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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022097807
(43)【公開日】2022-07-01
(54)【発明の名称】押釦スイッチ用部材
(51)【国際特許分類】
   H01H 13/20 20060101AFI20220624BHJP
【FI】
H01H13/20 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020210967
(22)【出願日】2020-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】000190116
【氏名又は名称】信越ポリマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002697
【氏名又は名称】めぶき国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100110973
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 洋
(72)【発明者】
【氏名】小林 佑輔
【テーマコード(参考)】
5G206
【Fターム(参考)】
5G206AS09H
5G206AS09N
5G206AS18H
5G206AS18N
5G206CS04K
5G206FS35K
5G206FS35N
5G206FU03
5G206GS01
5G206GS11
5G206GS14
5G206GS21
5G206HS18
5G206HW74
5G206HW83
5G206HW96
5G206KS15
5G206KS39
(57)【要約】      (修正有)
【課題】過剰な押圧力を加えた場合又は斜め押し操作した場合にドーム部の破断及び接点の損傷を抑制する押釦スイッチ用部材を提供する。
【解決手段】キートップ10と、キートップの押圧方向先端側の面に接触可能な押圧部11と、押圧部に連接され弾性変形可能なドーム部13と、押圧部からドーム部内方に突出するプッシャー部12と、ドーム部と連接されるベース部14と、ベース部においてドーム部の径方向外側にてキートップ側に突出する凸部18と、を備え、少なくとも押圧部及びドーム部は共にゴム状弾性体からなり、凸部は、キートップが押圧されていない時はキートップの押圧方向先端側の面との間に隙間が生じ、キートップが過剰に押圧若しくはキートップが押圧方向に対して斜め方向に揺動した時は押圧方向先端側の面に当接する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キートップと、
前記キートップの押圧方向先端側の面に接触可能な押圧部と、
前記押圧部に連接され、前記押圧部から平面視にて拡径する形状の弾性変形可能なドーム部と、
前記押圧部から前記ドーム部の内方に突出するプッシャー部と、
前記ドーム部を挟んで前記押圧部と反対側にて前記ドーム部と連接されていて前記押圧方向に開口する開口部を有するベース部と、
前記ベース部において前記ドーム部の径方向外側にて前記キートップ側に突出する凸部と、
を備え、
少なくとも前記押圧部および前記ドーム部は共にゴム状弾性体からなり、
前記凸部は、前記キートップが押圧されていないときは、前記キートップの押圧方向先端側の面との間に隙間が生じ、前記キートップが過剰に押圧されたとき若しくは前記キートップが前記押圧方向に対して斜め方向に揺動したときは、前記キートップの押圧方向先端側の面に当接することを特徴とする押釦スイッチ用部材。
【請求項2】
前記キートップが押圧されていない場合において、前記キートップと前記凸部との間の距離が、前記プッシャー部と前記開口部との間の距離より長くなるよう構成されることを特徴とする請求項1に記載の押釦スイッチ用部材。
【請求項3】
前記凸部は、平面視にて前記ドーム部の外周の少なくとも一部に複数個形成されることを特徴とする請求項1または2に記載の押釦スイッチ用部材。
【請求項4】
前記凸部は、平面視にて前記ドーム部の外周を囲うように外周全域に形成されることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の押釦スイッチ用部材。
【請求項5】
前記凸部は、前記ドーム部より肉厚に形成されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の押釦スイッチ用部材。
