(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022097685
(43)【公開日】2022-06-30
(54)【発明の名称】カテーテル用の潅注システム
(51)【国際特許分類】
A61B 18/14 20060101AFI20220623BHJP
【FI】
A61B18/14
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022078706
(22)【出願日】2022-05-12
(62)【分割の表示】P 2017173749の分割
【原出願日】2017-09-11
(31)【優先権主張番号】15/262,682
(32)【優先日】2016-09-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】メイル・バル-タル
(72)【発明者】
【氏名】エラン・ヨナ・ハーツォウィツ
(57)【要約】
【課題】 切除処置用のカテーテル装置を提供する。
【解決手段】 装置は、カテーテルと、カテーテルの遠位端に複数の流体孔(50)を画定するように成形された先端電極(24)と、先端電極内の構造体とを備える。構造体は導管(54)を含み、カテーテルの内腔を遠位に通る流体が、流体孔を通って退出する前に、構造体と先端電極の内側表面との間の空間(71)を通って長手方向に流れるように構成されている。構造体は、複数の円周方向開口部(88)を画定するように成形され、それにより、流体の少なくとも一部が、導管から円周方向開口部を通って空間内に流れるようになっている。導管は、流体の少なくとも一部が導管の遠位開口部(57)から退出した後、先端電極の遠位面(42)によって空間内に偏向されるように構成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置であって、
カテーテル(22)と、
前記カテーテルの遠位端に、複数の流体孔(50)を画定するように成形された先端電極(24)と、
前記先端電極内の構造体であって、前記構造体は導管(54)を含み、前記構造体は、前記カテーテルの内腔を遠位に通る流体が、前記流体孔を通って退出する前に、前記構造体と前記先端電極の内側表面との間の空間(71)を通って長手方向に流れるように構成されている、構造体と、を備え、
前記構造体は、複数の円周方向開口部(88)を画定するように成形され、それにより、前記流体の少なくとも一部が、前記導管から前記円周方向開口部を通って前記空間内に流れるようになっており、
前記導管は、前記流体の少なくとも一部が前記導管の遠位開口部(57)から退出した後、前記先端電極の遠位面(42)によって前記空間内に偏向されるように構成されている、装置。
【請求項2】
前記構造体は、前記流体が遠位方向に前記空間を通って流れるように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記構造体は、前記流体が近位方向に前記空間を通って流れるように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記流体孔の大半が、前記先端電極の円周面(44)にある、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記導管の前記遠位開口部が、前記先端電極の前記遠位面の0.3mm以内に位置付けられている、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記空間が、半径方向において0.3mm未満である、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記空間の少なくとも一部が、半径方向において0.1mm未満である、請求項1に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、本明細書と共に同日に出願された「Ablation catheter with a flexible printed circuit board」と題する出願、及び本明細書と共に同日に出願された「Ablation catheter with strain gauges」と題する出願に関する。
【0002】
(発明の分野)
本発明の実施形態は、概ね、医療用装置の分野、具体的には切除処置用のカテーテルに関する。
【背景技術】
【0003】
一部の切除処置において、カテーテルは心臓に挿入され、カテーテルの遠位端のアブレーション電極は切除シグナルを組織に送達するために使用されている。
【0004】
参照によりその開示が本明細書に援用される米国特許出願公開第2013/0030426号は、複数の専用潅注チューブがそれぞれの電極又は電極一式に流体を供給する切除に適合したカテーテルを記述している。それらのチューブは、単極切除又は双極切除を達成し得る潅注先端及び/又はリング電極に潅注流体を送達するカテーテルを貫通する並列流路を提供する。そのような分離した専用の流路は、流体を異なる流量で対応する電極又は電極一式に送達することを可能にする。そのようなカテーテルを使用する統合された切除システムは、切除エネルギー源と、互いに独立に動作し得る複数のポンプヘッドを有する潅注ポンプとを有する。流体源とカテーテルとの間に延びる統合された潅注チューブ一式が含まれており、各ポンプヘッドは異なるチューブに作用して、流体を異なる電極又は電極一式に送達することができる。
【0005】
