(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022097832
(43)【公開日】2022-07-01
(54)【発明の名称】ガス分離システム、および炭化水素製造システム
(51)【国際特許分類】
B01D 53/04 20060101AFI20220624BHJP
C07C 1/12 20060101ALI20220624BHJP
C07C 9/04 20060101ALI20220624BHJP
C07B 61/00 20060101ALI20220624BHJP
【FI】
B01D53/04 230
C07C1/12
C07C9/04
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020211017
(22)【出願日】2020-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】100160691
【弁理士】
【氏名又は名称】田邊 淳也
(74)【代理人】
【識別番号】100144510
【弁理士】
【氏名又は名称】本多 真由
(72)【発明者】
【氏名】小宅 教文
(72)【発明者】
【氏名】廣田 靖樹
(72)【発明者】
【氏名】山本 征治
(72)【発明者】
【氏名】神谷 隆太
(72)【発明者】
【氏名】永田 哲治
(72)【発明者】
【氏名】堀部 伸光
(72)【発明者】
【氏名】山本 佳道
【テーマコード(参考)】
4D012
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4D012BA01
4D012BA02
4D012BA03
4D012CA03
4D012CB16
4D012CD01
4D012CD04
4D012CD07
4D012CE01
4D012CF10
4D012CG01
4D012CH03
4D012CH10
4D012CJ02
4D012CJ05
4H006AA02
4H006AB84
4H006AC29
4H006BA61
4H006BC13
4H006BD84
4H006BE20
4H006BE41
4H039CA11
4H039CB20
(57)【要約】
【課題】 ガス分離システムにおいて、パージガスによる二酸化炭素の脱離効率を向上させる技術を提供する。
【解決手段】 複数の吸着器を備えるガス分離システムは、複数の吸着器のうち、第1吸着器と第2吸着器とを直列に接続可能な接続流路と、第1吸着器にパージガスを供給可能なパージガス供給流路と、第1吸着器と第2吸着器に二酸化炭素が吸着された状態で、パージガス供給流路を介して、第1吸着器にパージガスを供給させ、第1吸着器から二酸化炭素を脱離させる第1脱離工程と、接続流路を介して第1吸着器に第2吸着器を接続させ、第1吸着器内を流通したパージガスを、接続流路を介して第2吸着器に流入させ、第2吸着器から二酸化炭素を脱離させる第2脱離工程を、同時に実行可能な制御部と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化炭素を吸着可能な吸着材を内部に収容する複数の吸着器を備えるガス分離システムであって、
前記複数の吸着器のうち、第1吸着器と第2吸着器とを直列に接続可能な接続流路と、
前記第1吸着器にパージガスを供給可能なパージガス供給流路と、
前記第1吸着器と前記第2吸着器に二酸化炭素が吸着された状態で、前記パージガス供給流路を介して、前記第1吸着器に前記パージガスを供給させ、前記第1吸着器から二酸化炭素を脱離させる第1脱離工程と、前記接続流路を介して前記第1吸着器に前記第2吸着器を接続させ、前記第1吸着器内を流通したパージガスを、前記接続流路を介して前記第2吸着器に流入させ、前記第2吸着器から二酸化炭素を脱離させる第2脱離工程を、同時に実行可能な制御部と、
を備える、
ガス分離システム。
【請求項2】
請求項1に記載のガス分離システムであって、
二酸化炭素を含有する二酸化炭素含有ガスを、前記第1吸着器および前記第2吸着器と異なる第3吸着器に供給可能な、二酸化炭素含有ガス供給流路をさらに備え、
前記制御部は、
前記二酸化炭素含有ガス供給流路を介して、前記第3吸着器に前記二酸化炭素含有ガスを供給させて、二酸化炭素を吸着させる吸着工程を、前記第1脱離工程と同時に実行可能であり、
同時に実行される前記第1脱離工程、前記第2脱離工程、および前記吸着工程を含む吸脱着工程を、前記第1脱離工程、前記第2脱離工程、および前記吸着工程のそれぞれが実行される前記第1吸着器、前記第2吸着器、および前記第3吸着器を変更して繰り返し実行可能である、
ガス分離システム。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のガス分離システムであって、
前記制御部は、
前記第2脱離工程の一部の期間において、前記第1吸着器内を流通したパージガスを、前記接続流路を介して前記第2吸着器に流入させる、
ガス分離システム。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のガス分離システムであって、
前記パージガスは、水素である、
ガス分離システム。
【請求項5】
炭化水素製造システムであって、
請求項4に記載のガス分離システムと、
前記ガス分離システムと接続され、前記ガス分離システムにより分離された二酸化炭素と、前記パージガスとして用いられた水素との混合ガスを用いて、炭化水素化合物を生成する炭化水素生成部と、を備える、
炭化水素製造システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化炭素含有ガスから二酸化炭素を分離するガス分離システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、二酸化炭素と水素からメタンを製造するメタン製造装置において、二酸化炭素吸着性能を有する吸着材を収容する吸着塔を2つ備え、それぞれの吸着塔が二酸化炭素の吸着・脱離を繰り返して、二酸化炭素含有ガスから二酸化炭素を分離し、分離された二酸化炭素と離脱の際に用いられた水素とを用いてメタンを製造する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術によれば、水素で吸着塔内部をパージして二酸化炭素を脱離させ、その後に、パージで用いられた水素を利用してメタンを生成するため、パージに用いられる水素の量が限られる。そのため、パージガスによる吸着塔からの二酸化炭素の脱離効率を十分に得ることができない場合がある。このような問題は、パージガスとして水素を利用するメタン製造装置に限らず、吸着材を用いて二酸化炭素を分離する二酸化炭素分離システムに共通する課題である。
【0005】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、ガス分離システムにおいて、パージガスによる二酸化炭素の脱離効率を向上させる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現することが可能である。
【0007】
(1)本発明の一形態によれば、二酸化炭素を吸着可能な吸着材を内部に収容する複数の吸着器を備えるガス分離システムが提供される。このガス分離システムは、前記複数の吸着器のうち、第1吸着器と第2吸着器とを直列に接続可能な接続流路と、前記第1吸着器にパージガスを供給可能なパージガス供給流路と、前記第1吸着器と前記第2吸着器に二酸化炭素が吸着された状態で、前記パージガス供給流路を介して、前記第1吸着器に前記パージガスを供給させ、前記第1吸着器から二酸化炭素を脱離させる第1脱離工程と、前記接続流路を介して前記第1吸着器に前記第2吸着器を接続させ、前記第1吸着器内を流通したパージガスを、前記接続流路を介して前記第2吸着器に流入させ、前記第2吸着器から二酸化炭素を脱離させる第2脱離工程を、同時に実行可能な制御部と、を備える。
【0008】
