(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022097804
(43)【公開日】2022-07-01
(54)【発明の名称】測定システム
(51)【国際特許分類】
H01L 21/66 20060101AFI20220624BHJP
G01R 31/26 20200101ALI20220624BHJP
【FI】
H01L21/66 B
H01L21/66 X
G01R31/26 J
G01R31/26 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020210963
(22)【出願日】2020-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】000153018
【氏名又は名称】株式会社日本マイクロニクス
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100070024
【弁理士】
【氏名又は名称】松永 宣行
(72)【発明者】
【氏名】奥田 通孝
(72)【発明者】
【氏名】竹谷 敏永
(72)【発明者】
【氏名】成田 寿男
【テーマコード(参考)】
2G003
4M106
【Fターム(参考)】
2G003AA06
2G003AB03
2G003AE01
2G003AE06
2G003AF06
2G003AG03
2G003AH01
2G003AH04
4M106AA01
4M106BA01
4M106CA17
4M106DD08
4M106DH12
(57)【要約】
【課題】半導体基板に形成された光半導体素子の測定時間の増大を抑制できる測定システムを提供する。
【解決手段】測定システムは、複数の光半導体素子を駆動する駆動装置と、光半導体素子からの出射光をそれぞれ受光する複数の光接続装置を有するプローブユニットと、複数の光電変換器を有する処理装置とを備える。光接続装置と光電変換器は1対1に接続し、光接続装置が受光した出射光の少なくとも一部が光電変換器に入力する。光電変換器は、入力した出射光を電気信号に変換する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光半導体素子の特性を測定する測定システムであって、
複数の前記光半導体素子を駆動する駆動装置と、
複数の前記光半導体素子からの出射光をそれぞれ受光する複数の光接続装置を有するプローブユニットと、
複数の光電変換器を有する処理装置と
を備え、
前記光接続装置と前記光電変換器は1対1に接続し、前記光接続装置が受光した前記出射光の少なくとも一部が前記光電変換器に入力し、
前記光電変換器は入力した前記出射光を電気信号に変換する
ことを特徴とする測定システム。
【請求項2】
前記プローブユニットが複数の電気プローブを有し、
前記駆動装置が、前記電気プローブと1対1に対応する複数のドライバを有し、
前記ドライバが、前記電気プローブを介して前記光半導体素子に駆動電流を供給する
ことを特徴とする請求項1に記載の測定システム。
【請求項3】
前記処理装置が、
複数の前記光接続装置がそれぞれ受光した前記出射光のそれぞれを第1分岐光と第2分岐光に分岐する光分岐装置と、
前記第1分岐光を分光する分光モジュールと
を更に備え、
前記分光モジュールが、複数の前記光接続装置が受光した前記出射光の前記第1分岐光を1つずつ順に分光することを特徴とする請求項1又は2に記載の測定システム。
【請求項4】
前記光分岐装置が、複数の前記光接続装置と1対1に対応する複数の光カプラを有し、
前記光カプラが、前記出射光を前記第1分岐光と前記第2分岐光に分岐する
ことを特徴とする請求項3に記載の測定システム。
【請求項5】
前記第2分岐光が前記光電変換器に入力することを特徴とする請求項3又は4に記載の測定システム。
【請求項6】
前記光接続装置が、先端に前記出射光が入射する光プローブであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の測定システム。
【請求項7】
前記光接続装置が、内部に前記出射光が入射する積分球であることを特徴とする請求項1又は2に記載の測定システム。
【請求項8】
複数の前記プローブユニットを備え、
複数の前記プローブユニットのいずれかと前記駆動装置および前記光電変換器との接続を切り替えて、前記プローブユニットごとに前記出射光を処理する
ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の測定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光半導体素子の特性の測定に使用される測定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
シリコンフォトニクス技術を用いて、ウェハなどの半導体基板に光半導体素子が形成される。光半導体素子は、電気信号と光信号を入出力信号とする。半導体基板に形成されている光半導体素子の特性を測定するために、電気信号を伝搬させる電気プローブと光信号を伝搬させる光プローブとを有する測定システムが用いられる。例えば、導電性材料からなる電気プローブと、光ファイバや光ファイバと組み合わせたレンズなどからなる光プローブとを用いて、光半導体素子を測定する。
【0003】
例えば、半導体基板に形成された光半導体素子を、電気プローブから駆動電流を供給して駆動する。そして、駆動された光半導体素子からの出射光を光プローブにより受光する。この測定方法では、光半導体素子からの出射光を1つずつ測定装置に伝搬する測定システムが使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭62-31136号公報