参照によりその開示が本明細書に援用される米国特許第8,147,486号は、シグナル及び/又はエネルギーを伝えるための可撓性プリント基板を有するカテーテル又はリードを記述している。各配線は1つ又は2つ以上の外部電気接点と電気的に接続し得る。より具体的には、各配線が典型的には、単接点に電気的に接続されている。配線及び接点は、診断及び/又は臓器によって発せられた生体電気シグナルの検出を補助することができ、かかるシグナルをカテーテルに固定されたコネクタ又は診断デバイスに伝達することができる。外部電気接点は生体エネルギーを検出することができるか、又は電気又は熱エネルギーを標的部位に送達することができる。
【0006】
参照によりその開示が本明細書に援用されるPCT国際公開第2014/124231号は、体腔内に挿入されるように構成されたflex-PCBカテーテルを記述している。flex-PCBカテーテルは、細長いシャフト、展開可能なアセンブリ、可撓性プリント基板(flex-PCB)基材、複数の電子的構成要素、及び複数の通信経路を備えている。細長シャフトは、近位端と遠位端とを備えている。展開可能なアセンブリは、半径方向にコンパクトな状態から半径方向に展開した状態に遷移するように構成されている。複数の電子的要素は、flex-PCB基材に結合され、電気シグナルを受信及び/又は伝達するように構成されている。複数の通信経路は、flex-PCB基材上及び/又はその基材内に位置付けられている。通信経路は、選択的に、複数の電子的要素を、電気シグナルを処理するように構成された電子モジュールに電気的に接続するように構成された複数の電気接点に結合している。flex-PCB基材は、1つ又は2つ以上の金属層を含む、複数の層を有し得る。音響整合素子及び導電性配線がflex-PCB基材に含まれてもよい。
【0007】
参照によりその開示が本明細書に援用される米国特許第8,529,476号は、医療用プローブを記述しており、このプローブは可撓性の挿入チューブを含み、この挿入チューブは、患者の体腔に挿入するための、及び体腔内の組織と接触させられるように構成された遠位端を有している。このプローブは、挿入チューブの遠位端の内部に収容され、遠位端上の組織によって課される力に応じて変形するように構成された弾性材料のセンサチューブを更に含んでいる。このプローブは、異なるそれぞれの位置のセンサチューブの表面に固定して取り付けられ、センサチューブの変形に応じてそれぞれのシグナルを生成するように構成された、複数の歪みゲージも含んでいる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のいくつかの実施形態によれば、
カテーテルと、
カテーテルの遠位端に、複数の微小電極孔を画定するように成形された先端電極と、
カテーテルの内腔内に配置された少なくとも1つのプリント基板(PCB)と、
PCBに結合され、微小電極孔内に少なくとも部分的に位置する複数の微小電極であって、PCBが微小電極からシグナルを搬送するように構成されている、微小電極と、を含む装置が提供される。
【0009】
いくつかの実施形態では、微小電極の各々は、
導電性要素と、
導電性要素を先端電極から電気的及び熱的に遮断する遮断壁とを含む。
【0010】
いくつかの実施形態では、本装置は、PCBに結合された複数の温度センサを更に含み、温度センサの各々は、微小電極のそれぞれ1つの導電性要素に熱的に結合されている。
【0011】
いくつかの実施形態では、微小電極は、微小電極孔内に適切に位置する。
【0012】
いくつかの実施形態では、微小電極は、微小電極孔のそれぞれの外辺部に固定されている。
【0013】
いくつかの実施形態では、本装置は、カテーテルの近位端にカテーテルハンドルを更に含み、PCBがカテーテルハンドルに結合されている。
【0014】
いくつかの実施形態では、本装置は、先端電極の内腔内に配置され、PCBを支持することにより、微小電極孔を通って微小電極が後退するのを阻止するように構成された構造体を更に含む。
【0015】
いくつかの実施形態では、構造体の遠位端は、先端電極の遠位面の0.1mm以内に位置付けられている。
【0016】
いくつかの実施形態では、構造体は環状である。
【0017】
いくつかの実施形態では、先端電極は、複数の流体孔を画定するように更に成形され、複数の流体孔は、そこを通る流体の通過を可能にするように構成されている。
【0018】
いくつかの実施形態では、PCBは、流体を流体孔に通すための、PCBと先端電極の内側表面との間の空間を画定するなどのために、先端電極の内腔内に位置付けられている。
【0019】
いくつかの実施形態では、空間は半径方向に0.3mm未満である。
【0020】
いくつかの実施形態では、微小電極の少なくとも一部は、先端電極の遠位面に沿って位置する。
【0021】
いくつかの実施形態では、先端電極の遠位面に沿って位置する微小電極の少なくとも一部は、先端電極の遠位面に対して斜めに配向されている。
【0022】
いくつかの実施形態では、微小電極の少なくとも一部は、先端電極の円周面に沿って位置する。
【0023】
本発明のいくつかの実施形態によれば、
カテーテルの遠位端の先端電極を使用し、切除シグナルを組織に伝達することと、
カテーテルの内腔内の少なくとも1つのプリント基板(PCB)に結合され、先端電極の複数の微小電極孔内に少なくとも部分的に位置する複数の微小電極を使用し、組織からシグナルを取得することと、
PCBを使用し、シグナルを搬送し、先端電極をカテーテルのハンドルに係留することと、を含む方法が更に提供される。
【0024】
いくつかの実施形態では、本方法は、切除シグナルを組織に伝達しながら、流体を先端電極の複数の流体孔に通すことを更に含む。
【0025】
いくつかの実施形態では、流体を流体孔に通すことは、PCBと先端電極との間の空間を介して流体を流体孔に通すことを含む。
【0026】
いくつかの実施形態では、流体を流体孔に通すことは、PCBを支持している導管を介して流体を流体孔に通すことを含む。
