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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022097774
(43)【公開日】2022-07-01
(54)【発明の名称】プリント基板
(51)【国際特許分類】
   H05K 1/02 20060101AFI20220624BHJP
   H01L 23/12 20060101ALI20220624BHJP
   H01L 23/36 20060101ALI20220624BHJP
【FI】
H05K1/02 F
H01L23/12 J
H01L23/36 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020210904
(22)【出願日】2020-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(72)【発明者】
【氏名】加藤 直毅
【テーマコード(参考)】
5E338
5F136
【Fターム(参考)】
5E338AA01
5E338AA16
5E338BB13
5E338CC08
5E338EE02
5E338EE11
5F136BB03
5F136FA02
5F136FA03
(57)【要約】
【課題】プリント基板の熱を導電材料で形成された冷却部に伝達させる場合であっても、冷却部との電気的な絶縁性を担保しつつ、優れた熱伝導性を実現するプリント基板を提供する。
【解決手段】プリント基板20は、第1主面22及び第2主面23と、貫通孔24と、を有する本体部21と、第1主面22に設けられる配線パターン25と、を有する。貫通孔24には、配線パターン25と電気的に接続される第1金属部60と、配線パターン25と電気的に絶縁される第2金属部80と、第1金属部60と第2金属部80との間に設けられ、第1金属部60と第2金属部80とを電気的に絶縁する絶縁部70と、を有する放熱部材50が挿入されている。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平板状であって、厚み方向に互いに反対となる第1主面及び第2主面と、前記厚み方向に貫通する貫通孔と、を有する本体部と、
少なくとも前記第1主面に設けられる配線パターンと、を備えるプリント基板において、
前記貫通孔には、前記貫通孔内における前記第1主面側に設けられ、前記配線パターンと電気的に接続される第1金属部と、
前記貫通孔内における前記第2主面側に設けられ、前記第1金属部から前記厚み方向に離間して設けられるとともに、前記配線パターンと電気的に絶縁される第2金属部と、
前記第1金属部と前記第2金属部との間に設けられ、前記第1金属部と前記第2金属部とを電気的に絶縁する絶縁部と、を有する放熱部材が挿入されていることを特徴とするプリント基板。
【請求項2】
前記絶縁部は、板状部材であることを特徴とする請求項1に記載のプリント基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、プリント基板に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント基板の従来技術としては、例えば、特許文献1に開示されているプリント配線板を挙げることができる。特許文献1に開示されているプリント配線板は、絶縁基板と、絶縁基板を貫通する金属片収容孔と、金属片収容孔に挿入された金属片と、を有している。この金属片は、絶縁基板の一方の面に実装された電子部品と絶縁基板の他方の面に設けた放熱体とに接続されている。この金属片は、熱伝導性接着剤により放熱体に接着されている。これにより、電子部品の熱は、金属片によって放熱体へと伝達される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-33198号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のプリント配線板では、金属片と放熱体との間の電気的な絶縁性を担保するために、絶縁基板の放熱体配置側開口端と、金属片の放熱体接続側露出面とが所定距離だけ離れるように、金属片を金属片収容孔内の所定位置に配置する必要がある。
しかしながら、金属片収容孔内の所定位置に金属片を配置することは困難であり、製造ばらつきを考慮して熱伝導性接着剤の厚みを厚くする必要がある。その結果、金属片と放熱体との間の熱伝導性が低下する。
【0005】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたもので、本発明の目的は、プリント基板の熱を導電材料で形成された冷却部に伝達させる場合であっても、冷却部との電気的な絶縁性を担保しつつ、優れた熱伝導性を実現するプリント基板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、平板状であって、厚み方向に互いに反対となる第1主面及び第2主面と、前記厚み方向に貫通する貫通孔と、を有する本体部と、少なくとも前記第1主面に設けられる配線パターンと、を備えるプリント基板において、前記貫通孔には、前記貫通孔内における前記第1主面側に設けられ、前記配線パターンと電気的に接続される第1金属部と、前記貫通孔内における前記第2主面側に設けられ、前記第1金属部から前記厚み方向に離間して設けられるとともに、前記配線パターンと電気的に絶縁される第2金属部と、前記第1金属部と前記第2金属部との間に設けられ、前記第1金属部と前記第2金属部とを電気的に絶縁する絶縁部と、を有する放熱部材が挿入されているプリント基板であることを特徴とする。
【0007】
