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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022097712
(43)【公開日】2022-06-30
(54)【発明の名称】ミルク感向上剤
(51)【国際特許分類】
   A23L 27/00 20160101AFI20220623BHJP
   A23L 2/38 20210101ALI20220623BHJP
   A23L 2/00 20060101ALI20220623BHJP
   A23L 2/56 20060101ALI20220623BHJP
   A23L 2/60 20060101ALI20220623BHJP
   A23L 27/10 20160101ALI20220623BHJP
   A23L 31/15 20160101ALI20220623BHJP
   A23G 9/34 20060101ALN20220623BHJP
   A23G 9/36 20060101ALN20220623BHJP
   A23F 5/24 20060101ALN20220623BHJP
   A23C 9/156 20060101ALN20220623BHJP
【FI】
A23L27/00 Z
A23L2/38 P
A23L2/00 B
A23L2/56
A23L2/60
A23L27/00 101A
A23L27/00 101Z
A23L27/10 H
A23L31/15
A23G9/34
A23G9/36
A23F5/24
A23C9/156
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022079151
(22)【出願日】2022-05-13
(62)【分割の表示】P 2016225194の分割
【原出願日】2016-11-18
(71)【出願人】
【識別番号】000226415
【氏名又は名称】物産フードサイエンス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】715011078
【氏名又は名称】アサヒグループ食品株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110766
【弁理士】
【氏名又は名称】佐川 慎悟
(74)【代理人】
【識別番号】100165515
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 清子
(74)【代理人】
【識別番号】100169340
【弁理士】
【氏名又は名称】川野 陽輔
(74)【代理人】
【識別番号】100195682
【弁理士】
【氏名又は名称】江部 陽子
(74)【代理人】
【識別番号】100206623
【弁理士】
【氏名又は名称】大窪 智行
(72)【発明者】
【氏名】栃尾 巧
(72)【発明者】
【氏名】林 邦雄
(72)【発明者】
【氏名】村田 典仁
(57)【要約】
【課題】 飲食品のミルク感を効果的に向上させることができるミルク感向上剤およびこれを用いるミルク感が向上した飲食品の製造方法を提供する。
【解決手段】 甘味料と酵母エキスとを有効成分とするミルク感向上剤、および、これを用いるミルク感が向上した飲食品の製造方法。本発明によれば、生乳や乳製品といったミルク感を有する飲食品材料の配合量を増加させずに、飲食品のミルク感を効果的に向上させることができる。よって、本発明によれば、脂肪分やカロリーの増加あるいは製造コストの上昇を抑えつつ、豊かなミルク感を有する飲食品を製造することができる。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳または乳製品を配合した飲食品のミルク感を向上する剤であって、還元麦芽糖水飴と乾燥重量当たり15重量%超25重量%以下の遊離グルタミン酸を含む酵母エキスとを有効成分とするミルク感向上剤。
【請求項2】
前記還元麦芽糖水飴6重量部に対して前記酵母エキスを0.001重量部超1重量部以下の割合、または、前記飲食品の材料と前記還元麦芽糖水飴との合計100重量部に対して前記酵母エキスを0.001重量部超1重量部以下の割合で添加して用いることを特徴とする、請求項1に記載のミルク感向上剤。
【請求項3】
乳または乳製品を配合した飲食品のミルク感を向上する剤であって、エリスリトールと乾燥重量当たり15重量%超25重量%以下の遊離グルタミン酸を含む酵母エキスとを有効成分とするミルク感向上剤。
【請求項4】
前記エリスリトール4.5重量部に対して前記酵母エキスを0.05重量部の割合で添加して用いることを特徴とする、請求項3に記載のミルク感向上剤。
【請求項5】