【0027】
いくつかの実施形態では、本方法は、微小電極のそれぞれの導電性要素に熱的に結合された複数の温度センサを使用して、組織の温度を測定することを更に含む。
【0028】
本発明のいくつかの実施形態によれば、
カテーテルと、
少なくとも部分的に互いに分断された複数のセグメントと、セグメントのそれぞれの隣接対を結ぶ複数のブリッジとを含む、カテーテルの遠位部分のチューブと、
1つ又は2つ以上の歪みゲージであって、歪みゲージの各々が、ブリッジのそれぞれ1つに結合され、ブリッジのそれぞれ1つの屈曲に応じてシグナルを出力するように構成されている、1つ又は2つ以上の歪みゲージと、を含む装置が更に提供される。
【0029】
いくつかの実施形態では、歪みゲージの各々は、ブリッジのそれぞれ1つの外側表面に結合されている。
【0030】
いくつかの実施形態では、歪みゲージの各々は、ブリッジのそれぞれ1つの内側表面に結合されている。
【0031】
いくつかの実施形態では、チューブは、チューブに沿ってそれぞれの長手方向位置に1つ又は2つ以上のスロットを画定するように成形され、スロットの各々は、セグメントのそれぞれの対間を分離している。
【0032】
いくつかの実施形態では、スロットの各々は、チューブに沿って円周方向に通る円周方向部分と、円周方向部分のそれぞれの端部でチューブに沿って長手方向に通る2つの長手方向部分とを含み、ブリッジのそれぞれ1つは、スロットの2つの長手方向部分間にある。
【0033】
いくつかの実施形態では、スロットの各々は、円周方向に315~345度の長さである。
【0034】
いくつかの実施形態では、本装置は、カテーテルの遠位端に先端電極を更に含み、チューブは先端電極に電気的に結合されている。
【0035】
いくつかの実施形態では、先端電極及びチューブは、単一の材料片から形成されている。
【0036】
いくつかの実施形態では、チューブは金属性である。
【0037】
いくつかの実施形態では、本装置は、チューブ内に配置され、歪みゲージからのシグナルを搬送するように構成されている、少なくとも1つのプリント基板(PCB)を更に含む。
【0038】
いくつかの実施形態では、歪みゲージはPCB上に載置されている。
【0039】
いくつかの実施形態では、本装置は、PCBを支持する構造体を更に含み、この構造体はチューブに結合されている。
【0040】
いくつかの実施形態では、構造体は複数のタブを含み、構造体は、チューブの補完的孔内に収まるタブによってチューブに結合されている。
【0041】
いくつかの実施形態では、構造体は導管を含み、この導管は、流体を通すことができるように構成されている。
【0042】
いくつかの実施形態では、歪みゲージは、チューブに沿って異なるそれぞれの円周方向位置に配置された3つの歪みゲージを含む。
【0043】
本発明のいくつかの実施形態によれば、
カテーテルの遠位端の先端電極を使用し、切除シグナルを組織に伝達することであって、
カテーテルが、少なくとも部分的に互いに分断された複数のセグメントと、セグメントのそれぞれの隣接対を結ぶ複数のブリッジとを含む、チューブを含む、伝達することと、
切除シグナルを組織に伝達しながら、ブリッジに結合された複数の歪みゲージを使用して、カテーテルによって組織に適用された力を推定することと、を含む方法が提供される。
【0044】
いくつかの実施形態では、本方法は、切除シグナルを組織に伝達しながら、流体を先端電極の複数の流体孔に通すことを更に含む。
【0045】
いくつかの実施形態では、流体を複数の流体孔に通すことは、チューブを介して流体を複数の流体孔に通すことを含む。
【0046】
いくつかの実施形態では、力を推定することは、
歪みゲージを使用し、ブリッジの屈曲に応じてシグナルを出力することと、
シグナルに基づいて、力を推定することと、を含む。
【0047】
いくつかの実施形態では、本方法は、カテーテルの内腔内に配置されたプリント基板(PCB)を使用し、カテーテルの近位端にシグナルを搬送することを更に含む。
【0048】
本発明のいくつかの実施形態によれば、
カテーテルと、
カテーテルの遠位端に、複数の流体孔を画定するように成形された先端電極と、
カテーテルの内腔を遠位に通る流体が、流体孔を通って退出する前に、構造体と先端電極の内側表面との間の空間を通って長手方向に流れるように構成された構造体とを含む装置が更に提供される。
【0049】
いくつかの実施形態では、構造体は、流体が遠位方向に空間を通って流れるように構成されている。
【0050】
いくつかの実施形態では、構造体は、流体が近位方向に空間を通って流れるように構成されている。
【0051】
いくつかの実施形態では、構造体は、導管を含む。
【0052】
いくつかの実施形態では、導管は、流体が導管の遠位開口部を退出した後、先端電極の遠位面によって空間内に偏向されるように構成されている。
【0053】
いくつかの実施形態では、流体孔の大半は、先端電極の円周面にある。
【0054】
いくつかの実施形態では、導管の遠位開口部は、先端電極の遠位面の0.3mm以内に位置付けられている。
【0055】
いくつかの実施形態では、構造体は、1つ又は2つ以上の円周方向開口部を画定するように成形され、それにより、流体は円周方向開口部を通って空間内に流れる。
【0056】
いくつかの実施形態では、空間は半径方向に0.3mm未満である。
【0057】
いくつかの実施形態では、空間の少なくとも一部は半径方向に0.1mm未満である。
【0058】
本発明のいくつか実施形態によれば、
カテーテルの遠位端の先端電極を使用し、切除シグナルを組織に伝達することと、
