびイリノテカンと併用して投与する。いくつかの実施形態では、モノクローナル抗体の初回用量を、フォリン酸、フルオロウラシル、およびイリノテカンの投与前に投与する。いくつかの実施形態では、イリノテカンの初回用量は約180mg/m2であり、約90分かけて投与し;フォリン酸の初回用量は約400mg/m2であり、約120分かけて、かつ、イリノテカンの初回用量と同時に投与し;フルオロウラシルの初回用量は約400mg/m2であり、フォリン酸の初回用量の投与後に投与し;フォリン酸、フルオロウラシル、およびイリノテカンを14日毎に投与する。
【0007】
本明細書中提供される方法および組成物の実施形態としては、ロイシンリッチリピート含有Gタンパク質共役受容体5(LGR5)と特異的に結合するヒト化モノクローナル抗体またはその抗原結合性フラグメントの有効量を、それを必要とする対象に投与することを含むがんを患っている対象の治療方法であって、該モノクローナル抗体は配列番号13を含む重鎖および配列番号14を含む軽鎖を含み;該モノクローナル抗体は、少なくとも4週間、毎週静脈内に投与され;および該モノクローナル抗体の投与量は、約2.5mg/kg~約15mg/kgである該方法が挙げられる。
【0008】
いくつかの実施形態では、モノクローナル抗体を、化学療法薬と併用して投与する。いくつかの実施形態では、化学療法薬が、フォリン酸、フルオロウラシル、イリノテカン、ゲムシタビンおよびナノ粒子アルブミン結合パクリタキセル(アブラキサン)からなる群から選択される。
【0009】
いくつかの実施形態では、モノクローナル抗体の初回用量を、化学療法薬の投与前に投与する。
【0010】
いくつかの実施形態では、モノクローナル抗体を、フォリン酸、フルオロウラシル、およびイリノテカンと併用して投与する。いくつかの実施形態では、モノクローナル抗体の初回用量を、フォリン酸、フルオロウラシル、およびイリノテカンの投与前に投与する。
【0011】
いくつかの実施形態では、イリノテカンの初回用量は約180mg/m2であり、約90分かけて投与する。いくつかの実施形態では、フォリン酸の初回用量は約400mg/m2であり、約120分かけて、かつ、イリノテカンの初回用量と同時に投与する。いくつかの実施形態では、フルオロウラシルの初回用量は約400mg/m2であり、フォリン酸の初回用量の投与後に投与する。いくつかの実施形態では、フォリン酸、フルオロウラシル、およびイリノテカンを14日毎に投与する。
【0012】
いくつかの実施形態では、モノクローナル抗体を、ベバシズマブ、アフリベルセプト、セツキシマブ、およびパニツムマブからなる群から選択される追加の治療薬と併用して投与する。
【0013】
いくつかの実施形態では、がんが、固形腫瘍を含む。いくつかの実施形態では、がんが、結腸がん、大腸がん、膵がん、乳がん、および肺がんからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、がんは、APC変異を含む結腸がん、KRAS変異を含む結腸がん、転移性大腸がん、転移性膵がん、トリプルネガティブ乳がん、および小細胞肺がんからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、がんが、転移性大腸がんである。
【0014】
いくつかの実施形態では、対象が、モノクローナル抗体の投与前に転移性疾患の化学療法による少なくとも1例の無効例の前治療歴;既知の脳転移がないこと;平均余命12週間以上であること;モノクローナル抗体の投与前の14日間中に成長因子の助けなしに約1500細胞/mLを超える好中球絶対数を有すること;モノクローナル抗体の投与前の14日間中に輸血なしで100,000血小板/mLを超える血小板数を有すること;9.0g/dL以上のヘモグロビンを有すること;および3g/dL以上の血清アルブミンを有することからなる群から選択される特徴を有する。
【0015】
いくつかの実施形態では、対象が、哺乳類、例えば、ヒトである。
【0016】
本明細書中提供される方法および組成物の実施形態としては、ロイシンリッチリピート含有Gタンパク質共役受容体5(LGR5)と特異的に結合するヒト化モノクローナル抗
体の用量、および適切な医薬用担体を含む医薬組成物を収容する容器であって、モノクローナル抗体の用量が約2.5mg/kg~約15mg/kgである該容器が挙げられる。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、静脈内投与に適している。
【0017】
本明細書中提供される方法および組成物の実施形態としては、転移性大腸がんの治療用途のロイシンリッチリピート含有Gタンパク質共役受容体5(LGR5)と特異的に結合するヒト化モノクローナル抗体であって、該モノクローナル抗体は、配列番号13を含む重鎖および配列番号14を含む軽鎖を含み;該モノクローナル抗体は、少なくとも4週間、毎週静脈内に投与され;および該モノクローナル抗体の投与量は、約2.5mg/kg~約15mg/kgである該ヒト化モノクローナル抗体が挙げられる。いくつかの実施形態では、モノクローナル抗体を、フォリン酸、フルオロウラシル、およびイリノテカンと併用して投与する。いくつかの実施形態では、モノクローナル抗体の初回用量を、フォリン酸、フルオロウラシル、およびイリノテカンの投与前に投与する。いくつかの実施形態では、イリノテカンの初回用量は約180mg/m2であり、約90分かけて投与し;フォリン酸の初回用量は約400mg/m2であり、約120分かけて、かつ、イリノテカンの初回用量と同時に投与し;フルオロウラシルの初回用量は約400mg/m2であり、フォリン酸の初回用量の投与後に投与し;フォリン酸、フルオロウラシル、およびイリノテカンを14日毎に投与する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】ヒト化モノクローナル抗体18G7H6A3の、ヒトLGR5(CHO)との直接FACS結合を示すグラフである。
【
図2】CT3 CRC腫瘍体積に対する単独および18G7H6A3との併用で用いたFOLFIRIの効果を示すグラフである。
【
図3】18G7H6A3治療が、MDA-MB-231-LM3原発腫瘍体積を有意に縮小したことを示すグラフである。
【
図4】CT1またはCT3腫瘍を有するマウスのFolFiri療法が、LGR5の上方制御をもたらすことを示すグラフである。
【
図5】化学療法が、JH109腫瘍におけるLGR5の上方制御(4倍超)をもたらすことを示す棒グラフである。
【
図6】化学療法(ゲムシタビン)と併用して投与される場合に観察された18G7H6A3の顕著な活性を示すグラフである。
【
図7】抗体18G7H6A3が、CT1がん幹細胞集団における生存事象数を減少させることを示す点プロットである。
【
図8】FOLFIRIと併用して抗LGR5抗体18G7H6A3で治療したマウスから単離した細胞は、FOLFIRI単独で治療したマウスから単離した細胞と比較して、腫瘍形成能を非常に低下させたことを示す線グラフである。
【
図9】18G7H6A3 FOLFIRIの併用から再移植細胞が、進行までの時間を有意に遅らせたことを示す線グラフである。
【
図10】化学療法(FOLFIRI)と併用して予防的に投与される場合に観察されたヒト化抗体18G7H6A3の顕著な活性を示す線グラフである。
【
図11】抗体18G7H6A3は、ホスホ-Thr41/Ser45-β-カテニン免疫アッセイにより示されたインビボ腫瘍細胞におけるWntシグナル伝達を阻害することができることを示す点プロットである。
【
図12】可溶な抗体18G7H6A3の濃度増加は、Wnt3a+RSPO2の併用によるTCF/LEFプロモーター誘導GFP発現の誘導に影響を及ぼさず、抗LGR5抗体18G7H6A3はRSPO誘導TCF/LEFプロモーター活性を遮断しないことを示す棒グラフである。ポジティブコントロール抗体C12は、Wnt3a/RSPO2誘導TCF/LEFプロモーター活性を阻害することが分かる。
【
図13】R-スポンジンは、LGR5と結合する抗体18G7H6A3を遮断しないことを示す折れ線グラフである。
【
図14】LGR5と結合する抗体18G7H6A3は、三元複合体の生成を阻害することを示す棒グラフである。
【
図15】治療サンプルにおけるLGR5の発現レベルを示す。
【
図16】治療サンプルにおけるCTNNB1発現、およびp-β-カテニン発現のレベルを示す。
【
図17-1】様々な治療サンプルにおける差次的に発現された転写産物を示す。
【
図18】18G7H6A3-(BNC101)治療腫瘍における差次的に発現された遺伝子を示す。
【
図19】FOLFIRI治療腫瘍における差次的に発現された遺伝子を示す。
【
図20】併用治療腫瘍における差次的に発現された遺伝子を示す。
【
図21-1】循環HLA+細胞におけるLGR5のレベルを示す。
【
図23】ゲムシタビン/アブラキサンまたはゲムシタビン/アブラキサンおよび18G7H6A3で治療したマウスの動物生存率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本明細書中提供される方法および組成物のいくつかの実施形態は、ロイシンリッチリピート含有Gタンパク質共役受容体5(LGR5)と特異的に結合するヒト化抗体またはその抗原結合性フラグメントを投与して特定のがんを治療することに関する。このようなヒト化抗体またはその抗原結合性フラグメントの実施形態は、2017年10月8日に公開されたPCT国際公開第2015/153916号(その全文を参照することにより組み入れられるものとする)に開示されている。
【0020】
LGR5は、腸中の正常幹細胞および腫瘍開始細胞の極めて特異的マーカーとして系統追跡研究により同定された。以前に、その発現がWnt発現の抑止後にクエンチされた約150遺伝子が同定された。これらの「Wnt標的遺伝子」の網羅的な特性解析により、LGR5が、陰窩基底部において10~14の増殖する楔状の細胞集団で選択的に発現されることが分かった。これらの陰窩基底部円柱細胞は、幹細胞集団の候補であると以前に提案された。遺伝性lacZ-LGR5レポーター遺伝子を用いたインビボ系統追跡を使用して、LGR5腸管幹細胞は、陰窩基底部から開始し絨毛先端へ伸長するlacZ+子孫細胞の途切れないリボンを生じる成人腸管幹細胞集団の自己再生する多分化能であることが確認された。
【0021】
がん幹細胞(CSC)に対するLGR5の特異的発現は、選択的および効果的にCSCを標的化する機会を提供する。LGR5は、正常な組織と比較して、大腸がん細胞(CRC)、膵臓および大部分の他の固形腫瘍において高度に過剰発現され、これにより、CRC、膵がん、乳がん、卵巣がん、肺がん、胃がんおよび肝がんにおいてCSCを標的化する広い治療濃度域を提供する。
【0022】
CRCにおけるゲートキーパー変異は、大腸腺腫症(APC)の欠損であり、通常、結腸陰窩における幹細胞自己再生と分化のバランスを調節するように作用するWntシグナル伝達の異常活性化をもたらす。腸管幹細胞におけるWntシグナル伝達の調節不全は、悪性CRCへの前駆体である結腸における腺腫性ポリープの形成を引き起こす。LGR5幹細胞は、誘導性APC遺伝子ノックアウトマウスを、そのLGR5幹細胞が4種(GFP/YFP/ECFP/RFP)の蛍光遺伝子マーカーの1つを用いて特異的におよびラ
ンダムに標識化されたマウスと交配したストラテジーを使用して、これらのマウス腸管腫瘍の起源または根源であると確認された。APC欠失誘導4週間後の単色腫瘍(すなわち、全GFPまたは全RFP)の外観は、これらの腫瘍が1つのLGR5幹細胞に起因することを確証させた。さらに、このモデルは、LGR5幹細胞中の蛍光遺伝子タグが、異なる色に反転することを可能とし、その結果、赤い腫瘍を生成するRFP+LGR5がん幹細胞は、まだ腫瘍を播種しているが以前の全ての赤いGFP+腫瘍塊に浸潤する青い腫瘍細胞を今生じているECFP+LGR5がん幹細胞への途中の流れの中で形質転換することができた。この反転実験は、LGR5 CSCが腸管腫瘍の成長を開始および播種することができる腸管腫瘍の起源であることだけでなく、これらが腫瘍形成を継続的に維持する(すなわち、長期再構築能を有する)ことのさらなる確証を提供した。
【0023】
がんにおけるLGR5の機能的役割は、リボ核酸干渉(RNAi)ノックダウン試験により確証された。CRC腫瘍セルラインのパネル中のLGR5のノックダウンは、インビトロ軟寒天コロニーの成長、およびインビボHCT116結腸腫瘍異種移植の成長も著しく阻害した。その後、LGR5 RNAiノックダウンは、インビトロ患者由来のCRC腫瘍細胞からのCSCコロニーの成長も低下させることが示された。最終的に、分類されたLGR5+患者由来異種移植CRC腫瘍細胞は、コントロールLGR5細胞と比較して、インビボで高い腫瘍形成能を有することが分かった。
【0024】
CSCは、外科手術および標準治療の化学療法で治療された多くのがん患者の高頻度の腫瘍再発の原因となると考えられる。例えば、乳がん患者からのCD44+CSCは、化学療法後に高濃度になり、高レベルのCSCは化学療法に対する臨床反応不良と関連付けられることが分かった。同様に、転移性CRCにおいて、LGR5の発現は、化学療法後に傷害肝において発現が上方制御され、化学療法に応答してLGR5 CSC増加は転移性疾患を開始および/または苛立たせることを示唆している。実際に、LGR5の発現は、原発CRC腫瘍と比較して、転移性部位において有意に大きいことが分かった。
【0025】
抗LGR5抗体
本明細書中で使用されるとき、「抗体」という語は、これらに限定されないが、合成抗体、モノクローナル抗体、組換え製造された抗体、細胞内抗体、多重特異性抗体(二重特異性抗体を含む)、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、合成抗体、一本鎖Fv(scFv)、Fabフラグメント、F(ab’)フラグメント、ジスルフィド結合Fv(sdFv)(二重特異性sdFvを含む)、および抗イディオタイプ(抗Id)抗体、ならびに上記のいずれかのエピトープ結合フラグメントを含む。本明細書中提供されるいくつかの実施形態の抗体は、単一特異性、二重特異性、三重特異性またはより多重特異性であってよい。多重特異性抗体は、ポリペプチドの異なるエピトープに特異的であってもよく、非相同性ポリペプチドまたは固形支持材料などの非相同エピトープだけでなく、ポリペプチドの両方に特異的であってもよい。例えば、PCT国際公開第93/17715号;国際公開第92/08802号;国際公開第91/00360号;国際公開第92/05793号;Tutt, et al., J. Immunol. 147:60-69 (1991);米国特許第4,474,893号;同第4,714,681号;同第4,925,648号;同第5,573,920号;同第5,601,819号;Kostelny et al., J. Immunol. 148:1547-1553 (1992)(これら各々は、その全文を参照することにより本明細書中に組み入れられるものとする)参照。
【0026】
本明細書中で使用されるとき、LGR5としては、NCBI受託番号NP_003658.1またはそのフラグメント(NM_003667.2内のコードヌクレオチド配列またはそのフラグメントによりコードされる)のポリペプチドが挙げられるが、これらに限定されない。NCBI受託番号NP_003658.1のアミノ酸配列および全エントリ
ーならびにNM_003667.2のヌクレオチド配列および全エントリーは、これら全体を参照することにより完全に組み入れられるものとする。本明細書中考えられるLGR5フラグメントの例としては、LGR5外部ドメイン、膜貫通ドメイン、または細胞内ドメインおよびその部分が挙げられる。
【0027】
いくつかの実施形態は、下記実施例において製造、記載されている18G7H6A3および18G7H6A1として設計される抗LGR5抗体を含む抗LGR5抗体の軽鎖および/または重鎖を産生するハイブリドーマに関する。1つの態様では、ハイブリドーマは、下記実施例において製造、記載されている18G7H6A3および18G7H6A1のものなどのヒト化または完全ヒトモノクローナル抗体の軽鎖および/または重鎖を産生する。
【0028】
いくつかの実施形態は、下記実施例において製造、記載されている18G7H6A3および18G7H6A1として設計される抗LGR5抗体のいずれか1つを含む抗LGR5抗体の軽鎖および/または重鎖をコードする核酸分子に関する。いくつかの態様では、核酸分子は、下記実施例において製造、記載されている抗体18G7H6A3および18G7H6A1のものなどのヒト化または完全ヒトモノクローナル抗体の軽鎖および/または重鎖をコードする。
【0029】
様々な実施形態では、下記実施例において製造、記載されている18G7H6A3および18G7H6A1として設計される抗LGR5抗体のいずれか1つを含む抗LGR5抗体の軽鎖および/または重鎖をコードする核酸分子もしくは分子を含むベクターを対象とする。
【0030】
様々な実施形態では、抗体のグリコシル化を修飾することができる。例えば、脱グリコシル化抗体を製造することができる(すなわち、抗体はグリコシル化を欠いている)。グリコシル化は、例えば、標的抗原に対する抗体親和性を増大するように変更することができる。このような炭水化物の修飾を、例えば、抗体配列内で1つ以上の部位のグリコシル化を変更することにより行うことができる。例えば、1つ以上の可変領域フレームワークグリコシル化部位の脱離によってこの部位においてグリコシル化の消失をもたらす1つ以上のアミノ酸置換を行うことができる。このような脱グリコシル化が抗原に対する抗体親和性を増大してもよい。このようなアプローチは、 米国特許第5,714,350号お
よび同第6,350,861号(これらの各々はその全文を参照することにより本明細書中に組み入れられるものとする)にさらに詳細に記載されている。
【0031】
いくつかの実施形態では、抗体は、 NCBI受託番号NP_003658.1(配列
