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特開2022-97848活性エネルギー線硬化性ハードコート剤、ハードコート層および積層体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022097848
(43)【公開日】2022-07-01
(54)【発明の名称】活性エネルギー線硬化性ハードコート剤、ハードコート層および積層体
(51)【国際特許分類】
   C09D 4/02 20060101AFI20220624BHJP
   B32B 15/082 20060101ALI20220624BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20220624BHJP
   C08G 18/67 20060101ALI20220624BHJP
   C08G 18/71 20060101ALI20220624BHJP
   C08F 299/06 20060101ALI20220624BHJP
【FI】
C09D4/02
B32B15/082 Z
C09D7/63
C08G18/67
C08G18/71 080
C08F299/06
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020211044
(22)【出願日】2020-12-21
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-12-15
(71)【出願人】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】711004506
【氏名又は名称】トーヨーケム株式会社
(72)【発明者】
【氏名】清野 数馬
(72)【発明者】
【氏名】鶴田 洋明
【テーマコード(参考)】
4F100
4J034
4J038
4J127
【Fターム(参考)】
4F100AB01C
4F100AB17C
4F100AH06B
4F100AK25B
4F100AK42A
4F100AK51B
4F100AK52B
4F100AT00A
4F100BA03
4F100BA07
4F100BA10B
4F100BA10C
4F100EH46B
4F100EH66C
4F100EJ54B
4F100GB43
4F100JB01
4F100JB14B
4F100JG05
4F100JG05B
4F100JK06
4F100JK09
4F100JK12
4F100JK12B
4F100JM02C
4F100JN01
4F100YY00B
4J034BA02
4J034CA01
4J034CA02
4J034CB01
4J034FA05
4J034FB01
4J034FC01
4J034FD01
4J034HB16
4J034HC33
4J034JA02
4J034JA22
4J034KB04
4J034MA18
4J034QB06
4J034QB08
4J034QB11
4J034QB15
4J034QC03
4J034QD03
4J034RA13
4J038FA111
4J038FA281
4J038JC35
4J038NA11
4J038PA17
4J038PC08
4J127AA04
4J127BB221
4J127BC031
4J127BC131
4J127BD411
4J127BE111
4J127BF591
4J127BG281
4J127CA01
4J127EA11
4J127FA08
(57)【要約】
【課題】
ハードコート層を形成した際に、高い透明性と硬度を有し、耐擦傷性、耐アルカリ性、金属薄膜との密着性に優れたハードコート層を形成するための活性エネルギー線硬化性ハードコート剤を提供すること。
【解決手段】
ハードコート層上に金属薄膜を形成することができるハードコート層を形成するための活性エネルギー線硬化性ハードコート剤であって、(メタ)アクリロイル基を3個以上有する化合物(A)と、イソシアナト基を有するシランカップリング剤(B)と、光重合開始剤(C)とを含み、活性エネルギー線硬化性ハードコート剤の不揮発分100質量部中、、前記化合物(A)を70質量部以上含む活性エネルギー線硬化性ハードコート剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハードコート層上に金属薄膜を形成することができるハードコート層を形成するための活性エネルギー線硬化性ハードコート剤であって、(メタ)アクリロイル基を3個以上有する化合物(A)と、イソシアナト基を有するシランカップリング剤(B)と、光重合開始剤(C)とを含み、活性エネルギー線硬化性ハードコート剤の不揮発分100質量部中、前記化合物(A)を70質量部以上含む活性エネルギー線硬化性ハードコート剤。
【請求項2】
前記化合物(A)が、(メタ)アクリロイル基を3個以上有し、かつ窒素原子を有する化合物(a1)を含む請求項1記載の活性エネルギー線硬化性ハードコート剤。
【請求項3】
前記化合物(a1)が、(メタ)アクリロイル基を3個以上有し、かつヌレート環骨格を有する化合物(a2)を含む請求項2記載の活性エネルギー線硬化性ハードコート剤。
【請求項4】
前記シランカップリング剤(B)を、前記活性エネルギー線硬化性ハードコート剤の不揮発分100質量部中、5~30質量部含む、請求項1~3何れか記載の活性エネルギー線硬化性ハードコート剤。
【請求項5】
