(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022097783
(43)【公開日】2022-07-01
(54)【発明の名称】発泡ガラス体、発泡ガラス体を用いた断熱体、及び発泡ガラス体の製造方法
(51)【国際特許分類】
C03B 19/08 20060101AFI20220624BHJP
C03C 11/00 20060101ALI20220624BHJP
【FI】
C03B19/08 Z
C03C11/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020210922
(22)【出願日】2020-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】501418498
【氏名又は名称】矢崎エナジーシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145908
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 信雄
(74)【代理人】
【識別番号】100136711
【弁理士】
【氏名又は名称】益頭 正一
(72)【発明者】
【氏名】中村 拓樹
【テーマコード(参考)】
4G062
【Fターム(参考)】
4G062AA13
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4G062MM01
(57)【要約】
【課題】圧縮強度の向上を図ることが可能な発泡ガラス体、発泡ガラス体を用いた断熱体、及び発泡ガラス体の製造方法を提供する。
【解決手段】断熱体1は、発泡ガラス体10と、発泡ガラス体10を中空部Hに収納する中空部材20とを備えている。発泡ガラス体10は、R
2O類及びRO類を含む珪酸ガラス材料により構成されたものであって、全体に対するR
2O類の酸化物換算の重量比(%)を値Aとし、全体に対するRO類の酸化物換算の重量比(%)を値Bとした場合に、値A-2.08×値Bにより得られる値Cの絶対値が5.27以下、又は、値A-2.68×値Bにより得られる値Dの絶対値が3.23以下である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
R2O類及びRO類を含む珪酸ガラス材料により構成され、大気圧下においてかさ密度が0.2g/cm3以下の発泡ガラス体であって、
全体に対する前記R2O類の酸化物換算の重量比(%)を値Aとし、全体に対する前記RO類の酸化物換算の重量比(%)を値Bとした場合に、値A-2.08×値Bにより得られる値Cの絶対値が5.27以下である
ことを特徴とする発泡ガラス体。
【請求項2】
値A-2.08×値Bにより得られる値Cの絶対値が3.77以下である
ことを特徴とする請求項1に記載の発泡ガラス体。
【請求項3】
値A-2.08×値Bにより得られる値Cの絶対値が2.28以下である
ことを特徴とする請求項2に記載の発泡ガラス体。
【請求項4】
R2O類及びRO類を含む珪酸ガラス材料により構成され、大気圧下においてかさ密度が0.2g/cm3以下の発泡ガラス体であって、
全体に対する前記R2O類の酸化物換算の重量比(%)を値Aとし、全体に対する前記RO類の酸化物換算の重量比(%)を値Bとした場合に、値A-2.68×値Bにより得られる値Dの絶対値が3.23以下である
ことを特徴とする発泡ガラス体。
【請求項5】
値A-2.68×値Bにより得られる値Dの絶対値が2.14以下である
ことを特徴とする請求項4に記載の発泡ガラス体。
【請求項6】
値A-2.68×値Bにより得られる値Dの絶対値が1.04以下である
ことを特徴とする請求項5に記載の発泡ガラス体。
【請求項7】
前記値Aと前記値Bとの合計が7以下である
ことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の発泡ガラス体。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の発泡ガラス体と、
前記発泡ガラス体を中空部に収納する中空部材と、
を備えることを特徴とする断熱体。
【請求項9】
大気圧が加えられた状態においてかさ密度が0.2g/cm3以下となるように発泡温度が調整された発泡ガラス体の製造方法であって、
R2O類及びRO類を含む珪酸ガラス材料、又は、前記珪酸ガラス材料を発泡させた発泡体である対象物に対して、前記対象物全体の前記R2O類の酸化物換算の重量比(%)を減少させる脱アルカリ処理を行う脱アルカリ工程、及び、前記対象物に対して前記RO類を付加する付加工程の少なくとも一方を有し、
全体に対する前記R2O類の酸化物換算の重量比(%)を値Aとし、全体に対する前記RO類の酸化物換算の重量比(%)を値Bとした場合に、値A-2.08×値Bにより得られる値Cの絶対値が5.27以下とする
ことを特徴とする発泡ガラス体の製造方法。
【請求項10】
大気圧が加えられた状態においてかさ密度が0.2g/cm3以下となるようにに発泡温度が調整された発泡ガラス体の製造方法であって、
R2O類及びRO類を含む珪酸ガラス材料、又は、前記珪酸ガラス材料を発泡させた発泡体である対象物に対して、前記対象物全体の前記R2O類の酸化物換算の重量比(%)を減少させる脱アルカリ処理を行う脱アルカリ工程、及び、前記対象物に対して前記RO類を付加する付加工程の少なくとも一方を有し、
全体に対する前記R2O類の酸化物換算の重量比(%)を値Aとし、全体に対する前記RO類の酸化物換算の重量比(%)を値Bとした場合に、値A-2.68×値Bにより得られる値Dの絶対値が3.23以下である
ことを特徴とする発泡ガラス体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡ガラス体、発泡ガラス体を用いた断熱体、及び発泡ガラス体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、断熱性能を発揮する断熱体が知られている。このような断熱体は、例えば外皮内に発泡ガラス体を収納して構成されている。また、断熱体には、外皮をガスバリア性のもので構成し、内部を真空に保ったものもある。
【0003】
一例として、内槽及び内槽を覆う外槽を外皮として有する二重構造のLNGタンクの内外槽間にコア材としてパーライト粉末(発泡ガラス体)を充填したものが提案されている(例えば特許文献1参照)。また、より軽量の構造が求められる冷蔵庫等では、外皮としてアルミ蒸着した樹脂フィルム等が使われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平2-256999号公報
【特許文献2】特開昭47-34607号公報
【特許文献3】特開昭53-22520号公報
【特許文献4】特開昭60-77145号公報
【特許文献5】特開昭60-90943号公報
【特許文献6】特開昭61-163148号公報
【特許文献7】特開昭63-144144号公報
【特許文献8】特開平2-120255号公報
【特許文献9】特開平8-74168号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、このような断熱体は、外圧によって過度に形状変化しない構造である必要がある。特に、断熱体が建築材料(例えば外壁)として用いられる場合には、外皮に対して人が寄り掛かったり風圧を受けたりしても、変形が殆どなく圧縮強度が高いことが望まれている。
【0006】
圧縮強度が高い断熱体については、発泡密度が低くなるように発泡すれば容易に得られる。しかし、この場合、例えばかさ密度が0.3g/cm3を超えるものとなる。
【0007】