この構成によれば、第1吸着器を通過したパージガスを吸着器に流入させることができるため、第2吸着器も同時に脱離させることができる。第1吸着器内の二酸化炭素を脱離させたパージガスを含む混合ガスは、脱離工程開始直後は二酸化炭素の濃度が高いが、その後徐々に二酸化炭素濃度が下がる。この混合ガスを第2吸着器に流入させると、第2吸着器内の二酸化炭素も脱離が可能になる。そのため、パージガスによる二酸化炭素の脱離効率を向上させることができる。
【0009】
(2)上記形態のガス分離システムであって、二酸化炭素を含有する二酸化炭素含有ガスを、前記第1吸着器および前記第2吸着器と異なる第3吸着器に供給可能な、二酸化炭素含有ガス供給流路をさらに備え、前記制御部は、前記二酸化炭素含有ガス供給流路を介して、前記第3吸着器に前記二酸化炭素含有ガスを供給させて、二酸化炭素を吸着させる吸着工程を、前記第1脱離工程と同時に実行可能であり、同時に実行される前記第1脱離工程、前記第2脱離工程、および前記吸着工程を含む吸脱着工程を、前記第1脱離工程、前記第2脱離工程、および前記吸着工程のそれぞれが実行される前記第1吸着器、前記第2吸着器、および前記第3吸着器を変更して繰り返し実行可能であってもよい。
【0010】
この構成によれば、第3吸着器に二酸化炭素含有ガスを供給して、第3吸着器に二酸化炭素を吸着させている間に、第1吸着器および第2吸着器内に吸着された二酸化炭素を脱離させることができる。すなわち、吸着工程の時間の間に、第1吸着器および第2吸着器の脱離工程を行うため、疑似的にパージガス量を増やし、脱離時間も長くすることが可能になる。その結果、限られた量のパージガスにより、限られた時間における二酸化炭素の脱離効率を向上させることができる。
【0011】
(3)上記形態のガス分離システムであって、前記制御部は、前記第2脱離工程の一部の期間において、前記第1吸着器内を流通したパージガスを、前記接続流路を介して前記第2吸着器に流入させてもよい。このようにすると、例えば、第1吸着器から排出される混合ガスの二酸化炭素濃度が低く、第1吸着器内を流通したパージガスによる第2吸着器の二酸化炭素脱離が十分に行われると予想される期間にのみ、1吸着器内を流通したパージガスを、第2吸着器に流入させる等、適切にパージガスの再利用を行うことができる。
【0012】
(4)上記形態のガス分離システムであって、前記パージガスは、水素でもよい。このようにすると、例えば、吸着器から出てきたパージガスとしての水素と、脱離された二酸化炭素とを用いて、炭化水素を製造することができる。このようにすると、他のパージガスを用いる場合と比較して、炭化水素の純度を向上させることができる。
【0013】
(5)本発明の別の形態によれば、炭化水素製造システムが提供される。この炭化水素製造システムは、上記形態のガス分離システムと、前記ガス分離システムと接続され、前記ガス分離システムにより分離された二酸化炭素と、前記パージガスとして用いられた水素との混合ガスを用いて、炭化水素化合物を生成する炭化水素生成部と、を備える。この構成によれば、炭化水素生成部は、二酸化炭素と水素の濃度が高い混合ガスを用いて炭化水素化合物を生成することができる。これにより、純度の高い炭化水素化合物を生成することができる。また、ガス分離システムは、パージガスを再利用することによりパージガスによる二酸化炭素の脱離効率が向上されているため、炭化水素生成部における炭化水素生成効率を向上させることができる。また、炭化水素生成部のメタンの生成における余剰の水素量を低減させることができる。
【0014】
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能であり、例えば、ガス分離方法、炭化水素製造方法、ガス分離システムの制御方法、炭化水素製造システムの制御方法、これらの制御方法をコンピュータに実行させるコンピュータプログラム、そのコンピュータプログラムを配布するためのサーバ装置、そのコンピュータプログラムを記憶した一時的でない記憶媒体等、二酸化炭素循環システム、炭化水素を燃料とする燃料製造システムなどの形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】第1実施形態のガス分離システムの概略構成を示す説明図である。
【
図2】ガス分離システムにおける吸着器の切替タイミングの説明図である。
【
図3】ガス分離システムにおける工程1の説明図である。
【
図4】ガス分離システムにおける工程2の説明図である。
【
図5】ガス分離システムにおける工程3の説明図である。
【
図6】工程1~工程3の開始時の二酸化炭素の吸着量を概念的に示す説明図である。
【
図7】比較例のガス分離システムの概略構成を示す説明図である。
【
図8】比較例のガス分離システムにおける吸着器の切替タイミングの説明図である。
【
図9】第1実施形態のガス分離システムの脱離工程における二酸化炭素吸着量の変化を示す図である。
【
図10】比較例のガス分離システムの脱離工程における二酸化炭素吸着量の変化を示す図である。
【
図11】第2実施形態のガス分離システムの概略構成を示す説明図である。
【
図12】第2実施形態のガス分離システムにおける吸着器の切替タイミングの説明図である。
【
図13】第2実施形態のガス分離システムにおける工程1Aの説明図である。
【
図14】第3実施形態のガス分離システムにおける吸着器の切替タイミングの説明図である。
【
図15】第3実施形態の工程1Bの第2脱離工程の説明図である。
【
図16】第4実施形態のガス分離システムの概略構成を示す説明図である。
【
図17】第4実施形態のガス分離システムにおける吸着器の切替タイミングの説明図である。
【
図18】第4実施形態の工程1Cの第2脱離工程の説明図である。
【
図19】第5実施形態の炭化水素製造システムの概略構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態のガス分離システム1の概略構成を示す説明図である。ガス分離システム1は、燃焼炉や内燃機関などから排出される排ガスに含まれる二酸化炭素を、分離し、回収する。ガス分離システム1は、複数の吸着器11、12、13(吸着器11、12、13を区別しない場合は、単に、吸着器10とも呼ぶ)と、二酸化炭素含有ガス供給流路20と、パージガスとしての水素を供給するパージガス供給流路70と、2つの吸着器10を直列に接続する接続流路80(接続流路81、接続流路82、および接続流路83)と、熱媒流路30と、混合ガス流路60と、サージタンク40と、制御部55とを備える。
【0017】
複数の吸着器11、12、13は、筒状に形成され、それぞれの内部に吸着材11a、12a、13aが収容されている。吸着材11a、12a、13aは、二酸化炭素吸蔵性能を有する材料、例えば、ゼオライト、活性炭、シリカゲルなどである。吸着器11、12、13のそれぞれには、二酸化炭素含有ガス供給流路20と、パージガス供給流路70と、混合ガス流路60と、熱媒流路30と、が接続されている。複数の吸着器11、12、13のそれぞれには、図示しない冷媒流路も形成されている。
【0018】
二酸化炭素含有ガス供給流路20は、二酸化炭素含有ガスとしての排ガスを排出する外部の排ガス供給装置(例えば、燃焼炉や内燃機関など)に接続されており、排ガス供給装置が排出する排ガスが流れる。二酸化炭素含有ガス供給流路20を流れる排ガスは、排ガス分流路21、22、23を介して、吸着器11、12、13に供給される。排ガス分流路21、22、23には、排ガス入口弁21a、22a、23aが、それぞれ、設けられている。排ガス入口弁21a、22a、23aのそれぞれは、制御部55の指令に応じて、吸着器11、12、13の内部への排ガスの供給を制御する。本実施形態において、二酸化炭素含有ガスとして、排ガスを例示しているが、二酸化炭素含有ガスは、排ガスでなくてもよい。
【0019】
混合ガス流路60は、
図1に示すように、混合ガス分流路61、62、63を介して、吸着器11、12、13のそれぞれに接続されている。混合ガス流路60には、吸着材11a、12a、13aから脱離した二酸化炭素と、パージガスとしての水素を含む混合ガスが流れる。混合ガスには、例えば、窒素、酸素等が含まれる場合がある。混合ガス分流路61、62、63には、混合ガス出口弁61a、62a、63aが設けられている。混合ガス出口弁61a、62a、63aのそれぞれは、制御部55の指令に応じて、吸着器11、12、13からの混合ガスの流れを制御する。