請求項1~4何れか記載の活性エネルギー線硬化性ハードコート剤より形成されたハードコート層。
【請求項6】
周波数1GHz、23℃における、比誘電率が3.2以下であり、誘電正接が0.02以下である請求項5記載のハードコート層。
【請求項7】
基材上に、請求項5又は6記載のハードコート層が積層されてなる積層体。
【請求項8】
更に、ハードコート層上に金属薄膜が積層されてなる請求項7記載の積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハードコート層上に金属薄膜を形成することができるハードコート層を形成するための活性エネルギー線硬化性ハードコート剤、ハードコート層および積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
透明なプラスチックフィルム基材上に、透明導電性材料を積層させた透明導電性フィルムは、液晶ディスプレイやエレクトロルミネッセンス(以下、ELと略記する)ディスプレイ等のようなフラットパネルディスプレイ、タッチパネル、照明、太陽電池、電気電子等の分野の用途に広く使用されている。
【0003】
透明導電性材料としては、可視光透過率が高く、表面抵抗値が比較的低いこと、環境特性に優れていることから、インジウム系酸化物である酸化インジウム-錫(ITO/IndiumTinOxide)(以下ITOと略記する)を主成分としたものが広く用いられている。しかし、ITOの表面抵抗値の下限は50Ω/□であり、大型ディスプレイの電極として用いるには、応答性が足りず不適とされている。ITO膜は脆く曲げ耐性に劣るうえに、屈曲時の表面抵抗値が高いことから、ディスプレイのフレキシブル化への対応が困難とされている。
【0004】
そのため、銀や銅、アルミニウム合金等の金属材料の薄膜を、真空蒸着法、スパッタリング法等の物理蒸着法(PDV/PhysicalVaporDeposition)、化学蒸着法(CVD/Chemical Vapor Deposition)等の方法により、基材上に形成させ、微細なパターニングを施すことで、電極パターンを目視で見えなくする金属メッシュや、金属をナノ分散させた導電性インク等、ITOを代替する材料や技術の開発が行われている。
【0005】
特許文献1には、ポリアミック酸樹脂、感光材、イソシアヌレート化合物、カーボネート化合物、分子量100~10,000のデンドリマー若しくはハイパーブランチポリマーから選ばれる1種、及び溶剤を含む感光性樹脂組成物、多孔質樹脂、回路基板、並びに、回路付サスペンション基板が開示されている。
【0006】
特許文献2には、ジイソシアネートの3量体と水酸基含有(メタ)アクリレートとを反応させてなるウレタン(メタ)アクリレート系樹脂、並びに、(メタ)アクリル酸のミカエル付加物及び2-(メタ)アクリロイルオキシアルキルカルボン酸モノエステルからなる群から選ばれた少なくとも1種を含む活性エネルギー線硬化性樹脂組成物が開示されている。
【0007】
特許文献3には、(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートモノマー及び/又はアクリレートオリゴマー、チオウレア型シランカップリング剤、及び平均粒径100~500nmのナノシリカ微粒子を含む紫外線硬化性樹脂組成物及びフィルム並びに導電性フィルムが開示されている。
【0008】
特許文献4には、金属酸化物からなるコート層、並びに、イソシアヌル環を有するトリ(メタ)アクリレート化合物、芳香環を有するジ(メタ)アクリレート、及びテトラヒドロフタルイミド型シランカップリング剤とコロイダルシリカとの反応物を含むプライマー層を有する樹脂材及びその製造方法が開示されている。
【0009】
特許文献5には、多価イソシアネート系化合物とε-カプロラクトン由来の構造部位を含む水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物を反応させてなるウレタン(メタ)アクリレート系化合物と、ウレタン(メタ)アクリレート以外の窒素含有(メタ)アクリレート化合物を含む活性エネルギー線硬化性樹脂組成物、コーティング剤、並びに、プレコートメタル用コーティング剤が開示されている。
【0010】
金属材料をフィルム基材上に形成するためには、通常プライマー処理が必要となるが、従来のアンカーコート剤による処理は金属材料との良好な密着性を向上させる一方で、表面硬度を低下させるため、導電性フィルムの製造工程や加工工程等における傷付き対策が課題となっている。
【0011】
上記課題の解決のため、下記のように、金属材料との親和性に優れた有機材及び又は無機材を含むUV硬化型アンカーコート剤が検討されているが、それらの硬化膜は表面硬度を高めるために架橋密度を高くするとアンカーコートとしての性能が落ち金属材料に対する密着性が低下しやすくなる傾向にある。
【0012】
特許文献6には、水酸基、アルキルエステル基及びニトリル基並びに場合により一級アミド基を有するアクリルコポリマー(A)と、イソシアネート基を少なくとも3つ有するポリイソシアネート(B)と、炭素-炭素二重結合含有基を少なくとも3つ有する活性エネルギー線重合型化合物(C)と、(イソシアネート基を含む反応性基から選ばれる反応基有する)反応性アルコキシシリル化合物(D)と、を含有する、銅薄膜付基材用アンダーコート剤が開示されている。
【0013】
