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特開2022-97845ヘルメット、ライダー支援システム、及び、それらの制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022097845
(43)【公開日】2022-07-01
(54)【発明の名称】ヘルメット、ライダー支援システム、及び、それらの制御方法
(51)【国際特許分類】
   A42B 3/30 20060101AFI20220624BHJP
【FI】
A42B3/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020211038
(22)【出願日】2020-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【弁理士】
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】ドゥミトル トライアン
(72)【発明者】
【氏名】プラシャン エス. エヌ.
(72)【発明者】
【氏名】齋尾 智明
(72)【発明者】
【氏名】バートン エドワード
(72)【発明者】
【氏名】ガビマス サントシュ
【テーマコード(参考)】
3B107
【Fターム(参考)】
3B107CA02
3B107EA06
3B107EA07
(57)【要約】
【課題】ライダーを安全化し得るヘルメットと、そのようなヘルメットを含むライダー支援システムと、そのようなヘルメットの制御方法と、そのようなライダー支援システムの制御方法と、を得るものである。
【解決手段】本発明に係るヘルメット(80)は、挙動制御装置(10)が走行中に取得される周囲環境情報に応じて鞍乗型車両(1)に生じさせる自動減速又は自動加速の情報である挙動制御情報を、通信装置(50)から直接的又は間接的に受信する通信部と、通信部で受信された挙動制御情報に基づいて、ライダーに対する警告動作を実行する制御部と、を備えている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ライダーの頭部に装着されるヘルメット(80)であって、
鞍乗型車両(1)に組込まれた通信装置(50)から発信された情報を直接的又は間接的に受信する通信部(81)と、
前記通信部(81)で受信された前記情報に基づいて、前記ライダーに対する警告動作を実行する制御部(82)と、
を備えており、
前記通信部(81)は、前記鞍乗型車両(1)に組込まれた挙動制御装置(10)が走行中に取得される周囲環境情報に応じて該鞍乗型車両(1)に生じさせる自動減速又は自動加速の情報である挙動制御情報を、前記情報として受信し、
前記制御部(82)は、前記通信部(81)で受信された前記挙動制御情報に基づいて、前記警告動作を実行する、
ヘルメット(80)。
【請求項2】
前記通信部(81)は、前記挙動制御情報を前記通信装置(50)から直接受信する、
請求項1に記載のヘルメット(80)。
【請求項3】
前記通信部(81)は、前記挙動制御情報を前記通信装置(50)から携帯型無線端末(90)を介して受信する、
請求項1に記載のヘルメット(80)。
【請求項4】
前記通信部(81)は、前記ライダーが搭乗している前記鞍乗型車両(1)に組込まれた前記通信装置(50)から発信された前記挙動制御情報を受信する、
請求項1~3の何れか一項に記載のヘルメット(80)。
【請求項5】
前記通信部(81)は、前記ライダーが搭乗していない前記鞍乗型車両(1)に組込まれた前記通信装置(50)から発信された前記挙動制御情報を受信する、
請求項1~3の何れか一項に記載のヘルメット(80)。
【請求項6】
前記鞍乗型車両(1)は、前記ライダーが搭乗している別の鞍乗型車両(101)と同一のグループで集団走行する車両として設定された車両である、
請求項5に記載のヘルメット(80)。
【請求項7】
前記挙動制御情報は、衝突回避動作での自動減速又は自動加速の情報を含む、
請求項1~6の何れか一項に記載のヘルメット(80)。
【請求項8】
前記挙動制御情報は、アダプティブクルーズ動作での自動減速又は自動加速の情報を含む、
請求項1~7の何れか一項に記載のヘルメット(80)。
【請求項9】
更に、音声出力部(83)を備えており、
前記警告動作は、前記音声出力部(83)に警告を出力させる動作を含む、
請求項1~8の何れか一項に記載のヘルメット(80)。
【請求項10】
更に、表示部(84)を備えており、
前記警告動作は、前記表示部(84)に警告を出力させる動作を含む、
請求項1~9の何れか一項に記載のヘルメット(80)。
【請求項11】
前記通信部(81)は、前記通信装置(50)との直接的又は間接的な通信を自動で開始する、
請求項1~10の何れか一項に記載のヘルメット(80)。
【請求項12】
鞍乗型車両(1)に組込まれた挙動制御装置(10)及び通信装置(50)と、ライダーの頭部に装着されるヘルメット(80)と、を含むライダー支援システム(100)であって、
前記ヘルメット(80)は、
前記通信装置(50)から発信された情報を直接的又は間接的に受信する通信部(81)と、