番号47)またはそのフラグメントのヒトLGR5ポリペプチドと、少なくとも60%の同一性、または少なくとも70%の同一性、または少なくとも80%の同一性、または少なくとも85%の同一性、または少なくとも90%の同一性、または少なくとも95%の同一性、または少なくとも97%の同一性、または少なくとも99%の同一性、または100%の同一性を有するLGR5ポリペプチドを含むかまたはからなるポリペプチドと特異的に結合する。このようなフラグメントは、例えば、LGR5ポリペプチドの少なくとも約5、10、15、20、25、50、75、100、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、もしくは900の連続または非連続アミノ酸または前述の長さのいずれかの間のいずれかの数の連続または非連続アミノ酸であり得る。
【0032】
いくつかの実施形態では、抗体は抗体18G7H6A3であり、配列番号13の重鎖アミノ酸配列および配列番号11のDNA配列を含む。いくつかの実施形態では、抗体は抗体18G7H6A3であり、配列番号19を含む重鎖可変ドメインを有する。いくつかの
実施形態では、抗体は抗体18G7H6A3であり、 配列番号14の軽鎖配列を含む。
他の実施形態では、抗体は抗体18G7H6A3であり、 配列番号21の軽鎖可変ドメ
インを含む。
【0033】
いくつかの実施形態では、抗体は、上記配列の配列と80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一性である配列を含む。いくつかの実施形態では、抗体は、上記配列の重鎖、軽鎖、または可変ドメインの29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、または118残基にわたって上記抗体配列と100%同一性である配列を含む。
【0034】
いくつかの実施形態では、抗体は、抗体配列と80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一性である配列を含む。いくつかの実施形態では、抗体は、抗体配列と84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一性である配列を含む。いくつかの実施形態では、抗体は、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、または111残基にわたって抗体配列と100%同一性である配列を含む。
【0035】
いくつかの実施形態では、本明細書中提供される抗LGR5抗体は、GYSFTAYW(配列番号23)を含む重鎖CDR1、ILPGSDST(配列番号2)を含む重鎖CDR2、およびARSGYYGSSQY(配列番号3)を含む重鎖CDR3を含む。いくつかの実施形態では、本明細書中提供される抗LGR5抗体は、ESVDSYGNSF(配列番号4)を含む軽鎖CDR1、LTSを含む軽鎖CDR2、およびQQNAEDPRT(配列番号33)を含む重軽鎖CDR3を含む。
【0036】
いくつかの実施形態では、本明細書中提供される抗LGR5抗体は:(a)1、2、3、または4アミノ酸置換を有する上記配列の変異体を含む重鎖CDR1を含む。抗体は、1、2、3、または4アミノ酸置換を含む多様体を有する重鎖CDR2を有してもよい。抗体は、1、2、3、または4アミノ酸置換を含む変異体を有する重鎖CDR3を有してもよい。重鎖のこれらの修飾に加えて、抗体は、1、2、3、または4アミノ酸置換を含む変異体を有する軽鎖CDR1を有してもよい。抗体は、1、2、3、または4アミノ酸置換を含む変異体を有する軽鎖CDR2を有してもよい。抗体は、1、2、3、または4アミノ酸置換を有する軽鎖CDR3を有してもよい。いくつかの実施形態では、アミノ酸置換は保存アミノ酸置換である。
【0037】
いくつかの実施形態では、本明細書中提供される抗LGR5抗体は、添付の配列リスト中、本明細書で記載された配列と少なくとも80%または90%配列同一性を有する重鎖可変領域を含む抗体を含む。抗体は、本明細書で記載された抗体配列と少なくとも80%または90%配列同一性を有する軽鎖可変領域を有してもよい。
【0038】
2つのアミノ酸配列(または2つの核酸配列)のパーセント同一性を、例えば、最適比較目的のための配列アラインメント(例えば、第一配列の配列においてギャップを導入することができる)により決定することができる。それから、対応する位置におけるアミノ酸またはヌクレオチドを比較し、2つの配列間のパーセント同一性は配列により共有される同じ位置の数の関数である(すなわち、%同一性=同位置数/位置の総数×100)。この2つの配列の実際の比較を、周知の方法により、例えば、数学アルゴリズムにより行うことができる。このような数学アルゴリズムの特定の非限定的例は、Karlin et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90:5873-5877 (1993)(これはその全文を参照することにより本明細書中に組み入れられるものとする)に記載されている。このようなアルゴリズムを、Schaffer et al., Nucleic Acids Res., 29:2994-3005 (2001)(その全文を参照することにより本明細書中に組み入れられるものとする)に記載されているように、BLASTNおよびBLASTXプログラム(バージョン2.2)に組込む。BLASTおよびギャップドBLASTプログラムを利用する場合、それぞれのプログラム(例えば、BLASTN)の初期パラメーターを使用することができる。2002年4月10日に利用可能な範囲でhttp://www.ncbi.nlm.nih.gov参照。1つの実施形態では、検索されたデータベースは、非冗長の(NR)データベースであり、配列比較のためのパラメーターを:フィルターなし;期待値10;語長3で設定することができ;マトリックスはBLOSUM62であり、ならびにギャップコストは11のExistenceおよび1のExtensionを有する。
【0039】
いくつかの実施形態は、可変軽(VL)ドメインおよび/または可変重(VH)ドメイン中に1つ以上のアミノ酸残基を含み、下記実施例で製造、記載される18G7H6A3および18G7H6A1として設計される抗LGR5抗体のいずれか1つを含む上記抗体の変異体も包含する。いくつかは、1つ以上のVL CDRおよび/または1つ以上のVH CDR中に1つ以上の追加のアミノ酸残基置換を有する上記抗体の変異体も包含する。上記抗体のVHドメイン、VH CDR、VLドメインおよび/またはVL CDR中への置換の誘導により生成された抗体を、インビトロおよびインビボ、例えば、LGR5とのその結合能について試験することができる(例えば、これらに限定されないが、ELISAおよびBIAcoreを含む免疫アッセイによる)。
【0040】
様々な実施形態として、LGR5と特異的に結合する下記実施例で製造、記載される18G7H6A3および18G7H6A1として設計される抗LGR5抗体のいずれか1つなどの、抗LGR5抗体のVHドメイン、VH CDR、VLドメイン、またはVL CDRの誘導体を含むLGR5と特異的に結合する抗体が挙げられる。当業者に公知の標準技術を使用して、例えば、部位特異的変異誘発およびPCR介在性変異誘発を含む、抗体をコードするヌクレオチド配列中の変異(例えば、付加、欠失、および/または置換)を誘導することができる。1つの実施形態では、VHおよび/またはVL CDR誘導体としては、元のVHおよび/またはVL CDRに対して、25未満のアミノ酸置換、20未満のアミノ酸置換、15未満のアミノ酸置換、10未満のアミノ酸置換、5未満のアミノ酸置換、4未満のアミノ酸置換、3未満のアミノ酸置換、または2未満のアミノ酸置換が挙げられる。別の実施形態では、VHおよび/またはVL CDR誘導体は、1つ以上の予測される非必須アミノ酸残基(すなわち、抗体がLGR5と特異的に結合するために重要でないアミノ酸残基)において成される保存アミノ酸置換(例えば、上記)を有する。あるいは、飽和変異誘発によるなど、VHおよび/またはVL CDRコード配列の全
部または部分に沿ってランダムに変異を導入することができ、得られた変異体を生物活性に対してスクリーニングして活性を保持する変異体を同定することができる。変異誘発後、コードされた抗体を発現させることができ、抗体活性を決定することができる。
【0041】
いくつかの実施形態は、LGR5と特異的に結合する抗体またはそのフラグメントも包含し、該抗体は、下記実施例で製造、記載される18G7H6A3および18G7H6A1として設計されるものを含む抗LGR5抗体のいずれか1つを含む本明細書に記載された抗体のいずれかの可変重鎖および/または軽鎖のアミノ酸配列と、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも99%同一性である可変重鎖および/または可変軽鎖のアミノ酸配列を含む。
【0042】
別の実施形態は、下記実施例で製造、記載される18G7H6A3および18G7H6A1として設計される抗LGR5抗体のいずれか1つなどの、抗LGR5抗体のいずれか部分における保存アミノ酸置換の導入を含む。「保存的アミノ酸置換」が機能的に均等なアミノ酸を置換するアミノ酸置換を表すことは、当技術分野では周知である。保存アミノ酸変化は、得られたペプチドのアミノ酸配列においてサイレント変化をもたらす。例えば、同様の極性の1つ以上のアミノ酸は機能的均等物として作用し、ペプチドのアミノ酸配列内のサイレント変化をもたらす。中性荷電である置換、およびより小さい残基によって残基を置換する置換を、たとえこの残基が異なる基であっても「保存的置換」と見なしてもよい(例えば、より小さいイソロイシンによるフェニルアラニンの置換)。類似の側鎖を有するアミノ酸ファミリーが当技術分野において定義されている。保存的アミノ酸置換のいくつかのファミリーを、表1に示す。
【表1】
【0043】
抗LGR5抗体を用いたがん幹細胞成長の遮断
いくつかの実施形態は、抗LGR5抗体を用いたインビトロおよびインビボでのがん肝細胞成長の遮断に関する。いくつかの実施形態では、肝細胞増殖の遮断方法は、がん幹細胞への抗LGR5抗体の有効量を投与することを含み、該抗LGR5抗体の有効量は該がん幹細胞の成長を低下させるのに充分である。
【0044】
いくつかの実施形態では、肝細胞増殖の遮断方法は、がん幹細胞への抗LGR5抗体の有効量を投与することを含み、該抗LGR5抗体の有効量は該がん幹細胞の増殖を低下さ
せるもしくは遮断する、または成長を低下させるまたは遮断するのに充分である。
【0045】
いくつかの態様では、抗LGR5抗体の有効量をインビトロでがん幹細胞に投与する。他の態様では、抗LGR5抗体の有効量をインビボでその治療を必要とする患者のがん幹細胞に投与する。
【0046】
本明細書中で使用されるとき、「がん幹細胞」という語は、大規模にまたは無制限に増殖することができ、がん中に大部分のがん細胞を生じる細胞を表す。いくつかの態様では、該大部分のがん細胞は、所与のがん中のがん細胞の大部分を表す。例証のためであり限定されないが、がん幹細胞は、がんの塊の大部分を含む、腫瘍の創始細胞またはがん細胞の前駆体であり得る。いくつかの態様では、がん幹細胞は、細胞へのいずれかの追加の変異または外来性細胞増殖誘発または発がん物質の導入なしで、免疫無防備状態の個体に移植する場合、分裂して1つ以上の腫瘍を形成する細胞を言う。いくつかの態様では、がん幹細胞は、分裂して追加のがん幹細胞ならびに最終分化したがん細胞またはがん組織を産生する。
【0047】
いくつかの実施形態では、がん幹細胞成長、増殖、または生存能を、LGR5-RSpo結合またはシグナル伝達による干渉なしに遮断する。いくつかの実施形態では、がん幹細胞成長、増殖、または生存能を、LGR5-RSpo結合またはシグナル伝達による干渉なしに、WntによるLGR5シグナル伝達の遮断または阻害により遮断する。
【0048】
がん幹細胞成長の遮断に関して使用されるとき、「有効量」という語は、いかなる程度によっても、がん幹細胞の成長を低下するのに充分な抗LGR5抗体の量を表す。当技術分野で公知のいずれものアッセイを使用してがん幹細胞成長を測定することができる。例えば、がん幹細胞成長を、コロニー数、細胞総数、または細胞集団もしくはコロニーの体積/大きさにより測定することができる。いくつかの実施形態では、がん幹細胞成長を、下記実施例1に記載された腫瘍様塊成長アッセイ(tumor sphere growth assay)により
測定することができる。
【0049】
特定の実施形態では、抗LGR5抗体の有効量は、がん幹細胞集団もしくは腫瘍様塊(tumorsphere)成長において、測定したとき、少なくとも5%、10%、15%、20%
、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくは100%の低下まで、または前述の数のいずれかの間のいずれかのパーセントまでがん幹細胞成長を遮断することができる。いくつかの態様では、抗LGR5抗体は、下記実施例で製造、記載される18G7H6A3および18G7H6A1として設計される抗LGR5抗体のいずれか1つまたは組合せである。
【0050】
例えば、いくつかの実施形態では、抗LGR5抗体の有効量は、がん幹細胞集団または腫瘍様塊成長において、測定したとき、少なくとも約5%~99%、5%~80%、5~40%、10%~99%、10~80%、10~60%、10%~40%、20~99%、20%~80%、20%~60%、20%~40%、50%~98%、50%~80%、または60%~99%の低下までがん幹細胞成長を遮断することができる。いくつかの態様では、抗LGR5抗体は、下記実施例で製造、記載される18G7H6A3および18G7H6A1として設計される抗LGR5抗体のいずれか1つまたは組合せである。
【0051】
他の実施形態では、抗LGR5抗体の有効量は、がん幹細胞集団または腫瘍様塊成長において、測定したとき、少なくとも約1.1倍、1.2倍、1.3倍、1.4倍、1.5倍、1.6倍、1.7倍、1.8倍、1.9倍、2.0倍、2.1倍、2.2倍、2.3倍、2.4倍、2.5倍、2.6倍、2.7倍、2.8倍、2.9倍、3.0倍、3.5倍、4.0倍、4.5倍、5.0倍、10倍、25倍、50倍、75倍、100倍、20
0倍、もしくは1000倍低下、または前述の数のいずれかの間のいずれか倍低下するまでがん幹細胞成長を遮断することができる。いくつかの態様では、抗LGR5抗体は、下記実施例で製造、記載される18G7H6A3および18G7H6A1として設計される抗LGR5抗体のいずれか1つまたは組合せである。
【0052】
いくつかの実施形態では、上記のいずれかの程度までがん幹細胞成長を遮断するのに充分な抗LGR5抗体の有効量は、約1nM、50nM、75nM、100nM、150nM、200nM、250nM、300nM、350nM、400nM、500nM、550nM、600nM、700nM、800nM、900nM、1μM、50μM、75μM、100μM、150μM、200μM、250μM、300μM、350μM、400μM、500μM、550μM、600μM、700μM、800μM、900μM、1mM、5mM、10mM、15mM、20mM、25mM、30mM、35mM、40mM、45mM、50mM、75mM、100mM、200mM、300mM、400mM、500mM、600mM、700mM、800mM、900mM、1000mM、1M、5M、10M、15M、20M、25M、30M、35M、40M、45M、50M、75M、100Mの濃度、または前述の濃度のいずれか2つの間のいずれか数である。いくつかの態様では、抗LGR5抗体組成物は、下記実施例で製造、記載される18G7H6A3および18G7H6A1として設計される抗体の両方を含む。
【0053】
いくつかの実施形態では、本明細書中提供される抗LGR5抗体は、約200nM未満、約100nM未満、約80nM未満、約50nM未満、約20nM未満、約10nM未満、約1nM未満、および前述の値のいずれかの間の範囲のKDを有するヒトLGR5と結合する。いくつかの実施形態では、本明細書中提供される抗LGR5抗体は、約10nM未満、5nM、4nM、3nM、2nM、1nM、および前述の値のいずれかの間の範囲内の親和性を有するLGR5と結合する。いくつかの実施形態では、本明細書中提供される抗LGR5抗体は、約0.0001nM超、0.001nM、0.01nM、および前述の値のいずれかの間の範囲内の親和性を有するLGR5と結合する。
【0054】
いくつかの実施形態では、本明細書中提供される抗LGR5抗体は、 配列番号47の
アミノ酸T175、E176、Q180、R183、S186、A187、Q189、D247、E248、T251、R254、S257、N258、K260を含むかもしくはからなる、または該アミノ酸内のエピトープと結合する。いくつかの実施形態では、本明細書中提供される抗LGR5抗体は、ロイシン高濃度反復6~9を含むかもしくはからなる、または該反復内のエピトープと結合する(例えば、Chen et al. Genes Dev. 27(12):1345-50(この全文を参照することにより組み入れられるものとする)参照)。いくつかの実施形態では、本明細書中提供される抗LGR5抗体は、LGR5外部ドメインの凸面を含むかもしくはからなる、または該凸面内の、エピトープと結合する(例えば、Chen et al. Genes Dev. 27(12):1345-50(この全文を参照することにより組み入れられるものとする)参照)。
【0055】
いくつかの実施形態は、本明細書中提供される抗LGR5抗体の治療有効量を、それを必要とする対象に投与することを含むがん治療方法を含む。いくつかの実施形態では、がんは、膵がん、大腸がん、肺がん、膵がん、およびトリプルネガティブ乳がんなどの乳がんから選択される。いくつかの実施形態では、大腸がんは、大腸腺腫症(APC)遺伝子中の不活性化変異を含み、APC遺伝子中の不活性化変異を含まないか、または野生型APC遺伝子を含む。いくつかの実施形態では、がんである。いくつかの実施形態では、がんは、上昇したレベルのLGR5タンパク質を含む。いくつかの実施形態では、がんは、上昇したレベルのLGR5タンパク質を発現する結腸がんである。いくつかの実施形態では、がんは、上昇したレベルのLGR5タンパク質を発現する膵がんである。いくつかの
実施形態では、がんは、上昇したレベルのLGR5タンパク質を発現する乳がんである。
【0056】
いくつかの実施形態は、疾病がβカテニンの活性化、および/または異常なβカテニンシグナル伝達に関連する対象の疾病の治療方法を含む。いくつかの実施形態は、本明細書中提供される抗LGR5抗体の治療有効量を、それを必要とする対象に投与することを含む。