特許文献7には、ジカルボン酸類及びジオール類を反応成分とするガラス転移温度が80℃以下のポリエステルポリオール(A)と、イソシアネート基を少なくとも3つ有するポリイソシアネート(B)と、(イソシアネート基を含む反応性基から選ばれる反応基有する)反応性アルコキシシリル化合物(C)と炭素-炭素二重結合含有基を少なくとも3つ有する活性エネルギー線重合型化合物(E)とを含有する、銅薄膜付基材用アンダーコート剤が提案されている。
【0014】
上記のように熱架橋性のイナート樹脂と活性エネルギー線重合型化合物の併用では反応性アルコキシル化合物による導電性フィルムの製造工程や加工工程等における耐擦傷性の課題解決までには至っていない。また、高速データ通信の進展に対応して、誘電率や誘電正接の上昇を抑える観点から、アンダーコートへの極性の高い材料の使用も極力抑えなければならない。
【0015】
しかしながら、上記文献に開示されている材料では、いずれもハードコート層を形成した際に、高い透明性、硬度、耐擦傷性、耐アルカリ性、金属薄膜との密着性に優れたハードコート層を形成することができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2001-214058号公報
【特許文献2】特開2002-285043号公報
【特許文献3】特開2016-008241号公報
【特許文献4】特開2016-112702号公報
【特許文献5】特開2019-112637号公報
【特許文献6】特開2016-069653号公報
【特許文献7】特開2015-199946号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明が解決しようとする課題は、ハードコート層を形成した際に、高い透明性と硬度を有し、耐擦傷性、耐アルカリ性、金属薄膜との密着性に優れたハードコート層を形成するための活性エネルギー線硬化性ハードコート剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、以下の発明に至った。すなわち、第1の発明は、ハードコート層上に金属薄膜を形成することができるハードコート層を形成するための活性エネルギー線硬化性ハードコート剤であって、(メタ)アクリロイル基を3個以上有する化合物(A)と、イソシアナト基を有するシランカップリング剤(B)と、光重合開始剤(C)とを含み、活性エネルギー線硬化性ハードコート剤の不揮発分100質量部中、前記化合物(A)を70質量部以上含む活性エネルギー線硬化性ハードコート剤に関する。
【0019】
また、第2の発明は、前記化合物(A)が、(メタ)アクリロイル基を3個以上有し、かつ窒素原子を有する化合物(a1)を含む前記活性エネルギー線硬化性ハードコート剤に関する。
【0020】
また、第3の発明は、前記化合物(a1)が、(メタ)アクリロイル基を3個以上有し、かつヌレート環骨格を有する化合物(a2)を含む前記活性エネルギー線硬化性ハードコート剤に関する。
【0021】
また、第4の発明は、前記シランカップリング剤(B)を、前記活性エネルギー線硬化性ハードコート剤の不揮発分100質量部中、5~30質量部含む、前記活性エネルギー線硬化性ハードコート剤に関する。
【0022】
また、第5の発明は、前記活性エネルギー線硬化性ハードコート剤より形成されたハードコート層に関する。
【0023】
また、第6の発明は、周波数1GHz、23℃における、比誘電率が3.2以下であり、誘電正接が0.02以下である前記ハードコート層に関する。
【0024】
また、第7の発明は、基材上に、前記ハードコート層が積層されてなる積層体に関する。
【0025】
更に、第8の発明は、ハードコート層上に金属薄膜が積層されてなる前記積層体に関する。
【発明の効果】
【0026】
本発明によって、ハードコート層を形成した際に、高い透明性と硬度を有し、耐擦傷性、耐アルカリ性、金属薄膜との密着性に優れたハードコート層を形成するための活性エネルギー線硬化性ハードコート剤を提供することができるようになった。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態について説明するが、初めに本明細書で用いられる用語について説明する。尚、本明細書では、「(メタ)アクリル」、「(メタ)アクリロ」、「(メタ)アクリル酸」、「(メタ)アクリレート」、および「(メタ)アクリロイルオキシ」と表記した場合には、特に断りがない限り、それぞれ「アクリルまたはメタクリル」、「アクリロまたはメタクリロ」、「アクリル酸またはメタクリル酸」、「アクリレートまたはメタクリレート」および「アクリロイルオキシまたはメタクリロイルオキシ」を表すものとする。また、特に断りがない限り、「部」とは「質量部」を、「%」とは「質量%」をそれぞれ表すものとする。また、「本発明の活性エネルギー線硬化性ハードコート剤」を「ハードコート剤」、「(メタ)アクリロイル基を3個以上有する化合物(A)」を「化合物(A)」、「イソシアナト基を有するシランカップリング剤(B)」を「シランカップリング剤(B)」、「(メタ)アクリロイル基を3個以上有し、かつ窒素原子を有する化合物(a1)」を「化合物(a1)」、「(メタ)アクリロイル基を3個以上有し、かつヌレート環骨格を有する化合物(a2)」を「化合物(a2)」、「化合物(a2)以外の化合物(A)」を「化合物(a)」、「(メタ)アクリロイル基を1または2個有する化合物(a0)」を「化合物(a0)」と、それぞれ略記することがある。
【0028】