【特許文献2】特開昭60-64443号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、半導体基板に形成された数千個から十数万個の光半導体素子のすべてを1つずつ測定することは、トータルの測定時間が長くなってしまうため困難である。また、半導体基板に形成されたすべての光半導体素子を測定できない場合、良品と不良品の判定が十分でなく、後工程における製品の歩留まりが低下する。
【0006】
上記問題点に鑑み、本発明は、半導体基板に形成された光半導体素子の測定時間を短縮できる測定システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る測定システムは、複数の光半導体素子を駆動する駆動装置と、光半導体素子からの出射光をそれぞれ受光する複数の光接続装置を有するプローブユニットと、複数の光電変換器を有する処理装置とを備える。光接続装置と光電変換器は1対1に接続し、光接続装置が受光した出射光の少なくとも一部が光電変換器に入力する。光電変換器は、入力した出射光を電気信号に変換する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、半導体基板に形成された光半導体素子の測定時間を短縮できる測定システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1の実施形態に係る測定システムの構成を示す模式図である。
【
図2】第1の実施形態に係る測定システムの駆動装置の構成例を示す模式図である。
【
図3】第1の実施形態に係る測定システムの光分岐装置の構成例を示す模式図である。
【
図4】第1の実施形態に係る測定システムの光電変換装置の構成例を示す模式図である。
【
図5】第1の実施形態に係る測定システムの構成の一部を示す模式図である。
【
図6】第1の実施形態に係る測定システムを用いた測定方法を説明するためのフローチャートである。
【
図7A】第1の実施形態に係る測定システムによる測定時間の例を示すグラフである。
【
図7B】第1の実施形態に係る測定システムによる測定時間の例を示す表である。
【
図8】第2の実施形態に係る測定システムの構成を示す模式図である。
【
図9】比較例の測定システムの構成を示す模式図である。
【
図10】実施形態に係る測定システムと比較例の測定システムの測定時間の比較を示すグラフである。
【
図11】実施形態に係る測定システムのユニット数と測定時間の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであることに留意すべきである。また、以下に示す実施形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、この発明の実施形態は、構成部品の構造、配置などを下記のものに特定するものでない。この発明の実施形態は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0011】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係る測定システム1を
図1に示す。測定システム1は、半導体基板2の主面に形成された光半導体素子200の特性を測定する。測定システム1は、光半導体素子200に対向して配置されたプローブユニット10と、光半導体素子200を駆動する駆動装置20と、光半導体素子200からの出射光を処理する処理装置30を備える。測定システム1は、半導体基板2をステージ55に搭載した状態で、光半導体素子200の特性を測定する。
【0012】
測定システム1は、制御装置40およびプローバコントローラ50を更に備える。プローバコントローラ50は、プローブユニット10やステージ55の位置を調整する。制御装置40は、測定システム1の動作全体を制御する。例えば、制御装置40からの制御信号に応答して、駆動装置20、処理装置30、プローバコントローラ50が動作する。また、制御装置40は、処理装置30により得られた光半導体素子200からの出射光のデータを処理し、光半導体素子200の特性を算出する機能も有する。制御装置40には、例えばパーソナルコンピュータ(PC)などを使用してもよい。
【0013】
後述するように、測定システム1では、光出力(IL)特性、順方向電圧Vf、逆方向電流Irなどの光電気特性を、複数の光半導体素子200について同時に測定する。また、測定システム1では、分光特性について光半導体素子200を1個ずつ測定する。以下において、複数の光半導体素子200について同時に行う測定を「パラレル測定」とも称する。また、光半導体素子200について1個ずつ順番に行う測定を「シリアル測定」とも称する。
【0014】
図1に示すように、プローブユニット10は、光プローブ11(1、1)~光プローブ11(m、n)を有する光プローブアレイ110を備える。以下では、光プローブ11(1、1)~光プローブ11(m、n)を「光プローブ11」とも称する。光プローブ11の先端は、光半導体素子200の光信号端子と光学的に接続する。測定システム1では、光プローブ11が、光半導体素子200からの出射光を受光する光接続装置として使用される。
【0015】
例えば、光プローブアレイ110は、半導体基板2の主面の面法線方向から見て(以下、「平面視」という。)、m×n本の光プローブ11の先端をm行n列のマトリクス状に配置した構成を有する。この場合、n芯の多芯プローブをm列配置して光プローブアレイ110を構成してもよい。
【0016】
また、プローブユニット10は、電気プローブアレイ120を備える。電気プローブアレイ120は、光プローブ11(1、1)~光プローブ11(m、n)にそれぞれ対応して配置された電気プローブ12(1、1)~電気プローブ12(m、n)を有する。以下において、電気プローブ12(1、1)~電気プローブ12(m、n)を「電気プローブ12」とも称する。電気プローブ12の先端は、光半導体素子200の電気信号端子と電気的に接続する。
【0017】
半導体基板2に形成された光半導体素子200の配置と、光プローブ11および電気プローブ12の配置とは対応する。例えば、m×n本の光プローブ11の先端をm行n列のマトリクス状に配置した場合、m×n本の電気プローブ12の先端がm行n列のマトリクス状に配置されるように、電気プローブアレイ120を構成する。