【0057】
いくつかの実施形態は、少なくとも1つの追加の治療薬と併用して、本明細書中提供される抗LGR5抗体の治療有効量を、それを必要とする対象に投与することを含む疾病の治療方法を含む。いくつかの実施形態では、追加の治療薬は、化学療法薬を含む。いくつかの実施形態では、追加の治療薬は、生物学的薬剤を含む。いくつかの実施形態は、化学療法薬および生物学的薬剤と併用して、本明細書中提供される抗LGR5抗体を投与することを含む。いくつかの実施形態では、化学療法薬と併用した本明細書中提供される抗LGR5抗体の投与は、腫瘍などのがんにおけるLGR5の発現レベルを増加させることができる。本明細書中提供される方法のいくつかの実施形態は、腫瘍またはがんにおけるLGR5タンパク質発現のレベルを決定することを含む。
【0058】
本明細書中提供される方法のいくつかの実施形態は、本明細書中提供される抗LGR5抗体を用いた治療のため、対象を特定することを含む。いくつかの実施形態は、正常組織における同じLGR5タンパク質の発現と比較して、対象が、LGR5の発現レベル上昇を含む腫瘍を有するか否かを決定することを含む。いくつかの実施形態は、治療のための対象を、腫瘍が上昇したLGR5の発現レベルを有するか否か選択することを含む。いくつかの実施形態は、対象が、APC遺伝子中の不活性化変異を含む腫瘍を含むか否かを決定することも含む。いくつかの実施形態は、治療のための対象を、腫瘍がAPC遺伝子中の不活性化変異を含むか否かを選択することも含む。
【0059】
上記に関連する方法、組成物および関連開示は、例えば、2013年5月10日に公開されたPCT国際公開第2013/067055号(この内容はその全文を参照することにより本明細書に組み入れられるものとする)、ならびに例えば、2013年5月10日に公開されたPCT国際公開第2013/067054号(この内容はその全文を参照することにより本明細書に組み入れられるものとする)、ならびに例えば、2013年5月10日に公開されたPCT国際公開第2013/067057号(この内容はその全文を参照することにより本明細書に組み入れられるものとする)、ならびに例えば、2013年5月10日に公開されたPCT国際公開第2013/067060号(この内容はその全文を参照することにより本明細書に組み入れられるものとする)に提供されている。
【0060】
医薬組成物
本明細書中提供されるLGR5と特異的に結合するヒト化モノクローナル抗体またはその抗原結合性フラグメントを、投与に適した医薬組成物に組み込むことができる。このような組成物は、通常、ヒト化モノクローナル抗体またはその抗原結合性フラグメントおよび薬剤的に許容可能な担体を含む。本明細書中で使用されるとき、「薬剤的に許容可能な担体」という語は、医薬の投与に適合した、いずれかおよび全ての溶媒、分散媒体、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張および吸収遅延剤などを含むことを意図している。適切な担体は、本分野の標準参考書であるRemington’s Pharmaceutical Sciences(参照することにより本明細書に組み入れられるものとする)の最新版に記載されている。このような担体または希釈剤の好ましい例としては、水、生理食塩水、リンゲル液、デキストロース溶液、および5%ヒト血清アルブミンが挙げられるが、これらに限定されない。不揮発性油などのリポソームおよび非水性ビヒクルを使用してもよい。医薬活性物質のためのこのような媒体および薬剤の使用は、当技術分野で周知である。従来の媒体または薬剤が活性化合物と相溶性でない限りを除いて、組成
物中にその使用は考えられる。補足的活性化合物も組成物中に組み込むことができる。
【0061】
本発明の医薬組成物を製剤し、投与のその目的の経路に適合させる。投与経路の例としては、非経口、例えば、静脈内、皮内、皮下、経口(例えば、吸入)、経皮(すなわち、局所)、経粘膜、および直腸内投与が挙げられる。非経口、経皮、または皮下適用のために使用される液剤または懸濁剤は次の成分を含むことができる:注射用水、生理食塩水、不揮発性油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたは他の合成溶媒などの滅菌希釈剤;ベンジルアルコールまたはメチルパラベンなどの抗菌剤;アスコルビン酸または亜硫酸水素ナトリウムなどの酸化防止剤;エチレンジアミン四酢酸(EDTA)などのキレート剤;酢酸塩、クエン酸塩またはリン酸塩などの緩衝剤、および塩化ナトリウムまたはデキストロースなどの浸透圧調整剤。pHを塩酸または水酸化ナトリウムなどの酸または塩基で調節することができる。非経口製剤をガラスまたはプラスチック製のアンプル、ディスポーザブルシリンジまたは複数回投与バイアル中に封入することができる。
【0062】
注射用途に適した医薬組成物は、滅菌水溶液(水に可溶な場合)または滅菌注射可能な液剤もしくは分散液の即時調合製剤用分散剤および滅菌散剤を含む。静脈内投与のため、適切な担体としては、生理食塩水、静菌水、クレモフォールEL(商標)(BASF、ニュージャージー州パーシッパニー)またはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)が挙げられる。担体は、溶媒または、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコールなど)、およびその適切な混合物を含む分散媒体であり得る。多くの場合、組成物中に、等張剤、例えば、糖類、マンニトール、ソルビトールなどのポリアルコール類、塩化ナトリウムを含むことが好ましい。注射可能な組成物の持続的吸収を、組成物中に、吸収を遅延させる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンを含むことによりもたらすことができる。
【0063】
滅菌注射用液剤を、必要に応じて、上記列挙された成分の1つまたは組合せと、活性化合物を適切な溶媒中必要な量で混合し、次いで、濾過滅菌することにより製造することができる。概して、分散剤を、基本的分散媒体および上記列挙されたものから必要な他の成分を含む滅菌ビヒクル中に活性化合物を混合することにより分散剤を製造する。滅菌注射可能液剤の製造用滅菌散剤の場合、製造方法は、真空乾燥および凍結乾燥であり、活性成分および前もって滅菌ろ過したその液剤からいずれかの追加の所望の成分の散剤を得る。
【0064】
投与の容易さおよび投与量の一様性のため、単位剤形で組成物を製剤することは特に有利である。本明細書中で使用されるとき、単位剤形は、治療される対象に対して単位投与量として適した物理的に分離した単位を表し;各単位は、必要な医薬担体と併せて所望の治療効果を得るように算出された所定量の活性化合物を含有する。本発明の単位剤形のための規格は、活性化合物の固有の特性および達成される特定の治療効果、ならびに個体の治療のためのこのような活性化合物を配合する技術に固有の制限により決定づけられ、かつ、直接的に依存する。
【0065】
医薬組成物を、投与のための指示書と一緒に、容器、パック、またはディスペンサー中に収容することができる。
【0066】
キット
本明細書中提供されるいくつかの実施形態としては、キットが挙げられる。いくつかの実施形態では、キットは、本明細書中提供されヒト化抗体を備える。いくつかの実施形態では、抗体は、凍結乾燥されている。いくつかの実施形態では、抗体は、水溶液である。いくつかの実施形態では、キットは、抗体の投与のために医薬担体を備える。いくつかの実施形態では、キットは、化学療法薬も備える。いくつかの実施形態では、化学療法薬は
、フォリン酸、フルオロウラシル、イリノテカン、ゲムシタビンおよびナノ粒子アルブミン結合パクリタキセル(アブラキサン)から選択される。
【0067】
いくつかの実施形態としては、LGR5と特異的に結合するヒト化モノクローナル抗体またはその抗原結合性フラグメント、および適切な医薬用担体の用量を含む医薬組成物を収容する容器が挙げられ、該用量はがんを患っている対象を治療するのに適切である。ヒト化モノクローナル抗体または抗原結合性フラグメントの用量は、約1mg/kg、2mg/kg、5mg/kg、10mg/kg、15mg/kg、20mg/kg、25mg/kg、30mg/kg、35mg/kg、40mg/kg、45mg/kg、50mg/kg、55mg/kg、60mg/kg、65mg/kg、70mg/kg、もしくは前述の投与量のいずれか2つの間の範囲より多い、より少ない、または、と同等であり得る。いくつかの実施形態では、ヒト化モノクローナル抗体またはその抗原結合性フラグメントの用量は、約2.5mg/kg~約20mg/kg、または約2.5mg/kg~約15mg/kgである。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、静脈内投与に適している。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、腹腔内注射に適している。
【0068】
治療方法
方法、組成物およびキットのいくつかの実施形態は、がんを患っている対象の治療方法を含む。いくつかのこのような方法は、LGR5と特異的に結合するヒト化モノクローナル抗体またはその抗原結合性フラグメントの有効量を、それを必要とする対象に投与することを含む。該対象は、哺乳類、例えば、ヒトであり得る。
【0069】
いくつかの実施形態では、がんは固形腫瘍を含む。いくつかの実施形態では、がんは、結腸がん、大腸がん、膵がん、乳がん、または肺がんであり得る。いくつかの実施形態では、がんは、APC変異を含む結腸がん、KRAS変異を含む結腸がん、転移性大腸がん、転移性膵がん、トリプルネガティブ乳がん、および小細胞肺がんであり得る。
【0070】
LGR5と特異的に結合するヒト化モノクローナル抗体またはその抗原結合性フラグメントは、配列番号23を含む重鎖CDR1、配列番号25を含む重鎖CDR2、および/または配列番号27を含む重鎖CDR3などの重鎖CDRを含むことができる。いくつかの実施形態では、モノクローナル抗体またはその抗原結合性フラグメントは、配列番号19を含む重鎖可変ドメインを含むことができる。いくつかの実施形態では、モノクローナル抗体またはその抗原結合性フラグメントは、配列番号13を含む重鎖を含むことができる。いくつかの実施形態では、モノクローナル抗体またはその抗原結合性フラグメントは、配列番号29を含む軽鎖CDR1、配列番号31を含む軽鎖CDR2、および/または配列番号33を含む軽鎖CDR3などの軽鎖CDRを含むことができる。いくつかの実施形態では、モノクローナル抗体またはその抗原結合性フラグメントは、配列番号21を含む軽鎖可変ドメインを含むことができる。いくつかの実施形態では、モノクローナル抗体またはその抗原結合性フラグメントは、配列番号14を含む軽鎖を含むことができる。いくつかの実施形態では、モノクローナル抗体またはその抗原結合性フラグメントは、配列番号13を含む重鎖および配列番号14を含む軽鎖を含むことができる。いくつかの実施形態では、ヒト化モノクローナル抗体またはその抗原結合性フラグメントは、18G7H6A3である。
【0071】
がんを患っている対象を治療するためのヒト化モノクローナル抗体またはその抗原結合性フラグメントの投与量は、約1mg/kg、2mg/kg、5mg/kg、10mg/kg、15mg/kg、20mg/kg、25mg/kg、30mg/kg、35mg/kg、40mg/kg、45mg/kg、50mg/kg、55mg/kg、60mg/kg、65mg/kg、70mg/kg、もしくは前述の投与量のいずれか2つの間の範囲より多い、より少ない、または、と同等であり得る。いくつかの実施形態では、ヒト化
モノクローナル抗体またはその抗原結合性フラグメントの投与量は、約2.5mg/kg~約20mg/kg、または約2.5mg/kg~約15mg/kgである。
【0072】
ヒト化モノクローナル抗体またはその抗原結合性フラグメントの投与頻度は、毎日、毎週、または毎月であり得る。いくつかの実施形態では、投与は、1日1回、2日毎、3日毎、4日毎、5日毎、または6日毎であり得る。いくつかの実施形態では、投与は、週1回、2週毎、3週毎、または4週毎であり得る。いくつかの実施形態では、投与は毎月であり得る。
【0073】
ヒト化モノクローナル抗体またはその抗原結合性フラグメントの投与経路は、生物製剤の投与に適切であり得る。例えば、投与は、腹腔内注射、または静脈内ルート経由であり得る。
【0074】
ヒト化モノクローナル抗体またはその抗原結合性フラグメントの投与は、化学療法薬と併用であり得る。化学療法薬の例としては、フォリン酸(ロイコボリン)、フルオロウラシル(5-FU)、イリノテカン、ゲムシタビンおよびナノ粒子アルブミン結合パクリタキセル(アブラキサン)が挙げられる。いくつかの実施形態では、FOLFIRI併用:フォリン酸、フルオロウラシル、およびイリノテカンを、ヒト化モノクローナル抗体またはその抗原結合性フラグメントと併用して投与することができる。いくつかの実施形態では、ヒト化モノクローナル抗体またはその抗原結合性フラグメントとの併用でがんを治療する方法における化学療法薬の初回用量を、ヒト化モノクローナル抗体またはその抗原結合性フラグメントの初回用量の投与前に投与することができる。いくつかの実施形態では、ヒト化モノクローナル抗体またはその抗原結合性フラグメントとの併用でがんを治療する方法における化学療法薬の初回用量を、ヒト化モノクローナル抗体またはその抗原結合性フラグメントの初回用量の投与後に投与することができる。
【0075】
いくつかの実施形態では、イリノテカンの初回用量は約180mg/m2であり、約90分かけて投与し;フォリン酸の初回用量は約400mg/m2であり、約120分かけて、かつ、イリノテカンの初回用量と同時に投与し;フルオロウラシルの初回用量は約400mg/m2であり、フォリン酸の初回用量の投与後に投与することができる。いくつかの実施形態では、フォリン酸、フルオロウラシル、およびイリノテカンを14日毎に投与する。
【0076】
いくつかの実施形態では、ヒト化モノクローナル抗体またはその抗原結合性フラグメントを、追加の治療薬と併用して投与することができる。追加の治療薬の例としては、ベバシズマブ、アフリベルセプト、セツキシマブ、およびパニツムマブが挙げられる。
【実施例0077】
実施例1-LGR5抗体のヒト化
ヒト生殖系列配列を、マウス抗体18G7.1のヒト化のため、アクセプターフレームワークとして使用した。密接な生殖系列配列を見出すために、最も類似の発現軽鎖および最も類似の重鎖を、NCI IgBLAST(ncbi.nlm.nih.gov/igblast/)により生殖系列配列データベースにおいて特定した。この検索において、18G7.1のCDR配列をマスクした。最適な発現配列の選択は、カノニカル(canonical)残基および界面(interface)残基の配列同定についてのチェック、ならびにCDRループ長の類似性についてのチェックを含んだ。
【0078】
候補ヒト化配列および親マウスモノクローナル抗体18G7.1間の主要構造フレームワーク残基において可能性のある構造的矛盾を特定するために、三次元モデルを生成した。抗体構造物の複合体を使用して、グラフト化した候補ヒト化配列を含む相同性モデルを
作製し、次いで、分子エネルギー最小化を行った。コンピュータソフトウェアPymolを用いた構造解析を使用して、適切なフォールディングに強力にネガティブに影響を及ぼし得る残基を特定した。
【0079】
この解析から、以下を含んだ6つの候補VH鎖が構築された:1)フォールディングに対するありそうな影響の解析に基づいた候補ヒト化フレームワーク領域内の選択された置換を含む機能的ヒトフレームワーク およびii)親18G7.1マウス抗体CDR(配
列番号1、2、および3)。ヒトIgG1定常部に対する融合インフレームを化学的に合成する。
【0080】
同様に、以下を含んだ2つの候補VL鎖を構築した:1)フォールディングに対するありそうな影響の解析に基づいた候補ヒト化フレームワーク領域内の選択された置換を含む機能的ヒトフレームワーク およびii)親18G7.1マウス抗体CDR(配列番号4
、5、および6)。ヒトIgG1定常部に対してインフレームに融合した候補VL鎖および候補VH鎖を化学的に合成する。
【0081】
選択された候補変異体ヒト化重鎖および軽鎖の組合せを、哺乳類細胞へのコトランスフェクションにより機能性について試験した。上記のこの6つの候補ヒト化18G7.1重鎖のそれぞれを、候補18G7.1軽鎖の1つにより、HEK293細胞にコトランスフェクトし、フローサイトメトリーにより、LGR5抗原結合活性について条件培地をアッセイした。上記加えて、3つの候補ヒト化18G7.1重鎖を、第二候補18G7.1軽鎖により、HEK293細胞にコトランスフェクトし、フローサイトメトリーにより、LGR5抗原結合活性について条件培地をアッセイした。18G7H6として公知であり、最も頑強な結合を示した18G7.1候補重鎖/軽鎖の組合せ(ヒト化変異体)を親和性成熟について選択した。
【0082】
実施例2-ヒト化LGR5抗体親和性成熟
選択されたヒト化変異体18G7H6の親和性を向上するために、アラニン系統的変異導入法および飽和変異誘発の組合せを使用した。重鎖CDR1ならびに軽鎖CDR1およびCDR3中の残基をアラニンに変異させ、HEK293細胞にトランスフェクトして、得られた条件培地をフローサイトメトリーによりLGR5抗原結合活性についてアッセイした。重鎖CDR3に対して飽和変異誘発を行い、CDR3中の全ての残基をその位置におけるオリジナルアミノ酸同一性を除いて、19の天然アミノ酸の各々に変異させた。変異のそれぞれをHEK293細胞にトランスフェクトして、得られた条件培地をフローサイトメトリーによりLGR5抗原結合活性についてアッセイした。
【0083】
これらの変異を、数を増やしながら3つのコンストラクト中に組み込んだ。それから、これらの3つのコンストラクトをHEK293細胞にトランスフェクトして、得られた条件培地をフローサイトメトリーによりLGR5抗原結合活性についてアッセイした。2つのコンストラクト18G7H6A1および18G7H6A3を、さらなる特性解析のために選択した。表1Aは、抗体の特定の配列を一覧にしている。
【表2-1】
【表2-2】
【0084】