【0020】
パージガス供給流路70は、吸着器11、12、13の内部に、パージガスを供給する。外部のパージガス供給部(例えば、水素タンク)に接続しているパージガス供給流路70には、制御部55の指令に応じて、パージガス供給流路70を流れる水素の流量を調整する流量制御器70aが設けられている。パージガス供給流路70を流れる水素は、パージガス分流路71、72、73を介して、吸着器11、12、13に供給される。パージガス分流路71、72、73には、それぞれ、パージガス入口弁71a、72a、73aが設けられている。パージガス入口弁71a、72a、73aのそれぞれは、制御部55の指令に応じて、吸着器11、12、13の内部への水素の流れを制御する。
【0021】
接続流路80は、2つの吸着器10を直列に接続し、一方の吸着器10から排出される混合ガス(パージガスと二酸化炭素を含む混合ガス)を他方の吸着器10に供給する。詳しくは、接続流路81は、混合ガス分流路61とパージガス分流路72とを接続して、吸着器11と吸着器12とを直列に接続する。接続流路82は、混合ガス分流路62とパージガス分流路73とを接続して、吸着器12と吸着器13とを直列に接続する。接続流路83は、混合ガス分流路63とパージガス分流路71とを接続して、吸着器13と吸着器11とを直列に接続する。すなわち、接続流路80はバイパス流路である。接続流路81、82、83には、それぞれ、接続流路弁81a、82a、83aが設けられている。接続流路弁81a、82a、83aのそれぞれは、制御部55の指令に応じて、接続流路80内のガスの流れを制御する。
【0022】
熱媒流路30は、図示せざる熱媒タンクに接続され、熱媒流路30内を熱媒が流れる。熱媒流路30を流れる熱媒は、熱媒分流路31、32、33を介して、吸着器11、12、13に供給される。これにより、熱媒により吸着器11、12、13に熱が投入される。熱媒流路30には、熱媒を加熱するヒータ30aが設けられており、制御部55がヒータ30aを制御することにより、熱媒の温度が制御される。本実施形態では、熱媒としてオイルを用いているが、他の実施形態では、水、スチーム、およびガスなどを用いてもよい。
【0023】
熱媒分流路31、32、33には、熱媒入口弁31a、32a、33aが設けられている。熱媒入口弁31a、32a、33aのそれぞれは、制御部55の指令に応じて、吸着器11、12、13への熱媒の流れを制御する。本実施形態における吸着器11、12、13は、二重殻タンク(二重管)であり、熱媒は、外殻と内殻との間の間隙に流入する。これにより、熱媒により熱が吸着器11、12、13内に投入される。他の実施形態では、例えば、熱媒分流路31、32、33が、それぞれ、吸着器11、12、13の外周に巻き付けられていてもよい。このようにしても、熱媒により吸着器11、12、13内に熱を投入することができる。他の実施形態では、吸着器10に設けられたヒータ(例えば、電熱線、温風、光照射等)を用いて、吸着器10を加熱してもよい。
【0024】
サージタンク40には、混合ガス流路60が接続されている。サージタンク40は、混合ガス流路60を流れる混合ガスを貯蔵する。
【0025】
制御部55は、ROM、RAM、および、CPUを含んで構成されるコンピュータであり、後述するガス分離処理における吸着器11、12、13の切り替えや、弁の開閉制御など、ガス分離システム1の全体の制御をおこなう。制御部55の制御内容の詳細は、後述する。
【0026】
上述のガス分離処理を実現するプログラムは、制御部55に、予め記憶されていてもよい。また、プログラムはプログラム提供者側から通信ネットワークを介して、提供されてもよい。また、プログラムは、市販され、流通している可搬型記憶媒体に格納されていてもよい。この場合、この可搬型記憶媒体は外付け又は内蔵の読取装置にセットされて、制御部55によってそのプログラムが読み出されて、実行されてもよい。可搬型記憶媒体としてはCD-ROM、DVD-ROM、フレキシブルディスク、光ディスク、光磁気ディスク、ICカード、USBメモリ装置など様々な形式の記憶媒体を使用することができる。このような記憶媒体に格納されたプログラムが読取装置によって読み取られる。
【0027】
図2は、本実施形態のガス分離システム1における吸着器10の切替タイミングの説明図である。本実施形態のガス分離処理では、図示するように、工程1、工程2、および工程3を1サイクルとして、このサイクルが、複数回繰り返される。各工程では、吸着工程、第2脱離工程(加熱+脱離)、および第1脱離工程のそれぞれが、3つの吸着器11、12、および13のいずれかにおいて実行される。具体的には、工程1では、吸着器13において吸着工程が実行され、吸着器11において第1脱離工程が実行され、吸着器12において第2脱離工程が実行される。工程2では、吸着器11において吸着工程が実行され、吸着器12において第1脱離工程が実行され、吸着器13において第2脱離工程が実行される。工程3では、吸着器12において吸着工程が実行され、吸着器13において第1脱離工程が実行され、吸着器11において第2脱離工程が実行される。本実施形態のガス分離システム1では、このようにして、いずれか1つの吸着器において排ガス中の二酸化炭素を吸着すると同時に、他の2つの吸着器において、吸着された二酸化炭素を脱離する。これにより、定常的に、二酸化炭素含有ガス(排ガス)を供給することが可能である。本実施形態における工程1、2、3のそれぞれを「吸脱着工程」とも呼ぶ。
【0028】
1つの吸着器10に注目すると、吸着工程、第2脱離工程、第1脱離工程が、この順に繰り返し行われる。以下に、吸着器13を例に、説明する。吸着工程では、吸着器13に二酸化炭素含有ガスとしての排ガスが供給されると共に、冷媒が供給される。吸着器13を冷却することにより、排ガス中の二酸化炭素が吸着材13aに吸着される。所定の吸着時間が経過すると、第2脱離工程に移行する。本実施形態において、吸着時間は、吸着器13の吸着材13aに満量の二酸化炭素が吸着されるのに要する時間に設定されている。吸着時間は、実験的、計算、シミュレーション等によって、求めることができる。本実施形態のガス分離処理において、各工程の長さは、同一の吸着時間に設定されている。
【0029】
第2脱離工程では、吸着器13に熱媒が供給されると共に、パージガスとしての水素が供給される。吸着器13に熱媒が供給され、吸着材13aが昇温されると、吸着材13aにトラップされている二酸化炭素が吸着材13aから脱離しやすくなる。第2脱離工程では、第1脱離工程が行われている吸着器12(
図2の工程2)から排出された二酸化炭素とパージガス(本実施形態では水素)とを含む混合ガスが吸着器13に供給される。すなわち、接続流路82(
図1)を介してパージガスが供給される。吸着器13にパージガスを含む混合ガスが供給されると、吸着器13の内部の二酸化炭素の分圧が低下するため、吸着材13aに吸着されている二酸化炭素が吸着材13aから脱離する。吸着時間が経過すると、第1脱離工程に移行する。
【0030】
第1脱離工程では、吸着器13に、パージガス供給流路70を介してパージガスが供給される。すなわち、第1脱離工程では、外部のパージガス供給部(例えば、水素タンク)からパージガスが供給される。吸着器13は、第2脱離工程において加熱されているため(
図2)、吸着材13aから二酸化炭素が脱離しやすい状態になっている。吸着器13にパージガスが供給されると、吸着器13の内部の二酸化炭素の分圧が低下するため、吸着材13aに吸着されている二酸化炭素が吸着材13aから脱離する。吸着時間が経過すると、吸着工程に戻る。
【0031】
図3は、ガス分離システム1における工程1の説明図であり、
図4は、ガス分離システム1における工程2の説明図であり、
図5は、ガス分離システム1における工程3の説明図である。ガス分離システム1では、3つの吸着器11、12、13のそれぞれに、順番に排ガス(二酸化炭素含有ガス)を供給することにより、排ガスから二酸化炭素を分離する。ガス分離システム1では、2つの吸着器10が、接続流路80を介して直列に接続される。そして、第1脱離工程が実行される吸着器10を流通したパージガスが第2脱離工程が実行される吸着器10に供給される。ここで、第2脱離工程の吸着器10では、熱媒が供給されて加熱されると共に、パージガス(混合ガス)が供給される。