【0018】
そして、光半導体素子200の配置ピッチと、光プローブ11および電気プローブ12の配置ピッチとを一致させる。これにより、光プローブアレイ110と半導体基板2の位置合わせにより、m×n個の光半導体素子200と、m×n本の光プローブ11およびm×n本の電気プローブ12が同時に位置合わせされる。同一の光半導体素子200に接続する光プローブ11と電気プローブ12の組を、以下において「プローブセット」と称する。
【0019】
図1に示す測定システム1では、1個の光半導体素子200に対応する1つのプローブセットが、1本の光プローブ11と1本の電気プローブ12により構成されている。しかし、1つのプローブセットを構成する光プローブ11や電気プローブ12の本数は複数であってもよい。例えば、1個の光半導体素子200について、光半導体素子200に駆動電流を供給する電気プローブ12と、光半導体素子200の接地端子に接続するGND用の電気プローブ12を用いてもよい。このように、1個の光半導体素子200について配置する光プローブ11や電気プローブ12の本数は、光半導体素子200の仕様などに応じて任意に設定してよい。
【0020】
測定システム1による光半導体素子200の測定では、まず光半導体素子200とプローブユニット10の位置合わせを行う。光半導体素子200とプローブユニット10の位置合わせにより、光半導体素子200の光信号端子が光プローブ11と光学的に接続する。同時に、光半導体素子200の電気信号端子が電気プローブ12と電気的に接続する。
【0021】
光半導体素子200とプローブユニット10を位置合わせした状態で、駆動装置20は、電気プローブ12(1、1)~電気プローブ12(m、n)に、駆動電流I(1、1)~駆動電流I(m、n)を供給する。以下において、駆動電流I(1、1)~駆動電流I(m、n)を「駆動電流I」とも称する。駆動装置20から、駆動電流Iは電気配線Eを伝搬する。電気配線Eは、駆動電流Iがそれぞれ伝搬する複数の電気配線の組である。プローブユニット10と駆動装置20の間に配置した第1接続盤61を介して、駆動装置20から光半導体素子200に駆動電流Iが供給される。
【0022】
例えば、駆動装置20は、
図2に示すように、m×n本の電気プローブ12にそれぞれ接続するm×n個のドライバ21(1、1)~ドライバ21(m、n)を有する。ドライバ21(1、1)~ドライバ21(m、n)は、電気プローブ12(1、1)~電気プローブ12(m、n)と1対1に対応する。以下では、ドライバ21(1、1)~ドライバ21(m、n)を「ドライバ21」とも称する。駆動装置20は、電気プローブ12を介してドライバ21から光半導体素子200のそれぞれに駆動電流Iを供給する。
【0023】
測定システム1では、制御装置40が、駆動電流Iを光半導体素子200に供給するための制御信号を駆動装置20に出力する。制御信号を受信した駆動装置20のドライバ21は、それぞれのドライバ21が接続する光半導体素子200に駆動電流Iを供給する。例えば、制御装置40はシリアル制御信号を出力し、このシリアル制御信号がパラレル制御信号に変換されてドライバ21にそれぞれ送信される。
【0024】
電気プローブ12から供給された駆動電流Iにより、光半導体素子200が通電する。そして、通電した光半導体素子200からの出射光を、駆動電流Iを供給した電気プローブ12と共にプローブセットを構成する光プローブ11が受光する。
【0025】
パラレル測定では、m×n個の光半導体素子200について同時に通電する。このとき、m×n個の光半導体素子200からの出射光を、m×n本の光プローブ11がそれぞれ受光する。光プローブ11(1、1)~光プローブ11(m、n)が受光する出射光を、出射光L(1、1)~出射光L(m、n)とする。出射光L(1、1)~出射光L(m、n)を「出射光L」とも称する。出射光Lは、第2接続盤62および光配線Fを経由して、処理装置30の光分岐装置310に入力する。光配線Fは、出射光Lがそれぞれ伝搬する複数の光配線の組である。
【0026】
光分岐装置310は、光プローブ11(1、1)~光プローブ11(m、n)が受光した出射光L(1、1)~出射光L(m、n)のそれぞれを、第1分岐光L1(1、1)~第1分岐光L1(m、n)と、第2分岐光L2(1、1)~第2分岐光L2(m、n)に分岐する。第1分岐光L1(1、1)~第1分岐光L1(m、n)を「第1分岐光L1」とも称する。第2分岐光L2(1、1)~第2分岐光L2(m、n)を「第2分岐光L2」とも称する。光分岐装置310から光配線F1を伝搬して、第1分岐光L1は合流器32に入力する。光配線F1は、第1分岐光L1がそれぞれ伝搬する複数の光配線の組である。また、光分岐装置310から光配線F2を伝搬して、第2分岐光L2は光電変換装置340に入力する。光配線F2は、第2分岐光L2がそれぞれ伝搬する複数の光配線の組である。
【0027】
例えば、光分岐装置310は、
図3に示すように、m×n個の光カプラ31(1、1)~光カプラ31(m、n)を有する。光カプラ31(1、1)~光カプラ31(m、n)は、光プローブ11(1、1)~光プローブ11(m、n)と1対1に対応する。光カプラ31(1、1)~光カプラ31(m、n)は、光プローブ11(1、1)~光プローブ11(m、n)が受光した出射光Lのそれぞれを第1分岐光L1と第2分岐光L2に分割する。以下では、光カプラ31(1、1)~光カプラ31(m、n)を「光カプラ31」とも称する。
【0028】
第2接続盤62は、例えばm×n個のコネクタを有する多芯のアダプタを有する。第2接続盤62のコネクタを介して、光プローブ11と光カプラ31が光学的に接続する。第2接続盤62は、例えば多連アレイ型や多芯コネクタ型の構成が可能である。
【0029】
以下に説明するように、第1分岐光L1はシリアル測定に使用される。また、第2分岐光L2はパラレル測定に使用される。例えば、第1分岐光L1は出射光Lの10%程度であり、第2分岐光L2は出射光Lの90%程度である。