厚味向上剤である、請求項1~4のいずれかに記載のミルク感向上剤。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載のミルク感向上剤を飲食品材料に添加する工程を有する、ミルク感が向上した飲食品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、甘味料と酵母エキスとを有効成分とするミルク感向上剤およびこれを用いるミルク感が向上した飲食品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カフェオレやミルクティー、アイスクリーム、プリン、クリームスープ、グラタンなど、生乳や乳製品を配合した飲食品は、広く市場に展開されている。これらの飲食品において、乳の風味(ミルク感)は美味しさを形成する重要な要素であり、また、昨今では、ミルク感がより強いものが消費者に好まれる傾向がある。このことから、ミルク感を強調し、「ミルク感たっぷり」や「濃厚ミルク感」というように、そのことを宣伝文句とした商品の開発も行われている。
【0003】
その一方で、脂肪分やカロリーを控えた商品が消費者に好まれる傾向もある。しかしながら、一般に、生乳や乳製品といったミルク感を有する飲食品材料には脂肪分が多く含まれ、カロリーも高く、その配合量を増加させると、製品の脂肪分やカロリーが増加してしまうという問題がある。
【0004】
さらに、種々の飲食品材料の中で、生乳や乳製品の価格は比較的高く、また、近年、その価格は高騰傾向にある。このため、その配合量を増加させると、製品の製造コストが高くなってしまうという問題もある。
【0005】
以上のことから、脂肪分やカロリーの増加あるいは製造コストの上昇を抑えつつ、ミルク感が強い飲食品を製造するために、ミルク感を有する材料の配合量を増加させずに、飲食品のミルク感を向上する方法が求められていた。この点、特許文献1には、ガラクトオリゴ糖を有効成分とする乳風味増強剤が([請求項1])、特許文献2には、スクラロースを乳含有製品に配合する乳感の増強方法が([請求項64])、それぞれ記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2014-060987号公報
【特許文献2】特開2015-164428号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記文献に記載された発明を鑑みても、いまだ飲食品のミルク感を向上する方法は十分に提供されておらず、そのような方法が求められていた。本発明は、このような課題を解決するためになされたものであって、飲食品のミルク感を効果的に向上することができる、ミルク感向上剤およびこれを用いるミルク感が向上した飲食品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、ミルク感を有する材料を配合する飲食品の製造過程で、甘味料と酵母エキスとを併せて添加することにより、当該飲食品のミルク感および味の厚み(厚味)が顕著に強くなることを見出し、係る知見に基づいて、下記の各発明を完成した。
【0009】
(1)本発明に係るミルク感向上剤は、甘味料と酵母エキスとを有効成分とする。
【0010】
(2)本発明に係るミルク感向上剤において、甘味料は、砂糖、果糖、異性化糖、還元水飴、還元麦芽糖水飴、糖アルコールおよび高甘味度甘味料からなる群から選択される1または2以上であることが好ましい。
【0011】
(3)本発明に係るミルク感向上剤において、酵母エキスは、乾燥重量当たり42重量%以上のタンパク質を含む酵母エキスであることが好ましい。
【0012】
(4)本発明に係るミルク感向上剤は、甘味料6重量部に対して、酵母エキスが0.001重量部超1重量部未満の割合で含有するものであることが好ましい。
【0013】
(5)本発明に係るミルク感向上剤は、厚味向上剤として用いることもできる。
【0014】
(6)本発明に係るミルク感が向上した飲食品の製造方法は、本発明のミルク感向上剤を飲食品材料に添加する工程を有する。
【0015】
(7)本発明に係るミルク感が向上した飲食品の製造方法においては、酵母エキスが、飲食品材料と甘味料との合計100重量部に対して0.001重量部超1重量部未満であることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係るミルク感向上剤によれば、ミルク感を有する材料の配合量を増加させずとも、飲食品のミルク感や厚味を向上することができる。また、本発明に係る製造方法によれば、ミルク感を有する材料の配合量を増加させずとも、ミルク感や厚味が向上した飲食品を製造することができる。よって、本発明によれば、脂肪分やカロリーの増加あるいは製造コストの上昇を抑えつつ、豊かなミルク感や厚味を有する飲食品を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係るミルク感向上剤およびミルク感が向上した飲食品の製造方法について詳細に説明する。本発明において、「ミルク感」とは、乳の風味をいう。すなわち、ミルク感は、乳風味、ミルク風味、乳感などと同義に用いられる。
【0018】