切除シグナルを組織に伝達しながら、流体を構造体と先端電極の内側表面との間の空間に長手方向に流れさせ、その後、先端電極の流体孔を通って先端電極を退出させることとを含む方法が更に提供される。
【0059】
いくつかの実施形態では、流体を長手方向に流れさせることは、流体を遠位方向に流れさせることを含む。
【0060】
いくつかの実施形態では、流体を長手方向に流れさせることは、流体を近位方向に流れさせることを含む。
【0061】
いくつかの実施形態では、構造体は導管を含み、本方法は、空間を通って流れる前に、導管を通って流体を流れさせることを更に含む。
【0062】
いくつかの実施形態では、本方法は、流体に導管の遠位開口部を退出させ、先端電極の遠位面によって流体を空間内に偏向させることを更に含む。
【0063】
いくつかの実施形態では、導管の遠位開口部は、先端電極の遠位面の0.3mm以内に位置付けられている。
【0064】
いくつかの実施形態では、本方法は、流体を、構造体の1つ又は2つ以上の円周方向開口部を通って空間内に流れさせることを更に含む。
【0065】
いくつかの実施形態では、流体孔の大半は、先端電極の円周面にある。
【0066】
いくつかの実施形態では、空間は半径方向に0.3mm未満である。
【0067】
いくつかの実施形態では、空間の少なくとも一部は半径方向に0.1mm未満である。
【0068】
本発明は、その実施形態の以下の詳細な説明を図面と併せ読むことによってより深い理解がなされるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【
図1】本発明のいくつかの実施形態による、切除カテーテルを使用する処置の模式図である。
【
図2】本発明のいくつかの実施形態による、カテーテルの遠位端の模式図である。
【
図3】本発明のいくつかの実施形態による、スロット付きチューブの模式図である。
【
図4】本発明のいくつかの実施形態による、カテーテルの遠位端の長手方向断面の模式図である。
【
図5】本発明のいくつかの実施形態による切除カテーテルの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0070】
概説
本明細書に記載される実施形態は、心内組織などの組織の切除に使用するための切除カテーテルを含む。カテーテルは、カテーテルの遠位端に、切除シグナルを組織に送達するために使用される先端電極を備える。カテーテルは、カテーテルの内腔内に配置された少なくとも1つのプリント基板(PCB)に結合されている、複数の微小電極を更に備える。微小電極は、先端電極の微小電極孔内に適切に位置する。切除処置中、微小電極は、組織の電気活動を評価するのを補助するために、組織からのシグナルを取得するために使用され得る。これらのシグナルは、PCBにより、カテーテルの近位端に搬送され得る。
【0071】
有利に、微小電極及びそれらが結合されたPCBは、上述の機能的役割に加えて、構造的役割を提供する。特に、微小電極孔内に微小電極を収め、微小電極をPCBに取り付けることによって、先端電極がカテーテルの残部から移動するのを阻止し、それにより、先端電極を保持する別個の「安全線」を有する必要がなくてもよい。典型的には、先端電極内の導管又は他の支持体はPCBを支持し、それにより、微小電極が微小電極孔から移動しない。
【0072】
切除処置中、(i)切除先端から熱を奪うために、及び(ii)血餅の形成を防ぐのを補助するために、潅注流体を、カテーテルを取り囲む血液中に通すことが典型的には望ましい。したがって、先端電極は、典型的には、潅注流体を通すための複数の流体孔を画定するように成形されている。有利に、本明細書に記載される実施形態は、流体を通すために、先端電極の内側表面に沿ってPCBと先端電極との間に狭い空間を提供することにより、先端電極と潅注流体との間の大量の熱交換を可能にする。流体は流体孔から退出する前にこの狭い空間を通らなければならないため、大量の熱が先端電極から吸収される。いくつかの実施形態では、流体をこの狭い空間に通すために、流体は先端電極の遠位内面により偏向される。
【0073】
切除処置の有効性及び/又は安全性を増大するために、典型的には、カテーテルによって組織に適用される力を調節することが有用である。このために、本明細書に記載されるカテーテルは、典型的には、カテーテルの遠位端付近に、カテーテルの内腔内に配置されたスロット付きチューブを更に備える。チューブに沿った複数のスロットは、チューブを別個のセグメントに分割し、セグメントの各隣接対はそれぞれのブリッジによって結ばれている。複数の歪みゲージは、それぞれ、ブリッジに結合されている。カテーテルは先端電極と組織との間の接点で組織に対して押圧されるため、組織によってカテーテルに適用された力がブリッジを屈曲させる。歪みゲージはこの屈曲を測定し、それに応じてシグナルを出力する。これらのシグナルに基づいて、力の規模及び方向が推定され得、それにより、力が適切に調節され得る。
【0074】
装置の説明
初めに、本発明のいくつかの実施形態による、切除カテーテル22を使用する処置の模式図である
図1を参照する。
図1は、被検者26の心臓25内の組織の切除を実行するためにカテーテル22を使用する医師34を示す。カテーテル22は、カテーテルシャフト82を備え、その遠位端に先端電極24が配置されている。切除処置中に、先端電極24が心臓25内に挿入される。先端電極24は、次に、心内組織と接触させられ、切除シグナルが先端電極を介して組織に伝達される。
【0075】
カテーテルの近位端のカテーテルハンドル84を介して切除カテーテルに接続されるコンソールボックス36は、切除シグナルを生成するシグナルジェネレーター(「SIG GEN」)28、カテーテルの遠位端からのシグナルを受信し、受信したシグナルを処理するプロセッサ(「PROC」)30、及びカテーテルの遠位端に潅注流体を送るポンプ31を含む。処置中、解剖学的情報及び/又は任意の他の関連情報は、モニタ38上に表示され得る。