【請求項6】
前記ベース部と前記凸部とは一体成形されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の押釦スイッチ用部材。
【請求項7】
前記ベース部、前記ドーム部および前記押圧部は、ゴム状弾性体で一体成形されていることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の押釦スイッチ用部材。
【請求項8】
前記プッシャー部における前記押圧方向側の面に固定される導電性の可動接点をさらに備え、前記可動接点よりも前記押圧方向に位置する別の接点に電気的に接続可能としていることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の押釦スイッチ用部材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押釦スイッチ用部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車載機器、通信機器、オーディオ機器、家庭用電気機器等の多種多様な機器のスイッチとして、キートップ、ドーム部およびベース部を備える押釦スイッチ用部材を用いたものが知られている(例えば、特許文献1,2を参照)。
【0003】
図7は、従来から公知の押釦スイッチ用部材の使用例を説明するための縦断面図を示す。
【0004】
図7示す押釦スイッチ用部材100は、基板110上に配置され、基板110に向かう方向(図7の下方向)およびその逆方向(図7の上方向)に弾性的に往復可動する部材である。押釦スイッチ用部材100は、押圧部101と、押圧部101から基板110側へ突出するプッシャー部102と、押圧部101の平面視にて径方向外側にスカート状に接続されるドーム部103と、ドーム部103の径方向外側に連接するベース部104と、を備える。押釦スイッチ用部材100は、プッシャー部102の先端に、基板110上の固定接点106に対して接触と非接触とを可能とする可動接点105を備える。押圧部101、プッシャー部102、ドーム部103およびベース部104は、同一種類のゴム状弾性体からなる。
【0005】
操作者が押圧部101をその上から押圧していくと、ドーム部103が弾性変形(座屈)し、可動接点105が固定接点106,106に接触して、固定接点106,106を導通させる。操作者が押圧部101の押圧を解除すると、ドーム部103は自身の弾性力により元の形状に戻るため、押圧部101、プッシャー部102および可動接点105は上昇し、初期状態に戻る。押釦スイッチ用部材100によれば、ドーム部103の弾性変形により操作者に良好なクリック感を付与することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11-233973号公報
【特許文献2】特開2000-76959号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記のような従来から公知の押釦スイッチ用部材は、キートップから垂直下方に過剰な押圧力が加えられた場合、可動接点および/または固定接点が損傷したり、薄いドーム部に過剰な荷重が加わりドーム部が破断する虞があった。また、このような押釦スイッチ用部材は、キートップから垂直下方に押圧されずに斜め方向に押圧される操作や、キートップの中央部から外れた位置が押圧される操作等の斜め押しの操作がなされた場合も同様に、可動接点および/または固定接点が損傷したり、薄いドーム部に過剰な荷重が加わりドーム部が破断する虞があった。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、過剰な押圧力が加えられた場合または斜め押しの操作がなされた場合であっても、ドーム部の破断および接点の損傷を抑制する押釦スイッチ用部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)上記目的を達成するための一実施形態に係る押釦スイッチ用部材は、キートップと、前記キートップの押圧方向先端側の面に接触可能な押圧部と、前記押圧部に連接され、前記押圧部から平面視にて拡径する形状の弾性変形可能なドーム部と、前記押圧部から前記ドーム部の内方に突出するプッシャー部と、前記ドーム部を挟んで前記押圧部と反対側にて前記ドーム部と連接されていて前記押圧方向に開口する開口部を有するベース部と、前記ベース部において前記ドーム部の径方向外側にて前記キートップ側に突出する凸部と、を備え、少なくとも前記押圧部および前記ドーム部は共にゴム状弾性体からなり、前記凸部は、前記キートップが押圧されていないときは、前記キートップの押圧方向先端側の面との間に隙間が生じ、前記キートップが過剰に押圧されたとき若しくは前記キートップが前記押圧方向に対して斜め方向に揺動したときは、前記キートップの押圧方向先端側の面に当接する。
