(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022097838
(43)【公開日】2022-07-01
(54)【発明の名称】金属イオン溶液製造方法およびその装置
(51)【国際特許分類】
C02F 1/461 20060101AFI20220624BHJP
【FI】
C02F1/461 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020211026
(22)【出願日】2020-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】520473889
【氏名又は名称】フェニックス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126620
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 豪
(72)【発明者】
【氏名】望月 慎介
【テーマコード(参考)】
4D061
【Fターム(参考)】
4D061DA03
4D061DB09
4D061EA02
4D061EB09
4D061EB14
4D061EB18
4D061EB20
4D061EB31
4D061GC14
4D061GC15
4D061GC16
(57)【要約】 (修正有)
【課題】高純度で高濃度な金属イオン溶液を製造することができる金属イオン溶液製造方法およびその装置を提供する。
【解決手段】第一電解槽5A内を攪拌しつつ、第一電解槽5A内に貯留した水に少なくとも一部が没するように配置された銀製電極7Aに正電圧の第一電圧および第二電圧を交互に印加して銀製電極7Aから銀イオンを溶出させて銀イオン溶液を得る金属イオン溶液製造方法であって、第一電圧の電圧値は、第二電圧の電圧値よりも高くなるように設定され、第一電圧の第一印加時間は、第二電圧の第二印加時間以上になるように設定されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解槽内を攪拌しつつ、前記電解槽内に貯留した水に少なくとも一部が没するように配置された金属製電極に正電圧の第一電圧および第二電圧を交互に印加して前記金属製電極から金属イオンを溶出させて金属イオン溶液を得る金属イオン溶液製造方法であって、
前記第一電圧の電圧値は、前記第二電圧の電圧値よりも高くなるように設定され、
前記第一電圧の第一印加時間は、前記第二電圧の第二印加時間以上になるように設定されていることを特徴とする金属イオン溶液製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の金属イオン溶液製造方法により前記金属イオン溶液を生成する金属製イオン生成ステップと、
前記電解槽内を攪拌しつつ、前記イオン生成ステップによって生成された前記金属イオン溶液に少なくとも一部が没するように配置された金属製電極に正電圧の第三電圧および第四電圧を交互に印加して前記金属イオン溶液を安定化する安定化ステップと、を有する方法であって、
前記第三電圧の電圧値は、前記第一電圧値よりも低くなるよう設定され、
前記第四電圧の電圧値は、前記第三電圧の電圧値よりも低くなる設定されていることを特徴とする金属イオン溶液製造方法。
【請求項3】
前記安定化ステップは、複数回実施され、
先の安定化ステップにおける第三電圧および第四電圧値のそれぞれの電圧値よりも、前記先の安定化ステップの次に実施される後の安定化ステップにおける正電圧の第五電圧および第六電圧のそれぞれの電圧値の方が低くなるように設定されていることを特徴とする請求項2に記載の金属イオン溶液製造方法。
【請求項4】
水を貯留する電解槽と、前記電解槽内の水に少なくとも一部が没するように配置された金属製電極と、前記金属製電極に正電圧の第一電圧および第二電圧を交互に印加する電源装置と、電解槽内を攪拌する攪拌装置とを備え、前記攪拌装置によって電解槽内を攪拌しつつ、前記金属製電極に正電圧の前記第一電圧および前記第二電圧を交互に印加して前記金属製電極から金属イオンを溶出させて金属イオン溶液を得る金属イオン溶液製造装置であって、
前記第一電圧の電圧値は、前記第二電圧の電圧値よりも高くなるように設定され、
前記第一電圧の第一印加時間は、前記第二電圧の第二印加時間以上になるように設定されていることを特徴とする金属イオン溶液製造装置。
【請求項5】
前記電解槽は、
前記金属製電極が配置された電解室と、この電解室からの前記金属イオン溶液が流入可能な流入室を備えていることを特徴とする請求項4に記載の金属イオン溶液製造装置。
【請求項6】
前記流入室は、前記電解室の下方に位置するとともに、前記電解室と前記流入室との間には、これらを区画する第一区画壁を有しており、
この第一区画壁には、前記電解室と前記流入室とを連通する第一連通孔が形成され、前記第一連通孔は、前記金属製電極と対向する位置から離れた位置に形成されていることを特徴とする請求項5に記載の金属イオン溶液製造装置。
【請求項7】
前記攪拌装置は、前記電解槽内に対流を発生させる対流発生部と、電解槽内に空気を供給する空気供給部とを備え、
前記流入室は、互いに並ぶように配置された第一流入室および第二流入室を有しており、
前記第一流入室と前記第二流入室との間にはこれらを区画する第二区画壁を有しており、
前記第二区画壁には、前記第一流入室と前記第二流入室とを連通する第二連通孔が複数形成されており、
前記第一流入室および前記第二流入室の一方には、前記対流発生部が設けられ、
前記第一流入室および前記第二流入室の他方には、前記空気供給部が設けられていることを特徴とする請求項6に記載の金属イオン溶液製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銀イオン等の金属イオンを含有する金属イオン溶液を良好に生成するように構成された金属イオン溶液製造方法およびその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、銀を水中に溶出することにより発生する銀イオン等の金属イオンは、微生物等に対する殺菌作用、つまり除菌力が高いと言われており、除菌剤、抗菌剤、消毒剤或いは滅菌剤として広く使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-268420号