実施例3-ヒト化LGR5抗体の製造
18G7H6A1、18G7H6A3および18G7Chと名付けられたキメラ18G7.1(ヒトIgG1 Fcに融合された18G7.1由来のマウスFab)を構築し、増幅し、200mlの体積における発現評価のため、一過性トランスフェクションを用いてチャイニーズハムスター卵巣細胞(CHOK1SV GS-KO)に一過性にコトランスフェクトした。それから、18G7CHに対して5リットルならびに18G7H6A1および18G7H6A3の両方に対して2.5リットルの最終体積においてCHOK1SV GS-KO細胞の大規模一過性トランスフェクションを開始した。ワンステップのタンパク質Aクロマトグラフィーを用いて、清澄化された培養上澄み液を精製した。コントロールサンプルとして社内ヒト抗体を含む1mg/mlの濃度の精製物質を用いて、SE-HPLC、SDS-PAGEおよびエンドトキシン測定の形態での産生物の品質分析を行った。結果は、回収した産生物が高純度であることを示した(>95.7%)。
【0085】
実施例4-ヒト化LGR5抗体のためのセルライン構築
18G7H6A3抗体を発現する安定GS-CHOトランスフェクタントプールを、発
現ベクターp18G7H6A3/DGVを用いてCHOK1SV GS-KO宿主細胞のトランスフェクションにより作製した。この抗体をコードする遺伝子を含むDGVを構築し、トランスフェクトして、その後、得られたクローナルセルラインを、FACS法を用いてトランスフェクタントプールのシングルセルソーティングにより生成した。クローニング中に作製した96ウェルプレートを、シングルコロニーの存在について毎週スクリーニングした。約2週間後、1000コロニーからの上澄みをOctet(登録商標)システム法を用いて抗体産生についてスクリーニングした。スクリーニングした1000コロニーのうち、991コロニーは検出可能レベルの抗体を産生した。Octetデータを順位づけし、最も高く産生したコロニーを進行のため選択した。
【0086】
最も高く順位づけされたコロニーをCD CHO培地中の96ディープウェルプレート中の懸濁培養液に移動し、その後、継代培養培地に適合させた。選択されたセルラインの産生能を、バイオリアクター方法を可能な限り密接に模倣したフィードレジメ(feed regime)を用いて行われる。培養液を12日目で回収し、Octet(登録商標)システム
法を用いて抗体濃度についてアッセイした。回収における抗体濃度は、<20mg/L~3000mg/Lの範囲であった。産生能スクリーニングにおける順位、セルラインの由来となる親プールおよびそれぞれのセルラインがシングルコロニーから生じたという証拠に基づいて、さらなる評価のため20セルラインを選択した。この20セルラインの培養液を、96ディープウェルプレートから振盪フラスコへの連続継代培養液により拡大した。「簡易」流加懸濁培養液生産能評価における順位および振盪フラスコ培養液における日常的継代培養中の許容可能な成長特性を有する(日常的継代培養において一貫して≧1×106生存細胞/mL)ことに基づいて、2つの10Lの実験室スケールの撹拌槽バイオリアクターにおける評価のため、先導(lead)セルラインを選択した。この先導セルラインは、一貫して、日常の継代培養中、高成長および高生存率を示し、回収時において>2000mg/Lのタイターを有していた。このセルラインをマスターセルバンク(MCB)の作製および10L実験室スケールのバイオリアクターにおける評価のために使用した。
【0087】
実施例5-ヒトLGR5とのヒト化LGR5抗体結合
FACSベースアッセイを使用して、CHO細胞表面で過剰発現された組換えヒトLGR5と、精製18G7H6A1および18G7H6A3の結合を測定した。CHOおよびCHO-LGR5細胞を、4℃において18G7H6A1または18G7H6A3の連続希釈で染色し、表面染色をPE結合抗ヒトIgG二次抗体で検出して、FACScaliburで分析した。ヒトLGR5結合に対する18G7H6A1および18G7H6A3のEC50は、<10nMであった。抗体コントロール(MOPC)をこの実験におけるネガティブコントロールならびにLGR5を含まない野生型CHOとして使用した。18G7H6A3は、野生型CHOとの結合を示さず、アイソタイプコントロールはヒトLGR5とのいかなる測定可能な結合を示さなかった。
【0088】
18G7H6A3の治療有効性および安全性を調査するために、あり得る動物モデル種を特定するため、種ホモログにより発現されたLGR5に対する18G7H6A3の交差反応性を一連のインビトロ結合試験において決定した。
図1参照。図に示すように、抗体18G7H6A3(BNC101)は、ヒトおよびサルLGR5と強力に結合するが、ラットまたはマウスLGR5と結合しないことが分かった。
【0089】
実施例6-プレート結合組換えヒトLGR5外部ドメインと、ヒト化LGR5抗体の結合
ヒトLGR5と、18G7H6A1および18G7H6A3の結合を、ELISAベースプレート結合アッセイを用いてインビトロでアッセイした。アッセイは、ELISAプレート結合精製組換えLGR5外部ドメイン-IgG-Fc融合物と結合している抗体を
、西洋わさびペルオキシダーゼ共役抗ヒトIgG-CH1二次抗体を含むLGR5結合抗体の検出で測定した。ヒトLGR5-Fcに対する18G7H6A3のEC50は、300pMであることが分かった。
【0090】
実施例7-腫瘍細胞に対するヒト化LGR5抗体の結合特性
異なるレベルのLGR5を発現するヒトがんセルラインに対する18G7H6A3の結合特性をフローサイトメトリーにより分析して、異種性腫瘍集団に対する18G7H6A3のあり得る標的化特性を確定した。複数の腫瘍セルラインにおけるLGR5の発現レベルを、フローサイトメトリーにより定量化した。
【0091】
この試験において、結腸がん腫のがんセルライン(CT1(Bionomics)、CT3(Bionomics)、DLD1(ATCC)、Ls174T(ATCC)、LoVo(ATCC)、SW48(ATCC)、SW480(ATCC)、SW620(ATCC)およびHCT116(ATCC))、トリプルネガティブ乳がんセルライン(Hs578T(ATCC)およびMDA-MB-231(ATCC))、膵がんセルライン(AsPC-1(ATCC)、BxPC3(ATCC)、Capan2(ATCC)、HPAFII(ATCC)、SW1990(ATCC)、CFPAC(ATCC)、Panc10.05(ATCC)およびPANC-1(ATCC))、シスプラチン感受性卵巣がんセルライン(OVCAR3(ATCC)およびSK-OV-3(ATCC))、シスプラチン耐性卵巣がんセルライン(SK-OV-3/CP、OVCAR8/CP、Igrov1/CPおよびA2780/CP(TGEN))ならびに肺腺がんセルラインHOP62(ATCC)を含むヒト腫瘍セルラインを分析した。
【0092】
コンフルエンス近くの細胞成長を、TrypLE細胞解離緩衝液(Life Technologies)を用いてリフトし、カウントして、ウェル当たり1×105細胞で96ウェルV底プレート中に播種した。染色緩衝液(PBS/0.8% ウシ血清アルブミ
ン)中、連続希釈で100nMの初回濃度で18G7H6A3を試験した。サンプルを、30分間氷上でインキュベートし、それから、4℃で2分間、1800rpmで遠心分離して、染色緩衝液で3回洗浄した。50μlの二次抗体ヤギ抗ヒトIgG-PE結合体、1:250希釈(Southern Biotech)を、染色緩衝液中、各対応するウェルに添加した。サンプルを氷上さらに15分間インキュベートし、それから、上記のように洗浄して、死細胞を除去するためにヨウ化プロピジウム(PI)(Life Technologies)を含有する100μl染色緩衝液中に再懸濁した。CellQuest(Becton Dickinson)およびFlowJo(TreeStar,Inc)ソフトウェアを用いて、FACScaliburフローサイトメトリーでサンプルを分析した。
【0093】
複数の腫瘍セルライン中のLGR5の細胞表面発現レベルを、フローサイトメトリーにより定量化した。CT1大腸腫瘍細胞および膵がんセルラインPanc-1、Capan2およびCFPACは、最も高いLGR5の発現体に含まれる。膵がんセルライン(AsPC-1、SW1990、HPAFII)、シスプラチン耐性卵巣がんセルライン(OVCAR8/CP、A2780/CPおよびIgrov1/CP)ならびに結腸がん、乳がんおよび卵巣がんセルライン(SW48、Hs578TおよびOVCAR3)において、中程度の発現レベルが観察された。結腸がん(SW480、LoVo)および乳がんセルライン(MDA-MB-231)において、低レベルだが検出可能レベルのLGR5細胞表面発現が観察された。表2に、腫瘍セルラインと結合する18G7H6A3 FACSのデータを纏めている。
【表3-1】
【表3-2】
【0094】
実施例8-ヒト化抗LGR5抗体によるインビボでの悪液質大腸腫瘍成長の阻害
CT1原発性CRC異種移植モデルは、ステージIV転移性結腸がん患者由来であった。この腫瘍のDNAシークエンシングは、K-Ras、PI3K、PTEN、p53およびAPCを含む複数の遺伝子における通常の結腸がん変異と同定した。無血清条件下の培養液中に維持される低継代のCT1腫瘍様塊を、0日目にマトリゲル中のSCID/Bgマウスに皮下注射し、腫瘍サイズおよび体重について週2回モニターした。25日目、腫瘍が120mm3に達した場合、CT1皮下腫瘍を、10匹のマウスの群にランダムに分けた。マウスを、PBS、抗体コントロールMOPC、18G7H6A1、18G7H6A3またはヒト/マウスキメラ18G7Chのいずれかで治療した。マウスに、2.5週間、15mg/kgで週2回投与した(合計5回投与)。
【0095】
4回の投与(15mg/kg、週2回)の過程においてPBSおよびMOPC抗体コントロールと比較して、抗体18G7H6A3はインビボで有意な抗腫瘍活性を示した。抗体18G7H6A1は抗腫瘍活性を示したが、モノクローナル18G7H6A3は、18G7H6A1および親マウスキメラ18G7Ch抗体の両方に対して優れた活性を示した。表3は、Lgr5+Absの1~4回投与後のCT1腫瘍体積減少パーセント(群対MOPC)を示す。
【表4】
【0096】
実施例9-ヒト化抗LGR5抗体によるインビボでの大腸腫瘍成長の阻害
CT3原発性CRC異種移植モデルは、K-Ras、H-Ras、APC、PI3K、PTEN、STK11、RB1、TP53、FGFR2、VANGL2、およびISCOにおける変異を有するステージIII mCRC患者由来であった。低継代凍結保存CT3原発性異種移植腫瘍フラグメントを、5匹のSCID/Bgマウスに移植した。5匹のCT3原発性異種移植片担持SCIDマウスからプールした平均約1150mm3の腫瘍を、移植後41日目に取り出し、分離してマトリゲル中のCB.17 SCIDマウスの皮下に再移植し、腫瘍サイズおよび体重について週2回モニターした。腫瘍が平均130mm3に達した場合、マウスをランダムに分けた(移植後34日目)。マウスを、PBS
、抗体コントロールMOPC、18G7H6A3、18G7H6A1またはヒト/マウスキメラ18G7Chのいずれかで治療した。34日目でスタートし、マウスに、2.5週間(5回投与)、15mg/kgで週2回投与した。全マウスを、体重および腫瘍サイズ、ならびに健康全般および外観について、終了するまで、週2回モニターした。
【0097】
抗体18G7H6A1は抗腫瘍活性を示したが、4回の投与(15mg/kg、週2回)後、モノクローナル18G7H6A3は、PBSおよびMOPC抗体コントロールと比較して、有意な抗腫瘍活性を示した。18G7H6A3は、親マウスキメラ18G7Ch抗体に対して優れた活性および18G7H6A1に対して均等な活性を示した。表4は、試験Absのn回投与後のCT3腫瘍体積減少パーセント(群対MOPC)を示す。
【表5】
【0098】
実施例10-FOLFIRIと併用したヒト化抗LGR5抗体によるインビボでの大腸腫瘍成長の阻害
CB.17 SCIDマウスに、CSC条件下成長したCT3細胞を移植した。移植後40日目、腫瘍が約160mm
3に達した場合、i)PBS、ii)15日間5日毎(合計3回投与)のFolFiri(5FU 30mg/kg、ロイコボリン 90mg/kgおよびイリノテカン 24mg/kg)、ならびにiii)FolFiri(iiと同様に)および18G7H6A3(15mg/kg、週2回)を含む治療群にランダムに分けた。腫瘍体積の分析から、18G7H6A3およびFolFiriの併用は、FolFiriレジメンと比較してCT3腫瘍の成長を低下させることが分かった。併用治療は、61日目、65日目、68日目、71日目および75日目の腫瘍体積を、それぞれ、約58%、53%、45%、33%および37%減少させた(
図2)。
【0099】
実施例11-ヒト化抗LGR5抗体によるインビボでの膵がん腫瘍成長の阻害
単剤または標準治療との併用における18G7H6A3の有効性を評価するため、膵がん異種移植モデルを試験した。CB.17 SCIDマウスに、AsPC-1細胞を移植した(マトリゲル+RPMI(比1:1)中)。移植後20日目、腫瘍を5つの群:i)PBS、ii)MOPC(15mg/kg、週2回、腹腔内)、iv)ゲムシタビン(90mg/kg、週2回、腹腔内)ならびにv)上記投与でのゲムシタビンおよび18G7H6A3の同時併用にランダムに分けた。
【0100】
18G7H6A3は、単剤として、移植後41日目、生理食塩水および/またはコントロールIgGと比較して、ほとんど40%まで腫瘍成長を阻害したことを見出した。加えて、18G7H6A3およびゲムシタビンの併用は、ゲムシタビン単独と比較して、AsPC-1モデルの腫瘍成長を有意に阻害した(移植後61日目で36%まで)。18G7H6A3は、単剤として、65日目まで、PBSおよびコントロールIgGと比較して、腫瘍成長をいくらか阻害した。
【0101】
実施例12-ヒト化抗LGR5抗体によるインビボでのトリプルネガティブ乳がん腫瘍成長の阻害
このインビボ試験を、低継代トリプルネガティブ乳がん細胞(ER-、PR-、非HER2過剰発現)を用いて行った。MDA-MB-231-LM3細胞を、DMEM/10
%FBS/Anti-Anti培地を含む接着培養液中で維持した。0日目、CB.17
SCIDマウスに、RPMI:マトリゲル(1:1)中のMDA-MB-231-LM3細胞を、4番目の乳腺脂肪体に注射し、腫瘍サイズおよび体重について週2回モニターした。27日目、腫瘍が約155mm
3に達した場合、MDA-MB-231-LM3腫瘍を、10匹のマウスの4つの群にランダムに分けた。マウスを、PBS、抗体コントロールMOPC、または18G7H6A3で治療した。マウスに、3.5週間、15mg/kgで週2回投与した(7回投与)。抗体18G7H6A3は、PBS(60.7%腫瘍成長阻害)またはMOPC抗体(49.3%腫瘍成長阻害)コントロールと比較して有意な抗腫瘍活性を示すことを見出した(
図3)。
【0102】
実施例13-SN38またはPI3K/mTOR阻害剤で治療した大腸がん細胞におけるLGR5の発現誘導
DLD1、HCT116、LS174t、LoVo、SW48、SW480およびSW620を含むCRCセルラインのパネルを、PI3K/mTOR二重阻害剤(NVP)またはSN38(イリノテカンの活性代謝物)もしくは5FU(5-フルオロウラシル)を含む2つの異なる細胞傷害性薬物で治療した。細胞を1uMで上記薬剤を用いて治療し、72時間後に回収した。それから、細胞をAlexa Fluor647と結合した抗LGR5 Mabで染色し、FACScaliburを用いてフローサイトメトリーによりデータ解析した。
【0103】
CRCセルラインのフローサイトメトリー分析は、PI3K/mTOR阻害剤で治療した場合、LoVo、HCT116、LS174t、SW48、SW480およびSW620細胞中、LGR5がより多く発現することを示した。加えて、SN38での治療は、HCT116、LS174t、SW48、SW480、および特にSW620細胞におけるLGR5の発現を促進した。しかしながら、5FU治療は、これらの系列のいずれにおいてもLGR5の発現を誘導せず、LGR5の発現を支配する発症機序はこれらの系統において異なるものであることを示唆している。これらのデータは、治療はLGR5ネガティブ非がん幹細胞集団を主に標的化していたので、LGR5+細胞は上記薬剤での治療に対してより耐性を有することを示している。これらの薬剤での治療がこれらの細胞に対してLGR5発現を上方制御する場合を理解するため、本発明者らは、全てのセルラインにおけるフローサイトメトリーによるLGR5細胞表面発現を分析した。PI3K/mTOR阻害剤での治療と同時に、LGR5の発現は、LoVoにおいて有意に上方制御された。これらのデータは、小分子阻害剤または細胞傷害性薬物を用いた治療がLGR5neg細胞を標的化し、これらの細胞内のLGR5の発現を増加させることを示している。
【0104】
実施例14-小分子阻害剤または細胞傷害性薬物を用いて治療した膵がんセルラインにおいてLGR5の発現を促進する
上記発見をさらに発展させるため、CRCセルラインに加えて、nab-パクリタキセル、ゲムシタビンおよびタキソールを含む関連標準治療、ならびにPI3K、MEKおよびGSK3βの阻害剤などの膵がんにおける大部分の関連経路を標的化する小分子阻害剤も用いて治療された一連の膵臓セルラインにおいて、LGR5の発現を調査した。試験された膵臓セルラインとしては:AsPc1、HPAFII、PANC1、BxPC3、CFPAC、PANC10.05、Capan2およびSW1990が挙げられる。nab-パクリタキセルを用いた治療は、フローサイトメトリーにより評価されるとき、PANC1、BxPc3およびPANC10.05におけるLGR5の上方制御をもたらす。ゲムシタビン治療は、PANC1におけるLGR5を上方制御し、タキソール治療はHPAFIIにおけるLGR5の発現の増加をもたらす。PI3K/mTOR治療は、CFPACにおけるLGR5の上方制御をもたらし、MEK阻害剤はHPAFIIおよびSW1990においてLGR5を上方制御する。
【0105】
実施例15-FOLFIRIレジメン(5FU、ロイコボリンおよびイリノテカン)を用いて治療された大腸がん腫瘍においてLGR5を上方制御する