(2)別の実施形態に係る押釦スイッチ用部材では、好ましくは、前記キートップが押圧されていない場合において、前記キートップと前記凸部との間の距離が、前記プッシャー部と前記開口部との間の距離より長くなるよう構成されても良い。
(3)別の実施形態に係る押釦スイッチ用部材は、好ましくは、前記凸部は、平面視にて前記ドーム部の外周の少なくとも一部に複数個形成されても良い。
(4)別の実施形態に係る押釦スイッチ用部材では、好ましくは、前記凸部は、平面視にて前記ドーム部の外周を囲うように外周全域に形成されても良い。
(5)別の実施形態に係る押釦スイッチ用部材では、好ましくは、前記凸部は、前記ドーム部より肉厚に形成されていても良い。
(6)別の実施形態に係る押釦スイッチ用部材では、好ましくは、前記ベース部と前記凸部とは一体成形されていても良い。
(7)別の実施形態に係る押釦スイッチ用部材では、好ましくは、前記ベース部、前記ドーム部および前記押圧部は、ゴム状弾性体で一体成形されていても良い。
(8)別の実施形態に係る押釦スイッチ用部材は、好ましくは、前記プッシャー部における前記押圧方向側の面に固定される導電性の可動接点をさらに備え、前記可動接点よりも前記押圧方向に位置する別の接点に電気的に接続可能としていても良い。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、過剰な押圧力が加えられた場合または斜め押しの操作がなされた場合であっても、ドーム部の破断および接点の損傷を抑制する押釦スイッチ用部材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、第1実施形態に係る押釦スイッチ用部材の平面図を示す。
図2図2は、図1の平面図のA-A線断面図および当該断面図中の領域Bの拡大図をそれぞれ示す。
図3図3は、第1実施形態に係る押釦スイッチ用部材の使用例を説明するための図を示す。
図4図4は、第1実施形態に係る押釦スイッチ用部材が斜め押し操作された状態の図2と同視の縦断面図を示す。
図5図5は、第2実施形態に係る押釦スイッチ用部材の平面図を示す。
図6図6は、第3実施形態に係る押釦スイッチ用部材の平面図を示す。
図7図7は、従来から公知の押釦スイッチ用部材の使用例を説明するための縦断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている諸要素およびその組み合わせの全てが本発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0013】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る押釦スイッチ用部材の平面図を示す。図2は、図1の平面図のA-A線断面図および当該断面図中の領域Bの拡大図をそれぞれ示す。
【0014】
(1)概略構成
第1実施形態に係る押釦スイッチ用部材1は、キートップ10と、キートップ10の押圧方向先端側(図2の下方向)の面に接触可能な押圧部11と、押圧部11に連接され、押圧部11から平面視にて拡径する形状の弾性変形可能なドーム部13と、押圧部11からドーム部13の内方に突出するプッシャー部12と、ドーム部13を挟んで押圧部11と反対側にてドーム部13と連接されていて押圧方向(図2の下方向)に開口する開口部17を有するベース部14と、ベース部14においてドーム部13の径方向外側にてキートップ10側に突出する凸部18と、を備える。押釦スイッチ用部材1において、少なくとも押圧部11およびドーム部13は共にゴム状弾性体からなる。凸部18は、キートップ10が押圧されていないときは、キートップ10の押圧方向先端側の面との間に隙間が生じ(図3のaを参照)、キートップ10が過剰に押圧されたとき若しくはキートップが押圧方向に対して斜め方向に揺動したときは、キートップの押圧方向先端側の面に当接する(図3のcおよび図4を参照)。押釦スイッチ用部材1の使用例については、図3および図4を用いて詳細を後述する。
【0015】