【特許文献2】特開2003-024942号
【特許文献3】特開2009-234543号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、金属イオンは高い感光性や熱の影響で酸化銀となって黒色化し易く、除菌作用等の作用も失われてしまうと言われている。そして、このような黒色化や僅かな不純物が混入することによって高純度で高濃度な金属イオンを含有する溶液を生成することは困難となっている。
【0005】
そこで本発明は、高純度で高濃度な金属イオン溶液を製造することができるようにした金属イオン溶液製造方法およびその装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した目的を達成するために、本発明は次のように構成されている。
以下、本発明の特徴点を図面に示した発明の実施の形態を用いて説明する。なお、下記の符号および記載は、本発明の構成に相当する発明の実施の形態における構成の符号および名称を示したものであり、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0007】
本発明に係る金属イオン溶液製造方法は、電解槽5A内を攪拌しつつ、前記電解槽5A内に貯留した水に少なくとも一部が没するように配置された金属製電極7Aに正電圧の第一電圧および第二電圧を交互に印加して前記金属製電極から金属イオンを溶出させて金属イオン溶液を得る金属イオン溶液製造方法であって、前記第一電圧の電圧値は、前記第二電圧の電圧値よりも高くなるように設定され、前記第一電圧の第一印加時間は、前記第二電圧の第二印加時間以上になるように設定されていることを特徴とする。
【0008】
この方法によれば、電解槽5A内を攪拌しつつ、金属製電極7Aに対して第一電圧による印加を実行することで、金属製電極7Aの昇温を防止しつつ、溶液中の金属イオンが均一分布状態になるように金属製電極7Aから金属イオンを溶出させることができる。また、一方、電解槽5A内を攪拌しつつ、金属製電極7Aに対して第一電圧よりも電圧値の低い第二電圧による印加を実行することで、金属製電極7Aの昇温をさらに防止しつつも、溶液中の金属イオンが均一分布状態になるように金属製電極7Aから金属イオンを溶出させることができる。すなわち、相対的に電圧値の高い第一電圧が間欠的に印加されるようにしているため(換言すれば、相対的に電圧値の低い第二電圧が間欠的に印加されるようにしているため)、金属製電極7Aの昇温を防止しながらも、溶液中の金属イオンが均一分布状態になるように金属製電極7Aから金属イオンを継続的に溶出させることができる。また、昇温を防止することができるので、昇温に起因した金属製電極7Aの酸化を防止することができ、酸化による金属製電極7Aの黒色化を防止することができる(金属製電極のロスを提言することができる)。さらに、相対的に電圧値が高くて金属イオンの溶出量の多い第一電圧の第一印加時間を、相対的に電圧値の低い第二電圧の第二印加時間以上に設定しているため、効率的に金属イオンを溶出させることができる。以上述べたように、本発明では、昇温に起因した酸化による金属製電極7Aの黒色化を防止しつつも、継続的に金属イオンを溶出させることができるとともに、効率的に金属イオンを溶出することができるので、従来に比して、高純度で高濃度の金属イオン溶液を短時間で得ることができる。
【0009】
また、本発明に係る方法においては、上述した金属イオン溶液製造方法により金属イオン溶液を生成する金属イオン生成ステップと、前記電解槽5A内を攪拌しつつ、前記イオン生成ステップによって生成された前記金属イオン溶液に少なくとも一部が没するように配置された金属製電極7Aに正電圧の第三電圧および第四電圧を交互に印加して前記金属イオン溶液を安定化する安定化ステップと、を有する方法であって、前記第三電圧の電圧値は、前記第一電圧値よりも低くなるよう設定され、前記第四電圧の電圧値は、前記第三電圧の電圧値よりも低くなるように設定されていることが望ましい。
【0010】
この方法によれば、交互に印加する第三および第四電圧の電圧値がそれぞれ、金属イオン生成ステップよりも低くなるように設定された安定化ステップにおいて、金属イオン生成ステップにおいて得られた金属イオン溶液に含浸された金属製電極7Aから金属イオンが金属生成ステップよりも緩やかに溶出するので、金属イオン溶液がさらに高濃度化されつつ、溶液の攪拌によって均一分布状態となるため、金属イオン溶液の安定化を図ることができる。
【0011】
また、本発明に係る方法においては、前記安定化ステップは、複数回実施され、先の安定化ステップにおける第三電圧および第四電圧値のそれぞれの電圧値よりも、前記先の安定化ステップの次に実施される後の安定化ステップにおける正電圧の第五電圧および第六電圧のそれぞれの電圧値の方が低くなるように設定されていることが望ましい。
【0012】
この方法によれば、交互に印加する第五および第六電圧の電圧値がそれぞれ、先の安定化ステップよりも低くなるように設定された後の安定化ステップにおいて、先の安定化ステップによって安定化した金属イオン溶液が含浸された金属製電極7Aから先の安定化ステップよりも金属イオンが緩やかに溶出するので、先の安定化ステップによって安定化した金属イオン溶液がさらに高濃度化されつつ、溶液の攪拌によって均一分布状態となるため、金属イオン溶液の安定化をより一層図ることができる。
【0013】
本発明に係る金属イオン溶液製造装置1は、水を貯留する電解槽5Aと、前記電解槽5A内の水に少なくとも一部が没するように配置された金属製電極7Aと、前記金属製電極7Aに正電圧の第一電圧および第二電圧を交互に印加する電源装置9Aと、電解槽5A内を攪拌する攪拌装置11Aとを備え、前記攪拌装置11Aによって電解槽5A内を攪拌しつつ、前記金属製電極7Aに正電圧の前記第一電圧および前記第二電圧を交互に印加して前記金属製電極7Aから金属イオンを溶出させて金属イオン溶液を得る金属イオン溶液製造装置1であって、前記第一電圧の電圧値は、前記第二電圧の電圧値よりも高くなるように設定され、前記第一電圧の第一印加時間は、前記第二電圧の第二印加時間以上になるように設定されていることを特徴とする。