そこで、軽量化に着目してかさ密度が0.2g/cm3以下となるように焼成発泡する試みがなされて来た。例えば特許文献2~9はいずれも、アルカリ成分を添加して軟質化・低融点化により延びやすくして焼成発泡することにより、均質な薄壁で比較的高強度で発泡倍率の高い独立気泡体を得るものである。しかしこれらの場合気泡のガラス壁が軟質であることから十分な強度は得られず、例えばかさ密度が0.1g/cm3の発泡ガラス体を基準として0.7気圧程度の押圧(人が寄り掛かったときや風圧により生じる押圧)に対する圧縮率が10%を超えて収縮してしまうことから、断熱体のコア材として充分な圧縮強度を有しているとは言い難い。
【0008】
このように、従来、軽量(かさ密度が0.2g/cm3以下)であって圧縮強度が高い(かさ密度が0.1g/cm3を基準としたときに圧縮率10%以下の)発泡ガラス体を得ることができず、若しくは極めて偶発的にしか得ることができなかった。
【0009】
なお、上記問題は、建築材用途に限るものではなく、タンクや冷蔵庫内等においても共通するものである。例えば、上記では人が寄り掛かったときや風圧により生じる押圧を想定して述べたが、タンクや冷蔵庫内において物体の接触や衝突等があり得ることから圧縮強度が高いことは望ましく、また、発泡ガラス体が軽量であれば製品の低重量化につながることから好ましいものである。
【0010】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、より軽量でより高い圧縮強度を有した発泡ガラス体、発泡ガラス体を用いた断熱体、及び発泡ガラス体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る発泡ガラス体は、R2O類及びRO類を含む珪酸ガラス材料により構成され、大気圧下においてかさ密度が0.2g/cm3以下の発泡ガラス体であって、全体に対する前記R2O類の酸化物換算の重量比(%)を値Aとし、全体に対する前記RO類の酸化物換算の重量比(%)を値Bとした場合に、値A-2.08×値Bにより得られる値Cの絶対値が5.27以下であることを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る発泡ガラス体は、R2O類及びRO類を含む珪酸ガラス材料により構成され、大気圧下においてかさ密度が0.2g/cm3以下の発泡ガラス体であって、全体に対する前記R2O類の酸化物換算の重量比(%)を値Aとし、全体に対する前記RO類の酸化物換算の重量比(%)を値Bとした場合に、値A-2.68×値Bにより得られる値Dの絶対値が3.23以下であることを特徴とする。
【0013】
本発明に係る発泡ガラス体の製造方法は、大気圧が加えられた状態においてかさ密度が0.2g/cm3以下となるように発泡温度が調整された発泡ガラス体の製造方法であって、R2O類及びRO類を含む珪酸ガラス材料、又は、前記珪酸ガラス材料を発泡させた発泡体である対象物に対して、前記対象物全体の前記R2O類の酸化物換算の重量比(%)を減少させる脱アルカリ処理を行う脱アルカリ工程、及び、前記対象物に対して前記RO類を付加する付加工程の少なくとも一方を有し、全体に対する前記R2O類の酸化物換算の重量比(%)を値Aとし、全体に対する前記RO類の酸化物換算の重量比(%)を値Bとした場合に、値A-2.08×値Bにより得られる値Cの絶対値が5.27以下とすることを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係る発泡ガラス体の製造方法は、大気圧が加えられた状態においてかさ密度が0.2g/cm3以下となるようにに発泡温度が調整された発泡ガラス体の製造方法であって、R2O類及びRO類を含む珪酸ガラス材料、又は、前記珪酸ガラス材料を発泡させた発泡体である対象物に対して、前記対象物全体の前記R2O類の酸化物換算の重量比(%)を減少させる脱アルカリ処理を行う脱アルカリ工程、及び、前記対象物に対して前記RO類を付加する付加工程の少なくとも一方を有し、全体に対する前記R2O類の酸化物換算の重量比(%)を値Aとし、全体に対する前記RO類の酸化物換算の重量比(%)を値Bとした場合に、値A-2.68×値Bにより得られる値Dの絶対値が3.23以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、より軽量であって圧縮強度の向上を図ることが可能な発泡ガラス体、発泡ガラス体を用いた断熱体、及び発泡ガラス体の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施形態に係る発泡ガラス体を用いた断熱体を示す概略構成図である。
【
図2】本実施形態に係る発泡ガラス体の製造方法を示す工程図である。
【
図3】実験試料及び実験結果を示す第1の図表である。
【
図4】実験試料及び実験結果を示す第2の図表である。
【
図5】実験試料及び実験結果を示す第3の図表である。
【
図6】実験試料及び実験結果を示す第4の図表である。
【
図7】0kPaから102.8kPaに加圧したときのかさ密度増加率と、R
2O類の酸化物換算の重量比(%)からRO類の酸化物換算の重量比(%)の2.08倍を減算した値の絶対値との相関を示すグラフである。
【
図8】0kPaから201.2kPaに加圧したときのかさ密度増加率と、R
2O類の酸化物換算の重量比(%)からRO類の酸化物換算の重量比(%)の2.68倍を減算した値の絶対値との相関を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を好適な実施形態に沿って説明する。なお、本発明は以下に示す実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。また、以下に示す実施形態においては、一部構成の図示や説明を省略している箇所があるが、省略された技術の詳細については、以下に説明する内容と矛盾点が発生しない範囲内において、適宜公知又は周知の技術が適用されていることはいうまでもない。
【0018】
図1は、本発明の実施形態に係る発泡ガラス体を用いた断熱体を示す概略構成図である。
図1に示すように、断熱体1は、発泡ガラス体10と、中空部材20とを備えている。中空部材20の内部空間となる中空部Hには発泡ガラス体10が収納されている。中空部Hは、真空引きされていてもよいし、されていなくともよい。真空引きされる場合、中空部Hにおける気圧は好ましくは1kPa以下となっている。この断熱体1は、例えば建築材の一部として用いられるものであり、常温環境下(摂氏-60℃以上の一例)で使用されるものである。
【0019】
中空部材20は、例えば断熱体1が建築材として用いられた場合に室内側と室外側とのそれぞれに対応する外皮21,22と、外皮21,22の端部を封止する封止部材23によって構成されている。外皮21,22は、例えばガスバリア性を有した樹脂フィルムやステンレス等の金属フィルムによって構成されている。封止部材23についてもガスバリア性を有した部材によって構成されている。なお、断熱体1は室内側と室外側とを隔てるものに限らず、室内の或る空間と他の空間とを隔てるものとして用いられてもよいし、冷温、高温等の温度域で保温の必要がある部材の周囲を覆う箱体や壁体等(大きさは問わない)として用いられてもよい。また、上記において外皮21,22と封止部材23とは別体となっているが、一体となっていてもよい。
【0020】
発泡ガラス体10は、アルカリ金属類(以下、R2O類という)及びアルカリ土類金属類(以下、RO類という)を含む珪酸ガラス材料、例えばパーライト精石(天然の松脂岩、真珠岩、黒曜石を砕いたもの)を化学改質(脱アルカリ処理又はRO類の付加処理)のうえ発泡させたもの、又は、発泡後のパーライト粉末を化学改質(脱アルカリ処理又はRO類の付加処理)したもので構成されている。なお、珪酸ガラス材料は、パーライト精石やその発泡後のパーライト粉末に限らず、硅砂、火山灰、廃ガラス粉やその発泡後の粉末であってもよい。
【0021】
さらに、本実施形態に係る発泡ガラス体10は、化学改質が施された結果、中空部Hが空気で満たされる断熱体1において特定の値(後述の値C)が5.27以下、より好ましくは3.77以下、さらに好ましくは2.28以下とされ、中空部Hが真空引きされる断熱体1において特定の値(後述の値D)が3.23以下、より好ましくは2.14以下、さらに好ましくは1.04以下とされている。これにより、かさ密度0.2g/cm3以下というより軽量であって、例えば0.7気圧程度の押圧に対して高い圧縮強度を有した発泡ガラス体1を得易くすることができるからである。