この実施形態において、ゴム状弾性体としては、シリコーンゴム、ウレタンゴム、イソプレンゴム、エチレンプロピレンゴム、天然ゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、ニトリルゴム(NBR)あるいはスチレンブタジエンゴム(SBR)等の熱硬化性エラストマー; ウレタン系、エステル系、スチレン系、オレフィン系、ブタジエン系、フッ素系等の熱可塑性エラストマー、あるいはそれらの複合物等を用いるのが好ましい。上記材料の候補の内では、特に、ゴム弾性や耐熱、耐寒性、圧縮永久歪に優れ、酸化防止剤や可塑剤、軟化剤を含まずブリード汚染の心配が殆どないシリコーンゴムが好ましい。また、ゴム状弾性体は、シリカ等のフィラーを含有していても良い。以後の各実施形態においても同様である。
【0016】
この実施形態において、押釦スイッチ用部材1は、回路基板(以後、単に「基板」とも称する)50上に配置され、キートップ10から基板50に向かう方向への押圧と当該押圧の解除によって、キートップ10が押圧方向(図2の下方向)およびその逆方向(図2の上方向)に往復可動する部材である。押釦スイッチ用部材1は、好ましくは、プッシャー部12における押圧方向側(図2の下側)の面に固定される導電性の可動接点15をさらに備える。可動接点15は、好ましくは、可動接点15よりも押圧方向に位置する別の接点に電気的に接続可能としている。この実施形態において、可動接点15は、基板50上の当該可動接点15に対向する位置に配置された2つの固定接点16,16に電気的に接続可能としている。なお、固定接点16は、基板50上に3つ以上備えられていても良い。
【0017】
この実施形態において、電子機器等の筐体30は、キートップ10の天面部分を露出可能な貫通孔32を有し、ネジ60により基板50と所定間隔を空けて固定されている(図2を参照)。ただし、筐体30は、少なくとも貫通孔32を有し、かつキートップ10の押圧によりプッシャー部12が基板50側へ移動可能な距離(ストローク)を確保可能な形状であれば、特に制約されない。筐体30と基板50との固定方法もまた、特に制約されず、例えば、接着、溶着、嵌合等であっても良い。
【0018】
この実施形態において、押釦スイッチ用部材1は、1つのキートップ10の押圧方向先端側の面に2つの押圧部11が接触可能に配置されている。ただし、押釦スイッチ用部材1は、1つのキートップ10の押圧方向先端側の面に、1つの押圧部11が接触可能に配置されていても良いし、3つ以上の押圧部11が接触可能に配置されていても良い。なお、本願において、「径方向外側」は、特定の対象物の平面視にて中心から仮想円を描いたときの仮想円の拡径方向を意味する。また、「平面視」とは、押釦スイッチ用部材1をキートップ10側から見た状態を意味する。以後の各実施形態においても同様である。
【0019】
(1)キートップ
キートップ10は、スイッチのオン、オフまたはその両方のときに、指やその他の押圧操作手段による基板50の方向(図2の下方向)への押圧を受けて基板50の方向に移動可能な部材である。また、キートップ10は、当該押圧の解除を受けて基板50の方向と逆方向(図2の上方向)に移動可能な部材である。キートップ10は、押釦部、頭部等と称されることもある。この実施形態において、キートップ10は、筐体30に形成された貫通孔32から天面部分を露出して配置されている。キートップ10は、好ましくは、筐体30の貫通孔32から抜け出せない大きさのフランジ部を備える略ハット形状の部材である。ただし、フランジ部は必須の構成ではない。この点は、以後の各実施形態においても同様である。この実施形態において、キートップ10は、平面視にて円形状の部材である(図1を参照)。ただし、キートップ10の形状は特に制約されず、例えば、平面視にて多角形状であっても良い。キートップ10は、好ましくは、樹脂、セラミックスまたは金属からなる部材であるが、ゴム状弾性体からなる部材でも良い。キートップ10は、押圧部11およびドーム部13と同一種類のゴム状弾性体にて構成されていても良いし、異なる種類のゴム状弾性体から構成されていても良い。また、キートップ10は、その天面に突起やコート層を形成していても良い。
【0020】
(2)押圧部
押圧部11は、その天面(キートップ10側の面)がキートップ10の押圧方向先端側の面に接触可能な部材である。押圧部11は、押圧によるキートップ10の基板50の方向への移動に伴い、基板50の方向へ移動可能な部材である。また、押圧部11は、当該押圧の解除を受けて基板50の方向と逆方向に移動可能な部材である。キートップ10は、当該押圧の解除による押圧部11の基板50の方向と逆方向への移動に伴って、当該逆方向へ移動可能となる。この実施形態において、押圧部11は、その天面を円とする円柱形状の部材である。ただし、押圧部11の形状は特に制約されず、例えば、多角柱状等であっても良い。本願において、「柱状」は、その長さ方向にわたって平面視の径(若しくは対角線)が一定の形態を意味する。ただし、平面視の径(若しくは対角線)は、完全に一定であることまでを必要とせず、プラスマイナス5%の範囲内の変動は許容される。