【0014】
この装置1によれば、上述の金属イオン溶液製造方法と同様な作用効果を奏する。
【0015】
また、本発明に係る装置1においては、前記電解槽5Aは、前記金属製電極7Aが配置された電解室17Aと、この電解室17Aからの前記金属イオン溶液が流入可能な流入室19A、21Aを備えていることが望ましい。
【0016】
この装置1によれば、電解室17Aの金属イオン溶液は攪拌されながら流入室19A、21Aに流入し、この流入室19A、21A内でも攪拌されるようになっており、金属イオン溶液を段階的に上流側の電解室17Aから下流側の流入室19A、21Aに攪拌しながら流入させているので、効率よく金属イオン溶液を攪拌することができ、昇温を効率的に防止することができる。
【0017】
また、本発明に係る装置1においては、前記流入室19A、21Aは、前記電解室17Aの下方に位置するとともに、前記電解室17Aと前記流入室19A、21Aとの間には、これらを区画する第一区画壁23Aを有しており、この第一区画壁23Aには、前記電解室17Aと前記流入室19A、21Aとを連通する第一連通孔27A、29Aが形成され、前記第一連通孔27A、29Aは、前記金属製電極7Aと対向する位置から離れた位置に形成されていることが望ましい。
【0018】
この装置1によれば、第一連通孔27A、29Aが前記金属製電極7Aと対向する位置から離れた位置に形成されているため、金属製電極7Aが酸化した酸化金属(黒色化した金属)等の不純物を第一区画壁23A上にて受け止めることができるので、電解室17A内の不純物が第一連通孔27A、29Aを介して流入室19A、21Aに流入することを防止することができ、不純物の流入による金属イオン溶液の純度および濃度の低下を防止することができる。
【0019】
また、本発明に係る装置1においては、前記攪拌装置11Aは、前記電解槽5A内に対流を発生させる対流発生部13Aと、電解槽5A内に空気を供給する空気供給部15Aとを備え、前記流入室は、互いに並ぶように配置された第一流入室19Aおよび第二流入室21Aを有しており、前記第一流入室19Aと前記第二流入室21Aとの間にはこれらを区画する第二区画壁25Aを有しており、前記第二区画壁25Aには、前記第一流入室19Aと前記第二流入室21Aとを連通する第二連通孔31Aが複数形成されており、前記第一流入室19Aおよび前記第二流入室21Aの一方には、前記対流発生部13Aが設けられ、前記第一流入室19Aおよび前記第二流入室21Aの他方には、前記空気供給部15Aが設けられていることが望ましい。
【0020】
この装置1によれば、第一流入室19Aおよび第二流入室21A内の金属イオン溶液は、第二区画壁25Aの複数の第二連通口31Aを介して、互いに少しずつ流入し合うように構成されており、これらの第一および第二流入室19A、21A内の金属イオン溶液は、対流発生部13Aによって効率的な攪拌が行われる一方で、空気供給部15Aによる空気(バブリング)によって金属イオン溶液の温度を低下させるので、金属イオン溶液を効率的に均一分布状態にしつつ、昇温をも効果的に防止することができる。
【発明の効果】
【0021】
以上述べたように、本発明は高純度で高濃度な金属イオン溶液を製造することができるようにした金属イオン溶液製造方法およびその装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明に係る金属イオン溶液製造装置を模式的に示す正面図である。
【
図2】
図1の金属イオン溶液製造装置に係る電解槽を拡大して示す断面図である。
【
図3】
図1の金属イオン溶液製造装置で使用する電圧の波形を模式的に示す図である。
【
図4】本発明に係る噴霧装置を模式的に示す正面図である。
【
図5】
図4の噴霧装置の噴霧部を示す断面図である。
【
図6】
図4の噴霧装置のパターンエアー供給部を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、
図1~
図6を参照しながら本発明の実施形態を説明するが、まず本発明に係る銀イオン溶液製造方法(金属イオン溶液製造方法)を実施するための銀イオン溶液製造装置(金属イオン溶液製造方法)について説明する。
【0024】
図1および
図2に示すように、銀イオンを含む銀イオン溶液を製造するための銀イオン溶液製造装置1は、金属イオン溶液生成ステップに用いられる第一処理部3Aと、第一段階の安定化ステップ(先の安定化ステップ)に用いられる第二処理部3Bと、第二段階の安定化ステップ(後の安定化ステップ)に用いられる第三処理部3Cとを有しており、これらの処理部3A、3B、3Cは直線状に並べられるように配置されている。これらの金属イオン溶液生成ステップ、第一段階の安定化ステップ、第二段階の安定化ステップについては後述する。また、銀イオン溶液製造装置1は、第一処理部3Aの銀イオン溶液を第二処理部3Bに移送するポンプP1、第二処理部3Bの銀イオン溶液を第三処理部3Cに移送するポンプP2、および第三処理部3Cの銀イオン溶液を外部に排出するポンプP3も有している。
【0025】
次に、各処理部3A、3B、3Cについて説明するが、これらの処理部3A、3B、3Cはいずれも同一の構成をなしているため、第一処理部3Aのみ説明し、第二および第三処理部3B、3Cについては、第一処理部3Aと同様な構成要素には、第一処理部3Aと同一の数字の末尾に、第二処理部3Bであれば「B」を、第三処理部3Cであれば「C」を付することによって、その説明を省略又は簡略化するものとする。
【0026】
図2に示すように、第一処理部3Aは、水等の液体が貯められるバスタブ状の第一電解槽5Aと、この第一電解槽5A内の純水W中に没するように配置されているとともに、高純度の銀を含有する複数の銀製電極(金属製電極)7Aと、変圧が可能な交流電源によって銀製電極7Aに所定の電圧を印加する電源装置9Aと、第一電解槽5A内を攪拌する攪拌装置11Aとを有している。また、本実施形態では、水として、例えば、水道水等の水をろ過フィルターに通した後に逆浸透膜によってクラスター(このクラスターとは水分子の集団のことをいい、クラスターを小さくするほど浸透性が高く保水力に優れている。)化された純水Wを用いている。
【0027】