【0030】
第1分岐光L1は、光半導体素子200の出射光Lについての分光特性の測定などに使用する。具体的には、m×n本の光プローブ11が受光したm×n本の出射光Lの第1分岐光L1は、m×n個の入力端子と1個の出力端子を有する合流器32の、入力端子にそれぞれ入力する。シリアル測定では、後述するように、合流器32に順に入力した第1分岐光L1が、合流器32の出力端子から分光モジュール33に出力される。分光モジュール33は、入力した第1分岐光L1を分光する。
【0031】
合流器32には、例えば、Y分岐からなる光導波路型の構成などを好適に使用できる。この構成の合流器32は、形状がコンパクトであり、合流器として使用する場合に損失が少なく扱いやすい。或いは、1入力2分岐出力の融着延伸型光カプラを多段に融着接続して合流器32を構成してもよい。
【0032】
分光モジュール33による第1分岐光L1の分光によって出射光Lの分光特性を測定する際に、制御装置40は、駆動する光半導体素子200を1つずつ選択する。例えば、制御装置40は、光半導体素子200に駆動電流Iを供給するドライバ21を順に選択する。選択されたドライバ21が駆動する光半導体素子200からの出射光Lの第1分岐光L1が、合流器32から出力する。合流器32から出力した第1分岐光L1は、分光モジュール33に入力する。分光モジュール33は第1分岐光L1を分光し、分光したデータを制御装置40に送信する。これにより、選択された光半導体素子200の分光特性が測定される。制御装置40が光半導体素子200を1つずつ選択することにより、m×n個の光半導体素子200の分光特性が順に測定される。
【0033】
上記のように、分光モジュール33により、複数の光プローブ11がそれぞれ受光した出射光Lの第1分岐光L1が1つずつ分光される。このように、分光モジュール33による分光特性の測定は、シリアル測定である。分光モジュール33によって得られる分光特性は、制御装置40に接続する記憶装置に、光半導体素子200に対応付けして保存される。
【0034】
出射光Lから分岐された第2分岐光L2は、光信号/電気信号変換(OE変換)され、光半導体素子200の出射光Lについての光出力(IL)特性、順方向電圧Vf、逆方向電流Irなどの光電気特性の測定に使用される。具体的には、m×n本の光プローブ11から出射されたm×n本の出射光Lの第2分岐光L2は、処理装置30の光電変換装置340に入力する。光電変換装置340は、m×n本の第2分岐光L2のそれぞれをOE変換する。
【0035】
光電変換装置340は、光プローブ11と1対1に対応する複数の光電変換器(OE変換器)を有する。OE変換器のそれぞれに、光プローブ11が受光した出射光Lの第2分岐光L2が1本ずつ入力する。例えば、光電変換装置340は、
図4に示すように、m×n本の光プローブ11と1対1に光学的に接続するm×n個のOE変換器34(1、1)~OE変換器34(m、n)を有する。以下では、OE変換器34(1、1)~OE変換器34(m、n)を「OE変換器34」とも称する。光プローブ11とOE変換器34は、光カプラ31を介して光学的に接続する。光プローブ11がそれぞれ受光した出射光Lの少なくとも一部が第2分岐光L2として、OE変換器34に入力する。OE変換器34は、第2分岐光L2を電気信号に変換する。
【0036】
光電変換装置340により第2分岐光L2から電気信号に変換された電気信号は、変換器35によりアナログ/デジタル(AD)変換される。更に、変換器35は、デジタル変換されたm×n個の電気信号について、パラレル/シリアル変換する。シリアル変換されたデータは、制御装置40に送信され、光半導体素子200の特性が取得、順次格納される。例えば、制御装置40が駆動電流Iと第2分岐光L2のデータを処理することにより、光出力(IL)特性、順方向電圧Vf、逆方向電流Irなどの光電気特性が、光半導体素子200について測定される。
【0037】
上記のように、光電変換装置340を用いる測定は、m×n個の光半導体素子200を同時に通電し、m×n個の光半導体素子200からの出射光Lを処理するパラレル測定である。複数のOE変換器34が、複数の光半導体素子200からの出射光Lを同時に処理する。パラレル測定によって得られる特性は、制御装置40に接続する記憶装置に、光半導体素子200に対応付けして保存される。
【0038】
図5は、測定システム1を用いた1個分の光半導体素子200についての測定系の一部を示す。光半導体素子200とプローブユニット10の位置合わせにより、電気プローブ12は光半導体素子200の電気信号端子(図示略)と接続する。このとき、光プローブ11の先端と光半導体素子200の光信号端子(図示略)との作動距離WDは、光プローブ11と光半導体素子200の光信号端子とが光学的に接続する距離に設定される。なお、電気プローブ12には弾性があるため、電気プローブ12が光半導体素子200と接続した状態のままで作動距離WDについて数十μm程度の調整は可能である。プローブユニット10のプローブ固定部13に光プローブ11と電気プローブ12が支持されて、光プローブ11と電気プローブ12の位置が固定される。光プローブ11と電気プローブ12とは別々のプローブ固定部13により固定支持してもよい。
【0039】
光半導体素子200とプローブユニット10の位置合わせでは、例えば、プローバコントローラ50の制御により、半導体基板2の主面と平行なXY平面および半導体基板2の主面に垂直なZ方向についてプローブユニット10が移動する。或いは、プローバコントローラ50の制御により、XY平面およびZ方向について、半導体基板2を搭載した状態でステージ55を移動する。また、ステージ55は、Z方向を中心軸として回転可能である。光半導体素子200に対して、光プローブ11および電気プローブ12を、例えば数μm単位での位置合わせが可能である。
【0040】