【0021】
(3)ドーム部
ドーム部13は、押圧部11の外周に連接され、押圧部11から平面視にて拡径するスカート形状の部材である。ドーム部13は、その形状からスカート部と称しても良い。この実施形態において、ドーム部13は、平面視にて円環状の部材である。以後の各実施形態においても同様である。ドーム部13は、押圧部11とベース部14とを連結する部材である。ドーム部13は、好ましくは、押圧部11およびベース部14よりも薄肉に形成されている。よって、ドーム部13は、キートップ10が基板50の方向へ押圧されたときに弾性変形し、当該押圧が解除されたときに元の形状に戻る弾性変形部材として機能することができる。
【0022】
(4)プッシャー部
プッシャー部12は、ドーム部13の内部空間内にて、押圧部11から押圧方向(図2の下方向)に突出する部材である。プッシャー部12は、押圧部11の押圧方向の突出部位として解釈しても良い。キートップ10からの押圧力がドーム部13の耐荷重を超えると、プッシャー部12は、ドーム部13の弾性変形(典型的には座屈変形)に起因して、基板50の方向へ移動可能となる。また、キートップ10からの押圧が解除されると、プッシャー部12は、ドーム部13が元の形状に戻ることに起因して、基板50の方向と逆方向に移動可能となる。プッシャー部12は、好ましくは、ゴム状弾性体からなる部材である。プッシャー部12は、押圧部11と同一種類のゴム状弾性体にて構成されていても良いし、異なる種類のゴム状弾性体から構成されていても良い。
【0023】
(5)ベース部
ベース部14は、ドーム部13を挟んで押圧部11と反対側(ドーム部13の拡径した開口側)にてドーム部13と連接され、キートップ10からの押圧とその解除に伴うプッシャー部12の往復移動を可能とする空間を備える。また、ベース部14は、当該空間の押圧方向に開口する開口部17を備える。固定接点16,16は、好ましくは、基板上50であって、かつ開口部17の内部に配置されている。よって、押釦スイッチ用部材1は、プッシャー部12の当該空間内の移動に伴って可動接点15と固定接点16,16とが接触可能となる。この実施形態において、ベース部14は、1つの部材であるが、複数個の部材から構成されていても良い。また、ベース部14は、少なくともプッシャー部12が往復移動可能な空間を備え、可動接点15と固定接点16,16とが接触可能な形状であれば、その形状に制約はない。ベース部14は、キートップ10の押圧によるプッシャー部12のストロークを確保するためのものであり、ベース部14の厚さ(図2の上下方向の長さ)に応じてストロークを調整することができる。
【0024】
(6)凸部
凸部18は、ドーム部13の径方向外側にてベース部14からキートップ10側に突出する部材である。凸部18は、好ましくは、ベース部14のうち、ドーム部13の径方向外側であって、キートップ10の押圧によりキートップ10の押圧方向先端側の面に当接可能な位置に設けられる。また、凸部18は、好ましくは、ベース部14と一体成形されている。ただし、凸部18は、ベース部14と別体にて成形されていても良い。この実施形態において、凸部18は、平面視にてドーム部13の外周を囲うように外周全域に形成されている(図1を参照)。凸部18は、その一部分に空気抜き用の溝や切り欠き等が形成されていても良い。
【0025】
凸部18は、好ましくは、ドーム部13より肉厚に形成されている。より具体的には、凸部18は、その幅t2がドーム部13の幅t1より大きくなるよう形成されている(図2の一部Bの拡大図を参照)。また、凸部18の平面投影面積P2は、ドーム部13の平面投影面積P1より大きくなるよう形成されている(図1を参照)。このように構成することにより、凸部18は、ドーム部13が変形している状況下においても、キートップ10を確実に支えることができる。特に、凸部18とドーム部13とが同一の弾性体からなる場合に、その効果は顕著である。よって、キートップ10が過剰に押圧されたとき(図3のcを参照)若しくはキートップ10が押圧方向に対して斜め方向に揺動したとき(図4を参照)において、凸部18は、キートップ10の押圧方向先端側の面と当接することによりストッパーとして機能することができる。