【0022】
なお、値Cは、後述するように、値A-2.08×値Bにて算出され、値Dは、値A-2.65×値Bにて算出される。値Aは、発泡ガラス体1の全体に対するR2O類の酸化物換算の重量比(%)であり、値Bは、発泡ガラス体1の全体に対するRO類の酸化物換算の重量比(%)である。
【0023】
加えて、本実施形態に係る発泡ガラス体10は値Aと値Bとの合計が7以下(すなわち全体に対するRO類とR2O類との酸化物換算の重量比(%)の合計が7%以下)とされていることが好ましい。RO類とR2O類とが少なくなると、発泡ガラス体10の融点を高めることとなるため、例えば900℃の温度で6時間以上曝されたとしても収縮を5%以内とでき、耐熱性を確保することができるからである。
【0024】
次に、本実施形態に係る発泡ガラス体10の製造方法を説明する。
図2は、本実施形態に係る発泡ガラス体10の製造方法を示す工程図である。
図2に示すように、まずR
2O類とRO類とを含む珪酸ガラス材料、又は、この珪酸ガラス材料が発泡させられた発泡体を用意する(S1)。ここで用意された発泡ガラス体は、R
2O類を5%以上含むものであり、値Cが5.27を超え、値Dが3.23を超えているものである。
【0025】
次に、ステップS1において用意された対象物に対して、脱アルカリ処理を行う(S2)。脱アルカリ処理は、例えば硫酸を収納した容器に対象物を投入し、加熱保持することによって行われる。これにより、対象物中のアルカリ金属成分が除去される。
【0026】
次いで、ステップS2において脱アルカリ処理が行われた対象物に対して、RO類の付加処理を行う(S3)。付加処理は、湿式にて水酸化カルシウムを複合化することによって行われる。この処理においては、対象物に対して水酸化カルシウム粉末を混合すると共に、さらに蒸留水を添加、混合、撹拌、及び乾燥することで、水酸化カルシウムの微粉を対象物に付着することができる。
【0027】
その後、後工程等の必要な処理(特に、対象物が発泡前の珪酸ガラス材料である場合には加熱による発泡処理)を経て、発泡ガラス体10が得られる。
【0028】
なお、本実施形態においては、ステップS2における硫酸などの濃度、容量、加熱温度及び加熱時間等を調整することでアルカリ金属成分の除去度合いを調整することができる。さらに、ステップS3においては、蒸留水に対する水酸化カルシウム粉末の濃度、撹拌速度、及び乾燥時間等を調整することでR2O類の付加度合いを調整することができる。
【0029】
本実施形態では、これらの調整により、発泡ガラス体10の値Cを5.27以下、より好ましくは3.77以下、さらに好ましくは2.28以下とし、又は、発泡ガラス体10の値Dを3.23以下、より好ましくは2.14以下、さらに好ましくは1.04以下とすることができる。さらに、本実施形態では、これらの調整により、値Aと値Bとの合計が7以下とすることができる。
【0030】
なお、上記においては脱アルカリ処理(S2)と付加処理(S3)との双方が行われているが、これに限らず、いずれか一方のみが行われてもよいし、双方が行われる場合には付加処理が先に行われてもよい。また、可能であればステップS1~S3の間のいずれかに発泡処理が含まれていてもよい。
【0031】
次に、本発明に係る発泡ガラス体の実験結果等を説明する。
図3~
図6は、実験試料及び実験結果を示す図表である。
【0032】
まず、以下の実験においては、化学改質を行って又は未実施の状態でR2O類とRO類とが様々な割合となったパーライト精石を28種用意した。次いで、28種のパーライト精石それぞれを炉内に投入して高温にして発泡させた。発泡時の温度は、それぞれの種類のパーライト精石が炉内にて溶解して炉壁に付着しない程度の高温(略最高温度であって、以下実験温度という)とした。このため、28種のパーライト精石は、可能な限り、発泡されており、後述するように全てがかさ密度が0.2g/cm3以下となった。
【0033】
また、以下の実験において、R2O類及びRO類の酸化物換算の重量比(%)については、走査型電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ製:S-3400N)に付属のエネルギー分散型X線分析装置(堀場製作所製:EX-350)にて表面の組成分析を行い、その平均値からアルカリ金属成分の濃度を求め、さらに酸化物換算した。各サンプルともに10粒以上のパーライト粒の表面組成分析をクロマトグラフィー法により測定した結果を示している。観察は加速電圧15kVにて行った。
【0034】
また、かさ密度の変化率(増加率)については、上方が開放状態の容器に対して発泡後のパーライト粉末を投入し、開放部分に蓋部材を設け、蓋部材のうえに0kPaから102.8kPaに加圧したときに相当する荷重、及び、0kPaから201.2kPaに加圧したときに相当する荷重を掛けて押圧したときのかさ密度に基づいて算出した値を示している。なお、102.8kPaは大気圧に相当するものである。例えば内部空間が空気で満たされる断熱体においては、0.7気圧程度の負荷がかかることがあるため、予め0.7気圧よりも高い1気圧(102.8kPa)まで加圧したときのかさ密度の変化率を算出しておくこととした。また、内部空間が真空とされる断熱体においては、内部の発泡ガラス体に大気圧が加わった状態であることから、予め約2気圧(201.2kPa)まで加圧したときのかさ密度の変化率を算出しておくこととした。
【0035】
さらに、実験試料に対して行われる酸化カルシウムの付加処理については、50~100g程度のパーライト精石に粒径10μm以下の水酸化カルシウム粉末(1級:キシダ化学製)を目的の濃度(混合物としての酸化物換算の重量比(%)で1.5%又は3%など)となるような絶対量を混合し、さらに、このパーライト精石及び水酸化カルシウムの混合物と、蒸留水との比が4:3となるよう蒸留水を添加、混合、撹拌、乾燥することでパーライト表面に水酸化カルシウムの微粉を付着させた。具体的にはビーカー内に上記の混合液を入れ、撹拌子等によっておよそ200rpmの回転速度で撹拌しながら、ヒータ等の外部加熱装置にて混合液を加熱し、約1~2時間をかけ完全に水分を揮発させることで、表面に微細な水酸化カルシウム粉末をほぼ均一に付着させたパーライト精石を得た。
【0036】
また、実験試料に対して行われる脱アルカリ処理については以下のように行った。すなわち、パーライト精石約50g及び濃度85wt%硫酸50ccを容量200ccの反応容器(外筒SUS304、内筒PTFE)に充填し、加熱保持することでパーライト中のアルカリ金属成分の除去(脱アルカリ処理)を試みた。用いた硫酸は濃度98wt%及び70wt%の試薬(特級試薬:キシダ化学製)を混合することで85wt%に調整した。パーライト精石及び硫酸を充填した反応容器は、マッフル炉中にて所定の温度、時間条件にて加熱保持した。加熱後の容器からパーライト精石を取り出し、洗浄廃液が完全にpH=7となるまで蒸留水にてパーライト精石の洗浄を実施した。洗浄後のパーライトは乾燥器内で完全に乾燥させ脱アルカリ処理後のパーライト精石を得た。
【0037】
脱アルカリ処理の進行度の評価のため、脱アルカリ処理を行ったパーライト精石について走査型電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ製:S-3400N)による観察を行った。脱アルカリ後のパーライト粒の表面を走査型電子顕微鏡で観察し、付帯したエネルギー分散型X線分析装置(堀場製作所製:EX-350)にて表面の組成分析を行った。観察は加速電圧15kVにて行い、各サンプルともに10粒以上のパーライト粒の表面組成分析を行い、その平均値からアルカリ金属成分の濃度を求め、さらに酸化物換算することで脱アルカリの進行度を「高」「中」「低」と評価した。