前記通信部(81)で受信された前記情報に基づいて、前記ライダーに対する警告動作を実行する制御部(82)と、
を備えており、
前記通信部(81)は、前記挙動制御装置(10)が走行中に取得される周囲環境情報に応じて前記鞍乗型車両(1)に生じさせる自動減速又は自動加速の情報である挙動制御情報を、前記情報として受信し、
前記制御部(82)は、前記通信部(81)で受信された前記挙動制御情報に基づいて、前記警告動作を実行する、
ライダー支援システム(100)。
【請求項13】
ライダーの頭部に装着されるヘルメット(80)の制御方法であって、
前記ヘルメット(80)の通信部(81)が、鞍乗型車両(1)に組込まれた通信装置(50)から発信された情報を直接的又は間接的に受信する通信ステップ(S102)と、
前記ヘルメット(80)の制御部(82)が、前記通信ステップ(S102)で受信された前記情報に基づいて、前記ライダーに対する警告動作を実行する制御ステップ(S103)と、
を備えており、
前記通信ステップ(S102)では、前記通信部(81)が、前記鞍乗型車両(1)に組込まれた挙動制御装置(10)が走行中に取得される周囲環境情報に応じて該鞍乗型車両(1)に生じさせる自動減速又は自動加速の情報である挙動制御情報を、前記情報として受信し、
前記制御ステップ(S103)では、前記制御部(82)が、前記通信ステップ(S102)で受信された前記挙動制御情報に基づいて、前記警告動作を実行する、
ヘルメット(80)の制御方法。
【請求項14】
鞍乗型車両(1)に組込まれた挙動制御装置(10)及び通信装置(50)と、ライダーの頭部に装着されるヘルメット(80)と、を含むライダー支援システム(100)の制御方法であって、
前記ヘルメット(80)の通信部(81)が、前記通信装置(50)から発信された情報を直接的又は間接的に受信する通信ステップ(S102)と、
前記ヘルメット(80)の制御部(82)が、前記通信ステップ(S102)で受信された前記情報に基づいて、前記ライダーに対する警告動作を実行する制御ステップ(S103)と、
を備えており、
前記通信ステップ(S102)では、前記通信部(81)が、前記挙動制御装置(10)が走行中に取得される周囲環境情報に応じて前記鞍乗型車両(1)に生じさせる自動減速又は自動加速の情報である挙動制御情報を、前記情報として受信し、
前記制御ステップ(S103)では、前記制御部(82)が、前記通信ステップ(S102)で受信された前記挙動制御情報に基づいて、前記警告動作を実行する、
ライダー支援システム(100)の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ライダーの頭部に装着されるヘルメットと、そのヘルメットを含むライダー支援システムと、そのヘルメットの制御方法と、そのライダー支援システムの制御方法と、に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のライダー支援システムとして、鞍乗型車両に組込まれた挙動制御装置が、ライダーによる操作によらずに、走行中に取得される周囲環境情報に応じて、その鞍乗型車両に自動減速又は自動加速を生じさせるものが知られている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2018/185577号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
自動減速又は自動加速は突然生じるため、ライダーがその自動減速又は自動加速に混乱して、そのライダーが搭乗する鞍乗型車両の走行が不安定となる事態が生じかねない。特に、鞍乗型車両では、他の車両(例えば、自動車、トラック等)と比較して走行の安定性が損なわれやすいため、ライダーによる自動減速又は自動加速に対する対処が適切に行われる必要がある。そのため、従来のライダー支援システムでは、自動減速又は自動加速が生じる状況下で、ライダーにその自動減速又は自動加速を報知する警告動作が実行される。そして、その警告動作は、ライダーが搭乗する鞍乗型車両のハンドルの周辺に組込まれた装置が警告を発することで実行される。しかしながら、ライダーが進行方向と異なる方向に注意を向けている状況下では、その装置から発せられる警告をライダーが認知することが困難となって、自動減速又は自動加速に対する対処が困難となり得る。
【0005】
本発明は、上述の課題を背景としてなされたものであり、ライダーを安全化し得るヘルメットと、そのようなヘルメットを含むライダー支援システムと、そのようなヘルメットの制御方法と、そのようなライダー支援システムの制御方法と、を得るものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るヘルメットは、ライダーの頭部に装着されるヘルメットであって、鞍乗型車両に組込まれた通信装置から発信された情報を直接的又は間接的に受信する通信部と、前記通信部で受信された前記情報に基づいて、前記ライダーに対する警告動作を実行する制御部と、を備えており、前記通信部は、前記鞍乗型車両に組込まれた挙動制御装置が走行中に取得される周囲環境情報に応じて該鞍乗型車両に生じさせる自動減速又は自動加速の情報である挙動制御情報を、前記情報として受信し、前記制御部は、前記通信部で受信された前記挙動制御情報に基づいて、前記警告動作を実行する。