本発明のハードコート剤は、化合物(A)と、シランカップリング剤(B)と、光重合開始剤(C)とを含み、活性エネルギー線硬化性ハードコート剤の不揮発分100質量部中、前記化合物(A)を70質量部以上含むことを特徴とする。
【0029】
<(メタ)アクリロイル基を3個以上有する化合物(A)>
化合物(A)としては、
例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、及びペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、等のポリオールポリ(メタ)アクリレート化合物;
トリス(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレート、EO変性トリス(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレート、PO変性トリス(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレート、及びε-カプロラクトン変性トリス(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレート等のイソシアナト基有する(メタ)アクリレートの三量体(イソシアヌレート);
その他、(メタ)アクリロイル基が3つ以上のポリアクリルポリ(メタ)アクリレート、ポリウレタンポリ(メタ)アクリレート、及びポリエステル(メタ)アクリレート等のポリマーポリオールのポリアクリレート;
ポリエポキシ(メタ)アクリレート;
等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0030】
さらに、化合物(A)は、金属薄膜に対して密着性の観点から、(メタ)アクリロイル基を3個以上有し、かつ窒素原子を有する化合物(a1)を含むことが好ましく、さらに、(メタ)アクリロイル基を3個以上有し、かつヌレート環構造を有する化合物(a2)を含むことがより好ましい。化合物(A)が、化合物(a1)を含むことにより、硬度、耐擦傷性、金属薄膜に対する密着性に優れたハードコート層が得られる。ヌレート構造は窒素原子を有するイソシアネート化合物の三量体で、六員環であるため、その剛直な六員環の周りで(メタ)クリロイル基の重合が進み反応が起こり、シランカップリング剤(B)及び金属薄膜双方の親和性との相乗効果により、優れた硬度、耐擦傷性、金属薄膜密着を発現する。
【0031】
化合物(a1)としては、(メタ)アクリロイル基を3個以上有するウレタンアクリレートの他、トリス(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレート(日立化成社製 FANCRYL FA-731A、第一工業製薬社製 NEW FRONTIER TEICA(GX-8430)等)、EO変性トリス(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレート(東亞合成社製アロニクスM-313、M-315、新中村化学工業社製NKエステル A-9300、ARKEMA社製SARTOMER SR-368等)、PO変性トリス(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ε-カプロラクトン変性トリス(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレート(新中村化学工業社製 NKエステル A-9300-1CL等)等の市販品が挙げられるが、これらに限定されない。
【0032】
本発明の活性エネルギー線硬化性ハードコート剤の不揮発分100部中、化合物(A)が70部以上含まれていれば、硬度、及び耐擦傷性に優れた金属薄膜を形成することができるハードコート層が得られる。活性エネルギー線硬化性ハードコート剤の不揮発分100部中、化合物(A)の含有量の上限は、100部未満である。
【0033】
<イソシアナト基を有するシランカップリング剤(B)>
シランカップリング剤(B)は、一般式(1):X1-Si(R1)a(OR2)3-a(式(1)中、X1は、イソシアナト基を、R1は炭素数1~8の炭化水素基を、R2は炭素数1~8の炭化水素基を、aは0、1又は2を示す。)で表される反応性アルコキシシリル化合物であることが好ましい。
【0034】
シランカップリング剤(B)としては、3-イソシアナトプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、3-イソシアナトプロピルメチルジメトキシシラン、3-イソシアナトプロピルメチルジエトキシシラン及びこれら化合物の三量体(イソシアヌレート)等が挙げられる。
【0035】
シランカップリング剤(B)の市販品としては、KBE-9007N(3-イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、信越化学社製)、X-12-1159(化学構造式不明、信越化学社製)、KBM-9659(トリス(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、信越化学社製)、SILQUEST Silane A-1310(3-イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、MOMENTIVE社製)、及び、同 Y-5187(3-イソシアナトプロピルトリメトキシシラン、MOMENTIVE社製)等が挙げられる。