【0038】
さらに、断熱体(発泡ガラス体)については、人が寄り掛かったり、風圧を受けたりしたときに変形が少ないことが求められ、例えばかさ密度が0.1g/cm3の断熱体においては、0.7気圧程度の押圧に対する圧縮率が10%以内(すなわちかさ密度増加量が0.01g・cm3以下)であることが望まれる。以下の実験例においては、0.7気圧程度の押圧に対するかさ密度増加量が0.01g・cm3以下のものを合格品とした。実際には比例により102.8kPaの押圧に対して0.143g/m3・Pa以下かさ密度増加量のものを合格品とした。
【0039】
まず、
図3に示す第1実験試料は既製品のパーライト精石である。第1実験試料のパーライト精石を実験温度にて高温発泡させた結果、かさ密度(もとのかさ密度であって、大気圧下のかさ密度:以下同じ)が0.04g/cm
3となった。なお、この第1実験試料のパーライト精石を測定した結果、酸化ナトリウムの酸化物換算の重量比(%)は2.77であり、酸化カリウムの酸化物換算の重量比(%)は4.8であり、酸化カルシウムの酸化物換算の重量比(%)は0.1であった(成分については発泡後に測定しても同じ)。
【0040】
このような第1実験試料を発泡させた第1実験例において、0kPaから102.8kPaに加圧したときに相当する荷重を付与したときのかさ密度増加率は0.49g/m3・Paであった。また、0kPaから201.2kPaに加圧したときに相当する荷重を付与したときのかさ密度増加率は0.39g/m3・Paであった。
【0041】
第2実験試料は所定環境において保管した後の既製品のパーライト精石である。第2実験試料のパーライト精石を実験温度にて高温発泡させた結果、かさ密度が0.06g/cm3となった。なお、この第2実験試料のパーライト精石を測定した結果、酸化ナトリウムの酸化物換算の重量比(%)は2.77であり、酸化カリウムの酸化物換算の重量比(%)は4.8であり、酸化カルシウムの酸化物換算の重量比(%)は0.1であった(成分については発泡後に測定しても同じ)。
【0042】
このような第2実験試料を発泡させた第2実験例において、0kPaから102.8kPaに加圧したときに相当する荷重を付与したときのかさ密度増加率は0.26g/m3・Paであった。また、0kPaから201.2kPaに加圧したときに相当する荷重を付与したときのかさ密度増加率は0.25g/m3・Paであった。
【0043】
第3実験試料は所定環境において第2実験試料と異なる保管時間で保管した後の既製品のパーライト精石である。第3実験試料のパーライト精石を実験温度にて高温発泡させた結果、かさ密度が0.05g/cm3となった。なお、この第3実験試料のパーライト精石を測定した結果、酸化ナトリウムの酸化物換算の重量比(%)は2.77であり、酸化カリウムの酸化物換算の重量比(%)は4.8であり、酸化カルシウムの酸化物換算の重量比(%)は0.1であった(成分については発泡後に測定しても同じ)。
【0044】
このような第3実験試料を発泡させた第3実験例において、0kPaから102.8kPaに加圧したときに相当する荷重を付与したときのかさ密度増加率は0.23g/m3・Paであった。また、0kPaから201.2kPaに加圧したときに相当する荷重を付与したときのかさ密度増加率は0.25g/m3・Paであった。
【0045】
第4実験試料は既製品のパーライト精石をH2Oにて高圧処理したものである。第4実験試料のパーライト精石を実験温度にて高温発泡させた結果、かさ密度が0.05g/cm3となった。なお、この第4実験試料のパーライト精石を測定した結果、酸化ナトリウムの酸化物換算の重量比(%)は2.77であり、酸化カリウムの酸化物換算の重量比(%)は4.8であり、酸化カルシウムの酸化物換算の重量比(%)は0.1であった(成分については発泡後に測定しても同じ)。すなわち、H2Oの高圧処理ではR2O類及びRO類の成分に対して変化させるものではなかった。
【0046】
このような第4実験試料を発泡させた第4実験例において、0kPaから102.8kPaに加圧したときに相当する荷重を付与したときのかさ密度増加率は0.22g/m3・Paであった。また、0kPaから201.2kPaに加圧したときに相当する荷重を付与したときのかさ密度増加率は0.24g/m3・Paであった。
【0047】
第5実験試料は既製品のパーライト精石をH2Oにて高圧処理すると共に、酸化カルシウムの酸化物換算の重量比(%)が0.75となるように付加処理を行ったものである。第5実験試料のパーライト精石を実験温度にて高温発泡させた結果、かさ密度が0.05g/cm3となった。なお、この第5実験試料のパーライト精石を測定した結果、酸化ナトリウムの酸化物換算の重量比(%)は2.77であり、酸化カリウムの酸化物換算の重量比(%)は4.8であり、酸化カルシウムの酸化物換算の重量比(%)は0.75であった(成分については発泡後に測定しても同じ)。
【0048】
このような第5実験試料を発泡させた第5実験例において、0kPaから102.8kPaに加圧したときに相当する荷重を付与したときのかさ密度増加率は0.17g/m3・Paであった。また、0kPaから201.2kPaに加圧したときに相当する荷重を付与したときのかさ密度増加率は0.17g/m3・Paであった。
【0049】
第6実験試料は既製品のパーライト精石をH2Oにて高圧処理すると共に、酸化カルシウムの酸化物換算の重量比(%)が1.5となるように付加処理を行ったものである。第6実験試料のパーライト精石を実験温度にて高温発泡させた結果、かさ密度が0.05g/cm3となった。なお、この第6実験試料のパーライト精石を測定した結果、酸化ナトリウムの酸化物換算の重量比(%)は2.77であり、酸化カリウムの酸化物換算の重量比(%)は4.8であり、酸化カルシウムの酸化物換算の重量比(%)は1.5であった(成分については発泡後に測定しても同じ)。
【0050】
このような第6実験試料を発泡させた第6実験例において、0kPaから102.8kPaに加圧したときに相当する荷重を付与したときのかさ密度増加率は0.12g/m3・Paであった。また、0kPaから201.2kPaに加圧したときに相当する荷重を付与したときのかさ密度増加率は0.16g/m3・Paであった。
【0051】
第7実験試料は既製品のパーライト精石に対して、酸化カルシウムの酸化物換算の重量比(%)が1.5となるように付加処理を行ったものである。第7実験試料のパーライト精石を実験温度にて高温発泡させた結果、かさ密度が0.05g/cm3となった。なお、この第7実験試料のパーライト精石を測定した結果、酸化ナトリウムの酸化物換算の重量比(%)は2.77であり、酸化カリウムの酸化物換算の重量比(%)は4.8であり、酸化カルシウムの酸化物換算の重量比(%)は1.5であった(成分については発泡後に測定しても同じ)。
【0052】
このような第7実験試料を発泡させた第7実験例において、0kPaから102.8kPaに加圧したときに相当する荷重を付与したときのかさ密度増加率は0.19g/m3・Paであった。また、0kPaから201.2kPaに加圧したときに相当する荷重を付与したときのかさ密度増加率は0.27g/m3・Paであった。
【0053】
図4に示す第8実験試料は既製品のパーライト精石に対して、酸化カルシウムの酸化物換算の重量比(%)が0.75となるように付加処理を行ったものである。第8実験試料のパーライト精石を実験温度にて高温発泡させた結果、かさ密度が0.06g/cm
3となった。なお、この第8実験試料のパーライト精石を測定した結果、酸化ナトリウムの酸化物換算の重量比(%)は2.77であり、酸化カリウムの酸化物換算の重量比(%)は4.8であり、酸化カルシウムの酸化物換算の重量比(%)は0.75であった(成分については発泡後に測定しても同じ)。
【0054】
このような第8実験試料を発泡させた第8実験例において、0kPaから102.8kPaに加圧したときに相当する荷重を付与したときのかさ密度増加率は0.20g/m3・Paであった。また、0kPaから201.2kPaに加圧したときに相当する荷重を付与したときのかさ密度増加率は0.20g/m3・Paであった。