【0076】
先端電極24は、それぞれ、複数の微小電極40が適切に位置する複数の微小電極孔32を画定するように成形されている。(典型的には、微小電極は、先端電極から電気的及び熱的に遮断されている。)一般に、任意の数の微小電極孔32、及びしたがって、微小電極40が先端電極の遠位面42及び/又は先端電極の円周面44に沿って位置し得る。いくつかの実施形態では、例えば、カテーテル22は、遠位面42に3つ、そして円周面44に3つの6つの微小電極を備え、後者の3つの微小電極は互から約120度離間されている。微小電極の各々は、先端電極の外側表面とぴったり重なるか、又は別の方法としては、外側表面から突出するかのいずれかであってよい。(かかる突出は、以下に記載されるように、読み取りを取得する組織の近くに温度センサを持ってくることにより、微小電極の下に位置する温度センサによるより正確な温度の読み取りを容易にし得る。)先端電極が組織と接触して設置されるとき、先端電極は切除シグナルを組織に伝達し、一方で微小電極は組織から心内心電図(ECG)シグナルを取得する。別の方法としては、又は加えて、微小電極は、例えばインピーダンスに基づいた位置感知に使用され得るインピーダンス測定のために、電流を組織に伝達するために使用され得る。
【0077】
典型的には、先端電極24は、複数の流体孔50を画定するように更に成形され、複数の流体孔50は、そこを通る流体の通過を可能にするように構成されている。切除処置中、切除シグナルが組織に伝達される一方で、以下に更に記載されるように、潅注流体が流体孔50に送達され、通される。流体孔は典型的には、微小電極孔よりも非常に小さく、典型的には、大半(又は全体に)が先端電極の円周面に沿って位置する、すなわち、典型的には、流体孔の大半又は全てが円周面を通る。
【0078】
典型的には、カテーテル22は、先端電極24のすぐ近位に、及び/又は部分的にその下など、カテーテルの遠位部分に典型的に位置するスロット付きチューブ46を更に備える。(例えば、先端電極の近位端はチューブの遠位部分の上を摺動してもよい。)以下に詳細に記載されるように、チューブ46は、チューブに沿ってそれぞれの長手方向位置で1つ又は2つ以上のスロット70を画定するように成形され、スロット70の各々は、チューブの2つのそれぞれのセグメント間を分離し、それにより、セグメントは少なくとも部分的に互いに分断されている。隣接セグメントの各対は、ブリッジ74によって結ばれている。1つ又は2つ以上の歪みゲージ48はブリッジ74に結合され、各歪みゲージ48は、歪みゲージが結合されたブリッジの歪みを測定するように構成されている。上述のように、これらの測定値は、切除処置中にカテーテルによって組織に適用された力を推定するために使用され得る。典型的には、スロット付きチューブ46は金属性であり、例えば、スロット付きチューブは、ニチノールなどの任意の好適な金属性合金から製造され得る。
【0079】
図1において、スロット付きチューブ及び歪みゲージはカテーテルの外側表面の透明な部分を通して見られるが、スロット付きチューブを覆うカテーテルの外側表面の部分は必ずしも透明である必要はないことに留意する。いくつかの実施形態では、スロット付きチューブは覆われず、それにより、
図5に示されるように、スロット付きチューブ自体が以下に記載されるカテーテルの外側壁の一部を構成することに更に留意する。
【0080】
いくつかの実施形態では、カテーテル22は、カテーテルの表面上に1つ又は2つ以上の環状電極21を更に備える。環状電極21は、例えば、ECGシグナルを取得するために、又はインピーダンスに基づいた位置感知のための電流を注入するために使用され得る。
【0081】
ここで、本発明のいくつかの実施形態による、カテーテル22の遠位端の模式図である、
図2を参照する。(
図2において、先端電極24は表示されておらず、それにより、先端電極の下のカテーテルの構成要素が見える。)
【0082】
典型的には、少なくとも1つの可撓性PCB 58がカテーテルの内腔内に配置されている。例えば、
図2は、スプラインがPCB 58の遠位端62から近位に延びるように折り畳まれる3つのスプラインを備える単一のPCB 58を示す。PCB 58は典型的には、カテーテルの内腔を通り、それにより、PCBはカテーテルシャフト82により覆われる、すなわち、PCBは典型的には露出されない。いくつかの実施形態では、PCB 58は、カテーテルの遠位端からカテーテルハンドル84まで延び、カテーテルハンドルに直接結合されている。他の実施形態では、PCB 58の近位端はケーブルに接続され、ケーブルはカテーテルハンドルに結合されている。いずれの場合でも、カテーテルハンドルへのPCBの結合は、直接的な結合であるか又はケーブルを介した結合であるかにかかわらず、PCB(及びしたがって、以下に更に記載されるように、先端電極)をカテーテルハンドルに係留する。
【0083】
図2に示されるように、微小電極40はPCBに結合され、PCBは微小電極からカテーテルの近位端にシグナルを搬送する。いくつかの実施形態では、PCB 58は、カテーテルの遠位端にもシグナルを搬送する。例えば、PCB 58は、組織内に注入するために、環状電極21に電流を搬送することができる(
図1)。別の方法としては、又は加えて、PCB 58は、インピーダンスを測定するための注入のための電流シグナルなどのシグナルを微小電極に、及び/又はチューブ46と先端電極との間の電気的結合を介して、切除シグナルを先端電極に搬送することができる。
【0084】