第一電解槽5Aは、この第一電解槽5Aの上部に位置するとともに、複数の銀製電極7Aが配置された電解室17Aと、この電解室17Aの下方に位置するとともに、電解室17Aからの銀イオンが流入可能な第一流入室19Aおよび第二流入室21Aとを有している。電解室17Aは、第一電解槽5A内において水平方向に配置されて、第一電解槽5A内を上下の空間に区画する第一区画壁23Aによって形成されている。また、第一流入室19Aおよび第二流入室21Aは、第一区画壁23Aの下方の空間内において鉛直方向に配置されて、第一区画壁23Aの下方の空間を左右の空間に区画する第二区画壁25Aによって形成されている。
【0028】
本実施形態では、第一区画壁23Aは、第一電解槽5A内において、その高さ方向の位置を調節可能に設けられており、第一電解槽5A内の第一区画壁23Aにおける高さ方向の位置を調節(調整)することで、電解室17Aの容積の調節が可能となっている。また、第二区画壁25Aも、第一区画壁23Aと同様に、第一電解槽5A内において、その左右方向の位置を調節可能に設けられており、第一電解槽5A内の第二区画壁25Aにおける左右方向の位置を調節することで、第一流入室19Aおよび第二流入室21Aのそれぞれの容積の調節が可能となっている。本実施形態では、
図2にも示すように、第一流入室19Aの容積よりも、第二流入室21Aの容積の方が大きくなるように調節している。
【0029】
第一区画壁23Aには、電解室17Aと第一流入室19Aとを連通する第一連通孔27Aと、電解室17Aと第二流入室21Aとを連通する第一連通孔29Aとが形成されている。これらの第一連通孔27A、29Aは、
図2に示すように、第一区画壁23Aにおいて、全ての銀製電極7Aと対向する位置(
図2においては、全ての銀製電極7Aの下方の位置)から離れた位置に形成されている。
【0030】
第二区画壁25Aには、第一流入室19Aと第二流入室21Aとを連通する複数の第二連結孔31Aが形成されている。これらの第二連結孔31Aは、上述の第一連結孔27A、29Aよりも径の小さい小孔とされている。
【0031】
この第二区画壁25Aによって形成された第一流入室19Aには、第一電解槽5A内において対流を発生させるための対流発生部13Aが設けられている。この対流発生部13Aは、空気(気泡)を水平方向に噴出させるものであり、この噴出によって第一流入室19A内に矢印Aで示すような対流を生じさせる。この第一流入室19A内の対流は、第二区画壁25Aに形成された複数の第二連通孔31Aを介して、第二流入室21A内にも及ぶことで、第二流入室21A内においても矢印Bで示すような対流を生じさせる。また、第一流入室19A内の対流および第二流入室21A内の対流はそれぞれ、第一連通孔27A、29Aを介して電解室17A内にも及ぶことで、電解室17A内においても矢印Cで示すような対流を生じさせる。
【0032】
一方、第二流入室21Aには、第一電解槽5A内に空気を供給する空気供給部15Aが第一電解槽5Aの底面に載置されており、この空気供給部15Aから発生する空気(気泡)による第二流入室21A内のバブリングが行われることによって、第二流入室21A内の攪拌を行いつつ、第二流入室21A内の熱を外部に逃がすようにしている(第二流入室21A内の銀イオン溶液の熱を奪った気泡が外部に放出される)。このように、本実施形態では、上述の対流発生部13Aと、空気供給部15Aとで、第一電解槽5A内の攪拌を行っており、これらの対流発生部13Aと空気供給部15Aとで上述の攪拌装置11Aを構成している。
【0033】
電源装置9Aは、電解室17A内に間隔をおいて配置された複数の銀製電極7Aに電気的に接続されており、これらの銀製電極7Aに電源装置9Aからの電圧が印加されることで、複数の銀製電極7Aから銀イオンが溶出するようになっている。この電源装置9Aは、上述のように変圧が可能な交流電源であり、銀製電極7Aに異なる電圧値の正電圧を交互に印加可能に構成されている。すなわち、
図3に示すように、電源装置9Aからの電圧は、正弦波を描くように出力されており、相対的に電圧値の高い正弦波の山の部分(ON状態)と相対的に電圧値の低い谷の部分(OFF状態)とに切り替え可能になっている。なお、
図3において縦軸は電圧値を横軸は時間を示している。
【0034】
本実施形態では、電源装置9Aは所定の幅の電圧値(例えば、0V~5Vの間)、電流値(例えば、0~1Aの間)を外部操作によって調節可能に設けられ、銀イオンを製造する過程において適宜適切な電圧値、電流値に調節されるようになっている。ここで、電圧値の最大値は、所定の幅の上限の電圧値(例えば、5V)を超えると、酸化銀の生成量が増えてしまうこととなるとともに、それ以上の濃度の向上が見込めなくなって、かえってその濃度が低下する虞がある。また、電流値も所定の幅の上限の電流値(例えば、1A)を超えると、酸化銀の生成量が極めて多くなり、イオン化も困難となる虞がある。このため、所定の幅の電圧値、電流値の上限は、このようなことが発生しないような範囲内に収めるのが望ましい。また、電源装置9Aは、上述のようにON状態とOFF状態とを交互に切り替え可能に設けられており、所定の第一時間(例えば、1秒)だけON状態になった後、所定の第二時間(例えば、0.5秒)だけOFF状態となることを継続的に繰り返し可能に構成されている。また、電源装置9Aは、正電圧の範囲内で電力値を変圧させており、負電圧にはならないように構成されている。これは、負電圧による印加を行うと、酸化銀が発生しやすく銀イオンの安定が図れないからである。
【0035】
次に、上述した銀イオン溶液製造装置1による銀イオン溶液製造方法を説明する。この銀イオン溶液製造方法は、概して、第一処理部3Aによって行われる銀イオン溶液生成ステップと、第二処理部3Bおよび第三処理部3Cによって行われる安定化ステップとに大別される。なお、本実施形態の銀イオン溶液製造方法においては、太陽光線の下では、液温変化(温度変化)に影響が出る可能性(温度が必要以上に上昇する可能性)があることから、直射日光の環境下ではなく室内にて実行するのが好ましい。これについては、太陽光線のみならず、可視光線や紫外線も同様のことが言えるため、室内においては、例えば、蛍光灯レベルの可視光の環境下や、暗室等の環境下において、本実施形態の銀イオン溶液製造方法を実行することがより望ましい。
【0036】