光半導体素子200からの出射光Lが入射する光プローブ11の先端は、例えば、マルチモードファイバ又はシングルモードファイバからなる。光プローブ11の先端は、球形状に整形加工されていてもよい。光プローブ11の先端を球形状にすることにより、光プローブ11の先端の開口数NAの調整、作動距離WD、光プローブ11の先端からの出射光Lの反射戻り光の削減などに対応できる。その結果、光プローブ11の先端において出射光Lを安定して受光できる。
【0041】
図5に示した状態において、ドライバ21が、例えば直流電流又は数μ秒~数十μ秒のパルス電流の駆動電流Iを出力する。駆動電流Iは、第1接続盤61および電気プローブ12を介して光半導体素子200に供給される。駆動電流Iが供給された光半導体素子200は、出射光Lを出射する。光プローブ11は、光半導体素子200からの出射光Lを受光する。光プローブ11を伝搬した出射光Lは、第2接続盤62を介して光カプラ31に伝搬する。光カプラ31は、出射光Lを第1分岐光L1と第2分岐光L2に分岐する。第1分岐光L1は合流器32を介して、分光モジュール33に入力する。第2分岐光L2は、OE変換器34に入力する。
【0042】
以上に説明したように、測定システム1は、m×n本の光プローブ11にそれぞれ接続するm×n個のOE変換器34と、m×n本の電気プローブ12にそれぞれ接続するm×n個のドライバ21を備える。これにより、測定システム1によれば、m×n個の光半導体素子200を同時に測定するパラレル測定と、光半導体素子200を1個ずつ測定するシリアル測定が可能である。
【0043】
図6を参照して、測定システム1によってm×n個の光半導体素子200を測定する方法の例を以下に説明する。
図6は、ステップS10に示すパラレル測定を行った後に、ステップS20に示すシリアル測定を行う場合を例示している。
【0044】
まず、ステップS10のステップS11において、駆動装置20がm×n個の光半導体素子200を同時に駆動する。ステップS12において、光プローブ11が、光半導体素子200からの出射光Lを受光する。そして、ステップS13において、光分岐装置310が、光プローブ11により受光したm×n本の出射光Lのそれぞれを、第1分岐光L1と第2分岐光L2に分岐する。
【0045】
ステップS14において、光電変換装置340が、m×n本の第2分岐光L2を同時に光電変換する。光電変換により第2分岐光L2から変換された電気信号は、変換器35を介して制御装置40に送信される。
【0046】
ステップS15において、制御装置40は、光半導体素子200に供給された駆動電流I及び第2分岐光L2から得られた電気信号を用いて、m×n個の光半導体素子200の光電気特性を取得する。例えば、駆動電流Iと第2分岐光L2のデータを用いて、光半導体素子200の光出力(IL)特性、順方向電圧Vf、逆方向電流Irが取得される。
【0047】
次いで、ステップS20のステップS21において、制御装置40が、1個の光半導体素子200を選択する。ステップS22において、駆動装置20が、選択された光半導体素子200に駆動電流Iを供給して、光半導体素子200を駆動する。ステップS23において、光プローブ11が、駆動した光半導体素子200からの出射光Lを受光する。そして、ステップS24において、光分岐装置310が、光プローブ11が受光した出射光Lを第1分岐光L1と第2分岐光L2に分岐する。
【0048】
ステップS25において、合流器32を介して分光モジュール33に入力した第1分岐光L1を、分光モジュール33が分光する。分光モジュール33が分光した波長特性データは、制御装置40に送信される。ステップS26において、制御装置40は、分光モジュール33が分光した波長特性データを用いて、選択した光半導体素子200の分光特性を取得する。
【0049】
ステップS27において、制御装置40は、m×n個の光半導体素子200をすべて選択したか否かを判定する。選択していない光半導体素子200がある場合は、処理はステップS21に戻る。すべての光半導体素子200を選択していれば、処理を終了する。
【0050】
光半導体素子200の分光特性の測定はm×n回繰り返される。したがって、分光モジュール33による測定時間が短いほど、シリアル測定に要する時間を短くできる。このため、分光モジュール33は、適切な波長分解能を有し、受光積算時間がミリ秒単位で短く、測定データの転送レートが速いことが測定時間短縮化に好ましい。
【0051】
上記では、パラレル測定によってm×n個の光半導体素子200について同時に光電気特性を測定した後、シリアル測定によってm×n個の光半導体素子200の分光特性を1つずつ順に測定する例を説明した。しかし、測定システム1による測定では、パラレル測定とシリアル測定の順序は任意に設定可能である。例えば、シリアル測定の後にパラレル測定を実施してもよい。また、パラレル測定の途中でシリアル測定を行ってもよい。つまり、パラレル測定により測定される特性とシリアル測定により測定される特性の測定の順番は、任意に設定可能である。
【0052】
半導体基板2に形成されたすべての光半導体素子200を測定するためには、m×n個の光半導体素子200の測定が終了するごとに、半導体基板2又はプローブユニット10を移動させ、未測定の光半導体素子200を測定する。そして、半導体基板2に形成したすべての光半導体素子200の測定が終了するまで、
図6を参照して説明した光半導体素子200の測定を繰り返す。
【0053】
測定システム1によれば、m×n個の光半導体素子200の測定を繰り返すことにより、半導体基板2に形成されたすべての光半導体素子200の測定を効率的に実行することができる。以下で、測定システム1によって同時に測定可能な光半導体素子200の個数を、測定システム1の「チャンネル数」とも称する。
図1に示す測定システム1のチャンネル数は、m×nである。
【0054】