【0036】
シランカップリング剤(B)は、硬度及び耐擦傷性、並びに、金属薄膜との密着性の両方の観点から、活性エネルギー線硬化性ハードコート剤の不揮発分100部中、5~30部含むことが好ましく、7~25部含むことがより好ましく、8~15部含むことがさらに好ましい。
【0037】
本発明のハードコート剤は、上記以外に、化合物(a0)、イソシアナト基有さないシランカップリング剤やシラン化合物、及びその縮合物、並びに、後述するその他添加剤を含有してもよい。
【0038】
化合物(a0)としては、例えば、1,3-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート及びビスフェノールAのエチレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート等のジ(メタ)アクリレート類、ポリウレタンポリ(メタ)アクリレート及びポリエステルポリ(メタ)アクリレート等のオリゴマー、並びに2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、シクロペンタニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、及びイソボニル(メタ)アクリレート等のモノ(メタ)アクリレート類が挙げられるが、これらに限定されない。
【0039】
<光重合開始剤(C)>
光重合開始剤(C)としては、例えば、モノカルボニル系光重合開始剤、ジカルボニル系光重合開始剤、アセトフェノン系光重合開始剤、ベンゾインエーテル系光重合開始剤、アシルホスフィンオキシド系光重合開始剤、アミノカルボニル系光重合開始剤が使用できる。
【0040】
例えば、ベンゾフェノン、4-メチルベンゾフェノン、2,4,6-トリメチルベンゾフェノン、メチル-o-ベンゾイルベンゾエート、4-フェニルベンゾフェノン、3,3´,4,4´-テトラ(t-ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2-/4-イソ-プロピルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントン、及び1-クロロ-4-プロポキシチオキサントン等のモノカルボニル系光重合開始剤;
2-エチルアントラキノン、9,10-フェナントレンキノン、及びメチル-α-オキソベンゼンアセテート等のジカルボニル系光重合開始剤;
2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-ヒドロキシ-シクロヘキシルフェニルケトン、ジエトキシアセトフェノン、ジブトキシアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、2,2-ジエトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)ブタン-1-オン、及び1-フェニル-1,2-プロパンジオン-2-(o-エトキシカルボニル)オキシム等のアセトフェノン系光重合開始剤;
ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイゾブチルエーテル、及びベンゾインノルマルブチルエーテル等のベンゾインエーテル系光重合開始剤;
2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、及び4-n-プロピルフェニル-ジ(2,6-ジクロロベンゾイル)ホスフィンオキシド等のアシルホスフィンオキシド系光重合開始剤;
並びに、エチル-4-(ジメチルアミノ)ベンゾエート、2-n-ブトキシエチル-4-(ジメチルアミノ)ベンゾエート、イソアミル-4-(ジメチルアミノ)ベンゾエート、2-(ジメチルアミノ)エチルベンゾエート、4,4´-ビス-4-ジメチルアミノベンゾフェノン、4,4´-ビス-4-ジエチルアミノベンゾフェノン、及び2,5´-ビス(4-ジエチルアミノベンザル)シクロペンタノン等のアミノカルボニル系光重合開始剤;
等が挙げられる。
【0041】
光重合開始剤(C)の市販品としては、IGM-Resins B.V.社製のOmnirad184、651、500、907、127、369、784、2959、エサキュアワン、BASF(株)社製ルシリンTPO等が挙げられる。 特に、活性エネルギー線硬化後の耐黄変の観点で、Omnirad184やエサキュアワンが好ましい。
【0042】
光重合開始剤(C)は、2種類以上を混合して用い併用してもよい。また、増感剤と併用してもよい。
【0043】
光重合開始剤(C)の含有量は、硬化速度、並びに、硬度及び耐擦傷性の両方の観点から、活性エネルギー線硬化性ハードコート剤の不揮発分100部中、1~15部含むことが好ましく、3~10部含むことがより好ましい。
【0044】
本発明のハードコート剤は、有機溶剤(D)を含んでも良い。使用される有機溶剤としては、トルエン、キシレンといった芳香族系有機溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンといったケトン系有機溶剤、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチル、エステル系有機溶剤、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、などのアルコール系有機溶剤、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコエーテル系有機溶剤など公知の有機溶剤を使用できる。特にグリコールエーテル系有機溶剤を含むことが好ましい。