【0007】
また、本発明に係るライダー支援システムは、鞍乗型車両に組込まれた挙動制御装置及び通信装置と、ライダーの頭部に装着されるヘルメットと、を含むライダー支援システムであって、前記ヘルメットは、前記通信装置から発信された情報を直接的又は間接的に受信する通信部と、前記通信部で受信された前記情報に基づいて、前記ライダーに対する警告動作を実行する制御部と、を備えており、前記通信部は、前記挙動制御装置が走行中に取得される周囲環境情報に応じて前記鞍乗型車両に生じさせる自動減速又は自動加速の情報である挙動制御情報を、前記情報として受信し、前記制御部は、前記通信部で受信された前記挙動制御情報に基づいて、前記警告動作を実行する。
【0008】
また、本発明に係るヘルメットの制御方法は、ライダーの頭部に装着されるヘルメットの制御方法であって、前記ヘルメットの通信部が、鞍乗型車両に組込まれた通信装置から発信された情報を直接的又は間接的に受信する通信ステップと、前記ヘルメットの制御部が、前記通信ステップで受信された前記情報に基づいて、前記ライダーに対する警告動作を実行する制御ステップと、を備えており、前記通信ステップでは、前記通信部が、前記鞍乗型車両に組込まれた挙動制御装置が走行中に取得される周囲環境情報に応じて該鞍乗型車両に生じさせる自動減速又は自動加速の情報である挙動制御情報を、前記情報として受信し、前記制御ステップでは、前記制御部が、前記通信ステップで受信された前記挙動制御情報に基づいて、前記警告動作を実行する。
【0009】
また、本発明に係るライダー支援システムの制御方法は、鞍乗型車両に組込まれた挙動制御装置及び通信装置と、ライダーの頭部に装着されるヘルメットと、を含むライダー支援システムの制御方法であって、前記ヘルメットの通信部が、前記通信装置から発信された情報を直接的又は間接的に受信する通信ステップと、前記ヘルメットの制御部が、前記通信ステップで受信された前記情報に基づいて、前記ライダーに対する警告動作を実行する制御ステップと、を備えており、前記通信ステップでは、前記通信部が、前記挙動制御装置が走行中に取得される周囲環境情報に応じて前記鞍乗型車両に生じさせる自動減速又は自動加速の情報である挙動制御情報を、前記情報として受信し、前記制御ステップでは、前記制御部が、前記通信ステップで受信された前記挙動制御情報に基づいて、前記警告動作を実行する。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るヘルメット、ライダー支援システム、ヘルメットの制御方法、及び、ライダー支援システムの制御方法では、自動減速又は自動加速が生じる状況下で、ライダーにその自動減速又は自動加速を報知する警告動作が、ライダーの頭部に装着されるヘルメットを用いて実行される。そのため、ライダーが進行方向と異なる方向に注意を向けている状況下においても、警告を認知しやすくなって、自動減速又は自動加速に対する対処が容易化される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施の形態に係るライダー支援システムの、概略構成を説明するための図である。
図2】本発明の実施の形態に係るライダー支援システムの、システム構成を示す図である。
図3】本発明の実施の形態に係るライダー支援システムの、動作フローの一例を示す図である。
図4】本発明の実施の形態に係るライダー支援システムの変形例の、概略構成を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明に係るヘルメット、ライダー支援システム、ヘルメットの制御方法、及び、ライダー支援システムの制御方法について、図面を用いて説明する。
【0013】
なお、以下で説明する構成、動作等は、一例であり、本発明に係るヘルメット、ライダー支援システム、ヘルメットの制御方法、及び、ライダー支援システムの制御方法は、そのような構成、動作等である場合に限定されない。
【0014】
例えば、以下では、本発明に係るライダー支援システムが、自動二輪車に用いられる場合を説明しているが、本発明に係るライダー支援システムが、自動二輪車以外の他の鞍乗型車両に用いられてもよい。鞍乗型車両は、ライダーが跨って乗車する乗物全般を意味する。鞍乗型車両には、モータサイクル(自動二輪車、自動三輪車)、バギー、自転車等が含まれる。モータサイクルには、エンジンを推進源とする自動二輪車又は自動三輪車、電動モータを推進源とする自動二輪車又は自動三輪車等が含まれ、例えば、オートバイ、スクーター、電動スクーター等が含まれる。また、自転車は、ペダルに付与されるライダーの踏力によって路上を推進することが可能な乗物全般を意味する。自転車には、普通自転車、電動アシスト自転車、電動自転車等が含まれる。
【0015】
また、以下では、細かい構造については、適宜図示を簡略化又は省略している。また、重複又は類似する説明を、適宜簡略化又は省略している。
【0016】
実施の形態.