半導体基板2に形成された光半導体素子200の総数がNw個である場合、m×n個の光半導体素子200の測定を繰り返す回数は、最小で凡そNw/チャンネル数である。測定システム1による測定では、光半導体素子200の1個ずつについて光プローブ11と電気プローブ12の位置合わせをする測定に比べて、半導体基板2に形成されたすべての光半導体素子200を測定するのに要する時間を大幅に短縮することができる。
【0055】
なお、m×n個の光半導体素子200に対応するm×n個の分光モジュール33を処理装置30に準備する構成も考えられる。しかし、その構成は、コストや実装スペースの増大が大きく、非効率的である。
図1に示す測定システム1によれば、簡素な回路構成と効率的な動作により、多チャンネル測定による測定時間の短縮が実現できる。
【0056】
以下に、測定システム1による光半導体素子200の測定時間について説明する。ここで、プローブユニット10と半導体基板2の位置合わせ時間をtp、パラレル測定に要する時間をtm、m×n個の光半導体素子200のシリアル測定に要する時間をtbとする。その場合、測定システム1によりm×n個の光半導体素子200の測定に要するトータルの測定時間Tk1は、以下の式(1)で表される:
Tk1=tp+tm+tb ・・・(1)
シリアル測定における1個の光半導体素子200の測定時間をtsとすると、tb=ts×(m×n)である。
【0057】
なお、複数の測定項目について測定するパラレル測定では、光半導体素子200を放熱させるために、光半導体素子200への駆動電流Iの供給を停止する時間(以下、「スリープ時間tr」と称する。)を、測定項目の間に設けてもよい。その場合、パラレル測定において駆動電流Iを光半導体素子200に供給している時間をtlとして、tm=tl+trである。
【0058】
図7Aおよび
図7Bに、チャンネル数が64の測定システム1を用いた光半導体素子200の測定時間の例を示す。
図7Aに示す時間t1は、駆動電流I=4mAでの順方向電圧Vfの測定時間である。時間t2は、駆動電流I=4mAでの光出力(IL)特性の測定時間である。時間t3は、駆動電流I=9mAでの順方向電圧Vfの測定時間である。時間t4は、駆動電流I=9mAでの光出力(IL)特性の測定時間である。時間t5は、逆方向電流Irの測定時間である。
図7Aに示すように、順方向電圧Vfと光出力(IL)特性の測定の後に、それぞれスリープ時間を設けている。スリープ時間trの設定は、特に光半導体素子200が通電による局部的な加熱により劣化し易い場合、有効である。
【0059】
駆動電流I=4mAでの測定データと駆動電流I=9mAでの測定データを用いて、光半導体素子200のスレッシュホールド電流やスロープ効率を算出できる。
【0060】
例えば、
図7Bに示すように、順方向電圧Vfの測定に要する時間t1および時間t3は10m秒、光出力(IL)特性の測定に要する時間t2および時間t2は13m秒である。また、シリアル測定における1個の光半導体素子200の測定時間tsは2m秒であり、tb=ts×64=128秒である。スリープ時間はそれぞれ100m秒であり、トータルのスリープ時間trは400m秒である。したがって、
図7Aおよび
図7Bに示す測定では、64個の光半導体素子200の測定に要するトータルの測定時間は574m秒である。
【0061】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態に係る測定システム1aは、
図8に示すように、複数のプローブユニット10を有する。測定システム1aでは、プローブユニット10A~プローブユニット10Dのいずれかと駆動装置20および光電変換装置340を接続して、プローブユニット10ごとに光半導体素子200の出射光Lを処理する。測定システム1aは、駆動装置20が接続するプローブユニット10を切り替える第1切り替え回路71と、光電変換装置340が接続するプローブユニット10を切り替える第2切り替え回路72を備える。
【0062】
なお、
図8では、測定システム1aが4つのプローブユニット10を有する構成を示したが、測定システム1aが備えるプローブユニット10の個数は任意である。以下において、測定システム1aの有するプローブユニット10の数をUで示す。
【0063】
プローブユニット10の個数を増やすことにより、測定に使用する光プローブ11と電気プローブ12の本数を増加させることができる。測定システム1aによれば、プローブユニット10と半導体基板2との一回の位置合わせにより、光プローブ11および電気プローブ12と位置合わせされた光半導体素子200の個数が増加し、位置合わせの回数を減らすことができる。
【0064】
図8に示す測定システム1aのOE変換器34やドライバ21の数は、
図1の測定システム1と同じである。このため、測定コストや実装スペースの増大を抑制できる。
図8に示す測定システム1aでは、プローブユニット10A~プローブユニット10Dのいずれかの電気プローブ12を駆動装置20と選択的に接続する。そして、選択した電気プローブ12とプローブセットを構成する光プローブ11を、光電変換装置340に接続する。
【0065】
プローブユニット10A~プローブユニット10Dと駆動装置20との間に配置した第1切り替え回路71は、例えばm×n個のアナログスイッチを有する構成であってもよい。アナログスイッチの入力端子は、駆動装置20のドライバ21と接続する。アナログスイッチの4つの出力端子は、プローブユニット10A~プローブユニット10Dの電気プローブ12に接続する。そして、m×n個のアナログスイッチは、m×n個のドライバ21とm×n本の電気プローブ12を1対1に接続する。アナログスイッチの切り替えにより、プローブユニット10A~プローブユニット10Dのいずれかの電気プローブ12とドライバ21が接続する。
【0066】
測定システム1aの光分岐装置310は、プローブユニット10A~プローブユニット10Dに含まれるすべての光プローブ11と1対1に対応する、m×n×U個の光カプラ31を有する。光分岐装置310と光電変換装置340との間に配置した第2切り替え回路72は、プローブユニット10ごとに、光プローブ11とOE変換器34とを光カプラ31を介して光学的に接続する。