【0055】
第9実験試料は既製品のパーライト精石に対して、酸化カルシウムの酸化物換算の重量比(%)が1.5となるように付加処理を行ったものである。第9実験試料のパーライト精石を実験温度にて高温発泡させた結果、かさ密度が0.05g/cm3となった。なお、この第9実験試料のパーライト精石を測定した結果、酸化ナトリウムの酸化物換算の重量比(%)は2.77であり、酸化カリウムの酸化物換算の重量比(%)は4.8であり、酸化カルシウムの酸化物換算の重量比(%)は1.5であった(成分については発泡後に測定しても同じ)。
【0056】
このような第9実験試料を発泡させた第9実験例において、0kPaから102.8kPaに加圧したときに相当する荷重を付与したときのかさ密度増加率は0.17g/m3・Paであった。また、0kPaから201.2kPaに加圧したときに相当する荷重を付与したときのかさ密度増加率は0.16g/m3・Paであった。
【0057】
第10実験試料は既製品のパーライト精石に対して、酸化カルシウムの酸化物換算の重量比(%)が2.25となるように付加処理を行ったものである。第10実験試料のパーライト精石を実験温度にて高温発泡させた結果、かさ密度が0.06g/cm3となった。なお、この第10実験試料のパーライト精石を測定した結果、酸化ナトリウムの酸化物換算の重量比(%)は2.77であり、酸化カリウムの酸化物換算の重量比(%)は4.8であり、酸化カルシウムの酸化物換算の重量比(%)は2.25であった(成分については発泡後に測定しても同じ)。
【0058】
このような第10実験試料を発泡させた第10実験例において、0kPaから102.8kPaに加圧したときに相当する荷重を付与したときのかさ密度増加率は0.13g/m3・Paであった。また、0kPaから201.2kPaに加圧したときに相当する荷重を付与したときのかさ密度増加率は0.12g/m3・Paであった。
【0059】
第11実験試料は既製品のパーライト精石に対して、脱アルカリ処理(弱)を行ったものである。第11実験試料のパーライト精石を実験温度にて高温発泡させた結果、かさ密度が0.04g/cm3となった。なお、この第11実験試料のパーライト精石を測定した結果、酸化ナトリウムの酸化物換算の重量比(%)は2.29であり、酸化カリウムの酸化物換算の重量比(%)は4.8であり、酸化カルシウムの酸化物換算の重量比(%)は0.1であった(成分については発泡後に測定しても同じ)。
【0060】
このような第11実験試料を発泡させた第11実験例において、0kPaから102.8kPaに加圧したときに相当する荷重を付与したときのかさ密度増加率は0.07g/m3・Paであった。また、0kPaから201.2kPaに加圧したときに相当する荷重を付与したときのかさ密度増加率は0.14g/m3・Paであった。
【0061】
第12実験試料は既製品のパーライト精石に対して、脱アルカリ処理(弱)を行うと共に、酸化カルシウムの酸化物換算の重量比(%)が3となるように付加処理を行ったものである。第12実験試料のパーライト精石を実験温度にて高温発泡させた結果、かさ密度が0.05g/cm3となった。なお、この第12実験試料のパーライト精石を測定した結果、酸化ナトリウムの酸化物換算の重量比(%)は2.29であり、酸化カリウムの酸化物換算の重量比(%)は4.8であり、酸化カルシウムの酸化物換算の重量比(%)は3であった(成分については発泡後に測定しても同じ)。
【0062】
このような第12実験試料を発泡させた第12実験例において、0kPaから102.8kPaに加圧したときに相当する荷重を付与したときのかさ密度増加率は0.09g/m3・Paであった。また、0kPaから201.2kPaに加圧したときに相当する荷重を付与したときのかさ密度増加率は0.09g/m3・Paであった。
【0063】
第13実験試料は既製品のパーライト精石に対して、脱アルカリ処理(弱)を行うと共に、酸化カルシウムの酸化物換算の重量比(%)が1となるように付加処理を行ったものである。第13実験試料のパーライト精石を実験温度にて高温発泡させた結果、かさ密度が0.06g/cm3となった。なお、この第13実験試料のパーライト精石を測定した結果、酸化ナトリウムの酸化物換算の重量比(%)は2.29であり、酸化カリウムの酸化物換算の重量比(%)は4.8であり、酸化カルシウムの酸化物換算の重量比(%)は1であった(成分については発泡後に測定しても同じ)。
【0064】
このような第13実験試料を発泡させた第13実験例において、0kPaから102.8kPaに加圧したときに相当する荷重を付与したときのかさ密度増加率は0.13g/m3・Paであった。また、0kPaから201.2kPaに加圧したときに相当する荷重を付与したときのかさ密度増加率は0.11g/m3・Paであった。
【0065】
第14実験試料は既製品のパーライト精石に対して、脱アルカリ処理(弱)を行うと共に、酸化カルシウムの酸化物換算の重量比(%)が1.5となるように付加処理を行ったものである。第14実験試料のパーライト精石を実験温度にて高温発泡させた結果、かさ密度が0.06g/cm3となった。なお、この第14実験試料のパーライト精石を測定した結果、酸化ナトリウムの酸化物換算の重量比(%)は2.29であり、酸化カリウムの酸化物換算の重量比(%)は4.8であり、酸化カルシウムの酸化物換算の重量比(%)は1.5であった(成分については発泡後に測定しても同じ)。
【0066】
このような第14実験試料を発泡させた第14実験例において、0kPaから102.8kPaに加圧したときに相当する荷重を付与したときのかさ密度増加率は0.14g/m3・Paであった。また、0kPaから201.2kPaに加圧したときに相当する荷重を付与したときのかさ密度増加率は0.10g/m3・Paであった。
【0067】
図5に示す第15実験試料は既製品のパーライト精石に対して、脱アルカリ処理(弱)を行うと共に、酸化カルシウムの酸化物換算の重量比(%)が2となるように付加処理を行ったものである。第15実験試料のパーライト精石を実験温度にて高温発泡させた結果、かさ密度が0.07g/cm
3となった。なお、この第15実験試料のパーライト精石を測定した結果、酸化ナトリウムの酸化物換算の重量比(%)は2.29であり、酸化カリウムの酸化物換算の重量比(%)は4.8であり、酸化カルシウムの酸化物換算の重量比(%)は2であった(成分については発泡後に測定しても同じ)。
【0068】
このような第15実験試料を発泡させた第15実験例において、0kPaから102.8kPaに加圧したときに相当する荷重を付与したときのかさ密度増加率は0.10g/m3・Paであった。また、0kPaから201.2kPaに加圧したときに相当する荷重を付与したときのかさ密度増加率は0.12g/m3・Paであった。
【0069】
第16実験試料は既製品のパーライト精石に対して、脱アルカリ処理(弱)を行うと共に、酸化カルシウムの酸化物換算の重量比(%)が3となるように付加処理を行ったものである。第16実験試料のパーライト精石を実験温度にて高温発泡させた結果、かさ密度が0.07g/cm3となった。なお、この第16実験試料のパーライト精石を測定した結果、酸化ナトリウムの酸化物換算の重量比(%)は2.29であり、酸化カリウムの酸化物換算の重量比(%)は4.8であり、酸化カルシウムの酸化物換算の重量比(%)は3であった(成分については発泡後に測定しても同じ)。
【0070】
このような第16実験試料を発泡させた第16実験例において、0kPaから102.8kPaに加圧したときに相当する荷重を付与したときのかさ密度増加率は0.11g/m3・Paであった。また、0kPaから201.2kPaに加圧したときに相当する荷重を付与したときのかさ密度増加率は0.10g/m3・Paであった。
【0071】