【0045】
有機溶剤(D)を含む場合の有機溶剤(D)の含有量は、塗工性及び成膜性の観点から、本発明のハードコート剤の不揮発分濃度が1~60%となる範囲であることが好ましい。
【0046】
本発明のハードコート剤には、さらに様々な添加剤を含有してもよい。添加剤としては、熱硬化性樹脂、重合禁止剤、レベリング剤、スリップ剤、消泡剤、界面活性剤、抗菌剤、アンチブロッキング剤、可塑剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、酸化防止剤、シランカップリング剤、導電剤、無機充填剤、顔料、染料等が挙げられる。
【0047】
<積層体>
本発明の積層体は、基材の表面に、本発明のハードコート剤より形成されたハードコート層が積層されたものである。また、本発明の積層体は、ハードコート層上に、更に金属薄膜が積層されていてもよい。
【0048】
基材(支持体とも言う)としては、特に限定はなく、ガラス、合成樹脂成型物、フィルムなどが挙げられる。合成樹脂成型物としては、ポリメチルメタクリレート樹脂、メチルメタクリレートを主成分とする共重合体樹脂、ポリスチレン樹脂、スチレン-メチルメタクリレート共重合体樹脂、スチレン-アクリロニトリル共重合体樹脂、ポリカーボネート樹脂、セルロースアセテートブチレート樹脂、ポリアリルジグリコールカーボネート樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリエステル樹脂等の合成樹脂の成型物が挙げられる。
【0049】
また、フィルムとしては、例えば、ポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、セロファンフィルム、ジアセチルセルロースフィルム、トリアセチルセルロース(TAC)フィルム、アセチルセルロースブチレートフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレンビニルアルコールフィルム、ポリオレフィンフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリメチルペンテルフィルム、ポリスルフォンフィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルム、ポリエーテルスルフォンフィルム、ポリエーテルイミドフィルム、ポリイミドフィルム、フッ素樹脂フィルム、ナイロンフィルム、アクリルフィルム等が挙げられる。
【0050】
ハードコート層の厚みは、特に限定されないが、通常0.1~5μm程度である。
【0051】
金属薄膜としては、例えば、金属蒸着膜、金属スパッタ膜及び金属CVD膜が挙げられる。本発明の積層体を電極フィルムに供する場合には、金属薄膜としては、特に金属蒸着膜又は金属スパッタ膜であることが好ましい金属薄膜層の厚みは、特に限定されないが、通常、0.1~2μm程度である。金属薄膜を構成する金属としては、銅、アルミニウム、銀等が挙げられるが、これらに限らない。
【0052】
本発明の積層体の製造方法は、特に限定されない。例えば、(1)基材の表面(基材が例えばフィルム状のものであれば片面又は両面)に本発明のハードコート剤を塗布し、(2)該基材に熱を加えた後、(3)更に活性エネルギー線を照射することにより硬化させてハードコート層を形成する工程を経て製造することができる。更に必要に応じて、(4)ハードコート層上に金属薄膜を形成する工程を経て製造する態様が挙げられる。
【0053】
工程(1)に関し、基材の表面(基材が例えばフィルム状のものであれば片面又は両面)にハードコート剤を塗布する条件は、特に限定されず、塗布手段としては、例えば、スプレー、ロールコーター、リバースロールコーター、グラビアコーター、ナイフコーター、バーコーター及びドットコーター等が挙げられる。また、塗工量も特に限定されないが、通常、乾燥不揮発分として0.01~10g/m2程度である。
【0054】
工程(2)に関し、該基材に熱を加える際の条件も特に限定されないが、通常、温度80~150℃程度で、時間が10秒~2分程度である。
【0055】
工程(3)に関し、活性エネルギー線を照射する際の条件も特に限定されない。活性エネルギー線としては、例えば紫外線や電子線が挙げられる。紫外線の供給源としては例えば高圧水銀灯やメタルハライドランプ等が挙げられ、その照射エネルギーは通常100~2,000mJ/cm2程度である。電子線の供給方式としては例えばスキャン式電子線照射、カーテン式電子線照射法等が挙げられ、その照射エネルギーは通常10~200kGy程度である。
【0056】
工程(4)に関し、ハードコート層に金属薄膜を形成する手段は特に限定されないが、ドライコート法が好ましい。具体的には、例えば、真空蒸着法又はスパッタリング法等の物理的方法や、CVD等の化学的方法(化学的気相反応等)が挙げられる。
【0057】
該導電性フィルムの製法は特に限定されないが、これを電極フィルムとして使用する場合には、前記金属蒸着プラスチックフィルム又は金属スパッタフィルムに各種レジストを塗布し、電極パターンを描写した後でエッチング液(アルカリ溶液)に浸漬し、レジストを除去する方法が挙げられる。電極パターンの形状は細線状、ドット状、メッシュ状及び面状等、如何なる形態であってよい。