化学療法が大腸腫瘍においてLGR5の発現を変化させるか否かを調査するため、マウスを、5FU(30mg/kg、腹腔内)、ロイコボリン(90mg/kg)およびイリノテカンの2つの異なる用量(24mg/kgまたは8mg/kg)を用いて、5日毎に治療した。これらの試験結果は、CT3腫瘍は化学レジメンに感受性があるが、CT1腫瘍は完全に消失せず、レジメンに対する抵抗をいくらか示すことを示した(
図4)。LGR5の発現のFOLFIRI治療の効果を検査するため、CT1およびCT3患者由来腫瘍およびLGR5の発現から、全mRNAを抽出し、qRT-PCRにより決定し、その対応するGAPDH転写産物から各サンプルのLGR5のCt値(サイクル閾値)を差し引いてDCT(ΔCt)値を得ることにより解析した。データは、2のDCT乗として表される。LGR5の存在量の分析は、対応する生理食塩水治療された腫瘍と比較して、CT1腫瘍(約2倍)およびCT3腫瘍(約3.5倍)の両方において、LGR5転写産物が増加することを示した。
【0106】
実施例16-単独およびnab-パクリタキセルとの併用でゲムシタビンを用いて治療された膵がん腫瘍においてLGR5を上方制御する
膵がんに対する標準治療の化学療法治療が膵腫瘍においてLGR5の発現を変化させるか否かを調査するため、ゲムシタビンおよびnab-パクリタキセルの併用で、週2回マウスを治療した(JH109原発異種移植)。末端基分析において、腫瘍cDNAを用いたqRT-PCRデータは、対応する生理食塩水治療された腫瘍と比較して、化学療法治療腫瘍におけるLGR5の発現の著しい増加を示し、標準治療での治療が腫瘍細胞においてLGR5の上方制御をもたらすことを示している。
【0107】
膵腫瘍の患者由来異種移植片モデルであるJH109モデルにおけるLGR5の発現。レシピエントにおいて継続的に継代された腫瘍塊をマウスに移植したが、インビトロ培養条件に暴露しなかった。腫瘍担持マウスの化学療法レジメン(ゲムシタビンおよびnab-パクリタキセルの併用)での治療は、腫瘍成長の有意な阻害をもたらした。結腸がんモデルと一致して、化学療法は、JH109腫瘍におけるLGR5の上方制御(4倍超)をもたらし、化学療法での治療時にがん幹細胞集団の増殖をさらに示唆している。例えば、
図5参照。
【0108】
実施例17-ヒト化抗LGR5抗体によるインビボでの膵がん腫瘍成長の阻害
18G7H6A3の有効性も、膵がん異種移植モデルにおいて調査した。CB.17 SCIDマウスに、PANC1細胞(1E6/マウス、皮下、マトリゲル+RPMI(比1:1))を移植し、移植後41日目に治療群:i)PBS、ii)IgGコントロール(15mg/kg、週2回、腹腔内)、iii)18G7H6A3(15mg/kg、週2回、腹腔内)、iv)ゲムシタビン(90mg/kg、週2回、腹腔内)ならびにv)ゲムシタビンおよび18G7H6A3の同時併用(15mg/kg、週2回、腹腔内)にランダムに分けた。3週間に割り当てられた群において、ゲムシタビンを投与して腫瘍成長を阻害した。全マウスを、体重および腫瘍サイズ、ならびに健康全般および外観について、週2回モニターした。
【0109】
腫瘍体積の分析は、腫瘍成長を阻害するため、単剤として18G7H6A3を選択する傾向にある(移植後70日目で30%まで)が、18G7H6A3およびゲムシタビンの併用は、ゲムシタビン単独群と比較して、PANC1腫瘍成長を有意に阻害した(移植後80日目で52%まで)。
図6参照。
【0110】
この実施例では、化学療法(ゲムシタビン)と併用して投与される場合に観察された18G7H6A3の有意な活性は、ゲムシタビン治療に応答した標的抗原LGR5の発現増
加に起因し得る。
【0111】
実施例18-ヒト化抗LGR5抗体によるインビボでの以前治療した膵がん腫瘍成長の阻害
セルラインに加えて、本発明者らは、単剤または膵がんのJH109原発性患者由来異種移植片モデルにおける標準治療との併用での18G7H6A3の有効性も調査した。JH109異種移植モデルは、5-FU、ゲムシタビン、エルビタックスおよび放射線療法を含む4つの治療レジメンを受けた患者由来である。元の患者腫瘍は、インビトロ培養に暴露しないで継続的に免疫不全マウス内で継代された。JH109モデルにおいて18G7H6A3の有効性を試験するため、腫瘍担持マウス(n=7)を、コントロールIgG(15mg/kg、腹腔内、週2回)、18G7H6A3(15mg/kg、腹腔内、週2回)単剤、標準治療の化学療法(ゲムシタビン(50mg/kg、腹腔内、週1回;およびnab-パクリタキセル 30mg/kg、静脈内、週1回)の併用、化学療法およびコントロールIgGの併用、ならびに化学療法および18G7H6A3の併用で治療した。単剤の18G7H6A3 mAbは、腫瘍成長に影響を及ぼさず、18G7H6A3とNab-パクリタキセルとの併用、およびゲムシタビン化学療法は、化学療法単独と比較して有意に大きな程度の腫瘍阻害をもたらした。化学療法と併用した18G7H6A3は、化学療法単独と比較して77%より強力に腫瘍成長阻害をもたらした。18G7H7A3化学療法併用で治療した3匹のマウスは、その腫瘍を完全に根絶した(測定可能な腫瘍は検出されなかった)。18G7H6A3化学療法併用群は、治療中断後でさえ腫瘍成長を抑制し続け、1匹のマウスは化学療法休止後3か月でも測定可能な腫瘍はなかった。この実施例では、化学療法(ゲムシタビン+nab-パクリタキセル)と併用で投与された場合に観察された18G7H6A3の有意な活性は、ゲムシタビンnab-パクリタキセル治療に応答して標的抗原LGR5の発現増加に起因し得るが、化学療法治療後インビボで原発腫瘍の再成長または再発を阻止して原発腫瘍の大部分(tumor bulk)を根絶することの実証である。
【0112】
実施例19-ヒト化LGR5抗体治療はがん幹細胞集団を低減する
フローサイトメトリー分析のため、5つの個別の腫瘍由来細胞を、幹細胞特定マーカーCD44、およびCD166に対する様々な抗体で染色した。腫瘍を分離し、マウス細胞のため枯渇し、それから、生存可能な細胞についてカウントした。分離した細胞を、フローサイトメトリーによる細胞表面幹細胞マーカー発現の分析に使用した。
【0113】
CD166+/CD44+、LGR5+/CD166+、またはLGR5+/CD166+/CD44+ サブ集団により定義されたがん幹細胞集団は減少した(
図7)。
【0114】
実施例20-ヒト化LGR5抗体治療はインビボでの結腸がん腫瘍再発およびがん幹細胞発生頻度を低減する
FolFiriと併用した18G7H6A3の効果を、結腸がんCT3モデル(実施例10)で試験した。この原発腫瘍有効性試験の結果は、3サイクルのFOLFIRI大群と併用した18G7H6A3は、腫瘍成長の低下において、FolFiri単独より効果的であることを示した。18G7H6A3 FOLFIRI併用レジメンががん幹細胞(CSC)発生頻度の低減においても効果的であるか否かを決定するため、78日目の腫瘍を回収し、分離し、プールして、腫瘍ナイーブCB17.Scidマウスの新しいコホートに、10、30、100細胞/横腹の限界希釈アッセイで再移植した。それから、マウスを、腫瘍成長について週2回モニターし、腫瘍はさらなる治療なしで成長を可能とした。
【0115】
FOLFIRIと併用して抗LGR5抗体18G7H6A3で治療したマウスから単離した細胞は、FOLFIRI単独で治療したマウスから単離した細胞と比較して、腫瘍形
成能を非常に低下させた(
図8)。加えて、18G7H6A3 FOLFIRI併用からの再移植細胞は、FOLFIRI単独と比較して、有意により遅い腫瘍成長プロファイルおよび進行までの時間の遅延(
図9)を有した。最終的に、18G7H6A3治療は、40日目において、線形回帰分析によりがん幹細胞発生頻度を6倍低減した(1/856.3 18G7H6A3/FOLFIRI対1/138.6(FOLFIRI))。これらのデータは、FOLFIRIと併用した18G7H6A3は腫瘍開始またはがん幹細胞集団を効果的に標的化することを示している。68日目は、30細胞/動物データの最終日であった。データは、p=0.0039で有意である。
【0116】
実施例21-ヒト化LGR5抗体治療はインビボでの膵がん腫瘍再発およびがん幹細胞発生頻度を低減する
ゲムシタビンと併用した18G7H6A3の効果を、膵がんPANC1モデルで試験した。この試験は、ゲムシタビンと併用した18G7H6A3が、ゲムシタビン単独と比較してPANC1モデルにおける腫瘍成長を有意に阻害することを示した。これらの治療群からの腫瘍細胞を回収し、分離し、プールして、限界希釈アッセイ(500、1500、4500または13500細胞/動物)においてCB.17 SCIDマウスの新しいコホートに再移植し、治療なしで成長させた。
【0117】
ゲムシタビンと併用して抗LGR5抗体18G7H6A3で治療したマウスから単離した細胞は、ゲムシタビン単独で治療したマウスから単離した細胞と比較して、限界希釈アッセイ再移植において腫瘍形成能を非常に低下させた。ゲムシタビンおよび18G7H6A3の併用治療した再移植PANC1腫瘍は、4500細胞(ゲムシタビンにおいて40%対併用において20%)を移植したマウスにおいて、および13500細胞(ゲムシタビンにおいて100%対併用において70%)を移植したマウスにおいても生着頻度の低減を示した。線形回帰を用いて、ゲムシタビン移植腫瘍におけるがん幹細胞の発生頻度は、併用群と比較してゲムシタビンにおいて約1.5倍高かった(14883中の1対21336中の1)。これらのデータは、ゲムシタビンと併用した18G7H6A3は腫瘍開始またはがん幹細胞集団を効果的に標的化することを示している。
【0118】
PANC1腫瘍に加えて、本発明者らは、単剤または18G7H6A3と併用したゲムシタビンで治療したAsPC-1腫瘍担持マウスにおいて、限界希釈実験(500、1500、4500および13500細胞を用いた)における生着パーセントおよびがん幹細胞発生頻度も分析した。治療後40日目の腫瘍体積測定は、4500または13500細胞を移植したマウスにおいてゲムシタビン対併用における腫瘍担持マウスのパーセント減少を示した(それぞれ、40%および80%対30%および50%)。がん幹細胞の発生頻度は、ゲムシタビン対併用群において1.5倍超大きく、ゲムシタビンと併用した18G7H6A3は膵がんにおけるがん幹細胞集団を標的化していることをさらに示した。
【0119】
実施例22-ヒト化LGR5抗体治療はインビボでのトリプルネガティブ乳がん腫瘍再発およびがん幹細胞発生頻度を低減する
パクリタキセルと併用した18G7H6A3の効果を、トリプルネガティブ乳がんMDA-MB-231-LM3モデル(実施例12)で試験した。この試験は、パクリタキセルと併用した18G7H6A3は、パクリタキセル単独と比較して、腫瘍成長において最小の相加的阻害を有した。これらの腫瘍を回収し、分離し、プールして、10、30、100細胞/横腹で限界希釈アッセイにおいてCB.17 SCIDマウスの新しいコホートに再移植し、治療なしで成長させた。
【0120】
パクリタキセルと併用して抗LGR5抗体18G7H6A3で治療したマウスから単離した細胞は、パクリタキセル単独で治療したマウスから単離した細胞と比較して、腫瘍形成能を非常に低下させた。加えて、18G7H6A3+パクリタキセル腫瘍からの再移植
細胞は、パクリタキセル単独と比較して、有意により遅い腫瘍成長プロファイルおよび進行の遅延時間を有した。最終的に、18G7H6A3+パクリタキセル治療は、線形回帰解析により、がん幹細胞発生頻度を低減した。これらのデータは、パクリタキセルと併用した18G7H6A3は腫瘍開始またはがん幹細胞集団を効果的に標的化することを示している。
【0121】
実施例23-ヒト化抗LGR5抗体および化学療法を用いた予防的治療によりインビボでの転移性大腸がん成長の阻害
大腸がん患者の肝転移由来の低継代大腸がん細胞(BMCRC086)を用いて、インビボ試験を行った。0日目、BMCRC086細胞を解凍し、RPMI:マトリゲル(1:1)に懸濁し、CB.17 SCIDマウスの腹に皮下注射した。腫瘍サイズおよび体重について、動物を週2回モニターした。7日目、マウスを、PBS、18G7H6A3、FOLFIRIまたは18G7H6A3と併用したFOLFIRIで治療した。マウスに、7.5週間15mg/kgで週2回、PBSおよび18G7H6A3を投与した(16回投与)。マウスに、4週間、FOLFIRI(7日目、12日目、17日目、22日目、27日目および32日目に30mg/kgフルオロウラシルおよび90mg/kgロイコボリン;8日目、13日目、18日目、23日目、28日目および33日目に24mg/kgイリノテカン)を投与した(6回投与)。FOLFIRIと併用した18G7H6A3は、FOLFIRI単独と比較して、有意な抗腫瘍活性を示した(
図10)。
【0122】
実施例24-ヒト化LGR5抗体治療はWntシグナル伝達経路を阻害する
インビボ腫瘍有効性試験において結腸がんCT1(実施例8)およびCT3(実施例9)からの18G7H6A3治療した腫瘍を、ウェスタンブロット解析により特徴づけした。各治療マウスからの腫瘍サンプル(群当たりn=5~10マウス)を殺処分後切除し、液体窒素冷却した乳鉢内で直ちに凍結し、乳棒で粉砕(凍結粉砕)し、液体窒素中で急速冷凍して使用するまで-80℃で貯蔵した。凍結粉砕した腫瘍を、時々ボルテックスしながら、氷上で30分間、氷冷溶解緩衝液(ホスファターゼおよびプロテアーゼ阻害剤を含有するRIPA緩衝液を減らして)で溶解した。腫瘍ライセートタンパク質を含む上澄みを、SDS-PAGEゲル上で分析し、次いで、Wntシグナルタンパク質(およびそのリン酸化体)の数についてウェスタンブロッティングした。多くの治療群間の有意差を、CT1およびCT3腫瘍のウェスタンブロットで観察した。
図11ではホスホ-Thr41/Ser45-β-カテニン(Wntシグナルタンパク質)は、18G7H6A3がインビボで腫瘍細胞におけるLGR5シグナル伝達を阻害することができることを示すタンパク質の不活性型、およびその後の分解型のマーカーである。
【0123】
実施例25-ヒト化LGR5抗体治療はインビボWntシグナル伝達経路を阻害しない
親HEK-293T細胞およびLGR5を安定に発現するHEK-293T細胞に、TCF-LEFレポーターベクター含有レンチウイルス(GFP Cignal、QIAGEN)を形質導入し、レポーターの安定発現について選択した。親およびLGR5の発現安定レポーター系統を、96ウェルプレート中25,000/ウェルで播種し、オーバーナイトで取り付け、血清飢餓させて、抗体またはビヒクルで6時間治療してから、組換えヒトWnt3a(3nM)および組換えヒトR-スポンジンで18時間治療した。各R-スポンジン1~3の2つの濃度およびR-spo4の1つの濃度を、TCF/LEFレポーターセルラインの活性化において異なるR-スポンジンの活性の本発明者らの分析に基づいて試験した(100pM、300pM、1nM、3nMまたは10nM)。レポーター誘導GFPシグナルをプレートリーダーで測定した。示した全実験は試験した各R-スポンジンについての3つの独立した実験(2回繰り返して各実験を行った)からプールしたデータである(データは平均値+SD)。
【0124】
図12に示すように、可溶18G7H6A3の濃度増大は、Wnt3a+RSPO1、
RSPO2またはRSPO3の併用によるTCF/LEFプロモーター誘導GFP発現の誘導に影響を及ぼさなかった。RSPOおよびWntの存在下でLGR4およびLGR5両方によりシグナル伝達活性の誘導を阻害することが分かっているポジティブコントロール抗体76C12も示す。このデータは、抗LGR5抗体18G7H6A3がRSPO誘導TCF/LEFプロモーター活性を遮断しないことを示している。
【0125】
実施例26-ヒト化LGR5抗体は、ADCC(抗体依存性細胞傷害)機序により腫瘍細胞を標的化する
CHO-LGR5細胞をコンフルエントまで成長させ、遠心沈殿させて、PBS中に再懸濁し、カウントした。細胞のアリコート(約100k)を100μM前以て温めた(37℃)CFSE(カルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル)を含む別のチューブに添加し、混合物をセルインキュベーター内で15分間インキュベートした。最終CFSE濃度は約1μMであった。次に、細胞を洗浄し、前以て温めた培地に再懸濁し、インキュベーター内でさらに30分間入れた後、PBSで洗浄した。それから、染色した細胞を18G7H6A3(100μM)で染色した。抗体のCHO-LGR5細胞との結合を保証するため、いくつかの試験では、細胞のアリコートを、二次ヤギ抗ヒトPE共役抗体でも染色し、実験室においてcalibur機で分析した。U937細胞を、DDAO-SE(DDAOスクシンイミジルエステル;100K細胞に対して2μMの染料)で15分間、実験室内の遮光場所で、かつ、室温において染色した。それから、細胞は1mlのFBS(ウシ胎仔血清)であり、次いで、遮光場所で5分間インキュベートした。次に、細胞を、FBS(10%)を添加したPBSで洗浄し、FBS(2.5%)を添加したRPMI中に再懸濁した。CHO-LGR5-18G7H6A3およびU937-DDAO-SE標識化細胞両方をセルインキュベーター内で5時間、同時インキュベートし、実験室においてcalibur機で分析した。ネガティブコントロールとして、CHO-LGR5-CFSE細胞(18G7H6A3染色なし)のアリコートもU937と同時インキュベートし、calibur機で分析した。
【0126】
フローサイトメトリーデータの解析は、CFSEおよび18G7H6A3で染色した大部分のCHO-LGR5細胞は生存可能であり、calibur機で検出可能であることを示した。加えて、U937(U937(ヒト単球細胞系統;エフェクター細胞)およびCHO-LGR5細胞の両方は染色された場合検出可能であり、個別に獲得された。最終的に、U937-DDAO-SEおよびCHO-LGR5-CFSE-18G7H6A3の同時インキュベーションは、細胞の二重ポジティブ集団を同定したが、しかしながら、18G7H6A3を欠くU937およびCHO-LGR5-CFSEの同時インキュベーションは二重ポジティブ集団を生成しなかった。二重ポジティブ集団の存在は、U937(FcRを発現する)とCHO-LGR5-18G7H6A3(Fc部分を発現する)との交差結合を示し、ADCCは18G7H6A3の抗腫瘍活性の機序の1つであることをさらに示唆している。