これにより、プリント基板の熱を導電材料で形成された冷却部に伝達させる場合であっても、冷却部との電気的な絶縁性を担保しつつ、優れた熱伝導性を実現することができる。
【0008】
また、上記のプリント基板において、前記絶縁部は、板状部材である構成としてもよい。
【0009】
これにより、絶縁部の厚みのばらつきを抑制できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、プリント基板の熱を導電材料で形成された冷却部に伝達させる場合であっても、冷却部との電気的な絶縁性を担保しつつ、優れた熱伝導性を実現するプリント基板を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係る回路装置を示す断面図である。
図2】(a)は、本発明の実施形態に係る放熱部材を示す斜視図であり、(b)は、本発明の実施形態に係る放熱部材を示す断面図である。
図3】変形例に係る回路装置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態に係るプリント基板について図面を参照して説明する。なお、本実施形態は、プリント基板20を有する回路装置11の例である。
【0013】
図1に示すように、回路装置11は、プリント基板20と、電子部品30と、冷却部40と、放熱部材50と、を備えている。プリント基板20は、本体部21と、導電性を有する配線パターン25を備えている。本体部21は、平板状であり、本体部21の一方の面である第1主面22と、第1主面22の反対側であって他方の面である第2主面23と、貫通孔24と、を備えている。第1主面22と第2主面23とは、本体部21の厚み方向に互いに反対となっているといえる。言い換えると、第1主面22と第2主面23とは、本体部21の厚み方向に互いに対向しているともいえる。貫通孔24は、本体部21を本体部21の厚み方向に貫通しており、第1主面22側の開口部である第1開口部24Aと、第2主面23側の開口部である第2開口部24Bとを有する。なお、貫通孔24は、本体部21を厚み方向に貫通していればどのような形状であってもよい。
【0014】
本体部21は、電気絶縁性を有する絶縁層を備えている。絶縁層は、例えば、ガラスエポキシ等の樹脂を有しており、ガラスクロス等の芯材にエポキシ等の樹脂を含浸させたプリプレグを硬化させて形成されている。本実施形態の本体部21は、絶縁層のみで形成されているが、本体部21は、絶縁層の内部に配線パターンを備えるいわゆる多層基板であってもよい。
【0015】
配線パターン25は、導電性を有し、例えば、銅やアルミニウムによって形成されている。配線パターン25は、薄板状であり、配線パターン25の厚み方向に互いに反対となる第1面25Aと第2面25Bとを有している。配線パターン25は、本体部21の第1主面22に設けられており、電子部品30と電気的に接続されている。なお、本実施形態の配線パターン25は、本体部21の貫通孔24に放熱部材50を挿入後に形成され、第1主面22上と放熱部材50上に形成される。すなわち、配線パターン25は、放熱部材50を覆うように形成されているといえる。
【0016】
電子部品30は、電子回路に使用される部品であり、例えば、IGBT(絶縁ゲートバイポーラ型トランジスタ)、MOSトランジスタやバイポーラトランジスタ、コンデンサ、ダイオード等である。電子部品30は、プリント基板20に実装されている。実装方法としては、表面実装でも、挿入実装でも、ベアチップ実装でもよい。
本実施形態の電子部品30は、配線パターン25上に設けられ、半田、導電性接着剤、Cuナノ粒子ペースト、Agナノ粒子ペースト等によって配線パターン25と接合されている。
【0017】
放熱部材50は、貫通孔24に挿入されるものであり、配線パターン25と電気的に接続される第1金属部60と、配線パターン25と電気的に絶縁される第2金属部80と、第1金属部60と前記第2金属部80とを電気的に絶縁する絶縁部70と、から構成されている。本実施形態の放熱部材50の形状は、図2(a)及び図2(b)に示すように、円柱状である。なお、放熱部材50の形状は円柱状に限定されず、貫通孔24に挿入できればどのような形状でもよい。
【0018】
第1金属部60は、円柱状であり、高さ方向に互いに反対となる円形状の第1端面61及び第2端面62と、外周面63と、を有する。第1金属部60は、金属製であり、例えば、銅やアルミニウムで形成されている。第2金属部80は、円柱状であり、高さ方向に互いに反対となる円形状の第1端面81及び第2端面82と、外周面83と、を有する。第2金属部80は、金属製であり、例えば、銅やアルミニウムで形成されている。絶縁部70は、第1金属部60と第2金属部80とを電気的に絶縁可能で、かつ、第1金属部60からの熱を第2金属部80に伝達可能な厚みを有する薄板状部材であり、厚み方向に互いに反対となる円形状の第1端面71及び第2端面72を有する。絶縁部70は、絶縁材料で形成されており、例えば、ボロンナイトライドや液晶ポリマーで形成されている。絶縁部70の厚みは、第1金属部60と第2金属部80とを電気的に絶縁できる範囲でなるべく薄く形成することが好ましい。
【0019】
放熱部材50は、第1金属部60の第2端面62と絶縁部70の第1端面71とが接合され、絶縁部70の第2端面72と第2金属部80の第1端面81とが接合されている。したがって、絶縁部70は、第1金属部60と第2金属部80との間に設けられる。第1金属部60、絶縁部70及び第2金属部80の接合方法としては、例えば、プレス加熱による接合方法や、半田や熱伝導性接着剤等を介在させた接合方法が考えられる。
【0020】