銀イオン溶液生成ステップでは、第一処理部3Aに純水Wを貯留した後、電解室17A内に複数の銀製電極7Aを純水内に含浸させる。この状態で、対流発生部13Aと空気供給部15Aからなる攪拌装置11Aを起動させて電解室17A内を攪拌しつつ、複数の銀製電極7Aに対し、電源装置9Aからの印加を行う。本実施形態では、上述のように、電源電圧9を第一印加時間(例えば、1秒間)だけON状態の第一電圧を印加した後、第二印加時間(例えば、0.5秒間)だけOFF状態の第二電圧を印加することを、第一特定時間(例えば1時間)の間繰り返し行うようにしている。なお、この第一特定時間は、銀イオン溶液の濃度が飽和に達する程度の時間とするのが望ましく、この第一特定時間を超えて銀イオン溶液生成ステップを実行するのは、安定化しないイオンが酸化銀を生成し、かえって濃度が低下する虞がある。
【0037】
この銀イオン溶液生成ステップでは、電源装置9Aは、0V~5Vの電圧値でかつ電流置が最大でも1A以内において、電解槽5A内の液温が、推奨液温(例えば、18度~28度)の範囲内に収まるように調節するようにする。具体的には、液温が推奨液温以上の状況(液温が高い状況)では、例えば、電圧は0~5V内で、かつ第一印加時間を1とした場合に第二印加時間を0.5の割合となるようにする一方、液温が推奨以下の状況(液温が低い状況)では、印加による反応が激しくなりやすいので、電圧は推奨液温以上の場合よりも低い0~3V内で、かつ第一印加時間を1とした場合に第二印加時間を0.3の割合となるように(液温が推奨温度以上の場合に比べて、液温の低下を図るOFF状態を短くするように)することが一例として挙げられる。ここで、推奨液温の範囲は、その下限(例えば、18度)は、この下限を下回ると銀製電極7Aからの溶出量の増大があってもイオン化しないものが増えて、酸化銀の発生してしまう虞があり、推奨液温の上限(例えば、28度)を超えると銀イオンが安定化し難く、飽和点も早くなって濃度が低くなるとともに酸化銀も増ええる虞があるため、このようなことが発生しない範囲の温度とすることが望ましい。
【0038】
なお、電源装置9Aにおいては、
図3に示す波形の頭(波形の山の頂点)よりも上の急激な上昇にならないように、スロースタートを採用し、徐々に電圧値・電流値を上昇させるようにするのが好ましい。また、電流値については銀イオン溶液生成ステップでは、上述した所定の幅の上限の値(例えば1A)を超えないようにし、液温が高い場合には、液温上昇に留意しながら電流値を減らし、液温が高い場合には、所定の値以下となるように抵抗値等を変動させることで調節することが望ましい。
【0039】
この銀イオン溶液生成ステップでは、上述のように、電解室17Aの銀製電極7Aに第一電圧を第一印加時間印加した後、第二電圧を第二印加時間印加することを交互に行うことで、銀製電極7Aから銀イオンが電解室17A内の純水内に溶出されて、電解室17A内に銀イオンを含有した銀イオン溶液が生成されることとなる。この電解室17A内で生成された銀イオン溶液は、矢印Cで示す対流によって、攪拌されながら第一連通孔27A、29Aを介して、第一流入室19A、第二流入室21A内に流入する。第一流入室19Aおよび第二流入室21A内に流入した銀イオン溶液はそれぞれ、矢印AおよびBで示す対流によって攪拌されながら、第二連通孔31Aを介して互いに流入し合う。
【0040】
このように、電解槽5A内を攪拌しつつ、銀製電極7Aに対して第一電圧による印加を実行することで、銀製電極7Aの昇温を防止しつつ、溶液中の金属イオンが均一分布状態になるように銀製電極7Aから金属イオンを溶出させることができる。一方、電解槽内5Aを攪拌しつつ、銀製電極7Aに対して第一電圧よりも電圧値の低い第二電圧による印加を実行することで、銀製電極7Aの昇温をさらに防止しつつも、溶液中の銀イオンが均一分布状態になるように銀製電極7Aから金属イオンを溶出させることができる。すなわち、相対的に電圧値の高い第一電圧が間欠的に印加されるようにしているため(換言すれば、相対的に電圧値の低い第二電圧が間欠的に印加されるようにしているため)、銀製電極7Aの昇温を防止しながらも、溶液中の銀イオンが均一分布状態になるように銀製電極7Aから銀イオンを継続的に溶出させることができる。また、昇温を防止することができるので、昇温に起因した銀製電極7Aの酸化を防止することができ、酸化による銀製電極7Aの黒色化を防止することができる(銀製電極7Aのロスを低減することができる)。特に、本実施形態では、電解槽5Aの一部分である電解室17A内において、矢印Cで示す対流を生じさせながら(攪拌しながら)電圧印加を行っている構造としており、電解槽5A全体を攪拌させながら電圧印加を行うものと比して、その容積が小さくなるため、必要以上の電力を要さずに効率的に電力を伝えられることができるので、金属ストレスが生じにくくなって、銀イオン溶液全体のイオン分布を均一にすることができ、酸化銀の発生をより防止することができる。
【0041】
さらに、相対的に電圧値が高くて金属イオンの溶出量の多い第一電圧の第一印加時間を、相対的に電圧値の低い第二電圧の第二印加時間以上に設定しているため、効率的に金属イオンを溶出させることができる。これらの結果、本実施形態では、昇温に起因した酸化による銀製電極7Aの黒色化を防止しつつも、継続的に銀イオンを溶出させることができるとともに、効率的に銀イオンを溶出することができるので、従来に比して、高純度で高濃度の銀イオン溶液を短時間で得ることができる。これに対し、正電圧と負電圧とを交互に印加した場合においては、本実施形態よりも濃度が低く、かつ本実施形態と同程度の濃度の銀イオン溶液を得るために、本実施形態の約3倍程度の時間を要することとなる。
【0042】