第17実験試料は既製品のパーライト精石に対して、脱アルカリ処理(弱)を行うと共に、酸化カルシウムの酸化物換算の重量比(%)が1となるように付加処理を行ったものである。第17実験試料のパーライト精石を実験温度にて高温発泡させた結果、かさ密度が0.06g/cm3となった。なお、この第17実験試料のパーライト精石を測定した結果、酸化ナトリウムの酸化物換算の重量比(%)は2.29であり、酸化カリウムの酸化物換算の重量比(%)は4.8であり、酸化カルシウムの酸化物換算の重量比(%)は1であった(成分については発泡後に測定しても同じ)。
【0072】
このような第17実験試料を発泡させた第17実験例において、0kPaから102.8kPaに加圧したときに相当する荷重を付与したときのかさ密度増加率は0.17g/m3・Paであった。また、0kPaから201.2kPaに加圧したときに相当する荷重を付与したときのかさ密度増加率は0.20g/m3・Paであった。
【0073】
第18実験試料は既製品のパーライト精石に対して、脱アルカリ処理(弱)を行うと共に、酸化カルシウムの酸化物換算の重量比(%)が1.5となるように付加処理を行ったものである。第18実験試料のパーライト精石を実験温度にて高温発泡させた結果、かさ密度が0.06g/cm3となった。なお、この第18実験試料のパーライト精石を測定した結果、酸化ナトリウムの酸化物換算の重量比(%)は2.29であり、酸化カリウムの酸化物換算の重量比(%)は4.8であり、酸化カルシウムの酸化物換算の重量比(%)は1.5であった(成分については発泡後に測定しても同じ)。
【0074】
このような第18実験試料を発泡させた第18実験例において、0kPaから102.8kPaに加圧したときに相当する荷重を付与したときのかさ密度増加率は0.10g/m3・Paであった。また、0kPaから201.2kPaに加圧したときに相当する荷重を付与したときのかさ密度増加率は0.12g/m3・Paであった。
【0075】
第19実験試料は既製品のパーライト精石に対して、脱アルカリ処理(弱)を行うと共に、酸化カルシウムの酸化物換算の重量比(%)が2となるように付加処理を行ったものである。第19実験試料のパーライト精石を実験温度にて高温発泡させた結果、かさ密度が0.06g/cm3となった。なお、この第19実験試料のパーライト精石を測定した結果、酸化ナトリウムの酸化物換算の重量比(%)は2.29であり、酸化カリウムの酸化物換算の重量比(%)は4.8であり、酸化カルシウムの酸化物換算の重量比(%)は2であった(成分については発泡後に測定しても同じ)。
【0076】
このような第19実験試料を発泡させた第19実験例において、0kPaから102.8kPaに加圧したときに相当する荷重を付与したときのかさ密度増加率は0.15g/m3・Paであった。また、0kPaから201.2kPaに加圧したときに相当する荷重を付与したときのかさ密度増加率は0.16g/m3・Paであった。
【0077】
第20実験試料は既製品のパーライト精石に対して、脱アルカリ処理(弱)を行うと共に、酸化カルシウムの酸化物換算の重量比(%)が3となるように付加処理を行ったものである。第20実験試料のパーライト精石を実験温度にて高温発泡させた結果、かさ密度が0.06g/cm3となった。なお、この第20実験試料のパーライト精石を測定した結果、酸化ナトリウムの酸化物換算の重量比(%)は2.29であり、酸化カリウムの酸化物換算の重量比(%)は4.8であり、酸化カルシウムの酸化物換算の重量比(%)は3であった(成分については発泡後に測定しても同じ)。
【0078】
このような第20実験試料を発泡させた第20実験例において、0kPaから102.8kPaに加圧したときに相当する荷重を付与したときのかさ密度増加率は0.09g/m3・Paであった。また、0kPaから201.2kPaに加圧したときに相当する荷重を付与したときのかさ密度増加率は0.11g/m3・Paであった。
【0079】
第21実験試料は既製品のパーライト精石に対して、脱アルカリ処理(中)を行ったものである。第21実験試料のパーライト精石を実験温度にて高温発泡させた結果、かさ密度が0.05g/cm3となった。なお、この第21実験試料のパーライト精石を測定した結果、酸化ナトリウムの酸化物換算の重量比(%)は1.5であり、酸化カリウムの酸化物換算の重量比(%)は4.28であり、酸化カルシウムの酸化物換算の重量比(%)は0.1であった(成分については発泡後に測定しても同じ)。
【0080】
このような第21実験試料を発泡させた第21実験例において、0kPaから102.8kPaに加圧したときに相当する荷重を付与したときのかさ密度増加率は0.18g/m3・Paであった。また、0kPaから201.2kPaに加圧したときに相当する荷重を付与したときのかさ密度増加率は0.17g/m3・Paであった。
【0081】
図6に示す第22実験試料は既製品のパーライト精石に対して、脱アルカリ処理(中)を行うと共に、酸化カルシウムの酸化物換算の重量比(%)が3となるように付加処理を行ったものである。第22実験試料のパーライト精石を実験温度にて高温発泡させた結果、かさ密度が0.05g/cm
3となった。なお、この第22実験試料のパーライト精石を測定した結果、酸化ナトリウムの酸化物換算の重量比(%)は1.5であり、酸化カリウムの酸化物換算の重量比(%)は4.28であり、酸化カルシウムの酸化物換算の重量比(%)は3であった(成分については発泡後に測定しても同じ)。
【0082】
このような第22実験試料を発泡させた第22実験例において、0kPaから102.8kPaに加圧したときに相当する荷重を付与したときのかさ密度増加率は0.07g/m3・Paであった。また、0kPaから201.2kPaに加圧したときに相当する荷重を付与したときのかさ密度増加率は0.13g/m3・Paであった。
【0083】
第23実験試料は既製品のパーライト精石に対して、脱アルカリ処理(高)を行ったものである。第23実験試料のパーライト精石を実験温度にて高温発泡させた結果、かさ密度が0.05g/cm3となった。なお、この第23実験試料のパーライト精石を測定した結果、酸化ナトリウムの酸化物換算の重量比(%)は0.21であり、酸化カリウムの酸化物換算の重量比(%)は3.93であり、酸化カルシウムの酸化物換算の重量比(%)は0.1であった(成分については発泡後に測定しても同じ)。
【0084】
このような第23実験試料を発泡させた第23実験例において、0kPaから102.8kPaに加圧したときに相当する荷重を付与したときのかさ密度増加率は0.10g/m3・Paであった。また、0kPaから201.2kPaに加圧したときに相当する荷重を付与したときのかさ密度増加率は0.13g/m3・Paであった。
【0085】
第24実験試料は既製品のパーライト精石に対して、脱アルカリ処理(高)を行うと共に、酸化カルシウムの酸化物換算の重量比(%)が3となるように付加処理を行ったものである。第24実験試料のパーライト精石を実験温度にて高温発泡させた結果、かさ密度が0.05g/cm3となった。なお、この第24実験試料のパーライト精石を測定した結果、酸化ナトリウムの酸化物換算の重量比(%)は0.21であり、酸化カリウムの酸化物換算の重量比(%)は3.93であり、酸化カルシウムの酸化物換算の重量比(%)は3であった(成分については発泡後に測定しても同じ)。
【0086】
このような第24実験試料を発泡させた第24実験例において、0kPaから102.8kPaに加圧したときに相当する荷重を付与したときのかさ密度増加率は0.12/m3・Paであった。また、0kPaから201.2kPaに加圧したときに相当する荷重を付与したときのかさ密度増加率は0.18g/m3・Paであった。
【0087】
第25実験試料は既製品のパーライト精石に対して、脱アルカリ処理(高)を行うと共に、酸化カルシウムの酸化物換算の重量比(%)が0.6となるように付加処理を行ったものである。第25実験試料のパーライト精石を実験温度にて高温発泡させた結果、かさ密度が0.07g/cm3となった。なお、この第25実験試料のパーライト精石を測定した結果、酸化ナトリウムの酸化物換算の重量比(%)は0.21であり、酸化カリウムの酸化物換算の重量比(%)は3.93であり、酸化カルシウムの酸化物換算の重量比(%)は0.6であった(成分については発泡後に測定しても同じ)。