典型的には、各微小電極は、導電性要素66及び遮断壁64を備える。典型的にはPCB 58に接着される遮断壁64が導電性要素66を取り囲むため、電気的及び熱的に導電性要素を先端電極から遮断する。導電性要素66は典型的には、PCB 58に電気的に結合され(例えば、PCBに直接接続されることにより)、それにより、導電性表面により検出されるECGシグナルがカテーテルの遠位端からPCBによって搬送され得る。いくつかの実施形態では、示されるように、各微小電極は円筒形状であり、そのため、遮断壁64は環状形状であり、円筒の頂部を形成する導電性要素66の外側表面は輪状である。典型的には、先端電極の微小電極孔の直径は微小電極よりもほんのわずかに大きいだけであり、それにより、微小電極はその孔にぴったり収まる。別の方法としては、又は加えて、カテーテル22の製造中に微小電極が微小電極孔のそれぞれの外辺部に接着されるか、ないしは別の方法で固定されてもよい。したがって、微小電極は先端電極にしっかりと結合されている。
【0085】
典型的には、サーミスタなどの温度センサ60もPCBに結合され、PCBは更に温度センサ60からシグナルを搬送する。典型的には、各温度センサは、それぞれの導電性要素66の外側表面の下の、それぞれの遮断壁64内に位置する。(明確にするために、
図2では微小電極のうちの1つの導電性要素を隠して、温度センサ60を示している。)かかる実施形態では、導電性要素66は温度センサに熱的に結合され(例えば、温度センサを接触させることにより)、それにより、導電性要素は組織から温度センサに熱を伝導し、したがって、温度センサによる組織温度の測定を容易にする。
【0086】
先端電極は典型的には、カテーテルの残部に締結されるが(例えば、チューブ46に締結されることにより)、先端電極に関して、フォールバック固定機構が望ましい場合がある。有利に、上に留意されるように、PCBは、微小電極と共に、先端電極を装置の残部に係留することにより、かかるフォールバック固定機構として機能する。例えば、先端電極は、先端電極にしっかり結合される微小電極に取り付けられるPCBが、カテーテルハンドルに接続されることにより、カテーテルハンドルに係留され得る。したがって、安全線又は任意の他の専用のフォールバック固定機構を先端電極に取り付ける必要がない場合がある。したがって、PCBは、カテーテルの遠位端に、及び/又は遠位端からシグナルを搬送することに加えて、カテーテルに構造的安定性を提供する。
【0087】
いくつかの実施形態では、遠位面42の微小電極のうちの1つ又は2つ以上が、遠位面42に対して斜めに(例えば、45度で)配向されている。かかる配向は、先端電極が遠位に摺動するのを阻止することにより、先端電極を定位置に係留するのに更に役立つ。
【0088】
典型的には、PCB 58は、PCB 58の支持(及びしたがって、微小電極が後退するのを阻止する、すなわち、先端電極の表面から先端電極の内腔の中に内向きに摺動する)以外に、導管54によって支持され、導管54は、そこを通る流体の通過も可能にする。導管54は、遠位開口部57、すなわち、以下に更に記載されるように、潅注流体が通り得る導管の遠位端部の開口部を画定するように成形されている。
図2に示されるように、導管54は、例えば、スロット付きチューブの補完的孔49内に収まる導管のタブ47を介して、スロット付きチューブ46に結合され得る。
【0089】
別の方法としては、又は導管54に加えて、PCB 58は、微小電極の半径方向内側への移動を阻止する、環状の支持構造体などの任意の他の構造体により支持され得る。
【0090】
ここで、本発明のいくつかの実施形態による、スロット付きチューブ46の模式図である
図3を参照する。上述のように、スロット付きチューブ46は、チューブに沿ってそれぞれの長手方向位置に1つ又は2つ以上のスロット70を画定するように成形され、このスロットがチューブを複数のセグメントに分割している。例えば、
図3において、3つのスロットがチューブを第1のセグメント72a、第2のセグメント72b、第3のセグメント72c、及び第4のセグメント72dの4つのセグメントに分割している。典型的には、スロット付きチューブは、切られていないチューブにスロットをレーザーカットすることにより形成される。
【0091】
スロット70の各々は典型的には、チューブに沿って円周方向に通る円周部分78に加えて、円周部分78のそれぞれの端部のチューブに沿って長手方向に通る2つの長手方向部分80を含む。(したがって、長手方向部分80はセグメントに「切り込まれる」。)各長手方向部分80の2つの端部の間にはそれぞれのブリッジ74が介在し、これがスロットによって分離された隣接セグメントの対を結んでいる。カテーテルに適用された力に応じて、ブリッジ74は屈曲する。典型的には、スロットの各々は、チューブの円周の大部分に沿って伸び、それにより、各ブリッジ74は比較的狭い。例えば、各スロットは、円周方向に、315~345度の長さであってもよく(すなわち、スロットはチューブの円周の315~345度に沿って通り得る)、それにより、ブリッジ74は15~45度の幅である。ブリッジの相対的な狭さは、ブリッジの屈曲を容易にする。
【0092】
図3に示されるように、歪みゲージ48が典型的にブリッジ74に結合され、それにより、各歪みゲージがセグメントのそれぞれの対を結んでいる。(
図3において、最も右側の歪みゲージは、この歪みゲージが読者から離れた方向に面しているチューブの部分に位置しているため、示されていない。)各ブリッジ74の屈曲が、ブリッジに結合された歪みゲージによりシグナルを出力させ、このシグナルがブリッジの歪みを示す。歪みゲージからのシグナルは、PCB 58により、カテーテルの近位端に搬送される。
【0093】
例えば、