【0127】
実施例27-ヒト化LGR5抗体はLGR5を内部移行する
18G7H6A3の内部移行を、LGR5を過剰発現するCHO細胞に対して検査した。細胞を100nM抗体で4℃において30分~2時間染色し、過剰Abを洗い落とし、染色した細胞を4℃または37℃のいずれかでインキュベートした。細胞をAlexaFluor488標識二次抗体で様々な時点において染色し、細胞表面結合抗体の内部移行をモニターした。37℃におけるインキュベーション時、内部移行した割合は、6.703±1.282分の表面局在に対して実測値t1/2であった。表面結合抗体のいくらか減少が観察されたが、内部移行は4℃におけるインキュベーションにより多くが遮断された。
【0128】
実施例28-ヒト化LGR5抗体は可溶RSPOとLGR5との結合を競合的に遮断し
ない
ヒトR-スポンジン1/2/3/4タンパク質の存在下、ビオチン-18G7H6A3とhLGR5-Fcとの相互作用を、競合ELISAフォーマットを用いて検査した。LGR5-Fcを96ウェル高結合ELISAプレート上に2μg/mLで塗布し、4℃オーバーナイトでインキュベートした。プレートをPBS+1%BSAで遮断した。ビオチン-18G7H6A3を結合緩衝液中1μg/mLまで希釈した。LGR5-Fcおよびビオチン-18G7H6A3間の前の直接結合ELISAから濃度を選択して、EC50濃度超の頑強なシグナルを得た。競合タンパク質を、様々な濃度においてビオチン-18G7H6A3と同時にELISAプレートに添加した。1:1,000希釈のストレプトアビジン-HRP(R&D Systems、カタログ#890803)を検出に使用した。プレートをTMB(Thermo)で発色し、SpectraMax Plus384プレートリーダーで450nmにおいてデータを収集した。GraphPad Prism6プログラムを用いてデータ解析を行った。ビオチン-mAbおよび競合濃度のいくつかを変更してELISAを3回繰り返した。
【0129】
ポジティブコントロール、LGR5-Fcを、ビオチン-18G7H6A3とプレート上のhLGR5-Fcとの結合と競合させた。R-スポンジン1/2/3/4を、ビオチン-18G7H6A3と、プレート上に塗布されたLGR5-Fcとの結合を阻害する能力について試験した。タンパク質はR&D Systemsから購入し、哺乳類細胞内で発現される完全長コンストラクトである。R-スポンジンタンパク質の最高濃度において、LGR5との抗体結合の完全な遮断は観察されなかった(
図13)。
【0130】
実施例29-ヒト化LGR5抗体は可溶RSPOとLGR5との結合を競合的に遮断しない
リガンド単独(RSPOまたはNorrin)とLGR5との結合は、LGR5シグナル伝達を誘導するのに充分ではない。代わりに、LGR5は、複数の共受容体と三元複合体を形成してシグナル伝達を誘導する。LGR5三元複合体の形成に対する18G7H6A3の効果を検査するため、R-スポンジン1/2/3/4およびNorrinの存在下、LGR5と、RNF43、ZNRF3、およびLRP6との結合を、ELISAフォーマットを用いて検査した。RNF43-Fc、ZNRF3-Fc、およびLRP6-Fcを、1×PBS中の4μg/mLで96ウェル高結合プレート上に塗布した。プレートを4℃オーバーナイトでインキュベートし、PBS+1%BSAで遮断した。LGR5-Fcを、R-スポンジン1/2/3/4の1μg/mLまたはNorrin 0.5μg/mLの存在下または非存在下全てで、一次緩衝液中1μg/mLまで希釈した。R-スポンジン1/2/3/4またはNorrinを、ELISAプレートに添加する前に、hLGR5-Fcと一緒にプレインキュベートした。各条件について三組のウェルを使用し、三組を同じ条件で試験した。1:2,000抗FLAG mAb(Cell Signaling)を使用して結合したhLGR5-Fcを検出した。抗マウスIgG HRP(JIR)の1:10,000希釈を検出のために使用した。プレートをTMB(Thermo)で発色し、SpectraMax Plus384プレートリーダーで450nmにおいてデータを収集した。GraphPad Prism6プログラムを用いてデータ解析を行った。LGR5、リガンドRSPOまたはNorrin、および共受容体(RNF43-Fc、ZNRF3-Fc、およびLRP6-Fc)との三元複合体の形成が観察された。
【0131】
次に、18G7H6A3を、LGR5-FcおよびRSPOまたはNorrinの存在下でELISAプレートにさらに添加した。18G7H6A3は、RSPOおよびNorrin両方ならびに3つの共受容体(RNF43、ZNRF3、およびLRP6)とのLGR5三元複合体の形成を有意に低減させた。
図14参照。18G7H6A3は、リガンド結合と直接的または競合的に競合しないので、このデータは、阻害のアロステリックな
モデルの証拠である。
【0132】
実施例30-抗LGR5抗体18G7H6A3のエピトープマッピング
抗体18G7H6A3が結合するLGR5の特定領域をさらに特徴づけするため、水素重水素交換質量分析法を用いてエピトープマッピング実験を行った。水素-重水素交換実験を行う前に、塩酸グアニジン(GdnHCl)の様々な濃度中の非重水素化緩衝液で調製した試験消化物を作製して、LGR5単独の最適なペプチドカバレッジ(peptide coverage)のためのタンパク質分解条件を最適化した。DXMSのペプシン消化のため、サンプルを5℃で解凍してから直ちに0.05%トリフルオロ酢酸で100μl/分の流速で、ブタペプシン(Sigma)を充填したプロテアーゼカラムで消化した。消化性フラグメントをC18トラップカラムに回収し、6~38%の直線的アセトニトリルグラジエントを用いてC18逆相カラム(Vydac)で分離した。カラム溶出物をLCQ Classic(Thermo Finnigan,Inc.)またはQ-TOF質量分析計(Micromass)に直接エレクトロスプレーした。MS/MSデータセットからのペプシン生成ペプチドの決定を、SEQUEST(Thermo Finnigan,Inc.)の使用により容易にした。それから、この組のペプチドを、DXMS Explorer(Sierra Analytics Inc.、カリフォルニア州モデスト)によりさらに検証した。異なる濃度のGdnHClのペプチドカバレッジマップを比較して、各個別のタンパク質またはタンパク質複合体の最適カバレッジマップを、その後の重水素交換実験に使用した。前に記載したように0℃で全ての工程を行った。
【0133】
タンパク質緩衝液中のLGR5-Fc、または18G7H6A3とプレインキュベートしたLGR5-Fcを、50%D2Oの最終濃度までD2O緩衝液と混合することにより交換実験を開始した。混合物を、10、30、100、300、1,000、3,000、または10,000秒間、0℃でインキュベートしてから、交換反応を氷冷クエンチ溶液(0.96%ギ酸、0~0.8M塩酸グアニジン)の添加により反応停止し、0.58%ギ酸および0~0.5M塩酸グアニジンの最終濃度、pH2.5のサンプルを得た。それから、サンプルをドライアイスで直ちに凍結し、-80℃で貯蔵した。DXMS実験のデータ処理は、前に記載したように専用ソフトウェアを利用した(DXMS Explorer、Sierra Analytics Inc.)。
【0134】
水素/重水素(H/D)交換データは、18G7H6A3の結合および抗原に対する抗体の結合と同時に表面露出残基が埋め込まれるせいで溶媒暴露が変化することに関する詳細を提供する。HD交換データ解析は、18G7H6A3が、X線結晶試験により同定されたR-スポンジン結合部位の面の反対のロイシン高濃度反復6~9の凸型表面内の配列番号47のアミノ酸T175、E176、Q180、R183、S186、A187、Q189、D247、E248、T251、R254、S257、N258、K260と結合することを示している。(例えば、Chen et al. Genes Dev. 27(12):1345-50(その全文を参照することにより組み入れられるものとする)参照)。これらのデータは、LGR5とR-スポンジンとの結合に関する残基が18G7H6A3との結合に関連しないことを示している。これらの先行する結果は、LGR5における他の構造的要素が18G7H6A3の結合部位に関連し得るという事実を除外しない。
【0135】
実施例31-結腸がんを患っているヒト患者への18G7H6A3の投与
結腸がんを患っているヒト患者の集団を、化学療法で治療し、腫瘍体積をモニターする。平均腫瘍体積が拡大を止め、実際に、化学療法の開始と同時に減少することが観察される。長期間の後、腫瘍体積は安定化し、最終的に増大し始める。
【0136】
結腸がんを患っている第二ヒト患者集団を、18G7H6A3と同時投与される化学療
法を治療する。再び、平均腫瘍体積をモニターする。腫瘍体積が拡大を止め、実際に、化学療法の開始と同時に減少することが観察される。腫瘍体積は、第一集団より実質的に低い最小体積まで減少することが観察される。腫瘍サイズは第一集団に対して実質的に延長した時間、低いままであることも分かる。
【0137】
実施例32-結腸がんを患っているヒト患者への18G7H6A3の投与
結腸がんを患っているヒト患者の第一集団に化学療法を単独で施行する。結腸がんを患っているヒト患者の第二集団に18G7H6A3と併用した化学療法を施行する。
【0138】
第一集団は、腫瘍サイズおよび成長の一時的減少を示し、その後、腫瘍成長は再開し、症状は元に戻る。化学療法治療後の腫瘍成長は、その後の化学療法に対して治療不応性である。
【0139】
第二集団は、基礎レベルまで腫瘍サイズの減少および腫瘍成長の休止を示す。腫瘍成長は、治療レジメンの完了中または完了と同時に再開しない。レジメンの完了後、成長は再発せず、がんの症状はもはや第二集団に存在しない。
【0140】
実施例33-結腸がんを患っているヒト患者への18G7H6A3の投与は生存率を増大する
結腸がんを患っているヒト患者の第一集団に化学療法を単独で施行する。結腸がんを患っているヒト患者の第二集団に18G7H6A3と併用した化学療法を施行する。
【0141】
治療(1年)後の設定期間における患者生存率をモニターする。第二集団の患者生存率は第一集団の患者生存率より実質的に高いことが観察される。すなわち、第一集団の生存率と比較して、第二集団の有意により高い割合が治療後1年目を過ぎて生存している。
【0142】
後の間隔においても同様に観察され、第一間隔において生存したものの中で、第二群のメンバーは治療後1年で生存した第一群のメンバーである第二間隔(治療後2年)まで有意により生存しそうであることが観察される。
【0143】
実施例34-乳がんを患っているヒト患者への18G7H6A3の投与
乳がんを患っているヒト患者の集団を、化学療法で治療し、腫瘍体積をモニターする。平均腫瘍体積が拡大を止め、実際に、化学療法の開始と同時に減少することが観察される。長期間の後、腫瘍体積は安定化し、最終的に増大し始める。
【0144】
乳がんを患っている第二ヒト患者集団を、18G7H6A3と同時投与される化学療法により治療する。再び、平均腫瘍体積をモニターする。腫瘍体積が拡大を止め、実際に、化学療法の開始と同時に減少することが観察される。腫瘍体積は、第一集団より実質的に低い最小体積まで減少することが観察される。腫瘍サイズは第一集団に対して実質的に延長した時間、低いままであることも分かる。
【0145】
実施例35-乳がんを患っているヒト患者への18G7H6A3の投与
乳がんを患っているヒト患者の第一集団に化学療法を単独で施行する。乳がんを患っているヒト患者の第二集団に18G7H6A3と併用した化学療法を施行する。
【0146】
第一集団は、腫瘍サイズおよび成長の一時的減少を示し、その後、腫瘍成長は再開し、症状は戻る。化学療法治療後の腫瘍成長は、その後の化学療法に対して治療不応性である。
【0147】
第二集団は、基礎レベルまで腫瘍サイズの減少および腫瘍成長の休止を示す。腫瘍成長
は、治療レジメンの完了中または完了と同時に再開しない。レジメンの完了後、成長は再発せず、がんの症状はもはや第二集団に存在しない。
【0148】
実施例36-乳がんを患っているヒト患者への18G7H6A3の投与は生存率を増大する
乳がんを患っているヒト患者の第一集団に化学療法を単独で施行する。乳がんを患っているヒト患者の第二集団に18G7H6A3と併用した化学療法を施行する。
【0149】
治療(1年)後の設定期間における患者生存率をモニターする。第二集団の患者生存率は第一集団の患者生存率より実質的に高いことが観察される。すなわち、第一集団の生存率と比較して、第二集団の有意により高い割合が治療後1年目を過ぎて生存している。
【0150】
後の間隔においても同様に観察され、第一間隔において生存したものの中で、第二群のメンバーは1年のポット治療で生存した第一群のメンバーである第二間隔(治療後2年)まで有意により生存しそうであることが観察される。
【0151】
実施例37-結腸がんを患っているヒト患者への18G7H6A3の投与は副作用を低減する
結腸がんを患っているヒト患者の第一集団に化学療法ならびにLGR5-RSPO結合およびシグナル伝達を遮断する抗LGR5抗体を投与する。結腸がんを患っているヒト患者の第二集団に化学療法および18G7H6A3を投与する。
【0152】
第一集団は、LGR5によるRSPO1シグナル伝達の干渉に関連する治療副作用がないことを示す。これらの副作用は患者の健康にとって有害になる。
【0153】
化学療法と併用して18G7H6A3を投与した第二集団は、LGR5によるRSPO1シグナル伝達の干渉に関連する治療副作用がないことを示さない。
【0154】
実施例38-進行性CRC腫瘍におけるLGR5の発現
LGR5転写産物発現を、LGR5特異的プローブを含むRNAscope技術を用いて調査した。LGR5転写産物は、結腸、腸管、小脳および膵臓を含む組織で検出可能であった。LGR5転写産物は、CT1 CRCおよびJH109膵腫瘍を含む患者由来異種移植片(PDX)組織でも検出可能であった。LGR5の発現を、初期(グレードI)対進行性(転移性)病変を含む腫瘍形成能の異なる段階において単離されたCRC患者サンプルで調査した。LGR5転写産物は、CRCグレードI、IIおよびII病変において発現され、CRC転移性病変において高度に発現された。
【0155】
実施例39-転移性膵臓患者由来異種移植片におけるLGR5の発現
転移性膵臓患者由来異種移植片におけるLGR5の発現を、定量的ポリメラーゼ連鎖反応(QPCR)を用いて調査した。腫瘍組織のサンプルを急速凍結またはRNAlater(Qiagen、カリフォルニア州)を含むクライオバイアル(cryovial)に添加し、数時間4℃でインキュベートした後-70℃に移動した。Qiagen RNeasy抽出キット(Qiagen、カリフォルニア州)を用いて、全RNAを抽出し、SuperScriptIIIキット(Life Technologies、カリフォルニア州)および製造者により提供されたプロトコールを用いてcDNAを合成した。ヒトLGR5転写産物存在量を、ヒト特異的LGR5およびGAPDHプライマーならびにStepOne Thermocycler(Life Technologies、カリフォルニア州)の次の熱的条件:50℃(2分);90℃(2分)および90℃(15秒)の40サイクルおよび60℃(1分)および融解曲線アセスメント(65℃~95℃)を用いて測定した。LGR5存在量を、式2^δCtを用いて定量した。
【0156】
転移性膵臓患者由来異種移植片において、LGR5は高度に発現された。化学療法を用いた治療は、膵腫瘍においてLGR5の発現の増加をもたらした。ヒト特異的プライマーを使用して、LGR5転写産物は、一連の膵臓患者由来異種移植片のQPCRを用いて測定可能であった。LGR5は大部分の腫瘍で検出可能であったが、転移性腫瘍におけるLGR5の発現が増加する傾向であり、進行性腫瘍形成能においてLGR5に対する役割をさらに示唆した。
【0157】
JH109、ASPC1およびPANC1を含む一連の膵腫瘍においてLGR5の発現を調査した。標準治療(SOC)(JH109におけるジェムザールおよびアブラキサンならびにPANC1およびASPC1におけるジェムザール単独)を用いた治療は、前述の腫瘍のそれぞれにおけるLGR5の発現の誘導をもたらした(
図15)。特に、LGR5の発現は、18G7H6A3およびSOCの併用で治療した腫瘍におけるコントロール(生理食塩水またはMOPC)に匹敵するレベルまで減少した。これらのデータは、LGR5の発現が、PANC腫瘍における併用療法(18G7H6A3+SOC)に対する応答のバイオマーカーとして役割を果たすことができることをさらに示している。
【0158】
実施例40-CTNNB1はCRCおよび膵腫瘍における18G7H6A3標的遺伝子の1つである
18G7H6A3のためのWnt経路における可能性ある標的を調査した。Wnt QPCRプレート(Qiagen、カリフォルニア州)を、96ウェルPCRプレート中の約80Wnt経路遺伝子に対するプライマーを用いて調製した。18G7H6A3またはMOPC(コントロール)治療腫瘍からのcDNAをプールし、WntプレートにおけるQPCRを行った。各プレートのデータを対応するGAPDHに対して正規化し、各遺伝子の存在量を式2^δCtを用いて測定した。倍差を測定するため、各18G7H6A3治療腫瘍におけるデータを、MOPC治療群からの対応する値により割った。1より大きいかまたは1より小さい値は、それぞれ、18G7H6A3治療群における上方制御かまたは下方制御を示した。上方制御または下方制御された遺伝子数の初期評価は、両方の腫瘍モデル(CT1およびCT3)において、上方制御された遺伝子より下方制御された遺伝子が多いことを示し、18G7H6A3は遺伝子発現に対する阻害効果を有することを示唆した。詳細な分析は、FZDB、FZD7、WNT7B、FBXW11、FZD1、DVL1、CSNK2A1およびCTNNB1を含むいくつかの差次的に発現された遺伝子を同定した。
【0159】