図3~5において、排ガス、熱媒、パージガス(水素)の流れを太い実線で示している。
【0032】
図3に示すように、工程1(
図2)では、吸着器13で吸着工程が行われ、吸着器13に排ガスが供給される。具体的には、制御部55により排ガス入口弁23aが開弁されると共に、排ガス入口弁21aおよび排ガス入口弁22aが閉弁され、二酸化炭素含有ガス供給流路20および排ガス分流路23を介して、吸着器13に排ガスが供給される。吸着器13では、排ガスに含まれる二酸化炭素が吸着材13aによってトラップされ、吸着材13aにトラップされなかった窒素や水分などの大部分のガスは、オフガスとして、ガス分離システム1の外部、例えば、大気に放出される。
【0033】
吸着器11で第1脱離工程が行われ、吸着器11にパージガスが供給される。具体的には、制御部55によりパージガス入口弁71aが開弁されると共に、パージガス入口弁72aおよびパージガス入口弁73aが閉弁され、パージガス供給流路70およびパージガス分流路71を介して、吸着器11にパージガスが供給される。吸着器11においてパージガスが供給されると、吸着材11aに吸着されている二酸化炭素が吸着材11aから脱離する。吸着材11aから脱離した二酸化炭素は、吸着器11の内部においてパージガス(水素)と混合される。工程1において、混合ガス出口弁61aが閉弁されると共に、接続流路弁81aが開弁されているため、吸着器11から排出される混合ガスは、混合ガス分流路61、接続流路81、およびパージガス分流路72を通って、吸着器12に流入する。
【0034】
吸着器12で第2脱離工程が行われ、吸着器12に熱媒と上述の混合ガスが供給される。具体的には、制御部55により熱媒が所定の温度(投入熱量)になるようにヒータ30aが制御されると共に、熱媒入口弁32aが開弁される。これにより、熱媒流路30を流れる熱媒は、熱媒分流路32を介して、吸着器12に供給される。吸着器12において、熱媒が供給されると共に、パージガスを含む混合ガスが供給されると、吸着材12aに吸着されている二酸化炭素が吸着材12aから脱離する。吸着材12aから脱離した二酸化炭素は、吸着器12の内部においてパージガスを含む混合ガスと混合される。工程1において、混合ガス出口弁62aが開弁されているため、吸着器12から排出される混合ガスは、混合ガス分流路62および混合ガス流路60を通ってサージタンク40に貯留される。第1脱離工程が行われる吸着器10を「第1吸着器」、第2脱離工程が行われる吸着器10を「第2吸着器」、吸着工程が行われる吸着器10を「第3吸着器」と呼ぶとき、工程1において、吸着器11が「第1吸着器」、吸着器12が「第2吸着器」、吸着器13が「第3吸着器」である。
【0035】
図4に示すように、工程2では、吸着器11で吸着工程が行われ、吸着器11に、二酸化炭素含有ガス供給流路20および排ガス分流路21を介して、排ガスが供給される。吸着器12で第1脱離工程が行われ、吸着器12には、パージガス供給流路70およびパージガス分流路72を介してパージガスが供給される。吸着器13で第2脱離工程が行われ、吸着器13に、混合ガス分流路62、接続流路82、およびパージガス分流路73を介して、吸着器12から排出される二酸化炭素とパージガスを含む混合ガスが、供給される。吸着器13から排出される混合ガスは、混合ガス分流路63および混合ガス流路60を通ってサージタンク40に貯留される。工程2において、吸着器11が「第3吸着器」、吸着器12が「第1吸着器」、吸着器13が「第2吸着器」である。
【0036】
図5に示すように、工程3では、吸着器12で吸着工程が行われ、吸着器12に、二酸化炭素含有ガス供給流路20および排ガス分流路22を介して、排ガスが供給される。吸着器13で第1脱離工程が行われ、吸着器13には、パージガス供給流路70およびパージガス分流路73を介してパージガスが供給される。吸着器11で第2脱離工程が行われ、吸着器11には、混合ガス分流路63、接続流路83、およびパージガス分流路71を介して、吸着器13から排出される二酸化炭素とパージガスを含む混合ガスが供給される。吸着器11から排出される混合ガスは、混合ガス分流路61および混合ガス流路60を通ってサージタンク40に貯留される。工程3において、吸着器11が「第2吸着器」、吸着器12が「第3吸着器」、吸着器13が「第1吸着器」である。すなわち、本実施形態のガス分離システム1において、制御部55は、第1吸着器、第2吸着器、および第3吸着器を変更して、吸脱着工程を繰り返し実行している。
【0037】
図6は、工程1~工程3の開始時の二酸化炭素の吸着量を概念的に示す説明図である。
図6では、二酸化炭素の吸着量をドットハッチングを付して示している。
図6において、吸着器10の全体にハッチングが付してあると、二酸化炭素の吸着量が100%であることを示し、吸着器10にハッチングが付してないと、二酸化炭素の吸着量が0%であることを示す。ここで、100%とは、吸着工程終了時時に吸着器10に吸着されている量である。上述の通り、本実施形態のガス分離システム1では、1つの吸着器10に注目してみると、吸着工程→第2脱離工程→脱離工程を1サイクルとして、複数サイクルが繰り返される(
図2)。
図6では、複数サイクルが行われた後の1サイクルを例示している。
【0038】
図6(A)に示すように、工程1の開始時、吸着器13の吸着材13aには二酸化炭素が吸着されておらず(二酸化炭素の吸着量0%)、吸着器11の吸着材11aと吸着器12の吸着材12aには二酸化炭素が吸着されている。吸着器12における二酸化炭素の吸着量は100%であり、吸着器11における吸着量は、吸着器12より少ない(例えば、10%程度)。吸着器11は直前の工程3で第2脱離工程が行われており、吸着材11aが昇温された状態で、かつ一部の二酸化炭素が脱離された状態である。
【0039】
工程1では、吸着器11にパージガスが供給され、吸着器13に二酸化炭素含有ガスが供給される。吸着器11と吸着器12が直列に接続されており、吸着器11内を流通したパージガスと、吸着器11内の吸着材11aから脱離した二酸化炭素を含む混合ガスが、吸着器12に流入する。
【0040】
工程1において、吸着器11の吸着材11aに吸着されている二酸化炭素が全て脱離されるため、工程2の開始時、吸着器11における二酸化炭素の吸着量は0%である。すなわち、吸着器11には二酸化炭素が吸着されていない(
図6(B))。また、工程1において吸着器12に供給される混合ガスにはパージガスが含まれおり、工程1において吸着器12の吸着材12aに吸着されている二酸化炭素の一部が脱離されるため、工程2の開始時、吸着器12における二酸化炭素の吸着量は少量(例えば、10%程度)である(
図6(B))。また、工程1では、吸着器13に二酸化炭素含有ガスが供給され、吸着材13aに二酸化炭素が吸着されるため、工程2の開始時、吸着器13における二酸化炭素の吸着量は100%である(
図6(B))。
【0041】
図6(B)に示すように、工程2では、吸着器12にパージガスが供給され、吸着器11に二酸化炭素含有ガスが供給される。吸着器12と吸着器13が直列に接続されており、吸着器12内を流通したパージガスと、吸着器12内の吸着材12aから脱離した二酸化炭素を含む混合ガスが、吸着器13に流入する。
【0042】
工程2において、吸着器12の吸着材12aに吸着されている残りの二酸化炭素の全てが脱離されるため、工程3の開始時、吸着器11における二酸化炭素の吸着量は0%である。すなわち、吸着器11には二酸化炭素が吸着されていない(
図6(C))。また、工程2において吸着器13に供給される混合ガスにはパージガスが含まれおり、工程2において吸着器13の吸着材13aに吸着されている二酸化炭素の一部が脱離されるため、工程3の開始時、吸着器13における二酸化炭素の吸着量は少量(例えば、10%程度)である(
図6(C))。また、工程2では、吸着器11に二酸化炭素含有ガスが供給され、吸着材11aに二酸化炭素が吸着されるため、工程3の開始時、吸着器11における二酸化炭素の吸着量は100%である(
図6(C))。
【0043】