【0058】
本発明のハードコート層は、電波の屈折や反射による透過損失の抑制および高速伝送による信号ロス低減の観点から、周波数1GHz、23℃における比誘電率は3.2以下であることが好ましく、3以下であることがより好ましい。また、誘電正接は0.02以下であることが好ましく、0.01以下であることがより好ましい。
【実施例0059】
以下、実施例及び比較例により、本発明をさらに具体的に説明するが、以下の実施例は、本発明の技術的範囲を何ら制限するものではない。
【0060】
<アクリルコポリマーの製造(比較例)>
比較製造例1
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下ロート及び窒素導入管を備えた反応容器に、ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)40.8部(13.6モル%)、(メチルメタアクリレート(MMA)72.0部(27.7モル%)、ブチルアクリレート(BA)79.2部(23.8モル%)、アクリロニトリル(AN)48.0部(約34.9モル%)、酢酸エチル445.7部を仕込み、反応系を70℃に設定した。次いで、2、2’―アゾビス(2、4―ジメチルバレロニトリル)(ABN―V)1.2部を仕込み、70℃付近で6時間保温した。次いで、ABN―V 2.4部を仕込み、反応系を同温度付近において更に6時間保温した。その後反応系を室温まで冷却することにより、ガラス転移温度が13℃及び水酸基価が80mgKOH/g、不揮発分35.0%のアクリルコポリマーの溶液を得た。
【0061】
<ハードコート剤の調製>
実施例1
アロニックス M-403(東亞合成社製)90部、KBE-9007N(3-イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、信越化学社製)10部、及びエサキュアワン(DKSHジャパン(株)社製)5部をよく混合し、有機溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルを不揮発分濃度40%となるように調整してハードコート剤を得た。
【0062】
実施例2~11、比較例1~5
各成分を表1に示す組成(不揮発分換算)で配合したこと以外は、実施例1と同様にして、不揮発分濃度40%のハードコート剤をそれぞれ得た。表1中の数値は、特に断りのない限り「部」を表し、空欄は配合していないことを意味する。
【0063】
表1に示す各材料の詳細は、以下のとおりである。
<化合物(A)>
・アロニックスM-403(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(官能基数:6個):40~50%とジペンタエリスリトールペンタアクリレート(官能基数:5個):50~60%の混合物;東亞合成社製)
<化合物(a1)>
・Miramer PU610(ウレタンアクリレート、重量平均分子量:1800、官能基数:6個、MIWON社製)
・Miramer MU9800(ウレタンアクリレート、重量平均分子量:3500、官能基:9個、MIWON社製)
<化合物(a2)>
・アロニックス M-315(イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性トリアクリレート、官能基数:3個、東亞合成社製)
【0064】
<イソシアナト基を有するシランカップリング剤(B)>
・KBE-9007N(3-イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、信越化学工業社製)
・KBM-9659(トリス(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、信越化学工業社社製)
・SILQUEST Silane Y-5187(3-イソシアナトプロピルトリメトキシシラン、MOMENTIVE社製)
<光重合開始剤(C)>
・Esacure One(エサキュアワン、アセトフェノン系光重合開始剤 DKSHジャパン(株)社製)
【0065】
<その他>
<(メタ)アクリロイル基を2個有する化合物(a0)>
・NKエステル A-DCP(トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、分子量:304、アクリロイル基数:2個、新中村化学工業社製)
<アクリロイル基を有するシランカップリング剤(b0)>
・KBM-5103(3-アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、信越化学工業社製)
<アクリルポリオール(比較製造例1)>
・アクリルポリオール(製造例1で合成したガラス転移温度が13℃及び水酸基価が80mgKOH/g、不揮発分35.0%のアクリルコポリマーの溶液)
<アルミナ粒子分散体>
・NANOBYK3610(アルミナ粒子メトキシプロピレンアセテート分散体、不揮発分濃度:37%、ビックケミージャパン社製)
【0066】
≪ハードコート層及び積層体の作製≫
実施例および比較例で得られたハードコート剤を、それぞれ50μm厚のポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東レ(株)社製「ルミラーU403」)上に、バーコーターを用いて、乾燥後の膜厚が1.0μmになるように塗工した後、高圧水銀ランプで500mJ/cm2の紫外線を照射し、ハードコート層を形成し、積層体を作製した。