以下に、実施の形態に係るライダー支援システムを説明する。
【0017】
<ライダー支援システムの構成>
実施の形態に係るライダー支援システムの構成について説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係るライダー支援システムの、概略構成を説明するための図である。図2は、本発明の実施の形態に係るライダー支援システムの、システム構成を示す図である。
【0018】
図1及び図2に示されるように、ライダー支援システム100は、少なくとも、鞍乗型車両1に組込まれた挙動制御装置10、制動装置20、駆動装置30、及び、通信装置50と、ライダーの頭部に装着されるヘルメット80と、を含む。
【0019】
挙動制御装置10には、鞍乗型車両1に搭載された各種センサの検出結果が入力される。また、挙動制御装置10は、鞍乗型車両1に搭乗しているライダーによる操作によらずに、走行中に取得される周囲環境情報に応じて、鞍乗型車両1に自動減速又は自動加速を生じさせる。例えば、挙動制御装置10は、周囲環境情報に基づいて所定の減速度を生じさせる必要があると判定される場合に、制動装置20又は駆動装置30に制御指令を出力して、鞍乗型車両1に自動減速を生じさせる。また、挙動制御装置10は、周囲環境情報に基づいて所定の加速度を生じさせる必要があると判定される場合に、駆動装置30又は制動装置20に制御指令を出力して、鞍乗型車両1に自動加速を生じさせる。
【0020】
挙動制御装置10の各部は、1つの筐体に纏めて設けられていてもよく、また、複数の筐体に分けられて設けられていてもよい。また、挙動制御装置10の一部又は全ては、例えば、マイコン、マイクロプロセッサユニット等で構成されてもよく、また、ファームウェア等の更新可能なもので構成されてもよく、また、CPU等からの指令によって実行されるプログラムモジュール等であってもよい。
【0021】
周囲環境情報は、例えば、鞍乗型車両1に組込まれた周囲環境検出装置40の出力に基づいて取得される。周囲環境検出装置40は、例えば、レーダー、Lidarセンサ、超音波センサ、カメラ等である。周囲環境検出装置40は、1つであってもよく、また、複数であってもよい。周囲環境検出装置40の検出範囲は、鞍乗型車両1の前方に向けられていてもよく、また、鞍乗型車両1の後方に向けられていてもよく、また、鞍乗型車両1の側方に向けられていてもよく、また、それらの組み合わせであってもよい。周囲環境情報が、周囲環境検出装置40の出力に換えて又は加えて、通信装置50の出力に基づいて取得されてもよい。通信装置50は、インフラ設備又は鞍乗型車両1の周囲に位置する他車両と直接的又は間接的に無線通信を行う。
【0022】
一例として、挙動制御装置10は、鞍乗型車両1の衝突回避動作を実行する。挙動制御装置10は、周囲環境検出装置40又は通信装置50の出力に基づいて周囲環境情報を取得し、鞍乗型車両1の周囲(前方、後方、側方等)に位置する対象(車両、人、動物、障害物、落下物等)に対する鞍乗型車両1の衝突可能性を判定する。挙動制御装置10は、衝突可能性が高いと判定される場合に、鞍乗型車両1に自動減速又は自動加速を生じさせて、衝突の回避を図る。
【0023】
一例として、挙動制御装置10は、鞍乗型車両1のアダプティブクルーズ動作を実行する。アダプティブクルーズ動作では、先行車が居ない場合には、鞍乗型車両1がライダーによって設定された目標速度で走行するように制御され、先行車が居る場合には、鞍乗型車両1がその目標速度以下であって、且つ、先行車との車間距離の維持を目指す速度で走行するように制御される。挙動制御装置10は、周囲環境検出装置40又は通信装置50の出力に基づいて周囲環境情報を取得し、鞍乗型車両1と先行車との車間距離を判定する。挙動制御装置10は、車間距離が短いと判定される場合に、鞍乗型車両1に自動減速を生じさせ、車間距離が長いと判定される場合に、鞍乗型車両1に自動加速を生じさせる。