このように、工程1、2、3を1サイクルとして繰り返すことにより、各吸着器10において、吸着工程→第2脱離工程(加熱+脱離)→第1脱離工程が繰り返し行われる。上述の通り、第2脱離工程(加熱+脱離)において、吸着器10に吸着された二酸化炭素の多くを脱離させることができ、続く第1脱離工程により、残りの二酸化炭素を脱離させることができるため、各吸着材に吸着された二酸化炭素の全てを脱離させることができる。
【0044】
以上説明したように、本実施形態のガス分離システム1では、2つの吸着器10を直列に接続し、1つの吸着器10内を流通して二酸化炭素を脱離させたパージガスを用いて、後段の吸着器10内の二酸化炭素を脱離させている。すなわち、パージガスを再利用しているため、パージガスによる二酸化炭素脱離効率を向上させることができる。
【0045】
次に、本実施形態の効果について、比較例と比較して説明する。
図7は、比較例のガス分離システム1Pの概略構成を示す説明図である。比較例のガス分離システム1Pは、本実施形態のガス分離システム1における接続流路80(接続流路81、82、83)を有さない。ガス分離システム1Pは、他の構成は本実施形態のガス分離システム1と同一である。以下、ガス分離システム1と同一の構成には同一の符号を付し、先行する説明を参照する。
【0046】
図8は、比較例のガス分離システム1Pにおける吸着器10の切替タイミングの説明図である。比較例のガス分離処理では、上記実施形態と同様に、工程1P、工程2P、および工程3Pを1サイクルとして、このサイクルが、複数回繰り返される。比較例のガス分離システム1Pにおいて行われる各工程では、吸着工程、加熱工程、および脱離工程のそれぞれが、3つの吸着器11、12、および13のいずれかにおいて実行される。具体的には、工程1Pでは、吸着器13において吸着工程が実行され、吸着器12において加熱工程が実行され、吸着器11において脱離工程が実行される。工程2Pでは、吸着器11において吸着工程が実行され、吸着器13において加熱工程が実行され、吸着器12において脱離工程が実行される。工程3Pでは、吸着器12において吸着工程が実行され、吸着器11において加熱工程が実行され、吸着器13において脱離工程が実行される。比較例のガス分離システム1Pでは、このようにして、いずれか1つの吸着器10において二酸化炭素含有ガス(排ガス)中の二酸化炭素を吸着すると同時に、他の1つの吸着器10を加熱して吸着材を昇温させ、加熱済みの他の1つの吸着器10において、吸着された二酸化炭素を脱離する。
【0047】
図9は、本実施形態のガス分離システム1の脱離工程における二酸化炭素吸着量の変化を示す図である。
図9では、
図2に示す工程1における吸着器11(第1脱離工程)と、吸着器12(第2脱離工程)における二酸化炭素吸着量を例示する。
図9において、第1脱離工程を実線で示し、第2脱離工程を破線で示す。この例では、1工程の時間を2000秒として設計している。吸着器12は、前の工程(工程3)において、吸着工程が行われているため、
図9に示す工程1の開始時の吸着量は、100%である。吸着器11は、前の工程(工程3)において、第2脱離工程(加熱+脱離)が行われており、90%程度が脱離されているため、二酸化炭素吸着量は、10%程度である。この例では、吸着器11に、満量の二酸化炭素と過不足なく反応する量のパージガスを流入させた。吸着器11と吸着器12とを直列に接続し、吸着器11から排出された混合ガスを吸着器12に供給し、排出させた。その結果、図示するように、吸着器11の二酸化炭素吸着量は、ほぼ0になり、吸着器12の二酸化炭素吸着量は、約10%になった。
【0048】
このように、吸着器11における二酸化炭素の脱離に用いられたパージガスを再利用して吸着器12内の二酸化炭素を脱離させることにより、全ての二酸化炭素を吸着器12から脱離させることができた。
【0049】
図10は、比較例のガス分離システム1Pの脱離工程における二酸化炭素吸着量の変化を示す図である。
図10では、
図8に示す工程1Pにおける吸着器11の二酸化炭素吸着量を例示する。この例でも、
図9に示す例と同様に、1工程の時間を2000秒として設計している。吸着器11は、工程2において吸着工程が行われた後、工程3において加熱工程が行われており、
図10に示す工程1の開始時の吸着量は、100%であり、二酸化炭素が脱離しやすい状態になっている。この例では、吸着器11に、満量の二酸化炭素と過不足なく反応する量のパージガスを、1工程の時間(2000秒)で流入させ、引き続き、1工程の時間(2000秒)、同量のパージガスを流して、排出させた。図示するように、吸着器11の二酸化炭素吸着量は、3500秒から4000秒で0%になるものの、2000秒(1工程終了時)では、7%程度の二酸化炭素が残留している。上記の通り、比較例のガス分離システム1Pは、各吸着器10において、1~3工程が順次実行されるため(
図8)、脱離工程の時間を延長することができない。そのため、脱離工程の終了時、吸着器10には7%程度の二酸化炭素が残留する。1工程の時間を変更せず、脱離工程において全ての二酸化炭素を脱離させるには、例えば、外部から吸着器10を加熱するエネルギーを増加させる、吸着器10の出口を真空ポンプにつなぐ等、さらに外部エネルギーを投入して脱離を早めなければならない。
【0050】
以上説明したように、本実施形態のガス分離システム1によれば、1つの吸着器10を通過したパージガスを再利用して、別の吸着器10に流入させることができるため、2つの吸着器10を、同時に脱離させることができる。1つめの吸着器10内の二酸化炭素を脱離させて排出された、パージガスと二酸化炭素を含む混合ガスは、脱離工程開始直後は二酸化炭素の濃度が高いが、その後徐々に二酸化炭素濃度が下がる。この混合ガスを2つめの吸着器10に流入させると、2つめの吸着器10内の二酸化炭素も脱離が可能になる。1つの吸着器10に注目すると、第2脱離工程と第1脱離工程の2工程で二酸化炭素の脱離を行うことにより、疑似的にパージガス量を増やし、脱離時間を長くすることができた。本実施形態のガス分離システム1において、実際には、パージガス量も1工程の時間も比較例と同じであるため、比較例と比べてパージガスによる二酸化炭素の脱離効率を向上させることができたといえる。
【0051】
また、本実施形態のガス分離システム1によれば、2つの吸着器10を接続し、パージガスを再利用することにより、外部から吸着器10を加熱するエネルギーを増加させる、吸着器10の出口を真空ポンプにつなぐ等、追加で外部エネルギーを投入することなく、二酸化炭素の脱離効率を向上させることができるため、エネルギー効率の低下を抑制することができる。
【0052】
本実施形態のガス分離システム1によれば、限られた量のパージガスを用いて、二酸化炭素の脱離を効率的かつ短時間で終わらせることができるため、ガス分離システム1のサイズの小型化、省エネルギー化を実現することができる。
【0053】
<第2実施形態>
図11は、第2実施形態のガス分離システム1Aの概略構成を示す説明図である。本実施形態のガス分離システム1Aは、第1実施形態のガス分離システム1の構成に加え、さらに2つの吸着器14、15と、2つの接続流路84、85を備える。吸着器14、15は、吸着器11~13と同様の構成を有する。吸着器13は接続流路83を介して吸着器14と接続され、吸着器14は接続流路84を介して吸着器15と接続され、吸着器15は接続流路85を介して吸着器11と接続される。以下に説明する実施形態において、ガス分離システム1と同一の構成には同一の符号を付し、先行する説明を参照する。
【0054】
図12は、第2実施形態のガス分離システム1Aにおける吸着器10の切替タイミングの説明図である。本実施形態のガス分離処理では、図示するように、工程1A、工程2A、工程3A、工程4A、および工程5Aを1サイクルとして、このサイクルが、複数回繰り返される。各工程では、吸着工程、加熱工程、第1脱離工程、第2脱離工程、および冷却工程のそれぞれが、5つの吸着器11、12、13、14、および15のいずれかにおいて実行される。本実施形態における工程1A、2A、3A、4Aおよび5Aのそれぞれを「吸脱着工程」とも呼ぶ。また、第1脱離工程が行われる吸着器10を「第1吸着器」、第2脱離工程が行われる吸着器10を「第2吸着器」、吸着工程が行われる吸着器10を「第3吸着器」とも呼ぶ。