【0067】
≪鉛筆硬度≫
上記作製した積層体について、JIS K5600-5-4に準じ、各種硬度の鉛筆を45゜の角度で積層体のハードコート層の表面にあて、荷重をかけて引っ掻き試験を行い、傷がつかない最も硬い鉛筆の硬さを鉛筆硬度とした。
【0068】
≪ヘイズ値の測定≫
上記作製した積層体について、日本電色工業社製「ヘイズメーターSH7000」によりハードコート層表面のヘイズ値(HZ)を測定した。
・最良:1.0%未満
・良 :1.0以上2.0%未満
・不良:2.0%以上
【0069】
≪耐擦傷性≫
上記作成した積層体について、テスター産業社製「学振型摩擦堅牢度試験機」により耐擦傷性を評価した。荷重200gを取り付けた摩擦子(表面積1cm2)にスチールウール#0000を取り付け、ハードコート層の表面(1cm×15cm)を10往復させた。その後、ハードコート層の表面のキズの本数を数え、下記基準で評価した。
・3:傷なし(0本)
・2:傷1本以上10本以下
・1:傷11本以上
【0070】
≪銅密着性≫
上記作成した積層体のハードコート層上に、真空デバイス社製「マグトロンスパッタMSP-30T」により銅を厚さ300nm、500nm、及び1μmになるようにスパッタリングして銅薄膜を形成した。銅薄膜とアンダーハードコート層との密着性は、銅薄膜に1mmの間隔で碁盤目状にカッターで傷を付け、100マスの格子パターンを形成した後、碁盤目状の傷全体を覆うようにセロハンテープを付着させ、引きはがし、銅薄膜の剥離状態を目視で観察し、以下の基準で評価した。
・5:傷の線の周囲が完全に滑らかで、どの格子にも剥がれがない。
・4:傷の交点周囲に銅薄膜の小さな剥がれが観察されるが、剥がれた面積の合計は碁盤目の5%未満。
・3:傷の縁方向に沿って銅薄膜が剥がれたり、傷の交差点で銅薄膜が剥がれたりしており、剥がれた面積の合計が碁盤目の5%以上15%未満。
・2:剥がれた面積の合計が碁盤目の15%以上35%未満。
・1:剥がれた面積の合計が碁盤目の35%以上80%未満。
・0:剥がれた面積の合計が碁盤目の80%以上であり、碁盤目状の傷の外部にも剥がれが観察される。
【0071】
≪耐アルカリ性≫
銅密着性評価をしていない銅薄膜(厚み300nm)を有する積層体を、40℃に加温した5%水酸化ナトリウム水溶液に5分間浸漬した後に十分に水で洗浄し、次いで100℃に加温したオーブン内で15分乾燥させて水分を除去した後に、上記と同様に銅密着性を評価した。
【0072】
≪比誘電率及び誘電正接の測定≫
実施例及び比較例のハードコート剤を市販のポリエステルフィルム(商品名「ルミラーU48」、東レ(株)製、100μm厚)に、乾燥膜厚が80μm程度となるようバーコーターで塗工し、120℃で1分間乾燥させた。次いで300mJ/cm2でUV硬化させることによって、測定用塗膜(積層体)を得た。得られた測定用塗膜を幅3mm×長さ100mmの大きさに切り取り、測定用試験片とした。得られた測定用試験片を、日本電子回路工業会の「フレキシブルプリント配線板およびフレキシブルプリント配線板用材料-その2統合規格-(JPCA-DG03)に準拠して、以下の手順で比誘電率及び誘電正接を測定した。エー・イー・ティー社製の比誘電率測定装置「ADMS01Oc」に、試験片を3つセットし、空洞共振器法により、測定温度23℃、測定周波数が1GHzにおける比誘電率および誘電正接を求めた。結果を表1に示す。
【0073】
表1に示す通り、本発明のハードコート剤を用いた場合、高い透明性と硬度を有し、耐擦傷性、耐アルカリ性、金属薄膜との密着性に優れたハードコート層を形成できることが明らかとなった。
【0074】
【表1】
【0075】
【表1】
【手続補正書】
【提出日】2021-07-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハードコート層上に金属薄膜を有するハードコート層を形成するための活性エネルギー線硬化性ハードコート剤であって、(メタ)アクリロイル基を3個以上有する化合物(A)と、イソシアナト基を有するシランカップリング剤(B)と、光重合開始剤(C)とを含み、活性エネルギー線硬化性ハードコート剤の不揮発分100質量部中、前記化合物(A)を70質量部以上含む活性エネルギー線硬化性ハードコート剤。
【請求項2】
前記化合物(A)が、(メタ)アクリロイル基を3個以上有し、かつ窒素原子を有する化合物(a1)を含む請求項1記載の活性エネルギー線硬化性ハードコート剤。
【請求項3】
前記化合物(a1)が、(メタ)アクリロイル基を3個以上有し、かつヌレート環骨格を有する化合物(a2)を含む請求項2記載の活性エネルギー線硬化性ハードコート剤。
【請求項4】
前記シランカップリング剤(B)を、前記活性エネルギー線硬化性ハードコート剤の不揮発分100質量部中、5~30質量部含む、請求項1~3何れか1項に記載の活性エネルギー線硬化性ハードコート剤。
【請求項5】
請求項1~4何れか1項に記載の活性エネルギー線硬化性ハードコート剤より形成されたハードコート層。
【請求項6】
周波数1GHz、23℃における、比誘電率が3.2以下であり、誘電正接が0.02以下である請求項5記載のハードコート層。
【請求項7】
基材上に、請求項5又は6記載のハードコート層が積層されてなる積層体。
【請求項8】
更に、ハードコート層上に金属薄膜が積層されてなる請求項7記載の積層体。