また、本発明において「厚味」とは、味の厚みをいい、ボディ感、コク、こってりした味などと同義に用いられる。本発明に係るミルク感向上剤は、ミルク感を向上するとともに厚味をも向上することから、厚味向上剤として、飲食品の厚味を向上する用途に用いることもできる。
【0019】
飲食品のミルク感や厚味が向上したか否かは、官能試験により確認することができる。具体的には、まず、本発明のミルク感向上剤を配合した飲食品と、配合しない飲食品とを準備する。これをパネルに飲食させて、ミルク感や厚味の強弱を確認すればよい。前者の方がミルク感や厚味が強ければ、本発明のミルク感向上剤によりミルク感や厚味が向上したと判断することができる。
【0020】
本発明が対象とする飲食品は、ミルク感を有する材料を配合した飲食品である。ミルク感を有する材料としては、例えば、ヤギ、ウシ、馬、羊などの動物の乳や、これを加工してなる乳製品(牛乳、加工乳、ヨーグルト、クリーム、チーズ、バター、ホエイ、粉乳、練乳、バターミルク、発酵乳、乳脂、カゼインなど)の他、豆乳、植物性脂肪を主原料とするクリーム、液体や固体のコーヒークリーミング、マーガリンなどを挙げることができる。
【0021】
本発明に係るミルク感向上剤は、甘味料と酵母エキスとを有効成分とする。
ここで、「甘味料」は、飲食品に甘味を付与するために用いられる調味料をいう。本発明において、甘味料は、市販されているものを用いることができる。
【0022】
本発明に係る甘味料として、具体的には、例えば、砂糖(ショ糖)、転化糖(ブドウ糖および果糖)、果糖、異性化糖、還元水飴、還元麦芽糖水飴、糖アルコール、高甘味度甘味料、蜂蜜、メープルシロップ、糖蜜、水飴、麦芽糖水飴、トレハロース、パラチノースなどを挙げることができる。
このうち、異性化糖として、より具体的には、例えば、ブドウ糖果糖液糖、果糖ブドウ糖液糖、高果糖液糖などを挙げることができる。
また、糖アルコールとして、より具体的には、例えば、エリスリトール、マルチトール、キシリトール、ソルビトール、マンニトール、ラクチトールなどを挙げることができる。
また、還元水飴として、より具体的には、例えば、高糖化還元水飴(単糖アルコール35~55%、二糖アルコール25~60%、三糖アルコール1~25%、四糖アルコール0~15%、五糖以上の糖アルコール0~10%)、中糖化還元水飴(単糖アルコール1~15%、二糖アルコール40~60%、三糖アルコール10~40%、四糖アルコール1~10%、五糖以上の糖アルコール1~40%)、低糖化還元水飴(単糖アルコール1~15%、二糖アルコール5~25%、三糖アルコール5~25%、四糖アルコール1~15%、五糖以上の糖アルコール45~85%)などを挙げることができる。
また、高甘味度甘味料として、より具体的には、例えば、甘草抽出物やステビア抽出物、ラカンカ抽出物などの天然甘味料、アスパルテームやアセスルファムカリウム、スクラロース、サッカリン、ネオテームなどの合成甘味料を挙げることができる。
【0023】
本発明においては、後述する実施例1に示すように、あらゆる甘味料が、酵母エキスと併用することによりミルク感向上作用において相乗効果を奏するが、好ましい甘味料は、砂糖、果糖、異性化糖、還元水飴、還元麦芽糖水飴、糖アルコール、高甘味度甘味料からなる群から選択される1または2以上である。
【0024】
「酵母エキス」とは、酵母の抽出物をいう。本発明に係る酵母エキスは、市販のものを用いてもよく、酵母から製造して得てもよい。好ましい酵母エキスとしては、乾燥重量当たり42重量%以上のタンパク質を含むものや、乾燥重量当たり15重量%超25重量%以下の遊離グルタミン酸を含むものを挙げることができる。
【0025】
酵母エキスは、自己消化法(酵母菌体内に本来あるタンパク質分解酵素等を利用して菌体を可溶化する方法)、酵素分解法(微生物や植物由来の酵素製剤を添加して菌体を可溶化する方法)、熱水抽出法(熱水中に一定時間浸漬して菌体を可溶化する方法)、酸あるいはアルカリ分解法(種々の酸あるいはアルカリを添加して菌体を可溶化する方法)、物理的破砕法(超音波処理や、高圧ホモジェナイズ法、グラスビーズ等の固形物と混合して混合・磨砕することにより菌体を破砕する方法)、凍結融解法(凍結および融解を1回以上行うことにより菌体を破砕する方法)等の定法に従って、酵母から製造することができる。
いずれの方法においても、一般には、酵母菌体が破壊され、残存菌体または菌体破砕物および酵母抽出物を含む酵母溶解物(粗エキスまたは酵母エキス原液とも称される)をそのまま濃縮、あるいはろ過および/または遠心分離によって残存菌体および菌体破砕物から分離して得られるろ液または上清(酵母抽出物)を濃縮し(濃縮工程)、場合によりさらに凍結乾燥等の処理を行って酵母エキス製品とする。
【0026】
以下に、熱水抽出法による酵母エキスの製造例を示す。まず、酵母の培養液50mLを20℃、3000×gにて5分間遠心分離する。上清を除去して、ペレットを20mLの超純水に懸濁し、同条件にて遠心分離する操作を2回繰り返す。その後、ペレットを20mLの超純水に懸濁して酵母懸濁液を得る。この酵母懸濁液1.5mLをエッペンドルフチューブに移して、ブロックヒーターを用いて80℃にて30分間加熱することにより、抽出を行う。または、温浴を用いて100℃にて10分間加熱してもよい。その後、4℃、6000×gにて5分間遠心分離し、上清を回収することにより、酵母エキスを得ることができる。