【0067】
第2切り替え回路72は、例えばm×n個の光スイッチを有する構成であってもよい。第2切り替え回路72の光スイッチの切り替えにより、プローブユニット10A~プローブユニット10Dのいずれかの光プローブ11が、光カプラ31を介してOE変換器34と接続する。光スイッチの4つの入力端子は、プローブユニット10A~プローブユニット10Dのいずれかに接続する4個の光カプラ31に接続し、光スイッチの出力端子はOE変換器34の1つに接続する。そして、光スイッチにより、光カプラ31を介してのプローブユニット10と光電変換装置340との接続が切り替わる。このように、m×n個の光スイッチは、光カプラ31を介して、m×n本の光プローブ11とm×n個のOE変換器34を1対1に接続する。
【0068】
第1切り替え回路71や第2切り替え回路72での切り替え動作は、制御装置40によって制御される。そして、駆動装置20や光電変換装置340と接続するプローブユニット10を切り替えながら、パラレル測定が行われる。シリアル測定では、m×n×U個の光カプラ31からの第1分岐光L1が、m×n×U個の入力端子を有する合流器32に入力し、合流器32の出力端子から第1分岐光L1が順に出力される。そして、合流器32から出力される第1分岐光L1を、分光モジュール33が分光する。
【0069】
例えば、プローブユニット10の数がU個である場合、第2切り替え回路72に、U×1(U入力、1出力)の光スイッチをm×n個使用する。また、第1切り替え回路71に、U×1のアナログスイッチをm×n個使用するか、或いは、同等の機能のスイッチング素子を使用してもよい。これにより、m×n×U芯の光プローブアレイ110および電気プローブアレイ120を実現できる。光スイッチやアナログスイッチの切り替え回数は、(U-1)回である。
【0070】
U個のプローブユニット10を有する測定システムによる測定時間Tk1は、以下の式(2)で表される:
Tk1=N×{tp+U×((tm+(m×n)×ts)+(U-1)×tsw)} ・・・(2)
式(2)で、Nは、半導体基板2に形成された光半導体素子200の個数がNwである場合の測定の繰り返し回数である。繰り返し回数Nは、Nw/(U×(m×n))で表される。また、式(2)で、tpは1回の位置合わせ時間、tmはパラレル測定に要する時間、tsはシリアル測定に要する時間である。tswは、光スイッチの切り替え時間である。
【0071】
上記では、m×n×U個の光カプラ31を有する光分岐装置310を使用する例を示した。しかし、m×n個の光カプラ31を有するU個の光分岐装置310を使用し、光スイッチによって光分岐装置310と接続するプローブユニット10を切り替えてもよい。また、上記では、合流器32がm×n×U個の入力端子を有する例を示した。しかし、m×n個の入力端子を有するU個の合流器32を使用し、光分岐装置310と接続する合流器32を光スイッチによって切り替えてもよい。
【0072】
測定システム1aによる光半導体素子200の測定では、半導体基板2に形成されたすべての光半導体素子200を測定するまで、m×n×U個の光半導体素子200の測定が終了するごとに、半導体基板2又はプローブユニット10を移動させる。そして、新たにプローブユニット10と位置合わせした光半導体素子200について、
図6を参照して説明した測定を実行する。
【0073】
以上に説明したように、第2の実施形態に係る測定システム1aでは、光プローブアレイ110および電気プローブアレイ120を有するプローブユニット10をU個(U≧2)用いる。このため、測定システム1aによれば、光プローブ11および電気プローブ12の本数を
図1の測定システム1のU倍に増やし、かつ、
図1の測定システム1の駆動装置20や光電変換装置340を用いることができる。このため、測定システムの拡張性が容易である。更に、測定システム1aによれば、光半導体素子200とプローブユニット10との位置合わせ回数が減少し、測定時間を短縮することができる。他は、第1の実施形態と実質的に同様であり、重複した記載を省略する。以下では、プローブユニット10を有する測定システム1および測定システム1aを総称して「測定システム1」とも称する。
【0074】
以下に、測定システム1と、
図9に示す比較例の測定システム(以下において、単に「比較例の測定システム」という。)について、測定時間を比較する。
【0075】
比較例の測定システムは、半導体基板2に形成された光半導体素子200を、電気プローブ12を介して供給される駆動電流により駆動する。光半導体素子200からの出射光Lは、積分球300で受光する。そして、出射光Lの特性を、OE変換器34などの測定機器により測定する。
【0076】
積分球300の下部に開口孔が設けられ、開口孔から光半導体素子200からの出射光Lが積分球300の内部に入射する。出射光Lは、球状の積分球300の内壁面で繰り返し反射して、入射強度が平均化される。積分球300の内壁面にフォトデテクタなどのOE変換器を設置することにより、内壁面の所定の面積分の入射強度を測定できる。そして、積分球300の内壁面の面積分の入射強度の掛け算により、出射光Lの強度を算出できる。出射光LがOE変換器に直接照射しないように、開口孔とOE変換器34の間に遮光板301を設置してもよい。出射光Lの分光特性に関しては、積分球300の内壁面に設置したファイバコリメータ302に入射した出射光Lを、分光モジュール33に入力して測定する。
【0077】
比較例の測定システムでは、位置を固定した積分球300の内部に出射光Lが同時に入射する光半導体素子200がm×n個の場合、半導体基板2に形成されたすべての光半導体素子200の測定に要する測定時間Tk2は、以下の式(3)で表される:
Tk2=N×(tp+(m×n)×(tm+ts)) ・・・(3)