【0026】
押釦スイッチ用部材1は、キートップ10が押圧されていない場合において、キートップ10と凸部18との間の距離L1が、可動接点15と固定接点16との間の距離L3より長くなるよう構成されることが好ましく、プッシャー部12と開口部17との間の距離L2より長くなるよう構成されることがより好ましい。このように構成されることにより、押釦スイッチ用部材1は、キートップ10の押圧に伴って可動接点15と固定接点16,16とが接触するまでにキートップ10が凸部18に当接することなく、確実に可動接点15と固定接点16,16とを接触させることができる。距離L1は、距離L3との差が小さい方がストッパーとして高い効果を奏する。しかしながら、距離L3との差が小さい場合、組み付け公差やばらつきによりキートップ10の押圧に伴って可動接点15と固定接点16,16とが接触する前にキートップ10が凸部18に当接する虞がある。そこで、この実施形態において、距離L1は、距離L3+3mm以下が好ましく、距離L3+2mm以下がより好ましい。
【0027】
(7)可動接点
可動接点15は、可動接点15よりも押圧方向に位置する別の接点に接触してスイッチをオンまたはオフさせる部材である。この実施形態において、可動接点15は、プッシャー部12における押圧方向側の面に接着され、キートップ10の往復移動に伴って基板50上の固定接点16,16に対して接触と非接触とを可能とする部材である。可動接点15は、好ましくは、金属や導電性のゴム状弾性体等の導電性を有する材料から構成される。可動接点15の形状は、固定接点16,16に対して接触と非接触とを可能とする形状であれば、特に制約されない。なお、可動接点15は、押釦スイッチ用部材1にとって必須の部材ではない。例えば、キートップ11の直下にメタルドームを配置して、キートップ11の先端がメタルドームを押下し、メタルドームの直下に配置された固定接点16,16を導通させるようにしても良い。以後の各実施形態においても同様である。
【0028】
次に、押釦スイッチ用部材1の使用例について説明する。
【0029】
図3は、第1実施形態に係る押釦スイッチ用部材の使用例を説明するための図を示す。図4は、第1実施形態に係る押釦スイッチ用部材が斜め押し操作された状態の図2と同視の縦断面図を示す。
【0030】
キートップ10が押圧されていない無荷重状態においては、可動接点15と固定接点16,16とは非接触状態を維持している(図3のaを参照)。このとき、キートップ10と凸部18とは非接触状態であり、キートップ10の押圧方向先端側の面と凸部18との間に隙間が生じている。操作者がキートップ10を押圧していくと、ドーム部13が変形(座屈変形)して可動接点15が固定接点16,16に接触する(図3のbを参照)。この接触により、一方の固定接点16から可動接点15を通じて他方の固定接点16へと通電経路が形成されるため、スイッチがオン(若しくはオフ)となる。このとき、キートップ10と凸部18とは非接触状態を維持している。可動接点15と固定接点16,16の接触後も操作者がキートップ10を押圧する、すなわち、キートップ10が過剰に押圧されると、ドーム部13がさらに変形し、キートップ10の押圧方向先端側の面が凸部18に当接する(図3のcを参照)。このように、押釦スイッチ用部材1は、キートップ10が凸部18に当接することにより、キートップ10がさらに基板50の方向へ移動することを抑制することができる。よって、キートップ10から押圧方向(垂直下方)に過剰な押圧力が加えられた場合であっても、凸部18によりキートップ10の押圧方向へ移動を規制することができるため、可動接点15および/または固定接点16が損傷したり、ドーム部13に過剰な荷重が加わりドーム部13が破断する事態を抑制できる。
【0031】
操作者がキートップ10への押圧を解除すると、ドーム部13は自身の弾性力によって元の形状に戻るため、押圧部11、プッシャー部12および可動接点15は、基板50の方向と逆方向(図3の上方向)へ移動する。また、キートップ10は、押圧部11の基板50の方向と逆方向への移動に伴って当該逆方向へ移動し、初期状態である無荷重状態に戻る(図3のaを参照)。この結果、可動接点15は、固定接点16,16と非接触状態となるため、可動接点15を通じた通電経路が遮断され、スイッチがオフ(若しくはオン)となる。
【0032】