【0027】
本発明において、酵母エキスの形態は特に限定されず、液体であってもよく、固形状や粉末などの固体であってもよい。例えば、酵母エキスは、上述の製造例で製造したそのままの液体であってもよく、これを噴霧乾燥法やドラムドライ法、凍結乾燥法などの手法により乾燥させて粉末状にした乾燥粉末であってもよく、当該乾燥粉末を水やグリセリン、エタノールなど各種の溶媒に溶かしてなる液体であってもよい。
【0028】
酵母エキス中のタンパク質量は、例えば、ケルダール法または燃焼法(改良デュマ法)により全窒素量を測定し、測定値に窒素・タンパク質換算係数6.25を乗じて求めることができる。
【0029】
また、酵母エキス中の遊離グルタミン酸量は、例えば、日本電子社製アミノ酸自動分析装置JLC―500/V型や、(米国)ウォーターズ社製Acquity UPLC装置、王子計測機器社製BF―5のバイオセンサーなどを用いて、添付の使用書に従い測定することができる。このうち、BF―5のバイオセンサーは、グルタミン酸に特異的に反応する酵素電極を用いて溶液中のグルタミン酸を定量する装置であって、本酵素電極はタンパク質やペプチド中のグルタミン酸とは反応しない。よって、このような装置を用いることにより、遊離のグルタミン酸のみを選択的に定量することができる。BF―5のバイオセンサーを用いて測定する際は、酵母エキスの5倍希釈液に対して測定を行ない、検量線には1mMおよび5mMのグルタミン酸標準溶液を用いればよい。
【0030】
酵母エキスの製造に用いる酵母は、炭素源、窒素源および無機塩等を含む液体培地を用いて定法に従い培養することができる。ここで、当該培養方法には、酵母の増殖が定常期に入った後に液体培地のpHを7.5以上11未満に調製し、当該pHの範囲内で更に培養する工程(pHシフト工程)を含むことが好ましい。特許第4757944号公報に記載のように、pHシフト工程を含む方法で培養することにより、乾燥酵母菌体重量当たり、4.0重量%~10.0重量%の範囲で遊離グルタミン酸を含有する酵母を得ることができる。そして、当該酵母を用いることにより、乾燥重量当たり15重量%超25重量%以下の遊離グルタミン酸を含む酵母エキスを得ることができる。
【0031】
以下に、pHシフト工程を含む培養例を示す。
<前培養工程>
まず、700mLの糖蜜培地(糖蜜8質量%、尿素0.6質量%、硫酸アンモニウム0.16質量%、リン酸水素2アンモニウム0.08質量%)に酵母菌株300mLを植菌して前培養する。前培養の条件は、培養温度30℃、160rpmの振とう培養、培養時間は24時間とする。
<本培養工程>
続いて、前培養の培養液200mLを、2000mLの培地(塩化アンモニウム0.18質量%、リン酸水素2アンモニウム0.04質量%)に植菌し、流加培地として800mLの糖蜜(糖度36%)(最終8%)を用いて本培養する。本培養の条件は、培養温度30℃、3L/分および600rpmの通気攪拌培養とする。また、pH5.0で10質量%アンモニア水添加によるpHの下限制御を行う。pHの上限制御は無しとする。
<pHシフト工程>
次に、酵母が定常期に入った直後に、10質量%アンモニア水を添加することにより、培養液のpHをpH7~11、好ましくは7.5以上11未満、より好ましくは8以上11未満のアルカリ性域に調整(pHシフト)し、当該pHの範囲内で更に酵母を培養する。本培養開始後48時間で培養を終了する。アンモニア水に代えて、アンモニアガスや尿素などのアルカリ物質を添加することによりpHシフトを行ってもよい。
【0032】
酵母エキスが由来する酵母は、単細胞性の真菌類であればよい。本発明に係る酵母として、具体的には、例えば、サッカロマイセス(Saccharomyces)属菌、シゾサッカロマイセス(Shizosaccharomyces)属菌、ピキア(Pichia)属菌、キャンディダ(Candida)属菌、クリベロマイセス(Kluyveromyces)属菌、ウィリオプシス(Williopsis)属菌、デバリオマイセス(Debaryomyces)属菌、ガラクトマイセス(Galactomyces)属菌、トルラスポラ(Torulaspora)属菌、ロドトルラ(Rhodotorula)属菌、ヤロウィア(Yarrowia)属菌、ジゴサッカロマイセス(Zygosaccharomyces)属菌などを挙げることができる。これらのうち、可食性であることから、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、キャンディダ・ユティリス(Candida utilis)、キャンディダ・トロピカリス(Candida tropicalis)、キャンディダ・リポリティカ(Candida lypolitica)、キャンディダ・サケ(Candida sake)などが好ましく、汎用されていることから、サッカロマイセス・セレビシエ(S. cerevisiae)やキャンディダ・ユティリス(C. utilis)がより好ましい。