また、電解室17Aの銀イオン溶液は攪拌されながら第一および第二流入室19A、21Aに流入し、これらの流入室19A、21A内でも攪拌されるというように、銀イオン溶液を段階的に上流側の電解室17Aから下流側の第一および第二流入室19A、21Aに攪拌しながら流入させているので、効率よく銀イオン溶液を攪拌することができ、昇温を効率的に防止することがでる。さらに、第一連通孔27A、29Aが、第一区画壁25Aにおいて銀製電極7Aと対向する位置から離れた位置に形成されているため、銀製電極7Aが酸化した酸化金属(黒色化した金属)等の不純物を第一区画壁25A上にて受け止めることができるので、電解室5A内の不純物が第一連通孔27A、29Aを介して第一および第二流入室19A、21Aに流入することを防止することができ、不純物の流入による銀イオン溶液の純度および濃度の低下を防止することができる。また、第一および第二流入室19A、21A内の金属イオン溶液は、第二区画壁25Aの複数の第二連通口31Aを介して、互いに少しずつ流入し合うように構成されており、これらの第一および第二流入室19A、21A内の金属イオン溶液は、対流発生部13Aによって効率的な攪拌が行われる一方で、空気供給部15Aによる空気(バブリング)によって銀イオン溶液の温度を低下させるので、銀イオン溶液を効率的に均一分布状態にしつつ、昇温をも効果的に防止することができる。
【0043】
次に、安定化ステップについて説明する。本実施形態では、安定化ステップとして、上述のように、第二処理部3Bによる第一段階の安定化ステップと、第三処理部3Cによる第二段階の安定化ステップとを有している。これらの第一および第二段階の安定化ステップにおいては、電源装置9Bからの電圧値、電流値、印加時間が異なること以外は、上述の銀イオン溶液生成ステップと同様な処理を行っている。
【0044】
まず、第一段階の安定化ステップにおいては、第二処理部3Bの電解槽5Bに、第一処理部3Aにて生成した銀イオン溶液をポンプP1によって移送した後、電解室17B内に複数の銀製電極7Bを純水内に含浸させる。この状態で、対流発生部13Bと空気供給部15Bからなる攪拌装置11Bを起動させて電解室17B内を攪拌しつつ、複数の銀製電極7Aに対し、第二処理部3Bの電源装置9Bからの印加を行う。本実施形態では、上述のように、第二処理部3Bの電源電圧を第一印加時間(例えば、1秒間)だけON状態の正電圧の第三電圧(銀イオン生成ステップにおける第一電圧の電圧値よりも低い)を印加した後、第二印加時間(例えば、0.5秒間)だけOFF状態の正電圧の第四電圧(銀イオン生成ステップにおける第二電圧の電圧値よりも低い)を印加することを、第一特定時間(例えば1時間)の間繰り返し行うようにしている。すなわち、第一段階の安定化ステップにおいては、第二電解槽5B内に貯留されるのが純水ではなく、第一電解槽5Aから移送された銀イオン溶液であること、銀製電極7Aに印加する第三電圧および第四電圧の電圧値が低いことが、銀イオン生成ステップとは異なる。
【0045】
この第一段階の安定化ステップでは、電源装置9Bは、0V~3Vの電圧値でかつ電流置が0.2~0.3Aの範囲内において、第二電解槽5B内の液温が、推奨液温(例えば、18度~28度)の範囲内に収まるように、銀イオン生成ステップと同様に調節するようにする。また、この第一段階の安定化ステップにおいても、銀イオン生成ステップと同様にスロースタートを採用するのが好ましい。なお、第一段階の安定化ステップにおける第二処理部5B内の作用については、上述の第一処理部5Aと同様なのでその記載は省略する。
【0046】
第二段階の安定化ステップにおいては、第二処理部3Cの第三電解槽5Cに、第二処理部3Bの銀イオン溶液をポンプP2によって移送した後、電解室17C内に複数の銀製電極7Cを純水内に含浸させる。この状態で、対流発生部13Cと空気供給部15Cからなる攪拌装置11Cを起動させて電解室17C内を攪拌しつつ、複数の銀製電極7Cに対し、第二処理部3Cの電源装置9Cからの印加を行う。本実施形態では、上述のように、第三処理部3Cの電源電圧を第一印加時間(例えば、1秒間)だけON状態の正電圧の第五電圧(第一段階の安定化ステップにおける第三電圧の電圧値よりも低い)を印加した後、第二印加時間(例えば、0.5秒間)だけOFF状態の正電圧の第六電圧(第一段階の安定化ステップにおける第四電圧の電圧値よりも低い)を印加することを、第一特定時間(例えば1時間)の間繰り返し行うようにしている。すなわち、第二段階の安定化ステップにおいては、第三電解槽5C内に貯留されるのが、第二電解槽5Bから移送された銀イオン溶液であること、銀製電極7Aに印加する第五電圧および第六電圧の電圧値が低いことが、第一段階の安定化ステップとは異なる。この第二段階の安定化ステップを経ることで、十分に安定した銀イオン溶液を得ることができ、この銀イオン溶液は、ポンプP3によって外部に排出されて供給されることとなる。
【0047】
この第二段階の安定化ステップでは、電源装置9Cは、0V~1Vの電圧値でかつ電流置が0.05~0.1Aの範囲内において、第三電解槽5C内の液温が、推奨液温(例えば、18度~28度)の範囲内に収まるように、銀イオン生成ステップ(第一段階の安定化ステップ)と同様に調節するようにする。また、この第二段階の安定化ステップにおいても、銀イオン生成ステップ(第一段階の安定化ステップ)と同様にスロースタートを採用するのが好ましい。なお、第二段階の安定化ステップにおける第三処理部5C内の作用については、上述の第一処理部5A(第二処理槽5B)と同様なのでその記載は省略する
【0048】
このように、交互に印加する第三および第四電圧の電圧値がそれぞれ、銀イオン生成ステップよりも低くなるように設定された第一段階の安定化ステップにおいて、金属イオン生成ステップにおいて得られた金属イオン溶液に含浸された金属製電極7Aから金属イオンが金属生成ステップよりも緩やかに溶出するので、銀イオン生成ステップにおいて得られた銀イオン溶液がさらに高濃度化されつつ、溶液の攪拌によって均一分布状態となるため、銀イオン溶液の安定化を図ることができる。また、交互に印加する第五および第六電圧の電圧値がそれぞれ、第一段階の安定化ステップよりも低くなるように設定された後の安定化ステップにおいて、第一段階の安定化ステップによって安定化した金属イオン溶液が含浸された金属製電極7Aから第一段階の安定化ステップよりも金属イオンが緩やかに溶出するので、第一段階の安定化ステップによって安定化した銀イオン溶液がさらに高濃度化されつつ、溶液の攪拌によって均一分布状態となるため、銀イオン溶液の安定化をより一層図ることができる。
【0049】