図3に示される各歪みゲージは抵抗器76を備える。歪みゲージの形状がブリッジの歪みにより変化すると、抵抗器76の抵抗が変化する。PCB 58を介して、電圧が歪みゲージにわたって適用され得、それにより、歪みゲージを通って流れる測定された電流が歪みゲージの抵抗、及びしたがってブリッジの歪みにおける変化を示す。別の方法としては、電流が歪みゲージにわたって適用され得、それにより、歪みゲージにわたって測定された電圧が歪みゲージの抵抗における変化を示す。この測定された電圧又は電流は、本明細書において、ブリッジの歪みを示す、歪みゲージにより出力された「シグナル」と称される。
【0094】
歪み測定値を示す歪みゲージ48からのシグナルに基づいて、カテーテルに適用される力が推定され得る。特に、チューブに沿って異なるそれぞれの円周方向位置に3つの歪みゲージを設置することにより、3つの別個の独立した歪み測定値を得ることができる。これらの3つの歪み測定値に基づいて、力の規模に加えて、力の方向を確認することができる。例えば、示されるように、3つの歪みゲージはチューブに沿って等角度に離間され得、それにより、歪みゲージのうちのいずれか2つのそれぞれの中央間で120度分離している。
【0095】
いくつかの実施形態では、示されるように、歪みゲージ48はブリッジの外側表面に結合されている。かかる実施形態では、接続要素(図示せず)は、歪みゲージをチューブ内に配置されたPCBに接続してもよく、それにより、PCBが歪みゲージからシグナルを搬送してもよい。他の実施形態では、歪みゲージ48はブリッジの内側表面に結合されている。かかる実施形態では、歪みゲージはPCB上に載置され得る。
【0096】
ここで、本発明のいくつかの実施形態による、カテーテル22の遠位端の長手方向断面の模式図である、
図4を参照する。
【0097】
上述のように、切除処置中、ポンプ31は、カテーテルの遠位端に潅注流体を送達する。
図4は、潅注流体が先端電極24に近づき、次いでそこを通るときのこの潅注流体の例示的な流れパターンを示す。まず、流体がチューブ46、次いで導管54を通る。次に、流体は、導管の開口部57、及びPCBの遠位端の開口部56を通る。したがって、流体は、先端電極の遠位面42に到達し、その後、遠位面42の内側表面68によって偏向され、(i)PCB及び導管と、(ii)先端電極との間に介在する空間71に入る。(空間71は典型的には、主に先端電極の円周面44に隣接して位置する。)先端電極の内側表面に沿って空間71を通って流れた後、流体は孔50に到達し、流体孔を介して先端電極から退出する。
【0098】
典型的には、流体は、カテーテルの内腔を通って遠位に流れるため、カテーテルにより収容され、それにより、流体の全て又は少なくとも実質的に大半が導管の開口部57に到達し、その後、上述のように、空間71を通って近位に流れる。この点に関し、タブ47に隣接する任意のスロット86は典型的には、比較的狭く、それにより、流体が比較的スロット86からあまり逃げないことに留意する。チューブ46のセグメント間のスロット70を通って逃げるいずれの流体も、典型的には、空間71に到達せず、むしろこの流体の経路は先端電極24により遮断されることに更に留意する。
【0099】
上記にかかわらず、いくつかの実施形態では、カテーテル22は、流体をカテーテルの遠位端に送達する流体送達チューブを備える。例えば、かかる流体送達チューブの遠位端は、導管54の近位端に接続され得、それにより、流体は流体送達チューブを通って導管54に流れ、次いで上述のように、導管54を通って流れる。別の方法としては、例えば、かかる流体送達チューブの遠位端は、内側表面68にすぐ近位(例えば、その0.1mm以内)であってよく、それにより、流体は流体送達チューブを退出してすぐに内側表面68に到達する。
【0100】
いくつかの実施形態では、カテーテル22は導管54を備えない。かかる実施形態では、チューブ46に遠位であるPCBの部分は閉鎖されていてもよく(すなわち、PCBのスプライン間の開口部は閉鎖されていてもよい)、それにより、PCBは、流体がPCBを通って先端電極の遠位面に流れるという点で、導管として機能する。
【0101】
典型的には、PCB及び導管は、空間71が比較的狭いように、先端電極内に位置付けられている。例えば、PCBと先端電極との間にある空間の部分は、半径方向に0.1mm未満であり得る、すなわち、PCBと先端電極の内側表面との間で測定される空間の幅W1は0.1mm未満であり得る。(PCBの厚さが約0.2mmであると仮定すると、これは、導管54と先端電極の内側表面との間の空間の部分が0.3mm未満であり得ることを意味する。)空間71の狭さは、先端電極24の内側表面近くをこの表面の大きい部分に沿って流体を流れさせ、それにより、比較的大量の熱が先端電極から流体に移動される。
【0102】
典型的には、流体孔の大部分が遠位面よりもむしろ先端電極の円周面にあり、それにより、空間71を通って流れる前に、流体が比較的カテーテルからあまり逃げない。したがって、比較的大量の熱が先端電極から流体に移動され得る。例えば、いくつかの実施形態では、遠位面42はいずれの流体孔も有せず、それにより、流体の全てが空間71に押し込まれる。別の方法としては、一部の流体孔が遠位面42内に位置付けられてもよい。
【0103】
典型的には、遠位開口部57は、遠位面42の比較的近く、例えば、遠位面の0.3mm以内に位置付けられている。典型的には、導管の遠位端は、PCBの遠位端とぴったり重なり、遠位開口部57がPCBの遠位開口部56と整合する。したがって、遠位開口部57を通って退出する流体の全てが遠位開口部56から押し出され、遠位面42の、0.1mm未満であり得る短い距離D1内の遠位開口部56から出てくる。
【0104】