【0033】
本発明に係る酵母として、より具体的には、例えば、特許第5717478号に記載の酵母を挙げることができる他、サッカロマイセス属菌として、S. cerevisiaeのAB9846株、AB1株(ビール酵母)、AB2株(協会ワイン4号)、AB5株(パン酵母)、AB6株(パン酵母)およびAB8株、ならびにSaccharomyces属AB4株(ワイン酵母)、Saccharomyces属AB7株(ウイスキー酵母)、Saccharomyces sakeAB9株(協会6号酵母)、Saccharomyces bayanus AB10株を挙げることができる。また、キャンディダ・ユティリス(C. utilis)として、C. utilisのJCM1624株、AB11株(IAM0626)、AB12株(IFO0639)、 AB13株(JCM2287が親株)、AB14株(JCM2287が親株)を挙げることができる。また、クリベロマイセス・ラクティス(K. lactis)として、K. lactisのAB15株(IFO1090)、AB16株を挙げることができる。
【0034】
本発明に係るミルク感向上剤において、甘味料と酵母エキスとの含有割合は特に限定されないが、甘味料6重量部に対して酵母エキスが、好ましくは0.001重量部超1重量部以下、より好ましくは0.001重量部超0.5重量物未満、さらに好ましくは0.005重量部以上0.2重量部以下の含有割合を挙げることができる。後述する実施例2に示すように、当該含有割合においては、特に高いミルク感向上効果を得ることができる。
【0035】
本発明のミルク感向上剤は、後述する実施例2に示すように、飲食品の製造過程で飲食品材料に添加して用いることができる。本発明のミルク感向上剤は有効成分として甘味料を含有することから、飲食品の通常の製造工程において、甘味料を本発明のミルク感向上剤に置き換えて用いることができる。なお、甘味料と酵母エキスとは、同時に飲食品材料に添加してもよく、異なるタイミングで添加してもよい。
【0036】
本発明のミルク感向上剤の飲食品における添加量は特に限定されないが、例えば、飲食品材料と甘味料との合計100重量部に対して、酵母エキスの添加量が、好ましくは0.001重量部超1重量部以下、より好ましくは0.001重量部超0.5重量部未満、さらに好ましくは0.005重量部以上0.2重量部以下の添加量を上げることができる。後述する実施例2に示すように、当該添加量においては、特に高いミルク感向上効果を得ることができる。
【0037】
最後に、本発明は、ミルク感が向上した飲食品の製造方法を提供する。本発明に係るミルク感が向上した飲食品の製造方法は、本発明のミルク感向上剤を飲食物材料に添加する工程を有する。なお、本製造方法において、上述した本発明のミルク感向上剤と同じまたは相当する発明特定事項については、再度の説明を省略する。
【0038】
以下、本発明に係るミルク感向上剤およびミルク感が向上した飲食品の製造方法について、各実施例に基づいて説明する。なお、本発明の技術的範囲は、これらの実施例によって示される特徴に限定されない。
【実施例0039】
以下の実施例では、15~25重量%の遊離グルタミン酸を含む酵母エキスである「ハイパーミーストHG-Ps(液体(ペースト);アサヒグループ食品社)」または「ハイパーミーストHG-PdD20(乾燥粉末;アサヒグループ食品社)」を、グリセリンに溶かしてなる液状化物(酵母エキス/グリセリン液状化物)を用いた。
また、甘味料は、別段の記載が無い限り、表1に示すものを用いた。表1中の「甘味度」は、各種の甘味料について、5質量%のショ糖水溶液と同等の甘味を呈する濃度(X質量%)を官能試験により決定し、次式1を用いて算出した。式1;甘味度=ショ糖水溶液の濃度(5質量%)/各種甘味料の水溶液濃度(X質量%)。
【0040】
【表1】
【0041】
<実施例1>ミルク感向上効果の検討
(1)試料の調製
水に脱脂粉乳、表1に示す甘味料および酵母エキス/グリセリン液状化物を溶かして、No.1~14の乳風味飲料を調製した。その配合を表2および表3に示す。なお、砂糖以外の甘味料の配合量は、それぞれの甘味度に基づいて、3.5gの砂糖の甘味度に相当する量とした。
【0042】
【表2】
【0043】
【表3】
【0044】
(2)官能試験
本実施例1(1)の乳風味飲料について、10名の分析型パネルにより官能試験を行い、ミルク感の強さ(ミルク感強度)および味の厚み(厚味)の強さ(厚味強度)を点数で表した。
ミルク感強度および厚味強度の点数化は、No.1の試料(甘味料および酵母エキスのいずれも添加せず、脱脂粉乳のみを溶かした乳風味飲料)のミルク感強度および厚味強度をそれぞれ比較対照(3点)として、次の7段階のいずれに該当するかを各パネルが判断することにより行った。ミルク感強度または厚味強度:非常に強い(5点)、強い(4点)、同等(3点)、やや弱い(2点)、弱い(1点)。