【0024】
一例として、挙動制御装置10は、鞍乗型車両1の追い越し走行補助動作を実行する。挙動制御装置10は、周囲環境検出装置40又は通信装置50の出力に基づいて周囲環境情報を取得し、鞍乗型車両1による追い越し走行の安全性とライダーによる追い越し走行の意思の有無を判定する。挙動制御装置10は、安全性が高く且つ追い越し走行の意思が有ると判定される場合に、鞍乗型車両1に自動加速を生じさせて、追い越し走行を補助する。
【0025】
一例として、挙動制御装置10は、鞍乗型車両1の車列間すり抜け走行補助動作を実行する。挙動制御装置10は、周囲環境検出装置40又は通信装置50の出力に基づいて周囲環境情報を取得し、鞍乗型車両1が車列間すり抜け走行の状態であるかを判定する。挙動制御装置10は、鞍乗型車両1が車列間すり抜け走行の状態であると判定される場合に、鞍乗型車両1に自動減速を生じさせて、車列間すり抜け走行を補助する。
【0026】
ヘルメット80は、少なくとも、通信装置50から発信された情報を受信する通信部81と、通信部81で受信された情報に基づいて、ヘルメット80を装着しているライダーに対する警告動作を実行する制御部82と、を含む。通信部81は、ヘルメット80の主電源がオンになると、通信装置50との通信を自動で開始する。通信部81は、通信装置50から発信された情報を直接受信してもよく、また、携帯型無線端末90(スマートフォン、タブレット等)を介して間接的に受信してもよい。また、制御部82は、ヘルメット80に設けられた音声出力部83に警告を出力させることで警告動作を実行してもよく、また、ヘルメット80に設けられた表示部84に警告を出力させることで警告動作を実行してもよく、また、その両方であってもよい。音声出力部83は、警告を表す音を発してもよく、また、警告のメッセージを発してもよく、また、その両方であってもよい。表示部84は、警告を表すランプを点灯させてもよく、また、警告のメッセージを表示させてもよく、また、その両方であってもよい。
【0027】
制御部82は、1つの筐体に纏めて設けられていてもよく、また、複数の筐体に分けられて設けられていてもよい。また、制御部82の一部又は全ては、例えば、マイコン、マイクロプロセッサユニット等で構成されてもよく、また、ファームウェア等の更新可能なもので構成されてもよく、また、CPU等からの指令によって実行されるプログラムモジュール等であってもよい。
【0028】
通信部81は、挙動制御装置10が走行中に取得される周囲環境情報に応じて鞍乗型車両1に生じさせる自動減速又は自動加速の情報である挙動制御情報を受信する。そして、制御部82は、通信部81で受信された挙動制御情報に基づいて、警告動作を実行する。制御部82は、自動減速又は自動加速の有無のみを警告する警告動作を実行してもよく、また、自動減速又は自動加速の有無に加えてその大きさを警告する警告動作を実行してもよい。
【0029】
<ライダー支援システムの動作>
実施の形態に係るライダー支援システムの動作について説明する。
図3は、本発明の実施の形態に係るライダー支援システムの、動作フローの一例を示す図である。
【0030】
鞍乗型車両1の走行中において、図3に示される動作フローが繰り返し実行される。
【0031】
(判定ステップ)
ステップS101において、鞍乗型車両1に組込まれた挙動制御装置10は、周囲環境情報を取得し、鞍乗型車両1に自動減速又は自動加速を生じさせる必要が有るか否かを判定する。鞍乗型車両1に自動減速又は自動加速を生じさせる必要が有る場合には、ステップS102に進み、そうではない場合には、ステップS101を繰り返す。
【0032】
(通信ステップ)
ステップS102において、ヘルメット80の通信部81は、挙動制御装置10が鞍乗型車両1に生じさせる自動減速又は自動加速の情報である挙動制御情報を、鞍乗型車両1に組込まれた通信装置50から直接的又は間接的に受信する。