導管がより近位に位置付けられた場合、開口部56から退出する流体の一部は、最初に先端電極の内側表面に沿って流れることなく、流体孔に直接流れてもよい。したがって、遠位面の近くに導管を位置付けることにより、先端電極から退出する前に、先端電極の内側表面に沿って流体を流れさせる。
【0105】
上述のように、
図4は、主に近位方向に先端電極の内側表面に沿って流体が流れる流れパターンを示す。別の方法としては、又は加えて、流体は、先端電極の内側表面に沿って、反対の長手方向に、すなわち、遠位方向に流れてもよい。例えば、導管54(又は先端電極内に位置付けられた任意の他の構造体)のタブ47及び/又は他の部分は、1つ又は2つ以上の円周方向(又は「側面」)の開口部88を画定するように成形されてもよく、それにより、潅注流体が開口部88を通って空間71に流れ、空間71を通って遠位に流れ、流体孔を通って退出する。(かかる実施形態では、導管の遠位端は典型的には閉鎖され、それにより、流体は先端電極の遠位面に直接流れない。)かかる実施形態では、流体孔の大部分又は全てが先端電極の遠位面上に位置してもよく、それにより、空間71に押し込まれた流体の大半又は全てが、先端電極から退出する前に、先端電極の長さの大半に沿って流れる。
【0106】
ここで、本発明のいくつかの実施形態による、切除カテーテルの模式図である、
図5を参照する。
図5に示される実施形態では、先端電極24及びチューブ46は、単一の材料片、例えば、単一のニチノール片から形成され、それにより、先端電極はチューブと連続する。(つまり、
図5の実施形態では、チューブ46の最も遠位のセグメントは先端電極として機能する。)したがって、この実施形態は、前述の実施形態とは異なり、先端電極及びチューブは別個に製造され、次いで、物理的及び/又は電気的に互いに結合される。かかる設計の利点としては、製造の単純化及びコスト削減が挙げられる。
【0107】
当業者であれば、本発明が上記で具体的に図示及び記載されたものに限定されない点を理解するであろう。むしろ、本発明の実施形態の範囲は、上述した様々な特徴の組み合わせ及び部分的組み合わせ、並びに上記の説明を読むことで当業者には想到されるであろう、従来技術には見られない特徴の変形例及び改変例をも含むものである。参照により本特許出願に援用される文献は、これらの援用文献において、いずれかの用語が本明細書において明示的又は暗示的になされた定義と矛盾して定義されている場合には、本明細書における定義のみを考慮するものとする点を除き、本出願の一部とみなすものとする。
【0108】
〔実施の態様〕
(1) 装置であって、
カテーテルと、
前記カテーテルの遠位端に、複数の流体孔を画定するように成形された先端電極と、
前記先端電極内の構造体であって、前記カテーテルの内腔を遠位に通る流体が、前記流体孔を通って退出する前に、前記構造体と前記先端電極の内側表面との間の空間を通って長手方向に流れるように構成されている、構造体と、を備える、装置。
(2) 前記構造体は、流体が遠位方向に前記空間を通って流れるように構成されている、実施態様1に記載の装置。
(3) 前記構造体は、前記流体が近位方向に前記空間を通って流れるように構成されている、実施態様1に記載の装置。
(4) 前記構造体が、導管を含む、実施態様1に記載の装置。
(5) 前記導管は、前記流体が前記導管の遠位開口部を退出した後、前記先端電極の遠位面によって前記空間内に偏向されるように構成されている、実施態様4に記載の装置。
【0109】
(6) 前記流体孔の大半が、前記先端電極の円周面にある、実施態様5に記載の装置。
(7) 前記導管の前記遠位開口部が、前記先端電極の前記遠位面の0.3mm以内に位置付けられている、実施態様5に記載の装置。
(8) 前記構造体が、1つ又は2つ以上の円周方向開口部を画定するように成形され、それにより、前記流体が、前記円周方向開口部を通って前記空間内に流れる、実施態様1に記載の装置。
(9) 前記空間が、半径方向において0.3mm未満である、実施態様1に記載の装置。
(10) 前記空間の少なくとも一部が、半径方向において0.1mm未満である、実施態様1に記載の装置。
【0110】
(11) 方法であって、
カテーテルの遠位端の先端電極を使用し、切除シグナルを組織に伝達することと、
前記切除シグナルを前記組織に伝達しながら、流体を構造体と前記先端電極の内側表面との間の空間を通って長手方向に流れさせ、その後、前記先端電極内の流体孔を通って前記先端電極を退出させることと、を含む、方法。
(12) 前記流体を前記長手方向に流れさせることが、前記流体を遠位方向に流れさせることを含む、実施態様11に記載の方法。
(13) 前記流体を前記長手方向に流れさせることが、前記流体を近位方向に流れさせることを含む、実施態様11に記載の方法。
(14) 前記構造体が、導管を含み、前記方法が、前記流体を、前記空間を通って流れる前に、前記導管を通って流れさせることを更に含む、実施態様11に記載の方法。
(15) 前記流体に前記導管の遠位開口部を退出させ、前記先端電極の遠位面によって前記空間内に偏向させることを更に含む、実施態様14に記載の方法。
【0111】
(16) 前記導管の前記遠位開口部が、前記先端電極の前記遠位面の0.3mm以内に位置付けられる、実施態様15に記載の方法。
(17) 前記流体を、前記構造体の1つ又は2つ以上の円周方向開口部を通って前記空間内に流れさせることを更に含む、実施態様11に記載の方法。
(18) 前記流体孔の大半が、前記先端電極の円周面にある、実施態様11に記載の方法。
(19) 前記空間が、半径方向において0.3mm未満である、実施態様11に記載の方法。
(20) 前記空間の少なくとも一部が、半径方向において0.1mm未満である、実施態様11に記載の方法。