その後、試料ごとに、全パネルによる採点結果の平均値を求めた。その結果を表2および表3の最下段に示す。
【0045】
表2および表3の最下段に示すように、ミルク感強度は、No.1(脱脂粉乳のみ)の3点に対して、No.2(酵母エキスを添加)では3.5点、No.3(砂糖を添加)では3.2点、No.5(還元麦芽糖水飴を添加)では3.3点、No.7(中糖化還元水飴を添加)では3.2点、No.9(低糖化還元水飴を添加)では3.5点、No.11(エリスリトールを添加)では3.1点、No.13(ステビア抽出物を添加)では3.2点であった。
すなわち、酵母エキス、砂糖、還元麦芽糖水飴、中糖化還元水飴、低糖化還元水飴、エリスリトールまたはステビア抽出物を添加した乳風味飲料では、これらを添加しないものと比較して、ミルク感強度が大きかった。
この結果から、酵母エキスおよび甘味料は、いずれもミルク感を向上する作用を有することが明らかになった。
【0046】
さらに、ミルク感強度は、No.2(酵母エキスを添加)の3.5点、No.3(砂糖を添加)の3.2点に対して、No.4(酵母エキスおよび砂糖を添加)では4.5点と、顕著に大きくなった。
同様に、No.2の3.5点、No.5(還元麦芽糖水飴を添加)の3.3点に対して、No.6(酵母エキスおよび還元麦芽糖水飴を添加)では4.5点と、顕著に大きくなった。
また、No.2の3.5点、No.7(中糖化還元水飴を添加)の3.2点に対して、No.8(酵母エキスおよび中糖化還元糖水飴を添加)では5点と、顕著に大きくなった。
また、No.2の3.5点、No.9(低糖化還元水飴を添加)の3.5点に対して、No.10(酵母エキスおよび低糖化還元糖水飴を添加)では5点と、顕著に大きくなった。
また、No.2の3.5点、No.11(エリスリトールを添加)の3.1点に対して、No.12(酵母エキスおよびエリスリトールを添加)では4点と、顕著に大きくなった。
また、No.2の3.5点、No.13(ステビア抽出物を添加)の3.2点に対して、No.14(酵母エキスおよびステビア抽出物を添加)では5点と、顕著に大きくなった。
【0047】
すなわち、酵母エキスと、砂糖、還元麦芽糖水飴、中糖化還元水飴、低糖化還元水飴、エリスリトールまたはステビア抽出物とを添加した乳風味飲料では、いずれか一方のみを添加した乳風味飲料と比較して、ミルク感強度が顕著に大きかった。
この結果から、酵母エキスと甘味料とは、ミルク感向上作用において、相乗的に働くことが明らかになった。すなわち、酵母エキスと甘味料とを併せて添加することにより、ミルク感向上効果において相乗効果が得られることが明らかになった。また、当該相乗効果を奏する甘味料として、砂糖、還元麦芽糖水飴、還元水飴、糖アルコール、高甘味度甘味料などのあらゆる甘味料が使用可能であることが明らかになった。
【0048】
一方、厚味強度は、No.1(脱脂粉乳のみ)の3点に対して、No.2(酵母エキスを添加)、No.3(砂糖を添加)、No.5(還元麦芽糖水飴を添加)、No.7(中糖化還元水飴を添加)、No.9(低糖化還元水飴を添加)、No.11(エリスリトールを添加)およびNo.13(ステビア抽出物を添加)では、いずれも3.2点であった。
すなわち、酵母エキス、砂糖、還元麦芽糖水飴、中糖化還元水飴、低糖化還元水飴、エリスリトールまたはステビア抽出物を添加した乳風味飲料では、これらを添加しないものと比較して、厚味強度が大きかった。
この結果から、酵母エキスおよび甘味料は、いずれも厚味を向上する作用を有することが明らかになった。
【0049】
さらに、厚味強度は、No.4(酵母エキスおよび砂糖を添加)では4.1点、No.6(酵母エキスおよび還元麦芽糖水飴を添加)では4.2点、No.8(酵母エキスおよび中糖化還元糖水飴を添加)では4.2点、No.10(酵母エキスおよび低糖化還元糖水飴を添加)では4.2点、No.12(酵母エキスおよびエリスリトールを添加)では3.7点、No.14(酵母エキスおよびステビア抽出物を添加)では4.2点であり、酵母エキスまたは甘味料を単独で添加した場合と比較して、顕著に大きくなった。
【0050】
すなわち、酵母エキスと、砂糖、還元麦芽糖水飴、中糖化還元水飴、低糖化還元水飴、エリスリトールまたはステビア抽出物とを添加した乳風味飲料では、いずれか一方のみを添加した乳風味飲料と比較して、厚味強度が顕著に大きかった。
この結果から、酵母エキスと甘味料とは、厚味向上作用において、相乗的に働くことが明らかになった。すなわち、酵母エキスと甘味料とを併せて添加することにより、厚味向上効果において相乗効果が得られることが明らかになった。また、当該相乗効果を奏する甘味料として、砂糖、還元麦芽糖水飴、還元水飴、糖アルコール、高甘味度甘味料などのあらゆる甘味料が使用可能であることが明らかになった。
【0051】
<実施例2>酵母エキスの添加量の検討
甘味料の添加量を6gに固定し、酵母エキスの添加量を変化させて、実施例1(1)に記載の方法により、No.15~32の乳風味飲料を調製した。ただし、甘味料は還元麦芽糖水飴を用いた。その配合を表4、表5および表6に示す。