【0055】
具体的には、工程1Aでは、吸着器11において吸着工程が実行され、吸着器12において加熱工程が実行され、吸着器13において第1脱離工程が実行され、吸着器14において第2脱離工程が実行され、吸着器15において冷却工程が実行される。工程2A、3A、4Aおよび5Aでは、吸着工程、加熱工程、第1脱離工程、第2脱離工程、および冷却工程のそれぞれが対象とする吸着器10を変更して、吸脱着工程が行われる。本実施形態のガス分離システム1Aでは、いずれか1つの吸着器10において排ガス中の二酸化炭素を吸着すると同時に、他の1つの吸着器10を加熱し、他の2つの吸着器10において、吸着された二酸化炭素を脱離し、他の1つの吸着器10を冷却する。
【0056】
1つの吸着器10に注目すると、吸着工程、加熱工程、第1脱離工程、第2脱離工程、冷却工程が、この順に繰り返し行われる。本実施形態では、加熱工程が脱離工程と独立して設けられており、第2脱離工程では、加熱は行われない。また、冷却工程が吸着工程と独立して設けられている。
【0057】
図13は、ガス分離システム1Aにおける工程1Aの説明図である。ガス分離システム1Aでは、5つの吸着器11、12、13、14、15のそれぞれに、順番に排ガス(二酸化炭素含有ガス)を供給することにより、排ガスから二酸化炭素を分離する。ガス分離システム1Aでも、第1実施形態と同様に、2つの吸着器10が、接続流路80を介して直列に接続され、第1脱離工程が実行される第1吸着器としての吸着器10を流通したパージガスが、第2脱離工程が実行される第2吸着器としての吸着器10に供給される。
図13において、排ガス、熱媒、パージガス(水素)の流れを太い実線で示している。
【0058】
図13に示すように、工程1A(
図12)では、吸着器11で吸着工程が行われ、吸着器11に排ガスが供給される。具体的には、制御部55により排ガス入口弁21aが開弁されると共に、排ガス入口弁22a~25aが閉弁され、二酸化炭素含有ガス供給流路20および排ガス分流路21を介して、吸着器11に排ガスが供給される。吸着器11では、排ガスに含まれる二酸化炭素が吸着材11aによってトラップされ、吸着材11aにトラップされなかった窒素や水分などの大部分のガスは、オフガスとして、ガス分離システム1の外部、例えば、大気に放出される。
【0059】
吸着器12で加熱工程が行われ、吸着器12に熱媒が供給される。具体的には、制御部55により熱媒が所定の温度(投入熱量)になるようにヒータ30aが制御されると共に、熱媒入口弁32aが開弁され、熱媒入口弁31a、33a、34aおよび35aが閉弁され、熱媒が供給される。これにより、熱媒流路30を流れる熱媒は、熱媒分流路32を介して、吸着器12に供給される。吸着器12において、熱媒が供給されると吸着材12aの温度が上昇し、吸着材12aに吸着された二酸化炭素が脱離しやすい状態になる。
【0060】
吸着器13で第1脱離工程が行われ、吸着器13にパージガスが供給される。具体的には、制御部55によりパージガス入口弁73aが開弁されると共に、パージガス入口弁71a、72a、74aおよび75aが閉弁され、パージガス供給流路70およびパージガス分流路73を介して、吸着器13にパージガスが供給される。吸着器13にパージガスが供給されると、吸着材13aに吸着されている二酸化炭素が吸着材13aから脱離する。吸着材13aから脱離した二酸化炭素は、吸着器13の内部においてパージガス(水素)と混合される。工程1Aにおいて、混合ガス出口弁63aが閉弁されると共に、接続流路弁83aが開弁されているため、吸着器13から排出される混合ガスは、混合ガス分流路63、接続流路83、およびパージガス分流路74を通って、吸着器14に流入する。
【0061】
吸着器14で第2脱離工程が行われ、吸着器14に上述の混合ガスが供給される。吸着器14にパージガスを含む混合ガスが供給されると、吸着材14aに吸着されている二酸化炭素が吸着材14aから脱離する。吸着材14aから脱離した二酸化炭素は、吸着器14の内部においてパージガスを含む混合ガスと混合される。工程1Aにおいて、混合ガス出口弁64aが開弁されているため、吸着器14から排出される混合ガスは、混合ガス分流路64および混合ガス流路60を通ってサージタンク40に貯留される。
【0062】
吸着器15で冷却工程が行われ、吸着器15に冷媒が供給される(不図示)。比較的温度が低い熱媒体が吸着器15の熱媒体流路に供給されると、吸着材15aが冷却され、15aの温度が低下する。これにより、吸着材15aは、二酸化炭素を吸着しやすい状態となる。本実施形態の工程1Aにおいて、吸着器11が「第3吸着器」、吸着器13が「第1吸着器」、吸着器13が「第2吸着器」である。本実施形態のガス分離システム1Aにおいても、制御部55は、第1吸着器、第2吸着器、および第3吸着器を変更して、吸脱着工程を繰り返し実行している。
【0063】
以上説明したように、本実施形態のガス分離システム1Aによっても、1つの吸着器10を通過したパージガスを再利用して、別の吸着器10に流入させることができるため、パージガスによる二酸化炭素の脱離効率を向上させることができる。
【0064】
<第3実施形態>
第3実施形態のガス分離システムは、第2実施形態のガス分離システム1Aと同じ構成であるものの、制御部55によるガス分離処理が第2実施形態と異なる。
【0065】
図14は、第3実施形態のガス分離システムにおける吸着器10の切替タイミングの説明図である。本実施形態のガス分離処理では、第2実施形態と同様に、工程1B、工程2B、工程3B、工程4B、および工程5Bを1サイクルとして、このサイクルが、複数回繰り返される。各工程では、吸着工程、加熱工程、第1脱離工程、第2脱離工程、および冷却工程のそれぞれが、5つの吸着器11、12、13、14、および15のいずれかにおいて実行される。本実施形態における工程1B、2B、3B、4Bおよび5Bのそれぞれを「吸脱着工程」とも呼ぶ。また、第1脱離工程が行われる吸着器10を「第1吸着器」、第2脱離工程が行われる吸着器10を「第2吸着器」、吸着工程が行われる吸着器10を「第3吸着器」とも呼ぶ。
【0066】
本実施形態のガス分離処理が第2実施形態のガス分離処理と異なる点は、第2脱離工程の一部の期間において、第1吸着器内を流通したパージガスを、接続流路80を介して第2吸着器に流入させる点である。本実施形態では、第2脱離工程の後半のみ、第1吸着器内を流通したパージガスを、接続流路80を介して第2吸着器に流入させている。
図14では、第2脱離工程の前半に「非接続」と図示しており、第1吸着器と第2吸着器とが接続されておらず、第2吸着器にパージガスが供給されないことを示している。また、第2脱離工程の後半に「接続」と図示しており、第1吸着器と第2吸着器とが接続され、第2吸着器にパージガスが供給されることを示している。
【0067】
図15は、第3実施形態の工程1Bの第2脱離工程の説明図である。
図15では、第3実施形態のガス分離システムの一部を図示している。
図15(A)は、第2脱離工程の前半(非接続工程)を図示し、
図15(B)は第2脱離工程の後半(接続工程)を図示している。
図15において、パージガス(水素)の流れを太い実線で示している。
【0068】
図14に示すように、工程1Bでは、吸着器13で第1脱離工程が行われ、吸着器14で第2脱離工程が行われる。第2実施形態と同様に、吸着器13にパージガスが供給される(
図15)。吸着器13にパージガスが供給されると、吸着材13aに吸着されている二酸化炭素が吸着材13aから脱離し、吸着材13aから脱離した二酸化炭素は、吸着器13の内部においてパージガス(水素)と混合される。
図15(A)に示すように、工程1Bの第2脱離工程の前半では、混合ガス出口弁63aが開弁されると共に、接続流路弁83aが閉弁されている。すなわち、第1吸着器としての吸着器13と第2吸着器としての吸着器14とが接続されていないため、吸着器13から排出される混合ガスは、混合ガス分流路63、および混合ガス流路60を通って、サージタンク40に貯留される。
【0069】
工程1Bにおいて、所定の時間が経過すると第2脱離工程の接続工程に移行する。