【0088】
このような第25実験試料を発泡させた第25実験例において、0kPaから102.8kPaに加圧したときに相当する荷重を付与したときのかさ密度増加率は0.10/m3・Paであった。また、0kPaから201.2kPaに加圧したときに相当する荷重を付与したときのかさ密度増加率は0.11g/m3・Paであった。
【0089】
第26実験試料は既製品のパーライト精石に対して、脱アルカリ処理(高)を行うと共に、酸化カルシウムの酸化物換算の重量比(%)が0.85となるように付加処理を行ったものである。第26実験試料のパーライト精石を実験温度にて高温発泡させた結果、かさ密度が0.06g/cm3となった。なお、この第26実験試料のパーライト精石を測定した結果、酸化ナトリウムの酸化物換算の重量比(%)は0.21であり、酸化カリウムの酸化物換算の重量比(%)は3.93であり、酸化カルシウムの酸化物換算の重量比(%)は0.85であった(成分については発泡後に測定しても同じ)。
【0090】
このような第26実験試料を発泡させた第26実験例において、0kPaから102.8kPaに加圧したときに相当する荷重を付与したときのかさ密度増加率は0.11/m3・Paであった。また、0kPaから201.2kPaに加圧したときに相当する荷重を付与したときのかさ密度増加率は0.16g/m3・Paであった。
【0091】
第27実験試料は既製品のパーライト精石に対して、脱アルカリ処理(高)を行うと共に、酸化カルシウムの酸化物換算の重量比(%)が1.15となるように付加処理を行ったものである。第27実験試料のパーライト精石を実験温度にて高温発泡させた結果、かさ密度が0.06g/cm3となった。なお、この第26実験試料のパーライト精石を測定した結果、酸化ナトリウムの酸化物換算の重量比(%)は0.21であり、酸化カリウムの酸化物換算の重量比(%)は3.93であり、酸化カルシウムの酸化物換算の重量比(%)は1.15であった(成分については発泡後に測定しても同じ)。
【0092】
このような第27実験試料を発泡させた第27実験例において、0kPaから102.8kPaに加圧したときに相当する荷重を付与したときのかさ密度増加率は0.06/m3・Paであった。また、0kPaから201.2kPaに加圧したときに相当する荷重を付与したときのかさ密度増加率は0.11g/m3・Paであった。
【0093】
第28実験試料は既製品のパーライト精石に対して、脱アルカリ処理(高)を行うと共に、酸化カルシウムの酸化物換算の重量比(%)が1.75となるように付加処理を行ったものである。第28実験試料のパーライト精石を実験温度にて高温発泡させた結果、かさ密度が0.06g/cm3となった。なお、この第26実験試料のパーライト精石を測定した結果、酸化ナトリウムの酸化物換算の重量比(%)は0.21であり、酸化カリウムの酸化物換算の重量比(%)は3.93であり、酸化カルシウムの酸化物換算の重量比(%)は1.75であった(成分については発泡後に測定しても同じ)。
【0094】
このような第28実験試料を発泡させた第28実験例において、0kPaから102.8kPaに加圧したときに相当する荷重を付与したときのかさ密度増加率は0.06/m3・Paであった。また、0kPaから201.2kPaに加圧したときに相当する荷重を付与したときのかさ密度増加率は0.13g/m3・Paであった。
【0095】
図7は、0kPaから102.8kPaに加圧したときのかさ密度増加率と、R
2O類の酸化物換算の重量比(%)からRO類の酸化物換算の重量比(%)の2.08倍を減算した値の絶対値との相関を示すグラフである。
図8は、0kPaから201.2kPaに加圧したときのかさ密度増加率と、R
2O類の酸化物換算の重量比(%)からRO類の酸化物換算の重量比(%)の2.68倍を減算した値の絶対値との相関を示すグラフである。
【0096】
以上のような28種の実験結果を鋭意検討した。この結果、0kPaから102.8kPaに加圧したときのかさ密度増加率を縦軸とした場合、横軸をR2O類の酸化物換算の重量比(%)(すなわち値A)からRO類の酸化物換算の重量比(%)(すなわち値B)の2.08倍を減算した値(すなわち値C)の絶対値とすれば、相関が高くなることがわかった。具体的にはかさ密度増加率をyとし、値Cをxとすると、y=0.0261x+0.0446と近似でき、相関係数は0.6859となり強い相関があることがわかった。
【0097】
なお、値Cについては、第1実験例から第28実験例の順に、7.36、7.36、7.36、7.36、6.01、4.45、4.45、6.01、4.45、2.89、6.88、0.85、5.01、3.97、2.93、0.85、5.01、3.97、2.93、0.85、5.57、0.46、3.93、2.10、2.89、2.37、1.75及び0.50となった。
【0098】
同様に、28種の実験結果を鋭意検討した結果、0kPaから201.2kPaに加圧したときのかさ密度増加率を縦軸とした場合、横軸をR2O類の酸化物換算の重量比(%)(すなわち値A)からRO類の酸化物換算の重量比(%)(すなわち値B)の2.68倍を減算した値(すなわち値D)の絶対値とすれば、相関が高くなることがわかった。具体的にはかさ密度増加率をyとし、値Dをxとすると、y=0.0234x+0.074と近似でき、相関係数は0.7391となり極めて強い相関があることがわかった。
【0099】
なお、値Dについては、第1実験例から第28実験例の順に、7.30、7.30、7.30、7.30、5.56、3.55、3.55、5.56、3.55、1.54、6.82、0.95、4.41、3.07、1.73、0.95、4.41、3.07、1.73、0.95、5.51、2.26、3.87、3.90、2.53、1.86、1.06及び0.55となった。
【0100】
以上のように、上記相関があることからすると、内部空間が空気で満たされる断熱体においては、値Cを制御することで圧縮強度を確保し易くなり、内部空間が真空状態となる断熱体においては、値Dを制御することで圧縮強度を確保し易くなることがわかった。
【0101】
ここで、かさ密度が0.1g/cm3の発泡ガラス体を有した断熱体を基準として、例えば0.7気圧程度の押圧に対する圧縮率が10%以内(すなわちかさ密度増加量が0.01g・cm3以下)であることを目標値とする。この場合、内部空間が空気で満たされる断熱体においては、単位圧力あたりのかさ密度増加率が0.143g/m3・Pa以下(合格ライン)であることが望まれる。内部空間が真空状態とされる断熱体においては、更に大気圧が加わることを考慮して、単位圧力あたりのかさ密度増加率が0.124g/m3・Pa以下(合格ライン)であることが望まれる。
【0102】
また、
図7及び
図8に示す近似直線に対するかさ密度増加率のばらつきが正規分布に従うものであるとすると標準正規分布表に基づけば、値Cを5.27以下とすれば約20%の製品(内部空間が空気で満たされる断熱体)が合格ラインを満たし、3.77以下とすれば約50%の製品が合格ラインを満たし、2.28以下とすれば約80%の製品が合格ラインを満たすことがわかった。同様に、値Dを3.23以下とすれば約20%の製品(内部空間が真空状態となる断熱体)が合格ラインを満たし、2.14以下とすれば約50%の製品が合格ラインを満たし、1.04以下とすれば約80%の製品が合格ラインを満たすことがわかった。
【0103】
以上より、値C及び値Dの制御によって、従来では得られなかった軽量(かさ密度0.2g/cm3以下)で、圧縮強度が高い(上記合格ラインを満たす)発泡ガラス体を得ることができることがわかった。
【0104】