本実施形態に係る銀イオン生成ステップにおける銀イオン溶液の制作能力としては、この銀イオン生成ステップを1時間にわたり実行した場合、電解槽5A内の銀イオン溶液の容積が最大で250Lであった場合、その銀イオン溶液の濃度は、最大でも2500PPM程度になることが期待できる。また、本実施形態に係る第一段階の安定化ステップにおける銀イオン溶液の制作能力としては、この第一段階の安定化ステップを1時間にわたり実行した場合、第二電解槽5B内の銀イオン溶液の容積が最大で500Lであった場合、その銀イオン溶液の濃度は、最大でも1250PPM程度になることが期待できる。すなわち、第一段階の安定化ステップについては、銀イオン溶液を生成しつつも、その安定化を図るステップともいえる。なお、第二段階の安定化ステップについては、銀イオン溶液の安定化が主であるため、最大でも1000Lの銀イオン溶液であっても、その安定化性能を担保することが期待できる。なお、推奨水温に関しては、上記のどのステップでも同一である(例えば、18度~28度)。
【0050】
以上、本実施形態に係る銀イオン溶液製造方法および銀イオン製造装置について説明したが、上述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。
【0051】
例えば、本実施形態では、第一乃至第三処理部3A、3B、3Cを設けたが、これに限定されず、第一処理部3Aのみを設けるようにしても良い。この場合、第一処理部3Aで銀イオン生成ステップを実行した後、そのまま第一段階の安定化ステップ、第二段階の安定化ステップを実行するようにすればよい。
【0052】
本実施形態では、第一段階の安定化ステップと、第二段階の安定化ステップとを実行したが、いずれか一方のみを実行したり、あるいは第一段階の安定化ステップと第二段階の安定化ステップとを繰り返し実行したりしても良く、銀イオン溶液を製造する際の環境などに応じて第一および第二段階の安定化ステップのうち、適宜のステップを選択可能である。
【0053】
本実施形態では、各ステップにおいて、相対的に電圧値が高い第一電圧、第三電圧、第五電圧の第一印加時間は、相対的に電圧値が低い第二電圧、第四電圧、第六電圧の第二印加時間の倍の時間に設定されているが、これらの時間はいずれも同一の時間としてもよく、要は、相対的に電圧値が高い第一電圧、第三電圧、第五電圧の第一印加時間が、相対的に電圧値が低い第二電圧、第四電圧、第六電圧の第二印加時間以上となっていれば、適宜変更可能である。
【0054】
本実施形態では、第一区画壁23Aに、第一流入室19Aと連通する第一連通孔27Aと、第二流入室21Aと連通する第二連通孔31Aを形成したが、いずれか一方の貫通孔のみを形成するようにしても良い。また、本実施形態では、第一流入室19Aに対流発生部13Aを設け、第二流入室21Aに空気供給部15Aを設けたが、これに代えて、第一流入室19Aに空気供給部15Aを設け、第二流入室21Aに対流発生部13Aを設けるようにしても良い。さらに、本実施形態では、空気供給部15Aは、第二流入室21Aの底面の一部を覆う程度のサイズであったが、これに代えて、空気供給部15Aのサイズを、第二流入室21Aの底面全体に亘る程度のものとしても良く、そのサイズは適宜変更可能であることは言うまでもない。
【0055】
本実施形態では、用いられる金属として銀を例にとって説明したが、これに限定されず、銅(これを用いた場合、銅イオン溶液を得る)や鉛(これを用いた場合、鉛イオン溶液を得る)等、他の金属を適宜選択可能であることは言うまでもない。
【0056】
次に、上述の銀イオン溶液製造方法およびその製造装置によって得られた銀イオン溶液の具体的な使用例として、
図4に示す噴霧装置を例にとって説明する。
図4に示すように、噴霧装置51は、銀イオン溶液を噴霧する噴霧部53と、人や荷物等の通過体(
図4では一例として人間を図示している)が通過可能な空間Sを有するとともに、噴霧部53が設けられたゲート55と、このゲート55を通過する通過体を検知するセンサ57と、噴霧部57に銀イオン溶液を供給する供給部59とを有している。
【0057】
ゲート55は、左柱61と、右柱63とこれらの柱61、63の上部を連結する連結部65とが設けられている。連結部65の中央部には、噴霧部53が取り付けられ、連結部65における噴霧部53の近傍には、センサ57が取り付けられている。右柱63および連結部65における右柱63との接続部分から噴霧部53までの間の内部には、供給部59から供給される銀イオン溶液の通路60が形成されている。なお、左柱61および右柱63の下部は伸縮自在となっており、地上からの連結部65の高さを調節可能となっている。また、供給部59は、銀イオン溶液が貯留されたタンク67と、このタンク67内の銀イオン溶液を通路60を介して噴霧部53に供給するエアーコンプレッサ69とを有している。
【0058】
なお、本実施形態では、センサ57が通過体を検知すると、図示しない制御部によって、エアーコンプレッサ69が所定の噴霧時間(例えば、3秒)作動することによって、自動的に通過体に向けて、霧化液体となった銀イオン溶液が所定の噴霧パターンで噴霧されるようになっている。また、所定の噴霧時間については、仕様や使用環境等に応じて予め適宜の時間に設定可能であることは言うまでもない。
【0059】
噴霧部53は、
図5および
図6に示すように、供給部59からの銀イオン溶液が流入する流入通路71と、この流入通路71の出口の近傍に設けられ、流入通路71内の銀イオン溶液に向けて噴霧エアーを噴出(供給)して、流入通路71内を流れる銀イオン溶液を霧化させた霧化液体とする噴霧エアー供給部73と、流入通路71の出口に連結され、流入通路71からの霧化液体を噴出する噴出口部75とを有している。
【0060】
噴出口部75は、霧化液体が流入する流入室77と、噴出口部75内の霧化液体に対して、パターンエアーを供給することで所定の噴霧パターンを形成させるパターンエアー供給部79とを有している。流入室77の上部は、パターンエアー供給部79からのパターンエアーが突き当たって跳ね返るパターン壁78とされている。このパターン壁78の内側面78Aは、鉛直方向に向いた鉛直部78aと、水平方向に向いた水平部78bと、これらの鉛直部78aおよび水平部78bを断面円弧状に滑らかにつなぐ円弧部78cとが連続した形状をなしており、このパターン壁78の内側面78Aに突き当たったパターンエアーがスムーズに流れるようにしている。
【0061】