図15(B)に示すように、工程1Bの第2脱離工程の後半では、混合ガス出口弁63aが閉弁されると共に、接続流路弁83aが開弁されている。すなわち、第1吸着器としての吸着器13と第2吸着器としての吸着器14とが接続されているため、吸着器13から排出される混合ガスは、混合ガス分流路63、接続流路83、およびパージガス分流路74を通って、吸着器14に流入する。吸着器14にパージガスを含む混合ガスが供給されると、吸着材14aに吸着されている二酸化炭素が吸着材14aから脱離され、吸着器14の内部においてパージガスを含む混合ガスと混合される。工程1Bの後半において、混合ガス出口弁64aが開弁されているため、吸着器14から排出される混合ガスは、混合ガス分流路64および混合ガス流路60を通ってサージタンク40に貯留される。
【0070】
第1脱離工程の前半は、第1吸着器から排出される混合ガスの二酸化炭素濃度が高いため、混合ガスを第2吸着器に流しても、二酸化炭素の脱離効果が小さい。そのため、本実施形態のガス分離処理のように、第2脱離工程の前半では、第1吸着器と第2吸着器とを接続せず、二酸化炭素濃度が高い混合ガスをサージタンク40に貯留し、第1吸着器から排出される混合ガスの二酸化炭素濃度が低下した後半において第1吸着器と第2吸着器とを接続し、パージガスを再利用してもよい。このようにしても、パージガスによる二酸化炭素の脱離効率を向上させることができる。
【0071】
<第4実施形態>
図16は、第4実施形態のガス分離システム1Cの概略構成を示す説明図である。本実施形態のガス分離システム1Cは、第2実施形態のガス分離システム1Aの構成に加え、真空ポンプ45を備える。以下に説明する実施形態において、ガス分離システム1、1Aと同一の構成には同一の符号を付し、先行する説明を参照する。
【0072】
真空ポンプ45は、吸着器15とサージタンク40との間の混合ガス流路60に両端が接続する減圧流路46に、設けられている。減圧流路46には、制御部55の指令に応じて、減圧流路46の流れを制御する切換弁47が設けられている。また、
図16に示すように、混合ガス流路60の、減圧流路46の両端が接続する間には、制御部55の指令に応じて、混合ガス流路60の流れを制御する切換弁48が設けられている。真空ポンプ45は、切換弁48が閉じられ、切換弁47が開かれているとき、制御部55の指令に応じて駆動し、吸着器10の内部を減圧する。本実施形態のガス分離システム1Cでは、第2脱離工程の一部の期間において、真空ポンプ45による吸着器10内の減圧が行われる。
【0073】
第4実施形態では、第3実施形態と同様に、第2脱離工程の一部の期間において、第1吸着器内を流通したパージガスを、接続流路80を介して第2吸着器に流入させる。本実施形態では、第3実施形態と異なり、第2脱離工程の前半のみ、第1吸着器内を流通したパージガスを、接続流路80を介して第2吸着器に流入させている。
【0074】
図17は、第4実施形態のガス分離システムにおける吸着器10の切替タイミングの説明図である。本実施形態のガス分離処理では、第3実施形態と同様に、工程1C、工程2C、工程3C、工程4C、および工程5Cを1サイクルとして、このサイクルが、複数回繰り返される。各工程では、吸着工程、加熱工程、第1脱離工程、第2脱離工程、および冷却工程のそれぞれが、5つの吸着器11、12、13、14、および15のいずれかにおいて実行される。本実施形態における工程1C、2C、3C、4Cおよび5Cのそれぞれを「吸脱着工程」とも呼ぶ。また、第1脱離工程が行われる吸着器10を「第1吸着器」、第2脱離工程が行われる吸着器10を「第2吸着器」、吸着工程が行われる吸着器10を「第3吸着器」とも呼ぶ。
【0075】
図17では、
図14と同様に、第2吸着器にパージガスが供給される工程に「接続」と図示し、第2吸着器にパージガスが供給されない工程に「非接続」と図示している。本実施形態では、上述の通り、第2脱離工程の前半に第1吸着器と第2吸着器とが接続されて、第2吸着器にパージガスが供給される。このとき、真空ポンプ45は駆動されない。第2脱離工程の後半は第1吸着器と第2吸着器とが接続されておらず、第2吸着器にパージガスが供給されない。このとき、真空ポンプ45が駆動される。このように、本実施形態では、第2脱離工程の前半は真空ポンプ45が駆動されず、第2脱離工程の後半に真空ポンプ45が駆動される。
【0076】
図18は、第4実施形態の工程1Cの第2脱離工程の説明図である。
図18では、ガス分離システム1Cの一部を図示している。
図18(A)は、第2脱離工程の前半(接続工程)を図示し、
図18(B)は第2脱離工程の後半(非接続工程)を図示している。図示するように、第2脱離工程の前半では、真空ポンプ45が駆動されず、第2脱離工程の後半では、真空ポンプ45が駆動される。
図18において、パージガス(水素)の流れを太い実線で示している。
【0077】
図17に示すように、工程1Cでは、吸着器13で第1脱離工程が行われ、吸着器14で第2脱離工程が行われる。第2実施形態と同様に、吸着器13にパージガスが供給される(
図18)。吸着器13にパージガスが供給されると、吸着材13aに吸着されている二酸化炭素が吸着材13aから脱離し、吸着材13aから脱離した二酸化炭素は、吸着器13の内部においてパージガス(水素)と混合される。
図18(A)に示すように、工程1Cの第2脱離工程の前半では、混合ガス出口弁63aが閉弁されると共に、接続流路弁83aが開弁されている。また、切換弁47が閉弁され、真空ポンプ45が停止されており、切換弁48が開弁されている。すなわち、第1吸着器としての吸着器13と第2吸着器としての吸着器14とが接続されているため、吸着器13から排出される混合ガスは、混合ガス分流路63、接続流路83、およびパージガス分流路74を通って、吸着器14に流入する。吸着器14にパージガスを含む混合ガスが供給されると、吸着材14aに吸着されている二酸化炭素が吸着材14aから脱離され、吸着器14の内部においてパージガスを含む混合ガスと混合される。工程1Cの前半において、混合ガス出口弁64aが開弁されているため、吸着器14から排出される混合ガスは、混合ガス分流路64および混合ガス流路60を通ってサージタンク40に貯留される。
【0078】
工程1Cにおいて、所定の時間が経過すると第2脱離工程の接続工程に移行する。
図18(B)に示すように、工程1Cの第2脱離工程の後半では、混合ガス出口弁63aが開弁されると共に、接続流路弁83aが閉弁されている。また、切換弁47が開弁され、真空ポンプ45が駆動され、切換弁48が閉弁されている。すなわち、第1吸着器としての吸着器13と第2吸着器としての吸着器14とが接続されていないため、吸着器13から排出される混合ガスは、混合ガス分流路63、混合ガス流路60、減圧流路46を通って、サージタンク40に貯留される。
【0079】
本実施形態において、第2脱離工程の後半では、真空ポンプ45を用いて二酸化炭素の脱離をアシストしている。この場合に、吸着器13と吸着器14とを接続すると、第2吸着器としての吸着器14における二酸化炭素の脱離をアシストすることになり、第1吸着器としての吸着器13における二酸化炭素の脱離を効率的に行うことができない。本実施形態では、第2脱離工程の前半では、第1吸着器と第2吸着器とを接続して、パージガスを再利用してパージガスによる二酸化炭素の脱離効率を向上させ、第2脱離工程の後半では、第1吸着器と第2吸着器とを接続せず、真空ポンプ45を用いて第1吸着器の二酸化炭素脱離率を向上させている。このようにしても、パージガスによる二酸化炭素の脱離効率を向上させることができる。
【0080】
<第5実施形態>
図19は、第5実施形態の炭化水素製造システム5の概略構成を示す説明図である。本実施形態の炭化水素製造システム5は、二酸化炭素(CO
2)と水素(H
2)との混合ガスを用いて、メタン(CH
4)を製造する装置であり、ガス分離システム1と炭化水素生成部8を備える。なお、本実施形態は、メタン以外の炭化水素化合物を製造する炭化水素製造装置にも適用可能であり、例えば、エタンやプロパンなどの炭素と水素とから構成される化合物やメタノールなどの主に炭素と水素とから構成される化合物を「炭化水素化合物」として製造する「炭化水素製造装置」にも適用可能である。