なお、実験例のパーライト精石は、実験温度で加熱発泡されて、もとのかさ密度が大凡0.04g/cm3以上0.07g/cm3以下の範囲に収まっている。このようなパーライト精石に関しては、もとのかさ密度が0.2g/cm3を超えない範囲で、実験温度よりも低い温度で発泡されて製造されてもよい。ここで、発泡ガラス体は、かさ密度が増加するのに従って圧縮強度が高まる傾向にある。すなわち、値C及び値Dを満たす場合において、実験温度よりも低い温度で発泡させた場合には合格品率が増す結果となるためである。
【0105】
さらに、このような28種の実験例に対して耐熱試験も行った。耐熱試験については、SUS容器にパーライト粉末を1気圧状態で充填し、電気炉にてパーライト粉末を900℃で2時間加熱した後に徐冷して取出し、次いで950℃で2時間加熱した後に徐冷して取出し、最後に1000℃で2時間加熱した後に徐冷して取出し、加熱前と1000℃加熱後との体積を測定した。測定の結果、5%以上の収縮が見られたものをBadとし、5%以上の収縮が見られなかったものをGoodとした。
【0106】
さらに、上記28種の実験試料についてR2O類の酸化物換算の重量比(%)(値A)とRO類の酸化物換算の重量比(%)(値B)との加算値は、第1実験例から第28実験例の順に、7.67、7.67、7.67、7.67、8.32、9.07、9.07、8.32、9.07、9.82、7.19、10.09、8.09、8.59、9.09、10.09、8.09、8.59、9.09、10.09、5.58、8.78、4.24、7.14、4.74、4.99、5.29及び5.89となった。
【0107】
以上より、耐熱試験においてGoodとなった第21,23,25~28実験例については、値A+値Bが5.58、4.24,4.74,4.99、5.29、5.89となった。すなわち、値A+値Bを5.89以下とすれば、より高い耐熱性を満たすことがわかった。
【0108】
なお、図示を省略したが、Goodを示すなかで最も値A+値Bの値が高い第28実験例であっても収縮は5%とはならず、収縮5%までは或る程度の余裕があるものであった。このため、計算上では7%超までは収縮5%に収まることが見込まれており、少なくとも値A+値Bの値が7以下であれば、収縮5%に収まることもわかった。
【0109】
加えて、実験例の記載を省略するが、硅砂、火山灰、廃ガラス粉であっても同様に値Cと値Dとを制御すれば、より軽量でより圧縮強度が高い発泡ガラス体を得られることがわかった。特に、化学改質をしない未処理状態の硅砂、火山灰、及び廃ガラス粉については、値Cが5.27を超え値Dが3.23を超えており、より軽量でより圧縮強度が高い発泡ガラス体を得ることができず、若しくは極めて偶発的にしか得ることができなかった。しかし、値Cを5.27以下、より好ましくは3.77以下、さらに好ましくは2.28以下とし、値Dを3.23以下、より好ましくは2.14以下、さらに好ましくは1.04以下とすれば、所定以上の合格品を製造できることがわかった。
【0110】
このようにして、本実施形態に係る発泡ガラス体10によれば、大気圧下においてかさ密度が0.2g/cm3以下の発泡ガラス体10において値Cの絶対値を5.27以下とすることにより、外皮内に発泡ガラス体を収めた断熱体1において、例えば人が寄り掛かったり風圧を受けたりしたときの収縮率を目標値内に収め易くでき、より軽量でより高い圧縮強度を有した発泡ガラス体10を偶発的でなく(或る程度以上の確率で)得ることができる。
【0111】
また、値Cの絶対値を3.77以下とすることにより、より軽量でより高い圧縮強度を有した発泡ガラス体10を、より高い確率で得ることができる。また、値Cの絶対値を2.28以下とすることにより、より軽量でより高い圧縮強度を有した発泡ガラス体10を、非常に高い確率で得ることができる。
【0112】
また、本実施形態に係る発泡ガラス体10によれば、大気圧下においてかさ密度が0.2g/cm3以下の発泡ガラス体10において値Dの絶対値を3.23以下とすることにより、外皮内を真空状態にして発泡ガラス体10を収めた断熱体1において、例えば人が寄り掛かったり風圧を受けたりしたときの収縮率を目標値内に収め易くでき、より軽量でより高い圧縮強度を有した発泡ガラス体10を偶発的でなく(或る程度以上の確率で)得ることができる。
【0113】
また、値Dの絶対値を2.14以下とすることにより、より軽量でより高い圧縮強度を有した発泡ガラス体10を、より高い確率で得ることができる。また、値Dの絶対値を1.04以下とすることにより、より軽量でより高い圧縮強度を有した発泡ガラス体10を、非常に高い確率で得ることができる。
【0114】
さらに、値Aと値Bとの合計が7%以下とすることで、R2O類とRO類との酸化物換算の重量比(%)を抑えることにより、発泡ガラス体10の融点を高めることとなり、900℃の温度で6時間以上曝されたとしても収縮を5%以内とでき、耐熱性を確保することができる。
【0115】
また、大気圧下においてかさ密度が0.2g/cm3以下とされた発泡ガラス体10において、外圧を0kPaから102.8kPaまで変化させたときのかさ密度の増加が0.143g/m3・Pa以下であるため、外皮内に空気を有する断熱体1において、例えば人が寄り掛かったり風圧を受けたりしたときに収縮が目標値以内となっており、より軽量でより高い圧縮強度を有した発泡ガラス体10を偶発的でなく(或る程度以上の確率で)得ることができる。
【0116】
また、大気圧下においてかさ密度が0.2g/cm3以下とされた発泡ガラス体10において、外圧を0kPaから201.2kPaまで変化させたときのかさ密度の増加が0.124g/m3・Pa以下であるため、外皮内を真空状態にして発泡ガラス体10を収めた断熱体1において、例えば人が寄り掛かったり風圧を受けたりしたときに収縮が目標値以内となっており、より軽量でより高い圧縮強度を有した発泡ガラス体10とすることができる。
【0117】
また、本実施形態に係る断熱体1によれば、上記の発泡ガラス体10を収納するため、圧縮強度の向上を図った断熱体1を提供することができる。
【0118】
さらに、本実施形態に係る発泡ガラス体10の製造方法によれば、大気圧が加えられた状態においてかさ密度が0.2g/cm3以下となるように発泡温度を調整すると共に、珪酸ガラス材料又は発泡ガラス体10に対して脱アルカリ処理を行い又はRO類を付加し、この結果、値Cの絶対値を5.27以下とするため、値Cが条件に満たない珪酸ガラス材料又は発泡ガラス体に対する化学改質によって、中空部Hに空気を有する断熱体1に使用した場合に値Cの絶対値を5.27以下として収縮を目標値以内に収めることができる。従って、より軽量でより高い圧縮強度を有した発泡ガラス体10を製造することができる。
【0119】
加えて、本実施形態に係る発泡ガラス体10の製造方法によれば、大気圧が加えられた状態においてかさ密度が0.2g/cm3以下となるように発泡温度を調整すると共に、珪酸ガラス材料又は発泡ガラス体に対して脱アルカリ処理を行い又はRO類を付加し、この結果、値Dの絶対値を3.23以下とするため、値Dが条件に満たない珪酸ガラス材料又は発泡ガラス体に対する化学改質によって、中空部Hを空気引きした断熱体1に使用した場合に値Dの絶対値を3.23以下として収縮を目標値以内に収めることができる。従って、より軽量でより高い圧縮強度を有した発泡ガラス体10を製造することができる。
【0120】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、変更を加えてもよいし、可能な範囲で適宜公知又は周知の技術を組み合わせてもよい。
【0121】
また、本実施形態において脱アルカリ処理は高温保持の工程を含んでいることから、この高温保持によって発泡を行うようにしてもよい。脱アルカリ処理は、高温の乾式のブルーム処理により行われてもよい。また、脱アルカリ処理は、加圧環境下で液体の希硫酸、希硝酸で処理を行い、水分量を維持しながら処理してもよい。
【符号の説明】
【0122】
1 :断熱体
10 :発泡ガラス体
20 :中空部材
21,22 :外皮
23 :封止部材
H :中空部