続いて、これらの乳風味飲料について、No.15の試料(還元麦芽糖水飴および酵母エキスのいずれも添加せず、脱脂粉乳のみを溶かした乳風味飲料)のミルク感強度および厚味強度をそれぞれ比較対照(3点)として、実施例1(2)に記載の方法により官能試験を行い、ミルク感強度および厚味強度を評価した。その結果を表4、表5および表6の最下段に示す。
【0052】
【表4】
【0053】
【表5】
【0054】
【表6】
【0055】
表4、表5および表6の最下段に示すように、No.16(還元麦芽糖水飴を添加)の3.2点、No.17(酵母エキス0.001gを添加)の3.1点に対して、No.18(還元麦芽糖水飴および酵母エキス0.001gを添加)では3.2点であり、還元麦芽糖水飴および酵母エキスの併用によるミルク感向上効果は認められなかった。
一方、No.16の3.2点、No.19(酵母エキス0.005gを添加)の3.2点に対して、No.20(還元麦芽糖水飴および酵母エキス0.005gを添加)では3.5点であり、ミルク感強度は顕著に大きくなった。
同様に、No.16の3.2点、No.21(酵母エキス0.01gを添加)の3.5点に対して、No.22(還元麦芽糖水飴および酵母エキス0.01gを添加)では4.1点であり、ミルク感強度は顕著に大きくなった。
また同様に、No.16の3.2点、No.23(酵母エキス0.05gを添加)の3.6点に対して、No.24(還元麦芽糖水飴および酵母エキス0.05gを添加)では4.5点であり、ミルク感強度は顕著に大きくなった。
また同様に、No.16の3.2点、No.25(酵母エキス0.1gを添加)の3.7点に対して、No.26(還元麦芽糖水飴および酵母エキス0.1gを添加)では4.5点であり、ミルク感強度は顕著に大きくなった。
また同様に、No.16の3.2点、No.27(酵母エキス0.2gを添加)の3.8点に対して、No.28(還元麦芽糖水飴および酵母エキス0.2gを添加)では4.5点であり、ミルク感強度は顕著に大きくなった。
一方、No.16の3.2点、No.29(酵母エキス0.5gを添加)の3.6点に対して、No.30(還元麦芽糖水飴および酵母エキス0.5gを添加)では3.8点であり、ミルク感強度は大きくなった。
また、No.16の3.2点、No.31(酵母エキス1gを添加)の3.1点に対して、No.32(還元麦芽糖水飴および酵母エキス1gを添加)では3.3点であり、ミルク感強度は大きくなった。
【0056】
すなわち、還元麦芽糖水飴および酵母エキスの併用によるミルク感向上効果は、酵母エキス添加量が0.001g超1g以下で大きく、0.001g超0.5g未満で顕著に大きかった。
この結果から、甘味料と酵母エキスとを有効成分とするミルク感向上剤においては、甘味料6重量部に対して、酵母エキスが0.001重量部超1重量部以下であると、ミルク感向上作用が大きくなることが明らかになった。
また、当該ミルク感向上剤を飲食品材料に添加する場合は、飲食品材料と甘味料との合計100重量部に対して、酵母エキスの添加量が0.001重量部超1重量部以下であると、ミルク感向上作用が大きくなることが明らかになった。
【0057】
一方、厚味強度は、No.16(還元麦芽糖水飴を添加)の3.2点、No.17(酵母エキス0.001gを添加)の3.1点に対して、No.18(還元麦芽糖水飴および酵母エキス0.001gを添加)では3.2点であり、還元麦芽糖水飴および酵母エキスの併用による厚味向上効果は認められなかった。
しかし、No.16の3.2点、No.19(酵母エキス0.005gを添加)の3.1点に対して、No.20(還元麦芽糖水飴および酵母エキス0.005gを添加)では3.4点であり、厚味強度は顕著に大きくなった。
同様に、No.16の3.2点、No.21(酵母エキス0.01gを添加)の3.5点に対して、No.22(還元麦芽糖水飴および酵母エキス0.01gを添加)では3.8点であり、厚味強度は顕著に大きくなった。
その一方で、No.16の3.2点、No.23(酵母エキス0.05gを添加)の3.6点に対して、No.24(還元麦芽糖水飴および酵母エキス0.05gを添加)では3.5点であり、還元麦芽糖水飴および酵母エキスの併用による厚味向上効果は認められなかった。
しかし、No.16の3.2点、No.25(酵母エキス0.1gを添加)の3.6点に対して、No.26(還元麦芽糖水飴および酵母エキス0.1gを添加)では3.8点であり、厚味強度は大きくなった。
また、No.16の3.2点、No.27(酵母エキス0.2gを添加)の3.7点に対して、No.28(還元麦芽糖水飴および酵母エキス0.2gを添加)では4.2点であり、厚味強度は顕著に大きくなった。
また、No.16の3.2点、No.29(酵母エキス0.5gを添加)の3.4点に対して、No.30(還元麦芽糖水飴および酵母エキス0.5gを添加)では3.6点であり、厚味強度は大きくなった。