【0081】
本実施形態において、サージタンク40は、混合ガス流路60を流れる混合ガスを一時的に貯蔵する。サージタンク40に貯蔵された混合ガスは、炭化水素生成部8に送られる。炭化水素生成部8は、サージタンク40が供給する二酸化炭素と水素との混合ガスを用いて、メタンを生成する。生成されたメタンは、炭化水素製造システム5の外部の装置に供給される。
【0082】
以上説明したように、本実施形態の炭化水素製造システム5は、ガス分離システム1を備え、ガス分離システム1によって排ガスから分離された二酸化炭素と、パージガスとしての水素を用いて、炭化水素としてのメタンを生成している。そのため、純度の高い炭化水素化合物を生成することができる。また、上述の通り、ガス分離システム1は、パージガスを再利用することによりパージガスによる二酸化炭素の脱離効率が向上されているため、炭化水素生成部8における炭化水素生成効率を向上させることができる。また、炭化水素生成部8のメタンの生成における余剰の水素量を低減させることができる。
【0083】
<本実施形態の変形例>
本発明は上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0084】
・上記実施形態において、パージガスとして、水素以外のガスを用いてもよい。例えば、ヘリウム、ネオン等の希ガス、水蒸気、メタン、およびそれらの少なくとも一つを含む混合ガス等を用いることができる。第5実施形態の炭化水素製造システム5においてパージガスとして水素以外のガスを用いる場合には、炭化水素生成部8に水素を供給する水素供給部を備えればよい。但し、パージガスとして水素を用いると、炭化水素生成部8において高純度の炭化水素を生成することができるため、好ましい。
【0085】
・吸着器10の数は、上記実施形態に限定されず、4つ以下でもよいし、6つ以上でもよい。
【0086】
・上記実施形態において、第1吸着器にパージガスが供給され、第1吸着器から排出されるパージガスと二酸化炭素を含む混合ガスが第2吸着器に供給され、第2吸着器から排出される混合ガスがサージタンク40に貯留される例を示したが、第2吸着器にさらに複数の吸着器が直列に接続される構成にしてもよい。例えば、第2吸着器の後段に、第4吸着器、第5吸着器、および第6吸着器を直列に接続した場合、第2吸着器から排出された混合ガスが第4吸着器に供給され、第4吸着器において脱離された二酸化炭素を含み第4吸着器から排出される混合ガスが第5吸着器に供給され、第5吸着器において脱離された二酸化炭素を含み第5吸着器から排出される混合ガスが第6吸着器に供給され、第6吸着器において脱離された二酸化炭素を含み第6吸着器から排出される混合ガスがサージタンク40に貯留される。このようにすると、後段になるほど、1工程における二酸化炭素脱離量は少なくなるものの、パージガスを再利用して吸着器10内の二酸化炭素を脱離することができるため、パージガスによる二酸化炭素の脱離効率を向上させることができる。但し、上段の吸着器10から排出される混合ガスが二酸化炭素で飽和状態である場合には、後段の吸着器10において、二酸化炭素の脱離ができないため、脱離工程において直列に接続する吸着器10の数は、パージガスの供給量、1工程の時間に応じて、後段の吸着器10においても二酸化炭素を脱離可能なように、適宜設定することが好ましい。
【0087】
・上記実施形態において、パージガスを流すことに加えて、吸着材の温度を上昇させる、いわゆる温度スイングを行って、二酸化炭素を脱離させる例を示したが、温度スイングを行わず、パージガスを流すことのみで二酸化炭素の脱離を行ってもよい。また、パージガスの供給に加えて、真空ポンプを用いて減圧してもよいし、さらに、温度スイングを行ってもよい。
【0088】
・上記第3実施形態において、第2脱離工程の後半において、第1吸着器内を流通したパージガスを、接続流路を介して第2吸着器に流入させる例を示し、上記第4実施形態において、第2脱離工程の前半において、第1吸着器内を流通したパージガスを、接続流路を介して第2吸着器に流入させる例を示したが、第1吸着器と第2吸着器とを接続してパージガスを再利用する期間は、上記実施形態に限定されない。例えば、第2脱離工程を、前期、中期、後期の3つの期間に分け、前期では、第1吸着器と第2吸着器とを接続せず、第1吸着器のみで二酸化炭素の脱離を行い、中期で第1吸着器と第2吸着器とを接続して(多段化し)、第1吸着器および第2吸着器で二酸化炭素の脱離を行い、後期で再び第1吸着器と第2吸着器との接続を解除して、第1吸着器のみで二酸化炭素の脱離を行ってもよい。
【0089】
・上記第3、4実施形態では、第2脱離工程における吸着器の接続有無を、時間の経過に応じて切替える例を示したが、これに限定されない。例えば、第1吸着器から排出される混合ガスの二酸化炭素濃度が低いときに接続する(多段化する)等、第1吸着器から排出される混合ガスの二酸化炭素濃度に応じて接続有無を切替えてもよい。また、吸着器からの二酸化炭素の脱離速度が速いときに接続を解除する(単一吸着器)等、二酸化炭素の脱離速度に応じて接続有無を切替えてもよい。
【0090】
・上記実施形態では、混合ガス分流路とパージガス分流路とをバイパス流路としての接続流路80により接続する例をしめしたが、接続流路は上記実施形態に限定されない。例えば、接続流路80を、混合ガス分流路とパージガス分流路と別個に設けてもよい。接続流路80を、混合ガス分流路とパージガス分流路と別個に設ける場合、上記実施形態と同様に、第1吸着器内のパージガスの流通方向と第2吸着器内のパージガスの流通方向とが同じになるように接続してもよいし(例えば、第1吸着器と第2吸着器の図面下側を接続流路80によって接続する)、第1吸着器内のパージガスの流通方向と第2吸着器内のパージガスの流通方向とが異なり、ターンするように接続してもよい(例えば、第1吸着器の図面下側と、第2吸着器の図面下側を接続流路80により接続する)。
【0091】
・上記実施形態におけるサージタンクを備えなくてもよい。サージタンクがある場合、混合ガスの水素と二酸化炭素の比率を安定させることができるほか、水素の流量を逐次調整しなくても水素と二酸化炭素の比率を目標の範囲内とすることができるため、好ましい。
【0092】
・他の実施形態として、二酸化炭素循環システムや、炭化水素を燃料とする燃料製造システムを構成してもよい。例えば、二酸化炭素循環システムは、上記第5実施形態の炭化水素製造システム5と、炭化水素製造システム5の炭化水素生成部8から供給されるメタンと、炭化水素製造システム5のサージタンク40から供給される二酸化炭素と、大気中の空気とを用いる燃焼器を備え、燃焼器から排出される排ガスを炭化水素製造システム5に供給することにより、二酸化炭素を循環させる。また、燃料製造システムは、上記第5実施形態の炭化水素製造システム5と、燃料製造部を備え、炭化水素製造システム5により製造された炭化水素を用いて、燃料を製造する。
【0093】
以上、実施形態、変形例に基づき本発明について説明してきたが、上記した態様の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれる。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することができる。
【符号の説明】
【0094】
1、1A、1C、1P…ガス分離システム
5…炭化水素製造システム
8…炭化水素生成部
10、11、12、13、14、15…吸着器
11a、12、13a、14a、15a…吸着材
20…二酸化炭素含有ガス供給流路
21、22、23…排ガス分流路
21a、22a、23a…排ガス入口弁
30…熱媒流路
30a…ヒータ
31、32…熱媒分流路
31a、32a…熱媒入口弁
40…サージタンク
45…真空ポンプ
46…減圧流路
47、48…切換弁
55…制御部
60…混合ガス流路
61、62、63、64…混合ガス分流路
61a、62a、63a、64a…混合ガス出口弁
70…パージガス供給流路
70a…流量制御器
71、72、73、74…パージガス分流路
71a、72a、73a…パージガス入口弁
80、81、82、83、84、85…接続流路
81a、82a、83a、84a、85a…接続流路弁