パターンエアー供給部79は、パターンエアーを発生させるパターンエアー発生部80と、流入室77の下部の側壁を貫通するように設けられ、パターエアー発生部80からのパターンエアーを流入室77内の霧化液体に向けて供給する(噴射する)第一乃至第四供給通路81、82、83、84と、これらの供給通路81、82、83、84から供給されるそれぞれのパターンエアーの量を調節する調節部85とを有している。
【0062】
第一供給通路81は、
図6で見て(平面視で)紙面を通過する方向(
図5においては、下方向)に流入室75内に流入した霧化液体に垂直に突き当たるように向けられているとともに、
図6で見て下方向にパターンエアーを供給可能となっている。第二供給通路82は、流入室75内に流入した霧化液体に垂直に突き当たるように向けられているとともに、
図6で見て上方向にパターンエアーを供給可能となっている。第三供給通路83は、流入室75内に流入した霧化液体に垂直に突き当たるように向けられているとともに、
図6で見て左方向にパターンエアーを供給可能となっている。第四供給通路84は、流入室75内に流入した霧化液体に垂直に突き当たるように向けられているとともに、
図6で見て右方向にパターンエアーを供給可能となっている。
【0063】
すなわち、第一供給通路81と第二供給通路82とは互いに対向する方向に向けられ、第三供給通路83と第四供給通路84とは互いに対向する方向に向けられているとともに、第一供給通路81と第二供給通路82が向けられている方向(
図6において上下方向)とは直交する方向(
図6において左右方向)に向けられている。
【0064】
調節部85には、それぞれの供給通路81、82、83、84に対応した調節つまみ81a、82a、83a、84aが設けられている。それぞれの調節つまみ81a、82a、83a、84aを手動によって操作することで、それぞれに対応したそれぞれの供給通路81、82、83、84内の開き具合(供給通路の開口面積)を調節することができ、これによって、供給通路81、82、83、84のそれぞれのパターンエアーの量を調節可能となるようになっている。
【0065】
次に、上述した構成の噴霧装置51の作用を説明する。ゲート55に対する人の通過をセンサ57が検知すると、供給部59が所定時間作動することによって、銀イオン溶液が貯留されたタンク67から銀イオン溶液を噴霧部53に向けて供給する。この銀イオン溶液が、通路60を介して噴霧部53に到達し、噴霧部53の流入通路71内に流入する。この流入通路71内に流入した銀イオン溶液は、噴霧エアー供給部73からの噴霧エアーによって霧化液体とされて流入通路71の出口から噴出口部75の流入室77内に流入する。この流入室77内の霧化液体は、調節部85によってパターンエアーの量を調節されたそれぞれの供給通路81、82、83、84からのそれぞれのパターンエアーを供給されることで、所定の噴霧パターンとなってゲート55を通過する人体に噴射され、これによって、ゲートを通過する人体の消毒が自動的に行われる。
【0066】
このように本実施形態では、パターンエアーを供給する方向が互いに異なる第一乃至第四供給通路81、82、83、84を設けているとともに、これらの供給通路81、82、83、84のパターンエアーの量を調節部85の調節つまみに81a,82a,83a,84a対する手動による操作によって様々な噴霧パターンを形成することができる。なお、パターン壁78の内周面78aの形状を変更することで、更に様々な噴霧パターンの形成が可能となる。
【0067】
また、第一供給通路81(第三供給通路83)と第二供給通路82(第四供給通路84)とは互いに対向する方向に向けられているので、第一供給通路81(第三供給通路83)からのパターンエアーと、第二供給通路82(第四供給通路84)からのパターンエアーとを、流入室77内の霧化液体の両側から直接的に供給することができ、これらのパターンエアーの量の調節による霧化液体の噴霧方向の調節が容易とすることができる。この結果、噴霧パターンの調節を容易に行うことができる。これに加え、第三供給通路83と第四供給通路84とが、第一供給通路81と第二供給通路82と垂直な方向に向けられているので、流入室77内の霧化液体に対し、平面して左右方向のいずれの方向にもパターンエアーを直接的に供給することができるので、噴霧パターンの調節をより一層容易とすることができる。
【0068】
以上、本実施形態に係る噴霧装置51について説明したが、上述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。
【0069】
例えば、本実施形態では、第一乃至第四供給通路81、82、83、84は、流入室77内の霧状液体に対して垂直となるように向けられているが、これに限定されず、霧状液体に対して所定の角度を向くように配置される等、第一乃至第四供給通路81、82、83、84の向きは、所望の噴霧パターンに応じて適宜変更可能である。
【0070】
本実施形態では、第一供給通路81(第三供給通路83)と第二供給通路82(第四供給通路84)とは互いに対向する方向に向けられていたが、これに限定されず、互いに対向しない方向に向けられていても良い。また、第三供給通路83と第四供給通路84とは、第一供給通路81と第二供給通路82が向けられている方向(
図6において上下方向)とは直交する方向に向けられていたが、これに限定されず、直交以外の所定の角度をもって向けられるようにしてもよい。
【0071】
調節部85は、それぞれの供給通路81、82、83、84に対応した調節つまみ81a,82a,83a,84aを手動操作によって調節していたが、これに代えて、それぞれの調節つまみ81a,82a,83a,84aを電気的に調節可能とした上で、予め所望の噴霧パターンに対応したそれぞれのパターンエアーの量を記憶させ、タッチパネル等の操作部への操作によって所望する噴霧パターンを入力すると、自動的に、その梳毛する噴霧パターに応じて調節つまみ81a,82a,83a,84aを自動的に調節するようにしても良い。
【符号の説明】
【0072】
1 銀イオン溶液製造装置(金属イオン溶液製造装置)
5A 第一電解槽(電解槽)
7A 銀製電極(金属製電極)
9A 電源装置
11A 攪拌装置
13A 対流発生部
15A 空気供給部
17A 電解室
19A 第一流入室
21A 第二流入室
23A 第一区画壁
25A 第二区画壁
27A、29A 第一連通孔