式(3)で、Nは、m×n個の光半導体素子200の測定の繰り返し回数である。また、1回の測定での位置合わせ時間がtp、光電気特性の測定に要する時間がtm、分光特性の測定に要する時間がtsである。m×nは、積分球300の位置を固定した場合に出射光Lを受光できる光半導体素子200の個数であり、測定システム1のチャンネル数に相当する。なお、比較例の測定システムでは、OE変換器34による光電気特性の測定と分光モジュール33による分光特性の測定が同時に実行可能である。その場合、tm≧tsであれば、式(3)でts=0である。ただし、比較例の測定システムでは、光半導体素子200は1つずつ測定される。
【0078】
一方、測定システム1によるトータルの測定時間Tk1は、式(2)に示した通りである。プローブユニット10のユニット数Uが1であり、測定の繰り返し回数Nが測定システム1と比較例の測定システムで同じ場合、Tk2-Tk1=(m×n-1)×tmである。つまり、測定時間を比較すると、比較例の測定システムよりも、測定システム1の方が(m×n-1)×tmだけ測定時間が短い。
【0079】
図10に、測定システム1と比較例の測定システムの測定時間の比較を示す。
図10の横軸はチャンネル数CHであり、縦軸は半導体基板2に形成された光半導体素子200のトータルの測定時間Tkである。チャンネル数CHは、m×n×Uである。半導体基板2に形成された光半導体素子200の個数は153,544個である。光電気特性の測定に要する時間がtm=0.8秒、分光特性の測定に要する時間がts=0.003秒である。また、位置合わせ時間がtp=1.5秒、光スイッチの切り替え時間がtsw=0.006秒である。
【0080】
図10において、特性S1が測定システム1を用いた場合の測定時間である。特性S1において、プローブユニット10のユニット数をUで示した(以下において同様。)。特性S2が比較例の測定システムを用いた場合の測定時間である。
【0081】
図10に示すように、比較例の測定システムでは、m×n≧48において測定時間はほぼ一定である。
図10から明らかなように、測定システム1を用いることにより、光半導体素子200の測定時間を、比較例の測定システムよりも大幅に短縮できる。
【0082】
図11は、
図10に示した測定システム1による測定時間Tkを拡大したグラフである。プローブユニット10のユニット数Uが多い場合には、光スイッチやアナログスイッチの切り替え時間が測定時間Tkに含まれる。それでも、
図11に示すように、プローブユニット10のユニット数Uが多いほど、測定時間Tkが短い。
【0083】
例えば、U=1でm×n=12芯のプローブユニット10の場合、測定時間Tk=8時間である。一方、U=1でm×n=48芯のプローブユニット10の場合、測定時間Tk=2時間程度であり、12芯のプローブユニット10の場合の1/4である。また、チャンネル数を小さくして測定時間Tkを2時間程度にしたい場合には、m×n=24芯のプローブユニット10を4個使用してもよい。
【0084】
以上に説明したように、測定システム1によれば、半導体基板2に形成された光半導体素子200の測定をm×n×U個ずつ繰り返し行うことにより、半導体基板2に形成された光半導体素子200を短時間で測定することができる。光半導体素子200の測定時間を大幅に短縮するができるため、光半導体素子200の全数の測定値と要求仕様との比較による良品、不良品の判定ができる。このため、光半導体素子200をモジュール実装した時の歩留まりを改善できる。また、プローブユニット10の増設による光プローブ11および電気プローブ12の多芯化により、測定時間の短縮化を実現できる。このとき、複数のプローブユニット10から1つのプローブユニット10を光スイッチやアナログスイッチにより選択することにより、測定システム1のサイズの増大を抑制し、かつ測定システム1の拡張を容易に行うことができる。
【0085】
(その他の実施形態)
上記のように本発明は実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0086】
例えば、上記では、n芯の多芯プローブをm列配置して光プローブアレイ110を構成する例を説明したが、m芯の多芯プローブをn列配置して光プローブアレイ110を構成してもよい。また、1個のドライバ21が複数の電気プローブ12に駆動電流を供給してもよい。これにより、測定システムのコストや実装スペースを抑制できる。例えば、1個のドライバ21がm×n個の光半導体素子200に駆動電流を供給して、パラレル測定を実行してもよい。
【0087】
また、光接続装置としてm×nの多芯の光プローブアレイ110を光ファイバ又は導波路状の構成で示したが、光プローブアレイ110はその他の構成で配置してもよい。例えば、m×n個の積分球をウェハの上方に配置し、積分球同士をある距離離した状態で配置して光接続装置を構成することも可能である。その場合、m×nの芯数は少なくなるが、光分岐装置についてOE変換器の端部と分光用機器の端部が積分球の内部に含まれるため、処理装置30の構成が簡素になる。また、積分球の開口孔の面積を大きくすることができるため、サイズの大きい光半導体素子200の測定が可能になる。光半導体素子200のサイズが小さい場合は、複数個の光半導体素子200からの出射光Lが積分球の内部に入射可能になる。そのため、半導体基板2もプローブユニット10も移動しない1回の設置状態で複数個の光半導体素子200を順次測定可能である。
【0088】
このように、本発明はここでは記載していない様々な実施形態などを含むことはもちろんである。
【符号の説明】
【0089】
1、1a,1b…測定システム
2…半導体基板
10…プローブユニット
11…光プローブ
12…電気プローブ
20…駆動装置
21…ドライバ
30…処理装置
31…光カプラ
32…合流器
33…分光モジュール
34…OE変換器
40…制御装置
50…プローバコントローラ
55…ステージ
61…第1接続盤
62…第2接続盤
71…第1切り替え回路
72…第2切り替え回路
110…光プローブアレイ
120…電気プローブアレイ
200…光半導体素子
300…積分球
301…遮光板
302…ファイバコリメータ
310…光分岐装置
340…光電変換装置