【0033】
(制御ステップ)
ステップS103において、ヘルメット80の制御部82は、ステップS102で受信された挙動制御情報に基づいて、ライダーに対する警告動作を実行する。
【0034】
(挙動制御ステップ)
ステップS104において、挙動制御装置10は、鞍乗型車両1に自動減速又は自動加速を生じさせる。
【0035】
なお、各ステップの順序が適宜入れ替えられていてもよく、また、別のステップが適宜加えられていてもよい。例えば、ステップS103が、ステップS104の開始後に実行されてもよく、また、ステップS104の開始前及び開始後に実行されてもよい。
【0036】
<ライダー支援システムの効果>
実施の形態に係るライダー支援システムの効果について説明する。
【0037】
ライダー支援システム100では、ライダーの頭部に装着されるヘルメット80が、鞍乗型車両1に組込まれた通信装置50から発信された情報を直接的又は間接的に受信する通信部81と、通信部81で受信された情報に基づいて、ライダーに対する警告動作を実行する制御部82と、を備えており、通信部81が、鞍乗型車両1に組込まれた挙動制御装置10が走行中に取得される周囲環境情報に応じて鞍乗型車両1に生じさせる自動減速又は自動加速の情報である挙動制御情報を、情報として受信し、制御部82が、通信部81で受信された挙動制御情報に基づいて、警告動作を実行する。そのため、ライダーが進行方向と異なる方向に注意を向けている状況下においても、警告を認知しやすくなって、自動減速又は自動加速に対する対処が容易化される。
【0038】
本発明の実施の形態は、以上の説明に限定されない。つまり、本発明には、以上で説明された実施の形態に対して変形を施した形態が含まれる。また、本発明には、以上で説明された実施の形態の一部のみが実施される形態、又は、その形態同士が組み合わされた形態が含まれる。
【0039】
図4は、本発明の実施の形態に係るライダー支援システムの変形例の、概略構成を説明するための図である。
例えば、以上では、ヘルメット80の通信部81が、そのヘルメット80を装着しているライダーが搭乗する鞍乗型車両1における挙動制御情報を受信する場合を説明したが、それに換えて又は加えて、図4に示されるように、ヘルメット80の通信部81が、そのヘルメット80を装着しているライダーが搭乗していない鞍乗型車両1における挙動制御情報を受信してもよい。つまり、ヘルメット80の制御部82が、そのヘルメット80を装着しているライダーが搭乗していない鞍乗型車両1に生じる自動減速又は自動加速をライダーに報知するものであってもよい。その鞍乗型車両1が、ヘルメット80を装着しているライダーが搭乗する鞍乗型車両101の先行車であるとよい。そのような構成である場合には、先行車で生じる自動減速又は自動加速に対する対処が容易化される。なお、鞍乗型車両101は、自動減速又は自動加速を生じさせることが可能であってもよく、また、不可能であってもよい。また、鞍乗型車両1及び鞍乗型車両101が、同一のグループで集団走行する車両として設定された車両であるとよい。集団走行が行われている場合には、鞍乗型車両1の自動減速又は自動加速に連動して、鞍乗型車両101に減速又は加速を生じさせる必要性が高まる。つまり、制御部82が、ヘルメット80を装着しているライダーが搭乗していない鞍乗型車両1に生じる自動減速又は自動加速をライダーに報知する構成は、集団走行において特に有用である。
【符号の説明】
【0040】
1、101 鞍乗型車両、10 挙動制御装置、20 制動装置、30 駆動装置、40 周囲環境検出装置、50 通信装置、80 ヘルメット、81 通信部、82 制御部、83 音声出力部、84 表示部、90 携帯型無線端末、100 ライダー支援システム。
図1
図2
図3
図4