しかし、No.16の3.2点、No.31(酵母エキス1gを添加)の3.1点に対して、No.32(還元麦芽糖水飴および酵母エキス1gを添加)では3点であり、還元麦芽糖水飴および酵母エキスの併用による厚味向上効果は認められなかった。
【0058】
すなわち、還元麦芽糖水飴および酵母エキスの併用による厚味向上効果は、酵母エキス添加量が0.001g超0.05g未満および0.05g超1g未満で大きく、0.005g以上0.01g以下および0.1g超0.5g未満で顕著に大きかった。
この結果から、甘味料と酵母エキスとを有効成分とするミルク感向上剤においては、甘味料6重量部に対して、酵母エキスが0.001重量部超0.05重量部未満または0.05重量部超1重量部未満であると、厚味向上作用が大きくなることが明らかになった。
また、当該ミルク感向上剤を飲食品材料に添加する場合は、飲食品材料と甘味料との合計100重量部に対して、酵母エキスの添加量が0.001重量部超0.05重量部未満または0.05重量部超1重量部未満であると、厚味向上作用が大きくなることが明らかになった。
【0059】
<実施例3>アイスクリームの製造
比較例として、ミルク感向上剤を添加しないアイスクリームを定法に従って製造した。オーバーランは70%に設定した。また、実施例として、ミルク感向上剤(中糖化還元水飴および酵母エキス)を添加し、かつ、ミルク感を有する材料(脱脂粉乳)の配合量を低減したアイスクリームを同様に製造した。それらの配合を表7に示す。なお、実施例においては、比較例と同等の甘味にするため、水飴の添加量を低減させた。
続いて、これらのアイスクリームについて、実施例1(2)に記載の方法により官能試験を行い、ミルク感強度および厚味強度を評価した。ミルク感強度および厚味強度の点数化では、比較例のアイスクリームを比較対照(3点)とした。その結果を表7の最下段に示す。
【0060】
【表7】
【0061】
表7の最下段に示すように、ミルク感強度および厚味強度は、比較例の3点に対して、実施例ではいずれも4点であった。すなわち、ミルク感を有する材料(脱脂粉乳)の配合量を低減したにもかかわらず、ミルク感強度および厚味強度のいずれも、比較例よりも実施例の方が顕著に大きかった。
この結果から、甘味料と酵母エキスとを有効成分とするミルク感向上剤を添加することにより、ミルク感を有する材料の配合量を低減しても、低減しない場合と同等以上にミルク感および厚味が向上したアイスクリームを製造できることが明らかになった。
【0062】
<実施例4>ミルクコーヒーの製造
比較例として、ミルク感向上剤を添加しないミルクコーヒーを定法に従って製造した。また、実施例として、ミルク感向上剤(還元麦芽糖水飴および酵母エキス)を添加したミルクコーヒーを同様に製造した。それらの配合を表8に示す。なお、実施例においては、比較例と同等の甘味にするため、水飴の添加量を低減させた。
続いて、これらのミルクコーヒーについて、実施例1(2)に記載の方法により官能試験を行い、ミルク感強度および厚味強度を評価した。ミルク感強度および厚味強度の点数化では、比較例のミルクコーヒーを比較対照(3点)とした。その結果を表8の最下段に示す。
【0063】
【表8】
【0064】
表8の最下段に示すように、ミルク感強度は、比較例の3点に対して、実施例では4.5点であった。また、厚味強度は、比較例の3点に対して、実施例では4点であった。すなわち、ミルク感強度および厚味強度のいずれも、比較例よりも実施例の方が顕著に大きかった。
この結果から、甘味料と酵母エキスとを有効成分とするミルク感向上剤を添加することにより、ミルク感および厚味が向上したミルクコーヒーを製造できることが明らかになった。
【0065】
<実施例5>乳風味飲料の製造
比較例として、ミルク感向上剤を添加しない乳風味飲料を、実施例1(1)に記載の方法により製造した。また、実施例として、ミルク感向上剤(還元麦芽糖水飴および酵母エキス)を添加し、かつ、ミルク感を有する材料(脱脂粉乳)の配合量を低減した乳風味飲料を同様に製造した。それらの配合を表9に示す。なお、実施例においては、比較例と同等の甘味にするため、水飴の添加量を0とした。
続いて、これらの乳風味飲料について、実施例1(2)に記載の方法により官能試験を行い、ミルク感強度および厚味強度を評価した。ミルク感強度および厚味強度の点数化では、比較例の乳風味飲料を比較対照(3点)とした。その結果を表9の最下段に示す。
【0066】
【表9】
【0067】
表9の最下段に示すように、ミルク感強度は、比較例の3点に対して、実施例では4点であった。また、厚味強度は、比較例の3点に対して、実施例では3.5点であった。すなわち、ミルク感を有する材料(脱脂粉乳)の配合量を低減したにもかかわらず、ミルク感強度および厚味強度のいずれも、比較例よりも実施例の方が顕著に大きかった。
この結果から、甘味料と酵母エキスとを有効成分とするミルク感向上剤を添加することにより、ミルク感を有する材料の配合量を低減しても、低減しない場合と同等以上にミルク感および厚味が向上した乳風味飲料を製造できることが明らかになった。