以上のように構成された放熱部材50は、貫通孔24に挿入されている。本実施形態の放熱部材50は、貫通孔24に圧入されている。なお、放熱部材50は、貫通孔24に挿入されていればよく、貫通孔24を区画する内周面26と放熱部材50の外周面との間に隙間があってもよい。内周面26と放熱部材50の外周面との間に隙間がある場合には、放熱部材50は、プリント基板20に半田等を介して接合されている。
【0021】
放熱部材50は、貫通孔24の第1開口部24A側に第1金属部60が配置され、貫通孔24の第2開口部24B側に第2金属部80が配置されるように貫通孔24に圧入されている。すなわち、第1金属部60は、貫通孔24における第1主面22側に設けられ、第2金属部80は、貫通孔24における第2主面23側に設けられ、かつ、第1金属部60から本体部21の厚み方向に離間して設けられている。上述したように、本体部21の貫通孔24に放熱部材50を挿入後、配線パターン25は、放熱部材50上に形成される。したがって、第1金属部60の第1端面61は、配線パターン25の第2面25Bと接合されており、第1金属部60は、配線パターン25と電気的に接続されている。
【0022】
冷却部40は、導電性を有し、かつ、熱伝導率が高い材料で形成されている。冷却部40は、平板状であり、冷媒(図示せず)が流通する冷媒流路(図示せず)を有する。冷却部40は、プリント基板20における本体部21の第2主面23側に設けられる。詳述すると、冷却部40は、冷却部40の一面である冷却面41が、本体部21の第2主面23及び第2金属部80の第2端面82と、例えば、放熱グリスを介して対向するように配置されている。なお、冷却部40は、放熱部材50の熱を吸収できればよく、冷媒流路(図示せず)を有していなくてもよい。なお、冷却部40は、プリント基板20の配線パターン25と電気的に絶縁されている。
【0023】
次に、本実施形態の作用について説明する。電子部品30及び配線パターン25は、電流が流れることにより発熱する。電子部品30及び配線パターン25の熱は、放熱部材50を介して冷却部40に伝達される。冷却部40に伝達された熱は、冷却部40にて冷媒と熱交換される。放熱部材50には、第1金属部60と第2金属部80との間に絶縁部70が設けられており、第1金属部60と第2金属部80とを電気的に絶縁する。これにより、絶縁部70は、第1金属部60と第2金属部80との間の通電を妨げる。したがって、配線パターン25を流れる電流が放熱部材50を介して冷却部40に流れることが抑制される。
【0024】
本実施形態によれば以下の作用効果を奏する。
(1)プリント基板20の本体部21が、貫通孔24を有するとともに、貫通孔24に挿入される放熱部材50は、配線パターン25と電気的に接続される第1金属部60と、配線パターン25と電気的に絶縁される第2金属部80と、第1金属部60と第2金属部80との間に絶縁部70とを有している。これにより、配線パターン25の熱を第1金属部60に伝達することができる。また、第2金属部80は、第1金属部60及び配線パターン25と電気的に絶縁されているため、プリント基板20の熱を導電材料で形成された冷却部40に伝達させる場合であっても、配線パターン25を流れる電流が放熱部材50を介して冷却部40に流れることが抑制される。したがって、プリント基板20は、プリント基板20の熱を導電材料で形成された冷却部40に伝達させる場合であっても、冷却部40との電気的な絶縁性を担保しつつ、優れた熱伝導性を有する。
(2)絶縁部70は、薄板状部材である。したがって、絶縁部70の厚みのばらつきを抑制できる。
【0025】
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく発明の趣旨の範囲内で種々の変更が可能であり、例えば、次のように変更してもよい。
【0026】
図3に示すように、本体部21の第1主面22に設けられる配線パターン110が、厚み方向に貫通する配線貫通孔111を備え、配線貫通孔111に放熱部材50が挿通されてもよい。
〇 上記の実施形態では、配線パターン25は、本体部21の第1主面22に設けられているとしたが、この限りではない。例えば、配線パターンは、少なくとも本体部21の第1主面22に設けられていればよく、本体部21の第2主面23や本体部21の内部に設けられてもよい。
〇 上記の実施形態では、第1金属部60は、本体部21の第1主面22に設けられた配線パターン25に電気的に接続されているとしたが、この限りではない。例えば、第1金属部60は、本体部21の第2主面23や本体部21の内部に設けられた配線パターンに電気的に接続されてもよい。
〇 第1金属部60は、配線パターンと電気的に接続されていればよく、配線パターンと接合されていなくてもよい。例えば、第1金属部60が、電子部品30の電極と半田等を介して接合されることで、電子部品30と電気的に接続される配線パターンと電気的に接続されていてもよい。
〇 配線パターン25は、第1金属部60上に形成されていなくてもよい。
〇 貫通孔24は、貫通孔24を区画する内周面26が導電材料でメッキ加工された、いわゆるスルーホールであってもよい。ただし、この場合、第2金属部80と、内周面26に設けられた導電材料とが、電気的に接続されないようにする必要がある。例えば、第2金属部80と、内周面26に設けられた導電材料とを所定距離離したり、第2金属部80の外周面83を絶縁材でコーティングする方法等が考えられる。
〇 上記の実施形態では、絶縁部70は、薄板状部材であるが、これに限られず、第1金属部60と第2金属部80とを電気的に絶縁できるものであればよい。例えば、絶縁材料からなる絶縁層であってもよい。
【符号の説明】
【0027】
20 プリント基板
21 本体部
22 第1主面
23 第2主面
24、111 貫通孔
25、110、配線パターン
30 電子部品
50 放熱部材
60 第1金属部
70 絶縁部
80 第2金属部
図1
図2
図3