一般に、キートップ10から押圧方向(垂直下方)に過剰な押圧力が加えられた場合、当該押圧力によりドーム部13が座屈して大きく潰れ、その結果、ドーム部13が基板50に当接してドーム部13と基板50との間に密閉空間が形成される虞がある。この場合、ドーム部13が基板に吸着されるため、キートップ10への押圧が解除された場合であっても、ドーム部13が自身の弾性力によって元の形状に戻ることができず、押釦スイッチ用部材1が初期状態に戻ることができない事態が生じ得る。しかしながら、この実施形態に係る押釦スイッチ用部材1は、凸部18によりキートップ10の押圧方向へ移動を規制することができるため、ドーム部13が基板50に当接してドーム部13と基板50との間に密閉空間が形成される事態を抑制することができる。よって、キートップ10から押圧方向に過剰な押圧力が加えられた場合であっても、当該押圧の解除に伴って初期状態に戻ることができる。
【0033】
操作者により斜め押しの操作がなされた場合、キートップ10は、押圧方向(垂直下方)に対して斜め方向に揺動する(図4を参照)。なお、本願において、「斜め押し」は、例えば、キートップ10から垂直下方に対して斜め方向(図4の矢印F1方向)への押圧や、キートップ10の中央部から外れた位置(図4の矢印F2方向)の押圧等、ドーム部13が径方向外側に対して不均等な変形を生じるような押圧状態を意味する。この結果、斜め押しの操作がなされた状態において、キートップ10の天面は押圧前の面から傾斜した状態になる(図4を参照)。この実施形態では、図4に示すように、矢印F1若しくは矢印F2方向の斜め押しの操作により、押圧部11a(図4に示す左側の押圧部)側に大きな押圧力がかかる場合を例に挙げて説明する。斜め押しによる押圧力が押圧部11aに連接されるドーム部13a,13bの耐荷重を超えると、ドーム部13a,13bが変形する。この実施形態において、押釦スイッチ用部材1は、押圧部11aに連接されるドーム部13a,13bのうち、ドーム部13aが座屈して圧縮され、ドーム部13bが伸張される。また、押圧部11b(図4に示す右側の押圧部)に連接されるドーム部13c,13dのうち、ドーム部13cが座屈して圧縮され、ドーム部13dが伸張される。
【0034】
このような斜め押しの操作がなされた場合、押釦スイッチ用部材1は、キートップ10の押圧方向先端側の面が凸部18に当接する(図4を参照)。このように、押釦スイッチ用部材1は、キートップ10が凸部18に当接することにより、斜め押しの操作がなされた場合であっても、キートップ10がさらに基板50側へ斜め方向に移動することを抑制することができる。よって、斜め押しによりキートップ10が押圧方向に対して斜め方向に揺動した場合であっても、凸部18によりキートップ10の押圧方向へ移動を規制することができるため、可動接点15および/または固定接点16が損傷したり、ドーム部13a,13b,13c,13dに過剰な荷重が加わりドーム部13a,13b,13c,13dが破断する事態を抑制できる。
【0035】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係る押釦スイッチ用部材について説明する。先の実施形態と共通する部分については、同じ符号を付して重複した説明を省略する。
【0036】
図5は、第2実施形態に係る押釦スイッチ用部材の平面図を示す。
【0037】
第2実施形態に係る押釦スイッチ用部材1aは、第1実施形態に係る押釦スイッチ用部材1と類似の構造を有するが、凸部18に代えて凸部18aを備える点において、第1実施形態に係る押釦スイッチ用部材1と異なる。
【0038】
凸部18aは、凸部18と同様に、ドーム部13の径方向外側にてベース部14からキートップ10側に突出する部材である。凸部18aは、平面視にてドーム部13の外周の少なくとも一部に複数個形成されている。この実施形態において、凸部18aは、平面視にて矩形状の部材であって、各ドーム部13,13の外周を囲うように、それぞれ4つ配置されている。なお、凸部18aの平面視における形状は、矩形状に限定されず、例えば、楕円形状、多角形状等であっても良い。また、凸部18aは、平面視にてドーム部13の外周の少なくとも一部に複数個形成されていれば、平面視における位置および個数は制約されない。凸部18aは、凸部18と同様に、その幅がドーム部13の幅より大きくなるよう形成されている。凸部18aのその他の構成は、凸部18と同様であるため、詳細を省略する。また、押釦スイッチ用部材1aは、押釦スイッチ用部材1と同様に、キートップ10が押圧されていない場合において、キートップ10と凸部18aとの間の距離が、可動接点15と固定接点16との間の距離より長くなるよう構成されることが好ましく、プッシャー部12と開口部17との間の距離より長くなるよう構成されることがより好ましい。このように構成された押釦スイッチ用部材1aもまた、第1実施形態と同様の効果を奏する。