子宮頚がんでは、LGR5の発現およびCTNNB1の間に密接な相関関係があり得る。他の試験では、LGR5の過剰発現(LGR5組換えベクターを使用)または下方制御(shRNA使用)は、それぞれ、CTNNB1の上方制御または下方制御をもたらした(Chen Q, Cao HZ, Zheng PS. 2014. Oncotarget 5: 9092-105)。加えて、子宮頚がん患者からの免疫組織化学スライドの分析は、LGR5およびCTNNB1発現の間の有意な相関関係を示した。この試験では、CTNNB1発現を、QPCR(転写産物レベルを測定するため)およびウェスタンブロッティング(タンパク質発現を評価するため)をさらに用いて調査した。ヒト特異的プライマーを使用して、CTNNB1発現を、膵腫瘍およびCRC腫瘍において調査した。実施例45で説明したLGR5の発現と同様に、SOCを用いた治療はCTNNB1発現を増大し、18G7H6A3およびSOCの併用はCTNNB1発現の減少をもたらした。加えて、CTNNB1発現は、18G7H6A3で治療したCT1腫瘍において約35%減少した。従って、18G7H6A3を用いた治療はCTNNB1を阻害する。β-カテニンおよびホスホ-β-カテニン(Wnt経路における活性の欠如を示す)の発現を、ウェスタンブロット解析により調査した。ASPC1腫瘍におけるウェスタンブロットデータは、単剤またはSOCと併用した18G7H6A3がpβ-カテニンを上方制御
するQPCRデータを確証し、これらの腫瘍におけるWnt経路活性の阻害を示唆した(
図16)。
【0160】
p-β-カテニン、GSK-3β(全ておよびホスホ)、およびLRP6を含むWnt経路の他の成分を、一連のCRC腫瘍、膵腫瘍および乳腺腫瘍において調査した。ウェスタンブロットデータの定量は、ASPC1およびPANC1腫瘍におけるWnt経路シグナル伝達の有意な阻害を示したが、他のモデルではWnt経路の下方制御の傾向をいくらか明らかにしている。18G7H6A3を用いた治療に応答しないBMCRC086腫瘍は、LGR5の発現およびWntシグナル伝達経路成分に対して陰性であり、18G7H6A3に対する作用の機序は特異的にLGR5を標的化しWntシグナル伝達を阻害することをさらに支持した。
【0161】
ASPC1、PANC1およびJH109を含む膵腫瘍におけるWnt経路遺伝子の発現を調査した。インビボデータに基づいて、PANC1およびASPC1の両方において、18G7H6A3治療腫瘍対PBS治療腫瘍間の腫瘍体積の差があった。対照的に、JH109腫瘍は、18G7H6A3単剤またはSOC化学療法併用のいずれかを含む標準治療レジメンに対して応答しなかった。応答細胞(PANC1およびASPC1)および非応答細胞(JH109)におけるWnt遺伝子発現の差を調査した。併用治療群では、Wnt6、FZD8、FOSL1、Wnt11、NFATCおよびFZD5は、ASPC1およびPANC1併用治療腫瘍において下方制御され、JH109腫瘍において上方制御された。膵臓およびCRCデータの両方では、WNT11、WNT6、FRZBおよびPRICKELを含む遺伝子は、PANC1、ASPC1、CT1およびCT3細胞において下方制御されたが、JH109細胞では下方制御されなかった。
【0162】
遺伝子ツリー解析(Gene Tree analysis)は、Wnt11、FRAT1、LEF1、GSK3B、FZD8およびLRP6を含む18G7H6A3を用いて治療した膵腫瘍において同時制御された可能性ある遺伝子を同定した。各治療における差次的に発現された転写産物の分析は、膵腫瘍より2倍多く上方制御または2分の1に下方制御される遺伝子も同定した(
図17)。Wnt7Aなどのいくつかの遺伝子は、18G7H6A3対コントロール治療腫瘍における全ての腫瘍間で共通であった。
【0163】
実施例41-18G7H6A3はCT1腫瘍における転写を阻害する
18G7H6A3標的遺伝子の発現を、初期対後期腫瘍形成能において調査した。マウスは、CT1を移植したマウスであり、3日目、10日目および17日目においてコントロール、18G7H6A3群、FOLFIRI群または化学療法群から腫瘍を回収した。3日目の各腫瘍からの全RNAを回収し、Illumina human chipsを用いて遺伝子アレイハイブリダイゼーションのために調製した。差次的に発現された遺伝子(1.5または2倍より多い、p<0.05)の全体的分析は、18G7H6A3で治療した(単剤またはFOLFIRIと併用して)腫瘍において、上方制御された遺伝子より下方制御された遺伝子が多かった。これは、18G7H6A3を用いた治療は、全体的細胞転写装置に対するより大きな抑制効果を有した可能性があることを示唆した。PCA(主成分分析)は、18G7H6A3およびコントロール治療腫瘍での全体的遺伝子発現における近接効果も示した。しかしながら、18G7H6A3をFOLFIRIに添加した場合(すなわち、併用群)、併用対FOLFIRI間の明白な分離があり、LGR5の標的化は、FOLFIRI治療腫瘍における遺伝子発現を有意に変化させた可能性があることを示唆した。
【0164】
18G7H6A3対ビヒクルにおける差次的に発現された遺伝子の分析は、18G7H6A3治療腫瘍において下方制御されるANGPT2、AKAP12およびADMなどのいくつかの腫瘍プロモーター、ならびに18G7H6A3治療腫瘍において上方制御され
るDAB1、MIR655、NKX1-2などのいくつかの腫瘍サプレッサーを同定した(
図18)。逆に、FOLFIRI治療は、腫瘍プロモーター(FBN2、HKDC1、ABCB1、FGF2)ならびにTRIB3、ATF3およびTIMP3などのいくつかの腫瘍サプレッサーも上方制御するように思われる(
図19)。FOLFIRIおよび18G7H6A3の併用は、ALDOC、CDH5、ITGA2などのより多くの腫瘍プロモーターの下方制御、ならびにZBTB11、ITPKA、PSMC3IPおよびBAK1などのより多くの腫瘍サプレッサーの上方制御をもたらした(
図20)。
【0165】
実施例42-18G7H6A3治療は膵臓患者由来異種移植の同所性モデルの末梢血液中のヒトCTCを減少させる
原発腫瘍成長および転移の阻害における18G7H6A3の役割を調査するため、一連の膵臓患者由来異種移植片サンプル、ならびにPANC1424細胞およびPANC1427細胞においてLGR5の発現を検査した。
【0166】
腫瘍サンプルをNOD/SCID(非肥満糖尿病性重複合免疫不全)マウスの皮下に移植し、その後、インビボ試験のために指定したレシピエントの膵臓に移植した。腫瘍体積を毎週超音波で測定し、~100mm3の腫瘍を有するマウスを有効性試験に登録し、次のもので処理した:1- MOPCアイソタイプ(15mg/kg、週2回;腹腔内);2- 18G7H6A3(15mg/kg、週2回;腹腔内);3- SOC(ジェムザール 50mg/kg;腹腔内、週2回およびアブラキサン 30mg/kg、静脈内、週2回);4- 上記用量での18G7H6A3およびSOCの併用。この試験の最後に、各腫瘍担持マウスからの末梢血液を、CTC(フローサイトメトリー使用)および循環DNAアセスメントのために集めた。フローサイトメトリーのため、血液サンプルを、製造者プロトコールを用いてRBC溶解緩衝液(ACK緩衝液、Life Tech、カリフォルニア州)で処理し、4℃で30分間、ヒトHLA-FITC(eBiosciences、カリフォルニア州)およびヒトLGR5-AF647(BD Pharmingen、カリフォルニア州)で染色した。実験室においてFACS calibur機での捕捉の前に、染色緩衝液(PBS-FBS3%)および7AAD(7-アミノアクチノマイシン)で2回、細胞を洗浄し、FCS Expressソフトウェア(De Novo、カリフォルニア州)を用いてデータを解析した。
【0167】
様々な膵臓患者由来異種移植片サンプルにおいて、LGR5は発現された。ヒトCTCを末梢血液中で検出した。HLA+細胞のパーセントはMOPC対18G7H6A3において有意に変化しなかったが、循環HLA+LGR5+細胞のパーセントは、18G7H6A3治療マウスで有意に減少した(
図21)。
【0168】
HLA+細胞のパーセントは、化学療法対併用治療マウスで有意な変化はなかったが、しかしながら、18G7H6A3およびSOCの併用は、同時および減量設定の両方においてHLA+LGR5+細胞をほとんど完全に切除した(
図22Aおよび
図22B)。18G7H6A3治療(単剤またはSOCと併用)は、膵臓患者由来異種移植の同所性モデルの末梢血液中のヒトCTCを有意に減少させる。
【0169】
実施例43-他のモデルにおけるLGR5の発現
LGR5の発現を、フローサイトメトリーおよびRNAscopeを用いて、カニクイザル(Cynomolgus macaques)(Cynos)由来の皮膚サンプルで調査した。Cynosからの皮膚サンプルを、0日目、7日目、14日目および21日目においてビヒクルまたは18G7H6A3の様々な用量(G2:10mg/kg;G3:50mg/kg;およびG4:150mg/kg)で治療した。試験終了時、皮膚サンプルを、抗菌剤(ペニシリンおよびストレプトマイシン)および抗真菌液剤(Anti-Anti 100×、Life Technologies、カリフォルニア州)を添加し
たDMEM中で準備した。皮膚サンプルを、コラゲナーゼおよびサーモリシン(リベラーゼ、Roch Inc、カリフォルニア州)の混合液を用いて消化した。皮膚前駆細胞(SP)をリベラーゼと一緒に、機械的破砕をしながらオーバーナイトのインキュベーション後に単離した。SPを、ラット抗ヒトLGR5(AF647、BD Pharmingen、カリフォルニア州)で染色し、実験室においてcalibur機で分析した。FCS Express(Denovo Software、カリフォルニア州)を用いたデータ解析は、LGR5はCynos SPにおいて検出可能であるが、18G7H6A3(異なる用量)対ビヒクル治療群間のLGR5頻度の有意な差はないことを示した。RNAscopeを用いて、LGR5は、特に毛包幹細胞およびずっと程度は低いが皮膚上皮細胞において皮膚領域で検出可能であった。ビヒクル対18G7H6A3治療サンプルのLGR5ポジティブ領域の有意な差はなかった。
【0170】
Cynosから単離された遺伝子発現末梢血液単球を調査した。Qiagen RNeasyキットを用いて全RNAを抽出し、Superscript cDNA合成キット(Life Technologies、カリフォルニア州)を用いてcDNAを合成した。各処理からcDNAをプールし、RT2 Sybergreen qPCR master mix(SABiosciences、マサチューセッツ州)に添加した。最終混合物を、ケモカインまたは炎症性ケモカインのためのCyno QPCRプライマーを含む96ウェルプレートの各ウェルに添加した。PCRの温度プロファイルは:95℃で10分間および95℃、15秒の40サイクルおよび60℃で1分、次いで融解曲線段階を含む。各プレートにおけるデータ(Ct値)を、対応するGAPDHから差し引くことにより正規化し、各転写産物の存在量を式2^DCTを用いて算出した。18G7H6A3群のいずれか対ビヒクル治療群間の差次的に発現された(2倍超)転写産物数の分析は、遺伝子アレイデータと一致して、上方制御された遺伝子より下方制御された遺伝子がずっと多いことを示した。用量漸増に伴い、上方制御された遺伝子はより少なく、下方制御された遺伝子はより多かった。18G7H6A3の最終投与後4週間Cynosが治療を受けないG4回復(G4R)群は、ほとんど同様の数の上方制御遺伝子、下方制御遺伝子を示した。詳細な分析は、その発現が18G7H6A3の用量に対して逆相関関係にある、すなわち、10mg/kgで最高、150mg/kgで最低である差次的に発現された遺伝子(CCL11、IL3、SPP1、CCL13、CXCL6およびTNFRSF11b)を同定した。
【0171】
治療間で共通に下方制御された遺伝子としては、CCL1、IFNγ、CCR8、IL2、IL3およびIL4が挙げられ、このうちいくつかはM1またはM2マクロファージが高濃度である。
【0172】
実施例44-ヒト化抗LGR5抗体によるインビボでの小細胞肺がん腫瘍成長の阻害
患者由来小細胞肺がん異種移植モデル。BLG293腫瘍から分離した腫瘍細胞を、マトリゲル中のCB.17 SCIDマウスの皮下に移植し、腫瘍サイズおよび体重について週2回モニターした。腫瘍が平均130mm3に達した場合、マウスをランダムに分けた。マウスを、PBS、抗体コントロールMOPC、または18G7H6A3のいずれかで治療した。マウスに、15mg/kgで週2回投与した。全マウスを、体重および腫瘍サイズ、ならびに健康全般および外観について、終了するまで、週2回モニターした。
【0173】
18G7H6A3は、PBS(24.9%腫瘍成長阻害)またはMOPC抗体(24.7%腫瘍成長阻害)コントロールと比較して有意な抗腫瘍活性を示した。
【0174】
実施例45-18G7H6A3は減量化学療法後再発する膵腫瘍を有するマウスの生存率を増大させる
Panc1427(UCSD1427)腫瘍は、化学療法(ゲムシタビン/アブラキサ
ン)および18G7H6A3を用いた治療により完全に減量(消失)した。腫瘍が退消失した場合、化学療法は止め、マウスを18G7H6A3で治療したかまたは治療しなかった。18G7H6A3で治療した動物は、コントロール動物と比較して、著しく健康であったが、いく匹かのマウスは跛行または体重損失などの重症な健康観察のせいで安楽死させなければならなかった。150日目、18G7H6A3および化学療法で治療した7/8のマウスは生存し、対して、化学療法単独で治療したマウスは4/8が生存した。
図23に結果をまとめている。
【0175】
実施例46-患者への18G7H6A3の投与
転移性大腸がん患者のBNC101(抗LGR5ヒト化モノクローナル抗体)のフェーズI、用量漸増試験を下記のように行う。最終製品名:注入用BNC101液剤。活性成分名:BNC101、18G7H6A3、ET101、LGR5抗体。
【0176】
試験目的
最大耐用量(MTD)を決定するため転移性大腸がん患者に静脈内投与されたBNC101の推奨フェーズII用量(RP2D)、安全性、耐容性および薬物動態(PK)プロファイル。主目的は転移性大腸がん患者におけるBNC101単剤および化学療法との併用の両方のMTDを決定することである。第二目的は以下の通りである。転移性大腸がん患者におけるBNC101単剤および化学療法との併用の両方のRP2Dを決定すること。BNC101の安全性および耐容性[有害事象(AE)、投薬欠落または投薬遅延]を評価すること。BNC101の免疫原性(BNC101に対する抗体の産生)について評価すること。BNC101単剤および化学療法との併用の両方の薬物動態(PK)(半減期、分布およびクリアランスの体積)を決定すること。BNC101で治療された転移性大腸がん患者の全奏効率(ORR)、無進行生存率(PFS)および全生存率(OS)の初期評価を行うこと。探索目的は以下の通りである。疾患関連バイオマーカーの変化(CEA)を評価すること。活性のバイオマーカー[薬力学、例えば、循環腫瘍細胞(CTC)、LGR5+細胞、循環腫瘍DNA]を評価すること。
【0177】
安全性エンドポイント
治療誘発事象(臨床データおよび実験室データ)を評価すること。投薬中断および投薬中止を評価すること。
【0178】
重要患者選択規準
1.署名された書面によるインフォームドコンセント。 2.年齢>18歳。 3.米国東海岸がん臨床試験グループ(ECOG)パフォーマンスステータススコア0~1。 4.転移性疾患に対して少なくとも2回の化学療法(単剤治療コホート)または少なくとも1回の化学療法(併用治療コホート)に抵抗性のあった組織学的または細胞学的に確認された大腸がん患者、かつ、医師および患者双方の意見において実験的治療を試行することが不当でない。この6か月以内のアジュバントFOLFOX(フォリン酸;フルオロウラシル(5-FU);およびオキサリプラチン)が治療法と見なされる。第一治療後の維持ストラテジーが追加の治療法として考えられていない。 5.患者は、該患者またはその治療を危険にさらすことがない生検を行い易い利用可能な腫瘍病変を有しなければならない。単剤漸増コホート3以降の患者、単剤拡大コホート、および全併用治療患者は、2回連続の腫瘍病変生検(可能ならいつでも最低限2回の新鮮なコア/パンチが好ましい)を提供することに同意かつ提供する意思がある。原発性腫瘍の代わりに、肝転移から生検することができる。新鮮な生検の腫瘍組織の存在は、適切な準備なしの組織学的または細胞学的手順を用いて訓練された病理学者により認定されるものとする。 6.固形がんの治療効果判定のためのガイドライン(RECIST)1.1版による測定可能な疾病。 7.既知の脳転移がない。 8.少なくとも≧12週の平均余命。 9.正常な臓器および髄機能: a.登録前に過去14日間成長因子の助けなしに好中球絶対数>1,500
/mL。 b.登録前に過去14日間輸血なしで血小板>100,000/mL。 c.ヘモグロビン≧9.0g/dL-患者は輸血されていてもよく、この規準を満足する赤血球新生治療を受けていてもよい。 d.全ビリルビン<1.5×正常の施設基準値上限(ULN)(ジルベール症候群を有する対象では<2×ULN)。 e.血清アルブミン≧3g/dL。 10.アスパラギン酸アミノ基転移酵素(AST)(血清グルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼ、SGOT)およびアラニンアミノ基転移酵素(ALT)(血清グルタミン酸ピルビン酸アミノ基転移酵素、SGPT)<2.5×施設基準ULN(肝臓への侵襲がある対象では<5×施設基準ULNだが、ビリルビン上昇と関連し得ない)。 11.生検を受ける患者のため、プロトロンビン時間(PT)および活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)/正常範囲内(±15%)の国際標準化比(INR)。 12.クレアチニン<1.5×施設基準ULNまたはクレアチニンクリアランス>60mL/分/1.73m2(国際標準より上のクレアチニンレベルを有する対象)。 13.妊娠する/妊娠させる可能性のある女性/男性の充分な避妊。
【0179】
投薬およびスケジュール
交互に、2つの分離した組みのコホートにおいて漸増を行う:単剤BNC101用量漸増は併用化学療法コホートにおける用量漸増に先行する。後者の場合、BNC101は、FOLFIRIと併用して用量漸増される。併用化学療法コホートは、RP2Dが単剤治療コホートにおいて決定されるまで治療を開始しない。併用化学療法コホートにおける漸増は、単剤コホートの単剤RP2Dより低い1つのレベルで開始する。化学療法とBNC101の併用からさらなる毒性は予期されないが、初回用量より低い2つの追加の段階的縮小(de-escalation)レベルを使用するが、これらは必要なことである。
【0180】
BNC101単剤治療
標準3+3フェーズI試験デザインを使用する。初回用量は、動物において最大無毒性量(NOAEL)の用量(ヒトで2.5mg/kg)の30分の1であり、受容体結合における種の違いを考慮して算出した。その後のBNC101用量レベルは5、10、および15mg/kgである。
【0181】
投与スケジュールは、毎週である(qlw)。
【0182】
サイクル期間は、サイクル間の休止の週はなくて、4週間(28日)(4週毎に点滴)である。
【0183】
用量漸増を行ってMTDを決定する。用量コホート内での用量漸増または減少はしない。全ての場合で、BNC101を朝に投与し、同日にトランスレーショナルリサーチ用の血液サンプルの調製および輸送を時間的に可能とすべきである。
【0184】
用量漸増を、2.5mg/kgの用量(動物の最大NOAEL用量の30分の1)の3患者のコホートから始める。28日の最後に(BNC101を4回投与)、試験薬物に起因するCTCAEグレード≧2AEが観察されない場合、3患者の第二コホートを次の用量レベル(5mg/kg)で治療する。さらなる用量漸増を3患者のコホートにおいて続ける(10mg/kgで開始し、それから、15mg/kg)。
【0185】
3対象コホートの3対象のうちの1人が用量規制毒性(DLT)を経験する場合、この用量レベルを6対象に拡げる。2人以上の対象がDLTを経験する場合、これ以上の対象をこのレベルでは投与せず、6対象がこの用量レベルで治療されていない限り、前の用量において3人の追加対象を加える。
【0186】
28日間にわたって第一用量の時点からDLTについて対象を評価する。適切な場合、
新たに登録した対象に対する用量漸増を、コホートの全対象がその28日目DLTアセスメントを完了した後で行う。不変の疾患または反応する疾患を有する対象または56日目(2サイクル)より後の対象は、疾患が進行するまでBNC101を毎週投与することを許容することができる。
【0187】
試験した最大用量のBNC101においてDLTが報告されない場合、実験動物(カニクイザル)において示される最大暴露に匹敵するBNC101暴露を含むPKプロファイルを示す患者のコホートは、RP2Dである。
【0188】
最低限9人の追加対象は、6対象のうち<2人がグレード3(24時間で回復するグレード3の注入反応を含まない)もしくはグレード4のAE(DLT)を経験する結果となる最大用量レベルにおいて、またはこのような毒性の非存在下において充分なPK暴露を達成した後でさらに登録する。
【0189】
FOLFIRIと併用したBNC101
BNC101単剤治療の用量漸増が完了し、安全を宣言してRP2Dに達した後、転移性大腸がん患者は、単剤で特定されたRP2Dより低い1用量レベルのBNC101を用いたこれらの併用化学療法コホートで開始することができる。これらのコホートはそれぞれ3対象を含む。漸増は単剤治療コホートで使用したのと同じルールにより進める。この初回BNC101用量は、最大6患者のうち2人のDLTを示すべきであるが、3+3ルールに従って、2人の追加の段階的縮小コホートを準備して化学療法と併用したRP2Dを特定する。
【0190】
試験した最大用量のBNC101併用においてDLTが報告されない場合、実験動物において示される最大暴露に匹敵するBNC101暴露を含むPKプロファイルを示す患者のコホートは、化学療法と併用したRP2Dである。
【0191】
最低限9人の追加対象は、6対象のうち<2人がグレード3(24時間で回復するグレード3の注入反応を含まない)もしくはグレード4のAE(DLT)を経験する結果となる最大用量レベルにおいて、またはこのような毒性の非存在下において充分なPK暴露を達成した後で、併用コホートにおいてさらに登録する。
【0192】
FOLFIRI成分:イリノテカン(IRI)-初回用量180mg/m2(1日目90分かけて)、ロイコボリン(LV)-初回用量400mg/m2(IRIと同時に1日目120分かけて投与)、5-FUボーラス-初回用量400mg/m2(それから、1日目LV後に投与)、5-FU点滴-初回用量2400mg/m2(1日目に開始して48時間かけて投与)。FOLFIRIサイクルを14日毎に繰り返す。
【0193】
DLT定義
DLTは、いずれかの所与の漸増コホートのサイクル1(0~28日目)において起こる下記のもののいずれかと定義される:NCI CTCAE v4.0を用いたグレード3または4の非血液毒性(アナフィラキシー反応を含む);48時間より長く持続するグレード3の吐き気または適切な治療にもかかわらず起こるグレード4の嘔吐もしくはグレード≧3の下痢のいずれか;いずれもの持続期間のグレード4の血小板減少症および単剤治療コホートにおいていずれもの持続期間または併用化学療法コホートにおける>7日持続するグレード4の無併発性好中球減少症(すなわち、熱も感染症もない)。入院を必要とするグレード4の発熱性好中球減少症および3週間を超える治療遅延およびQTcインターバルの≧500ミリ秒への延長またはベースライン平均QTcインターバルから60ミリ秒の増長を必要とするいずれかのグレード3の血液毒性。最大の医学的管理を受けていない対象の高脂血症またはサプリメントの服用で抑えられている電解質異常を除いた、
いずれもの他の薬物関連≧グレード3の非血液有害事象(アナフィラキシー反応を含む)。全てのAEは、疾患進行(PD)に対する観察された毒性間の明快な関係性がない限り、強力に治療に関連すると見なされる。これらの判断基準を満足する有害事象は、DLTの報告またはMTDの決定の目的のためと見なされない。
【0194】
治療の長さ
患者は、どれでも最初に起こる、PD、容認されない毒性、同意の撤回、またはスポンサーによる試験停止まで治療される。
【0195】
サンプルサイズ
約54人までの患者がこの試験において治療され、単剤および化学療法との併用の両方で、毒性プロファイル、DLT、およびMTDおよび/またはBNC101のRP2Dを決定する。用量レベルコホート当たり1~6人の評価可能な患者がBNC101の毒性およびPKプロファイルを評価するために十分なデータを提供すると見込まれる。一旦、RP2Dを特定したら、これらのコホートの拡張(少なくとも9人までの追加患者)は、単剤治療群および併用化学療法群の両方で行われる。試験した最大BNC101用量においてDLTが報告されない場合、実験動物において示される最大暴露に匹敵するBNC101暴露を含むPKプロファイルを示す患者のコホートは、RP2Dである。
【0196】
訪問頻度
4週サイクルの各週に全7(±3)日。生存の経過観察情報およびその後の抗がん治療は、死、追跡不能、患者の同意撤回、またはスポンサーによる試験停止まで、治療の休止後3か月毎に収集される。
【0197】
安全アセスメント
0~28日目(サイクル1)のDLTについて対象を評価する。最後の投薬後、30日にわたって有害事象を報告する。安全性を継続的に報告する。最後の投薬後28日目と30日目の間で起こる有害事象を報告するが、MTDの決定に不可欠なものでない。パフォーマンスステータスを毎週スコアし、ベースライン、各サイクルの開始時(例えば、4週間毎)、研究終了(EOS)訪問時およびいずれものAEの回復時に身体検査を行う。
【0198】
心電図(ECG)モニタリング
全12リードECGを、3回、少なくとも5分離して得るものとする。ベースライン(第一投与に先んじて14日中に)、サイクル1の1日目および15日目に集中的に、ならびに8日目および22日目の投薬前に、ECGを得る。サイクル2およびその後のサイクル(複数)の1日目の投薬前にECGを得る。EOS ECGは回収しなければならない。アセスメントのために、地域の研究室にECGを送付する。
【0199】
応答アセスメント
コンピュータ断層撮影(CT)スキャンを、ベースラインおよび8週間毎に行う。第一応答アセスメントは56日目(2サイクル後)である。抗腫瘍応答のための放射線医学試験を、前の28日以内に行われない場合にEOS訪問において繰り返す。記録の電話経過観察またはレビューを、6か月間毎月およびその後の18か月間は3か月毎に行う(合計24か月)。
【0200】
薬物動態アセスメント
薬物動態サンプルを、サイクル1の1日目および15日目ならびに疎らに8日目および22日目に集中的に得る。サイクル2およびその後のサイクル(複数)の1日目に疎らにサンプルを得る。BNC101の点滴中、および点滴後(点滴終了後)、投薬前(点滴開始前)に血液サンプルを採血する。
【0201】
細胞および分子バイオマーカーアセスメント
患者は、ベースライン、サイクル1の間毎週、それぞれその後のサイクルの1日目および治療終了時に血液を採取して、薬力学効果の指標としてCTCおよびバイオマーカー(LGR5を含むがこれらに限定されない)のレベルを測定する。患者は、ベースラインおよびサイクル1の22日目に2回の対応皮膚生検も受ける(各生検は2回の新鮮なコア/パンチである)。患者は、追加の毛髪サンプル(毛包幹細胞の収集を含む)を採取してもよい。
【0202】
腫瘍病変生検
単剤治療漸増コホート1および2の生検は必要でない。対応生検(ベースラインおよび22日目)は、単剤治療漸増コホート3以降、および単剤治療拡大コホートには必須である。対応生検は、全併用治療患者には必須である。各生検は、好ましくは可能ならいつでも、最低限2回の新鮮なコア/パンチである。原発性腫瘍の代わりに、肝転移から生検することができる。新鮮な生検の腫瘍組織の存在は、適切な準備なしの組織学的または細胞学的手順を用いて訓練された病理学者により認定されるものとする。全サンプルを匿名化する。個体の特定は、調査またはスポンサーにより確認することができない。中央標準研究所に属するパスワード保護されたデータは、患者またはこの患者を治療する医師に公表されない。患者情報は、リサーチデータの無記名の報告の中で厳密に使用される。このようなリサーチデータは、患者のチャート内に記載されないし、臨床医にも利用できず、診断のためにも治療のためにも使用せず、かつ、使用することができない。
【0203】
免疫原性アセスメント
抗BNC101抗体の存在を、ベースライン、各投薬前、治療終了時、および12週間治療中止後4週毎に試験する。単剤治療対併用治療コホートにおける患者の異なる性質および予測される漸進的変化のせいで、異なる数のサンプルをそれぞれにおいて得ることができる場合がある。
【0204】
本明細書中で使用されるとき、「含む(comprising)」という語は、「含む(including)」、「含む(containing)」、または「を特徴とする(characterized by)」と同じ意味であり、包括的またはオープンエンドであり、追加の列挙されていない要素または方法ステップを排除しない。
【0205】
上記説明は、本発明のいくつかの方法および材料を開示している。本発明は、製造方法および装置においてこの方法および材料の修正、ならびに変更を受けやすい。このような修正は、本明細書で開示された本発明の本開示または実践の考察から当業者には明白になるだろう。結果として、本発明は本明細書で開示された特定の実施形態に限定されるものではなく、本発明の真の範囲および趣旨内に入る全ての修正および変更を包含する。
【0206】
これらに限定されないが、公表および未公表の応用、特許、および参考文献を含む本明細書で引用した全ての参照は、その全文を参照することにより本明細書に組み入れられるものとし、これにより、本明細書の部分とする。参照により組み入れられた出版物および特許または特許応用が本明細書に含まれる開示と矛盾する点で、本明細書は、このような矛盾する材料に取って代わるおよび/またはこのような矛盾する材料より優先されるものとする。
本発明の他の実施形態として、以下のものを挙げることができる。
[1]ロイシンリッチリピート含有Gタンパク質共役受容体5(LGR5)と特異的に結合するヒト化モノクローナル抗体の有効量を、それを必要とするヒト対象に投与することを含む転移性大腸がんを患っている前記ヒト対象の治療方法であって:
前記モノクローナル抗体は、配列番号13を含む重鎖および配列番号14を含む軽鎖を
含み;
前記モノクローナル抗体は、少なくとも4週間、毎週静脈内に投与され;
前記モノクローナル抗体の投与量は、約2.5mg/kg~約15mg/kgである、前記方法。
[2]前記モノクローナル抗体を、フォリン酸、フルオロウラシル、およびイリノテカンと併用して投与する、[1]に記載の方法。
[3]前記モノクローナル抗体の初回用量を、フォリン酸、フルオロウラシル、およびイリノテカンの投与前に投与する、[2]に記載の方法。
[4]前記イリノテカンの初回用量は約180mg/m2であり、約90分かけて投与し;前記フォリン酸の初回用量は約400mg/m2であり、約120分かけて、かつ、前記イリノテカンの初回用量と同時に投与し;前記フルオロウラシルの初回用量は約400mg/m2であり、前記フォリン酸の初回用量の投与後に投与し;前記フォリン酸、フルオロウラシル、およびイリノテカンを14日毎に投与する、[3]に記載の方法。
[5]ロイシンリッチリピート含有Gタンパク質共役受容体5(LGR5)と特異的に結合するヒト化モノクローナル抗体またはその抗原結合性フラグメントの有効量を、それを必要とする対象に投与することを含むがんを患っている前記対象の治療方法であって:
前記モノクローナル抗体は、配列番号13を含む重鎖および配列番号14を含む軽鎖を含み;
前記モノクローナル抗体は、少なくとも4週間、毎週静脈内に投与され;
前記モノクローナル抗体の投与量は、約2.5mg/kg~約15mg/kgである、前記方法。
[6]前記モノクローナル抗体を、化学療法薬と併用して投与する、[5]に記載の方法。
[7]前記化学療法薬が、フォリン酸、フルオロウラシル、イリノテカン、ゲムシタビンおよびナノ粒子アルブミン結合パクリタキセル(アブラキサン)からなる群から選択される、[6]に記載の方法。
[8]前記モノクローナル抗体の初回用量を、化学療法薬の投与前に投与する、[7]に記載の方法。
[9]前記モノクローナル抗体を、フォリン酸、フルオロウラシル、およびイリノテカンと併用して投与する、[7]に記載の方法。
[10]前記モノクローナル抗体の初回用量を、フォリン酸、フルオロウラシル、およびイリノテカンの投与前に投与する、[7]に記載の方法。
[11]前記イリノテカンの初回用量は約180mg/m2であり、約90分かけて投与する、[7]に記載の方法。
[12]前記フォリン酸の初回用量は約400mg/m2であり、約120分かけて、かつ、前記イリノテカンの初回用量と同時に投与する、[11]に記載の方法。
[13]前記フルオロウラシルの初回用量は約400mg/m2であり、前記フォリン酸の初回用量の投与後に投与する、[12]に記載の方法。
[14]前記フォリン酸、フルオロウラシル、およびイリノテカンを14日毎に投与する、[13]に記載の方法。
[15]前記モノクローナル抗体を、ベバシズマブ、アフリベルセプト、セツキシマブ、およびパニツムマブからなる群から選択される追加の治療薬と併用して投与する、[1]~[14]のいずれかに記載の方法。
[16]前記がんが、固形腫瘍を含む、[5]~[14]のいずれかに記載の方法。
[17]前記がんが、結腸がん、大腸がん、膵がん、乳がん、および肺がんからなる群から選択される、[5]~[14]のいずれかに記載の方法。
[18]前記がんが、APC変異を含む結腸がん、KRAS変異を含む結腸がん、転移性大腸がん、転移性膵がん、トリプルネガティブ乳がん、および小細胞肺がんからなる群から選択される、[5]~[14]のいずれかに記載の方法。
[19]前記がんが、転移性大腸がんである、[5]~[14]のいずれかに記載の方法
。
[20]前記対象が、前記モノクローナル抗体の投与前に転移性疾患の化学療法による少なくとも1例の無効例の前治療歴;既知の脳転移がないこと;平均余命12週間以上であること;前記モノクローナル抗体の投与前の前記14日間中に成長因子の助けなしに約1500細胞/mLを超える好中球絶対数を有すること;前記モノクローナル抗体の投与前の前記14日間中に輸血なしで100,000血小板/mLを超える血小板数を有すること;9.0g/dL以上のヘモグロビンを有すること;および3g/dL以上の血清アルブミンを有することからなる群から選択される特徴を有する、[1]~[14]のいずれかに記載の方法。
[21]前記対象が、哺乳類である、[1]~[14]のいずれかに記載の方法。
[22]前記対象が、ヒトである、[1]~[14]のいずれかに記載の方法。
[23]ロイシンリッチリピート含有Gタンパク質共役受容体5(LGR5)と特異的に結合する用量のヒト化モノクローナル抗体、および適切な医薬用担体を含む医薬組成物を収容する容器であって、前記用量のモノクローナル抗体が約2.5mg/kg~約15mg/kgである、前記容器。
[24]前記医薬組成物が静脈内投与に適している、[23]に記載の容器。
[25]転移性大腸がんの治療用途のロイシンリッチリピート含有Gタンパク質共役受容体5(LGR5)と特異的に結合するヒト化モノクローナル抗体であって、
前記モノクローナル抗体は、配列番号13を含む重鎖および配列番号14を含む軽鎖を含み;
前記モノクローナル抗体は、少なくとも4週間、毎週静脈内に投与され;
前記モノクローナル抗体の投与量は、約2.5mg/kg~約15mg/kgである、前記ヒト化モノクローナル抗体。
[26]前記モノクローナル抗体を、フォリン酸、フルオロウラシル、およびイリノテカンと併用して投与する、転移性大腸がんの治療用途の[25]に記載のヒト化モノクローナル抗体。
[27]前記モノクローナル抗体の初回用量を、前記フォリン酸、フルオロウラシル、およびイリノテカンの投与前に投与する、転移性大腸がんの治療用途の[26]に記載のヒト化モノクローナル抗体。
[28]前記イリノテカンの初回用量は約180mg/m2であり、約90分かけて投与し;前記フォリン酸の初回用量は約400mg/m2であり、約120分かけて、かつ、前記イリノテカンの初回用量と同時に投与し;前記フルオロウラシルの初回用量は約400mg/m2であり、前記フォリン酸の初回用量の投与後に投与し;前記フォリン酸、フルオロウラシル、およびイリノテカンを14日毎に投与する、転移性大腸がんの治療用途の[25]に記載のヒト化モノクローナル抗体。