【0039】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態に係る押釦スイッチ用部材について説明する。先の実施形態と共通する部分については、同じ符号を付して重複した説明を省略する。
【0040】
図6は、第3実施形態に係る押釦スイッチ用部材の平面図を示す。
【0041】
第3実施形態に係る押釦スイッチ用部材1bは、第1実施形態に係る押釦スイッチ用部材1と類似の構造を有するが、凸部18に代えて凸部18bを備える点において、第1実施形態に係る押釦スイッチ用部材1と異なる。
【0042】
凸部18bは、凸部18と同様に、ドーム部13の径方向外側にてベース部14からキートップ10側に突出する部材である。凸部18bは、平面視にて2つのドーム部13,13の間に形成されている。この実施形態において、凸部18bは、平面視にて矩形状の部材であって、2つのドーム部13,13の間に1つ配置されている。先述の各実施形態において、押釦スイッチ用部材1、1aは、各ドーム部13の外周を囲うように凸部18,18aが形成されていた。すなわち、凸部18,18aは、各ドーム部13に対して、それぞれストッパーとして形成されていた。しかしながら、押釦スイッチ用部材1bは、2つのドーム部13,13のストッパーとして1つの凸部18bが形成されている点で、先述の各実施形態と相違する。なお、凸部18bの平面視における形状は、矩形状に限定されず、例えば、楕円形状、多角形状等であっても良い。また、凸部18bは、2つのドーム部13,13のストッパーとして機能するように構成されていれば、平面視にて2つのドーム部13,13の間における位置および個数は制約されない。凸部18bは、凸部18と同様に、その幅がドーム部13の幅より大きくなるよう形成されている。凸部18bのその他の構成は、凸部18と同様であるため、詳細を省略する。また、押釦スイッチ用部材1bは、押釦スイッチ用部材1と同様に、キートップ10が押圧されていない場合において、キートップ10と凸部18bとの間の距離が、可動接点15と固定接点16との間の距離より長くなるよう構成されることが好ましく、プッシャー部12と開口部17との間の距離より長くなるよう構成されることがより好ましい。このように構成された押釦スイッチ用部材1bもまた、第2実施形態と同様の効果を奏する。
【0043】
(その他の実施形態)
上述のように、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、これらに限定されることなく、種々変形して実施可能である。
【0044】
先述の各実施形態において、キートップ10、押圧部11、プッシャー部12、ドーム部13およびベース部14の各形状は例示であり、それぞれ用途等に応じた種々の形状とすることができる。また、押圧部11およびドーム部13の平面視の形状は同一形状である必要はなく、例えば、押圧部11の平面視の形状を円形とし、ドーム部13の平面視の形状を四角形とするようにしても良い。
【0045】
また、ドーム部13は、縦断面視にて略逆V字形状を有しているが、これに限定されず、例えば、縦断面視にて逆椀形状等の他の形状を有していても良い。
【0046】
また、ベース部14は、基板50上に設けられていなくても良い。また、ベース部14は、開口部17を備えていなくても良い。すなわち、ベース部14は、少なくともプッシャー部12が往復可動であって厚さ方向に貫通しない空間を備えることが好ましい。この場合、固定接点16,16は、当該空間の底部に設けられていることが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、例えば、自動車、車載用電子機器、携帯通信機器、パーソナルコンピューター、カメラ、家庭用オーディオ機器、家庭用電化製品等の押圧式のキーを備える各種機器に用いるための押釦スイッチを構成するために利用可能である。
【符号の説明】
【0048】
1,1a,1b・・・押釦スイッチ用部材、10・・・キートップ、11,11a,11b・・・押圧部、12・・・プッシャー部、13,13a、13b,13c,13d・・・ドーム部、14・・・ベース部、15・・・可動接点、16・・・固定接点(別の接点の一例)、18,18a,18b・・・凸部。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7